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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/34 20060101AFI20231110BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20231110BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20231110BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20231110BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20231110BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C21D1/34 R
B21D24/00 M
F27B17/00 B
F27D11/02 C
C21D9/00 A
C21D1/18 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019203376
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021075760
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390001568
【氏名又は名称】昭和鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】桑山 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】相川 伸二
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/186599(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/186600(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/186601(WO,A1)
【文献】特開2014-034689(JP,A)
【文献】特開2006-147416(JP,A)
【文献】特開2015-230152(JP,A)
【文献】特開2015-229797(JP,A)
【文献】特開2015-229798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/02-1/84
B21D 22/00-26/14
F27B 1/00-21/14
F27D 7/00-15/02
C21D 9/00-9/44,9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間プレス用鋼板を収容する空間の水平面の周囲を包囲して配置される断熱材を含むブロックと、前記空間のうち前記熱間プレス用鋼板が配置され加熱される箇所の上方および下方に配置されて前記熱間プレス用鋼板を加熱する遠赤外線ヒータと、を有する加熱ユニットを含む遠赤外線式多段型加熱炉において、
前記遠赤外線ヒータを支持する複数のヒータ支持梁を備え、
各前記ヒータ支持梁は、セラミック部材を含み、
各前記ヒータ支持梁は、前記空間において前記セラミック部材からなり、
前記セラミック部材は、炭化ケイ素系セラミックスによって中空または中実に構成されており、
熱による前記ヒータ支持梁の長手方向への各前記ヒータ支持梁の伸縮が自在となるように各前記ヒータ支持梁の端部を支持する端部支持材をさらに備えている、熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項2】
前記端部支持材は、前記セラミック部材を、中間体を介して間接的に支持する、請求項1に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項3】
前記中間体は、前記セラミック部材の端部取り付けられた金属部材を含む、請求項2に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項4】
前記金属部材は、金属プレートであり、前記セラミック部材に差し込まれている、請求項3に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項5】
前記遠赤外線ヒータが前記熱間プレス用鋼板を加熱しているときの前記空間の温度である850℃~950℃において、前記セラミック部材の曲げ強度が前記金属部材の曲げ強度よりも高い、請求項3または請求項4に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項6】
前記金属部材と前記セラミック部材とがピンを介して連結されている、請求項3~請求項5の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項7】
前記金属部材および前記セラミック部材の少なくとも一方は、前記ピンと前記長手方向に相対移動可能となるように前記ピンが挿入されたピン孔を有し、前記長手方向における前記ピンと前記ピン孔との常温時の隙間は、前記空間が常温から前記遠赤外線ヒータによる前記熱間プレス用鋼板の加熱時の温度である850℃~950℃まで変化したときの前記ピンと前記ピン孔との相対変位量以上である、請求項6に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項8】
前記端部支持材は、前記セラミック部材を直接に支持している、請求項1に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項9】
前記セラミック部材は、中空に構成されており、
記セラミック部材の前記端部は、断熱材を含む蓋によって閉じられている、請求項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項10】
記端部支持材は、前記セラミック部材が貫通し前記セラミック部材を受ける貫通孔部を有し、
前記長手方向と直交する断面において、前記貫通孔部の大きさが、前記セラミック部材の大きさよりも大きい、請求項または請求項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項11】
