(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】試験用燃料調合方法および装置
(51)【国際特許分類】
B01F 35/80 20220101AFI20231110BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20231110BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20231110BHJP
B01F 35/221 20220101ALI20231110BHJP
G01N 33/22 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B01F35/80
G01N1/28 Z
B01F23/40
B01F35/221
G01N33/22 B
(21)【出願番号】P 2019206048
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】507157528
【氏名又は名称】株式会社メイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 龍
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-097035(JP,A)
【文献】実開平05-007343(JP,U)
【文献】特開2017-154067(JP,A)
【文献】特開平05-042531(JP,A)
【文献】特開2015-213145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28
B01F 35/80 - 35/88
B01F 35/20 - 35/214
B01F 23/40 - 23/47
G01N 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
性状の異なる複数種の液体の標準燃料を目標とする性状に対応する所定の比率で混合して
所定性状の試験用の混合燃料を調製する試験用燃料調合方法であって、
調合容器内に前記複数種の標準燃料を種別ごとに順次採取するよう
流下させて注入する注入ステップと、
前記調合容器内に収容される前記複数種の標準燃料の
採取量分の正味重量を種別ごとに計測し出力する種別毎正味重量計測ステップと、
前記複数のうち特定の一種の標準燃料を前記調合容器内に採取するための第1の正味重量の目標値を、前記調合容器内に前記特定の一種の標準燃料が注入される第1の採取期間中に出力する第1の採取重量目標値出力ステップと、
前記第1の採取期間中に、前記特定の一種の標準燃料の正味重量が前記第1の正味重量の目標値に到達するまで、
開度可変の第1の注入バルブを介して前記特定の一種の標準燃料を前記調合容器内に注入させる一方、前記特定の一種の標準燃料の正味重量が前記第1の正味重量の目標値に到達するとき、前記
第1の注入バルブを介した前記調合容器内への前記特定の一種の標準燃料の注入を停止させる第1の注入量調節ステップと、
前記複数のうち他の一種の標準燃料を前記調合容器内に採取するための第2の正味重量の目標値を、前記調合容器内に前記他の一種の標準燃料が注入される第2の採取期間中に出力する第2の採取重量目標値出力ステップと、
前記第2の採取期間中に、前記他の一種の標準燃料の正味重量が前記第2の正味重量の目標値に到達するまで、
開度可変の第2の注入バルブを介して前記他の一種の標準燃料を前記調合容器内に注入させる一方、前記他の一種の標準燃料の正味重量が前記第2の正味重量の目標値に到達するとき、前記
第2の注入バルブを介した前記調合容器内への前記他の一種の標準燃料の注入を停止させる第2の注入量調節ステップと、を含
み、
前記第1の注入量調節ステップおよび前記第2の注入量調節ステップの各ステップでは、前記複数種のうち対応する種別の標準燃料についての採取量分の正味重量を基に、該採取量分の正味重量の計測値が前記第1または第2の正味重量の目標値より小さい種別ごとの予備の目標採取重量に達するまで前記第1または第2の注入バルブの開度を大きくして所定採取流量とする一方、該採取量分の正味重量の計測値が該予備の目標採取重量に達してから前記第1または第2の正味重量の目標値に達するまで前記第1または第2の注入バルブの開度を小さくして採取流量を制限することを特徴とする試験用燃料調合方法。
【請求項2】
前記種別毎正味重量計測ステップで、風袋消去可能なゼロリセット機能を有する電子はかりを用いて、前記複数種の標準燃料の正味重量を種別ごとに風袋消去しつつ計測することを特徴とする請求項1に記載の試験用燃料調合方法。
【請求項3】
前記種別毎正味重量計測ステップで、前記調合容器内に収容される前記複数種の標準燃料の正味重量を種別ごとに計測して表示出力し、
前記第1の採取重量目標値出力ステップで、前記第1の採取期間中に前記第1の正味重量の目標値を表示出力するとともに、
前記第2の採取重量目標値出力ステップで、前記第2の採取期間中に前記第2の正味重量の目標値を表示出力することを特徴とする請求項1または2に記載の試験用燃料調合方法。
【請求項4】
前記試験用の混合燃料が、火花点火エンジンのアンチノック性測試験用の燃料であることを特徴とする請求項1または2に記載の試験用燃料調合方法。
【請求項5】
性状の異なる複数種の液体の標準燃料を目標とする性状に対応する所定の比率で混合して
所定性状の試験用の混合燃料を調製する試験用燃料調合装置であって、
前記複数種の標準燃料を収容する調合容器と、
前記調合容器内に前記複数種の標準燃料を種別ごとに順次採取するよう
流下させて注入する注入手段と、
前記調合容器内に収容される前記複数種の標準燃料の
採取量分の正味重量を種別ごとに計測し出力する種別毎正味重量計測手段と、
前記複数のうち特定の一種の標準燃料を前記調合容器内に採取するための第1の正味重量の目標値が設定され、該第1の正味重量の目標値を前記調合容器内に前記特定の一種の標準燃料が注入される第1の採取期間中に出力する第1の採取重量目標値出力手段と、
前記第1の採取期間中に、前記特定の一種の標準燃料の正味重量が前記第1の正味重量の目標値に到達するまで、
開度可変の第1の注入バルブを介して前記特定の一種の標準燃料を前記調合容器内に注入させる一方、前記特定の一種の標準燃料の正味重量が前記第1の正味重量の目標値に到達するとき、前記
第1の注入バルブを介した前記調合容器内への前記特定の一種の標準燃料の注入を停止させる第1の注入量調節手段と、
前記複数のうち他の一種の標準燃料を前記調合容器内に採取するための第2の正味重量の目標値が設定され、該第2の正味重量の目標値を前記調合容器内に前記他の一種の標準燃料が注入される第2の採取期間中に出力する第2の採取重量目標値出力手段と、
前記第2の採取期間中に、前記他の一種の標準燃料の正味重量が前記第2の正味重量の目標値に到達するまで、
開度可変の第2の注入量調節手段を介して前記他の一種の標準燃料を前記調合容器内に注入させる一方、前記他の一種の標準燃料の正味重量が前記第2の正味重量の目標値に到達するとき、前記
