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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ワーク加工用シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231110BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231110BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20231110BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J133/14
C09J175/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020556712
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2019040322
(87)【国際公開番号】W WO2020100491
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018212274
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】高麗 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明徳
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-328160(JP,A)
【文献】特開2017-082196(JP,A)
【文献】特開2008-027960(JP,A)
【文献】特開2008-021871(JP,A)
【文献】特開2004-119780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 133/14
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、
前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、
前記ワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力をF0とし、
前記ワーク加工用シートをシリコンウエハに貼合してなる積層体を150℃で1時間加熱した後、さらに、前記積層体を構成する前記粘着剤層に対して紫外線照度230mW/cm および光量190mJ/cm の条件で照射した後における前記ワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力をF2とした場合に、
前記粘着力F0が、600mN/25mm以上、20000mN/25mm以下であり、
前記粘着力F0に対する前記粘着力F2の比(F2/F0)が、0.66以下である
ことを特徴とするワーク加工用シート。
【請求項2】
前記ワーク加工用シートを150℃で1時間加熱した後における、前記粘着剤層の23℃でのヤング率をE1とし、
前記ワーク加工用シートを150℃で1時間加熱した後、さらに、前記ワーク加工用シートを構成する前記粘着剤層に対して紫外線照度230mW/cm および光量580mJ/cm の条件で照射した後における、前記粘着剤層の23℃でのヤング率をE2とした場合に、
前記ヤング率E1に対する前記ヤング率E2の比(E2/E1)が、13以上であることを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項3】
前記ワーク加工用シートにおける前記粘着剤層の23℃でのヤング率をE0とし、
前記ワーク加工用シートを150℃で1時間加熱した後における、前記粘着剤層の23℃でのヤング率をE1とした場合に、
前記ヤング率E0に対する前記ヤング率E1の比(E1/E0)が、2.0以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のワーク加工用シート。
【請求項4】
基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、
前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤のガラス転移温度が、-50℃以上、10℃以下であり、
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤が、極性基を有するモノマーを構成モノマーとして含むアクリル系共重合体を含み、
前記極性基を有するモノマーが、アクリロイルモルフォリン、アクリル酸イソボルニル、酢酸ビニル、アクリル酸ベンジルおよびメタクリル酸グリシジルから選択される少なくとも一種である
ことを特徴とするワーク加工用シート。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体は、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基が導入されたものであることを特徴とする請求項4に記載のワーク加工用シート。
【請求項6】
ダイシングシートであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のワーク加工用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングに好適に使用することができるワーク加工用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハおよび各種パッケージ類(以下、これらをまとめて「ワーク」と記載することがある。)は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(以下、「チップ」と記載することがある。)に切断分離(ダイシング)されるとともに個々に分離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等のワークは、基材および粘着剤層を備えるワーク加工用シートに貼着された状態で、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップおよびマウンティングの各工程に付される。このようなワーク加工用シートでは、加工の際にはワークを当該シート上に良好に保持しながらも、当該シートから加工後のワークを分離する際には容易に分離できる性能が求められる。
【0003】
上述の通り得られたチップに対しては、その後、加熱処理を行うことがある。例えば、チップに対して、蒸着、スパッタリング、脱湿のためのベーキング等の処理を行うことがある。また、チップが高温環境下での使用も想定されるものである場合には、そのような環境下での信頼性を確認するための加熱試験を行うこともある。通常、これらの加熱処理は、得られたチップを加熱トレイ上に載置した状態で行われる。
【0004】
近年、上述したようなチップの加熱処理を、ワーク加工用シート上にて行うことが検討されている。すなわち、ワーク加工用シート上においてワークをダイシングした後、得られたチップを加熱トレイに移し替えることなく、ワーク加工用シート上に載置したままチップに対して加熱処理を行うことが検討されている。この場合、工程を簡略化することが可能となる。
【0005】
特許文献1~3には、上述したような加熱処理を行うことが想定された粘着シートが開示されている。特に、特許文献1に開示される粘着シートは、基材層と放射線硬化型粘着剤からなる粘着剤層とを有し、該粘着剤層は貼り合わせ後の対SUS304粘着力が0.5N/20mm以上であり、樹脂封止工程完了時点に至るまでに受ける刺激により硬化して、対パッケージ剥離力が2.0N/20mm以下になる層となっている。また、特許文献2に開示される粘着シートでは、粘着剤層が、所定の粘着剤成分と、所定のテトラゾール化合物とを含有する粘着剤組成物から形成されたものとなっている。さらに、特許文献3に開示される粘着シートでは、耐熱性基材上に、所定のアクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、所定の重合開始剤と、架橋剤とを含有する粘着剤層形成用材料からなる粘着剤層が形成されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5144634号
