(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231110BHJP
B41J 2/045 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/045
(21)【出願番号】P 2019148903
(22)【出願日】2019-08-14
【審査請求日】2022-06-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山村 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲右
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-233876(JP,A)
【文献】特開2012-218182(JP,A)
【文献】特開平11-115195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って、一対の端部領域と、前記一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、
前記液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記アクチュエータプレートは、
前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って並設された複数の溝と、
前記所定方向に沿って前記溝同士を区画する複数の駆動壁と、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、
前記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、前記ダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部と
を有しており、
前記駆動壁では屈曲変形が生じるように構成されていると共に、前記ダミー壁では前記屈曲変形が生じないように構成されており、
前記複数の溝として、前記所定方向に沿って交互に配置された、複数の吐出溝と複数の非吐出溝とが含まれており、
前記複数の吐出溝内にそれぞれ、共通電極が形成されていると共に、前記複数の非吐出溝内にそれぞれ、前記個別電極が形成されており、
前記1または複数のダミー電極のうちの少なくとも1つのダミー電極における電位が、前記共通電極における電位と等しくなっており、
前記追加浮遊容量部は、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って前記端部領域に隣接する隣接領域に位置する前記個別電極との間で生じる浮遊容量を増加させて、前記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる
ヘッドチップ。
【請求項2】
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って、一対の端部領域と、前記一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、
前記液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記アクチュエータプレートは、
前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って並設された複数の溝と、
前記所定方向に沿って前記溝同士を区画する複数の駆動壁と、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、
前記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、前記ダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部と
を有しており、
前記駆動壁では屈曲変形が生じるように構成されていると共に、前記ダミー壁では前記屈曲変形が生じないように構成されており、
前記複数の溝として、前記所定方向に沿って交互に配置された、複数の吐出溝と複数の非吐出溝とが含まれており、
前記複数の吐出溝内にそれぞれ、共通電極が形成されていると共に、前記複数の非吐出溝内にそれぞれ、前記個別電極が形成されており、
前記1または複数のダミー電極のうちの少なくとも1つのダミー電極が、前記個別電極および前記共通電極にそれぞれ接続されている配線とは異なる、他の配線を介して接地されており、
前記追加浮遊容量部は、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って前記端部領域に隣接する隣接領域に位置する前記個別電極との間で生じる浮遊容量を増加させて、前記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる
ヘッドチップ。
【請求項3】
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って、一対の端部領域と、前記一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、
前記液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記アクチュエータプレートは、
前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って並設された複数の溝と、
前記所定方向に沿って前記溝同士を区画する複数の駆動壁と、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、
前記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、前記ダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部と
を有しており、
前記駆動壁では屈曲変形が生じるように構成されていると共に、前記ダミー壁では前記屈曲変形が生じないように構成されており、
前記ダミー壁が、前記所定方向に沿って対向する第1および第2の側面を有しており、
前記ダミー壁における前記第1および第2の側面にそれぞれ、前記ダミー電極が配置されていると共に、
前記第1および第2の側面における前記ダミー電極の各々に対して、所定の電位に設定するための配線が、共通接続されており、
前記追加浮遊容量部は、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って前記端部領域に隣接する隣接領域に位置する前記個別電極との間で生じる浮遊容量を増加させて、前記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる
ヘッドチップ。
【請求項4】
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って、一対の端部領域と、前記一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、
前記液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記アクチュエータプレートは、
前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って並設された複数の溝と、
前記所定方向に沿って前記溝同士を区画する複数の駆動壁と、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、
前記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、前記ダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部と
を有しており、
前記駆動壁では屈曲変形が生じるように構成されていると共に、前記ダミー壁では前記屈曲変形が生じないように構成されており、
前記ダミー壁が、前記所定方向に沿って対向する第1および第2の側面を有しており、
所定の電位に設定するための配線が接続された前記ダミー電極が、前記ダミー壁における前記第1および第2の側面と、前記第1および第2の側面同士を繋ぐ前記表面とをそれぞれ、覆うように配置されており、
前記追加浮遊容量部は、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って前記端部領域に隣接する隣接領域に位置する前記個別電極との間で生じる浮遊容量を増加させて、前記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる
ヘッドチップ。
【請求項5】
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って、一対の端部領域と、前記一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、
前記液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記アクチュエータプレートは、
前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って並設された複数の溝と、
前記所定方向に沿って前記溝同士を区画する複数の駆動壁と、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、
前記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、前記ダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部と
を有しており、
前記駆動壁では屈曲変形が生じるように構成されていると共に、前記ダミー壁では前記屈曲変形が生じないように構成されており、
前記端部領域では、前記ダミー壁によって区画されるダミー溝が形成されており、
所定の電位に設定するための配線が接続された前記ダミー電極が設けられている前記ダミー壁によって区画される、前記ダミー溝における前記所定方向に沿った幅が、前記吐出領域内の前記溝における前記所定方向に沿った幅よりも、小さくなっており、
前記追加浮遊容量部は、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って前記端部領域に隣接する隣接領域に位置する前記個別電極との間で生じる浮遊容量を増加させて、前記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる
ヘッドチップ。
【請求項6】
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って、一対の端部領域と、前記一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、
前記液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記アクチュエータプレートは、
前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って並設された複数の溝と、
前記所定方向に沿って前記溝同士を区画する複数の駆動壁と、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、
前記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、前記ダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部と
を有しており、
