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  • 特許-フラップゲート 図1
  • 特許-フラップゲート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】フラップゲート
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/40 20060101AFI20231110BHJP
   E02B 7/44 20060101ALI20231110BHJP
   E02B 7/26 20060101ALN20231110BHJP
【FI】
E02B7/40
E02B7/44
E02B7/26 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021102287
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001513
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504199378
【氏名又は名称】アサヒ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】新保 博之
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-204601(JP,A)
【文献】特開2005-002717(JP,A)
【文献】実開昭59-183916(JP,U)
【文献】米国特許第04606672(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
7/20-7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水路の開口端に形成される円形の戸当と、前記排水路の開口端を閉塞する閉塞位置と、前記排水路の開口端を開放する開放位置との間で上部を回動自在に支持される扉体と、前記扉体を前記戸当に対して回動自在に支持するヒンジ部材と、を有し、
前記扉体は、前記閉塞位置から前記開放位置に向かって、排水が流出する流出方向に回動するように取り付けられ、
前記排水路は、堤防の堤体を貫通して内陸と外部水面とを接続する管路であり、前記開口端は、前記内陸側の開口端であり、
前記内陸側において、前記戸当の外縁部は前記排水路の開口端よりも外方に広がり、
前記戸当は、前記内陸側の開口端の前記堤体に固定される、
ことを特徴とするフラップゲート。
【請求項2】
前記扉体は、前記閉塞位置において前記戸当に対して周縁部分が重なるように取り付けられ、前記扉体と前記戸当とが重なる領域には、水密部材が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフラップゲート。
【請求項3】
前記ヒンジ部材は、前記開口端の開口縁部よりも中心側に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフラップゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内陸水路から河川等の外部水面に向けて排水する排水路に設けられるフラップゲートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、河川や海面(以下、外部水面と称する)と陸地との境界には、陸地への水の侵入を防止する堤防が形成されている。こうした堤防には、堤体を貫通する排水路(管路)が形成されており、陸地の水路等を流れる水を、こうした排水路をを介して堤体の外側の河川や海面に放流することが一般的である。
【0003】
従来、こうした堤体を貫通する排水路には、陸地の水路の水面よりも外部水面の水位が高くなった際に水の逆流を防止するためのフラップゲートが形成することが多い。こうしたフラップゲートとして、例えば、特許文献1には、樋管の河川側出口に形成され、扉体を鉛直方向に上下動させることで樋管を開閉可能なフラップケートが開示されている。
また、特許文献2には、堤防を貫通する戸溝の堤外寄りに形成され、流水孔を塞ぐクラップが形成された水路用ゲート装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-96122号公報
