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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】軌間整正器
(51)【国際特許分類】
   E01B 35/02 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
E01B35/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021096435
(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公開番号】P2022188422
(43)【公開日】2022-12-21
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】396011211
【氏名又は名称】菅原興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】木村 長雲
(72)【発明者】
【氏名】大仁田 勉
(72)【発明者】
【氏名】三戸 敬守
(72)【発明者】
【氏名】鯉淵 啓太
(72)【発明者】
【氏名】須藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友昭
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-061129(JP,A)
【文献】特開2011-106262(JP,A)
【文献】特開2017-218846(JP,A)
【文献】特開2015-193978(JP,A)
【文献】特開2009-221732(JP,A)
【文献】米国特許第06089163(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端には基準とする側のレールの頭部を掴む基準側レールキャッチ部が設けられ、他端には外周に雄ネジ部を有するネジ棒が回転可能に設けられ、そのネジ棒を回転させる回転機構部が設けられた基準側軌間整正体と、
一端には前記基準側軌間整正体の前記ネジ棒に螺合する雌ネジ部が設けられている共に、側面にはその長手方向に複数の貫通孔が所定間隔を空けて設けられ、前記ネジ棒の回転によってスライドするスライド側軌間整正体と、
前記スライド側軌間整正体の前記貫通孔に合う貫通孔が設けられた側板が設けられると共に、前記スライド側軌間整正体に対し交換可能で、かつ、前記貫通孔に通したピンやボルト等の固定部材によって前記スライド側軌間整正体に対し取付け位置を任意に変更可能で、他方側のレールに応じた副レールキャッチ部が設けられた副レールキャッチ体とを備え
前記副レールキャッチ体の副レールキャッチ部は、L字形状であり、一対の前記副レールキャッチ体を任意の間隔を空けて前記スライド側軌間整正体に取付け、一対の前記副レールキャッチ体の副レールキャッチ部によって分岐器のクロッシング部のレールをキャッチすることを特徴とする軌間整正器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレールの軌間整正器に関し、特に、分岐器に最適な軌間整正器に関する。
【背景技術】
【0002】
レールの各部には、列車の走行に伴い繰り返しかかる列車加重によって歪みと変形が頻繁に生じるため、レールには軌間変位・水準変位・高低変位等の様々なレール変位が生じ得る。これらレール変位が増大するとレール上を走行する列車の動揺が増大し、乗り心地が悪化するのみならず、走行安定性も損なわれる。このような事態に陥らないためには、日常の巡回検査や検測車による定期的な検査によってレール変位の状態を常に把握して、不良箇所は速やかに適切な整正作業を行い常に良好な状態に保つ必要がある。
【0003】
そのため、左右のレールに上からかぶせてジャッキ状の機構を回転させることにより左右のレールの間隔を調整する小型軽量な軌間整正器が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007―247328号公報
【文献】特開2016-61129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、鉄道の分岐器ではレールが分岐したり交差するため、場所によってレールの軌間が一定でなく、上述の特許文献1,2に記載の軌間整正器のような通常の軌間整正器では、上手く軌間整正を行うことができない、という問題があった。
【0006】
