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特許7382792再生装置、それを備える液圧駆動システム、及びその制御装置
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  • 特許-再生装置、それを備える液圧駆動システム、及びその制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】再生装置、それを備える液圧駆動システム、及びその制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/14 20060101AFI20231110BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20231110BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
F15B21/14 A
F15B11/00 B
E02F9/22 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019198528
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021071170
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】能勢 知道
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 勇人
(72)【発明者】
【氏名】村岡 英泰
(72)【発明者】
【氏名】木下 敦之
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-014215(JP,A)
【文献】特表2009-505013(JP,A)
【文献】特開2010-286074(JP,A)
【文献】特開2014-074433(JP,A)
【文献】特開2011-214598(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02620657(EP,A2)
【文献】国際公開第2017/056199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/00
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの一方のポートから排出される作動液の流量を制御する再生弁と、前記再生弁から前記シリンダの他方のポートに作動液を再生する流れを許容し、且つその逆方向の流れを阻止する逆流防止弁と、前記再生弁から出力される作動液の一部をタンクに排出する流量を制御する排出弁と、を含む再生装置と、
前記シリンダに供給する作動液を吐出する液圧ポンプと、
入力される流量指令に応じて前記液圧ポンプの吐出流量を制御する制御装置とを備え
前記再生弁は、前記排出弁から独立して流量を制御され
前記制御装置は、少なくとも2つの前記ポートの各ポート圧と前記再生弁の開度とによって前記逆流防止弁の前後差圧を算出し且つ算出された前後差圧に基づいて前記他方のポートに再生される再生流量を推定し、再生流量に基づいて吐出流量を補正する、液圧駆動システム。
【請求項2】
記液圧ポンプから前記シリンダに供給される作動液の方向を切換える方向制御弁を更に備え、
前記再生装置は、前記方向制御弁と前記シリンダとを繋ぐ通路に接続されている、請求項1に記載の液圧駆動システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記再生弁の開度と前記排出弁の開度との比である開口比に応じて前記逆流防止弁の前後差圧を算出する演算を変える、請求項に記載の液圧駆動システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記2つのポートの各ポート圧、前記再生弁の開度、前記排出弁の開度、及び前記逆流防止弁の開口面積の5つの値の各々を取捨選択することによって演算を切換える、請求項に記載の液圧駆動システム。
【請求項5】
シリンダに供給する作動液を吐出する液圧ポンプの吐出流量を変更する液圧駆動システムの制御装置であって、
前記シリンダの一方のポートから排出される作動液の流量を制御する再生弁と前記再生弁から前記シリンダの他方のポートに作動液を供給すべくその流れを許容し且つその逆方向の流れを阻止する逆流防止弁とを有する再生装置に関して、少なくとも2つの前記ポートの各ポート圧と前記再生弁の開度とによって前記逆流防止弁の前後圧の差圧を推定し、前記一方のポートから前記再生装置を介して前記他方のポートに再生される再生流量を差圧に基づいて推定し、再生流量に基づいて吐出流量を補正する、液圧駆動システムの制御装置。
【請求項6】
シリンダに供給する作動液を吐出する液圧ポンプと、
前記シリンダの一方のポートから排出される作動液の流量を制御する再生弁と前記再生弁から前記シリンダの他方のポートに作動液を供給すべくその流れを許容し且つその逆方向の流れを阻止する逆流防止弁とを有する再生装置と、
入力される流量指令に応じて前記液圧ポンプの吐出流量を変える制御装置とを備え、