【文献】特許第5555578号
【文献】特許第5565173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したようなチップの加熱処理を、従来のワーク加工用シート上にて行った場合、加熱によって、チップに対するワーク加工用シートの粘着力が向上する結果、加熱処理後に、当該シートからチップを良好にピックアップすることができなくなるという問題があった。このような問題は、特許文献1~3に開示されるような、所定の耐熱性を有する粘着シートを用いたとしても十分に解決することはできなかった。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ワークの加工の際には当該ワークに対して十分な粘着力を発揮しながらも、加熱処理を経た後において、加工後のワークを良好に分離することができるワーク加工用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、前記ワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力をF0とし、前記ワーク加工用シートをシリコンウエハに貼合してなる積層体を150℃で1時間加熱した後、さらに、前記積層体を構成する前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後における前記ワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力をF2とした場合に、前記粘着力F0が、600mN/25mm以上、20000mN/25mm以下であり、前記粘着力F0に対する前記粘着力F2の比(F2/F0)が、0.66以下であることを特徴とするワーク加工用シートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係るワーク加工用シートでは、上述した粘着力F0が上記範囲であることにより、ワークの加工の際に、当該ワークに対して十分な粘着力を発揮することができる。その一方で、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されているとともに、上述した粘着力の比(F2/F0)が上記範囲であることにより、加工後のワークが貼付された状態でワーク加工用シートが加熱された場合であっても、その後に活性エネルギー線を照射することにより、加工後のワークに対する粘着力を十分に低下させることができ、それにより加工後のワークを良好に分離することができる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記ワーク加工用シートを150℃で1時間加熱した後における、前記粘着剤層の23℃でのヤング率をE1とし、前記ワーク加工用シートを150℃で1時間加熱した後、さらに、前記ワーク加工用シートを構成する前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後における、前記粘着剤層の23℃でのヤング率をE2とした場合に、前記ヤング率E1に対する前記ヤング率E2の比(E2/E1)が、13以上であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)において、前記ワーク加工用シートにおける前記粘着剤層の23℃でのヤング率をE0とし、前記ワーク加工用シートを150℃で1時間加熱した後における、前記粘着剤層の23℃でのヤング率をE1とした場合に、前記ヤング率E0に対する前記ヤング率E1の比(E1/E0)が、2.0以上であることが好ましい(発明3)。
【0013】
第2に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、前記活性エネルギー線硬化性粘着剤のガラス転移温度が、-50℃以上、10℃以下であり、前記活性エネルギー線硬化性粘着剤が、極性基を有するモノマーを構成モノマーとして含むアクリル系共重合体を含むことを特徴とするワーク加工用シートを提供する(発明4)。
【0014】
上記発明(発明4)において、前記アクリル系共重合体は、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基が導入されたものであることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1~5)においては、ダイシングシートであることが好ましい(発明6)。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るワーク加工用シートは、ワークの加工の際には当該ワークに対して十分な粘着力を発揮しながらも、加熱処理を経た後において、加工後のワークを良好に分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るワーク加工用シートは、基材と、基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える。また、当該粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されたものとなっている。
【0018】
1.ワーク加工用シートの物性
(1)粘着力
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、ワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力をF0とした場合に、粘着力F0が、600mN/25mm以上であることが好ましく、特に900mN/25mm以上であることが好ましく、さらには1200mN/25mm以上であることが好ましい。また、粘着力F0が、20000mN/25mm以下であることが好ましく、特に5000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには3000mN/25mm以下であることが好ましい。なお、上記粘着力F0は、後述する加熱や活性エネルギー線照射といった処理を行っていないワーク加工用シートについて測定される、初期の粘着力を意味する。
【0019】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着力F0が上記範囲であることにより、ワーク加工用シート上にワークを良好に保持することが可能となる。そのため、ワークの加工の際には、例えば加工による衝撃が発生した場合であっても、加工後のワークの移動や脱落を良好に抑制することが可能となる。特に、粘着力F0が600mN/25mm以上であることで、加工の際にワークを良好に保持し易いものとなる。一方、粘着力F0が20000mN/25mm以下であることで、ワーク加工用シートに対して後述する活性エネルギー線照射を行った場合に、加工後のワークに対する粘着力を十分低下させ易いものとなり、これにより、加工後のワークをワーク加工用シートから分離し易いものとなる。
【0020】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、ワーク加工用シートをシリコンウエハに貼合してなる積層体を150℃で1時間加熱した後、さらに、当該積層体を構成する粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後におけるワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力をF2とした場合に、上述した粘着力F0に対する粘着力F2の比(F2/F0)が、0.66以下であることが好ましく、特に0.2以下であることが好ましく、さらには0.15以下であることが好ましい。当該比(F2/F0)が0.66以下であることで、加工時におけるワークの保持と、活性エネルギー線照射後における加工後のワークの分離とを良好に両立し易いものとなる。特に、ワーク加工用シート上に加工後のワークを貼付した状態で、当該ワーク加工用シートが加熱処理に曝された場合であっても、加工後のワークをワーク加工用シートから良好に分離し易いものとなる。なお、上記比(F2/F0)の下限値については特に限定されないものの、例えば、0.01以上であってもよい。
