IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オールド ドミニオン ユニバーシティ リサーチ ファウンデーションの特許一覧

特許7382645双極性ナノ秒パルスの干渉による標的化遠隔電気刺激
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】双極性ナノ秒パルスの干渉による標的化遠隔電気刺激
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20231110BHJP
   A61N 1/32 20060101ALI20231110BHJP
   A61N 1/362 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/32
A61N1/362
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020508575
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018046823
(87)【国際公開番号】W WO2019036549
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】62/546,229
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508102233
【氏名又は名称】オールド ドミニオン ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】パホモフ,アンドレイ,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】パホモフ,オルガ,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,シュ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0194949(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0261994(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0228244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/32 - A61N 1/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムにおいて、
第1の電気パルス送達チャネルおよび第2の電気パルス送達チャネルと、
少なくとも1つのパルス発生器であって、前記第1の電気パルス送達チャネルから送達される第1の双極性ナノ秒電気パルス、および前記第2の電気パルス送達チャネルから送達される第2の双極性ナノ秒電気パルスを少なくとも生成するように構成されたパルス発生器と、
前記パルス発生器と動作可能に接続された少なくとも1つの電源と、を具え、
前記システムが、前記第1の双極性ナノ秒電気パルスおよび前記第2の双極性ナノ秒電気パルスを少なくとも重畳させて、前記第1および第2の電気パルス送達チャネルから離れた位置に単極性ナノ秒電気パルスを作り出すように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1の電気パルス送達チャネルが第1の少なくとも2つの電極を有し、および/または前記第2の電気パルス送達チャネルが第2の少なくとも2つの電極を有することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、前記第1の電気パルス送達チャネルおよび/または前記第2の電気パルス送達チャネルが、ニードル電極を有することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステムにおいて、少なくとも前記第1の双極性ナノ秒電気パルスおよび前記第2の双極性ナノ秒電気パルスのいずれか一方が、1800ナノ秒以下の持続時間を有することを有することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステムにおいて、少なくとも前記第1の双極性ナノ秒電気パルスおよび前記第2の双極性ナノ秒電気パルスが、生物学的に無効な双極性パルスであって、前記単極性ナノ秒電気パルスが生物学的に有効な単極性電気パルスであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記生物学的に有効な単極性電気パルスが、前記重畳するステップがなされずに生成された第1または第2の生物学的に無効な双極性電気パルスに比べて、増強された刺激効率を有し、
前記重畳するステップがなされずに生成された第1または第2の生物学的に無効な双極性電気パルスが、前記第1または第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスの第2の位相が前記第1または第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスの第1の位相の刺激効果を相殺または低減することによって惹起される相殺効果を誘発し、
前記生物学的に有効な単極性ナノ秒電気パルスの前記増強された刺激効率は、前記相殺効果を相殺または低減することによって惹起されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項5または6に記載のシステムにおいて、少なくとも生物学的に無効な前記第1および第2の双極性ナノ秒電気パルスからの電場成分は、方向が反対になるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステムにおいて、対象者の深部組織を選択的に標的とすること、対象者の神経および筋肉を励起すること、対象者の免疫細胞および内分泌細胞を活性化すること、対象者の細胞を分化させること、対象者のエレクトロポレーション、対象者の心臓ペーシング、対象者の心臓除細動、対象者の筋力トレーニングおよびリハビリテーション、対象者の疼痛を制御すること、対象者のパーキンソン病症状の緩和、対象者の神経筋および精神障害の診断および治療、対象者の深在腫瘍および/または血行性転移のアブレーション、ならびに対象者の深部脳刺激、を必要とする対象者の治療に使用するように前記システムが構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1の電気パルス送達チャネルおよび/または前記第2の電気パルス送達チャネルが、線形アレイ内に整列された電極であって、ステンレス鋼またはタングステンロッドから形成された電極を含むことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1の双極性ナノ秒電気パルスおよび前記第2の双極性ナノ秒電気パルスのいずれか一方または両方が、減衰した電気パルスを含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1の双極性ナノ秒電気パルスおよび/または前記第2の双極性ナノ秒電気パルスが、正弦波パルス、矩形パルス、または台形パルスであることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの前記パルス発生器が多相パルス発生器であることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1の双極性ナノ秒電気パルスおよび前記第2の双極性ナノ秒電気パルスの一方または両方が複数の位相を有し、当該複数の位相のうちの少なくとも1つの位相が、前記複数の位相の他の位相と異なる持続時間または振幅を有することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1の双極性ナノ秒電気パルスおよび前記第2の双極性ナノ秒電気パルスの一方または両方が、1つ以上の位相を有することを特徴とするシステム。
【請求項15】
システムにおいて、
第1の少なくとも2つの電極および第2の少なくとも2つの電極を有する電極のアレイと、
1つ以上のパルス発生器であって、前記第1の少なくとも2つの電極から送達される第1セットのパルスと、前記第2の少なくとも2つの電極から送達される第2セットのパルスとを生成し、前記第1セットのパルスと前記第2セットのパルスとを重畳させて、前記電極のアレイから離れた位置に単極性電気パルスをナノ秒の範囲で作り出すように構成されたパルス発生器と、
前記パルス発生器と動作可能に接続された少なくとも1つの電源と、を具え、