第2の注入量調節手段を介した前記調合容器内への前記他の一種の標準燃料の注入を停止させる第2の注入量調節手段と、を備え、
前記第1の注入量調節手段および前記第2の注入量調節手段の各々が、前記複数種のうち対応する種別の標準燃料についての採取量分の正味重量を基に、該採取量分の正味重量の計測値が前記第1または第2の正味重量の目標値より小さい種別ごとの予備の目標採取重量に達するまで前記第1または第2の注入バルブの開度を大きくして所定採取流量とする一方、該採取量分の正味重量の計測値が該予備の目標採取重量に達してから前記第1または第2の正味重量の目標値に達するまで前記第1または第2の注入バルブの開度を小さくして採取流量を制限することを特徴とする試験用燃料調合装置。
【請求項6】
前記種別毎正味重量計測手段が、風袋消去可能なゼロリセット機能を有する電子はかりで構成されることを特徴とする請求項5に記載の試験用燃料調合装置。
【請求項7】
前記第1の注入量調節手段および前記第2の注入量調節手段は、それぞれニードル弁体を有する電気的駆動弁を含んでいることを特徴とする請求項5または6に記載の試験用燃料調合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験用燃料調合方法および装置に係り、特に、性状の異なる複数種の液体の標準燃料を目標とする性状に対応する比率で混合して試験用燃料を調製する試験用燃料調合方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体燃料の性状の測定試験等に標準燃料や点検燃料といった試験用燃料が使用されている。例えばJIS K2280「石油製品オクタン価、セタン価おおびセタン指数の求め方」には、ガソリンのオクタン価測定や軽油のセタン価測定に関する測定方法が規定されているが、そのオクタン価測定では、ASTM規格の規定条件で調整されたCFR(Cooperative Fuel Research)エンジンでの試験により、測定対象の燃料のノック強度(アンチノック性)をオクタン価が既知である正標準燃料のノック強度と比較することにより、測定結果が得られるようになっている。
【0003】
この試験に用いる正標準燃料(試験用燃料)は、オクタン価100以下の場合、アンチノック性の極めて高いイソオクタンの正標準燃料をオクタン価100の指標とし、アンチノック性の極めて低いヘプタン(n-ヘプタン)の正標準燃料をオクタン価0の指標として、これらを所要のオクタン価に対応する体積比率で混合することにより調製されており、そのオクタン価は、混合された燃料中のイソオクタンの体積分率(%)で表される。
【0004】
このような試験用燃料を調合する方法および装置として、例えば特許文献1には、複数種の液体燃料の試薬(以下、液体試薬という)を混合して目標の性状値と容量の試験用混合液を調製するために、液体試薬貯蔵タンクと、その貯蔵タンクに送気する送気配管と、送気配管に装着された圧力検出器およびバルブと、貯蔵タンク内の加圧されたエア圧力に応じて液体試薬を調合容器に輸送する輸送配管と、その輸送配管に設置された流量計およびバルブと、複数の流量計に接続し各液体試薬の流量および積算流量を算出する流量計測回路と、調合容器内の混合液の液面が容器口付近に達したことを検出する液面検出器と、調合容器内の混合液を撹拌する攪拌機とを備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の試験用燃料調合方法および装置にあっては、調合容器内に輸送され注入される各液体試薬(各種別の標準燃料)の積算流量が予め設定したその混合比に対応する容量に達すると、その液体試薬に対応するエア加圧用のバルブおよび液体輸送制御用のバルブを閉じる構成となっていたため、各液体試薬に対応する流量計の逐次計測値の誤差が積算された状態で、複数の流量計で計測された複数の液体試薬の積算流量の比率を基に、混合燃料の混合比が算出されることになっていた。
【0007】
そのため、複数の液体試薬の流量を計測する複数の流量計に高計測精度が要求されることで試験用燃料調合装置のコスト高を招くばかりか、複数の流量計間の計測精度のばらつきやそれぞれの計測精度の継時劣化を検出したり調整したりすることも困難であった。
【0008】
また、誤差を抑えた調合操作、例えば日本産業規格(JIS K 2280)や石油学会規格(JPI-5R-5)、ASTM規格等に記載される容量比によるブレンド手順に則した燃料調合を行おうとすると、通常のブレンド装置におけるビューレットで目盛り誤差が最大±0.1%の精度を要求されるが、その場合、調合容器への各種別の標準燃料の注入時にビューレットの管壁に標準燃料を残着しないよう、手間のかかる調合操作が要求されることになり、調合操作が容易でなかった。
【0009】
さらに、従来の試験用燃料調合方法および装置で前述の石油学会規格に則した調合と同等の精度を得るには、複数の液体輸送制御用のバルブの開閉時を含め、前述のように複数の流量計に高計測精度が要求されるため、液体試薬の調合容器内への注入速度を高めることが容易でなく、目標とする試験用燃料の性状および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることが困難であった。
【0010】
さらに、上記従来の試験用燃料調合方法および装置にあっては、送気配管や燃料チャージ配管、各試薬燃料の輸送配管等が複数組存在しおよび交差することから、装置構成の複雑化や装置サイズの大型化を招いてしまい、その点からのコスト高も招来されていた。
【0011】
本発明は、以上のような従来の未解決の課題を解決するものであり、調合操作を容易にし、かつ、目標とする試験用燃料の性状および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることのできる試験用燃料調合方法を実現し、併せて、その方法を実施する低コストの試験用燃料調合装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、性状の異なる複数種の液体の標準燃料を目標とする性状に対応する所定の比率で混合して試験用の混合燃料を調製する試験用燃料調合方法であって、調合容器内に前記複数種の標準燃料を種別ごとに順次採取するよう注入する注入ステップと、前記調合容器内に収容される前記複数種の標準燃料の正味重量を種別ごとに計測し出力する種別毎正味重量計測ステップと、前記複数のうち特定の一種の標準燃料を前記調合容器内に収容するための第1の正味重量の目標値を、前記調合容器内に前記特定の一種の標準燃料が注入される第1の採取期間中に出力する第1の採取重量目標値出力ステップと、前記第1の採取期間中に、前記特定の一種の標準燃料の正味重量が前記第1の正味重量の目標値に到達するまで、前記注入手段により前記特定の一種の標準燃料を前記調合容器内に注入させる一方、前記特定の一種の標準燃料の正味重量が前記第1の正味重量の目標値に到達するとき、前記注入手段による前記調合容器内への前記特定の一種の標準燃料の注入を停止させる第1の注入量調節ステップと、前記複数のうち他の一種の標準燃料を前記調合容器内に収容するための第2の正味重量の目標値を、前記調合容器内に前記他の一種の標準燃料が注入される第2の採取期間中に出力する第2の採取重量目標値出力ステップと、前記第2の採取期間中に、前記他の一種の標準燃料の正味重量が前記第2の正味重量の目標値に到達するまで、前記注入手段により前記他の一種の標準燃料を前記調合容器内に注入させる一方、前記他の一種の標準燃料の正味重量が前記第2の正味重量の目標値に到達するとき、前記注入手段による前記調合容器内への前記他の一種の標準燃料の注入を停止させる第2の注入量調節ステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
