(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231110BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231110BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231110BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20231110BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20231110BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20231110BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20231110BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6568
H01M10/6551
H01M10/663
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2020559833
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043915
(87)【国際公開番号】W WO2020116089
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018227159
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓介
(72)【発明者】
【氏名】長尾 健史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟朗
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-045001(JP,A)
【文献】特開2018-142525(JP,A)
【文献】特開2017-049144(JP,A)
【文献】特開2018-055768(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H01M 10/60ー10/667
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧が上昇した場合に内部のガスを排出するための開放部がそれぞれ設けられている複数のセルと、
コントローラに信号線で接続された非復帰型の圧力スイッチ部と、を含み、
前記圧力スイッチ部は
、電池パック内の圧力が所定の圧力閾値を上回った場合、有意な状態から非有意な状態に不可逆的に変化する
略密閉構造の電池パック
と、
前記圧力スイッチ部に信号線で接続されたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記圧力スイッチ部が有意な状態から非有意な状態に変化したことを検知すると、前記電池パック内の別のセンサの出力値を取得することを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記電池パック内の圧力が所定の圧力を超えると作動する圧力開放機構をさらに備え、
前記圧力スイッチ部の状態が変化する圧力閾値は、前記圧力開放機構の作動圧力よりも低い値に設定されることを特徴とする請求項1に記載の
電源システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記圧力スイッチ部が有意な状態から非有意な状態に変化したことをトリガとして、起動することを特徴とする請求項
1または2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記電源システムは、電動車両に搭載されており、
前記コントローラは、前記圧力スイッチ部の状態に基づき、前記電池パックが異常であると判定すると、車両側のコントローラに異常発生信号を送信し、
前記車両側のコントローラは、前記異常発生信号を受信すると、前記電動車両内のユーザインタフェースに前記電池パックの異常を報知させることを特徴とする請求項
1から
3のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記圧力スイッチ部の状態に基づき、前記電池パックが異常であると判定すると、前記電池パックを冷却するための冷却装置を作動させることを特徴とする請求項
1から
4のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項6】
内圧が上昇した場合に内部のガスを排出するための開放部がそれぞれ設けられている複数のセルと、
コントローラに信号線で接続された圧力スイッチ部と、を含み、
前記圧力スイッチ部は
、電池パック内の圧力が所定の圧力閾値を上回った場合、有意な状態から非有意な状態に変化するとともに、その状態の変化を前記信号線を介して前記コントローラに通知する
略密閉構造の電池パック
と、
前記圧力スイッチ部に信号線で接続されたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記圧力スイッチ部が有意な状態から非有意な状態に変化したことを検知すると、前記電池パック内の別のセンサの出力値を取得することを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを収容した電池パックを備える電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)が普及してきている。これらの電動車両にはキーデバイスとして、二次電池が搭載される。数十から数千個のセルを電気的に接続して使用する車載用電池パックにおいて、電池パック内のセルに異常が発生した場合、迅速に異常を検知して、電池パックの使用を中断、または所定のセーフティ処理を行う必要がある。
【0003】
電池の異常を検知する方法の1つとして、電池の温度を計測する方法がある。温度を計測して電池の異常を高精度に検知するには、電池パック内のすべてのセルの温度を計測する必要があり、コストおよび部品点数が増大する。
【0004】
また、電池の異常を検知する別の方法として、圧力センサで電池パック内の圧力を監視する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法は、セルの異常時にセルから噴出するガスにより電池パック内の圧力が一様に上昇することを利用したものであり、少数の検知デバイスで高精度に異常を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電池パック内の異常時における圧力上昇は1秒から数秒以内の現象であるため、圧力センサにより異常を検知するには検知システムでその期間より短い周期で走査する必要があり、検知システムの負荷が増大する。
【0007】
また車載用途では、駐車中は検知システムがシャットダウン/スタンバイしていることが一般的である。その状態において電池パック内のセルに異常が発生しても、電池パック内の圧力は数秒以内に通常の圧力に戻ってしまうため、リアルタイムで異常を検知できないばかりか、電動車両の起動時においても異常を検知できない可能性がある。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、少数の検知デバイスで、電池パック内のセルの異常を高精度に検知する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電池パックは、略密閉構造の電池パックであって、内圧が上昇した場合に内部のガスを排出するための開放部がそれぞれ設けられている複数のセルと、コントローラに信号線で接続された非復帰型の圧力スイッチ部と、を含む。前記圧力スイッチ部は、前記電池パック内の圧力が所定の圧力閾値を上回った場合、有意な状態から非有意な状態に不可逆的に変化する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少数の検知デバイスで、電池パック内のセルの異常を高精度に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電源システムを説明するための図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電源システムにおけるセルからのガス排出時のシーケンスを示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電源システムにおけるセルからのガス排出時の第1処理例の流れを示すフローチャートある。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電源システムにおけるセルからのガス排出時の第2処理例の流れを示すフローチャートある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る電源システム1を説明するための図である。本実施の形態では、電源システム1が電動車両に搭載された駆動用バッテリである例を説明する。電源システム1は、電池モジュールM1を収納した略密閉構造の電池パック10を備える。なお