前記端部支持材は、前記ブロックの外側に配置される、請求項1~請求項10の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項12】
前記遠赤外線ヒータは、遠赤外線放射セラミックスの焼結体である碍子本体が縦横に複数並んで面状に構成されるとともに、前記複数の碍子本体が、前記複数の碍子本体それぞれに形成された電熱線貫通孔に挿入された電熱線により互いに変位自在に連結されることによって可撓性を有する、請求項1~請求項11の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項13】
前記セラミック部材は、中空の矩形角管形状に形成されており、前記角管の長手方向に見て内周面および外周面が何れも矩形であり、且つ、前記角管の長手方向に見て縦長に形成されている、請求項1~請求項12の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【請求項14】
複数の前記ヒータ支持梁は、互いに一の方向へ離隔しつつ互いに平行に配置され、
前記一の方向と交差する他の方向へ向けて並んで設けられ、前記遠赤外線ヒータを支持する複数の第2ヒータ支持梁をさらに備え、
各前記第2ヒータ支持梁は、熱による前記第2ヒータ支持梁の長手方向への各前記第2ヒータ支持梁の伸縮が自在となるように複数の前記ヒータ支持梁によって支持されている、請求項1~請求項13の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉に関し、具体的には、熱間プレス用鋼板を所定の温度域(例えばAc3点以上950℃以下)に加熱する遠赤外線式多段型加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間プレス法(ホットスタンプ法ともいう)が自動車車体の構成部材のプレス成形法として近年用いられる。熱間プレス法では、プレス成形に供される熱間プレス用鋼板(ブランク)をAc3点以上の温度に加熱した直後にプレス金型により成形および急冷して焼入れる(ダイクエンチ;die quenchともいう)。これにより、所望の形状を有する高強度のプレス成形品が製造される。
【0003】
熱間プレス用鋼板を加熱するための加熱炉を用いることが、熱間プレス法により高強度の熱間プレス成形品を量産するために、必要になる。このような加熱炉に関する発明がこれまでにも提案される。
【0004】
多段型加熱炉(multi-stage heating furnace)が特許文献1に開示されている。この多段型加熱炉は、複数枚の熱間プレス用鋼板を収容するための複数の収容空間を備える。
【0005】
熱間プレス用鋼板を部位に依らずに均一にAc3点以上(例えば850~950℃)の高温域に急速に加熱すること、量産性を向上すること、および、設置面積を最小化することが、加熱炉に求められる。特許文献1に記載の加熱炉は、熱間プレス用鋼板の加熱源として、薄い扁平な面状の遠赤外線ヒータを備えている。この加熱炉は、以下に列記の特徴a~cを兼ね備えている。
(a)熱間プレス用鋼板を均一に加熱できる。
(b)上下方向への多段化(multistage)によるコンパクト化を図ることができる。
(c)薄型であり、熱間プレス用鋼板を両面から加熱できる。
【0006】
特許文献1に記載の遠赤外線ヒータは、多数の碍子(insulator)が縦横に並んでフレキシブルなパネルを構成するように、編み上げられた構造を有する。多数の碍子は、抵抗体である発熱導体(heating conductor)を収容する溝を有する。遠赤外線を放射する発熱導体が、これら溝の内部に挿入されて設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5990338号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱間プレス用鋼板の遠赤外線式加熱炉において、多段化により炉設置面積のコンパクト化を図り、さらに、薄型で両面加熱可能なフレキシブルヒータを用いて上下方向の加熱ユニットの配置ピッチを極小化し、一定の全高での段数を最大化することが求められている。このため、炉内でフレキシブルな遠赤外線ヒータを撓ませずに水平面形状を保つように、遠赤外線ヒータを支持する手段が必要である。
【0009】
この支持材は、遠赤外線ヒータによって高温に曝されるため、以下の特性が要求されている。
(1)850℃~950℃という高温の雰囲気で所定の曲げ強度を持つこと。
(2)850℃~950℃という高温の雰囲気で高温クリープ歪速度が充分に小さいこと。
(3)自由に熱膨張収縮が可能であり、支持材が受ける熱応力が十分に小さいこと。
(4)常温から950℃への昇温・降温プロセスにおいて熱衝撃に耐えること。
(5)極力小さい平面投影面積で遠赤外線ヒータを支持できること。
【0010】
特許文献1に記載の構成では、一つの遠赤外線ヒータを支持するのに耐熱合金製の金属プレートからなるヒータ支持材を複数並べて遠赤外線ヒータを下から支えている。金属プレートのヒータ支持材は、上記高温雰囲気下で高温クリープ歪みを生じるため、長期間の操業によって撓んでしまい、遠赤外線式のフレキシブルヒータを水平な面状に維持できないおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉において、加熱炉を長期に亘って操業した場合でも遠赤外線ヒータを支持する部材が撓むことをより確実に抑制できるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉を要旨とする。
【0013】
(1)熱間プレス用鋼板を収容する空間の水平面の周囲を包囲して配置される断熱材を含むブロックと、前記空間のうち前記熱間プレス用鋼板が配置され加熱される箇所の上方および下方に配置されて前記熱間プレス用鋼板を加熱する遠赤外線ヒータと、を有する加熱ユニットを含む遠赤外線式多段型加熱炉において、
前記遠赤外線ヒータを支持する複数のヒータ支持梁を備え、
各前記ヒータ支持梁は、セラミック部材を含み、