前記第1セットのパルスの各パルスの位相の数が、前記第2セットのパルスの各パルスの位相の数と、1つの位相だけ異なることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、前記第1セットのパルスおよび前記第2セットのパルスの少なくとも一方が、二相または三相であることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項15または16に記載のシステムにおいて、前記第1セットのパルスおよび前記第2セットのパルスの少なくとも一方が、双極性であることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1セットのパルスおよび前記第2セットのパルスが、生物学的に無効なパルスであることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記電極のアレイが、ニードル電極のアレイを有することを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項15乃至19のいずれか一項に記載のシステムにおいて、1つ以上の前記パルス発生器が、前記第1セットのパルスおよび前記第2セットのパルスがナノ秒の範囲のパルス幅を有するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項15乃至20のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1セットのパルスおよび前記第2セットのパルスのいずれか一方または両方が、減衰した電気パルスを含むことを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項15乃至21のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1セットのパルスおよび前記第2セットのパルスの少なくとも一方が複数の位相を有し、当該複数の位相の少なくとも1つの位相が、前記複数の位相の他の位相と異なる持続時間または振幅を有することを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項15乃至22のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1セットのパルスおよび前記第2セットのパルスのいずれか一方または両方が、正弦波パルス、矩形パルス、または台形パルスを含むことを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項15乃至23のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記第1の少なくとも2つの電極および前記第2の少なくとも2つの電極が、それぞれ、独立した電気パルス送達チャネルに接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項15乃至24のいずれか一項に記載のシステムにおいて、1つ以上の前記パルス発生器が、前記ナノ秒の範囲のパルスを1800ナノ秒以下の持続時間を有するように生成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項15乃至25のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記電源が高電圧電源であることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本発明は、空軍科学研究局により授与されたFA9550-15-1-0517のもとに政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に所定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月16日に出願された米国仮特許出願第62/546,229号の利益を主張し、その出願日に依存し、その開示全体は参照により取り込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
電気刺激(ES)は、さまざまな用途において生物学的機能を操作するために使用される。それにもかかわらず、当技術分野では、例えば、深部組織および器官に対して選択的にESを非侵襲的に標的化する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本開示は、生物学的に有効な単極性ナノ秒電気パルスを生成する方法を提供する。本方法は、第1の電極対から生成された第1の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスと、第2の電極対から生成された第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスとを重畳させて、第1および第2の電極対から離れた位置に生物学的に有効な単極性ナノ秒電気パルスを作り出すことを含む。生物学的に有効な単極性ナノ秒電気パルスは、重畳ステップの不在下で生成される第1または第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスと比較して、増強された刺激効率を有する。重畳ステップの不在下で生成される第1または第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスは、第1または第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスの第2の位相が第1または第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスの第1の位相の刺激効果を相殺または低減することにより惹起される相殺効果を誘発する。
【0005】
いくつかの実施形態では、第1および第2の電極対は、各々、独立したナノ秒電気パルス送達チャネルに接続される。特定の実施形態では、第1および第2の電極対は、各々、線形アレイ内に整列される。いくつかの実施形態では、単極性ナノ秒電気パルスは、対象者に非侵襲的に送達される。任意選択で、単極性ナノ秒電気パルスは、対象者の局在細胞、組織または器官に非侵襲的に送達される。特定の実施形態では、単極性ナノ秒電気パルスは、対象者の局在細胞、組織または器官に非侵襲的に送達される。いくつかの実施形態では、組織は深部組織である。他の実施形態では、単極性ナノ秒電気パルスは、典型的にはin vitroまたはex vivoで試料に送達される。任意選択で、試料は細胞を含む。いくつかの実施形態では、生物学的に有効な単極性ナノ秒電気パルスの増強された刺激効率は、相殺効果の相殺または低減の程度に方向的に比例する。特定の実施形態では、第1および/または第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスは、二相または三相である。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の生物学的に無効な双極性ナノ秒電気パルスは、少なくとも第1の位相と第2の位相とを有し、第1の位相の振幅は、100/70/40%である。
【0006】
別の態様は、本明細書に記載の方法を実施するための装置に関する。さらに別の態様は、エレクトロポレーションを必要とする対象者を治療するためのこのような装置の使用に関する。特定の実施形態では、装置は、これらに限定されないが、疼痛制御、神経または筋興奮、免疫または内分泌細胞の活性化、腫瘍の標的化アブレーション、精神疾患の治療、またはパーキンソン病の治療を含む治療用途において使用される。装置は、例えば、エレクトロポレーションを含む非治療的用途にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、特定の実施形態を示し、記述による説明とともに、本明細書に開示された組成および方法の特定の原理を説明するのに役立つ。
【0008】
図1図1は、双極性および単極性nsEPによるCa2+活性化を示す。上:一実施形態に従う刺激の形状および振幅。下:CHO細胞中のピークCa2+応答(平均+/-s.e.、n=20~28)。
図2図2は、一実施形態に従う位相化双極性刺激の重畳による遠隔ESの概念を示す。上:A-A’およびB-B’は、2対の接地単離された刺激電極である。破線は、刺激が送達される容積を近似し、領域C-C’において重なり合う。下:A-A’とB-B’との間に印加される減衰正弦波は、領域C-C’において重畳して単極性パルスとなる。
図3図3は、一実施形態に従うCANCAN概念を説明する模式図を示す。上:A-A’およびB-B’は、独立した2対のnsEP送達電極である。AとBとの間の破線は、各電極対から電場が送達される領域を表し、電場は領域C-C’において互いに重なり合って無効となる。下:各電極対は、それ自体は生物学的に非効率的である減衰正弦波(DSW)を送達する。B-B’からのDSWを位相シフトすると、2つのDSWは、領域C-C’において重畳して生物学的に有効な単極性パルスとなる。この領域では、「相殺の相殺」またはCANCANが存在する。
図4図4A図4Cは、一実施形態に従う、CANCAN実験に使用された例示的な電極モデル化を示す。
図5図5A図5Dは、一実施形態に従う、例示的な電場線量測定および無効化効率を示す。
図6図6A図6Dは、一実施形態に従い、双極性および単極性nsEPの重畳が遠隔的にCANCANを惹起することを示す。図6A)4電極線形アレイ内の各電極対から送達されるnsEPを模式的に示す。チャネル1の電極(1および2)は、二相nsEP(双-AB)を送達し、チャネル2の電極(3および4)は単相パルス(単-C)を送達した。単-Cの振幅は双-ABの第2の位相の振幅と同じであり、(100%として設定された)第1の位相の50%であった。単-Cが位相シフトされ、双-AB送達と同期化されるとき、「CANCAN」暴露とみなされる。また、2つのnsEPが10ms離して送達されるとき、暴露は「非同期化されている」とみなされる。2aと3aとの間の矢印は、測定が行われた領域を示す。図6B)各暴露条件に対する中間の電極対(2および3)を包含する代表的な明視野(BF、上のパネル)または蛍光(YP、下のパネル)の画像。縮尺=500μm。各画像において、左右の円形はそれぞれ電極2および電極3の跡に対応する。電極間のX軸(図6BのYPパネルの左側にある白い破線)に沿って画定された16個の関心対象領域内でYP取り込みを定量化し、図6C)に示したように単-A中の局在電場の関数としてプロットした。図6D)「CANCAN」暴露対「非同期」暴露の比を、電極2と電極3との間の距離の関数として示す。平均±S.E.、n=5。
