(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/055 20060101AFI20231110BHJP
H01G 9/012 20060101ALI20231110BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H01G9/055 103
H01G9/012 301
H01G9/15
(21)【出願番号】P 2019066009
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 徹弥
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-326341(JP,A)
【文献】実開平02-036027(JP,U)
【文献】特開2008-235772(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142972(WO,A1)
【文献】特開2006-186083(JP,A)
【文献】特開平05-335189(JP,A)
【文献】特開昭61-044420(JP,A)
【文献】特開2008-277331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0116416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/055
H01G 9/012
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、
前記陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、
前記陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、
前記陰極部と前記陰極リード端子との間に介在し、導電性を有する第1の接着材と、
前記陽極リード端子および前記陰極リード端子の一部を露出させた状態で、前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備え、
前記陰極部と前記陰極リード端子との間において、前記第1の接着材が介在していない隙間の少なくとも一部が、第2の接着材で埋められており、
前記第1の接着材は導電性の第1のフィラーを含み、
前記第2の接着材は絶縁性の第2のフィラーを含
み、
前記第2のフィラーの平均粒子径は、前記第1のフィラーの平均粒子径よりも小さい、電解コンデンサ。
【請求項2】
陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、
前記陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、
前記陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、
前記陰極部と前記陰極リード端子との間に介在し、導電性を有する第1の接着材と、
前記陽極リード端子および前記陰極リード端子の一部を露出させた状態で、前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備え、
前記陰極部と前記陰極リード端子との間において、前記第1の接着材が介在していない隙間の少なくとも一部が、第2の接着材で埋められており、
前記第1の接着材は第1のフィラーを含み、
前記第2の接着材は第2のフィラーを含み、
前記第2のフィラーの平均粒子径は、前記第1のフィラーの平均粒子径よりも小さい、電解コンデンサ。
【請求項3】
前記陰極部の表面は、前記第1の接着材と接触する第1の主面と、前記第1の主面と交差して隣接する第2の主面と、を有し、
前記陰極リード端子は、前記第1の主面に沿って延びてから、前記第2の主面に沿って延びるように折り曲げられており、
前記第2の接着材が、前記陰極リード端子と前記第2の主面との間の隙間の少なくとも一部を埋めている、請求項1
または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記第1の接着材は、前記陰極リード端子と前記第2の主面との間に介在しない、請求項
3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記陽極部は陽極体を有し、
前記陽極体は、弁作用を有する金属粒子の焼結体である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記外装体は、絶縁性の第3のフィラーを含み、
前記第3のフィラーの平均粒子径は、前記陰極部と前記陰極リード端子との間の離間距離よりも大きい、請求項1~
5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子を準備する工程と、
陽極リード端子および陰極リード端子を準備する工程と、
前記陽極部と前記陽極リード端子との電気的接続を形成し、前記陰極部と前記陰極リード端子との電気的接続を形成する工程と、
