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特許7382618情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20231110BHJP
【FI】
G16H50/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019041002
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020144623
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519078787
【氏名又は名称】小林 靖幸
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖幸
【合議体】
【審判長】渡邊 聡
【審判官】松田 直也
【審判官】後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-18415(JP,A)
【文献】特開2017-111755(JP,A)
【文献】特開2018-120430(JP,A)
【文献】特開2000-067139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して実施した問診の内容を含む情報を、患者情報として取得する患者情報取得手段と、
前記患者情報に基づき、前記患者の有する潜在的な疾患の候補を推定し、当該候補を示す第1情報を生成する第1生成手段と、
前記第1情報を、医療従事者に対して提示する第1提示手段と、
前記第1情報に基づいて患者が重篤な疾患を罹患しているか否かを特定する第1推論を利用したいという第1要望前記第1情報に基づいて前記患者が罹患している疾患の候補を絞り込む第2推論を利用したいという第2要望、及び前記第1情報に基づいて前記患者が特定の疾患を罹患しているか否かを特定する第3推論を利用したいという第3要望のうち、前記医療従事者により選択された要望を選択要望として、当該選択要望を実現するため前記医療従事者が前記患者に追加で質問するべき事項を示す第2情報を、前記選択要望で特定される推論及び前記第1情報に基づいて生成する第2生成手段と、
前記第2情報を、前記医療従事者に対して提示する第2提示手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
情報処理装置が実行する情報処理方法において、
患者に対して実施した問診の内容を含む情報を、患者情報として取得する患者情報取得ステップと、
前記患者情報に基づき、前記患者の有する潜在的な疾患の候補を推定し、当該候補を示す第1情報を生成する第1生成ステップと、
前記第1情報を、医療従事者に対して提示する第1提示ステップと、
前記第1情報に基づいて患者が重篤な疾患を罹患しているか否かを特定する第1推論を利用したいという第1要望前記第1情報に基づいて前記患者が罹患している疾患の候補を絞り込む第2推論を利用したいという第2要望、及び前記第1情報に基づいて前記患者が特定の疾患を罹患しているか否かを特定する第3推論を利用したいという第3要望のうち、前記医療従事者により選択された要望を選択要望として、当該選択要望を実現するため前記医療従事者が前記患者に追加で質問するべき事項を示す第2情報を、前記選択要望で特定される推論及び前記第1情報に基づいて生成する第2生成ステップと、
前記第2情報を、前記医療従事者に対して提示する第2提示ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項3】
コンピュータに、
患者に対して実施した問診の内容を含む情報を、患者情報として取得する患者情報取得ステップと、
前記患者情報に基づき、前記患者の有する潜在的な疾患の候補を推定し、当該候補を示す第1情報を生成する第1生成ステップと、
前記第1情報を、医療従事者に対して提示する第1提示ステップと、
前記第1情報に基づいて患者が重篤な疾患を罹患しているか否かを特定する第1推論を利用したいという第1要望前記第1情報に基づいて前記患者が罹患している疾患の候補を絞り込む第2推論を利用したいという第2要望、及び前記第1情報に基づいて前記患者が特定の疾患を罹患しているか否かを特定する第3推論を利用したいという第3要望のうち、前記医療従事者により選択された要望を選択要望として、当該選択要望を実現するため前記医療従事者が前記患者に追加で質問するべき事項を示す第2情報を、前記選択要望で特定される推論及び前記第1情報に基づいて生成する第2生成ステップと、
前記第2情報を、前記医療従事者に対して提示する第2提示ステップと、
を含む制御処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、初期診断を行う医療従事者は、患者との問診や臨床所見等から、何れの疾患の可能性が高いかを推論し、必要に応じて適切な専門医に紹介する必要がある。
例えば、特許文献1には、特定の疾患であることを肯定や否定する要因を、カルテ等の文章から抽出し、確定診断の根拠の説明を作成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-138402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1を含む従来技術において、問診やカルテから、何れの疾患の可能性が高いかを推論や特定するのは、医療従事者である。そのため、医療従事者の経験量や知識体系により、個人差が大きくなってしまう。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、何れの疾患の可能性が高いかを推論するための情報を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、患者の初期診断に係る臨床推論をするための情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の情報処理装置は、
患者に関する情報を含む情報を、患者情報として取得する患者情報取得手段と、
前記患者情報に基づき、前記患者に関連し得る疾患に関する第1情報を生成又は取得する第1生成取得手段と、
前記第1情報又は前記第1情報に基づく情報を、医療従事者に対して提示する提示手段と、
を備える。