この構成により、本発明の試験用燃料調合方法では、調合容器内に複数種の標準燃料を所定比率で注入するために複数の流量計を使用せずに済み、計量後の複数種の燃料が注入管路内に残着しないようにするための手間のかかる調合操作が必要でなくなり、さらに、所定精度の質量混合を行うことから、目標とする試験用燃料の性状および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることのできる方法となる。
【0014】
本発明の試験用燃料調合方法は、前記種別毎正味重量計測ステップで、風袋消去可能なゼロリセット機能を有する電子はかりを用いて、前記複数種の標準燃料の正味重量を種別ごとに風袋消去しつつ計測する構成とすることができる。
【0015】
また、前記種別毎正味重量計測ステップで、前記調合容器内に収容される前記複数種の標準燃料の正味重量を種別ごとに計測して表示出力し、前記第1の採取重量目標値出力ステップで、前記第1の採取期間中に前記第1の正味重量の目標値を表示出力するとともに、前記第2の採取重量目標値出力ステップで、前記第2の採取期間中に前記第2の正味重量の目標値を表示出力する構成とすることもできる。
【0016】
本発明の試験用燃料調合方法は、前記試験用の混合燃料が、火花点火エンジンのアンチノック性測試験用の燃料である構成とすることができ、前記性状の異なる複数種の標準燃料として、イソオクタンの標準燃料およびn-ヘプタンの標準燃料を含んでいてもよい。
【0017】
本発明は、あるいは、上記課題を解決するために、性状の異なる複数種の液体の標準燃料を目標とする性状に対応する所定の比率で混合して試験用の混合燃料を調製する試験用燃料調合装置であって、前記複数種の標準燃料を収容する調合容器と、前記調合容器内に前記複数種の標準燃料を種別ごとに順次採取するよう注入する注入手段と、前記調合容器内に収容される前記複数種の標準燃料の正味重量を種別ごとに計測し出力する種別毎正味重量計測手段と、前記複数のうち特定の一種の標準燃料を前記調合容器内に収容するための第1の正味重量の目標値が設定され、該第1の正味重量の目標値を前記調合容器内に前記特定の一種の標準燃料が注入される第1の採取期間中に出力する第1の採取重量目標値出力手段と、前記第1の採取期間中に、前記特定の一種の標準燃料の正味重量が前記第1の正味重量の目標値に到達するまで、前記注入手段により前記特定の一種の標準燃料を前記調合容器内に注入させる一方、前記特定の一種の標準燃料の正味重量が前記第1の正味重量の目標値に到達するとき、前記注入手段による前記調合容器内への前記特定の一種の標準燃料の注入を停止させる第1の注入量調節手段と、前記複数のうち他の一種の標準燃料を前記調合容器内に収容するための第2の正味重量の目標値が設定され、該第2の正味重量の目標値を前記調合容器内に前記他の一種の標準燃料が注入される第2の採取期間中に出力する第2の採取重量目標値出力手段と、前記第2の採取期間中に、前記他の一種の標準燃料の正味重量が前記第2の正味重量の目標値に到達するまで、前記注入手段により前記他の一種の標準燃料を前記調合容器内に注入させる一方、前記他の一種の標準燃料の正味重量が前記第2の正味重量の目標値に到達するとき、前記注入手段による前記調合容器内への前記他の一種の標準燃料の注入を停止させる第2の注入量調節手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成により、本発明の試験用燃料調合装置では、本発明の試験用燃料調合方法を実施でき、目標とする試験用燃料の性状および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることのできる低コストの試験用燃料調合装置となる。
【0019】
本発明の試験用燃料調合装置において、前記種別毎正味重量計測手段は、前記調合容器内に収容される前記複数種の標準燃料の正味重量を種別ごとに計測して表示出力するものであってもよく、前記種別毎正味重量計測手段は、風袋消去可能なゼロリセット機能を有する電子はかりで構成されてもよい。
【0020】
本発明の試験用燃料調合装置において、前記第1の注入量調節手段および前記第2の注入量調節手段は、それぞれニードル弁体を有する電気的駆動弁を含んでいる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、調合操作を容易にし、かつ、目標とする試験用燃料の性状および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることのできる試験用燃料調合方法を実現し、併せて、その方法を実施する低コストの試験用燃料調合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る試験用燃料調合装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る試験用燃料調合方法における概略の手順を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る試験用燃料調合装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(一実施の形態)
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係る試験用燃料調合装置と同装置を用いて実施される試験用燃料調合方法を例示している。
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る試験用燃料調合装置および方法について説明する。
【0025】
まず、構成について説明する。
【0026】
本実施形態に係る試験用燃料調合装置10は、性状の異なる複数種の液体の標準燃料RF1、RF2を目標とする性状値(例えば、オクタン価)に対応する所定比率で混合し、試験用燃料(混合燃料)を調製するものである。
【0027】
ここにいう試験燃料は、火花点火エンジンのアンチノック性測試験用の燃料であり、性状が既知で互いに異なる複数種の標準燃料、例えばイソオクタンの標準燃料RF1とn-ヘプタン(ノルマルヘプタン)の標準燃料RF2と、を混合したものである。
【0028】
この試験用燃料調合装置10は、その本体ケース10M内に、複数種の標準燃料RF1、RF2をそれぞれ採取し収容することができる調合容器11と、調合容器11内に複数種の標準燃料RF1、RF2を種別ごとに順次採取するよう注入する注入手段12とを具備している。
【0029】
