(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】パテ組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20231110BHJP
C09D 5/34 20060101ALI20231110BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20231110BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231110BHJP
C09D 109/02 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/34
C09D7/43
C09D7/63
C09D109/02
(21)【出願番号】P 2019083129
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 玄太
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏之
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-018564(JP,A)
【文献】特開2016-180094(JP,A)
【文献】特開2008-024843(JP,A)
【文献】特開平09-206671(JP,A)
【文献】特開2006-241211(JP,A)
【文献】特開平07-062292(JP,A)
【文献】特開2019-085460(JP,A)
【文献】特開2004-136525(JP,A)
【文献】特開平07-018190(JP,A)
【文献】特開平10-339040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 163/00
C09D 5/34
C09D 7/43
C09D 7/63
C09D 109/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)、脂肪族アミン(B)およびシリカ(C)を含有するパテ組成物であって、
該パテ組成物の不揮発分100質量%に対する前記シリカ(C)の含有量が5質量%以上であり、
前記シリカ(C)が親水性フュームドシリカであり、
前記エポキシ化合物(A)が、脂肪酸変性エポキシ化合物(A1)を含む、
パテ組成物。
【請求項2】
さらに、アクリロニトリルブタジエン共重合体(D)を含有する、請求項
1に記載のパテ組成物。
【請求項3】
前記共重合体(D)の含有量が、パテ組成物の不揮発分100質量%に対し10~40質量%である、請求項
2に記載のパテ組成物。
【請求項4】
船舶用である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のパテ組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のパテ組成物から形成されたパテ成形体。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のパテ組成物を施工箇所に塗布した後、硬化させてパテ成形体を製造する工程を含む、パテ成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パテ組成物、パテ成形体およびパテ成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機器や部品などの据付け等のために、所定の空間に樹脂充填材を流し込み、その後硬化させる工程が行われている。この際には、流し込んだ充填材が漏れ出て、所定の空間を充填できなくなることを防ぐために、このような充填材の漏出を防ぐための囲い(ダム)を設け、さらに、充填材がダムから漏出することを防ぐための封止材(ダムの補強材)を設けた上で、充填材を流し込んでいる。
【0003】
このような例としては、船舶の船尾管周囲に船舶用充填材を施工する場合が挙げられる。この場合の具体例としては、特許文献1の
図4や
図5の態様が挙げられる。これらの図において、33や35として示されている封止用スポンジが前記ダムに相当し、34
や36として示されている封止用樹脂が前記封止材に相当する。
また、前記のような封止材は、舵頭軸受部周辺等の各種船舶用機器に、船舶用充填材を施工する場合等にも用いられている。
【0004】
前記封止材としては、パテ組成物が用いられている。
また、パテ組成物は、構造物欠損部の充填補修等にも使用されている。
【0005】
前記パテ組成物としては、ウィスカおよびフィブリル化繊維を含むパテ状2成分型エポキシ樹脂組成物が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-160697号公報
【文献】特開2006-219624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パテ組成物は、高粘度であるため、施工の際には、ヘラやコテを用いた施工が行われているが、所望の成形体(例:前記封止材)を形成するために、ヘラやコテからの分離性に優れる(パテ組成物からヘラやコテを離す時に、該組成物がヘラやコテについてこない、糸引きが生じ難い)ことが求められる。以下、この分離性を「キレ性」ともいう。
【0008】
また、舵頭軸受に船舶用充填材を施工する場合等の用途によっては、施工されたパテ組成物面が真下(重力方向)を向くような部分にパテ組成物を施工する必要があり、このような場合、特に、該組成物には、タレず、保形性に優れることが求められる。以下、この保形性を「耐タレ性」ともいう。
【0009】
さらに、前記充填材を充填する際には、ポンプ等で充填材を圧送して充填することがある。この場合には、前記封止材にも圧力がかかるため、パテ組成物から形成される成形体(パテ成形体)には、このような圧力に耐え得る適度な可撓性も要求される。
【0010】
しかしながら、従来のパテ組成物には、前記キレ性や耐タレ性の点、また、得られるパテ成形体の可撓性の点で改良の余地があった。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、適度な可撓性を有するパテ成形体を形成できる、キレ性および耐タレ性に優れるパテ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、所定の組成物によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は以下の通りである。
【0013】
[1] エポキシ化合物(A)、脂肪族アミン(B)およびシリカ(C)を含有するパテ組成物であって、
該パテ組成物の不揮発分100質量%に対する前記シリカ(C)の含有量が5質量%以上である、
パテ組成物。
【0014】
[2] 前記シリカ(C)が親水性フュームドシリカである、[1]に記載のパテ組成物。
【0015】
[3] さらに、アクリロニトリルブタジエン共重合体(D)を含有する、[1]または[2]に記載のパテ組成物。
[4] 前記共重合体(D)の含有量が、パテ組成物の不揮発分100質量%に対し10~40質量%である、[3]に記載のパテ組成物。
【0016】
[5] 前記エポキシ化合物(A)が、脂肪酸変性エポキシ化合物(A1)を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のパテ組成物。
【0017】
