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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】半田付け装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/02 20060101AFI20231110BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20231110BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20231110BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B23K3/02 R
B23K3/00 310R
B23K1/00 330D
H05K3/34 507N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020029256
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133375
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314000280
【氏名又は名称】株式会社アンド
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 満男
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/023461(WO,A1)
【文献】特開2009-195938(JP,A)
【文献】特開2019-150852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00 - 3/08、
31/02、33/00
H05K 3/32 - 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の部品本体から外方に突出したピン端子をプリント基板のスルーホールに挿通して前記スルーホールの外周縁及び内壁に形成されたランドに前記ピン端子を半田付けする半田付け装置であって、
略筒形状で軸方向に貫通した半田孔を有し加熱可能な鏝先と、
フラックスを有する半田片を前記半田孔内へ供給する半田片供給手段と、
前記鏝先を加熱する加熱手段と、
前記半田孔内に前記ピン端子が位置し、前記半田孔の軸中心が前記ピン端子の軸中心からずれた半田付け位置と、前記半田孔内に前記ピン端子が位置していない離隔位置とに、前記鏝先を前記プリント基板に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記半田片供給手段及び前記移動手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記半田片が前記半田孔内へ供給される前に、前記鏝先が前記半田付け位置になるように前記プリント基板に対する前記鏝先の相対的移動を制御して、前記ピン端子の外周面と前記半田孔の内周面との間を前記半田片が通過可能として、前記半田孔に供給された半田片が前記ランドに必ず接触するようにしたことを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
前記半田孔はその下端部に半径方向外方に拡大した拡大部を有し、
前記拡大部の前記鏝先の下端からの軸方向長さが、前記ピン端子の前記プリント基板の表面からの突出長さよりも長く、
前記半田付け位置は、少なくとも前記ピン端子の軸中心が前記拡大部内にある位置である請求項1に記載の半田付け装置。
【請求項3】
下面視において前記拡大部は前記半田孔の外周全体から半径方向外方に拡大したものである請求項2に記載の半田付け装置。
【請求項4】
前記拡大部が前記半田孔と同心円状である請求項3に記載の半田付け装置。
【請求項5】
下面視において前記拡大部が前記半田孔の外周の一部から半径方向外方に拡大したものである請求項2に記載の半田付け装置。
【請求項6】
前記半田孔の軸方向に垂直な断面形状が略長方形状であって、前記半田孔の断面形状の短手方向長さが前記ピン端子の外径以上であり、前記半田孔の断面形状の長手方向長さが前記ピン端子の外径と半田片の外径の和より長い請求項1記載の半田付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田片を加熱溶融する半田付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種機器のほとんどには電子部品を実装したプリント回路基板が搭載されている。このプリント回路基板の作製過程において、各種の電子部品をプリント配線板の配線パターン(ランド)に接合する処理等のため半田付け作業がなされる。また半田付け作業を機械的に実現させるため半田付け装置が各種提案されすでに使用されているものもある。
【0003】
例えば半田付け装置の一つとして、半田片(半田層内部にフラックスの層が設けられた糸半田を切断したもの)を、円筒状の鏝先の軸方向に貫通した半田孔内に供給し、半田孔内で半田片を立てた姿勢で加熱して、溶融した半田を下方へ供給して半田付けを行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-108826号公報
【文献】特開2011-056581号公報
【文献】特開2009-195938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように半田片を半田孔内に立てた姿勢で加熱すると、半田片の外周部と半田孔の内壁とが接触して半田片が加熱され、比較的融点の低いフラックスが半田片の内部から流出し始める。このフラックスが半田片の上端或いは側面から適切に流出すれば、半田孔の内壁と半田片の間には濡れ性に優れたフラックスが適切に介在することになり、半田孔の内壁と半田片との接触性が向上して鏝先から半田片へ十分に熱が伝わり半田片が適切に加熱溶融される。
