(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】骨再建及び整形外科インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/32 20060101AFI20231110BHJP
A61B 34/10 20160101ALI20231110BHJP
A61F 2/36 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61F2/32
A61B34/10
A61F2/36
(21)【出願番号】P 2019120204
(22)【出願日】2019-06-27
(62)【分割の表示】P 2016524027の分割
【原出願日】2014-10-15
【審査請求日】2019-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-29
(32)【優先日】2013-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516111166
【氏名又は名称】マフホウズ,モハメド ラシュワン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マフホウズ,モハメド ラシュワン
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】栗山 卓也
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/30-2/46
A61B34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスカスタマイズされた整形外科インプラントを生成するためのシステムを用いて、マスカスタマイズされた整形外科インプラントを構成する方法において、
前記システムが、
不完全な生体構造、変形した生体構造、
及び修復済みの粉砕された生体構造の少なくとも1つを呈している骨の統計アトラス個体群の全体にわたって特徴を
抽出するステップであって、前記特徴がランドマーク及び形状特徴のうちの少なくとも一方を備える、ステップと、
骨の前記統計アトラス個体群の全体にわたって
抽出された特徴を使用してインプラント設計に関連する記述子を
計算するステップと、
一の前記記述子
を他の記述子と比較し、同様の
特徴を有する
記述子のグループへと分類するステップと、
前記グループ
の前記記述子からパラメータを抽出するために前記グループをパラメータ化するステップと、
抽出された前記パラメータを用い
て、マスカスタマイズされた整形外科インプラント
を設計するための電子設計ファイルを生成するステップと、
を行う、方法。
【請求項2】
前記電子設計ファイルを使用してマスカスタマイズされた整形外科インプラントを製造するステップを更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
特徴を
抽出する前記ステップは、
位置情報を使用して骨の統計アトラス個体群の全体にわたってランドマークを計算するように構成されるソフトウェアプログラムによって自動的に行われる請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
特徴を
抽出する前記ステップは、
位置情報を使用して骨の統計アトラス個体群の全体にわたって形状特徴を計算するように構成されるソフトウェアプログラムによって自動的に行われる請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記記述子は、骨の前記統計アトラス個体群の全体にわたって計算される数学的記述子を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記記述子の少なくとも一部を同様の記述子を有するグループへと分類する前記ステップは、グループを定めるために統計的解析を使用するステップを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グループ
の前記記述子から抽出される
前記パラメータは、マスカスタマイズされた整形外科インプラントの形状のための設計パラメータを備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記記述子が数学的記述子を備え、
前記グループ
の前記記述子
から前記パラメータを抽出するために前記グループをパラメータ化する前記ステップは、前記数学的記述子を表面記述子へと変換するステップを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マスカスタマイズされた整形外科インプラントのための前記電子設計ファイルは、マスカスタマイズされた整形外科インプラントの仮想三次元モデルを含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記グループ
の前記記述子
から前記パラメータを抽出するために前記グループをパラメータ化する前記ステップは、マスカスタマイズされた整形外科インプラントの仮想三次元モデルを生成するステップを含む請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
骨の前記統計アトラス個体群の全体にわたって三次元海綿質骨特徴を抽出するステップとともに、骨の前記統計アトラス個体群内のそれぞれの骨ごとにその骨に固有の抽出された海綿質骨特徴
が組み込まれている三次元骨モデルを生成するステップを更に備える請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
骨の前記統計アトラス個体群内のそれぞれの骨に関して
海綿質骨のサイズを決定するステップを更に備える請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
マスカスタマイズされた整形外科インプラントのための前記電子設計ファイルを生成するために海綿質骨サイズデータ、孔径データ、及び、
表面記述子から抽出した表面記述子パラメータを組み合わせ
、最終的なインプラントモデルを規定するステップを更に備える請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記電子設計ファイルは、コンピュータ支援設計ファイル、コンピュータ数値制御ファイル、及び、
プロトタイプを迅速に製造するための急速製造命令ファイルのうちの少なくとも1つを含む請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
抽出されたパラメータのうちの少なくとも1つを使用してマスカスタマイズされたインプラント留置ガイドのための電子設計ファイルを生成するステップを更に備える請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記マスカスタマイズされたインプラント留置ガイドのための前記電子設計ファイルを使用して前記マスカスタマイズされたインプラント留置ガイドを製造するステップを更に備える請求項15に記載の方法。
【請求項17】
骨の前記統計アトラス個体群が民族固有である請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
骨の前記統計アトラス個体群が性別固有である請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
骨の前記統計アトラス個体群が少なくとも
部分的な大腿骨を備える請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
骨の前記統計アトラス個体群が少なくとも
部分的な骨盤を備える請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年10月15日に出願された「CRANIUM AND POSTCRANIAL BONE AND SOFT TISSUE RECONSTRUCTION(頭蓋及び後部頭蓋骨並びに軟組織の再建)」と題される米国仮特許出願第61/891,047号の利益を主張し、この米国仮特許出願の開示内容は、参照することにより本願に組み入れられる。
(関連技術)
(発明の分野)
【0002】
本開示は、骨及び組織の再建、患者に固有のマスカスタマイズされた整形外科インプラント、性別及び民族に固有の整形外科インプラント、切断ガイド、外傷プレート、骨移植片切断ガイド及び留置ガイド、患者固有機器、運動学及び病理学のための解剖学的トラッキングにおける慣性測定ユニットの利用、及び、整形外科処置中のナビゲーションのための慣性測定ユニットの利用を含む整形外科の様々な態様に向けられる。
(発明の序文)
【0003】
本発明の第1の態様は、患者固有整形外科インプラントを構成する方法を提供することであり、該方法は、(a)患者の異常な骨の実際の生体構造から導き出される患者固有異常骨モデルと、同様に患者の骨の生体構造から導き出される再建患者固有骨モデルとを比較するステップであって、再建患者固有骨モデルが患者の骨の正規化された生体構造を反映し、患者固有異常骨モデルが、不完全な骨、変形した骨、及び、粉砕された骨のうちの少なくとも1つを含む患者の骨の実際の生体構造を反映し、患者固有異常骨モデルが患者固有異常点群及び患者固有異常骨表面モデルのうちの少なくとも一方を備え、再建患者固有骨モデルが再建患者固有点群及び再建患者固有骨表面モデルのうちの少なくとも一方を備える、ステップと、(b)患者固有異常骨モデルと再建患者固有骨モデルとの比較から出力されるデータを使用して患者固有整形外科インプラントが患者の異常骨に装着されるように1つ以上のパラメータを最適化するステップと、(c)1つ以上のパラメータを考慮に入れて患者固有整形外科インプラントのための電子設計ファイルを生成するステップとを備える。
【0004】
第1の態様の更に詳細な実施形態において、方法は、電子設計ファイルを使用して患者固有インプラントを製造するステップを更に含む。更に他の更なる詳細な実施形態において、方法は、患者固有異常骨モデルから欠けている骨又は変形した骨を特定するために患者固有異常骨モデルと再建患者固有骨モデルとを比較するステップと、欠けている骨又は変形した骨を再建患者固有骨モデル上へと局在化するステップとを更に含む。更なる詳細な実施形態において、方法は、患者の異常な骨を表すデータから患者固有異常骨モデルを生成するステップと、患者の異常な骨を表すデータと統計アトラスからのデータとから再建患者固有骨モデルを生成するステップであって、統計アトラスデータが、患者の異常な骨に類似する正常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方を備える、ステップとを更に含む。更に一層詳細な実施形態において、患者の異常な骨を表すデータは、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、X線画像、及び、超音波画像のうちの少なくとも1つを備える。更なる詳細な実施形態において、統計アトラスデータは、正常な骨の磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、X線画像、及び、超音波画像のうちの少なくとも1つから導き出される。更なる詳細な実施形態において、特定された欠けている骨又は変形した骨が境界点のセットを備え、また、欠けている骨又は変形した骨を再建患者固有骨モデル上へと局在化する前記ステップは、境界点のセットと再建患者固有骨モデルとを関連付けるステップを含む。他の更なる詳細な実施形態において、患者固有異常骨モデルから欠けている骨又は変形した骨を特定するために患者固有異常骨モデルと再建患者固有骨モデルとを比較する前記ステップは、データの少なくとも2つのリストを出力するステップを含み、データの少なくとも2つのリストは、欠けている骨又は変形した骨を特定する第1のリストと、患者固有異常骨モデルと再建患者固有骨モデルとの間で共通している骨を特定する第2のリストとを含む。更なる他の更に詳細な実施形態において、第1のリストは、患者固有異常骨モデルからの欠けている骨又は変形した骨に属する頂点を備え、また、第2のリストは、患者固有異常骨モデルと再建患者固有骨モデルとの間で共通している骨に属する頂点を備える。更なる他の更に詳細な実施形態において、方法は、患者固有異常骨モデルからのデータと再建患者固有骨モデルからのデータとを使用して1つ以上の患者固有整形外科インプラント固定位置を決定するステップを更に含む。
【0005】
第1の態様の更なる他の更に詳細な実施形態において、1つ以上の患者固有整形外科インプラント固定位置を決定する前記ステップは、欠けている骨又は変形した骨が特定された任意の位置を排除するステップを含む。更なる他の更に詳細な実施形態において患者固有整形外科インプラントのための1つ以上のパラメータを最適化する前記ステップは、再建患者固有骨モデルを使用してその後に最適化される一般的パラメータを定めるためにインプラントパラメータ化テンプレートを使用するステップを含む。更なる詳細な実施形態において、パラメータは、角度パラメータ、深さパラメータ、曲率パラメータ、及び、固定装置位置パラメータのうちの少なくとも1つを含む。更に一層詳細な実施形態において、方法は、患者固有整形外科インプラントの表面モデルの初期反復を構成するステップを更に備える。更なる詳細な実施形態において、表面モデルの初期反復を構成する前記ステップは、患者固有異常骨モデルからの輪郭と再建患者固有骨モデルからの輪郭とを組み合わせるステップを含む。更なる詳細な実施形態において、表面モデルの初期反復を構成する前記ステップは、患者固有整形外科インプラントのための意図される埋め込み位置を考慮するステップを含む。他の更なる詳細な実施形態において、方法は、患者固有整形外科インプラントの表面モデルのその後の反復を構成するステップを更に含む。更なる他の更に詳細な実施形態において、患者固有整形外科インプラントの表面モデルのその後の反復を構成する前記ステップは、表面モデルの更なる反復が必要とされるかどうかを見分けるための表面モデル及び再建患者固有骨モデルのその後の反復の手動見直しを含む。更なる他の更に詳細な実施形態において、電子設計ファイルは、コンピュータ支援設計ファイル、コンピュータ数値制御ファイル、及び、急速製造命令ファイルのうちの少なくとも1つを含む。
【0006】
第1の態様の更に詳細な実施形態において、方法は、患者固有整形外科インプラントのために最適化される1つ以上のパラメータを使用して患者固有インプラント留置ガイドのための電子設計ファイルを生成するステップを更に備える。更に他の詳細な実施形態において、方法は、患者固有インプラント留置ガイドのための電子設計ファイルを使用して患者固有インプラント留置ガイドを製造するステップを更に含む。更なる詳細な実施形態において、患者固有整形外科インプラントのために最適化される1つ以上のパラメータは、サイズパラメータ、形状パラメータ、及び、輪郭パラメータのうちの少なくとも1つを含む。更に一層詳細な実施形態において、少なくとも1つの輪郭パラメータは、患者固有整形外科インプラントと患者固有インプラント留置ガイドとの間で共通している。更なる詳細な実施形態において、方法は、患者固有インプラント留置ガイドを該患者固有インプラント留置ガイドが存在するようになっている患者の骨の表面形状のネガである表面形状を含むように設計するステップを更に備える。更に詳細な実施形態において、患者固有異常骨モデルは、患者の異常な股関節の実際の生体構造から導き出される患者固有異常大腿骨モデル及び患者固有異常骨盤骨モデルのうちの少なくとも一方を備え、再建患者固有骨モデルは、患者の股関節の生体構造から導き出される再建患者固有大腿骨モデル及び再建患者固有骨盤骨モデルのうちの少なくとも一方を備え、再建患者固有モデルは、患者の股関節からの正規化された生体構造を反映し、患者固有異常骨モデルは、患者の股関節からの実際の生体構造を反映する。他の更に詳細な実施形態では、患者固有異常骨モデルが患者固有異常大腿骨モデルを備え、再建患者固有骨モデルが再建患者固有大腿骨モデルを備え、再建患者固有モデルは、患者の大腿骨近位部からの正規化された生体構造を反映し、患者固有異常骨モデルは、患者の大腿骨近位部からの実際の生体構造を反映し、及び、患者固有整形外科インプラントが大腿骨ステムインプラントを備える。
【0007】
第1の態様の更なる詳細な実施形態では、患者固有異常骨モデルが患者固有異常骨盤骨モデルを備え、再建患者固有骨モデルが再建患者固有骨盤骨モデルを備え、再建患者固有モデルは、患者の骨盤からの正規化された生体構造を反映し、患者固有異常骨モデルは、患者の骨盤からの実際の生体構造を反映し、及び、患者固有整形外科インプラントが寛骨臼カップインプラントを備える。更なる他の更に詳細な実施形態において、患者固有整形外科インプラントのための電子設計ファイルは、コンピュータ支援設計ファイル、コンピュータ数値制御ファイル、及び、急速製造命令ファイルのうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
本発明の第2の態様は、異常な骨の電子的な再建骨モデルを生成する方法を提供することであり、該方法は、(a)異常な骨に類似する統計アトラスからの骨を特定すること、統計アトラスからの骨を異常な骨に対して位置合わせすること、及び、異常な骨の再建モデル上の表面点を異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方へとモーフィングすることのうちの少なくとも1つのために、異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方を利用するステップであって、異常な骨は、不完全な骨、変形した骨、及び、粉砕された骨のうちの少なくとも1つを含む、ステップと、(b)異常な骨の再建モデルを生成するステップとを備える。
【0009】
第2の態様の更なる詳細な実施形態において、異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方を利用する前記ステップは、異常な骨に最も類似する統計アトラス骨を特定するステップを含む。更なる他の更に詳細な実施形態において、異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方を利用する前記ステップは、統計アトラスを異常な骨に対して位置合わせするステップを含む。更なる詳細な実施形態において、異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方を利用する前記ステップは、異常な骨の再建モデル上の表面点を異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方へとモーフィングするステップを含む。更に一層詳細な実施形態において、異常な骨に最も類似する統計アトラス骨を特定する前記ステップは、統計アトラス骨を特定するために1つ以上の類似性指標を使用するステップを含む。更なる詳細な実施形態では、統計アトラスが複数の数学的表示を含み、この場合、複数の数学的表示のそれぞれが骨を表す。更なる詳細な実施形態では、統計アトラスが複数の仮想モデルを含み、この場合、複数の仮想モデルのそれぞれが骨を表す。他の更なる詳細な実施形態において、方法は、異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方を異常な骨に類似する統計アトラスからの特定された骨に対して位置合わせするステップを更に備える。更なる他の更に詳細な実施形態において、方法は、(a)異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方と(b)異常な骨に類似する統計アトラスからの特定された骨との間の形状パラメータの増強を更に備える。更なる他の更に詳細な実施形態において、形状パラメータの増強は、異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方において欠けている骨又は変形した骨を特定するために、(a)異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方と(b)異常な骨に類似する前記統計アトラスからの特定された骨との間を補間することを含む。
【0010】
第2の態様の更なる他の更に詳細な実施形態において、形状パラメータの増強は、欠けている骨又は変形した骨に対応する表面点の生成をもたらす。更なる他の更に詳細な実施形態において、方法は、異常な骨の再建モデルを生成するために異常な骨の点群及び表面モデルのうちの少なくとも一方を用いて、異常な骨に類似する統計アトラスからの骨から補間された表面点をモーフィングするステップを更に備える。更なる詳細な実施形態において、異常な骨は、変形した骨盤部分、粉砕された骨盤部分、及び、骨を欠く不完全な骨盤部分のうちの少なくとも1つを備え、また、異常な骨の再建モデルは、変形した骨盤部分における骨変形、粉砕された骨盤部分の一部を備える粉砕骨、及び、不完全な骨盤部分からの骨欠如のうちの少なくとも1つが修復された完全骨盤モデル部分を少なくとも備える。更に一層詳細な実施形態では、完全骨盤モデル部分が寛骨臼カップ生体構造を含む。更なる詳細な実施形態において、異常な骨は、変形した大腿骨部分、粉砕された大腿骨部分、及び、骨を欠く不完全な大腿骨部分のうちの少なくとも1つを備え、また、異常な骨の再建モデルは、変形した大腿骨部分における骨変形、粉砕された大腿骨部分の一部を備える粉砕骨、及び、不完全な大腿骨部分からの骨欠如のうちの少なくとも1つが修復された完全大腿骨モデル部分を少なくとも備える。更なる詳細な実施形態では、完全大腿骨モデル部分が頸部及びボール生体構造を有する大腿骨近位部を備える。他の更なる詳細な実施形態において、更なる他の詳細な実施形態において、異常な骨は、変形した上腕骨部分、粉砕された上腕骨部分、及び、骨を欠く不完全な上腕骨部分、変形した尺骨、粉砕された尺骨、骨を欠く不完全な尺骨、変形した橈骨部分、粉砕された橈骨部分、骨を欠く不完全な橈骨部分、変形した頭蓋部分、粉砕された頭蓋部分、骨を欠く不完全な頭蓋部分、変形した椎骨部分、粉砕された椎骨部分、及び、骨を欠く不完全な椎骨部分のうちの少なくとも1つを備え、また、異常な骨の再建モデルは、変形した尺骨部分における骨変形、粉砕された尺骨部分の一部を備える粉砕骨、不完全な尺骨部分からの骨欠如、変形した橈骨部分における骨変形、粉砕された橈骨部分の一部を備える粉砕骨、不完全な橈骨部分からの骨欠如、変形した頭蓋部分における骨変形、粉砕された頭蓋部分の一部を備える粉砕骨、不完全な頭蓋部分からの骨欠如、変形した椎骨部分における骨変形、粉砕された椎骨部分の一部を備える粉砕骨、不完全な椎骨部分からの骨欠如のうちの少なくとも1つが修復された完全上腕骨モデル部分、完全尺骨モデル部分、完全橈骨モデル部分、完全頭蓋モデル部分、及び、完全椎骨モデル部分のうちの少なくとも1つを備える。
【0011】
本発明の第3の態様は、マスカスタマイズされた整形外科インプラントを構成する方法を提供することであり、該方法は、(a)骨の統計アトラス個体群の全体にわたって特徴を特定するステップであって、特徴がランドマーク及び形状特徴のうちの少なくとも一方を備える、ステップと、(b)骨の統計アトラス個体群の全体にわたって特定された特徴を使用してインプラント設計に関連する記述子を生成するステップと、(c)記述子の少なくとも一部を同様の記述子を有するグループへと分類するステップと、(d)グループからパラメータを抽出するためにグループをパラメータ化するステップと、(e)マスカスタマイズされた整形外科インプラントのための電子設計ファイルを生成するステップとを備える。
