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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ロボットシステムおよびロボットセル
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
B25J5/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019214948
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021084178
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518321521
【氏名又は名称】株式会社低炭素ファシリティ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉桑 栄二
(72)【発明者】
【氏名】辻森 俊行
(72)【発明者】
【氏名】山根 秀士
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 祥一
(72)【発明者】
【氏名】岡嵜 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】北口 亮一
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 勇一
(72)【発明者】
【氏名】星 昌良
(72)【発明者】
【氏名】高松 厚博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅光
(72)【発明者】
【氏名】松井 繁朋
(72)【発明者】
【氏名】若山 弘
(72)【発明者】
【氏名】松島 幹治
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0226341(US,A1)
【文献】特表2016-508474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0080322(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0326576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00-19/02
B65G 1/00-61/00
E21D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面を有し、自動的に走行する無人搬送車と、
前記支持面に載置される座面、前記座面よりも下方に突出して地面に接する接地部、多関節アーム、前記多関節アームの動作を制御するロボットコントローラ、および、少なくとも前記ロボットコントローラの電源としてのロボットバッテリを有するロボットセルと、
前記座面が前記支持面に載置され且つ前記接地部が地面から離れた可搬状態と、前記座面が前記支持面から離れて前記接地部が地面に接し、前記ロボットセルが前記無人搬送車から分離された設置状態とを切り換える切換え機構と、を備え
前記ロボットセルが、前記座面が前記支持面に載置されているか否かを検出する載置検出器を更に有し、
前記ロボットコントローラは、
前記載置検出器において前記座面が前記支持面に載置されていることを検出している間、前記多関節アームの動作を停止させ、
前記設置状態において前記多関節アームの動作を実行する、
ロボットシステム。
【請求項2】
前記無人搬送車を複数備え、
前記載置検出器は、複数の前記無人搬送車のうちいずれの前記支持面に載置されているのかを検出する、
請求項に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記無人搬送車が、前記支持面が前記ロボットセルを支持しているか否かを検出する支持検出器を有する、
請求項に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記ロボットセルを複数備え、
前記支持検出器は、複数の前記ロボットセルのうちいずれを支持しているのかを検出する、
請求項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記切換え機構が、前記無人搬送車に取り付けられ、前記支持面を昇降させる昇降アクチュエータによって構成される、
請求項1ないしのいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記ロボットセルが、前記多関節アームの先端部に取外し可能に選択的に装着される1以上のツールを更に有する、
請求項1ないしのいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
支持面を有して自動で走行する無人搬送車により搬送されるロボットセルであって、
前記支持面に着座する座面と、
前記座面よりも下方に突出し、地面に接する接地部と、
多関節アームと、
前記多関節アームの動作を制御するロボットコントローラと、
少なくとも前記ロボットコントローラの電源としてのロボットバッテリと、
前記座面が前記支持面に載置され且つ前記接地部が地面から離れた可搬状態と、前記座面が前記支持面から離れて前記接地部が地面に接し、前記ロボットセルが前記無人搬送車から分離された設置状態とを切り換えるときに、前記座面が前記支持面に載置されているか否かを検出する載置検出器と、を備え
