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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20231110BHJP
   E01D 19/04 20060101ALI20231110BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
E01D19/04 B
E01D19/04 C
E01D19/04 D
E01D22/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020548283
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034681
(87)【国際公開番号】W WO2020066504
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018181149
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】今川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 晃浩
(72)【発明者】
【氏名】丸山 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】日下 博也
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-303020(JP,A)
【文献】中国実用新案第207502197(CN,U)
【文献】特開2003-214829(JP,A)
【文献】特開2014-173313(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030126(WO,A1)
【文献】中国実用新案第203878470(CN,U)
【文献】特開2014-126390(JP,A)
【文献】特開2018-072126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
E01D 19/04
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支承を有する構造物の前記複数の支承それぞれの映像を取得する取得部と、
前記映像に基づいて、前記複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する抽出部と、
前記複数の支承のうち前記動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する特定部と、
を備え
前記複数の支承それぞれの動的特徴は、前記複数の支承の動きの主成分分析を行うことにより、前記複数の自由度に対応して得られる主成分を構成する値である、
検出装置。
【請求項2】
前記複数の支承それぞれの動的特徴は、前記複数の自由度に対応する変位である、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記動的特徴が前記他の支承の動的特徴に整合していない支承は、前記動的特徴が前記他の支承の動的特徴と同じでも対称でもない支承である、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
さらに、前記複数の支承の映像を同期撮像する撮像部を備える、
請求項1~のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
さらに、前記複数の支承それぞれの動的特徴を、前記映像を撮像する撮像部からの距離に応じて補正する補正部を備え、
前記特定部は、前記補正部によって補正された動的特徴を利用して、前記複数の支承のうち前記動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する、
請求項1~のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記構造物は、橋桁又は橋梁である、
請求項1~のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記取得部により取得される前記映像は、前記複数の支承を有する構造物に掛かる荷重が変化しているときに撮像された映像である、
請求項1~のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
複数の支承を有する構造物の前記複数の支承それぞれの映像を取得する取得ステップと、
前記映像に基づいて、前記複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する抽出ステップと、
前記複数の支承のうち前記動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する特定ステップと、
を有し、
前記複数の支承それぞれの動的特徴は、前記複数の支承の動きの主成分分析を行うことにより、前記複数の自由度に対応して得られる主成分を構成する値である、
検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物を支持する支承の不具合を検出する検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁等のインフラ構造物を支持する支承の点検は、作業員が定期的に橋梁等の支承を目視検査又は打音検査することにより行われている。しかしながら、例えば、インフラ構造物が橋梁の場合、支承は、橋脚又は橋台の上などの高所に設置されているため、設置場所によっては確認作業が困難であり、作業員の負担となっている。そこで、作業員の負担を軽減し、かつ、効率よくインフラ構造物の点検を行う方法が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1では、レーザドップラー速度計等の非接触センサを橋脚に取り付け、橋脚の支承部に近い桁端部の振動計測を行うことにより、支承の損傷度を評価する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-173313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、橋脚の支承部に近い桁端部の振動から不具合が生じている支承を推定することはできるものの、個々の支承部の具体的な不具合の箇所及び不具合の程度などを評価することはできない。
【0006】
