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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ダムの洪水吐き装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 8/06 20060101AFI20231110BHJP
   E02B 7/42 20060101ALN20231110BHJP
   E02B 7/28 20060101ALN20231110BHJP
【FI】
E02B8/06
E02B7/42
E02B7/28
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019209304
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021080746
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】594135151
【氏名又は名称】一般財団法人ダム技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】000241290
【氏名又は名称】豊国工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591091087
【氏名又は名称】株式会社建設技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大井 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】泉 倫光
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127162(JP,A)
【文献】特開2010-144359(JP,A)
【文献】特開2003-253657(JP,A)
【文献】特開昭61-246410(JP,A)
【文献】特開2019-124069(JP,A)
【文献】特開2000-297420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 8/06
E02B 7/42
E02B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤体の頂部に天端ゲートを備えるダムに付属され、前記天端ゲートでは吐き出しきれない水を吐水するダムの洪水吐き装置であって、
前記天端ゲートの横位置にて前記堤体に設けられるサイホン管挿入部と、このサイホン管挿入部に挿入されるサイホン管と、このサイホン管に取付けられるゲートと、このゲートを開閉制御する制御部とからなり、
前記サイホン管は、逆U字形状を呈し前記サイホン管挿入部に埋設される中間部と、この中間部の一端から延びてダム湖の表層に没して前記ダム湖の表層の水を取水する取水部と、前記堤体の下流側面に沿って前記中間部の他端から延びて吐水する吐水部とからなり、
前記ゲートは、前記吐水部の出口に設けられ、
ダム湖の水位を計測する水位計を備え、
前記制御部は、前記水位計の水位情報に基づいて、前記ダム湖の水が前記サイホン管を自由越流状態で流れるときに前記ゲートを閉じて、前記吐水部が満水又はほぼ満水になったら前記ゲートを開いて大きな吐水能力が得られるサイホン流れを形成し、乱れのないサイホン流れを得ることを特徴とするダムの洪水吐き装置。
【請求項2】
堤体の頂部に天端ゲートを備えるダムに付属され、前記天端ゲートでは吐き出しきれない水を吐水するダムの洪水吐き装置であって、
前記天端ゲートの横位置にて前記堤体に設けられるサイホン管挿入部と、このサイホン管挿入部に挿入されるサイホン管と、このサイホン管に取付けられるゲートと、このゲートを開閉制御する制御部とからなり、
前記サイホン管は、逆U字形状を呈し前記サイホン管挿入部に埋設される中間部と、この中間部の一端から延びてダム湖の表層に没して前記ダム湖の表層の水を取水する取水部と、前記堤体の下流側面に沿って前記中間部の他端から延びて吐水する吐水部とからなり、
隣の前記天端ゲートからの自然越流に前記サイホン管からのサイホン流れが衝突するように、前記吐水部が曲げられ、且つ前記吐水部の出口が前記堤体の幅方向中央に向けられており、
前記ゲートは、前記吐水部の出口に設けられ、
前記制御部は、前記ダム湖の水が前記サイホン管を自由越流状態で流れるときに前記ゲートを閉じて、前記吐水部が満水又はほぼ満水になったら前記ゲートを開いてサイホン流れを形成することを特徴とするダムの洪水吐き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムの洪水吐き装置に関する。なお、「洪水」とは、狭義の洪水ではなく、大量の水がダム湖に流入することを言い、「洪水吐き」とは、ダム湖の水を大量に下流へ吐水する施設のことを言う。