前記制御装置は、少なくとも前記2つのポートの各ポート圧と前記再生弁の開度とによって前記逆流防止弁の前後圧の差圧を推定し、前記一方のポートから前記再生装置を介して前記他方のポートに再生される再生流量を差圧に基づいて推定し、推定した再生流量に基づいて吐出流量を補正する、液圧駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダの一方のポートから他方のポートに作動液を再生する再生装置、それを備える液圧駆動システム、及びその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械等の作業機械の液圧駆動システムは、アタッチメント、例えばバケットの自重エネルギーを再利用する機能を有しており、そのような液圧駆動システムとして例えば特許文献1のような油圧制御装置が知られている。油圧制御装置は、アームやブーム等のフロントパーツを動かすべくシリンダの一方のポートから他方のポートに作動油を再生することができ、それによって自重エネルギーを再利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-220356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械では、バケットの土砂積載量、及びフロントパーツの姿勢によって自重エネルギーが変化し、再生される再生流量が変化する。これにより、他方のポートへの再生流量が過剰になったり不足したりする。
【0005】
そこで本発明は、再生流量が過剰になったり不足したりすることを抑制できる再生装置、それを備える液圧駆動システム、及びその制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の再生装置は、シリンダの一方のポートから排出される作動液の流量を制御する再生弁と、前記再生弁から前記シリンダの他方のポートに作動液を再生する流れを許容し、且つその逆方向の流れを阻止する逆流防止弁と、前記再生弁から出力される作動液をタンクに排出する流量を制御する排出弁と、を備え、前記再生弁は、前記排出弁から独立して流量を制御されているものである。
【0007】
本発明によれば、シリンダの作動速度を再生弁によって制御し、且つ再生弁から他方のポートに流れる作動液の流量、即ち再生流量を排出弁によって調整することができる。これにより、シリンダの作動速度が早くなって再生流量が過剰に不足したり、シリンダの作動速度が遅くなって再生流量が過剰に多くなったりすることを抑制することができる。
【0008】
本発明の液圧駆動システムは、前述する再生装置と、前記シリンダに供給する作動液を吐出する液圧ポンプと、前記液圧ポンプから前記シリンダに供給される作動液の方向を切換える方向制御弁とを備え、前記再生装置は、前記方向制御弁と前記シリンダとを繋ぐ通路に接続されているものである。
【0009】
本発明によれば、作動液が方向制御弁を介さずに再生されるので、より多くの作動液を再生させることができる。
【0010】
本発明の液圧駆動システムは、前述する再生装置と、前記シリンダに供給する作動液を吐出する液圧ポンプと、入力される流量指令に応じて前記液圧ポンプの吐出流量を制御する制御装置とを更に備え、前記制御装置は、少なくとも2つの前記ポートの各ポート圧と前記再生弁の開度とによって前記逆流防止弁の前後差圧を算出し且つ算出された前後差圧に基づいて前記他方のポートに再生される再生流量を推定し、再生流量に基づいて吐出流量を補正するものである。
【0011】
本発明によれば、再生流量に応じて液圧ポンプの吐出流量を補正するので、再生時において液圧ポンプからシリンダに供給される作動液の流量を低減することができ、燃費性能を向上させることができる。また、再生時において液圧ポンプからシリンダに供給される作動液の流量が不足することを抑制できるので、シリンダを安定して動作させることができる。
【0012】
本発明の液圧駆動システムの制御装置は、シリンダに供給する作動液を吐出する液圧ポンプの吐出流量を変更する液圧駆動システムの制御装置であって、前記シリンダの一方のポートから他方のポートに作動液を再生する再生装置において前記他方のポートに再生される再生流量を推定し、再生流量に基づいて吐出流量を補正するものである。
【0013】
本発明によれば、再生流量に応じて液圧ポンプの吐出流量を補正するので、再生時において液圧ポンプからシリンダに供給される作動液の流量を低減することができ、燃費性能を向上させることができる。また、再生時において液圧ポンプからシリンダに供給される作動液の流量が不足することを抑制できるので、シリンダを安定して動作させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、再生流量が過剰になったり不足したりすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の液圧駆動システムを示す回路図である。
図2図1の液圧駆動システムの制御装置が実行する制御を示すブロック図である。
