(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】道路利用者の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20231110BHJP
G01S 13/91 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G01S7/40 139
G01S13/91
(21)【出願番号】P 2021519811
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020059287
(87)【国際公開番号】W WO2020224876
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】102019111679.1
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501476454
【氏名又は名称】エス・エム・エス・スマート・マイクロウェーブ・センサーズ・ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】In den Waashainen 1,38108 Braunschweig,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】メンデ、ラルフ
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-001263(JP,A)
【文献】特開2005-233615(JP,A)
【文献】特表2017-508951(JP,A)
【文献】特開2009-281775(JP,A)
【文献】特開2018-179670(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163677(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0309041(US,A1)
【文献】国際公開第2014/108889(WO,A1)
【文献】特開2002-099986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0072646(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0348365(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0269196(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03173812(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012021212(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者を検出するための方法であって、該方法が以下の段階、
‐少なくとも1つのレーダ放射用送信装置を用いて送信信号を送出することと、
‐少なくとも1つのレーダ放射用受信装置を用いて受信信号を検出することと、
‐前記送信信号と前記受信信号を混合してベースバンド信号を形成し、前記ベースバンド信号からレンジ・ドプラ・マトリクスを生成し、電子式データ処理装置の評価モジュールにおいて前記レンジ・ドプラ・マトリクスを評価し、その際前記レンジ・ドプラ・マトリクスのピークがオブジェクトに対応付けられることと、
‐診断モジュールにおいて、障害基準が満たされているか否かをチェックすることと、
‐前記評価モジュールにおける前記評価の結果から前記オブジェクトに関する評価信号を生成し、前記診断モジュールにおける前記チェックの結果から前記障害基準が満たされているか否かに関する診断信号を生成することと、
‐前記レンジ・ドプラ・マトリクスのピークから前記道路利用者を検出することと、
‐電子式データ処理装置の制御モジュールに前記評価信号及び前記診断信号を送出することと、
を有し、
前記レンジ・ドプラ・マトリクスの前記評価のときに雨及び/又は雪が検出されれば、前記障害基準が満たされているものであり、
前記少なくとも1つの受信装置が複数の受信アンテナ、主として少なくとも3つの受信アンテナを有し、選択されたピーク又はオブジェクトに対して、主として方位角方向及び/又は仰角方向において各2つの受信アンテナ間の位相差の標準偏差が計算され、最大、最小及び/若しくは平均標準偏差並びに/又は前記計算された標準偏差の中央値が所定の限界値を上回れば、前記障害基準が満たされており、前記所定の限界値が主として60°、好ましくは30°、特に好ましくは5°であることを特徴とする、道路利用者の検出方法。
【請求項2】
少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者を検出するための方法であって、該方法が以下の段階、
‐少なくとも1つのレーダ放射用送信装置を用いて送信信号を送出することと、
‐少なくとも1つのレーダ放射用受信装置を用いて受信信号を検出することと、
‐前記送信信号と前記受信信号を混合してベースバンド信号を形成し、前記ベースバンド信号からレンジ・ドプラ・マトリクスを生成し、電子式データ処理装置の評価モジュールにおいて前記レンジ・ドプラ・マトリクスを評価し、その際前記レンジ・ドプラ・マトリクスのピークがオブジェクトに対応付けられることと、
‐診断モジュールにおいて、障害基準が満たされているか否かをチェックすることと、
‐前記評価モジュールにおける前記評価の結果から前記オブジェクトに関する評価信号を生成し、前記診断モジュールにおける前記チェックの結果から前記障害基準が満たされているか否かに関する診断信号を生成することと、
‐前記レンジ・ドプラ・マトリクスのピークから前記道路利用者を検出することと、
‐電子式データ処理装置の制御モジュールに前記評価信号及び前記診断信号を送出することと、
を有し、
前記レンジ・ドプラ・マトリクスの前記評価のときに雨及び/又は雪が検出されれば、前記障害基準が満たされているものであり、
反射された送信信号で構成されていない前記受信信号の干渉強度が所定の限界値を上回れば、前記障害基準が満たされていることを特徴とする、道路利用者の検出方法。
【請求項3】
少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者を検出するための方法であって、該方法が以下の段階、
‐少なくとも1つのレーダ放射用送信装置を用いて送信信号を送出することと、
‐少なくとも1つのレーダ放射用受信装置を用いて受信信号を検出することと、
‐前記送信信号と前記受信信号を混合してベースバンド信号を形成し、前記ベースバンド信号からレンジ・ドプラ・マトリクスを生成し、電子式データ処理装置の評価モジュールにおいて前記レンジ・ドプラ・マトリクスを評価し、その際前記レンジ・ドプラ・マトリクスのピークがオブジェクトに対応付けられることと、