本発明の一態様の情報処理方法及びプログラムの夫々は、上述の本発明の一態様の情報処理装置に対応する情報処理方法及びプログラムの夫々である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、患者の初期診断に係る臨床推論をするための情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の情報処理装置の一実施形態に係る推論支援端末を用いた情報処理の流れの例を示す図である。
図2図1の推論支援端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図2の推論支援端末の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4図2の推論支援端末に表示される、患者情報及びオリジナルプロブレムリスト表示画面の一例である。
図5図2の推論支援端末に表示される、オリジナルプロブレムリスト及び医学用語プロブレムリスト表示画面の一例である。
図6図2の推論支援端末に表示される、レッドフラッグ追加情報画面の一例である。
図7図2の推論支援端末に表示される、疾患絞込追加情報画面の一例である。
図8図2の推論支援端末に表示される、クライテリア追加情報画面の一例である。
図9図2の推論支援端末に表示される、臨床推論支援画面の一例である。
図10図2の推論支援端末に表示される、診断仮説画面の一例である。
図11図2の推論支援端末に表示される、仮説演繹法画面の一例である。
図12図2の推論支援端末に表示される、初期診断画面の一例である。
図13図2の推論支援端末に表示される、OPQRST追加情報画面の一例である。
図14図2の推論支援端末に表示される、アルゴリズムアプローチ追加情報画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0010】
まず、本実施形態の説明を行うにあたり、その前提となる医師による初期診断のプロセスについて簡単に説明する。
医療従事者である医師Dは、初期診断に係るプロセスにおいて、患者である患者Pに対して問診を行い、その内容に基づき臨床推論を行うことで患者Pの病状や疾患が明らかではない状況において、初期診断を実施する。
この臨床推論とは、医師Dが、初期診断における基本的な考え方(思考プロセス)や意思決定の過程を説明する推論であり、特に当該分野を専門とする医師や研究者の間では、ある程度体系化された理論として理解されている。
本発明の情報処理装置の一実施形態に係る推論支援端末は、典型的には、初期診断に慣れていない医師Dに対して、初期診断の精度の向上や初期診断に関係するスキルの向上(教育目的)において利用される。
【0011】
図1は、本発明の情報処理装置の一実施形態に係る推論支援端末の適用対象となるサービス(以下、「本サービス」と呼ぶ)の流れの一例を説明する図である。
図1には、医師Dによる診察を希望する患者Pと、患者Pの診察を行う医師Dと、医師Dにより利用される推論支援端末1とが示されている。なお、図1の例では、医師Dに対して本サービスの提供を行っている者を、サービス提供者Mとして、以降の説明を行う。
【0012】
推論支援端末1は、上述の通り、医師Dにより利用される。推論支援端末1は、主として、初期診断における臨床推論の過程において、医師Dによる臨床推論の過程を補助するために利用される。
また、図1の例では、患者Pが主として訴えている症状である主訴(Chief Complaint)は、胸痛(Chest Pain)である。推論支援端末1は、このような患者Pに対して、初期診断を実施する医師Dによって利用される。
以降、このような前提の下、本サービスの流れの一例について、各ステップの夫々について、全体の流れを説明していく。
【0013】
ステップST1において、医師Dは患者Pに対して問診を実施する。ここで、問診とは、医師Dが診断に際して、現在の自覚症状、年齢や性別、患者Pやその家族の病歴等を質問することであるが、ここで言う問診は、必ずしも医療行為としての問診には限られず、広く一般的な質問等であっても、これに含まれる。
【0014】
ステップST2において、医師Dは、問診の内容を推論支援端末1に入力する。ここで医師Dにより入力された情報を以降の説明では、患者情報と呼ぶ。
ここで、問診の内容とは、例えば、医師Dが患者Pに対して問診を行った結果に関するテキストデータ(以下、「問診結果」と呼ぶ)等である。ただし、問診結果は、患者Pが医師Dの質問に対して返答した結果のみに限られない。
即ち、具体的に例えば、患者Pが診察前に記入した問診票の内容、患者Pのバイタルサイン、患者Pのカルテ、患者Pの種々の検査結果、患者Pの返答を記録した音声データ、患者Pの状態を説明する説明文章、医師Dが気になった事項を記した文章等が含まれてもよい。
換言すれば、医師Dは、問診結果を含み、初期診断に係る臨床推論に資する様々な情報を、患者情報として推論支援端末1に入力する。
【0015】
ステップST3において、推論支援端末1は、ステップST2において入力された患者情報に基づき、患者Pの有する潜在的な疾患の候補を示す情報である疾患情報を生成する。
即ち、推論支援端末1は、医師Dにより入力された患者情報、即ち、臨床推論に資する様々な情報から、所定のアルゴリズムに基づき、一次的な患者Pの有する潜在的な疾患の候補を決定する。なお、ここで利用するアルゴリズムは、サービス提供者Mや医師D等が任意に決定することができるが、具体的なアルゴリズムの一例について、図3等を使って後述する。
図1の例では、推論支援端末1は、患者情報に含まれる、患者Pの主訴が胸痛であるという情報等から、所定のアルゴリズムによる演算を行った結果として、例えば、患者Pの有する潜在的な疾患の候補として「急性心筋梗塞」や「逆流性食道炎」が決定する。
【0016】
ステップST4において、推論支援端末1は、ステップST3において生成された疾患情報を医師Dに対して、提示する。
医師Dは、提示された疾患情報を確認することで、まずは一次的に患者Pが罹患している疾患の候補を確認する。しかしながら、例えば、医師Dが初期診断に慣れていないような場合には、医師Dが患者Pに問診で質問しなければならない事項を質問し忘れたり、患者Pの返答が不十分であるにも関わらず問診を終了してしまうといった事態も十分に考えられる。そのような場合には、医師Dは、患者Pが罹患している疾患を特定することができない。
具体的に例えば、医師Dが、患者Pが罹患している可能性のある複数の疾患の候補から、真に患者Pが罹患している疾患を特定することができない場合が想定される。
また例えば、医師Dは、所定の疾患に患者Pが罹患している可能性が極めて高いと考えているものの、確信を持つことができないような場合が想定される。
また例えば、医師Dが、患者Pが罹患している疾患を特定することができない場合でも、患者Pが致命的な疾患に罹患している可能性はないかということを優先して検討したいような場合も想定される。