図1では図面を簡略化するため電池モジュールM1を1つしか描いていないが、実際には複数の電池モジュールが収納される場合が多い。複数の電池モジュールは、直列接続、並列接続、又は直並列接続される。
【0014】
電池モジュールM1は複数のセル11-16を含む。
図1では電池モジュールM1が6個のセルを収容する例を描いているが、収容するセルの数は6個より多くてもよいし、少なくてもよい。また複数のセル11-16は電気的には、直列接続、並列接続、直並列接続のいずれであってもよい。以下の説明では直列接続を想定する。
【0015】
セルは角型、円筒型、ラミネート型等の二次電池であり、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池等を使用することができる。以下、本明細書では角型のリチウムイオン電池を使用する例を想定する。複数のセル11-16は、最も面積が大きい面を積層面として、一列に積層される。複数のセル11-16の積層方向の両端面に、複数のセル11-16を挟むように2枚のエンドプレートP1、P2が設けられる。両端のエンドプレートP1、P2は、複数のサイドバインドバーで連結される。具体的には、積層された複数のセル11-16の両側にそれぞれ、少なくとも1つのサイドバインドバーB1、B2が設けられる。
【0016】
セルは、内部短絡や過充電などの異常が発生した場合、内圧が上昇して高温のガスを発生させる。角型や円筒型のセルでは外装ケースの天面に、内部の圧力が上昇した場合に内部のガスを排出するための安全弁(不図示)が設けられていることが一般的である。ラミネート型のセルでは内圧が上昇すると、ラミネート材のシール部分が裂けることで、内部のガスを排出するように設計されていることが多い。いずれの場合も、内部のガスを排出するための開放部が設けられる。以下、本実施の形態では複数のセル11-16に、外装ケースの天面に安全弁が設けられた角型セルが使用されることを想定する。
【0017】
電池パック10は圧力開放機構20を備える。圧力開放機構20は、電池パック10内の内圧値が所定値(作動圧力値)より高くなると作動し、電池パック10内のガスを外部に排出する。圧力開放機構20は例えば、内圧値が作動圧力値より高くなると開く排出弁を有する。複数のセル11-16のいずれかの安全弁が開放され、セルの内部からガスが排出されると、電池パック10内の内圧も上昇し、圧力開放機構20の作動圧力値を超えると圧力開放機構20が作動する。例えば、圧力開放機構20の作動圧力値は10~50kPa(ゲージ圧力)に設定される。
【0018】
圧力開放機構20の近傍であって、複数のセル11-16から排出されたガスが通過する位置に圧力スイッチ素子30が設けられる。なお圧力スイッチ素子30は、熱の影響が小さい位置に取り付けることが望ましい。なお複数のセル11-16の安全弁のそれぞれと圧力開放機構20との間が、密閉された排気路で連結されていてもよい。その場合、圧力スイッチ素子30は当該排気路の内部に設置される。
【0019】
圧力スイッチ素子30の両端は検知回路31に接続される。圧力スイッチ素子30と検知回路31は圧力スイッチ部を構成する。圧力スイッチ部は、電池パック10内の内圧値が所定の圧力閾値を上回った場合、有意な状態から非有意な状態に不可逆的に変化する非復帰型のスイッチである。当該圧力閾値は、圧力開放機構20の作動圧力値より低い値に設定される。
【0020】
圧力スイッチ素子30には例えば、機構的な可動接片を変位させることにより切り替え状態が切り替えられる機械的な非復帰型のスイッチを用いることができる。具体的には、圧力スイッチ素子30を、電池パック10の壁面などに通気可能に設けられる開口を塞ぐように電池パック10の内外の差圧を検出可能な箇所に設置し、電池パック10内の圧力変化により可動接片が変位される。検知回路31は、可動接片の変位を検知して圧力スイッチ素子30の切り替えを検知する。
【0021】
また、圧力スイッチ素子30には例えば、ピエゾ抵抗効果を利用した感圧センサを用いることができる。当該感圧センサは、感応部に対する圧力に応じて抵抗値が変化する。具体的には、圧力が増加すると抵抗値が下がる。検知回路31は、所定の定電圧を圧力スイッチ素子30の両端に印加する。検知回路31と圧力スイッチ素子30の閉ループ内に、上記圧力閾値に対応する電流閾値を超える電流が流れると不可逆的にオフするスイッチを挿入する。上記感応部に対する圧力が上記圧力閾値を超えると、電流閾値を超える電流が流れて上記スイッチがターンオフする。なお当該スイッチの代わりに、電流閾値を超える電流が流れると溶断するヒューズを用いてもよい。
