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特許7382644起泡性調味料または泡状調味料を製造するために用いられるミックス粉、起泡性調味料、および泡状調味料、ならびに起泡性調味料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】起泡性調味料または泡状調味料を製造するために用いられるミックス粉、起泡性調味料、および泡状調味料、ならびに起泡性調味料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20231110BHJP
   A23L 27/50 20160101ALN20231110BHJP
   A23L 27/60 20160101ALN20231110BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/50 A
A23L27/60 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020216688
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102136
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 禎子
(72)【発明者】
【氏名】高畑 佳佑
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223186(JP,A)
【文献】特開2015-130847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00-27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡性調味料または泡状調味料を製造するために液体調味料に混合されるミックス粉であって、
泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を含有し、
前記泡立ち材は、水溶性ゼラチン、大豆蛋白、大豆多糖類、サポニン、およびアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、
前記泡立ち増強材は、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、マンナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、プルラン、アラビアガム、ペクチン、およびα化澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、
前記泡立ち保持材は、サイクロデキストリンおよび高度分岐環状デキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有すること
を特徴とするミックス粉。
【請求項2】
請求項記載のミックス粉が添加されていること
を特徴とする起泡性調味料。
【請求項3】
請求項記載のミックス粉が添加されていること
を特徴とする泡状調味料。
【請求項4】
液体調味料に、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を溶解させる工程を含み、
前記泡立ち材は、水溶性ゼラチン、大豆蛋白、大豆多糖類、サポニン、およびアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、
前記泡立ち増強材は、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、マンナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、プルラン、アラビアガム、ペクチン、およびα化澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、
前記泡立ち保持材は、サイクロデキストリンおよび高度分岐環状デキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有すること
を特徴とする起泡性調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性調味料または泡状調味料を製造するために用いられるミックス粉、起泡性調味料、および泡状調味料、ならびに起泡性調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体調味料に起泡性が付与された起泡性調味料が知られている。起泡性調味料を起泡させることで泡状調味料にすることができ、例えば、食材や料理の上にかけて用いられる。泡は液体と比較して食材等によく付着し、食材等から流れ落ちることを防止でき、さらには料理等に過度に滲み込むことを防止できる。