[6] 船舶用である、[1]~[5]のいずれかに記載のパテ組成物。
【0018】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のパテ組成物から形成されたパテ成形体。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載のパテ組成物を施工箇所に塗布した後、硬化させてパテ成形体を製造する工程を含む、パテ成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、キレ性に優れ、垂直面や真上(天井面)等に厚塗りしてもタレない保形性に優れるパテ組成物が得られ、適度な可撓性を有するパテ成形体を形成できる。
また、本発明によれば、主剤成分と硬化剤成分の2成分型のパテ組成物とした場合であっても、これら主剤成分と硬化剤成分との混合性に優れるパテ組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例の塗布性(キレ性)における○の場合の一例を示す写真である。
【
図2】
図2は、実施例の塗布性(キレ性)における×の場合の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪パテ組成物≫
本発明に係るパテ組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、エポキシ化合物(A)(以下「成分(A)」ともいう。他の成分についても同様。)、脂肪族アミン(B)およびシリカ(C)を含有し、本組成物の不揮発分100質量%に対する前記シリカ(C)の含有量が5質量%以上である。
本組成物は、特定の成分(B)と特定量の成分(C)とを含有するため、パテ組成物とすることができ、前記効果を奏する。
【0022】
なお、本組成物の不揮発分は、JIS K 5601-1-2:2008(加熱温度:125℃、加熱時間:60分)に従って得られる加熱残分を意味する。
【0023】
前記パテ組成物とは、外部から力がかからない限り実質的に流動性を示さない、具体的には、粘土状の組成物のことをいう。好ましくは、E型粘度計で測定した粘度が、150Pa・s/25℃以上の組成物である。
【0024】
本組成物は、1成分型の組成物であってもよいが、通常、成分(A)を含有する主剤成分と、成分(B)を含有する硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である。また、必要により、3成分型以上の組成物としてもよい。
本組成物が、2成分型以上の組成物である場合、前記成分(C)は、主剤成分に含まれていてもよく、硬化剤成分に含まれていてもよく、第3成分に含まれていてもよく、これらのうちの2つ以上の成分に含まれていてもよい。
これら主剤成分、硬化剤成分(および第3成分等)は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に混合して用いられる。
【0025】
本組成物は、粘度が前記範囲にある組成物となれば、溶剤等の揮発成分を含んでいてもよいが、耐タレ性に優れる組成物を容易に得ることができ、パテ成形体を形成する際の硬化収縮を抑制できる等の点から、揮発成分を実質的に含まないことが好ましい。
このような実質的に含まないとは、本組成物中の揮発成分の含有量が、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であることをいう。
【0026】
本組成物の比重は、耐タレ性により優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.9~1.5、より好ましくは1.0~1.3である。
本発明において、組成物の比重は、JIS Z 8807:2012に基づいて測定した値である。
【0027】
本組成物は前記効果を奏するため、機器や部品などを据付け、固定等するために、所定の空間に樹脂充填材を流し込む際の封止材として好適に使用され、特に、船舶用として好適に使用され、具体的には、船舶の船尾管や舵頭軸受に特に好適に使用される。
また、本組成物は、構造物欠損部の充填補修等にも使用することができる。
【0028】
<エポキシ化合物(A)>
成分(A)としては、下記成分(D)以外の化合物であって、エポキシ基を有する化合物であれば特に制限されないが、脂肪酸変性エポキシ化合物(A1)、該化合物(A1)以外のモノエポキシ化合物(A2)、ならびに、該化合物(A1)および(A2)以外のエポキシ化合物(A3)が挙げられる。
本組成物は、伸縮性や可撓性、キレ性に優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、成分(A1)を含むことが好ましく、成分(A1)と成分(A2)または(A3)とを含むことがより好ましく、成分(A1)~(A3)を含むことが特に好ましい。
成分(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
本組成物の不揮発分100質量%に対する成分(A)の含有量は、適度な可撓性を有し、被塗物への密着性に優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~45質量%である。
【0030】
[脂肪酸変性エポキシ化合物(A1)]
成分(A1)は、例えば、1種または2種以上のエポキシ化合物(a1)と、1種または2種以上の脂肪酸またはその誘導体(a2)とを用いて反応させることで得ることができ、また、脂肪酸またはその誘導体にエポキシ基を導入することで得ることができる。
成分(A1)を用いることで、伸びや伸縮性、キレ性により優れ、適度な可撓性を有するパテ成形体を容易に形成できる。
成分(A1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0031】
前記エポキシ化合物(a1)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、具体的には、下記(A3)で例示するエポキシ樹脂、エピクロルヒドリン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等のエポキシモノマーが挙げられる。
【0032】
造膜性および耐腐食性に優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、成分(A1)における、前記エポキシ化合物(a1)由来の構造単位の含有量は、好ましくは15~75質量%、より好ましくは20~60質量%である。
【0033】
前記脂肪酸またはその誘導体(a2)としては、得られる組成物やパテ成形体に弾性を付与することができる等の点から、高級脂肪酸またはその誘導体が好ましい。
前記高級脂肪酸とは、炭素数が8以上の脂肪族カルボン酸のことをいい、好ましくは炭素数が12以上の脂肪族カルボン酸である。また、前記誘導体としては、高級脂肪酸とグリセリンとのエステルであるトリグリセリドなどが好ましい。
【0034】