‐診断モジュールにおいて、障害基準が満たされているか否かをチェックすることと、
‐前記評価モジュールにおける前記評価の結果から前記オブジェクトに関する評価信号を生成し、前記診断モジュールにおける前記チェックの結果から前記障害基準が満たされているか否かに関する診断信号を生成することと、
‐前記レンジ・ドプラ・マトリクスのピークから前記道路利用者を検出することと、
‐電子式データ処理装置の制御モジュールに前記評価信号及び前記診断信号を送出することと、
を有し、
前記レンジ・ドプラ・マトリクスの前記評価のときに雨及び/又は雪が検出されれば、前記障害基準が満たされているものであり、
前記少なくとも1つの送信装置と前記少なくとも1つの受信装置がレーダセンサの一部であり、少なくとも1つのセンサによって前記レーダセンサの位置、及び/又は方向、及び/又は速度、及び/又は加速度が決定され、
前記レーダセンサの前記位置、及び/又は前記方向、及び/又は前記速度、及び/又は前記加速度が、所定の限界値を超えて目標値から逸脱すれば、前記障害基準が満たされていることを特徴とする、道路利用者の検出方法。
【請求項4】
前記オブジェクトに実軌跡を対応付けることができ、所定の数の実軌跡が電子的データベースに保存された経過(目標軌跡)をたどるものでなければ前記障害基準が満たされているように、複数のレンジ・ドプラ・マトリクスを連続的に評価することを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の道路利用者の検出方法。
【請求項5】
最大信号対雑音比、最小信号対雑音比、平均信号対雑音比及び/又は信号対雑音比の中央値が、前記レンジ・ドプラ・マトリクスの選択されたピークの信号対雑音比から決定され、前記最大信号対雑音比、前記最小信号対雑音比、前記平均信号対雑音比及び/又は前記信号対雑音比の前記中央値が所定の限界値を下回れば、前記障害基準が満たされており、前記所定の限界値が主として100dB、好ましくは50dB、特に好ましくは20dBであることを特徴とする、請求項
1から4のいずれか一項に記載の道路利用者の検出方法。
【請求項6】
前記レンジ・ドプラ・マトリクスの前記評価において、選択されたオブジェクト、主として選択された移動オブジェクトからレーダ反射断面積が決定され、最大、最小及び/若しくは平均レーダ反射断面積、並びに/又は前記決定されたレーダ反射断面積の中央値が所定の限界値より小さければ、前記障害基準が満たされていることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の道路利用者の検出方法。
【請求項7】
前記レンジ・ドプラ・マトリクスの少なくとも1つのピークが対応付けられたオブジェクトの数が決定され、前記数が、例えば150、好ましくは100、特に好ましくは75である所定の上限値を上回る場合、又は前記数が、主として10、好ましくは20、特に好ましくは30である所定の下限値を下回る場合に、前記障害基準が満たされていることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の道路利用者の検出方法。
【請求項8】
前記障害基準が、
‐最大信号対雑音比、最小信号対雑音比、平均信号対雑音比及び/若しくは平均信号対雑音比の中央値と、
‐最大レーダ反射断面積、最小レーダ反射断面積、平均レーダ反射断面積及び/若しくはレーダ反射断面積の中央値と、
‐最大標準偏差、最小標準偏差、平均標準偏差標準偏差及び/若しくは標準偏差の中央値と、
‐目標軌跡からの実軌跡の逸脱と、
‐干渉強度と、並びに/又は
‐前記オブジェクトの数と、
の加重合計が所定の限界値を上回る場合又は下回る場合に満たされていることを特徴とする、請求項
4から7のいずれか一項に記載の道路利用者の検出方法。
【請求項9】
前記障害基準が満たされていなければ、前記評価信号に、前記レンジ・ドプラ・マトリクスの前記評価において決定された前記オブジェクトに関する情報を有する評価信号が含まれることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の道路利用者の検出方法。
【請求項10】
前記診断信号に、前記障害基準が満たされていないという情報を有する診断信号が含まれることを特徴とする、請求項
9に記載の道路利用者の検出方法。
【請求項11】
前記障害基準が満たされていれば、前記障害基準が満たされているという情報を有する診断信号が前記診断信号に含まれ、その際、前記
診断信号は主として前記オブジェクトに関する情報を含まないことを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の道路利用者の検出方法。
【請求項12】
請求項1から請求項1
1のいずれか一項に記載の方法を実行する目的で組み込まれている、少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者の検出用センサ。
【請求項13】
前記検出用センサが評価モジュールと主として診断モジュールを備えた電子式データ処理装置を有することを特徴とする、請求項1
2に記載の検出用センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路利用者は現在陸上、水上及び空中における非常に様々な交通路に沿って検出される。その際しばしば問題となるのは、少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者の量と種類の統計学的評価及び/又は交通流の制御である。
【0003】
交通路、特に交差する交通路、例えば交差点又は合流点に沿った交通流は、現在しばしば、例えば信号機切替え、優先制御及び/又は速度制限を交通条件に適合させる電子的に動作するシステムによって制御される。そのためには現下の交通状況の検出が不可欠である。これは多くの場合、送信信号の形態でレーダ放射を送出するレーダセンサによって行われ、結果として該送信信号が道路利用者、例えば自動車によって反射される。この反射されたレーダ放射は受信信号の形態で検出される。該受信信号には道路利用者の距離、半径方向速度、移動方向及び/又は寸法に関する情報が含まれる。
【0004】
従来技術から非常に様々な形態の送信信号が知られている。例えば、反復し、同一形状又は異なる形状に形成されていて、交互又は同時に送出される周波数ランプが使用され得る。相応の送信信号は例えば特許文献1及び特許文献2から知られている。送信信号として、主としてデジタル式の、位相変調連続波(Phase Modulated Continuous Wave:PMCW)方式の変調によって生成される信号も使用され得る。その際、信号は位相変調されて搬送波に変調され、該搬送波が引き続き送信信号として使用され得る。