図3図1の液圧駆動システムの制御装置が実行する演算を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、第1及び第2実施形態の再生装置1、それを備える液圧駆動システム2、及びその制御装置13について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する再生装置1、液圧駆動システム2、及び制御装置13は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は、実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0017】
建設機械等の作業機械、例えば油圧ショベルは、その先端にアタッチメント、例えばバケットやブレーカを有しており、それをアーム及びブーム等から成るフロントパーツによって動かすことで様々な作業を行うことができる。また、油圧ショベルは、アームを作動させるべく図1に示すようなアームシリンダ3を有している。アームシリンダ3は、ヘッド側ポート3aに作動液が供給されると、ロッド側ポート3bから作動液(例えば、油)を排出させてロッド3cを前進させ、アームを下げる。他方、ロッド側ポート3bに作動液が供給されると、アームシリンダ3は、ヘッド側ポート3aから作動液を排出させてロッド3cを後退させ、アームを上げる。また、油圧ショベルには、アームシリンダ3に作動液を供給すべく液圧駆動システム2が備わっている。
【0018】
<液圧駆動システム>
液圧駆動システム2は、図1に示す通り、液圧ポンプ11と、制御弁12と、再生装置1と、制御装置13と、操作装置14とを備えている。液圧ポンプ11は、可変容量型の斜板ポンプであり、斜板11aを有している。斜板11aには、傾転機構16が設けられており、傾転機構16がそこに入力される傾転信号に応じた傾転角へと斜板11aを傾転させることによって、液圧ポンプ11の吐出流量を変更できる。このような機能を有する液圧ポンプ11は、エンジン又は電動機等の駆動源(図示せず)によって回転駆動され、斜板11aの傾転角に応じた吐出流量の作動液を方向制御弁12に吐出する。方向制御弁12は、液圧ポンプ11、タンク15、ヘッド側ポート3a、及びロッド側ポート3bに接続されており、方向制御弁12に入力される指令信号に応じてスプール12aを動かして液圧ポンプ11からアームシリンダ3に供給される作動液の流れを制御する。
【0019】
即ち、方向制御弁12では、スプール12aが第1オフセット位置A1に移動すると、液圧ポンプ11がロッド側ポート3bに接続され且つヘッド側ポート3aがタンク15に接続される。また、スプール12aが第2オフセット位置A2に移動すると、液圧ポンプ11がヘッド側ポート3aに接続され、ヘッド側ポート3aに作動液が供給される。他方、ロッド側ポート3bは、方向制御弁12において液圧ポンプ11及びタンク15の何れからも遮断され、後で詳述する再生装置1を介してヘッド側ポート3a及びタンク15に接続される。それ故、アームを下げる際にロッド側ポート(即ち、一方のポート)3bから排出する作動液をヘッド側ポート(即ち、他方のポート)3aに再生装置1を介して戻す、即ち再生することができる。なお、方向制御弁12は、必ずしも前述するような構成に限定されない、即ち、3位置以上に切替えたり、また5つ以上のポートを有したりするものであってもよい。前述のように液圧駆動システム2は、アームがアタッチメント等の自重によって下げられる際の自重エネルギーを再利用することができる。以下では、再生装置1の構成について説明する。
【0020】
<再生装置>
再生装置1は、方向制御弁12とアームシリンダ3とを繋ぐ各通路17,18にそれらを繋ぐようにして接続されている、即ち方向制御弁12の下流側に配置されている。更に詳細に説明すると、再生装置1は、再生弁21と、チェック弁22と、排出弁23とを備えている。再生弁21は、スプール12aが第2オフセット位置A2に移動した際においてロッド3cの速度を制御するための弁である。再生弁21は、例えばパイロット式の流量制御弁であり、ロッド側ポート3bと制御弁12とを繋ぐロッド側通路17に分岐するように接続されている。それ故、再生弁21には、スプール12aが第2オフセット位置A2に移動した際、ロッド側ポート3bから排出される作動液が導かれる。本実施形態では、ロッド側ポート3bから排出される作動液の略全流量が導かれる。再生弁21は、その開度によってロッド側ポート3bから排出される作動液の流量を調整できる、即ちロッド3cの前進速度を制御できる。また再生弁21には、チェック弁22が接続されている。
【0021】
逆流防止弁であるチェック弁22は、その出口側がヘッド側ポート3aと制御弁12とを繋ぐヘッド側通路18とに接続されている。また、チェック弁22は、再生弁21からヘッド側ポート3a(より詳しくは、ヘッド側通路18)への作動液の流れを許容し、その逆方向の流れ、即ちヘッド側ポート3aから再生弁21に向かう作動液の流れを阻止する。即ち、ロッド側ポート3bから排出される作動液をヘッド側ポート3aに再生することができる。また、再生装置1では、ヘッド側ポート3aに再生される作動液の流量を調整すべく排出弁23が再生弁21とチェック弁22との間に分岐するように接続されている。
【0022】