【0012】
第3の態様の更に詳細な実施形態において、方法は、電子設計ファイルを使用してマスカスタマイズされた整形外科インプラントを製造するステップを更に含む。更なる他の更に詳細な実施形態において、特徴を特定する前記ステップは、計算論理に組み込まれる位置パラメータを使用して骨の統計アトラス個体群の全体にわたってランドマークを計算するように構成されるソフトウェアプログラムによって自動的に行われる。更なる詳細な実施形態において、特徴を特定する前記ステップは、計算論理に組み込まれる位置パラメータを使用して骨の統計アトラス個体群の全体にわたって形状特徴を計算するように構成されるソフトウェアプログラムによって自動的に行われる。更に一層詳細な実施形態において、記述子は、骨の統計アトラス個体群の全体にわたって計算される数学的記述子を備える。更なる詳細な実施形態において、記述子の少なくとも一部を同様の記述子を有するグループへと分類する前記ステップは、グループを定めるために統計的解析を使用するステップを含む。更なる詳細な実施形態において、グループから抽出される記述子は、マスカスタマイズされた整形外科インプラントの形状のための設計パラメータを備える。他の更に詳細な実施形態では、記述子が数学的記述子を備え、また、グループから記述子を抽出するためにグループをパラメータ化する前記ステップは、数学的記述子を表面記述子へと変換するステップを含む。更なる他の詳細な実施形態において、マスカスタマイズされた整形外科インプラントのための電子設計ファイルは、マスカスタマイズされた整形外科インプラントの仮想三次元モデルを含む。更なる他の更に詳細な実施形態において、グループから記述子を抽出するためにグループをパラメータ化する前記ステップは、マスカスタマイズされた整形外科インプラントの仮想三次元モデルを生成するステップを含む。
【0013】
第3の態様の更に他の更なる詳細な実施形態において、方法は、骨の統計アトラス個体群の全体にわたって三次元海綿質骨特徴を抽出するとともに、骨の統計アトラス個体群内のそれぞれの骨ごとにその骨に固有の抽出された海綿質骨特徴を組み込む三次元骨モデルを生成するステップを更に含む。更なる他の更に詳細な実施形態において、方法は、海綿質骨のサイズ及び孔径を決定するために骨の統計アトラス個体群内のそれぞれの骨に関して多孔性評価を行うステップを更に含む。更なる詳細な実施形態において、方法は、マスカスタマイズされた整形外科インプラントのための電子設計ファイルを生成するために海綿質骨サイズデータ、孔径データ、及び、表面記述子パラメータを組み合わせる応力試験プロセスを行うステップを更に含む。更に一層詳細な実施形態において、電子設計ファイルは、コンピュータ支援設計ファイル、コンピュータ数値制御ファイル、及び、急速製造命令ファイルのうちの少なくとも1つを含む。更なる詳細な実施形態において、方法は、抽出されたパラメータのうちの少なくとも1つを使用してマスカスタマイズされたインプラント留置ガイドのための電子設計ファイルを生成するステップを更に含む。更なる詳細な実施形態において、方法は、マスカスタマイズされたインプラント留置ガイドのための電子設計ファイルを使用してマスカスタマイズされたインプラント留置ガイドを製造するステップを更に含む。他の更に詳細な実施形態では、骨の統計アトラス個体群が民族固有である。更に他の更なる詳細な実施形態では、骨の統計アトラス個体群が性別固有である。更に他の更なる詳細な実施形態では、骨の統計アトラス個体群が少なくとも大腿骨のセグメントを備える。更に他の更なる詳細な実施形態では、骨の統計アトラス個体群が少なくとも骨盤骨のセグメントを備える。
【0014】
本発明の第4の態様は、マスカスタマイズされた外傷プレートを構成する方法を提供することであり、該方法は、(a)仮想三次元骨モデルテンプレートに対するマスカスタマイズされた外傷プレートのための仮想境界を定めるステップと、(b)仮想三次元骨モデルテンプレート上の表面位置に対応する仮想境界内の複数の表面点を選択するステップと、(c)複数の仮想三次元骨モデルを含む統計アトラスの全体にわたって複数の表面点を伝搬するステップと、(d)複数の仮想三次元骨モデルのそれぞれへ伝搬される複数の表面点を使用して、その特定の骨モデルに適合される仮想三次元骨プレートを構成するステップと、(e)形成された仮想三次元骨プレートのそれぞれを表す複数の曲率を抽出するステップと、(f)マスカスタマイズされた外傷プレートのための形状パラメータを推定するために、抽出される複数の曲率を統計的に解析するステップと、(g)形状パラメータを使用してマスカスタマイズされた外傷プレートのための電子設計ファイルを生成するステップとを備える。
【0015】
本発明の第5の態様は、整形外科インプラントのために骨を前処理するための患者固有の切断ガイドを構成する方法を提供することであり、該方法は、(a)患者の骨に装着されるべき整形外科インプラントのサイズと、患者の骨に対して装着されるときのインプラントの位置とを決定するために患者固有の骨輪郭を処理するステップと、(b)整形外科インプラントのサイズと患者の骨に装着されるときのインプラントの位置とを使用して患者固有の切断ガイドを設計するステップと、(c)切断ガイドが装着されるように設定される患者の骨の形状のネガである形状を含む患者に固有の切断ガイドを製造するステップとを備る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】不完全な生体構造からのマスカスタマイズされた患者固有のモールドを生成するプロセス全体の概略図である。
【0017】
【
図2】新たな解剖学的構造を統計アトラスに加えて対応を生成する方法を詳述する概略図である。
【0018】
【
図3】
図2における多重分解能3Dレジストレーションに対応する多重分解能3Dレジストレーションアルゴリズムの概要である。
【0019】
【
図4】マルチスケール特徴を使用する特徴点のマルチスケールレジストレーションである。
【0020】
【
図5】
図3に概略的に示される多重分解能レジストレーションの低レベル分解である。
【0021】
【
図6】対応の生成時における個体群の変化をとらえるグラフィック表示である。
【0022】
【
図7】不完全な、変形した、或いは、粉砕された生体構造を使用する完全骨再建プロセスの概略図である。
【0023】
【
図8】欠陥テンプレートの生成のための欠陥分類プロセスの概略図である。
【0024】
【
図9】寛骨臼欠陥のための既存のAAOS分類の図式的な例である。
【0025】
【
図10】既存のPaprosky寛骨臼欠陥分類の図式的な例である。
【0026】
【
図11】著しい骨盤不連続性を左側に伴う患者の三次元モデル表示である。右側は、左側に示される患者の骨盤の三次元モデルの一例である。
【0027】
【
図12】再建された左側のモデル及び当初の患者モデル、並びに、左右の生体構造の比較である。
【0028】
【
図13】再建された骨盤モデルの鏡像と再建されたモデルとの間の距離マップである。
【0029】
【
図14】完全な骨盤不連続性を伴う患者、及び、1.8mmのrms誤差を伴う再建の結果である。
【0030】
【
図15】不完全な頭蓋骨に対する再建の結果、及び、再建エラーにおける平均距離マップである。
【0031】
【0032】
【
図17】患者固有の再建インプラントを形成するプロセスの概略図である。
【0033】
【
図18】
図17に描かれるインプラント生成のためのプロセスの概略図である。
【0034】
【
図19】不完全な生体構造からの患者完全生体構造の再建及び骨盤不連続性のための患者固有のカップインプラントの生成のための様々なステップを示すプロセスフロー図である。
【0035】
【
図20】患者固有の寛骨臼インプラントのための患者固有の留置ガイドのグラフィック表示である。
【0036】
【
図21】マスカスタマイゼーションのためにインプラントの3つの取り付け部位とカップ方向との間の関係を検討する画像を備える。
【0037】
【
図22】モジュール設計を使用して大量生産型の寛骨臼構成要素を製造するための方法における概略図である。
【0038】
【
図23】再建手術のための患者固有の股関節ステムを生成するためのプロセスの概略図である。
【0039】
【
図24】マスカスタマイズされたインプラント生成のためのプロセスの概略図である。
【0040】
【
図25】マスカスタマイズされた股関節インプラント及び患者固有の股関節インプラントの両方を生成するために統計アトラスを使用するためのプロセスを描く概略図である。
【0041】
【
図26】マスカスタマイズされた股関節インプラント及び患者固有の股関節インプラントの両方を生成するために統計アトラスを使用するためのプロセスを描く概略図である。
【0042】
【
図27】個体群固有の股関節ステム構成要素を設計するためのプロセスの概要を描く概略図である。
【0043】
【
図28】大腿骨近位部ランドマークが位置される場所を示すグラフィック表示である。
【0044】
【
図29】大腿骨の長さに沿う大腿骨の中央における大腿管ウエスト及び大腿骨ウエストを示す大腿骨の3Dモデルである。
【0045】
【
図30】大腿骨近位部軸線が位置される場所を示すグラフィック表示である。
【0046】
【
図31】大腿骨頸部中心計算が位置される場所を示すグラフィック表示である。
【0047】
【
図32】大腿骨近位部の解剖学的な軸線を規定するために使用される2つの点のグラフィック表示である。
【0048】
【
図33】3D大腿骨近位部測定値のグラフィック表示である。
【0049】
【
図34】(XRからの)一般に2Dである典型的なDorr比率を示す。
【0050】
【
図35】IM峡部におけるB/A比率のグラフィック表示である。
【0051】
【
図36】IM大腿管測定値のグラフィック表示である。
【0052】
【0053】
【
図38】IM大腿管半径比を得るために取得された測定値のグラフィック表示である。
【0054】
【
図39】半径比の変化の影響を示す2つの大腿骨モデルを描き、この場合、左側の大腿骨モデルは0.69の半径比を有し、右側の大腿骨モデルは0.38の半径比を有する。
【0055】
【
図40】位置合わせ前の大腿骨近位部の内側輪郭、大腿骨頸部軸線、及び、大腿骨頭点のグラフィック表示である。
【0056】
【
図41】Z方向との解剖学的軸線位置合わせのグラフィック表示である。
【0057】
【
図42】大腿骨頸部回動点を使用して位置合わせされる内側輪郭のグラフィック表示である。
【0058】
【
図43】補間の平滑さを示すためにモデル間の補間を使用して生成される異なるモデルのグラフィック表示である。
【0059】
【
図44】骨密度の三次元マッピングの図形的且つ絵画的な表示である。
【0060】
【
図45】3つの高さ、すなわち、近位部軸線、大腿骨頭オフセット、及び、大腿骨頭でIM幅を示すX線描写である。
【0061】
【
図46】近位部角度と大腿骨頭オフセットとの関係を示すプロットである。
【0062】
【
図47】近位部角度と大腿骨頭高さとの関係を示すプロットである。
【0063】
【
図48】大腿骨頭オフセットと大腿骨頭高さとの関係を示すプロットである。
【0064】
【0065】
【
図50】大腿骨頭オフセット及び大腿骨距直径に関して一群の女性及び男性を描くプロットである。
【0066】
【
図51】大腿骨頭オフセット及び近位部角度に関して一群の女性及び男性を描くプロットである。
【0067】
【0068】
【0069】
【
図54】大腿骨近位部に関する女性の測定値のグラフィック表示である。
【0070】
【
図55】大腿骨近位部に関する男性の測定値のグラフィック表示である。
【0071】
【
図56】大転子高さに関する女性の測定値のグラフィック表示である。
【0072】
【
図57】大転子高さに関する男性の測定値のグラフィック表示である。
【0073】
【0074】
【
図59】正常な女性、すなわち、T-スコア1.1である。
【0075】
【
図60】骨減少症の女性、すなわち、T-スコア1.3である。
【0076】
【
図61】骨粗しょう症の女性、すなわち、T-スコア3である。
【0077】
【
図62】補間されたデータセット大腿骨頭オフセットヒストグラムである。
【0078】
【
図63】データセット大腿管サイズヒストグラムである。
【0079】
【0080】
【
図65】回動点に対する大腿骨頭高さ対AP大腿骨頭高さである。
【0081】
【
図66】解剖学的軸線中点に対する大腿骨頭高さ対AP大腿骨頭高さである。
【0082】
【
図67】民族性及び性別の両方の違いを受け入れる股関節ステムインプラント群の形成のために使用されるパラメータである。クラスタリングから抽出される大腿骨ステム構成要素におけるマスカスタムインプラント形状パラメータである。
【0083】
【
図68】当初の大腿骨ステムの組立図及び分解図である。
【0084】
【
図69】修復大腿骨ステムの組立図及び分解図である。
【0085】
【
図70】単離した寛骨臼カップの幾何学的形態である。
【0086】
【
図71】寛骨臼カップの解剖学的テンプレートである。
【0087】
【
図72】複数のカップ半径を有する解剖学的な寛骨臼カップ及び大腿骨ステムボール形状である。
【0088】
【
図73】寛骨臼カップと大腿骨頭曲率との間の曲率適合が動態及び制約に影響を及ぼすことを示す。
【0089】
【
図74】寛骨臼カップの断面解析を規定する輪郭である。
【0090】
【
図75】カップ方向付けのための方法として自動的に検出される寛骨臼横靭帯である。
【0091】
【
図76】骨生体構造と適合する多孔質形状及びサイズのマイクロCTからの抽出である。このプロセスは間違って示されている。 出典源は分からない。
【0092】
【
図77】ペット固有のインプラント及び切断ガイドである。人の患者に関して概説される同様のプロセスは誤りである。 出典源は分からない。
【0093】
【
図78】統計アトラスを使用するペットに関するマスカスタマイズされた整形外科インプラントである。人のマスカスタマイズされたインプラントに関して概説される同様のプロセスは誤りである。 出典源は分からない。
【0094】
【
図79】股関節システムのための患者固有の切断ガイド及び留置ガイドの生成のプロセスである。
【0095】
【
図80】x線からの患者固有の三次元の骨盤モデル及び大腿骨近位部モデルの形成のための非剛体レジストレーションのプロセスである。これは、非剛体レジストレーション構成要素の誤った詳細な概要である。 出典源は分からない。
【0096】
【
図81】誤って概要がまとめられる、骨盤及び大腿骨近位部の再建のために使用される複数のx線図である。 出典源は分からない。
【0097】
【
図82】
図79に描かれるMRI及びCTスキャンからの骨盤及び大腿骨近位部の自動セグメンテーションである。
【0098】
【
図83】
図79に概略的に示されるMRI又はCTからの複雑な粉砕された生体構造の自動セグメンテーションである。
【0099】
【
図84】寛骨臼カップ及び大腿骨ステムの両方の構成要素に関する仮想テンプレーティングのプロセスである。
【0100】
【
図85】先端固定を使用するステム自動留置である。
【0101】
【
図86】圧入と3つの接点とを使用するステム自動留置である。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【
図90】全体の肢長の修復及び方向を確保するためのカップ及びステムの留置の評価である。
【0106】
【
図91】インプラントの留置及び寸法付けを評価し修正するためのプレプランニングインタフェースである。
【0107】
【
図92】大腿骨ステムの切除及び留置のために患者固有のガイドを使用するプロセスである。
【0108】
【
図93】寛骨臼カップのリーミング及び留置のために患者固有のガイドを使用するプロセスである。
【0109】
【
図94】患者固有のガイド及びロック機構の生成のために使用される、患者固有の関節唇取り付け部位、この例では、寛骨臼関節唇取り付け部位のマッピングである。統計アトラス又はテンプレートは、患者固有ガイド嵌め合い部位を決定するために使用され得る。
【0110】
【
図95】個体群のための外傷プレート及び固定装置を形成するためのプロセスである。
【0111】
【
図96】アトラス平均骨におけるプレート形状の局在化である。
【0112】
【
図97】ここでは単一の事例で示される、個体群全体におけるプレート位置の伝搬である。
【0113】
【0114】
【
図99】プレート正中曲線における3D曲率半径の計算である。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【
図104】プレートサイズクラスタリングである。「クラスタリング」として
図95に示される。
【0120】
【
図105】プレートサイズのパラメータ化である。「パラメータ化された曲線」及び「生成モデル」として
図95に示される。
【0121】
【
図106】生成されたプレートを評価のために個体群に嵌め付ける。
【0122】
【
図107】プレート適合を評価するためのプレート表面と骨との間の3D表面距離マップである。
【0123】
【
図108】筋肉及び靭帯の衝突を避けるための死体上の設計プレートの検証である。
【0124】
【
図109】鎖骨正中線曲率の特定である。正中線曲率は、解剖学的個体群の統計的解析にしたがって、対称的に「S」形状ではない。
【0125】
【
図110】上側部プレート(左)、プレート正中曲線(中央)、及び、曲率半径を示す正中線プレート曲率(右)である。
【0126】
【
図111】前中央シャフト7hプレート(左)、プレート正中曲線(中央)、及び、単一の曲率半径を示す正中線プレート曲率(右)である。
【0127】
【
図112】上中央シャフトプレート(左)、プレート正中曲線(中央)、及び、異なる曲率半径を示す正中線プレート曲率(右)である。
【0128】
【
図113】前側部プレート(左)、プレート正中曲線(中央)、及び、異なる曲率半径を示す正中線プレート曲率(右)である。
【0129】
【
図114】前中央シャフトロングプレート(左)、プレート正中曲線(中央)、及び、異なる曲率半径を示す正中線プレート曲率(右)である。
【0130】
【
図115】外傷再建術のためのカスタマイズされたプレート留置ガイドを生成するプロセスである。
【0131】
【
図116】骨移植片を使用する再建術のためのカスタマイズされた切断ガイド及び留置ガイドを生成するプロセスである。詳細な説明
【0132】
以下、骨及び組織の再建、患者に固有の及びマスカスタマイズされた整形外科インプラント、性別及び民族に固有の整形外科インプラント、切断ガイド、外傷プレート、骨移植片切断ガイド及び骨移植片留置ガイド、並びに、患者に固有の器具を含む整形外科の様々な態様を網羅するべく本開示の典型的な実施形態について説明して例示する。無論、以下で論じられる実施形態が本質的に典型例であるとともに本発明の範囲及び思想から逸脱することなく再構成されてもよいことは当業者に明らかである。しかしながら、明確に且つ正確にするため、以下で論じられる典型的な実施形態は、当業者が本発明の範囲内に入るための必須要件ではないと認識すべき随意的なステップ、方法、及び、特徴を含んでもよい。
完全生体構造再建
【0133】
図1~
図8を参照すると、変形した生体構造又は不完全な生体構造の再建が、ヘルスケアプロバイダーに直面する複雑な問題のうちの1つである。生体構造の損失は、出生状態、腫瘍、疾患、身体傷害、又は、既往手術の不具合の結果である場合がある。様々な疾患のための治療を行う一環として、ヘルスケアプロバイダーは、骨折/骨粉砕、骨変性、整形外科インプラント修復、関節変性、及び、カスタム器具設計を含んでもよいがこれらに限定されない様々な状態のための治療を容易にするために生体構造を再建する或いは生体構造を構成することが有利であると考える場合がある。例えば、従来技術の股関節再建解決策は、健康な患者の生体構造のミラーリングを必要とするが、このミラーリングは、
図12~
図16に示されるように、必然的に生じる非対称性に起因して健康な生体構造の正確な反映でない場合がある。
【0134】
本開示は、骨及び組織の再建のためのシステム及び方法を提供する。この再建を行うために、システム及び関連する方法は、一人以上の人の解剖学的な画像表示を利用する。これらの画像は、対象の適切な生体構造を真似る仮想三次元(3D)組織モデル又は一連の仮想3D組織モデルを形成するように処理される。その後、システム及び関連する方法は、再建手術と共に使用するためのモールド及び/又は他の装置(例えば、固定装置、移植装置、患者固有のインプラント、患者固有の外科用ガイド)を形成するために利用される。
【0135】
図1に表されるように、典型的なシステムフローの概要は、生体構造を表す入力データを受けることから始まる。この生体構造は、遺伝的特徴に起因する組織変性又は組織欠如の場合には、不完全な生体構造を備える場合があり、或いは、この生体構造は、遺伝的特徴又は環境条件に起因する変形した生体構造を備える場合があり、或いは、この生体構造は、1つ以上の生体構造破損に起因する粉砕組織を備える場合がある。入力解剖学的データは、例えば表面モデル又は点群の形態を成してもよい対象の生体構造の二次元(2D)画像又は三次元(3D)表面表示を備える。2D画像が利用される状況において、これらの2D画像は、対象の生体構造の3D仮想表面表示を構成するために利用される。当業者は、生体構造の2D画像を利用して3D表面表示を構成することに精通している。したがって、このプロセスの詳細な説明は、簡潔さを増進させるために省かれてしまっている。一例として、入力解剖学的データは、対象組織の3D表面表示を生成できるX線画像、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像、磁気共鳴画像(MRI)、又は、任意の他の撮像データの1つ以上を備えてもよい。
【0136】
図45及び表Iを参照すると、仮想3D骨モデルを構成するために使用されるX線画像との関連では、撮像中の骨回転がモデルを正確に構成するのに重要な役割を果たすことが分かってきた。言い換えると、骨回転が画像間で行われた状況においてX線画像を作り上げようと試みる場合には、この骨回転を考慮するべくX線画像を正規化する必要がある。
【0137】
一例として、大腿骨近位部との関連では、6度及び15度の骨回転がX線画像から抽出される測定値のかなりの変化をもたらすことが分かってきた。一例として、これらの測定値としては、近位部角度、大腿骨頭オフセット、及び、髄内管幅が挙げられるが、これらに限定されない。表Iに反映されるように、0度(すなわち、初期X線により定められる開始点)でX線撮像された同じ大腿骨に関しては、6度の回転、及び、15度の回転が、ピクセルを使用して測定される近位部角度、大腿骨頭オフセット、及び、髄内管幅の違いを示し、この場合、各ピクセルサイズは約0.29ミリメートルであった。特に、近位部角度は、回転の増大に伴って増大し、大腿骨頭オフセットも同様であったが、髄内管幅に関しては同じことが当てはまらなかった。この典型的な表では、3つの横断面が長手方向軸に沿って離間され、この場合、それぞれの面は、髄内管の幅が測定された位置に対応した。表Iに反映されるように、同じ位置における髄内管の幅は、回転角に応じて変化する。その結果、以下で更に詳しく論じられるように、X線を使用して骨の3D仮想モデルを構成するときには、撮像中に骨回転が行われる範囲で回転の偏りを考慮しなければならない。