そこで、本開示は、不具合のある支承を精度良く検出することができる検出装置及び検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る検出装置は、複数の支承を有する構造物の前記複数の支承それぞれの映像を取得する取得部と、前記映像に基づいて、前記複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する抽出部と、前記複数の支承のうち前記動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する特定部と、を備え、前記複数の支承それぞれの動的特徴は、前記複数の支承の動きの主成分分析を行うことにより、前記複数の自由度に対応して得られる主成分を構成する値である
【0008】
なお、上記の包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能な記録ディスクなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、例えば、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の不揮発性の記録媒体を含む。本開示の一態様の付加的な恩恵及び有利な点は、本明細書及び図面から明らかとなる。この恩恵及び/又は有利な点は、本明細書及び図面に開示した様々な態様及び特徴により個別に提供され得るものであり、その一以上を得るために全てが必要ではない。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る検出装置及び検出方法によれば、不具合のある支承を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1における検出システムの構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、支承の具体例を示す概略図である。
図3図3は、図1に示す構造物に荷重負荷が掛かったときの複数の支承それぞれの動的特徴の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係る検出装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態1に係る検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態1における複数の支承の変位の時系列データの一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態1における複数の支承の変位の時系列データの他の例を示す図である。
図8図8は、実施の形態1における検出システムの検出タイミングを示す概略図である。
図9図9は、実施の形態1における検出システムの構成の他の例を示す概略図である。
図10図10は、実施の形態2に係る検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、実施の形態2に係る検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の概要)
本開示の一態様に係る検出装置は、複数の支承を有する構造物の前記複数の支承それぞれの映像を取得する取得部と、前記映像に基づいて、前記複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する抽出部と、前記複数の支承のうち前記動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する特定部と、を備える。
【0012】
これにより、各支承の複数の自由度に対応する動きに基づいて、複数の支承において相対的に動きが異なる支承を異常の可能性が高い支承として適切に特定することができる。そのため、本開示の一態様に係る検出装置によれば、不具合のある支承を精度良く特定することができる。
【0013】
例えば、本開示の一態様に係る検出装置では、前記複数の支承それぞれの動的特徴は、前記複数の自由度に対応する変位であってもよい。
【0014】
これにより、各支承が有する複数の自由度それぞれの変位に基づいて、各支承が規定の動きを行っているか否かを判定することができる。また、規定の動きを行っていない支承において、どの自由度に異常が生じているのかを特定することができる。そのため、本開示の一態様に係る検出装置は、複数の支承のうち、不具合のある支承を特定する精度が向上される。
【0015】
例えば、本開示の一態様に係る検出装置では、前記複数の支承それぞれの動的特徴は、前記複数の支承の動きの主成分分析を行うことにより、前記複数の自由度に対応して得られる主成分を構成する値であってもよい。
【0016】
これにより、各支承の動きに関する特徴的な変位を互いに線形な相関を持たない物理量で表すことができる。さらに、各支承の動きから主要でない成分、つまり、ノイズ成分を排除されてなる物理量とすることができるため、不具合のある支承を特定する際に、誤差及びノイズの影響を低減することができる。そのため、本開示の一態様に係る検出装置は、複数の支承のうち、不具合のある支承を特定する精度が向上される。
【0017】
例えば、本開示の一態様に係る検出装置では、前記動的特徴が前記他の支承の動的特徴に整合していない支承は、前記動的特徴が前記他の支承の動的特徴と同じでも対称でもない支承であってもよい。
【0018】
これにより、複数の支承の相対的な動きに基づいて、不具合のある支承を特定することができる。つまり、予め取得されたリファレンスとなるデータが無くても、不具合のある支承を特定することができる。そのため、本開示の一態様に係る検出装置は、明確な判定基準がなくても、不具合のある支承を特定することが可能となる。したがって、本開示の一態様に係る検出装置は、複数の支承のうち不具合のある支承を簡便に特定することができる。
【0019】
例えば、本開示の一態様に係る検出装置は、さらに、前記複数の支承の映像を同期撮像する撮像部を備えてもよい。
【0020】
これにより、検出装置は、外部から映像を取得しなくても、複数の支承のうち不具合のある支承を特定することができる。
【0021】
例えば、本開示の一態様に係る検出装置は、さらに、前記複数の支承それぞれの動的特徴を、前記映像を撮像する撮像部からの距離に応じて補正する補正部を備え、前記特定部は、前記補正部によって補正された動的特徴を利用して、前記複数の支承のうち前記動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定してもよい。
【0022】
これにより、複数の支承それぞれの動的特徴を、より精度良く算出することができる。また、補正された動的特徴を利用するため、不具合のある支承をより精度良く特定することができる。
【0023】
例えば、本開示の一態様に係る検出装置では、前記構造物は、橋桁又は橋梁であってもよい。
【0024】
これにより、橋桁又は橋梁を変位可能に支持する支承の不具合を点検するために作業員が高所で作業する負担を低減することができる。