熱による前記ヒータ支持梁の長手方向への各前記ヒータ支持梁の伸縮が自在となるように各前記ヒータ支持梁の端部を支持する端部支持材をさらに備えている、熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0014】
(2)前記端部支持材は、前記セラミック部材を直接に、または、中間体を介して間接的に支持する、前記(1)に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0015】
(3)前記中間体は、前記ヒータ支持梁の前記端部に設けられ前記セラミック部材に取り付けられた金属部材を含む、前記(2)に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0016】
(4)前記金属部材は、金属プレートであり、前記セラミック部材に差し込まれている、前記(3)に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0017】
(5)前記遠赤外線ヒータが前記熱間プレス用鋼板を加熱しているときの前記空間の温度において、前記セラミック部材の曲げ強度が、前記金属部材の曲げ強度よりも高い、前記(3)または前記(4)に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0018】
(6)前記金属部材と前記セラミック部材とがピンを介して連結されている、前記(3)~前記(5)の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0019】
(7)前記金属部材および前記セラミック部材の少なくとも一方は、前記ピンと前記長手方向に相対移動可能となるように前記ピンが挿入されたピン孔を有し、前記長手方向における前記ピンと前記ピン孔との常温時の隙間は、前記空間が常温から前記遠赤外線ヒータによる前記熱間プレス用鋼板の加熱時の温度まで変化したときの前記ピンと前記ピン孔との相対変位量以上である、前記(6)に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0020】
(8)前記端部支持材は、前記セラミック部材を直接に支持しており、
前記セラミック部材の前記端部は、断熱材を含む蓋によって閉じられている、前記(2)に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0021】
(9)前記端部支持材は、前記セラミック部材を直接に支持しており、
前記端部支持材は、前記セラミック部材が貫通し前記セラミック部材を受ける貫通孔部を有し、
前記長手方向と直交する断面において、前記貫通孔部の大きさが、前記セラミック部材の大きさよりも大きい、前記(2)または前記(8)に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0022】
(10)前記端部支持材は、前記ブロックの外側に配置される、前記(1)~前記(9)の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0023】
(11)前記遠赤外線ヒータは、遠赤外線放射セラミックスの焼結体である碍子本体が縦横に複数並んで面状に構成されるとともに、前記複数の碍子本体が、前記複数の碍子本体それぞれに形成された電熱線貫通孔に挿入された電熱線により互いに変位自在に連結されることによって可撓性を有する、前記(1)~前記(10)の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0024】
(12)前記セラミック部材は、炭化ケイ素系セラミックスによって構成されている、前記(1)~前記(11)の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0025】
(13)前記セラミック部材は、角管形状である、前記(1)~前記(12)の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【0026】
(14)複数の前記ヒータ支持梁は、互いに一の方向へ離隔しつつ互いに平行に配置され、
前記一の方向と交差する他の方向へ向けて並んで設けられ、前記遠赤外線ヒータを支持する複数の第2ヒータ支持梁をさらに備え、
各前記第2ヒータ支持梁は、熱による前記第2ヒータ支持梁の長手方向への各前記第2ヒータ支持梁の伸縮が自在となるように複数の前記ヒータ支持梁によって支持されている、前記(1)~前記(13)の何れか1項に記載の熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、加熱炉を長期に亘って操業した場合でも遠赤外線ヒータを支持する部材が撓むことをより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1(a)はフレキシブル遠赤外線ヒータに用いられる碍子本体の平面図であり、図1(b)は碍子本体の正面断面図であり、図1(c)はフレキシブル遠赤外線ヒータの平面図であり、図1(d)は配列した碍子に電熱線を通してすだれ(bamboo blind)状に編み上げた状態を示す正面図であり、図1(e)は図1(c)の側面図であり、図1(f)は碍子本体を2分の1宛ずらして並べた状態を示す図である。
図2図2は、本発明に係る遠赤外線式多段型加熱炉の全体図であり、外装パネルや炉体フレームを示す説明図である。
図3図3は、本発明に係る遠赤外線式多段型加熱炉の説明図であり、図3(a)は、遠赤外線式多段型加熱炉の外観を示す説明図であり、図3(b)は、加熱ユニットを示す説明図であり、図3(c)は、図3(b)におけるA-A断面図であり、図3(d)は、蓋ブロックを外した状態の加熱ユニットを示す説明図であり、図3(e)は図3(b)におけるB-B断面図である。
図4図4は、遠赤外線式多段型加熱炉の説明図であり、一部の加熱ユニットを示す。
図5図5は、遠赤外線式多段型加熱炉の正面図である。
図6図6(a)は、加熱ユニットにおける遠赤外線ヒータのヒータ支持部材を示す説明図であり、図6(b)は、加熱ユニットの上面図であり、図6(c)は、遠赤外線ヒータと熱間プレス用鋼板の配置関係を示す説明図であり、図6(d)は、加熱ユニットにおける遠赤外線ヒータの他の支持ユニットを示す説明図である。
図7図7(a)は、第1ヒータ支持梁を第1ヒータ支持梁の長手方向に沿って切断した状態を示す縦断面図である。図7(b)は、図7(a)のC-C線に沿った断面図である。