前記載置検出器において前記座面が前記支持面に載置されていることを検出している間、前記多関節アームの動作を停止し、
前記設置状態において前記多関節アームの動作を実行する、
ロボットセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)を備えるロボットシステムに関する。また、本発明は、多関節アームおよびロボットコントローラを有し、無人搬送車により搬送されるロボットセルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、荷物を格納した棚を搬送するロボットシステムを開示している。このロボットシステムでは、ロボットが無人搬送車である。ロボットは、棚の下に潜り込んだ状態でその上板を上昇させることで、棚を持ち上げることができる。ロボットが棚を持ち上げた状態で走行することで、棚が搬送される。ロボットが上板を下降させることで、棚が設置される。棚は、荷物を移送する移送部を有している。棚の設置後、移送部が駆動され、荷物が移送される。
【0003】
ロボットが棚の下に潜り込むと、ロボットの接続部が棚の被接続部と電気的に接続される。移送部は、接続部および被接続部を介し、ロボットに搭載されたバッテリから給電される。ロボットは給電を制御するコントローラを搭載しており、コントローラによる給電制御を通じて移送部の動作が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/052825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したロボットシステムでは、ロボットが棚の下に潜り込んでいなければ、移送部を駆動できず、荷物を移送できない。ロボットの数が多くなる、あるいは、稼働できる棚の数が少なくなることから、作業効率に改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、ロボットシステムの高効率化を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るロボットシステムは、支持面を有し、自動的に走行する無人搬送車と、前記支持面に載置される座面、前記座面よりも下方に突出して地面に接する接地部、多関節アーム、前記多関節アームの動作を制御するロボットコントローラ、および、少なくとも前記ロボットコントローラの電源としてのロボットバッテリを有するロボットセルと、前記座面が前記支持面に載置され且つ前記接地部が地面から離れた可搬状態と、前記座面が前記支持面から離れて前記接地部が地面に接した設置状態とを切り換える切換え機構と、を備える。
【0008】
前記構成によれば、設置状態から可搬状態に切り換わると、ロボットセルが地面から離れて無人搬送車に支持される。無人搬送車が可搬状態で走行すると、ロボットセルが搬送される。可搬状態から設置状態に切り換わると、ロボットセルが無人搬送車から分離されて地面に設置される。ロボットセルが設置されると、無人搬送車は空走(ロボットセルを載置しない状態での走行)が可能になる。ロボットセルは、多関節アームおよびその動作を制御するロボットコントローラを有し、また、少なくともロボットコントローラの電源となるロボットバッテリを有している。そのため、ロボットセルの設置後に無人搬送車がロボットセルから離れても、ロボットセルは多関節アームを使って所要の作業を行える。
【0009】
本発明の一形態に係るロボットセルは、支持面を有して自動的に走行する無人搬送車により搬送されるロボットセルであって、前記支持面に着座する座面と、前記座面よりも下方に突出し、地面に接する接地部と、多関節アームと、前記多関節アームの動作を制御するロボットコントローラと、少なくとも前記ロボットコントローラの電源としてのロボットバッテリと、前記座面が前記支持面に載置され且つ前記接地部が地面から離れた可搬状態と、前記座面が前記支持面から離れて前記接地部が地面に接した設置状態とを切り換えるときに、前記座面が前記支持面に載置されているか否かを検出する載置検出器と、を備える。
【0010】
前記構成によれば、ロボットセルを上記したロボットシステムに適用したとき、ロボットシステムに上記した作用をもたらすことができる。ロボットセルは、座面が支持面に載置されているか否かを検出する載置検出器を備えている。載置検出器の検出結果に基づいて、無人搬送車がロボットセルから離れていないときには多関節アームを動かさない等、ロボットシステムの安全性向上に資する制御を実行できる。無人搬送車による搬送後に無人搬送車から独立して動作可能なロボットセルを備えたロボットシステムにとって有益である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロボットシステムを高効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るロボットシステムを示す斜視図である。
図2】実施形態に係る無人搬送車およびロボットセルを示す斜視図である。
図3図3Aは設置状態を示す側面図、図3Bは可搬状態を示す側面図である。
図4】実施形態に係るロボットシステムを示すブロック図である。
図5図5Aおよび図5Bは実施形態に係る載置検出器(センサ)の説明図である。図5Aは設置状態を示し、図5Bは可搬状態を示す。
図6図6Aおよび図6Bは変形例1に係る載置検出器(センサ)の説明図である。図6Aは設置状態を示し、図6Bは可搬状態を示す。
図7図7Aおよび図7Bは変形例2に係る載置検出器(接点)の説明図である。図6Aは設置状態を示し、図6Bは可搬状態を示す。