【0021】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、上述した粘着力F2が、1000mN/25mm以下であることが好ましく、特に500mN/25mm以下であることが好ましく、さらには150mN/25mm以下であることが好ましい。また、粘着力F2は、30mN/25mm以上であることが好ましい。粘着力F2が上記範囲であることで、比(F2/F0)を上述した範囲に調整し易いものとなる。
【0022】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、ワーク加工用シートをシリコンウエハに貼合してなる積層体を150℃で1時間加熱した後におけるワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力をF1とした場合に、粘着力F1が、1000mN/25mm以上であることが好ましく、特に2300mN/25mm以上であることが好ましい。また、粘着力F1は、5000mN/25mm以下であることが好ましい。粘着力F1が上記範囲であることで、比(F2/F0)を上述した範囲に調整し易いものとなる。
【0023】
なお、上述した粘着力F0、F1およびF2のそれぞれの測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0024】
(2)ヤング率
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、ワーク加工用シートを150℃で1時間加熱した後における、粘着剤層の23℃でのヤング率をE1とし、ワーク加工用シートを150℃で1時間加熱した後、さらに、当該ワーク加工用シートを構成する粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後における、当該粘着剤層の23℃でのヤング率をE2とした場合に、上記ヤング率E1に対する上記ヤング率E2の比(E2/E1)が、13以上であることが好ましく、特に15以上であることが好ましく、さらには18以上であることが好ましい。
【0025】
前述の通り、本実施形態における粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されるものである。一般的に、活性エネルギー線硬化性粘着剤中に存在する活性エネルギー線硬化性を達成するための成分は、加熱によって所定の反応を行い、これに起因して粘着剤の硬化が進行することがある。例えば、上記成分がアクリロイル基である場合には、このアクリロイル基中の炭素-炭素二重結合が加熱により開裂し、重合反応が進行する場合がある。このように、加熱によって上記成分の反応が進行した場合、その後に活性エネルギー線を照射したとしても、粘着剤層のさらなる硬化が良好に進まないものとなる。しかしながら、本実施形態に係るワーク加工用シートにおいて、比(E2/E1)が上記範囲であれば、加熱処理を行った後であっても、活性エネルギー線の照射によって、粘着力を良好に低下させ易くなる。これにより、活性エネルギー線の照射前における、加工後のワークの意図しない脱落等を効果的に抑制することができる。
【0026】
なお、上記比(E2/E1)の上限値については特に限定されず、例えば25以下であってもよい。
【0027】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、ワーク加工用シートにおける粘着剤層の23℃でのヤング率をE0とした場合に、当該ヤング率E0に対する上記ヤング率E1の比(E1/E0)が、2.0以上であることが好ましく、特に2.3以上であることが好ましく、さらには2.6以上であることが好ましい。なお、上記ヤング率E0は、加熱や活性エネルギー線照射といった処理を行っていない粘着剤層について測定される、初期のヤング率を意味する。
【0028】
一般的に、粘着剤が加熱されると軟化し、被着体に対する密着性が増大する傾向がある。しかしながら、本実施形態に係るワーク加工用シートにおいて、比(E1/E0)が上記範囲であると、加熱による粘着剤の軟化が生じ難いものとなり、加熱処理に起因する密着性の過度な向上を効果的に抑制することが可能となる。その結果、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後において、加工後のワークを良好に分離し易いものとなる。
【0029】
なお、上記比(E1/E0)の上限値については特に限定されず、例えば3.5以下であってもよい。
【0030】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、上述したヤング率E0が、2.0MPa以上であることが好ましく、特に2.3MPa以上であることが好ましく、さらには2.5MPa以上であることが好ましい。また、ヤング率E0は、15MPa以下であることが好ましく、特に10MPa以下であることが好ましく、さらには5MPa以下であることが好ましい。ヤング率E0が上記範囲であることにより、比(E1/E0)を上述した範囲に調整し易いものとなる。
【0031】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、上述したヤング率E1が、5.0MPa以上であることが好ましく、特に6.0MPa以上であることが好ましく、さらには7.0MPa以上であることが好ましい。また、ヤング率E1は、100MPa以下であることが好ましく、特に50MPa以下であることが好ましく、さらには10MPa以下であることが好ましい。ヤング率E1が上記範囲であることにより、比(E2/E1)および比(E1/E0)をそれぞれ上述した範囲に調整し易いものとなる。
【0032】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、上述したヤング率E2が、100MPa以上であることが好ましく、特に130MPa以上であることが好ましく、さらには140MPa以上であることが好ましい。また、ヤング率E2は、300MPa以下であることが好ましく、特に250MPa以下であることが好ましく、さらには200MPa以下であることが好ましい。ヤング率E2が上記範囲であることにより、比(E2/E1)を上述した範囲に調整し易いものとなる。
【0033】
なお、上述したヤング率E0、E1およびE2のそれぞれの測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0034】
2.ワーク加工用シートの構成部材
(1)基材
本実施形態に係るワーク加工用シートにおいて、基材は、ワーク加工用シートの使用工程における所望の機能を発揮し、好ましくは、粘着剤層の硬化のために照射される活性エネルギー線に対して良好な透過性を発揮するとともに、所定の耐熱性を有するものである限り、特に限定されない。
【0035】
例えば、基材は、樹脂系の材料を主材とする樹脂フィルムであることが好ましく、その具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン-ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルム;ポリフェニレンサルファイドフィルムなどが挙げられる。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。また、基材は、上述したフィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。基材としては、上記フィルムの中でも、活性エネルギー線の透過性および耐熱性に優れるという観点から、アニール処理済みのポリエステル系フィルム、耐熱性を有するポリエステル系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、シクロオレフィン樹脂フィルムを使用することが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0036】
基材は、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材が所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
【0037】
