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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】着色剤を充填した球形粒子
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/00 20060101AFI20231110BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20231110BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231110BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20231110BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20231110BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C09C1/00
C01B33/18 C
C09D7/61
C09D11/00
C09D17/00
C09D201/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018524363
(86)(22)【出願日】2016-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 FR2016052936
(87)【国際公開番号】W WO2017081427
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-10-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】1560840
(32)【優先日】2015-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516331395
【氏名又は名称】ピロット
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロイック・マルシン
(72)【発明者】
【氏名】マリー-ロール・デス
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】亀ヶ谷 明久
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-47273(JP,A)
【文献】特表2010-535929(JP,A)
【文献】特表2012-528913(JP,A)
【文献】特開2013-95888(JP,A)
【文献】特開2000-159509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子であって、前記粒子が球形、高密度及びマイクロメートルサイズであり、前記粒子の質量に対して5~30質量%の量で有機着色剤を含み、
前記粒子が、
0.1~20μmの数平均直径、
0.01~5/g未満の比表面積、
0.85以上の球形度係数C、
を有し、
前記球形度係数Cは、粒子の電子顕微鏡法によって得られた画像に基づいて以下の式:
C=4π・(粒子の面積/粒子の周囲の長さ
によって計算され、
前記粒子の少なくとも90個数%が凝集していないことを特徴とする、無機粒子。
【請求項2】
前記粒子は、0.3~10マイクロメートルの数平均直径を有する、請求項1に記載の無機粒子。
【請求項3】
前記粒子は、少なくとも部分的に、無機成分からなる3次元組織を有する、請求項1又は2に記載の無機粒子。
【請求項4】
前記無機成分は、金属酸化物である、請求項3に記載の無機粒子。
【請求項5】
前記無機成分は、アルミナ、ベーマイト、ケイ酸塩、シリカ、又はムライトである、請求項3または4に記載の無機粒子。
【請求項6】
前記粒子は、シリカ又はケイ酸ナトリウムの粒子である、請求項1から5の何れか一項に記載の無機粒子。
【請求項7】
前記粒子は、1つ以上の有機着色剤を含む、請求項1から6の何れか一項に記載の無機粒子。
【請求項8】
請求項1から6の何れか一項に記載の無機粒子とマトリックスとを含む、材料。
【請求項9】
前記マトリックスは、塗料のポリマーマトリックス、ゾル-ゲル又はワニスタイプの層、又はそれらの混合物である、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
前記材料は、製紙、塗料、農業食品、化粧品又は医薬品における使用を対象とする、請求項8又は9に記載の材料。
【請求項11】
前記材料は、インク配合物である、請求項8から10の何れか一項に記載の材料。
【請求項12】
温度勾配を有する同じ反応器中で以下の分離できない連続段階:
(1)粒子の3次元組織の1つ以上の前駆体を含む液体溶液を、所定の溶媒中モル濃度で反応器内に噴霧し、溶液の液滴のミストを得る段階であって、前記液体溶液はさらに少なくとも1つの着色剤を含む、段階、
(2)前記ミストを、溶媒の蒸発及び粒子の形成を確実にすることができる乾燥温度として知られる温度に加熱する段階、
(3)これらの粒子を、1つ又は複数の前記前駆体を転化して前記組織の無機部分を形成することを確実にすることができる熱分解温度として知られる温度に加熱する段階、
(4)任意に、前記粒子を高密度化する段階、及び
(5)そのように形成された前記粒子を回収する段階、
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の無機粒子の調製プロセスであって、
-噴霧段階(1)は、10~40℃の温度で10秒以下の時間の間に実施され、
-加熱段階(2)は、40~120℃の温度で1~10秒の時間の間に実施され、及び
-熱分解段階(3)は、120~300℃の温度で10~30秒の時間の間に実施される、プロセス。
【請求項13】
任意の高密度化段階(4)は、200~600℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロセスの段階(1)で導入される有機着色剤の量は、粒子中に存在する着色剤の量が、得られる粒子の重量に対して5~35重量%であるようにされることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記プロセスの段階(1)で導入される有機着色剤の量は、粒子中に存在する着色剤の量が、得られる粒子の重量に対して10~30重量%であるようにされることを特徴とする、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤を含む、球形、高密度であるマイクロメートルサイズの粒子に関する。本発明はまた、製紙、塗料、農業食品、化粧品又は医薬品における使用を対象とする、これらの粒子を含む材料にも関する。本発明はまた、これらの粒子の調製プロセス及びマトリックス中へのそれらの組み込みに関する。
【背景技術】
【0002】
製紙、塗料、農業食品、化粧品又は医薬品における使用を対象とするインク又はより一般的な着色の分野では、有機化合物又はそれらの塩あるいは顔料である有機又は無機の着色剤(colourants)(又は着色剤(colouring agents))を使用するのが通常の慣行である。