前記駆動壁では屈曲変形が生じるように構成されていると共に、前記ダミー壁では前記屈曲変形が生じないように構成されており、
所定の電位に設定するための配線が接続された前記ダミー電極において、その表面の少なくとも一部の領域が、粗面となっており、
前記追加浮遊容量部は、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って前記端部領域に隣接する隣接領域に位置する前記個別電極との間で生じる浮遊容量を増加させて、前記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる
ヘッドチップ。
【請求項7】
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って、一対の端部領域と、前記一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、
前記液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記アクチュエータプレートは、
前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って並設された複数の溝と、
前記所定方向に沿って前記溝同士を区画する複数の駆動壁と、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、
前記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、前記ダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部と
を有しており、
前記駆動壁では屈曲変形が生じるように構成されていると共に、前記ダミー壁では前記屈曲変形が生じないように構成されており、
前記追加浮遊容量部において、前記所定方向に沿って、前記ダミー壁と、所定の電位に設定するための配線が接続された前記ダミー電極とがそれぞれ、複数設けられており、
前記追加浮遊容量部は、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って前記端部領域に隣接する隣接領域に位置する前記個別電極との間で生じる浮遊容量を増加させて、前記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる
ヘッドチップ。
【請求項8】
前記所定方向に沿った前記一対の端部領域の双方に、前記追加浮遊容量部が設けられている
請求項1ないし請求項
7のいずれか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項9】
請求項1ないし請求項
8のいずれか1項に記載のヘッドチップと、
前記ノズル孔から前記液体を噴射させる駆動部と
を備えた液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項
9に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、このような液体噴射ヘッドには、液体を吐出するヘッドチップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液体噴射ヘッドでは、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止することや、印刷画質を向上させることが求められている。回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ印刷画質を向上させることが可能な、ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る第1のヘッドチップは、所定方向に沿って、一対の端部領域と、これら一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートとを備えたものである。上記アクチュエータプレートは、このアクチュエータプレートの表面に形成され、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って並設された複数の溝と、上記所定方向に沿って溝同士を区画する複数の駆動壁と、複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、上記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、このダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部とを有している。上記駆動壁では、屈曲変形が生じるように構成されていると共に、上記ダミー壁では、上記屈曲変形が生じないように構成されている。上記複数の溝として、上記所定方向に沿って交互に配置された、複数の吐出溝と複数の非吐出溝とが含まれており、上記複数の吐出溝内にそれぞれ、共通電極が形成されていると共に、上記複数の非吐出溝内にそれぞれ、上記個別電極が形成されており、上記1または複数のダミー電極のうちの少なくとも1つのダミー電極における電位が、上記共通電極における電位と等しくなっている。上記追加浮遊容量部は、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って上記端部領域に隣接する隣接領域に位置する個別電極との間で生じる浮遊容量(stray capacity)を増加させて、上記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる。
本開示の一実施の形態に係る第2のヘッドチップは、所定方向に沿って、一対の端部領域と、これら一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートとを備えたものである。上記アクチュエータプレートは、このアクチュエータプレートの表面に形成され、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って並設された複数の溝と、上記所定方向に沿って溝同士を区画する複数の駆動壁と、複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、上記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、このダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部とを有している。上記駆動壁では、屈曲変形が生じるように構成されていると共に、上記ダミー壁では、上記屈曲変形が生じないように構成されている。上記複数の溝として、上記所定方向に沿って交互に配置された、複数の吐出溝と複数の非吐出溝とが含まれており、上記複数の吐出溝内にそれぞれ、共通電極が形成されていると共に、上記複数の非吐出溝内にそれぞれ、上記個別電極が形成されており、上記1または複数のダミー電極のうちの少なくとも1つのダミー電極が、上記個別電極および上記共通電極にそれぞれ接続されている配線とは異なる、他の配線を介して接地されている。上記追加浮遊容量部は、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って上記端部領域に隣接する隣接領域に位置する個別電極との間で生じる浮遊容量(stray capacity)を増加させて、上記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる。
本開示の一実施の形態に係る第3のヘッドチップは、所定方向に沿って、一対の端部領域と、これら一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートとを備えたものである。上記アクチュエータプレートは、このアクチュエータプレートの表面に形成され、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って並設された複数の溝と、上記所定方向に沿って溝同士を区画する複数の駆動壁と、複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、上記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、このダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部とを有している。上記駆動壁では、屈曲変形が生じるように構成されていると共に、上記ダミー壁では、上記屈曲変形が生じないように構成されている。上記ダミー壁が、上記所定方向に沿って対向する第1および第2の側面を有しており、上記ダミー壁における上記第1および第2の側面にそれぞれ、上記ダミー電極が配置されていると共に、上記第1および第2の側面における上記ダミー電極の各々に対して、所定の電位に設定するための配線が、共通接続されている。上記追加浮遊容量部は、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って上記端部領域に隣接する隣接領域に位置する個別電極との間で生じる浮遊容量(stray capacity)を増加させて、上記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる。
本開示の一実施の形態に係る第4のヘッドチップは、所定方向に沿って、一対の端部領域と、これら一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートとを備えたものである。上記アクチュエータプレートは、このアクチュエータプレートの表面に形成され、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って並設された複数の溝と、上記所定方向に沿って溝同士を区画する複数の駆動壁と、複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、上記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、このダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部とを有している。上記駆動壁では、屈曲変形が生じるように構成されていると共に、上記ダミー壁では、上記屈曲変形が生じないように構成されている。上記ダミー壁が、上記所定方向に沿って対向する第1および第2の側面を有しており、所定の電位に設定するための配線が接続された上記ダミー電極が、上記ダミー壁における上記第1および第2の側面と、上記第1および第2の側面同士を繋ぐ上記表面とをそれぞれ、覆うように配置されている。上記追加浮遊容量部は、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って上記端部領域に隣接する隣接領域に位置する個別電極との間で生じる浮遊容量(stray capacity)を増加させて、上記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる。