【0025】
例えば、本開示の一態様に係る検出装置では、前記取得部により取得される前記映像は、前記複数の支承を有する構造物に掛かる荷重が変化しているときに撮像された映像であってもよい。
【0026】
これにより、十分な変位が発生するため、動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する精度が向上される。
【0027】
また、本開示の一態様に係る検出方法は、複数の支承を有する構造物の前記複数の支承それぞれの映像を取得する取得ステップと、前記映像に基づいて、前記複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する抽出ステップと、前記複数の支承のうち前記動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する特定ステップと、を有する。
【0028】
これにより、各支承の複数の自由度に対応する動きに基づいて、複数の支承において相対的に動きが異なる支承を異常の可能性が高い支承として適切に特定することができる。そのため、本開示の一態様に係る検出方法によれば、不具合のある支承を精度良く特定することができる。
【0029】
なお、上記の包括的又は具体的な態様はシステム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能な記録ディスク等の記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、例えばCD-ROM等の不揮発性の記録媒体を含む。
【0030】
以下、本開示の実施の形態に係る検出装置及び検出方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0031】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ(工程)、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、以下の実施の形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。他の「略」を伴った表現についても同様である。また、以下の実施の形態の説明は、主要な部分が同じであること、あるいは、2つの要素が共通の性質を有することなどを意味する。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては、同一の符号を付しており、重複する説明は、省略又は簡略化される場合がある。
【0032】
(実施の形態1)
[検出システムの概要]
まず、本実施の形態における検出システムの概要について、図1を参照しながら具体的に説明する。図1は、本実施の形態における検出システム300の構成の一例を示す概略図である。
【0033】
検出システム300は、複数の支承1a、1b、1c、及び1d(以下、1a~1d)を有する構造物2の複数の支承1a~1dの映像を撮像し、得られた映像に基づいて、複数の支承1a~1dそれぞれが有する自由度に対応する動的特徴を抽出し、動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する。
【0034】
なお、構造物2は、複数の支承を有する構造物であり、例えば、橋桁又は橋梁である。以下、構造物2は、橋桁であり、複数の支承1a~1dは橋脚3上に配置され、橋桁を変位可能に支持する例について説明する。
【0035】
まず、検出システム300を説明するにあたり、自由度、及び、動的特徴について図面を参照しながら具体的に説明する。図2は、支承の具体例を示す概略図である。
【0036】
支承の自由度は、支承の可動方向に対応し、より具体的には、支承の可動方向の数に対応する。例えば、支承が3つの可動方向を有する場合、支承は3つの自由度を有する。また、支承が3つの自由度を有することは、支承の自由度が3である、あるいは、支承は3自由度(又は自由度3)を有すると表現される場合がある。また、支承の可動方向は、並進方向、つまり、直進方向であってもよいし、回転方向であってもよい。
【0037】
支承が有する複数の自由度は、支承の種類によって異なる。図2には、3種類の支承と、それらの支承のそれぞれが有する複数の自由度が図示されている。
【0038】
例えば、図2の(a)に示す支承1fは、ピンローラ支承の一例であり、矢印で示す3自由度を有する。より具体的には、支承1fは、ピンローラ1f2が特定の方向、ここでは、ピンローラ1f2の中心軸に対して時計回り及び反時計回りに回転することができ、下沓1f2が紙面の左右方向にスライドすることができ、上沓1f1、ピンローラ1f2、及び、下沓1f3が組み合わされた支承1fの全体が紙面の上下方向に動くことができるため、合わせて3自由度を有する。
【0039】
また、図2の(b)に示す支承1gは、一本ローラ支承の一例であり、矢印で示す2自由度を有する。より具体的には、支承1gは、上沓1g1が紙面の左右方向にスライドすることができ、上沓1g1、ローラ1g2、下沓1g2が組み合わされた支承1gの全体が紙面の上下方向に動くことができるため、合わせて2自由度を有する。
【0040】
また、図2の(c)に示す支承1hは、パッド型ゴム支承の一例であり、矢印で示す6自由度を有する。より具体的には、支承1hは、積層されたゴムパッド1h1~1h4のそれぞれが紙面の左右方向にスライドすることができ、1h1~1h4が組み合わされた支承1hの全体がゴムパッドの積層方向に対して上下方向に動くことができ、支承1hの全体が奥行方向に対して前後にスライドすることができるため、6自由度を有する。ここでは、支承1h全体として、奥行方向に1つの自由度が定められているが、各ゴムパッドについて、奥行方向に1つの自由度が定められる場合、支承1hが有する自由度は、9自由度となる。
【0041】
続いて、動的特徴について説明する。動的特徴とは、動きに関する特徴である。支承が有する複数の自由度に対応する動的特徴とは、支承が有する複数の自由度に伴って生じる支承の動きに関する特徴である。動的特徴は、複数の自由度に対応する変位であってもよく、複数の支承の動きの主成分分析を行うことにより、複数の自由度に対応して得られる主成分を構成する値であってもよい。ここで、支承が有する複数の自由度に対応する変位は、複数の自由度に伴う支承の各部分の変位である。
【0042】
例えば、動的特徴が複数の自由度に対応する変位である場合、複数の支承それぞれの動的特徴について図3を参照しながらより具体的に説明する。図3は、図1に示す構造物2に荷重負荷が掛かったときの複数の支承1a~1dそれぞれの動的特徴の一例を示す図である。
【0043】