【0003】
粒子中での着色剤、特に有機化合物のカプセル化は、pHにかかわらず着色剤の安定性を保持する、溶媒又は配合物の他の成分による着色剤の化学的分解を回避する、水中において通常水溶性ではない着色剤を使用する能力、又はそれが組み込まれた材料、インクの場合には紙基材の中への制御されていないその移動又は分散を防止する能力など、様々な利点を付与する。
【0004】
幾つかの既存のカプセル化プロセスが、文献に記載されている:
インク及び塗料の分野では、Vincentらによる特許文献1のように、0.05~0.3ミクロンのサブミクロンサイズの有機ポリマーカプセルでのカプセル化を挙げることができる。しかしながら、重合に由来するモノマー残余又は合成溶媒が依然として存在し、その用途、特に農業食品又は化粧品に悪影響を及ぼし得る。これに加えて、分解抵抗性及び着色剤を保持するこれらのポリマーカプセルの能力は、必ずしも最適ではない。
【0005】
Mitzuguchiらの特許文献2又はRenらの研究(非特許文献1)のように、カップリング剤を有する又は有しない多孔質シリカ微粒子の表面における含浸/吸着による着色剤のカプセル化についても記載されているが、多孔質中の着色剤の濃度は限られており、放出が経時的に起こり得る。
【0006】
最後に、Lapidotらによる特許文献3のように、ゾル-ゲルエマルションによる1段階での1~2ミクロンのカプセルにおける着色剤のカプセル化を挙げることができるが、このプロセスは、直鎖アルカン、シクロヘキサン又はケロシンなどの有機溶媒の量を必要とし、それは、着色剤を変性させる可能性があり、また、そのプロセスを工業化し難く、かつ/又は農業食品、化粧品及び医薬品分野で使用し難くする。使用されるプロセスのため、得られるカプセル中に存在する着色剤の量は少ない。
【0007】
Lischewskiらによる特許文献4は、シリカ「顔料」において水溶性着色剤を、噴霧することによって、又はBuchi B290装置を用いて球状形態で0.5%未満の顔料放出で噴霧して乾燥させることによって、1段階でカプセル化するプロセスについて記載している。前駆体溶液は、水-アルコール媒体中での加水分解を伴うTEOS(テトラエトキシシラン)をベースとし、好ましくは、酢酸及び着色剤濃度0.03~0.15g/g(TEOS)の着色剤、すなわち最終的な粒子において9~34質量%の着色剤で触媒される。本発明の分野は主に、農業食品、医薬品及び化粧品を対象とする。
【0008】
特許文献5において、Alberiusらはまた、シリカカプセルにおいて着色剤を、球状形態で0.5%~5%のカプセルによる着色剤の放出で噴霧することによって、1段階でカプセル化するプロセスについても記載している。前駆体溶液は、水-アルコール媒体中での加水分解を伴うTEOS(テトラエトキシシラン)をベースとし、好ましくは、塩酸及び最終的な粒子において0~25重量%の着色剤濃度の着色剤を有して、1.5~2.5のpHで触媒される。本発明の分野は主に、洗剤及び化粧品を対象とする。
【0009】
一般に、材料分野では、材料に所望の特性を付与するために粒子を使用するのが通常の慣行であるが、なぜなら、粒子の範囲は非常に大きく、それらにより同じく広範囲の特性を得ることができるからである。ナノ粒子及び/又は微粒子(microparticles)によって材料に付与される特性は、一般に、特にそれらの形態学的、構造的及び/又は化学的特性などの粒子自体の特性に関連する;材料に付与される特性はまた、粒子内に組み込まれた薬剤に由来することもある。
【0010】
球状形態の粒子は、様々な分野で特に有用である。特に、球状形態の粒子は、粒子がより球形になるほど色が強くなるため、比色測定において特に有用であることが文献から知られている。微小球体(microspheres)のサイズ範囲は、インクの場合にも重要である。従って、粒子の直径が小さいほど粒子がより拡散し、より分散しやすくなるため、0.5~10ミクロンの間のマイクロメートルサイズの球形粒子の懸濁液がインクにとって特に有用であるように見える。
【0011】
しかしながら、球形であると言われる先行技術の粒子の大部分は、非球形粒子の凝集体であるか、凝集体自体が球形に近似する形態を有するか、球形度が不十分である。合成された粒子の球形度を最適化するために様々なプロセスが開発されてきた。これらのプロセスの大部分は、単一種、例えば化学種(例えばシリカ粒子)又は形態(例えば多孔質粒子)などの粒子に対して最適化されている。シリカ粒子は、他の機能で、特にインク、化粧品又は農業食品の配合物中の研磨剤又はレオロジー剤として既に知られていることに留意すべきである。
【0012】
従って、粒子及びそれらを含むマトリックスに着色特性を付与するために、着色剤を含む球形度係数が高い粒子を有することが有用であろう。
【0013】
マトリックス中の粒子の分散もまた、上記マトリックスに特性を付与するための公知の技術である。例えば、着色特性を付与するために、顔料をマトリックス中に分散させることができる。粒子の性質、それらの表面特性及び場合によりそれらのコーティングは、マトリックス中での十分な分散を得るために、最適化する必要がある。マトリックス中の粒子の分散性の最適化は、粒子の性質及びマトリックスの性質の両方によって決まるだろう。粒子がマトリックス内に均一に分散して、求められる特性がマトリックスの体積全体の中に均一に分布できるようにすることが重要である。粒子がマトリックス中で凝集すると、求められる特性はマトリックスに均一に付与されず、得られる結果は不十分となる。理論的な着色/不透明化能力が強いサブミクロン顔料粒子を使用する特定の場合には、それらの凝集は、凝集体の表面に位置する粒子のみが光と相互作用する結果となる。従って、凝集体の体積内に位置する全ての粒子は、求められる着色特性の観点からは無効になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第6,841,591号明細書
【文献】米国特許第5,520,917号明細書
【文献】米国特許第7,923,030号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/091637号明細書
【文献】米国特許第8,168,095号明細書
【0015】
【文献】Ren、Tie-Zhen、Yuan、Zhong-Yong、及びSu、Bao-Lian、「Encapsulation of direct blue dye into mesoporous silica-based materials」、Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects、2007、vol.300、no1、p.79-87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、任意のマトリックス中に十分に分散され、故に均一かつ完全に有効なプロセスでマトリックスに着色特性を与え得る粒子を得ることができる新規なプロセスを有することは、非常に有用である。
【0017】
この文脈において、本出願人は、着色剤を含む異なる化学的性質の完全に球形のマイクロメートルサイズの着色粒子を調製することができる簡単なプロセスを開発した。驚くべきことに、このプロセスによって得られた粒子は、その化学的性質にかかわらず、個々の状態にとどまり、乾燥状態又はマトリックス中に分散した場合の何れにおいても凝集体を形成しない。