【0022】
検知回路31は、上記スイッチがターンオフすると異常信号をBMU(lang=EN-US>Battery Management Unit)50に送信する。例えば、検知回路31とBMU50間が信号線で接続され、検知回路31は上記スイッチがオン状態ではローレベルを正常信号として出力し続ける。検知回路31は上記スイッチがオフ状態ではハイレベルを異常信号として出力し続ける。反対に検知回路31は上記スイッチがオン状態ではハイレベルを正常信号として出力し続け、上記スイッチがオフ状態ではローレベルを異常信号として出力し続けてもよい。
【0023】
なお圧力スイッチ部の構成は一例である。圧力スイッチ素子30の両端にバイアス電圧を印加するとともに、検知回路31から別の電圧が両端に印加されるスイッチを設け、当該スイッチは、圧力スイッチ素子30に流れる電流が、上記圧力閾値に対応する電流閾値を超えると電磁誘導により不可逆的にオンする構成でもよい。検知回路31は、上記スイッチがターンオンすると異常信号をBMU50に送信する。
【0024】
また圧力スイッチ素子30は、一般的なホイートストンブリッジ回路を形成する4個のピエゾ抵抗素子であってもよい。この場合、検知回路31は、ホイートストンブリッジ回路の出力電圧が、上記圧力閾値に対応する電圧閾値を一度超えると、異常信号をBMU50に送信し続ける。検知回路31は、ホイートストンブリッジ回路の出力電圧が低下しても、異常信号をBMU50に送信し続ける。
【0025】
BMU50は、電源システム1を管理するコントローラである。BMU50には、複数のセル11-16の電圧値、電流値、温度値が入力される。例えば、電圧値はASIC又はアナログフロントエンドで構成された電圧センサ(不図示)、電流値はシャント抵抗やホール素子を用いた電流センサ(不図示)、温度値はサーミスタを用いた温度センサ(不図示)でそれぞれ計測される。BMU50は、複数のセル11-16の電圧値、電流値、温度値をもとに、複数のセル11-16に過電圧、過小電圧、過電流、又は温度異常が発生しているか否か監視する。
【0026】
本実施の形態では検知回路31からの信号線が、BMU50の起動信号を受けるポートに接続される。BMU50はシャットダウン状態/スタンバイ状態において、検知回路31から異常信号を受信すると起動するとともに、電池パック10内のセル11-16に異常が発生していると判定する。
【0027】
BMU50は、電池パック10内のセル11-16に異常が発生していると判定すると、CANなどの車載ネットワークを介してECU(lang=EN-US>Electronic Control Unit)2に、セルの異常発生信号を通知する。
【0028】
またBMU50は、電池パック10内のセル11-16に異常が発生していると判定すると、センサ40をオンする。例えばセンサ40は、圧力スイッチ部より高性能な圧力センサであってもよい。例えば、4個のピエゾ抵抗素子を含むホイートストンブリッジ回路で形成された圧力センサであってもよい。BMU50は、電池パック10内のセル11-16に異常が発生していると判定すると、ホイートストンブリッジ回路の入力端子に所定の定電流を流す。入力端子に電流が供給されると、ホイートストンブリッジ回路の出力端子に、検知された圧力に応じた電圧が発生し、BMU50に供給される。BMU50はセンサ40から入力される電圧値をもとに、電池パック10内の圧力値を推定する。
【0029】
ECU2は電動車両全体を制御するコントローラであり、例えば、統合型のVCM(lang=EN-US>Vehicle Control Module)で構成されていてもよい。ECU2は、BMU50からセルの異常発生信号を受信すると、電動車両内の車内警告装置3に電池パック10の異常を報知させる。車内警告装置3は、乗員に電池パック10の異常を警告するためのユーザインタフェースである。例えばECU2は、インストルメントパネルに設けられている電池パック10の異常ランプを点灯させる。また、音声メッセージで電池パック10の異常を乗員に通知してもよい。
【0030】
電源システム1がハイブリットカーに搭載された駆動用バッテリである場合、ECU2は、モータ走行中にBMU50からセルの異常発生信号を受信すると、モータ走行を停止させ、エンジン走行に切り替える。
【0031】
電源システム1が純粋な電気自動車に搭載された駆動用バッテリである場合、安全性を確保しつつ、カーディーラや修理工場までの自走を許容することにより安全性と利便性を両立させる。安全性を確保する方法として、電源システム1を冷却することが考えられる。
【0032】
