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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20231110BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20231110BHJP
   B65D 1/32 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B65D83/00 G
B65D1/02 111
B65D1/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017188847
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019064604
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-04-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】木虎 修一
(72)【発明者】
【氏名】本田 孝行
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】西本 浩司
【審判官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132530(JP,A)
【文献】特開2014-177295(JP,A)
【文献】特開平8-198233(JP,A)
【文献】特開2006-151452(JP,A)
【文献】特開2008-114856(JP,A)
【文献】特開2015-105131(JP,A)
【文献】特開2015-143133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00 - 1/48
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容される内容物の減少に伴い減容変形する内容器、および前記内容器が内装される外容器を備えるとともに、口部、肩部、胴部、および底部が、容器軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設された容器本体と、
前記外容器の口部に装着され、かつ内容物の吐出孔が形成されたキャップ本体、および前記吐出孔と前記内容器内との連通、遮断を切り替える吐出弁を有する吐出キャップと、を備え、
前記外容器の口部に、前記外容器と前記内容器との間に外気を導入する吸気孔が形成され、
前記キャップ本体に、外部と前記吸気孔とを連通する外気導入孔が形成され、
前記キャップ本体は、前記外容器の口部において前記吸気孔の下方に位置する被シール部に、気密に当接するシール部を備える吐出容器であって
前記被シール部は、前記外容器の口部における下端部に形成され、
前記容器本体の肩部の上端部は、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる段部を介して前記被シール部に接続され、
前記容器本体の肩部のうち、少なくとも上端部の肉厚が、1.4mmより厚く、
前記外容器はスクイズ変形可能に形成され、この外容器のスクイズ変形に伴って前記内容器が減容変形し、前記内容器内の内容物が前記吐出孔から吐出され
前記容器本体の高さは、80mm以上240mm以下とされ、
前記内容器の満注内容量は、100ml以上800ml以下とされていることを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
前記容器本体の肩部のうち、少なくとも上端部の肉厚が1.4mmより厚く1.8mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の吐出容器。
【請求項3】
前記被シール部の外径は、前記外容器の口部のなかで最大とされ、かつ前記容器本体の肩部の上端縁の外径より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、収容される内容物の減少に伴い減容変形する内容器、および内容器が内装される外容器を備えるとともに、口部、肩部、胴部、および底部が、容器軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設された容器本体と、外容器の口部に装着され、かつ内容物の吐出孔が形成されたキャップ本体、および吐出孔と内容器内との連通、遮断を切り替える吐出弁を有する吐出キャップと、を備える吐出容器が知られている。