【0003】
特許文献1(特開2015-130847号公報)には、家庭や飲食店等において簡易に起泡性調味料や泡状調味料を製造できることを目的として、液体調味料に混合することで起泡性調味料を製造でき、さらに起泡性調味料を起泡させることで泡状調味料を製造できるミックス粉が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-130847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るミックス粉では、生成された泡の状態を維持するためには、ミックス粉に含まれるカードランを溶解させてゲル化させなければならないため、泡状調味料が製造された後、その泡を70[℃]~80[℃]以上の温度に加熱する工程が必要になる。したがって、必ずしも簡易には泡状調味料を製造できないという課題がある。
【0006】
また、別の課題として、油を含む調味料(例えば、オイル系ドレッシング等)のように、比較的泡立ちにくく、起泡性調味料や泡状調味料の製造が比較的困難な調味料がある。また、生野菜(例えば、レタス等)のように、泡状調味料をかけたときに、その泡を消失させやすい食材等がある。したがって、泡立てようとする調味料の種類や、泡立てられた調味料がかけられる食材等に関わらず、所望の液体調味料が確実に泡立てられ、口当たりが滑らかな優れた食感の泡を生成でき、且つ生成された泡を長時間に亘って維持できる、起泡性調味料または泡状調味料用のミックス粉の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、起泡性調味料または泡状調味料を製造するために用いられるミックス粉であって、所望の液体調味料を確実に泡立たせて口当たりが滑らかな優れた食感の泡を簡易に生成でき、且つ生成された泡の状態を長時間に亘って維持できるミックス粉、起泡性調味料、および泡状調味料、ならびに起泡性調味料の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係るミックス粉は、起泡性調味料または泡状調味料を製造するために液体調味料に混合されるミックス粉であって、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を含有し、前記泡立ち材は、水溶性ゼラチン、大豆蛋白、大豆多糖類、サポニン、およびアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、前記泡立ち増強材は、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、マンナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、プルラン、アラビアガム、ペクチン、およびα化澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、前記泡立ち保持材は、サイクロデキストリンおよび高度分岐環状デキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする。
【0010】
これによれば、ミックス粉を液体調味料に混合して溶解させるだけで、簡易に調味料に起泡性を付与することができ(すなわち、起泡性調味料を製造でき)、これを起泡させて泡にすることができる(すなわち、泡状調味料を製造できる)。そして、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材が相互に作用することにより、所望の液体調味料を確実に泡立たせて、きめ細かく均一で、口当たりが滑らかな優れた食感の泡を生成でき、生成された泡の状態を長時間に亘って安定して維持できるようになる。
【0011】
また、サイクロデキストリンおよび高度分岐環状デキストリンによれば、泡の保持性をより向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る起泡性調味料および泡状調味料は、本発明に係るミックス粉が添加されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る起泡性調味料の製造方法は、液体調味料に、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を溶解させる工程を含み、前記泡立ち材は、水溶性ゼラチン、大豆蛋白、大豆多糖類、サポニン、およびアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、前記泡立ち増強材は、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、マンナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、プルラン、アラビアガム、ペクチン、およびα化澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、前記泡立ち保持材は、サイクロデキストリンおよび高度分岐環状デキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする。この方法においては、液体調味料に対して、本発明に係るミックス粉を混合して溶解させてもよく、もしくは、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を別々に混合して溶解させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所望の液体調味料を確実に泡立たせて口当たりが滑らかな優れた食感の泡を簡易に生成でき、且つ生成された泡の状態を長時間に亘って維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るミックス粉について説明する。本実施形態に係るミックス粉は、起泡性調味料または泡状調味料を製造するために用いられるミックス粉である。以下、ミックス粉とあわせて起泡性調味料および泡状調味料についても説明する。
【0016】
本実施形態に係るミックス粉は、少なくとも、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を含有する。以下、詳細に説明する。
【0017】
泡立ち材は、泡立つ性質を有する材料であって、液体調味料に起泡性を付与する起泡剤である。泡立ち材としては、特に限定されないが、例えば、水溶性ゼラチン、大豆蛋白、乳蛋白、大豆多糖類、サポニン、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)等が挙げられ、これらのうち、少なくとも1種類を含んでいればよい。
【0018】
上記の水溶性ゼラチンは、常温(15[℃]~25[℃]程度)の水に溶解可能なゼラチンである。その他、上記例示した材料はいずれも常温で溶解可能な材料である。このような材料を用いることにより、液体調味料に適宜常温水を混合した液体調味料溶液に泡立ち材を混合するだけで、特に加熱したりすることなく、これを溶解させ、起泡性を付与することができる。ただし、泡立ち材として上記例示した材料以外の材料を用いてもよい。この場合、好適には常温で溶解可能な材料が好ましい。
【0019】
また、泡立ち増強材は、泡立ち材の泡立ちを増強する性質を有する材料である。泡立ち増強材としては、特に限定されないが、例えば、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、マンナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、プルラン、アラビアガム、ペクチン、α化澱粉等の増粘剤が挙げられ、これらのうち、少なくとも1種類を含んでいればよい。
【0020】
上記例示した材料はいずれも常温で溶解可能な材料である。このような材料を用いることにより、液体調味料に適宜常温水を混合した液体調味料溶液に泡立ち材と共に混合するだけで、特に加熱したりすることなく、これらを溶解させ、より確実に起泡性を付与することができる。ただし、泡立ち増強材として上記例示した材料以外の材料を用いてもよい。この場合、好適には常温で溶解可能な材料が好ましい。
【0021】
さらに、本実施形態に係るミックス粉は、泡立ち保持材としてデキストリンを含有させることに特徴がある。泡立ち保持材(デキストリン)は、泡立ち材および泡立ち増強材と共に用いられることが重要であり、泡立ち材および泡立ち増強材と相互に作用することにより、所望の液体調味料を確実に泡立たせて、きめ細かく均一で、口当たりが滑らかな優れた食感の泡を生成でき、特に生成された泡の状態を長時間に亘って安定して維持できるようになる。
【0022】
デキストリンの種類は、特に限定されないが、好適には、通常の直鎖型のものよりも、サイクロデキストリン(特に、水への溶解性の高いα-サイクロデキストリンやγ-サイクロデキストリン)、高度分岐環状デキストリン、難消化性デキストリン等が好ましい。サイクロデキストリンは、内部に疎水基、外部に親水基を有する環状構造を持つ。高度分岐環状デキストリンは、螺旋状のグルカン鎖を有して高度な分岐構造を持つ。難消化性デキストリンは、澱粉に微量の酸を添加して加熱処理した焙焼デキストリンを加水分解し、精製することによって得られ、複雑な分岐構造を持つ。これらの特殊で複雑な構造が泡の崩壊や泡状部分と液状部分との分離を抑制し、泡の保持性をより向上させることを可能にする。なお、デキストリンは常温で溶解可能であるため、液体調味料に適宜常温水を混合した液体調味料溶液に混合するだけで、特に加熱したりすることなく、溶解させることができる。
【0023】
その他、本発明の目的に反しない範囲で、ミックス粉中に任意の添加物を含有させてもよい。