前記脂肪酸としては、不飽和脂肪酸が好ましい。この不飽和脂肪酸としては、カルボキシ基の炭素原子も含む炭素原子数が、好ましくは12~24個、より好ましくは16~18個であり、かつ、1分子中に不飽和結合を1個または2個以上有するカルボン酸が望ましい。このような不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸等の不飽和結合を1個有する脂肪酸;リノール酸等の不飽和結合を2個有する脂肪酸;リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和結合を3個以上有する脂肪酸が挙げられる。さらに、動植物から得られる脂肪酸も用いることができ、該脂肪酸としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、アマニ油脂肪酸が挙げられる。また、前記脂肪酸は、不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸であってもよい。
前記脂肪酸の誘導体としては、具体的には、例えば、ヒマシ油、大豆油、トール油、アマニ油が挙げられる。
【0035】
乾燥性、顔料分散性および耐腐食性に優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、成分(A1)における、前記脂肪酸またはその誘導体(a2)由来の構造単位の含有量は、好ましくは15~85質量%、より好ましくは20~80質量%である。
【0036】
前記エポキシ化合物(a1)と前記脂肪酸またはその誘導体(a2)とを反応させる際には、エーテル化反応などの副反応を抑制すること等を目的として、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミンなどを用いてもよい。また、ラジカル重合禁止剤などの重合禁止剤を用いてもよい。
【0037】
さらに、前記エポキシ化合物(a1)と前記脂肪酸またはその誘導体(a2)とを反応させる際には、多価アルコールを使用してもよい。
該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールが挙げられる。
【0038】
前記脂肪酸またはその誘導体にエポキシ基を導入する方法としては、例えば、脂肪酸またはその誘導体が有する二重結合を酸化してエポキシ基とする方法が挙げられる。このような方法で得られる成分(A1)としては、例えば、リノール酸のトリグリセリドを主成分とするアマニ油の二重結合を酸化して得られるアマニ油変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0039】
成分(A1)としては、伸びや伸縮性、キレ性により優れ、適度な可撓性を有するパテ成形体を容易に形成できる等の点から、ヒマシ油変性エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0040】
成分(A1)としては、従来公知の方法で合成した化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、ヒマシ油変性エポキシ樹脂として、ERISYS GE-35(CVC Thermoset Specialities社製)、HELOXY 505(Hexion社製)等が挙げられ、ダイマー酸変性エポキシ樹脂として、ERISYS GS-120(CVC Thermoset Specialities社製)、jER 871、jER 872(三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0041】
伸びや伸縮性、キレ性により優れ、適度な可撓性を有するパテ成形体を容易に形成できる等の点から、成分(A1)のエポキシ当量は、好ましくは50~1,000、より好ましくは100~800である。
本発明におけるエポキシ当量はJIS K 7236:2001に基づいて算出される。
【0042】
本組成物が成分(A1)を含有する場合、適度な可撓性を有し、被塗物への密着性に優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対する該成分(A1)の含有量は、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%である。
【0043】
[モノエポキシ化合物(A2)]
成分(A2)は、成分(A1)以外のエポキシ化合物であれば特に制限されないが、分子内にエポキシ基を1個有する化合物のことをいう。
成分(A2)を用いることで、適度な可撓性を有し、被塗物への密着性に優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる。
成分(A2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0044】
成分(A2)としては、モノグリシジルエーテルが好ましく、その具体例として、アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル(アルキルフェニルグリシジルエーテル等)が挙げられ、これらの中でも、アルキルグリシジルエーテルが好ましい。
アルキルグリシジルエーテルおよびアルキルフェニルグリシジルエーテルのアルキル部分の炭素数は、通常1~20、好ましくは5~18、より好ましくは10~16である。
【0045】
成分(A2)は、従来公知の方法で合成した化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、EPODIL 759(アルキル(C12-13)グリシジルエーテル、Evonik Corporation製、エポキシ当量:275~290、粘度:≦8mPa・s/25℃)が挙げられる。
【0046】
成分(A2)のエポキシ当量は、通常50~1,000であり、好ましくは100~600、より好ましくは150~500である。
成分(A2)のエポキシ当量が前記範囲にあると、可撓性や被塗物への密着性等に優れる組成物を容易に得ることができる。
【0047】
本組成物が成分(A2)を含有する場合、適度な可撓性を有し、被塗物への密着性に優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対する該成分(A2)の含有量は、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~15質量%である。
【0048】
[エポキシ化合物(A3)]
成分(A3)は、成分(A1)および(A2)以外のエポキシ化合物であれば特に制限されないが、得られる組成物やパテ成形体に、耐熱性、高弾性率、寸法安定性、耐薬品性等の、優れた機械的・化学的性質を付与できる等の点から、エポキシ樹脂であることが好ましい。
成分(A3)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0049】
成分(A3)としては、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーまたはオリゴマー、および、そのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。
【0050】
このような成分(A3)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂が挙げられる。
【0051】