前記コンデンサ素子を外装体により封止する工程と、を有し、
前記陰極部と前記陰極リード端子との電気的接続は、前記陰極部と前記陰極リード端子との間に導電性の第1の接着材を介在させることで行われ、
前記第1の接着材が介在していない前記陰極部と前記陰極リード端子との間の隙間の少なくとも一部を、第2の接着材で埋める工程をさらに有し、
前記第1の接着材は第1のフィラーを含み、
前記第2の接着材は第2のフィラーを含み、
前記第2のフィラーの平均粒子径は、前記第1のフィラーの平均粒子径よりも小さい、電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、等価直列抵抗(ESR)が小さく、周波数特性が優れているため、様々な電子機器に搭載されている。電解コンデンサは、通常、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子を備える。陽極部は、多孔質の陽極体を含み、陽極体の表面に誘電体層が形成される。誘電体層は、電解質と接触する。電解質として、導電性高分子などの固体電解質を用いた電解コンデンサがある。
【0003】
特許文献1には、陽極体から突出する陽極リード線の根元の周辺領域に絶縁性の保護層を形成するとともに、陰極部と接続する陰極端子および保護層を含むコンデンサ素子の周囲には絶縁性の剥離層を形成した電解コンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体電解質を用いた電解コンデンサの信頼性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面は、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、前記陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、前記陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、前記陰極部と前記陰極リード端子との間に介在し、導電性を有する第1の接着材と、前記陽極リード端子および前記陰極リード端子の一部を露出させた状態で、前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備え、前記陰極部と前記陰極リード端子との間において、前記第1の接着材が介在していない隙間の少なくとも一部が、第2の接着材で埋められている、電解コンデンサに関する。
【0007】
本開示の他の局面は、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子を準備する工程と、陽極リード端子および陰極リード端子を準備する工程と、前記陽極部と前記陽極リード端子との電気的接続を形成し、前記陰極部と前記陰極リード端子との電気的接続を形成する工程と、前記コンデンサ素子を外装体により封止する工程と、を有し、前記陰極部と前記陰極リード端子との電気的接続は、前記陰極部と前記陰極リード端子との間に導電性の第1の接着材を介在させることで行われ、前記第1の接着材が介在していない前記陰極部と前記陰極リード端子との間の隙間の少なくとも一部を、第2の接着材で埋める工程をさらに有する、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
電解コンデンサの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサにおいて、陰極部と陰極リード端子との接続を示す斜視図である。
【
図1B】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサにおいて、陰極部と陰極リード端子との接続を示す断面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサにおいて、陰極部と陰極リード端子との接続の他の例を示す斜視図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサにおいて、陰極部と陰極リード端子との接続の他の例を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[電解コンデンサ]
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサは、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、前記陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、陰極部と陰極リード端子との間に介在し、導電性を有する第1の接着材と、陽極リード端子および陰極リード端子の一部を露出させた状態で、前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備える。
【0011】