図7図7A図7Gは、一実施形態に従い、例示的な多相nsEPの同期化がCANCAN効果を改善することを示す。図7A)チャネル1の電極(2および3)は、三相双極性nsEP(双-ABC)を送達し、チャネル2の電極(3および4)は、二相nsEP(双-DE)を送達した。第2の位相および第3の位相(それぞれB/DおよびC/E)の振幅を各実験セットにおいて調整し、それぞれ、(100%として設定された)第1の位相の50%および25%(図7Bおよび図7C)、70%および25%(図7Dおよび図7E)、または70%および40%(図7Fおよび図7G)のいずれかとした。電極2と電極3との間のX軸(図7Aの2aと3aとの間の矢印)に沿ってYP取り込みを定量化し、単-A中の局在電場の関数としてプロットした(図7B図7D、および図7F)。図7C図7E、および図7Gでは、「CANCAN」暴露と「非同期」暴露との比を、電極間の距離の関数としてプロットした。平均±S.E.、n=5~8。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、電極を挿入することなく、深部組織および器官に対して選択的に電気刺激(ES)を標的化する方法および関連態様に関し、それは、例えば、ナノ秒持続時間の双極性刺激の局所重畳によって達成される。このパラダイムにより、非侵襲性ESを利用する治療処置および診断処置の浸透深度、選択性、および精度が向上する。37~39)、ホスファチジルセリン外面化(39)、Ca2+可動化(32、36)、および細胞生存性(32、33)を含む異なるエンドポイントに対して、示されている。双極性相殺は、長さ10μs(32)またはさらには50μs(38)のパルス分離の間、継続する。対照的に、2つの同じ極性のパルスは、2倍の大きさの透過化を惹起した(38、40)。この相殺効果は、ナノ秒電場振動(NEFO)(34、39)、および各位相に対して異なる振幅(39)または持続時間(37)を有する非対称双極性nsEPを含む、異なる持続時間および形状のnsEPについて観察された。特に、第2の位相の振幅が第1の位相の23%に低減された場合であっても、NEFOに見られるように、効果の相殺が依然として観察された。したがって、双極性相殺は、より長いmsEPおよびμsEPについて観察されなかった、nsEPに特有のロバストで再現性のある現象である(41~44)。
【0010】
電気刺激(ES)は、生物学的機能を操作するために広く使用されている。ESの効果は多様であり、神経および筋興奮、免疫および内分泌細胞の活性化、細胞分化、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ESは、心臓ペーシング、除細動、筋肉トレーニングおよびリハビリテーション、疼痛制御、パーキンソン病症状の緩和、神経筋および精神疾患の診断および治療を含む、十分に確立された臨床用途を有する。これまで、脳内または体内の特定の領域に正確にESを標的化する唯一の方法は、挿入されたまたは埋め込まれた電極を用いた直接的な刺激による。電極配置に関連する組織損傷、疼痛、出血、感染および炎症のリスクは、患者の検査、疾患診断、および埋め込み手術を妥当としない治療に対するこの技術の使用を制限している。
【0011】
本開示は、深部標的の選択的で、非侵襲的で、局在化されたESを可能にするパラダイムを提供する。特定の実施形態では、本開示は、ナノ秒電気パルス(nsEP)の固有の特性を使用して、刺激極性の反転に続くそれらの刺激効果を相殺することに関する。いくつかの実施形態では、双極性nsEPの第2の位相が第1の位相の刺激効果を相殺し、したがって、双極性刺激全体がそれの半分よりも弱くなる(図1)。そして、2つの双極性刺激を重畳させて単極性刺激にすると、相殺を相殺し(CANCAN)、刺激効率を回復させる。図2の例は、2つの減衰正弦波が、電極から離れた領域C-C’に単極性刺激をどのように生成するかを示している。こうして、CANCANは、電極から離れた位置でESを選択的に可能にする。
【0012】
CANCAN効果は、双極性相殺の現象に基づく。実施例にも記載されるように、多様な細胞型(CHO、U937、心筋細胞)において、さまざまなエンドポイント(Ca2+可動化、色素取り込み、膜導電性、細胞生存、ホスファチジルセリンの外面化)を使用して、および異なる持続時間および形状のnsEPに対して、双極性相殺が繰り返し実証されている。
【0013】
本明細書に記載されているように、本方法および関連態様は、最少破壊的(例えば、非侵襲性)である。競合的アプローチは、典型的には、細胞を分離し、スピン処理して異なる培地に移すことを必要とする。これらの手順は、エレクトロポレーションされた細胞に対して有害または致死的であり、それにより、トランスフェクトされた細胞の収率を低下、または実験を実行不可能にする。本明細書に開示される本方法および関連態様には、典型的には、既存のアプローチよりも少ない処理ステップ、より低いコスト、およびより少ない細胞が関与する。加えて、本明細書に開示される本方法および関連態様にはまた、一貫してかつ正確に規定された電場の使用、効率的な媒地交換および薬物の適用/除去、ならびに無菌状態への追加も関与する。
【0014】
エレクトロポレーション(または電気透過化)は、高電圧電気パルス(EP)に曝されると生じる膜透過性の増加と説明される(4、5)。エレクトロポレーションは、遺伝子電気転写(8)、電気化学療法(9)、および非可逆的エレクトロポレーションまたはCa2+エレクトロポレーションによる腫瘍アブレーション(10、11)を含む多くの生物医学的用途を有する。従来のエレクトロポレーションプロトコルは、ミリ秒およびマイクロ秒の持続時間のEP(それぞれ、msEPおよびμsEP)を利用しているが、より最近の研究は、ナノ秒持続時間のEP(nsEP)に焦点を当てている(5、12、13)。nsEPは、血漿膜中のナノメートルサイズの細孔の形成(14~16)、ならびに細胞内膜構造(17~21)、細胞骨格再編成およびリン脂質スクランブリング(21~24)、Ca2+可動化(20、25、26)、および細胞死経路の誘導(27~31)を含む、msEPおよびμsEPと比較して、細胞において明確な効果を有する。
【0015】
nsEPに固有であって、より長いmsEPおよびμsEPと明確に区別される特徴が、最近報告された(32~39)。双極性nsEPに暴露された細胞は、同じ総持続時間の単極性nsEPと比較して、エレクトロポレーションが少なく、より良好な細胞生存性を有した(33)。同様に、単極性パルスの2倍の持続時間の双極性nsEPは、2倍のエネルギーを送達するにもかかわらず、膜透過化は少なかった(32)。電場反転による生体効果の減衰は、「双極性相殺」と呼ばれている。これは、第1のパルスの完了後に第2の反対極性パルスを印加することで、第1のパルスの効果を取り消すまたは「相殺」することができるからである。双極性相殺は、複数の細胞型において、ならびに膜を横切る分子およびイオンの輸送(33、34、37~39)、ホスファチジルセリン外面化(39)、Ca2+可動化(32、36)、および細胞生存性(32、33)を含む異なるエンドポイントに対して、示されている。双極性相殺は、長さ10μs(32)またはさらには50μs(38)のパルス分離の間、継続する。対照的に、2つの同じ極性のパルスは、2倍の大きさの透過化を惹起した(38、40)。この相殺効果は、ナノ秒電場振動(NEFO)(34、39)、および各位相に対して異なる振幅(39)または持続時間(37)を有する非対称双極性nsEPを含む、異なる持続時間および形状のnsEPについて観察された。特に、第2の位相の振幅が第1の位相の23%に低減された場合であっても、NEFOに見られるように、効果の相殺が依然として観察された。したがって、双極性相殺は、より長いmsEPおよびμsEPについて観察されなかった、nsEPに特有のロバストで再現性のある現象である(41~44)。
【0016】
双極性相殺の現象により、照射電磁パルスからの生物学的効果の欠如が説明され得る(45~47)。高周波(RF)および超広帯域(UWB)放射を含む照射電磁パルスは、非常に短いパルス幅(ナノ秒動作有効期間)を有することを特徴とし、本質的に双極性である。細胞増殖および遺伝子毒性(48、50、52、53)、心臓および神経興奮性(49、51)、ならびに心臓血管、神経学、行動性、運動性、および発生効果(45、46、54~56)に関するものを含むいくつかの研究で、in vitro(48~53)およびin vivo(54~56)の両方において、照射されたRFおよびUWBパルスの生物学的効果が調査されている。さまざまな研究からの主な知見は、偽性暴露対照と効果に有意差がないことである。使用した最も強力なパルス暴露でさえ、単に熱応答と一致する効果を生み出した。興味深いことに、「マイクロ波ヒアリング」効果は、パルスRF放射の最も広く受け入れられている唯一の生物効果である(57)。したがって、RFおよびUWB放射の生物学的効果の欠如および非効率性は、双極性相殺の結果である可能性が高い。
【0017】
特定の態様では、本開示は、標的化された非侵襲性エレクトロポレーションまたは電気刺激のための双極性nsEPの固有の非効率性を克服するためのアプローチを提供する。この概念は、双極性nsEPはそれ自体では低い生物学的効率性を有するという事実を利用する。図3に示すように、1対の電極(Α-Α’)間に印加される減衰正弦波(DSW)は、生物学的に無効である。(電極B-B’間に印加される)位相シフトされた第2のDSWも同様に無効である。しかしながら、2つのDSWを重畳および同期化すると、2対の電極から離れた領域(C-C’)内に生物学的に有効な単極性パルスが作り出される。換言すれば、2つの生物学的に無効なDSWを重畳させる効果により、双極性nsEPの相殺効果が相殺され、単極性パルスが作り出される。この概念を「相殺の相殺」またはCANCAN効果と称する。
【0018】