これらの中でも、適度な硬度、弾性率および耐熱性を有する組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型のエポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0052】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリン-ビスフェノールAエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテルタイプ);エピクロルヒドリン-ビスフェノールADエポキシ樹脂;エピクロルヒドリン-ビスフェノールFエポキシ樹脂;エポキシノボラック樹脂;3,4-エポキシフェノキシ-3',4'-エポキシフェニルカルボキシメタン等から得られる脂環式エポキシ樹脂;エピクロルヒドリン-ビスフェノールAエポキシ樹脂中のベンゼン環に結合している水素原子の少なくとも1つが臭素原子で置換された臭素化エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンと脂肪族2価アルコールとから得られる脂肪族エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンとトリ(ヒドロキシフェニル)メタンとから得られる多官能性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0053】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテルなどの縮重合物が挙げられる。
【0054】
成分(A3)は、従来公知の方法で合成した化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
成分(A3)は、パテ組成物を容易に調製することができる等の点から、常温(15~25℃の温度、以下同様。)で液状の化合物が好ましい。
該常温で液状の化合物の市販品としては、例えば、NPEL-128(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、Nan Ya Plastics Corporation製、エポキシ当量:180~190、粘度:12,000~15,000mPa・s/25℃)、jER 825(三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:170~180、粘度:4,000~7,000mPa・s/25℃)、jER 828(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:180~190、粘度:12,000~15,000mPa・s/25℃)、エポトート YD-128(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、新日鉄住金化学(株)製、エポキシ当量:184~194、粘度:11,000~15,000mPa・s/25℃)、エポトート YDF-170(新日鉄住金化学(株)製、エポキシ当量:160~180、粘度:2,000~5,000mPa・s/25℃)、エピクロン 840(DIC(株)製、エポキシ当量:180~190、粘度:9,000~11,000mPa・s/25℃)、エピクロン 850(DIC(株)製、エポキシ当量:183~193、粘度:11,000~15,000mPa・s/25℃)、スミエポキシ ELA128(住友化学(株)製)、DER331(DOW Chemical社製、エポキシ当量:182~192、粘度:11,000~14,000mPa・s/25℃)、フレップ 60(東レ・ファインケミカル(株)製、エポキシ当量:約280、粘度:約17,000mPa・s/25℃)が挙げられる。
【0055】
成分(A3)のエポキシ当量は、好ましくは100~1,000、より好ましくは150~600である。
成分(A3)のエポキシ当量が前記範囲にあると、速乾性に優れる組成物を容易に得ることができる。
【0056】
成分(A3)の粘度は、好ましくは100~100,000mPa・s/25℃、より好ましくは500~50,000mPa・s/25℃である。
成分(A3)の粘度が前記範囲にあると、耐タレ性により優れる組成物を容易に得ることができる。
前記粘度は、B型粘度計(Thermo scientific社製、ビスコテスター 「VT6plus」)を用いて測定することができる。
【0057】
本組成物が成分(A3)を含有する場合、速乾性、柔軟性および被塗物との密着性に優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対する該成分(A3)の含有量は、好ましくは10~30質量%、より好ましくは15~25質量%である。
【0058】
<脂肪族アミン(B)>
成分(B)としては後述する三級アミン(3級アミノ基のみを有するアミン化合物)を除く、脂肪族アミンであれば特に制限されない。
成分(B)を成分(C)等と共に用いることで、グリース状の粘性の高い混合物を容易に得ることができ、キレ性および耐タレ性に優れる組成物を容易に得ることができる。
成分(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0059】
アミン化合物は、アミノ基が結合している炭素の種類により区別され、脂肪族アミンは、脂肪族炭素に結合したアミノ基を少なくとも1つ有する化合物のことをいう。また、成分(B)が下記変性物である場合、変性後の化合物が、脂肪族炭素に結合したアミノ基を少なくとも1つ有する。
なお、本発明における脂肪族アミンとは、ポリオキシアルキレン構造(-(RO)n-[Rはアルキル基であり、nは3以上の実数である])を有するアミン以外の化合物のことをいう。このようなポリオキシアルキレン構造を有するアミンは、成分(C)等と共に用いても、グリース状の粘性の高い混合物を得難い。
【0060】
成分(B)としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミン、脂環族アミンが挙げられる。
成分(B)としては、低粘度の化合物であり、硬化性に優れるパテ組成物を容易に得ることができる等の点から、脂環族アミン以外のアミン化合物であることが好ましく、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミンがより好ましい。
脂環族アミンを用いると、得られる組成物の硬化性および乾燥性が劣る場合がある。
【0061】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-R1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0062】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(CmH2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン、4-アミノメチルオクタメチレンジアミン等が挙げられる。
【0063】
前記アルキルアミノアルキルアミンとしては、例えば、式:「R2
2N-(CH2)p-NH2」(R2は独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり(但し、少なくとも1つのR2は炭素数1~8のアルキル基である。)、pは1~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミン等が挙げられる。
【0064】
これら以外の脂肪族アミンとしては、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、3,3'-メチルイミノビス(プロピルアミン)、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス(3-アミノプロピルオキシ)エタン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ココアルキルアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-(2'-アミノエチルピペラジン)、1-[2'-(2''-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン等が挙げられる。