基材の粘着剤層が積層される面には、粘着剤層との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0038】
基材の厚さは、ワーク加工用シートが使用される方法に応じて適宜設定できるものの、通常、20μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、通常、450μm以下であることが好ましく、特に300μm以下であることが好ましい。
【0039】
(2)粘着剤層
本実施形態に係るワーク加工用シートにおいて、粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されるものである。粘着剤層が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されていることで、活性エネルギー線の照射により粘着剤層を硬化させて、ワーク加工用シートの被着体に対する粘着力を低下させることができる。これにより、加工後のワークをワーク加工用シートから容易に分離することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態における粘着剤層は、前述した粘着力を達成できるものであることが好ましい。この観点から、本実施形態における粘着剤層は、当該粘着剤層を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤のガラス転移温度が、-50℃以上、10℃以下であるとともに、活性エネルギー線硬化性粘着剤が、極性基を有するモノマーを構成モノマーとして含むアクリル系共重合体を含むものであることが好ましい。このような活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層を備えることにより、ワーク加工用シートが前述した粘着力を達成し易いものとなる。
【0041】
ワーク加工用シートが前述した粘着力をより達成し易いとう観点から、上記ガラス転移温度は、特に-20℃以上であることが好ましく、さらには-15℃以上であることが好ましい。また、同様の観点から、上記ガラス転移温度は、特に5.0℃以下であることが好ましく、さらには3.0℃以下であることが好ましい。なお、上記ガラス転移温度の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0042】
粘着剤層を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性ポリマー(活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
【0043】
最初に、活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
【0044】
活性エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「活性エネルギー線硬化性重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。この活性エネルギー線硬化性重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0045】
上述した官能基含有モノマーとしては、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、ベンジル基、グリシジル基等の官能基とを分子内に有するモノマーが好ましく、これらの中でも、官能基としてヒドロキシ基を含有するモノマー(ヒドロキシ基含有モノマー)を使用することが好ましい。
【0046】
上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用することが好ましい。なお、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
上記アミノ基含有モノマーまたはアミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、35質量%以下で含有することが好ましく、特に30質量%以下で含有することが好まししい。アクリル系共重合体(a1)が官能基含有モノマーを上記範囲で含有することにより、所望の活性エネルギー線硬化性重合体(A)を形成し易いものとなる。
【0050】
アクリル系共重合体(a1)は、前述した通り、重合体を構成するモノマー単位として、極性基を有するモノマー(極性基含有モノマー)を含むことが好ましい。これにより、得られる活性エネルギー線硬化性粘着剤の極性が向上し、前述した粘着力を達成し易いものとなる。
【0051】
極性基含有モノマーの例としては、アクリロイルモルフォリン、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられ、これらの中でも、特にアクリロイルモルフォリンまたはアクリル酸イソボルニルを使用することが好ましい。
【0052】
アクリル系共重合体(a1)は、上記極性基含有モノマーから導かれる構成単位を、3.0質量%以上含有することが好ましく、特に5.0質量%以上含有することが好ましく、さらには8.0質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、上記極性基含有モノマーから導かれる構成単位を、12.0質量%以下で含有することが好ましい。アクリル系共重合体(a1)が上記極性基含有モノマーを上記範囲で含有することにより、得られる活性エネルギー線硬化性粘着剤の極性を効果的に向上させることができ、それにより前述した粘着力を達成し易いものとなる。
【0053】
また、アクリル系共重合体(a1)は、重合体を構成するモノマー単位として、活性エネルギー線硬化性粘着剤のガラス転移温度(Tg)を調整するためのモノマー(Tg調整モノマー)を含有することも好ましい。これにより、得られる活性エネルギー線硬化性粘着剤が、前述したガラス転移温度(Tg)を有し易いものとなる。Tg調整モノマーを兼ねる好ましいモノマーの例としては、極性基含有モノマーの例として前述したものが挙げられ、それらの中でも、特にアクリロイルモルフォリンまたはアクリル酸イソボルニルを使用することが好ましい。
【0054】
上述したTg調整モノマーのガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましく、特に50℃以上であることが好ましく、さらには90℃以上であることが好ましい。また、Tg調整モノマーのガラス転移温度は、200℃以下であることが好ましく、特に180℃以下であることが好ましく、さらには150℃以下であることが好ましい。これらの範囲のガラス転移温度を有するTg調整モノマーを使用することにより、活性エネルギー線硬化性粘着剤のガラス転移温度を前述した範囲に調整し易いものとなる。なお、本明細書における、モノマーについてのガラス転移温度は、当該モノマーのみから構成されるホモポリマーについて測定されるガラス転移温度をいうものとする。
【0055】
また、上述したTg調整モノマーの溶解パラメータ(SP値)は、9.8以上であることが好ましく、特に9.9以上であることが好ましく、さらには10.0以上であることが好ましい。Tg調整モノマーのSP値が9.8以上であることで、ワーク加工用シートの粘着力を前述した範囲に調整し易いものとなり、特に、初期の粘着力F0を前述した範囲に調整し易いものとなる。これにより、加工時においてワークをワーク加工用シート上に保持し易いものとなる。なお、溶解パラメータ(SP値)の上限値については特に限定されず、例えば、11以下であってもよい。
【0056】
アクリル系共重合体(a1)は、上記Tg調整モノマーから導かれる構成単位を、3.0質量%以上含有することが好ましく、特に5.0質量%以上含有することが好ましく、さらには8.0質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、上記Tg調整モノマーから導かれる構成単位を、12.0質量%以下で含有することが好ましい。アクリル系共重合体(a1)がTg調整モノマーを上記範囲で含有することにより、得られる活性エネルギー線硬化性粘着剤のガラス転移温度を前述した範囲に調整し易いものとなる。
【0057】
