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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 41/06 20060101AFI20231110BHJP
   F16K 41/04 20060101ALI20231110BHJP
   F16K 1/32 20060101ALI20231110BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20231110BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
F16K41/06
F16K41/04
F16K1/32 A
F16K27/02
F16J15/06 L
F16J15/06 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022518022
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2021016483
(87)【国際公開番号】W WO2021220963
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2020078892
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020216537
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】平松 浩司
(72)【発明者】
【氏名】毛利 友裕
(72)【発明者】
【氏名】神崎 智哉
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014405(JP,A)
【文献】特開昭61-013128(JP,A)
【文献】中国実用新案第210240759(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0025119(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 41/06
F16K 1/32
F16K 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口、流体出口及び弁室を備えた弁箱と、前記弁室に設けられたシート面を有する弁座と、アクチュエータに接続され、アクチュエータの作動によって前記シート面に当接離間する弁体を先端に備えたステムと、前記弁室に連なり、弁室からの流体の漏れを抑止するシール部材を配設するシール空間と、前記シール空間と連なり当該シール空間の外のシール開放空間と、前記シール部材を弁室側に押圧固定するシール押圧部材と、を備えたバルブであって、
前記弁箱には、前記シール空間と前記弁箱の外部とを連通するリーク穴が形成されており、
前記シール部材は、前記シール空間の内周面から流体が漏れ出ることを防ぐ外側シール材と、前記ステムの外周面から流体が漏れ出ることを防止する内側シール材と、を備え、
前記リーク穴は、前記外側シール材が前記シール空間を形成する周壁と密着するシール有効領域よりも前記シール開放空間側の前記シール空間に開口していることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
流体の流入口、流出口及び弁室を備えたバルブボディと、
前記弁室に設けられ、前記流入口と連なる流路の開放端をシート面とする弁座と、
アクチュエータに接続され、アクチュエータの作動によって前記シート面に当接離間する弁体を先端に備えた円柱状のステムと、
前記弁室から外部に連なるシール空間に配設され、弁室からの流体の漏れを抑止するステムに外嵌されたシール部材と、
該シール部材を弁室側に押圧固定するシール押圧部材とを備えたバルブであって、
前記ステムには、組立状態においてシール部材が摺接する位置よりもシール押圧部材側に、前記弁室内の圧力を前記シール部材の外に抜く圧抜き部を形成したバルブ。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブであって、前記圧抜き部は、当該圧抜き部のステム外径を、他の部分の外径よりも小径としたバルブ。
【請求項4】