【文献】特開2017-25610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたフラップゲートや、特許文献2に記載された水路用ゲート装置は、堤体を貫通する樋管(戸溝)の河川側出口(外部水面)側に形成されているため、扉体やこの取付部分等のメンテナンスを行う際に、外部水面に臨む場所で行う必要があるためメンテナンスが困難であるという課題があった。また、扉体が外部水面よりも高い場所に形成されている場合には、メンテナンスに当たって予め足場などを設置する必要があるという課題もあった。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、内陸側で安全、かつ容易にメンテナンスすることが可能であり、メンテナンスに当たって足場等の設置も不要な、メンテナンス性に優れたフラップゲートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明のフラップゲートは、排水路の開口端に形成される円形の戸当と、前記排水路の開口端を閉塞する閉塞位置と、前記排水路の開口端を開放する開放位置との間で上部を回動自在に支持される扉体と、前記扉体を前記戸当に対して回動自在に支持するヒンジ部材と、を有し、前記扉体は、前記閉塞位置から前記開放位置に向かって、排水が流出する流出方向に回動するように取り付けられ、前記排水路は、堤防の堤体を貫通して内陸と外部水面とを接続する管路であり、前記開口端は、前記内陸側の開口端であり、前記内陸側において、前記戸当の外縁部は前記排水路の開口端よりも外方に広がり、前記戸当は、前記内陸側の開口端の前記堤体に固定される、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、フラップゲートを管路の内陸側の開口端に形成することによって、外部水面など波浪の影響を受けやすい立地でメンテナンスを行うことなく、内陸側で安全にメンテナンス作業を行うことを可能にする。例えば、管路の外部水面側の開口端が、水深の深い河川の水際近傍にある場合でも、管路の内陸側の開口端にフラップゲートを形成することで、足場などを別途設置することなく容易に、かつ安全に扉体やヒンジ部材のメンテナンス作業を行うことができる。また、港湾などに設置された管路の場合、従来は外部水面側で船舶などを用いてメンテナンスを行う必要があったが、フラップゲートを管路の内陸側の開口端に形成することによって、船舶などを用いずに、内陸側から容易にメンテナンスを行うことが可能になる。
【0009】
また、管路の外部水面側の開口端が、外部水面の水面よりも大幅に高い位置に設けられている場合でも、管路の内陸側の開口端にフラップゲートを形成することで、足場などを別途設置することなく容易に扉体やヒンジ部材のメンテナンス作業を行うことができる。
【0010】
また、本発明では、前記扉体は、前記閉塞位置において前記戸当に対して周縁部分が重なるように取り付けられ、前記扉体と前記戸当とが重なる領域には、水密部材が形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明では、前記ヒンジ部材は、前記開口端の開口縁部よりも中心側に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内陸側で安全、かつ容易にメンテナンスすることが可能であり、メンテナンスに当たって足場等の設置も不要な、メンテナンス性に優れたフラップゲートを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のフラップゲートを示す断面図(a)および正面図(b)である。
図2】本発明の他の実施形態のフラップゲートを示す断面図(a)および正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態のフラップゲートについて説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明において用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態のフラップゲートを示す断面図(a)および正面図(b)である。
本実施形態のフラップゲート10は、排水路の一方の開口端に形成される。即ち、排水路は、内陸E側と外部水面S側との間に形成された堤防の堤体W1を貫通する管路21であり、フラップゲート10は、この管路21の両方の開口端21a,21bのうち、内陸E側の開口端21aに取り付けられる。
【0016】
管路21は、例えば、長手方向に垂直な断面が円形を成す円筒管であり、内陸E側の開口端21aに接続される内陸水路の排水を、河川や海面などの外部水面Sに向けて流出させる流出方向Lに沿って、堤体W1を貫通して排水を流すことができる。
【0017】
フラップゲート10は、管路21の内陸E側の開口端21aに形成される戸当11と、閉塞位置および開放位置との間で上部を回動自在に支持される扉体12と、扉体12を戸当11に対して回動自在に支持するヒンジ部材13と、を有する。
【0018】
戸当11は、例えばステンレス鋼等の鋼材により形成され、中心に開口11aが形成された円板状の部材である。戸当11は、管路21の内陸E側の開口端21aに対して、例えばビスなどによって固定される。戸当11の開口11aの開口径は、例えば、管路21の開口端21aの開口径よりも小さくなるように形成され、管路21の内側から見た時に、開口11aの周囲の戸当11の一部が管路21の開口端21aの開口縁から中心側にせり出るように取り付けられている。
【0019】