特に、分岐器のクロッシング部では、レールが交差するため、上述の特許文献1,2に記載の通常の軌間整正器では、クロッシング部のレールをキャッチすることが難しく、軌間整正作業がとても困難であった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、レールが分岐し、正常な軌間が場所で変化する鉄道の分岐器に最適な軌間整正器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る軌間整正器は、一端には基準とする側のレールの頭部を掴む基準側レールキャッチ部が設けられ、他端には外周に雄ネジ部を有するネジ棒が回転可能に設けられ、そのネジ棒を回転させる回転機構部が設けられた基準側軌間整正体と、一端には前記基準側軌間整正体の前記ネジ棒に螺合する雌ネジ部が設けられている共に、側面にはその長手方向に複数の貫通孔が所定間隔を空けて設けられ、前記ネジ棒の回転によってスライドするスライド側軌間整正体と、前記スライド側軌間整正体の前記貫通孔に合う貫通孔が設けられた側板が設けられると共に、前記スライド側軌間整正体に対し交換可能で、かつ、前記貫通孔に通したピンやボルト等の固定部材によって前記スライド側軌間整正体に対し取付け位置を任意に変更可能で、他方側のレールに応じた副レールキャッチ部が設けられた副レールキャッチ体とを備え、前記副レールキャッチ体の副レールキャッチ部は、L字形状であり、一対の前記副レールキャッチ体を任意の間隔を空けて前記スライド側軌間整正体に取付け、一対の前記副レールキャッチ体の副レールキャッチ部によって分岐器のクロッシング部のレールをキャッチすることを特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
本発明に係る軌間整正器は、基準側レールキャッチ部が設けられた基準側軌間整正体に対しスライドして軌間整正を行うスライド側軌間整正体には、その長手方向に複数の貫通孔が所定間隔を空けて設けられる一方、副レールキャッチ部が設けられた副レールキャッチ体の側板にも貫通孔が設けられ、副レールキャッチ体はスライド側軌間整正体に対し取付け位置を変更して使用することができるため、レールが分岐して正常な軌間が場所で変化する鉄道の分岐器に対しても最適に軌間整正を行うことができる。
特に、副レールキャッチ体としてL字形状の副レールキャッチ部を有する副レールキャッチ体を複数使用することによってレールが交差する分岐器のクロッシング部においてもレールをキャッチすることが可能となるので、この点でもレールが分岐して正常な軌間が場所で変化する鉄道の分岐器に対しても最適に軌間整正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成するスライド側軌間整正体に第1副レールキャッチ体を装着して分岐器のクロッシング部に装着した状態を示す正面図である。
図2】本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成するスライド側軌間整正体に第1副レールキャッチ体を装着して分岐器のクロッシング部に装着した状態を示す平面図である。
図3】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成する基準側軌間整正体の平面図、正面図である。
図4】本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成する基準側軌間整正体のレールキャッチ部をレールと共に拡大して示す拡大正面図である。
図5】本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成する基準側軌間整正体のレールキャッチ部をレールと共に拡大して示す拡大平面図である。
図6】本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成する基準側軌間整正体のレールキャッチ部をレールと共に拡大して示す拡大側面図である。
図7】(a)~(e)それぞれ本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成するスライド側軌間整正体の平面図、正面図、左側面図、右側面図、A-A線断面図である。
図8】(a)~(d)それぞれ本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成する第1副レールキャッチ体の正面図、平面図、右側面、B-B線断面図である。
図9】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成する第2副レールキャッチ体の正面図、平面図である。
図10】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成する第2副レールキャッチ体の左側面図、図9(a)におけるC-C線断面図である。