【0017】
そこで、ステップST5において、医師Dは、自身が正確に初期診断を実施するにあたり必要となる要望を、推論支援端末1に入力する。
ここで言う要望とは、医師Dが正確に初期診断を実施するために資する要望であれば足りる。そして、具体的に本実施形態において、推論支援端末1は、関連する機能として、以下の3つの機能を備えることができる。
即ち、推論支援端末1は、医師Dからの要望に応じて、患者Pが重篤な疾患を罹患しているか否かを特定する機能、患者Pが罹患している疾患の候補を絞り込む機能、患者Pが特定の疾患を罹患しているか否かを特定する機能がある。
【0018】
ステップST6において、推論支援端末1は、ステップST5で入力された要望情報に基づき、医師Dが患者Pに追加で質問するべき事項を示す追加情報を生成する。
なお、ここでは、上述の推論支援端末1の機能のうち、重篤な疾患を罹患しているか否かを特定する機能に関連する追加情報が生成された例について説明する。
具体的に例えば、推論支援端末1は、急性心筋梗塞等の重篤な疾患であるか否かを特定する、胸の痛みの発生が「突発的」であったという兆候を調べるべきという追加情報を、生成する。
【0019】
ステップST7において、推論支援端末1は、ステップST6において生成された追加情報を医師Dに対して、提示する。
【0020】
ステップST8において、医師Dは、ステップST7において提示された追加情報に基づき、患者Pに対して、追加の問診を行う。
【0021】
ステップST9において、医師Dは、追加の問診の内容を推論支援端末1に入力する。ここで、医師Dに入力された追加の問診の内容は、以下、追加問診結果と呼ぶ。そして、上述の患者情報には、この追加問診結果も含まれ得る。
【0022】
ステップST10において、推論支援端末1は、ステップST9において入力された追加問診結果を含む患者情報に基づき、新たな疾患情報(以下、「更新後疾患情報」と呼ぶ)を生成する。
【0023】
ステップST11において、推論支援端末1は、ステップST10において生成された更新後疾患情報を医師Dに対して、提示する。
【0024】
ステップST12において、医師Dは、ステップST11において提示された更新後疾患情報に基づき、初期診断として、患者Pが罹患している疾患の特定を行う。
この更新後疾患情報においては、上述の疾患情報に比べて、患者Pのより詳細な情報等に基づき、患者Pが罹患している疾患の候補が示されているため、医師Dは、この更新後疾患情報を、より確度の高い情報として利用できることが期待される。
【0025】
なお、推論支援端末1は、疾患情報として、疾患の夫々を、重篤な疾患と、通常の疾患との区別する情報を含んで生成することができる。ここで、重篤な疾患とは、大規模な病院や緊急による対応が必要な疾患である。また、通常の疾患とは、経過観察や通常の処方薬等による対応が可能な疾患である。
また、推論支援端末1は、疾患情報として、患者Pが有する潜在的な疾患の候補の夫々における、当該疾患らしさの程度(以下、「疾患らしさ」と呼ぶ)の情報を含むことができる。また、推論支援端末1は、疾患情報として、患者情報のうち、何れの内容が、疾患の候補の夫々の疾患らしさを向上又は下降させているかの情報を含むことができる。
【0026】
本サービスは、概ね、このような一連の流れを含み実施される。本サービスの提供を受ける医師Dは、本サービスを利用することにより、例えば、以下のようなメリットを得ることができる。
【0027】
医師Dは、推論支援端末1を用いて、初期診断に係る臨床推論を行うことによって、臨床推論の思考のプロセスを実践することができる。これにより、医師Dは、単に通常の業務として初期診断を行うよりも、初期診断の精度の向上や初期診断に関係するスキルの向上をすることができる可能性が高まる。
【0028】
また、医師Dは、推論支援端末1を用いて、初期診断に係る臨床推論を行うことによって、患者情報から、患者Pが罹患している疾患の候補を疾患情報として取得できる。これにより、患者情報と疾患の候補との関係性を学習することができる。
【0029】
また、医師Dは、推論支援端末1を用いて、初期診断に係る臨床推論を行う過程において、種々の追加情報を用いることができる。即ち、医師Dは、患者Pが重篤な疾患を罹患しているか否かを特定する項目や、患者Pが罹患している疾患の候補を絞り込む項目や、患者Pが特定の疾患を罹患しているか否かを特定する項目の、情報を得ることができる。これにより、医師Dは、どのような追加の問診を行えば、疾患を特定し、初期診断に結び付けることができるのかを学習することができる。
【0030】
また、仮に、医師Dが初期診療に係る臨床推論のスキルが劣っている場合であっても、医師Dは、推論支援端末1を用いることにより、初期診断に係る臨床推論を所定の質で実行することができる。
【0031】
ここで、上述の疾患情報の生成において利用されるアルゴリズムについて簡単に説明する。ただし、後述する事後オッズを含み、採用されるアルゴリズムは、あくまでも例示であり、サービス提供者Mや医師D等が任意に決定することができる。
【0032】
上述のステップST3に関し、推論支援端末1は、患者情報に基づき、「事後オッズ」を演算する。
ここで、オッズとは、患者が所定の疾患である確率を示す指標であり、0から正の無限大の間の数値を取り、オッズが0に近ければ近い程、「疾患らしさ」が低く、オッズが高い程、「疾患らしさ」が高いことを意味する。
さらに、「事前オッズ」と「事後オッズ」という概念について説明する。
「事前オッズ」とは、予測される、ある疾患の存在確率を示す指標(オッズ)である。そして、「事後オッズ」とは、患者情報に含まれるリスクや症状等が発生した事後において予測される、ある疾患の存在確率を示す指標(オッズ)である。
なお、具体的には、「事後オッズ」は、「事前オッズ」に対して、複数の事項の夫々に対応する尤度比(Likelihood Ratio、以下、「LR」と適宜呼ぶ)の夫々を積算することにより算出することができる。
【0033】
具体的には例えば、救急外来において、突発性頭痛患者がクモ膜下出血である事前オッズが1.4(事前確率に換算すると60%)とする。実際の患者Pが「女性」である場合、尤度比は1.1である。また、患者Pに「高血圧の既往」がある場合、尤度比は2.5である。この場合、事後オッズは、尤度比と積をとった結果である、およそ4.1(事後確率に換算すると80%)となる。その結果、この患者は、クモ膜下出血の確率が高いと初期診断される。
【0034】
以上、疾患らしさとして事後オッズを採用した例における、推論支援端末1の事後オッズの計算アルゴリズムについて説明した。