請求項2に記載のバルブであって、前記圧抜き部は、前記ステム内部で連通する流入孔及び流出孔としたバルブ。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1つに記載のバルブであって、前記シール部材は、外径が異なって連続し、かつ、内径が異なって連続した円筒状のシール保持部材に内側シール部材及び外側シール部材を取り付けて構成し、前記内側シール部材が前記アクチュエータ側であるバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御するバルブに関する。また、本発明は、流体の流れを制御するバルブに関し、高圧の流路に配設され、ステムとボンネット間の環状隙間からの流体の漏れを防止するパッキンに対し増し締めが必要となるバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の弁は、ニードルバルブタイプの高圧流体用制御弁であり、その構造は、流入口と流出口を有するボディ内の弁座にニードル部を非回転に上下動させて高圧流体を開閉又は流量調節可能に設けた高圧用ニードルバルブである。弁座とニードル部が強く当接することにより流体を遮断する構造となっている。
【0003】
また、流体の流量を調節し、開閉を行うことができる制御弁として、特許文献2に記載のような制御弁が知られている。この制御弁は、流体の流路を有するバルブボディと、流体の流量を制御する弁体と、弁体を上下動させるアクチュエータを備えている。弁体の当接部は、弁閉時はアクチュエータによる降下にしたがって、バルブボディに形成された弁座に当接して流体を遮断する。これらの制御弁は、弁体が回転を伴わない上下動によって対向する弁座に強く押圧されることによって、高圧流体に耐えられる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-156442号公報
【文献】特開2016-014405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のバルブでは、ステムが移動する空間から外部に流体が漏洩しないようシール部材が配設されているが、弁室内が高圧で使用されるため、長時間の使用によってシール部材を弁室側に押圧するシール押圧部材が緩むことがある。その場合、シール押圧部材を増し締めすることで対応するようにしているものの、シール部材の弁室側に圧力溜りが生じている場合がある。圧力溜りが発生すると、所定の締め付けトルクで増し締めするだけでは所定の位置まで締め付けることができず、トルク設定したトルクレンチでは増し締めができないという問題があった。
【0006】
圧力溜りにより十分な増し締めができないときは、一旦、シール押圧部材を完全に緩め、上部から溜まった圧力を外部に開放したのち、再度締め付けを行うようにしている。圧力溜りがあるため、シール押圧部材を緩めることでシール部材はせり上がり、圧抜きは完了するものの、このような作業は手数を要するとともにシール材を傷つけることがあるという問題があった。
【0007】
また、近年、制御対象の流体として高圧の流体を制御する環境でのバルブが求められている。そして、このような環境で、排出用のバルブとして使用する場合、排出側に騒音対策として絞りを設けることがある。絞りを設けることで、圧力の開放がスムーズに行われず、ステム側(シール部材側)に影響を及ぼすこととなり、その結果、シール部材を押圧するシール押圧部材が緩むことがある。
【0008】
図11(a)は、シール押圧部材230を奥までねじ込んだ状態を示し、図11(b)は、シール押圧部材230を緩めてはいるが、弁室214内の高圧流体の圧力がまだ維持されている状態を示す。さらに、シール押圧部材230のねじを緩めると、シール押圧部材230の雄ねじの係合が外れた瞬間に、弁室214内の高圧流体が上方のシール開放空間(位置Pよりも上側)に抜けるとともに、外側シール材232にシール性を損なう傷等が生じる場合がある。(図11(c)参照)
【0009】
図12(a)は、シール押圧部材330を奥までねじ込んだ状態を示し、内側シール部材331及び外側シール部材332とステム320外周面及びシール空間の内周面319が当接するシール部までの隙間空間に高圧流体が溜まる圧溜り部Pが形成されている。図12(b)は、シール押圧部材330を緩めてはいるが、弁室314内の高圧流体の圧力がまだ維持されている状態を示す。このとき、圧溜り部Pの圧力は保持された状態である。さらに、シール押圧部材330のねじを緩めると、シール押圧部材330の雄ねじの係合が外れ、圧溜り部Pにある高圧流体が、外側シール部材332と内周面319の当接がなくなった瞬間に、弁室314内の高圧流体が上方のシール開放空間に抜けるとともに、外側シール部材332にシール性を損なう傷等が生じる場合がある。
【0010】