図8図8は変形例4に係る載置検出器(リミットスイッチ)の説明図である。
図9図9は変形例5に係るロボットシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係るロボットシステム100を示す斜視図である。ロボットシステム100は、人間とロボットが共存して作業を実行する生産現場、とりわけ多品種を取り扱う生産現場に適用されることが考えられる。ここでの「ロボット」の典型例として、ロボット基台、ロボット基台に連結される多関節アーム、および、多関節アームの動作を制御するロボットコントローラを有したマニピュレータ型のロボットを挙げられる。ロボットシステム100が適用される生産現場の好適例の一つとして、電子部品の組立ラインを挙げられる。
【0015】
例えば、ライン生産方式では、多数の作業場BがラインAに沿って設定される。作業場Bごとに予め決められた作業が、ラインAに沿って流れる中間製品に対し、各作業場Bで実行される。作業主体は、人間でもロボットでもよく、作業内容に応じて適宜選択される。電子部品の組立ラインでは、ロボットが、電子部品のリード線を基板に挿入する作業や、リード線を基板に溶接する作業を実行してもよい。
【0016】
ラインAに沿って生産される製品が変更されると、各作業場Bで実行される作業内容が変更される。作業内容の変更に伴い、ある作業場Bでの作業主体を人間からロボットに変えるため、ロボットを当該作業場Bに設置する必要が生じる場合がある。逆に、ある作業場Bでの作業主体をロボットから人間に変えるため、ロボットを当該作業場Bから撤収する必要が生じる場合がある。人間とロボットが共存して同じラインAで多品種を生産する現場では、段取り替えの一つとして、ロボットの設置および撤収を要する。なお、ある作業場Bから撤収されたロボットは、生産現場内でラインAから外れた所定の待機場所に設置されてもよく、新たにロボットが設置されるべき作業場Bへ搬送されて当該作業場Bで再設置されてもよい。
【0017】
本実施形態に係るロボットシステム100は、自動的に走行する1以上の無人搬送車1と、無人搬送車1により搬送される1以上のロボットセル3とを備える。ロボットセル3は前述したようなロボットの構成を備えている。ロボットシステム100は、ロボット(ロボットセル3)を速やかに設置および撤収できるように構成されている。一旦設置されたロボットの撤収が煩雑であるために作業内容に応じて柔軟に配置転換できないといった問題を解消できる。段取り替えを迅速に行えるので、生産効率が向上する。段取り替えが頻発しても、その都度即応して柔軟な配置転換が可能となり、生産効率を高く維持できる。
【0018】
なお、無人搬送車1の数もロボットセル3の数も、ロボットシステム100を適用する生産現場に応じて適宜変更可能である。本実施形態では、1台の無人搬送車1が1台のロボットセル3を搬送可能に構成されるが、これは一例であり、1台の無人搬送車1が2台以上のロボットセル3をまとめて搬送可能に構成されていてもよい。ロボットシステム100はライン生産方式を採用した生産現場だけでなく、セル生産方式を採用した生産現場にも適用できる。
【0019】
図2を参照して、無人搬送車1は、車体11、複数の車輪12および昇降体13を有している。車体11は、一例として、矩形状に形成された水平部11aと、水平部11aの後端から上方へ延びる起立部11bとを有する。複数の車輪12は、車体11(水平部11a)の底部に転動可能に支持されている。複数の車輪12が全て接地すると、車体11の水平部11aが地面と概略平行の姿勢をとり、車体11の起立部11bが地面に対して概略垂直の姿勢をとる。詳細図示を省略するが、無人搬送車1は、複数の車輪12として、1以上の前輪および1以上の後輪を備える。本実施形態では、2つの前輪および1つの後輪であるが、1つの前輪および2つの後輪でもよく、2つの前輪および2つの後輪でもよい。昇降体13は、車体11に対して昇降可能である。昇降体13は、車体11の水平部11aに設けられ、水平な表面を有する。昇降体13の表面(上面)は、ロボットセル3が載置される支持面10を構成する。
【0020】
ロボットセル3は、前述したようなロボットの構成、すなわち、ロボット基台31、多関節アーム32およびロボットコントローラ33(図4を参照)を有している。ロボットセル3は、このようなロボットに、無人搬送車1で搬送されるために必要な構成および無人搬送車1からは独立して作業場Bで作業を実行するために必要な構成を付加した組立体である。
【0021】
多関節アーム32の基端部は、ロボット基台31に連結される。多関節アーム32は、複数のリンク部材、隣接するリンク部材同士を対応する回転軸周りに回転可能に連結する複数の関節、および、複数の関節それぞれと対応する複数のアームアクチュエータ40(図4を参照)を有する。図示される垂直多関節型かつ単腕型の6軸アームは、単なる一例である。多関節アーム32は、水平多関節型でもよい。多関節アーム32は双腕型でもよい。水平多関節型かつ双腕型の場合、2本の多関節アーム32のロボット基台31に対する回転軸が同軸状であってもよい。1つの多関節アーム32に含まれる関節あるいはリンク部材の数も、特に限定されない。
【0022】