この種の吐出容器として、例えば下記特許文献1に示されるような、外容器の口部に、外容器と内容器との間に外気を導入する吸気孔が形成され、キャップ本体に、外部と吸気孔とを連通する外気導入孔が形成され、キャップ本体は、外容器の口部において吸気孔の下方に位置する被シール部に、全周にわたって気密に当接するシール部を備える構成が知られている。この吐出容器では、吐出孔から内容物を吐出するに際し、容器本体に径方向の内側に向けた押圧力を加え、外容器をスクイズ変形したときに、外容器と内容器との間の空気の加圧に伴い内容器が減容変形し、内容器内の内容物が吐出孔から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-141430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の吐出容器では、前述のように外容器をスクイズ変形したときに、この変形が肩部から被シール部に伝播し、被シール部とキャップ本体のシール部との間のシール性を維持できなくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、吐出孔から内容物を吐出するに際し、外容器をスクイズ変形したときに、この変形が肩部から被シール部に伝播するのを抑制することができる吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の吐出容器は、収容される内容物の減少に伴い減容変形する内容器、および前記内容器が内装される外容器を備えるとともに、口部、肩部、胴部、および底部が、容器軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設された容器本体と、前記外容器の口部に装着され、かつ内容物の吐出孔が形成されたキャップ本体、および前記吐出孔と前記内容器内との連通、遮断を切り替える吐出弁を有する吐出キャップと、を備え、前記外容器の口部に、前記外容器と前記内容器との間に外気を導入する吸気孔が形成され、前記キャップ本体に、外部と前記吸気孔とを連通する外気導入孔が形成され、前記キャップ本体は、前記外容器の口部において前記吸気孔の下方に位置する被シール部に、気密に当接するシール部を備える吐出容器であって前記被シール部は、前記外容器の口部における下端部に形成され、前記容器本体の肩部の上端部は、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる段部を介して前記被シール部に接続され、前記容器本体の肩部のうち、少なくとも上端部の肉厚が、1.4mmより厚く、前記外容器はスクイズ変形可能に形成され、この外容器のスクイズ変形に伴って前記内容器が減容変形し、前記内容器内の内容物が前記吐出孔から吐出され、前記容器本体の高さは、80mm以上240mm以下とされ、前記内容器の満注内容量は、100ml以上800ml以下とされていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、容器本体の肩部における少なくとも一部の肉厚が1.4mmより厚くなっていて、この肩部の径方向の剛性が高められるとともに、変形しにくくなっているので、吐出孔から内容物を吐出するに際し、容器本体に径方向の内側に向けた押圧力を加え、外容器をスクイズ変形したときに、この変形が肩部から被シール部に伝播するのを抑制することが可能になり、被シール部とキャップ本体のシール部との間のシール性を確保することができる。
したがって、前述のように外容器をスクイズ変形したときに、外容器と内容器との間の空気が、被シール部とキャップ本体のシール部との間を通して外部に漏出するのを抑制することが可能になり、吐出孔から内容物を円滑に吐出することができる。
特に、高粘度の内容物を吐出孔から吐出する際に、容器本体に高い押圧力を加えたとしても、被シール部とシール部との間のシール性を確保することができる。
容器本体の肩部のうち、少なくとも被シール部に接続する上端部の肉厚が、1.4mmより厚くなっているので、前述のように外容器をスクイズ変形したときに、この変形が被シール部に伝播するのを確実に抑制することができる。