第1の接着材には、通常、銀ペーストなどの導電性のペーストが用いられる。第1の接着材は、例えば、ディスペンサ等を用いて、ノズルにより、陰極部または陰極リード端子の上に塗布され得る。この場合、第1の接着材は、陰極部と陰極リード端子とが重ねられる領域のすべてを覆うように塗布されるわけではなく、陰極部と陰極リード端子とが重ねられる領域の一部に第1の接着材が介在しない領域が存在し得る。つまり、陰極部と陰極リード端子との間には、第1の接着材が介在しない隙間が存在し得る。この隙間を外装体により完全に埋めることは難しく、陰極部と陰極リード端子との間に空隙が介在する場合がある。結果、熱応力あるいは外部からの衝撃により、陰極部と陰極リード端子との接着強度が低下し易い。
【0012】
本実施形態の電解コンデンサでは、陰極部と陰極リード端子との間において、第1の接着材が介在していない隙間の少なくとも一部は、第2の接着材で埋められている。第2の接着材により、陰極部と陰極リード端子との接着を強固にすることができる。これにより、熱応力あるいは外部からの衝撃により、陰極部と陰極リード端子との接着部が剥がれることが抑制される。よって、電解コンデンサの信頼性を高めることができる。
【0013】
陰極部の表面は、第1の主面と、第1の主面と交差して隣接する第2の主面とを有していてもよい。陽極体は、通常、直方体の形状を有している。その場合、陰極部も陽極体の直方体の表面に沿って形成され得る。陰極部の第1の主面が第1の接着材と接触するとき、陰極部の第2の主面は、第1の主面に略直交する表面である。
【0014】
陰極リード端子は、第1の主面に沿って延びてから、第2の主面に沿って延びるように折り曲げられていてもよい。この場合、第2の接着材が、陰極リード端子と第2の主面との間の隙間の少なくとも一部を埋めていてもよい。この場合、陰極部と陰極リード端子との接着性がより強固になり、陰極部と陰極リード端子との接着部の剥がれがより顕著に抑制される。
【0015】
第2の接着材は、陰極部と陰極リード端子との隙間に入り込みやすいものが好ましい。この点で、第2の接着材は、フィラーを含まないか、または、フィラー(第2のフィラー)を含む場合であっても、フィラーの平均粒子径は、第1の接着材に含まれ得る導電性フィラー(第1のフィラー)の平均粒子径よりも小さくてもよい。なお、第1の接着材として導電性のペーストを用いる場合、導電性ペーストに含まれる導電性粒子が第1のフィラーに相当し、導電性粒子の平均粒子径が第1のフィラーの平均粒子径に相当し得る。
【0016】
第1の接着材が第1のフィラーを含む場合、第1のフィラーの平均粒子径D1は、0.1μm以上であってよく、1μm以上であってもよい。平均粒子径D1は、100μm以下であってよく、20μm以下であってもよい。平均粒子径D1は、0.1μm以上100μm以下であってもよい。
【0017】
これに対し、第2の接着材が第2のフィラーを含む場合、第2のフィラーの平均粒子径D2は、10nm以上であってよく、50nm以上であってもよい。平均粒子径D2は、10μm以下であってよく、5μm以下であってよく、1μm以下であってもよい。平均粒子径D2は、例えば、10nm以上10μm以下であってもよい。
【0018】
第1のフィラーの平均粒子径D1に対する第2のフィラーの平均粒子径D2の比D2/D1は、1未満であってよい。D2/D1は、0.5以下であってもよく、0.1以下であってもよい。D2/D1は、0.0005以上であってもよく、0.001以上であってもよい。
【0019】
外装体が、絶縁性のフィラー(第3のフィラー)を含むものであってもよい。この場合、第3のフィラーの平均粒子径は、陰極部と陰極リード端子との間の離間距離よりも大きいものであってもよい。この場合、第3のフィラーは陰極部と陰極リード端子との間の隙間に入り込み難い。このため、陰極部と陰極リード端子との間の隙間が外装体で埋められ難く、接着強度が低下し易い。しかしながら、第2の接着材を用いることにより、平均粒子径の大きな第3のフィラーを含む外装体を用いる場合においても、接着強度の低下、および陰極部と陰極リード端子との接着の剥がれを防止できる。なお、陰極部と陰極リード端子との間の離間距離は、複数(例えば、10箇所以上)の位置における平均を意味する。
【0020】
なお、第1の接着材、第2の接着材、および、外装体に含まれ得る各フィラーの平均粒子径は、電解コンデンサの所定の領域における断面写真を画像解析することにより求められる。走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)により得られる断面の拡大写真において、フィラーの輪郭線より形成される閉曲線内の面積に等しい円(以下において、「相当円」という)の直径を求め、フィラーの粒子径とする。複数のフィラー(例えば、10個以上)について、相当円を求める。相当円の平均値をフィラーの平均粒子径とする。フィラーが金属粒子であり、金属粒子同士が凝集、融着または焼結により一体化していると認められる場合、凝集、融着または焼結した複数の金属粒子全体の面積を金属粒子の数で除した値を、金属粒子1つの面積とみなして、これらフィラーの粒子径を算出すればよい。
【0021】