複数の支承1a~1dそれぞれが有する自由度は、図2の(a)で説明したように、3自由度である。複数の支承1a~1dそれぞれの動的特徴は、3自由度に対応する変位である。図3では、Y軸に沿って構造物2に荷重負荷が掛かったときの複数の支承1a~1dそれぞれの動的特徴を示している。図3に示すように、支承1a~1dの各々には、Y軸方向にスライドする自由度に対応する変位があり、X軸と平行な回転軸に対して回転する自由度及びZ軸プラス側からZ軸マイナス側に移動する自由度のそれぞれに対応する変位が生じる。
【0044】
続いて、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合している支承について具体例を挙げて説明する。
【0045】
ある支承の動的特徴が他の支承の動的特徴に整合しているとは、構造物2に何らかの荷重負荷が掛かった場合、ある支承が有する複数の自由度に対応する動的特徴が他の支承が有する複数の自由度に対応する動的特徴と同一又は対称であることをいう。
【0046】
例えば、X軸に沿って構造物2に荷重負荷が掛かった場合、図3に示すように、X軸に対して対称に配置された2つの支承である支承1a及び支承1cでは、支承の回転軸(ここでは、X軸に平行な軸)に対して回転する自由度に対応する変位が生じ、かつ、Z軸プラス側からZ軸マイナス側に直線的に動く自由度に対応する変位が生じる。このとき、支承1aには、回転軸に対して紙面において時計回りに回転する自由度の変位が生じ、支承1cには、回転軸に対して紙面において反時計回りに回転する自由度の変位が生じる。これらの支承は、X軸方向に傾動するように回転軸に対して回転する。さらに、これらの支承は、共に、Z軸プラス側からZ軸マイナス側に向かって直線的に動く。そのため、支承1a及び支承1cが有する複数の自由度に対応する動的特徴は、互いに対称である。
【0047】
また、Y軸に対して対称に配置された2つの支承である支承1a及び支承1bは、支承の回転軸(ここでは、Y軸に平行な軸)に対して回転する自由度に対応する変位が生じ、かつ、Z軸プラス側からZ軸マイナス側に直線的に動く自由度に対応する変位が生じる。このとき、支承1a及び支承1bには、共に、回転軸に対して紙面において時計回りに回転する自由度の変位が生じる。そのため、支承1a及び支承1bが有する複数の自由度に対応する動的特徴は、互いに同一である。
【0048】
したがって、支承1a、支承1b及び支承1cの動的特徴は、互いに整合している。
【0049】
続いて、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承について具体例を挙げて説明する。
【0050】
ある支承の動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していないとは、ある支承が有する複数の自由度に対応する動的特徴が他の支承が有する複数の自由度に対応する動的特徴と同じでも対称でもないことをいう。
【0051】
例えば、X軸に沿って構造物2に荷重負荷が掛かった場合、図3に示すように、X軸に対して対称に配置された2つの支承である支承1b及び支承1dでは、支承1b及び支承1dそれぞれの回転軸に対して回転する自由度に対応する変位が互いに対称となるように生じる。つまり、支承1b及び支承1dは、X軸方向に対して傾動するように回転する。しかしながら、Z軸方向に直線的に動く自由度については、支承1bは、Z軸プラス側からZ軸マイナス側に直線的に動くのに対し、支承1dは、Z軸マイナス側からZ軸プラス側に直線的に動く。そのため、支承1b及び支承1dが有する複数の自由度に対応する動的特徴は、互いに対称ではない。
【0052】
また、Y軸に対して対称に配置された2つの支承である支承1c及び支承1dでは、支承1c及び支承1dそれぞれの回転軸に対して回転する自由度に対応する変位が互いに同じになるように生じる。つまり、支承1c及び支承1dは、X軸方向に対して傾動するように回転する。しかしながら、Z軸方向に直線的に動く自由度については、支承1cは、Z軸プラス側からZ軸マイナス側に直線的に動くのに対し、支承1dは、Z軸マイナス側からZ軸プラス側に直線的に動く。そのため、支承1c及び支承1dが有する複数の自由度に対応する動的特徴は、互いに同一ではない。
【0053】
したがって、図3に示す例の場合、支承1dの動的特徴は、他の支承1a、1b及び1cの動的特徴に整合していない。
【0054】
以上のように、検出システム300は、複数の支承を有する構造物2の複数の支承1a~1dのうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承(図3では、支承1d)を特定して、不具合のある支承を検出する。
【0055】
再び図1を参照して、検出システム300の各構成について説明する。検出システム300は、撮像装置101と、検出装置100aと、を備える。
【0056】
撮像装置101は、例えばイメージセンサを備えるデジタルビデオカメラ又はデジタルスチルカメラである。撮像装置101は、例えば、複数の支承1a~1dの映像を同期撮像する。
【0057】
図1に示すように、撮像装置101は、例えば隣り合う2つの橋脚3の間に配置される。撮像装置101が隣り合う2つの橋脚3の間に1つ配置された場合、撮像装置101は、全方位撮像可能な撮像装置であってもよく、複数の支承1a~1dそれぞれの方向、例えば、4方向のみ撮像可能な撮像装置であってもよい。配置される撮像装置101の数は、1つに限られず、2つ以上であってもよい。例えば、撮像装置101が隣り合う2つの橋脚3の間に2つ以上配置された場合、各撮像装置101は、少なくとも隣り合う2つの支承の映像を同期撮像するとよい。
【0058】
検出装置100aは、例えばコンピュータであり、プロセッサ(不図示)と、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが格納されたメモリ(不図示)と、を備える。プロセッサがソフトウェアプログラムを実行することによって、検出装置100aは、後述する複数の機能を実現する。また、検出装置100aは、専用の電子回路(不図示)で構成されてもよい。この場合、後述する複数の機能は、別々の電子回路で実現されてもよいし、集積された1つの電子回路で実現されてもよい。
【0059】
検出装置100aは、撮像装置101と、例えば、通信可能に接続され、撮像装置101によって撮像された複数の支承それぞれの映像に基づいて、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出し、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する。
【0060】
[実施の形態1に係る検出装置の構成]
続いて、本実施の形態に係る検出装置100aの機能構成について説明する。図4は、本実施の形態に係る検出装置100aの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0061】