また、容器本体の肩部のうち少なくとも上端部の肉厚が、1.4mmより厚くなっていることから、例えば、内容物の残量が少なくなったときに、口部に近い肩部をスクイズ変形しても、この変形が被シール部に伝播するのを抑制することができる。
【0008】
ここで、前記容器本体の肩部における少なくとも一部の肉厚が1.4mmより厚く1.8mm以下となってもよい。
この場合、容器本体の肩部における少なくとも一部の肉厚が1.4mmより厚く1.8mm以下となっているので、成形性、吸気孔のパンチ加工性、および外容器をスクイズ変形して内容物を吐出する際に要する押圧力を現行同等に維持しつつ、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0010】
また、前記被シール部の外径は、前記外容器の口部のなかで最大とされ、かつ前記容器本体の肩部の上端縁の外径より小さくてもよい。
【0011】
この場合、被シール部に対して容器軸方向の両側に連なる各部分に段部が配設されることとなり、被シール部の径方向の剛性を確保することが可能になり、外容器をスクイズ変形したときに、被シール部が変形するのを確実に抑制することができる。
【0012】
また、前記容器本体の高さは、80mm以上240mm以下とされ、前記内容器の満注内容量は、100ml以上800ml以下となってもよい。
【0013】
この場合、前述の作用効果が確実に奏功される。
容器本体の高さが240mmを超え、かつ内容器の満注内容量が800mlを超えると、容器本体が大きくなりすぎ、外容器をスクイズ変形しても、この変形が肩部から被シール部に伝播しにくく、前述の課題が生じ得ず、また、容器本体の高さが80mm未満、かつ内容器の満注内容量が100ml未満になると、容器本体が小さくなりすぎ、外容器においてスクイズ変形時に押圧される部分と被シール部との距離が近くなり、外容器をスクイズ変形したときに、被シール部が変形しやすくなり、被シール部とシール部との間のシール性を確保することが困難になる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、吐出孔から内容物を吐出するに際し、外容器をスクイズ変形したときに、この変形が肩部から被シール部に伝播するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る一実施形態として示した吐出容器の側面図である。
図2図1に示す吐出容器の要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る吐出容器1は、図1に示されるように、口部4a、肩部4b、胴部4c、および底部4dが、容器軸O方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設された容器本体4と、容器本体4の口部4aに装着された吐出キャップ5と、を備える。
以下、容器軸O方向から見て、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
容器本体4は、図2に示されるように、収容される内容物の減少に伴い減容変形(しぼみ変形)する可撓性に富む内容器2、および、内容器2が内装される外容器3を備える。容器本体4は、ブロー成形により形成され、外容器3の内面に内容器2が剥離可能に積層された積層剥離型容器(デラミボトル)とされている。内容器2は、外容器3の内面における全域にわたって積層されている。
【0018】
ブロー成形としては、例えば押出成形等によって二重(内外)に組み合わされた積層パリソンを形成し、この積層パリソンをブロー成形することで容器本体4を形成してもよい(押出ブロー成形)。また、射出成形等によって外容器用のプリフォーム、および内容器用のプリフォームを形成し、これらを二重(内外)に組み合わせた後、二軸延伸ブロー成形することで容器本体4を形成してもよい。
なお、外容器用のプリフォームを先に二軸延伸ブロー成形して外容器3を形成した後、内容器用のプリフォームを外容器3の内部に配置し、その後、内容器用のプリフォームを二軸延伸ブロー成形することで容器本体4を形成してもよい。
【0019】
内容器2および外容器3の材質は樹脂材料とされ、剥離可能な組み合わせであれば互いに同材質でもよいし異材質でもよい。樹脂材料の一例としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン(ポリアミド)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等が挙げられる。これらの樹脂材料の中から、外容器3と内容器2とは剥離可能(相溶性がない)となる組み合わせで形成される。