図11】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の軌間整正器を構成するスライド側軌間整正体に第2副レールキャッチ体を装着して分岐器に取付けた状態を示す平面図、正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態の軌間整正器1の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態はあくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
<本発明に係る実施の形態の軌間整正器1の構成>
本発明に係る実施の形態の軌間整正器1は、列車が通る一対のレール間の間隔である軌間を整正する機器であって、特に、分岐器における軌間を整正可能な軌間整正器であり、基準側軌間整正体11と、スライド側軌間整正体12と、複数種類(ここでは、例えば、2種類とする。)の第1副レールキャッチ体13および第2副レールキャッチ体14とを有する。
【0013】
(基準側軌間整正体11)
基準側軌間整正体11は、図3(a),(b)に示すように長尺の基準側ロッド部11aの一端に基準とする側のレールRの頭部を掴む正面視、コ字形状の基準側レールキャッチ部11bが設けられている一方、他端には外周に雄ネジ部を有するネジ棒11cが回転可能に設けられていると共に、そのネジ棒11cを回転させるラチェット式回転機構部11d等が設けられている。
【0014】
(基準側ロッド部11a)
基準側ロッド部11aは、断面が正方形の棒状の鋼材等から構成されており、その長さは、軌間Gに応じた長さのものが用意されている。
【0015】
(レールキャッチ部11b)
レールキャッチ部11bは、図4図6等に示すように基準側ロッド部11aの外側端部に設けられた一対のレールキャッチ部取付板部11b1,11b1と、レールキャッチ部取付板部11b1,11b1間に溶接等して設けられ、レールRの頭部に上方から被さるコ字形状のレールキャッチ部本体11b2と、一対のレールキャッチ部取付板部11b1,11b1それぞれの外側に設けられ、平面視、コ字形状で、レールRの上を走行するローラ11b31を回転可能に支持する回転軸11b32が設けられた一対のローラ支持部11b3,11b3とを有する。尚、一対のローラ支持部11b3,11b3には、ローラ11b31が回転軸11b32を中心に回転する際、回転軸11b32の軸心方向にスライドしても容易に初期位置に戻るようにローラ11b31の両側にスプリング11b33が設けられている。
【0016】
レールキャッチ部本体11b2は、レールR頭部の上側面(踏み面)に当接するレール上側当接板部11b21と、レールRの頭部の内側に位置して軌間整正を行う際、レールR頭部の内側面に当接して軌間を広げるレール内側当接板部11b22と、レールRの頭部の外側に位置して軌間整正を行う際、レールR頭部の外側面に当接して軌間を狭めるレール外側当接板部11b23とを備え、正面視コ字形状に形成されている。
【0017】
ここで、レールRの上方からレールキャッチ部本体11b2を容易に被せることができるように、レール内側当接板部11b22とレール外側当接板部11b23との間の間隔W1は、図3に示すように、レールRの頭部の幅W2よりも大きく、すなわちW1>W2の関係になるように形成している。
【0018】
(ネジ棒11c)
ネジ棒11cは、基準側ロッド部11aにおけるレールキャッチ部11bが設けられた一端とは反対側、つまり図3(a),(b)上、右側の基準側ロッド部11aの端部に回転可能に支持されており、その外周面には雄ネジ部11c1が設けられており、その回転によってスライド側軌間整正体12を近付けたり遠ざけるようにスライドさせて軌間整正を行う。
【0019】
(ラチェット式回転機構部11d)
ラチェット式回転機構部11dは、基準側ロッド部11aに回転可能に支持されたネジ棒11cを回転させるもので、ネジ棒11cの雄ネジ部11c1が設けられていない箇所に基部11d1側のラチェット歯(図示せず。)が噛合しており、作業員がハンドル部11d2を把持して任意の角度だけ往復させることによりネジ棒11cを一方向に回転させることが出来ると共に、回転方向切り替え駒(図示せず。)による切り替えによって回転方向を切り替えることが出来るように構成されている。
【0020】
(スライド側軌間整正体12)
スライド側軌間整正体12は、上面12a、下面12bおよび左右の側面12c,12cを有する断面が正方形上で長尺の鋼管等から構成されており、基準側軌間整正体11の一端には基準側軌間整正体11のネジ棒11cに螺合する雌ネジ部12d1が形成された雌ネジ体12dが設けられ、基準側軌間整正体11のネジ棒11cに雌ネジ体12dが螺合して回転することにより、基準側軌間整正体11に対し近付けたり遠ざかるように構成されている。
【0021】