図4に示すように、検出装置100aは、取得部20と、抽出部30と、特定部50と、を備える。
【0062】
取得部20は、複数の支承を有する構造物の複数の支承それぞれの映像を取得する。なお、動的特徴が他の支承の動的特徴に整合しない支承を特定する精度を向上させる観点から、当該映像は、構造物に荷重が掛かっている期間と、その前後の構造物に荷重が掛かっていない期間の少なくとも一方と、を含む映像であってもよい。言い換えると、取得部20により取得される映像は、複数の支承を有する構造物に掛かる荷重が変化しているときに撮像された映像であってもよい。例えば、構造物2が橋桁である場合、取得部20により取得される映像は、列車又は車などの車両が橋桁を通過しているときに撮像された映像である。取得部20が取得する映像は、構造物2が有する複数の支承全てが同期撮像された動画である。
【0063】
なお、取得部20は、例えば、撮像装置101から無線通信によって複数の映像を取得する。また、例えば、取得部20は、脱着可能なメモリ、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリを介して撮像装置101から複数の映像を取得してもよい。
【0064】
抽出部30は、取得部20によって取得された複数の映像に基づいて、複数の支承それぞれが有する自由度に対応する動的特徴を抽出する。具体的には、抽出部30は、複数の映像に基づいて、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する変位を抽出してもよく、複数の支承の動きの主成分分析を行うことにより複数の自由度に対応する主成分を構成する値を抽出してもよい。
【0065】
動的特徴が複数の自由度に対応する変位である場合、抽出部30は、取得された映像に基づいて、複数の支承について、各支承が有する複数の自由度毎の変位を抽出する。変位の抽出方法は、例えば、ブロックマッチング法、正規化相関法(Normalized Cross Correlation)、及び、位相相関法(Phase Correlation)などの相関法、サンプリングモアレ法、特徴点抽出法(例えば、エッジ抽出)、又は、レーザスペックル相関法などを用いてもよい。変位抽出の精度は、ピクセル単位でもサブピクセル単位でもよい。ここでの変位は、映像上の変位であってもよい。
【0066】
また、動的特徴が複数の支承の動きの主成分分析を行うことにより得られる主成分を構成する値である場合、抽出部30は、複数の自由度に対応する複数の変位に対して主成分分析を行う。具体的には、抽出部30は、複数の支承におけるk個の自由度に対応するk個の変位に対して、以下の手順で主成分分析を行う。まず、抽出部30は、上述された方法によって、時刻tにおけるk個の変位を示すu(t)を抽出する。例えば、時刻tのk個の変位を示すu(t)は、各変位を示すc(i=1~k)を用いて、u(t)=(c、・・・、c、t)で表現される。そして、抽出部30は、複数の時刻におけるu(t)に対して主成分e(i=1~n、nは主成分の数)を求める。そして、抽出部30は、抽出したn個の主成分のうちのm(m≦n)個の主成分を記憶部(不図示)に格納する。格納する主成分の数mは、固有値の大きいものから指定してもよいし、累積寄与率を用いて設定してもよいし、予め定めた固有値準位の成分を選択してもよい。主成分の算出方法は、共分散行列の対角化など一般的な方法を用いることができる。抽出部30は、算出したm個の主成分を記憶部に格納する。なお、主成分は、例えば、動きを示すベクトルである動きベクトルとして表現される。例えば、ある支承の動的特徴は、主成分を構成する複数の要素値のうち、その支承の複数の自由度に対する複数の要素値でもよい。
【0067】
特定部50は、抽出部30によって抽出された各支承の複数の自由度に対応する動的特徴に基づいて、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する。言い換えると、特定部50は、複数の支承の中から他の支承と異なる動きをする支承を特定する。
【0068】
特定部50は、例えば、統計的な指標を用いて不具合のある支承を特定する。特定部50は、例えば、複数の支承の複数の自由度に対応する変位の代表値(以下、単に、代表値)と、複数の支承それぞれの複数の自由度に対応する変位(以下、各支承の変位)とに基づいて、不具合のある支承を特定する。特定部50は、例えば、各支承の変位と代表値との差に基づいて、不具合のある支承を特定してもよい。特定部50は、複数の支承の中から、各支承の変位が代表値から所定値以上異なる支承を不具合のある支承と特定してもよい。
【0069】
所定値は、例えば、標準偏差の定数倍であってもよい。例えば、特定部50は、各支承の変位が代表値から標準偏差の定数倍以上異なる支承を不具合のある支承であると特定してもよい。また、代表値は、複数の支承の変位の平均値であってもよいし、中央値であってもよいし、ロバスト推定値であってもよい。ロバスト推定値は、RANSAC(RANdom Sample Consensus)推定値及びM推定値などがある。RANSAC推定値とは、各支承の変位からRANSAC推定により外れ値の影響を除外した各支承の変位から算出される平均値又は中央値である。特定部50は、各支承の変位から平均値又は中央値を算出することで、代表値を決定する。なお、後述する図6及び図7に示す変位は、代表値が平均値であってもよく、中央値であってもよく、RANSAC推定値であってもよい。他の支承の動的特徴に整合していない、つまり、他の支承と異なる変位が生じている支承は、上記の代表値からのずれを検出することにより特定される。
【0070】
なお、複数の自由度に対応する変位は、複数の自由度に対応する複数の変位のうち代表的な変位であってもよいし、複数の自由度に対応する複数の変位のそれぞれであってもよい。
【0071】
[実施の形態1に係る検出装置の動作]
次いで、検出装置100aの動作について、図5図7を参照しながら説明する。図5は、実施の形態1に係る検出装置100aの動作の一例を示すフローチャートである。なお、検出システム300の動作としては、図5に示す取得ステップS20の前に、撮像装置101が複数の支承それぞれの映像を撮像する撮像ステップが含まれる。撮像ステップでは、例えば、構造物2に荷重が掛かっている期間を含む映像が撮像される。このとき、複数の支承それぞれの映像は、同期撮像されてもよい。
【0072】
図5に示すように、取得部20は、複数の支承を有する構造物の複数の支承それぞれの映像を取得する(取得ステップS20)。検出装置100aは、撮像装置101から逐次映像を取得してもよいし、所定の期間撮像した映像を取得してもよい。なお、検出装置100aは、撮像装置101による複数の支承それぞれの撮像が終了した後に、複数の支承それぞれの映像を撮像装置101から取得してもよい。
【0073】