本発明は、シール材を増し締めするために、一旦、シール材近傍に溜まった圧力を外部に放出する際、圧力開放に伴うシール材が破損することがないようなバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明(1)に係るバルブは、流体入口、流体出口及び弁室を備えた弁箱と、前記弁室に設けられたシート面を有する弁座と、アクチュエータに接続され、アクチュエータの作動によって前記シート面に当接離間する弁体を先端に備えたステムと、前記弁室に連なり、弁室からの流体の漏れを抑止するシール部材を配設するシール空間と、前記シール空間と連なり当該シール空間の外のシール開放空間と、前記シール部材を弁室側に押圧固定するシール押圧部材と、を備えたバルブであって、前記弁箱には、前記シール空間と前記弁箱の外部とを連通するリーク穴が形成されており、前記シール部材は、前記シール空間の内周面から流体が漏れ出ることを防ぐ外側シール材と、前記ステムの外周面から流体が漏れ出ることを防止する内側シール材と、を備え、前記リーク穴は、前記外側シール材が前記シール空間を形成する周壁と密着するシール有効領域よりも前記シール開放空間側の前記シール空間に開口するようにしている。
【0012】
本発明(1)のバルブは、弁箱には、前記シール空間と前記弁箱の外部とを連通するリーク穴が形成されており、シール部材は、シール空間の内周面から流体が漏れ出ることを防ぐ外側シール材と、ステムの外周面から流体が漏れ出ることを防止する内側シール材と、を備え、リーク穴は、外側シール材がシール空間を形成する周壁と密着するシール有効領域よりもシール開放空間側のシール空間に開口しているので、外側シール材がシール開放空間に露出する前に、弁室内の高圧流体がリーク穴から排出される。弁室内の圧力が下がるので、シール空間の圧力も下がり、シール押圧部材のねじもスムーズに緩めることができ、外側シール材が破損することはない。このようにすることによって、増し締めを容易に行うことができる。また、シール開放空間に騒音対策として絞りを設けた場合でも、同様に、容易に増し締めを行うことができる。
【0013】
上記課題を解決するためになされた本発明(2)のバルブは、流体の流入口、流出口及び弁室を備えたバルブボディと、前記弁室に設けられ、前記流入口と連なる流路の開放端をシート面とする弁座と、アクチュエータに接続され、アクチュエータの作動によって前記シート面に当接離間する弁体を先端に備えた円柱状のステムと、前記弁室から外部に連なるステム挿通口に配設され、弁室からの流体の漏れを抑止するステムに外嵌されたシール部材と、該シール部材を弁室側に押圧固定するシール押圧部材とを備えたバルブであって、前記ステムは、組立状態においてシール部材が摺接する位置よりもシール押圧部材側に圧抜き部を形成するようにしている。
【0014】
本発明(2)のバルブにおいて、当該圧抜き部のステム外径を、他の部分の外径よりも小径とすることができる。
【0015】
本発明(2)のバルブは、ステムに外嵌されるシール部材がシール押圧部材を緩めることでシール部材に伴って移動し、ステムの圧抜き部に到達し、シール部材近傍に溜まった圧力を外部に放出する。これによりシール部材間の圧力溜りが解消され増し締めを容易に行うことができる。また、外側シール部材が破損することもなくなる。
【0016】
また、圧抜き部は、ステム内部で連通する流入孔及び流出孔とすることができる。流出孔を流入孔より軸方でシール押圧部材側となるようにすることで、内側シール部材が流入孔よりシール押圧部材側にきたとき圧溜り部の圧力は外部に放出される。
【0017】
また、これら場合において、シール部材は、外径と内径が異なる連続した円筒状のシール保持部材に内側シール部材及び外側シール部材を取り付けて構成し、前記内側シール部材が前記アクチュエータ側とすることができる。これにより、シール空間の圧抜きを速やかに完了させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバルブによれば、バルブのシール材を増し締めするために、一旦、シール材近傍に溜まった圧力を外部に放出する際、圧力開放に伴うシール材が破損することがないバルブを提供することができる。また、騒音対策として絞りを設けた場合でも、容易に増し締めを行うことができるバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明(1)のバルブを示す、一部切り欠きの正面断面図である。
図2】本発明(1)のバルブを示す、一部切り欠きの側面断面図である。