さまざまな例示的な実施形態を本明細書に記載するが、特許請求の範囲によって記載されるような開示の範囲から逸脱することなく、多くの変更のうちのいずれもがさまざまな実施形態に対して行い得る。例えば、記載されたさまざまな方法ステップが実行される順序は、代替実施形態ではしばしば変更され得るし、他の代替実施形態では、1つ以上の方法ステップがまとめて省略され得る。さまざまな装置およびシステムの実施形態の任意選択の特徴は、いくつかの実施形態では含まれてもよく、他の実施形態では含まれていなくてもよい。したがって、本開示は、主に例示的な目的で提供され、本明細書に記載されたシステム、装置および方法の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。本開示は、さまざまな実施形態のあらゆる適応または変形をカバーすることを意図している。上記説明を検討することにより、本明細書に記載された実施形態と、本明細書に特に記載されていない他の実施形態との組み合わせが当業者には明らかとなろう。
【実施例
【0019】
細胞質遊離Ca2+の濃度([Ca2+)を、以前に報告されているように1,2、Fura-2を用いたレシオメトリック蛍光イメージングによりモニタリングした。簡単に述べると、色素を装填した細胞を、IX71顕微鏡(Olympus America、Center Valley、PA)に取り付けられたガラス底チャンバに入れた。チャンバに、以下を含む溶液(単位はmM)を連続的にかん流させた:140のNaCl、5.4のKCl、1.5のMgCl、2のCaCl、10のグルコース、および10のHEPES(pH7.3、290~300mOsm/kg)。Ca2+を含まない条件に対しては、CaClを2mMのNa-EGTAで置き換えた。いくつかの実験では、10μMのシクロピアゾン酸(CPA)とともにプレインキュベートすることにより、Ca2+を小胞体(ER)から枯渇させた。高速波長切替器Lambda DG4(Sutter Instruments、Novato、CA)を使用して340nmおよび380nmで交互に、Fura-2を励起した。発光を510nmで測定した。(Atlanta Biologicals、Flowery Branch、GA)、100IU/mLペニシリン、および0.1μg/mLストレプトマイシン(Gibco Laboratories、Gaithersburg、MD)。
【0020】
1対の直径0.1mmタングステンロッドを有するカバースリップ上の選択された細胞に電気刺激を送達した。MPC-200マニピュレータ(Sutter)を用いて、ロッドをカバースリップ表面から30μm上方に正確に配置し、選択された細胞を、ロッド先端間の0.175mmの隙間の中央においた。有限要素マクスウェル方程式ソルバAmaze 3D(Field Precision、Albuquerque、NM)を用いた3Dシミュレーションによって電場を決定した。NsEPを、外部からトリガし、Digidata 1440AボードおよびClampex v.10.2ソフトウェア(Molecular Devices)を使用してのTTLパルスプロトコルによる画像取得と同期させた。TDS3052オシロスコープ(Tektronix,Beaverton、OR)を用いてパルストレースを捕捉した。以下、報告する双極性パルスの振幅は、第1の位相の振幅である。各細胞は一度だけ暴露させた。
【0021】
実施例2
この実施例では、CANCAN概念の実現可能性をさらに試験した。独立した2対のnsEP送達電極を使用して、アガロースゲルに埋め込まれたCHO-K1細胞の透過化を測定した。2つのnsEPを同期および重畳させると、各刺激電極対から離れた領域に、単極性パルスのそれに等しい、透過化の増強が惹起されたことが判明した。したがって、独立した2つのnsEPを重畳させることにより生物学的に有効な単極性パルスを遠隔的に作り出し、CANCANが成功したことを表す概念実証が初めて示された。この技術の最適化は、非侵襲的な深部組織のエレクトロポレーションまたは電気刺激に対して多くの意味を有する。
【0022】
材料および方法
細胞系および培地
チャイニーズハムスター卵巣(CHO-K1)細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から購入した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(Atlanta Biologicals、Flowery Branch、GA)、100IU/mLペニシリン、および0.1μg/mLストレプトマイシン(Gibco Laboratories、Gaithersburg、MD)を補充したF-12K培地(Mediatech Cellgro、Herndon、VA)中で培養した。
【0023】
3次元細胞培地
実験日に、既述の方法(55)と同様に、細胞をアガロースゲル3次元(3D)培地に埋め込んだ。簡単に述べると、7mLのF-12K増殖培地中2%低ゲル化温度アガロース(Sigma-Aldrich、St Louis、MO)で60mm皿の底部をコーティングした。細胞を回収し、増殖培地中0.75%アガロース中に、5x10細胞/mLの濃度で再懸濁させ、この懸濁液4mLを60mm皿内の2%アガロースベース層上に滴下して堆積させた。皿を4℃で5分間インキュベートしてアガロースゼリー化を促進するとともに細胞沈降を防止し、次いで、nsEP暴露前に少なくとも30分間、インキュベータに移した。nsEP暴露の5分前に、YO-PRO-1ヨウ化物(YP;PBS中1μM;Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を各皿に添加し、37℃でインキュベートして、色素をアガロースゲル全体にわたって平衡化させた。
【0024】
電極およびnsEP暴露
アガロース3D培地に埋め込まれた細胞へのnsEP送達は、線形アレイに配列された2対のステンレス鋼ニードル電極を使用して達成された(図4A;直径1.66mmで電極間隔は2mm)。各電極対を独立したnsEP送達チャネルに接続し、電極1、2はチャネル1に接続し、電極3、4はチャネル2に接続した(図4C)。線形アレイの中央に位置する電極2および3はアクティブ(a)とし、周囲の電極1および4は接地(g)とした。細胞を含むアガロースゲル中への電極の正確かつ安定した挿入を可能にするために、線形アレイを、マイクロマニピュレータ上に取り付けた。
【0025】
各々が単極性または双極性nsEPを生成することができる、最近記載(59)されたような3つの別個のMOSFETベースのパルス発生器と、2つの別個の高圧直流電源との組み合わせを使用して、nsEPを生成した。各発生器は、各々が充電コンデンサおよびMOSFETスイッチを含む基本モジュールの2つのスタックから構成され、2つのチャネルによって生成される電場は、同じ方向の成分については加算され、反対の場合は減算され、電極から離れた領域で単極性暴露を生み出し、他の場所で双極性暴露を生み出すという、2つの多相パルスの空間的重畳を利用する。CANCAN概念により、双極性暴露領域、すなわち電極近辺における生物学的効果の減少と、単極性パルスのみが送達される電極間での増強とが保証される。
【0026】
各実験において、細胞を以下の暴露条件のうちの1つとして100、600nsのEP(10Hz)に暴露した:チャネル1からの単極性、チャネル1からの双極性(二相または三相)、チャネル2からの単極性、チャネル2からの双極性(二相)、「CANCAN」暴露(同期化および位相シフトされたチャネル1およびチャネル2のnsEP)、非同期(10ms離して送達されたチャネル1およびチャネル2のnsEP)、偽性(nsEPは送達されない)。正確な比較のために、すべてのnsEP暴露および偽性暴露は同じ細胞試料においてランダムな順序で行い、60mm皿当たり最高8回の暴露とした。すべてのnsEP暴露は、室温(22±2℃)で行った。
【0027】
nsEP線量測定およびCANCANモデル化
実験条件に合致する3Dモデルを、市販の有限要素法ソルバCOMSOL Multiphysics(登録商標)、Release5.0(COMSOL Inc、Stockholm、Sweden)を使用して実施した。
【0028】
2対のステンレス鋼ニードル電極(直径1.66mm、高さ3cm)を、図4Bおよび図4Cに示すように、線形アレイ(電極間距離2mm)に配置した。電極を、導電率1.4S/mおよび比誘電率76を有する溶液に浸漬し、ペトリ皿の底部から1mm上方に配置した。後者を、比誘電率3.8を有する誘電体シリンダ(直径35mm、厚さ2mm)としてモデル化した。記載されたシステムは、空気球(直径35mm)によって囲まれていた。
【0029】
シミュレーションドメインを離散化するように選択された四面体メッシュは、22449.3mmのシミュレーション容積内で、メッシュ要素の最小サイズ0.10mm、最大サイズ2.45mm、および総要素数401,038となった。二次要素を溶液ドメイン全体にわたって使用して、0.54×10の自由度を与えた。
【0030】
電流インターフェースを使用して、定常状態条件におけるマクスウェルの方程式を解いた。
ここで、Vは、電場E=-∇Vおよび電流J=σEを計算するために使用される電位であり、σは培地の導電率である。静電条件下では、培地の分散特性は無視した。
【0031】
実験の間、適切に同期化および遅延された多相矩形パルスを、各々が2つの電極に接続された2つのチャネル(図5A)によって送達した。位相Aの振幅を基準(100%)とし、各後続位相の振幅を、Aの百分率として設定した。2つのパルス暴露を100/70/40%および100/50/25%とモデル化した。
【0032】
シミュレーションにおいては、各位相組み合わせを別個にモデル化した。位相Aをチャネル1で送達したとき、電極1および4は接地とし、電極2に1Vを印加し、電極3は回路から外した。位相BおよびDをそれぞれチャネル1および2で送達したとき、電極1および4は接地とし、-0.7(70%)Vまたは-0.5(50%)Vのいずれかを両電極2および3に印加した。最後に、位相CおよびEをそれぞれチャネル1および2で送達したとき、電極1および4は接地とし、0.4(40%)Vまたは0.25(25%)Vのいずれかを両電極2および3に印加した。