本開示の一実施の形態に係る第5のヘッドチップは、所定方向に沿って、一対の端部領域と、これら一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートとを備えたものである。上記アクチュエータプレートは、このアクチュエータプレートの表面に形成され、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って並設された複数の溝と、上記所定方向に沿って溝同士を区画する複数の駆動壁と、複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、上記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、このダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部とを有している。上記駆動壁では、屈曲変形が生じるように構成されていると共に、上記ダミー壁では、上記屈曲変形が生じないように構成されている。上記端部領域では、上記ダミー壁によって区画されるダミー溝が形成されており、所定の電位に設定するための配線が接続された上記ダミー電極が設けられている上記ダミー壁によって区画される、上記ダミー溝における上記所定方向に沿った幅が、上記吐出領域内の上記溝における上記所定方向に沿った幅よりも、小さくなっている。上記追加浮遊容量部は、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って上記端部領域に隣接する隣接領域に位置する個別電極との間で生じる浮遊容量(stray capacity)を増加させて、上記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる。
本開示の一実施の形態に係る第6のヘッドチップは、所定方向に沿って、一対の端部領域と、これら一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートとを備えたものである。上記アクチュエータプレートは、このアクチュエータプレートの表面に形成され、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って並設された複数の溝と、上記所定方向に沿って溝同士を区画する複数の駆動壁と、複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、上記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、このダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部とを有している。上記駆動壁では、屈曲変形が生じるように構成されていると共に、上記ダミー壁では、上記屈曲変形が生じないように構成されている。所定の電位に設定するための配線が接続された上記ダミー電極において、その表面の少なくとも一部の領域が、粗面となっている。上記追加浮遊容量部は、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って上記端部領域に隣接する隣接領域に位置する個別電極との間で生じる浮遊容量(stray capacity)を増加させて、上記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる。
本開示の一実施の形態に係る第7のヘッドチップは、所定方向に沿って、一対の端部領域と、これら一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートとを備えたものである。上記アクチュエータプレートは、このアクチュエータプレートの表面に形成され、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って並設された複数の溝と、上記所定方向に沿って溝同士を区画する複数の駆動壁と、複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、上記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、このダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部とを有している。上記駆動壁では、屈曲変形が生じるように構成されていると共に、上記ダミー壁では、上記屈曲変形が生じないように構成されている。上記追加浮遊容量部において、上記所定方向に沿って、上記ダミー壁と、所定の電位に設定するための配線が接続された上記ダミー電極とがそれぞれ、複数設けられている。上記追加浮遊容量部は、上記吐出領域内において上記所定方向に沿って上記端部領域に隣接する隣接領域に位置する個別電極との間で生じる浮遊容量(stray capacity)を増加させて、上記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、上記本開示の一実施の形態に係るヘッドチップヘッドチップ(上記本開示の一実施の形態に係る第1ないし第7のヘッドチップヘッドチップのうちのいずれか)と、上記ノズル孔から液体を噴射させる駆動部とを備えたものである。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係るヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表す模式斜視図である。
【
図2】
図1に示した液体噴射ヘッドの概略構成例を表す模式図である。
【
図3】
図2に示したノズルプレートおよびアクチュエータプレート等の断面構成例を表す模式図である。
【
図4】
図3に示したIV部を拡大して表す模式断面図である。
【
図5】
図2に示した液体噴射ヘッド等の詳細構成例を表すブロック図である。
【
図6】
図5に示した端部領域付近の断面構成例を表す模式図である。
【
図7】
図6に示した端部領域付近の等価回路例を表す回路図である。
【
図8】比較例1に係る液体噴射ヘッドにおける端部領域付近の断面構成例を表す模式図である。
【
図9】
図8に示した端部領域付近の等価回路例を表す回路図である。
【
図10】比較例1および実施例に係る吐出領域内での吐出速度の特性例を模式的に表す図である。
【
図11】比較例2に係る液体噴射ヘッドにおける端部領域付近の断面構成例を表す模式図である。
【
図12】変形例1に係る液体噴射ヘッドにおける端部領域付近の断面構成例を表す模式図である。
【
図13】変形例2に係る液体噴射ヘッドにおける端部領域付近の断面構成例を表す模式図である。
【
図14】変形例3に係る液体噴射ヘッドにおける端部領域付近の断面構成例を表す模式図である。
【
図15】変形例4に係る液体噴射ヘッドにおける端部領域付近の断面構成例を表す模式図である。
【
図16】変形例5に係る液体噴射ヘッドにおける端部領域付近の断面構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(追加浮遊容量部での各ダミー電極の電位=共通電極の電位の例)
2.変形例
変形例1(追加浮遊容量部でのダミー溝の幅<吐出領域内の各溝の幅の例)
変形例2(追加浮遊容量部でのダミー電極の表面が、粗面である例)
変形例3(追加浮遊容量部でのダミー壁の各面を、ダミー電極が覆っている例)
変形例4(追加浮遊容量部での各ダミー電極の一部に、配線が非接続である例)
変形例5(追加浮遊容量部での各ダミー電極が、接地されている例)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[A.プリンタ1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1の概略構成例を、模式的に斜視図にて表したものである。プリンタ1は、後述するインク9を利用して、被記録媒体としての記録紙Pに対して、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。
【0012】
プリンタ1は、
図1に示したように、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、インク供給管50と、走査機構6とを備えている。これらの各部材は、所定形状を有する筺体10内に収容されている。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
ここで、プリンタ1は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応し、インクジェットヘッド4(後述するインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4K)は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
搬送機構2a,2bはそれぞれ、
図1に示したように、記録紙Pを搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送する機構である。これらの搬送機構2a,2bはそれぞれ、グリッドローラ21、ピンチローラ22および駆動機構(不図示)を有している。この駆動機構は、グリッドローラ21を軸周りに回転させる(Z-X面内で回転させる)機構であり、例えばモータ等によって構成されている。
【0015】
(インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3としては、この例では
図1に示したように、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の4色のインク9を個別に収容する、4種類のタンクが設けられている。すなわち、イエローのインク9を収容するインクタンク3Yと、マゼンダのインク9を収容するインクタンク3Mと、シアンのインク9を収容するインクタンク3Cと、ブラックのインク9を収容するインクタンク3Kとが設けられている。これらのインクタンク3Y,3M,3C,3Kは、筺体10内において、X軸方向に沿って並んで配置されている。
【0016】
なお、インクタンク3Y,3M,3C,3Kはそれぞれ、収容するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクタンク3と総称して説明する。
【0017】
(インクジェットヘッド4)
インクジェットヘッド4は、後述する複数のノズル(ノズル孔Hn)から記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録(印刷)を行うヘッドである。このインクジェットヘッド4としても、この例では
図1に示したように、上記したインクタンク3Y,3M,3C,3Kにそれぞれ収容されている4色のインク9を個別に噴射する、4種類のヘッドが設けられている。すなわち、イエローのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Yと、マゼンダのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Mと、シアンのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Cと、ブラックのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Kとが設けられている。これらのインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kは、筺体10内において、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0018】
なお、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kはそれぞれ、利用するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクジェットヘッド4と総称して説明する。また、このインクジェットヘッド4の詳細構成例については、後述する(
図2~
図7)。
【0019】
インク供給管50は、インクタンク3内からインクジェットヘッド4内へ向けて、インク9が供給される管である。このインク供給管50は、例えば、以下説明する走査機構6の動作に追従可能な程度の可撓性を有する、フレキシブルホースにより構成されている。
【0020】
(走査機構6)