ロボットセル3は、筐体34およびフレーム35を有している。一例として、筐体34は矩形箱状に形成されている。フレーム35は、筐体34の底部を支持する底支持部35a、および、底支持部35aから下方に突出した4本の脚35bを有する。筐体34の底面は、無人搬送車1の支持面10に載置される座面36(図3を参照)を構成する。4本の脚35bは、座面36よりも下方に突出して地面に接する接地部37を構成する。脚35bの下端にキャスタ38が設けられていてもよく、その場合、キャスタ38も脚35bと共に接地部37を構成する。接地部37が地面に接しているとき、座面36は支持面10から上方に離れて地面と平行な姿勢をとる。なお、フレーム35は、筐体34の側部を支持または補強する側支持部35c、および、筐体34の天井部を支持または補強する天井支持部35dを有していてもよい。側支持部35cは底支持部35aから上方に延び、天井支持部35dは側支持部35cの上端部に連結される。
【0023】
一例として、ロボット基台31は筐体34の天井面上に据え付けられ、多関節アーム32は筐体34を介して底支持部35aに支持される。フレーム35が、天井支持部35dに連続して天井面を覆うように配置されたアーム支持部を有していてもよく、ロボット基台31が平面視において天井面の内域に配置される状態でアーム支持部に支持されてもよい。
【0024】
ロボットセル3は、1以上のツール39を有している。ツール39は、必要とされる作業を実行するため、多関節アーム32の先端部に取外し可能に装着される。ツール39は、多関節アーム32の先端部の可動域内に配置される。一例として、ツール39は、筐体34の天井面上に載置される。ロボットセル3は、ツール39を動作させるツールアクチュエータ41(図4を参照)を有している。例えば、ツール39が互いに接離可能な指機構を備えたハンドである場合、指機構はツールアクチュエータ41によって駆動される。ツール39が吸着によって物品を保持するハンドである場合、ツールアクチュエータ41が吸着のための圧力を発生する。ツールアクチュエータ41は、筐体34の天井面に取り付けられていてもよいし、筐体34内に収容されていてもよい。また、ワークが筐体34の天井面に載置されてもよい。
【0025】
ロボットセル3が接地しており且つ無人搬送車1の昇降体13が昇降可能範囲の下限位置に位置している状態では、無人搬送車1が自走してロボットセル3に向かって前進することで、水平部11aを地面と座面36との間に潜り込ませることができる。フレーム35の幅(接地部37の間隔)は、水平部11aの幅よりも広いので、この潜り込みが許容される。
【0026】
図3Aおよび図3Bを参照して、水平部11aが地面と座面36との間に単に潜り込んだときには、ロボットセル3は「設置状態」にある。接地部37は地面に接し、座面36は支持面10から上方に離れている。ただし、座面36は支持面10と上下方向に対向している。昇降体13が上昇すると、支持面10が座面36に下から当たる。更に上昇すると、ロボットセル3は「設置状態」から「可搬状態」に切り換わる。座面36が支持面10に載置され、接地部37が地面から離れる。ロボットセル3は、無人搬送車1の昇降体13に持ち上げられ、無人搬送車1の支持面10に支持される。可搬状態では、無人搬送車1が走行することで、ロボットセル3が搬送される。昇降体13が下降すると、接地部37が地面に接する。更に下降すると、ロボットセル3は「可搬状態」から「設置状態」に切り換わる。接地部37が地面に接し、支持面10が座面36から下方へ離れる。設置状態になると、無人搬送車1が後進することで、水平部11aを地面と座面36との間から抜くことができる。ロボットセル3は無人搬送車1から分離されて地面に支持される。
【0027】
本実施形態では、設置状態と可搬状態とを切り換える切換え機構5が、無人搬送車1の昇降体13、および、これを駆動する昇降アクチュエータ16によって実現されている。切換え機構5は、支持面10が座面36に対して上下方向に相対移動できるような構成であればよく、ロボットセル3に設けられていてもよい。接地部37そのもの、あるいは接地部37とは別に取り付けられたジャッキの上下方向の伸縮により、切換えを実現できる。切換え機構5がロボットセル3に設けられる場合、伸縮を空圧シリンダで実現し、ロボットセル3が空圧シリンダの空圧源としてコンプレッサを有していてもよい。
【0028】
図4に示すように、無人搬送車1は、駆動アクチュエータ14、操舵アクチュエータ15、昇降アクチュエータ16、AGVバッテリ17およびAGVコントローラ18を有する。駆動アクチュエータ14は、車輪12(前輪および/または後輪)を回転駆動する。駆動アクチュエータ14は、無人搬送車1を前進、後進または停止させ、あるいは、無人搬送車1の速度および加速度を調整する。操舵アクチュエータ15は、車輪12(前輪および/または後輪)の向きを変更する。操舵アクチュエータ15は、無人搬送車1の進路を変更し、あるいは、無人搬送車1の旋回半径を調整する。昇降アクチュエータ16は、昇降体13ひいては支持面10を車体11に対して昇降させる。駆動アクチュエータ14、操舵アクチュエータ15および昇降アクチュエータ16は、例えば、電気モータによって構成される。
【0029】
AGVバッテリ17は、アクチュエータ14~16やAGVコントローラ18といった、無人搬送車1に搭載されている電気機器の電源としての役割を果たす。AGVバッテリ17は、例えば、車体11に保持される。AGVコントローラ18の駆動電圧は、アクチュエータ14~16の駆動電圧よりも低い。AGVバッテリ17は、高電位バッテリと、駆動電圧が相対的に低い電気機器とバッテリとの間に介在する降圧回路(例えば、DC/DCコンバータ)とを有した電源装置であってもよい。AGVバッテリ17は、駆動電圧が相対的に低い電気機器(例えば、AGVコントローラ18)の電源となる低電位バッテリと、駆動電圧が相対的に高い電気機器(例えば、アクチュエータ14~16)の電源となる高電位バッテリとを別々に有した電源装置であってもよい。なお、無人搬送車1は、AGVバッテリ17の充電のため、外部電源9と接続可能に構成された充電接続部19を備えている。