【0033】
2つの多相パルスを重畳させると、異なる単極性暴露領域および双極性暴露領域が生成される。
【0034】
実験的研究のための線量測定を提供するため、およびCANCAN概念を検証するために、図5Aの電極アレイによって生成された|E|分布の数値シミュレーションを計算した。このアプローチは、2つのチャネルによって生成される電場は、同じ方向の成分については加算され、反対の場合は減算され、電極から離れた領域で単極性暴露を生み出し、他の場所で双極性暴露を生み出すという、2つの多相パルスの空間的重畳を利用する。CANCAN概念により、双極性暴露領域、すなわち電極近辺における生物学的効果の減少と、単極性パルスのみが送達される電極間での増強とが保証される。
【0035】
図5Bは、ペトリ皿から3.8mmにある、すなわち細胞層に対応する、電極に垂直なxy平面内の異なる位相組み合わせについての|E|分布を示す。チャネル1のみがアクティブであったとき(図5B、パネルA)、|E|は電極1と電極2との間でより強く、電極4に向かって減衰した。電極3は接地されていないので、電場の歪みのみを生み出した。両チャネルが同じ極性の電圧を送達したとき(図5B、パネルB+DおよびパネルC+E)、反対方向のE成分が減算されて、電極3と電極4との間の領域における|E|が減少した。
【0036】
図5Bから、電極2または電極3のいずれかに近い2つの点とそれらの間の中央にある1つの点との3つの点に対して、電場を時間の関数として抽出した。図5Cは、位相A(0~600ns)中に|E|が最大であったことを示す。後続位相の送達(600~1800ns)中、|E|は電極2と電極3との間の中央で完全に消失し(0kV/cm)、単極性パルスをもたらした。一方、電極の縁部付近では、この減少は約20%であり、双極性暴露を示した。
【0037】
3.6×3.6mmの領域内のこの減少を電極2と電極3との間で定量化した。
【0038】
図5Dは、100/50%および100/70%に対するR%を示す。両方の場合で、減少は電極間の中央で最大であり、100/70%暴露に対してより急峻な減衰を有した。xの関数としてR%をプロットするとこの差が強調され(図5D、右上パネル)、条件100/70%条件はより効率的で標的化されたCANCAN効果を提供し得ることが示唆される。
【0039】
nsEP暴露後、皿を15分間カバーしたままにし、次いでPBSで5回洗浄して、すべてのYPを除去した。Hamamatsu C9100EM-CCDカメラ(浜松、静岡県、日本)および0.8倍、0.12NA対物レンズを備えたOlympus SZX16蛍光立体顕微鏡(Olympus America、Hamden、CT)を使用して、電気透過化細胞の画像を取得した。X-Cite Series 120Q蛍光光源(Excelitas Technologies Corporation、Waltham、MA)およびGFPフィルタ(ex.460~490nm/em.510-)を使用して、YP発光を検出した。
【0040】
MetaMorph 7.8.13ソフトウェア(Molecular Devices、Foster City、CA)を使用して、画像を定量化した。電極2と電極3との間のx平面に沿って画定された16個の関心対象領域(ROI)内でYP蛍光を測定し、電極間の中央からの距離の関数としてプロットした(mm、図4A図4Cを参照)。各画像について、各ROI内の蛍光強度をバックグラウンド蛍光に対して補正した。データは、n個の独立した実験の平均±SEとして提示する。
【0041】
結果
双極性および単極性のnsEPの同期化は、エレクトロポレーションの増強を惹起する。
【0042】
CANCAN仮説では、それ自体は非効率的である2つの適切に成形された双極性nsEPを重畳および同期させると、生物学的に有効な単極性パルスを遠隔的に回復させる(図3を参照)。これは、電極から離れたある所定の位置では、時間的に互いに一致する各後続の位相の間に生成された電場が互いに無効化し、残るものは、単極性パルスとしての第1の位相だけであるからである。この無効化は、独立した2つのnsEPからの電場成分が反対方向であるときに発生し、その領域において0kV/cmの|E|強度を生成する(図5A図5Dならびに材料および方法を参照)。
【0043】
実験的にCANCANを試験するための第1のアプローチとして、本発明者らは、2つの反対極性の位相のみを用いた電場無効化の可能性を評価した(図6A図6D)。成功するCANCANは、少なくとも部分的には、双極性相殺の程度に依存する。したがって、50%の第2の位相を用いると双極性相殺が最大であることを示した従前の結果に基づいて、第2の位相の振幅を第1位相の50%とした
【0044】
本発明者らは、YO-PRO-1(YP)色素の取り込みによってアガロースゲルに埋め込まれたCHO-K1細胞における電気透過化を測定した。独立した2対のnsEP送達電極を使用し、一方または両方の電極対からの単極性または双極性nsEPのいずれかに細胞を暴露した(100、600ns、10Hz)。チャネル1の電極(1および2)は、単極性(単-A)または双極性(双-AB)のnsEPを送達し、チャネル2の電極(3および4)は、同期して送達されたときに双-ABの第2の位相と一致するように位相シフトされた単極性パルス(単-C)を送達した(「CANCAN」暴露;図6A)。本発明者らは、双-ABが、電極間(図6Bおよび図6C)の全長に沿って、単-Aと比較して、透過化を約1/2~1/3に減少させ、3D培地モデルにおいて、成功した双極性相殺を示すことを見出した。単-Cによる透過化は、電極3(チャネル2内のアクティブ電極)付近で最大であり、電極3からの距離が長くなると減少した。双-ABおよび単-Cが非同期的に(すなわち、間に10msの遅延をもって)送達されたとき、電極間の長さの大部分に沿って、電気透過化効果は双-ABとは違わなかった。電極3に近いほど、チャネル2の電場からの影響が感じられるので、効果は単-Cの効果により類似していた。対照的に、双-ABおよび単-Cの同期化送達は、電極間の全長にわたって透過化の増強を惹起し、電極間の中央においては、非同期送達よりも最大で約3倍大きかった(図6D)。特に、中央における透過化の程度は単-A暴露のものと同じであり、電場モデル化の結果と一致した。したがって、これらの知見は、双極性および単極性nsEPの同期化送達によって、生物学的に有効な単極性パルスの遠隔生成を実証し、したがって、成功したCANCANを明らかにするものである。
【0045】
多相nsEPの同期化は、エレクトロポレーションを遠隔的にさらに増強する。
【0046】
先の実験において、本発明者らは、独立した2対の電極から送達される電場を無効化することによって、単極性パルスを遠隔的に生成することが可能であることを示した。したがって、次の実験セットでは、本発明者らは、第3の反対極性位相を追加して、電場無効化、ひいてはCANCANの効率を評価した(図7A図7G)。チャネル1は、三相双極性nsEP(双-ABC)を送達し、チャネル2は、位相DおよびEが双-ABCからの位相BおよびCとそれぞれ一致するように二相nsEP(双-DE)を送達した(図7A)。第2の位相の振幅を第1の位相の50%に維持し、第3の位相を同様に半分に低減して、位相Aの25%とした。特に、これらの実験においては、パルス発生器の限界のために、位相CおよびEの振幅は完全に一致せず、したがって、振幅はそれぞれ位相Aの約20%および30%であった。各位相は、目標とされた25%位相振幅の5%以内であったので、本発明者らは、それでも、わずかに不一致の振幅を用いて実験を行った。
【0047】
本発明者らは、チャネル1からの双-ABCが透過化の相殺を惹起し、単-Aと比較してYP取り込みを約1/2~1/3に減少させ、三相nsEPで双極性相殺が起こることを見出した(図7B)。同様に、チャネル2から送達された双-DEでは、単Dと比較して透過化が約1/2に減少した。したがって、各双極性nsEPはそれ自体では比較的低い生物学的効率を有していた。2つの双極性nsEPを非同期的に送達しても、透過化効果は増強されなかった。チャネル1の電極付近では、透過化の程度は双-ABCと同様であり、電極3に近いほど、両チャネルからの結合された電場の影響は、双-ABCおよび双-DCからの効果の本質的に加法的な透過化効果となった。この加法的効果は、双-DCの効果は電極2付近では非常に小さく(ゼロに近い)、透過化の程度への寄与は無視し得るので、チャネル1付近では見られなかった。2つの双極性nsEPが同期して送達されると、非同期送達と比較して、透過化効果が非常に増強され(約3~4倍大きい、図7Bおよび図7C)、中央において単-Aのものにより類似していた(かつ実際、より大きかった)。中央における単-A暴露よりも大きい同期化送達による増強された透過化は、位相CおよびEの振幅のわずかな不一致に起因する可能性がある。これは、潜在的に、第3の位相中にEの不完全な無効化をもたらし、減少せずに生物学的効果全体に寄与した残留電場を生成した可能性がある。それでもなお、本発明者らは、2つの非効率的な双極性nsEPを重畳して、生物学的に効率的なnsEPを遠隔的に作り出すCANCAN効果を示す。
【0048】
後続の反対極性の位相の振幅を増大することにより、CANCANが改善される。
【0049】
