(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】管体の傾き計測装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20231110BHJP
G01C 9/06 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G01C15/00 104B
G01C9/06 E
(21)【出願番号】P 2019043627
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-12-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅路
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 博人
(72)【発明者】
【氏名】永松 圭介
(72)【発明者】
【氏名】山内 亮太
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208219650(CN,U)
【文献】特開平10-281763(JP,A)
【文献】特開平04-146394(JP,A)
【文献】特開2013-231647(JP,A)
【文献】特開平08-313251(JP,A)
【文献】特開平05-141970(JP,A)
【文献】特開2010-150810(JP,A)
【文献】特開平08-068628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設された管体の内部へワイヤで吊下げられて挿入される計測器本体と、
前記計測器本体に設けられ、前記管体の内周壁に当接して前記管体の中心軸に前記計測器本体の軸を合わせる位置決め機構と、
前記計測器本体に設けられ、鉛直線に対する前記計測器本体の軸の傾きを検出する検出手段と、
前記管体の中心軸上に配置され、前記管体の長手方向への前記ワイヤの移動を許容しつつ、前記ワイヤを平面視において前記管体の中心軸上に保持する保持部材と、
を
備え、
前記保持部材は、前記管体の上端口部に設けられ、
前記保持部材は、
前記管体の上端口部に差し込まれる筒部と、
前記筒部から径方向内側に張り出し、前記上端口部に固定される鍔部と、
前記鍔部に傾倒可能に取付けられた複数のアームと、
前記アームの端部に設けられ、前記ワイヤを挟持して前記ワイヤを前記管体の中心軸上に位置決めするローラと、
を有する、
管体の傾き計測装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は、
前記管体の内周壁に当接して転動する回転部材と、
前記計測器本体の外周面に固定され、前記回転部材を支持する弾性部材と、
を有する、請求項1に記載の管体の傾き計測装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記計測器本体の挿入方向に沿って配置された板ばねであり、
前記板ばねの長手方向中央部が前記外周面に固定され、
前記板ばねの長手方向両端部の自由端に前記回転部材が設けられている、
請求項2に記載の管体の傾き計測装置。
【請求項4】
前記検出手段は、ジャイロセンサと加速度センサとを有している、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の管体の傾き計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体の傾き計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘削することなく地盤に埋設された管体の傾きを計測する方法として、例えば管体の内部へ計測器本体を挿入し、計測器本体に設けられた検出手段によって計測器本体の傾きを検出することで管体の傾きを計測する方法が知られている。例えば特許文献1には、縦穴(管体)内で縦穴計測体(計測器本体)を移動させながら、縦穴計測体(計測器本体)に内設されたジャイロ及び加速度計によって縦穴(管体)の管路位置を計測する計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている計測装置では、縦穴計測体の軸の傾きを縦穴の傾きとして推定するため、縦穴計測体の軸と縦穴の中心軸とが一致するように、縦穴内において縦穴計測体を適切な位置に保持する必要がある。
【0005】