【0035】
図1は、本発明の情報処理装置の一実施形態に係る推論支援端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0036】
推論支援端末1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20と、を備えている。
【0037】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0038】
CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。
【0039】
出力部16は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報を画像や音声として出力する。
入力部17は、キーボードやマウス等で構成され、各種情報を入力する。
【0040】
記憶部18は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置(図5の例ではサーバ2や工程制御端末3)との間で通信を行う。
【0041】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア31が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア31から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。
また、リムーバブルメディア31は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0042】
図3は、図2の推論支援端末の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0043】
図3に示すように、推論支援端末1のCPU11においては、患者情報取得部101と、医学用語変換部102と、事後オッズ演算部103と、疾患情報生成部104と、提示部105と、要望受付部106と、追加情報生成部107と、鑑別診断取得部108と、学習部109とが機能する。
さらに、推論支援端末1の記憶部18の一領域には、疾患尤度比DB300と、レッドフラッグDB400と、クライテリアDB500と、学習結果DB600とが設けられる。
【0044】
患者情報取得部101は、患者Pに関する情報を含む情報を、患者情報として取得する。
上述の通り、患者情報には、問診結果のみならず、例えば、患者Pが診察前に記入した問診票の内容、患者Pのバイタルサイン、患者Pのカルテ、患者Pの種々の検査結果、患者Pの返答を記録した音声データ、患者Pの状態を説明する説明文章、医師Dが気になった事項を記した文章等が含まれてもよい。
【0045】
医学用語変換部102は、患者情報取得部101で取得された患者情報を、医学用語に変換する。
具体的に例を用いて説明する。例えば、医学用語変換部102は、患者情報取得部101で取得された患者情報のうちの問診結果から、患者Pが罹患している疾患を特定するために必要となるキーワードを抽出し、第一次的なプロブレムリスト(以下、「オリジナルプロブレムリスト」と呼ぶ)を生成する。
なお、このようなキーワードの抽出は、例えば、形態素解析等の既存の技術を利用して実行してもよい。
そして、このようにして生成されたオリジナルプロブレムリストに対して、医学用語変換部102は、オリジナルプロブレムリストに含まれる各キーワードを、所定の方式に基づき医学に一般的に利用可能な医学用語へと変換し、新たなプロブレムリスト(以下、「医学用語プロブレムリスト」と呼ぶ)を生成する。
なお、医学用語プロブレムリストに記載される医学用語は、患者Pの具体的な回答に含まれるキーワードを、医学的に分類し、より上位の概念として置き換えられた用語である。また、ここで言う医学用語とは、例えば、「高血圧症」、「胸痛」等である。なお、普遍化された医学用語は、Semantic Qualifier(以下、「SQ」と呼ぶ)と呼ばれる。
【0046】
事後オッズ演算部103は、医学用語変換部102で取得された医学用語プロブレムリストに記載された医学用語に基づき、疾患の夫々の指標を算出する。
即ち、事後オッズ演算部103は、医学用語変換部102で取得された医学用語プロブレムリストに記載された医学用語に基づき、患者Pに対する、夫々の疾患の事後オッズを算出する。
【0047】
疾患情報生成部104は、患者情報に基づき、患者Pに関連し得る疾患に関する疾患情報を生成する。
即ち、疾患情報生成部104は、事後オッズ演算部103で算出された指標(例えば、事後オッズ)に基づき、対象となる患者Pの有する潜在的な疾患の候補を示す情報を生成する。
【0048】
提示部105は、疾患情報生成部104で生成した疾患情報、又は疾患情報に基づく情報を、医療従事者に対して提示する。即ち、疾患情報として生成し、その情報を医師Dに対して、提示する。
医師Dは、提示された疾患情報に基づき、初期診断を試みる。ここでは、医師Dは、患者Pの有する潜在的な疾患の候補の情報提示されたものの、初期診断として疾患を特定することができなかった例として説明する。
【0049】
要望受付部106は、疾患情報を提示された医師Dからの要望を受け付ける。医師Dは、患者Pが罹患している疾患かを判断するための支援として、どのような追加情報を提示されたいかの要望を、推論支援端末1に入力する。
【0050】
追加情報生成部107は、疾患情報に基づき、患者Pに関連し得る疾患に関する追加情報又は質問を生成する。
また、追加情報生成部107には、生成情報決定部151と、レッドフラッグ質問生成部152と、疾患絞込質問生成部153と、クライテリア質問生成部154とが設けられている。
【0051】
生成情報決定部151は、要望受付部106で受け付けた、医師Dからの要望に基づき、後述するレッドフラッグ質問生成部152と、疾患絞込質問生成部153と、クライテリア質問生成部154とのうちの何れが医師Dからの要望に基づき、追加情報又は質問を生成するかを決定する。なお、要望受付部106で受け付けられる医師Dからの要望の詳細については、図6等を参照しつつ、後述する。
【0052】
生成情報決定部151において、レッドフラッグ質問生成部152で追加情報又は質問を生成すると決定された場合、レッドフラッグ質問生成部152は、患者Pが重篤な疾患に罹患しているか否かを、医師Dが判断するために有益となる情報を、追加情報又は質問として生成する。