【0005】
現在の方法を用いて、種類の異なる道路利用者、例えば自動車、自動二輪車及び貨物自動車、更には歩行者又は自転車運転者も互いに区別すること、並びにタイプの異なる道路利用者に関して保存されたデータに基づいて交通流を制御することが可能である。これは例えば信号機及び/又は追加車線の開放若しくは閉鎖又は速度制限の発令若しくは解除の切替えによって構成され得る。
【0006】
レーダセンサの使用には、例えば可視放射の範囲内で動作するカメラの使用に対して、レーダセンサが日光に依存せず機能し、霧及び暗闇においても機能するという利点がある。しかしながら、交通流の監視及び制御のためのレーダセンサ使用時にも、例えば天候の影響又は他のレーダ放射源との干渉によって障害が発生し得る。障害の場合は道路利用者の検出は不可能、あるいは少なくとも最適には不可能である。障害は円滑な交通流を妨害、更には遮断する場合があり、特に関与している道路利用者に対して危険も引き起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102013008607号明細書
【文献】独国特許出願公開第102017105783号明細書
【発明の概要】
【0008】
したがって本発明には、道路利用者の検出の際に障害を早期に認識し、交通安全性の向上のために反応することができるように、少なくとも1つの交通路に沿った交通流の制御方法を改善するという課題がある。
【0009】
本発明は、以下の段階を有する少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者の検出方法によって、上記の課題を解決する。
‐少なくとも1つのレーダ放射用送信装置を用いて送信信号を送出すること、
‐少なくとも1つのレーダ放射用受信装置を用いて受信信号を検出すること、
‐該送信信号と該受信信号を混合してベースバンド信号を形成し、該ベースバンド信号から検出マトリクスを計算し、電子式データ処理装置の評価モジュールにおいて該検出マトリクスを評価し、その際該検出マトリクスのピークがオブジェクトに対応付けられること、
‐診断モジュールにおいて、障害基準が満たされているか否かをチェックすること、
‐評価モジュールにおける評価と診断モジュールにおけるチェックの結果から信号を生成すること、及び
‐電子式データ処理装置の制御モジュールに該信号を伝送すること。
【0010】
したがって発明により、有利にレーダセンサの一部である少なくとも1つのレーダ放射用送信装置によって、レーダ放射が送信信号の形態で送出される。該送信信号は、既述したように、異なる形態を有し得る。該送信信号は該少なくとも1つの交通路の被監視部分に位置する様々な道路利用者によって異なる強度で反射され、その際、該反射強度は特に道路利用者の寸法並びに送信装置及び受信装置からの道路利用者の距離に依存する。該反射されたレーダ放射の一部は受信信号の形態でレーダセンサへと、特にレーダセンサの一部であるレーダ放射用受信装置へと反射されて戻る。該受信信号は、主として同様に該少なくとも1つのレーダセンサの一部である少なくとも1つのレーダ放射用受信装置を用いて検出される。該少なくとも1つのレーダ放射用送信装置によって送出された送信信号と該少なくとも1つのレーダ放射用受信装置によって検出された受信信号は、混合されてベースバンド信号が形成され、該ベースバンド信号から検出マトリクスが生成される。1つの検出マトリクスは例えば、該ベースバンド信号の二重フーリエ変換によって生成されるレンジ・ドップラ・マトリクスである。該送出された送信信号の対象となるのが反復する周波数ランプではなく、例えば主としてデジタル位相変調信号であれば、レンジ・ドップラ・マトリクスは相関(レンジ)及びフーリエ変換(ドップラ)によっても生成され得る。該方法は従来技術から知られていて、当業者には周知である。可能性のある他の検出マトリクスは、例えばフーリエ変換しか行われないレンジ・タイム・マトリクス、又はレンジ・アングル・マトリクスである。主として複数の検出マトリクスが1つの測定サイクル、主として各測定サイクルにおいて、例えば異なる角度範囲及び/又は角度方向において計算され、使用される。
【0011】
該検出マトリクスはその後電子式データ処理装置の評価モジュールにおいて評価される。該検出マトリクスにおいてスペクトルエネルギー(信号エネルギー)が様々な情報に対応付けられる。例えばレンジ・ドップラ・マトリクスの一方の軸に距離(「レンジ」)が描かれていて、もう一方の軸にはドップラ周波数、したがって送信信号を反射する道路利用者の半径方向速度に関する情報が描かれている。したがって、レンジ・ドップラ・マトリクスの任意のセル内の任意のスペクトル位置においてマトリクスの雑音より主として明らかに高い位置、特に好ましくは20dBを超える高い位置に信号エネルギーが存在するということは、一定の距離(「レンジ」)、及び対応するドップラ周波数から明らかになる該少なくとも1つの受信装置に向かう方向又はそこから離れる方向の一定の半径方向速度を有するオブジェクト、特に道路利用者における送信信号の反射から、該受信信号が発生したことを意味する。但し、半径方向速度とドップラ周波数の間の対応付けが場合によっては不明瞭であり、それに対しては従来技術から修正方法が知られている。
【0012】
検出マトリクス、特にレンジ・ドップラ・マトリクスのそうした要素における信号エネルギーは「ピーク」と呼ばれ、その際、レンジ・ドップラ・マトリクスの様々なピークが異なるオブジェクト、特に道路利用者に対応付けられる。その際、1つのオブジェクトには唯一のピーク、又は複数のピークを有するレンジ・ドップラ・マトリクスの1つの領域が対応付けられ得る。
【0013】
本発明により、障害基準が満たされているか否かが診断モジュールにおいてチェックされる。その後、評価モジュールにおける検出マトリクスの評価及び診断モジュールにおけるチェックの結果に基づいて、制御モジュールに伝達される信号が生成される。その際、主として時間領域におけるベースバンド信号の評価結果も考慮される。
【0014】
制御モジュールは信号の例えば統計学的評価及び/又は該少なくとも1つの交通路に沿った交通流の制御を行うために組み込まれている。後者の場合に問題となるのは、該少なくとも1つの交通路に沿った交通流の制御方法である。
【0015】
好ましくは、評価モジュール及び/又は診断モジュールは、送信装置及び/又は受信装置も備えたレーダセンサの一部である電子式データ処理装置の一部である。制御モジュールは好ましくは該センサの一部ではなく、交通流を制御するために用いられる例えば制御コンピュータの一部である。当然、制御モジュールは該センサの一部でもあり得る。評価モジュール及び/又は診断モジュールが該レーダセンサの一部ではなく、他の電子式データ処理装置の一部であり、好ましくは制御モジュールも該装置に含まれることもまた可能である。
【0016】