【0006】
一方で、図12(a)に示すように、半田孔55内に供給された半田片Whが電子部品Epのピン端子P上に半田孔55の内壁に接触することなく自立する現象が発生率は低いものの発生することがあった。このように半田片Whがピン端子P上に自立すると、鏝先5dからの半田片Whへ直接熱が伝わらず半田片Whの昇温に通常よりも時間がかかる。また半田片WhがフラックスFLの溶融温度(おおよそ100℃)に達すると、同図(b)に示すように、半田片Whの外周部の溶融温度の高い半田材(錫合金)が溶融する以前に溶融温度の低いフラックスが溶融を開始し、半田片Whの下端からフラックスFLが流出し、流出したフラックスFLはピン端子Pを伝って流下してしまい半田孔55の内壁と半田片Whの間にフラックスFLが介在しなくなり、フラックスによる半田片Whの表面の酸化膜の除去ができなく、また半田孔55と半田片Whとの熱伝達量が極めて少なくなる。さらにランドLdへもフラックスFLは流れ広がらない。
【0007】
その結果、所定時間内に半田片Whが十分に溶融加熱されずに、同図(c)に示すように、ピン端子P上に溶融変形した半田が球状で留まることがあった。あるいはまた、半田片Whが加熱溶融しても、同図(d)に示すように、溶融した半田がピン端子Pを伝って流れ落ちてしまい、溶融半田がランドLdに流れ広がらないことがあった。
【0008】
本発明はこのような従来問題に鑑みなされたものであり、半田孔内に供給された半田片がより確実に加熱溶融され、ピン端子とランドとを確実に半田付けることができる装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成する本発明に係る半田付け装置は、電子部品の部品本体から外方に突出したピン端子をプリント基板のスルーホールに挿通して前記スルーホールの外周縁及び内壁に形成されたランドに前記ピン端子を半田付けする装置であって、略筒形状で軸方向に貫通した半田孔を有し加熱可能な鏝先と、フラックスを有する半田片を前記半田孔内へ供給する半田片供給手段と、前記鏝先を加熱する加熱手段と、前記半田孔内に前記ピン端子が位置し、前記半田孔の軸中心が前記ピン端子の軸中心からずれている半田付け位置と、前記半田孔内に前記ピン端子が位置していない離隔位置とに、前記鏝先を前記プリント基板に対して相対的に移動させる移動手段と、前記半田片供給手段及び前記移動手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記半田片が前記半田孔内へ供給される前に、前記鏝先が前記半田付け位置になるように前記プリント基板に対する前記鏝先の相対的移動を制御して、前記ピン端子の外周面と前記半田孔の内周面との間を前記半田片が通過可能として、前記半田孔に供給された半田片が前記ランドに必ず接触するようにしたことを特徴とする。
【0010】
前記構成の半田付け装置において、前記半田孔はその下端部に半径方向外方に拡大した拡大部を有し、前記拡大部の前記鏝先の下端からの軸方向長さが、前記ピン端子の前記プリント基板の表面からの突出長さよりも長く、前記半田付け位置は、少なくとも前記ピン端子の軸中心が前記拡大部内にある位置である構成としてもよい。
【0011】
また前記構成の半田付け装置において、下面視において前記拡大部は前記半田孔の外周全体から半径方向外方に拡大したものであってもよい。さらには、前記拡大部は前記半田孔と同心円状であってもよい。
【0012】
また前記構成の半田付け装置において、下面視において前記拡大部が前記半田孔の外周の一部から半径方向外方に拡大したものであってもよい。
【0013】
また前記構成の半田付け装置において、前記半田孔の軸方向に垂直な断面形状が略長方形状であって、前記半田孔の断面形状の短手方向長さが前記ピン端子の外径以上であり、前記半田孔の断面形状の長手方向長さが前記ピン端子の外径と半田片の外径の和より長いものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る半田付け装置によれば、半田孔内に供給された半田片はより確実に加熱溶融され、電子部品のピン端子とプリント基板のランドとが正常に半田付けされる。
【0015】
また、本発明に係る半田付け装置では、半田片から流れ出たフラックスがランド上に広がって、ランドの表面の異物や酸化膜が取り除かれ、鏝先からランドへの伝熱が促進される。この結果、熱容量の大きいプリント基板であっても効率的に加熱することが可能となる。
【0016】
そしてまた、フラックスによって溶融半田の表面張力が低下しきれいなフィレットが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態にかかる半田付け装置APの一例の斜視図である。
図2】装置本体A1の内部構造を示す斜視図である。
図3図2に示す装置本体A1の概略垂直断面図である。
図4図2に示す装置本体A1に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。
図5】鏝先5aとプリント基板Bdの部分垂直断面図である。
図6】鏝先5aの下面図である。
図7】半田付け装置APによる半田付けの動作工程図である。
図8】半田付け装置APによる半田付けの動作工程図である。
図9】本発明で使用可能な他の鏝先5bとプリント基板Bdの部分垂直断面図である。
図10】鏝先5bの下面図である。
図11】本発明で使用可能な鏝先5cの上面図及び垂直断面図である。
図12】従来の半田付け装置における不具合を説明する部分垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る半田付け装置について図に基づき説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0019】
第1実施形態