ECU2は、BMU50からセルの異常発生信号を受信すると、冷却装置4を作動させて電池パック10内のセル11-16を冷却する。水冷方式の場合、冷却装置4は、放熱フィン等の放熱器、冷却用液体(以下、クーラント液という)を冷却するための電動ファンを有する。なお電動ファンの代わりに、車両内のエアーコンディショナシステムと連動し、エアーコンディショナシステムの冷却風でクーラント液を冷却する構成でもよい。
【0033】
冷却装置4と電源システム1は、図示しないクーラントパイプで接続される。電源システム1の電池モジュールM1には冷却板(不図示)が取り付けられる。冷却板は、絶縁性の熱伝導シート(不図示)を介して電池モジュールM1に取り付けられる。なお、セルの外装ケースが絶縁性材料で形成されている場合は、冷却板を電池モジュールM1に直接取り付けてもよい。なお、空冷方式の場合は、電動ファンやエアーコンディショナシステムで生成された冷却風を、電池パック10内のセル11-16に直接供給する。
【0034】
ECU2は冷却装置4が作動中の場合において、BMU50からセルの異常発生信号を受信すると、冷却装置4に冷却能力の上昇を指示してもよい。例えば、電動ファンが用いられている場合、クーラント液の温度を下げるために電動ファンの回転数を上げるように指示してもよい。例えば、最大回転数で回転するよう指示してもよい。また、クーラント液をエアーコンディショナで冷却している場合、冷却風の温度を下げる/冷却風の風量を上げるように指示してもよい。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態に係る電源システム1におけるセルからのガス排出時のシーケンスを示す図である。セルの内圧に異常が発生すると安全弁が開き、電池パック10内にガスが排出される。電池パック10の圧力が圧力スイッチ部の圧力閾値を超えると、圧力スイッチ素子30への通電が遮断される。これにより、セルの異常発生を示す検知回路31の出力信号がオンし、BMU50が起動し、BMU50がオン状態となる。BMU50はセンサ40をオンして、より詳細な圧力データを取得する。BMU50は、ECU2にセルの異常発生を通知し、ECU2は冷却装置4を作動させる。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態に係る電源システム1におけるセルからのガス排出時の第1処理例の流れを示すフローチャートある。電池パック10内の圧力が、圧力スイッチ部の圧力閾値を超えると(S10のY)、圧力スイッチ素子30への通電が遮断し(S11)、検知回路31からBMU50に供給される異常信号がオンする(S12)。BMU50がシャットダウン状態/スタンバイ状態のとき(S13のN)、当該異常信号のオンをトリガとしてBMU50が起動する(S14)。BMU50が起動中の場合(S13のY)、ステップS14の処理はスキップされる。
【0037】
BMU50は、ECU2にセルの異常発生信号を通知する(S15)。ECU2は車内警告装置3に、電池パック10の異常を乗員に向けて報知させる(S16)。ECU2は、冷却装置4を作動させて、電池パック10内のセルを冷却する(S17)。
【0038】
図4は、本発明の実施の形態に係る電源システム1におけるセルからのガス排出時の第2処理例の流れを示すフローチャートある。これまでの説明では、検知回路31からの信号線が、BMU50の起動信号を受けるポートに接続されている構成を前提とした。第2処理例では、検知回路31からの信号線が、BMU50の起動信号を受けるポートではなく、センサ入力を受けるポートに接続される構成を前提とする。即ち、BMU50がシャットダウン状態/スタンバイ状態の場合、検知回路31が異常信号を出力してもBMU50が直ぐに起動しない構成を前提とする。
【0039】
電池パック10内の圧力が、圧力スイッチ部の圧力閾値を超えると(S10のY)、圧力スイッチ素子30への通電が遮断し(S11)、検知回路31からBMU50に供給される異常信号がオンする(S12)。BMU50がシャットダウン状態/スタンバイ状態の場合において(S13のN)、BMU50の定期起動タイミングが到来すると(S131のY)、BMU50が起動する(S14)。
【0040】
電動車両が駐車中で、かつ電池モジュールが外部充電中でないとき、BMU50の消費電力を低減するために、BMU50はシャットダウン状態/スタンバイ状態になる。BMU50がシャットダウン状態/スタンバイ状態になっても、電池パック10内の複数のセル11-16の異常の有無を監視するためにBMU50は定期的に起動する。BMU50は定期的に起動して、複数のセル11-16の電圧値、電流値、温度値を取得して異常の有無を判定する。本実施の形態では検知回路31からの異常信号の有無も判定する。BMU50は例えば、5~60分おきに起動して異常の有無を判定する。