外容器3は、縦弾性係数が100MPa以上300MPa以下の材質で形成されている。図示の例では、外容器3は、低密度PEで形成され、内容器2は、EVOHで形成される。
【0020】
容器本体4は、容器軸O方向の全域にわたって横断面視円形状に形成されている。肩部4bは、上側から下側に向かうに従い漸次、拡径している。胴部4cの直径は、容器軸O方向の全域にわたって同等になっている。外容器3はスクイズ変形可能に形成され、この外容器3のスクイズ変形に伴って内容器2は減容変形する。
【0021】
内容器2の満注内容量は、例えば100ml以上800ml以下、好ましくは150ml以上400ml以下、さらに好ましくは180ml以上250ml以下となっている。内容器2の満注内容量を180ml以上250ml以下とすると、外容器3においてスクイズ変形時に押圧される部分と後述する被シール部7との距離を確保することが可能になり、前記距離が近くなり過ぎて、外容器3のスクイズ変形時に被シール部7が変形するのを確実に抑えることができる。
容器本体4の肩部4bの上端縁の外径Aは、例えば25mm以上30mm以下となっている。容器本体4の胴部4cの外径Bは、例えば58mm以上64mm以下となっている。容器本体4の高さCは、例えば80mm以上240mm以下となっている。
図示の例では、容器本体4は、内容量が182ml用とされ、容器本体4の肩部4bの上端縁の外径Aは約33.6mmとされ、容器本体4の胴部4cの外径Bは約63.6mmとされ、容器本体4の高さCは約110mmとなっている。
【0022】
ここで、容器本体4の口部4aは、内容器2の口部2aと外容器3の口部3aとが積層された構成とされている。
内容器2の口部2aの上端部に、径方向の外側に向けて折り曲げられたフランジ状の折り曲げ部が形成され、この折り曲げ部は、外容器3の口部3aの上端開口縁に配置されている。外容器3の口部3aに、外容器3と内容器2との間に外気を導入する吸気孔6が形成されている。
【0023】
外容器3の口部3aにおいて、吸気孔6の下方に位置する部分に、全周にわたって連続して延びる被シール部7が形成されている。被シール部7の外径は、外容器3の口部3aのなかで最大となっている。被シール部7は、外容器3の口部3aの下端部に形成されている。被シール部7の外径は、容器本体4の肩部4bの上端縁の外径Aより小さい。被シール部7に対して容器軸O方向の両側に連なる各部分に段部7aが配設されている。
【0024】
容器本体4の底部4dは、外周縁部に位置する環状の接地部61と、接地部61の内周縁部に連設されるとともに容器内側に底上げされた陥没凹部62と、を備える。陥没凹部62内には、外容器3の一部が内容器2の一部を挟み込んだ状態で一体的に保持された保持リブ63が形成されている。
保持リブ63は、径方向に沿って延びている。保持リブ63は、陥没凹部62から下方に向けて突出し、そのリブ高さは陥没凹部62内に収まる程度とされている。これにより、接地部61を介して容器本体4を載置する際、保持リブ63が邪魔にならず、容器本体4を安定して自立させることが可能である。
【0025】
保持リブ63は、例えば容器本体4を押出ブロー成形する際に、金型のピンチオフ部で保持リブ63となる部分を挟み込んで形成することができる。この場合には、保持リブ63は金型のパーティングライン上に形成される。あるいは、容器本体4をブロー成形で成形した後、内容器2の底部の一部を外容器3の底部の一部で挟み込んだ状態で、径方向の両側から外力を加えることで接着して、保持リブ63を形成してもよい。
なお、保持リブ63には、その板厚方向に開口する横穴状の凹部63aが、径方向のうち、保持リブ63の延在方向に沿って複数形成されている。延在方向で互いに隣り合う凹部63a同士の開口方向は、逆向きとなっている。
【0026】
吐出キャップ5は、中栓部10、キャップ本体20、蓋部30、吐出弁40、および空気弁50を備える。
【0027】
中栓部10は、容器本体4の口部4aの上端開口部上に配置されたベース部11と、ベース部11を容器軸O方向に貫通する収容筒部12と、収容筒部12内に収容された弁体部13と、を備える。図示の例では、ベース部11および収容筒部12は一体に形成されているが、別体に形成してもよい。