(半田付け装置の全体構成)
図1は、半田付け装置APによってプリント基板Bdに電子部品Epを半田付けする場合の斜視図である。治具Gjに固定されたプリント基板Bdには4つのスルーホールThが形成されており、各スルーホールThの内周面及び周縁にはランドLdが形成されている。そして、この4つのスルーホールThの各々には、プリント基板Bdの裏面側に配置された電子部品Epから延出した4つのピン端子Pが下から上方向に挿通され、プリント基板Bdの上面からピン端子Pの先端が突出した状態となっている。
【0020】
一方、本発明に係る半田付け装置APは、多関節アームAmを有する移動手段としてのマニピュレーターMLと、マニピュレーターMLの先端に取り付けられた装置本体A1と、マニピュレーターML及び装置本体A1の動作を制御する制御装置Contとを備える。マニピュレーターMLは基台Bs上に設置され、多関節アームAmは複数の関節部の各々において回転可能とされている。制御手段Contは、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、装置本体A1をX方向、Y方向、Z方向の所望位置に移動させる。また制御手段Contは、後述する装置本体A1のカッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6及びヒーターユニット(加熱手段)4の動作を制御する。なお、本実施形態ではカッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6が半田片供給手段を構成する。
【0021】
半田付け装置APによって半田付けを行う場合、装置本体A1が、マニピュレーターMLによってX方向及びY方向に移動されてプリント基板BdのランドLdに対する位置決めが行われる。そして、装置本体A1がZ方向に移動されることで、鏝先5aの先端がランドLdに接触する。以下説明する実施形態ではこの半田付け装置APを用いて、プリント基板Bdの上面から突出したピン端子Pを装置本体A1の鏝先5aの半田孔51(図3に図示)内に位置させ、鏝先5aの半田孔51に供給される半田片Whを溶融させてピン端子PとランドLdとを半田付けする。なお、本実施形態では、装置本体A1を移動させているが、装置本体A1を固定しプリント基板Bdを移動させる、あるいは装置本体A1とプリント基板Bdの両者を移動させるようにしても構わない。
【0022】
(装置本体A1)
図2に装置本体A1の斜視図を示し、図3図2に示す半田付け装置の垂直断面図、図4図2に示す半田付け装置に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。なお、図2では、筐体の一部を切断し、装置本体A1の内部を表示するようにしている。
【0023】
図2に示すように、装置本体A1は、装置ユニットUと、装置ユニットUをZ方向の所定距離範囲で移動可能に支持する支持部材SPと、装置ユニットUと支持部材SPを覆うカバーC(図2の波線)とを有する。
【0024】
支持部材SPは、四角形状のYZ平面を有しX方向に所定の厚みを有する板状の基部Mfと、基部MfのX方向一方側面のY方向中央部にY方向に所定幅を有しX方向に突出しZ方向に連続するガイドレールMgと、ガイドレールMgにZ方向に移動可能に取り付けられたブロックMbとを備える。
【0025】
基部MfのZ方向上端部はマニピュレーターMLの多関節アームAmの先端に取り付けられる。ブロックMbには装置ユニットUの壁体11がZ方向の略全域にわたって取り付けられている。すなわち、装置ユニットUはブロックMbに固定され、ブロックMbと一体となってZ方向に移動可能とされている。また、ブロックMbのY方向の一方側面の下端部には移動規制ピン91が側面から外方に向かって垂直に突出して設けられている。
【0026】
一方、基部MfのX方向一方側面のZ方向下部のY方向端部位置には、直方体形状の上ストッパー部93と下ストッパー部94とがZ方向に所定距離隔てて対向するように設けられている。
【0027】
ブロックMbの一方側面に設けられた移動規制ピン91は、基部Mfの上ストッパー部93と下ストッパー部94との間の領域に位置し、初期状態のときすなわち鏝先5aが配線基板Bdに当接していない状態のときは、装置ユニットU及びブロックMbの自重によって移動規制ピン91は下ストッパー部94に当接した状態となっている。換言すると、移動規制ピン91が下ストッパー部94に当接することで、装置ユニットUのZ方向下方への移動が規制される。他方、鏝先5aが配線基板Bdに当接して装置ユニットUがZ方向上方に移動した場合には、移動規制ピン91が上ストッパー部93に当接することで、装置ユニットUのZ方向上方向への移動が規制される。
【0028】
(装置ユニットU)
装置ユニットUは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5a、半田送り機構6を備えている。
【0029】
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。なお、以下の説明では、便宜上、図2に示すように、壁体11に沿う水平方向をX方向、壁体11と垂直な水平方向をY方向、壁体11に沿う鉛直方向をZ方向とする。例えば、図2に示すように、壁体11はZX平面を有している。
【0030】
支持部1は、壁体11と、保持部12と、摺動ガイド13と、ヒーターユニット固定部14とを備える。壁体11は、鉛直方向に立設された平板状の壁体である。壁体11は、装置本体A1の支持部材としての役割を果たしている。保持部12は、壁体11のZ方向の下端部より上方にずれた位置に固定されている。保持部12は、駆動機構3の後述するエアシリンダー31を保持する。ヒーターユニット固定部14は、ヒーターユニット4の固定を行う部材であり、壁体11のZ方向の端部(下端部)に設けられている。
【0031】