しかし、引用文献1に開示されている計測装置では、縦穴計測体の基端に接続されたケーブル(ワイヤ)を滑車やケーブルリールを介してケーブル巻取機で巻取ることで、縦穴内において縦穴計測体を移動させている。このため、特に縦穴の上端部において、ケーブル巻取機によってケーブルを巻取る際、ケーブルに生じた張力によって縦穴計測体の軸が縦穴の中心軸からずれ、縦穴の管路位置の計測精度が低下する虞があった。
【0006】
本発明は上記事実に鑑み、計測器本体の軸が管体の中心軸からずれることを抑制することで、管体の傾きの計測精度を高めることができる管体の傾き計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様の管体の傾き計測装置は、地盤に埋設された管体の内部へワイヤで吊下げられて挿入される計測器本体と、前記計測器本体に設けられ、前記管体の内周壁に当接して前記管体の中心軸に前記計測器本体の軸を合わせる位置決め機構と、前記計測器本体に設けられ、鉛直線に対する前記計測器本体の軸の傾きを検出する検出手段と、前記管体の長手方向への前記ワイヤの移動を許容しつつ、前記ワイヤを平面視において前記管体の中心軸上に保持する保持部材と、を有する。
【0008】
上記構成によれば、地盤に埋設された管体の内部へ挿入され、位置決め機構によって管体の中心軸に軸が合わせられた計測器本体の軸の傾きを、検出手段によって検出することで、管体の傾きを計測することができる。
【0009】
ここで、計測器本体を吊下げるワイヤは、保持部材によって平面視において管体の中心軸上に保持されている。このため、特に管体の上端部において、ワイヤを巻取る際に計測器本体の軸が管体の中心軸からずれることを抑制することができ、管体の傾きの計測精度を高めることができる。
【0010】
第二態様の管体の傾き計測装置は、請求項1に記載の管体の傾き計測装置であって、前記位置決め機構は、前記管体の内周壁に当接して転動する回転部材と、前記計測器本体の外周面に固定され、前記回転部材を支持する弾性部材と、を有する。
【0011】
上記構成によれば、回転部材と弾性部材とによって位置決め機構が構成されている。このため、弾性部材によって計測器本体を付勢して計測器本体の軸を管体の中心軸に合わせつつ、回転部材によって計測器本体を管体の長手方向に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0012】
第三態様の管体の傾き計測装置は、請求項1又は2に記載の管体の傾き計測装置であって、前記保持部材は、前記管体の上端口部に差し込まれる筒部と、前記筒部から径方向内側に張り出し、前記上端口部に固定される鍔部と、前記鍔部に傾倒可能に取付けられた複数のアームと、前記アームの端部に設けられ、前記ワイヤを挟持して前記ワイヤを前記管体の中心軸上に位置決めするローラと、を有する。
【0013】
上記構成によれば、保持部材の筒部から径方向内側に張り出す鍔部に、端部にローラが設けられた複数のアームが取付けられている。このため、筒部を管体の上端口部に固定し、アームを傾倒させてローラによってワイヤを挟持することで、ワイヤを管体の中心軸上に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る管体の傾き計測装置によれば、計測器本体の軸が管体の中心軸からずれることを抑制することで、管体の傾きの計測精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の一例に係る傾き計測装置を示す立断面図である。
【
図2】(A)は傾き計測装置の計測器本体を示す全体図であり、(B)、(C)は傾き計測装置の位置決め機構の動作を示す説明図である。
【
図3】(A)は傾き計測装置の保持部材のアームの非傾倒時の状態を示す立断面図であり、(B)はその平面図である。
【
図4】(A)は傾き計測装置の保持部材のアームの傾倒時の状態を示す立断面図であり、(B)はその平面図である。
【
図5】(A)~(E)は傾き計測装置を用いた管体の傾き計測手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例における管体の傾き計測装置について、
図1~
図5を用いて説明する。なお、図中において、矢印Xは管体、計測器本体の長手方向、又は鉛直方向を指し、矢印Yは管体、計測器本体の径方向、又は水平方向を指す。
【0017】
(構造)
図1に示すように、本実施形態の傾き計測装置10の傾き計測対象である管体12は、例えば鋼管からなる掘削ロッドであり、外周面に螺旋状の攪拌翼14(
図5参照)が形成されている。本実施形態では、管体12は、内管16と、内管16の外側に設けられた外管18とを有する二重管とされており、地盤Gに鉛直方向に埋設されているとともに、上端口部12Aが地盤G上に露出している。