図3】本発明(1)のバルブのシール押圧部材が締めこまれた状態を示す、一部切り欠きの正面拡大断面図である。
図4】本発明(1)のバルブのシール押圧部材が緩められた状態を示す、一部切り欠きの正面拡大断面図である。
図5】本発明(1)のバルブのシール有効領域を模式的に示す断面図である。
図6】本発明(2)のバルブを示す一部切り欠きの正面断面図である。
図7】本発明(2)のバルブの部品を示し、(a)はステムの一部切り欠きの正面図、(b)はシール保持部材とシール部材を取り付ける前の断面斜視図、(c)はシール部材を取り付けたシール保持部材にステムを嵌挿した状態を示す一部切り欠きの断面斜視図である。
図8】本発明(2)のバルブの要部拡大図で、シール押圧部材が締め込んだ状態を示す一部切り欠きの正面拡大断面図である。
図9】本発明(2)のバルブのシール押圧部材が緩められた状態を示す一部切り欠きの正面拡大断面図である。
図10】本発明(2)のバルブの別の実施例を示し、(a)はステムの一部切り欠きの正面図、(b)はシール部材を取り付けたシール保持部材にステムを嵌挿した状態を示す一部切り欠きの断面斜視図、(c)はシール押圧部材を緩め、圧抜き部が機能した状態を示す一部切り欠きの断面斜視図、(d)は更に別の実施形態を示す一部切り欠きの断面斜視図である。
図11】従来のバルブのシール材を締めこまれた状態(a)、少し緩めた状態(b)及び開放された状態(c)を示す。
図12】従来のバルブのシール部材の圧抜きを示す概略説明図で、(a)は締め込んだ状態、(b)は少し緩めた状態、(c)は開放された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るバルブの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。この実施例に記載されている構成部品の形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0021】
<本発明(1)の実施形態1>
図1図5に、本発明(1)の第1の実施形態を示す。図1は、本発明(1)のバルブ1の一部切り欠きの正面断面図である。本発明(1)のバルブ1の弁箱10の外側面には、流体が流入する流体入口11及び流体が流出する流体出口12が開口している。流体の制御が行われる弁室14と流体入口11との間には流体流入通路16が形成され、弁室14と流体入口11との間には流体流出通路17が形成されている。弁室14の下面には、弁座13が形成され、ステム20の下端に形成された弁体21と当接・離間して流体は開閉制御される。弁箱10の上面側には、シールを押圧するシール押圧部材30が配置されている。ステム20を上下に駆動させるアクチュエータ40が弁箱10の上方に配置されている。
【0022】
本発明(1)の特徴部分であるリーク穴15が、弁箱10にあけられており、点線で描かれている。
【0023】
図2は、本発明(1)のバルブ1の一部切り欠きの側面断面図である。図1では、リーク穴15が点線で描かれていたのに対して、本図では、弁箱10の内部を貫通する貫通孔として描かれている。本発明(1)は、このリーク穴15が形成されていることと、このリーク穴15の配置位置を特徴として有している。
【0024】
図3は、本発明(1)のバルブ1において、シール押圧部材30が規定の位置まで締めこまれた状態を示す、一部切り欠きの正面拡大断面図である。シール押圧部材30の雄ねじ31は、弁箱10の上部に形成された雌ねじ18と螺合している。ステム20の周囲には、内側シール材31が配置され、ステム20の外周面に沿った流体の漏出を防止している。
【0025】
位置Pより上にテーパー面が形成され、位置Pより上がシール開放空間となっており、位置Pより下であって、弁室14より上の空間は、外側シール材32が配置されるシール空間となっている。外側シール材32は、シール空間を形成する内周壁19と密着して、弁室14からの流体がシール空間を形成する内周壁19を伝って漏出するのを防止している。なお、内側シール部材31及び外側シール部材32は、外径と内径が異なる連続した円筒状のシール保持部材33に配備された状態でシール空間に配設される。
【0026】
図4は、シール押圧部材30の雄ねじ31の螺合を緩めてシール材31とシール材32を上方に移動させたときの状態を示している。この状態まで雄ねじ31を緩めると、弁室14内の高圧流体は、リーク穴15からバルブ1の外部に出るので、弁室14内の圧力は下がり、シール押圧部材30の雄ねじ31を軽く緩めることができる。この状態で、外側シール材32の外周は、シール空間の内周壁19と当接しているので、外側シール材32が破損することはない。また、排出側に騒音対策として絞りが設けられていたとしても、高圧流体はリーク穴15から容易に排出されるので、その後の増し締めも容易にできる。