アクリル系共重合体(a1)は、重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを使用することも好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、特にアルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましい。また、耐熱性に優れた粘着剤を得やすいという観点からは、アルキル基の炭素数が8以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの好ましい例としては、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
アクリル系共重合体(a1)は、上述した、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーから導かれる構成単位を、50質量%以上含有することが好ましく、特に60質量%以上含有することが好ましく、さらには70質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、上述した、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーから導かれる構成単位を、99質量%以下で含有することが好ましく、特に95質量%以下で含有することが好ましく、さらには90質量%以下で含有することが好ましい。
【0059】
アクリル系共重合体(a1)は、好ましくは、以上説明したモノマーまたはその誘導体を常法で共重合することで得ることができるが、これらモノマーの他にも、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)、ジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0060】
上記脂環式構造含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0062】
不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基またはアミド基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がグリシジル基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0063】
また上記不飽和基含有化合物(a2)には、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~4個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-(1-アジリジニル)エチル、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0064】
上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーのモル数に対して、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上の割合で用いられる。また、上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーのモル数に対して、好ましくは95モル%以下、特に好ましくは93モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下の割合で用いられる。
【0065】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0066】
このようにして得られる活性エネルギー線硬化性重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であるのが好ましく、特に15万以上であるのが好ましく、さらには20万以上であるのが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、150万以下であるのが好ましく、特に100万以下であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0067】
活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化性重合体(A)といった活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0068】
活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0069】
かかる活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
活性エネルギー線硬化性重合体(A)に対し、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、活性エネルギー線硬化性粘着剤中における活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0質量部超であることが好ましく、特に60質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、250質量部以下であることが好ましく、特に200質量部以下であることが好ましい。
【0071】
ここで、活性エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0072】
本実施形態における光重合開始剤(C)は、5%重量減少温度が200℃以上であることが好ましく、特に210℃以上であることが好ましく、さらには220℃以上であることが好ましい。200℃以上の5%重量減少温度を示す光重合開始剤(C)を使用することで、ワーク加工用シートの粘着力を前述した範囲に調整し易いものとなり、特に、加熱および活性エネルギー照射を経た後における粘着力F2を前述した範囲に調整し易いものとなる。これにより、加熱処理を行った場合であっても、加工後のワークをワーク加工用シートから容易に分離し易いものとなる。なお、5%重量減少温度の上限値については、特に限定されず、例えば、300℃以下であってもよく、特に280℃以下であってもよく、さらには250℃以下であってもよい。なお、上記5%重量減少温度の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の通りである。
【0073】
光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンを使用することが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
光重合開始剤(C)は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)(活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、活性エネルギー線硬化性重合体(A)および活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.1質量部以上、特に0.5質量部以上の量で用いられることが好ましい。また、光重合開始剤(C)は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)(活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、活性エネルギー線硬化性重合体(A)および活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して10質量部以下、特に6質量部以下の量で用いられることが好ましい。
【0075】
活性エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0076】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000~250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。当該成分(D)を活性エネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。当該成分(D)の配合量は特に限定されず、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して0質量部超、50質量部以下の範囲で適宜決定される。