【0041】
BMU50の定期起動タイミングが到来していない期間において(S131のN)、運転者により電動車両の電源がオン(エンジン車両のイグニッションオンに相当する)されると(S132のY)、BMU50が起動する(S14)。BMU50が起動中の場合(S13のY)、ステップS131、S132、S14の処理はスキップされる。
【0042】
BMU50は、ECU2にセルの異常発生信号を通知する(S15)。ECU2は車内警告装置3に、電池パック10の異常を乗員に向けて報知させる(S16)。ECU2は、冷却装置4を作動させて、電池パック10内のセルを冷却する(S17)。
【0043】
以上説明したように本実施の形態によれば、セルの安全弁からのガス排出により一様に変化する電池パック10内の圧力を検知対象とすることで、少数の検知デバイスで高精度にセルの異常を検知することができる。例えば、サーミスタを用いてセルの安全弁からの高温ガスの排出を温度により検知する場合、多くのサーミスタを設置する必要があり、コスト及び部品点数が増大する。
【0044】
また検知デバイスを非復帰型の圧力スイッチとすることで、変化時間が短い電池パック10内の圧力の変化を高精度に検知することができる。セルの安全弁からのガス排出による電池パック内の圧力上昇は、数秒以内に通常の圧力に戻ってしまう。例えばBMU50が負荷を軽減するために5秒以上の間隔で圧力センサの値を走査している場合、一般的な圧力センサを使用した圧力値の監視では、当該圧力上昇を検知できない可能性が高い。
【0045】
例えば1秒間隔で圧力センサの値を走査すれば、当該圧力上昇を検知できるが、BMU50の負荷が増大する。またBMU50がシャットダウン状態/スタンバイ状態にある場合、定期起動時に上記圧力上昇を検知することは、ほぼ不可能である。これに対して本実施の形態によれば、非復帰型の圧力スイッチを使用しているため、BMU50の起動中は上記圧力上昇の次の走査タイミングにおいて、BMU50が起動していない場合は次の起動時に、上記圧力上昇を検知することができる。
【0046】
また検知デバイスとして電気的なスイッチを用いることにより、検知デバイス自体をBMU50の起動スイッチとして使用することができ、上記圧力上昇時にBMU50を起動させることができる。なお、検知デバイスをBMU50の起動スイッチとして使用しない構成でも、少なくとも運転者が電動車両をキーオンした時点で上記圧力上昇を検知することができる。これに対して一般的な圧力センサを用いた構成では、圧力上昇の履歴が残らないため、事後的にも上記圧力上昇を検知することができない。
【0047】
また安全弁が開いたセルを、セル電圧から検知することも考えられるが、安全弁が開いたセルが他のセルと並列接続されている場合、電圧からセルの異常を検知することは難しい。このように本実施の形態によれば、低コスト及び低負荷で、かつ高精度にセルの異常を検知することができる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0049】
上述した実施の形態では、非復帰型の圧力スイッチを使用する例を説明した。この点、第1処理例のように検知回路31からの信号線が、BMU50の起動信号を受けるポートに接続されている構成では、復帰型の圧力スイッチを使用することも可能である。圧力スイッチが有意な状態から非有意な状態に変化した時点でBMU50が上記圧力上昇を把握できるため、圧力スイッチが元の状態に戻っても、上記圧力上昇が検知できない事態が回避される。この場合、一般的な圧力センサを使用することができ、圧力スイッチの再利用も可能である。
【0050】
上記
図1では、検知回路31及びBMU50が電池パック10の外側に描かれているが、検知回路31及びBMU50も電池パック10内に収容されていてもよい。また上記
図1では、冷却装置4をECU2が制御する例を描いているが、冷却装置4をBMU50が直接制御する構成であってもよい。
【0051】
また上記
図1にはセンサ40が描かれているが、センサ40は必須ではなく省略可能である。またセンサ40が圧力センサである例を説明したが、センサ40は温度センサであってもよいし、電圧センサであってもよい。いずれの場合も、セルの状態をより詳細に検知できる検知デバイスであればよい。
【0052】
また上述の実施の形態では電源システム1を車載用途に使用する例を説明したが、定置型蓄電用途、ノート型PCやスマートフォンなどの電子機器用途にも使用可能である。