【0024】
また、各成分の配合量(配合比)は、特に限定されないが、好適には、泡立ち材を0.05[質量部]~6[質量部]、泡立ち増強材を0.015[質量部]~0.9[質量部]、泡立ち保持材を0.5[質量部]~11[質量部]とする配合比で含有させることが好ましく、より好適には、泡立ち材を0.1[質量部]~5[質量部]、泡立ち増強材を0.02[質量部]~0.8[質量部]、泡立ち保持材を1[質量部]~10[質量部]とする配合比が好ましい。泡立ち材または泡立ち増強材が少な過ぎると液体調味料を泡立たせにくくなり、泡立ち保持材が少な過ぎると長時間に亘って泡が保持しにくくなる。一方、泡立ち材、泡立ち増強材、または泡立ち保持材が多過ぎると粘性が高くなって泡がぬる付きやすくなり、口当たりが滑らかな食感が得られにくくなる。
【0025】
以上の成分からなるミックス粉は、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を構成する材料や、その他添加物をそれぞれ粉体で入手し、これらを混合することで製造することができる。混合順序や混合方法は特に限定されず、適宜粉体混合機等を用いて混合すればよい。
【0026】
続いて、本実施形態に係るミックス粉を用いた起泡性調味料および泡状調味料の製造方法について説明する。先ず、所望の液体調味料にミックス粉を混合し、溶解させることによって液体調味料に起泡性が付与された液体の起泡性調味料を製造することができる。このとき、適宜水を添加して水分を調整してもよい。本実施形態に係るミックス粉はいずれも常温で溶解可能な材料から構成されているため、使用する水は常温水でよく、ミックス粉を非加熱で溶解させることができる。なお、液体調味料、水、およびミックス粉の混合順序や混合方法は特に限定されず、ミックス粉の溶解性等に応じて、例えば予めミックス粉を水に溶解させたうえで液体調味料と混合してもよく、もしくは、液体調味料に水を混合した液体調味料溶液に、ミックス粉を添加してもよい。このように、本実施形態に係るミックス粉を用いることによって起泡性調味料を極めて簡易に製造することができる。
【0027】
次に、起泡性調味料を起泡させることによって泡状調味料を製造することができる。起泡性調味料は、ハンドミキサー、ホイップクリームマシーン、ホモジナイザー等を使用して攪拌することにより起泡させることができ、もしくは、ポンプフォーマー容器やスクイズフォーマー容器等の専用の泡吐出容器を使用して容器に充填させた起泡性調味料を吐出口から吐出させることにより起泡させることができる。このうち、一例として、ハンドミキサー等の攪拌器具を使用する場合、液体調味料溶液にミックス粉を添加し、これを攪拌器具で攪拌するだけで、ミックス粉を溶解させると共にそのまま起泡させることができ、泡状調味料を極めて簡易に製造することができる。本実施形態に係るミックス粉を用いて製造された泡状調味料は、従来のように加熱等の煩雑な処理をすることなくそのまま用いることができ、泡の状態を長時間に亘って安定して維持できる。
【0028】
なお、本実施形態に係るミックス粉が適用可能な液体調味料としては、特に限定されないが、例えば、醤油、ポン酢、調味酢、ドレッシング(オイル系ドレッシングやノンオイルドレッシング等)、つゆ、たれ、ソース、さらには、ホイップクリーム、ムース、パン用スプレッド、菓子類のトッピングやデコレーション等に使用する液状物等が挙げられる。特に、本実施形態に係るミックス粉によれば、オイル系ドレッシング等のように、油を含有して比較的泡立ちにくい調味料も確実に泡立たせることができる。
【0029】
以上のように、液体調味料に、本実施形態に係るミックス粉を混合することで起泡性調味料を製造でき、これを起泡させて泡状調味料を製造できる。本実施形態に係る起泡性調味料および泡状調味料は、本実施形態に係るミックス粉が添加されていることを特徴とし、含有されている泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材の成分は、添加前のミックス粉の成分比とほぼ一致する。
【0030】
これに対して、液体調味料に、ミックス粉に含有される泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を別々に混合して溶解させても起泡性調味料を製造でき、これを起泡させることで泡状調味料を製造することも可能である。すなわち、本発明は、以下の技術的思想、すなわち「液体調味料に、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を溶解させる工程を含み、前記泡立ち材は、水溶性ゼラチン、大豆蛋白、大豆多糖類、サポニン、およびアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、前記泡立ち増強材は、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、マンナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、プルラン、アラビアガム、ペクチン、およびα化澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、前記泡立ち保持材は、デキストリンを含有することを特徴とする起泡性調味料の製造方法。」