【0018】
本発明によるプロセスにより、従来のプロセス、特に後処理において多孔質粒子の含浸を含むプロセスよりも高い着色剤の充填レベルを有することが可能になる。
【0019】
本発明によるプロセスにより、粒子形成及び着色剤の取り込みが同時に起こる、着色剤を充填したマイクロメートルサイズの球形粒子を得ることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の目的は、球形で、高密度で、かつマイクロメートルサイズであり、有機着色剤を含むことを特徴とする、粒子のセットである。有用には、本発明による粒子中の着色剤の量は高くてもよい。より具体的には、着色剤の量は、粒子の質量に対して5~35質量%、好ましくは5~30質量%、より具体的には10~30質量%の範囲で変化し得る。
【0021】
本発明の別の目的は、本発明による粒子のセットとマトリックスとを含む材料である。
【0022】
本発明はまた、本発明による粒子のセットの調製プロセスにも関する。
【0023】
本発明はまた、マトリックスを本発明による粒子のセットと接触させることを含む、本発明による材料の調製プロセスにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例2の着色剤を充填したシリカ粒子のSEM像-スケール5μm-平均直径1.0μm±0.5μm、円形度係数0.95±0.15、である。
図2】本発明によるプロセスを実施するための適切な反応器のダイアグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の目的は、粒子が球形、高密度、及びマイクロメートルサイズであり、組み込まれた着色剤を有することを特徴とする、粒子のセットである。
【0026】
本発明による粒子は球形であり、すなわち、それらは0.75以上の3次元球形度係数又は2次元円形度係数を有する。好ましくは、球形度係数は、0.8以上、0.85以上、0.9以上、あるいは0.95以上である。
【0027】
2次元円形度係数は、例えば、画像、例えば粒子の電子顕微鏡法、特に走査型電子顕微鏡法又は透過型電子顕微鏡法によって得られた画像などから任意の適切なソフトウェアを用いて、アスペクト比を測定することによって計算することができる。2次元表示における粒子の円形度係数Cは、比:C=4π・(面積/周囲の長さ)である。完全な円の場合、この比の値は1である(Cavarretta,I.、O’Sullivan,C.、及びCoop,M.R.、「Applying 2D shape analysis techniques to granular materials with 3D particle geometries.」、Powders and Grains 2009、2009、vol.1145、p.833-836)。
【0028】
一実施形態において、本発明は、上記で定義した粒子のセットに関する。この実施形態において、セットは、全ての粒子の個数平均球形度が本発明で設定された基準を満たしている限り、場合によっては、必要とされる球形度基準を満たさない粒子を局所的に含んでもよい。従って、「球形粒子のセット」との用語は、粒子の少なくとも50個数%が上記で定義した球形度を有する複数の粒子を指す。好ましくは、議論されているセット中の粒子の少なくとも60個数%、少なくとも70個数%、少なくとも80個数%、少なくとも90個数%、少なくとも95個数%が、上記で定義した球形度を有する。
【0029】
本発明による粒子はマイクロメートルサイズであり、すなわち、粒子の直径は、0.1~100マイクロメートル、特に0.1~20マイクロメートルである。好ましい実施形態では、粒子の平均直径は、0.3~10マイクロメートル又は0.5~5マイクロメートルあるいは0.5~2マイクロメートルである。当業者は、本発明による粒子又は粒子のセットの直径を決定するための適切な技術を知っており、また、これらの測定に存在する不確実性の程度も知っているであろう。例えば、セット中の粒子の平均直径、標準偏差及び粒度分布は特に、例えば走査型又は透過型電子顕微鏡法からの顕微鏡画像に基づく統計的調査により決定することができる。より具体的には、1.0ミクロンの平均直径及び0.3~4ミクロンの個数基準の粒度分布を有する粒子が得られている。
【0030】
粒子がセットの一部である場合、上記直径値は、セット中の粒子のうちの幾つかがこの範囲外の直径を有するとしても、個数基準の粒子の平均直径に対応し得る。有利には、集団中の全ての粒子は、上記で定義したような直径を有するだろう。
【0031】
一実施形態では、本発明による粒子の集団における粒度に関する標準偏差は、50%以下、好ましくは20%以下である。
【0032】
本発明による粒子のセット内の粒度分布は、単峰性又は多峰性であってもよい。
【0033】
本発明においてマイクロメートルサイズの球形粒子を使用することにより、粒子の分散特性に有利に働くことができるが、なぜなら、それらは大き過ぎず(故に沈降が最小限に抑えられる)、ナノ粒子の欠点(使用の困難性、毒性、弱い不透明化力など)を有しないからである。さらに、このことは、薄い厚さ(例えば、50ミクロン未満)の塗料又はインクを有することを可能にする。
【0034】
粒子とは、本発明において、少なくとも部分的に無機成分、すなわち炭素化学に由来しないもの(CO 2-は除く)からなる3次元組織(three-dimensional system)を有する粒子を意味する。無機成分の化学的多様性は、当業者に周知である。
【0035】
特定の実施形態では、本発明による粒子は高密度である。
【0036】
高密度粒子とは、小さい比表面積、より具体的には15m/g未満、好ましくは5m/g未満(より具体的には0.01~5m/gの間)を有し、及び/又は小径の孔、例えば5nm未満(より具体的には0.1~5nmの間)の直径の孔を有する粒子を意味する。粒子の外への着色剤の放出を制限するために、孔サイズは着色剤のサイズよりも小さくなければならない。孔径及び比表面積の測定は、窒素ポロシメトリー及びその著者Barett、Joyner及びHalendaの名前を付けた「BJH」法によって、慣習的に決定することができる。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、粒子は、低レベルの放出を有する。例えば、着色剤放出のレベルは、3質量%以下、好ましくは2質量%以下であり得る。この測定は、特に、粒子を特定の溶媒に浸漬し、粒子内に含まれていない着色剤(すなわち、放出された着色剤)の濃度を(同じ溶媒中の溶液に異なる濃度で置かれた着色剤の較正範囲を使用する)UV-可視分光法によって測定することによって、放出を測定することにより得ることができる。
【0038】
本発明の特定の実施形態では、それらの球形度係数が高いため、本発明による粒子は凝集しない-セット中の各粒子は、共有結合のような強い化学結合によって他の粒子に結合されないが、そのことは、その粒子をマトリックス中でより容易に処方することができるという利点を有する。
【0039】