調合容器11は、上端の開口、下方側が大径となる段付きの周壁および略平坦な底壁(それぞれ符号なし)を有する定量容器で、イソオクタンの標準燃料RF1とn-ヘプタン(ノルマルヘプタン)の標準燃料RF2とを含んだ混合燃料を、所定量、例えば500ml(ミリリットル;併せてcm3を用いる)以上に収容することができる。
【0030】
注入手段12は、下部タンクT11、T12、汲上ポンプP11、P12、図示しないポンプ駆動回路、汲み上げ配管L11、L12、上部タンクT21、T22、注入バルブV21、V22、注入配管L21、L22、バルブ操作ノブKv1、Kv2を含んで構成されている。
【0031】
下部タンクT11、T12は、それぞれ所定量、例えば18リットルの標準燃料RF1、RF2を収容し貯留する燃料種別ごとの可搬式の燃料缶である。これら下部タンクT11、T12は、本体ケース10Mの下段側左右の開閉扉31、32を開く(
図1中では開閉扉32を開放状態で示す)ことで、交換可能である。
【0032】
また、調合容器11は、本体ケース10Mの中段の左右の透明扉33、34を開くことで、出し入れ可能である。
図1中では、調合容器11は左右の中央に配置されているが、一方側に寄せた配置とし、他方側に撹拌装置を配置してもよい。
【0033】
汲上ポンプP11、P12は、図示しないポンプ駆動回路によって駆動されて、それぞれ対応する下部タンクT11、T12から上部タンクT21、T22に標準燃料RF1、RF2を汲み上げることができるポンプ、例えばギヤポンプで構成されている。
【0034】
上部タンクT21、T22は、例えば下部タンクT11、T12よりわずかに容積が大きい略密閉タンクで、その上部にいわゆる息抜きバルブ(エアベントバルブ)Va1、Va2が設置されることで、内部に大気圧が導入可能になっている。
【0035】
注入バルブV21、V22は、対応するバルブ操作ノブKv1、Kv2により手動操作で開弁および閉弁動作を制御される手動操作式の流量調整弁で、詳細を図示しないが、例えば弁座に対し係合および離脱するテーパ面を有するニードル弁体を含んでいる。
【0036】
試験用燃料調合装置10は、さらに、風袋消去(「風袋引き」ともいう)可能なゼロリセット機能を有する電子はかり13と、採取重量目標値表示用の複数のフラットパネル14A、14Bとを具備している。複数のフラットパネル14A、14Bは、表示切換えが可能な単一の表示器で構成されてもよい。
【0037】
電子はかり13は、マイクロコンピューターを内蔵することで、いわゆるゼロ点調整、感度調整、風袋消去等の操作ができるようになっている。
【0038】
具体的には、電子はかり13は、負荷される重量を例えば公知のロードセルや電磁平衡はかりのような荷重センサで計測し、そのセンサ出力に対しノイズ成分除去のフィルタ処理等を行うことで、所要の分解能の秤量信号を出力できるように構成されたものである。また、電子はかり13は、調合容器11の風袋重量と複数種の標準燃料RF1、RF2を含んだ混合燃料の採取量分の正味重量との総和より大きい秤量レンジを有するワイドレンジのものである。電子はかり13としては、例えば秤量レンジ600gで最小表示0.05gが可能な株式会社島津製作所製のELB600を好適に用いることができる。
【0039】
本実施形態では、JIS K2280-2:2018(6.3)に規定される「正標準燃料の質量混合」の手順に従って、複数種の標準燃料RF1、RF2の密度を予め測定した上で、それらの密度と所要の性状値であるオクタン価を基に、必要となる混合成分のそれぞれの質量を計算し、容量基準で±0.2%のブレンド誤差内となるような試験用燃料を質量混合により調製できるようにしている。
【0040】
具体的には、電子はかり13は、風袋消去要求スイッチ13aを押下操作することで、その操作時の荷重を風袋重量として風袋消去するゼロリセット機能もしくはテアリング(taring)機能を有する秤量制御回路を内蔵しており、複数種の標準燃料RF1、RF2を注入手段12によって調合容器11内に種別ごとの採取・注入を行う際に、手動で風袋消去を実行させることで、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとに採取中の種別についての正味重量を計測させることができる種別毎正味重量計測手段となっている。
【0041】
フラットパネル14A、14Bは、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとの正味重量を表示する表示パネル(採取重量目標値出力手段)であるが、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとの正味重量を、単に上下2段にまたは左右に並べて表示する単一の表示パネルとして構成されてもよいし、電子はかり13での風袋消去に略同期するような表示切換えを実行し得るようなものであってもよい。
【0042】
本実施形態の試験用燃料調合装置10は、さらに、燃料調合の条件設定のための設定器15を具備している。
【0043】
この設定器15は、調合容器11内で調合する試験用燃料の調合量(混合液の量)と、目標とする性状値、例えばリサーチオクタン価(RON)と、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別(2種以上でもよい)およびその種別ごとの採取(調合容器11内への注入)の順序、前述の風袋消去の実行条件等をそれぞれ設定入力可能な操作入力デバイス15aと、コンピュータ構成の演算処理部15bとを有している。
【0044】
操作入力デバイス15aは、キーボードやタッチパネル型の操作入力デバイスで構成され、演算処理部15bは、CPU、ROM、RAM等に加えて、小型の記憶デバイスを内蔵しており、ROM等に予め格納された所定の制御プログラムを実行することで、各種の設定値や採取の手順等を記憶したり、試験用燃料の調合量と調合後のオクタン価が設定されたとき、それらの設定入力値から算出可能な複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとの採取重量(採取量に対応する正味重量)の目標値を算出したりするようになっている。算出結果は、所定の形式で記憶デバイスに記憶格納される。
【0045】
例えば、調合量Qが500[cm3]で、目標とする調合後のオクタン価が90(RON=90)である場合、イソオクタンの標準燃料RF1の目標採取重量q1[g]とn-ヘプタンの標準燃料RF2の目標採取重量q2[g]とは、イソオクタンの密度ρ1を0.691g/cm3(at20℃)、n-ヘプタンの密度ρ2を0.684g/cm3(at20℃)と仮定すると、
q1=Q×(RON/100)×ρ1=310.95[g] ・・・式(1)
q2=Q×(1-RON/100)×ρ2=34.2[g] ・・・式(2)
RON/100=q1/(q1+q2)・・・式(3)
として算出することができ、設定された調合量Qおよびオクタン価RONの設定値入力に対応して採取量q1、q2を算出可能になっている。
【0046】