【0027】
また、リーク穴15は、シール空間とシール開放空間の境界Pよりも弁箱14側に配置されている。よって、シール押圧部材30を緩めて、外側シール部材32の上部をリーク穴15のところまで移動させるだけで高圧流体をリークできるので、移動量を少なくして作業が容易にできるようになる。
【0028】
図5は、シール有効領域Aを模式的に示す断面図である。シール有効領域Aとは、シール空間の内周壁19と外側シール材32が密着して高圧流体の漏出を防ぐ領域である。図1図4に示す実施例では外側シール材32がひとつであるが、2つ以上の外側シール材が装備されるバルブにおいては、シール有効領域Aは、複数の外側シール材32の内、最もシール開放空間に近い外側シール材32のシール領域が、シール有効領域Aとなる。
【0029】
<本発明(2)の実施形態1>
図6図9に、本発明(2)の第1の実施形態を示す。図6は、本発明(2)のバルブ101の一部切り欠きの正面断面図である。本発明(2)のバルブ101のバルブボディ110の外側面には、流体が流入する流入口111及び流体が流出する流出口112が開口している。流体の制御が行われる弁室114と流入口111とは流体流入通路116によって連通され、弁室114と流入口111とは流体流出通路117によって連通されている。弁室114の流体流入路116の開放端には、弁座113が形成され、ステム120の下端に形成された弁体121と当接・離間して流体は開閉制御される。バルブボディ110の上面側には、シールを押圧するシール押圧部材130が螺合され、ステム120を上下に駆動させるアクチュエータ140がステム120と連結され、バルブボディ110の上方に配置されている。
【0030】
そして、本実施形態に係るバルブ101のステム120は、組立状態においてシール部材131、132が摺接する位置よりもシール押圧部材130側の一部の外径D1が、その他の部分のステム120の外径Dよりも小径となっており、係る部分が圧抜き部122を形成している。
【0031】
図7(a)は、本発明(2)のバルブ101のステム120の一部切り欠きの正面図である。圧抜き部122の軸方向の長さは特に限定するものではないが、シール保持部材133の内側シール部材131が収納される内径d2部の軸方向長さ程度に設定されている。
【0032】
本発明(2)のシール部材は、外径と内径が異なる連続した円筒状のシール保持部材133に内側シール部材131及び外側シール部材132を取り付けて構成し、内側シール部材131がアクチュエータ140側となるようにステム120に取り付けられている。
【0033】
外径と内径が異なる連続した円筒状のシール保持部材133は、具体的には図7(b)に示すように、内側シール部材131が取り付けられる、外径d1、内径d2の部分と外側シール部材132が取り付けられる、外径d3、内径d4の部分とが連続し一体となっている。外径d1は、後述するバルブボディ110のシール空間119の内径より若干小さい径で、内径d4はステム120の外径Dより若干大きい径となっており、シール保持部材133はシール部材131,132、複数のバックアップリングBKを取り付けた状態でステム120を嵌装し、シール空間に嵌入されている。
【0034】
図8は、本発明(2)のバルブ101において、シール押圧部材130を規定の位置まで締め込んだ状態を示す、一部切り欠きの正面拡大断面図である。シール押圧部材130の雄ねじ130aは、バルブボディ110の上部のシール開放空間118に形成された雌ねじ118aと螺合している。ステム120の周囲には、内側シール部材131が摺接され、ステム120の外周面に沿った流体の漏出を防止している。
【0035】
シール空間119の上部にはテーパ面Tが形成され、このテーパ面Tより上がシール開放空間118となっており、テーパ面Tより下であって、弁室114より上の空間は、シール保持部材133に取り付けられた外側シール部材132が配置されるシール空間119となっている。外側シール部材132は、シール空間119を形成する内周壁と密着して、弁室114からの流体がシール空間119を形成する内周壁を伝って漏出するのを防止している。太線で表したQは弁室114からの高圧流体が溜まる圧力溜りを示し、それぞれ弁室114側から内側シール部材131及び外側シール部材132のシール部までが圧溜り部Qの空間(隙間)となる。
【0036】