具体的に例えば、レッドフラッグ質問生成部152は、患者情報等から取得された患者Pの主訴から、当該主訴と紐づけられているレッドフラッグに関して確認すべき内容を含む情報をレッドフラッグDB400から、患者Pにさらに確認すべき、追加情報又は質問を抽出し、その情報を追加情報又は質問として生成する。
【0053】
生成情報決定部151において、疾患絞込質問生成部153で追加情報又は質問を生成すると決定された場合、疾患絞込質問生成部153は、患者Pが罹患している疾患の候補、医師Dが絞り込むために有益となる情報を、追加情報又は質問として生成する。
具体的に例えば、疾患絞込質問生成部153は、患者情報等から取得された患者Pの罹患している疾患の候補から、当該疾患の候補と紐づけられている用語に関して確認すべき内容を含む情報を疾患尤度比DBから、患者Pにさらに確認すべき、追加情報又は質問を抽出し、その情報を追加情報又は質問として生成する。
【0054】
生成情報決定部151において、クライテリア質問生成部154で追加情報又は質問を生成すると決定された場合、クライテリア質問生成部154は、患者Pが特定の疾患を罹患しているか否かを、医師Dが特定するために有益となる情報を、追加情報又は質問として生成する。
具体的に例えば、クライテリア質問生成部154は、患者情報等から取得された患者Pが罹患している疾患の候補のうち、医師Dが特定しようとする疾患に関して確認すべき内容を含む情報をクライテリアDB500から、患者Pにさらに確認すべき、追加情報又は質問を抽出し、その情報を追加情報又は質問として生成する。
【0055】
提示部105は、追加情報生成部107で生成した追加情報を、医師Dに対して提示する。
【0056】
これにより、医師Dは、医師Dの要望に基づいた追加情報を提示されることができる。医師Dは、追加情報に基づき、患者Pに対して問診として、質問や検査を行うことにより、疾患を特定し、初期診断を行うことができる。
また、医師Dが初期診断に至らなかった場合、推論支援端末1は、医師Dに更なる患者情報を入力されることができる。更なる患者情報を入力された推論支援端末1は、疾患情報を更新することができる。医師Dは、問診を繰り返すことにより、疾患を特定し初期診断を行うことができる。
【0057】
鑑別診断取得部108は、初期診断が行われた患者Pの鑑別診断の結果を取得する。即ち、初期診断が行われた患者Pが、大規模な病院や緊急による対応や、経過観察、通常の処方薬等が行われ、疾患が特定された結果を鑑別診断の結果として、取得する。
鑑別診断の結果は、後述する学習部において、教師データとして活用されることができる。
【0058】
学習部109は、上述の各機能ブロックの種々の入出力を取得し、学習することができる。具体的には例えば、学習部109は、患者情報、オリジナルプロブレムリスト、医療言語プロブレムリスト、事後オッズ、鑑別診断の結果、を取得して学習することができる。なお、学習した結果は、学習結果DB600に格納される。推論支援端末1は、学習結果DB600に格納された学習の結果に基づいて、医師Dの推論の支援をすることができる。
【0059】
これにより、例えば、学習部109は、患者情報取得部101から取得した患者情報と、医学用語変換部102から取得したオリジナルプロブレムリストから、キーワードの抽出に係る解析について、学習することができる。これにより、学習結果を利用した医学用語変換部102は、より正確にオリジナルプロブレムリストを生成できるようになる。
【0060】
他には、例えば、学習部109は、医学用語変換部102から取得したオリジナルプロブレムリストと、医学用語変換部102から取得した医学用語プロブレムリストから、一般的なキーワードと、医学的に分類されたより上位の概念として置き換えられた用語との対応付けについて、学習することができる。これにより、学習結果を利用した医学用語変換部102は、より正確に医学用語プロブレムリストを生成できるようになる。
【0061】
他には例えば、学習部109は、疾患情報生成部104から取得した疾患情報と、要望受付部106から取得した医師Dの要望から、患者Pの罹患している疾患の候補に対する医師Dの絞込みの要望の関係性について、学習することができる。これにより、学習結果を利用した追加情報生成部107は、典型的な医師Dから寄せられる要望を加味した追加情報を生成することができる。
【0062】
以下、図4乃至図14に示す、図2の推論支援端末1に表示される本サービスの提供に係る画面の例に基づき、本サービスが提供するサービスを説明する。
【0063】
図4は、図2の推論支援端末に表示される、患者情報及びオリジナルプロブレムリスト表示画面の一例である。
図4の画面の例では、図4の画面の左上部に、問診結果入力欄W1が表示されている。また、図4の問診結果入力欄W1の上部及び下部には、患者Pの性別やバイタルサイン、既往症を入力する欄が表示されている。これらの欄に対し、医師Dは、問診結果を含む初期診断に係る臨床推論に資する様々な情報である患者情報を入力する。
図4の画面の中央には、オリジナルプロブレムリスト欄W2が表示されている。オリジナルプロブレムリスト欄W2には、図3の医学用語変換部102により生成された、患者情報から複数の問題となりえる言葉を抽出したリストであるオリジナルプロブレムリストが表示される。
図4の画面の右上には、主訴欄W3が表示されている。図4の画面の例では、主訴(Chief Complaint)は、胸痛(Chest Pain)である。
【0064】
ここで、図4の画面において、問診結果入力欄W1とオリジナルプロブレムリスト欄W2とが並んで表示される。これにより、図4の画面を確認した医師Dは、患者情報からオリジナルプロブレムリストとして、何れのキーワードを抽出すればよいか学ぶことができる。また、医師Dは、図4の画面において、オリジナルプロブレムリスト欄W2を操作することにより、患者情報から抽出するキーワードを追加や削除することができる。
【0065】
次に、医師Dは、SQボタンB1の操作を行う。これにより、図5の例の画面が表示される。
【0066】
図5は、図2の推論支援端末に表示される、オリジナルプロブレムリスト及び医学用語プロブレムリスト表示画面の一例である。
図5の画面の例では、図5の画面の左側に、オリジナルプロブレムリスト欄W2が表示されている。また、図5の画面の例では、図5の画面の右側に、医学用語プロブレムリスト欄W4が表示されている。
【0067】
ここで、図5の画面において、オリジナルプロブレムリスト欄W2と医学用語プロブレムリスト欄W4とが並んで表示される。即ち、図5には、図3の医学用語変換部102により変換された、オリジナルプロブレムリストと、医学用語プロブレムリストが並んで表示されている。