走査機構6は、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って、インクジェットヘッド4を走査させる機構である。この走査機構6は、
図1に示したように、Y軸方向に沿って延設された一対のガイドレール61a,61bと、これらのガイドレール61a,61bに移動可能に支持されたキャリッジ62と、このキャリッジ62をY軸方向に沿って移動させる駆動機構63と、を有している。
【0021】
駆動機構63は、ガイドレール61a,61bの間に配置された一対のプーリ631a,631bと、これらのプーリ631a,631b間に巻回された無端ベルト632と、プーリ631aを回転駆動させる駆動モータ633と、を有している。また、キャリッジ62上には、前述した4種類のインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kが、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0022】
なお、このような走査機構6と前述した搬送機構2a,2bとにより、インクジェットヘッド4と記録紙Pとを相対的に移動させる、移動機構が構成されるようになっている。
【0023】
[B.インクジェットヘッド4の詳細構成]
続いて、
図2~
図5を参照して、インクジェットヘッド4の詳細構成例について説明する。
【0024】
図2は、インクジェットヘッド4の概略構成例を、模式的に表したものである。
図3は、
図2に示したノズルプレート41およびアクチュエータプレート42等の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。
図4は、
図3に示したIV部を拡大して、模式的に断面図(Z-X断面図)で表したものである。
図5は、
図2に示したインクジェットヘッド4等の詳細構成例を、ブロック図で表したものである。なお、
図5においては、便宜上、以下説明するカバープレート43については、図示を省略している。また、後述する
図6と、後述する各比較例および各変形例における同様の図面(
図8,
図11~
図16)においても、同様に、カバープレート43の図示を省略している。
【0025】
インクジェットヘッド4は、後述する複数のチャネル(チャネルC1)における延在方向(Y軸方向)の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドである。このインクジェットヘッド4は、
図2~
図5に示したように、ノズルプレート41、アクチュエータプレート42、カバープレート43および駆動部49を有している。
【0026】
ここで、ノズルプレート41およびアクチュエータプレート42は、本開示における「ヘッドチップ」の一具体例に対応している。
【0027】
なお、ノズルプレート41、アクチュエータプレート42およびカバープレート43は、例えば接着剤等を用いて互いに貼り合わされており、Z軸方向に沿ってこの順に積層されている(
図3,
図4参照)。また、カバープレート43の上面に、所定の流路を有する流路プレート(不図示)が設けられているようにしてもよい。
【0028】
(B-1.ノズルプレート41)
ノズルプレート41は、ポリイミド等のフィルム材または金属材料により構成されたプレートであり、インク9を噴射する複数のノズル孔Hnを有している(
図2~
図5中の破線の矢印参照)。これらのノズル孔Hnはそれぞれ、所定の間隔をおいて一直線上に(この例ではX軸方向に沿って)並んで形成されている。なお、各ノズル孔Hnは、下方に向かうに従って漸次縮径するテーパ状の貫通孔となっている(
図2~
図5参照)。
【0029】
(B-2.アクチュエータプレート42)
アクチュエータプレート42は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート42は、その分極方向が厚み方向(Z軸方向)に沿って一方向に設定されている1つ(単一)の圧電基板によって、構成されている(いわゆる、カンチレバータイプ)。ただし、アクチュエータプレート42の構成としては、このカンチレバータイプには限られない。すなわち、例えば、分極方向が互いに異なる2つの圧電基板を厚み方向(Z軸方向)に沿って積層することによって、アクチュエータプレート42を構成するようにしてもよい(いわゆる、シェブロンタイプ)。
【0030】
このアクチュエータプレート42には、
図5に示したように、X軸方向に沿って、一対の端部領域Ae1,Ae2と、これら一対の端部領域Ae1,Ae2の間に位置する吐出領域(非端部領域)Amとが、設けられている。吐出領域Amは、
図5に示したように、各ノズル孔Hnからインク9が吐出される領域である。一方、端部領域Ae1,Ae2はそれぞれ、インク9が吐出されない領域(非吐出領域)である。
【0031】
また、これらの端部領域Ae1,Ae2のうちの少なくとも一方には(
図5の例では、端部領域Ae1,Ae2の双方にそれぞれ)、後述する追加浮遊容量部42C1,42C2が設けられている。なお、アクチュエータプレート42における端部領域(端部領域Ae1)付近の詳細構成例については、後述する(
図6,
図7)。
【0032】
ここで、アクチュエータプレート42における上記した吐出領域Am内には、
図5に示したように、複数のチャネルC1が設けられている。これらのチャネルC1は、所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、X軸方向に沿って並んで配置されている。各チャネルC1は、圧電体からなる駆動壁Wによってそれぞれ画成されており、断面視において、アクチュエータプレート42の表面に形成された溝(凹状の溝部)となっている(
図3~
図5参照)。つまり、各駆動壁Wは、X軸方向に沿ってチャネルC1同士を区画している。これらの各駆動壁Wは、詳細は後述するが、各チャネルC1(後述する各吐出チャネルC1e)内を個別に加圧するための素子(圧電素子)として機能するようになっている。
【0033】
このようなチャネルC1には、
図3,
図4に示したように、インク9を吐出させるための吐出チャネルC1eと、インク9を吐出させない非吐出チャネル(ダミーチャネル)C1dとが、存在している。言い換えると、吐出チャネルC1eにはインク9が充填される一方、非吐出チャネルC1dにはインク9が充填されないようになっている。また、各吐出チャネルC1eは、ノズルプレート41におけるノズル孔Hnと連通している一方、各非吐出チャネルC1dは、ノズル孔Hnには連通しないようになっている。これらの吐出チャネルC1eと非吐出チャネルC1dとは、上記した駆動壁Wを介して、アクチュエータプレート42内のX軸方向に沿って、交互に並んで配置されている(
図3参照)。
【0034】
なお、チャネルC1(吐出チャネルC1eおよび非吐出チャネルC1d)は、本開示における「溝」の一具体例に対応している。また、吐出チャネルC1eは、本開示における「吐出溝」の一具体例に対応し、非吐出チャネルC1dは、本開示における「非吐出溝」の一具体例に対応している。また、X軸方向は、本開示における「所定方向」の一具体例に対応している。
【0035】
上記した駆動壁Wにおける対向する内側面にはそれぞれ、
図3に示したように、駆動電極Eが設けられている。つまり、各駆動壁Wを挟んで、一対の駆動電極Eが互いに対向配置されている。この駆動電極Eには、吐出チャネルC1eに面する内側面に設けられた共通電極Ec(コモン電極)と、非吐出チャネルC1dに面する内側面に設けられた個別電極Ea(アクティブ電極)とが、存在している(
図3,
図4参照)。言い換えると、各吐出チャネルC1eには、駆動電極Eとしての共通電極Ecが個別に内部形成されており、各非吐出チャネルC1dには、駆動電極Eとしての個別電極Eaが個別に内部形成されている。
【0036】
このような駆動電極Eと、駆動基板(不図示)における駆動回路との間は、フレキシブル基板(不図示)に形成された複数の引き出し電極を介して、電気的に接続されている。これにより、このフレキシブル基板を介して、後述する駆動部49を含む駆動回路から各駆動電極Eに対し、後述する駆動電圧Vd(駆動信号Sd)等が印加されるようになっている。
【0037】
(B-3.カバープレート43)
カバープレート43は、
図3,
図4に示したように、アクチュエータプレート42における各チャネルC1(および後述する各ダミーチャネルC2d)を閉塞するように配置されている。具体的には、このカバープレート43は、アクチュエータプレート42の上面(表面)に接着されており、板状構造となっている。
【0038】
(B-4.駆動部49)
駆動部49は、
図5に示したように、駆動信号Sd(駆動電圧Vd)を用いたインク9の吐出駆動を行うものである。この際に駆動部49は、プリンタ1内(インクジェットヘッド4の内部)の印刷制御部11から供給される各種のデータ(信号)に基づいて、そのような駆動信号Sd(駆動電圧Vd)を出力するようになっている(
図5参照)。
【0039】
具体的には、駆動部49は、印刷制御部11から供給される印刷データDpが、インク9を吐出するデータである場合には、その印刷データDpに基づいて、駆動信号Sdを生成する(
図5参照)。
【0040】
そして駆動部49は、前述した吐出チャネルC1eに充填されているインク9がノズル孔Hnから吐出されるように、アクチュエータプレート42を駆動して吐出駆動を行う(
図2~
図5参照)。具体的には、駆動部49は、アクチュエータプレート42に対して上記した駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加して、吐出チャネルC1eを膨張または収縮させることで、各ノズル孔Hnからインク9を噴射させる(噴射動作を行わせる)ようになっている。
【0041】
[C.アクチュエータプレート42における端部領域付近の詳細構成]
続いて、
図6,
図7を参照して、アクチュエータプレート42における前述した端部領域付近の詳細構成例について説明する。
【0042】
(C-1.断面構成)
図6は、
図5に示した端部領域Ae1付近の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。
図7は、
図6に示した端部領域Ae1付近の等価回路例を、回路図で表したものである。なお、端部領域Ae2付近の断面構成例および等価回路例(追加浮遊容量部42C2の構成)についても、
図6,
図7と基本的には同様(X軸方向に沿って左右対称の構成)であるため、図示を省略する。この点は、後述する各比較例および各変形例においても同様である。
【0043】
図6に示したように、アクチュエータプレート42の端部領域Ae1には、1または複数のダミー壁Wdと、このダミー壁Wdによって区画されるダミーチャネルC2dと、ダミー壁Wdに形成された1または複数のダミー電極Edと、を含んで構成された追加浮遊容量部42C1が設けられている。同様に、アクチュエータプレート42の端部領域Ae2には、そのようなダミー壁Wd、ダミーチャネルC2dおよびダミー電極Edを含んで構成された、追加浮遊容量部42C2が設けられている。
【0044】
ここで、これらの追加浮遊容量部42C1,42C2では、X軸方向に沿って、ダミー壁WdおよびダミーチャネルC2dと、後述する共通配線Wicが接続されたダミー電極Edとがそれぞれ、複数設けられている。なお、このようなダミー壁Wd、ダミーチャネルC2dおよびダミー電極Edの個数はそれぞれ、特に限定されるものではなく、任意の個数とすることが可能である。
【0045】
追加浮遊容量部42C1は、詳細は後述するが、吐出領域Am内における隣接領域(X軸方向に沿って端部領域Ae1に隣接する領域)に位置する個別電極Eaとの間で生じる浮遊容量を増加させて、その隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させるものである。同様に、追加浮遊容量部42C2は、吐出領域Am内における隣接領域(X軸方向に沿って端部領域Ae2に隣接する領域)に位置する個別電極Eaとの間で生じる浮遊容量を増加させて、その隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させるものである。