【0030】
AGVコントローラ18は、駆動アクチュエータ14、操舵アクチュエータ15および昇降アクチュエータ16の動作を制御する。AGVコントローラ18は、駆動アクチュエータ14および操舵アクチュエータ15の動作制御を通じて、無人搬送車1の走行経路あるいは位置を制御する。無人搬送車1の誘導方式は特に限定されない。例えば、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)方式が採用されてもよい。AGVコントローラ18は、昇降アクチュエータ16の動作制御を通じて、可搬状態と設置状態とを切り換える。
【0031】
ロボットセル3は、ロボットコントローラ33、複数のアームアクチュエータ40、ツールアクチュエータ41およびロボットバッテリ42を有する。前述のとおり、アームアクチュエータ40は、多関節アーム32を構成し、多関節アーム32のリンク部材を回転駆動する。ツールアクチュエータ41は、多関節アーム32に装着されるツール39を駆動する。
【0032】
ロボットコントローラ33は、アームアクチュエータ40の動作ひいては多関節アーム32の動作を制御する。ロボットコントローラ33は、ツールアクチュエータ41の動作ひいてはツール39の動作を制御する。ロボットコントローラ33は、ROM、RAM等の記憶部、CPU等の演算部、および、サーボ制御部を備える。記憶部には、ロボットコントローラ33としての基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。演算部は、記憶部に記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、多関節アーム32およびツール39の各種動作を制御する。
【0033】
ロボットバッテリ42は、少なくともロボットコントローラ33の電源としての役割を果たす。更に、ロボットバッテリ42は、多関節アーム32(特に、そのアームアクチュエータ40)のような、ロボットセル3を構成する電気機器の電源としての役割を果たす。ロボットバッテリ42は、ツールアクチュエータ41の電源としても機能する。ロボットバッテリ42は、例えば、筐体34内に収容される。ロボットコントローラ33の駆動電圧は、アクチュエータ40,41の駆動電圧よりも低い。ロボットバッテリ42は、高電位バッテリと、駆動電圧が相対的に低い電気機器(例えば、ロボットコントローラ33)と高電位バッテリとの間に介在する降圧回路(例えば、DC/DCコンバータ)とを有した電源装置であってもよい。ロボットバッテリ42は、駆動電圧が相対的に低い電気機器の電源となる低電位バッテリと、駆動電圧が相対的に高い電気機器(例えば、アクチュエータ40,41)の電源となる高電位バッテリとを別々に有した電源装置であってもよい。なお、ロボットセル3は、ロボットバッテリ42の充電のため、外部電源9と接続可能に構成された充電接続部43を備えている。
【0034】
ロボットシステム100は、無人搬送車1およびロボットセル3の動作を統括的に制御する上位制御装置6を備えている。一例として、上位制御装置6は、図示のように、無人搬送車1およびロボットセル3とは別個に設けられ、AGVコントローラ18およびロボットコントローラ33と無線で通信可能に接続されていてもよい。上位制御装置6は、分散型でもよく、無人搬送車1とロボットセル3とは別個に設けられたコントローラと、無人搬送車1に設けられたAGVコントローラおよび/またはロボットセル3に設けられたロボットコントローラとによって構成されていてもよい。AGVコントローラ18は、上位制御装置6からの指令に基づいて、アクチュエータ14~16の動作を制御する。これにより、無人搬送車1の位置および移動経路が制御され、設置状態と可搬状態との切換えが制御され、また、ロボットセル3の位置が制御される。AGVコントローラ18は、AGVバッテリ17の残存容量を示す情報を上位制御装置6に出力してもよい。これにより、上位制御装置6は、いずれの無人搬送車1が稼働可能であるかを把握でき、また、その稼働可能時間を推定できる。
【0035】
ロボットセル3は、切換え機構5の作用で可搬状態と設置状態とを切り換える際に、座面36が支持面10に載置されているか否かを検出する載置検出器を備えている。本実施形態では、センサ44が載置検出器としての役割を果たす。
【0036】
図5Aおよび図5Bを参照して、本実施形態では、1つのセンサ44が、ロボットセル3の座面36に設けられている。他方、無人搬送車1の支持面10上には、突起20が設けられている。突起20はドグ歯状である。図5Aに示すように、設置状態では、水平部11aが座面36の下に潜り込んだ状態においても、センサ44が突起20と十分に離れている。センサ44は、座面36が支持面10に載置されていない旨示す検出信号(分離検出信号)をロボットコントローラ33に出力する。図5Bに示すように、可搬状態では、センサ44が突起20と当接または近接する。センサ44は、座面36が支持面10に載置されている旨示す検出信号(載置検出信号)をロボットコントローラ33に出力する。センサ44は、突起20と接触または近接しているか否かに応じて信号出力値を変えるように構成されている。センサ44の一例として、リミットスイッチ、近接スイッチ、ファイバセンサを挙げることができる。