図8図8(a)は、変形例に係る第1ヒータ支持梁の平面図である。図8(b)は、第1ヒータ支持梁の側面図である。
図9図9(a)は、図8(a)に示す第1ヒータ支持梁の一方の端部の拡大図である。図9(b)は、図9(a)のD-D線に沿う断面図である。
図10図10(a)は、ピン孔の変形例を説明するための図である。図10(b)は、ピンの配置の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
1.炉体フレーム12の構造
図2は、本発明に係る遠赤外線式多段型加熱炉10の全体図であり、外装パネル11a,11b,11cや炉体フレーム12を示す説明図である。
【0031】
図3は、本発明に係る遠赤外線式多段型加熱炉10の説明図であり、図3(a)は、遠赤外線式多段型加熱炉10の外観を示す説明図であり、図3(b)は、加熱ユニット13-1~13-6を示す説明図であり、図3(c)は、図3(b)におけるA-A断面図であり、図3(d)は、蓋ブロック16c,16dを外した状態の加熱ユニット13-1~13-6を示す説明図であり、図3(e)は図3(b)におけるB-B断面図である。
【0032】
図4は、遠赤外線式多段型加熱炉10の説明図であり、加熱ユニット13-1~13-6のうちの加熱ユニット13-1,13-2のみを示す。図5は、遠赤外線式多段型加熱炉10の正面図である。
【0033】
図2図5に示すように、遠赤外線式多段型加熱炉10は、加熱ユニット13-1~13-6と、天井ユニット19と、炉体フレーム12とを有する。
【0034】
加熱ユニット13-1~13-6は、いずれも、熱間プレス用鋼板15-1~15-6を収容する空間を有する。この空間は、その周囲を包囲して配置される断熱材製のブロック16a,16b,16c,16d,16e,16fにより、形成される。加熱ユニット13-1~13-6は、いずれも、この空間の内部に、略水平に支持された熱間プレス用鋼板15-1~15-6を収容する。
【0035】
加熱ユニット13-1~13-6は、上下方向へ積層して複数(図2図5に示す遠赤外線式多段型加熱炉10では6つ)設けられている。
【0036】
加熱ユニット13-1~13-6は遠赤外線ヒータ14-1~14-6を有し、天井ユニット19は遠赤外線ヒータ14-7を有する。遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、上記空間に収容された熱間プレス用鋼板15-1~15-6の上方および下方に配置される。すなわち、遠赤外線ヒータ14-1,14-2はそれぞれ熱間プレス用鋼板15-1の上方,下方に配置され、遠赤外線ヒータ14-2,14-3はそれぞれ熱間プレス用鋼板15-2の上方,下方に配置され、遠赤外線ヒータ14-3,14-4はそれぞれ熱間プレス用鋼板15-3の上方,下方に配置され、遠赤外線ヒータ14-4,14-5はそれぞれ熱間プレス用鋼板15-4の上方,下方に配置され、遠赤外線ヒータ14-5,14-6はそれぞれ熱間プレス用鋼板15-5の上方,下方に配置され、さらに、遠赤外線ヒータ14-6,14-7はそれぞれ熱間プレス用鋼板15-6の上方,下方に配置される。
【0037】
このように、遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、それぞれ、熱間プレス用鋼板15-1~15-6をその上方および下方から、例えばAc3変態点以上950℃以下に加熱する。すなわち、遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、熱間プレス用鋼板15-1~15-6が収容される空間のうち熱間プレス用鋼板15-1~15-6が配置され加熱される箇所の上方および下方に配置されて、熱間プレス用鋼板15-1~15-6を加熱する。
【0038】
遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、登録実用新案第3056522号明細書に開示されたフレキシブル面状赤外線ヒータ(以下、「フレキシブル遠赤外線ヒータ」と称することもある)である。
【0039】
遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、図1(a)~図1(f)に示すように、碍子本体1を有する。碍子本体1は、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2,TiO2,SiC,CoO,Si3N4等の遠赤外線放射セラミックスの焼結体である。遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、複数の碍子本体1が縦横に並んで面状に構成される。複数の碍子本体1は、複数の碍子本体1それぞれに形成された電熱線貫通孔2に挿入された電熱線4により、互いに変位自在に連結される。遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、可撓性を有するフレキシブル遠赤外線ヒータである。
【0040】
遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、碍子本体1の内部に設けられる電熱線4に電流を流すことにより碍子本体1の内部から発熱する。このため、遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、高い昇温速度を得られる。遠赤外線ヒータ14-1~14-7は両面加熱できるため、熱損失が小さい。遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、高密度の遠赤外線エネルギを放射するため、高い加熱効率を有する。遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、フレキシブルであるから、高温時の割れや変形のおそれがなく、小型から大型までその寸法も容易に設定できる。さらに、遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、薄型であり、さらに、熱間プレス用鋼板15-1~15-6の両面を加熱することができる。
【0041】
したがって、遠赤外線ヒータ14-1~14-7は、多段型加熱炉の各加熱ユニット13-1~13-6および天井ユニット19に配置されて高い加熱効率や優れた炉内温度制御性を要求されるヒータとして、好ましく用いられる。