また、医師Dは、図5の画面において、医学用語プロブレムリスト欄W4を操作することにより、オリジナルプロブレムリストと対応するSQを変更することができる。これにより、図5の画面を確認した医師Dは、オリジナルプロブレムリストと、医学用語であるSQとが、どのように対応づくのか学ぶことができる。
【0068】
患者情報に含まれる問診結果は、患者Pの生の受け答えの内容を記載したテキストデータである。そのため、記載されている症状や用語が、医学用語としては解釈が困難な表現である可能性が高い。そこで、推論支援端末1は、そのような解釈が困難な表現を医学用語へと変換し、以降の処理が行いやすいように問診結果を加工するものである。
これにより、推論支援端末1は、所謂自然語が含まれる患者情報を、統制語であるSQに変換することで、疾患ごとの事後オッズを演算する精度を向上することができる。
次に、推論支援端末1は、医学用語プロブレムリストに基づき、疾患の夫々の疾患らしさの指標を演算する。即ち、医学用語プロブレムリストのSQの夫々を、疾患の夫々の尤度比と対応付けて、疾患の夫々の確率の指標である疾患らしさである事後オッズを演算する。事後オッズの計算の詳細は、図1における説明の通りである。
【0069】
図6は、図2の推論支援端末に表示される、臨床推論支援画面の一例である。
図6の画面の例では、図6の画面の上部に、「Diagnostic Reasoning 臨床推論」の記載がある。また、図6の画面の左下部には、「Problem Representation 問題表象」の記載があり、図6の画面の右下部には、「Hypothetico-deductive method 仮説演繹法」の記載がある。一方、図6の画面の右中央部には、円形の図形と往復する矢印とが記載されている。問題表象を元に、仮説演繹法を通して、種々の判断を繰り返し利用して疾患を絞込み、初期診断を行うという臨床推論のプロセスを示している。
【0070】
図6の画面の左側には、医学用語プロブレムリストが表示されている。即ち、医師Dは、問題表象である医学用語プロブレムリストを元に、臨床推論を行うべき旨が示されている。推論支援端末1は、医学用語プロブレムリストに基づき、患者Pが有する潜在的な疾患の候補の情報である疾患情報を医師Dに提示ことができる。
【0071】
疾患情報を提示された医師Dは、臨床推論に係る要望として、図6の「Red Flags (Prognostic approach)」ボタンB2、「Questions」ボタンB3、「Criteria」ボタンB4、を操作することにより、初期診断を行うことができる。即ち、医師Dは、ボタンB2乃至B4を操作することで、図3の推論支援端末1の要望受付部106に、要望を受付させることができる。
【0072】
図7は、図2の推論支援端末に表示される、レッドフラッグ追加情報画面の一例である。
図7の画面は、医師Dが、図6の画面のうち、Bayons’ theoremに基づくアプローチの1つとして「Red Flags (Prognostic approach)」ボタンB2の操作を行った場合に、表示される。
【0073】
図7の画面の左側には、医学用語プロブレムリスト欄W4が表示されている。また、図7の画面の中央には、レッドフラッグ欄W9が表示される。
レッドフラッグ欄W9には、医学用語プロブレムリスト欄W4に示される主訴と紐づけられているレッドフラッグに関して確認すべき内容がリストされている。推論支援端末1は、レッドフラッグ欄W9を介して、医師Dに、追加情報を提供することができる。
医師Dは、レッドフラッグ欄W5から、レッドフラッグを選択し、患者Pが当てはまるかをYESとNOとから選択する。これにより、推論支援端末1は、患者Pがレッドフラッグに該当するかの情報を更なる患者情報として取得することができる。
【0074】
図8は、図2の推論支援端末に表示される、疾患絞込追加情報画面の一例である。
図8の画面は、医師Dが、図6の画面のうち、Bayons’ theoremに基づくアプローチの1つとして「Questions」ボタンB6の操作を行った場合に、表示される。
【0075】
図8の画面の左側には、医学用語プロブレムリスト欄W4が表示されている。また、図8の画面の右側には、クエスチョン欄W6が表示される。
クエスチョン欄W6には、医学用語プロブレムリスト欄W4に示される医学用語プロブレムリストに基づく疾患情報に関して確認すべき内容がリストされている。推論支援端末1は、クエスチョン欄W6を介して、医師Dに対し、追加情報を提供することができる。
医師Dは、クエスチョン欄W6から、質問を選択し、患者Pが当てはまるかをYESとNOとから選択する。これにより、推論支援端末1は、患者Pが質問に該当するかの情報を更なる患者情報として取得することができる。
【0076】
図9は、図2の推論支援端末に表示される、クライテリア追加情報画面の一例である。
図9の画面は、医師Dが、図6の画面のうち、Bayons’ theoremに基づくアプローチの1つとして「Criteria」ボタンB7の操作を行った場合に、表示される。
【0077】
図9の画面の左側には、診断仮説欄W8が表示されている。また、図9の画面の右側には、クライテリア欄W7が表示される。
クライテリア欄W7には、診断仮説欄W8に示される疾患情報に基づく患者Pが罹患している疾患のうち、ある疾患であるか否かを特定する項目がリストされている。推論支援端末1は、クライテリア欄W7を介して、医師Dに対し、追加情報を提供することができる。
医師Dは、クエスチョン欄W6から、ある疾患であるか否かを特定する項目を選択し、患者Pが当てはまるかをYESとNOとから選択する。これにより、推論支援端末1は、患者Pが項目に該当するかの情報を更なる患者情報として取得することができる。
【0078】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0079】
ここで、上述の実施形態では説明を省略したが、推論支援端末1に備えられ得る更なる機能について、図6及び図10乃至図14を参照しつつ説明する。
【0080】
疾患情報を提示された医師Dは、臨床推論に係る要望として、図6の「Diagnostic Hypothesis」ボタンB5、「Abduction (hypothetico-Deductive method)」ボタンB6、「Initial Diagnosis」ボタンB7、「OPQRST」ボタンB8、「Algorithmic Approach」ボタンB9、を操作することにより、初期診断を行うことができる。即ち、医師Dは、ボタンB2乃至B4を操作することで、推論支援端末の要望受付部に、要望を受付させることができる。
【0081】
図10は、図2の推論支援端末に表示される、診断仮説画面の一例である。