【0037】
図4に戻り、ロボットコントローラ33は、センサ44の検出信号に基づき、自身の座面36が支持面10に載置されているか否かを示す情報(以下、載置情報ともいう)を上位制御装置6に出力する。ロボットコントローラ33は、ロボットバッテリ32の残存容量を示す情報を上位制御装置6に出力してもよい。これにより、上位制御装置6は、いずれのロボットセル3が稼働可能であるかを把握でき、また、その稼働可能時間を推定できる。
【0038】
以上のように構成されるロボットシステム100の動作を説明する。
【0039】
ある作業場Bからロボットセル3を撤収する際、上位制御装置6が複数の無人搬送車1のうち十分に充電されているものを1つ選び、無人搬送車1を当該作業場Bまで走行させる。無人搬送車1はロボットセル3に向かって前進し、その水平部11aをロボットセル3の座面36の下に潜り込ませた状態で停止する。上位制御装置6は、当該ロボットセル3から送られる載置情報を監視する。無人搬送車1が停止した直後、ロボットセル3は設置状態にあり、上位制御装置6に送られる載置情報は、座面36が支持面10に載置されていない旨示す。
【0040】
次に、AGVコントローラ18が昇降アクチュエータ16の動作を制御し、設置状態から可搬状態に切り換える。切換えの過程で、センサ44は載置検出信号をロボットコントローラ33に出力する。ロボットコントローラ33は、載置検出信号に基づき、自身が無人搬送車1上に支持されていることを把握できる。ロボットコントローラ33は、載置検出信号を入力している間、多関節アーム32の動作を停止させる。
【0041】
ロボットコントローラ33は、載置検出信号に基づき、載置情報として、自身の座面36が支持面10に載置されている旨示す情報を上位制御装置6に出力する。AGVコントローラ18は、昇降アクチュエータ16の動作を停止すると、その旨示す情報を上位制御装置6に送信する。上位制御装置6は、載置情報とAGVコントローラ18から送られた情報とに基づき、設置状態から可搬状態への切換えが完了したことを把握できる。
【0042】
次に、上位制御装置6が当該無人搬送車1を当該作業場Bから所定の位置まで走行させる。この所定の位置は、ロボットセル3を待機保管する場所でもよいし、別の作業場Bでもよい。無人搬送車1が所定の位置に到着すると、AGVコントローラ18が昇降アクチュエータ16の動作を制御し、可搬状態から設置状態に切り換える。切換えの過程で、センサ44は分離検出信号をロボットコントローラ33に出力する。ロボットコントローラ33は、分離検出信号に基づき、自身が無人搬送車1から分離されたことを把握できる。ロボットコントローラ33は、分離検出信号に基づき、載置情報として、自身の座面36が支持面10から離れた旨示す情報を上位制御装置6に出力する。AGVコントローラ18は、昇降アクチュエータ16の動作を停止すると、その旨示す情報を上位制御装置6に送信する。上位制御装置6は、載置情報とAGVコントローラ18から送られた情報とに基づき、可搬状態から設置状態への切換えが完了したことを把握できる。
【0043】
次に、上位制御装置6は、当該無人搬送車1を別の所定の位置まで走行させる。この所定の位置は、無人搬送車1を待機保管する場所でもよいし、撤収を要するロボットセル3が設置されている作業場Bでもよい。まず、無人搬送車1は水平部11aを座面36と地面との間の空間から抜くように後進する。その後、無人搬送車1は当該別の所定の位置へと走行する。
【0044】
作業場Bに設置されたロボットセル3は、無人搬送車1から分離された状態で、ロボットバッテリ42を電源として作業を実行する。作業の実行のため、ツール39が多関節アーム32の先端部に装着される。本実施形態では、ツール39が筐体34の天井面に載置され、ロボットコントローラ33による多関節アーム32の動作制御を通じて、多関節アーム32がツール39を自動で装着する。ロボットコントローラ33は、上位制御装置6からの指令に基づいて、あるいは、上位制御装置6からは独立して、多関節アーム32の動作を制御する。これにより、ロボットセル2が作業場Bで無人搬送車1からは独立して予め定められた作業を実行する。
【0045】
このように、本実施形態に係るロボットシステム100は、支持面10を有し、自動的に走行する無人搬送車1と、支持面10に載置される座面36、座面36よりも下方に突出して地面に接する接地部37を有するロボットセル3と、座面36が支持面10に載置され且つ接地部37が地面から離れた可搬状態と、座面36が支持面10から離れて接地部37が地面に接した設置状態とを切り換える切換え機構5と、を備える。設置状態から可搬状態に切り換わると、ロボットセル3が地面から離れて無人搬送車1に支持される。無人搬送車1が可搬状態で走行すると、ロボットセル3が搬送される。可搬状態から設置状態に切り換わると、ロボットセル3が無人搬送車1から分離されて地面に設置される。ロボットセル3が設置されると、無人搬送車1は空走できる。
【0046】
ロボットセル3は、多関節アーム32、および、多関節アーム32の動作を制御するロボットコントローラ33を有している。ロボットセル3の設置後に無人搬送車1がロボットセル3から離れても、ロボットセル3は多関節アーム32を使って所要の作業を行える。したがって、ロボットシステム100に必要な無人搬送車1の台数を削減でき、稼働可能なロボットセル3の台数を増やすことができる。ロボットシステム100の高効率化を実現できる。
【0047】