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの構成について、適宜図面を参照しながら説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1Aおよび
図1Bは、本実施形態の電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子と陰極リード端子を抜き出して表示した模式図であり、陰極部と陰極リード端子との接続の様子を示すものである。
図1Aは斜視図であり、
図1Bは横方向(陰極リード端子の幅方向)から見た断面図である。
【0023】
図1Aおよび
図1Bにおいて、コンデンサ素子10の陰極部は、複数の主面を有し、このうち下側に位置する主面(第1の主面)S1において、陰極部7と陰極リード端子14との接着がされている。陰極部7と陰極リード端子14とは、導電性の第1の接着材8を介して接続されている。しかしながら、第1の接着材8は、陰極部7の表面である第1の主面S1の陰極リード端子14と対向する領域の全面には形成されていない。第1の主面S1の陰極リード端子14と対向する領域内にあって、第1の接着材8が形成されていない領域の一部に、第2の接着材9が形成されている。第2の接着材9は、第1の接着材8を囲むように形成されている。
【0024】
陰極リード端子14は、陰極部7の第1の主面S1に沿って延びてから、屈曲して第1の主面S1から直立するように延び、さらに、第1の主面S1から離間した位置から屈曲して、第1の主面S1に平行に、コンデンサ素子10から遠ざかる方向に延びている。陰極リード端子14の第1の主面S1から離間した位置から屈曲して延びる部分は、外部端子と接続され得る。
【0025】
コンデンサ素子10から、陽極ワイヤ2が突出している。陽極ワイヤ2は、陽極リード端子(不図示)と接続され得る。
【0026】
図2Aおよび
図2Bは、本実施形態の電解コンデンサにおいて、陰極部と陰極リード端子との接続の他の例を示す模式図である。
図1Aおよび
図1Bと同様、コンデンサ素子と陰極リード端子を抜き出して表示している。
図2Aは斜視図であり、
図2Bは横方向(陰極リード端子の幅方向)から見た断面図である。
【0027】
図2Aおよび
図2Bでは、コンデンサ素子10の陰極部7は、複数の主面を有し、このうち上側に位置する主面(第1の主面)S1において、陰極部7と陰極リード端子14との接着がされている。陰極部7と陰極リード端子14とは、導電性の第1の接着材8を介して接続されている。陰極部7の第1の主面S1の陰極リード端子14と対向する領域には、第1の接着材8が形成されていない領域を有する。第1の主面S1の陰極リード端子14と対向する領域内にあって、第1の接着材8が形成されていない領域の一部に、第2の接着材9が形成されている。
【0028】
陰極リード端子14は、陰極部7の第1の主面S1に沿って延びてから、屈曲して第2の主面S2に沿って延びている。陰極リード端子14と第2の主面S2との間には、第2の接着材9が介在している。陰極リード端子14は、第2の主面S2に沿って延びた後、さらに屈曲して、第1の主面S1に平行に、第2の主面S2から直立するように延びている。陰極リード端子14の第2の主面S2から直立するように延びた部分の一部は、外装体から露出して、外部端子と接続される。
【0029】
図3は、本実施形態に係る電解コンデンサ20の断面模式図である。
図3において、陰極部7と陰極リード端子14とは、
図2Aおよび
図2Bに示す構成で配置され、電気的に接続されている。
【0030】
電解コンデンサ20は、陽極部6および陰極部7を有するコンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を封止する外装体11と、陽極部6と電気的に接続し、かつ、外装体11から一部が露出する陽極リード端子13と、陰極部7と電気的に接続し、かつ、外装体11から一部が露出する陰極リード端子14と、を備えている。陽極部6は、陽極体1と陽極ワイヤ2とを有する。陽極体の表面に誘電体層3が形成されている。陰極部7は、誘電体層3の少なくとも一部を覆う固体電解質層4と、固体電解質層4の表面を覆う陰極層5とを有する。
【0031】
<コンデンサ素子>
以下、コンデンサ素子10について、電解質として固体電解質層を備える場合を例に挙げて、詳細に説明する。
【0032】
陽極部6は、陽極体1と、陽極体1の一面から延出して陽極リード端子13と電気的に接続する陽極ワイヤ2と、を有する。
陽極体1は、例えば、金属粒子を焼結して得られる直方体の多孔質焼結体である。上記金属粒子として、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などの弁作用金属の粒子が用いられる。陽極体1には、1種または2種以上の金属粒子が用いられる。金属粒子は、2種以上の金属からなる合金であってもよい。例えば、弁作用金属と、ケイ素、バナジウム、ホウ素等とを含む合金を用いることができる。また、弁作用金属と窒素等の典型元素とを含む化合物を用いてもよい。弁作用金属の合金は、弁作用金属を主成分とし、例えば、弁作用金属を50原子%以上含む。