【0018】
なお、管体12は二重管には限らず、一重管や三重管であってもよい。また、管体12は、掘削ロッドに限らず、水道管等の配管であってもよい。さらに、管体12の埋設方向は、鉛直方向に限らず、鉛直方向及び水平方向に対して傾斜して埋設されていてもよい。
【0019】
傾き計測装置10は、計測器本体20と、計測器本体20に設けられた位置決め機構22と、計測器本体20に設けられた検出手段24と、管体12の上端口部12Aに設けられた保持部材26と、を有している。
【0020】
計測器本体20は、例えば長手方向の長さが1m程度とされた円筒状の部材であり、外径が管体12の内管16の内径より小さくされている。なお、計測器本体20の長さや外径は、傾き計測対象である管体12の長さや内径に合わせて適宜定められる。
【0021】
また、計測器本体20の長手方向一端部(上端部)における中心部には、ワイヤ28の一端部が固定されており、計測器本体20は、ワイヤ28で吊下げられて管体12の内管16の内部に挿入されている。ワイヤ28の他端部は、地盤G上に設置された滑車30を介してワイヤ巻取機32に巻掛けられており、ワイヤ巻取機32でワイヤ28を巻取ることで、計測器本体20を引上げることが可能となっている。
【0022】
また、計測器本体20の外周面20Aには、管体12の内管16の内周壁に当接して管体12の中心軸Pに計測器本体20の軸を合わせる位置決め機構22が設けられている。
図2(A)~
図2(C)に示すように、位置決め機構22は、回転機構としての一対のタイヤ34と、一対のタイヤ34を支持する弾性部材としての板ばね36と、で構成されている。
【0023】
本実施形態では、計測器本体20の外周面20Aの四方にそれぞれ設けられた4つの位置決め機構22によってユニットが構成されており、この位置決め機構22のユニットが計測器本体20の長手方向に間隔をあけて複数(本実施形態では2組)設けられている。なお、ユニットを構成する位置決め機構22の数は、少なくとも3つであればよく、6つ以上とされていてもよい。また、ユニットの数も、計測器本体20の長手方向の長さによって適宜定められる。
【0024】
板ばね36は、例えば金属製の薄板であり、計測器本体20の長手方向に沿って外周面20Aに平行に延び、長手方向中央部が計測器本体20の外周面20Aに固定されている。一方、板ばね36の長手方向両端部は計測器本体20の外周面20Aに固定されておらず、板ばね36の長手方向両端部と計測器本体20の外周面20Aとの間に隙間が形成されている。これにより、板ばね36の長手方向両端部が自由端とされ、計測器本体20の径方向内側に向かって弾性変形可能となっている。
【0025】
また、一対のタイヤ34は、板ばね36の長手方向両端部における径方向外側の面、すなわち計測器本体20に対向する面とは反対側の面に、固定部材38を介してそれぞれ回転軸周りに回転可能に固定されている。
【0026】
図2(B)に示すように、板ばね36の非弾性変形時には、タイヤ34の径方向外側における外周面は、計測器本体20の外周面20Aから突出する位置、すなわち計測器本体20の外周面20Aより径方向外側の位置とされている。一方、
図2(C)に示すように、板ばね36の弾性変形時には、タイヤ34の径方向外側における外周面は、計測器本体20の外周面20Aと略同一面上とされている。
【0027】
これにより、
図1に示すように、計測器本体20を管体12の内管16の内部に挿入した際、内管16の内周壁と計測器本体20の外周面20Aとの隙間に合わせて板ばね36が弾性変形し、タイヤ34が管体12の内管16の内周壁に当接して転動する。
【0028】
また、計測器本体20内には、鉛直線に対する計測器本体20の軸の傾きを検出する検出手段24が設けられている。本実施形態では、検出手段24は、ジャイロセンサ40と、加速度センサ42と、で構成されている。ジャイロセンサ40は、計測器本体20の軸周りの回転運動(角速度)を検出するセンサであり、加速度センサ42は、計測器本体20の傾きや直線運動(加速度)を検出するセンサである。
【0029】
また、計測器本体20は、例えばジャイロセンサ40が検出した角速度と、加速度センサ42が検出した加速度と、を記憶する図示しないメモリを備えている。傾き計測作業後に、例えば地盤G上に設けられた図示しない外部装置(コンピュータ等)に内蔵された演算部によって、計測器本体20のメモリに記憶された角速度と加速度とを読み取ることで、計測器本体20の姿勢角(傾き)が算出される。