【0065】
前記脂環族アミンとしては、具体的には、シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4'-メチレンビスシクロヘキシルアミン)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、4,4'-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリン等が挙げられる。
【0066】
成分(B)としては、さらに、前述した化合物の変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンであってもよい。
【0067】
成分(B)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品でもよい。
該市販品としては、例えば、変性脂肪族ポリアミンである「JOINTMINE CT-4150」(YUN THE INDUSTRIAL CO., LTD製)、脂環式ポリアミンである「Amicure PACM」(Evonik Corporation製)、脂肪族アミンのエポキシアダクトである「AD-71」(大竹明新化学(株)製)が挙げられる。
【0068】
成分(A)との反応が速く、常温硬化性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、成分(B)の分子量は、好ましくは1,000以下、より好ましくは50~800である。
【0069】
成分(B)の活性水素当量は、強度および乾燥性により優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは10~1,000、より好ましくは20~400である。
【0070】
耐タレ性および基材への密着性により優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、成分(B)は、下記式(1)で算出される反応比が、好ましくは0.7~1.2、より好ましくは0.8~1.1となるような量で用いることが望ましい。
【0071】
反応比={(成分(B)の配合量/成分(B)の活性水素当量)+(成分(A)に対して反応性を有する成分の配合量/成分(A)に対して反応性を有する成分の官能基当量)}/{(成分(A)の配合量/成分(A)のエポキシ当量)+(成分(B)に対して反応性を有する成分の配合量/成分(B)に対して反応性を有する成分の官能基当量)} ・・・(1)
【0072】
ここで、前記式(1)における「成分(B)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述する成分(D)および(E)が挙げられ、また、「成分(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述する成分(D)、(E)および成分(B)以外の硬化剤が挙げられる。前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分1molの質量からその中に含まれる官能基のmol数を除して得られた1mol官能基あたりの質量(g)を意味する。
後述の成分(D)および(E)としては、反応性基としてアミノ基やエポキシ基を有する化合物を使用することができるため、反応性基の種類によって、成分(A)に対して反応性を有するのか、成分(B)に対して反応性を有するのかを判断し、反応比を算出する必要がある。
【0073】
<シリカ(C)>
成分(C)としては、例えば、フュームドシリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカが挙げられる。これらの中でも、耐タレ性により優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、フュームドシリカが好ましい。
なお、成分(C)には、ガラスは含まれない。
成分(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0074】
前記フュームドシリカは、酸化ケイ素を主成分とする化合物であり、従来公知の方法で合成することができる。
前記フュームドシリカは、その表面のシラノール基の少なくとも一部を有機基等で変性した疎水性フュームドシリカであってもよいが、キレ性および耐タレ性により優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、親水性フュームドシリカであることが好ましい。特に、親水性フュームドシリカを成分(B)と混合すると、グリース状の粘性の高い混合物を容易に得ることができることがわかった。従って、成分(C)として、親水性フュームドシリカを用いることで、本組成物を増粘させることができ、また、キレ性および耐タレ性により優れる組成物を容易に得ることができるため好ましい。
【0075】
前記フュームドシリカのBET法で測定した比表面積は、耐タレ性により優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは30~450m/g、より好ましくは100~300m/gである。
【0076】
成分(C)の一次平均粒子径は、キレ性および耐タレ性により優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは3~100nm、より好ましくは5~50nmである。
この一次平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡(5~20万倍)で観察し、画像解析装置を用いて計測することができる。
【0077】
成分(C)としては、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、親水性フュームドシリカの市販品として、例えば、AEROSIL 90、AEROSIL 130、AEROSIL 150、AEROSIL 200、AEROSIL 255、AEROSIL 300、AEROSIL 380、AEROSIL OX 50、AEROSIL TT 600、AEROSIL 200F、AEROSIL 380F、AEROSIL 200 Pharma、AEROSIL 300 Pharma(以上、いずれも日本アエロジル(株)製)が挙げられる。
【0078】
本組成物の不揮発分100質量%に対する成分(C)の含有量は、5質量%以上であり、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5.5~30質量%である。
成分(C)の含有量が前記範囲にあると、キレ性および耐タレ性により優れる組成物を容易に得ることができ、適度な可撓性を有するパテ成形体を形成できる。成分(C)の含有量が5質量%未満であると、キレ性および耐タレ性に優れる組成物を得ることができない。成分(C)の含有量が前記範囲の上限を超えると、得られる組成物の撹拌や取扱いが困難になる場合がある。
【0079】