【0077】
架橋剤(E)としては、活性エネルギー線硬化性重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0078】
架橋剤(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましい。また、架橋剤(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に17質量部以下であることが好ましい。
【0079】
次に、活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0080】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。
【0081】
少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択できる。活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー1質量部以上であるのが好ましく、特に60質量部以上であるのが好ましい。また、当該配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー200質量部以下であるのが好ましく、特に160質量部以下であるのが好ましい。
【0082】
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜配合することができる。
【0083】
粘着剤層の厚さは、1μm以上であることが好ましく、さらには5μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、50μm以下であることが好ましく、さらには40μm以下であることが好ましい。粘着剤層の厚さが上記範囲であることで、前述した粘着力を達成し易くなる。
【0084】
(3)剥離シート
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における基材とは反対側の面(以下、「粘着面」という場合がある。)をワークに貼付するまでの間、当該面を保護する目的で、当該面に剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、250μm以下である。
【0085】
(4)その他の部材
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における粘着面に接着剤層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シートは、上述のように接着剤層を備えることで、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。このようなワーク加工用シートでは、接着剤層における粘着剤層とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたチップを得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該チップが搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
【0086】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における粘着面に保護膜形成層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シートは、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。このようなワーク加工用シートでは、保護膜形成層における粘着剤層とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたチップを得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をチップに形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
【0087】
なお、本実施形態に係るワーク加工用シートは、粘着力に関して前述した条件を満たすことが好ましいものであるが、粘着剤層に対して上述した接着剤層または保護膜形成層が積層される場合には、これらの層が積層される前の粘着剤層について、前述した粘着力を満たすものとなればよい。
【0088】
3.ワーク加工用シートの製造方法
本実施形態に係るワーク加工用シートの製造方法は特に限定されず、好ましくは、本実施形態に係るワーク加工用シートは、基材の片面側に粘着剤層を積層することにより製造される。
【0089】
基材の片面側への粘着剤層の積層は、公知の方法により行うことができる。例えば、剥離シート上において形成した粘着剤層を、基材の片面側に転写することが好ましい。この場合、粘着剤層を構成する粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、剥離シートの剥離処理された面(以下「剥離面」という場合がある。)上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等によりその塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成することができる。塗工液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。この積層体における剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、ワーク加工用シートをワークに貼付するまでの間、粘着剤層の粘着面を保護するために用いてもよい。
【0090】
粘着剤層を形成するための塗工液が架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内の活性エネルギー線硬化性重合体(A)または活性エネルギー線非硬化性ポリマーと架橋剤との架橋反応を進行させ、粘着剤層内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、上記の方法などによって基材に粘着剤層を積層させた後、得られたワーク加工用シートを、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0091】
上述のように剥離シート上で形成した粘着剤層を基材の片面側に転写する代わりに、基材上で直接粘着剤層を形成してもよい。この場合、前述した粘着剤層を形成するための塗工液を基材の片面側に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成する。
【0092】
4.ワーク加工用シートの使用方法
本実施形態に係るワーク加工用シートは、ワークの加工のために使用することができる。すなわち、本実施形態に係るワーク加工用シートの粘着面をワークに貼付した後、ワーク加工用シート上にてワークの加工を行うことができる。当該加工に応じて、本実施形態に係るワーク加工用シートは、バックグラインドシート、ダイシングシート、エキスパンドシート、ピックアップシート等として使用することができる。ここで、ワークの例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材、ガラス板等のガラス部材が挙げられる。
【0093】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートが、前述した接着剤層を備える場合には、当該ワーク加工用シートは、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。さらに、本実施形態に係るワーク加工用シートが、前述した保護膜形成層を備える場合には、当該ワーク加工用シートは、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。
【0094】