【0042】
炉体フレーム12は、加熱ユニット13-1~13-6および天井ユニット19を取り囲んで配置される金属製(例えば炭素鋼製)のフレームである。
【0043】
図3(b)に示すように、加熱ユニット13-1~13-6における上記空間は、いずれも、水平面(平面視)において略矩形の外形を有する。加熱ユニット13-1~13-6は、いずれも、水平面内でこの空間の周囲を包囲する断熱材を含むブロック16a,16b,16c,16d,16e,16fを有する。
【0044】
加熱ユニット13-1~13-6は、いずれも、固定ブロック16a,16bと、固定ブロック16e,16fと、蓋ブロック16c,16dと、を有している。固定ブロック16a,16bは、矩形の外形のうちの対向する二辺に固定して配置される。固定ブロック16a,16bは、略直方体の外形を有する。固定ブロック16e,16fは、残りの対向する二辺に固定して配置される。固定ブロック16e,16fは、略直方体の外形を有する。蓋ブロック16c,16dは、固定ブロック16e,16fに係わり合うように開閉自在に配置される。
【0045】
蓋ブロック16c,16dは、ヒンジ機構、スライド機構等の開閉機構(図示しない)により開閉する。蓋ブロック16c,16dは、閉じた状態で、固定ブロック16e,16fの前面および上面と、固定ブロック16a,16bの長手方向の端面とに接触する。これにより、蓋ブロック16c,16dは、固定ブロック16a,16bおよび固定ブロック16e,16fとともに、加熱ユニット13-1~13-6の内部の空間を外部から断熱する。
【0046】
加熱ユニット13-1~13-6は、固定ブロック16a,16bおよび蓋ブロック16c,16dそれぞれの外周を取り囲んで固定ブロック16a,16bおよび蓋ブロック16c,16dそれぞれを保持する金属製(例えば鋼製)の炉殻(鉄皮)18を有する。
【0047】
例えば鋼製の台座17-1~17-7が、炉体フレーム12における各加熱ユニット13-1~13-6および天井ユニット19の配置高さと一致する高さに、例えば溶接や締結等の適宜手段により配置される。台座17-1~17-7は、固定ブロック16a,16bから伝わる熱により変形しない程度の耐熱性を有すればよく、鋼以外の金属材料により構成されていてもよい。
【0048】
加熱ユニット13-1~13-6および天井ユニット19における固定ブロック16a,16bは、炉体フレーム12との間に介在する台座17-1~17-7に支持(搭載)されて接触するものの、炉体フレーム12には接触しない。
【0049】
このように、稼働時に雰囲気温度が850~950℃に達する前記空間を有する加熱ユニット13-1~13-6および天井ユニット19は、台座17-1~17-7に接触するものの、炉体フレーム12には接触しない。このため、加熱ユニット13-1~13-6および天井ユニット19の熱が炉体フレーム12に伝導することが抑制される。したがって、炉体フレーム12の熱膨張が抑制される。
【0050】
例えば、遠赤外線式多段型加熱炉10の稼働時において、最上段の加熱ユニット13-6の高さ方向中央位置の高さにおける炉体フレーム12の変位量は、0.4~0.5mm程度である。このように、炉体フレーム12の熱膨張による変形が実質的に解消される。
【0051】
このため、炉体フレーム12に熱応力が生じなくなり、熱膨張や熱収縮による炉体フレーム12の変形、熱応力による繰り返しの負荷、操業の不安定、断熱材16である耐火物の寿命の低下、さらには、炉体フレーム12の亀裂等の損傷を防止でき、これにより、遠赤外線式多段型加熱炉10の保守費用の大幅な低減や稼働率の向上が図られる。
【0052】
2.遠赤外線ヒータ14-1の支持ユニット24-1,24-2
図6(a)は、加熱ユニット13-1における遠赤外線ヒータ14-1のヒータ支持部材(以下、単に「支持部材」という)24-1を示す説明図であり、図6(b)は、加熱ユニット13-1の上面図であり、図6(c)は、遠赤外線ヒータ14-1と熱間プレス用鋼板15-1の配置関係を示す説明図であり、図6(d)は、加熱ユニット13-1における遠赤外線ヒータ14-1の他の支持ユニット24-2を示す説明図である。
【0053】
図6(a)~図6(c)に示すように、遠赤外線ヒータ14-1は、支持ユニット24-1により水平に撓まないように支持される。
【0054】
支持ユニット24-1は、遠赤外線ヒータ14-1が載せられる第1ヒータ支持梁26と、第1ヒータ支持梁26の端部を支持する端部支持材27と、を有している。
【0055】
図7(a)は、第1ヒータ支持梁26を第1ヒータ支持梁26の長手方向Lに沿って切断した状態を示す縦断面図である。図7(b)は、図7(a)のC-C線に沿う断面図である。
【0056】
図6(a)~図6(d)に加えて図7(a)および図7(b)を参照して、第1ヒータ支持梁26は、セラミックを主成分とする、水平に配置された梁である。第1ヒータ支持梁26は、一の方向へ離隔しつつ互いに平行に複数本(図6(a)~図6(d)では4本)配置されている。第1ヒータ支持梁26は、平面視で上記一の方向と直交する長手方向Lに真っ直ぐに延びる棒状の部材である。遠赤外線ヒータ14-1は、4本の第1ヒータ支持梁26のセラミック部材41に搭載されて、略水平に配置される。遠赤外線ヒータ14-1は、水平面内で、固定ブロック16a,16b,16e,16fにより囲まれた領域の内部に、配置される。
【0057】
第1ヒータ支持梁26は、セラミック部材41と、セラミック部材41の端部41aに取り付けられた蓋42と、を有している。
【0058】
セラミック部材41は、炭化ケイ素系セラミックによって構成されていることが好ましい。炭化ケイ素系セラミック(シリコンカーバイド)の特性として、約1400℃を超える温度まで、機械特性が一貫して維持される。すなわち、加熱炉10の使用条件では、セラミック部材41の特性が実質的に変化せず、高温クリープ歪み等の経年劣化が極めて生じにくくされている。シリコンカーバイドの特性として、3.07~3.15g/cm程度の低い密度と、Hv≧22GPaの高硬度と、約380MPa~430MPa高いヤング率と、約120~200W/mKの高い熱伝導率と、が示される。
【0059】