また、成分(C)が、親水性フュームドシリカである場合、本組成物の不揮発分100質量%に対する該親水性フュームドシリカの含有量は、前記と同様の理由から、好ましくは5~12質量%、より好ましくは5.5~10質量%である。
【0080】
<アクリロニトリルブタジエン共重合体(D)>
本組成物は、伸びや伸縮性、耐タレ性に優れ、適度な可撓性を有するパテ成形体を容易に形成でき、得られる組成物の粘度を上げることができる等の点から、アクリロニトリルブタジエン共重合体(D)を含有することが好ましい。
成分(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0081】
成分(D)としては、アクリロニトリルとブタジエンとを用いて得られた共重合体であれば特に制限されないが、アクリロニトリル由来の構造単位とブタジエン由来の構造単位との合計100質量%に対し、アクリロニトリル由来の構造単位の含有量が15~50質量%である共重合体が好ましい。
【0082】
成分(D)は、反応性基を有するアクリロニトリルブタジエン共重合体であることが好ましく、主鎖にアクリロニトリルポリブタジエン骨格を有し、末端に、エポキシ基またはエポキシ基と反応する官能基(例:アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基)を有する共重合体であることがより好ましい。
反応性基を有するアクリロニトリルブタジエン共重合体を用いることで、得られるパテ成形体の耐水性を低下させずに、可撓性を付与し、弾性を向上させることができ、また、圧力がかかった場合でも、その圧力に追従可能なパテ成形体を容易に得ることができる。
【0083】
なお、本組成物が主剤成分と硬化剤成分とならなる2成分型の組成物である場合であって、成分(D)がエポキシ基を有する共重合体である場合、該共重合体は、主剤成分に配合することが好ましく、成分(D)がエポキシ基と反応する官能基を有する共重合体である場合、該共重合体は、硬化剤成分に配合することが好ましい。
【0084】
伸びや伸縮性、耐タレ性に優れ、適度な可撓性を有するパテ成形体を容易に形成できる等の点から、成分(D)の25℃における粘度は、好ましくは50~400Pa・s、より好ましくは100~300Pa・sである。
【0085】
成分(D)は、従来公知の方法で合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、反応性基を有するアクリロニトリルブタジエン共重合体の市販品として、例えば、末端にアミノ基を有する「Hypro 1300×16 ATBN」、「Hypro 1300×42 ATBN」、末端にカルボキシ基を有する「Hypro 1300×8 CTBN」、「Hypro 1300×31 CTBN」、末端にエポキシ基を有する「Hypox RA840」(以上、いずれもCVC Thermoset Specialities社製)が挙げられる。
【0086】
本組成物が成分(D)を含有する場合、本組成物の不揮発分100質量%に対する成分(D)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下である。
成分(D)の含有量が前記範囲にあると、伸びや伸縮性に優れ、適度な可撓性を有するパテ成形体を容易に得ることができ、また、キレ性や、耐タレ性、撹拌性、取扱い性により優れる組成物を容易に得ることができる。一方で、成分(D)の含有量が前記上限を超えると、得られる組成物の作業性やキレが悪くなる場合がある。また、成分(D)の含有量が前記下限を下回ると、得られるパテ成形体の降伏点伸びが低下する場合がある。
【0087】
<シランカップリング剤(E)>
本組成物は、被塗物に対する密着性を向上させることができる等の点から、シランカップリング剤(E)を含むことが好ましい。
成分(E)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0088】
成分(E)としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの官能基を有し、被塗物に対する密着性の向上に寄与できる化合物であることが好ましく、例えば、式:「X-SiMenY3-n」[nは0または1、Xは有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、炭化水素基の一部がこれらの基で置換された基、または炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がこれらの基で置換された基。)を示し、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)を示す。]で表される化合物であることがより好ましい。
【0089】
成分(E)としては、反応性基としてエポキシ基またはアミノ基を有する化合物が好ましく、エポキシ基を有する化合物がより好ましく、具体的には、「KBM-403」(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)、「サイラエースS-510」(JNC(株)製)等が挙げられる。
【0090】
本組成物が成分(E)を含有する場合、被塗物に対する密着性により優れる組成物や成形体を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対する成分(E)の含有量は、好ましくは0.2~3質量%、より好ましくは0.5~2質量%である。
【0091】
<顔料(F)>
本組成物は、前記シリカ(C)以外の顔料(F)を含むことが好ましい。
該成分(F)としては特に制限されず、従来公知の顔料を用いることができ、具体的には、体質顔料、中空顔料、着色顔料、防錆顔料等が挙げられる。
成分(F)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0092】
前記体質顔料としては特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、カリ長石、ウォラストナイト、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム(例;バライト粉)、石膏が挙げられる。これらの中でも、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、カリ長石、石膏が好ましい。
【0093】
前記中空顔料としては特に限定されないが、例えば、パーライト、フライアッシュ、樹脂中空バルーン、セラミックバルーンが挙げられる。
【0094】
前記着色顔料としては特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン、弁柄、酸化鉄、水酸化鉄、群青等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
【0095】
前記防錆顔料としては特に限定されないが、例えば、亜鉛粉末、亜鉛合金粉末、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、トリポリリン酸亜鉛系化合物、モリブデン酸亜鉛系化合物、モリブデン酸アルミニウム系化合物、シアナミド亜鉛系化合物、ホウ酸塩化合物、ニトロ化合物、複合酸化物が挙げられる。
【0096】
本組成物が成分(F)を含有する場合、前記効果により優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対する成分(F)の含有量は、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~35質量%である。