1つの好ましい実施態様において、障害基準が満たされているか否かをチェックするために、評価された検出マトリクス、主として評価されたレンジ・ドップラ・マトリクス及びベースバンド信号が考慮される。有利に、例えば障害基準が満たされているのは、検出マトリクスの評価時に雨及び/若しくは雪並びに/又は他の送信装置の信号との干渉並びに/又は各センサの位置及び/若しくは方向の変化が検出される場合である。
【0017】
雨及び/又は雪の形態の降水も、送出された送信信号の少なくとも一部を反射し、この方法で一定の種類の受信信号を発生させる。これによって該評価された検出マトリクスにおいて特徴的な影響が現れる。したがって、例えばレンジ・ドップラ・マトリクスの場合、反射された送信信号の大部分が数メートルの距離(「レンジ」)において多数の降水要素つまり雨滴又は雪片によって反射されることから、この範囲において信号エネルギーが多く発生する。確かに、より長い距離に位置する雨滴及び雪片もそこまで通り抜けた送信信号を反射するが、その場合は距離が非常に長いために顕著な受信信号の強度を得ることができない。雨滴が重なり合って、また雪片が重なり合ってしばしば特徴的な速度で地面に落ちることから、降水の半径方向速度も典型的である。風況に応じて、当然該少なくとも1つのレーダセンサに向かう方向又はそこから離れる方向の半径方向速度に影響が及ぼされ得る。この方法で、雨及び/又は雪は容易かつ確実に検出され得る。
【0018】
この場合は、道路利用者の確実かつ明確な認識及び必要に応じて異なる部類への対応付けをセンサが行うことはもはや不可能、あるいは少なくとももはや確実には不可能であることから、障害基準が満たされているとみなされる。
【0019】
主として、様々な、好ましくは連続する測定サイクルの複数の検出マトリクス、主としてレンジ・ドップラ・マトリクスが評価される。該マトリクスは、測定サイクルの異なる送信信号と受信信号から混合されたベースバンド信号で形成される。それにより、複数の検出マトリクスの評価時に確認されたオブジェクトを互いに関連付けること、及びそのようにしてオブジェクトの移動を追跡することが可能である。それにより、移動オブジェクト、特に道路利用者と、静的ターゲット、例えば建物、標識又は信号機との区別が、半径方向速度の評価によって可能であるよりも適切に行われ得る。したがって移動オブジェクトには、特に異なる時点における各オブジェクトの位置を含む実軌跡が対応付けられ得る。有利に、所定の数、例えば最低10、最低25又は最低50の上記実軌跡が電子的データベースに保存された経過をたどらなければ、障害基準が満たされているとみなされる。障害基準が満たされているためには、主として、この所定の数の、保存された経過をたどらない実軌跡が所定の時間内、例えば10分以内、5分以内又は2分以内に現れる必要がある。
【0020】
通常、送出された送信信号を該少なくとも1つの受信装置の方向に反射し得る道路利用者が存在し得る該少なくとも1つの交通路の被監視範囲が知られている。該範囲には例えば、一定の走行方向が優勢であり、所定の経過をたどる複数の車線が含まれる。この経過は電子的データベースに保存しておくことができる。送信信号の送出、受信信号の受信、該信号の混合によるベースバンド信号の形成、及び検出マトリクス、主としてレンジ・ドップラ・マトリクスの指定とその評価は、通常、既に示したように1回だけではなく、何回も連続して行われる。この手順の段階は例えば1秒間に数百回実行され得る。したがって個々のオブジェクトはより長時間に渡って追跡され得る。その際、必要に応じて速度ベクトル及び/又は各オブジェクトの検出される場所が変化する。この方法でオブジェクト、したがって道路利用者の実軌跡が測定され得る。
【0021】
主として、この測定された実軌跡は、例えば該少なくとも1つの交通路の異なる車線に関して保存されている軌跡と比較される。異なる検出マトリクスから生成された実軌跡が、例えば方位角又は仰角において、電子的データベースに保存されている目標軌跡から逸脱すれば、これは、該少なくとも1つのレーダセンサの方向及び/又は位置、最低でも該少なくとも1つのレーダ放射用受信装置の位置及び/又は方向が移動したことを示す明らかな印である。該交通路の被監視範囲がこのようにして変化した場合、結果として信頼性のあるデータをもはや確認することができないか、あるいは少なくともこれを保証することができない。この場合は主として障害基準が満たされている。
【0022】
有利に、最大、最小、平均信号対雑音比及び/又は該信号対雑音比の中央値が、検出マトリクスの選択されたピークの信号対雑音比から計算される。障害基準が満たされているとみなされるのは、上記の最大、最小、平均信号対雑音比及び/又は該信号対雑音比の中央値が所定の限界値を下回る場合である。この所定の限界値は例えば100dB、好ましくは50dB、特に好ましくは20dBである。したがって検出マトリクス、例えばレンジ・ドップラ・マトリクスの該選択されたピークを介して、該各信号対雑音比が計算される。続いて、これらの比の最大値、最小値、平均値及び/又は中央値が計算され、所定の限界値と比較される。該各信号対雑音比が所定の限界値より小さければ、個々の道路利用者の確実なオブジェクト認識が保証されていないか、あるいは確実には保証されていないことが想定され、その結果、障害基準が満たされている。
【0023】
検出マトリクスの該選択されたピークの対象となるのは、主として1つのオブジェクト又は複数の移動オブジェクトに対応付けることのできた全てのピークである。特に好ましくは1つの移動オブジェクトに対応付けることのできた全てのピークが対象となる。その代替として、該選択されたピークの対象となるのは使用された検出マトリクスの全てのピークである。
【0024】
主として検出マトリクス、例えばレンジ・ドップラ・マトリクスの評価時に、オブジェクト、主として移動オブジェクトのレーダ反射断面積が計算される。これは例えば受信された受信信号の強度及び送信された送信信号の強度から計算することができ、その際、好ましくは該各オブジェクトの、検出マトリクスから計算された距離及び/又は1つ以上の角度も考慮される。最大、最小及び/若しくは平均レーダ反射断面積並びに/又は該計算されたレーダ反射断面積の中央値が所定の限界値より小さければ、本方法の上記態様において障害基準が満たされている。レーダ反射断面積の標準値は、例えば、人に対して約1m2、乗用車に対して約10m2、及び貨物自動車に対して約100m2である。被監視断面積に応じて、平均レーダ反射断面積に対する所定の限界値が選択される。該各限界値を下回れば、本方法の上記態様において障害基準が存在している。
【0025】
主として、全てのオブジェクト、特に好ましくは全ての移動オブジェクトのレーダ反射断面積が測定される。その代替又は追加として、更に一定の部類のオブジェクト、例えば全ての乗用車及び/又は全ての貨物自動車のレーダ反射断面積が測定され、評価に使用され得る。この場合、異なる部類のオブジェクトの反射断面積に対しては異なる限界値が使用され得る。