を包含する。この方法においては、液体調味料に対して、本発明に係るミックス粉を混合して溶解させてもよく、もしくは、泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材を別々に混合して溶解させてもよい。また、この方法においては、前記デキストリンは、サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、および難消化性デキストリンのいずれかであることが好ましい。
【実施例
【0031】
泡立ち材、泡立ち増強材、および泡立ち保持材からなるミックス粉を用いて所定の液体調味料から泡状調味料を製造した。
方法に関して、ミックス粉は、表1~3に示す材料の中から各試験で示す所定の材料を配合し、その他に記載のない材料や添加物は一切加えないものを用いた。液体調味料は、市販されている醤油またはオイル系ドレッシング(オイルを含有するドレッシング)を用いた。水は、常温水を用いた。
泡状調味料の製造方法は、液体調味料と水とを混合し、次いでこれにミックス粉を添加し、ハンドミキサーで起泡させて泡状調味料を製造した。液体調味料、水、およびミックス粉の配合量(配合比)は各試験の結果表と共に示す。その他、特に記載のない条件、方法は、全ての実施例および比較例で同一に行った。
【0032】
また、評価に関して、試験1~試験6では、製造直後の泡状調味料を食し、「泡の食感」を表4に示す基準に従って評価した。また、製造直後の泡状調味料の泡の状態(泡立ち)、さらに、製造後2時間後、製造後24時間後の泡の状態(保持性)を、目視により表5に示す基準に従って評価した。
また、試験7では、製造直後の泡状調味料をディッシャーですくい取り、すりきり1杯分を生のレタスの上にかけ(載置し)、載置直後、1時間後、2時間後の泡の状態(保持性)を、目視により表6に示す基準に従って評価した。
泡の食感は、10人のパネラーが各人で評価し、最も人数の多かった評価を評価結果とした。また、泡の状態は、試験実施者が評価した。なお、評価時以外は製造した泡状調味料を冷蔵保管した。
【0033】
ミックス粉の材料(泡立ち材)
【表1】
【0034】
ミックス粉の材料(泡立ち増強材)
【表2】
【0035】
ミックス粉の材料(泡立ち保持材)
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
以下、各試験の結果について説明する。
(試験1)
試験1では、泡立ち材を水溶性ゼラチン、泡立ち増強材をキサンタンガム、泡立ち保持材をα-サイクロデキストリン(α-CD)とするミックス粉を用いて、醤油(液体調味料)の泡状調味料を製造した(実施例1~12)。各材料の配合量(配合比)は、水溶性ゼラチンを0.5[質量部]~5[質量部]、キサンタンガムを0.02[質量部]~0.8[質量部]、α-CDを1[質量部]~10[質量部]とする範囲とした。
一方、比較例として、水溶性ゼラチン(泡立ち材)、キサンタンガム(泡立ち増強材)、およびα-CD(泡立ち保持材)のいずれかを配合しない(いずれかを欠く)ミックス粉を用いて同様に醤油(液体調味料)の泡状調味料を製造した(比較例1~4)。
各例の配合量(配合比)および結果を表7に示す。
【0040】
【表7】
【0041】
表7に示すように、水溶性ゼラチン、キサンタンガム、およびα-CDからなるミックス粉(実施例1~12)では、いずれも液体(醤油)のほぼ全てを泡立たせることができ(「製造直後」評価A)、2時間後もそのままの状態が維持された(「2時間後」評価A)。さらに24時間後も泡立たせた状態がそのままの状態が維持されるか、液体(醤油)の3/4以上が泡立った状態に安定して維持された(「24時間後」評価AまたはB)。また、泡の食感についても、いずれも均一で味立ちが良く(全例で評価〇以上)、配合によってはさらにきめ細かく口当たりも滑らかな泡が生成された(実施例1~4、6、7、10:評価◎)。
【0042】
これに対して、水溶性ゼラチンを欠くミックス粉(比較例4)では、液体(醤油)の1/4以上までしか泡立たず(「製造直後」評価D)、2時間後には泡がほぼ全て消失してしまった(「2時間後」評価E)。また、キサンタンガムおよびα-CDのいずれか一方または両方を欠くもの(比較例1~3)では、液体(醤油)の3/4以上まで泡立ったが(「製造直後」評価B)、2時間後にはキサンタンガムを欠くもの(比較例1、2)で半分程まで泡が消失し(「2時間後」評価C)、24時間後にはキサンタンガムとα-CDの両方を欠くもの(比較例1)でさらに1/4程度に泡が消失してしまい(「24時間後」評価D)、α-CDを欠くもの(比較例3)も24時間後には半分程まで泡が消失してしまった(「24時間後」評価C)。