【0046】
ダミーチャネルC2dは、基本的には、前述した吐出チャネルC1eと同様の構成を有するチャネル(溝部)であるが、インク9の吐出には寄与しないチャネルとなっている。つまり、このダミーチャネルC2dでは、吐出チャネルC1eとは異なり、前述した非吐出チャネルC1dと同様に、ノズル孔Hnには連通しないようになっている(
図6参照)。
【0047】
ダミー壁Wdは、基本的には、前述した駆動壁Wと同様の構成を有する壁部であるが、各吐出チャネルC1e内を個別に加圧するための素子(圧電素子)としては、機能しないようになっている。このダミー壁Wdには、
図6に示したように、X軸方向に沿って対向する側面S1,S2と、アクチュエータプレート42の表面に相当する上面Su(側面S1,S2同士を繋ぐ表面)とが、それぞれ設けられている。
【0048】
このようなダミー壁Wdの側面S1,S2にはそれぞれ、ダミー電極Edが配置されている(
図6参照)。各ダミー電極Edは、基本的には、前述した共通電極Ecおよび個別電極Eaと同様の構成を有している。
【0049】
ただし、各個別電極Eaには、個別の駆動信号Sdを供給するための個別配線Wiaが接続されており、各共通電極Ecには、共通電位に設定するための共通配線Wicが共通接続されている(
図6参照)。具体的には、端部領域Ae1に最も近いノズル孔Hn1に対して、X軸方向に沿った両端に位置する一対の個別電極Eaにはそれぞれ、駆動信号Sd1を供給するための個別配線Wiaが、接続されている。同様に、端部領域Ae1から2番目に近いノズル孔Hn2に対して、X軸方向に沿った両端に位置する一対の個別電極Eaにはそれぞれ、駆動信号Sd2を供給するための個別配線Wiaが、接続されている。また、これらのノズル孔Hn1,Hn2等の各ノズル孔Hの両端に位置する一対の共通電極Ecにはそれぞれ、上記した共通配線Wicが共通接続されている。
【0050】
一方、上記した側面S1,S2上のダミー電極Edの各々に対しては、所定の電位に設定するための配線が、共通接続されている。具体的には、本実施の形態では
図6に示したように、これらの各ダミー電極Edに対して、各共通電極Ecと同様に、共通電位に設定するための共通配線Wicが共通接続されている。つまり、
図6に示した例では、これらの各ダミー電極Edにおける電位が、各共通電極Ecにおける電位(共通電位)と等しくなっている。このような各ダミー電極Edに対する配線の結果、ダミー壁Wdにおける側面S1,S2間の電位差は常に0Vとなり、このダミー壁Wdにおいては、後述する圧電厚み滑り効果による屈曲変形は生じないようになっている。
【0051】
なお、上記したダミーチャネルC2dは、本開示における「ダミー溝」の一具体例に対応している。また、上記した側面S1,S2はそれぞれ、本開示における「第1の側面」および「第2の側面」の一具体例に対応している。
【0052】
(C-2.等価回路)
ここで、このような端部領域Ae1付近の等価回路例(電気容量モデルによる等価回路例)は、
図7に示したようになる。
【0053】
具体的には、まず、駆動信号Sd1が供給される吐出チャネルC1e(ノズル孔Hn1)の両端に位置する駆動壁Wにはそれぞれ、個別電極Eaと共通電極Ecとの間に生ずる容量成分(容量C1R,C1L)が、形成されている。同様に、駆動信号Sd2が供給される吐出チャネルC1e(ノズル孔Hn2)の両端に位置する駆動壁Wにもそれぞれ、個別電極Eaと共通電極Ecとの間の容量成分(容量C2R,C2L)が、形成されている。
【0054】
また、ノズル孔Hn1の両端に位置する各駆動壁W上の個別電極Eaと、他の電極(他のチャネル内の共通電極Ecまたはダミー電極Ed)との間にも、容量成分(浮遊容量Cs1R,Cs1L)が形成されている。同様に、ノズル孔Hn2の両端に位置する各駆動壁W上の個別電極Eaと、他の電極(他のチャネル内の共通電極Ecまたはダミー電極Ed)との間にも、容量成分(浮遊容量Cs2R,Cs2L)が形成されている。なお、詳細は後述するが、上記した追加浮遊容量部42C1が設けられていることで、上記した浮遊容量Cs1Lの分の浮遊容量が、追加的に形成されるようになっている(
図7参照)。これは、ノズル孔Hn1が位置する吐出チャネルC1eの両側にも、ノズル孔Hn2が位置する吐出チャネルC1eの両側と同様に、他の電極(他のチャネル内の共通電極Ecまたはダミー電極Ed)が配置されていることに起因している。
【0055】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ1の基本動作)
このプリンタ1では、以下のようにして、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。なお、初期状態として、
図1に示した4種類のインクタンク3(3Y,3M,3C,3K)にはそれぞれ、対応する色(4色)のインク9が十分に封入されているものとする。また、インクタンク3内のインク9は、インク供給管50を介して、インクジェットヘッド4内に充填された状態となっている。
【0056】
このような初期状態において、プリンタ1を作動させると、搬送機構2a,2bにおけるグリッドローラ21がそれぞれ回転することで、グリッドローラ21とピンチローラ22と間に、記録紙Pが搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送される。また、このような搬送動作と同時に、駆動機構63における駆動モータ633が、プーリ631a,631bをそれぞれ回転させることで、無端ベルト632を動作させる。これにより、キャリッジ62がガイドレール61a,61bにガイドされながら、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動する。そしてこの際に、各インクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4K)によって、4色のインク9を記録紙Pに適宜吐出させることで、この記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作がなされる。
【0057】
(B.インクジェットヘッド4における詳細動作)
続いて、インクジェットヘッド4における詳細動作(吐出駆動による動作)について説明する。
【0058】
まず、このインクジェットヘッド4では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。言い換えると、駆動部49からアクチュエータプレート42に対し、前述した駆動信号Sdを用いた吐出駆動が行われることで、吐出チャネルC1e内に充填されているインク9が、ノズル孔Hnから吐出される。
【0059】
このような吐出駆動の際に、駆動部49は、アクチュエータプレート42内の駆動電極E(共通電極Ecおよび個別電極Ea)に対し、駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加する(
図2~
図5参照)。具体的には、駆動部49は、吐出チャネルC1eを画成する一対の駆動壁Wに配置された各駆動電極E(共通電極Ecおよび個別電極Ea)に対し、駆動電圧Vdを印加する。これにより、これら一対の駆動壁Wがそれぞれ、その吐出チャネルC1eに隣接する非吐出チャネルC1d側へ、突出するように変形する。
【0060】
このとき、駆動壁Wにおける深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁WがV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁Wの屈曲変形により、吐出チャネルC1eがあたかも膨らむように変形する(
図4中に示した膨張方向da参照)。このように、一対の駆動壁Wでの圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルC1eの容積が増大する。そして、吐出チャネルC1eの容積が増大することにより、インク9が吐出チャネルC1e内へ誘導されることになる。
【0061】
次いで、このようにして吐出チャネルC1e内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルC1eの内部に伝播する。そして、ノズルプレート41のノズル孔Hnにこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極Eに印加される駆動電圧Vdが、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁Wが復元する結果、一旦増大した吐出チャネルC1eの容積が、再び元に戻ることになる(
図4中に示した収縮方向db参照)。
【0062】
このようにして、吐出チャネルC1eの容積が元に戻る過程で、吐出チャネルC1e内部の圧力が増加し、吐出チャネルC1e内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔Hnを通って外部へと(記録紙P等へ向けて)吐出される(
図2~
図5参照)。このようにしてインクジェットヘッド4におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。
【0063】
(C.作用・効果)
続いて、インクジェットヘッド4における作用・効果について、比較例(比較例1,2)と比較しつつ、詳細に説明する。
【0064】
(C-1.比較例1)
図8は、比較例1に係るインクジェットヘッド104における端部領域Ae1付近の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。
図9は、
図7に示したインクジェットヘッド104における端部領域Ae1付近の等価回路例を、回路図で表したものである。また、
図10は、比較例1と、実施の形態における実施例とに係る、吐出領域Am内での吐出速度Viの特性例をそれぞれ、模式的に表したものである。
【0065】
図8に示した比較例1のインクジェットヘッド104は、
図6に示した本実施の形態のインクジェットヘッド4において、アクチュエータプレート42の代わりに、アクチュエータプレート102を設けるようにしたものに対応している。このアクチュエータプレート102は、アクチュエータプレート42において、前述した追加浮遊容量部42C1,42C2を設けないようにしたものとなっている。具体的には、アクチュエータプレート102では、例えば
図8に示したように、端部領域Ae1(および端部領域Ae2)内に、ダミー壁WdおよびダミーチャネルC2dは設けられているものの、前述したダミー電極Edは設けられていない。
【0066】
したがって、
図9に示したように、この比較例1のアクチュエータプレート102における等価回路例では、
図7に示した本実施の形態のアクチュエータプレート42における等価回路例とは異なり、以下のようになっている。すなわち、駆動信号Sd1,Sd2が供給される吐出チャネルC1e(ノズル孔Hn1,Hn2)において、容量C1R,C1L,C2R,C2Lおよび浮遊容量Cs1R,Cs2R,Cs2Lはそれぞれ、形成されているものの、浮遊容量Cs1Lは形成されていない(
図9中の符号P11付近を参照)。これは、ノズル孔Hn2が位置する吐出チャネルC1eの両側には、他の電極(他のチャネル内の共通電極Ecまたはダミー電極Ed)が配置されている一方、ノズル孔Hn1が位置する吐出チャネルC1eの片方側(端部領域Ae1側)には、そのような他の電極が配置されていないことに起因している。
【0067】