【0028】
ベース部11は、容器本体4の口部4aの上端開口縁に配置された外ベース部11aと、外ベース部11aよりも径方向の内側に位置する内ベース部11bと、容器軸O方向に延び、外ベース部11aにおける径方向の内端部と内ベース部11bにおける径方向の外端部とを連結する連結筒部11cと、を備える。なお、内ベース部11bは外ベース部11aよりも上方に位置している。
【0029】
外ベース部11aには、上方に向けて突出し、連結筒部11cを径方向の外側から囲む立ち上がり筒部14が形成されている。内ベース部11bには、内容物を流通させる流通孔15が容器軸Oに対して径方向にずれた位置に形成されているとともに、上記収容筒部12が形成されている。
【0030】
収容筒部12は、内ベース部11bのうち流通孔15に隣接した部分から下方に突出している。図示の例では、収容筒部12は、容器軸Oに対して径方向にずれているとともに、その一部は連結筒部11cと一体化している。
収容筒部12の内部は、残留した内容物を収容する収容空間とされ、容器軸O方向に開口している。収容筒部12の下側部分には、下端部に向かうに従い漸次、縮径する弁座部12aが形成されている。収容筒部12の上側部分における内面には、弁体部13の上方への抜けを規制する規制突起16が形成されている。
【0031】
弁体部13は、収容筒部12内に容器軸O方向に移動可能に収容され、弁座部12aの内周面上に上方に向けて離反可能に着座している。図示の例では、弁体部13は、球状に形成されたいわゆるボール弁とされている。
弁体部13は、内容物を吐出するにあたって容器本体4を例えば傾倒または上下反転させたときに規制突起16側に移動し、容器本体4を元の正立姿勢に戻したときに弁座部12a側に移動する。これにより、内容物の吐出後、容器本体4を元の正立姿勢に戻したときに、ベース部11の上側に存在する残留内容物を収容筒部12の内部に引き込むことができ、いわゆるサックバック効果により液だれを回避することが可能とされている。
【0032】
キャップ本体20は、外容器3の口部3aに螺着された外筒部21と、外筒部21の上端部に連設され、容器本体4の口部4aの上方を覆う天壁部22と、を備えた有頂筒状に形成されている。
外筒部21の下端部は、外容器3の口部3aの被シール部7に、全周にわたって気密に当接したシール部21aとなっている。シール部21aは、被シール部7に全周にわたって気密に外嵌している。
【0033】
天壁部22は、外筒部21に接続された外側部分22aと、外側部分22aより径方向の内側に位置する中央部分22bと、を備える。中央部分22bは、外側部分22aより上方に位置している。外側部分22aと中央部分22bとの接続部分に、径方向の外側、および下方の双方向に向けて開口する外気導入孔23が形成されている。外気導入孔23は、外部と外容器3の吸気孔6とを連通する。外気導入孔23は、吸気孔6より上方に位置している。
【0034】
中央部分22bに、垂下筒部24および吐出筒部25が形成されている。
垂下筒部24は、中央部分22bのうち外気導入孔23よりも径方向の内側に位置する部分から下方に向けて突出している。
吐出筒部25は、垂下筒部24よりも小径とされ、容器軸Oに対して径方向にずれた位置に配置され、天壁部22を容器軸O方向に貫いている。吐出筒部25は、中栓部10の流通孔15を通して内容器2の内部に連通可能とされ、その内周面は下側から上側に向かうに従い漸次、拡径している。吐出筒部25の上端開口が内容物を吐出する吐出孔26とされている。
【0035】
上述したように構成された中栓部10とキャップ本体20との間に、吐出弁40および空気弁50が配置されている。
なお、例えば外気導入孔23の大きさを小さくする等して、空気弁50を有しなくても、外容器3をスクイズ変形したときに、外容器3と内容器2との間の空気が外気導入孔23から実質的に流出しない吐出キャップ5を採用してもよい。
【0036】
吐出弁40は、吐出孔26と内容器2内との連通、遮断を切替える弁であり、吐出弁40は、内ベース部11bの上面に離反可能に載置された弁本体41と、弁本体41と空気弁50の後述する筒体部51とを一体に繋ぐ複数(3本)の弾性アーム42と、を備えた例えば3点弁とされている。
【0037】