調合時には、設定器15で設定された各種パラメータと電子はかり13からの秤量信号とに応じて、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとに注入バルブV21、V22の開閉制御をバルブ操作ノブKv1、Kv2で行うことにより、複数種の標準燃料RF1、RF2の調合容器11内への採取量を手動で制御することができる。
【0047】
また、電子はかり13による重量計測値の変化に応じて、イソオクタンの標準燃料RF1側の注入バルブV21を徐々に開弁させて標準燃料RF1を調合容器11に採取し、その重量計測値が標準燃料RF1の目標採取重量q1に近づくと、注入バルブV21を徐々に閉弁させて、目標採取重量q1に達する時点で注入バルブV21が全閉状態になるように注入バルブV21の開度をバルブ操作ノブKv1で制御することができる。
【0048】
同様に、電子はかり13による重量計測値の変化に応じて、n-ヘプタンの標準燃料RF2側のバルブV22を徐々に開弁させて標準燃料RF2を調合容器11に採取し、その重量計測値が標準燃料RF2の目標採取重量q2に近づくと、注入バルブV22を徐々に閉弁させて、目標採取重量q2に達する時点で注入バルブV22が全閉状態になるように注入バルブV22の開度をバルブ操作ノブKv2で制御することができる。
【0049】
さらに、調合を開始するとき、電子はかり13でデジタル表示される重量測定値をチェックして、調合容器11の重量分の計測値をゼロにリセットする風袋消去の処理を実行することができ、複数種の標準燃料RF1、RF2のうち先行して採取される標準燃料RF1の採取が完了する時点で、風袋消去要求スイッチ13aを押下することで、電子はかり13に前述の風袋消去を実行させることができる。もっとも、電子はかり13の内蔵機能で所定時間後または所定時間ごとの自動的なテアリングが可能であれば、その内蔵機能で風袋消去の要求操作を代用し手動による要求操作を省略してもよい。
【0050】
特定の一種の標準燃料RF1に対応するフラットパネル14Aは、電子はかり13のデジタル表示パネル13bに対して、その標準燃料RF1を貯留する下部タンクT11および上部タンクT21側に配置され、他の一種の標準燃料RF2に対応するフラットパネル14Bは、電子はかり13のデジタル表示パネル13bに対し、他の一種の標準燃料RF2を貯留する下部タンクT12および上部タンクT22側に配置されており、注入バルブV21、V22のバルブ操作ノブKv1、Kv2のいずれか一方を操作する際に対応するフラットパネル14Aまたは14Bがその一方側に位置するようになっている。
【0051】
よって、電子はかり13で計測している特定の一種の標準燃料RF1(またはRF2)を調合容器11内に収容するための正味重量の目標値q1(またはq2)が予め設定済みであるとき、調合容器11内に特定の一種の標準燃料RF1(またはRF2)が注入される採取期間中に、片方のフラットパネル14A(または14B)により正味重量の目標値q1(またはq2)を表示させることができる。
【0052】
すなわち、フラットパネル14Aは、特定の一種の標準燃料RF1を調合容器11内に採取するための目標採取重量q1(第1の正味重量の目標値)が予め設定された状態下で、調合容器11内に特定の一種の標準燃料RF1が採取されるよう注入される第1の採取期間中に、目標採取重量q1を表示する第1の採取重量目標値出力手段を構成している。また、フラットパネル14Bは、複数のうち他の一種の標準燃料RF2を調合容器11内に採取するための目標採取重量q2(第2の正味重量の目標値)が予め設定された状態下で、調合容器11内に他の一種の標準燃料RF2が採取されるよう注入される第2の採取期間中に、目標採取重量q2を表示する第2の採取重量目標値出力手段を構成している。
【0053】
ここでのフラットパネル14A、14Bによる複数種の標準燃料RF1、RF2の正味重量の表示は、固定表示であり、フラットパネル14A、14Bは、表示器でもよいが、目標値を記載したシートやパネルを差し替える方式とすることができる。
【0054】
上部タンクT21、T22は、内部の液面の高さを目盛線で目測可能なレベルゲージG1、G2と、補充警報レベル検出器D1、D2とをそれぞれに装着しており、最低複数回、例えば2回分の調合が可能な最低残量に達すると、下部タンクT11、T12からの標準燃料RF1、RF2の汲み上げ(補充)が必要であることを警報可能になっている。
【0055】
燃料補充時には、図示しないポンプ駆動回路を作動させて汲上ポンプP11、P12を選択的に作動させ、試験用燃料調合装置10による試験用燃料の1回の調合に使用する複数種の標準燃料RF1、RF2の採取量を汲上げ量の単位として、所定回数の調合ごとにその回数分の採取量に相当する複数種の標準燃料RF1、RF2を上部タンクT21、T22に汲み上げるポンプ作動制御を実行することができる。
【0056】
さらに、注入手段12は、前述の第1の採取期間中に、バルブ操作ノブKv1により特定の一種の標準燃料RF1の正味重量が第1の正味重量の目標値q1に到達するまで、特定の一種の標準燃料RF1を調合容器11内に注入させ、特定の一種の標準燃料RF1の正味重量q1が第1の正味重量の目標値q1に到達するとき、調合容器11内への特定の一種の標準燃料RF1の注入を停止させることができる第1の注入量調節手段を構成するとともに、前述の第2の採取期間中に、バルブ操作ノブKv2により他の一種の標準燃料RF2の正味重量が第2の正味重量の目標値q2に到達するまで、他の一種の標準燃料RF2を調合容器11内に注入させ、他の一種の標準燃料RF2の正味重量が第2の正味重量の目標値q2に到達するとき、調合容器11内への他の一種の標準燃料RF2の注入を停止させることができる第2の注入量調節手段を構成している。
【0057】
このように構成された本実施形態の試験用燃料調合装置10は、調合容器11内に収容される複数種の標準燃料RF1、RF2の正味重量を種別ごとに電子はかり13により計測してその計測値(秤量値)を出力することができる。
【0058】
そして、種別毎正味重量計測手段である電子はかり13が、調合容器11内に収容される複数種の標準燃料RF1、RF2の正味重量q1、q2を種別ごとに計測して表示出力し、第1、第2の採取重量目標値出力手段であるフラットパネル14A、14Bが、第1の採取期間中に第1の正味重量の目標値q1を表示するとともに、第2の採取期間中に第2の正味重量の目標値q2を表示する。
【0059】
前述のとおり、第1の注入量調節手段および第2の注入量調節手段を構成する注入手段12は、それぞれ図示しないニードル弁体を有しているので、標準燃料RF1、RF2の採取量の微調整が可能である。
【0060】
なお、本実施形態では、リサーチオクタン価が100以下の試験用燃料を調合することとしたので、イソオクタンの標準燃料RF1とn-ヘプタンの標準燃料RF2を混合させるものとして説明したが、100超のオクタン価の試験用燃料を調合する場合にはイソオクタンと四エチル鉛またはトルエンとを混合させたもの(トルエン系副標準燃料)とすることができる。
【0061】
また、本発明は、セタン価その他の試験用の燃料を調合する場合にも適用でき、2種類でなく、性状値が既知の多種(3種以上)の標準燃料を混合して所望する性状値の試験用燃料を調合する場合にも適用可能である。