排出弁23は、例えばパイロット式の流量制御弁であり、出力側がタンク15に接続されている。即ち、排出弁23は、再生弁21から出力される作動液の一部をタンク15に排出し、且つその流量を制御する。これにより、チェック弁22を介してヘッド側ポート3aに導かれる再生流量を制御でき、過剰な流量の作動液がヘッド側ポート3aに再生されることを抑制することができる。また、アームシリンダ3の作動速度が速くなって再生流量が不足したり、またアームシリンダ3の作動速度が遅くなって再生流量が過剰になったりすることを抑制することができる。更に、排出弁23は、土を掘っている場合や自重エネルギーが利用しにくい場合等において、作動液をタンク15に排出してロッド側ポート3bの背圧を下げ、燃費効率や掘削効率を向上させることもできる。このような機能を有する再生装置1は、更に再生弁21及び排出弁23の開度を互いに独立して調整することができる、即ち再生弁21の流量を排出弁23から独立して制御することができる。そのような制御を行うべく再生装置1は、2つの電磁比例弁24,25を備えている。
【0023】
第1電磁比例弁24は、そこに入力される第1指令に応じた圧力の第1パイロット圧p1を再生弁21に出力し、再生弁21の開度である第1開度を第1指令に応じて調整する。また、第2電磁比例弁25もまた、そこに入力される第2指令に応じた圧力の第2パイロット圧p2を排出弁23に出力し、排出弁23の開度である第2開度を第2指令に応じて調整する。このように構成されている2つの電磁比例弁24,25は、制御装置13に電気的に接続されている。
【0024】
<制御装置>
制御装置13は、電磁比例弁24,25の他、傾転機構16、及び方向制御弁12に電気的に接続されており、それらに指令を出力して動作を制御する。また、制御装置13には、電気ジョイスティックや操作弁等の操作装置14が接続されており、操作装置14は、操作レバー(図示せず)を備えている。即ち、制御装置13は、操作レバーの操作方向及び操作量に応じて方向制御弁12、傾転機構16、及び電磁比例弁24,25の動きを制御する。また、制御装置13には、2つの圧力センサ31,32が電気的に接続されており、第1圧力センサ31によってヘッド側ポート3aのポート圧(即ち、ヘッド圧ph)を取得し、第2圧力センサ32によってロッド側ポート3bのポート圧(即ち、ロッド圧pr)を取得する。なお、各ポート圧ph,prは、各ポート3a,3bに繋がる通路等の配管圧のように各ポート圧ph,prに相当する圧力であってもよい。
【0025】
このように構成されている制御装置13は、操作レバーの操作量に応じて方向制御弁12を動かして作動液をポート3a,3bに供給してアームを上下させ、また操作レバーの操作量に応じた速度にてロッド3cを動かす。そして、アームを下げる際、制御装置13は、アタッチメントの自重エネルギーを再利用すべく、再生装置1を介してロッド側ポート3bから排出される作動液をヘッド側ポート3aに再生する。また、制御装置13は、ヘッド側ポート3aに再生される再生流量に応じて液圧ポンプ11の吐出流量を調整すべく以下のような制御を実行する。
【0026】
制御装置13は、図2に示すように、操作レバーの操作量(即ち、速度指令)を取得すると、その速度指令に応じた流量指令(ヘッド側ポート3aに流すべき流量)を演算する。例えば、制御装置13は、所定のポンプ特性と速度指令とに基づいて指令流量を演算する(図2の指令流量演算ブロック41参照)。また、制御装置13は、分岐点圧力pbとヘッド圧phに基づいてチェック弁22の前後圧の差である前後差圧(以下、単に「差圧」という)を演算する(図2の差圧演算ブロック42参照)。ここで分岐点圧力pbとは、再生弁21の出力側においてチェック弁22と排出弁23とに分岐する分岐点26の圧力である。そして、分岐点圧力pbは、図3に示すような演算に基づいて制御装置13によって算出される。
【0027】
即ち、制御装置13は、2つの圧力センサ31,32によってヘッド圧ph及びロッド圧prを取得する。また、制御装置13は、各電磁比例弁24,25に出力する第1指令及び第2指令と電磁比例弁24,25の出力特性に基づいてパイロット圧p1,p2を取得する。取得後、制御装置13は、パイロット圧p1,p2に基づいて第1開度及び第2開度を演算し(図3の開度演算ブロック51,52参照)、その後ヘッド圧ph、ロッド圧pr、チェック弁22の開口面積、第1開度、及び第2開度の5つの入力値に基づいて分岐点圧力pbを算出する。なお、チェック弁22の開口面積は、予め設定されている。
【0028】
分岐点圧力pbの算出方法について更に詳細に説明すると、制御装置13は、まず第1乃至第3演算式を夫々用いて分岐点圧力pbを算出する(図3の分岐点圧力演算ブロック53参照)。第1乃至第3演算式は、再生装置1に関して作成される互いに異なる演算モデルに基づいて分岐点圧力pbを算出する式であり、対応する演算モデルに応じて5つの入力値の各々が取捨選択される。また、制御装置13は、分岐点圧力pbの演算に並行して第1開度及び第2開度からそれらの比率である開口比を算出する(図3の開口比演算ブロック54)。次に、制御装置13は、算出される開口比に基づいて3つの演算式の算出結果に対して重み付けを決定し、決定した重み付けに応じて算出結果を足し合わせる(図3の分岐点圧力推定ブロック55参照)。そして、制御装置13は、足し合わされた値を分岐点圧力pbの推定値とし、この推定値を前述の通りチェック弁22の差圧の算出に用いる。