【0026】
本方法の1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1つの受信装置は複数の、主として少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つ、更に特に好ましくは少なくとも8つの受信アンテナを有する。1つのオブジェクトによって反射された受信信号はこの複数の受信アンテナに異なる時点において到達する。該様々な受信アンテナの受信信号は送出された送信信号と混合され、そのようにして発生したベースバンド信号から複数の検出マトリクス、例えばレンジ・ドップラ・マトリクスが形成される。受信信号が該様々な受信アンテナに到達する時点が異なることにより、該様々な受信信号間での位相のずれ、したがって該様々な検出マトリクスのための異なるベースバンド信号が発生する。検出マトリクス、特にレンジ・ドップラ・マトリクスの計算時に実行されるフーリエ変換においては、複素位相を有する複素数値エントリが現れる。その際、2つの受信アンテナ間のこの位相の位相差はその距離にのみ依存する。同じ距離にある一対の受信アンテナは、位相差も同じである。
【0027】
主としてこの位相差のばらつきの程度、例えばこの位相差の標準偏差が計算される。最大、最小及び/若しくは平均標準偏差並びに/又は該計算された標準偏差の中央値が、例えば60°、好ましくは30°、特に好ましくは5°である所定の限界値を上回れば、障害基準が満たされている。
【0028】
該標準偏差は主として検出マトリクスの全てのピーク、特に好ましくは1つのオブジェクトに対応付けることのできたピークに対して計算される。1つの特に好ましい実施態様においては、移動オブジェクトに対応付けることのできた検出マトリクスの全てのピークに対する位相差の標準偏差が計算される。該計算は主として方位角の方向及び/又は仰角の方向において行われる。その際方位角は重力方向に対して垂直に位置する平面に延びる。それに対して仰角は重力方向に相対する角度を描く。
【0029】
主として検出マトリクスの少なくとも1つのピークが対応付けられたオブジェクトの数が算定される。主として静的オブジェクトの数が算定される。この場合に障害基準が満たされているとみなされるのは、該数が、例えば150、好ましくは100、特に好ましくは75である所定の上限値を上回る場合、又は該数が、主として10,好ましくは20、特に好ましくは30である所定の下限値を下回る場合である。検出マトリクスの少なくとも1つのピークを対応付けることのできた該計算されたオブジェクトの数が、この所定の上限値より大きいか、あるいは該所定の下限値より小さい場合は、これが交通流を制御するための最適な制御信号が存在しない非常に異常な交通状況であるか、あるいはレーダ放射を送出して受信信号を受信するセンサの動作に障害が起きていることが推測される。当然、この限界値は交通流が制御される交通路に応じて選択され得る。場合によっては交通量の少ない幹線道路では、所定の上限値はより小さく、例えば50、40又は30でよく、一方で複数の交通路、例えば複数の多車線道路の大きい交差点では、より大きい、例えば200、250又は300の上限値が適当であり得る。同様に場合によっては交通量の少ない幹線道路では所定の下限値は小さく、例えば5又は0でもよい。複数の交通路の大きい交差点では40、50又は60という所定の下限値も適当であり得、選択され得る。
【0030】
静的オブジェクトのみ、あるいは静的オブジェクトも含めて数える場合は、該各限界値は実際に存在するオブジェクト、例えば標識又は建物の数に基づいて選択され得る。
【0031】
有利に、検出マトリクス、例えばレンジ・ドップラ・マトリクスの計算前に、ベースバンド信号の、干渉による障害に特有の特徴が調査される。主としてこの特徴を認識するために、該信号エネルギー及び/又は該信号振幅が所定の限界値又は適応的に可変な限界値を上回るか否かがチェックされる。適応的に選択された限界値が用いられる場合は、例えば平均値計算又は中央値計算によって求められ得る例えば平均信号エネルギー又は平均信号振幅を履歴から導き出し、例えばこの値に8、10又は12を掛けて上記限界値を計算することにより、該限界値を優勢な交通状況に有利に適合させる。有利に、任意選択としての連続的な限界値超過分析から、例えば位置、幅及び/又は時間的変化に関して、干渉強度及び/又は干渉物によって占められた周波数帯を測定するための測度が導き出され得る。しかし干渉強度は、例えば、フーリエ変換の1段目若しくは相関に従った、又は検出マトリクスにおける増大した雑音レベルの観察によって確認することも可能である。その場合は干渉強度が十分に高いことによって障害基準が示される。
【0032】
有利に、集合的障害基準の形態で、最大、最小、平均信号対雑音比及び/又は該信号対雑音比の中央値、最大、最小及び/若しくは平均レーダ反射断面積並びに/又は該計算されたレーダ反射断面積の中央値、最小、最大及び/若しくは平均標準偏差並びに/又は該計算された標準偏差の中央値並びに/又はオブジェクトの数並びに/又は干渉強度の加重合計が所定の限界値を上回れば、障害基準が満たされている。この限界値はほぼ自由に選択可能であり、個々の被加数の適切な加重によって変更され得る。この所定の限界値は例えば-15、10又は100である。計算を簡略化するために、この加重合計の個々又は全ての被加数が該限界値を上回るか、又は下回るという場合には、該個々又は全ての被加数を限界値に設定しても、あるいは別々にスケーリングしてもよい。
【0033】
したがって、例えば最大信号対雑音比は5dB、10dB若しくは20dB又は他の適切な値へと、該比が該値を下回るという場合には高められ得る。該最大信号対雑音比は40dB、50dB又は60dBにも、該比がそれぞれ該値を上回るという場合には設定され得る。該信号対雑音比は好ましくは、任意の範囲、例えば14dB~50dBにも制限され得る。直線相関を使用すれば、該比は5~300に限定され得る。この大きさが別々にスケーリングされれば、そのようにして限定された範囲は0~100のスケーリング範囲にスケーリングされる。当然、他の範囲及びスケーリング範囲も使用され得る。
【0034】
この方法で計算が簡略化され、過度に大きい値又は小さい値によるエラーの可能性がより少なくなる。
【0035】
最小標準偏差に対する値は例えば0rad、0.1rad又は0.2radに設定しても、あるいは最大0.75rad、0.5rad又は0.4radに限定してもよい。そうした範囲も加重合計のために0~100のスケーリング範囲にスケーリングされ得る。
【0036】
可能性のあるオブジェクトの数は同様に任意の値、例えば最高60及び最低0に設定してもよく、その際、この範囲も任意のスケーリング範囲、例えば0~100にスケーリングされる。有利に、該大きさが該各所定の限界値を上回るか、又は下回るという場合には、該大きさは該限界値に設定される。
【0037】