【0030】
なお、ジャイロセンサ40と加速度センサ42とによって計測器本体20の姿勢角(傾き)を算出する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば演算部が計測器本体20に内蔵されている構成としてもよい。また、検出手段24としては、ジャイロセンサ40及び加速度センサ42の他、傾斜計等の公知の検出手段を用いることも可能である。
【0031】
また、管体12の上端口部12Aには、管体12の長手方向へのワイヤ28の移動を許容しつつ、ワイヤ28を平面視において管体12の中心軸P上に保持する保持部材26が設けられている。
図3(A)、
図3(B)に示すように、保持部材26は、管体12の上端口部12Aに差し込まれる筒部44と、筒部44から径方向内側に張り出す鍔部46と、鍔部46に取付けられた一対のアーム48と、一対のアーム48の上端部にそれぞれ設けられた一対のローラ50、52と、を有している。
【0032】
筒部44は、上端及び下端が開放されており、内径が管体12の外管18の外径より大きくされている。また、筒部44の外周面には、周方向に沿って間隔をあけて複数の雌ねじ穴44Aが形成されており、この雌ねじ穴44Aに螺合されたねじ54によって管体12の外管18を締付けることで、筒部44が管体12の外管18に固定されている。
【0033】
鍔部46は、筒部44の上端に接合された円板状の部材であり、鍔部46の中心部には、貫通孔56が形成されている。貫通孔56の内径は、計測器本体20(
図1参照)の外径より大きくされており、貫通孔56は、計測器本体20を内管16の内部に挿入する際の挿入孔として用いられる。
【0034】
また、鍔部46の下面における貫通孔56の外周には、全周にわたって筒部44側(下側)に突出するガイド部58が形成されている。ガイド部58の外径は、管体12の内管16の内径より小さくされており、鍔部46を管体12の上端口部12Aに載置した際に、ガイド部58が内管16の内部に挿入される。なお、鍔部46は、鍔部46の下面及びガイド部58に沿った形状のカラー60を介して管体12の上端口部12A上に載置されており、筒部44を介して管体12に固定されている。
【0035】
一対のアーム48は、鍔部46の上部において、貫通孔56を挟んで対向する位置にそれぞれ設けられている。アーム48は、立面視で略L字形状とされており、鍔部46の上面から上方に立上がる立上がり部48Aと、立上がり部48Aの上端から径方向内側に延出する延出部48Bと、を有している。
【0036】
アーム48の下端部、すなわち立上がり部48Aの下端部は、鍔部46の上面に固定部材62を介して回転軸周りに回転可能に固定されている。これにより、アーム48が非傾倒状態(
図3参照)と、径方向外側に傾倒した傾倒状態(
図4参照)とに変形可能とされている。なお、一対のアーム48同士は、例えばコイルばね64によって互いに繋がれており、コイルばね64によって径方向内側に付勢されている。
【0037】
一対のアーム48の上端部、すなわち延出部48Bの先端部には、それぞれローラ50、52が取り付けられている。ローラ50、52は、互いに回転軸周りに回転可能とされており、アーム48の非傾倒状態(
図3に示す状態)において、径方向内側における外周面が互いに接するように配置されている。
【0038】
また、
図3(B)に示すように、一方のローラ52の外周面には、ワイヤ28が挿通される溝52Aが形成されており、アーム48の非傾倒状態では、溝52Aに挿通されたワイヤ28を一対のローラ50、52で挟持することで、ワイヤ28が管体12の中心軸P上に位置決めされる。
【0039】
一方、
図4(A)、
図4(B)に示すように、アーム48の傾倒状態では、アーム48が径方向外側に傾倒することにより、一対のローラ50、52間の距離が広がり、一対のローラ50、52の径方向内側における外周面の間に隙間が形成される。この隙間は、貫通孔56の内径より大きくされており、計測器本体20が貫通孔56に挿入される際に、ローラ50、52が計測器本体20と接触しない構成となっている。
【0040】
(計測方法)
次に、本実施形態の傾き計測装置10を用いて管体12の傾きを計測する手順について説明する。
【0041】
まず、
図5(A)に示すように、地盤G上に設置されたオーガ機やパイルドライバ等の杭打ち装置66によって、管体12を回転させながら地盤Gに打ち込み、地盤Gに掘削孔68を形成する。また、掘削孔68内に図示しないセメントミルクを注入し、掘削土とセメントミルクとを混合撹拌する。
【0042】