成功するCANCANのための主な目標の1つは、nsEP送達電極付近に、単極性パルスと比較して低い効果を有し、一方、単極性のものと同等の効果を遠隔的に作り出すことである。先の実験では、本発明者らは、電極間の中央に生物学的に等価な単極性nsEPをうまく作り出したが、生物学的効果は、それでも、電極付近の単極性パルスと同様であるかまたはそれよりも大きかった。したがって、本発明者らは、nsEPパラメータを変更することにより、本発明者らのCANCAN効果を改善することを追求した。電場モデル化の結果は、70%の第2の位相振幅が、50%の第2の位相振幅よりも、電極付近での電場の無効化を少なくし得ることを予測した(図5A図5Dを参照)。これは、ひいては、2つのnsEPが同期して送達されたときに、電極付近でより良好な双極性相殺をもたらす可能性がある。したがって、第1のアプローチとして、本発明者らは、第2の位相のみの振幅を位相Aの70%に増大し、第3の位相の振幅は25%のままとした。先の実験のように、チャネル1は双-ABC三相nsEPを送達し、チャネル2は双-DE二相nsEPを送達した。先の結果と一致して、双-ABCおよび双-DEは、電極2と電極3との間の全長にわたって、透過化がそれぞれ単-Aおよび単-Dよりも約1/2~1/3に減少した(図7D)。非同期的に送達された2つは、各双極性nsEPと個々に類似した透過化効果を作り出した。すなわち、電極2付近では、透過化の程度は双-ABCと同様であり、電極3に近いほど、効果は双-DEと同様であった。2つの双極性nsEPの送達を同期化することにより、電極間の中央における透過化効果が増強され、それは、非同期送達よりも約2倍大きく(図7E)、単-Aのものと同様であった。約2倍の双極性相殺効率を考えると、中央における約2倍の透過化の増強は、完全な電場無効化を仮定した場合に本発明者らが理論的に期待できる最大である。特に、電極に近いほど、透過化の程度は、各チャネルから送達された単極性nsEP(すなわち、チャネル1からの単-Aおよびチャネル2からの単-D)よりも低く、電極3付近では非同期送達と違わなかった。
【0050】
次のステップとして、本発明者らは、遠隔CANCAN効果をさらに改善する努力において、双極性相殺効率を向上させることを所望した。これを行うために、本発明者らは、第3の位相の振幅を位相Aの40%に増大させ(したがって、第2の位相と同様の程度で低減させ)、これは、ひいては、より良好な双極性相殺を提供し得る。第2の位相の振幅は、先の実験セットのように70%に維持した。本発明者らは、双-ABCの第3の位相の振幅を40%に増大すると、双極性相殺の効率が高まり、電極間の中央において、単-Aと比較して、透過化が約1/3~1/4だけ減少したことを見出した(図7F)。二相双-DEは、単-Dと比較して、透過化を約1/2~1/3だけ減少させ、位相Eの振幅を増大させても、相殺効率はさらに増強されないことを示した。2つのnsEPが非同期的に送達されたとき、透過化効果は、個々に送達された双極性nsEPのいずれとも違わなかった。しかしながら、双-ABCおよび双-DEの同期化送達は、単-Aに類似しかつ非同期送達よりも約3倍大きい、電極間の中央における透過化の増強を惹起した(図7G)nsEPの同期送達と非同期送達との効果の差は、双極性相殺の程度と密接に一致し、中央領域における完全な電場無効化を示唆する。先の結果と同様に、電極に近いほど、透過化効果は、いずれかの単極性暴露のそれよりも少なく、非同期送達により類似したものとなった。換言すれば、電極に近いほど、電場無効化は少なく、代わりに、双極性相殺が優勢である。興味深いことに、同期化暴露対非同期化暴露の比をプロットしたときに作られる曲線(図7G)は、図5Dに示したパーセント減少曲線に形状が似ており、電場モデル化の結果をさらに実証した。したがって、第3の位相の振幅を増大させることにより、双極性相殺の効率が高められ、ひいては、電極間の中央におけるCANCAN効率が改善および増強された。
【0051】
考察
この研究で、本発明者らは、2つの生物学的に無効な双極性nsEPを重畳させて生物学的に有効な単極性パルスとすることによる遠隔エレクトロポレーションを初めて示す。相殺の相殺またはCANCANと称されたこの効果は、各双極性nsEPの同時発生位相の間に生成される電場が反対方向であり、互いに無効化するときに発生し、電極から離れた領域における単極性暴露のみを残す一方で、他所では双極性のままである。結果的に、CANCANは、標的化エレクトロポレーションのための双極性nsEPの固有の非効率性に依存する。独立した2つのnsEPの送達を同期化することで、非同期nsEP送達(すなわち、10ms離して送達される)よりも最高で3倍大きなエレクトロポレーションが遠隔的に惹起された。CANCANによるエレクトロポレーションのこの単離された増強は、さまざまなnsEPパラメータを用いた異なる実験セットにおいて再現可能に観察された。したがって、本発明者らは、標的化された遠隔エレクトロポレーションを惹起するCANCAN概念のための概念実証を提示する。
【0052】
CANCANの効率は、達成される双極性相殺の程度に直接比例することが期待される。したがって、各実験セットでは、本発明者らは、位相の数および振幅を含むnsEPパラメータを変更して、双極性相殺、ひいてはCANCANの効率を試験した。本発明者らは、二相および三相のnsEPを適用する場合の両方において、成功したCANCANを観察した。最も効率的なCANCAN効果は、第1の位相の100/70/40%である位相振幅を有する三相nsEPを使用したときに発生した(図7Fおよび図7G)。50%の第2の位相振幅が最良の相殺効率を提供したことを示した本発明者らの先の結果(39)を本発明者らが考えるならば、これは予想外であった。本発明者らの先の研究の結果に基づいて、本発明者らは、40%の第2の位相振幅が、50%の振幅と同様の程度に生体効果を相殺し得ると推測することができる。したがって、第3の位相を40%の振幅で追加することにより、それ自体で十分な相殺がもたらされ、第2の位相からの効果と組み合わせると、全体的な双極性相殺効率を増強したことが考えられる。特に、本発明者らの実験結果は、電場モデル化においてなされた予測を裏付けた(図5A図5D)。異なる位相振幅に対するEの減少率を定量化すると、第2の位相が第1の位相の70%であるときに電極付近のEの減少は少なく、より標的化されたCANCAN効果が示唆された。実際、本発明者らの実験結果はこれを実証し、これにより、2つのnsEPの同期化送達は、双極性相殺が優勢である電極付近では違わないが、双極性相殺の程度に一致して、非同期送達よりも最大で約3倍大きい効果を生み出した。したがって、最大の電場無効化が期待される領域では、CANCANによるエレクトロポレーションの増強は、双極性相殺の程度に基づいて理論的に可能な最大であった。したがって、電場モデル化と実験的アプローチとの組み合わせを使用して、本発明者らは、CANCANによる最も効率的な標的化エレクトロポレーションは、第1の位相の100/70/40%のnsEP振幅で起こることを示す。
【0053】
CANCANによる遠隔的な単極性パルスの形成は、深部標的に非侵襲的にアクセスする可能性を提示する。本発明者らの結果はCANCANによる遠隔エレクトロポレーションのための概念実証を提示しているが、CANCAN効果は電気刺激に同様に拡張することができる。このように、CANCANの潜在的な生物医学的用途は多数あり、エレクトロポレーションによる深在腫瘍および/または血行性転移のアブレーション、さまざまな神経学的または心理的な疾患のための深部脳刺激(例えば、パーキンソン病、てんかん、またはうつ病)、疼痛制御、および心臓除細動を含む。エレクトロポレーションまたは電気刺激のいずれかを採用する現在の治療的アプローチは、侵襲性であり、接触電極の挿入または埋め込みを必要とする(60、61)。したがって、それらは、炎症、感染または出血を含む、手術に関連する通常のリスクを有する。経頭蓋磁気刺激(TMS)、経皮電気神経刺激(TENS)、および経頭蓋直流刺激(tDCS)を含む電気刺激のための非侵襲的技術は、標的に対する精度の欠如および/または不十分な浸透深度のいずれかによって制限されている(60、62)。したがって、非侵襲性エレクトロポレーションまたは電気刺激のための技術を開発する必要性は当然である。ある最近の研究では、非侵襲性の深部脳刺激のために、2つの時間的に干渉する電場を使用する可能性が評価された(63)。彼らは、同時に送達された2つの高周波電場が、脳の海馬層内の位置で神経刺激を惹起することを示した。彼らのアプローチは、音波に関連する長期間の現象に基づく(64)。つまり、一定の振幅を有する2つの閾値下の刺激が同時に送達されると、それらが加算され、閾値を超えた振幅を有するより低い周波数の振動電場エンベロープを作り出す。換言すれば、彼らのアプローチは、2つの閾値下の刺激を加算して、振幅が閾値を超える刺激を遠隔的に作り出すことを拠り所とする。対照的に、CANCANによる電気刺激またはエレクトロポレーションは、パルスの振幅または持続時間の変化ではなく、代わりに、双極性から単極性へのパルスの形状の変化を独自に拠り所とする。したがって、CANCAN概念は、新規であり、表面組織に危害を与えずに、深部標的を選択的にエレクトロポレーションまたは電気刺激する可能性を提示する。本発明者らの研究は、CANCANのための先端技術の開発の基礎を提供する。一つの潜在的なCANCANの開発では、体内深くにある標的に焦点を合わせ得るパルスRF送信器が利用されるであろう。
【0054】
要約すると、本発明者らは、ここに、CANCAN効果による遠隔エレクトロポレーションのための概念実証を提示する。本発明者らは、2つのnsEPの同期化送達が、非同期送達よりも最大で約3倍大きく、単極性暴露のそれと類似した、エレクトロポレーションの増強を遠隔的に惹起したことを示す。CANCANによるエレクトロポレーションの遠隔増強は、さまざまなnsEPパラメータを使用して、異なる実験セットにおいて再現可能であった。CANCAN概念の先端技術への進展は、体内深くにある標的を非侵襲的にエレクトロポレーションまたは電気刺激する可能性を提示する。

[参考文献]
【0055】
1.Semenov,I.,Xiao,S.&Pakhomov,A.G.Primary pathways of intracellular Ca(2+)mobilization by nanosecond pulsed electric field.Biochim Biophys Acta 1828,981-9(2013).