【0043】
(試験2)
試験2では、泡立ち材を大豆蛋白、泡立ち増強材をグアーガム、泡立ち保持材をα-サイクロデキストリン(α-CD)とするミックス粉を用いて、醤油(液体調味料)の泡状調味料を製造した(実施例13~26)。各材料の配合量(配合比)は、大豆蛋白を0.1[質量部]~5[質量部]、グアーガムを0.02[質量部]~0.5[質量部]、α-CDを1[質量部]~10[質量部]とする範囲とした。
一方、比較例として、大豆蛋白(泡立ち材)、グアーガム(泡立ち増強材)、およびα-CD(泡立ち保持材)のいずれかを配合しない(いずれかを欠く)ミックス粉を用いて同様に醤油(液体調味料)の泡状調味料を製造した(比較例5~8)。
各例の配合量(配合比)および結果を表8に示す。
【0044】
【表8】
【0045】
表8に示すように、大豆蛋白、グアーガム、およびα-CDからなるミックス粉(実施例13~26)では、いずれも液体(醤油)のほぼ全てを泡立たせることができ(「製造直後」評価A)、2時間後もそのままの状態が維持された(「2時間後」評価A)。さらに24時間後も泡立たせた状態がそのまま維持されるか、液体(醤油)の3/4以上が泡立った状態に安定して維持された(「24時間後」評価AまたはB)。また、泡の食感についても、いずれも均一で味立ちが良く(全例で評価〇以上)、配合によってはさらにきめ細かく口当たりも滑らかな泡が生成された(実施例13~18、20、21、24:評価◎)。
【0046】
これに対して、大豆蛋白を欠くミックス粉(比較例8)では、液体(醤油)の1/4以上までしか泡立たず(「製造直後」評価D)、2時間後には泡がほぼ全て消失してしまった(「2時間後」評価E)。また、グアーガムおよびα-CDのいずれか一方または両方を欠くもの(比較例5~7)では、液体(醤油)の3/4以上まで泡立ったが(「製造直後」評価B)、2時間後にはグアーガムを欠くもの(比較例5、6)で半分程まで泡が消失し(「2時間後」評価C)、24時間後にはグアーガムとα-CDの両方を欠くもの(比較例5)でさらに1/4程度に泡が消失してしまい(「24時間後」評価D)、α-CDを欠くもの(比較例7)も24時間後には半分程まで泡が消失してしまった(「24時間後」評価C)。
【0047】
(試験3)
試験3では、泡立ち増強材をキサンタンガム、泡立ち保持材をα-サイクロデキストリン(α-CD)とし、さらに泡立ち材として種々の材料を用いたミックス粉で醤油(液体調味料)の泡状調味料を製造した。具体的には、泡立ち材に、大豆蛋白(実施例27)、大豆多糖類(実施例28)、サポニン(実施例29)、またはアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)(実施例30)を用いた。
各例の配合量(配合比)および結果を表9に示す(実施例3を再掲する)。なお、起泡力が強いサポニンについては、配合量(配合比)を他の泡立ち材の1/10程度に調整した(実施例29)。
【0048】
【表9】
【0049】
表9に示すように、いずれの泡立ち材を含有させた場合も(実施例3、27~30)、液体(醤油)のほぼ全てを泡立たせることができ(「製造直後」評価A)、2時間後もそのままの状態が維持された(「2時間後」評価A)。さらに24時間後は大豆多糖類を除く全ての泡立ち材(実施例3、27、29、30)で泡立たせた状態がそのまま維持され(「24時間後」評価A)、大豆多糖類(実施例28)も液体(醤油)の3/4以上が泡立った状態に安定して維持された(「24時間後」評価B)。また、泡の食感についても、いずれもきめ細かく均一で、味立ちが良く口当たりも滑らかな泡が生成された(評価◎)。
【0050】
(試験4)
試験4では、泡立ち材を大豆蛋白、泡立ち増強材をキサンタンガムとし、さらに泡立ち保持材として様々なタイプのデキストリンを用いたミックス粉で醤油(液体調味料)の泡状調味料を製造した。具体的には、泡立ち保持材に、α-サイクロデキストリン(α-CD)(実施例31)、高度分岐環状デキストリン(実施例32)、難消化性デキストリン(実施例33)、直鎖型のデキストリン(DE40)(実施例34)、または直鎖型のデキストリン(DE2)(実施例35)を用いた。なお、「DE」は、デキストロース当量(Dextrose equivalent)を示す。
各例の配合量(配合比)および結果を表10に示す。
【0051】
【表10】
【0052】