図10の画面は、医師Dが、図6の画面のうち、医学用語プロブレムリストから出る矢印の1つ目の段階を示す「Diagnostic Hypothesis」ボタンB5の操作を行った場合に、表示される。
【0082】
図10の画面の左側には、医学用語プロブレムリスト欄W4が表示されている。また、図7の画面の中央には、診断仮説欄W8が表示される。また、図7の画面の右側には、VINDICATE+P欄W9が表示される。
ここで、VINDICATEとは、Vascular(血管性)、Infection(感染)、Neoplasm(新生物)、Degenerative(変性)、Idiopathic(中毒)、Congenital(先天性)、Autoimmune(アレルギー・自己免疫)、Trauma(外傷)、Endocrine(代謝・内分泌系)の頭文字である。また、Pとは、Psychogenic(精神・心因性)の頭文字である。
つまり、医師Dは、臨床推論を行うに当たり、まず、問題表象である医学用語プロブレムリストから出る矢印の1つ目の段階である診断仮説として、VINDICATE+Pの観点により、病態を考えることができることを示している。
医師Dは、VINDICATE+P欄W9から、患者が該当する項目を選択する。これにより、推論支援端末1は、患者Pが項目に該当するかの情報を更なる患者情報として取得することができる。
【0083】
図11は、図2の推論支援端末に表示される、仮説演繹法画面の一例である。
図11の画面は、医師Dが、図6の画面のうち、医学用語プロブレムリストから出る矢印の1つ目の段階を示す「Abduction (hypothetico-Deductive method)」ボタンB6の操作を行った場合に、表示される。
【0084】
図11の画面の左側には、医学用語プロブレムリスト欄W4が表示されている。また、図8の画面の中央には、診断仮説欄W8が表示される。また、図11の画面の右側には、仮説演繹欄W10が表示される。
医師Dは、仮説演繹欄W10から、患者Pが項目に当てはまるかをYESとNOとから選択する。これにより、推論支援端末1は、患者Pが項目に該当するかの情報を更なる患者情報として取得することができる。
【0085】
図12は、図2の推論支援端末に表示される、初期診断画面の一例である。
図12の画面は、医師Dが、図6の画面のうち、医学用語プロブレムリストから出る矢印の3つ目の段階を示す「Initial Diagnosis」ボタンB7の操作を行った場合に、表示される。
【0086】
図12の画面の左側には、診断仮説欄W8が表示されている。また、図12の画面の右側には、初期診断欄W11が表示されている。
初期診断欄W11には、疾患情報に基づき、患者Pが罹患している疾患の候補がリストされる。
医師Dは、初期診断欄W11に基づき、疾患の夫々の事後オッズを参照して、初期診断をすることができる。
【0087】
図13は、図2の推論支援端末に表示される、OPQRST追加情報画面の一例である。
図13の画面は、医師Dが、図6の画面のうち、Bayons’ theoremに基づくアプローチの1つとして「OPQRST」ボタンB8の操作を行った場合に、表示される。
【0088】
図13の画面の左側には、医学用語プロブレムリスト欄W4が表示されている。また、図13の画面の右側には、OPQRST欄W12が表示される。
ここで、OPQRSTとは、Onset(発症様式)、Palliative/Provocative factor(増悪・寛解因子)、Quality(性状)、Region/Radiation/related symptoms(部位・放散・関連症状)、Severity(強さ)、Temporal characteristics(啓示的変化)の頭文字である。
つまり、医師Dは、臨床推論を行うに当たり、患者が訴える痛みをOPQRSTの観点により、病態を考えることができることを示している。
医師Dは、OPQRST欄W12から、患者が該当する項目を選択する。これにより、推論支援端末1は、患者Pが項目に該当するかの情報を更なる患者情報として取得することができる。
【0089】
図14は、図2の推論支援端末に表示される、アルゴリズムアプローチ追加情報画面の一例である。
図14の画面は、医師Dが、図6の画面のうち、Bayons’ theoremに基づくアプローチの1つとして「Algorithmic Approach」ボタンB9の操作を行った場合に、表示される。
【0090】
図14の画面の左側には、医学用語プロブレムリスト欄W4が表示されている。また、図14の画面の右側には、アルゴリズムアプローチ欄W13が表示される。
アルゴリズムアプローチ欄W13には、所定のアルゴリズムに基づいて、質問が表示される。医師Dは、表示された質問に対し、患者Pが項目に当てはまるかをYESとNOとから選択する。これにより、推論支援端末1は、患者Pが項目に該当するかの情報を更なる患者情報として取得することができる。更なる患者情報を取得した推論支援端末1は、アルゴリズムアプローチ欄W13に、所定のアルゴリズムに基づいて、更なる質問を表示する。医師Dは、同様に、表示された質問に対し、患者Pが項目に当てはまるかをYESとNOとから選択する。これを繰り返すことにより、患者Pが罹患している疾患の候補を絞り込むことができる。
以上、推論支援端末1に備えられ得る更なる機能について、図6及び図10乃至図14を参照しつつ説明した。
【0091】
推論支援端末1は、更に以下のような態様をとることができる。
【0092】
例えば、上述の実施形態において、初期診断に係るプロセスとして、医師Dが患者Pに対して問診を行い、その内容に基づき臨床推論を行うものとして説明したが、特にこれに限定されない。
即ち、例えば、患者情報は、医師Dにより推論支援端末1に入力される必要はない。更に言えば、患者情報は、症例や初期診断に係る臨床推論の例題として、推論支援端末1に入力されていてもよい。
これにより、医師Dは、自身のスキルや状況に合わせて、より自身に合った形で、臨床推論及び初期診断の思考やプロセスについて、トレーニングすることができる。
【0093】
また例えば、上述の実施形態において、推論支援端末1は、患者情報に基づきオリジナルプロブレムリストを生成し、生成したオリジナルプロブレムリストを医学用語プロブレムリストへ変換し、医学用語プロブレムリストに基づき、事後オッズが算出されるものとして説明したが、特にこれに限定されない。
即ち、例えば、問診の結果から、医師Dは自ら医学用語プロブレムリストに類似するリスト等を作成し、それを推論支援端末1に入力してもよい。
さらに言えば、医師Dは、問診として、必ずしも書面又は口頭による患者Pへの質問を行う必要はなく、任意の方法により患者Pが罹患している疾患を特定するための情報を首都できればよい。