【0138】
しかしながら、以上は、典型的なシステム及び方法と共に使用されてもよい生体構造の典型的な説明であり、そのため、決して他の生体構造が開示された方法にしたがって本システムと共に使用されることを制限しようとするものではないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される組織は、骨、筋肉、靭帯、腱、及び、多細胞生物における特定の機能を伴う任意の他の明確な種類の構造的材料を含む。その結果、典型的なシステム及び方法が骨との関連で論じられるときには、当業者は、他の組織に対するシステム及び方法の適用性を認識すべきである。
【0139】
図1に戻って参照すると、システムに入力される生体構造データは3つのモジュールに向けられ、そのうちの2つが生体構造データの処理を伴い(完全骨再建モジュール、患者固有モジュール)、一方、3番目のもの(異常データベースモジュール)は、生体構造データをデータベースの一部として分類整理する。第1の処理モジュール、すなわち、完全骨再建モジュールは、対象の骨の仮想3Dモデルを生成するために統計アトラスモジュールから受けられるデータと共に入力生体構造データを処理する。この3Dモデルは、対象の骨の完全な正常の再建である。第2の処理モジュール、すなわち、患者固有モジュールは、1つ以上の最終的な整形外科インプラントに加えて、1つ以上のモールド、固定システム、移植片成形工具、及び、レンダリングを生成するために完全骨再建モジュールから受けられるデータと共に入力生体構造データを処理する。レンダリングとは、予期される手術の転帰に関するフィードバックのための再建された生体構造の視覚化のことである。より具体的には、患者固有モジュールは、患者の生体構造の正常からの著しい偏りにもかかわらず、患者固有の生体構造に正確に適合するように設計される完全にカスタマイズされた装置を生成するようになっている。また、患者固有モジュールは、完全骨再建モジュールからの仮想3D再建骨モデルを利用して、装置設計パラメータのための解剖学的な領域及び特徴(例えば、適合領域及び/又は形状)を自動的に特定する。この態様において、患者固有データは、出力器具及び任意のインプラントが患者の特定の生体構造に正確に適合するように設計パラメータを規定するために使用される。患者固有モジュールの典型的な利用は、以下で更に詳しく論じられる。システムの機能及びプロセスを更に詳しく理解するために、以下は、統計アトラスモジュールから始まるシステムのモジュールの説明である。
【0140】
図1及び
図2に示されるように、統計アトラスモジュールは、所定の個体群における固有の解剖学的なばらつきを得るために1つ以上の生体構造(例えば、骨)の仮想3Dモデルを記録する。典型的な形態において、アトラスは、平均表示及び平均表示に関する変化として表される1つ以上の生体構造の解剖学的特徴の数学的表示を記録する。解剖学的特徴を数学的表示として表すことにより、統計アトラスは、生体構造の自動測定を可能にするとともに、以下で更に詳しく論じられるように、欠けている生体構造の再建を可能にする。
【0141】
共通の生体構造にわたって解剖学的変化を抽出するために、入力生体構造データは、一般にテンプレート3Dモデル又は解剖学的3Dテンプレートモデルと称される個体群にわたる共通の基準フレームと比較される。このテンプレート3Dモデルは、回転され得る、さもなければ視覚的に操作され得る3Dモデルとしてグラフィックディスプレイ上に視覚的に表示されるが、解剖学的な表面特徴の数学的表示/対象組織における統計アトラスにわたる全ての生体構造に関する(すなわち、テンプレート3Dモデルから生成される、統計アトラスの個体群にわたって骨の全ての特性が共有される所定の骨に関する)表示を備える。テンプレート3Dモデルは、複数の解剖学的表示の組み合わせ或いは単一の代表的な事例であってもよく、統計アトラスの最も低いエントロピー状態を表してもよい。統計アトラスに加えられるべきそれぞれの生体構造(すなわち、入力生体構造データ)ごとに、解剖学的3Dモデルが形成されるとともに、解剖学的3Dモデル及びテンプレート3Dモデルの両方が正規化プロセスに晒される。
【0142】
正規化プロセス中、解剖学的3Dモデルがテンプレート3Dモデルのスケールに対して正規化される。正規化プロセスは、解剖学的3Dモデル及びテンプレート3Dモデルの一方又は両方を共通の単位スケールを有するようにスケーリングすることを伴ってもよい。解剖学的3Dモデル及びテンプレート3Dモデルの正規化の後、正規化された解剖学的3Dモデル及びテンプレート3Dモデルはスケールが不変にされ、それにより、スケール(この場合にはサイズを意味する)とは無関係に形状特徴を利用できる。正規化が完了した後、両方の3Dモデルは、スケール空間マッピング及び特徴抽出シーケンスによって処理される。
【0143】
スケール空間マッピング及び特徴抽出は、本質的に、多重分解能特徴抽出プロセスである。特に、このプロセスは、複数の特徴スケールの形状固有の特徴を抽出する。最初に、複数の解剖学的特徴が選択され、それぞれの解剖学的特徴は異なるスケール空間に存在する特徴を表す。その後、選択された解剖学的特徴のそれぞれのスケール空間表示ごとに、モデル固有の特徴が抽出される。これらの抽出された特徴は、テンプレート3Dモデルと解剖学的3Dモデルとの間で(ノイズに関して)ロバスト性が高いレジストレーションパラメータを引き出すために使用される。この多重分解能特徴抽出プロセスの後、抽出されたデータは、多重分解能3Dレジストレーションプロセスによって処理される。
【0144】
図2~
図5を参照すると、多重分解能3Dレジストレーションプロセスは、スケール空間抽出特徴を使用して、解剖学的3Dモデルとテンプレート3Dモデルとの間でアフィンレジストレーション計算を行い、2つのモデルを位置合わせする。特に、解剖学的3Dモデル及びテンプレート3Dモデルは、剛体レジストレーションプロセスによって処理される。
図5に表されるように、この剛体レジストレーションプロセスは、解剖学的3Dモデルとテンプレート3Dモデルとを合わせて、両方のモデルが同じ空間内にあり且つ姿勢特異点を伴わないようにするべく作用する。3Dモデルを合わせるために、各モデルと関連付けられる重心が合わせられる。また、3Dモデルのそれぞれにおける主軸は、両方の3Dモデルの主方向が同じであるように合わせられる。最後に、反復最近点計算を行うことによって3Dモデル間の姿勢差が最小限に抑えられる。
【0145】
剛体レジストレーション後、類似性レジストレーションプロセスを使用して3Dモデルが位置合わせされる。このプロセスは、テンプレート3Dモデル及び解剖学的3Dモデルの両方に関して法線スケール特徴(すなわち、稜部)を最も良く合わせる類似性変換を計算することによってテンプレート3Dモデルと解剖学的3Dモデルとを法線スケールで繰り返し合わせることを伴う。反復類似性アライメントアルゴリズムは、反復最近点の変形である。それぞれの反復回転内で、並進及びスケールが収束まで点対間で計算される。点の2つのセット間の対マッチング又は対対応は、Kdツリー又は何らかの他の空間分割データ構造を使用して計算される距離クエリーを用いて評価される。特に、両方のモデルにおける稜部は、計算マッチング点対プロセスを行うために利用される。この典型的な説明において、稜部とは、単一の主曲率がその曲率線に沿って極値を有する3Dモデル上の点のことである。計算マッチング点対プロセスの一環として、点は、互いに適合する3Dモデルの稜部上で特定される。次に、両方の3Dモデルの稜部は類似性変換計算プロセスに晒され、このプロセスでは、両方のモデルの稜部を最も良く合わせる回転、並進、及び、スケールが計算される。その後、計算された回転、並進、及び、スケールをテンプレート3Dモデル稜部に適用するようになっている変換点プロセスが続く。その後、それぞれの適合された点セット間の二乗平均平方根誤差又は距離誤差が計算された後、前のプロセスからの相対二乗平均平方根誤差又は相対距離誤差の変化の計算が続く。相対二乗平均平方根誤差又は相対距離誤差の変化が所定の閾値内であれば、最終的な回転、並進、及び、スケールをテンプレート3Dモデルに適用するために変換プロセスが行われる。
【0146】
関節型レジストレーションプロセスが類似性レジストレーションプロセスに続き、関節型レジストレーションプロセスは、スケール空間特徴プロセスから入力データを受ける。スケール空間特徴プロセスでは、異なるスケール空間内でテンプレート3Dモデル及び解剖学的3Dモデルから特徴が抽出される。各スケール空間は、ガウス平滑化関数を用いて当初の解剖学的3Dモデルを畳み込むことにより規定される。
【0147】
関節型レジストレーションプロセスの目的は、テンプレート3Dモデルの「n」個のスケール空間特徴を解剖学的3Dモデルで計算された「m」個のスケール空間特徴と適合させることである。テンプレート3Dモデル及び解剖学的3Dモデルで検出される特徴の数の間の差は、解剖学的変化に起因する。検出される特徴の数のこの差は、テンプレート3Dモデルと解剖学的3Dモデルとの間に多くの関係をもたらす場合がある。したがって、そのような変化に対応して、全ての相互特徴間で正確なマッチングを達成するために、2方向相互特徴マッチングが行われる。具体的には、テンプレート3Dモデルに関してスケール空間で特徴セットが計算される。この典型的なプロセスにおいて、特徴セットは、隆起した解剖学的構造(例えば、骨盤の寛骨臼カップ、腰椎の脊髄突起)を表す点の連結セットである。同様に、特徴セットは、解剖学的3Dモデルに関してスケール空間で計算される。マッチング特徴対プロセスは、形状記述子(例えば、曲率指数、形状指数など)を使用してテンプレート3Dモデルで計算された特徴セットを解剖学的3Dモデルにおける特徴セットに適合させる。このプロセスの結果は、テンプレート3Dモデルと解剖学的3Dモデルとの間の特徴セットの「n-m」個のマッピングである。必要な場合には、適合された特徴セットを単一の特徴セットへと再編成するために再編成プロセスが行われる(例えば、寛骨臼カップが2つの断片として検出された場合には、このプロセスは、2つの断片を1つの単一の特徴セットへと再編成する)。その後、テンプレート3Dモデル及び解剖学的3Dモデルに関する適合された特徴セットにおけるそれぞれの点間の対応を計算するために計算プロセスが行われる。その後、テンプレート3Dモデルにおけるそれぞれの適合された特徴セットを解剖学的3Dモデルにおけるそれぞれの対応する特徴セットへ変換する回転、並進、及び、ずれを計算するためにアフィン計算変換プロセスが続く。その後、計算されたアフィン変換パラメータ(すなわち、回転、並進、及び、ずれ)を使用してテンプレート3Dモデルが変換される。最後に、テンプレート3Dモデル及び解剖学的3Dモデルにおけるそれぞれの適合された特徴セットを合わせるために剛体アライメントプロセスが行われる。
【0148】
関節型レジストレーションプロセス及び法線スケール特徴プロセスの後に行われる非剛体レジストレーションプロセスは、テンプレート3Dモデルにおける全ての表面頂点を解剖学的3Dモデルにおける頂点に適合させて初期対応を計算することを伴う。この対応は、その後、テンプレート3Dモデルにおけるそれぞれの頂点を解剖学的3Dモデルにおける適合された点へ移動させる変形領域を計算するために使用される。マッチングは、同じクラス(すなわち、スケール空間特徴頂点、法線スケール特徴頂点、又は、非特徴頂点)内の頂点間で行われる。法線スケール特徴プロセスとの関連で、テンプレート3Dモデル及び解剖学的3Dモデルに関して、初期の入力モデルを意味する初期のスケール空間(稜部)で形状特徴が計算される。
【0149】
具体的には、非剛体レジストレーションプロセスの一環として、テンプレート3Dモデル(TMssf)及び解剖学的3Dモデル(NMssf)に関してスケール空間特徴が計算される。テンプレート3Dモデル及び解剖学的3Dモデルにおける特徴の各セットは、「k」個の近傍点を使用して成長される。アライメントプロセスは、テンプレート3Dモデルスケール空間特徴に対して解剖学的3Dモデルにおけるその対応する特徴に適合するように適用される。2つの点群、基準(X)、及び、移動(Y)が与えられると、目標は、最小相対二乗平均平方根誤差及び最大角度閾値の制約下で、2つの点群を繰り返し合わせて、全体のエラー指標を最小限に抑えることである。反復最近点を法線スケールで使用してテンプレート3Dモデルにおける特徴セットを解剖学的3Dモデルにおける適合セットと合わせるためにリアライメントプロセスが行われる。リアライメント後、テンプレート3Dモデルにおける各特徴セットの点と解剖学的3Dモデルにおける適合した特徴セットの点との間の点対応が計算される。解剖学的3Dモデルにおける適合点は、テンプレート3Dモデル点に近い表面法線方向を有するべきである。出力は、変形領域ステップを計算するために転送される。
【0150】
スケール空間特徴計算過程と並行に、テンプレート3Dモデル(TMnfp)及び解剖学的3Dモデル(NMnfp)の非特徴点、或いは、スケール空間特徴又は法線スケール特徴のいずれかに属さないテンプレート3Dモデル表面上の点の残存するセットは、テンプレート3Dモデルにおける非特徴点と解剖学的3Dモデルにおける非特徴点との間の点対応を計算するために、対応計算にしたがって処理される。新しいモデルにおける適合点は、テンプレートモデル点に近い表面法線方向を有するべきである。出力は、変形領域ステップを計算するために転送される。
【0151】
また、スケール空間特徴計算過程と並行して、テンプレート3Dモデル(TMnsf)における法線スケール特徴(すなわち、稜部)は、AICPを使用して解剖学的3Dモデル(NMnsf)における法線スケール特徴(すなわち、稜部)と合わせられる。AICPは、それぞれの反復において並進、回転、及び、スケールが適合点セット間で計算される反復最近点計算の変形である。アライメントプロセス後、対応プロセスが行われる。
【0152】
スケール空間特徴計算過程、対応過程、及び、アライメント過程からの出力は変形プロセスに晒され、この変形プロセスでは、テンプレート3Dモデルにおけるそれぞれの点を解剖学的3Dモデルにおけるその適合点へ移動させるために変形領域が計算される。
【0153】
非剛体レジストレーションプロセスの出力は、多重分解能レジストレーションステップ後に解剖学的3Dモデルの表面に更に近いテンプレート3Dモデルメッシュの頂点を移動させて出力モデルを平滑化するために緩和プロセスに晒される。特に、法線空間内のテンプレート3Dモデル(TMns)及び法線空間内の解剖学的3Dモデル(NMns)は、法線制約球面探索アルゴリズムを使用して解剖学的3Dモデルに最も近いテンプレート3Dモデルにおける頂点を計算するために対応計算によって処理される。この計算は、両方のモデルにおける最も近い頂点を使用して、テンプレート3Dモデルにおける各頂点と、解剖学的3Dモデルから複数の適合点をもたらし得る解剖学的3Dモデルにおけるその適合頂点とから、対応ベクトルを生成する。テンプレート3Dモデルの各頂点における適合点を使用して、その点からのユークリッド距離と適合点とに基づき解剖学的3Dモデルにおける適合点の加重平均が計算される。この時点で、テンプレート3Dモデルは、計算された加重平均距離を使用してテンプレート3Dモデルにおける各点を移動させるべく加重平均を使用して更新される。加重計算プロセス後、テンプレートモデルにおけるそれぞれの点ごとに緩和プロセスを行って、解剖学的3Dモデル表面上の最も近い点を見つけ、それをそのそれぞれの点へと移動させる。最後に、ノイズを除去するために、変形したテンプレート3Dモデルに関して平滑化作業が行われる。結果として得られる位置合わせされた3Dモデル(すなわち、テンプレート3Dモデル及び解剖学的3Dモデル)は、その後、自由形状変形プロセスに晒される。
【0154】
自由形状変形プロセスは、解剖学的3Dモデルの表面を用いてテンプレート3Dモデルの表面をモーフィングする。より具体的には、テンプレート3Dモデルの表面は、テンプレート3Dモデル表面上及び解剖学的3Dモデル表面上の両方の互いに適合された点を使用して、加重された2点間を基本として繰り返し移動される。
【0155】
図2及び
図6を参照すると、自由形状変形プロセス後、解剖学的3Dモデルは、解剖学的3Dモデルとモーフィングされたテンプレート3Dモデルとの間の偏りを決定するために対応計算プロセスに晒される。この対応計算プロセスは、テンプレート3Dモデルを自由形状変形ステップから精緻化して、変形されたテンプレート3Dモデル及び変形された解剖学的3Dモデルにおける選択されたランドマーク位置の最終適合を行う。この態様で、対応計算プロセスは、平均モデルに関する偏りとして記録される3Dモデル間のサイズ及び形状の変化を計算して記録する。この対応計算プロセスの出力は、正規化された解剖学的3Dモデルと、解剖学的3Dモデルにおける変化を考慮するように更新されてしまった修正テンプレート3Dモデルとの付加である。言い換えると、
図2に概略的に示されるプロセスの出力は、完全な解剖学的再建(例えば、完全骨再建)を容易にするために修正テンプレート3Dモデルと一致する特性(例えば、点対応)を有するように変更されてしまった正規化された解剖学的3Dモデルである。
【0156】
図1及び
図7を参照すると、統計アトラスモジュールからの入力及び生体構造データは、完全生体構造再建モジュールへと向けられる。一例として、対象の生体構造は、1つの骨又は複数の骨であってもよい。しかしながら、典型的なハードウェア、プロセス、及び、本明細書中に記載される技術を使用して骨以外の生体構造が再建されてもよいことに留意すべきである。典型的な形態において、完全生体構造再建モジュールは、不完全な骨盤、変形された骨盤、又は、粉砕した骨盤に関する入力データを受けてもよい。入力解剖学的データは、例えば表面モデル又は点群の形態を成してもよい対象の生体構造の二次元(2D)画像又は三次元(3D)表面表示を備える。2D画像が利用される状況において、これらの2D画像は、対象の生体構造の3D表面表示を構成するために利用される。当業者は、生体構造の2D画像を利用して3D表面表示を構成することに精通している。したがって、このプロセスの詳細な説明は、簡潔さを増進させるために省かれてしまっている。一例として、入力解剖学的データは、3D表面表示を生成できるX線画像、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像、磁気共鳴画像(MRI)、又は、任意の他の撮像データの1つ以上を備えてもよい。以下で更に詳しく論じられるように、この入力解剖学的データは、制限なく、(1)最も近い統計アトラス3D骨モデルを特定するための開始点、(2)3D表面頂点のセットを使用するレジストレーション、及び、(3)再建出力の最終緩和ステップのために使用されてもよい。
【0157】
図7に描かれるように、入力解剖学的データ(例えば、患者の骨モデル)は、対象の患者の生体構造に最も良く似ている統計アトラス中の解剖学的モデル(例えば、骨モデル)を特定するために利用される。このステップは、アトラス中の最も近い骨を見出すように
図3に描かれる。患者の骨モデルに最も良く似ている統計アトラス中の骨モデルを最初に特定するために、患者の骨モデルは、1つ以上の類似性指標を使用して統計アトラス中の骨モデルと比較される。初期類似性指標の結果は、その後のレジストレーションステップのための「初期推測」として使用される統計アトラスからの骨モデルの選択である。レジストレーションステップは、出力がアトラス骨モデルと合わされる患者骨モデルであるように、選択されたアトラス骨モデル(すなわち、初期推測骨モデル)を患者骨モデルと位置合わせする。レジストレーションステップ後、合わされた「初期推測」のための形状パラメータは、形状が患者骨形状と適合するように最適化される。
【0158】
この場合には統計アトラスからの形状パラメータは、再建と患者骨モデルとの間の誤差を最小限に抑えるべく変形されない或いは既存の骨の領域が使用されるように最適化される。形状パラメータ値の変更は、異なる解剖学的形状の表示を可能にする。このプロセスは、再建された形状の収束(場合により、反復間の相対的な表面変化として、或いは、最大数の許容される反復として測定される)が達成されるまで、異なるスケール空間で繰り返される。
【0159】
緩和ステップは、当初の患者3D組織モデルと最も良く適合するように最適化される組織をモーフィングするべく行われる。典型的なケースに従い、収束ステップから出力される再建された骨盤モデルからの欠けている生体構造は、患者固有3D骨盤モデルに適用され、それにより、患者の再建された骨盤の患者固有3Dモデルが形成される。より具体的には、再建された骨盤モデルにおける表面点は、再建された形状を患者固有の形状に最も良く適合させるために患者固有の3D骨盤モデルへと直接に緩和される(すなわち、モーフィングされる)。このステップの出力は、何が患者の正常な/完全な生体構造であるべきかを表す完全に再建された患者固有の3D組織モデルである。
【0160】
図1を参照すると、欠陥分類モジュールのためのトレーニング及びデータ入力として異常データベースが利用される。特に、異常データベースは、解剖学的な表面表示と関連する臨床・人口統計学的データとを含む異常な解剖学的特徴に固有のデータを含む。
【0161】
図1及び
図8を参照すると、正常な/完全な組織を表す完全に再建された患者固有の3D組織モデル、及び、異常データベースからの異常な/不完全な組織を表す入力解剖学的データ(すなわち、3D表面表示又は3D表面表示を生成できるデータ)は、欠陥分類モジュールに入力される。異常データベースからのこの解剖学的データは、遺伝的特徴に起因する組織変性又は組織欠如の場合には、不完全な生体構造であってもよく、或いは、この生体構造は、遺伝的特徴又は環境条件(例えば、外科的修復、疾患など)に起因する変形した生体構造であってもよく、或いは、この生体構造は、1つ以上の生体構造破損に起因する粉砕組織であってもよい。一例として、入力解剖学的データは、3D表面表示を生成できるX線画像、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像、磁気共鳴画像(MRI)、又は、任意の他の撮像データの1つ以上を備えてもよい。
【0162】
欠陥分類モジュールは、定量的な欠陥分類システムを形成するために、対象の生体構造の正常な3D表示と相まって異常データベースから複数の異常な3D表面表示を引き寄せる。この欠陥分類システムは、それぞれの欠陥クラス又はクラスタの「テンプレート」を形成するために使用される。より一般的には、欠陥分類モジュールは、解剖学的な欠陥を、これらの欠陥を扱うヘルスケアソリューションの生成を容易にするために密接に関連する欠陥(同様の形状特徴、臨床特徴、外観特徴、又は、他の特徴を伴う欠陥のことである)から成るクラスへと分類する。この欠陥分類モジュールは、ソフトウェア及びハードウェアを使用して、術前データと術中観察者視覚化との間の不一致を排除する或いは減少させるための手段として欠陥を自動的に分類する。伝統的に、術前放射線写真は、必要な解剖学的再建の程度を定性的に解析するための手段として解釈されてきたが、これは、せいぜい行き当たりばったりの術前計画をもたらした。現在、術中観察者は、生体構造欠陥の程度の最終的な決定を行って、放射線写真に依存する術前計画が不備であった或いは不完全であったと何度も結論を出す。結果として、即時欠陥分類モジュールは、欠陥分類に関連付けられる観察者間変化及び観察者内変化を減らすとともに新たな欠陥事例を分類するための定量的な指標を与えることによって、現在の分類システムを改良する。
【0163】