このようにして、比較例1のアクチュエータプレート102では、ノズル孔Hn2が位置する吐出チャネルC1e(浮遊容量Cs2R,Cs2Lが形成されている)と比べ、ノズル孔Hn1が位置する吐出チャネルC1e(浮遊容量Cs1Rのみが形成されている)のほうが、浮遊容量が小さくなる。すると、駆動信号Sd(Sd1,Sd2等)を供給する駆動部49にとって、ノズル孔Hn2が位置する吐出チャネルC1eを吐出駆動する際の駆動エネルギーと比べ、ノズル孔Hn1が位置する吐出チャネルC1eを吐出駆動する際の駆動エネルギーのほうが、低くなる。その結果、ノズル孔Hn2からインク9が吐出される際の吐出速度Viと比べ、ノズル孔Hn1からインク9が吐出される際の吐出速度Viのほうが、大きくなる。
【0068】
このようにして、例えば
図10に示したように、この比較例1では、各ノズル孔Hnからインク9が吐出される際に、吐出領域Am内における端部領域Ae1,Ae2との隣接領域付近において、インク9の吐出速度Viが増大する。その結果、この比較例1では、本実施の形態に係る実施例と比べ、吐出領域Am内においてインク9の吐出速度Viがばらつき(記録紙Pに対するインク9の着弾位置ずれて)、印刷画質が低下してしまうおそれがある(
図10中の符号P21,P22付近を参照)。
【0069】
(C-2.比較例2)
一方、
図11は、比較例2に係るインクジェットヘッド204における端部領域Ae1付近の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。
【0070】
この
図11に示した比較例2のインクジェットヘッド204は、
図6に示した本実施の形態のインクジェットヘッド4において、アクチュエータプレート42の代わりに、アクチュエータプレート202を設けるようにしたものに対応している。このアクチュエータプレート202では、アクチュエータプレート42と同様にして、端部領域Ae1,Ae2に追加浮遊容量部204Cが設けられている(
図11参照)。
【0071】
ただし、
図11に示したように、この比較例2のアクチュエータプレート202では、
図6に示した本実施の形態のアクチュエータプレート42とは異なり、追加浮遊容量部204C内のダミー壁Wdも、吐出領域Am内の駆動壁Wと同様にして、吐出駆動がなされる。
【0072】
具体的には、このアクチュエータプレート202では、ダミー壁Wdにおける側面S1,S2上の各ダミー電極Edのうち、一方のダミー電極Edは、共通配線Wicに共通接続されて共通電位に設定されているものの、他方のダミー電極Edは、個別配線Wiaを介して駆動信号Sdd(ダミーの駆動信号)が、供給されている(
図11参照)。つまり、アクチュエータプレート202ではアクチュエータプレート42とは異なり、ダミー壁Wd上の各ダミー電極Edに対する電位設定が、駆動壁W上の個別電極Eaおよび共通電極Ecに対する電位設定と、同様なものとなっている。
【0073】
ここで、ダミーチャネルC2d(ダミー壁Wd)にも吐出チャネルC1e(駆動壁W)と同様にして、吐出駆動の際に駆動エネルギーを伝達するということは、その吐出駆動のための駆動回路を設ける必要があるため、駆動部49等での回路規模の増大につながる。また、ダミーチャンネルC2dでは、実際にはインク9が吐出されないものの、吐出チャネルC1eと同様の吐出駆動がなされることから、インクジェットヘッド204全体としては、このダミーチャンネルC2dの分の、無駄な電力消費が生じることになる。ちなみに、上記した駆動信号Sdd(ダミーの駆動信号)がダミーチャネルC2dに供給されると、このダミーチャネルC2dと隣接する吐出チャネルC1eに対応するノズル孔Hn(ノズル孔Hn1)において、インク9の吐出動作に影響を受ける。そして、そのようなノズル孔Hn1での吐出動作の影響(吐出変動)に対処しようとすると、吐出駆動が複雑化してしまうおそれもある。
【0074】
このようにして比較例2では、上記したようにして、回路規模の増大や、無駄な電力消費が生じてしまうおそれがある。
【0075】
これらのことから、上記した比較例1,2では、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質を向上させることが、困難であると言える。
【0076】
(C-3.本実施の形態)
これに対して本実施の形態のインクジェットヘッド4では、
図5,
図6に示したように、アクチュエータプレート42の端部領域Ae1,Ae2に、ダミー壁Wdおよびダミー電極Edを含む追加浮遊容量部42C1,42C2が設けられている。そして、このような追加浮遊容量部42C1,42C2が設けられていることで、吐出領域Am内における端部領域Ae1,Ae2との隣接領域に位置する個別電極Eaとの間で生じる浮遊容量が増加し(
図7に示した浮遊容量Cs1Lの分が追加的に形成され)、その隣接領域付近での浮遊容量の不均一性が、低減される(
図7参照)。これによりインクジェットヘッド4では、各ノズル孔Hnからインク9が吐出される際に、その隣接領域付近でのインク9の吐出速度Viの増大が抑えられる。その結果、本実施の形態では上記比較例1と比べ、吐出領域Am内でのインク9の吐出速度Viのばらつきが低減され(
図10参照)、印刷画質が向上することになる。
【0077】
また、このインクジェットヘッド4では、アクチュエータプレート42において上記した追加浮遊容量部42C1,42C2を設けるだけで、上記したようにして、インク9の吐出速度Viのばらつきが低減されることから、以下のようになる。すなわち、本実施の形態では上記比較例2とは異なり、例えば上記したような、回路規模の増大や無駄な電力消費の発生が、防止される。
【0078】
以上のようにして本実施の形態では、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0079】
また、アクチュエータプレート42における吐出領域Amおよび端部領域Ae1,Ae2をそれぞれ、同様の製造方法にて形成することができるため、ヘッドチップ(アクチュエータプレート42およびノズルプレート41)を容易に作製することが可能となる。更に、上記したようにして、無駄な電力消費の発生が防止されることから、上記比較例2と比べてヘッドチップにおける発熱を抑えることができ、ひいては、上記比較例2よりもヘッドチップの耐久性を向上させることが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態では、追加浮遊容量部42C1,42C2におけるダミー電極Edの電位が、共通電極Ecの電位(共通電位)と等しくなっていることから、上記した回路規模の増大や無駄な電力消費の発生が、より効果的に防止されることになる。具体的には、例えば、個別電極Eaの電位(個別電位)と等しい電位に設定されたダミー電極Edが存在する場合(上記比較例2)には、各個別電極Eaと同様にして、駆動部49からの個別配線をそのダミー電極Edに接続する必要があると共に、インク9を吐出する場合と同様の駆動がなされることになる。その結果、この比較例2では上記したようにして、回路規模の増大や、無駄な電力消費が生じるおそれがある。これに対して本実施の形態では、ダミー電極Edの電位が上記共通電位と等しくなっていることから、上記比較例2のような回路規模の増大や無駄な電力消費の発生が、容易に防止される。よって本実施の形態では、回路規模の増大や無駄な電力消費をより効果的に防止しつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0081】
更に、本実施の形態では、追加浮遊容量部42C1,42C2におけるダミー壁Wdの両側面(側面S1,S2)に配置された各ダミー電極Edに対して、所定の電位に設定するための配線(
図6の例では、共通電位に設定するための共通配線Wic)が、共通接続されていることから、以下のようになる。すなわち、既存の製造工程をほぼ変更する必要が無く、追加浮遊容量部42C1,42C2による上記した浮遊容量の増加を、実現できるようになる。よって、本実施の形態では、簡易な手法にて、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0082】
加えて、本実施の形態では、追加浮遊容量部42C1,42C2において、X軸方向に沿ってダミー壁Wdとダミー電極Edとがそれぞれ、複数設けられていることから、以下のようになる。すなわち、追加される浮遊容量が更に増加する結果、吐出領域Am内でのインク9の吐出速度Viのばらつきが更に低減され、印刷画質が更に向上する。よって、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質の更なる向上を図ることが可能となる。
【0083】
なお、追加浮遊容量部42C1,42C2内におけるダミー壁Wdの個数としては、吐出領域Am内における駆動壁Wの個数に対し、例えば、0.5%~3%の範囲内であるのが望ましい。ダミー壁Wdの個数を、駆動壁Wの個数を基準としたそのような範囲内に抑えるようにした場合、インクジェットヘッド4におけるX軸方向の長さ(ノズル孔Hnの並置方向に沿った長さ)への影響を最小限に抑えつつ、インク9の吐出速度Viのばらつきを低減する(印刷画質を向上させる)ことが可能となる。
【0084】
また、本実施の形態では、一対の端部領域Ae1,Ae2の双方に、追加浮遊容量部(追加浮遊容量部42C1,42C2)が設けられていることから、以下のようになる。すなわち、これら双方の端部領域Ae1,Ae2の各々について、上記した隣接領域に位置する個別電極Eaとの間で生じる浮遊容量が増加し、その隣接領域付近での浮遊容量の不均一性が、低減されることになる(
図10参照)。このようにして、双方の隣接領域付近において、インク9の吐出速度Viの増大がそれぞれ抑えられる結果、吐出領域Am内でのインク9の吐出速度Viのばらつきが更に低減され、印刷画質が更に向上することになる。よって、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質の更なる向上を図ることが可能となる。
【0085】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~5)について説明する。以下の各変形例では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0086】
なお、以下の各変形例に係るインクジェットヘッド(後述するインクジェットヘッド4a~4e)はそれぞれ、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、これらの各インクジェットヘッドにおけるノズルプレート41およびアクチュエータプレート(後述するアクチュエータプレート42a~42e)はそれぞれ、本開示における「ヘッドチップ」の一具体例に対応している。更に、これらの各インクジェットヘッドを備えたプリンタはそれぞれ、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0087】
[変形例1]
(構成)
図12は、変形例1に係るインクジェットヘッド4aにおける端部領域Ae1付近の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。この変形例1のインクジェットヘッド4aは、
図6に示した本実施の形態のインクジェットヘッド4において、アクチュエータプレート42の代わりに、アクチュエータプレート42aを設けるようにしたものに対応している。
【0088】
このアクチュエータプレート42aでは、アクチュエータプレート42と同様に、端部領域Ae1,Ae2にそれぞれ、追加浮遊容量部が設けられている。具体的には
図12に示したように、端部領域Ae1には、追加浮遊容量部42C1aが設けられている。
【0089】
この追加浮遊容量部42C1aでは、追加浮遊容量部42C1(
図6参照)とは異なり、ダミー壁Wdによって区画されるダミーチャネルC2dにおけるX軸方向の幅が、吐出領域Am内の各チャネルC1(吐出チャネルC1eおよび非吐出チャネルC1d)におけるX軸方向の幅と比較して、以下のようになっている。すなわち、