【0062】
次に、本発明に係る試験用燃料調合方法の一実施形態について説明する。
【0063】
図2は、上述の試験用燃料調合装置10で実行される一実施形態の試験用燃料調合方法の概略手順を示している。
【0064】
同図に示すように、まず、標準燃料RF1、RF2の採取量の算出のために、これらを含む混合燃料の調合量が決まれば、設定器15に、その調合量Q[ml]を入力し、調合するオクタン価が決まれば、そのオクタン価(RON)を入力する(ステップS11)。
【0065】
そして、設定器15により、調合量Q[ml]およびRON[%]の設定値入力に対応して、標準燃料(図中「試料」)ごとの採取量相当の正味重量の目標値を、目標採取重量q1、q2として、例えば前述の式(1)、(2)で算出させる(ステップS12)。
【0066】
なお、その算出に先立って、前述の標準燃料RF1、RF2の密度ρ1、ρ2は、予め測定するかそれぞれの測定値を取得しておく必要がある。また、調合開始時か調合容器11を電子はかり13上に設置する時点には、電子はかり13の秤量信号をチェックして調合容器11の重量分の計測値をゼロにリセットする処理を実行し、風袋消去状態としておく必要がある。
【0067】
また、イソオクタンの標準燃料RF1の採取量に対応する正味重量の目標値である目標採取重量q1[g]を、フラットパネル14Aに表示させておく(ステップS13)。
【0068】
次いで、風袋を消去した電子はかり13の秤量信号(重量計測値)の変化に応じ、イソオクタンの標準燃料RF1側の注入バルブV21を徐々に開弁させて標準燃料RF1を調合容器11に採取していく。また、この採取期間中、標準燃料RF1の目標採取重量q1をフラットパネル表示器14Aに表示させおく。
【0069】
そして、電子はかり13の重量計測値が最終的な目標採取重量q1より小さい予備の目標採取重量q1´に達するまでは所定採取流量とし(ステップS15でNOの場合)、その重量計測値が予備の目標採取重量q1´に達すると(ステップS15でYESの場合)、重量計測値が最終的な目標採取重量q1に達するまで、注入バルブV21の開度を徐々に小さくする採取量制限制御を実行する(ステップS16、S17でNOの場合)。
【0070】
ここでの予備の目標採取重量q1´は、最終的な目標採取重量q1より小さいが目標採取重量q1に近い値であり、重量計測値がこの予備の目標採取重量q1´に達する段階では上部タンクT21から注入バルブV21を介して流下させる燃料の流量をその注入バルブV21のバルブ操作ノブKv1によって徐々に(段階的でもよい)制限するのが望ましく、注入バルブV21の注意深い操作が必要になったことを知らせる契機となる採取重量である。したがって、この予備の目標採取重量q1´に達した状態を操作者に報知する警告音出力や注意表示画像等の画面出力を実行することで、バルブ操作ノブKv1を手動操作する操作者は、混合物生成に供するイソオクタンの標準燃料RF1の重量計測値を、最終的な目標採取重量q1に対しオーバーランさせることなく、その目標採取重量q1に収束させることができる。
【0071】
そして、電子はかり13の重量計測値が目標採取重量q1に達すると(ステップS17でYESの場合)、第1ニードル弁である注入バルブV21を全閉させる(ステップS18)。
【0072】
次いで、オクタン正標準燃料を採取した調合容器11を風袋として電子はかり13をゼロリセットにより風袋消去した後(ステップS19)、n-ヘプタンの標準燃料RF2の採取量に対応する正味重量の目標値q2[g]を目標採取重量として、フラットパネル14Bに表示させる(ステップS20)。
【0073】
次いで、風袋消去後の電子はかり13の重量計測値の変化に応じ、n-ヘプタンの標準燃料RF2側の注入バルブV22を徐々に開弁させて標準燃料RF2を調合容器11に採取していく。また、この採取期間中、標準燃料RF2の目標採取重量q2をフラットパネル14Bに表示させおく(ステップS21)。
【0074】
そして、電子はかり13の重量計測値が最終的な目標採取重量q2より小さい予備の目標採取重量q2´に達するまでは所定採取流量とし(ステップS22でNOの場合)、その重量計測値が予備の目標採取重量q2´に達すると(ステップS22でYESの場合)、重量計測値が最終的な目標採取重量q2に達するまで、注入バルブV22の開度を徐々に小さくする採取量制限制御を実行する(ステップS23、S24でNOの場合)。
【0075】
ここでも、予備の目標採取重量q2´は、最終的な目標採取重量q2より小さいが目標採取重量q2に近い値であり、重量計測値がこの予備の目標採取重量q2´に達する段階では上部タンクT22から注入バルブV22を介して流下させる燃料の流量をその注入バルブV22のバルブ操作ノブKv2によって徐々に(段階的でもよい)制限するのが望ましく、注入バルブV22の注意深い操作が必要になったことを知らせる契機となる採取重量である。したがって、この予備の目標採取重量q2´に達した状態を操作者に報知する警告音出力や注意表示画像等の画面出力を実行することで、バルブ操作ノブKv2を手動操作する操作者は、混合物生成に供するn-ヘプタンの標準燃料RF2の重量計測値を、最終的な目標採取重量q2に対しオーバーランさせることなく、その目標採取重量q2に収束させることができる。
【0076】
そして、電子はかり13の重量計測値が目標採取重量q2に達すると(ステップS24でYESの場合)、第2ニードル弁である注入バルブV22を全閉させる(ステップS25)。
【0077】
本実施形態では、このように、電子はかり13で最初の風袋消去を行った直後は標準燃料RF1の採取流量を漸増させるよう注入バルブV21を徐々に開弁させ、その後、電子はかり13の重量計測値が目標採取重量q1に近づくまでは、正標準燃料RF1の採取流量を確保するよう注入バルブV21を十分に開弁させ、電子はかり13の重量計測値が目標採取重量q1に近づくと、ニードルバルブである注入バルブV21を徐々に閉弁させることで、目標採取重量q1の標準燃料RF1を正確に採取する。
【0078】
同様に、標準燃料RF1を採取した調合容器11を風袋消去した直後は、標準燃料RF2の採取流量を漸増させるよう注入バルブV22を徐々に開弁させ、その後、電子はかり13の重量計測値が目標採取重量q2に近づくまでは、正標準燃料RF2の採取流量を確保するよう注入バルブV22を十分に開弁させ、電子はかり13の重量計測値が目標採取重量q2に近づくと、ニードルバルブである注入バルブV22を徐々に閉弁させることで、目標採取重量q2の標準燃料RF2を正確に採取する。
【0079】
そして、両標準燃料RF1、RF2を採取した後の調合容器11を電子はかり13から取り出し、撹拌装置によって撹拌混合する。
【0080】
調合容器11は、撹拌用のマグネチックスターラ等の撹拌装置に対応するものとしておくことができる。
【0081】
このように、本実施形態では、性状の異なる複数種の液体の標準燃料RF1、RF2を目標とする性状(RON)に対応する所定の比率(q1:q2)で混合して試験用の混合燃料を調製する試験用燃料調合方法を実施する際に、調合容器11内に複数種の標準燃料RF1、RF2を種別ごとに順次注入し(注入ステップ)、調合容器11内に収容される複数種の標準燃料RF1、RF2の正味重量を種別ごとに計測して出力する(種別毎正味重量計測ステップ)。