表10に示すように、いずれの泡立ち保持材を含有させた場合も(実施例31~35)、液体(醤油)のほぼ全てを泡立たせることができ(「製造直後」評価A)、2時間後もそのままの状態が維持された(「2時間後」評価A)。さらに24時間後はα-サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、および難消化性デキストリン(実施例31~33)で泡立たせた状態がそのままの状態で維持され(「24時間後」評価A)、通常の直鎖型のデキストリン(実施例34、35)も、DEに関わらず、液体(醤油)の3/4以上が泡立った状態に安定して維持された(「24時間後」評価B)。また、泡の食感についても、いずれもきめ細かく均一で、味立ちが良く口当たりも滑らかな泡が生成された(全例で評価◎)。
【0053】
(試験5)
試験5では、泡立ち材を水溶性ゼラチン、泡立ち保持材をα-サイクロデキストリン(α-CD)とし、さらに泡立ち増強材として種々の材料を用いたミックス粉で醤油(液体調味料)の泡状調味料を製造した。具体的には、泡立ち増強材に、グアーガム(実施例36)、タラガム(実施例37)、マンナン(実施例38)、ι-カラギナン(実施例39)、λ-カラギナン(実施例40)、プルラン(実施例41)、アラビアガム(実施例42)、ペクチン(実施例43)またはα化澱粉(実施例44)を用いた。
各例の配合量(配合比)および結果を表11に示す(実施例3を再掲する)。
【0054】
【表11】
【0055】
表11に示すように、いずれの泡立ち増強材を含有させた場合も(実施例3、36~44)、液体(醤油)のほぼ全てを泡立たせることができ(「製造直後」評価A)、2時間後もそのままの状態が維持された(「2時間後」評価A)。さらに24時間後はプルランを除く全ての泡立ち増強材で泡立たせた状態がそのまま維持され(「24時間後」評価A)、プルラン(実施例41)も液体(醤油)の3/4以上が泡立った状態に安定して維持された(「24時間後」評価B)。
また、泡の食感についても、いずれも均一で味立ちが良く(全例で評価〇以上)、λ-カラギナンおよびペクチンを除く泡立ち増強材では、特にきめ細かく口当たりも滑らかな泡が生成された(実施例3、36~39、41、42、44:評価◎)。
【0056】
(試験6)
試験6では、泡立ちにくい性質を有する、油を含む調味料(オイル系ドレッシング)の泡状調味料を製造した。ミックス粉は、泡立ち増強材をキサンタンガム、泡立ち保持材をα-サイクロデキストリン(α-CD)とし、さらに泡立ち材として種々の材料を用いた。具体的には、泡立ち材に、水溶性ゼラチン(実施例45)、大豆蛋白(実施例46)、大豆多糖類(実施例47)、サポニン(実施例48)、またはアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)(実施例49)を用いた。
各例の配合量(配合比)および結果を表12に示す。なお、起泡力が強いサポニンについては、配合量(配合比)を他の泡立ち材の1/10程度に調整した(実施例48)。
【0057】
【表12】
【0058】
表12に示すように、いずれの泡立ち材を含有させた場合も(実施例45~49)、液体(オイル系ドレッシング)のほぼ全てを泡立たせることができ(「製造直後」評価A)、2時間後もそのままの状態が維持された(「2時間後」評価A)。さらに24時間後は大豆多糖類を除く全ての泡立ち材で泡立たせた状態がそのまま維持され(「24時間後」評価A)、大豆多糖類(実施例47)も液体(オイル系ドレッシング)の3/4以上が泡立った状態に安定した維持された(「24時間後」評価B)。また、泡の食感についても、いずれも均一で味立ちが良く(全例で評価〇以上)、水溶性ゼラチン(実施例45)では、特にきめ細かく口当たりも滑らかな泡が生成された(評価◎)。
【0059】
(試験7)
試験7では、醤油(実施例50)またはオイル系ドレッシング(実施例51)の泡状調味料を製造し、これらを、泡を消失させやすい性質を有する生野菜(レタス)の上にかけて(載置して)、泡の保持性を評価した。ミックス粉は、泡立ち材を大豆蛋白、泡立ち増強材をキサンタンガム、泡立ち保持材をα-サイクロデキストリン(α-CD)とした。
各例の配合量(配合比)および結果を表13に示す。
【0060】
【表13】
【0061】
表13に示すように、醤油の泡状調味料(実施例50)では、レタスに載置しても泡の形状が崩れることなく(「載置直後」評価A)、さらに載置してから2時間が経過した後まで、そのままの状態が維持された(「1時間後」「2時間後」共に評価A)。また、オイル系ドレッシングの調味料(実施例51)では、レタスに載置した直後やや泡の形状が崩れたが、その後は2時間が経過した後まで、そのままの状態が維持された(「1時間後」「2時間後」共に評価B)。
【0062】
以上の結果から、泡立ち材と、泡立ち増強材と、泡立ち保持材としてデキストリンとを組み合わせることで、液体調味料を確実に泡立たせることができ、きめ細かく均一で、味立ちが良く口当たりも滑らかな優れた食感の泡を生成できることが示された。さらに、生成された泡の状態を24時間以上長時間に亘って維持でき、泡を消失させやすい食材のうえにかけた場合でもほぼそのままの状態で2時間以上維持できることが示された。