扉体12は、例えばステンレス鋼等の鋼材により形成され、戸当11の開口11aの開口径よりも大きい直径の円板状の部材である。扉体12は、この扉体12に加わる最大水圧に耐えうる程度の強度、厚みを有するように形成されていればよい。
【0020】
扉体12は、円形中心よりも上側でヒンジ部材13を介して戸当11の上側に回動自在に取り付けられる。ヒンジ部材13は、一方が戸当11に、他方が扉体12に固定され、本実施形態では、戸当11側が回動軸13aとこの回動軸13aを支持する軸受13bによって、扉体12を回動自在に支持する。ヒンジ部材13は、例えば管路21の開口端21aの開口縁部よりも中心側、即ち管路21の内側に形成されていればよい。
【0021】
こうしたヒンジ部材13によって、扉体12は、管路21の開口端21aを閉塞する閉塞位置P1と、開口端21aを開放する開放位置P2との間で回動自在に支持される。
【0022】
扉体12は、管路21の開口端21aにおいて、閉塞位置P1から開放位置P2に向かって、排水が流出する流出方向Lに回動するように取り付けられる。即ち、扉体12は、閉塞位置P1において、管路21の外部水面S側から流出方向Lに反して水が逆流した際に、戸当11の開口縁に押し付けられるように水圧が加わり、閉塞位置P1に留まるようにされる。
【0023】
このように、本実施形態では、扉体12は、管路21の内部で回動するように取り付けられる。また扉体12は、閉塞位置P1と開放位置P2との間の任意の位置(任意の開放角度)で係止することができるように構成することもできる。
【0024】
また、本実施形態では、扉体12は、閉塞位置P1において戸当11に対して周縁部分が重なるように取り付けられており、扉体12と戸当11とが重なる領域には、水密部材14が形成されている。
こうした水密部材14は、例えば、耐候性のゴム材料から形成され、扉体12の戸当11に対向する面の周縁部分にリング状に取り付けられていればよい。
【0025】
以上のような本実施形態のフラップゲートの作用を説明する。
本実施形態のフラップゲート10は、内陸E側の水位よりも外部水面S側の水位のほうが低い通常時において、内陸E側の水路から排水を行うときには、排水の水圧(排水圧)によって扉体12を閉塞位置P1から開放位置P2に向けて任意の角度で回動させる。これにより、管路21の内部に排水が流れ込み、流出方向Lに沿って堤体W1を貫通して外部水面S側に排水を流出させることができる。
【0026】
一方、大雨や満潮などで内陸E側の水位よりも外部水面S側の水位のほうが高い水位異常時においては、管路21の外部水面S側から流出方向Lに反して水が逆流すると、逆流水の水圧によって扉体12が戸当11の開口縁に押し付けられ、扉体12は閉塞位置P1に留まるようにされる。これにより、逆流水が扉体12よりも内陸E側に浸入して内陸Eが浸水することを防止できる。
【0027】
そして、本実施形態のフラップゲート10は、管路21の内陸E側の開口端21aに形成することによって、外部水面S側の立地の影響を受けずに、扉体12を閉塞位置P1にした状態で内陸E側から安全にメンテナンス作業を行うことを可能にする。例えば、管路21の外部水面S側の開口端21bが、水深の深い河川の水際近傍にある場合でも、管路21の内陸E側の開口端21aにフラップゲート10を形成することで、足場などを別途設置することなく容易に、かつ安全に扉体12やヒンジ部材13のメンテナンス作業を行うことができる。
【0028】
また、荒天時などで外部水面S側での作業が困難である場合でも、内陸E側から安全に扉体12やヒンジ部材13のメンテナンス作業を行うことができる。
更に、管路21の外部水面S側の開口端21bが、外部水面Sの水面よりも大幅に高い位置に設けられている場合でも、管路21の内陸E側の開口端21aにフラップゲート10を形成することで、足場などを別途設置することなく容易に扉体12やヒンジ部材13のメンテナンス作業を行うことができる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、内陸E側の上部側面が鉛直方向に広がる堤体W1にフラップゲート10を形成する例を示したが、これ以外にも、例えば、図2に示すように、内陸E側の上部側面が鉛直方向に対して外部水面S側に傾斜した堤体W2にフラップゲート10を形成することもできる。
【0030】
また、上述した実施形態では、断面形状が円形の管路(排水路)21に対して、円形(円板状)の扉体12を有するフラップゲート10を例示したが、管路(排水路)の断面形状は円形に限定されるものではない。例えば、断面が矩形の管路(排水路)に対して、矩形(四角板状)の扉体を有するフラップゲートを管路の内陸側の開口端に形成することもできる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。こうした実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
10…フラップゲート
11…戸当
12…扉体
13…ヒンジ部材
14…水密部材
21…管路
図1
図2