本発明による粒子のセットは、セット中の粒子の少なくとも50個数%によって非凝集の基準が満たされている限り、この特徴を満たさない粒子を局所的に含んでもよい。好ましくは、議論されているセット中の粒子の少なくとも60個数%、少なくとも70個数%、少なくとも80個数%、少なくとも90個数%、少なくとも95%個数が凝集していない。
【0040】
好ましくは、本発明によるセット中の粒子は、より小さいサイズの幾つかの粒子の凝集からなるものではない。このことは、例えば、特に走査型又は透過型電子顕微鏡による顕微鏡検査によって明確に表示することができる。このことは、本発明による粒子が、本発明による粒子のサイズよりも著しく小さいサイズのドメインでのみ構成され得ることを意味する。本発明による粒子は、好ましくは、少なくとも2つのドメインから形成される。1つのドメインは、同じ化学的性質及び同じ構造を有する材料からなり、それは粒子内で局所的であってもよいし、連続的に延びていてもよい。比較のために、当技術分野で慣習的に使用されている噴霧技術は、一般に、非球形の凝集粒子を提供する。これらの粒子の凝集体によって形成される物体は、球形であってもよい。
【0041】
一実施形態において、無機成分は、幾つかの化学元素、好ましくは2~16の異なる化学元素を含み、この元素の数は、無機成分に含まれ得る元素O及びHを考慮していない。そしてこれらは、異種であり得る無機成分であり、すなわち、それらは、その化学量論が好ましくは合成のプロセスによって制御される異なる成分を含む。
【0042】
異種無機成分は、幾つかの化学元素(O及びHを除く)、好ましくは同じドメイン内の無機成分を構成する全ての化学元素(O及びHを除く)を含んでもよく、又はそれぞれが単一の化学元素(O及びHを除く)から形成されるドメインを含んでもよい。特定の一実施形態において、異種無機成分の各ドメインは、単一の化学元素(O及びHを除く)を含む。
【0043】
もちろん、本発明による粒子は、上記粒子の化学的性質とは異なる化学的性質を有する可能性がある汚染物質の最小割合、例えば5質量%以下を含んでもよい。
【0044】
好ましい実施形態では、無機成分は、シリカ、特に非晶質シリカ、アルミナ、特に非晶質又は結晶質アルミナ、ベーマイト、酸化亜鉛、特に六方晶酸化亜鉛であり、例えばアルミニウム、二酸化チタンなどでドープされていてもよく、特にアナターゼ型又はルチル型の混合チタン及びシリコン酸化物、特にアナターゼ型のモンモリロナイト、特に単斜晶モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、特に六方晶ハイドロタルサイト、二水酸化マグネシウム、特に六方晶二水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、特にペリクレース、酸化イットリウム、特に立方晶酸化イットリウムであり、ユーロピウム及び/又はエルビウム及び/又はイッテルビウムでドープされていてもよく、二酸化セリウム、チタン酸カルシウム銅、チタン酸バリウム、好ましくはヘマタイトの形態である酸化鉄、又は硫酸マグネシウム、好ましくは斜方晶硫酸マグネシウムである。
【0045】
特定の実施形態において、本発明による粒子は、金属酸化物、好ましくはアルミナ、特に非晶質又は結晶質アルミナ、ベーマイト、ケイ酸塩、シリカ、特に非晶質シリカ、又はムライトで構成される。
【0046】
好ましい実施形態において、無機成分は、シリカ又はケイ酸ナトリウム、特に非晶質シリカである。
【0047】
本発明の特定の実施形態では、粒子が構成されている3次元組織は、少なくとも部分的に金属成分、場合によっては有機-無機ハイブリッドからなる。この成分は、以下に定義される式(1)、(2)、(3)又は(4)を有する1つ以上の加水分解性基を含む少なくとも1つの金属分子前駆体から、ゾル-ゲル手段によって得ることができる。
【0048】
本発明による粒子は、着色剤を含む。着色剤を充填した粒子についても記述される。着色剤は有機化合物であり、それは塩の形態で存在していてもよい。それらは、前駆体溶液の調製中に組み込まれる。
【0049】
多種多様な着色剤が本発明に適している可能性がある。好ましくは、着色剤は、前駆体溶液の媒体と適合性があり、及び/又は、一般に100~300℃であり得る、粒子調製プロセス中に適用しなければならない温度で分解しないように選択される。
【0050】
着色剤は、本発明の用途及び現行の規制、例えば食品医薬品局(FDA)の着色剤、特にFD&C又はD&C着色剤のリストに応じて選択することができる。
【0051】
以下の着色剤を特に挙げることができる:ブリリアントブルー(E133;C.I.42090)、タートラジン(E102、C.I.18140)、アゾルビン(E112;C.I.14720)、EXT.D&CグリーンNo.1(C.I.10020)、EXT.D&CイエローNo.7(C.I.10316)、EXT.D&CイエローNo.1(C.I.13065)、EXT.D&CオレンジNo.3(C.I.14600)、FD&CレッドNo.4(C.I.14700)、D&CオレンジNo.4(C.I.15510)、FD&CイエローNo.6(C.I.15985)、D&CレッドNo.2(C.I.16185)、D&CレッドNo.33(C.I.17200)、EXT.D&CイエローNo.3(C.I.18820)、FD&CイエローNo.5(C.I.19140)、D&CブラウンNo.1(C.I.20170)、D&CブラックNo.1(C.I.20470)、FD&CグリーンNo.3(C.I.42053)、FD&CブルーNo.1(C.I.42090)、D&CブルーNo.4(C.I.42090)、D&CレッドNo.19(C.I.45170)、D&CレッドNo.37(C.I.45170)、EXT.D&CレッドNo.3(C.I.45190)、D&CイエローNo.8(C.I.45350)、D&CオレンジNo.5(C.I.45370)、D&CレッドNo.21(C.I.45380)、D&CレッドNo.22(C.I.45380)、D&CレッドNo.28(C.I.45410)、D&CレッドNo.27(C.I.45410)、D&CオレンジNo.10(C.I.45425)、D&CオレンジNo.11(C.I.45425)、FD&CレッドNo.3(C.I.45430)、D&CイエローNo.11(C.I.47000)、D&CイエローNo.10(C.I.47005)、D&CグリーンNo.8(C.I.59040)、EXT.D&CバイオレットNo.2(C.I.60730)、D&CグリーンNo.5(C.I.61570)又はFD&CブルーNo.2(C.I.73015)。
【0052】
「アゾイン酸」型の着色剤、特に、例えば、Color Index International、第3版においてACIDの名称で記載されているもの、例えば、ディスパーズレッド17、アシッドイエロー9、アシッドブラック1、アシッドイエロー36、アシッドオレンジ7、アシッドレッド33、アシッドレッド35、アシッドイエロー23、アシッドオレンジ24、アシッドバイオレット43、アシッドブルー62、アシッドブルー9、アシッドバイオレット49、アシッドブルー7なども挙げることができる。
【0053】
例えばブドウ抽出物、ベニバナ抽出物、コチニール抽出物、ビートルート抽出物ウコン、リボフラビン、キサントフィル、カロテノイド、カルミン、カルミン酸、アントシアニン、クロロフィルなどの天然起源の着色剤も挙げることができる。
【0054】