【0082】
また、複数のうち特定の一種の標準燃料RF1を調合容器11内に収容するための第1の正味重量q1[g]の目標値を、調合容器11内に特定の一種の標準燃料RF1が注入される第1の採取期間中に出力し(第1の採取重量目標値出力ステップ)、その第1の採取期間中に、特定の一種の標準燃料RF1の正味重量が第1の正味重量の目標値q1に到達するまで、注入手段12により特定の一種の標準燃料RF1を調合容器11内に注入させる一方、特定の一種の標準燃料RF1の正味重量が第1の正味重量の目標値q1に到達すると、注入手段12による調合容器11内への特定の一種の標準燃料RF1の注入を停止させる(第1の注入量調節ステップ)。
【0083】
さらに、複数のうち他の一種の標準燃料RF2を調合容器11内に収容するための第2の正味重量の目標値q2を、調合容器11内に他の一種の標準燃料RF2が注入される第2の採取期間中に出力し(第2の採取重量目標値出力ステップ)、その第2の採取期間中に、他の一種の標準燃料RF2の正味重量が第2の正味重量q2[g]の目標値に到達するまで、注入手段12により他の一種の標準燃料RF2を調合容器11内に注入させる一方、他の一種の標準燃料RF2の正味重量が第2の正味重量の目標値q2に到達すると、注入手段12による調合容器11内への他の一種の標準燃料RF2の注入を停止させる(第2の注入量調節ステップ)。
【0084】
以上のように、本実施形態においては、上記構成を有する試験用燃料調合装置10によって複数の作業ステップを含む一実施形態の試験用燃料調合方法を実行させることができる。
【0085】
次に、作用について説明する。
【0086】
本実施形態では、所定精度の質量混合を行うことで、調合容器11内に複数種の標準燃料RF1、RF2を所定比率で注入するために複数の流量計を使用せずに済み、計量後の複数種の燃料が調合容器11内への注入管路内に残着しないようにするための手間のかかる調合操作が必要でなくなる。よって、試験用燃料の調合操作を容易にし、かつ、目標とする試験用燃料のオクタン価(性状値)および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることのできる低コストの調合装置および低作業コストの調合方法となる。特に、本実施形態では、調合容器11のばらつきを吸収した上で、正味重量のみを演算できるので、重量演算の精度向上および簡易化に有益である。
【0087】
また、複数の流量計の逐次計測値の誤差が積算された状態で、複数種の標準燃料RF1、RF2の混合比率が算出されることが無く、調合精度も向上する。
【0088】
さらに、高精度な複数の流量計を設ける必要が無いので、試験用燃料調合装置のコストを抑えることができ、複数の流量計間の計測精度のばらつきやそれぞれの計測精度の計時劣化等を検出し微調整するといったことも不要になるから、装置のメンテナンスも容易である。
【0089】
加えて、電子はかり13の計測出力(重量計測値)を基にニードル弁体を有する注入バルブV21、V22の開度を手動制御するので、特にその重量計測値が計測中の標準燃料RF1の目標採取重量q1に近づいた段階、および、計測中の標準燃料RF2の目標採取重量q2に近づいた段階で、それぞれ注入バルブV21、V22を徐々に閉弁させる採取量制限(流量制限)を実行する微調整が可能となり、誤差を抑えた調合操作を行うことができる。
【0090】
本実施形態では、手動作業時には、目標値に対し正確な注入操作(注入バルブV21、V22の開閉量および開閉タイミング)に役立つインフォメーションをフラットパネル表示器14もしくは設定器15によって出力することができる。
【0091】
また、本実施形態では、ニードル弁体を有する注入バルブV21、V22を用いるので、注入量の微調整が容易になり、混合比精度の向上が達成できる。特に、標準燃料RF1、RF2の混合作業時に目標値以上の注入量を入れ込んでしまうオーバーラン状態に至ると、混合物質の再度の調整が必要となるため、作業工数や廃棄物の増大という問題が生じてしまうが、本実施形態では、ニードル弁体を有する注入バルブV21、V22を微調整できるので、そのような問題が解消され、省力化や資源保護の面で有益である。
【0092】
自動作業時には、電子はかり13の重量計測値を基に、計測中の標準燃料RF1の採取重量が目標採取重量q1に近づくまで、および、計測中の標準燃料RF2の採取重量が目標採取重量q2に近づくまで、それぞれ注入バルブV21、V22の開度を大きく確保できるので、調合容器11内への注入速度を高めることができ、目標とする試験用燃料の性状および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることが容易に可能となる。この作業状態においては、フラットパネル表示器14もしくは設定器15により、混合動作の稼働状態を作業者(機器運転者)に知らしめ、機器の正常・異常稼働や残混合量(残時間)の大凡の把握に役立つインフォメーションをフラットパネル表示器14や設定器15によって出力することができる。
【0093】
しかも、本実施形態の試験用燃料調合装置10にあっては、バルブ制御用の送気配管や燃料チャージ配管、各試薬燃料の輸送配管等が複数組存在しおよび交差することがないから、従来のように装置構成の複雑化や装置サイズの大型化を招いてしまうという問題も解消されることとなる。
【0094】
なお、本実施形態においては、注入手段12が手動操作式の注入バルブV21、V22や手動での補充指令に応じて作動する汲上げポンプP11、P12を含んでおり、採取量の微調整を手動操作によるものとしたが、自動採取を行う装置構成も可能である。
【0095】
次に、そのような自動採取が可能な試験用燃料調合装置とそれを用いて実行可能な試験用燃料調合方法について説明する。
【0096】
(他の実施の形態)
図3は、本発明の他の実施形態に係る試験用燃料調合装置の概略構成を示している。
【0097】
なお、本実施形態は、複数種の標準燃料の自動採取や電子はかりの自動的な風袋消去の処理が可能で、それらの制御手段を併有するという点を除けば、上述の一実施形態と略同様な構成および作用を有するものである。よって、以下の説明においては、一実施形態と同一または類似する構成については
図1、
図2に示す参照符号と同一の符号を用いて、主に一実施形態との相違点について説明することとする。
【0098】
図3に示すように、本実施形態に係る試験用燃料調合装置10において、注入手段12は、下部タンクT11、T12、汲上ポンプP11、P12、ポンプ駆動回路PD11、汲み上げ配管L11、L12、上部タンクT21、T22、注入バルブV41、V42(電気的駆動弁)、注入配管L21、L22、バルブ駆動用アクチュエータM11、M12およびバルブ駆動回路VD21を含んで構成されている。
【0099】
注入バルブV41、V42は、対応するバルブ駆動用アクチュエータM11、M12を介してバルブ駆動回路VD21により開弁および閉弁動作を制御される電気的駆動方式のバルブで、例えば弁座に対し係合および離脱するテーパ面を有するニードル弁体Nv1、Nv2を含んでいる。