本実施形態に係るワーク加工用シート上にてワークの加工が完了し、加工後のワークをワーク加工用シートから分離する場合には、当該分離の前にワーク加工用シートにおける粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、粘着剤層が硬化して、加工後のワークに対するワーク加工用シートの粘着力を良好に低下し、加工後のワークの分離が容易となる。
【0095】
上述した活性エネルギー線としては、例えば、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを使用でき、具体的には、紫外線や電子線などを使用することができる。特に、取扱いが容易な紫外線が好ましい。紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、LED等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50mW/cm以上、1000mW/cm以下であることが好ましい。また、光量は、50mJ/cm以上であることが好ましく、特に80mJ/cm以上であることが好ましく、さらには200mJ/cm以上であることが好ましい。また、光量は、10000mJ/cm以下であることが好ましく、特に5000mJ/cm以下であることが好ましく、さらには2000mJ/cm以下であることが好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10krad以上、1000krad以下が好ましい。
【0096】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着力F0が前述した範囲となることにより、ワークの加工の際に、当該ワークに対して十分な粘着力を発揮し、ワークや加工後のワークの移動・脱落といった不具合を良好に抑制することができる。さらに、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されているとともに、粘着力の比F2/F0が前述した範囲となることにより、加工後のワークが貼付された状態でワーク加工用シートが加熱された場合であっても、その後に活性エネルギー線を照射することにより、加工後のワークに対する粘着力を十分に低下させることができ、それにより加工後のワークを良好にピックアップすることができる。そのため、本実施形態に係るワーク加工用シートは、ワーク加工用シート上にワークまたは加工後のワークが貼付された状態で、ワーク加工用シートが高温環境に曝されるような用途に対し好適に使用することができる。特に、本実施形態に係るワーク加工用シートは、ワーク加工用シート上にてシリコンウエハ等のダイシングが行われ、得られたチップに対して、ワーク加工用シート上にて加熱処理が行われるような用途に使用することが好適である。
【0097】
本実施形態に係るワーク加工用シートをダイシングシートとして使用するとともに、ダイシング後、チップをワーク加工用シート上に貼付したたま加熱処理を行う用途に使用する場合、その加熱条件としては、例えば、加熱温度を、40℃以上とすることが好ましく、特に80℃以上とすることが好ましく、さらには100℃以上とすることが好ましい。また、当該加熱温度を、150℃以下とすることが好ましく、特に130℃以下とすることが好ましく、さらには120℃以下とすることが好ましい。さらに、加熱時間を、例えば、3分以上とすることが好ましく、特に10分以上とすることが好ましく、さらには30分以上とすることが好ましい。また、当該加熱時間を、60分以下とすることが好ましく、特に50分以下とすることが好ましく、さらには40分以下とすることが好ましい。本実施形態に係るワーク加工用シートは、上述のような条件で加熱された場合であっても、チップを良好に分離することができる。
【0098】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0099】
例えば、基材と粘着剤層との間、または基材における粘着剤層とは反対側の面には、その他の層が設けられてもよい。
【実施例
【0100】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0101】
〔実施例1〕
(1)粘着剤組成物の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル70質量部と、アクリロイルモルフォリン10質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを共重合させて得られたアクリル系共重合体と、当該アクリル系共重合体のアクリル酸2-ヒドロキシエチルのモル数に対して90モル%のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて、活性エネルギー線硬化性重合体を得た。この活性エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法で測定したところ、83万であった。
【0102】
得られた活性エネルギー線硬化性重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、架橋剤としてのヘキサメチレンジイソシアネートを有する脂肪族系イソシアネート(日本ポリウレタン工業社製,製品名「コロネートHX」)1.2質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「オムニラッド127」,5%重量減少温度:220℃)1.2質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。なお、光重合開始剤の5%重量減少温度は、示差熱・熱重量同時測定装置(SHIMADZU社製,製品名「DTG-60」)を用いて、室温から300℃まで昇温速度5℃/分で加熱することにより測定したものである。
【0103】
(2)粘着剤層の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面に対して、上記粘着剤組成物を塗布し、加熱により乾燥させた後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、剥離シート上に厚さ5μmの粘着剤層を形成した。
【0104】
(3)ワーク加工用シートの作製
上記工程(2)で形成した粘着剤層の剥離シートとは反対側の面と、基材としての厚さ75μmの耐熱性を有するポリエステル系フィルム(クラボウ社製,製品名「トルセナ」)の片面とを貼り合わせることで、ワーク加工用シートを得た。
【0105】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0106】
〔実施例2~8および比較例1~4〕
アクリル系共重合体の組成および重量平均分子量を表1に示すように変更するとともに、粘着剤組成物の組成を表2に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを製造した。
【0107】
〔試験例1〕(粘着剤のガラス転移温度の測定)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートの粘着剤層を複数積層することにより、厚さ800μmの粘着剤層の積層体を作製した。続いて、この粘着剤層の積層体を直径10mmの円形に打ち抜くことで、測定用試料を得た。当該測定用試料について、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製,製品名「ARES」)を用いて、周波数1Hz、測定温度範囲-50~150℃、昇温速度3℃/minの条件でtanδを測定し、そのピークトップの温度をTgとした。結果を表3に示す。
【0108】
〔試験例2〕(粘着力の測定)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートを、25mm幅の短冊状に裁断した。得られた短冊状のワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の粘着面を、鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、2kgゴムローラーを用いて貼合し、20分静置し、測定用サンプルとした。
【0109】