欠陥分類モジュールtの一部として、モジュールは、初期状態として使用されるべき1つ以上の分類タイプを入力として解釈してもよい。例えば、骨盤との関連で、欠陥分類モジュールは、米国整形外科学会(AAOS)のD’Antonio等の骨欠陥分類構造に対応する欠陥特徴を入力として使用してもよい。この構造は、以下のような4つの異なるクラス、すなわち、(1)部分的骨損失に対応するタイプI、(2)空洞性骨損失に対応するタイプII、(3)部分的骨損失と空洞性骨損失との組み合わせに対応するタイプIII、及び、(4)骨盤不連続性に対応するタイプIVを含む。或いは、欠陥分類モジュールは、Paprosky骨欠陥分類構造を用いてプログラミングされてもよい。この構造は、以下のような3つの異なるクラス、すなわち、(1)骨融解を伴わない支持的な縁に対応するタイプI、(2)無傷の支持的支柱を伴う歪んだ半球と2センチメートル未満の上内側移動又は側方移動とに対応するタイプII、(3)2センチメートルを超える上移動と破壊された或いは無傷のケーラーのラインを伴う激しい坐骨溶解とに対応するタイプIIIを含む。また、欠陥分類モジュールは、改良Paprosky骨欠陥分類構造を用いてプログラミングされてもよい。この構造は、以下のような6つの異なるクラス、すなわち、(1)構成要素移動を伴わない支持的な縁に対応するタイプ1、(2)歪んだ半球であるが3センチメートル未満の上移動に対応するタイプ2A、(3)1/3未満の外周縁を有する更に大きな半球歪みと、支持的なドーム残渣に対応するタイプ2B、(4)無傷の縁、中線~ケーラー線の移動、及び、支持的なドーム残渣に対応するタイプ2C、(5)3センチメートルを超える上移動と無傷のケーラーのラインを伴う激しい坐骨溶解とに対応するタイプ3A、(6)3センチメートルを超える上移動と破壊されたケーラーのライン及び半周を超える縁欠陥を伴う激しい坐骨溶解とに対応するタイプ3Bを含む。欠陥分類モジュールは、出力分類タイプ及びパラメータを使用して、解剖学的データと再建されたデータの解剖学的データとを比較して、解剖学的データがいずれの分類タイプに最も良く似ているのか、それにより、結果的に割り当てられる分類に対応するのかを見分ける。
【0164】
初期ステップとして、統計アトラスに対する付加ステップは、正常アトラス3D骨モデルと異常3D骨モデルとの間の対応を生成することを伴う。より具体的には、3D骨モデルは、正常3Dモデル中の何の骨が異常3Dモデル中に存在しないのかを見分けるために比較される。典型的な形態において、欠けている/異常な骨は、それぞれの3D骨モデルの表面上の点を比較して、異常3D骨モデルに存在しない正常3D骨モデルの表面上の別個の点のリストを生成することによって特定される。また、システムは、2つのモデル間に共通のそれらの表面点を記録してリストアップ(すなわち、特定)することもでき、或いは、異常3D骨モデルに存在しない点として記録されなければ、全ての他の点が両方の骨モジュールに(すなわち、正常骨モデル及び異常骨モデルの両方に)共通に存在することに即座に気付くこともできる。したがって、このステップの出力は、統計アトラス対応と正常アトラス3D骨モデルからの特徴(点)のリストとを伴う異常3D骨モデルであり、特徴(点)のリストは、その特徴(点)が異常3D骨モデル中に存在するか或いは欠いているかどうかを示す。
【0165】
正常アトラス3D骨モデル(完全骨再建モジュールから生成される)と異常3D骨モデル(入力解剖学的データから生成される)との間の対応を生成した後、異常3D骨モデルからの欠けている/異常な領域が正常アトラス3D骨モデルで局在化される。言い換えると、正常アトラス3D骨モデルは、正常アトラス3D骨モデルに存在する異常3D骨モデルからの骨欠損を特定して記録するために異常3D骨モデルと比較される。局在化は、曲率比較、表面積比較、及び、点群領域比較を含むがこれらに限定されない多数の方法で行われてもよい。最終的に、典型的な形態において、欠けている/異常な骨は、欠けている/異常な領域の幾何学的な境界を特定する境界点のセットとして局在化される。
【0166】
欠陥分類モジュールは、境界点を使用して、欠けている/異常な領域から入力臨床データによって特徴を抽出する。典型的な形態において、抽出される特徴は、形状情報、容積情報、又は、欠陥のある(すなわち、欠けている或いは異常な)領域の全体的特徴を表すために使用される任意の他の情報を含んでもよい。これらの特徴は、既存の臨床データ、例えば継続的欠陥分類データ又は必ずしも解剖学的特徴に関連付けられない患者臨床情報(人口統計データ、病歴など)などに基づいて精緻化されてもよい。このステップの出力は、同様の組織(例えば骨)変形をグループ化するためにその後のステップで使用される欠陥のある領域を表す数学的記述子である。
【0167】
数学的記述子は、統計的解析に基づいてクラスタリングされる或いはグループ化される。特に、記述子は、所定の個体群内の固有の欠陥クラスを特定するために統計的に解析されて他の患者/死体からの他の記述子と比較される。無論、この分類は、患者/死体の数が増大するにつれて別個のグループの分類及び特定を精緻化する複数の患者/死体からの複数の記述子を前提としている。この統計的解析からの出力は、新たな入力解剖学的データを分類するために使用される欠陥クラスのセットであり、テンプレートの数を決定する。
【0168】
欠陥分類モジュールの出力は、テンプレートモジュールへ向けられる。典型的な形態において、テンプレートモジュールは、欠陥分類モジュールによって特定される欠陥分類のそれぞれに関して固有のものであるデータを含む。一例として、所定の欠陥分類のためのそれぞれのテンプレートは、欠陥のある骨の表面表示、欠陥の位置、及び、欠陥のある骨に関連する測定値を含む。このテンプレートデータは、表面形状データ、点群表示、1つ以上の曲率プロファイル、寸法データ、及び、物理量データの形態を成してもよい。テンプレートモジュール及び統計アトラスからの出力は、マスカスタマイズされたインプラント、固定装置、器具、又は、モールドを設計し、検査し、及び、それらの製造を可能にするためにマスカスタマイゼーションモジュールによって利用される。マスカスタマイゼーションモジュールの典型的な利用については以下で更に詳しく論じられる。
患者固有再建インプラント
【0169】
図1及び
図17を参照して、不完全な、変形した、及び/又は、粉砕された生体構造に苦しめられる患者のための患者固有の整形外科インプラントガイド及び関連する患者固有の整形外科インプラントを生成するための典型的なプロセス及びシステムについて説明する。典型的な議論のため、不完全な生体構造を伴う患者のための完全股関節形成術について説明する。しかしながら、言うまでもなく、典型的なプロセス及びシステムは、不完全な或いは変形した生体構造が存在する事例における患者固有のカスタマイゼーションに従う任意の整形外科インプラントに適用できる。例えば、典型的なプロセス及びシステムは、骨変性(不完全な生体構造)、骨変形、又は、粉砕骨が存在する場合の人工肩関節置換術及び膝置換術に適用できる。その結果、以下では股関節インプラントが論じられるが、当業者は、当初の整形外科術又は整形外科的修復術と共に使用するための、他の整形外科インプラント、ガイド、工具等に対するシステム及びプロセスの適用可能性を理解できる。
【0170】
骨盤不連続性は、殆どの場合に完全股関節形成術(THA)と関連付けられる骨損失の特異的形態であり、この場合、骨溶解又は寛骨臼破壊により、骨盤の上面が下部から分離されるようになる可能性がある。骨損失の量及び重症度、並びに、インプラントの生物学的な内方成長の可能性は、特定の患者のための治療の選択に影響を及ぼし得る因子の一部である。激しい骨損失及び骨盤完全性の損失の場合には、特注のトリフランジカップが使用されてもよい。1992年に最初に導入されたこのインプラントは、既存のケージに優る幾つかの利点を有する。このインプラントは、骨盤不連続性に対して安定性を与えることができ、構造的な移植及びケージの術中輪郭削りの必要性を排除することができ、及び、周囲の骨に対する構造物のオッセオインテグレーションを促進させることができる。
【0171】
文脈にかかわらず、患者の不完全な、変形した、及び/又は、粉砕された生体構造が未解決であろうが、患者固有のインプラント及び/又はガイドを生成するための典型的なシステム及びプロセスは、患者の再建された生体構造の三次元モデルを生成するために3D骨モデル再建の前述の典型的なプロセス及びシステムを利用する(
図1~
図7及びこれらの図の前述の典型的な議論を参照)。より具体的には、骨盤不連続性が関与する股関節形成術との関連で、典型的な患者固有のシステムは、患者骨盤データを使用して、サイド固有(右又は左)の患者の完全な骨盤の3Dモデルを生成する。その結果、不完全な生体構造のための患者生体構造データを利用して患者の生体構造の3D再建モデルを生成するためのシステム及びプロセスの議論は、簡潔さを増進させるために省かれる。したがって、不完全な、変形した、及び/又は、粉砕された生体構造に苦しめられる患者のための患者固有の整形外科インプラントガイド及び関連する患者固有の整形外科インプラントを生成するためのプロセス及びシステムの説明は、三次元再建モデルの形成後に説明される。
【0172】
具体的に
図17~
図19及び
図23を参照すると、骨盤及び大腿骨の患者固有再建3D骨モデルが生成された後、患者固有の整形外科インプラントとインプラント及び/又はその締結具のための患者固有の留置ガイドとを形成するために、(骨盤及び大腿骨のための)不完全な患者固有3D骨モデル及び(骨盤及び大腿骨のための)再建3D骨モデルの両方が利用される。特に、欠陥形状抽出ステップは、患者固有3Dモデルと再建3Dモデルとの間の対応(骨盤モデル間の対応及び大腿骨モデル間の対応であるが、1つの大腿骨モデルと1つの骨盤モデルとの間の対応ではない)を生成することを含む。より具体的には、3Dモデルは、再建3Dモデル中の何の骨が患者固有3Dモデル中に存在しないのかを見分けるために比較される。典型的な形態において、欠けている/異常な骨は、それぞれの3Dモデルの表面上の点を比較して、患者固有3Dモデルに存在しない再建3Dモデルの表面上の別個の点のリストを生成することによって特定される。また、システムは、2つのモデル間に共通のそれらの表面点を記録してリストアップ(すなわち、特定)することもでき、或いは、患者固有3Dモデルに存在しない点として記録されなければ、全ての他の点が両方の骨モジュールに(すなわち、再建3Dモデル及び患者固有3Dモデルの両方に)共通に存在することに即座に気付くこともできる。
【0173】
図18を参照すると、再建3Dモデル(完全骨再建モジュールから生成される)と患者固有3Dモデル(入力解剖学的データから生成される)との間の対応を生成した後、患者固有3Dモデルからの欠けている/異常な領域が再建3Dモデルで局在化される。言い換えると、再建3Dモデルは、再建3Dモデルに存在する患者固有3Dモデルから欠けている骨を特定して記録するために患者固有3Dモデルと比較される。局在化は、曲率比較、表面積比較、及び、点群領域比較を含むがこれらに限定されない多数の方法で行われてもよい。最後に、典型的な形態では、欠けている/異常な骨が局在化され、また、出力は、2つのリスト、すなわち、(a)患者固有3Dモデルに存在しない或いは患者固有3Dモデルにおいて変形される再建3Dモデルの骨に対応する頂点を特定する第1のリストと、(b)患者固有3Dモデルにも存在して正常である再建3Dモデルの骨に対応する頂点を特定する第2のリストとを備える。
【0174】
図18、
図19、及び、
図23を参照すると、欠陥形状抽出ステップの後、インプラント位置決めステップが行われる。欠陥形状抽出ステップからの2つの頂点リスト、及び、統計アトラス(
図1及び
図2、並びに、
図1及び
図2の前述の典型的な議論を参照)からの正常な骨(例えば、骨盤、大腿骨等)の3Dモデルは、大腿骨インプラント又は骨盤インプラントのための固定位置を見分けるために入力される。より具体的には、固定位置(すなわち、インプラント位置)は、患者が残存する骨を有する場所にそれぞれが位置されるように自動的に選択される。逆に、固定位置は、患者の残存する骨の欠陥領域では選択されない。このようにして、固定位置は、最終的なインプラント形態/形状とは無関係に選択される。固定位置の選択は、形状情報と統計アトラス位置とを使用して自動化されてもよい。
【0175】
図18に示されるように、インプラント位置決めステップ後、次のステップは、患者固有のインプラントパラメータを生成することである。このステップを完了するために、インプラントの基礎を成す形状を規定するのに十分な設定数のパラメータによってインプラントを規定するインプラントパラメータ化テンプレートが入力される。一例として、欠如した臼蓋窩又は変性した臼蓋窩を置換する/増強するための骨盤再建の場合、インプラントパラメータ化テンプレートは、寛骨臼カップ置換方向のための角度パラメータと、大腿骨頭の寸法を受け入れるための深さパラメータとを含む。寛骨臼インプラントのための他のパラメータは、制限なく、寛骨臼カップ寸法、前面方向、フランジ位置及び形状、固定ネジの位置及び方向を含んでもよい。多孔質インプラントの場合、多孔位置及び多孔性の構造的特徴が含まれるべきである。一例として、欠如した大腿骨又は変性した大腿骨を置換する/増強するための大腿骨再建の場合、インプラントパラメータ化テンプレートは、大腿骨頭置換方向のための角度パラメータ、大腿骨頸部長さ、大腿骨頭オフセット、近位部角度、並びに、外部大腿骨及び顆間窩の断面解析を含む。当業者は、インプラントの基礎を成す形状を規定するように選択されるパラメータが置換され或いは補完されるべき生体構造に応じて変化することを理解できる。その結果、インプラントの基礎を成す形状を規定するのに十分なパラメータの網羅的なリストアップは非現実的である。それにもかかわらず、例えば
図19に描かれるように、再建3D骨盤モデルは、寛骨臼カップの半径、寛骨臼カップ外周上縁を備える骨盤骨の識別表示、及び、残存する骨盤に対する寛骨臼カップの方向の識別表示を得るために利用されてもよい。また、パラメータは、インプラントが患者固有の生体構造に対して最良に/より良く適合するようにインプラント位置を考慮に入れて精緻化されてもよい。
【0176】
インプラントの基礎を成す形状を規定するのに十分な設定数のパラメータをまとめた後、インプラントの設計に着手する。より具体的には、インプラント表面モデル全体の初期反復が構成される。インプラント表面モデル全体のこの初期反復は、埋め込み領域における推定輪郭と患者固有の輪郭との組み合わせによって規定される。推定輪郭は、再建3D骨モデル、欠けている解剖学的な骨、及び、再建3D骨モデルから抽出される特徴から決定される。自動的に決定され得る埋め込み部位のこれらの特徴及び位置は、例えば寛骨臼カップインプラントに関する
図19に描かれるように、全体のインプラント形状を決定するために使用される。
【0177】
図17に戻って参照すると、インプラント表面モデル全体の初期反復は、カスタム(すなわち、患者固有)プランニングシーケンスに従って処理される。このカスタムプランニングシーケンスは、反復見直し及び設計プロセスの一環として外科医及びエンジニアからの入力を伴ってもよい。特に、外科医及び/又はエンジニアは、インプラント表面モデル全体に対して変更が必要とされるかどうかを決定するために、インプラント表面モデル全体及び再建3D骨モデルを見てもよい。この見直しは、エンジニアと外科医との間で合意に達するまでインプラント表面モデル全体の反復をもたらしてもよい。このステップからの出力は、最終的なインプラント又は有形モデルを形成するためのCADファイル、CNCマシンエンコーディング、又は、急速製造命令の形態を成してもよい最終的なインプラントのための表面モデルである。
【0178】
図17、
図19、及び、
図20を参照すると、患者固有の整形外科インプラントの設計と同時に或いはその後に、患者固有の留置ガイドの設計がなされる。寛骨臼カップインプラントとの関連で、先の典型的な形態で論じられるように、患者固有の寛骨臼カップを配置するのに役立つように1つ以上の外科用器具を設計して製造することができる。残存する骨のサイズ及び形状と適合するためのサイズ及び形状を有するように患者固有インプラントを設計する際には、患者固有のインプラントの輪郭及び形状が利用されて留置ガイドの一部として組み込まれてもよい。
【0179】
典型的な形態において、寛骨臼留置ガイドは、腸骨、坐骨、及び、恥骨の表面と接触するように構成される3つのフランジを備え、この場合、3つのフランジはリングを介して相互に接続される。また、留置ガイドのフランジは、留置ガイドが寛骨臼カップインプラントのために計画される同一の位置をとるように寛骨臼カップインプラントの同一の形状、サイズ、及び、輪郭を成してもよい。言い換えると、寛骨臼留置ガイドは、寛骨臼カップインプラントが正にそうであるように、患者の生体構造(腸骨、坐骨、及び、恥骨の不完全な表面)のネガインプリントとして形成され、それにより、留置ガイドは、患者の生体構造に正確に嵌まり付く。しかし、インプラントガイドは、それが締結具の穴及び/又は留置のためのドリル加工をガイドするように構成される1つ以上の固定穴を含むという点においてインプラントとはかなり異なる。典型的な形態において、留置ガイドは、寛骨臼カップインプラントを残存する骨盤に固定する際に利用される任意のドリル用ビット又は他のガイド(例えば、だぼ)の適切な方向を確保するように画像解析(例えば、マイクロCT)に基づいて寸法付けられて方向付けられる穴を含む。穴の数及び方向は、寛骨臼カップインプラントの形状にも影響を及ぼす残存する骨に応じて変化する。
図20は、完全股関節形成術で用いる患者固有の留置ガイドの一例を描く。他の事例では、ガイドをそれがインプラントに嵌まり込んで固定ネジの方向のみを案内するように形成することができる。この形態では、ガイドがインプラントのネガとして形成され、それにより、ガイドをインプラント上にわたって直接に配置できる。それにもかかわらず、患者固有再建インプラントのサイズ、形状、及び、輪郭の少なくとも一部の組み込みは、患者固有インプラントが結合されるようになっている骨にかかわらず引き継ぐテーマである。
【0180】
本明細書中に記載される典型的なシステム及び方法を利用すると、より高い整形外科的留置精度、より良い解剖学的組み込み、及び、再建された三次元モデルによって真の角度及び面配向を術前に測定できる能力をもたらし得る多くの情報を与えることができる。
大量にカスタマイズできる構成要素を使用するカスタマイズされたインプラントの形成
【0181】
図22を参照して、大量にカスタマイズできる構成要素を使用してカスタマイズされた整形外科インプラントを生成するための典型的なプロセス及びシステムについて説明する。典型的な議論のため、著しい寛骨臼欠陥を伴う患者のための完全股関節形成術について説明する。しかしながら、言うまでもなく、典型的なプロセス及びシステムは、不完全な生体構造が存在する事例におけるマスカスタマイゼーションに従う任意の整形外科インプラントに適用できる。
【0182】
著しい寛骨臼欠陥は、特殊な手続きを必要とするとともに、インプラント構成要素を修復する必要がある。1つの手法は特注のトリフランジであり、これは、腸骨、坐骨、及び、恥骨に取り付けられる3つのフランジと寛骨臼カップとから成る完全に特注のインプラントである。典型的なプロセス及びシステムとは対照的に、従来技術のトリフランジインプラントは、製造が面倒で且つケースごとにインプラント全体を再設計する必要がある(すなわち、完全に患者固有の)単一の複雑な構成要素を備える。典型的なプロセス及びシステムは、特注の適合性及び多孔性を可能にするべく完全に特注の構成要素に加えて大量にカスタマイズできる構成要素をモジュール態様で使用する特注のトリフランジインプラントを生成する。
【0183】
典型的なプロセスに係る事前計画ステップは、カップに対する3つのフランジの方向と、フランジ接触位置と、寛骨臼カップの方向及びサイズとを決定するために行われる。この事前計画ステップは、この節の直前の「患者固有のインプラント」の議論にしたがって行われる。一例として、インプラント固定の特定の位置は、インプラント位置決めステップに従って、直前の節で論じられたその前置きのデータ入力を使用して決定される。思い起こすと、このインプラント位置決めステップの一環として、欠陥形状抽出ステップからの2つの頂点リスト、及び、統計アトラス(
図1及び
図2、並びに、
図1及び
図2の前述の典型的な議論を参照)からの正常な骨盤の3Dモデルは、特注のトリフランジのための固定位置を見分けるために入力される。より具体的には、固定位置(すなわち、インプラント位置)は、患者が残存する骨を有する場所にそれぞれが位置されるように選択される。言い換えると、固定位置は、患者の残存する骨盤の欠陥領域では選択されない。このようにして、固定位置は、最終的なインプラント形態/形状とは無関係に選択される。
【0184】
固定位置を決定した後、トリフランジ構成要素(すなわち、フランジ)は、この節の直前の「患者固有のインプラント」の議論を使用して形成される。フランジは、置換寛骨臼カップに対してカップ方向が許容できる関節機能を与えるように方向付けられるべく形成される。また、フランジの接触面は、トリフランジの接触面が骨盤の骨表面の「ネガ」として形成されるという点において患者の骨盤生体構造と適合するように輪郭付けられる。
図20の典型的なプロセスは、
図14に描かれるプロセスの最終ステップを利用して、フランジのプロトタイプを迅速に製造する(又は、従来のコンピュータ数値制御(CNC)機器を使用する)。フランジが製造された後、多孔質材料をその内部でトリフランジに加えることができるキャビティを設けるために更なる機械加工又はステップが行われてもよい。
【0185】
特注の構成要素である必要がないトリフランジシステムの1つの部分は、寛骨臼カップ構成要素である。この典型的なプロセスでは、一群の寛骨臼カップが最初に製造され、この一群の寛骨臼カップは、トリフランジシステムをその上に形成するべき土台を与える。これらの「ブランク」カップは、必要に応じた使用のために在庫品として保持される。カップに関して特定の多孔性が望まれる場合には、カップ内への多孔質材料の圧入を可能にする機械的特徴がカップに加えられる。或いは、カップに関して特定の多孔性が望まれる場合には、1つ以上の多孔質コーティングを使用してカップがコーティングされてもよい。
【0186】
ブランクカップが形成されて、前述したように任意の多孔性問題が扱われた後、カップは、フランジを受け入れるようにカップを機械加工することによって患者固有にされる。特に、フランジの仮想モデルを使用して、システムソフトウェアがフランジのための仮想ロック機構を構成し、仮想ロック機構は、ロック機構がカップへと機械加工されるようにマシンコーディングへ変換される。これらのロック機構は、フランジが患者の残存する骨に装着されるときにカップが残存する骨盤に対して適切に方向付けられるようにカップをフランジに締結できるようにする。この機械加工は、従来のCNC機器を使用してロック機構をブランクカップへと形成してもよい。
【0187】
ブランクカップの一部としてのロック機構の製造の後、フランジは、ロック機構間のインタフェースを使用してカップに装着される。トリフランジアセンブリ(すなわち、最終的なインプラント)は、構成要素間の強力な結合を促進させるためにアニーリングプロセスに晒される。トリフランジインプラントのアニーリング後、滅菌プロセスが行われ、その後、トリフランジインプラントのための滅菌環境を確保するために適切な包装がなされる。
マスカスタマイズされたインプラントの形成
【0188】