本発明の場合、着色剤は、カチオン性、アニオン性、中性、両性、双性イオン性又は両親媒性であってもよい。
【0055】
好ましくは、着色剤は、正に帯電した薬剤(又は分子)である。従って、それらは酸性pHで負に帯電したシリカ粒子とより適合性があり、このことは、粒子内での着色剤の保持を促進する。
【0056】
本発明による粒子には、1つ以上の有機着色剤を充填することができる。1つの粒子に幾つかの着色剤が存在する場合、これは、有機着色剤の混合物、無機着色剤の混合物又は有機着色剤と無機着色剤との混合物とすることができる。
【0057】
本発明による粒子内での有機着色剤のカプセル化は、親水性であろうと疎水性であろうと、これらの薬剤を任意の媒体中に調合することを可能にし、故にこれらの有機薬剤を完全に相溶性にし、従って異なるタイプのマトリックス中で有効なものにする。このようにして、有機着色剤は、攻撃的媒体中で使用される場合にも保護又は安定化され得る。このことはまた、これらの着色剤の、基材又はそれらが位置する基材以外の材料への望ましくない移動の問題を回避することを可能にすることができる。
【0058】
本発明による粒子は、特に粒子のサイズ及び性質に応じてその量が大きく変化し得る着色剤を有する。この量はまた、所望の着色レベル及び使用される着色剤の性質によって決まる。例えば、着色剤の割合は、粒子の質量に対して5~35質量%、好ましくは5~30質量%、より具体的には10~30質量%の範囲で変化し得る。例えば、着色剤の量は15~25重量%であってもよく、粒子の量は85~75重量%であってもよい。
【0059】
上述したように、本発明によるプロセスは、従来のプロセスよりも高濃度の着色剤を粒子中に得ることを可能にする。さらに、本発明によるプロセスは、最初に使用される試薬の損失がほとんどない(使用される試薬が高レベルで使用される)、特に使用される着色剤の損失がほとんどないという利点を有する。
【0060】
粒子を、特に化学的又は熱的手段によって、少なくとも一時的に、特に着色剤の非放出を延長する目的で密封することを含む、後処理段階を加えることも可能である。従って、本発明による粒子は、ゾル-ゲル反応によってオルガノシランから得られるシリカ系シェルなどのシェル(又はコーティング)を有することができる。シェルは永久的であっても一時的であってもよく、場合により分解することがある。従って、シェルは、任意の手段によって、特に分解性ポリマーをベースとするシェルを使用することによって、又はpH型(溶解による)、機械型(脆いシェル)、熱型(温度上昇の結果としてのシェルの溶解)又は光学型(照射下でのシェルの分解)の外部刺激の作用を介して除去することができる。
【0061】
本発明の別の目的は、本発明による粒子のセットとマトリックスとを含む材料である。より具体的には、本発明による粒子は、上記マトリックス内に均一に分布している。
【0062】
本発明によれば、マトリックスとの用語は、本発明による粒子の包含から有利に利益を得ることができる任意の材料を指す。それは特に、最初の液体マトリックスの粘度にかかわらず、固体又は液体マトリックスを含むことができる。
【0063】
一実施形態において、マトリックスは、コーティングとして使用される柔らかい硬質又は固体のマトリックス、例えばセラミック又はポリマーマトリックス、特に塗料のポリマーマトリックス、ゾル-ゲル又はワニスタイプの層、又はそれらの混合物である。
【0064】
本発明による材料は、製紙、塗料、農業食品、化粧品又は医薬品における使用を対象とすることができる。特定の一実施形態において、材料は、インク配合物、特に筆記又は印刷に使用できるインク配合物である。
【0065】
本発明による粒子をマトリックス中に含めることにより、マトリックスに着色特性を付与することが可能になる。粒子は、当技術分野において慣習的に使用されている技術によって、特にマトリックスが液体である場合には機械的に攪拌することにより、マトリックス内に含まれてもよい。
【0066】
本発明による材料は、特に、液体、粉末、ビーズ、ペレット、顆粒、フィルム又はフォームの形態であってもよく、これらの材料を成形又は調製する操作は、当業者に周知の従来技術によって行われる。
【0067】
特に、粒子を含まないマトリックスに対して慣習的に使用されている成形プロセスと比較して、材料を成形又は調製するプロセスは、粒子をマトリックス内に分散させる追加の段階を必要としない。成形プロセスは、好ましくは、粒子を含まないマトリックスに対して慣習的に使用されている処理装置及びシステムで実施することができる。幾つかの実施形態では、粒子は、追加の化学的分散剤なしにマトリックス内に分散され得る。
【0068】
特定の一実施形態では、粒子は、界面活性剤のような化学的分散剤の存在下でマトリックス内に分散される。当業者であれば、求められる分散を得るために分散剤の使用が必要であるかどうかを決定し、そして、使用されるべき分散剤の量を適切に適合させることができるであろう。例えば、分散剤は、粒子の質量に対して0.1~50質量%の量、特に粒子の質量に対して0.5~20質量%の量で使用することができる。
【0069】
本発明による粒子は、それらの化学的性質、それらの形態、及びマトリックスの性質にかかわらず、マトリックス内に実質的に均一な体積で分散するという特別な特徴を有する。このことは、単位体積当たりの粒子密度がマトリックス内のすべての点で同じであることを意味する。
【0070】
固体マトリックスの場合、単位表面積当たりの粒子密度は、好ましくは、マトリックスの末端面であろうと、例えば材料を切断することによって得られる「コア」面であろうと、議論されているマトリックスの面にかかわらず同一である。従って、本発明による粒子を含むことによってマトリックスに付与された着色特性は、マトリックスの全体積にわたって実質的に均一に分布される。
【0071】
本発明による材料は、所望の特性、特に所望の着色を付与するために、任意の適切な割合で本発明の粒子を含むことができる。例えば、材料は、マトリックス+粒子の全質量に対して0.1~80質量%、好ましくは1~60質量%、特に2~50質量%の粒子を含むことができる。
【0072】
好ましくは、本発明による粒子は、非変形性球形粒子である。従って、他の粒子と接触している各粒子の表面積は非常に小さい。一実施形態では、セット中の2つの異なる粒子間の接触を形成するメニスカスの曲率半径は、特にマトリックス内又は粉末の形態で、2つの粒子のそれぞれの半径の5%未満、好ましくは2%未満である。
【0073】
本発明による粒子の球形度により、液体マトリックス中の電荷が同じレベルである場合に、非球形粒子よりも低い粘度を得ることも可能である。
【0074】
本発明の別の目的は、本発明による粒子のセットの調製プロセスである。本発明によるプロセスは、「エアロゾル熱分解」(又は噴霧熱分解)として知られるプロセスであり、それは、熱分解温度ではなく乾燥温度で行われる。このプロセスは、特に仏国特許出願公開第2973260号明細書に記載されているエアロゾル熱分解と比較して改善されたプロセスである。より具体的には、本発明によるプロセスは一般に、反応器中で行われる。
【0075】
このプロセスは、同じ反応器中で、以下の分離できない連続段階を含む:
(1)粒子の3次元網の1つ以上の前駆体を含む液体溶液を、所定の溶媒中モル濃度で反応器内に噴霧し、溶液の液滴のミストを得る段階であって、液体溶液はさらに少なくとも1つの上記の着色剤を含む、段階、