弁本体41は、例えば平面視円形状に形成され、中栓部10の流通孔15を開閉自在に閉塞している。弁本体41は収容筒部12の上端開口を完全には閉塞していない。そのため、収容筒部12の内部は常時上方に向けて開放されている。弾性アーム42は、外容器3のスクイズ変形に伴い内容器2の内圧が上昇した際に、弾性変形し、弁本体41を内ベース部11bの上面から上方に離反させる。これにより、外容器3のスクイズ変形時、流通孔15を開放させて、吐出孔26と内容器2内とを連通させるとともに、内容物を吐出孔26から吐出させることが可能とされている。
なお、吐出弁40としては、外容器3のスクイズ変形時に流通孔15を開放できればよく、上記構成以外の弁構造としてもよい。
【0038】
空気弁50は、下端部が中栓部10の立ち上がり筒部14内に嵌合し、上端部がキャップ本体20の垂下筒部24内に嵌合された筒体部51と、筒体部51の外周面から径方向の外側に向けて突出し、径方向の外端部が自由端とされた環状の弾性変形な弁体52と、を備える。
【0039】
弁体52は、径方向の外端部が全周にわたってキャップ本体20の天壁部22の下面に離反可能に当接しており、外気導入孔23を開放可能に閉塞している。弁体52は、外気導入孔23を通じた外部からの外気の流入を許容し、かつ外気導入孔23を通じた外部への空気の流出を規制する逆止弁として機能する。外気導入孔23を通じて外部から流入した外気は、外容器3の吸気孔6を通じて内容器2と外容器3との間に流入する。
なお、吐出弁40と空気弁50とを一体に形成したが、これらを別部材としてもよい。
【0040】
蓋部30は、周壁部31と頂壁部32とを有する有頂筒状に形成されている。
頂壁部32には、下方に向けて突出し、吐出筒部25内に上方から挿入されたシール筒部33が形成されている。シール筒部33の下端部は、吐出筒部25内に着脱自在に嵌合されている。
周壁部31は、キャップ本体20における外筒部21の上端部に着脱可能に外嵌されている。周壁部31は、ヒンジ部34を介して外筒部21に連結されている。これにより、蓋部30は、ヒンジ部34回りに上下に回動可能とされており、この回動に伴ってシール筒部33を吐出筒部25に対して着脱させて、吐出孔26を開閉する。周壁部31には、容器軸Oを挟んでヒンジ部34とは反対側に位置する部分から径方向の外側に向けて突出する操作突片が形成されている。
【0041】
以上のように構成された吐出容器1の使用方法について説明する。
【0042】
内容物を吐出する場合には、まず吐出キャップ5の蓋部30をヒンジ部34回りに上方に回動させて吐出孔26を開放させた後、例えば容器本体4を傾倒または上下反転させながら容器本体4の外容器3をスクイズ変形(弾性変形)させる。これにより、内容器2が外容器3とともに変形して減容するので、内容器2の内圧が上昇する。
すると、吐出弁40における弁本体41が内ベース部11bの上面から上方に向けて離反するので、流通孔15が開放されて吐出孔26と内容器2の内部とが流通孔15を通じて連通する。これにより、吐出孔26を通じて、内容器2の内部に収容された内容物を外部に吐出することができる。また、このとき収容筒部12内の弁体部13は、規制突起16側に移動する。
【0043】
その後、容器本体4のスクイズ変形を停止または解除することで、内容器2の内圧の上昇が停止または低下すると、吐出弁40の弁本体41が弾性アーム42の復元変形によって元の状態に戻り、内ベース部11bの上面に着座する。これにより、流通孔15を再び閉塞することができ、内容物の吐出を停止することができる。
また、容器本体4のスクイズ変形を解除することで、外容器3が復元変形し始めるので、外容器3と内容器2との間に負圧が生じる。すると、この負圧が吸気孔6を通じて空気弁50に作用するので、弁体52における径方向の外端部が、天壁部22の下面から下方に向けて離間し、外気導入孔23を開放する。これにより、外気導入孔23を通じて外部から外気が流入し、この外気が吸気孔6を通じて内容器2と外容器3との間に流入する。
その結果、外容器3が復元変形したとしても、内容器2を外容器3の内面から離間させて減容変形させたままの状態にしておくことができる。
【0044】
また、容器本体4のスクイズ変形の解除にあわせて容器本体4を正立姿勢に戻すことで、収容筒部12内の弁体部13を自重により弁座部12a側に移動させて、弁座部12aに着座させることができる。なお、弁体部13の自重だけでなく、内容器2の復元変形によって生じる、内容器2と外容器3との間の負圧によっても、弁体部13を弁座部12a側に移動させることが可能である。そして、弁体部13の移動に伴うサックバック効果によって、吐出筒部25と内ベース部11bとの間に内容物が残留したとしても、その残留した内容物を収容筒部12内に引き込むことができる。従って、残留内容物が吐出孔26を通じて外部に漏れ難く、液だれを防止することができる。