【0097】
前記効果により優れる組成物やパテ成形体を容易に得ることができる等の点から、本組成物中の顔料体積濃度(PVC)は、好ましくは5~30%、より好ましくは10~20%である。
【0098】
前記PVCは、前記シリカ(C)および顔料(F)等を含む、すべての顔料の合計の体積濃度のことをいい、具体的には下記式より求めることができる。
PVC[%]=本組成物中の全ての顔料の体積の合計×100/本組成物中の不揮発分の体積
【0099】
前記本組成物中の不揮発分の体積は、本組成物の不揮発分の質量および真密度から算出することができる。前記不揮発分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
【0100】
前記顔料の体積は、用いた顔料の質量および真密度から算出することができる。前記顔料の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。測定値としては、例えば、本組成物の不揮発分より顔料と他の成分とを分離し、分離された顔料の質量および真密度を測定することで算出することができる。
【0101】
<その他の成分>
本組成物は、前記成分(A)~(F)の他に、必要に応じて、有機溶剤、成分(B)以外の硬化剤、タレ止め・沈降防止剤、硬化促進剤、可塑剤、レベリング剤、無機脱水剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、分散剤、消泡剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
これらのその他の成分は、従来公知のものが挙げられる。
前記その他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0102】
[成分(B)以外の硬化剤]
前記成分(B)以外の硬化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンポリアミン、芳香族系アミン硬化剤、複素環系アミン硬化剤、これらの変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物(例:フェナルカミン、フェナルカマイド)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンが挙げられる。
【0103】
前記ポリオキシアルキレンポリアミンとしては、ポリオキシアルキレン構造(-(RO)n-[Rはアルキル基であり、好ましくは炭素数2~6のアルキル基であり、nは3以上の実数であり、好ましくは3~70の実数である])を有するアミン化合物、具体的には、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル)、テトラメチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0104】
前記芳香族系アミン硬化剤としては、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物等が挙げられる。
この芳香族系アミン硬化剤として、より具体的には、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,4'-ジアミノビフェニル、2,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0105】
前記複素環系アミン硬化剤としては、1,4-ジアザシクロヘプタン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサン等が挙げられる。
【0106】
前記脂肪酸変性物としては、例えば、ダイマー酸とポリアミン化合物とを反応させたポリアミドアミンが挙げられる。
該脂肪酸変性物の市販品としては、例えば、Ancamide 910、PEBAX Resins(ELF Atochem,Northe America,Inc.製)が挙げられる。
【0107】
本組成物が前記成分(B)以外の硬化剤を含有する場合、該硬化剤の含有量は、前記反応比を満たすような量であることが好ましいが、本組成物の不揮発分100質量%に対する、成分(B)および成分(B)以外の硬化剤の合計含有量は、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~30質量%である。
【0108】
[タレ止め・沈降防止剤]
本組成物は、タレ止め・沈降防止剤を含有してもよいが、該タレ止め・沈降防止剤を含有しなくても、十分な耐タレ性を有するため、タレ止め・沈降防止剤を含有しなくてもよい。
前記タレ止め剤・沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられる。
【0109】
[硬化促進剤]
本組成物は、硬化速度の調整、特に促進に寄与できる硬化促進剤を含むことが好ましい。
前記硬化促進剤としては、従来公知の硬化促進剤が挙げられるが、硬化速度、低温硬化性により優れる塗料組成物が得られる等の点から、3級アミンなどが好ましい。
【0110】
前記3級アミンとしては特に制限されないが、例えば、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、トリエチレンジアミン[1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン]、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール(例:商品名「バーサミンEH30」(BASFジャパン(株)製)、商品名「Ancamine K-54」(エボニックジャパン(株)製))が挙げられる。
【0111】
本組成物が前記硬化促進剤を含有する場合、本組成物の不揮発分100質量%に対する該硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%である。
【0112】
≪パテ成形体、パテ成形体の製造方法≫
本発明の一実施形態に係るパテ成形体は、前記本組成物から形成され、本発明の一実施形態に係るパテ成形体の製造方法は、前記本組成物を施工箇所に塗布した後、硬化させてパテ成形体を製造する工程を含む。
【0113】
本組成物は、パテ成形体を形成したい施工箇所に塗布すればよいが、本組成物は、機器や部品などの据付け、固定等するために、所定の空間に樹脂充填材を流し込む際の封止材として好適に使用されるため、このような機器や部品など(被塗物ともいう。)に塗布される。
該被塗物の材質は、機器や部品などの材質であるが、具体的には、鉄鋼、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム等)、ステンレスなどが挙げられる。
前記被塗物としては、例えば、船舶、陸上構造物、橋梁等の構造物が挙げられ、特に、船舶構造物が好ましく、船舶の船尾管や舵頭軸受が特に好ましい。
【0114】
本組成物を塗布する方法としては特に制限されないが、高粘度の組成物を塗布する方法として従来公知の方法を採用することができ、好ましくはハケ塗り、コテ塗りが挙げられる。
【0115】
前記本組成物を硬化させる方法としては特に制限されず、硬化時間を短縮させるために5~60℃程度の加熱により本組成物を硬化させてもよいが、通常は、常温、大気下で1~14日程度放置することで、本組成物を硬化させる。
【0116】