セラミック部材41は、本実施形態では、所定の肉厚を有する管部材であり、角管形状に形成されている。より具体的には、本実施形態によるとセラミック部材41は、長手方向Lと直交する縦断面(図7(b)に示す断面)において、内周面41bおよび外周面41cが何れも矩形形状である。セラミック部材41は、長手方向Lと直交する断面において、上下に長細く、上下の長さが水平方向の長さよりも長くされている。これにより、鉛直方向荷重に対するセラミック部材41(第1ヒータ支持梁26)の断面二次モーメントが高くされており、鉛直方向荷重に対する曲げ剛性が高い。よって、第1ヒータ支持梁26の撓みが抑制されている。また、セラミック部材41が角管形状に形成されている。これにより、セラミック部材41の曲げ剛性を高くしつつ、セラミック部材41を軽量にできる。なお、セラミック部材41は、角管形状に限らず、丸管形状であってもよい。
【0060】
長手方向Lにおけるセラミック部材41の中間部は、加熱ユニット13-1の内部の空間に配置されて、遠赤外線ヒータ14-1の真下に配置されており、遠赤外線ヒータ14-1が載せられている。図示していないが、セラミック部材41の中間部の上部には、アルミナ等の絶縁性の碍子が載せられ、この碍子に遠赤外線ヒータ14-1が載せられることが好ましい。碍子は、例えば溝形の断面形状を有し、セラミック部材41の上端部に嵌め込まれてセラミック部材41に装着される構成が例示される。
【0061】
固定ブロック16e,16fに貫通穴29が形成されている。第1ヒータ支持梁26のセラミック部材41の両端部41a,41aは、この貫通穴29を貫通して、加熱ユニット13-1のうちの加熱される空間の外部に配置されている。
【0062】
なお、第1ヒータ支持梁26の構造は、遠赤外線ヒータ14-2~14-7を支持する構造にも同様に適用される。
【0063】
以上説明したように、遠赤外線ヒータ14-1を支持する第1ヒータ支持梁26にセラミック部材41が設けられている。セラミック部材41であれば、熱間プレス用鋼板15-1の加熱時における遠赤外線ヒータ14-1からの高熱に長期間に亘って曝されても、高温クリープ歪みを極めて少なくできる。特に、遠赤外線ヒータ14-1を耐熱合金製の梁で支持する場合と比べて、高温時の強度を格段に高くできる。よって、加熱炉10を長期間に亘って操業した場合でも、遠赤外線ヒータ14-1を支持する第1ヒータ支持梁26が撓むことをより確実に抑制できる。
【0064】
特に、セラミック部材41を炭化ケイ素系セラミックで構成することで、高温時におけるセラミック部材41の曲げ剛性を高くできる。よって、面状の遠赤外線ヒータ14-1が温度変化によって水平方向に熱膨張および熱収縮することに起因して第1ヒータ支持梁26のセラミック部材41に水平方向の荷重が曲げ荷重として作用しても、セラミック部材41が割れを生じることをより確実に抑制できる。
【0065】
セラミック部材41の両端部41a,41aは、閉じられていなくてもよいけれども、断熱材を含む蓋42によって閉じられていることが好ましい。蓋42は、セラミック部材41に固定されている。蓋42は、加熱ユニット13-1のうち加熱される空間の外部に配置されているため、高温には曝されない。よって、蓋42の材質は、大きな制限はない。蓋42は、セラミック部材41と同じ材質で形成されていてもよいし、グラスウール等の断熱材が埋め込まれたセラミック部材であってもよいし、グラスウール等の断熱材で構成されていてもよい。蓋42は、セラミック部材41の対応する端部41aを、完全に塞いでもよいし、セラミック部材41の内部と外部との間の気体の流動を抑制する程度に一部塞いでもよい。
【0066】
このように、蓋42が設けられていることで、セラミック部材41の内部に外気が侵入することが抑制される。よって、セラミック部材41の内側と外側とで熱交換による温度差が生じることを抑制でき、セラミック部材41の熱応力を低減できる。
【0067】
端部支持材27は、一対設けられており、第1ヒータ支持梁26の両端部41a,41aを支持している。各端部支持材27は例えばステンレス鋼からなるプレートであり、台座17-1に支持されている。一の端部支持材27は、固定ブロック16eに隣接して配置されており、他の端部支持材27は、固定ブロック16fに隣接して配置されている。
【0068】
端部支持材27は、断熱材である固定ブロック16a,16b,16e,16fにより囲まれた空間(鋼板収容領域)の外側に配置される。
【0069】
このように、端部支持材27は、固定ブロック16a,16b,16e,16fの外側で、複数本の第1ヒータ支持梁26を支持する。
【0070】
端部支持材27は、ブロック16a~16fの外側に配置されている。これにより、端部支持材27はブロック16a~16fの内側空間の高い熱に曝されずに済み、熱による歪みが生じることを抑制されている。
【0071】
各第1ヒータ支持梁26の両端部(セラミック部材41の各端部41a,41a)は、いずれも、端部支持材27に形成されたスリットまたは貫通孔部27a(図6(a)では、端部支持材27の上半分の図示を省略している)に隙間を有して嵌め込まれて支持される。より具体的には、端部支持材27の貫通孔部27aは、第1ヒータ支持梁26の数と同じ数(本実施形態では、4つ)形成されている。そして、各貫通孔部27aに、対応する第1ヒータ支持梁26のセラミック部材41の端部41aが嵌め込まれている。これにより、端部支持材27は、熱による第1ヒータ支持梁26の長手方向Lへの第1ヒータ支持梁26の伸縮が自在となるように第1ヒータ支持梁26の端部を支持している。すなわち、第1ヒータ支持梁26は、端部支持材27により、熱膨張または熱収縮により長手方向へ伸縮自在に、支持される。このため、温度変化に起因する熱応力が第1ヒータ支持梁26にはほとんど生じない。本実施形態では、端部支持材27の貫通孔部27aは、セラミック部材41と接触しており、セラミック部材41を直接に支持している。
【0072】
長手方向Lと直交する断面において、端部支持材27の貫通孔部27aの大きさは、セラミック部材41の外周面41cの大きさよりも大きい。このため、貫通孔部27aのうち、底部のみがセラミック部材41と接触する。このように、端部支持材27の貫通孔部27aがセラミック部材41を直接支持する構成であれば、第1ヒータ支持梁26の構成をより簡素にできる。また、貫通孔部27aの大きさが大きくされていることにより、セラミック部材41の熱膨張および熱収縮を端部支持材27が阻害してしまうことをより確実に抑制できる。