次いで、抽出部30は、取得ステップS20において取得された映像に基づいて、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する(抽出ステップS30)。例えば、動的特徴が複数の支承が有する複数の自由度に対応する変位である場合、各支承の自由度毎の変位を抽出する。変位の抽出方法については、上述したため、ここでの説明を省略する。
【0074】
次いで、特定部50は、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する(特定ステップS50)。特定部50は、抽出部30によって抽出された各支承の複数の自由度に対応する変位のうち、特定の自由度の変位を抽出して、当該変位の時系列データを比較してもよい。例えば、当該変位の時系列データは、グラフ化されて比較されてもよい。図6は、実施の形態1における複数の支承1a~1dの変位の時系列データの一例を示す図である。
【0075】
図6では、図1及び図3に示す複数の支承1a~1dそれぞれが有する複数の自由度に対応する変位のうち、特定の自由度に対応する変位(以下、特定の自由度の変位)の時系列データを示している。特定の自由度の変位は、複数の支承が有する複数の自由度のうち、変位の方向及び大きさが他の支承の他の自由度とは異なる自由度の変位である。つまり、図6に示す変位は、図3に示す複数の支承1a~1dが有する3自由度のうち、Z軸方向に直線的に動く自由度の変位である。
【0076】
図6では、例えば橋桁を電車200が通過する間の複数の支承1a~1dのZ軸方向、つまり、地面に垂直な方向に直線的に動く自由度の変位を示している。複数の支承1a~1dは、電車200が橋桁に差し掛かると電車200による荷重負荷が掛かり、Z軸のマイナス方向に沈む動きをする。グラフから、支承1a、支承1b、及び、支承1cは、ほぼ同じ変位が生じていることが分かる。しかしながら、支承1dは、他の支承の特定の自由度がZ軸マイナス方向に変位しているとき、Z軸プラス方向に変位している。つまり、支承1dは、他の支承の変位と異なる挙動を示していることが分かる。
【0077】
また、図7は、実施の形態1における複数の支承1a~1dの変位の時系列データの他の例を示す図である。図7に示す変位は、図6に示す変位と同様に、複数の支承1a~1dが有する3自由度のうち、Z軸方向に直線的に動く自由度の変位である。
【0078】
複数の支承1a~1dは、電車200が橋桁に差し掛かると電車200による荷重負荷が掛かり、Z軸のマイナス方向に沈む動きをする。図7に示すグラフから、支承1a、支承1b、及び、支承1cは、ほぼ同じ変位が生じていることが分かる。しかしながら、支承1dは、他の支承の変位と異なる位相にほぼ同じ変位が生じている。つまり、支承1dは、他の支承の変位と異なる挙動を示していることが分かる。
【0079】
なお、ここでは、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴が複数の自由度に対応する変位である例を説明したが、複数の支承それぞれの動的特徴は、複数の動きの主成分分析を行うことにより、複数の自由度に対応して得られる主成分を構成する値であってもよい。具体的には、複数の支承それぞれの動きを合わせて主成分分析を行い、複数の自由度に対応して得られる主成分における各支承の影響度の違いを、支承間で比較してもよい。
【0080】
以上のように、特定部50は、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴に基づいて、動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する。
【0081】
なお、ステップS50の処理は、必ずしもステップS30の処理の後に行われる必要はない。ステップS50の処理は、例えば、ステップS30の処理と並行に行われてもよい。
【0082】
[実施の形態1の効果等]
以上のように、実施の形態1に係る検出装置100aは、複数の支承を有する構造物の複数の支承それぞれの映像を取得する取得部と、映像に基づいて、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する抽出部と、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の的特徴に整合していない支承を特定する特定部と、を備える。
【0083】
また、実施の形態1に係る検出方法は、複数の支承を有する構造物の複数の支承それぞれの映像を取得する取得ステップS20と、映像に基づいて、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する抽出ステップS30と、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する特定ステップS50と、を有する。
【0084】
これにより、各支承の複数の自由度に対応する動きに基づいて、複数の支承において相対的に動きが異なる支承を異常の可能性が高い支承として適切に特定することができる。そのため、不具合のある支承を精度良く特定することができる。
【0085】
例えば、実施の形態1に係る検出装置では、複数の支承それぞれの動的特徴は、複数の自由度に対応する変位であってもよい。
【0086】
これにより、各支承が有する複数の自由度それぞれの変位に基づいて、各支承が規定の動きを行っているか否かを判定することができる。また、規定の動きを行っていない支承において、どの自由度に異常が生じているのかを特定することができる。そのため、検出装置は、複数の支承のうち、不具合のある支承を特定する精度が向上される。
【0087】
例えば、実施の形態1に係る検出装置では、複数の支承それぞれの動的特徴は、複数の支承の動きの主成分分析を行うことにより、複数の自由度に対応して得られる主成分を構成する値であってもよい。
【0088】
これにより、各支承の動きに関する特徴的な変位を互いに線形な相関を持たない物理量で表すことができる。さらに、各支承の動きから主要でない成分、つまり、ノイズ成分を排除されてなる物理量とすることができるため、不具合のある支承を特定する際に、誤差及びノイズの影響を低減することができる。そのため、検出装置は、複数の支承のうち、不具合のある支承を特定する精度が向上される。
【0089】
例えば、実施の形態1に係る検出装置では、動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承は、動的特徴が他の支承の動的特徴と同じでも対称でもない支承である。例えば、他の支承と動的特徴の符号が異なる場合、又は、動的特徴の差が一定値以上、あるいは、動的特徴の比率が一定値以上の場合に、動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していないと判断しても良い。
【0090】