図12に示したように、所定の電位(共通電位)に設定するための共通配線Wicが接続されたダミー電極Edが設けられているダミー壁Wdによって区画される、ダミーチャネルC2dにおけるX軸方向の幅(チャネル幅Lc)が、吐出チャネルC1eおよび非吐出チャネルC1dにおけるX軸方向の幅(チャネル幅Lc,La)よりも、小さくなっている。つまり、このようなダミーチャネルC2dのチャネル幅Ldが、吐出チャネルC1eのチャネル幅Lcおよび非吐出チャネルC1dのチャネル幅Laの各々と比べて小さくなるように、設定されている(Ld<Lc,Ld<Ld)。
【0090】
ここで、浮遊容量の大きさ(浮遊容量値Cs)は一般に、電極間の誘電率ε、電極の面積(有効面積)Seおよび電極間距離deを用いて、以下の(1)式により規定される。したがって、詳細は後述するが、この(1)式中の電極間距離deに相当する、上記した各チャネル幅(
図12の例では、特にチャネル幅Ld)の大きさを調整することで、浮遊容量値Csも調整可能となる。
Cs={(ε×Se)/de} ……(1)
【0091】
なお、この
図12の例では、追加浮遊容量部42C1a内において、ダミー壁Wd、ダミー溝C2dおよびダミー電極Ed(共通配線Wicが接続されたダミー電極Ed)がそれぞれ、1つだけ設けられているが、この例には限られない。すなわち、このようなダミー壁Wd、ダミー溝C2dおよびダミー電極Edがそれぞれ、追加浮遊容量部42C1a内に複数設けられているようにしてもよい。このような各部材の個数が追加浮遊容量部内で任意に設定可能であることは、後述する各変形例(変形例2~5)においても同様である。
【0092】
(作用・効果)
このような構成の変形例1においても、アクチュエータプレート42aの端部領域Ae1,Ae2に、追加浮遊容量部を設けるようにしたので、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、この変形例1においても実施の形態と同様に、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0093】
また、特にこの変形例1では、上記した構成のダミーチャネルC2dにおけるチャネル幅Ldが、吐出チャネルC1eのチャネル幅Lcおよび非吐出チャネルC1dのチャネル幅Laの各々と比べて小さくなるようにしたので、例えば以下のような効果を得ることも可能となる。すなわち、所定の電位(共通電位)に設定するための共通配線Wicが接続されたダミー電極Edと、他の電極(
図12の例では個別電極Ea)との間の距離(電極間距離de)が、小さくなる。これにより、追加浮遊容量部42C1aによって追加される浮遊容量値Cs(
図7に示した浮遊容量Cs1Lの大きさに相当)が大きくなることから(上記(1)式参照)、例えばダミー壁Wdやダミー電極Edの個数を増加させることなく、必要となる浮遊容量値Csを確保することができる。よって、この変形例1では、追加浮遊容量部42C1aの配置領域を小さく抑えつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0094】
[変形例2]
(構成)
図13は、変形例2に係るインクジェットヘッド4bにおける端部領域Ae1付近の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。この変形例2のインクジェットヘッド4bは、
図6に示した本実施の形態のインクジェットヘッド4において、アクチュエータプレート42の代わりに、アクチュエータプレート42bを設けるようにしたものに対応している。
【0095】
このアクチュエータプレート42bでは、アクチュエータプレート42と同様に、端部領域Ae1,Ae2にそれぞれ、追加浮遊容量部が設けられている。具体的には
図13に示したように、端部領域Ae1には、追加浮遊容量部42C1bが設けられている。
【0096】
この追加浮遊容量部42C1aでは、追加浮遊容量部42C1(
図6参照)とは異なり、所定の電位(共通電位)に設定するための共通配線Wicが接続されたダミー電極Edにおいて、その表面の少なくとも一部の領域が、粗面となっている。具体的には、
図13の例では、そのようなダミー電極Edにおけるダミー壁Wd側(ダミーチャネルC2dとは反対側)の表面の全領域が、粗面Srとなっている。なお、このような粗面Srは、ダミー電極Edにおけるダミー壁Wd側の表面およびダミーチャネルC2d側の表面の、一方または双方のいずれに形成されていてもよく、また、そのようは表面の全領域には限られず、一部の領域のみに形成されていてもよい。
【0097】
ここで、このようなダミー電極Edの表面に粗面Srが形成されていると、その表面における表面積が増加し、そのダミー電極Edにおける有効面積も増加する。したがって、前述した(1)式を参照すると、そのようなダミー電極Edの粗化を利用して、そのダミー電極Edにおける有効面積(電極の面積Seに相当)の大きさを調整することで、浮遊容量値Csも調整可能となる。
【0098】
(作用・効果)
このような構成の変形例2においても、アクチュエータプレート42bの端部領域Ae1,Ae2に、追加浮遊容量部を設けるようにしたので、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、この変形例2においても実施の形態と同様に、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0099】
また、特にこの変形例2では、上記したダミー電極Edにおける表面の少なくとも一部の領域が、粗面となっているようにしたので、例えば以下のような効果を得ることも可能となる。すなわち、そのダミー電極Edにおける表面積が増加し、所定の電位(共通電位)に設定するための共通配線Wicが接続されたダミー電極Edにおける有効面積(電極の面積Se)が、増加することになる。これにより、追加浮遊容量部42C1bによって追加される浮遊容量値Cs(
図7に示した浮遊容量Cs1Lの大きさに相当)が大きくなることから(上記(1)式参照)、例えばダミー壁Wdやダミー電極Edの個数を増加させることなく、必要となる浮遊容量値Csを確保することができる。よって、この変形例2においても変形例1と同様に、追加浮遊容量部42C1bの配置領域を小さく抑えつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0100】
[変形例3]
(構成)
図14は、変形例3に係るインクジェットヘッド4cにおける端部領域Ae1付近の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。この変形例3のインクジェットヘッド4cは、
図6に示した本実施の形態のインクジェットヘッド4において、アクチュエータプレート42の代わりに、アクチュエータプレート42cを設けるようにしたものに対応している。
【0101】
このアクチュエータプレート42cでは、アクチュエータプレート42と同様に、端部領域Ae1,Ae2にそれぞれ、追加浮遊容量部が設けられている。具体的には
図14に示したように、端部領域Ae1には、追加浮遊容量部42C1cが設けられている。
【0102】
この追加浮遊容量部42C1cでは、追加浮遊容量部42C1(
図6参照)とは異なり、所定の電位(共通電位)に設定するための共通配線Wicが接続されたダミー電極Edが、ダミー壁Wdにおいて以下のように配置されている。すなわち、
図14に示したように、そのような共通配線Wicが接続されたダミー電極Edが、ダミー壁Wdにおける両側面(X軸方向に沿って対向する側面S1,S2)と、前述した上面Su(側面S1,S2同士を繋ぐ表面)とをそれぞれ、覆うように配置されている。
【0103】
(作用・効果)
このような構成の変形例3においても、アクチュエータプレート42cの端部領域Ae1,Ae2に、追加浮遊容量部を設けるようにしたので、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、この変形例3においても実施の形態と同様に、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0104】
また、特にこの変形例3では、上記したダミー電極Edが、ダミー壁Wdにおける側面S1,S2および上面Suをそれぞれ覆うように配置されているので、例えば以下のような効果を得ることも可能となる。すなわち、ダミー電極Edの製造工程を特に複雑化させずに、上記したダミー電極Edにおける有効面積(電極の面積Se)を、増加させることができる。これにより、追加浮遊容量部42C1cによって追加される浮遊容量値Cs(
図7に示した浮遊容量Cs1Lの大きさに相当)が大きくなることから(上記(1)式参照)、例えばダミー壁Wdやダミー電極Edの個数を増加させることなく、必要となる浮遊容量値Csを確保することができる。よって、この変形例3においても変形例1,2と同様に、追加浮遊容量部42C1cの配置領域を小さく抑えつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0105】
[変形例4]
(構成)
図15は、変形例4に係るインクジェットヘッド4dにおける端部領域Ae1付近の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。この変形例4のインクジェットヘッド4dは、
図6に示した本実施の形態のインクジェットヘッド4において、アクチュエータプレート42の代わりに、アクチュエータプレート42dを設けるようにしたものに対応している。
【0106】
このアクチュエータプレート42dでは、アクチュエータプレート42と同様に、端部領域Ae1,Ae2にそれぞれ、追加浮遊容量部が設けられている。具体的には
図15に示したように、端部領域Ae1には、追加浮遊容量部42C1dが設けられている。
【0107】
この追加浮遊容量部42C1dでは、追加浮遊容量部42C1(
図6参照)とは異なり、複数のダミー電極Edのうちの一部のダミー電極Edに、共通配線Wicおよび他の配線がいずれも接続されておらず、共通電位等の所定の電位が設定されていない。具体的には、
図15の例では、各ダミー壁Wdにおける両側面(側面S1,S2)上の一対のダミー電極Edとしての、ダミー電極Ed1,Ed2のうち、ダミー電極Ed1には共通配線Wicが共通接続される一方、ダミー電極Ed2には配線が接続されないようになっている。つまり、このようなダミー電極Ed2は、回路としては浮いた状態(オープン状態)に設定されている。
【0108】
このように、追加浮遊容量部内における複数のダミー電極Ed1のうちの一部のダミー電極Edが、所定の電位に設定するための配線に接続されておらず、オープン状態に設定されているようにしてもよい。この点は、実施の形態および他の変形例(変形例1~3,5)においても、同様である。
【0109】
(作用・効果)
このような構成の変形例4においても、アクチュエータプレート42dの端部領域Ae1,Ae2に、追加浮遊容量部を設けるようにしたので、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、この変形例4においても実施の形態と同様に、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0110】
また、特にこの変形例4では、前述した変形例1,2とは異なり、追加される浮遊容量Csの大きさが、実施の形態よりも少なくなることから、追加される浮遊容量Csの大きさを、より精密に調整することが可能となる。
【0111】
[変形例5]
(構成)
図16は、変形例5に係るインクジェットヘッド4eにおける端部領域Ae1付近の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。この変形例5のインクジェットヘッド4eは、