【0073】
本発明は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載の範囲において種々の変更が可能である。なお、以下では、上述の実施形態と異なる構成について主に説明し、同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0074】
例えば、上述の実施形態では、セラミック部材41が中空の管である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。セラミック部材41は、中空でなく中実であってもよい。
【0075】
[第2ヒータ支持梁28が設けられる変形例]
図6(d)に示すように、複数本(図6(d)では2本)の第2ヒータ支持梁28が、第1ヒータ支持梁26とともに、他の支持ユニット24-2を構成してもよい。複数本の第2ヒータ支持梁28は、複数の第1ヒータ支持梁26が並ぶ一の方向と交差(図示例では直交)する他の一の方向へ向けて並んで設けられる。第2ヒータ支持梁28は、セラミック部材41と同様のセラミック材または耐熱合金で構成されている。第2ヒータ支持梁28は、第1ヒータ支持梁26と協働して、遠赤外線ヒータ14-1を支持する。
【0076】
第2ヒータ支持梁28は、本変形例では、所定の肉厚を有する管部材であり、角管形状に形成されている。より具体的には、第2ヒータ支持梁28は、当該第2ヒータ支持梁28の長手方向と直交する断面において、内周面および外周面が何れも矩形形状である。第2ヒータ支持梁28は、上記断面において、上下に長細く、上下の長さが水平方向の長さよりも長くされている。これにより、鉛直方向荷重に対する第2ヒータ支持梁28の断面二次モーメントが高くされており、鉛直方向荷重に対する曲げ剛性が高い。よって、第2ヒータ支持梁28の撓みが抑制されている。
【0077】
第2ヒータ支持梁28には、第1ヒータ支持梁26と交差する箇所にスリット28aが形成されている。本変形例では、1つの第2ヒータ支持梁28に4つのスリット28aが形成されている。スリット28aには、第1ヒータ支持梁26が、第2ヒータ支持梁28の長手方向に隙間を有して嵌め込まれている。この構成によって、第2ヒータ支持梁28が第1ヒータ支持梁26に支持されている。これにより、第2ヒータ支持梁28は、第1ヒータ支持梁26により、熱膨張または熱収縮により第2ヒータ支持梁28の長手方向へ伸縮自在に、支持される。このため、温度変化に起因する熱応力が第2ヒータ支持梁28にはほとんど生じない。図示していないが、セラミック部材41の中間部には、アルミナ等の絶縁性の碍子が載せられ、この碍子に遠赤外線ヒータ14-1が載せられることが好ましい。
【0078】
[第1ヒータ支持梁の変形例]
図8(a)は、変形例に係る第1ヒータ支持梁26Aの平面図である。図8(b)は、第1ヒータ支持梁26Aの側面図である。図9(a)は、第1ヒータ支持梁26Aの一部の端部の拡大図である。図9(b)は、図9(a)のD-D線に沿う断面図である。
【0079】
図8(a)、図8(b)、図9(a)および図9(b)を参照して、第1ヒータ支持梁26Aは、セラミック部材41に加えて、中間体としての金属部材の一例である金属プレート43を有している。
【0080】
この変形例では、端部支持材27は、セラミック部材41を、金属プレート43を介して間接的に支持している。これにより、セラミック部材41は、端部支持材27と直接に接触せずに済む。よって、セラミック部材41から端部支持材27への熱損失をより小さくできる。また、金属プレート43は、セラミック部材41と端部支持材27との間に作用する外力に対する衝撃緩和部材として機能でき、セラミック部材41の破損を抑制できる。
【0081】
金属プレート43は、第1ヒータ支持梁26Aの端部に設けられセラミック部材41に取り付けられている。金属プレート43は、耐熱合金製で且つ所定の厚みを有する金属板を切断することで形成されている。金属プレート43は、セラミック部材41の両端41a,41aのそれぞれに設けられている。金属プレート43は、起立姿勢で配置されてセラミック部材41の長手方向Lに細長く形成されており、セラミック部材41の端部41aに差し込まれている。金属プレート43の一部(本変形例では、基端側の約半分)は、セラミック部材41の内側の空間に配置され、金属プレート43の残りの部分は、セラミック部材41から長手方向Lに突出している。金属プレート43のうち、セラミック部材41から突出している部分が、端部支持材27の貫通孔部27aに差し込まれてこの貫通孔部27aに支持されている。金属プレート43は、貫通孔部27aの底部に載せられており。長手方向Lへの熱による伸縮が自在となるように端部支持材27に支持されている。
【0082】
セラミック部材41の端部41aは、固定ブロック16e,16fに形成された貫通孔29に通されており、固定ブロック16e,16fとは接触しない程度の隙間を設けられている。
【0083】
本実施形態では、金属プレート43は、常温(20℃)時、および、熱間プレス用鋼板15-1の加熱時(最大950℃)の何れの場合においてもセラミック部材41とは直接接触しないように構成されている。具体的には、金属プレート43の肉厚方向において、セラミック部材41の内周面41bの寸法が、金属プレート43の肉厚よりも大きい。また、高さ方向(鉛直方向)において、セラミック部材41の内周面41bの寸法が、金属プレート43の寸法よりも大きい。なお、セラミック部材41の端部41aにおいて、金属プレート43とセラミック部材41との間の隙間に断熱材が充填されていてもよい。
【0084】
この変形例では、金属プレート43とセラミック部材41とがピン51,52を介して連結されている。この構成によると、セラミック部材41と異種材料である金属プレート43を簡素な構成で連結できる。
【0085】
ピン51,52は、例えば金属部材であり、丸軸状に形成されている。本実施形態では、長手方向Lに並ぶ2つのピン51,52が、金属プレート43とセラミック部材41とを連結している。各ピン51,52の両端部の外周面は、円筒状に形成されている。各ピン51,52の中間部の外周部には、雄ねじ部53が形成されている。一方、セラミック部材41の各端部41a,41aは、一方のピン51が貫通する一対のピン孔61,61と、他方のピン52が貫通する一対のピン孔62,62と、を有している。ピン孔61,61は、セラミック部材41の縦壁部分に形成されており、同軸に並んでいる。同様に、ピン孔62,62は、セラミック部材41の縦壁部分に形成されており、同軸に並んでいる。ピン孔61,61とピン孔62,62とは、長手方向Lに並んでいる。本変形例では、各ピン孔61,61,62,62は円筒状の内周面を有している。