図24を参照して、不完全な、変形した、及び/又は、粉砕された生体構造に苦しめられる患者のためのマスカスタマイズされた整形外科インプラントガイド及び関連するマスカスタマイズされた整形外科インプラントを生成するための典型的なプロセス及びシステムについて説明する。典型的な議論のため、初期の関節置換を必要とする患者のための完全股関節形成術について説明する。しかしながら、言うまでもなく、典型的なプロセス及びシステムは、不完全な生体構造が存在する事例におけるマスカスタマイゼーションに従う任意の整形外科インプラント及びガイドに適用できる。例えば、典型的なプロセス及びシステムは、骨変性(不完全な生体構造)、骨変形、又は、粉砕骨が存在する場合の人工肩関節置換術及び膝置換術に適用できる。その結果、以下では股関節インプラントが論じられるが、当業者は、初期の整形外科術又は整形外科的修復術と共に使用するための、他の整形外科インプラント、ガイド、工具等に対するシステム及びプロセスの適用可能性を理解できる。
【0189】
典型的なプロセスは、巨視的観点及び微視的観点から入力データを利用する。特に、巨視的観点は、整形外科インプラント及び対応する生体構造の全体の幾何学的形状の決定を伴う。逆に、微視的観点は、海綿質骨の形状及び構造とその多孔性とを考慮することを伴う。
【0190】
巨視的観点は、統計アトラスモジュールと通信するデータベースを含み、統計アトラスモジュールは、所定の個体群における固有の解剖学的なばらつきを得るために1つ以上の生体構造(例えば、骨)の仮想3Dモデルを記録する。典型的な形態において、アトラスは、所定の解剖学的個体群における平均表示及び平均表示に関する変化として表される1つ以上の生体構造の解剖学的特徴の数学的表示を記録する。
図2及び統計アトラスの先の議論について、また、所定の個体群の統計アトラスに対して生体構造を加える方法について参照する。統計アトラスからの出力は、自動ランドマーキングモジュール及び表面/形状解析モジュールへ向けられる。
【0191】
自動ランドマーキングモジュールは、統計アトラスからの入力(例えば、特定のランドマークを含む可能性が高い領域)と局所的な幾何学的解析とを利用して、統計アトラス内の生体構造のそれぞれの事例ごとに解剖学的なランドマークを計算する。この計算は、それぞれのランドマークに固有のものである。例えば、領域のおおよその形状が知られており、また、検索されるべきランドマークの位置は、局所的な形状特徴に対して知られている。例えば、大腿骨遠位部の内側上顆骨点の位置決めは、統計アトラス内の内側上顆骨点のおおよその位置に基づいて検索を精緻化することによって達成される。したがって、内側上顆骨点がこの検索ウインドウ内の最も内側の点であることが知られ、そのため、最も内側の点の検索は、統計アトラス内に規定される内側上顆骨領域内のそれぞれの骨モデルに関して行われ、この場合、検索の出力は、内側上顆骨点ランドマークとして特定される。統計アトラス個体群内のそれぞれの仮想3Dモデルごとに解剖学的なランドマークが自動的に計算された後、統計アトラスの仮想3Dモデルは、形状/表面解析出力と共に、特徴抽出モジュールへ向けられる。
【0192】
形状/表面出力は、統計アトラスからの入力も受ける形状/表面モジュールからくる。形状/表面モジュールとの関連で、統計アトラス個体群内の仮想3Dモデルは、自動ランドマーキングによって包含されない形状/表面特徴に関して解析される。言い換えると、生体構造の全体の3D形状に対応するが前の自動ランドマーキングステップで規定された特徴に属さない特徴も同様に計算される。例えば、仮想3Dモデルに関して曲率データが計算される。
【0193】
表面/形状解析モジュール及び自動ランドマーキングモジュールからの出力は、特徴抽出モジュールへ向けられる。ランドマークと形状特徴との組み合わせを使用して、インプラント設計に関連する数学的記述子(すなわち、曲率、寸法)がアトラス内のそれぞれの事例ごとに計算される。これらの記述子は、クラスタリングプロセスへの入力として使用される。
【0194】
数学的記述子は、統計的解析に基づいてクラスタリングされる或いはグループ化される。特に、記述子は、個体群内の同様の特徴を有する(生体構造の)グループを特定するために、統計的に解析されて、残存する生体構造個体群からの他の記述子と比較される。無論、このクラスタリングは、個体群の全体にわたる複数の生体構造からの複数の記述子を前提としている。初期のクラスタリングでは存在しなかった新たな事例がクラスタリングに対して与えられるため、出力クラスタは、新たな個体群をより良く表すように精緻化される。この統計的解析からの出力は、解剖学的な個体群の全て或いは大部分を網羅する有限数のインプラント(インプラント群及びサイズを含む)である。
【0195】
それぞれのクラスタごとに、パラメータ化モジュールは、クラスタ内の数学的記述子を抽出する。数学的記述子は、最終的なインプラントモデルのためのパラメータ(例えば、CAD設計パラメータ)を形成する。抽出された数学的記述子は、インプラント表面生成モジュールへ供給される。このモジュールは、それぞれのクラスタごとに生体構造の3D仮想モデルを生成するために数学的記述子を表面記述子へ変換することに関与する。3D仮想モデルは、応力試験及びインプラント製造に先立って微視的観点を補完する。
【0196】
微視的観点では、所定の個体群のそれぞれの生体構造ごとに、構造的完全性を示すデータが得られる。典型的な形態において、骨に関するこのデータは、海綿質骨に関する構造的情報を与えるマイクロCTデータを備えてもよい。より具体的には、マイクロCTデータは、対象の骨の画像(個体群の全体にわたる複数の骨に関する複数のマイクロCT画像)を備えてもよい。これらの画像は、その後、海綿質骨の三次元の幾何学的形態を抽出して個体群内のそれぞれの骨ごとに仮想3Dモデルを形成するために骨梁構造抽出モジュールを介してセグメント化される。結果として得られる3D仮想モデルは、孔径・形状モジュールへの入力である。
図76に図式的に描かれるように、3D仮想モデルは孔径及び形状の情報を含み、該情報は、海綿質骨における孔径及びサイズを決定するために孔径・形状モジュールによって評価される。この評価は、大腿骨インプラントのステムをコーティングによって処置できるように或いはさもなければ多孔質外面を成して大腿骨の残存する骨と大腿骨インプラントとの間の一体化を促進させるべく処理できるように髄内管中の骨の多孔サイズ及び形状を解析するために役立つ。このモジュールからの出力は、インプラント表面生成モジュールから出力される3D仮想モデルと組み合わせて、仮想応力試験モジュールへ向けられる。
【0197】
応力試験モジュールは、孔径・形状モジュールからのインプラント多孔性データとインプラント表面生成モジュールからのインプラント形状データとを組み合わせて、最終的なインプラント形状モデル及び特性を規定する。例えば、形状及び特性は、対象の骨における海綿質骨多孔性とほぼ適合する多孔質コーティングを最終的なインプラントモデルに与えることを含む。形状及び特性が組み入れられた時点で、最終的なインプラントモデルは、モデルの機能的品質を検証するために仮想応力試験(有限要素解析及び機械的解析)を受ける。機能的品質が許容できない範囲内では、インプラントの形状及び多孔性を規定するパラメータが、許容できる性能が得られるまで変更される。最終的なインプラントモデルが応力試験基準を満たすと仮定すると、最終的なインプラントモデルは、仮想モデルを有形のインプラント(当業者に知られる製造プロセスによって更に精緻化されてもよい)へ変換するために必要な機械命令を生成するために利用される。典型的な形態において、機械命令は、(多孔質構造を適切に得るための)急速プロトタイピングプロセスによって或いは伝統的な製造と急速プロトタイピングとの組み合わせによって最終的なインプラントを製造するための急速製造機械命令を含んでもよい。
性別/民族固有の股関節インプラントの形成
【0198】
図25~
図76を参照して、性別及び/又は民族固有のインプラントを生成するための典型的なプロセス及びシステムについて説明する。典型的な議論のため、初期の関節置換を必要とする患者のための完全股関節形成術について説明する。しかしながら、言うまでもなく、典型的なプロセス及びシステムは、カスタマイゼーションに従う任意の整形外科インプラントに適用できる。例えば、典型的なプロセス及びシステムは、人工肩関節置換術及び膝置換術、並びに、他の初期の関節置換術に適用できる。その結果、以下では股関節インプラントが論じられるが、当業者は、当初の整形外科術又は整形外科的修復術と共に使用するための、他の整形外科インプラント、ガイド、工具等に対するシステム及びプロセスの適用可能性を理解できる。
【0199】
股関節は、大腿骨の頭と骨盤の臼蓋窩とから構成される。股関節の生体構造は、それを身体中で最も安定した関節のうちの1つにする。安定性は、剛体ボール-ソケット形態によって与えられる。大腿骨頭はその関節部がほぼ球状であり、関節部は球の3分の2を形成する。データにより、大腿骨頭の直径は男性よりも女性の方が小さいことが分かってきた。正常な股関節において、大腿骨頭の中心は、臼蓋窩の中心と正確に一致すると考えられており、この仮定は、大部分の股関節システムの設計のための基準として使用される。しかしながら、天然の臼蓋窩は、天然の大腿骨頭の全てを覆うのに十分深くない。大腿骨頭のほぼ円形の部分は、最上部が僅かに平坦化されているため、球状ではなく回転楕円面を成している。この回転楕円面により、負荷が上極の周囲にわたってリング状パターンで分配される。
【0200】
大腿骨頭の幾何学的中心は、関節の3つの軸線、すなわち、水平軸線、垂直軸線、及び、前/後軸線によって横切られる。大腿骨頭は、骨幹部を結合する大腿骨の頸部によって支持される。大腿骨頸部の軸線は、斜めに設定されるとともに、上方に、内側に、及び、前方に延びる。前頭面内における骨幹部に対する大腿骨頸部の傾斜角は、頸部骨幹部角である。大部分の成人では、この角度が90~135度の間で変化し、また、この角度は、それが股関節外転筋の有効性、肢の長さ、及び、股関節に対して課される力を決定するため、重要である。
【0201】
125度よりも大きい傾斜角は外反股と呼ばれ、一方、125度よりも小さい傾斜角は内反股と呼ばれる。125度よりも大きい傾斜角は、肢の伸長、股関節外転筋の有効性の低下、大腿骨頭に作用する負荷の増大、及び、大腿骨頸部に作用する応力の増大と一致する。内反股において、125度よりも小さい傾斜角は、肢の収縮、股関節外転筋の有効性の増大、大腿骨頭に作用する負荷の減少、及び、大腿骨頸部に作用する応力の減少と一致する。大腿骨頸部は、大腿顆の横軸と鋭角を成す。この角度は、内側及び前方に面するとともに、前傾角と呼ばれる。成人において、この角度は、平均して約7.5度である。
【0202】
臼蓋窩は、腸骨、坐骨、及び、恥骨が出会う股関節の外側面上に横たわる。これらの3つの別個の骨は結合して臼蓋窩を形成し、その場合、腸骨及び坐骨はそれぞれ臼蓋窩のほぼ5分の2に寄与し、また、恥骨は臼蓋窩の5分の1に寄与する。臼蓋窩は、大腿骨頭の全てを覆うのに十分深くないソケットであり、関節部及び非関節部の両方を有する。しかしながら、寛骨臼唇は、ソケットを深くして、安定性を高める。寛骨臼唇と共に、臼蓋窩は、大腿骨頭の50%よりも僅かに多い部分を覆う。臼蓋窩の側面だけがその内側を関節軟骨で覆われ、関節軟骨は、深い寛骨臼切痕により下方が中断される。寛骨臼腔の中心部は、関節軟骨よりも深く、非関節である。この中心部は、寛骨臼窩と呼ばれるとともに、薄いプレートによって骨盤骨の接合部から分離される。寛骨臼窩は、全ての患者にとって固有の領域であるとともに、寛骨臼カップ構成要素のリーミング及び留置のための患者固有のガイドを形成する際に使用される。また、解剖学的特徴の変化は、個体群固有のインプラント設計の必要性を更に大きくする。
【0203】
セメントレス構成要素の従来技術の使用と関連付けられる問題の一部は、大腿管のサイズ、形状、及び、方向の幅広い変化に起因し得る。大腿骨ステムの整形外科インプラント設計への挑戦のうちの1つは、内外側方向寸法及び前後方向寸法の大きな変化である。また、遠位側管サイズに対する近位側管サイズの比率のかなりの変化もある。正常な個体群における様々な円弧、テーパ角、曲線、及び、オフセットの異なる組み合わせは驚異的である。しかしながら、それは唯一の問題ではない。
【0204】
大腿骨形態における先祖伝来の違い、及び、現代の個体群のための明確な基準の欠如は、適切な股関節インプラントシステムの設計を問題のあるものにする。例えば、前曲率、ねじれ、及び、断面形状におけるかなりの違いが、アメリカインディアン、アメリカの黒人、及び、アメリカの白人の間に存在する。大腿骨におけるアジアの個体群と西洋の個体群との間の違いは、大腿骨の前弓において見出され、この場合、中国人は、より前方に弓形に曲げられるとともに、白人よりも小さい髄内管と白人よりも小さい遠位関節丘とを伴って外側に回転される。同様に、白人の大腿骨は、遠位関節丘長さ寸法に関して日本人の大腿骨よりも大きい。大腿骨近位部骨密度(BMD)及び股関節軸線長さにおいては、アメリカの黒人と白人との間で民族的な違いも存在する。より高いBMD、より短い軸線長さ、及び、より短い転子間幅の複合効果は、アメリカの白人女性と比べてアメリカの黒人女性において骨粗しょう症の骨折のより低い有病率を明らかにする場合がある。同様に、年配のアジア人及びアメリカの黒人男性は、白人のスペインの男性よりも厚い皮質及び高いBMDを有し、これがこれらの民族グループにおいてより大きな骨強度に寄与し得ることが分かった。一般に、アメリカの黒人は、アメリカの白人よりも厚い骨皮質、狭い骨内膜直径、及び、大きいBMDを有する。
【0205】
大腿骨の先祖伝来の違いと骨盤の先祖伝来の違いとの組み合わせは、初期の股関節システムに対するより一層の挑戦になる。修復術は、より大きな複雑さをもたらす。これらの通常の解剖学的変化及び民族的変化に加えて、修復術を行う外科医により直面される困難は、(a)当初から配置されるプロテーゼの周囲の骨損失により引き起こされる大腿管の歪みによって、及び、(b)構成要素及びセメントの除去によりもたらされる医原性の欠陥によって度合いが増される。
【0206】
前述の因子の全てにより、多くの股関節外科医は、セメントを用いない大腿骨プロテーゼの設計を改善するための方法を探し求めてきた。人工股関節全置換術(初期の手術又は修復術)では、大腿骨球と寛骨臼カップとの間で最適な嵌合をもたらすことが理想的である。大腿骨ステム頸部は、剛性を減らすために十字形の断面を有するべきである。ステム長は、ステムが2~3個の内管直径にわたって大腿骨の壁と平行な接触を成すようになっていなければならない。ステムの近位側3分の1は、多孔質コーティングされ或いは水酸燐灰石(HA)コーティングされる。ステムは、曲げ負荷を制御するとともに全ての回転負荷及び軸方向負荷の近位端側への伝達を可能にするべく円柱状である(すなわち、先細っていない)。大腿骨頭位置は、患者自身の頭中心をそれが異常でなければ再現しなければならない。
【0207】
これらの目標を満たそうとする1つの方法は、それぞれの患者ごとに個別に大腿骨プロテーゼを製造することである。言い換えると、既製のプロテーゼに適合するように患者の骨を再形成しようとするのではなく、特定の患者に固有のプロテーゼを形成することである。
【0208】
患者固有(又は、マスカスタマイゼーション)の初期股関節置換及び修復股関節置換に関しては幾つかの共通の設計規則が存在する。これらの設計規則としては、(1)大腿骨に対する負荷の均一な分配を可能にするために股関節ステムがカラー無しでなければならない(修復を除く)、(2)股関節ステムは、適合/充填を最大にするために修正された菱形断面を有さなければならないが、回転の安定性を維持しなければならない、(3)股関節ステムは、必要な場合には、患者の骨に適合するように弓状に曲げられなければならない、(4)股関節ステムは、プロテーゼと骨との間に隙間を伴うことなく湾曲した経路に沿って挿入されなければならない、(5)股関節ステム頸部は、剛性を減らすために十字断面を有さなければならない、(6)股関節ステム長さは、ステムが2~3個の内管直径にわたって大腿骨の壁と平行な接触を成すようになっていなければならない、(7)股関節ステムの近位側3分の1は、多孔質コーティングされ或いは水酸燐灰石(HA)コーティングされる、(8)股関節ステムは、曲げ負荷を制御するとともに全ての回転負荷及び軸方向負荷の近位端側への伝達を可能にするべく円柱状である(すなわち、先細っていない)、(9)股関節ステムの大腿骨頭位置は、患者自身の頭中心をそれが異常でなければ再現しなければならない。
【0209】
以下は、患者個体群の性別及び/又は民族性を考慮に入れて初期関節置換を必要とする患者のためのマスカスタマイされた整形外科インプラントを生成するための典型的なプロセス及びシステムである。典型的な議論のため、不完全な生体構造を伴う患者のための完全股関節形成術について説明する。しかしながら、言うまでもなく、典型的なプロセス及びシステムは、不完全な生体構造が存在する事例におけるマスカスタマイゼーションに従う任意の整形外科インプラントに適用できる。例えば、典型的なプロセス及びシステムは、骨変性(不完全な生体構造)、骨変形、又は、粉砕骨が存在する場合の人工肩関節置換術及び膝置換術に適用できる。その結果、以下では股関節インプラントの大腿骨構成要素が論じられるが、当業者は、当初の整形外科術又は整形外科的修復術と共に使用するための、他の整形外科インプラント、ガイド、工具等に対するシステム及びプロセスの適用可能性を理解できる。
【0210】
図25を参照すると、マスカスタマイズされた股関節インプラント及び患者固有の股関節インプラントの両方を生成するために統計アトラスを使用するための全体のプロセスフローが描かれる。
最初に、プロセスは、1つ以上の骨が解析される幾つかの実施形態連を含む統計アトラスを含む。股関節インプラントの典型的な状況において、統計アトラスは、骨盤骨及び大腿骨のための骨モデルの幾つかの事例を含む。少なくとも寛骨臼構成要素(すなわち、臼蓋窩)及び大腿骨近位部構成要素(すなわち、大腿骨頭)に関して関節面幾何学的解析が行われる。特に、関節面幾何学的解析は、統計アトラスの所定の個体群からのそれぞれの骨に関するランドマーク、測定値、及び、形状特徴の計算を伴う。また、関節面幾何学的解析は、計算を表す統計値などの定量値を生成することを含む。これらの計算から、計算の分布がプロットされるとともに、計算の分布がその分布に基づいて解析される。例えばボール形状分布においては、個体群の約90パーセント(90%)がグループ化されることを観察でき、それにより、非患者固有インプラント(例えば、マスカスタマイズされたインプラント)を設計できるとともに、この非患者固有インプラントがこのグループ化に適切に適合することができ、したがって、患者固有インプラントと比べて患者のためのコストを低減できる。個体群の残りの10パーセント(10%)においては、患者固有インプラントがより良い手法かもしれない。
【0211】
マスカスタマイズされたインプラントとの関連で、統計アトラスは、多くの異なるグループ(すなわち、異なるインプラント)がどのようにして所定の個体群の圧倒的大部分を包含できるのかを定量的に評価するために利用されてもよい。これらの定量的な評価は、患者固有ではないが既製の代替物よりも固有である基本的なインプラント設計のための一般的なパラメータを示す一群のデータをもたらす場合がある。
【0212】
患者固有のインプラントとの関連で、統計アトラスは、正常な骨が何を具現化するのかを定量的に評価するとともに患者の骨と正常な骨との間の違いを定量的に評価するために利用されてもよい。より具体的には、統計アトラスは、平均的な骨モデル或いはテンプレート骨モデルと関連付けられる曲率データを含んでもよい。このテンプレート骨モデルは、その後、患者の正しい骨の形態が何であるのかを推定して、埋め込み処置を行うために使用されるインプラント及び外科器具をうまく作るために使用され得る。
【0213】
図26は、マスカスタマイズされた患者固有の股関節インプラントを設計する際の統計アトラスの利用を図式的にまとめている。インプラントボックスとの関連では、
図17及び
図18並びにこれらの図における関連する議論に戻って参照する。同様に、プランナーボックスとの関連では、
図17及びカスタムプランニングインタフェースの関連する議論に戻って参照する。最後に、患者固有ガイドボックスとの関連では、
図19及びこの図における関連する議論に戻って参照する。
【0214】
図27に描かれるように、性別及び/又は民族固有の股関節インプラントを設計して製造するために利用されてもよい典型的なプロセスに関してフローチャートが描かれる。特に、プロセスは、骨が属する人の民族性及び男性又は女性のいずれかからのものであると関連するデータによって見なされた大腿骨近位部(すなわち、大腿骨頭を含む大腿骨)の様々な試料を包含する統計アトラスの利用を含む。また、統計アトラスモジュールは、所定の性別及び/又は民族個体群における固有の解剖学的なばらつきを得るために1つ以上の生体構造(例えば、骨)の仮想3Dモデルを記録する。典型的な形態において、アトラスは、共通の性別及び/又は民族性を有してもよい(或いは、解剖学的な共通点が存在する複数の民族性のうちの1つを有するようにグループ化されてもよい)所定の解剖学的個体群における平均表示及び平均表示に関する変化として表される1つ以上の生体構造の解剖学的特徴の数学的表示を記録する。
図2及び統計アトラスの先の議論について、また、所定の個体群の統計アトラスに対して生体構造を加える方法について参照する。統計アトラスからの出力は、自動ランドマーキングモジュール及び表面/形状解析モジュールへ向けられる。
【0215】
図27~
図39を参照すると、自動ランドマーキングモジュールは、統計アトラスからの入力(例えば、特定のランドマークを含む可能性が高い領域)と局所的な幾何学的解析とを利用して、統計アトラス内の生体構造のそれぞれの事例ごとに解剖学的なランドマークを計算する。一例として、(1)球によって近似される大腿骨頭の中心点である大腿骨頭中心、(2)解剖学的な頸部中心線に対して垂直な頸部骨幹部点を通過する平面までの距離が最小である大転子上の点である大転子点、(3)小転子の端部から15ミリメートル(小転子点から約30ミリメートル)の点である骨切り点、(4)その接平面が最小の大腿骨頸部断面積を収容する頭球上の点である頸部骨幹部点、(5)大腿骨骨幹部に沿う最小直径を有する断面である大腿骨ウエスト、(6)髄内管に沿う最小直径を有する断面である髄内管ウエスト、(7)大腿骨頭中心及び大腿骨解剖学的軸線の遠位端と共に大腿骨頸部角度に等しい角度を成す大腿骨解剖学的軸線上の点である大腿骨頸部回動点、及び、(8)最も外側に突出する小転子領域上の点である小転子点を含むがこれらに限定されない様々な大腿骨近位部ランドマークが大腿骨のそれぞれの3D仮想モデルごとに計算される。更なる例として、様々な大腿骨近位部軸線は、(a)大腿骨頭中心と大腿骨頸部中心とを接続する線と同軸な大腿骨頸部解剖学的軸線、(b)大腿骨頭中心点と大腿骨頸部回動点とを結合する線と同軸な大腿骨頸部軸線、及び、(c)大腿骨の近位端を発端として大腿骨全長の23パーセント及び40パーセントの距離にある2つの点を接続する線と同軸な大腿骨解剖学的軸線を含むがこれらに限定されない特定された解剖学的ランドマークを使用して、大腿骨のそれぞれの3D仮想モデルごとに計算される。更なる他の例として、様々な大腿骨近位部測定値は、(i)大腿骨解剖学的軸線と大腿骨頸部解剖学的軸線との間の3D角度である近位部角度、(ii)大腿骨解剖学的軸線と大腿骨頭中心との間の水平距離である大腿骨頭オフセット、(iii)小転子点(既に言及された)と大腿骨頭中心との間の垂直距離である大腿骨頭高さ、(iv)大腿骨頭中心と大転子点(既に言及した)との間の距離である大転子-大腿骨頭中心間距離、(v)大腿骨頭中心と頸部回動点(既に言及した)との間の距離である頸部長さ、(vi)大腿骨頭に嵌め付けられる球の半径である大腿骨頭半径、(vii)大腿骨頸部解剖学的軸線に対して垂直で且つ頸部中心点(既に言及した)を通る平面で頸部断面に適合される円の直径である頸部直径、(viii)経上顆部軸線と大腿骨頸部軸線との間の角度である大腿骨頸部前傾経上顆部角度、(ix)後顆部軸線と大腿骨頸部軸線との間の角度である 大腿骨頸部前傾後顆部角度、(x)機械的な軸線と大転子の方へ向くベクトルとの間の角度であるLPFA、(xi)方程式(Z-X)/Zによって規定される大腿骨距指標面積であって、Zが中央小転子点よりも10センチメートル下側にある大腿骨面積であり、Xが中央小転子点よりも10センチメートル下側にある髄内管面積である、大腿骨距指標面積、(xii)中央小転子高さよりも3センチメートル下側にある髄内管面積と中央小転子よりも10センチメートル下側にある髄内管面積との間の比率である管大腿骨距面積比率、(xiii)中央小転子高さよりも10センチメートル下側にある髄内管面積に対する中央小転子よりも3センチメートル下側にある髄内管面積の比率であるXYR面積、(xiv)髄内管上の最も狭い点にある髄内管断面積に適合される楕円の短軸と長軸との間の比率である短軸/長軸比率、及び、(xv)大腿骨解剖学的軸線に対して垂直な平面内の大腿骨及び髄内管の外周の周囲に最も良く適合する円を使用する、円半径の比率である大腿骨半径-髄内管半径比率(この比率は、皮質骨の厚さ、したがって、骨粗しょう症の場合の皮質骨損失を反映する)含むがこれらに限定されない特定された解剖学的ランドマークを使用して、大腿骨のそれぞれの3D仮想モデルごとに計算される。