なお、内容器2の内圧上昇を利用して、収容筒部12内の弁体部13を規制突起16側に移動させることも可能であるので、内容物の吐出時に必ずしも容器本体4を傾倒または上下反転させる必要はない。
【0045】
そして、本実施形態では、容器本体4の肩部4bにおける少なくとも一部の肉厚が、1.4mmより厚く、好ましくは1.4mmより厚く2.0mm未満、さらに好ましくは1.4mmより厚く1.8mm以下となっている。容器本体4の肩部4bのうち、容器軸O方向の少なくとも一部の肉厚が、全周にわたって1.4mmより厚くなっている。容器本体4の肩部4bのうち、少なくとも被シール部7に接続する上端部の肉厚が、1.4mmより厚く、好ましくは1.4mmより厚く2.0mm未満、さらに好ましくは1.4mmより厚く1.8mm以下となっている。
図示の例では、容器本体4の肩部4bのうち、接地部61から上方に約77mm離れた部分(以下、第1部分Xという)の肉厚が、1.4mmより厚くなっている。容器本体4の肩部4bのうち、接地部61からボトル高さCの60%以上80%以下離れた部分の肉厚が、1.4mmより厚くなっている。
【0046】
ここで、容器本体4の肩部4bは、内容器2の肩部2bと外容器3の肩部3bとが積層された構成とされている。
外容器3の肩部3bにおける少なくとも一部の肉厚が、1.2mm以上1.5mm以下となっている。外容器3の肩部3bのうち、少なくとも被シール部7に接続する上端部の肉厚が、1.2mm以上1.5mm以下となっている。
図示の例では、外容器3の肩部3bのうち、容器本体4の第1部分Xに位置する部分の肉厚が、1.2mm以上1.5mm以下となっている。外容器3の肩部3bのうち、接地部61からボトル高さCの60%以上80%以下離れた部分の肉厚が、1.2mm以上1.5mm以下となっている。内容器2の肩部2bの肉厚は、外容器3の肩部3bの肉厚の10%以上20%以下となっている。
容器本体4、および外容器3それぞれの肩部4b、3bの肉厚は、上方から下方に向かうに従い漸次、薄くなっている。
【0047】
容器本体4の肩部4bの第1部分Xの外周面を、砲弾型(直径20mm、高さ20mm、先端部の曲率半径10mm)の押圧体の先端部により、13mm/minの速度で5mm押し込むのに要する力は、6.0N以上9.0N以下となっている。同様に10mm押し込むのに要する力は、12.0N以上16.0N以下となっている。
【0048】
以上説明したように、本実施形態による吐出容器1によれば、容器本体4の肩部4bにおける少なくとも一部の肉厚が1.4mmより厚くなっていて、この肩部4bの径方向の剛性が高められるとともに、変形しにくくなっているので、吐出孔26から内容物を吐出するに際し、容器本体4に径方向の内側に向けた押圧力を加え、外容器3をスクイズ変形したときに、この変形が外容器3の肩部3bから被シール部7に伝播するのを抑制することが可能になり、被シール部7とキャップ本体20のシール部21aとの間のシール性を確保することができる。
したがって、前述のように外容器3をスクイズ変形したときに、外容器3と内容器2との間の空気が、被シール部7とシール部21aとの間を通して外部に漏出するのを抑制することが可能になり、吐出孔26から内容物を円滑に吐出することができる。
特に、高粘度の内容物を吐出孔26から吐出する際に、容器本体4に高い押圧力を加えたとしても、被シール部7とシール部21aとの間のシール性を確保することができる。
【0049】
また、容器本体4の肩部4bにおける少なくとも一部の肉厚が1.4mmより厚く1.8mm以下となっているので、成形性、吸気孔6のパンチ加工性、および外容器3をスクイズ変形して内容物を吐出する際に要する押圧力を現行同等に維持しつつ、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
また、容器本体4の肩部4bのうち、少なくとも被シール部7に接続する上端部の肉厚が、1.4mmより厚くなっているので、前述のように外容器3をスクイズ変形したときに、この変形が被シール部7に伝播するのを確実に抑制することができる。