【0086】
また、金属プレート43には、長手方向Lに並ぶ雌ねじ部71と雌ねじ部72とが形成されている。雌ねじ部71は、ピン孔61,61間に配置されている。雌ねじ部72は、ピン孔62,62間に配置されている。
【0087】
一方のピン51は、ピン孔61,61に通されているとともに、雌ねじ部71にねじ込まれている。他方のピン52は、ピン孔62,62に通されているとともに、雌ねじ部72にねじ込まれている。常温時、ピン孔61,61の内周面の直径が他方のピン52の円筒部分の直径よりも大きくされていることで、ピン孔61,61とは、長手方向Lに隙間をあけられている。同様に、常温時、ピン孔62,62の内周面の直径が一方のピン51の円筒部分の直径よりも大きくされていることで、ピン孔62,62とは、長手方向Lに隙間をあけられている。ピン孔61に関する上記の隙間とピン孔62に関する上記の隙間は、同じに設定されている。このように、セラミック部材41は、ピン51,52と長手方向Lに相対移動可能となるようにピン51,52が挿入されたピン孔61,61,62,62を有している。そして、長手方向Lにおけるピン51,52と対応するピン孔61,61,62,62との常温時の隙間は、加熱ユニット13-1内の空間が常温から遠赤外線ヒータ14-1による熱間プレス用鋼板15-1の加熱時の温度(最大950℃)まで変化したときの各ピン51,52と対応するピン孔61,61,62,62との相対変位量以上である。すなわち、ピン51,52は、熱間プレス用鋼板15-1の加熱時においても、ピン孔61,62を長手方向Lに押し付けないようにされている。
【0088】
このような隙間が設けられていることにより、熱間プレス用鋼板15-1の加熱時において、ピン51,52がセラミック部材41の対応するピン孔61,62の内周面に強く押し当てられてセラミック部材41が破損することを抑制できる。
【0089】
また、本変形例では、遠赤外線ヒータ14-1が熱間プレス用鋼板15-1を加熱しているときの加熱ユニット13-1内の空間の温度(最大950℃)において、セラミック部材41の曲げ強度が、金属プレート43の曲げ強度よりも高くされている。例えば、セラミック部材41の肉厚と金属プレート43の肉厚を適宜設定することで、このような曲げ強度の関係が成立するように構成されている。高温時の金属プレート43の曲げ強度は、想定する衝撃荷重の程度にも依存するが、セラミック部材41の曲げ強度の3分の1以下とするのが望ましい。なお、ここでいう曲げ強度とは、水平方向に作用する曲げ荷重をいう。この曲げ強度は、例えば、金属プレート43と端部支持材27との接触位置を支点とし、セラミック部材41の長手方向中心位置を力点とし、平面視で長手方向Lと直交する方向に荷重が作用したときの曲げ強度をいう。
【0090】
このような曲げ強度の関係とすることで、セラミック部材41に炉外部からの搬送装置や熱間プレス用鋼板15-1等のワークから何らかの衝撃荷重が作用した場合でも、矯正による補修が容易な金属プレート43が曲がることで高価なセラミック部材41の破損を抑制できる。
【0091】
なお、上述の変形例では、ピン孔61,61,62,62が丸孔である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。ピン孔の変形例を説明するための図10(a)に示すように、ピン孔61,62が、長手方向Lに細長い長孔であってもよい。
【0092】
また、上述の構成では、セラミック部材41にピン孔61,62が形成され、金属プレート43に雌ねじ部71,72が形成された構成を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、ピン51,52の配置の変形例を説明するための図10(b)に示すように、セラミック部材41と金属プレート43の双方にピン孔61,62を形成し、ピン51,52を配置してもよい。この場合も、ピン51,52と対応するピン孔61,62との隙間は、上述した関係となるように設定される。
【0093】
なお、上記の変形例では、セラミック部材41の端部41aに2つのピンが設けられる形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。セラミック部材41の端部41aに設けられるピン51,52の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、ピン51,52を用いずに、セラミック部材41の端部41aに金属プレート43を差し込むのみの構成としてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、金属プレート43がセラミック部材41の端部41aに差し込まれる構成を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、金属プレート43に代えて金属ブロックが用いられてもよいし、金属以外の材料で、セラミック部材41と端部支持材27とを繋ぐ中間体が構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、熱間プレス用鋼板の遠赤外線式多段型加熱炉として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 碍子本体
2 電熱線貫通孔
4 電熱線
10 遠赤外線式多段型加熱炉
13-1~13-6 加熱ユニット
14-1~14-7 遠赤外線ヒータ
15-1~15-6 熱間プレス用鋼板
16a~16f ブロック
26 第1ヒータ支持梁(ヒータ支持梁)
27 端部支持材
27a 端部支持材の貫通孔部
28 第2ヒータ支持梁
41 セラミック部材
41a ヒータ支持梁の端部
42 蓋
43 金属プレート(中間体、金属部材)
51,52 ピン
61,62 ピン孔
L 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10