【0056】
2.Semenov,I.,Xiao,S.,Pakhomova,O.N.&Pakhomov,A.G.Recruitment of the intracellular Ca by ultrashort electric stimuli:The impact of pulse duration.Cell Calcium 15,00083-3(2013).
【0057】
3.Pakhomov,A.G.et al.Long-lasting plasma membrane permeabilization in mammalian cells by nanosecond pulsed electric field(nsPEF).Bioelectromagnetics 28,655-663(2007).
【0058】
4.Teissie J,Eynard N,Gabriel B,&Rols MP(1999)Electropermeabilization of cell membranes.Advanced drug delivery reviews 35(1):3-19.
【0059】
5.Pakhomov AG,Miklavcic D,&Markov MS eds(2010)Advanced Electroporation Techniques in Biology and Medicine(CRC Press,Boca Raton),p528.
【0060】
6.Tsong TY(1991)Electroporation of cell membranes.Biophysical journal 60(2):297-306.
【0061】
7.Tarek M(2005)Membrane electroporation: a molecular dynamics simulation.Biophysical journal 88(6):4045-4053.
【0062】
8.Neumann E(1992)Membrane electroporation and direct gene transfer.Bioelectrochemistry and Bioenergetics 28(1):247-267.
【0063】
9.Miklavcic D,Mali B,Kos B,Heller R,&Sersa G(2014)Electrochemotherapy: from the drawing board into medical practice.Biomedical engineering online 13(1):29.
【0064】
10.Frandsen SK,et al.(2012)Direct therapeutic applications of calcium electroporation to effectively induce tumor necrosis.Cancer Res 72(6):1336-1341.
【0065】
11.Davalos RV,Mir IL,&Rubinsky B(2005)Tissue ablation with irreversible electroporation.Annals of biomedical engineering 33(2):223-231.
【0066】
12.Schoenbach KH,et al.(2007)Bioelectric effects of intense nanosecond pulses.Ieee Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation 14(5):1088-1109.
【0067】
13.Batista Napotnik T,Rebersek M,Vernier PT,Mali B,&Miklavcic D(2016)Effects of high voltage nanosecond electric pulses on eukaryotic cells(in vitro):A systematic review.Bioelectrochemistry 110:1-12.
【0068】
14.Pakhomov AG,et al.(2009)Lipid nanopores can form a stable,ion channel-like conduction pathway in cell membrane.Biochemical and biophysical research communications 385(2):181-186.
【0069】
15.Ho MC,Casciola M,Levine ZA,&Vernier PT(2013)Molecular dynamics simulations of ion conductance in field-stabilized nanoscale lipid electropores.The journal of physical chemistry.B 117(39):11633-11640.
【0070】
16.Pakhomov AG,et al.(2015)Multiple nanosecond electric pulses increase the number but not the size of long-lived nanopores in the cell membrane.Biochimica et biophysica acta 1848(4):958-966.
【0071】
17.Batista Napotnik T,Wu YH,Gundersen MA,Miklavcic D,&Vernier PT(2012)Nanosecond electric pulses cause mitochondrial membrane permeabilization in Jurkat cells.Bioelectromagnetics 33(3):257-264.
【0072】
18.Beebe SJ,Chen YJ,Sain NM,Schoenbach KH,&Xiao S(2012)Transient features in nanosecond pulsed electric fields differentially modulate mitochondria and viability.PLoS One 7(12):e51349.
【0073】
19.Semenov I,Xiao S,&Pakhomov AG(2013)Primary pathways of intracellular Ca(2+)mobilization by nanosecond pulsed electric field.Biochimica et biophysica acta 1828(3):981-989.
【0074】
20.Semenov I,Xiao S,Pakhomova ON,&Pakhomov AG(2013)Recruitment of the intracellular Ca2+ by ultrashort electric stimuli: the impact of pulse duration.Cell Calcium 54(3):145-150.
【0075】
21.Thompson GL,et al.(2016)Permeabilization of the nuclear envelope following nanosecond pulsed electric field exposure.Biochemical and biophysical research communications 470(1):35-40.
【0076】
22.Vernier PT,Sun Y,Marcu L,Craft CM,&Gundersen MA(2004)Nanoelectropulse-induced phosphatidylserine translocation.Biophysical journal 86(6):4040-4048.
【0077】
23.Pakhomov AG,et al.(2014)Disassembly of actin structures by nanosecond pulsed electric field is a downstream effect of cell swelling.Bioelectrochemistry 100:88-95.
【0078】
24.Tolstykh GP,Beier HT,Roth CC,Thompson GL,&Ibey BL(2014)600 ns pulse electric field-induced phosphatidylinositol4,5-bisphosphate depletion.Bioelectrochemistry 100:80-87.
【0079】
25.Vernier PT,Sun Y,Chen MT,Gundersen MA,&Craviso GL(2008)Nanosecond electric pulse-induced calcium entry into chromaffin cells.Bioelectrochemistry 73(1):1-4.
【0080】
26.Craviso GL,Choe S,Chatterjee I,&Vernier PT(2012)Modulation of intracellular Ca2+ levels in chromaffin cells by nanoelectropulses.Bioelectrochemistry 87:244-252.
【0081】
27.Beebe SJ,Fox PM,Rec LJ,Willis EL,&Schoenbach KH(2003)Nanosecond,high-intensity pulsed electric fields induce apoptosis in human cells.FASEB J 17(11):1493-1495.
【0082】
28.Ren W,Sain NM,&Beebe SJ(2012)Nanosecond pulsed electric fields(nsPEFs)activate intrinsic caspase-dependent and caspase-independent cell death in Jurkat cells.Biochemical and biophysical research communications 421(4):808-812.
【0083】
29.Pakhomova ON,Gregory BW,Semenov I,&Pakhomov AG(2013)Two modes of cell death caused by exposure to nanosecond pulsed electric field.PLoS One 8(7):e70278.