これにより、複数の支承の相対的な動きに基づいて、不具合のある支承を特定することができる。つまり、予め取得されたリファレンスとなるデータが無くても、不具合のある支承を特定することができる。そのため、本開示の一態様に係る検出装置は、明確な判定基準がなくても、不具合のある支承を特定することが可能となる。したがって、検出装置は、複数の支承のうち不具合のある支承を簡便に特定することができる。
【0091】
例えば、実施の形態1に係る検出装置では、構造物は、橋桁又は橋梁であってもよい。
【0092】
これにより、橋桁又は橋梁を変位可能に支持する支承の不具合を点検するために作業員が高所で作業する負担を低減することができる。
【0093】
例えば、実施の形態1に係る検出装置では、取得部により取得される映像は、複数の支承を有する構造物に掛かる荷重が変化しているときに撮像された映像であってもよい。
【0094】
これにより、十分な変位が発生するため、動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する精度が向上される。
【0095】
なお、上述のように、一つの構造物2を支える複数の支承1a~1d、又は、同一の橋脚3で支持される支承1a及び支承1b、若しくは、支承1c及び1dを撮像対象とすることで、支承が正常な場合の支承間における挙動の整合性、例えば、対応する支承同士の挙動の対称性又は同一性が得られることが期待されるため、本開示に基づく効果が特に得やすくなる。
【0096】
なお、本実施の形態では、複数の支承1a~1dの映像を同期撮像してもよいとしたが、図8の(a)及び図8の(b)に示すように、構造物2の対称の位置に、車両又は列車の通過など、複数の支承1a~1dに荷重負荷が掛かったときの映像を組み合わせることでも、上述した実施の形態1の場合と同様に、対応する支承同士の挙動の対称性を比較することで不具合のある支承を精度良く検出することができる。
【0097】
また、図9のように多連橋のように同じ構造が繰り返される橋梁では、異なる径間で相対的に同じ位置に設置された複数の支承1に対し、車両又は列車の通過など、複数の支承1に同一の荷重負荷(車両又は列車の通過など)が掛かったときの映像を組み合わせることでも、上述した実施の形態1の場合と同様に、対応する支承同士の挙動の同一性を比較することで不具合のある支承を精度良く検出することができる。
【0098】
(実施の形態2)
[実施の形態2に係る検出装置の構成]
続いて、実施の形態2に係る検出装置について、図10を参照しながら説明する。図10は、実施の形態2に係る検出装置100bの機能構成の一例を示すブロック図である。実施の形態2に係る検出装置100bは、さらに、補正部40を備え、特定部50が補正部40によって補正された動的特徴を利用する点で、実施の形態1に係る検出装置100aと異なる。以下、実施の形態1と異なる点を中心に、実施の形態2に係る検出装置100bについて説明する。
【0099】
図10に示すように、検出装置100bは、取得部20と、抽出部30と、特定部50と、に加え、補正部40を備える。補正部40は、複数の支承それぞれの動的特徴を、映像を撮像する撮像部、ここでは、撮像装置101(図1参照)からの距離に応じて補正する。
【0100】
例えば、補正部40は、撮像映像上の変位と実空間上の変位との比率が、撮像装置101の撮像位置から各支承までの実空間距離の違いによって生じる場合は、必要に応じて、この比率が等しくなるようにスケール補正を行う。このスケール補正は、抽出された変位に対して行ってもよく、撮像映像に対して行ってもよい。
【0101】
特定部50は、補正部40によって補正された動的特徴(ここでは変位)を利用して、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する。
【0102】
[実施の形態2に係る検出装置の動作]
次いで、検出装置100bの動作について、図11を参照しながら説明する。図11は、実施の形態2に係る検出装置100bの動作の一例を示すフローチャートである。なお、実施の形態1と同様に、検出システムの動作としては、図11に示すステップS20の前に、撮像装置101が複数の支承それぞれの映像を撮像する撮像ステップが含まれる。撮像ステップでは、例えば、構造物2(図1参照)に荷重が掛かっている期間を含む映像が撮像される。なお、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、撮像ステップでは、複数の支承それぞれの映像を同期撮像してもよい。
【0103】
図11に示すように、取得部20は、複数の支承を有する構造物の複数の支承それぞれの映像を取得する(取得ステップS20)。検出装置100bは、撮像装置101(図1参照)から逐次映像を取得してもよいし、所定の期間撮像した映像を取得してもよい。なお、検出装置100bは、撮像装置101による複数の支承それぞれの撮像が終了した後に、複数の支承それぞれの映像を撮像装置101から取得してもよい。
【0104】
次いで、抽出部30は、取得ステップS20において取得された映像に基づいて、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出する(抽出ステップS30)。抽出部30は、例えば、既存の画像認識技術を用いて、取得された複数の支承それぞれの映像から各支承を検出し、検出した各支承上の複数の計測点の座標を算出する。抽出部30は、複数の計測点の中から少なくとも1つの固定計測点を設定する。固定計測点は、荷重などの影響を最も受けにくく、変位が小さい計測点である。抽出部30は、撮像映像に含まれるフレーム毎の各計測点における座標を算出し、各計測点における変位を抽出する。抽出部30は、各計測点における変位から、各支承の自由度毎の変位を抽出してもよく、各支承の動きの主成分分析を行い複数の自由度に対応して得られる成分を抽出してもよい。なお、抽出部30は、複数の支承それぞれの映像中の各計測点における座標及び各計測点における変位などを記憶部(不図示)に格納してもよい。
【0105】
次いで、補正部40は、複数の支承それぞれの動的特徴を、複数の支承それぞれの映像を撮像する撮像装置101からの距離に応じて補正する(補正ステップS40)。このとき、補正部40は、例えば、抽出部30によって抽出された、複数の計測点それぞれについての変位を、複数の計測点において実際に変位した距離の比率が反映されるようにスケール補正を行う。より具体的には、補正部40は、各支承の複数の測定点それぞれについて実空間上の座標を、記憶部(不図示)から読み出し、読み出された実空間上の座標を用いて、上記スケール補正を行う。
【0106】