摺動ガイド13は、壁体11のZ方向の下端部の近傍に、固定されている。摺動ガイド13は、カッターユニット2の後述するカッター下刃22と共に、壁体11と固定されており、カッターユニット2の後述するカッター上刃21をX方向に摺動可能にガイドする。
【0032】
摺動ガイド13は、Y方向に対向して対をなす部材である。摺動ガイド13は、一対の壁部131と、抜止部132とを有している。壁部131は、X方向に延びる平板状の部材である。一方の壁部131は、壁体11と接触して配されており、壁体11と反対側の面は、カッター下端22と接触している。また、他方の壁部131は、カッター下刃22の側面と接触している。つまり、一対の壁部131は、カッター下刃22をY方向の両側から挟んでいる。そして、一対の壁部131及びカッター下刃22は、ねじ等の締結具で壁体11に共締めされて、固定される。
【0033】
抜止部132は、一対の壁部131のそれぞれに設けられている。一対の壁部131は、カッター下刃22のZ方向上面よりもZ方向に延びており、一対の壁部131のZ方向の上端部から、それぞれ、他方に向かって延びている。すなわち、摺動ガイド13は、一対の抜止部132を備えている。そして一対の抜止部132それぞれのY方向の先端は、接触しない、換言すると、摺動ガイド13には上部に開口を有している。カッター上刃21は、カッター下刃22の上面と、抜止部132との間に少なくとも一部は配される。これにより、カッター上刃21は、X方向にガイドされるとともに、Z方向に抜け止めされる。
【0034】
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する切断具である。カッターユニット2は、カッター上刃21と、カッター下刃22と、プッシャーピン23とを備えている。
【0035】
上述のとおり、カッター下刃22は摺動ガイド13とともに壁体11に固定される。図3に示すように、カッター下刃22は、下刃孔221と、ガス流入孔222とを備えている。下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向に貫通する貫通孔であり、カッター上刃21の後述する上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とを用いて、糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する。切断された半田片Whは、自重によって又はプッシャーピン23に押されて、下刃孔221の内部を下方に落下する。下刃孔221は、ヒーターユニット4の後述する半田供給孔422を介して、鏝先5aの後述する半田孔51と連通している。下刃孔221の内部を落下した半田片Whは、半田供給孔422に達した後、半田孔51に落下する。
【0036】
ガス流入孔222は、カッター下刃22の外側面と下刃孔221とを連通する孔である。不図示のガス供給源から供給されるガスはガス流入孔222に流入する。そして、ガスは、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に到達する。なお、ガスとは、半田を加熱して溶融するときに半田の酸化を抑制するために用いられるものである。すなわち、溶融した半田と酸素との接触を抑制するためのガスである。ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素等を挙げることができる。本実施形態の半田付け装置APでは、窒素ガスを供給するものとして説明する。
【0037】
カッター上刃21は、上述したとおり、カッター下刃22のZ方向上面上に配される。カッター上刃21は、摺動ガイド13によって摺動時に摺動方向がX方向になるようガイドされるとともにZ方向に抜け止めされる。すなわち、カッター上刃21は、カッター下刃22のZ方向の上面上をX方向に摺動する。なお、カッター上刃21は、駆動機構3によって摺動される。
【0038】
カッター上刃21は、上刃孔211と、ピン孔212とを備えている。上刃孔211は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である、上刃孔211には、半田送り機構6から送られた糸半田Wが挿入される。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。ピン孔212は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である。ピン孔212には、プッシャーピン23の後述するロッド部231が、摺動可能に挿入される。
【0039】
プッシャーピン23は、ロッド部231と、ヘッド部232と、バネ233とを有する。ロッド部231は、円柱状の部材であり、ピン孔212に摺動可能に挿入される。また、プッシャーピン23がZ方向下に移動することで、ロッド部23の先端が、ピン孔212から突出する。ヘッド部232はロッド部231の軸方向の上端に連結される。ヘッド部232は、ピン孔212の内径よりも大きい外径を有する円板形状である。ヘッド部232は、ピン孔212に挿入されない。すなわち、ヘッド部232は、ロッド部231のピン孔212内への移動を制限する、いわゆる、ストッパーとしての役割を果たす。
【0040】
バネ233は、ロッド部231の径方向外側を囲む圧縮コイルばねである。バネ233は、Z方向下端部がカッター上刃21の上面と接触し、Z方向上端部がヘッド部232の下面と接触する。すなわち、バネ233は、カッター上刃21の上面から反力を受け、ヘッド部232をZ方向上に押す。これにより、ヘッド部232と連結されたロッド部231は、Z方向上方に持ち上げられ、ロッド部231の下端が、ピン孔212の下端から突出しないように維持される。なお、ロッド部231のZ方向下端部には、ピン孔212からの抜けを抑制する抜け止め(不図示)が設けられている。
【0041】