このとき、例えば地盤G上に設置された光学式測定装置70によって地盤G上における管体12の傾きを計測し、管体12の鉛直度を管理しながら管体12を地盤Gに打ち込む。なお、光学式測定装置70は必須の構成ではなく、例えば目視によって管体12の鉛直度を管理しながら管体12を地盤Gに打ち込む構成としてもよい。
【0043】
一般的に、地盤Gに掘削孔68を形成する場合には、複数の管体12を切継ぎしながら掘削を行っていく。このため、本実施形態では、
図5(B)に示すように、1本の管体12の地盤Gへの挿入が終わり、次の管体12を切継ぐタイミングで管体12の傾きを計測する。
【0044】
具体的には、
図1に示すように、まず、地盤G上に露出している管体12の上端口部12Aに、保持部材26を設置する。そして、
図4(A)に示すように、アーム48を傾倒させて一対のローラ50、52間に隙間をあけ、セメントミルクが充填された管体12の内管16の内部に、貫通孔56を介して計測器本体20を挿入する。
【0045】
その後、ワイヤ巻取機32(
図1、
図5参照)からワイヤ28を繰出しながら計測器本体20を管体12の下端部(掘削孔68の底部)まで落とす。そして、
図3(A)に示すように、アーム48を非傾倒状態に戻し、一対のローラ50、52によってワイヤ28を挟持する。
【0046】
次に、管体12の下端部において、計測器本体20を30秒程度静止させながら、ジャイロセンサ40及び加速度センサ42(
図1参照)によって計測器本体20の傾きを検出する。その後、
図1に示すように、ワイヤ巻取機32によってワイヤ28を巻取ることで、管体12内において計測器本体20を引上げ、計測器本体20を引上げながら、ジャイロセンサ40及び加速度センサ42によって計測器本体20の傾きを検出する。
【0047】
なお、ワイヤ巻取機32によってワイヤ28を巻取る際、ワイヤ28を挟持する一対のローラ50、52がそれぞれ回転することで、ワイヤ28は、管体12の中心軸P上に位置決めされた状態で管体12の長手方向に沿って移動する。
【0048】
計測器本体20を管体12の上端部まで引上げた後、上端部において計測器本体20を再び30秒程度静止させながら、ジャイロセンサ40及び加速度センサ42によって計測器本体20の傾きを検出する。このように、管体12の下端部及び上端部でそれぞれ計測器本体20を静止させることで、ジャイロセンサ40及び加速度センサ42によって検出された計測器本体20の傾きを較正(キャリブレーション)する。その後、計測器本体20を管体12から引き抜く。
【0049】
管体12の傾き計測完了後、
図5(C)に示すように、切継いだ管体12を杭打ち装置66によって回転させながら地盤Gに打ち込み、地盤Gに掘削孔68を形成していく。そして、
図5(D)に示すように、管体12が着底して掘削孔68の形成が完了したタイミングで、再び計測器本体20を用いて上述の手順で管体12の傾きを計測する。
【0050】
2回目の管体12の傾き計測完了後、
図5(E)に示すように、管体12を切離しながら管体12を掘削孔68から引き抜く。なお、管体12の傾き計測のタイミングは、上述した切継ぎ時及び着底時の2つに限らず、例えば
図5(E)に示す管体12を切離すタイミングで管体12の傾きを計測してもよい。
【0051】
(作用、効果)
本実施形態の傾き計測装置10によれば、計測器本体20に検出手段24が設けられている。このため、地盤Gに埋設された管体12の内部へ計測器本体20を挿入し、検出手段24によって計測器本体20の軸の傾きを検出することで、管体12の傾きを計測することができる。
【0052】
また、検出手段24として、ジャイロセンサ40及び加速度センサ42を用いているため、例えば傾斜計を用いる構成と比較して、計測時間を短縮することができるとともに、計測精度を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、計測器本体20に位置決め機構22が設けられているため、計測器本体20の軸を管体12の中心軸Pに合わせることができ、計測器本体20の傾き計測精度を高めることができる。
【0054】
特に、本実施形態によれば、管体12内管16の内周壁に当接して転動するタイヤ34と、計測器本体20の外周面20Aに固定されてタイヤ34を支持する板ばね36と、によって位置決め機構22が構成されている。このため、板ばね36によって計測器本体20を付勢して計測器本体20の軸を管体12の中心軸Pに合わせつつ、タイヤ34によって計測器本体20を管体12の長手方向に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0055】