また、スライド側軌間整正体12の左右の側面12c,12cには、長手方向に所定間隔を空けて複数(ここでは、図1等に示すように例えば17個とする。)の貫通孔12c1が設けられており、複数の貫通孔12c1を利用して複数種類の第1副レールキャッチ体13および第2副レールキャッチ体14を交換可能に装着するものである。
【0022】
(第1副レールキャッチ体13)
第1副レールキャッチ体13は、分岐器のクロッシング部用の分割キャッチ、すなわち第1副レールキャッチ体13を2組使用することによって分岐器のクロッシング部のキャッチが可能となるもので、所定幅を有するL字形状の第1副レールキャッチ部13aと、第1副レールキャッチ部13aの上部に溶接等によって接合され、スライド側軌間整正体12に交換可能に取り付けられる第1副レールキャッチ取付部13bと、第1副レールキャッチ取付部13bの両側に設けられ、平面視、コ字形状で、レールRの上を走行するローラ13c1を回転可能に支持する回転軸13c2が設けられた一対のローラ支持部13c,13cとを有する。尚、一対のローラ支持部13c,13cには、ローラ13c1が回転軸13c2中心に回転する際、回転軸13c2の軸心方向にスライドしても容易に初期位置に戻るようにローラ13c1の両側にスプリング13c3を設けている。
を有する。
【0023】
第1副レールキャッチ部13aは、下方に延びレールRの頭部の内側または外側のいずれか一方に当接するレール頭部側面当接部13a1と、レール頭部当接部13a1に対し垂直に折れ曲がり下面がレールRの上面(踏面)に当接するレール頭部上面当接部13a2とから構成されている。
【0024】
第1副レールキャッチ取付部13bは、第1副レールキャッチ部13aのレール頭部上面当接部13a2上面に溶接等によって接合された接合板13b1と、その接合板13b1の左右両側からスライド側軌間整正体12の左右の側面12c,12c外側にそれぞれ重なるように間隔を空けて立設し、スライド側軌間整正体12の左右の側面12c,12cに設けられた複数の貫通孔12c1と同じ内径、かつ、間隔で3つ設けられた貫通孔13b21を有する一対の取付用立設板13b2,13b2とを有する。
【0025】
(第2副レールキャッチ体14)
第2副レールキャッチ体14は、分岐器のクロッシング部以外のレールキャッチであり、図9および図10に示すように所定幅を有するコ字形状の第2副レールキャッチ部14aと、第2副レールキャッチ部14aの上部に溶接等によって接合され、スライド側軌間整正体12に交換可能に取り付けられる第2副レールキャッチ取付部14bと、ローラ支持部14c,14cとを有する。
【0026】
第2副レールキャッチ部14aは、基準側軌間整正体11のレールキャッチ部本体11b2と同様にコ字形状に構成されたもので、レールR頭部の上側面(踏み面)に当接するレール上側当接板部14a1と、レールRの頭部の内側に位置して軌間整正を行う際、レールR頭部の内側面または外側面に当接する一対のレール側面当接板部14a2,14a2とを備え、レールRの上方から第2副レールキャッチ部14aを容易に被せることができるよう、基準側軌間整正体11の基準側レールキャッチ部11bと同様に一対のレール内側当接板部14a2,14a2との間の間隔は、レールRの頭部の幅よりも大きく形成している。
【0027】
第2副レールキャッチ取付部14bは、第2副レールキャッチ部14aのレール頭部上面当接部14a1上面に溶接等によって接合される接合板14b1と、その接合板14b1の左右両側からスライド側軌間整正体12の左右の側面12c,12c外側にそれぞれ重なるように間隔を空けて立設し、スライド側軌間整正体12の左右の側面12c,12cに設けられた複数の貫通孔12c1と同じ内径、かつ、間隔で10個設けられた貫通孔14b21を有する一対の取付用立設板14b2,14b2とを有する。
【0028】
ローラ支持部14c,14cは、図9および図10に示すように第2副レールキャッチ取付部14bの取付用立設板14b2,14b2外側に溶接等して設けられたもので、基準側軌間整正体11のローラ支持部11b3,11b3と同様に、平面視、コ字形状で、レールRの上を走行するローラ14c1を回転可能に支持する回転軸14c2を設けると共に、ローラ14c1が回転軸14c2を中心に回転する際、回転軸14c2の軸心方向にスライドしても容易に初期位置に戻るようにローラ14c1の両側にスプリング14c3を設けている。
【0029】
<本発明に係る実施形態の軌間整正器1の使用方法>
次に、以上のように構成された本発明に係る実施形態の軌間整正器1の使用方法について、図面を参照して説明する。
【0030】
(分岐器のクロッシング部Rsの軌間整正を行う場合)
分岐器のクロッシング部Rsの軌間整正を行う場合は、基準側軌間整正体11側は通常、基本レール(ストックレール)であるため、図1等に示すように基準側軌間整正体11側のレールキャッチ部11bを使用してレールRの頭部をキャッチする。