プッシャーピン23は、カッター上刃21とカッター下刃22で切断されて下刃孔221に残った半田片Whを下方に押す。そして、プッシャーピン23は、ばね233の弾性力によって、常に上方に、すなわち、カッター下刃22と反対側に押し上げられている。つまり、ロッド部231は、ヘッド部232が押されたときに、ピン孔212のZ方向下端部から下に突出する。そして、ヘッド部232は、駆動機構3の後述するカム部材33に押される。
【0042】
カッター上刃21において、上刃孔211とピン孔212とはX方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、X方向に摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置、又は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置に移動する。なお、カッター上刃21は、一方の摺動端部まで摺動したときに上刃孔211と下刃孔221とが重なり、他方の摺動端部まで摺動したときにピン孔212と下刃孔221とが重なるように、摺動してもよい。
【0043】
そして、上刃孔211と下刃孔221とがZ方向に重なっている状態で、半田送り機構6から糸半田Wが送られると、上刃孔211を通過した糸半田Wが、下刃孔221に挿入される。上述のとおり、上刃孔211の下端の辺縁部が切刃状に形成されているとともに、下刃孔221の上端の辺縁部も切刃状に形成されている。そして、カッター上刃21の下面は、カッター下刃22の上面と接触している。そのため、下刃孔221に糸半田Wが挿入されている状態で、カッター上刃21がX方向に摺動することで、上刃孔211および下刃孔221それぞれの切刃によって糸半田Wが切断される。
【0044】
カッター上刃21は、カム部材33によってX方向に摺動される。そのため、カッター上刃21及びプッシャーピン23は、カム部材33と同期している。カム部材33は、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なったときに、ヘッド部232を押す。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときには、プッシャーピン23のロッド部231の先端は、ピン孔212に収容されている。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときに、ロッド部231の先端とカッター下刃22の上面とが接触するのを抑制し、ロッド部231の先端及び(又は)カッター下刃22の変形、破損等が抑制される。
【0045】
カッター上刃21がX方向に摺動することで、下刃孔211とピン孔212とがZ方向に重なる。ピン孔212が下刃孔211と重なっている状態で、ヘッド部232はカム部材33に押される。これにより、プッシャーピン23が、Z方向下に移動する。プッシャーピン23がピン孔212からZ方向下方に突出すると、プッシャーピン23の一部が下刃孔211に挿入される。下刃孔211の入り口に糸半田を切断した後述の半田片が残っている場合、プッシャーピン23の先端が半田片を押して、半田片は落下する。
【0046】
図2図3に示すように、駆動機構3は、エアシリンダー31と、ピストンロッド32と、カム部材33と、スライダー部34と、ガイド軸35とを有する。エアシリンダー31は保持部12に保持される。エアシリンダー31は、有底円筒状である。エアシリンダー31の内部には、ピストンロッド32が収容されており、外部から供給される空気の圧力でピストンロッド32を摺動駆動(伸縮)させる。エアシリンダー31とピストンロッド32とが駆動機構3のアクチュエーターを構成している。ピストンロッド32は、エアシリンダー31の内部に配されるとともに、一部が常にエアシリンダー31の軸方向の一方の端部(ここでは、Z方向の下端部)から、突出している。エアシリンダー31は、ピストンロッド32が突出する面がカッターユニット2に向くように、すなわち、Z方向下に向くように、保持部12に保持される。
【0047】
ピストンロッド32は、保持部12に設けられた貫通孔(不図示)を貫通している。ピストンロッド32は、ガイド軸35と平行に設けられており、ガイド軸35に沿って直線的に往復動する。ピストンロッド32の先端部は、カム部材33に固定されており、ピストンロッド32の伸縮によって、カム部材33がZ方向に摺動する。カム部材33の摺動は、ガイド軸35によってガイドされている。
【0048】
図3に示すように、ガイド軸35は、下端部がカッター下刃22に設けられた凹穴に嵌合されており、カッター下刃22にねじ351でねじ止め固定されている。また、ガイド軸35の上部は、保持部12に設けられた孔を貫通しており、ピン352によって移動が規制されている。つまり、ガイド軸35はねじ351によってカッター下刃22と、ピン352によって保持部12と固定されている。
【0049】
なお、本実施形態において、ガイド軸35は、ねじ351及びピン352によって固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧入、溶接等の固定方法で固定されるものであってもよい。また、本実施形態において、ガイド軸35として円柱状の部材としているが、これに限定されるものではなく、断面多角形状や楕円等を利用してもよい。
【0050】
図3図4に示すように、カム部材33は、矩形状の部材であり、長辺の一部を矩形状に切り欠いた凹部330と、カム部材33に連結し、ガイド軸35が貫通する貫通孔を備えた円筒形状の支持部331とを備えている。凹部330には、スライダー部34が(X方向及びZ方向に)摺動可能に配置される。また、支持部331はガイド軸35と平行に延びる形状を有しており、カム部材33のがたつきを抑制するために設けられている。つまり、カム部材33がある程度厚みを有し、がたつきが発生しにくい構成の場合、円筒形状の部分を省略し、貫通孔だけで支持部331を構成してもよい。
【0051】