パテ成形体は、所定の空間に樹脂充填材を流し込む際の封止材として好適に使用されるため、このような封止材としての役割を果たすことができれば、その形状や厚み等は特に制限されないが、通常、厚みは、1cm以上、好ましくは1.5~2cm程度である。
本組成物によれば、このような厚膜を形成しても、さらには、このような厚膜を天井面に形成しても、タレが生じることがないため、本組成物は、所望の箇所に制限なく用いることができる点でも好ましい。
【0117】
パテ成形体は、前述のようにして形成された成形体をそのまま用いてもよいし、必要により、パテ成形体に上塗り塗料を塗装して用いてもよい。
該上塗り塗料としては、従来公知の塗料を用いることができ、該上塗り塗料の塗装方法としては、例えば、スプレー塗装、ローラー塗装、ハケ塗り等の塗料の一般的な塗装方法が挙げられる。
【0118】
前記パテ成形体は、被塗物の伸縮に追従できる等の点から、その降伏点伸びが、好ましくは5%以上、より好ましくは15%以上であり、好ましくは20%以上である。
該降伏点伸びは、具体的には、実施例に記載の方法で測定される。
【0119】
前記パテ成形体は、外部からの力(例:充填材による押力)に耐えられる成形体となる等の点から、その引張強さが、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上であり、好ましくは1.2MPa以上である。
該引張強さは、具体的には、実施例に記載の方法で測定される。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0121】
[実施例1]
脂肪酸変性エポキシ 13.9質量部、モノエポキシ 6.9質量部、エポキシ樹脂 50質量部、シリカ 5.6質量部、炭酸カルシウム 20.8質量部、シランカップリング剤 1.4質量部、および、消泡剤 1.4質量部を、ハイスピードディスパーを用いて混合することで、主剤成分を調製した。
【0122】
また、脂肪族アミン1 6.7質量部、ポリアミドアミン 30.3質量部、NBR2 30.3質量部、シリカ 5.7質量部、および、炭酸カルシウム 26.9質量部を、ハイスピードディスパーを用いて混合することで、硬化剤成分を調製した。
【0123】
得られた主剤成分40.9質量部と硬化剤成分59.1質量部とを、塗装前に混合することで組成物を調製した。
【0124】
[実施例2~7および比較例1~9]
主剤成分および硬化剤成分に配合する原材料および配合量を表1に示すように変更し、得られた主剤成分と硬化剤成分とを、表1に示す混合比で混合した以外は実施例1と同様にして組成物を調製した。
なお、表1中の主剤成分および硬化剤成分の欄の数値は質量部を示す。また、表1中の原材料の詳細を表2に示す。
【0125】
<塗布性(キレ性)>
ポリエチレン板に、50×150×深さ15mmの溝を作成した。この溝が完全に埋まるように、前記実施例および比較例で得られた組成物をヘラで塗布した。この塗布の方法としては、具体的には、前記溝を充填した組成物の厚みが15mmになり、かつ、その表面が平滑になるように、ヘラを用いて溝に組成物を塗りつけ、均した。このように組成物表面を均す時や、均した後、充填した組成物からヘラを離す時の、組成物とヘラとのキレ(分離性)の良さを2段階で評価した。充填した組成物からヘラを離す時に、キレが良く(糸引きが生じず)、平滑な組成物表面が得られた場合を○とし、充填した組成物からヘラを離す時に、充填した組成物がヘラ側に残存してしまう場合や、糸引きが発生する場合など、組成物とヘラとのキレが悪く、平滑な組成物表面が得られなかった場合を×とした。これらのうち、○を合格とした。
【0126】
なお、キレ性の評価について、より客観的に示すため、以下の試験も行った。
前記塗布性(キレ性)と同様にして、前記溝に、実施例および比較例で得られた組成物を塗りつけ、均した。
その後、組成物を塗布したポリエチレン板を水平台の上に置き、前記溝の中心部に、組成物の塗布面に対し垂直上方から、金属製の棒の先端が前記溝の底に接触するまで金属製の棒を挿入し、次いで、該金属製の棒を5mm/sの速度で垂直方向に引き上げていった時の、金属製の棒から組成物がキレる長さを確認した。
前記塗布性(キレ性)における○の場合の図の一例を
図1に示し、前記塗布性(キレ性)における×の場合の図の一例を
図2に示す。なお、
図1は、具体的には、実施例4の組成物を用いた結果であり、
図2は、具体的には、比較例8の組成物を用いた結果である。
【0127】
<耐タレ性(スランプ縦試験)>
前記実施例および比較例で得られた組成物を用い、試験温度を23℃にした以外は、JIS A 1439:2016に基づいて、スランプ縦試験を行った。なお、各組成物につき、それぞれ3回試験を行った。結果を以下の評価基準に従い3段階で評価した。結果を表1に示す。下記○または△の場合を合格とした。
・評価基準
○:組成物の移動がない
△:組成物が移動したが、移動距離(溝部分の下端から垂れ下がった先端までの距離)が50mm未満である
×:組成物が50mm以上移動した
【0128】
<混合容易性>
前記実施例および比較例で得られた主剤成分と硬化剤成分とを、それぞれ表1の質量割合(混合比)でポリエチレン板に量り取り、これらをヘラまたはコテで均一になるように混合した。この混合時の混ぜ易さを、以下の評価基準に従い3段階で評価した。下記○の場合を合格とした。
・評価基準
○:主剤成分と硬化剤成分を容易に混合できる
△:主剤成分と硬化剤成分との混合することが難しい
×:主剤成分と硬化剤成分を均一に混合できない
【0129】
<伸び>
前記実施例および比較例で得られた組成物を、得られる塗膜の厚みが3mmになるように、ヘラを用いてポリエチレン板上に塗布し、23℃で1日養生した。養生後の、ポリエチレン板から剥離した塗膜を用い、ASTM D 638に基づいて、各組成物につき、3個の試験片(Type I形を用いたダンベル状試験片)を作成し、引張試験機(AGS-X、(株)島津製作所製)を用いて、降伏点伸びを測定し(試験速度5mm/min、試験温度23℃)、各試験片の降伏点伸びの平均値を算出した。結果を表1に示す。
また、促進試験として、養生条件を60℃で7日に変更した以外は同様にした試験片の降伏点伸びの平均値も算出した。結果を表1に示す。
【0130】
降伏点伸びは、具体的には、試験片が破断する時の伸びに基づいて、以下の式より算出し、試験片3個の平均値を評価に用いた。結果を表1に示す。
伸び率(%)=100×(L-L0)/L0
L0:試験前の試験片の長さ、L:破断時の試験片の長さ
【0131】
<引張強さ>
前記実施例および比較例で得られた組成物を、得られる塗膜の厚みが3mmになるように、ヘラを用いてポリエチレン板上に塗布し、23℃で1日養生した。養生後の、ポリエチレン板から剥離した塗膜を用い、ASTM D 638に基づいて、各組成物につき、3個の試験片(Type I形を用いたダンベル状試験片)を作成し、引張試験機(AGS-X、(株)島津製作所製)を用いて、引張強さを測定し(試験速度:5mm/min、試験温度:23℃)、各試験片の引張強さの平均値を算出した。結果を表1に示す。
また、促進試験として、養生条件を60℃で7日に変更した以外は同様にした試験片の引張強さの平均値も算出した。結果を表1に示す。
【0132】
引張強さは、試験片が破断した時の最大強度を指し、以下の式より算出し、試験片3個の平均値を評価に用いた。結果を表1に示す。
引張り強さ(MPa)=F/Wt
F:破断時の力、W:打抜き刃形の平行部分の幅(mm)、t=打抜き刃形の平行部部の厚さ
【0133】
【0134】