【0033】
陽極ワイヤ2は、導電性材料から構成されている。陽極ワイヤ2の材料は特に限定されない。陽極体1および陽極ワイヤ2を構成する材料は、同種であってもよいし、異種であってもよい。陽極ワイヤ2は、陽極体1の一面から陽極体1の内部へ埋設された第一部分2aと、陽極体1の上記一面から延出した第二部分2bと、を有する。
【0034】
陽極部6は、例えば、第一部分2aを上記金属粒子の粉体中に埋め込んだ状態で直方体状に加圧成形し、焼結することにより作製される。これにより、陽極体1の一面から、陽極ワイヤ2の第二部分2bが植立するように引き出される。第二部分2bは、溶接等により、陽極リード端子13と接合されて、陽極ワイヤ2と陽極リード端子13とが電気的に接続する。溶接の方法は特に限定されず、抵抗溶接、レーザー溶接等が挙げられる。
【0035】
陽極体1の表面には、誘電体層3が形成されている。誘電体層3は、例えば、金属酸化物から構成されている。陽極体1の表面に金属酸化物を含む層を形成する方法として、例えば、化成液中に陽極体1を浸漬して陽極体1の表面を陽極酸化する方法や、陽極体1を、酸素を含む雰囲気下で加熱する方法が挙げられる。誘電体層3は、上記金属酸化物を含む層に限定されず、絶縁性を有していればよい。
【0036】
(陰極部)
陰極部7は、固体電解質層4と、固体電解質層4を覆う陰極層5とを有している。固体電解質層4は、誘電体層3の少なくとも一部を覆うように形成されている。
【0037】
固体電解質層4には、例えば、マンガン化合物や導電性高分子が用いられる。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、あるいは、これらの高分子の誘導体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、導電性高分子は、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。導電性に優れる点で、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールであってもよい。特に、撥水性に優れる点で、ポリピロールであってもよい。
【0038】
上記導電性高分子を含む固体電解質層4は、例えば、原料モノマーを誘電体層3上で重合することにより、形成される。あるいは、上記導電性高分子を含んだ液を誘電体層3に塗布することにより形成される。固体電解質層4は、1層または2層以上の固体電解質層から構成されている。固体電解質層4が2層以上から構成されている場合、各層に用いられる導電性高分子の組成や形成方法(重合方法)等は異なっていてもよい。
【0039】
導電性高分子を形成するための重合液、導電性高分子の溶液または分散液には、導電性高分子の導電性を向上させるために、様々なドーパントを添加してもよい。ドーパントは、特に限定されないが、ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、などが挙げられる。
【0040】
陰極層5は、例えば、固体電解質層4を覆うように形成されたカーボン層5aと、カーボン層5aの表面に形成された金属ペースト層5bと、を有している。カーボン層5aは、黒鉛等の導電性炭素材料と樹脂を含む。金属ペースト層5bは、例えば、金属粒子(例えば、銀)と樹脂とを含む。なお、陰極層5の構成は、この構成に限定されない。陰極層5の構成は、集電機能を有する構成であればよい。
【0041】
<陽極リード端子>
陽極リード端子13は、陽極ワイヤ2の第二部分2bを介して、陽極体1と電気的に接続している。陽極リード端子13の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されない。陽極リード端子13は、例えば銅等の金属であってもよいし、非金属であってもよい。その形状は平板状であれば、特に限定されない。陽極リード端子13の厚み(陽極リード端子13の主面間の距離)は、低背化の観点から、25μm以上、200μm以下であってよく、25μm以上、100μm以下であってよい。
【0042】
陽極リード端子13の一端は、導電性接着材やはんだにより、陽極ワイヤ2に接合されてもよいし、抵抗溶接やレーザ溶接により、陽極ワイヤ2に接合されてもよい。陽極リード端子13の他方の端部は、外装体11の外部へと導出されて、外装体11から露出している。導電性接着材は、例えば後述する熱硬化性樹脂と炭素粒子や金属粒子との混合物である。
【0043】
<陰極リード端子>
陰極リード端子14は、接合部14aにおいて陰極層5(陰極部7)と電気的に接続している。接合部14aは、陰極層5と陰極層5に接合された陰極リード端子14とを、陰極層5の法線方向からみたとき、陰極リード端子14の陰極層5に重複する部分である。
【0044】
陰極リード端子14は、導電性の第1の接着材8を介して、陰極層5に接合される。陰極リード端子14の一方の端部は、例えば接合部14aの一部を構成しており、外装体11の内部に配置される。陰極リード端子14の他方の端部は、外部へと導出されている。そのため、陰極リード端子14の他方の端部を含む一部は、外装体11から露出している。