(2)段階(1)で得られたミストを、溶媒及び揮発性化合物の蒸発及び粒子の形成を確実にすることができる乾燥温度として知られる温度に加熱する段階、
(3)そのように形成された粒子を、1つ又は複数の前駆体を転化して上記組織の無機部分を形成することを確実にすることができる(熱分解温度として知られる)温度に加熱する段階、
(4)任意に、段階(3)からの粒子を高密度化する段階、及び
(5)そのように形成された粒子を回収する段階。
【0076】
噴霧段階(1)は、好ましくは10~40℃の温度で、及び/又は好ましくは10秒以下、特に5秒以下の時間の間に実施される。段階(1)において、液体溶液は、一般に、水溶液又は水-アルコール溶液の形態、又はコロイド状ゾルの形態である。より具体的には、段階(1)の液体溶液は、噴霧によって反応器内に挿入される。
【0077】
加熱(乾燥)段階(2)は、好ましくは40~120℃の温度で、及び/又は好ましくは10秒以下、特に1~10秒の時間の間に実施される。
【0078】
熱分解段階として知られる段階(3)は、好ましくは120~300℃の温度で、及び/又は好ましくは30秒以下、特に10~30秒の時間の間に実施される。
【0079】
任意の高密度化又は固化段階(4)は、広範囲の温度、特に200~600℃で実施することができる。この段階は、好ましくは、調製しようとする粒子が少なくとも部分的に結晶化した形態である場合、200~400℃の温度で実施される。高密度であるが結晶化していない粒子、特に非晶質粒子を得ることが望ましい場合、「高密度化」温度はより低くてもよく、例えば、特に非晶質シリカの場合には約200℃~300℃であり得る。好ましくは、高密度化段階は、30秒以下、特に20~30秒の時間の間に実施される。
【0080】
回収段階(5)は、好ましくは100℃未満の温度、及び/又は好ましくは10秒以下、特に5秒以下の時間の間に実施される。粒子回収段階(5)は、好ましくは、反応器を離れるときに粒子をフィルター上に堆積させることによって実施される。
【0081】
本発明によるプロセスの利点は、比較的短時間で実施できることである。上記で特定された連続段階を使用するプロセスの持続時間は、例えば数分未満(例えば2分又は3分、又はさらには1分)であってもよい。
【0082】
各段階の温度は、上記で提供された温度範囲外であってもよい。実際、同じ粒子の場合、適用されるべき温度は、液滴、次いで粒子が反応器内を循環する速度によって決まり得る。液滴、続いて粒子が速く反応器内を移動するほど、同じ結果を達成するためには設定温度を高くする必要がある。もちろん、反応器に適用される最高温度は、分解されないように、選択された着色剤によって決まるだろう。
【0083】
好ましくは、段階(2)、(3)及び場合により(4)は、同じ反応器内で実施される。
【0084】
プロセスのすべての段階、特に段階(2)、(3)及び場合により(4)は、互いに連続性を有して実施される。反応器内に適用される温度プロファイルは、これらの2つ又は3つの段階が次々と起こるように、形成しようとする粒子に応じて適合される。好ましくは、反応器内の温度は、その温度を独立して決定することができる少なくとも1つ、好ましくは2つ又は3つの加熱要素を介して調節される。
【0085】
好ましくは、逐次段階(2)、(3)及び場合により(4)の温度は、上昇する温度である。
【0086】
本発明によるプロセスは、好ましくは、段階(3)、又は場合により、使用される場合には粒子の高密度化段階(4)と、粒子の回収段階(5)との間に、粒子を急冷する段階(4’)をさらに含む。急冷段階(4’)は、冷ガス、好ましくは空気を反応器の円周の全部又は一部の上に入れることによって、好ましくは実施される。ガスは、本発明では、15~50℃、好ましくは15~30℃の温度であれば冷たいと言われる。一実施形態において、反応器に入るガスは空気以外のガスである。特に、それは中性ガス(窒素又はアルゴンなど)、還元性ガス(水素又は一酸化炭素など)、又はそのようなガスの混合物であってもよい。
【0087】
本プロセスは、好ましくは、反応器の底部からミストをベクトル化するガス流の不在下で実施される。温度がより高いゾーンに材料を引き込むことを可能にする層流は、例えば数パスカル又は数十パスカルのオーダーの負圧を生成する反応器の頂部での吸引によってのみ、有利に生成される。
【0088】
このような実施形態は、その下部にガス入口を設けずに反応器を使用することを可能にし、故にプロセスの妨害及び損失を制限し、従ってプロセスの収率及び得られる粒子のサイズ分布を最適化する。
【0089】
別の実施形態では、プロセスが実施される反応器はまた、ミストが形成されるレベルのガス入口も含む。このレベルで反応器に入るガスは、好ましくは空気である。
【0090】
好ましくは、本発明によるプロセスは、エアロゾル熱分解反応器内で使用される以外の加熱段階を組み込まない。
【0091】
本発明によるプロセスの速さの能力、及び本発明による粒子の調製プロセスの終わりに急冷段階が存在する可能性のため、後者は、高密度化した、特に結晶化した、さらには準安定性の相であり得る任意の化学成分を含むことができる。実際に、本プロセスで使用される特定の条件を介して、高温で費やされる時間が非常に短いため、その分解温度が効果的に適用される温度未満である化合物を保護することができる。これに関連して、用語「高温」は、好ましくは40℃を超える温度を示す。「高温で費やされる時間」は、一般に、乾燥、熱分解及び高密度化の段階で費やされる時間を示す。好ましくは、高温で費やされる時間は70秒を超えず、特に30~70秒である。好ましくは、急冷は100℃/秒以上の冷却速度を特徴とする。
【0092】
当業者は、段階(1)で添加された化合物に応じて、これらの各段階で費やされる温度及び時間を調節することができるであろう。
【0093】
図2は、本発明によるプロセスを実施するための反応器のダイアグラムの一例を示す。反応器の下部(1)は、3次元組織の1つ又は複数の前駆体を所定の溶媒中モル濃度で含む液体溶液を含む。この溶液を中間部(2)で噴霧し、液滴を吸引により反応器内で上昇させる。冷ガス、特に冷空気が入ると、粒子が急冷される。反応器の上部(3)もまた、低温(100℃未満、例えば15~50℃)である。
【0094】
粒子の3次元組織の1つ又は複数の前駆体は、任意の起源のものであってよく、それらは、液体溶液、特に、(議論されている金属の有機塩又は無機塩などの)金属イオン又は(オルガノシランなどの)前駆体分子を含む水溶液又は水-アルコール溶液の形態で、あるいは(議論されている金属又は金属酸化物のナノ粒子のコロイド状分散液などの)コロイド状ゾルの形態で、プロセスの段階(1)に添加される。3次元組織の1つ又は複数の前駆体は、形成しようとする粒子に応じて選択される。
【0095】
特定の実施形態において、この前駆体は、少なくとも部分的に、植物又は生物源を示す食品廃棄物に由来する。このような無機材料の前駆体の例としては、特に、籾殻から得られるケイ酸ナトリウムを挙げることができる。
【0096】
前述したように、本発明の特定の一実施形態によれば、粒子を構成する3次元組織は、少なくとも部分的に、有機-無機ハイブリッドであり得る金属成分からなる。この成分は、式(1)、(2)、(3)又は(4)の1つ以上の加水分解性基を含む少なくとも1つの分子金属前駆体から、ゾル-ゲル手段によって得ることができる。