【背景技術】
【0002】
大量の水がダム湖に流入してきたとき、従来のダムでは、堤体の頂部に設けた天端ゲートを開いて、ダム湖の水位上昇を抑える。
しかし、近年、地球環境の変化に伴って、数百年に一度の大豪雨が発生するようになってきた。このような大豪雨の場合、天端ゲートによる吐水では吐水能力が不足することが想定され、その対策が種々提案されてきた(例えば、特許文献1(図1図2)参照)。
【0003】
特許文献1を図10に基づいて説明する。
図10(a)は従来のダムの要部断面図であり、堤体100の頂部に主ゲート101が設けられている。主ゲート101を開くことで、ダム湖103の水位を下げることができる。呑口(のみぐち)の高さ寸法は、Aである。
特許文献1の技術によれば、想像線で示す掘削線104まで、堤体100の頂部を削る。
【0004】
図10(b)は従来のダムの洪水吐装置を説明する図であり、呑口の高さは、Aより大きなBになった。そして、掘削線104に沿って、堤体100に副ゲート105を追加する。主ゲート101と副ゲート105とを開くことで、図10(a)より大量の水106を吐水することができるようになった。
【0005】
しかし、本発明者らが検討したところ、特許文献1の技術には次に述べる問題点があることが判明した。
図10(b)で示される水106は、自然越流である。自然越流で得られる流速V1は1~5m/sである。
【0006】
ところが、数百年に一度の大豪雨に対応するには、流速が10m/s以上であることが求められる。
すなわち、特許文献1で開示される洪水吐き装置では、吐水能力が不十分である。
【0007】
そこで、吐水能力が十分に大きなダムの洪水吐き装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-253657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、吐水能力が十分に大きなダムの洪水吐き装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、堤体の頂部に天端ゲートを備えるダムに付属され、前記天端ゲートでは吐き出しきれない水を吐水するダムの洪水吐き装置であって、
前記天端ゲートの横位置にて前記堤体に設けられるサイホン管挿入部と、このサイホン管挿入部に挿入されるサイホン管と、このサイホン管に取付けられるゲートと、このゲートを開閉制御する制御部とからなり、
前記サイホン管は、逆U字形状を呈し前記サイホン管挿入部に埋設される中間部と、この中間部の一端から延びてダム湖の表層に没して前記ダム湖の表層の水を取水する取水部と、前記堤体の下流側面に沿って前記中間部の他端から延びて吐水する吐水部とからなり、
前記ゲートは、前記吐水部の出口に設けられ、
ダム湖の水位を計測する水位計を備え、
前記制御部は、前記水位計の水位情報に基づいて、前記ダム湖の水が前記サイホン管を自由越流状態で流れるときに前記ゲートを閉じて、前記吐水部が満水又はほぼ満水になったら前記ゲートを開いて大きな吐水能力が得られるサイホン流れを形成し、乱れのないサイホン流れを得ることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、堤体の頂部に天端ゲートを備えるダムに付属され、前記天端ゲートでは吐き出しきれない水を吐水するダムの洪水吐き装置であって、
前記天端ゲートの横位置にて前記堤体に設けられるサイホン管挿入部と、このサイホン管挿入部に挿入されるサイホン管と、このサイホン管に取付けられるゲートと、このゲートを開閉制御する制御部とからなり、
前記サイホン管は、逆U字形状を呈し前記サイホン管挿入部に埋設される中間部と、この中間部の一端から延びてダム湖の表層に没して前記ダム湖の表層の水を取水する取水部と、前記堤体の下流側面に沿って前記中間部の他端から延びて吐水する吐水部とからなり、
隣の前記天端ゲートからの自然越流に前記サイホン管からのサイホン流れが衝突するように、前記吐水部が曲げられ、且つ前記吐水部の出口が前記堤体の幅方向中央に向けられており、
前記ゲートは、前記吐水部の出口に設けられ、
前記制御部は、前記ダム湖の水が前記サイホン管を自由越流状態で流れるときに前記ゲートを閉じて、前記吐水部が満水又はほぼ満水になったら前記ゲートを開いてサイホン流れを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、天端ゲートに加えて、堤体にサイホン管を設ける。サイホン流れであれば、流速は10m/s以上が得られる。
天端ゲートによる吐水(自然越流)とサイホン管(サイホン流れ)による吐水を合計すると、十分に大きな吐水能力が得られる。
よって、本発明により、吐水能力が十分に大きなダムの洪水吐き装置が提供される。
【0013】
また、請求項1に係る発明では、サイホン管にゲートが取付けられており、制御部でゲートの開度制御を実施することで、ダムからの放水量の制御が可能となる。
【0014】