そして、カム部材33は、凹部330の中間部分に設けられて中心軸がガイド軸35と直交する円柱状のピン332と、凹部330と隣接してプッシャーピン23を押すピン押し部333と、支持部331内部に配置された軸受334とを備えている。ピン332は、スライダー部34に設けられた後述するカム溝340に挿入される。また、軸受334は、ガイド軸35に外嵌し、カム部材33ががたつかないように、円滑に摺動させる部材である。
【0052】
図3図4に示すように、スライダー部34は、長方形状の板状の部材であり、カッター上刃21と一体的に形成されている。スライダー部34は、板厚方向に貫通するとともに長手方向に延びるカム溝340を備えている。カム溝340は、ガイド軸35と平行に延びる第1溝部341を上側に、同じくガイド軸35と平行に延びる第2溝部342を下側に設けている。そして、第1溝部341と第2溝部342とは、X方向にずれて設けられており、カム溝340は第1溝部341と第2溝部342とを接続する接続溝部343を備えている。
【0053】
カム溝340には、カム部材33のピン332が挿入されており、カム部材33がガイド軸35に沿って移動することで、ピン332がカム溝340の内面を摺動する。ピン332がカム溝340の接続溝部343に位置するとき、接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34及びスライダー部34に一体的に形成されたカッター上刃21がカム部材33の摺動方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動(カッター下刃22に対して摺動)する。
【0054】
なお、本実施形態では、カム部材33にピン332、スライド部34にカム溝340を備えた構成を挙げて説明しているが、実際には、カム部材にカム溝、スライド部にピンを備えた構成であってもよい。
【0055】
本実施形態では、駆動機構3のアクチュエーターとして空気圧を用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、空気以外の流体(例えば、作動油)を用いるもの(油圧)であってもよい。また、流体を用いるものに限定されるものではなく、モーターやソレノイド等の電力を用いるものであってもよい。本実施形態では、1つのアクチュエーターと、カム及びカム溝を用いて、カッター上刃21の摺動とプッシャーピン23の押下を行っているが、これに限定されない。例えば、カッター上刃21の摺動と、プッシャーピン23の押下とを行うように、アクチュエーターを複数個(2個)備えていてもよい。
【0056】
図2図3に示すように、半田送り機構6は、糸半田Wを供給する。半田送り機構6は、一対の送りローラ61と、ガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持壁11に回転可能に取り付けられている。一対の送りローラ61は、糸半田Wの側面を挟んで回転することで、糸半田を下方に送る。なお、一対の送りローラ61は、互いに他方に向かって付勢されており、その付勢力で糸半田Wを挟む。送りローラ61の回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田Wの長さが測定(決定)されている。
【0057】
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしない長さ、および、形状を有している。
【0058】
ヒーターユニット4は、半田片Whを加熱し、溶融させるための加熱装置であり、図3に示すように、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、ヒーター41と、ヒーターブロック42とを備える。ヒーター41は、通電により発熱する。ヒーター41は、ここでは、円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回された電熱線を有する。
【0059】
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、軸方向の端部に鏝先5aを取り付けるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422とを備えている。ヒーターブロック42は、半田供給孔422と下刃孔221とが連通するように、カッター下刃22に接触して設けられている。ヒーターブロック42をこのように設けることで、半田片Whは、下刃孔221から半田供給孔422に移動する。
【0060】
(鏝先)
鏝先5aは、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に貫通した断面円形の半田孔51を備えている。鏝先5aは、ヒーターブロック42の凹部421に挿入され、図示を省略した部材によって抜け止めがなされている。また、鏝先5aの半田孔51は、ヒーターブロック42の半田供給孔422と連通しており、半田供給孔422から半田片Whが送られる。
【0061】
図5に鏝先5aの下部及びプリント基板Bdの部分垂直断面図を示し、図6に鏝先5aの下面図を示す。前述のように鏝先5aは円筒形状で軸方向に貫通した半径rの半田孔51を有する。当然ながら半田孔51の直径は半田片Whの外径d(図8に図示)よりも大きい。半田片Whの外径dは、通常、0.6mm~1.2mmの範囲である。そして半田孔51は下端部において半径方向外方に半田孔51と同心円状に拡大した拡大部510を有する。また鏝先5aは、拡大部510よりも上方に半田孔51と外周面とを連通するリリース孔53を有する。リリース孔53は、溶融した半田によって半田孔51の下端開口がせき止められた場合に、不図示のガス供給部から供給される窒素ガスや気化したフラックスなどを鏝先5aの外に逃がす役割を果たす。
【0062】