加重合計の範囲内で各加重の符号が変化し得る。したがって、例えば最小標準偏差が正の因子を備え、ターゲットの数及び最大信号対雑音比が負の因子を備えている。代替として、該因子は当然それぞれ反対の符号も有し得る。
【0038】
個々の大きさが個別又は加重合計で障害基準を構成するか否かに関わらず、該大きさは好ましくは経時的にフィルタ処理されていて、その結果個々の検出マトリクス又は個々の測定サイクルの評価に基づく結果によって、直ちには障害通報が行われないか、あるいは障害基準が満たされていると認められる。これは例えば必要に応じて加重された移動平均値によって経時的に、つまり複数の、主として連続する測定サイクルの結果によって行われ得る。
【0039】
1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1つのレーダ放射用送信装置と該少なくとも1つのレーダ放射用受信装置はそれぞれレーダセンサの一部であり、その際、有利に少なくとも1つの追加的(オンボード)センサによって、該レーダセンサの位置及び/又は方向及び/又は速度及び/又は加速度が測定される。信頼性のある測定値を獲得するために、該少なくとも1つのレーダセンサが、その組み込まれた位置と、有利にその組み込まれた方向も維持することが必要である。この位置が、例えば該センサの固定された柱又は標識が交通事故で衝突を被っていて、例えば倒れたことによって変化すると、該センサによる該少なくとも1つの交通路の所望の範囲の監視はもはや保証されていない。これは位置センサ及び/又は方向センサによって確認され得る。レーダセンサはしばしば車道の上方及び/又は側方で例えば柱、標識又は信号機に配置される。特に信号機はしばしば交差点の上方で吊り下げられた状態でも配置され、その結果信号機には風による振動が引き起こされ得る。それにより、レーダセンサの速度及び/又は加速度を計算し、所定の限界値を上回る場合に障害基準が満たされているとみなすために、速度センサ及び/又は加速度センサを使用することが有利であり得る。有利に、位置センサ、方向センサ、速度センサ及び/又は加速度センサは少なくとも2つ、好ましくは全ての3つの独立した空間方向に対して存在する。
【0040】
主として、レーダセンサの位置及び/又は方向及び/又は速度及び/又は加速度が所定の限界値を超えて目標値から逸脱すれば、障害基準が満たされている。
【0041】
電子式データ処理装置の制御モジュールに伝達される制御信号の対象となるのは、有利に、検出して、検出マトリクス、例えばレンジ・ドップラ・マトリクスのピークから計算することのできた道路利用者(オブジェクト)の数、位置、速度ベクトル、寸法(空間的広がり)及び/又は分類、あるいは距離、角度、半径方向速度及び/又は更なる特徴に関する情報を有する前段階である。必要に応じて伝達されるべき障害信号は、例えば、該少なくとも1つのレーダセンサが動作していないか、又は確実には動作していないという情報を有し得る。交通流の制御を行う電子式データ処理装置の制御モジュールには、この場合、必要に応じて時間制御されている他の交通誘導及び交通流制御モデルが使用される。しかしその代替として、制御信号は、例えば、該監視されるべき少なくとも1つの交通路の全車線が占有状態であるという情報も有し得る。この場合は、該制御モジュールに伝達された道路利用者及びこの道路利用者のデータの数が過大に見積もられると、つまり実際に存在するより多くの道路利用者が報告されると有利である。それにより、障害基準が満たされているとみなされる場合に備えて、できるだけ多くの車線と方向においてできるだけ多くの数の道路利用者が報告される。
【0042】
評価モジュールにおける評価と診断モジュールにおけるチェックの結果から生成され、その後制御モジュールに伝達される信号には、障害基準が満たされていなければ、レンジ・ドップラ・マトリクスの評価時に計算されたオブジェクトに関する情報を有する評価信号が主として含まれる。主として上記信号は、障害基準が満たされていなければ、該評価信号で構成されている。該評価信号には、例えばレンジ・ドップラ・マトリクスの評価時の全てのピークのリストが含まれ、これには、例えばレーダセンサの半径方向速度と距離及び必要に応じて該各オブジェクト又は複数のオブジェクトの更なる特徴が含まれている。該評価信号には、例えば交差点における信号機切替えの制御に用いられる制御コンピュータの制御モジュールに、一定の車線が占有状態であるかどうかを伝える仮想電磁誘導式ループに対する占有信号も含まれ得る。例えば急速に接近する道路利用者に関する警告を行うトリガ信号も該評価信号に含まれていてもよい。
【0043】
主として上記信号には該評価信号に加えて、障害基準が満たされていないという情報を有する診断信号が含まれる。
【0044】
主として上記信号には、障害基準が満たされていれば、障害基準が満たされているという情報を含む診断信号が含まれる。この診断信号は専らこの情報で構成され得る。その代替として、該診断信号には障害事由に関する情報が含まれる。これは特に、異なる障害基準が存在して、その中の1つ又は僅かしか満たされていない場合に可能である。この方法で異なる障害事由、例えば雨、雪、嵐又はセンサの移動が区別され得る。その上、該診断信号には障害率が含まれ得る。したがって、例えばレーダセンサの視程が雨によって単に制限された状態であり得、その結果信頼性のあるデータは確かに依然として生成され、制御モジュールに伝達され得るが、信頼性があるのはレーダセンサまでの限定された距離に対してのみである。したがって、該診断信号には例えば、レーダセンサの視程が雨又は雪によって一定の率、例えば75%、50%又は25%に制限されているという情報が含まれ得る。
【0045】
主として上記信号には、障害基準が満たされていれば、仮想ターゲットに関する評価信号が含まれる。したがって、例えば該評価信号には、全ての車線が占有状態であるという情報が、障害によってレンジ・ドップラ・マトリクスの評価からこれを読み取ることができないにもかかわらず、含まれ得る。これが特に有利であるのは、制御モジュールが、専ら対応する評価信号を用いて、例えば該少なくとも1つの交通路において交通誘導又は交通流を制御することができる制御コンピュータの一部である場合である。特に古い制御コンピュータは、レーダセンサの機能障害に関する情報が提供されるように、この評価信号に加えて診断信号を得る目的では装備されていない。
【0046】
主として、本方法では、複数のレーダセンサ、例えば4つのレーダセンサが使用される。これらは主として少なくとも2つの交通路が合流又は交差する交差点に配置されている。その際、該4つのセンサが例えば1つの交通路又は異なる交通路の異なる部分を監視する。全てのレーダセンサの送信信号と受信信号が処理されてレンジ・ドップラ・マトリクスが形成され、評価される。該評価信号は、制御モジュールを有する交差点コンピュータに伝達される。必要に応じて、診断モジュールも交差点コンピュータの一部である。しかし、これは、診断モジュールが1つのレーダセンサ又は各レーダセンサに配置されていてもよいことから、不可欠ではない。