また、容器本体4の肩部4bのうち少なくとも上端部の肉厚が、1.4mmより厚くなっていることから、例えば、内容物の残量が少なくなったときに、口部4aに近い肩部4bをスクイズ変形しても、この変形が被シール部7に伝播するのを抑制することができる。
【0050】
また、被シール部7の外径が、外容器3の口部3aのなかで最大とされ、かつ容器本体4の肩部4bの上端縁の外径Aより小さく、被シール部7に対して容器軸O方向の両側に連なる各部分に段部7aが配設されることとなり、被シール部7の径方向の剛性を確保することが可能になり、外容器3をスクイズ変形したときに、被シール部7が変形するのを確実に抑制することができる。
また、容器本体4の高さCが、80mm以上240mm以下とされ、内容器2の満注内容量が、100ml以上800ml以下となっているので、前述の作用効果が確実に奏功される。
【0051】
次に、以上説明した作用効果についての検証試験について説明する。
【0052】
実施例1~3として、容器本体4の肩部4bの第1部分Xの肉厚(表1における「肩部肉厚」、「容器本体」)が、1.4mmより厚く1.8mm以下となっている容器本体4を採用し、比較例1~3として、この肉厚が、1.4mm以下となっている容器本体を採用し、比較例4として、この肉厚が1.8mmを超えている容器本体を採用した。
実施例1~3では、外容器3の肩部3bの肉厚(表1における「肩部肉厚」、「外容器」)を、1.2mm以上1.5mm以下とし、比較例1~3ではこの肉厚を1.2mm未満とし、比較例4ではこの肉厚を1.5mmより厚くした。
【0053】
そして、実施例1~3、および比較例1~4それぞれの容器本体に対して、その肩部のうち、接地部から上方に約77mm離れた部分の外周面を、砲弾型(直径20mm、高さ20mm、先端部の曲率半径10mm)の押圧体の先端部により、13mm/minの速度で5mm押し込むのに要する力(表1における「肩部剛性」、「5mm変位」)、および、同様に10mm押し込むのに要する力(表1における「肩部剛性」、「10mm変位」)を測定した。
結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
また、実施例1~3、および比較例1~4それぞれの容器本体に対して、その肩部のうち、接地部から上方に約77mm離れた部分の外周面を、一定の力で径方向の内側に向けて両側から押し込んだときに、被シール部とキャップ本体のシール部との間から空気が漏出したか否かを確認した。
【0056】
その結果、実施例1~3では、被シール部7とキャップ本体20のシール部21aとの間から空気が漏出しないことが確認された。実施例1~3の容器本体4を形成するに際し、成形性、および吸気孔6のパンチ加工性を現行同等に維持できたことも確認された。
一方、比較例1~3では、被シール部とキャップ本体のシール部との間から空気が漏出したことが確認された。比較例4では、空気の漏出が確認されなかったものの、成形性、および吸気孔のパンチ加工性が悪化したことが確認された。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば前記実施形態では、被シール部7に対して容器軸O方向の両側に連なる各部分に段部7aを配設したが、これらの段部7aを有しない容器本体を採用してもよい。
前記実施形態では、被シール部7を外容器3の口部3aの下端部に形成したが、これに限らず、外容器3の口部3aにおける容器軸O方向の中間部に形成する等、適宜変更してもよい。
容器本体4の肩部4bの肉厚は、その全域にわたって1.4mmより厚くしてもよいし、容器本体4の肩部4bのうち、容器軸O方向の一部における全周にわたって連続して延びる帯状部分に限って、肉厚を1.4mmより厚くしてもよい。
容器本体4の肩部4bの肉厚は、その全域にわたって同等にしてもよいし、上方から下方に向かうに従い漸次、厚くしてもよい。
容器本体4の高さCは、例えば90mm以上220mm以下としてもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 吐出容器
2 内容器
3 外容器
3a 外容器の口部
4 容器本体
4a 容器本体の口部
4b 容器本体の肩部
4c 容器本体の胴部
4d 容器本体の底部
5 吐出キャップ
6 吸気孔
7 被シール部
20 キャップ本体
21a シール部
23 外気導入孔
26 吐出孔
40 吐出弁
A 容器本体の肩部の上端縁の外径
C 容器本体の高さ
O 容器軸
図1
図2