図5に示すように、半田孔51の拡大部510の半径Rと半田孔51の半径rとの差は、ピン端子Pの直径Dよりも大きく設定されている。また、拡大部510の鏝先5a下端からの軸方向長さMは、ピン端子Pのプリント基板Bdからの突出長さSよりも長く設定されている。これにより、鏝先5aが半田付け位置にあるときに、ピン端子Pの全体が拡大部510内に位置することが可能となる。つまり、鏝先5aの上方から半田孔51を通して下方を見たときにピン端子Pを見えない位置とすることが可能となる。ピン端子Pがこのような位置にあると、後述するように、半田片Whが半田孔51に供給されると、ピン端子Pはピン端子Pに接触することなくプリント基板BdのランドLdまで落下しランドLdに必ず当接するようになる。
【0063】
鏝先5aは、ヒーター41からの熱が伝達されており、その熱で半田片Whを溶融させる。そのため、鏝先5aは、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されている。
【0064】
なお、装置本体A1において鏝先5aは円筒形状のものとしているが、これに限定されるものではなく、断面多角形又は楕円形の筒形状のものを用いてもよい。半田付けを行うプリント基板Bd及び(又は)電子部品Epのピン端子Pの形状に合わせて異なる形状のものを用意するようにしてもよい。
【0065】
(半田付け装置の動作)
次に、半田付け装置APの動作について説明する。図7及び図8に動作工程図を示す。まず図7(a)に示すように、制御手段Contが、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、装置本体A1の鏝先5aを、鏝先5aの軸中心C1がプリント基板Bdから突出したピン端子Pの軸中心C2と同一線上で且つ上方向に離隔した位置(離隔位置)に移動させる。次いで図7(b)に示すように、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して、鏝先5aを下方に移動させて、鏝先5aの下端をプリント基板BdのランドLdに当接させ、鏝先5aの半田孔51内に電子部品Epのピン端子Pを位置させる。鏝先5aには、ヒーター41(図3に図示)からの熱が伝達されており、鏝先5aが接触することでプリント基板BdのランドLdが伝熱により加熱され(プレヒート)、電子部品Epのピン端子PもランドLd及びプリント基板Bdを経由した伝熱及び鏝先5aからの輻射熱、さらには半田孔51内の対流によって加熱される。
【0066】
次いで、図7(c)に示すように、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して、鏝先5aの下端がプリント基板BdのランドLdに接触した状態のままで鏝先5aを右方向に移動させて、鏝先5aの軸中心C1とピン端子Pの軸中心C2とがずれた位置となるようにする(半田付け位置)。鏝先5aの右方向への移動距離は、半田孔51に供給された半田片Whがピン端子Pに阻まれることなくプリント基板BdのランドLdに落下できる距離であり、最大移動距離はピン端子Pの外周面が拡大部510の内壁と接触する距離である。半田片Whがプリント基板BdのランドLdまで確実に落下するようにする観点からは、ピン端子Pの全体が拡大部510に位置するようにする、換言すると上面視において鏝先5aの半田孔51を通して下方にピン端子Pが見えない位置まで移動させるのが好ましい。より好ましくはピン端子Pが拡大部510の側壁に接触する位置まで移動させる。拡大部510の側壁にピン端子Pが接触するとピン端子Pが鏝先5aからの伝熱によって直接加熱されるようになりピン端子Pの昇温速度が速くなる。なお、鏝先5aの移動方向は右方向に限定されるものではなく、ランドLd表面と同一面上であればいずれの方向でも構わない。
【0067】
その後、図8(a)に示すように、鏝先5aの半田孔51内に半田片Whが供給される。このとき、ピン端子Pは半田孔51の拡大部510に位置しているので、半田孔51に供給された半田片Whはプリント基板BdのランドLdまで落下する。なお、上面視において半田孔51内にピン端子Pの一部が露出している場合であっても、従来の装置に比べてピン端子P上に半田片Whが自立する確率は格段に少なくなり、溶融した半田がピン端子P上に球状に留まるといった不具合は遙かに抑制される。
【0068】
ランドLd上に落下した半田片Whには鏝先5aからランドLdを介して熱が伝わる。また半田片Whが半田孔51の内壁にも接触している場合には鏝先5aからも直接的に半田片Whに熱が伝わり、半田片Whは急速に加熱される。そして半田片Whの温度がフラックスFLの溶融温度に達すると、図8(b)に示すように、フラックスFLが半田片Whから流出してランドLdに広がり、ランドLdの表面の異物や酸化膜を取り除く。これにより、溶融半田に対するランドLdの濡れ性が高くなる。また熱伝導率の低い酸化膜が取り除かれることによって鏝先5aからランドLdへの伝熱が促進される。
【0069】
そして、半田片Whの温度が半田の溶融温度(無鉛半田:217℃)に達すると、図8(c)に示すように、半田片Whが溶融して、フラックスFLによって酸化膜が取り除かれたランドLdに濡れ広がる。また同時に、フラックスFLによって表面張力が低下した溶融半田は球状化することなくきれいなフィレットを形成する。
【0070】
その後、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して鏝先5aを上方に移動させる。これにより、溶融半田は外気によって冷却されて固化し、電子部品Epのピン端子Pとプリント基板BdのランドLdとが半田付けされる。半田付け装置APはこの一連の動作を繰り返して電子部品Epのピン端子Pとプリント基板BdのランドLdとの半田付けを順次行う。
【0071】
以上説明した実施形態では、鏝先5aをランドLdに接触させた後に、鏝先5aの軸中心C1がピン端子Pの軸中心C2からずれるように鏝先5aを移動させたが、鏝先5aがランドLdに接触する前に、鏝先5aの軸中心C1がピン端子Pの軸中心C2からずれた位置、すなわちピン端子Pの軸中心C2が鏝先51の拡大部510内となるように鏝先5aを位置させた後、鏝先5aを下方に移動させてランドLdに接触させるようにしても構わない。