【0031】
これに対し、スライド側軌間整正体12側は、図1および図2に示すように分岐器のクロッシング部Rsとなり、スライド側軌間整正体12側通常のレールRの頭部をキャッチする第2副レールキャッチ取付部14bは使用不可なため、図1に示すように、スライド側軌間整正体12へは、第1副レールキャッチ体13を2個使用して、分岐器のクロッシング部Rsにおける軌間整正を行うべき箇所に応じて装着する。
【0032】
具体的には、2個の第1副レールキャッチ体13それぞれの第1副レールキャッチ取付部13bの一対の取付用立設板13b2,13b2の3つの通孔13b21をスライド側軌間整正体12の左右の側面12c,12cの一対の取付用立設板14b2,14b2の複数(ここでは、図1等に示すように例えば17個とする。)の貫通孔12c1とを位置合わせをしてピンやボルト等の固定部材を通して分岐器のクロッシング部Rsの幅に合わせる。
【0033】
そのため、分岐器のクロッシング部RsはレールRが交差している点から場所によって交差するレールRが近接してレールをキャッチすることが困難になるが、本実施形態では、2個の第1副レールキャッチ体13,13を使用してスライド側軌間整正体12の17個の貫通孔12c1を任意に選択して第1副レールキャッチ体13,13それぞれのレール頭部側面当接部13a1、13a1間の間隔を変えることによって対応することができる。
【0034】
そして、分岐器のクロッシング部Rsの幅に応じて2個の第1副レールキャッチ体13,13の固定が完了すると、作業員は、基準側軌間整正体11のハンドル部11d2を把持して回転させてネジ棒11cを一方向に回転させ、ネジ棒11cの回転により基準側軌間整正体11に対しスライド側軌間整正体12を近付けたり遠ざけて軌間整正を行う。
【0035】
(分岐器のクロッシング部Rs以外で軌間整正を行う場合)
分岐器のクロッシング部Rs以外で軌間整正を行う場合、基準側軌間整正体11側は通常、基本レール(ストックレール)であるため、図1等に示すように基準側軌間整正体11側のレールキャッチ部11bを使用してレールRの頭部をキャッチする。
【0036】
これに対し、スライド側軌間整正体12側は、分岐器であっても、図1および図2に示すように基準側軌間整正体11側と同様に通常のレールRと同じであるため、スライド側軌間整正体12に対し第2副レールキャッチ体14を装着する。
【0037】
具体的には、第2副レールキャッチ体14の一対の取付用立設板14b2,14b2の10個の通孔13b21の内、全ての通孔13b21または例えば3,4個の通孔13b21を使用して、スライド側軌間整正体12の左右の側面12c,12cに設けられた17個の貫通孔12c1の内から軌間整正を行うべき部分に合致した10個の貫通孔12c1の位置を合わせピンまたはボルト等を通して必要あればナットによって締結してスライド側軌間整正体12に対し第2副レールキャッチ体14を任意の位置に固定する。
【0038】
そして、スライド側軌間整正体12への第2副レールキャッチ体14の取り付けが完了すると、作業員は、基準側軌間整正体11のハンドル部11d2を把持して回転させてネジ棒11cを一方向に回転させ、ネジ棒11cの回転により基準側軌間整正体11に対しスライド側軌間整正体12を近付けたり遠ざけて軌間整正を行う。
【0039】
<本発明に係る実施形態の軌間整正器1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態の軌間整正器1では、一端には基準とする側のレールRの頭部を掴む基準側レールキャッチ部11bが設けられ、他端には外周に雄ネジ部11c1を有するネジ棒11cが回転可能に設けられ、そのネジ棒11cを回転させるラチェット式回転機構部11dが設けられた基準側軌間整正体11と、一端には基準側軌間整正体11のネジ棒11cに螺合する雌ネジ部12d1が設けられている共に、側面には複数の貫通孔12c1が長手方向に所定間隔を空けて設けられ、雌ネジ部12d1に螺合したネジ棒11cの回転によって長手方向にスライドするスライド側軌間整正体12と、スライド側軌間整正体12の貫通孔12c1に合う貫通孔13b21,14b21が設けられた側板13b、14bが設けられると共に、スライド側軌間整正体12に対し交換可能で、かつ、任意の貫通孔12c1に通されたピンやボルト等の固定部材によって前記スライド側軌間整正体に対し取付け位置を任意に変更可能で、他方側のレールに応じた第1副レールキャッチ部13aまた第2副レールキャッチ部14aが設けられた第1副レールキャッチ体13および第2副レールキャッチ体14とを備える。