次いで、特定部50は、補正部40によって補正された動的特徴を利用して、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する(特定ステップS51)。特定部50は、補正部40によって補正された各支承の自由度毎の変位を利用して、複数の支承のうち複数の自由度に対応する変位が他の支承の他の複数の自由度に対応する変位に整合していない支承を特定する。具体的には、補正された各支承の自由度毎の変位を利用する点以外は、実施の形態1において、図3図6及び図7で説明した内容と同様である。
【0107】
なお、ステップS40の処理は、必ずしもステップS30の後に行われる必要はない。ステップS40の処理は、例えば、ステップS30の処理と並列に行われてもよいし、ステップS30の処理の前に行われてもよい。
【0108】
[実施の形態2の効果等]
上述したような実施の形態2に係る検出装置100b及び検出方法によれば、実施の形態1に記載した効果に加え、以下の効果を有する。
【0109】
実施の形態2に係る検出装置100bは、複数の支承それぞれの動的特徴を、映像を撮像する撮像部からの距離に応じて補正する補正部を備え、特定部は、補正部によって補正された動的特徴を利用して、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定してもよい。
【0110】
これにより、複数の支承それぞれの動的特徴を、より精度良く算出することができる。また、補正された動的特徴を利用するため、不具合のある支承をより精度良く特定することができる。
【0111】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3に係る検出装置について説明する。実施の形態1及び実施の形態2では、検出装置100a及び検出装置100bは、撮像部を備えていない例を説明したが、実施の形態3では、検出装置は、さらに撮像部(不図示)を備える点で異なる。
【0112】
検出装置は、さらに、複数の支承の映像を同期撮像する撮像部を備える。
【0113】
なお、検出装置は、撮像部を1つ以上備えていてもよい。例えば、検出装置が撮像部を1つ備える場合、1つの撮像部で同時に同期して複数の支承それぞれの映像を撮像する。また、検出装置が2つ以上の撮像部を備える場合、これらの撮像部で同時に同期して複数の支承それぞれの映像を撮像する。
【0114】
実施の形態3に係る検出装置の動作については、実施の形態1及び実施の形態2で説明したステップS20の前に、撮像部が複数の支承の映像を同期撮像する撮像ステップ(不図示)の処理を行う。
【0115】
[効果]
実施の形態3に係る検出装置によれば、検出装置は、さらに、複数の支承の映像を同期撮像する撮像部を備えるため、外部から映像を取得しなくても、複数の支承のうち不具合のある支承を特定することができる。
【0116】
(他の実施の形態)
以上、本開示の1つ又は複数の態様に係る検出装置及び検出方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構成される形態も、本開示の1つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0117】
例えば、上記実施の形態における検出装置が備える構成要素の一部又は全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。例えば、検出装置は、取得部と、抽出部と、特定部と、を有するシステムLSIから構成されてもよい。
【0118】
システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLISは、その機能を達成する。
【0119】
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法は、LSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいは、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0120】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
【0121】
また、本開示の一態様は、このような検出装置だけではなく、検出装置に含まれる特徴的な構成部をステップとする検出方法であってもよい。また、本開示の一態様は、検出方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本開示の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
【0122】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態の検出装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0123】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、構造物を変位可能に支持する複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定する検出方法であって、同期撮像された、複数の支承を有する構造物の複数の支承それぞれの映像を取得し、上記映像に基づいて、複数の支承それぞれが有する複数の自由度に対応する動的特徴を抽出し、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定することを実行させる。
【0124】
なお、上記各実施の形態において、特定部は複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定するとしたが、特定部は複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承があるか否かを特定するとしてもよい。
【0125】
なお、上記各実施の形態において、複数の支承を有する構造物2を橋桁又は橋梁としたが、家屋などの建築物としてもよい。建築物に地震などの荷重負荷が掛かったとき、複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承の有無を特定したり、動的特徴が他の支承の動的特徴に整合していない支承を特定したりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本開示は、構造物を変位可能に支持する複数の支承のうち動的特徴が他の支承の動的特徴に整合しない支承を特定する検出装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0127】
1、1a、1b、1c、1d、1f、1g、1h 支承
2 構造物
3 橋脚
20 取得部
30 抽出部
40 補正部
50 特定部
100a、100b 検出装置
101 撮像装置
200 電車
300 検出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11