【0045】
接合部14aの一部において、第1の接着材8が、陰極層5と陰極リード端子14の間に形成されている。接合部14aの残部の少なくとも一部には、第2の接着材9が、陰極層5と陰極リード端子14の間に形成されている。
【0046】
陰極リード端子14は、陰極層5の第1の主面S1に沿って延びてから、第1の主面S1に隣接する第2の主面S2に沿うように略垂直に折り曲げられている。陰極リード端子14は、さらに、第2の主面S2から直立するように折り曲げられて、外装体11から露出する外部へと導出されている。第2の主面S2と陰極層5との間にも、第2の接着材9が介在している。陰極リード端子14の外装体11から露出する部分は、さらに、外装体11に沿って折り曲げられている。
【0047】
陰極リード端子14の材質も、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば、特に限定されない。陰極リード端子14は、例えば銅等の金属であってもよいし、非金属であってもよい。その形状も特に限定されず、例えば、長尺かつ平板状である。陰極リード端子14の厚みは、低背化の観点から、25μm以上200μm以下であってもよく、25μm以上100μm以下であってもよい。
【0048】
<第1および第2の接着材>
第1の接着材8は、例えば、導電性のペーストから形成される。導電性のペーストは、導電性粒子、バインダ樹脂、分散媒、添加剤等を含んでもよい。分散媒としては、水、有機媒体、およびこれらの混合物などが挙げられる。乾燥により分散媒を除去するとともに、バインダ樹脂を硬化させることによって、第1の接着材8が形成され得る。導電性粒子としては、金属粒子、導電性の炭素粒子などが用いられ得る。金属粒子としては、例えば、銀、銅、ニッケルなどを含んでいてもよい。
【0049】
第2の接着材9は、例えば、バインダ樹脂と分散媒を含む分散体を、第1の接着材8が形成されていない第1の主面S1と陰極リード端子14との間の隙間、および第2の主面S2と陰極リード端子14との間の隙間に毛細管現象を利用して浸透させた後、乾燥により分散媒を除去し、バインダ樹脂を硬化させることで形成され得る。僅かな隙間にも第2の接着材を形成し易い点から、分散体は、硬化前において粘度が適度に低いものが好ましい。この点で、分散体はフィラーを含まないか、またはフィラーを含んでいてもフィラーの平均粒子径は小さい方がよい。
【0050】
第1の接着材8が、フィラー(第1のフィラー)を含んでいてもよい。なお、第1の接着材8を導電性のペーストから形成する場合、ペーストに含まれる導電性粒子が第1のフィラーに相当し得る。第2の接着材9がフィラー(第2のフィラー)を含む場合、第2のフィラーの平均粒子径D2を、第1の接着材8に含まれる第1のフィラーの平均粒子径D1よりも小さくするとよい。第2のフィラーとしては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、カーボン粒子等が挙げられる。銀、銅、ニッケルなどの金属粒子を用いてもよい。第2のフィラーは、第2の接着材9を第1の主面S1および/または第2の主面S2と陰極リード端子14との間の隙間に充填する際に、陽極部と陰極部との境界近傍に第2の接着材9が付着してショート等の問題を生じさせることがない点で、絶縁性の材料が好ましい。
【0051】
第1の接着材8および第2の接着材9において、バインダ樹脂は特に制限されず、公知のバインダ樹脂を用いることができる。バインダ樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(ポリエステル樹脂など)、熱硬化性樹脂(ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂など)等が挙げられる。
【0052】
<外装体>
外装体11は、陽極リード端子13と陰極リード端子14とを電気的に絶縁するために設けられており、絶縁性の材料(外装体材料)から構成されている。外装体材料は、例えば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0053】
≪電解コンデンサの製造方法≫
本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法は、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子を準備する工程と、陽極リード端子および陰極リード端子を準備する工程と、陽極部と陽極リード端子との電気的接続を形成し、陰極部と陰極リード端子との電気的接続を形成する工程と、コンデンサ素子を外装体により封止する工程と、を有する。ここで、陰極部と陰極リード端子との電気的接続は、陰極部と前記陰極リード端子との間に導電性の第1の接着材を介在させることで行われる。製造方法は、第1の接着材が介在していない陰極部と陰極リード端子との間の隙間の少なくとも一部を、第2の接着材で埋める工程をさらに有する。
【0054】