【0029】
即ち、制御装置13は、図2に示すように分岐点圧力pbの推定値からヘッド圧phを減算してチェック弁22における差圧を算出する(図2の差圧演算ブロック42参照)。その後、制御装置13は、その差圧と予め設定されるチェック弁22の開口面積とに基づいてチェック弁22を流れる再生流量を推定する(図2の再生流量推定ブロック43参照)。推定された再生流量には、調整ゲインが掛け合わされて調整される(図2の比例ゲイン44参照)。そして、算出された指令流量から調整した再生流量を減算し(図2の減算器45参照)、その減算値がポンプ流量指令とされる。制御装置13は、このポンプ流量指令に応じた傾転角を演算し、その傾転角に応じた傾転角指令を傾転機構16に出力する。
【0030】
このように液圧駆動システム2では、再生流量に応じて液圧ポンプ11の吐出流量が補正されるので、再生流量に応じた流量の作動液を液圧ポンプ11から吐出することができる。これにより、再生時において液圧ポンプ11からアームシリンダ3に供給される作動液の流量を低減することができ、エンジン等の燃費性能を向上させることができる。また、再生時において液圧ポンプ11からアームシリンダ3に供給される作動液の流量が過剰になったり不足したりすることを抑制できるので、アームシリンダ3を安定して動作させることができる。
【0031】
また、液圧駆動システム2では、開口比に応じて再生弁21からタンク15に流れる作動液とチェック弁22に流れる作動液の流量比率が異なり、チェック弁22の差圧を算出する演算(より詳しくは、分岐点圧力pbを推定すべくその重み付け)を開口比に応じて変えることによってより精度よくチェック弁22の差圧を推定することができる。これにより、液圧ポンプ11の吐出容量をより適切に調整することが可能であり、燃費性能を向上させ且つアームシリンダ3を安定して動作させることができる。また、制御装置13は、互いに異なる演算モデルに基づいて作成される3つの演算式によって分岐点圧力pbを演算するが、各演算式によって用いられる入力値が異なる、即ち5つの値の各々を取捨選択して用いられる。それ故、更により精度よく分岐点圧力pbを推定することができ、更に燃費性能を向上させ且つアームシリンダ3を安定して動作させることができる。また、再生装置1が方向制御弁12の下流側に配置されているので、作動液が方向制御弁12を介さずに再生されるので、より多くの作動液を再生することができる。また、下流側に配置されているので、再生流量を演算する際に方向制御弁12の圧損影響等を小さくするこができ、より精度よく再生流量を推定することができる。
【0032】
[その他の実施形態について]
本実施形態の液圧駆動システム2では、主にアームシリンダ3に再生装置1が適用されているが、これに限定されない。例えば、ブームシリンダに再生装置1が適用されてもよい。ブームシリンダに適用した場合、再生装置1は、ブームシリンダのヘッド側ポートから排出される作動液をロッド側ポートに再生する。その他、シリンダのロッドが重力の影響を受けて伸縮するような形態において、その自重エネルギーを再利用すべく再生装置1が設けられてもよい。
【0033】
また、本実施形態の液圧駆動システム2では、排出弁23が流量制御弁で構成されているが、メータアウト用の方向制御弁が排出弁23の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、分岐点圧力pbを推定すべく3つの演算式を用いて、それらの演算結果に対して重み付けして足し合わせている推定値としているが、必ずしもそのような方法で推定する必要はない。即ち、用いる演算式は、複数であってもよい。例えば、用いる演算式は、2つや4つ以上であってもよい。また、開口比に応じて用いる演算式が切換わるようにしてもよい。更に、必ずしも演算式の重み付けや演算式の切換えが行われる必要なく、1つ演算式だけを用いてその演算結果を分岐点圧力pbの推定値としてもよい。また、逆流防止弁は、チェック弁22に限定されない。例えば、逆流防止弁は、ロック弁等であってもよく、一方のポートから他方のポートに再生される作動液の流れを許容し、その逆方向の流れを阻止することができる弁であればよい。
【0035】
また、本実施形態の液圧駆動システム2では、パイロット圧p1,p2が各電磁比例弁24,25に出力する第1指令及び第2指令に基づいて算出されているが、各電磁比例弁24,25の出力側にパイロット圧センサ等を設けてパイロット圧p1,p2を制御装置13が取得するようにしてもよい。また、制御装置13は、必ずしも1つのコントローラで構成されている必要はない。例えば、各々が別体である液圧ポンプ11の流量制御を行うコントローラと、再生流量を推定するコントローラとで制御装置13が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 再生装置
2 液圧駆動システム
3 アームシリンダ
3a ヘッド側ポート
3b ロッド側ポート
3c ロッド
11 液圧ポンプ
13 制御装置
21 再生弁
22 チェック弁
23 排出弁
31 第1圧力センサ
32 第2圧力センサ
図1
図2
図3