図9は、増し締め前の圧抜き工程で、シール押圧部材130の雄ねじ130aの螺合を緩めて内側シール部材131と外側シール部材132を上方に移動させたときの状態を示している。シール部材131、132を保持したシール保持部材133は、圧溜り部Qの圧力によってシール押圧部材130側に付勢されているので、雄ねじ130aを緩めることでシール押圧部材130と共に上昇する。図9に示す位置まで雄ねじ130aを緩めると、内側シール部材131のシール面が小径の圧抜き部122に到達し、圧溜り部Qの高圧流体は、内側シール部材131のシールから解放され、シール押圧部材130の内面とステム120の外面の隙間を抜け、バルブ101の外部に出るので、弁室114内の圧力は下がり、改めて増し締めする際には、シール押圧部材130の雄ねじ130aを軽く締め込むことができる。
【0037】
シール押圧部材130を緩めた状態でも、外側シール部材132の外周は、シール空間119の内周壁と当接しているので、外側シール部材132が破損することはない。
【0038】
<本発明(2)の実施形態2>
図10に、本発明(2)の第2の実施形態を示す。第2の実施形態は、圧抜き部122の構造が異なる以外は、第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0039】
本発明(2)のバルブ101の圧抜き部122は、図10(a)に示すとおり、ステム120の内部で連通する流入孔122a及び流出孔122bとから構成されている。
【0040】
この圧抜き部122の流入孔122aは、常時は、内側シール部材131よりもシール押圧部材130側に位置しており、弁室114内の圧力(圧溜り部Qの高圧流体)が外部に漏れだすことはない(図10(b)参照)。
【0041】
そして、増し締め前の圧抜き工程において、シール部材131、132を保持したシール保持部材133は、圧溜り部Qの圧力によってシール押圧部材130側に付勢されているので、雄ねじ130aを緩めることでシール押圧部材130と共に上昇する。上昇に伴い、図10(c)に示すように、内側シール部材131のシール部が、流入孔122aを越えたとき、圧溜り部Qの高圧流体は流入孔122aからステム内の連通路を介し、流出孔122bを経て外部へ放出される。これによって、弁室114内の圧力は下がり、改めて増し締めする際には、シール押圧部材130の雄ねじ130aを軽く締め込むことができる。
【0042】
本国際出願は、2020年4月28日に出願した日本国特許出願2020-078892号に基づく優先権、及び、2020年12月25日に出願した日本国特許出願2020-216537号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2020-078892号、及び、日本国特許出願2020-216537号の全内容を本国際出願に援用する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るバルブは、シール部材近傍に溜まった圧力を外部に放出する際、シール押圧部材を僅かに緩めシール部材の移動距離を小さくしても、確実に圧力を放出することができるので、高圧環境、例えば、水素ステーション用バルブとして好適に用いることができる。また、本発明のバルブでは、リーク穴というリークポートを設ける改造を行うこと,または圧抜き部を形成したステムを利用することからバルブボディに変更を加える必要がないため、既存設備の保守や改造の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1、101 バルブ
10 弁箱
11 流体入口
12 流体出口
13、113 弁座
14、114 弁室
15 リーク穴
16、116 流体流入通路
17、117 流体流出通路
18 雄ねじ
19 内周壁
20、120 ステム
21、121 弁体
30、130 シール押圧部材
31 雌ねじ
32 シール有効領域
40、140 アクチュエータ
110 バルブボディ
111 流入口
112 流出口
118 シール開放空間
118a 雌ねじ
119 シール空間
122 圧抜き部
130a 雄ねじ
131 内側シール部材
132 外側シール部材
133 シール保持部材
P シール開放空間とシール空間の境界位置
Q 圧溜り部
図1
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図3
図4
図5
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図10
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図12