図6に示した本実施の形態のインクジェットヘッド4において、アクチュエータプレート42の代わりに、アクチュエータプレート42eを設けるようにしたものに対応している。
【0112】
このアクチュエータプレート42eでは、アクチュエータプレート42と同様に、端部領域Ae1,Ae2にそれぞれ、追加浮遊容量部が設けられている。具体的には
図16に示したように、端部領域Ae1には、追加浮遊容量部42C1eが設けられている。
【0113】
この追加浮遊容量部42C1eでは、追加浮遊容量部42C1(
図6参照)とは異なり、少なくとも1つのダミー電極Edが、個別電極Eaに接続されている個別配線Wiaおよび共通電極Ecに接続されている共通配線Wicとは異なる、他の配線を介して接地されている。具体的には、
図16の例では、追加浮遊容量部42C1e内の全てのダミー電極Edが、接地配線Wigを介して共通接続され、接地されている(グランドに接続されている)。換言すると、これらの各ダミー電極Edにおける電位は、接地配線Wigを介して、所定の電位としての接地電位(グランド電位)に設定されている。
【0114】
(作用・効果)
このような構成の変形例5においても、アクチュエータプレート42eの端部領域Ae1,Ae2に、追加浮遊容量部を設けるようにしたので、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、この変形例5においても実施の形態と同様に、回路規模の増大や無駄な電力消費を防止しつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0115】
また、特にこの変形例5では、追加浮遊容量部42C1e内における少なくとも1つのダミー電極Edが、個別配線Wiaおよび共通配線Wicとは異なる接地配線Wigを介して接地されているようにしたので、例えば以下のような効果を得ることも可能となる。すなわち、例えば、各共通電極Ecに所定の電圧を印加した場合(例えば、いわゆる「コモンドライブ」を行う場合)であっても、追加浮遊容量部42C1eによる浮遊容量Cs1L(
図7参照)の増加を、ダミー電極Edの配置自由度を損なわずに実現できるようになる。よって、この変形例5では、利便性を向上させつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0116】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0117】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタおよびインクジェットヘッドにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。また、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0118】
また、上記実施の形態等では基本的に、所定方向(X軸方向)に沿った一対の端部領域Ae1,Ae2の双方に、追加浮遊容量部が設けられている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、これら一対の端部領域Ae1,Ae2のうちの一方の端部領域にのみ、上記実施の形態等で説明した追加浮遊容量部が設けられているようにしてもよい。
【0119】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば上記実施の形態等では、アクチュエータプレートにおける各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドを例に挙げて説明した。ただし、この例には限られず、例えば、各吐出チャネルの延在方向に沿ってインク9を吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。
【0120】
更に、上記実施の形態等では、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッドにおいても、本開示を適用することが可能である。
【0121】
加えて、上記実施の形態等では、アクチュエータプレートの吐出領域Am内に形成された複数の溝(チャネルC1)として、所定方向(X軸方向)に沿って交互に配置された、複数の吐出溝(吐出チャネルC1e)と複数の非吐出溝(非吐出チャネルC1d)とが含まれている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、吐出領域Am内における複数の溝として、吐出溝のみが形成されている(非吐出溝が形成されていない)ようにしてもよい。また、アクチュエータプレートの吐出領域Am内に形成された駆動電極Eとしても、例えば、共通電極Ecおよび個別電極Eaのうちの、個別電極Eaのみが設けられている(共通電極Ecが設けられていない)ようにしてもよい。
【0122】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0123】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ1(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0124】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0125】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0126】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って、一対の端部領域と、前記一対の端部領域の間に位置する吐出領域と、を有するアクチュエータプレートと、
前記液体を吐出するための複数のノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
前記アクチュエータプレートは、
前記アクチュエータプレートの表面に形成され、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って並設された複数の溝と、
前記所定方向に沿って前記溝同士を区画する複数の駆動壁と、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の溝内に形成された個別電極と、
前記一対の端部領域のうちの少なくとも一方の端部領域に設けられていると共に、1または複数のダミー壁と、前記ダミー壁に形成された1または複数のダミー電極と、を含んで構成された追加浮遊容量部と
を有しており、
前記追加浮遊容量部は、前記吐出領域内において前記所定方向に沿って前記端部領域に隣接する隣接領域に位置する前記個別電極との間で生じる浮遊容量を増加させて、前記隣接領域付近での浮遊容量の不均一性を低減させる
ヘッドチップ。
(2)
前記複数の溝として、前記所定方向に沿って交互に配置された、複数の吐出溝と複数の非吐出溝とが含まれており、
前記複数の吐出溝内にそれぞれ、共通電極が形成されていると共に、前記複数の非吐出溝内にそれぞれ、前記個別電極が形成されており、
前記1または複数のダミー電極のうちの少なくとも1つのダミー電極における電位が、前記共通電極における電位と等しくなっている
上記(1)に記載のヘッドチップ。
(3)
前記複数の溝として、前記所定方向に沿って交互に配置された、複数の吐出溝と複数の非吐出溝とが含まれており、
前記複数の吐出溝内にそれぞれ、共通電極が形成されていると共に、前記複数の非吐出溝内にそれぞれ、前記個別電極が形成されており、
前記1または複数のダミー電極のうちの少なくとも1つのダミー電極が、前記個別電極および前記共通電極にそれぞれ接続されている配線とは異なる、他の配線を介して接地されている
上記(1)に記載のヘッドチップ。
(4)
前記ダミー壁が、前記所定方向に沿って対向する第1および第2の側面を有しており、
前記ダミー壁における前記第1および第2の側面にそれぞれ、前記ダミー電極が配置されていると共に、
前記第1および第2の側面における前記ダミー電極の各々に対して、所定の電位に設定するための配線が、共通接続されている
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(5)
前記ダミー壁が、前記所定方向に沿って対向する第1および第2の側面を有しており、
所定の電位に設定するための配線が接続された前記ダミー電極が、前記ダミー壁における前記第1および第2の側面と、前記第1および第2の側面同士を繋ぐ前記表面とをそれぞれ、覆うように配置されている
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(6)
前記端部領域では、前記ダミー壁によって区画されるダミー溝が形成されており、
所定の電位に設定するための配線が接続された前記ダミー電極が設けられている前記ダミー壁によって区画される、前記ダミー溝における前記所定方向に沿った幅が、前記吐出領域内の前記溝における前記所定方向に沿った幅よりも、小さい
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(7)
所定の電位に設定するための配線が接続された前記ダミー電極において、その表面の少なくとも一部の領域が、粗面となっている
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(8)
前記追加浮遊容量部において、前記所定方向に沿って、前記ダミー壁と、所定の電位に設定するための配線が接続された前記ダミー電極とがそれぞれ、複数設けられている
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(9)
前記所定方向に沿った前記一対の端部領域の双方に、前記追加浮遊容量部が設けられている
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(10)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のヘッドチップと、
前記ノズル孔から前記液体を噴射させる駆動部と
を備えた液体噴射ヘッド。
(11)
上記(10)に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0127】
1…プリンタ、10…筺体、11…印刷制御部、2a,2b…搬送機構、21…グリッドローラ、22…ピンチローラ、3(3Y,3M,3C,3K)…インクタンク、4(4Y,4M,4C,4K),4a~4e…インクジェットヘッド、41…ノズルプレート、42…アクチュエータプレート、42C1,42C1a~42C1e,42C2… 追加浮遊容量部、43…カバープレート、49…駆動部、50…インク供給管、6…走査機構、61a,61b…ガイドレール、62…キャリッジ、63…駆動機構、631a,631b…プーリ、632…無端ベルト、633…駆動モータ、9…インク、P…記録紙、d…搬送方向、Hn…ノズル孔、Sd(Sd1,Sd2,Sdd)…駆動信号、Vd…駆動電圧、C1…チャネル、C1e…吐出チャネル、C1d…非吐出チャネル、C2d… ダミーチャネル、W…駆動壁、Wd… ダミー壁、E…駆動電極、Ea…個別電極(アクティブ電極)、Ec…共通電極(コモン電極)、Ed(Ed1,Ed2)…ダミー電極、da…膨張方向、db…収縮方向、Dp…印刷データ、Ae1,Ae2… 端部領域、Am… 吐出領域(非端部領域)、Wic… 共通配線、Wia… 個別配線、Wig… 接地配線、C1R,C1L,C2R,C2L…容量、Cs1R,Cs1L,Cs2R,Cs2L… 浮遊容量、S1,S2… 側面、Su… 上面(表面)、Sr… 粗面、Vi… 吐出速度、La,Lc,Ld… チャネル幅。