【0097】
加水分解性基とは、水と反応して-OH基を生じることができる基を意味し、それ自体は重縮合を受けるだろう。
【0098】
1つ以上の加水分解性基を含む1つ又は複数の上記分子金属前駆体は、以下の式(1)、(2)、(3)又は(4):
MZ(1)、
MZn-mx(2)、
R’x’SiZ4-x’(3)、又は
Si-R’’-SiZ(4)
を有する、金属アルコキシド又はハライド、好ましくは金属アルコキシド、又は金属アルキニルから選択され、
式(1)、(2)、(3)及び(4)において、
MはSi(IV)を表し、括弧内の数字はM原子の価数であり;
nはM原子の価数を表し;
xは1~n-1の整数であり;
x’は1~3の整数であり;
各Zは、互いに独立して、ハロゲン原子及び-OR基から選択され、Zは好ましくは-OR基であり;
Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基又はt-ブチル基など、1~4の炭素原子を好ましくは含むアルキル基を表し、好ましくはメチル基、エチル基又はi-プロピル基、さらに望ましくはエチル基であり;
各R’は、互いに独立して、アルキル基、特にC1-4アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル又はブチルなど;アルケニル基、特にC2-4アルケニル基、例えばビニル、1-プロペニル、2-プロペニル及びブテニルなど;アルキニル基、特にC2-4アルキニル基、例えばアセチレニル及びプロパルギルなど;アリール基、特にC6-10アリール基、例えばフェニル及びナフチルなど;例えばメタクリルオキシプロピルなどのメタクリル又はメタクリルオキシ(C1-10アルキル)基;アルキル基がC1-10の直鎖状、分岐状又は環状であり、アルコキシ基が例えばグリシジル及びグリシジルオキシ(C1-10アルキル)基などの1~10の炭素原子を含む、エポキシアルキル又はエポキシアルコキシアルキル基;例えば3-クロロプロピルなどのC2-10ハロゲノアルキル基;例えばペルフルオロプロピルなどのC2-10ペルハロゲノアルキル基;例えばメルカプトプロピルなどのC2-10メルカプトアルキル基;例えば3-アミノプロピルなどのC2-10アミノアルキル基;例えば3-[(2-アミノエチル)アミノ]プロピルなどの(C2-10アミノアルキル)アミノ(C2-10アルキル)基;例えば3-[ジエチレントリアミノ]プロピル及びイミダゾリル-(C2-10アルキル)基などのジ(C2-10アルキレン)トリアミノ(C2-10アルキル)基;から選択される非加水分解性基を表し;
Lは、単座又は多座、好ましくは多座配位の配位子、例えば、好ましくは酢酸などのC1-18カルボン酸、好ましくはアセチルアセトンなどのC5-20β-ジケトン、好ましくはメチルアセトアセテートなどのC5-20β-ケトエステル、好ましくはN-メチルアセトアセトアミドなどのC5-20β-ケトアミド、好ましくは乳酸又はサリチル酸などのC3-20α-又はβ-ヒドロキシ酸、アラニンなどのアミノ酸、ジエチレントリアミン(又はDETA)などのポリアミン、又はホスホン酸もしくはホスホネートを表し;
mは配位子Lの水酸化指数を表し;そして
R’’は、好ましくはC1-12アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、オクチレン、デシレン及びドデシレンなど;好ましくはC2-12アルキニレン基、例えばアセチレニレン(-C≡C-)、-C≡C-C≡C-、及び-C≡C-C-C≡C-など;例えばN,N-ジエチレンアミノなどのN,N-ジ(C2-10アルキレン)アミノ基;例えばビス[N-(3-プロピレン)-N-メチレンアミノ]などのビス[N,N-ジ(C2-10アルキレン)アミノ]基;例えばメルカプトプロピレンなどのC2-10メルカプトアルキレン;例えばプロピレン-ジスルフィド又はプロピレン-テトラスルフィドなどの(C2-10アルキレン)ポリスルフィド基;特にビニレンなどのC2-4アルキニレン基;特にフェニレンなどのC6-10アリーレン基;例えばジ(エチレン)フェニレンなどのジ(C2-10アルキレン)C6-10アリーレン基;例えばN,N’-ジプロピレンウレイドなどのN,N’-ジ(C2-10アルキレン)ウレイド基;及び以下の基:
・例えば[化1](n=1~4)などのチオフェン型基、
・例えば-(CH-X-(CH-、-(CH-C-X-C-(CH-、-C-X-C-、及び-[(CH-X](CH-(XはO又はSを表し、p=1~4及びq=2~10である)などの、C2-50脂肪族及びアリール(ポリ)エーテル又は(ポリ)チオエーテル型基、
・例えば[化2]などのクラウンエーテル型基、
・例えば-CHCH-SiMe-C-SiMe-CHCH-、-CHCH-SiMe-C-O-C-SiMe-CHCH-及び-CHCH-SiMe-C-SiMe-CHCH-などの、オルガノシラン型基、
・[化3]、あるいは
・トランス-1,2-ビス(4-ピリジルプロピル)エテン型基[化4]、
から選択される非加水分解性官能基を表す。
【0099】
【化1】
【0100】
【化2】
【0101】
【化3】
【0102】
【化4】
【0103】
式(3)のオルガノアルコキシシランの例として、特に、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン(RO)Si-(CH-NH、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリアルコキシシラン(RO)Si-(CH-NH-(CH-NH、3-(トリアルコキシシリル)プロピルジエチレントリアミン(RO)Si-(CH-NH-(CH-NH-(CH-NH;N-(3-トリアルコキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール型のオルガノシリルアゾール(Rは上記と同じ意味を有する)を挙げることができる。
【0104】
式(4)のビス-アルコキシシランの例としては、ビス[トリアルコキシシリル]メタン(RO)Si-CH-Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリル]エタン(RO)Si-(CH-Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリル]オクタン(RO)Si-(CH-Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]アミン(RO)Si-(CH-NH-(CH-Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]エチレンジアミン(RO)Si-(CH-NH-(CH-NH-(CH-Si(OR);ビス[トリアルコキシシリルプロピル]ジスルフィド(RO)Si-(CH-(CH-Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]テトラスルフィド(RO)Si-(CH-S-(CH-Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]ウレア(RO)Si-(CH-NH-CO-NH-(CH-Si(OR);ビス[トリアルコキシシリルエチル]フェニル(RO)Si-(CH-C-(CH-Si(OR)(Rは上記と同じ意味を有する)を使用することが好ましい。