【0053】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0054】
[項目1]
略密閉構造の電池パック(10)であって、
内圧が上昇した場合に内部のガスを排出するための開放部がそれぞれ設けられている複数のセル(11-16)と、
コントローラ(50)に信号線で接続された非復帰型の圧力スイッチ部(30、31)と、を含み、
前記圧力スイッチ部(30、31)は、前記電池パック(10)内の圧力が所定の圧力閾値を上回った場合、有意な状態から非有意な状態に不可逆的に変化することを特徴とする電池パック(10)。
これによれば、コントローラ(50)の負荷を上昇させずに、基本的に1つの圧力スイッチ部(30、31)で、セル(11-16)からのガス排出を高精度に検知することができる。
[項目2]
前記電池パック(10)内の圧力が所定の圧力を超えると作動する圧力開放機構(20)をさらに備え、
前記圧力スイッチ部(30、31)の状態が変化する圧力閾値は、前記圧力開放機構(20)の作動圧力よりも低い値に設定されることを特徴とする項目1に記載の電池パック(10)。
これによれば、圧力開放機構(20)が開放される前に、圧力スイッチ部(30、31)の状態を変化させることができる。
[項目3]
項目1または2に記載の電池パック(10)と、
前記圧力スイッチ部(30、31)に信号線で接続されたコントローラ(50)と、
を備える電源システム(1)。
これによれば、コントローラ(50)の負荷を上昇させずに、基本的に1つの圧力スイッチ部(30、31)で、セル(11-16)からのガス排出を高精度に検知することができる電源システム(1)を構築することができる。
[項目4]
前記コントローラ(50)は、前記圧力スイッチ部(30、31)が有意な状態から非有意な状態に変化したことをトリガとして、起動することを特徴とする電源システム(1)。
これによれば、コントローラ(50)がシャットダウン状態/スタンバイ状態であっても、リアルタイムにセル(11-16)からのガス排出を検知することができる。
[項目5]
前記コントローラ(50)は、前記圧力スイッチ部(30、31)が有意な状態から非有意な状態に変化したことを検知すると、前記電池パック(10)内の別のセンサ(40)の出力値を取得することを特徴とする項目3または4に記載の電源システム(1)。
これによれば、コントローラ(50)が電池パック(10)内のより詳細な状況を把握することができる。
[項目6]
前記電源システム(1)は、電動車両に搭載されており、
前記コントローラ(50)は、前記圧力スイッチ部(30、31)の状態に基づき、前記電池パック(10)が異常であると判定すると、車両側のコントローラ(2)に異常発生信号を送信し、
前記車両側のコントローラ(2)は、前記異常発生信号を受信すると、前記電動車両内のユーザインタフェース(3)に前記電池パック(10)の異常を報知させることを特徴とする項目3から5のいずれか1項に記載の電源システム(1)。
これによれば、乗員に電池パック(10)の異常を認識させることができる。
[項目7]
前記コントローラ(50)は、前記圧力スイッチ部(30、31)の状態に基づき、前記電池パック(10)が異常であると判定すると、前記電池パック(10)を冷却するための冷却装置(4)を作動させることを特徴とする項目3から6のいずれか1項に記載の電源システム(1)。
これによれば、電池パック(10)のセルの異常が、他のセルに拡大することを抑制することができる。
[項目8]
略密閉構造の電池パック(10)であって、
内圧が上昇した場合に内部のガスを排出するための開放部がそれぞれ設けられている複数のセル(11-16)と、
コントローラ(50)に信号線で接続された圧力スイッチ部(30、31)と、を含み、
前記圧力スイッチ部(30、31)は、前記電池パック(10)内の圧力が所定の圧力閾値を上回った場合、有意な状態から非有意な状態に変化するとともに、その状態の変化を前記信号線を介して前記コントローラ(50)に通知することを特徴とする電池パック(10)。
これによれば、コントローラ(50)の負荷を上昇させずに、基本的に1つの圧力スイッチ部(30、31)で、セル(11-16)からのガス排出を高精度にリアルタイムに検知することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 電源システム、 10 電池パック、 20 圧力開放機構、 30 圧力スイッチ素子、 31 検知回路、 40 センサ、 50 BMU、 M1 電池モジュール、 11-16 セル、 B1,B2 バインドバー、 P1,P2 エンドプレート、 2 ECU、 3 車内警告装置、 4 冷却装置。