請求項2に係る発明では、吐水部の出口が堤体の幅方向中央に向かうように、吐水部が曲げられている。天端ゲートを開くと自然越流が得られる。吐水部が曲げられているため、サイホン管の吐水が自然越流に衝突して流出エネルギーが減衰されると共に自然越流も減衰されるという相乗効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】下流側から見たダムの正面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3】天端ゲートの作用図である。
図4図1の4-4線断面図である。
図5】サイホン管の作用図であり、(a)は自然越流、(b)はゲート閉じ、(c)はサイホン流れを説明する図である。
図6】曲がっている吐水部の作用を説明する図である。
図7】サイホン管挿入部の変更例を説明する図である。
図8】サイホン管挿入部の更なる変更例を説明する図である。
図9】ゲートの更なる作用を説明する図である。
図10】(a)は従来のダムの要部断面図、(b)は従来のダムの洪水吐装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例
【0017】
図1に示すように、ダム10は、堤体11の頂部12に、複数(この例では3基)の天端ゲート13を備え、ダムの洪水吐き装置20(以下、洪水吐き装置20と略記する。)を2基備えている。天端ゲート13はクレストゲートとも呼ばれる。
【0018】
洪水吐き装置20の主要素はサイホン管21であり、このサイホン管21は、天端ゲート13の横位置にて堤体11に設けられたサイホン管挿入部14に挿入される。
サイホン管挿入部14は、この実施例では、堤体11の頂部12に設ける開口部14Aである。
【0019】
開口部14Aの開口寸法は、天端ゲート13の開口寸法に対して、同じか、大きく設定することが望ましいが、小さく設定することを妨げるものではない。
開口寸法が異なるため、「天端ゲート13の横位置」とは、「天端ゲート13のほぼ横位置」を含む。すなわち、天端ゲート13と開口部14A(サイホン管挿入部14)は左右に並んでいればよく、高さ位置に差があることは差し支えない。
【0020】
図2に示すように、天端ゲート13は、閉じられており、ダム湖15の水位16は、堤体11の頂部12にある。水位16がこれ以上上昇すると、天端ゲート13を開く。なお、天端ゲート13は、スライドゲートに限定されるものではなく、ラジアルゲートでもよく、種類や形式は問わない。
【0021】
図3に示すように、ダム湖15の水は、頂部12を越えて溢れ出る。すなわち、自然越流17が得られる。
【0022】
自然越流17では、頂部12における下向き速度はほぼゼロである。位置のエネルギーが速度のエネルギーに変換されるため、下に行くほど流速が大きくなる。自然越流17は連続流れであるため、自然越流17の厚さWは、下ほど小さくなる。自然越流17の流速V1は、1~5m/s程度ある。
【0023】
図4に示すように、洪水吐き装置20は、サイホン管挿入部14に挿入されるサイホン管21と、このサイホン管21の出口に設けられるゲート30と、このゲート30を開閉制御する制御部40とからなる。加えて、ダム湖の水位を計測する水位計41を天端橋梁18から下げ、水位計41で計測した水位情報を制御部40へ送るようにした。
【0024】
サイホン管21は、逆U字形状を呈しサイホン管挿入部14に埋設される中間部22と、この中間部22の一端から延びてダム湖15に没しダム湖15の水を取水する取水部23と、堤体11の下流側面11aに沿って中間部22の他端から延びて吐水する吐水部24とからなる。
【0025】
ゲート30は、好ましくは、回転支軸31より弁体32が下流側にある引張り型ラジアルゲートとする。図1に示すように、回転支軸31、31から側板33、33が延ばされ、これらの側板33、33の先端に弁体32が架け渡される。弁体32は、液圧シリンダ34で駆動され、回転支軸31を中心にして回される。液圧シリンダ34は、油圧シリンダや水圧シリンダが好ましい。
なお、ゲート30は、ラジアルゲートに限定されるものではなく、スライドゲートであってもよく、種類や形式は問わない。
【0026】
弁体32に水圧が掛ると、側板33、33に引張り力が掛る。引張り力の利点を説明する。
仮に、引張り力ではなく、圧縮力を受けると鋼板は座屈しやすい。圧縮力を受けるときは、鋼板を厚くして座屈に耐えるようにする。側板33は重くなる。
対して、引張り力を受けるときは、厚くする必要がなく、側板33の軽量化が図れる。
【0027】
以上に説明した洪水吐き装置20の作用を、図5に基づいて説明する。
図5(a)では、ダム湖15の水位16は頂部12より幾らか上にある。制御部(図4、符号40)は水位計41の水位情報に基づいて、ゲート30を開けておく。すると、サイホン管21内に自然越流17が形成される。
【0028】