【0105】
本発明の場合、有機-無機ハイブリッドとは、式(2)、(3)又は(4)に対応する分子からなる組織を意味する。
【0106】
着色剤は、乾燥形態又は液体溶液の形態の何れかで、段階(1)の液体溶液中に配置することができる。着色剤がナノ粒子である場合、それらはナノ粒子を含む水性懸濁液又は水-アルコール懸濁液の形態で、あるいは本発明によるプロセスの段階(1)の液体溶液に分散され得る乾燥形態で、段階(1)の液体溶液に添加することができる。着色剤が塩である場合、それらは、乾燥形態で、又は水溶液又は水-アルコール溶液に溶解した形態で、段階(1)の液体溶液に添加することができる。
【0107】
上述したように、本発明によるプロセスの間に添加される着色剤の量は広範囲に変化することができ、この量は特に、所望の粒子のサイズ及び性質によって決まる。この量はまた、所望の着色のレベル及び使用される着色剤の性質によっても決まる。従って、本発明によるプロセスは、従来のプロセスよりも高レベルの着色剤を粒子中に得ることを可能にする。さらに、本発明によるプロセスは、最初に使用される試薬の損失がほとんどない(使用される試薬が高レベルで使用される)、特に使用される着色剤の損失がほとんどないという利点を有する。より具体的には、少なくとも添加される着色剤の量は、得られる粒子において所望される量と実質的に同じであり得る。例えば、本発明によるプロセスにおいて、特に段階(1)において添加される着色剤の量は、本発明の粒子において最終的に得られる量よりも0~20%多いことがある。
【0108】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明によるプロセスの段階(1)に導入される有機着色剤の量は、本発明の粒子中に存在する着色剤の量が、得られる粒子の重量に対して5~35重量%、好ましくは5~30重量%、より具体的には10~30重量%であるようにされる。
【0109】
本発明によるプロセスにより、高レベルの純度を有する粒子を得ることが可能である。これらの粒子は、使用前に洗浄、熱処理、粉砕などのさらなる処理段階の使用を必ずしも必要としない。
【0110】
本発明によるプロセスでは、反応器に添加されて使用される着色剤以外の成分が転化されるが、それは、本プロセスがほとんど無駄を生じないので重要な利点である。さらに、原子が使用されるレベルは高く、グリーンケミストリーの要件と一致する。
【0111】
本発明によるプロセスは、場合により、少なくとも1つの粒子の後処理段階を含むことができる。例えば、これは、上記のように、適切な溶媒で洗浄する段階、粒子を加熱する段階、及び/又は粒子をコーティングして、特に上記粒子を「密封する」段階であり得る。
【0112】
特に、それらの組成又は結晶構造などの粒子特性を最適化するために、粒子を加熱することによる後処理段階が必要とされ得る。粒子を加熱することによる後処理段階は、反応器中の液滴、そして粒子の速度が低下するほど、一般に必要性は低くなる。
【0113】
本発明によるプロセスでは、プロセスを離れるときの粒子のサイズを正確に制御することができる。実際には、使用されるミストの滴の直径と、プロセスを離れるときの粒子の直径との間に、約5の一定比が存在する。当業者は、前駆体濃度に応じてこれら2つの直径の間の比を決定する方法を知っているであろう。例えば、前駆体濃度が10倍減少した場合、得られる粒子のサイズは、10の立方根、すなわち約3倍減少するだろう。滴の直径はまた、特に、噴霧モードのパラメータ、例えばミストを形成するために使用される圧電素子の周波数によって制御することができる。
【0114】
本発明によるプロセスにより、プロセスを離れる孔のサイズを正確に制御することも可能である。孔サイズは、溶液中の前駆体化合物の選択、それらの濃度、pH及び着色剤の存在によって制御される。本発明において、孔サイズ及び比表面積は、有利には5m/g未満の値に制限されるだろう。
【0115】
本発明の別の目的は、上記のプロセスに従って調製することができる粒子のセットである。こうして調製された粒子は、上記の特徴を有する。このプロセスにより、球形粒子、特に凝集体を有しない粒子を得ることができる。好ましくは、それはまた、各粒子がより小さなサイズの幾つかの粒子の凝集によって構成されないことも可能にする。
【0116】
本発明の最終目的は、上記のマトリックスを本発明による粒子の少なくとも1つのセットと接触させることを含む、本発明による材料の調製プロセスである。そして、このプロセスは、好ましくは、上記のように材料を成形する段階を含む。
【0117】
他に特記しない限り、本発明において言及されるパーセンテージは、質量%である。用語「質量」及び「重量」は、ここでは置き換え可能に使用される。
【0118】
以下の実施例は、本発明の非限定的な例示として提供される。
【実施例
【0119】
[実施例1:粒子合成のためのプロセス]
溶液の調製:以下の化合物を、磁気攪拌しながら、所定の順番でビーカーに添加した:酢酸水溶液70.7g、エタノール14.0gを伴うTEOS14g(すなわち、シリカ4.04g、得られる粒子の75%)。次いで、その溶液を少なくとも1時間撹拌して、TEOSの加水分解-縮合を可能にした。1.35gの有機着色剤の塊(得られる粒子の25%)をゾルに添加した。
【0120】
前駆体溶液を、段階(1)の本発明による熱分解噴霧プロセスによって霧状にした。
【0121】
段階(2)及び(3)において、乾燥段階及び熱分解段階が実施されたオーブンの最高温度は、着色剤を保護するために250℃に設定した。
【0122】
段階(5)において、粒子をフィルター上で直接回収し、必要に応じて空気中で乾燥させた。
【0123】
粒子は球形であり、1.0ミクロンの平均直径を有し、0.3~4ミクロンの個数基準の粒度分布(走査型電子顕微鏡)を有し、顕微鏡画像から計算して0.9の球形度を有していた。比BJH表面積は1.8m/gであり、孔径は2.4nmであった。
【0124】
[実施例2:シリカの表面コーティング又はシェルを有する実施例1の粒子]
15.6gの実施例1の粒子の塊を、80.6gの水-アルコール溶液及び0.4gのアンモニア中で磁気攪拌により分散させた。3.4gのTEOSの塊を徐々に添加した。TEOSの加水分解縮合には、少なくとも1時間のエイジングが必要であった。
【0125】
粒子を遠心分離により分離し、次いで乾燥してシリカ層を固化した。
【0126】
粒子は球形であり、1.0±0.5ミクロンの平均直径を有し、0.3~4ミクロンの個数基準の粒度分布(走査型電子顕微鏡)を有し、顕微鏡画像から計算して0.9の球形度を有していた。
【0127】
図1は、実施例2の粒子の走査型電子顕微鏡画像を示す。粒子は実際に、凝集していない。
【0128】
[実施例3:放出試験]
0.25gの実施例2の微粒子の塊(24%の着色剤を有する)を、20g/Lの微粒子濃度でエタノール中に分散させた。溶液を遠心分離した。沈殿物を乾燥させ、上清をUV-可視分光法によって分析した。上清は0.1g/Lの着色剤を含み、すなわち、2質量%の放出であった。
【符号の説明】
【0129】
1 下部
2 中間部
3 上部
図1
図2