得られた測定用サンプルについて、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンUTM-4-100」)を用い、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワーク加工用シートを剥離し、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を粘着力F0として、表3に示す。
【0110】
また、上記と同様に得られた測定用サンプルを、オーブンを用いて150℃で1時間加熱した。当該加熱後の測定用サンプルについて、上記と同様にシリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を粘着力F1として、表3に示す。
【0111】
また、上記と同様に得られた測定用サンプルを、オーブンを用いて150℃で1時間加熱した。さらに、粘着剤層に対し、基材を介して、以下の条件で紫外線照射を行った。この測定用サンプルについて、上記と同様にシリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を粘着力F2として、表3に示す。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度230mW/cm,光量190mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0112】
さらに、上記の通り得られた3種の粘着力から、粘着力F0に対する粘着力F2の比(F2/F0)、および粘着力F1に対する粘着力F0の比(F0/F1)をそれぞれ算出した。これらの結果を表3に示す。
【0113】
〔試験例3〕(粘着剤のヤング率の測定)
実施例1の上記工程(2)と同様に作製される粘着剤層と剥離シートとの積層体を、実施例および比較例のそれぞれについて複数用意した。そして、当該積層体における粘着剤層を所定数積層することで、厚さ200μmの粘着剤層からなる測定用粘着剤層サンプルを作製した。
【0114】
得られた測定用粘着剤層サンプルを、万能引張試験機(島津製作所社製,製品名「オートグラフ AG-IS」)を用いて、23℃環境下、チャック間距離30mm、速度200mm/分で引っ張り、得られた応力-ひずみ曲線によりヤング率(MPa)を求めた。これにより得られた結果をヤング率E0として、表3に示す。
【0115】
また、上記と同様に得られた測定用粘着剤層サンプルを、オーブンを用いて150℃で1時間加熱した。当該加熱後の測定用粘着剤層サンプルについて、上記と同様にヤング率(MPa)を求めた。これにより得られた結果をヤング率E1として、表3に示す。
【0116】
また、上記と同様に得られた測定用粘着剤層サンプルを、オーブンを用いて150℃で1時間加熱した。さらに、当該加熱後の測定用粘着剤層サンプルに対し、以下の条件で紫外線照射を行った。この測定用粘着剤層サンプルについて、上記と同様にヤング率(MPa)を求めた。これにより得られた結果をヤング率E2として、表3に示す。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度230mW/cm,光量580mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0117】
さらに、上記の通り得られた3種のヤング率から、ヤング率E0に対するヤング率E1の比(E1/E0)、およびヤング率E1に対するヤング率E2の比(E2/E1)をそれぞれ算出した。これらの結果を表3に示す。
【0118】
〔試験例4〕(初期粘着性の評価)
実施例および比較例で製造したワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の露出面に、テープマウンター(リンテック社製,製品名「Adwill RAD2500m/12」)を用いて、#2000研磨した6インチシリコンウエハ(厚さ:350μm)の研磨面を貼付した。続いて、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD-6362」)を用いて、以下のダイシング条件で切断部に流水を供給しながら6インチシリコンウエハ側から切断するダイシングを行った。
【0119】
<ダイシング条件>
・ダイシング装置:ディスコ社製 DFD-6362
・ブレード :ディスコ社製 NBC-2H 2050 27HECC
・ブレード幅 :0.025~0.030mm
・刃先出し量 :0.640~0.760mm
・ブレード回転数:50000rpm
・切削速度 :20mm/sec
・切り込み深さ :ワーク加工用シートにおける粘着剤層側の面から基材に対して20μm
・流水供給量 :1.0L/min
・流水温度 :室温
・カットサイズ :2mm×2mm
【0120】
その後、ダイシング工程により得られたチップが付着しているワーク加工用シートを目視で観察して、ダイシング工程中にワーク加工用シートから脱落したチップの個数を数え、その個数をダイシング工程における分割数で除して、チップ飛散率(単位:%)を求めた。この算出結果に基づいて、以下を基準として、初期粘着性を評価した。評価結果を表3に示す。
○:チップ飛散率が、10%未満である。
×:チップ飛散率が、10%以上である。
【0121】
〔試験例5〕(ピックアップ適性の評価)
実施例および比較例で製造したワーク加工用シートを用いて、カットサイズを10mm×10mmに変更した以外、試験例4と同様にしてダイシングを行った。
【0122】
ダイシングの完了後、チップが載置された状態のワーク加工用シートをオーブンに入れ、150℃で1時間加熱した。続いて、ワーク加工用シートにおける粘着剤層に対し、基材を介して、以下の条件で紫外線照射を行った。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度230mW/cm,光量190mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0123】
紫外線照射後のワーク加工用シートから、100個のチップをピックアップし、以下の基準に基づいて、ピックアップ適性を評価した。結果を表3に示す。
◎:100個のうち、良好にピックアップできたチップの個数が、95個以上であった。
〇:100個のうち、良好にピックアップできたチップの個数が、95個未満、80個以上であった。
×:100個のうち、良好にピックアップできたチップの個数が、80個未満であった。
【0124】
なお、表1および表2に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
〔活性エネルギー線硬化性重合体の組成〕
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:アクリル酸ブチル
ACMO:アクリロイルモルフォリン(SP値:10.1,ガラス転移温度:145℃)
MMA:メタクリル酸メチル(SP値:9.5,ガラス転移温度:105℃)
IBXA:アクリル酸イソボルニル(SP値:10.2,ガラス転移温度:94℃)
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
MOI:メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
〔光重合開始剤〕
オムニラッド127:2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「オムニラッド127」,5%重量減少温度:220℃)
オムニラッドTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製,製品名「オムニラッドTPO」,5%重量減少温度:225℃)
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
表3から分かるように、実施例で得られたワーク加工用シートは、初期粘着性に優れ、ワークの加工の際にはワークをシート上に良好に保持することができるものであった。また、実施例で得られたワーク加工用シートは、ピックアップ適性に優れるものであり、すなわち、ピックアップの際には、加工後のワークに対する粘着力が良好に低下していることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のワーク加工用シートは、ダイシングに好適に使用することができる。