また、鏝先5aをプリント基板Bdに近接させた後、鏝先5aを垂直にかつ水平に同時に駆動して斜めに移動させながら、プリント基板BdのランドLdに接触させても良い。
また、鏝先5aを上方に移動させるときに、鏝先5aの中心をピン端子Pの中心に水平移動させた後に、上方に引き上げるようにしても良い。
【0072】
このような鏝先5aの制御手段Contによる移動制御は、予め入力設定された値に基づき行ってもよいし、接触センサーなど不図示の検知手段による検知信号に基づき行ってもよい。
【0073】
また本実施形態ではプリント基板Bdを固定し鏝先5aを移動させていたが、鏝先5aを固定しプリント基板Bdを移動させてもよい。あるいはプリント基板Bd及び鏝先5aの双方を移動させてもよい。
【0074】
(第2実施形態)
図9及び図10に本発明に係る半田付け装置に使用可能な鏝先の他の形態を示す。図9は鏝先5b及びプリント基板Bdの部分垂直断面図であり、図10は鏝先5bの下面図である。
【0075】
図9及び図10に示す鏝先5bは円筒形状で軸方向に貫通した半径rの半田孔51を有する点は第1実施形態の鏝先5aと同じであるが、半田孔51の下端部に形成されている拡大部511の形状が第1実施形態の鏝先5aとは異なる。本実施形態における半田孔51の拡大部511は、下面視において半田孔51の外周の一部から半径方向外方に拡大したものである。具体的には図10に示すように、拡大部511は略長方形状であって、短手方向長さがピン端子Pの直径(2r)であり、長手方向長さT1はピン端子Pの外径Dよりも大きく設定されている。また、拡大部511の鏝先5b下端からの軸方向長さMは、ピン端子Pのプリント基板Bdからの突出長さSよりも長く設定されている。
【0076】
制御手段Contは、鏝先5bが半田付け位置にあるときに、ピン端子Pの全体が拡大部511内に位置するように移動制御を行う。換言すると、鏝先5bの上方から半田孔51を通して下方を見たときにピン端子Pが見えないように鏝先5bを移動制御する。鏝先5bとピン端子Pとがこのような位置関係にあると、半田片Whが半田孔51に供給されたときにピン端子Pに接触することなくプリント基板BdのランドLdまで落下しランドLdに必ず当接するようになる。これにより、第1実施形態の半田付け装置APと同様に、ランドLd上に落下した半田片Whに鏝先5bからランドLdを介して熱が伝わり、半田片Whは急速に加熱されて、半田片Whの温度がフラックスFLの溶融温度に達すると、フラックスFLが半田片Whから流出してランドLdに広がり、ランドLdの表面の異物や酸化膜を取り除く。そして、半田片Whの温度が半田の溶融温度に達すると、半田片Whが溶融して、フラックスFLによって酸化膜が取り除かれたランドLdに濡れ広がり、同時にフラックスFLによって表面張力が低下した溶融半田は球状化することなくきれいなフィレットを形成する。
【0077】
(第3実施形態)
図11に本発明に係る半田付け装置に使用可能な鏝先の他の形態を示す。図11(a)は鏝先5cの上面図であり、同図(b)は鏝先5cの部分垂直断面図である。図11に示す鏝先5cは円筒形状で軸方向に貫通した半田孔52を有する。半田孔52は、これまでの実施形態の鏝先と異なって拡大部を有さず、軸方向に垂直な断面形状が略長方形状で、対向する短辺が半円状となっている。半田孔52の短手方向長さT2はピン端子Pの外径D及び半田片Whの外径dよりも大きく、半田孔52の長手方向の長さT3はピン端子Pの外径Dと半田片Whの外径dの和よりも大きく設定されている。
【0078】
制御手段Contは、鏝先5cが半田付け位置にあるときに、ピン端子Pの外周面と半田孔52の内周面との間を半田片Whが通過可能となるように鏝先5cの移動制御を行う。これにより、半田孔52に供給された半田片Whは、通常、ピン端子P上に自立することなく、ランドLd上に落下する。そして、ランドLd上に落下した半田片Whは鏝先5cからランドLdを介して伝わる熱などによって急速に加熱されて、まず溶融温度の低いフラックスFLが半田片Whから流出してランドLdに広がり、ランドLdの表面の異物や酸化膜を取り除く。次いで、半田片Whが溶融して、フラックスFLによって酸化膜が取り除かれたランドLdに濡れ広がり、同時にフラックスFLによって表面張力が低下した溶融半田は球状化することなくきれいなフィレットを形成する。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
AP 半田付け装置
A1 装置本体
11 壁体
12 保持部
13 摺動ガイド
14 ヒーターユニット固定部
15 アクチュエーター保持部
16 ばね保持部
2 カッターユニット
21 カッター上刃
211 上刃孔
212 ピン孔
22 カッター下刃
221 下刃孔
23 プッシャーピン
231 ロッド部
232 ヘッド部
233 ばね
3 駆動機構
31 エアシリンダー
32 ピストンロッド
33 カム部材
330 凹部
331 支持孔
332 ピン
333 ピン押し部
334 軸受
34 スライダー部
340 カム溝
341 第1溝部
342 第2溝部
343 接続溝部
35 ガイド軸
4 ヒーターユニット
41 ヒーター
42 ヒーターブロック
421 凹部
422 半田供給孔
5 鏝先
51,52 半田孔
510,511 拡大部
6 半田送り機構
61a、61b 送りローラ
62 ガイド管
Bd プリント基板
C1 鏝先の軸中心
C2 ピン端子の軸中心
d 糸半田の外径
D ピン端子の外径
Ep 電子部品
FL フラックス
ML マニピュレーター
Ld ランド
P ピン端子
Th スルーホール
W 糸半田
Wh 半田片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12