【0216】
図27及び
図40~
図42を参照すると、自動ランドマーキングモジュールからの出力を使用して、大腿骨ステムからのパラメータが所定の個体群に関して評価される。特に、民族性、性別、又は、これら2つの組み合わせに基づいて個体群がグループ化されるかどうかにかかわらず、内側輪郭、頸部角度、及び、大腿骨頭オフセットが評価される。
【0217】
内側輪郭の場合、個体群内のそれぞれの大腿骨における髄内管に関するこの輪郭は、髄内管と、大腿骨回動点を通って延びるとともに大腿骨解剖学的軸線及び頸部軸線の両方(製品上のベクトル)と垂直な法線軸を有する平面とを交差させることによって生成される。個体群内のそれぞれの大腿骨ごとに輪郭が生成された後、個体群は、髄内管サイズを使用して複数のグループに分けられる。分けられると、輪郭が面外となる場合があり、そのため、全ての輪郭を共通の平面(例えば、X-Z平面)に対して位置合わせするためにアライメントプロセスが行われる。アライメントプロセスは、大腿骨頸部軸線及び解剖学的軸線の両方に対して垂直な軸線をY軸に対して一直線に合わせた後に解剖学的軸線をZ軸に対して一直線に合わせることを含む。この方法では、輪郭が共通の座標系を有するように、全ての輪郭が特定の点に対して平行移動される。
【0218】
輪郭が共通の座標系を有した後、大腿骨頸部点は、輪郭の点が平面内にあることを検証するために利用される。特に、大腿骨頸部点は、実際の生体構造を反映して、輪郭上の点が平面内にあることを保証する一貫した点である。輪郭の点が平面内にあることを検証することにより、個体群の大腿骨間の位置合わせばらつきをかなり減らすことができ、それにより、大腿骨頭オフセット及びインプラント角度の設計のための輪郭の利用を促進できる。
【0219】
図43を参照すると、統計アトラスは、正常な骨と骨粗しょう症の骨との間を補間するのに役立つ場合もある。大腿骨ステムを設計して寸法付ける際に、重要な考慮すべき事項のうちの1つは髄内管寸法である。正常な骨の場合には、大腿骨に関して、髄内管は、骨粗しょう症を有する大腿骨と比べてかなり狭い。この狭い髄内管寸法は、少なくとも部分的には、骨厚(大腿骨の主軸に対して垂直に測定される)減少の結果であり、この骨厚減少は、それに対応して、髄内管を画定する大腿骨の内面の後退をもたらす。この方法では、健康な骨の厚さと骨粗しょう症が激しい骨の厚さとの間を補間して前記厚さを有する仮想3Dモデルを生成することによって人工の個体群が形成される。したがって、このデータセットは、骨粗しょう症の異なる段階に対応する骨を含む。このデータセットは、ここでは、インプラントステム設計への入力として使用され得る。
【0220】
典型的な形態において、統計アトラスは、骨が大腿骨である場合、正常な骨粗しょう症でない骨及び骨粗しょう症の骨の個体群を含む。アトラスのこれらの正常な大腿骨のそれぞれは、統計アトラスに対して骨を加えるための本明細書中に記載されるプロセスにしたがって定量化されて3D仮想モデルとして表される。同様に、アトラスの骨粗しょう症の骨のそれぞれは、統計アトラスに対して骨を加えるための本明細書中に記載されるプロセスにしたがって定量化されて3D仮想モデルとして表される。正常な骨及び骨粗しょう症の骨のための3Dモデルの一部として、髄内管寸法が大腿骨の長手方向長さに沿って記録される。アトラス点対応を使用して、髄内管は、アトラス骨に関して、小転子よりも骨の全長の所定のパーセンテージ(例えば5%)近位端側に及んでいる及び遠位皮質点よりも第2の所定のパーセンテージ(例えば2%)近位端側に及んでいるとして特定される。また、これらの近位境界及び遠位境界の範囲内に入る骨外表面上の点は、外部の点からIM管上の最近点までの距離として規定される骨厚を決定するために使用される。
【0221】
大腿骨近位部との関連で、
図46~
図57は、任意の民族的個体群の全体にわたって性別差が存在することを裏付ける。
図54及び
図55に描かれるように、女性の大腿骨近位部のための統計アトラスのテンプレート3Dモデルは、男性のための大腿骨近位部のテンプレート3Dモデルと比べたときに統計的に重要な測定値を示す。特に、大腿骨頭オフセットは、男性の場合よりも女性の場合の方が約9.3%小さい。現在のインプラントでは、大腿骨頭オフセットがステムサイズに伴って増大し、これは正常な女性の場合には許容できる。しかし、問題は、より大きなステムサイズ及びより大きなオフセットを意味する、骨損失が髄内管サイズの増大をもたらす骨減少症及び骨粗しょう症のケースで大腿骨頭オフセットを考慮するときに生じる。同様に、頸部直径及び大腿骨頭半径は、男性の場合よりも女性の場合の方が約11.2%小さい。また、頸部長さは、男性の場合よりも女性の場合の方が約9.5%小さい。加えて、近位部角度は、男性の場合よりも女性の場合の方が約0.2%小さい。最後に、大腿骨頭高さは、男性の場合よりも女性の場合の方が約13.3%小さい。その結果、性別骨データは、包括的な大腿骨インプラント(すなわち、性別による区別がないインプラント)を単にスケーリングしただけでは骨の幾何学的形態の違いを考慮できないこと、したがって、性別に基づく大腿骨インプラントが必要とされることを裏付ける。
【0222】
図58~
図63を参照すると、大腿骨近位部の寸法が性別ラインを横切って幅広く変化するだけでなく、大腿骨の断面形状も髄内管の長さに沿って幅広く変化する。特に、男性及び女性の大腿骨の統計アトラス内の所定の個体群の全体にわたって、男性は、女性よりも円形に近い髄内管断面を有する。より具体的には、女性は、男性の場合よりも8.98%大きく偏心する髄内管断面を有する。以下で更に詳しく論じられるように、この性別固有のデータは、クラスタに到達するようにプロットされる特徴抽出データの一部を備え、前記クラスタから、数値パラメータ及び一般形状パラメータが性別固有の大腿骨インプラントに到達するように抽出される。
【0223】
図64~
図66に描かれるように、統計アトラスは、前後(AP)方向の大腿骨頭中心オフセットに関する(性別により分けられる)大腿骨の所定の個体群の全体にわたる測定値に対応する計算を含む。典型的な形態において、AP方向は、機械的な軸線及び後顆部軸線の両方に対して垂直な前方を向くベクトルによって決定された。オフセットは、大腿骨頭中心と2つの基準点との間で測定され、この場合、第1の基準点が解剖学的軸線の中点であり、また、第2の基準点が大腿骨頸部回動点である。要約すると、頸部回動点と解剖学的軸線中点とに対するAP大腿骨頭高さは、男性大腿骨と女性大腿骨との間で大きな違いを示さなかった。この場合も先と同様に、この性別固有のデータは、クラスタに到達するようにプロットされる特徴抽出データの一部を備え、前記クラスタから、数値パラメータ及び一般形状パラメータが性別固有の大腿骨インプラントに到達するように抽出される。
【0224】
図24及び
図27に戻って参照すると、統計アトラス個体群内の大腿骨に関する大腿骨頭中心オフセット、髄内管の断面形状データ、及び、内側輪郭データは、
図24に関するフローチャート及び関連する議論と一致する性別及び/又は民族固有のマスカスタマイズされたインプラントを設計するために、所定の個体群の全体にわたって存在する所定数のクラスタ(統計アトラスがそれぞれの骨と関連付けられる民族性に関するデータを含むと仮定すると、性別固有のクラスタ、及び、民族固有の第2のクラスタ)を見分けるようにプロットされる抽出された特徴データの一部を備える。性別固有及び/又は民族固有の特定されたクラスタは、マスカスタマイズされた大腿骨インプラントを設計するために必要なパラメータを抽出するために利用される。
【0225】
図68を参照すると、本開示に係る典型的なマスカスタマイズされた大腿骨構成要素が描かれる。特に、マスカスタマイズされた大腿骨構成要素は、ボール、頸部、近位ステム、及び、遠位ステムを含む4つの主要な要素を備える。主要な要素のそれぞれは、他の交換可能な要素と交換できるボール、頸部、及び、ステムを可能にするための交換可能インタフェースを含む。この態様では、より大きい大腿骨ボールが必要とされれば、大腿骨ボールのみが交換される。同様に、より大きな頸部オフセットが望まれた場合、頸部要素は、適切な場合には他の3つの要素をそのままにしつつ、必要なオフセットを与える異なる頸部要素と交換される。このようにすると、特定の制限を伴わずに、さもなければ1つのサイズで全てに適合するインプラントを使用することによって委ねられる適合又は動態を必ずしも犠牲にすることなく、大腿骨構成要素を患者に適合するようにカスタマイズできる。したがって、患者生体構造により良く適合するように大腿骨要素の全てを他のマスカスタマイズされた要素と交換できる。
【0226】
この典型的な実施形態では、頸部が近位ステムの軸線周りに回転するように構成され、それにより、近位ステムに対する頸部の回転方向を術中に調整できる。特に、術前測定は、近位ステムに対する頸部の計画された回転位置をもたらしてもよい。それにもかかわらず、体内動態検査などの術中の考慮すべき事項により、外科医は、動態を改善するため或いは特定の衝突を回避するために術前の回転方向を変える場合がある。一例として、頸部は、テクスチャード加工された表面をもつインセット周方向溝を有する円柱状のスタッドを含む。この円柱状のスタッドは、近位ステムの軸方向円筒状チャネル内に受けられる。この円筒状のチャネルに加えて、第2のチャネルが円筒状のチャネルと交差し、この第2のチャネルは、同様にテクスチャード加工されてインセット周方向溝のテクスチャード加工された表面と係合するように構成される半円溝を有するプレートを受けるように形成される。近位ステムに締結される一対のネジがプレートを円柱状のスタッドと係合する状態へと押圧し、それにより、最終的に、近位ステムに対する円柱状のスタッドの回転動作がもはや不可能になる。したがって、この固定係合に達するときには、例えば術中に回転調整を行う必要があれば、円柱状のスタッドと近位ステムとの間の回転動作を可能にするべくネジが緩められてもよい。
【0227】
頸部とボールとの間の係合は従来と同様であってもよいが、近位ステムと遠位ステムとの間の係合は従来通りではない。特に、近位ステムは、遠位ステム内へと延びるネジ付き開口内に螺合状態で受けられるように捩じ込まれて係合される遠位シャンクを含む。したがって、近位ステムは、シャンクのネジが遠位ステムの開口のネジと螺合するように遠位ステムに対して近位ステムを回転させることによって遠位ステムに装着される。遠位ステムに対する近位ステムの回転は、近位ステムが遠位ステムと当接するときに完了される。しかしながら、近位ステムと遠位ステムとの間で回転調整が必要な場合には、正確な回転調整に対応するスペーサを与えるべくワッシャが利用されてもよい。更なる例として、より大きな回転調整が必要とされる場合には、ワッシャの厚さが更に大きいが、ワッシャを薄くすればするほど、それに対応して、回転調整は小さくなる。
【0228】
主要な要素のそれぞれは、所定の性別及び/又は民族性の範囲内でサイズ及び輪郭の変化を考慮する予め決められた別の手段で製造されてもよい。この形態において、主要な要素の代替物は、従来のマスカスタマイズされた大腿骨構成要素よりも患者の生体構造に近い形態を成す患者固有のインプラントに近づくように混合されて適合されてもよいが、患者固有の大腿骨インプラントを生成するために僅かな費用及びプロセスで利用されてもよい。
【0229】
図69は、本開示に係る更なる代わりの典型的なマスカスタマイズされた大腿骨構成要素を描く。特に、マスカスタマイズされた大腿骨構成要素は、ボール、頸部、近位ステム、中間ステム、及び、遠位ステムを含む5つの主要な要素を備える。主要な要素のそれぞれは、他の交換可能な要素と交換できるボール、頸部、及び、ステムを可能にするための交換可能インタフェースを含む。当業者は、この骨を再生するための患者の天然の大腿骨の積層スライスと同種のマスカスタマイズされた大腿骨構成要素の要素の数を増大することにより、マスカスタマイズされた要素を使用することによる患者固有のインプラントの適合に益々近づくことができることを理解できる。
【0230】
大腿骨近位部における性別及び民族の間の解剖学的な違いと同様に、
図70~
図75は、統計アトラス内の一般的な骨盤個体群の全体にわたって性別及び民族の違いが存在することを裏付ける。
図24に戻って参照すると、性別及び民族性のうちの少なくとも一方に基づいてグループ化される統計アトラスデータ(すなわち、骨盤個体群)を使用することによって一連のマスカスタマイズされた寛骨臼カップインプラントが設計されて製造される。グループ化されたアトラスデータは、
図70に図式的に描かれるように個体群内の寛骨臼カップの幾何学的形態を分離するために自動ランドマーキングプロセス及び表面/形状解析プロセスに晒される。また、
図74及び
図75に図式的に描かれるように、ランドマーキングプロセス(寛骨臼靭帯の位置決めのため)及び輪郭解析プロセス(寛骨臼カップの輪郭を評価するため)が特徴抽出をもたらし、特徴抽出から、
図71に示されるように解剖学的なカップインプラント表面が最終的に生成される。この解析は、
図72及び
図73に示されるように寛骨臼カップ及び大腿骨頭が単一の曲率半径から構成されずに幾つかの曲率半径から構成されることを示す。
動物固有のインプラントの形成
【0231】
図77を参照すると、動物固有の(すなわち、動物のための患者固有の)インプラント及び関連する機器を設計して製造するための典型的なシステム及び方法は、本明細書中に組み入れられる
図17に関して描かれて既に説明されたプロセスに類似する。前置きの事柄として、動物生体構造の画像が取得され、この画像は、仮想3D骨モデルをもたらすために自動的にセグメント化される。CTスキャン画像として図式的に描かれるが、例えばこれらに限定されないがMRI、超音波、及び、X線などのCT以外の他の撮像診断法が利用されてもよいことが理解されるべきである。先の典型的な開示にしたがって、罹患した生体構造の仮想3D骨モデルが統計アトラスに取り込まれる。その後、骨を再建して再建仮想3D骨モデルを形成するために、統計アトラスからの入力が利用される。正確なインプラントサイズの決定を可能にするために、再建仮想3D骨モデルの表面に関して骨ランドマークが計算される。その後、罹患した骨の幾何学的形態がマッピングされてパラメータ形態へ変換され、該パラメータは、その後、残存する解剖学的な幾何学的形態に良く似た動物固有のインプラントを形成するために使用される。動物固有のインプラントに加えて、動物の残存する骨の前処理及び動物固有のインプラントの留置のために、動物固有の器具が製造されて利用される。
【0232】
図78を参照すると、マスカスタマイズされた動物インプラントを設計して製造するための典型的なシステム及び方法は、本明細書中に組み入れられる
図24に関して描かれて既に説明されたプロセスに類似する。前置きの事柄として、対象の骨に関連する統計アトラスからの3D動物骨モデルは、自動ランドマーキング及び表面/形状解析に晒される。自動ランドマーキングモジュールは、アトラスに記憶される情報(例えば、特定のランドマークを含む可能性が高い領域)と局所的な幾何学的解析とを利用して、それぞれの3D動物骨モデルごとに解剖学的なランドマークを自動的に計算する。統計アトラス内の対象のそれぞれの動物骨ごとに、形状/表面解析は、3D仮想動物骨モデルの表面の幾何学的形態を直接に特徴抽出する。その後、3D動物骨モデルのそれぞれには、インプラント設計に関連する特徴を計算するためにランドマークと形状特徴との組み合わせを使用する特徴抽出プロセスが行われる。これらの特徴はクラスタリングプロセスへの入力として使用され、クラスタリングプロセスにおいて、動物骨個体群は、所定のクラスタリング方法論を使用して同様の特徴を有するグループへと分けられる。結果として得られるそれぞれのクラスタは、単一の動物インプラントの形状及びサイズを規定するために使用される事例を表す。続いて、インプラントモデル全体のためのパラメータ(例えば、コンピュータ支援設計(CAD)パラメータ)を抽出するために、それぞれのクラスタセンター(インプラントサイズ)ごとにパラメータ化プロセスが行われる。その後、抽出されたパラメータを使用して、全体のインプラントの表面及びサイズがそれぞれのクラスタごとに生成される。動物患者が分類されるクラスタに応じて、マスカスタマイズされたインプラントが必要なグループから選択されて埋め込まれる。
患者固有の切断ガイドの形成
【0233】
図79~
図94を参照して、患者固有の切断ガイドを設計するための多次元医用撮像、コンピュータ支援設計(CAD)、及び、コンピュータグラフィック特徴の統合のための典型的プロセス及びシステムについて説明する。単なる典型的な説明のため、患者固有の切断ガイドを完全股関節形成術処置との関連で記載する。それにもかかわらず、当業者は、典型的なプロセス及びシステムが切断ガイドを利用できる任意の外科的処置に適用可能であることを認識できる。
【0234】
図79に表されるように、典型的なシステムフローの概要は、生体構造を表す入力データを受けることから始まる。入力解剖学的データは、例えば表面モデル又は点群の形態を成してもよい対象の生体構造の二次元(2D)画像又は三次元(3D)表面表示を備える。2D画像が利用される状況において、これらの2D画像は、対象の生体構造の3D表面表示を構成するために利用される。当業者は、生体構造の2D画像を利用して3D表面表示を構成することに精通している。したがって、このプロセスの詳細な説明は、簡潔さを増進させるために省かれてしまっている。一例として、入力解剖学的データは、3D表面表示を生成できるX線画像(少なくとも2つの視野から撮られる)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像、磁気共鳴画像(MRI)、又は、任意の他の撮像データの1つ以上を備えてもよい。典型的な形態では、生体構造が骨盤及び大腿骨を備える。
【0235】
しかしながら、以上は、典型的なシステムと共に使用されてもよい生体構造の典型的な説明であり、そのため、決して他の生体構造が本システムと共に使用されることを制限しようとするものではないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される組織は、骨、筋肉、靭帯、腱、及び、多細胞生物における特定の機能を伴う任意の他の明確な種類の構造的材料を含む。その結果、典型的なシステム及び方法が股関節に関与する骨との関連で論じられるときには、当業者は、他の組織に対するシステム及び方法の適用性を認識できる。
【0236】
システムの大腿骨及び骨盤の入力生体構造データは、入力データのタイプに応じて2つのモジュールのうちの1つへと向けられる。X線データの場合には、3d骨輪郭を抽出するために2D X線画像が非剛体モジュールへ入力される。入力データがCTスキャン又はMRI画像の形態を成す場合には、これらのスキャン/画像が自動セグメンテーションモジュールへと向けられ、自動セグメンテーションモジュールでは、3D骨輪郭(及び3D軟骨輪郭)を抽出するためにスキャン/画像が自動的にセグメント化される。
【0237】
図80を参照すると、非剛体モジュールは、1つ以上の前処理ステップに晒される少なくとも2つの視野から撮られる複数のX線画像を使用する。これらのステップは、以下のうちの1つ以上、すなわち、ノイズ減少及び画像処理のうちの1つ以上を含んでもよい。結果として得られる前処理されたX線画像は、X線画像を位置合わせするための較正ステップに晒される。好ましくは、X線画像が定位置較正装置の存在下で撮られ、それにより、X線画像がこの定位置較正装置に対して位置合わせされる。しかし、定位置較正装置がX線画像に存在しない場合、画像は、それにもかかわらず、複数の画像にわたって検出される共通の特徴を使用して較正されてもよい。この較正プロセスからの出力は、撮像装置に対する生体構造の位置であり、これは
図80において参照符号「Pose」によって特定される。
【0238】
結果として得られる前処理されたX線画像は、特徴抽出ステップに晒される。この特徴抽出ステップは、前処理されたX線画像を利用する画像特徴の1つ以上の計算を備える。一例として、これらの計算は、勾配特徴、輪郭、テクスチャ成分、又は、画像から導き出される任意の他の特徴を含んでもよい。この典型的なプロセスにおいて、特徴抽出ステップは、
図80において参照符号「Contour」により表される生体構造の輪郭(例えば、骨形状)、及び、X線画像から導き出される参照符号「Texture」により表される画像特徴を出力する。輪郭付けられた生体構造及び画像特徴のデータは両方とも、非剛体レジストレーションステップへと向けられる。
【0239】
非剛体レジストレーションステップは、特徴抽出ステップ及び較正ステップからの出力を統計アトラスからの対象の生体構造の3Dテンプレートモデルに対して位置合わせする。一例として、3Dテンプレートモデルは、統計アトラスの一部を備える解剖学的データベースからの非線形主成分に応じて生成される。非剛体レジストレーションステップ中、3Dテンプレートモデルは、その形状パラメータ(非線形主成分)が、姿勢、輪郭、及び、テクスチャデータによりもたらされるX線画像の形状パラメータと適合するように最適化される。非剛体レジストレーションステップからの出力は、CTスキャン又はMRI画像のための自動セグメンテーションモジュールから出力される3D患者固有骨モデルに類似する、仮想テンプレーティングモジュールへと向けられる3D患者固有骨モデルである。
【0240】
図83を参照すると、自動セグメンテーションプロセスは、例えばCTスキャン又はMRI画像を撮って自動セグメンテーションシーケンスを実行することによって初期化される。特に