ロボットセル3は、少なくともロボットコントローラ33の電源のためのロボットバッテリ42を更に有する。外部からの給電がなくても、無人搬送車1から分離された状態で、ロボットセル3が動作できる。
【0048】
ロボットセル3は、可搬状態と設置状態とを切り換えるときに、座面36が支持面10に載置されているか否かを検出する載置検出器を備えている。載置検出器の検出結果に基づいて、ロボットシステム100の安全性向上に資する制御、例えば、可搬状態では多関節アーム32を動かさない制御を実行できる。無人搬送車1から独立して動作可能なロボットセル3を備えたロボットシステム100にとって有益である。
【0049】
本実施形態では、載置検出器がセンサ44である。無人搬送車1が、支持面10上に設けられた突起20を有し、センサ44が突起20と接触または近接したときに、センサ44は座面36が支持面10に載置された旨示す載置検出信号を出力する。簡易な構成で検出を実現できる。また、機械的あるいは物理的な接触または近接に基づく検出としているので、信頼性が高い。
【0050】
ロボットセル3が、多関節アーム32の先端部に取外し可能に選択的に装着される1以上のツール39を更に有する。無人搬送車1で多関節アーム32と共にツール39も一緒に搬送できる。
【0051】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更、追加および/または削除可能である。
【0052】
(変形例1)
上記実施形態では、ロボットセル3が1つのセンサ44を有し、無人搬送車1が支持面10上に1つの突起20を有するが、この構成は、図6Aおよび6Bに示すように変更されてもよい。図示される変形例では、ロボットセル3が、3つのセンサ(第1センサ44a、第2センサ44b、第3センサ44c)を有している。3つのセンサ44a~44cは、座面36上に離れて設けられている。
【0053】
他方、無人搬送車1の支持面10上では、設置状態と可搬状態とを切り換えるときに3つのセンサ44a~44cと対向する3つの対向位置(第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3)を想定できる。無人搬送車1は、これら3つの対向位置P1~P3の少なくともいずれか1つに設けられた1以上の突起20を有している。3つの対向位置P1~P3それぞれでの突起20の有無の組合せにしたがって、突起20の配置パターンは8通り存在する。どの位置にも突起20を設けないパターンを除外して、7通りとしてもよい。この変形例では、ロボットシステム100が、複数台(最大で配置パターンと同数)の無人搬送車1を備えており、各無人搬送車1に固有の配置パターンがあてがわれている。すなわち、無人搬送車1に設けられる1以上の突起20は、無人搬送車1を識別するための識別部材である。図示された無人搬送車1の一例では、2つの突起20が第1位置P1と第2位置P2にそれぞれ設けられ、第3位置P3には突起20がない(P1:有、P2:有、P3:無の配置パターン)。不図示の他の無人搬送車1には、これとは別の配置パターンがあてがわれる。
【0054】
この構成において、水平部11aがロボットセル3の座面36の下に潜り込んだ状態で無人搬送車1が停止した直後、ロボットセル3は設置状態にある。第1~第3センサ44a~44cのいずれも分離検出信号を出力する。ロボットコントローラ33は、3つの分離検出信号に基づいて、設置状態にあることを把握できる。
【0055】
次に、AGVコントローラ18が昇降アクチュエータ16の動作を制御し、設置状態から可搬状態に切り換える。切換えの過程で、第1センサ44aは第1位置P1の突起20と接触または近接し、第2センサ44bは第2位置P2の突起20と接触または近接する。第1センサ44aおよび第2センサ44bは載置検出信号をロボットコントローラ33に出力する。ロボットコントローラ33は、センサ44a~44cの少なくとも一つから載置検出信号が出力されたことに基づき、自身が無人搬送車1上に支持されていることを把握できる。
【0056】
他方、第3位置P3には突起20がないので、第3センサ44cは分離検出信号を出力し続ける。ロボットコントローラ33は、載置検出信号を出力しているセンサがいずれであるのか、分離検出信号を出力しているセンサがいずれであるのかに基づいて、当該ロボットセル3がどの無人搬送車1によって支持されているのか把握できる。
【0057】
ロボットコントローラ33は、どの無人搬送車1によって支持されているのかを示す情報を上位制御装置6に送信してもよい。上位制御装置6は、送られた情報に基づき、無人搬送車1に与えた指令通りに無人搬送車1がロボットセル3を持ち上げているのか否か判断できる。
【0058】
(変形例2)
上記実施形態および上記変形例では、載置検出器が、突起20と近接または接触しているか否かに応じて信号出力値を変えるセンサ44で構成されたが、載置検出器は、図7Aおよび7Bに示すように変更されてもよい。図示される変形例では、ロボットセル3が3つの接点(第1接点49a、第2接点49b、第3接点49b)を有している。3つの接点49a~49cは、座面36上で離れて設けられている。3つの接点49a~49cは、ロボットセル3に搭載された不図示のシーケンサと接続されている。シーケンサは、3つの接点が互いに導通しているか否かを判定し、その判定結果をロボットコントローラ33に出力する。
【0059】