大豪雨により、水位16が更に上昇する。水位16がサイホン管21の最高位置25に近づいたらゲート30を閉める。ゲート30を閉じている過程で、自然越流17がサイホン管21に溜まる。この溜まり量は時間とともに増加し、サイホン管21が満水に近づく。
【0029】
すると、図5(b)に示すように、吐水部24が満水又はほぼ満水になる。ほぼ満水とは、逆U字形状を呈する中間部22に空気26が残留する形態を言う。サイホン管21が水でほぼ満たされたら、制御部(図4、符号40)はゲート30を開く。
すると、サイホン管21に溜まっていた水が流動する。この流動により、空気26の一部(又は全部)が排出されることが期待される。
【0030】
すると、図5(c)に示すように、サイホン管21にサイホン流れ27が形成される。サイホン流れ27は、管内流速V2が10m/s以上になる。
以上により、吐水能力が十分に大きな洪水吐き装置20が提供される。
【0031】
大量吐水により、ダム湖15の水位16が下がる。水位16が取水部23の入口より下がると、空気が流入して、サイホン流れ27が崩壊する。次に、水位16が上がると、図5(a)となる。
【0032】
次に、曲がっている吐水部24の作用を、図6に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、サイホン管21はストレート形状であってもよい。ただし、天端ゲート13からの自然越流17に、ほぼ平行に、サイホン流れ27が形成される。サイホン流れ27は、流速がV2が10m/s以上になるために、自然越流17に比較して、速度エネルギーが格段に大きく、一定期間経過後に落下点に穴43ができる。
【0033】
図6(b)に示すように、サイホン管21の吐水部24が堤体11の幅方向中央へ曲がっていると、サイホン流れ27は、隣の自然越流17に衝突し、合体することが期待される。するとサイホン流れ27の勢いが削がれて、落下点に穴ができにくくなり、好ましい。
さらには、吐水部24が曲げられているため、サイホン管21の吐水が自然越流17に衝突して流出エネルギーが減衰されると共に自然越流17も減衰されるという相乗効果が得られる。
【0034】
図1及び図4では、サイホン管挿入部14は、開口部14Aとしたが、サイホン管挿入部14は、開口部14Aに限定されない。その具体例を図7図8に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、サイホン管挿入部14は、堤体11に開削した堤頂凹部14Bであってもよい。
図7(b)に示すように、堤頂凹部14Bにサイホン管21を取付け(落とし込み)、堤頂凹部14Bの余剰部分をコンクリート44で埋める。
【0035】
なお、堤頂凹部14Bを浅くして、図7(c)に示すように、コンクリート44を省いてもよい。
【0036】
図8(a)に示すように、堤体11に、クレストゲートと呼ばれる天端ゲート13が設けられている。
この天端ゲート13を利用して、図8(b)に示すように、天端ゲート13にサイホン管21を取付けてもよい。
【0037】
以上に説明したように、本発明のサイホン管挿入部14は、開口部14A(図1)、堤頂凹部14B(図7)、天端ゲート13(図8)の何れでもよく、又はこれに類するものであればよい。
すなわち、本発明のサイホン管挿入部14は、要はサイホン管21が挿入できればよく、形態は実施例に限定されない。
【0038】
次に、ゲート30の更なる作用を、図9に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、ゲート30を全開にした場合に、条件によっては、サイホン管21の内圧が低下して、出口から空気26が侵入することがある。空気26が侵入すると、サイホン流れ27が乱れ、流速が低下する。
【0039】
その場合は、図9(b)に示すように、制御部(図4、符号40)にて、ゲート30を少し閉じる。すると、サイホン管21の内圧が上昇し、空気26の侵入を防ぐことができる。結果、乱れのないサイホン流れ27が得られ、流速の低下が回避できる。
【0040】
尚、本発明は、新設のダムの他、既設のダムにも適用できる。すなわち、既設のダムの体にサイホン管挿入部14を開け、このサイホン管挿入部14にサイホン管21を取付ければよい。これにより、既設のダムにおける放流能力の増加を図ることができる。

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、洪水対策や放流能力増加が要求されるダムに好適である。
【符号の説明】
【0042】
10…ダム、11…体、12…頂部、13…天端ゲート、14…サイホン管挿入部、15…ダム湖、16…ダム湖の水位、17…自然越流、20…ダムの洪水吐き装置、21…サイホン管、22…中間部、23…取水部、24…吐水部、27…サイホン流れ、30…ゲート、40…制御部、V1…自然越流での流速、V2…サイホン流れでの流速。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10