【0084】
30.Morotomi-Yano K,Akiyama H,&Yano K(2014)Different involvement of extracellular calcium in two modes of cell death induced by nanosecond pulsed electric fields.Arch Biochem Biophys 555-556:47-54.
【0085】
31.Ullery JC,Tarango M,Roth CC,&Ibey BL(2015)Activation of autophagy in response to nanosecond pulsed electric field exposure.Biochemical and biophysical research communications 458(2):411-417.
【0086】
32.Pakhomov AG,et al.(2014)Cancellation of cellular responses to nanoelectroporation by reversing the stimulus polarity.Cellular and molecular life sciences :CMLS 71(22):4431 -4441.
【0087】
33.Ibey BL,et al.(2014)Bipolar nanosecond electric pulses are less efficient at electropermeabilization and killing cells than monopolar pulses.Biochemical and biophysical research communications 443(2):568-573.
【0088】
34.Gianulis EC,et al.(2015)Electroporation of mammalian cells by nanosecond electric field oscillations and its inhibition by the electric field reversal.Scientific reports 5:13818.
【0089】
35.Schoenbach KH,et al.(2015)Ion transport into cells exposed to monopolar and bipolar nanosecond pulses.Bioelectrochemistry 103:44-51.
【0090】
36.Merla C,Pakhomov AG,Semenov I,&Vernier PT(2017)Frequency spectrum of induced transmembrane potential and permeabilization efficacy of bipolar electric pulses.Biochimica et biophysica acta 1859(7):1282-1290.
【0091】
37.Valdez CM,et al.(2017)Asymmetrical bipolar nanosecond electric pulse widths modify bipolar cancellation.Scientific reports 7(1):16372.
【0092】
38.Gianulis EC,Casciola M,Xiao S,Pakhomova ON,&Pakhomov AG(2018)Electropermeabilization by uni- or bipolar nanosecond electric pulses:The impact of extracellular conductivity.Bioelectrochemistry 119:10-19.
【0093】
39.Pakhomov AG,et al.(2018)The second phase of bipolar,nanosecond-range electric pulses determines the electroporation efficiency.Bioelectrochemistry 122:123-133.
【0094】
40.Semenov I,Casciola M,Ibey BL,Xiao S,&Pakhomov AG(2018)Electropermeabilization of cells by closely spaced paired nanosecond-range pulses.Bioelectrochemistry 121:135-141.
【0095】
41.Tekle E,Astumian RD,&Chock PB(1991)Electroporation by using bipolar oscillating electric field: an improved method for DNA transfection of NIH 3T3 cells.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 88(10):4230-4234.
【0096】
42.Kotnik T,Miklavcic D,&Mir LM(2001)Cell membrane electropermeabilization by symmetrical bipolar rectangular pulses.Part II.Reduced electrolytic contamination.Bioelectrochemistry 54(1):91 -95.
【0097】
43.Kotnik T,Mir LM,Flisar K,Puc M,&Miklavcic D(2001)Cell membrane electropermeabilization by symmetrical bipolar rectangular pulses.Part I.Increased efficiency of permeabilization.Bioelectrochemistry 54(1):83-90.
【0098】
44.Kotnik T,Pucihar G,Rebersek M,Miklavcic D,&Mir LM(2003)Role of pulse shape in cell membrane electropermeabilization.Biochimica et biophysica acta 1614(2):193-200.
【0099】
45.Seaman RL(2007)Effects of exposure of animals to ultra-wideband pulses.Health physics 92(6):629-634.
【0100】
46.Schunck T,Bieth F,Pinguet S,&Delmote P(2016)Penetration and propagation into biological matter and biological effects of high-power ultra-wideband pulses: a review.Electromagnetic biology and medicine 35(1):84-101.
【0101】
47.Pakhomov AG,Akyel Y,Pakhomova ON,Stuck BE,&Murphy MR(1998)Current state and implications of research on biological effects of millimeter waves: a review of the literature.Bioelectromagnetics 19(7):393-413.
【0102】
48.Pakhomova ON,Belt ML,Mathur SP,Lee JC,&Akyel Y(1998)Ultra-wide band electromagnetic radiation does not affect UV-induced recombination and mutagenesis in yeast.Bioelectromagnetics 19(2):128-130.
【0103】
49.Pakhomov AG,et al.(2000)Comparative effects of extremely high power microwave pulses and a brief CW irradiation on pacemaker function in isolated frog heart slices.Bioelectromagnetics 21(4):245-254.
【0104】
50.Pakhomov AG,Gajsek P,Allen L,Stuck BE,&Murphy MR(2002)Comparison of dose dependences for bioeffects of continuous-wave and high-peak power microwave emissions using gel-suspended cell cultures.Bioelectromagnetics 23(2):158-167.
【0105】
51.Pakhomov AG,Doyle J,Stuck BE,&Murphy MR(2003)Effects of high power microwave pulses on synaptic transmission and long term potentiation in hippocampus.Bioelectromagnetics 24(3):174-181.
【0106】
52.Chemeris NK,et al.(2006)Lack of direct DNA damage in human blood leukocytes and lymphocytes after in vitro exposure to high power microwave pulses.Bioelectromagnetics 27(3):197-203.
【0107】
53.Ibey BL,et al.(2016)Cellular effects of acute exposure to high peak power microwave systems:Morphology and toxicology.Bioelectromagnetics.
【0108】
54.Jauchem JR,et al.(1998)Ultra-wideband electromagnetic pulses: lack of effects on heart rate and blood pressure during two-minute exposures of rats.Bioelectromagnetics 19(5):330-333.
【0109】
55.Lu ST,et al.(2000)Effects of high peak power microwaves on the retina of the rhesus monkey.Bioelectromagnetics 21(6):439-454.
【0110】
56.Cobb BL,et al.(2000)Neural and behavioral teratological evaluation of rats exposed to ultra-wideband electromagnetic fields.Bioelectromagnetics 21(7):524-537.
【0111】
57.Lin JC &Wang Z(2007)Hearing of microwave pulses by humans and animals: effects,mechanism,and thresholds.Health physics 92(6):621-628.
【0112】
58.Muratori C,Pakhomov AG,Xiao S,&Pakhomova ON(2016)Electrosensitization assists cell ablation by nanosecond pulsed electric field in 3D cultures.Scientific reports 6:23225.
【0113】
59.H.A.Ryan SH,E.Yang,C.Zhou and S.Xiao(2018)High-Voltage,Multiphasic,Nanosecond Pulses to Modulate Cellular Responses.IEEE Transactions on Biomedical Circuits and Systems(99):1-13.
【0114】
60.Nizard J,Lefaucheur JP,Helbert M,de Chauvigny E,&Nguyen JP(2012)Non-invasive stimulation therapies for the treatment of refractory pain.Discovery medicine 14(74):21-31.
【0115】
61.Miklavcic D &Davalos RV(2015)Electrochemotherapy(ECT)and irreversible electroporation(IRE)-advanced techniques for treating deep-seated tumors based on electroporation.Biomedical engineering online 14 Suppl 3:11.
【0116】
62.Roth Y,Amir A,Levkovitz Y,&Zangen A(2007)Three-dimensional distribution of the electric field induced in the brain by transcranial magnetic stimulation using figure-8 and deep H-coils.Journal of clinical neurophysiology : official publication of the American Electroencephalographic Society 24(1):31-38.
【0117】
63.Grossman N,et al.(2017)Noninvasive Deep Brain Stimulation via Temporally Interfering Electric Fields.Cell 169(6):1029-1041 e1016.
【0118】
64.Dmochowski J &Bikson M(2017)Noninvasive Neuromodulation Goes Deep.Cell 169(6):977-978.
【0119】
明確化および理解のために、上述の本発明をある程度詳細に説明してきたが、本開示を一読することで、本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細におけるさまざまな変更を行い得ることが当業者には明らかであろう。例えば、上述したすべての技術および装置は、さまざまな組み合わせで使用することができる。本出願において引用されたすべての刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献は、各刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献が、あらゆる目的のために参照により組み込まれていると個々に示されているのと同じ程度に、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G