【0040】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、基準側レールキャッチ部11bが設けられた基準側軌間整正体11に対しスライドして軌間整正を行うスライド側軌間整正体12には、複数の貫通孔12c1が長手方向に所定間隔を空けて設けられる一方、第1副レールキャッチ部13aまた第2副レールキャッチ部14aが設けられた第1副レールキャッチ体13および第2副レールキャッチ体14の側板13b,14bにも貫通孔13b21、14b21が設けられ、第1副レールキャッチ体13および第2副レールキャッチ体14はスライド側軌間整正体12に対し取付け位置を変更して使用することができるため、レールが分岐して正常な軌間が場所で変化する鉄道の分岐器に対しても最適に軌間整正を行うことができる。
【0041】
特に、副レールキャッチ体としてL字形状の副レールキャッチ部13aを有する第1副レールキャッチ体13を2つ使用することによってレールが交差する分岐器のクロッシング部Rsにおいてもクロッシング部Rsのレールをキャッチすることが可能となるので、この点でもレールが分岐して正常な軌間が場所で変化する鉄道の分岐器に対しても最適に軌間整正を行うことができる。
【0042】
尚、上記実施形態の説明では、基準側軌間整正体11に所定長さを有する基準側ロッド部11aを設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、基準側ロッド部11aを省略してラチェット式回転機構部11dの端部に基準側レールキャッチ部11bを連結して全長が短い基準側軌間整正体11を構成しても良いし、さらには、基準側ロッド部11aの長さを適宜変更して基準側レールキャッチ部11bとラチェット式回転機構部11dに連結することにより基準側軌間整正体11の長さを変更しても勿論良い。スライド側軌間整正体12も同様でその長さ適宜変更可能で任意の長さであり、左右の側面12c,12cに間隔を空けて設ける複数の貫通孔12c1の数も17個に限らず、例えば、17個以下の5個や10個でも勿論良いし、17個以上の20個でも30個でも軌間調整行う現場に応じた長さや数に設定することができる。
【0043】
また、上記実施形態の説明では、基準側軌間整正体11の基準側レールキャッチ部11bにはローラ11b31等を有するローラ支持部11b3を設け、第2副レールキャッチ体14の第2副レールキャッチ部14aにはローラ14c1等を有するローラ支持部14cを設けて説明したが、本発明では、これに限らず、基準側軌間整正体11の基準側レールキャッチ部11bではローラ11b31等を有するローラ支持部11b3を省略し、第2副レールキャッチ体14の第2副レールキャッチ部14aではローラ14c1等を有するローラ支持部14cを省略しても勿論良い。これに対し、第1副レールキャッチ体13にはローラを設けないで説明したが、第1副レールキャッチ体13にローラ等を有するローラ支持を設けるようにしても勿論良い。つまり、レールキャッチ部にローラを設けるか否かは任意である。
【0044】
また、上記実施形態の説明では、回転機構部として基部11d1側のラチェット歯(図示せず。)が噛合してハンドル部11d2を作業員が掴んで押し引きすることによってネジ棒11cを回転させるラチェット式回転機構部11dによって説明したが、本発明ではこれに限らず、スパナの工具やインパクトドライバー等の電動工具(図示せず。)を使用してネジ棒11cを回転させる工具用の回転機構部を設けるようにしても勿論良い。
【符号の説明】
【0045】
1 軌間整正器
11 基準側軌間整正体
11a 基準側ロッド部
11b 基準側レールキャッチ部
11b1,11b1 レールキャッチ部取付板部
11b2 レールキャッチ部本体
11b21 レール上側当接板部
11b22 レール内側当接板部
11b23 レール外側当接板部
11b3,11b3 ローラ支持部
11b31 ローラ
11b32 回転軸
11b33 スプリング
11c ネジ棒
11d ラチェット式回転機構部
11d1 基部
11d2 ハンドル部
12 スライド側軌間整正体
12a 上面
12b 下面
12c,12c 左右の側面
12c1 複数の貫通孔
12d 雌ネジ体
12d1 雌ネジ部
13 第1副レールキャッチ体
13a 第1副レールキャッチ部
13a1 レール頭部側面当接部
13a2 レール頭部上面当接部
13b 第1副レールキャッチ取付部
13b1 接合板
13b2,13b2 取付用立設板
14 第2副レールキャッチ体
14a 第2副レールキャッチ部
14a1 レール上側当接板部
14a2 レール内側当接板部
14a3 レール外側当接板部
14b 第2副レールキャッチ取付部
14b1 接合板
14b2,14b2 取付用立設板
14c,14c ローラ支持部
14c1 ローラ
14c2 回転軸
14c3 スプリング
R レール
Rs クロッシング部
図1
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