他方、無人搬送車1の支持面10上では、設置状態と可搬状態とを切り換えるときに3つの接点49a~49cと対向する3つの対向位置P1~P3に1以上の接点25を有している。支持面10上に設けられた2以上の接点25は互いに導通していてもよい。上記変形例と同様、各無人搬送車1には、固有の接点配置導通パターンがあてがわれる。図示例では、3つの接点25が設けられ、第2位置P2の接点25と第3位置P3の接点25が互いに導通されている。その他の接点配置導通パターンとしては、第1位置P1が第2位置P2と導通するパターン、第1位置P1が第3位置P3と導通するパターン、3つの位置が互いに導通するパターンを挙げることができ、少なくとも4通りのパターンが存在する。3つの位置が非導通のパターンも採用し、5通りとしてもよい。そのため、当該ロボットシステム1は、4または5台の無人搬送車1を備えることを許容される。
【0060】
この構成において、水平部11aがロボットセル3の座面36の下に潜り込んだ状態で無人搬送車1が停止した直後、ロボットセル3は設置状態にある。第1~第3接点49a~49cはいずれも開放されている。ロボットコントローラ33は、この状態に基づき、設置状態にあることを把握できる。
【0061】
次に、AGVコントローラ18が昇降アクチュエータ16の動作を制御し、設置状態から可搬状態に切り換える。切換えの過程で、第1~第3接点49a~49cが第1~第3位置P1~P3の接点とそれぞれ接触する。第2接点49bと第3接点49cは、第2位置P2の接点25と第3位置P3の接点25とを介し、互いに導通される。ロボットコントローラ33は、第1~第3接点49a~49cの導通状態に基づいて、当該ロボットセル3がどの無人搬送車1によって支持されているのか把握できる。
【0062】
上記した2つの変形例に関し、センサ44a~44cおよび接点49a~49cの数を3としたのは単なる一例である。ロボットシステム100に導入される無人搬送車1の台数に応じて、個数は適宜変更可能である。無人搬送車1が2台または3台の場合、センサあるいは接点の個数は2でもよい。
【0063】
(変形例3)
上記した変形例1および2では、ロボットセル3がいずれの無人搬送車1に支持されているのかを識別するための構成が、複数のセンサまたは接点で実現されたが、これは一例である。無人搬送車1の支持面10上に、無人搬送車1を識別するための識別子(例えば、QRコード(登録商標)あるいはバーコード)を設け、ロボットセル3が識別子を読み取るためのイメージセンサを搭載していてもよい。この場合においても、上記した実施形態あるいは変形例1および2のように、機械的あるいは物理的な近接によってロボットセル3が無人搬送車1に支持されていることを検出するための構成を備えることが好ましい。
【0064】
(変形例4)
上記した実施形態および変形例1および2では、無人搬送車1に設けた突起あるいは接点を活用して載置検出器の検出動作が実現されたが、無人搬送車1から検出のための特別な構成を省略してもよい。図8に示すように、載置検出器144としてリミットスイッチや接触センサを採用した場合、無人搬送車1の支持面に特別な構成がなくても、座面が支持面に当接すると載置検出器は載置検出信号を出力できる。
【0065】
(変形例5)
上記した各変形例では、ロボットセル3がいずれの無人搬送車1に支持されているのかを識別するための構成について説明したが、無人搬送車1がいずれのロボットセル3を搭載しているのかを識別可能であってもよい。この場合、図9に示すように、無人搬送車1は、複数のロボットセル3のうちいずれを支持しているのかを検出する支持検出器129を有する。一例として、支持検出器129は、無人搬送車1に搭載されたイメージセンサであってもよく、その場合、ロボットセル3の座面上に、ロボットセル3を識別するための識別子(例えば、QRコード(登録商標)あるいはバーコード)149が設けられる。支持検出器(イメージセンサ)129は、識別子149を読み取った画像情報をAGVコントローラ18に出力する。AGVコントローラ18は画像情報に基づいていずれのロボットセル3を支持しているのか識別あるいは把握できる。
【0066】
無人搬送車1の支持面10の所定の位置にロボットセル3が支持されていない状態であっても、無人搬送車1の支持検出器129で上記状態を検出できる。すなわち、支持検出器129は支持面10がロボットセル3を支持しているか否かだけではなく、支持面10の所定の位置で正しくロボットセル3を支持しているか否かを検出できる。これにより、上記状態をロボットセル3の載置検出器において検出できなくても、無人搬送車1の支持検出器129で検出して無人搬送車1の走行を禁止できる。すなわち、無人搬送車1が支持検出器129を有することでさらにロボットシステム100の安全性を高められる。
【0067】
また、ロボットセル3は、ロボットバッテリ42の代わりに、多関節アーム32およびロボットコントローラ33への給電のために外部電源9と電気的に接続される給電接続部を有していてもよい。給電接続部は、商用電源に接続可能なプラグでもよいし、ラインAに沿って配設された給電レールに接触可能な集電靴でもよい。
【0068】
ロボットセル3からツール39が省略されてもよく、ツール39は、例えば作業場Bに置かれた作業棚に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 ロボットシステム
1 無人搬送車
3 ロボットセル
5 切換え機構
10 支持面
16 昇降アクチュエータ
20 突起
25 接点
32 多関節アーム
33 ロボットコントローラ
36 座面
37 接地部
42 ロボットバッテリ
44、44a~44c センサ
49a~49c 接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9