以下に、
図3に示す電解コンデンサ20の製造を例として、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例を説明する。
【0055】
(1)準備工程
先ず、コンデンサ素子10を準備する。
弁作用金属粒子と陽極ワイヤ2とを、第一部分2aが弁作用金属粒子に埋め込まれるように型に入れ、加圧成形した後、焼結することにより、弁作用金属の多孔体である陽極体1を含む陽極部6を得る。陽極ワイヤの第一部分2aは、多孔質焼結体の一面からその内部に埋設されている。加圧成形の際の圧力は特に限定されない。焼結は、減圧下で行なうことが好ましい。弁作用金属粒子には、必要に応じて、ポリアクリルカーボネート等のバインダを混合してもよい。
【0056】
次に、陽極体1を化成処理し、陽極体1の少なくとも一部を誘電体層3で覆う。具体的には、電解水溶液(例えば、リン酸水溶液)が満たされた化成槽に、陽極体1を浸漬し、陽極ワイヤ2の第二部分2bを化成槽の陽極体に接続して、陽極酸化を行うことにより、多孔質部分の表面に弁作用金属の酸化被膜からなる誘電体層3を形成することができる。電解水溶液としては、リン酸水溶液に限らず、硝酸、酢酸、硫酸などを用いることができる。
【0057】
続いて、誘電体層3の少なくとも一部を固体電解質層4で覆う。これにより、陽極体1と、陽極体の少なくとも一部を覆う誘電体層3と、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層4と、を含むコンデンサ素子10を得る。
導電性高分子を含む固体電解質層4は、例えば、誘電体層3が形成された陽極体1に、モノマーやオリゴマーを含浸させ、その後、化学重合や電解重合によりモノマーやオリゴマーを重合させる方法、あるいは、誘電体層3が形成された陽極体1に、導電性高分子の溶液または分散液を含浸し、乾燥させることにより、誘電体層3の少なくとも一部に形成される。
【0058】
最後に、固体電解質層4の表面に、カーボンペーストおよび金属ペーストを順次、塗布することにより、カーボン層5aと金属ペースト層5bとで構成される陰極層5を形成する。陰極層5の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
以上の方法により、陽極部6および陰極部7を備えるコンデンサ素子が得られる。
【0059】
(2)リード端子接合工程
次に、陽極リード端子13と陰極リード端子14とを準備する。陰極リード端子14は、陰極部の第1の主面S1および第2の主面S2に沿って配置されるように、予めクランク形状に折り曲げておく。陽極体1から植立する陽極ワイヤ2の第二部分2bを、レーザー溶接や抵抗溶接などにより、陽極リード端子13と接合する。また、陰極層5の第1の主面S1に第1の接着材8を塗布した後、陰極リード端子14を、第1の接着材8を介して陰極部7に接合する。これにより、陽極部6は陽極リード端子13と電気的に接続され、陰極部7は、陰極リード端子14と電気的に接続される。
【0060】
その後、さらに、流動性を有する状態の第2の接着材9を、陰極リード端子14と第1の主面との間の隙間、および、陰極リード端子14と第2の主面との間の隙間に流し入れる。第2の接着材9は、毛細管現象により隙間内に浸透し得る。その後、第2の接着材9を硬化させ、各隙間の少なくとも一部を第2の接着材9で埋める。
【0061】
(3)封止工程
続いて、コンデンサ素子10および外装体11の材料(例えば、未硬化の熱硬化性樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物)を金型に収容し、トランスファー成型法、圧縮成型法等により、コンデンサ素子10を封止する。成型の条件は特に限定されず、使用される熱硬化性樹脂の硬化温度等を考慮して、適宜、時間および温度条件を設定すればよい。このとき、陽極リード端子13および陰極リード端子14の一部を金型から露出させる。成型の条件は特に限定されず、使用される熱硬化性樹脂の硬化温度等を考慮して、適宜、時間および温度条件を設定すればよい。
【0062】
最後に、陽極リード端子13および陰極リード端子14の露出部分を、外装体11に沿って折り曲げる。これにより、陽極リード端子13および陰極リード端子14の一部が外装体11の搭載面に配置される。
以上の方法により、電解コンデンサ20が製造される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電解コンデンサに利用可能であり、好適には、多孔体を陽極体に用いる電解コンデンサに利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
20:電解コンデンサ
10:コンデンサ素子
1:陽極体
2:陽極ワイヤ
2a:第一部分
2b:第二部分
3:誘電体層
4:固体電解質層
5:陰極層
5a:カーボン層
5b:金属ペースト層
6:陽極部
7:陰極部
8:第1の接着材
9:第2の接着材
11:外装体
13:陽極リード端子
14:陰極リード端子
14a:接合部
S1:第1の主面
S2:第2の主面