これにより、例えば、医師Dは、初期診療に係る臨床推論において、患者情報から、患者Pが罹患している疾患の候補を推論するための医学用語プロブレムリストを考える力を養うことができる。
【0094】
また例えば、図1等において示した上述の実施形態における本サービスの流れは、あくまでも例示であり、特にこれに限定されない。
即ち、推論支援端末1による推論結果の提示は、必ずしも上述の実施形態における順序で行われる必要はなく、任意である。また、同様に、医師Dから推論支援端末1に対する要望についても、必ずしも上述の実施形態における順序で行われる必要はない。
具体的に例えば、医師Dは、必要に応じて、複数回に渡り推論支援端末に対して、要望を行っても良いし、問診前に所定の疾患について関連する質問を事前に確認する等してもよい。
換言すれば、医師Dは、自身のスキルや状況に応じて、任意のタイミングで、推論支援端末の備えられている各種機能を利用してもよい。
【0095】
また、上述の実施形態において、医師Dは、推論支援端末1に患者情報を入力した後、患者Pが罹患している疾患の候補を特定するため、推論支援端末1に追加情報を求める要望をするものとしたが、特にこれに限定されない。即ち、例えば、医師Dは、追加情報を求める要望をせず、任意の回数繰り返して患者情報を入力してもよい。更に言えば、医師Dは、追加情報を求める要望をすることができるが、追加情報の種類や回数は限定されず、任意の順番で任意の回数の要望をすることができる。
これにより、医師Dは臨床推論の過程で、試行錯誤を繰り返した推論を進めることで、実際的な推論の過程を経ることができる。即ち、医師Dは、初期診断に関係するスキルの向上をすることができる。
【0096】
上述の実施形態の説明において、疾患情報生成部104は、患者情報に基づき、患者Pに関連し得る疾患に関する疾患情報を生成するとしたが、特にこれに限定されない。即ち例えば、疾患情報を生成又は取得すれば足る。具体的には例えば、疾患情報生成部104は、患者情報に基づき、所定のデータベース等から、患者Pに関連し得る疾患に関する情報を取得できればよい。
【0097】
上述の実施形態の説明において、鑑別診断取得部108は、初期診断が行われた患者Pの鑑別診断の結果を取得し、鑑別診断の結果は、学習部109において、教師データとして活用されることができるとしたが、特にこれに限定されない。即ち例えば、患者情報と鑑別診断の結果は、図示せぬサーバに送信されてもよい。これにより、例えば、サーバにおいて、患者情報と鑑別診断の結果を含むビッグデータとして蓄積し、さらに利用することができる。即ち、患者Pに関する情報を含む患者情報と疾患が特定された結果を鑑別診断の結果の情報とを、症例の研究に資する情報として活用する等、種々の二次利用が可能となる。
【0098】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図3の例に限定されない。また、機能ブロックの存在場所も、図3に特に限定されず、任意でよい。例えば、推論支援端末1の機能ブロックを図示しない別のサーバ等に移譲させてもよい。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0099】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0100】
このようなプログラムを含む記録媒体は、医師D等にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態で医師D等に提供される記録媒体等で構成される。
【0101】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0102】
以上を換言すると、本発明が適用される情報処理装置は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される情報処理装置(例えば、図2の推論支援端末1)は、
患者に関する情報を含む情報を、患者情報として取得する患者情報取得手段(例えば、図3の患者情報取得部101)と、
前記患者情報に基づき、前記患者に関連し得る疾患に関する第1情報(例えば、疾患情報)を生成又は取得する第1生成取得手段(例えば、図3の疾患情報生成部104)と、
前記第1情報又は前記第1情報に基づく情報を、医療従事者に対して提示する提示手段(例えば、図3の提示部105)と、
を備える。
これにより、何れの疾患の可能性が高いかを推論するための情報を提供することができる。
【0103】
また、前記第1情報に基づき、前記患者に関連し得る疾患に関する第2情報(追加情報)を生成又は取得する第2生成取得手段(例えば、図3の追加情報生成部107)をさらに備え、
前記提示手段は、前記第1情報に基づく情報として、前記第2情報を提示することもできる。
【0104】
また、前記第2情報は、前記患者に対する質問を含めることもできる。
これにより、推論支援端末1は、追加情報として、患者Pに尋ねるべき質問等を生成することができる。
【0105】
また、前記疾患情報を提示された前記医療従事者からの要望を受け付ける受付手段(例えば、図3の要望受付部106)をさらに備え、
前記第2生成取得手段は、前記第1情報に加えて前記要望に基づき、前記第2情報を生成することもできる。
【0106】
また、前記第1情報には、重篤な疾患を示す情報が含まれており、
前記第2情報は、前記患者が前記重篤な疾患であるかを判断するための支援となる情報(例えば、レッドフラッグ)である。
【0107】
また、前記第1情報には、複数の疾患を示す情報が含まれており、
前記第2情報は、前記患者の疾患として、前記第1情報で特定される疾患のうち少なくとも1つが含まれているかを判断するための支援となる情報(例えば、追加情報)である。
【符号の説明】
【0108】
1・・・推論支援端末、11・・・CPU、16・・・出力部、17・・・入力部、101・・・患者情報取得部、102・・・医学用語変換部、103・・・事後オッズ演算部、104・・・疾患情報生成部、105・・・提示部、106・・・要望受付部、107・・・追加情報生成部、108・・・鑑別診断取得部、109・・・学習部、151・・・生成情報決定部、152・・・レッドフラッグ質問生成部、153・・・疾患絞込質問生成部、154・・・クライテリア質問生成部、300・・・疾患尤度比DB、400・・・レッドフラッグDB、500・・・クライテリアDB、600・・・学習結果DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14