また、
図1に示すように、ワイヤ巻取機32によってワイヤ28を巻取る際、一般的に、ワイヤ28には滑車30方向に張力Tがかかる。特に管体12の上端部では、この張力Tによって計測器本体20の上端部が滑車30方向に引張られ、計測器本体20の軸が管体12の中心軸Pからずれ易い。上述したように、管体12の上端部では、計測器本体20の傾きの較正(キャリブレーション)が行われるため、計測器本体20の軸が管体12の中心軸Pからずれると、計測結果に誤差が生じる。
【0056】
ここで、本実施形態によれば、計測器本体20を吊下げるワイヤ28が、保持部材26によって平面視において管体12の中心軸P上に保持されている。このため、ワイヤ28を巻取る際にワイヤ28に滑車30方向に張力Tがかかった場合であっても、ワイヤ28が管体12の径方向にずれ動くことを抑制することができる。
【0057】
これにより、特に管体12の上端部において、計測器本体20の軸が管体12の中心軸Pからずれることを抑制することができ、計測器本体20の傾きの計測精度、すなわち管体12の傾きの計測精度を高めることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、筒部44と、鍔部46と、一対のアーム48と、アーム48の上端部に取付けられた一対のローラ50、52と、によって保持部材26が構成されている。このため、筒部44を管体12の上端口部12Aに固定し、アーム48を傾倒させてローラ50、52によってワイヤ28を挟持することで、管体12の長手方向へのワイヤ28の移動を許容しつつ、ワイヤ28を管体12の中心軸P上に位置決めすることができる。
【0059】
また、一方のローラ52の外周面に溝52Aが形成されているため、ワイヤ28を溝52Aに挿通させることで、一対のローラ50、52によってワイヤ28の径方向外側を全周にわたって囲むことができる。これにより、単に一対のローラ50、52の外周面同士でワイヤ28を両側から挟込む構成と比較して、ローラ50、52の外周面に沿ってワイヤ28が径方向にずれ動くことを抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、保持部材26の鍔部46の中心部に貫通孔56が形成されているため、保持部材26を管体12の上端口部12Aに固定した状態であっても、管体12の内部に計測器本体20を挿入することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、管体12の切継ぎ時と着底時の2つのタイミングで管体12の傾きを計測している。このため、例えば切継ぎ時に管体12の傾きを計測することで、掘削孔68の形成途中で管体12の角度を修正することができ、着底時に管体12の傾きを計測することで、掘削孔68の出来高を確認することができる。
【0062】
さらに、管体12を切継ぐタイミングで管体12の傾きを計測するため、切継ぎ用の次の管体12を準備している合間に管体12の傾きを計測することができる。これにより、傾きの計測によって管体12の地盤Gへの打込み作業が中断することを抑制することができ、施工時間が増加することを抑制することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本発明について実施形態の一例について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態では、位置決め機構22が板ばね36とタイヤ34とで構成されていた。しかし、位置決め機構22は、少なくとも計測器本体20の軸を管体12の中心軸Pに合わせた状態で計測器本体20を管体12内で長手方向に移動可能に保持する構成とされていればよく、実施形態の構成に限らない。
【0065】
また、保持部材26も、少なくともワイヤ28を管体12の中心軸P上に位置決めすることができる構成とされていればよく、実施形態の構成に限らない。例えば、保持部材の鍔部に外周部から中心部へ延びるスリットを形成しておき、管体12に計測器本体20を挿入した後で、スリットにワイヤ28を通して管体12の上端口部12Aに保持部材を固定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 傾き計測装置
12 管体
12A 上端口部
20 計測器本体
20A 外周面
22 位置決め機構
24 検出手段
26 保持部材
28 ワイヤ
34 タイヤ(回転部材の一例)
36 板ばね(弾性部材の一例)
44 筒部
46 鍔部
48 アーム
50、52 ローラ
G 地盤
P 中心軸