図82を参照すると、自動セグメンテーションシーケンスは、対象の生体構造のベース3Dモデル又は開始3Dモデルに対してスキャン/画像を位置合わせすることを含む。ベース3Dモデルに対するスキャン/画像の位置合わせ後、スキャン/画像は、法線ベクトルを計算して、プロファイル点の位置を決定し、強度値を線形補間し、結果として得られるプロファイルをSavitsky-Golayフィルタを使用してフィルタリングし、プロファイルの勾配を生成し、ガウス加重プロファイル方程式を使用してプロファイルを重み付け、最大プロファイルを決定し、及び、これらの最大プロファイルを使用してベース3Dモデルを変形させるために、一次変形プロセスによって処理される。結果として得られる変形された3Dモデルは、対象の生体構造のための統計アトラスからテンプレート3Dモデル上へ投影される。テンプレート3Dモデルのパラメータを使用して、変形された3Dモデルは、テンプレート3Dモデルに固有の特徴に似るように二次変形プロセスで更に変形される。この後者の変形プロセスの後、変形された3Dモデルは、かなりの違いが存在するかどうかを見分けるためにスキャン/画像と比較される。
【0241】
変形された3Dモデルとスキャン/画像との間にかなりの違いが存在する状況では、変形された3Dモデル及びスキャン/画像が再び一次変形プロセスに晒された後に二次変形プロセスに晒される。このルーピングプロセスは、変形された3Dモデルが変形された3Dモデルとスキャン/画像との間の違いに関する所定の許容範囲内になるまで続けられる。
【0242】
変形された3Dモデルが前の反復或いは最大数の反復に達したことに対してかなりの違いに満たない違いを示すように決定された後、変形された3Dモデルの表面エッジが平滑化され、その後、表面を更に平滑化して平滑化された3Dモデルを形成するための高分解能リメッシングステップが行われる。この平滑化された3Dモデルは、3Dセグメント骨モデルを生成するために(表面平滑化前の前述の一次変形プロセスと同一の)一次変形シーケンスに晒される。
【0243】
図83に戻って参照すると、3Dセグメント骨モデルは、輪郭を生成するように処理される。特に、3Dセグメント骨モデル及びスキャン/画像の共通部分が計算され、それにより、それぞれの画像/スキャンのバイナリ輪郭がもたらされる。
【0244】
また、3Dセグメント骨モデルは、患者固有の骨外観の統計的な3Dモデルを生成するように処理される。特に、骨及び任意の解剖学的な異常性の外観は、輪郭内及び輪郭外に存在する画像情報に基づいてモデリングされる。
【0245】
その後、セグメンテーションシステムのユーザによって骨輪郭が見直される。このユーザは、セグメント化された領域と相関しない3Dモデルの1つ以上のエリアに留意するセグメンテーション専門家又はセグメンテーションシステムの稀なユーザであってもよい。相関関係のこの欠如は、欠けている領域或いは明らかに不正確な領域との関連で存在する場合がある。1つ以上の誤った領域の特定時に、ユーザは、誤った領域が存在するエリアの中心を示すモデル上の「シード点」選択してもよく、或いは、欠けている領域を手動で輪郭付ける。システムのソフトウェアは、シード点を用い、CT又はMRIからの生体構造の初期スキャン/画像を使用してシード点に対して局部的な輪郭を加える或いは該輪郭から差し引く。例えば、ユーザは、骨棘が存在すべき領域を選択でき、また、ソフトウェアは、スキャン/画像と3Dモデル上の領域とを比較して、骨棘をセグメンテーションシーケンスに加える。3Dモデルに対してなされる任意の変化は、最終的にユーザによって見直されて検証され或いは取り消される。この見直し及び修正シーケンスは、スキャン/画像と3Dモデルとの間の解剖学的な違いを考慮するのに必要な回数繰り返されてもよい。ユーザが3Dモデルに満足させられると、結果として得られるモデルは、仮想テンプレーティングモジュールへ出力される前に必要に応じてモデルのタッチアップ領域及びブリッジを除去するべく手動で操作されてもよい。
【0246】
図79及び
図84に示されるように、仮想テンプレーティングモジュールは、自動セグメンテーションモジュール及び非剛体レジストレーションモジュールのいずれか一方又は両方から3D患者固有モデルを受ける。股関節との関連で、3D患者固有モデルは骨盤及び大腿骨を含み、これらの骨はいずれも自動ランドマーキングプロセスへ入力される。この自動ランドマーキングステップは、統計アトラスに存在する同様の生体構造からの領域と局所的な幾何学的検索とを使用して、大腿骨3Dモデル上及び骨盤3Dモデル上のインプラント留置に関連する解剖学的ランドマークを計算する。
【0247】
図85に示されるような遠位固定を使用する大腿骨ステムの自動留置との関連で、自動ランドマーキングは、大腿骨及びインプラントにおける軸線の定義を含む。大腿骨に関しては、解剖学的大腿骨軸線(AFA)が計算された後、近位解剖学的軸線(PAA)が計算される。その後、AFAとPNAとの間の角度として規定される近位頸部角度(PNA)が計算される。大腿骨インプラントに関しては、インプラント軸線がインプラントステムの長さに沿っており、また、インプラント頸部軸線がインプラント頸部の長さに沿っている。大腿骨のPNAと同様に、インプラント角度は、インプラント軸線とインプラント頸部軸線との間の角度として規定される。その後、PNAに最も近いインプラント角度を有するインプラントが選択される。その後、近位解剖学的軸線と選択されたインプラント角度で大腿骨頭中心から引かれるベクトルとの交わりとしてインプラント適合角度(IF A)が規定される。
【0248】
図85に示されるように遠位固定と計算された解剖学的ランドマークとを使用する大腿骨ステムの自動留置を用いるときに、インプラント寸法付けステップは、大腿骨構成要素に適したインプラントサイズを決定する/推定する。インプラントサイズは、インプラントの幅と髄内管の幅とを比較して、髄内管に最も類似する幅を有するインプラントを選択することによって選ばれる。その後、システムはインプラント留置ステップへと進む。
【0249】
遠位固定大腿骨ステムのためのインプラント留置ステップでは、外科医が好む外科的技術と既に計算された解剖学的ランドマークとに基づき、全ての関連する埋め込まれた構成要素に関して初期インプラント位置が決定される/選択される。大腿骨近位部骨切り術をシミュレートするために切除平面が形成され、また、インプラント適合が評価される。適合評価は、位置合わせされたインプラント及び大腿骨髄内管の断面をインプラント軸線に沿う様々な位置で解析することによって行われる。インプラントは、インプラント軸線を解剖学的大腿骨軸線に対して位置合わせした後に、インプラントの頸部が近位大腿骨頸部の一般的な位置にあるようにインプラントを並進させることによって大腿骨に対して位置合わせされる。その後、インプラントは、所望の前傾を得るべく解剖学的大腿骨軸線の周りで回転される。
【0250】
このインプラント留置ステップの一環として反復スキームが利用され、この反復スキームは、インプラント留置に関する初期の「知識に基づく推測」を動態シミュレーションの一部として使用して、「知識に基づく推測」の留置を評価することを含む。 典型的な形態において、動態シミュレーションは、推定された或いは測定された関節動態を使用して所定の動作範囲にわたって(選択されたインプラントの留置に基づいて)インプラントをとらえる。その結果、動態シミュレーションは、衝突位置を決定するとともに、結果として得られる埋め込み後のインプラントの動作範囲を推定するために使用されてもよい。動態シミュレーションが満足できないデータ(例えば、満足できない動作範囲、自然な動態の満足できない模倣など)をもたらす場合には、インプラント留置のための他の位置が利用されてもよく、その後、満足できる結果に達するまでインプラント留置を更に精緻化するべく動態解析が行われてもよい。全ての関連する埋め込まれた構成要素に関してインプラント位置が決定され/選択された後、テンプレートデータが冶具生成モジュールへ転送される。
【0251】
図86に示されるような圧入と3つの接点とを使用する大腿骨ステムの自動留置との関連で、自動ランドマーキングは、大腿骨及びインプラントにおける軸線の定義を含む。大腿骨に関しては、解剖学的大腿骨軸線(AFA)が計算された後、近位解剖学的軸線(PAA)が計算される。その後、AFAとPNAとの間の角度として規定される近位頸部角度(PNA)が計算される。大腿骨インプラントに関しては、インプラント軸線がインプラントステムの長さに沿っており、また、インプラント頸部軸線がインプラント頸部の長さに沿っている。大腿骨のPNAと同様に、インプラント角度は、インプラント軸線とインプラント頸部軸線との間の角度として規定される。その後、PNAに最も近いインプラント角度を有するインプラントが選択される。その後、近位解剖学的軸線と選択されたインプラント角度で大腿骨頭中心から引かれるベクトルとの交わりとしてインプラント適合角度(IF A)が規定される。
【0252】
図86に示されるように圧入、3つの接点、及び、計算された解剖学的ランドマークを使用する大腿骨ステムの自動留置を用いるときに、インプラント寸法付けステップは、骨盤及び大腿骨の構成要素に適したインプラントサイズを決定する/推定する。インプラントサイズは、インプラント軸線を解剖学的大腿骨軸線に対して位置合わせすることによりインプラントを大腿骨に対して位置合わせすることによって選択される。その後、インプラントは、その頸部軸線を大腿骨頸部軸線と位置合わせするように回転される。その後、インプラントは、大腿骨近位部内の解剖学的に適切な位置にあるように並進される。その後、システムはインプラント留置ステップへと進む。
【0253】
圧入大腿骨ステムのためのインプラント留置ステップでは、外科医が好む外科的技術と既に計算された解剖学的ランドマークとに基づき、全ての関連する埋め込まれた構成要素に関して初期インプラント位置が決定される/選択される。大腿骨近位部骨切り術をシミュレートするために切除平面が形成され、また、インプラント適合が評価される。適合評価は、インプラント及び大腿骨髄内管の輪郭を解析することによって行われる。輪郭は、髄内管を、解剖学的軸線及び大腿骨頸部軸線の両方に対して垂直であって解剖学的軸線と大腿骨頸部軸線との交点を通る平面と交差させて、輪郭をもたらすことによって形成される。インプラント及び髄内管の輪郭が生成されると、同じ位置で髄内管幅よりも小さい幅を有するインプラントだけが維持され、それにより、多くの想定し得る正確なインプラントサイズがもたらされる。想定し得るサイズのグループは、インプラントと髄内管との間の平均二乗距離誤差を減少させる2つの方策によって減少される。第1の方策は、インプラント及び髄内管の内側及び側面の両方の間の距離の平均二乗誤差(MSE)又は他の数学的なエラー指標を最小にする。第2の方策は、インプラント及び髄内管の側面間の距離のMSEを最小にする。
【0254】
このインプラント留置ステップの一環として反復スキームが利用され、この反復スキームは、インプラント留置に関する初期の「知識に基づく推測」を動態シミュレーションの一部として使用して、「知識に基づく推測」の留置を評価することを含む。 典型的な形態において、動態シミュレーションは、推定された或いは測定された関節動態を使用して所定の動作範囲にわたって(選択されたインプラントの留置に基づいて)インプラントをとらえる。その結果、動態シミュレーションは、衝突位置を決定するとともに、結果として得られる埋め込み後のインプラントの動作範囲を推定するために使用されてもよい。動態シミュレーションが満足できないデータ(例えば、満足できない動作範囲、自然な動態の満足できない模倣など)をもたらす場合には、インプラント留置のための他の位置が利用されてもよく、その後、満足できる結果に達するまでインプラント留置を更に精緻化するべく動態解析が行われてもよい。全ての関連する埋め込まれた構成要素に関してインプラント位置が決定され/選択された後、テンプレートデータが冶具生成モジュールへ転送される。
【0255】
図79に戻って参照すると、冶具生成モジュールは、患者固有のガイドモデルを生成する。より具体的には、テンプレートデータ及び関連する計画パラメータから、患者固有のインプラントの形状及び配置が患者の残存する骨に関して知られる。その結果、仮想テンプレーティングモジュールは、患者固有3D骨モデルを使用して、患者の残存する骨に対するインプラントの位置を計算し、したがって、患者の残存する骨がどの程度保持されるようになっているのかに関する情報を冶具生成モジュールに与える。この骨保持データに従い、冶具生成モジュールは、骨保持データを利用して、1つ以上の骨切断を割り当て、計画されたようにインプラントを受け入れるために必要な残存骨まで患者の現在の骨を減少させる。意図される骨切断を使用して、冶具生成モジュールは、単一の位置及び方向で患者の骨と結合するように構成される形状を有する切断ガイド/冶具の仮想3Dモデルを生成する。言い換えると、切断冶具の3Dモデルは、有形の切断ガイドが患者の生体構造と正確に適合するように患者の残存する骨の解剖学的表面の「ネガ」として形成される。この方法では、切断冶具の位置決めと関連付けられる任意の当て推量が排除される。冶具生成モジュールが切断冶具の仮想3Dモデルを生成した後、モジュールは、急速プロトタイピングマシン、CNCマシン、又は、有形の切断ガイドを製造するための同様の装置のために必要なマシンコードを出力する。一例として、大腿骨頭及び大腿骨頸部の切除のための典型的な切断冶具は中空スロットを備え、この中空スロットは、切断ブレードを特定の動作範囲内に拘束するための関連するガイドを形成するとともに、外科的計画及びテンプレーティングモジュールからの仮想切断を複製する所定の方向に切断ブレードを維持する。また、冶具生成モジュールは、大腿骨ステムのための留置冶具を形成するために利用される。
【0256】
図92を参照すると、大腿骨頭及び大腿骨頸部を除去した後、髄内リーミングが行われ、その後、大腿骨ステム挿入がなされる。大腿骨インプラントの挿入のために大腿骨を前処理するべく、大腿骨インプラントの方向と一致する方向に沿って髄内管のリーミングが行われる必要がある。リーミングがオフセットされる場合、大腿骨インプラントの方向性が損なわれる場合がある。この懸案事項に対処するため、冶具生成モジュールは、急速プロトタイピングマシン、CNCマシン、又は、同様の装置が患者生体構造と正確に適合する切断ガイドを製造できるように、患者の残存する又は切除された骨の解剖学的表面の「ネガ」である仮想ガイドを生成する。一例として、リーミング冶具が軸方向ガイドを含んでもよく、該軸方向ガイドに沿ってリーマーが長手方向に横切っていってもよい。このリーミング冶具を使用して、リーミング作業を行う外科医は、適切な方向でのリーミングが確保される。
【0257】
髄内管が大腿骨ステムを受けてもよい。この場合も先と同様に、大腿骨ステムが回転の観点及び角度の観点の両方から髄内管内に適切に位置決めされるようにするために、冶具生成モジュールは大腿骨ステム留置ガイドを生成する。一例として、大腿骨ステム留置ガイドは、同時に、患者の残存する或いは切除された骨の解剖学的表面及び大腿骨ステムの上端の「ネガ」である。このように、留置ガイドは、大腿骨骨幹部(大腿骨ボールが接続される大腿骨ステムの部分)上にわたってスライドすると同時に、患者の残存する或いは切除された骨と接続するための固有の形状を含み、それにより、大腿骨ステムの単一の方向だけが患者の大腿骨に対して可能であり、その結果、術前計画と一致する大腿骨ステムの適切な埋め込みが確保される。しかしながら、初期の股関節インプラントとの関連で典型的な冶具を記載してきたとはいえ、前述の典型的なプロセス及びシステムが初期の股関節インプラントに限定されない或いは股関節外科的処置又は修復外科的処置に限定されないことを当業者が理解すべきであることが留意されるべきである。代わりに、プロセス及びシステムは、膝、足首、肩、脊椎、頭、及び、肘を含むがこれらに限定されない身体の他の領域に関与する外科的処置に加えて、任意の股関節インプラントに適用できる。
【0258】
図93に描かれるように、臼蓋窩との関連で、冶具生成モジュールは、寛骨臼カップのためのリーミング及び寛骨臼インプラント留置ガイドを製造するための命令を生成してもよい。特に、テンプレートデータ及び関連する計画パラメータから、患者固有の寛骨臼インプラントの形状及び留置が患者の残存する骨盤に関して知られる。
その結果、仮想テンプレーティングモジュールは、患者固有3D臼蓋窩モデルを使用して、患者の残存する骨に対する寛骨臼カップインプラントのサイズ及び位置を計算し、したがって、患者の残存する骨盤がどの程度保持されるようになっているのかに関する情報及び所望のインプラント方向に関する情報を冶具生成モジュールに与える。この骨保持データに従い、冶具生成モジュールは、骨保持データを利用して、1つ以上の骨切断/リーミングを割り当て、計画されたように寛骨臼インプラントを受け入れるために必要な残存骨まで患者の現在の骨盤を減少させる。意図される骨切断を使用して、冶具生成モジュールは、1つの方向のみによって患者の骨盤の2つの部分と結合するように構成される形状を有する切断ガイド/冶具の仮想3Dモデルを生成する。言い換えると、切断冶具の3Dモデルは、有形のリーミングガイドが患者の生体構造と正確に適合するように患者の骨盤の解剖学的表面の「ネガ」として形成される。この方法では、リーミング冶具の位置決めと関連付けられる任意の当て推量が排除される。冶具生成モジュールがリーミング冶具の仮想3Dモデルを生成した後、モジュールは、急速プロトタイピングマシン、CNCマシン、又は、有形のリーミング冶具を製造するための同様の装置のために必要なマシンコードを出力する。一例として、臼蓋窩をリーマー加工するための典型的な寛骨臼構成要素冶具は4ピース構造を備え、この場合、第1のピースは、天然の臼蓋窩内に受けられるとともに、第1のピースを留置ガイドとして使用して第2のピースが骨盤に固定されるまで第2のピースに一時的に取り付くように構成される。第2のピースが骨盤に締結された後、第1のピースが除去されてもよい。また、第3のピースは、リーマーが第3のピースに対して長手方向に横切っていくことができるようにするために第2のピースと一意的に接続する円筒状の或いは部分的に円筒状の構成要素を含むが、その方向は、第1のピースと第3のピースとの組み合わせを使用して固定される。リーミングの後、リーマーが除去されるとともに、第3のピースが第1のピースから取り外される。寛骨臼カップインプラントは、第4のピースを使用して、リーマー加工された臼蓋窩に装着される。特に、第4のピースは、単一の方向でのみ第1のピースと係合するように一意的に形成されるが、同時に、寛骨臼カップインプラントの内部の中に受けられるように形成される。インプラントカップが位置された後、第1及び第4のピースの両方が除去される。また、寛骨臼インプラントを着座させるための1つ以上の穴を骨盤にドリルで開けるために更なる冶具が形成されてもよいことも留意すべきであり、この場合、ドリル加工冶具のそれぞれは、ドリル用ビットの方向を検証するために第1のピースに対して連続して装着される。
外傷プレートの形成
【0259】
図95~
図108を参照して、所定の個体群を横切る骨プレート(すなわち、外傷プレート)を形成するための典型的なプロセス及びシステムについて説明する。当業者は、骨がそれ自体を骨折後に修復するべく再生を受けることができることを承知している。骨折の激しさ及び位置に応じて、不規則な骨形状に適合して骨断片間で最大の接触を得るべく手術室で曲げ又は他の修正をしばしば必要とする従来技術の外傷プレートが利用された。しかしながら、過度の曲げは外傷プレートの耐用寿命を減らし、これが骨プレート破損及び/又は外傷プレート-ネジ固定緩みにつながる場合がある。このプロセス及びシステムは、より正確な外傷プレート形状を与えて、術中にプレートを輪郭付けなければならないことを減らし或いは排除し、それにより、プレート耐用寿命を増大させるとともに、任意の骨プレート-ネジ固定緩みが生じるまでの時間を増大させる。
【0260】
外傷プレートを形成するための前述の典型的な説明は、外傷プレートを適用できる任意の全ての骨に対して当てはまる。簡潔にするため、典型的な説明は、上腕骨と共に用いる外傷プレートの形成のためのシステム及びプロセスについて記載する。しかし、プロセス及びシステムが等しく身体の他の骨及び対応する外傷プレートの製造にも適用でき且つ決して上腕骨外傷プレートに限定されないことが理解されるべきである。
【0261】
外傷プレートを形成するための典型的なプロセス及びシステムの一部として、統計骨アトラスが対象の骨のために形成される及び/又は利用される。説明として、対象の骨が上腕骨を備える。当業者は、統計アトラスと、1つ以上の骨との関連で統計アトラスを構成する方法とに精通している。その結果、簡潔さを増進させるため統計骨アトラスを構成する詳細な議論が省かれてしまっている。それにもかかわらず、典型的なシステム及びプロセスの統計骨アトラスに関して固有であり得ることは、性別、年齢、民族性、変形、及び/又は、不完全な構成に基づいて統計骨アトラス内で上腕骨を分類することである。この方法では、1つ以上の外傷プレートが前述のカテゴリーのうちの1つ以上に対してマスカスタマイズされてもよく、この場合、1つ以上のカテゴリーが特定の骨個体群を定める。
【0262】
典型的な形態において、統計骨アトラスは、様々な形態を成してもよい解剖学的データを含む。一例として、統計骨アトラスは、二次元又は三次元画像、及び、測定値をそこから取得できる骨パラメータに関する情報を含んでもよい。典型的なアトラス入力データは、X線画像、CTスキャン画像、MRI画像、レーザスキャン画像、超音波画像、セグメント化された骨、物理的測定データ、及び、骨モデルをそこから形成できる任意の他の情報の形態を成してもよい。この入力データは、三次元骨モデルを構成する(又は統計アトラスの一部として既に形成されて保存されてしまっている三次元骨モデルにアクセスする)ために統計アトラスデータにアクセスするソフトウェアによって利用され、三次元骨モデルから、ソフトウェアは、平均骨モデル又はテンプレート骨モデルを三次元で形成するようになっている。
【0263】
テンプレート骨モデルを使用して、ソフトウェアは、テンプレート骨モデルの外面上の点を自動的に指定することができ、或いは、テンプレート骨モデルの外面上の点の手動指定を可能にする。説明として、平均上腕骨モデルとの関連で、ソフトウェアのユーザは、上腕骨モデルの外面上の外傷プレートの形状を大まかに輪郭付けることによって最終的な外傷プレートのための一般的な境界形状を定める。外傷プレートの一般的な境界形状は、外側境界に対応する上腕骨モデルの外面上の一連の点をユーザが指定することによって達成することもできる。外側境界又は境界点が定められた時点で、ソフトウェアは、定められた境界内の上腕骨モデルの外面上の点を自動的に指定してもよく或いは前記点の手動指定を可能にする。一例として、ソフトウェアがパーセントフィル作業を行い、この作業時に、ユーザは、それぞれが上腕骨モデルの外面上の別個の位置に対応する一連の点によって指定されるべきそのパーセンテージを外傷プレートの境界内で指定できる。また、ソフトウェアは手動点指定機能をもたらし、この機能において、ユーザは、境界内の上腕骨モデルの外面上の1つ以上の点を指定してもよい。なお、手動点指定が利用される場合、ユーザは、上腕骨モデルの外面上の点を指定するべく事前に境界を定める必要がない。むしろ、点の手動指定が完了されるときに、指定された最も外側の点によって境界が定められる。
【0264】