【0047】
特に好ましい実施態様において、本方法では複数のセンサが使用される。それにより、1つの交通路及び/又は異なる交通路の異なる部分が監視され、そこに位置する道路利用者が検出され得る。好ましくは、この場合送信信号はそれぞれのセンサによって送出され、受信信号はそれぞれのセンサによって受信される。制御モジュールはこの場合、主として制御コンピュータの一部である。これは主として、全てのセンサと該それぞれの信号によって生成されて提供される検出マトリクスを主として評価する診断モジュールにも適用される。
【0048】
評価モジュールにおいては、それぞれ検出マトリクスの少なくとも1つのピークを対応付けることのできた全てのオブジェクトのリストが主として作成される。その追加又は代替として、仮想電磁誘導式ループに対する占有信号、又は交通流の制御に必要若しくは少なくとも有益である他のトリガ信号が生成される。その中には、急速に接近するオブジェクトやこれに類するものに関する情報を有する信号が含まれる。
【0049】
診断モジュールは主として、例えば、1つ又は全ての使用されたセンサに障害が起きているという情報を含み得る診断信号を生成する。追加として障害の程度及び/又は障害の事由が示され得る。これらの情報には例えば該センサに第1の障害事由、例えば雨によって35%の障害が起きているということが含まれ得る。
【0050】
本発明は上記の課題を、更に、本明細書に記載の実施例の1つに従った方法を実行するために組み込まれている少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者の検出用センサによって解決する。該センサは主として評価モジュールと主として診断モジュールを備えた電子式データ処理装置を有する。
【0051】
添付の図面を用いて、以下に本発明の1つの実施例をより詳細に解説する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の1つの実施例による装置の概略図である。
【
図2】オブジェクトからの距離に応じた図式的評価である。
【
図3】オブジェクトの半径方向速度と反射率に応じた図式的評価である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は送信装置4を有するレーダセンサ2を図示する。送信装置4は送信信号6を送出するために組み込まれている。該送信信号は
図1において道路利用者8によって反射され、受信信号10の形態でレーダセンサ2の方向に反射される。道路利用者8の対象となるのは、例えば歩行者、自転車運転者、乗用車、貨物自動車又はその他の道路利用者であり得る。
【0054】
レーダセンサ2は受信信号10を検出するために組み込まれている受信装置12を有する。
図1に示した実施例において、レーダセンサは更に電子式データ処理装置14を有する。該装置は評価モジュール16と診断モジュール18を有する。評価モジュール16と診断モジュール18が同一の電子式データ処理装置14の一部であること、又は電子式データ処理装置14がレーダセンサ2の一部であることが有利であるが、必ずしも必要ではない。
【0055】
受信装置12によって、受信された受信信号10が評価モジュール16に供給される。そこで検出マトリクスが生成され、評価される。診断モジュール18において、障害基準が満たされているか否かがチェックされる。次に、評価モジュール16における評価と診断モジュール18におけるチェックの結果から、更なる電子式データ処理装置20に伝達される信号が生成される。該装置は制御モジュール22を有し、これに該信号がデータリンク24に沿って伝達される。電子式データ処理装置20の制御モジュール22は、例えば信号機、交通標識又は交通流に影響を及ぼす他の措置の切替え又は実行によって、例えば1つの交通路に沿った交通流を制御するために組み込まれている。
【0056】
1つの好ましい実施態様において、電子式データ処理装置20もレーダセンサ2の一部である。特に好ましくは、電子式データ処理装置14及び電子式データ処理装置20として取り扱われるのが全く同一の電子式データ処理装置であり、したがって評価モジュール16、診断モジュール18及び制御モジュール22は唯一の電子式データ処理装置の一部である。
【0057】
図2は、1つの検出マトリクスの評価結果を示し、その際、様々な測定サイクルに対して距離(レンジ)が描かれている。センサからの距離が短い25mまでの範囲に、より分かりやすくするために黒く表示されている多数の認識されたオブジェクトが認識される。破線で示した白枠はこのオブジェクトを示す。したがって、距離に関する評価から、本明細書に示した実施例では、実際のセンサまでの非常に短い距離に多数のオブジェクトが存在することが確認され得る。
【0058】
図3は該検出マトリクスの他の評価又は該評価の他の部分を示す。上部において半径方向速度、つまりセンサに向かう方向又はセンサから離れる方向のオブジェクトの速度が示されている。ここでも速度の低い範囲に多数のオブジェクトが存在する。半径方向速度が例えば10m/s未満であるオブジェクトの該当する速度範囲が再び白く示した破線枠で強調されている。
【0059】
図3の下部には、オブジェクトのレーダ反射断面積に対する直接的測度である反射率が多数の異なる測定サイクルに対して描かれている。ここでもレーダ反射断面積が0dBm
2未満である範囲においてオブジェクトの集積が認識される。したがって、
図2と
図3における3つの画像の結果から、レーダ反射断面積が非常に僅かであり、センサから僅かな距離に位置し、半径方向速度が僅かである多数のオブジェクトを確認することができる。本明細書に示した実施例において、該オブジェクトは雨であると確認され得る。
【0060】
しかしその際センサの機能性に関しては、雨が一定の強さを有することが重要である。これは、
図2と
図3の評価から読み取ることができる個々の「雨オブジェクト」を数えることによって確認され得る。このようにして確認された雨オブジェクトの数が所定の限界を上回れば、雨はセンサの機能性が損なわれるほど非常に強いとみなされ得る。これは
図4から読み取られ得る。本明細書に示した実施例において設定された限界値は100個のオブジェクトである。より多くのオブジェクトが検出されれば、青く示した線が設定された限界値の上方に位置し、センサの機能性が制限されているとみなされなければならない。これは本明細書に示した実施例において例えば測定サイクルが2450までの場合である。数えられた雨オブジェクトの数が限界値の下方に位置すれば、センサの機能性は制限されておらず、その結果障害基準が満たされていない。
図4に示した実施例においては、測定サイクルが72~2450の間と3054~3267の間で障害基準が満たされているが、その間とその後は満たされていない。
【符号の説明】
【0061】
2 レーダセンサ
4 送信装置
6 送信信号
8 道路利用者
10 受信信号
12 受信装置
14 電子式データ処理装置
16 評価モジュール
18 診断モジュール
20 電子式データ処理装置
22 制御モジュール
24 データリンク
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者を検出すための方法であって、該方法が以下の段階、
‐少なくとも1つのレーダ放射用送信装置を用いて送信信号を送出することと、
‐少なくとも1つのレーダ放射用受信装置を用いて受信信号を検出することと、
‐前記送信信号と前記受信信号を混合してベースバンド信号を形成し、前記ベースバンド信号から検出マトリクスを計算し、電子式データ処理装置の評価モジュールにおいて前記検出マトリクスを評価し、その際前記検出マトリクスのピークがオブジェクトに対応付けられることと、
‐診断モジュールにおいて、障害基準が満たされているか否かをチェックすることと、‐前記評価モジュールにおける前記評価と前記診断モジュールにおける前記チェックの結果から信号を生成することと、
‐電子式データ処理装置の制御モジュールに前記信号を伝送することと
を有する、道路利用者の検出方法。
[2] 前記検出マトリクスの前記評価のときに雨及び/又は雪が検出されれば、障害基準が満たされていることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] オブジェクトに実軌跡を対応付けることができ、所定の数の実軌跡が電子的データベースに保存された経過(目標軌跡)をたどらなければ障害基準が満たされているように、複数の検出マトリクスを連続的に評価することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 最大信号対雑音比、最小信号対雑音比、平均信号対雑音比及び/又は信号対雑音比の中央値が、前記検出マトリクスの選択されたピークの信号対雑音比から計算され、前記最大信号対雑音比、前記最小信号対雑音比、前記平均信号対雑音比及び/又は前記信号対雑音比の前記中央値が所定の限界値を下回れば、障害基準が満たされていて、その際、前記所定の限界値が主として100dB、好ましくは50dB、特に好ましくは20dBであることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記検出マトリクスの前記評価において、選択されたオブジェクト、主として選択された移動オブジェクトのレーダ反射断面積が計算され、最大、最小及び/若しくは平均レーダ反射断面積並びに/又は前記計算されたレーダ反射断面積の中央値が所定の限界値より小さければ、障害基準が満たされていることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記少なくとも1つの受信装置が複数の受信アンテナ、主として少なくとも3つの受信アンテナを有し、選択されたピーク又はオブジェクトに対して、主として方位角方向及び/又は仰角方向において各2つの受信アンテナ間の位相差の標準偏差が計算され、最大、最小及び/若しくは平均標準偏差並びに/又は前記計算された標準偏差の中央値が所定の限界値を上回れば、障害基準が満たされていて、その際、前記所定の限界値が主として60°、好ましくは30°、特に好ましくは5°であることを特徴とする、[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記検出マトリクスの少なくとも1つのピークが対応付けられたオブジェクトの数が算定され、前記数が、例えば150、好ましくは100、特に好ましくは75である所定の上限値を上回る場合、又は前記数が、主として10,好ましくは20、特に好ましくは30である所定の下限値を下回る場合に、障害基準が満たされていることを特徴とする、[1]から[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 反射された送信信号で構成されていない前記受信信号の干渉強度が所定の限界値を上回れば、障害基準が満たされていることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 障害基準が、
‐最大信号対雑音比、最小信号対雑音比、平均信号対雑音比及び/若しくは平均信号対雑音比の中央値と、
‐最大レーダ反射断面積、最小レーダ反射断面積、平均レーダ反射断面積及び/若しくはレーダ反射断面積の中央値と、
‐最大標準偏差、最小標準偏差、平均標準偏差標準偏差及び/若しくは標準偏差の中央値と、
‐目標軌跡からの実軌跡の逸脱と、
‐干渉強度と、並びに/又は
‐前記オブジェクトの数と、
の加重合計が所定の限界値を上回る場合又は下回る場合に満たされていることを特徴とする、[3]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記少なくとも1つの送信装置と前記少なくとも1つの受信装置がレーダセンサの一部であり、少なくとも1つのセンサによって前記レーダセンサの位置、及び/又は方向、及び/又は速度、及び/又は加速度が測定されることを特徴とする、[1]から[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11] 前記レーダセンサの前記位置、及び/又は前記方向、及び/又は前記速度、及び/又は前記加速度が、所定の限界値を超えて目標値から逸脱すれば、障害基準が満たされていることを特徴とする、[9]に記載の方法。
[12] 前記信号に、障害基準が満たされていなければ、前記検出マトリクスの前記評価において計算された前記オブジェクトに関する情報を有する評価信号が含まれることを特徴とする、[1]から[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13] 前記信号に、前記評価信号に加えて、障害基準が満たされていないという情報を有する診断信号が含まれることを特徴とする、[11]に記載の方法。
[14] 前記信号に、障害基準が満たされていれば、障害基準が満たされているという情報を有する前記診断信号が含まれ、その際、前記信号は主として前記オブジェクトに関する情報を含まないことを特徴とする、[1]から[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15] 前記信号に、障害基準が満たされていれば、仮想オブジェクトに関する評価信号が含まれることを特徴とする、[1]から[14]のいずれか一項に記載の方法。
[16] [1]から[15]のいずれか一項に記載の方法を実行する目的で組み込まれている、少なくとも1つの交通路に沿った道路利用者の検出用センサ。
[17] 前記検出用センサが評価モジュールと主として診断モジュールを備えた電子式データ処理装置を有することを特徴とする、[16]に記載の検出用センサ。