テンプレート骨モデルの外面上の点の指定の後、対象の骨個体群の全体にわたって局在点が伝搬される。特に、局在点は、統計アトラスの点対応を介してソフトウェアにより所定の個体群内のそれぞれの三次元骨モデルに自動的に適用される。一例として、所定の骨個体群は、白人女性からの上腕骨を備えるべく性別固有及び民族固有であってもよい。個体群のそれぞれの骨モデルごとに伝搬された点を使用して、ソフトウェアは、外傷プレートの三次元レンダリングをそれぞれの骨ごとに形成するために三次元充填プロセスを使用して境界内の点間の隙間を埋める。その後、ソフトウェアは、細線化プロセスを介して各外傷プレートの三次元レンダリングの長手方向中線を計算する。
【0265】
それぞれの三次元外傷プレートレンダリングの中線は、その長さに沿って様々な曲率を有する三次元中線を備える。ソフトウェアは、三次元中線を抽出するとともに、最小二乗適合を使用して、協働して三次元中線の支配的な曲率を最も良く近似する好ましい数の曲率半径を決定する。上腕骨との関連で、3つの曲率半径が中線曲率を正確に近似することが突き止められた。しかし、この数は、骨個体群及び外傷プレートの境界に応じて変化する場合がある。例えば、プレートの長さに沿う1つ以上の位置における断面曲率、回避すべき筋肉、神経、及び、他の軟組織の位置、或いは、プレートのサイズ又は形状を規定することに関連する任意の他の特徴などの更なる特徴もここに含まれ得る。一例として、中線のための3つの曲率半径は、近位上腕骨における外傷プレートの屈曲、上腕骨骨幹部と上腕骨頭との間の移行部、及び、上腕骨骨幹部の曲率を表す。それぞれの曲率半径が記録され、また、個体群に最も良く適合するグループへと半径をクラスタリングするために四次元特徴ベクトルが曲率半径データに適用された。典型的な形態において、クラスタデータは、個体群に適切に適合するためには複数の外傷プレートが必要であることを示してもよい。曲率半径データがクラスタリングされた時点で、外傷プレート寸法が最終決定されてもよい。
【0266】
プレート設計に関連付けられる特徴抽出時に、ソフトウェアは、個体群に適合する最良の数のクラスタを決定する。
図100に概略的に示されるように極小値を与える2つ以上のクラスタが存在する幾つかの事例があることが留意されなければならない。それぞれの群において受け入れられる許容誤差及び妥当な数のプレートを与える最適な選択を決定するために、ソフトウェアは、それぞれのクラスタにおけるプレートのための三次元表面モデルを生成する。その後、それらのプレートを個体群上に配置して、プレートと骨表面との間の不一致を計算することによって、自動評価が行われる。この解析の結果により、ソフトウェアは、この特定の個体群のために使用されるべき最適な数のプレートを選ぶ。その後、最終的なプレートモデルがパラメータ化され、また、筋肉及び軟組織の位置を避けて固定を最大にするようにネジ位置がそれぞれのプレート上に配置される。ネジの幅は、個体群の全体にわたるそれぞれのネジ位置での骨の断面解析によって決定される。
【0267】
このプロセス及び方法は、死体研究を使用して上腕骨に関して検証された。特に、白人女性からの死体の上腕骨のCTスキャンが撮られた。これらのCTスキャンは、それぞれの上腕骨ごとに別個の三次元モデルを形成するためにソフトウェアによって利用された。なお、この検証研究中に利用されたCTスキャン及び三次元モデルはいずれも、上腕骨外傷プレートを形成するために利用される統計アトラス及び関連する個体群の一部ではなかった。その結果、CTスキャン及び三次元モデルのいずれも、設計される上腕骨外傷プレートを検証するために使用される新たなデータ及びモデルを備えなかった。三次元検証モデルが生成された後、モデルのそれぞれは特定のクラスタ(設計個体群から上腕骨外傷プレートを設計することによってもたらされるクラスタ)に分類された。検証モデルがいずれのクラスタへ分類されたのかに基づき、そのクラスタのために設計された上腕骨外傷プレートは、適切な検証三次元上腕骨モデルに適合され、また、検証三次元上腕骨モデルの外面と上腕骨外傷プレートの裏面との間の任意の間隔を示す測定値が計算された。
図107は、骨と外傷プレートとの間の最大距離の領域を示すために検証三次元上腕骨モデルに対して取り付けられる外傷プレートの距離マップを描く。外傷プレートの大部分が骨から最小限に離間される一方で、あまり適合しない領域だけが0.06~0.09センチメートルの範囲の間隔を示すことが分かる。その結果、前述のシステムを使用して前述の典型的なプロセスに従って設計される外傷プレートが、術中に適用されるときに骨プレートを曲げなければならない或いは手作業で再形成しなければならない外科医の慣習を予め避ける驚くべき輪郭適合を有することが、この死体研究の終わりに突き止められた。
【0268】
このプロセスの他の典型的な事例では、外傷プレートが鎖骨のために形成された。ここで、統計アトラスは、白人個体群内の変化を十分にとらえた幾つかの鎖骨から形成された。また、筋肉付着部位に関連する位置が統計アトラス内に規定された。骨全体に沿って5%の増分で、及び、筋肉付着部位で且つ鎖骨ウエストで断面輪郭が抽出された。各断面輪郭の最大寸法及び最小寸法が計算された。また、データセット内の骨表面全体にわたって同種の点間の大きさ及び方向の違いを解析することによって非対称性に関して全体の三次元表面が検査された。結果は、鎖骨非対称性に関する既存の研究、すなわち、左鎖骨が右鎖骨よりも長いが、右鎖骨が左鎖骨よりも厚いことを裏付ける。しかしながら、非対称性のパターンは、男性と女性との間で異なる。また、鎖骨中線は、既存のプレート設計の場合と同様、対称な「S」形状に従わない。男性は、全ての寸法において、また、筋肉及び靭帯の付着部位輪郭で、かなり非対称であり(p<0.05)、一方、女性の非対称性は更に変わりやすい。我々は、これが男性の女性と比べた筋肉強度の絶対的及び相対的な違いに対処しなければならないと仮定する。しかしながら、後中間骨幹部上に筋付着部を伴わない領域は、両方の性別においてかなり非対称であった。抽出された特徴から、個体群に最適に適合するための一群の鎖骨プレートを見つけるためにクラスタリングが行われた。また、軟組織(筋付着部)を最適に避けるとともに、長すぎる或いは短すぎるネジの結果としての更なる骨折又はプレート緩みを防止するために、ネジ固定位置及び長さを決定することができる。
図110、
図111、
図112、
図113、及び、
図114に見られるように、プロセスを使用して幾つかのプレート群が設計された。
外傷プレート留置ガイドの形成
【0269】
図115を参照して、患者固有の外傷プレート留置ガイドを形成するための典型的なプロセス及びシステムについて説明する。当業者は、1つ以上の位置で骨が折れる可能性があり、それにより、互いから分離される骨断片がもたらされることを認識している。骨を修復するための再建術の一環として、これらの断片は、1つ以上の外傷プレートを使用して固定方向で保持される。再建外科医は、患者固有の解剖学的な事実ではなく本来持っている知識を使用して骨背面を互いにつなぎあわせようと試みた。その結果、患者の骨生体構造が正常から変化する程度まで、骨断片が大きく歪められる程度まで、或いは、骨断片の数が多くなる程度まで、外科医は、従来技術の外傷プレートを使用すること、及び、プレートの形状を骨断片に適合させるのではなく骨断片をプレートの形状に適合させることに訴える。このプロセス及びシステムは、当初の骨の形状及び方向を複製するために外傷プレートを骨に適合させる外傷プレート留置ガイド及びカスタマイズされた外傷プレートの形成によって従来技術の外傷プレート適用を改善する。
【0270】
典型的なシステムフローは、破壊された生体構造を表す入力データを受けることから始まる。単なる説明の目的で、破壊された生体構造は人の頭蓋骨を備える。前述のプロセス及びシステムが腕、脚、及び、胴を含むがこれらに限定されない他の生体構造/骨に対して等しく適用できることが留意されるべきである。典型的な形態において、解剖学的データ入力は、X線、CTスキャン、MRI、又は、骨のサイズ及び形状を表すことができる任意の他の撮像データ形態を成してもよい。
【0271】
入力解剖学的データは、破壊された生体構造の三次元仮想モデルを構成するために利用される。一例として、入力解剖学的データは、骨折された頭蓋骨のコンピュータ断層撮影スキャンを備え、該スキャンは、このスキャンをセグメント化して三次元モデルを生成するためにソフトウェアにより処理される。当業者は、コンピュータ断層撮影スキャンを利用して三次元仮想モデルを構成する方法に精通している。その結果、プロセスのこの態様の詳細な説明は、簡潔さを増進させるために省かれてしまっている。
【0272】
骨折された頭蓋遺骨の三次元仮想モデルの生成の後、ソフトウェアは、頭蓋骨の三次元仮想モデルと統計アトラスからのデータとを比較して、頭蓋骨が骨折される三次元仮想モデル中の領域を決定する。特に、ソフトウェアは、入力生体構造の表面モデルから抽出される特徴(例えば、表面粗さ、曲率、形状係数、湾曲、隣接接続性)を利用して、骨折部位の領域を抽出する。その後、それらの骨折部位の概略輪郭が抽出されて互いに適合されることにより、適合する骨折部位が見つけられる。正常な生体構造を再建するべく適合された骨折部位を配置するための最良の位置を示すために、骨折された断片もアトラスと適合される。
【0273】
ソフトウェアが骨折された頭蓋骨の再建三次元仮想モデルを生成した後、再建三次元仮想頭蓋骨モデルの外面上にバットレスが手動で及び/又は自動で位置されてもよい。バットレスの自動留置は、バットレスの数を最小にしつつ骨断片の安定性を最大にするようにプログラミングされた論理の結果である。本明細書中で使用されるバットレスという用語及びその複数形は、骨断片を互いに対して安定させるために使用される任意の支持体のことを示す。特定の場合において、外科医又は他の学識のあるユーザによる実際的経験は、手動バットレス留置機能を使用するときに論理を補い或いは論理に取って代わる。いずれにしても、一連のバットレスがソフトウェアにプログラミングされ、ソフトウェアは、ソフトウェア又はソフトウェアのユーザが異なる用途のための異なるバットレスを選択できるようにする。同時に、バットレスの長さは、骨折及び骨断片の寸法に基づいて手動で或いは自動で操作されてもよい。
【0274】
再建三次元仮想頭蓋骨モデルにおけるバットレス割り当て及びバットレス留置の後、ソフトウェア寸法及び各バットレスの輪郭がソフトウェアによって記録される。この記録は、各バットレスの製造のために必要な情報、又は、最低限でも、外科医又は他の学識のある個人が既存のバットレスを取得してそれぞれを留置ガイドに適合させることができるようにするのに役立つ情報を含む。既存のバットレスを成形することとの関連で、ソフトウェアは、再建三次元仮想頭蓋骨モデルの輪郭を抽出して、再建三次元頭蓋骨モデルを示す1つ以上の有形モデルの形成のためのコンピュータ支援設計(CAD)命令を生成する。これらのCAD命令は、再建三次元頭蓋骨モデルを示す1つ以上の有形モデルを形成する急速プロトタイピングマシンへ送られる。適切な解剖学的表面を有形モデルとして再形成することにより、それぞれのバットレスが目標位置で有形モデルに適用されてもよく、また、患者の頭蓋骨に対する埋め込み及び締結の前にそれぞれのバットレスが手動で適合されてもよい。
【0275】
任意のバットレスの位置及び長さに基づいて、ソフトウェアは、1つ以上の患者固有のバットレス留置ガイドのための輪郭データを生成するために再建三次元仮想頭蓋骨モデルの輪郭も抽出する。特に、留置ガイドはそれぞれのバットレスごとに生成されてもよい。このようにすると、留置ガイドは、患者の頭蓋骨の輪郭と単一の方向で適合する表面輪郭を含む。隣接する頭蓋骨外面の輪郭と同様に、バットレスの位置が再建された頭蓋骨の仮想モデルで知られているとすると、ソフトウェアは、これらの2つを組み合わせて、仮想患者固有留置ガイドを形成する。この仮想ガイドは、製造のための急速プロトタイピングマシンへCAD命令の形態で出力される。
【0276】
この典型的な実施形態において、製造された患者固有留置ガイドは、外科医により握られるように構成される長尺ハンドルを備える。長尺ハンドルの端部からはブロックC形状輪郭プレートが延びている。輪郭プレートの下面は、バットレスが位置されるべき場所で頭蓋骨の凸状の形態と適合するように凹状である。必要とされないが、輪郭プレートの端部(又は他の部分)がバットレスに締結されてもよく、或いは、輪郭プレートが単に作業窓を備えてもよく、バットレスはこの作業窓内に位置合わせされて最終的に頭蓋骨に締結される。頭蓋骨に対するバットレスの取り付け後、輪郭プレートが除去されてもよい。
カスタマイズされた切断ガイド及び留置ガイド、プレート
【0277】
図116を参照すると、変形した、破壊された、或いは、不完全な生体構造の再建が、ヘルスケアプロバイダーに直面する複雑な問題のうちの1つである。異常な生体構造は、出生状態、腫瘍、疾患、又は、身体傷害の結果である場合がある。様々な疾患のための治療を行う一環として、ヘルスケアプロバイダーは、骨折/骨粉砕、骨変性、整形外科インプラント修復、整形外科初期埋め込み、及び、疾患を含んでもよいがこれらに限定されない様々な状態のための治療を容易にするために生体構造を再建する或いは生体構造を構成することが有利であると考える場合がある。
【0278】
本開示は、骨移植片を使用する骨及び組織の再建のためのシステム及び方法を提供する。この再建を行うために、システム及び関連する方法は、患者の現在の生体構造画像を利用して、2つの仮想3Dモデル、すなわち、(a)現在の異常な生体構造を表す第1の3Dモデルと、(2)患者の再建された生体構造を表す第2の3Dモデルとを構成する。患者の異常な生体構造及び再建された生体構造の仮想モデルに到達するための患者画像(X線、CTスキャン、MRI画像など)を使用する詳細な説明に関しては、先の「完全生体構造再建」の節が参照される。このシステム及び方法は、骨移植片をそこから取得できる1つ以上の骨(すなわち、ドナー骨)の3D仮想モデルを構成することと相まって2つの3D仮想モデルを利用するために「完全生体構造再建」の節で説明されるシステムを基礎とする。以下で更に詳しく説明されるように、患者の再建された異常な生体構造の3D仮想モデルは、再建のために必要とされる骨移植片の3D仮想モデルを生成するために解析される。この3D仮想移植片モデルは、骨移植片をそこから切除できるドナー骨上の1つ以上の部位にアクセスするためにドナー骨の3D仮想モデルと比較される。切除位置を決定した後、移植骨を集めて移植骨を再建の部位に装着するために切断ガイド及び移植片留置ガイドが設計されて製造される。
【0279】
典型的な説明として、このシステム及び方法は顔面再建との関連で説明され、この場合、ドナー骨が腓骨を備える。当業者は、このシステム及び方法が1つ以上の骨移植片を利用する任意の再建外科的処置に適用できることを認識すべきである。また、顔面再建及びドナー骨としての腓骨について議論するが、当業者は、典型的なシステム及び方法が腓骨以外のトナー骨と共に使用されてもよいことを理解すべきである。
【0280】
骨移植片を使用する再建外科的計画及び外科処置と共に使用するための典型的なシステム及び方法について議論する前のステップとして、患者の異常な生体構造が撮像されるとともに、先の「完全生体構造再建」の節で説明されたプロセスに従って患者の異常な生体構造及び再建された生体構造の仮想3Dモデルが生成されることが想定される。その結果、患者画像を利用して患者の異常な生体構造及び再建された生体構造の両方の仮想3Dモデルを生成する詳細な議論は、簡潔さを増進させるために省かれてしまっている。
【0281】
患者の異常な生体構造及び再建された生体構造の仮想3Dモデルが形成された後、ソフトウェアは、生体構造を比較して、その違いの領域を強調する。特に、仮想3Dモデル間に共通の領域は、保持される骨を示し、一方、異なる領域は、再建のための1つ以上の部位を示す。ソフトウェアは、患者の再建された生体構造の仮想3Dモデルから、共通していない領域を抽出し、これらの領域を対象の移植片の別個の3D仮想モデルとして分離する。外科医又は他の術前プランナーは、仮想3D骨移植片モデルを見て、骨移植片をそこから最良に切除できる1つ又は複数の骨に関して自ら判断を下してもよい。
【0282】
想定し得る骨を最初に移植片候補として選択するために利用される論理にかかわらず、対象の骨は、従来の診断法(X線、CT、MRI等)を使用して撮像される。先の「完全生体構造再建」の節に記載されるプロセスを使用して、それぞれの撮像された骨がセグメント化されるとともに、撮像された骨の仮想3Dモデルが形成される。この3Dドナー骨モデルは、共通している領域を分離するために仮想3D骨移植片モデルと比較される。特に、ソフトウェアは、3Dドナー骨モデルの表面輪郭と仮想3D骨移植片モデルの表面輪郭とを比較して、共通している領域又は同様の曲率を有する領域を特定する。
共通している或いは同様の領域が存在しなければ、他の想定し得るドナー骨を解析することによってプロセスを再び開始することができる。一方、共通している或いは同様の曲率を有する1つ以上の領域がドナー骨に存在する場合には、これらの領域が3Dドナー骨モデルで強調される。特に、強調された領域は、仮想3D骨移植片モデルの形状を模倣する。共通している領域が骨移植片を切除するのに適していると判断されれば、ソフトウェアは、骨移植片を仮想3Dモデルとして仮想的に切除して、その骨移植片(ドナー骨に関して固有/特有の輪郭を有する)を患者の異常な生体構造の仮想3Dモデルに適用し、それにより、再建の一環として切除される必要があるかもしれない患者の異常な生体構造の任意の領域及び想定し得る適合を検証する。患者の異常な生体構造の仮想3Dモデルに対する切除された骨の仮想3Dモデルの適用が満足できるとはいえない再建をもたらす状況では、プロセスが骨選択点で再び開始されてもよく或いは骨の異なる領域を切除するように再び開始されてもよい。しかし、患者の異常な生体構造の仮想3Dモデルに対する切除された骨の仮想3Dモデルの適用が適切な適合をもたらせば、システムは、骨移植片の切除と患者の残存する骨に対する骨移植片の装着とを容易にするために冶具設計を進める。
【0283】
この典型的な実施形態において、システムは、骨移植片切断ガイド及び骨移植片留置ガイドを製造するために、急速プロトタイピングマシン、CNCマシン、又は、同様の装置のために必要なマシンコードを生成して出力する。骨移植片切断ガイド及び骨移植片留置ガイドを製造するために必要な出力を生成するべく、システムは、切除された骨の仮想3Dモデル及び患者の異常な生体構造の仮想3Dモデルを利用する。
【0284】
特に、切除された骨の仮想3Dモデルは、仮想3D切断ガイドの境界を規定する。また、この典型的な状況において、腓骨の一部は、骨移植片を与えるように切除されるようになっている。腓骨の適切な部分が切除されるようにするために、仮想3D切断ガイドは、適切に輪郭付けられる骨移植片を形成するために切断装置(のこぎり、切断ドリルなど)が内部を横切る窓を含む。仮想3D切断ガイドは、適切な骨移植片輪郭をもたらすように形成される必要があるだけでなく、患者のドナー骨上の切断ガイドの留置が特定化されるようにするべく形成される必要もある。より具体的には、ドナー骨上の切断ガイドの留置は、切除される骨が正確な外形形状を含むと同時に正確な輪郭も成すようにする必要がある。この態様において、仮想3D切断ガイドの下面は、切断ガイドが装着されるドナー骨の表面の「ネガ」となるように形成される。切断ガイドをドナー骨に固定するための典型的な装着技術としては、ネジ、だぼ、及び、ピンを挙げることができるが、これらに限定されない。これらの装着技術又は他の技術のうちの1つ以上を受け入れるために、仮想3D切断ガイドは、外科用カッターが内部を横切る窓以外の1つ以上の貫通オリフィスも含むように形成される。仮想3D切断ガイドの設計が完了された後、システムは、急速プロトタイピングマシン、CNCマシン、又は、同様の装置のために必要なマシンコードを生成して出力することにより、骨移植片切断ガイドを製造し、その後、実際の切断ガイドを製造する。
【0285】
切断ガイドに加えて、ソフトウェアは、1つ以上の骨移植片留置ガイドも設計する。骨移植片留置ガイドは、残存する骨に対する骨移植片の正確な配置を確保するために、患者に固有のものであるとともに、患者の生体構造(ドナー骨及び該ドナー骨が装着される残存する骨の両方)に適合する。典型的な形態では、骨移植片留置ガイドが下顎骨再建処置用に構成される。骨移植片留置ガイドを設計するために、ソフトウェアは、ハイブリッドモデルを構成するべく患者の異常な生体構造の仮想3Dモデルに対して適用される切除骨の仮想3Dモデルを利用する。このハイブリッドモデルを使用して、骨移植片が隣接する残存骨と接続する(願わくは骨成長によって結合する)接合部が特定される。これらの接合部では、外科医の好みなどの様々な因子に応じて、システムは、骨移植片プレート位置を特定するとともに、骨移植片及び残存骨に対するプレートの正確な留置及び固定を容易にするためにそれぞれのプレートごとに1つ以上のガイドを特定する。
【0286】
当業者は従来の下顎骨プレートに精通しており、したがって、下顎骨プレートの一般的な設計の詳細な議論は、簡潔さを増進させるために省かれてしまっている。このシステム及び方法が達成するものは、従来のシステム及び方法とは異なり、残存する骨及び骨移植片の両方の形状を考慮する患者固有の骨プレート及び留置ガイドの形成である。特に、(自動的に或いは手動で)特定されたそれぞれの骨プレート位置ごとに、システムは、仮想3D骨プレート及び関連する留置ガイドを設計した。それぞれの仮想3D骨プレート及びガイドモデルは、それが骨移植片を備えようが或いは残存骨を備えようが、それぞれの仮想3D骨プレート及びガイドモデルの下面が下に横たわる骨のネガであるようにするべく、ハイブリッド3Dモデル(骨移植片及び患者残存骨をそれらの再建位置で含む)に対して重ね合される。このように、仮想3D骨プレート及びガイドモデルは、骨プレート、骨移植片、及び、残存骨の間で骨プレートの適切な留置及び対応する係合を確保するように協働する。骨プレートを骨移植片及び残存骨に固定するための典型的な装着技術としては、ネジ、だぼ、及び、ピンを挙げることができるが、これらに限定されない。これらの装着技術又は他の技術のうちの1つ以上を受け入れるために、それぞれの仮想3D骨プレート及び留置ガイドは1つ以上の貫通オリフィスを含む。それぞれの仮想3D骨プレート及びガイドの設計が完了された後、システムは、急速プロトタイピングマシン、CNCマシン、又は、同様の装置のために必要なマシンコードを生成して出力することにより、それぞれの3D骨プレート及びガイドを製造し、その後、実際の骨プレート及びガイドを製造する。
【0287】
先の説明及び発明の概要から当業者に明らかなように、本明細書中に記載される方法及び装置は本発明の典型的な実施形態を構成するが、本明細書中に含まれる発明は、この正にその実施形態に限定されず、特許請求の範囲により規定される発明の範囲から逸脱することなく変更がなされてもよい。また、言うまでもなく、発明が特許請求の範囲により規定されるとともに、本明細書中に記載される典型的な実施形態を説明する任意の限定又は要素が特許請求の範囲に記載される任意の要素の解釈に組み入れられるべきであることは意図されていない。ただし、そのような限定又は要素が明確に述べられている場合を除く。同様に、任意の特許請求項の範囲内に入るために本明細書中に開示される発明の特定された利点又は目的のうちのいずれか或いは全てを満たす必要がないことも理解されるべきである。これは、発明が特許請求の範囲により規定されるからであり、また、本発明の固有の及び/又は予期しない利点が本明細書中で明確に論じられていなかった場合であってもそれらの利点が存在する場合があるからである。
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