【0100】
これら注入バルブV41、V42は、バルブ駆動回路VD21で開閉制御される前述の電気駆動式のバルブと、電気駆動式のバルブに対し直列に接続された手動式の流量調整バルブとを併用するものであってもよい。
【0101】
試験用燃料調合装置10は、さらに、風袋消去が可能なゼロリセット機能を有する電子はかり13と、採取重量目標値出力用のフラットパネル表示器14と、各種パラメータや運転条件の設定が可能な設定用の設定器15と、その設定器15の設定情報および電子はかり13の計測値情報に基づいて電子はかり13、フラットパネル表示器14、汲上ポンプP11、P12および注入バルブV41、V42を制御するコントローラ16と、を具備している。
【0102】
電子はかり13は、複数種の標準燃料RF1、RF2のうち先行する一種の採取期間が経過するとその時間経過時の荷重を風袋重量として自動的に風袋消去するテアリング機能(automatic taring)、あるいは外部からのゼロリセット要求信号に応じて風袋消去可能なゼロリセット機能を有する秤量制御回路を内蔵しており、複数種の標準燃料RF1、RF2を注入手段12によって調合容器11内に種別ごとの採取・注入を行う際、風袋消去処理を実行させることで、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとに採取中の種別についての正味重量を計測および表示させることができる。
【0103】
フラットパネル表示器14は、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとの正味重量を表示することができる表示パネルで、好ましくは複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとの正味重量を採取中の種別について順次表示するように表示切換えするものである。
【0104】
設定器15は、調合容器11内で調合する試験用燃料の調合量と、目標とする性状値、例えばリサーチオクタン価(RON)と、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別およびその種別ごとの採取の順序、前述の自動的なテアリングやゼロリセットの実行条件等を、コントローラ16に対してそれぞれ設定入力可能デバイスであり、キーボードやタッチパネル型の操作入力デバイスを有している。設定器15は、また、設定済み条件での試験用燃料調合装置10の運転開始を要求する手段としても機能するようになっている。
【0105】
コントローラ16は、CPU、ROM、RAM等に加えて、設定器15からの設定情報や電子はかり13からの秤量信号を取り込むための入力インターフェース回路と、ポンプ駆動回路PD11やバルブ駆動回路VD21への制御出力を行い、更に電子はかり13に対し前述の自動的なテアリングやゼロリセットを要求する信号を出力することができる出力インターフェース回路と、を有するコンピュータ構成の制御手段である。
【0106】
このコントローラ16は、ROM等に予め格納された複数の制御プログラムを実行することで複数の制御機能を発揮可能になっており、
図3中に機能ブロックで示す次のような複数の制御機能部を構成している。
【0107】
パラメータ設定部61は、試験用燃料調合装置10による試験用燃料の調合に必要な各種パラメータを設定器15からの設定情報入力に応じて設定することができる。各種パラメータには、設定器15からの設定情報である試験用燃料の調合量と調合後のオクタン価が含まれるとともに、これらの入力値から一実施形態と同様に算出可能な複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとの採取重量(採取量に対応する正味重量)の目標値やそれに対応する注入バルブV41、V42の開閉時間等の自動設定値が含まれる。
【0108】
採取量制御部62は、設定器15からコントローラ16に運転開始要求が入力されたとき、パラメータ設定部61で設定された各種パラメータと電子はかり13からの秤量信号とに応じて、複数種の標準燃料RF1、RF2の種別ごとに注入バルブV41、V42の開閉制御を行うことで、複数種の標準燃料RF1、RF2の調合容器11内への採取量を制御するようになっている。
【0109】
また、採取量制御部62は、電子はかり13による重量計測値の変化に応じて、イソオクタンの標準燃料RF1側の注入バルブV41を徐々に開弁させて標準燃料RF1を調合容器11に採取し、その重量計測値が標準燃料RF1の目標採取重量q1に近づくと、注入バルブV41を徐々に閉弁させて、目標採取重量q1に達する時点で注入バルブV41が全閉状態になるように注入バルブV41の開度を可変制御するようになっている。
【0110】
同様に、採取量制御部62は、電子はかり13による重量計測値の変化に応じて、n-ヘプタンの標準燃料RF2側のバルブV42を徐々に開弁させて標準燃料RF2を調合容器11に採取し、その重量計測値が標準燃料RF2の目標採取重量q2に近づくと、注入バルブV42を徐々に閉弁させて、目標採取重量q2に達する時点で注入バルブV42が全閉状態になるように注入バルブV42の開度を可変制御するようになっている。
【0111】
秤量制御部63は、設定器15からコントローラ16に運転開始要求が入力されたとき、電子はかり13の秤量信号をチェックして調合容器11の重量分の計測値をゼロにリセットする風袋消去処理を実行するようになっている。また、秤量制御部63は、複数種の標準燃料RF1、RF2のうち先行して採取される標準燃料RF1の採取が完了する時点で、所定時間内に前述の自動的なテアリングやゼロリセットを要求するようになっている。もっとも、このような秤量制御部63の機能は、電子はかり13の内蔵機能で所定時間後の自動的なテアリングが可能であれば、その内蔵機能で代用し省略してもよい。その場合、秤量制御部63は、表示制御部64に風袋消去が必要であることの表示を要求し、フラットパネル表示器14による風袋消去の手動設定が必要であることを表示させてもよい。
【0112】
表示制御部64は、フラットパネル表示器14による複数種の標準燃料RF1、RF2の正味重量を、秤量制御部63からの秤量制御信号やパラメータ設定部61での設定パラメータに従って種別ごとに切換え表示させる表示制御を実行することができる。
【0113】
また、コントローラ16の表示制御部64は、電子はかり13で計測している特定の一種の標準燃料RF1(またはRF2)を調合容器11内に収容するための正味重量の目標値q1(またはq2)がパラメータ設定部61によって予め設定済みであるとき、調合容器11内に特定の一種の標準燃料RF1(またはRF2)が注入される採取期間中に、フラットパネル表示器14により正味重量の目標値q1(またはq2)を表示出力させる採取重量目標値出力手段としても機能する。フラットパネル表示器14による複数種の標準燃料RF1、RF2の正味重量の表示が固定表示である場合、この表示制御部64は、省略してもよい。
【0114】
燃料補充制御部65は、採取量制御部62と協働してポンプ駆動回路PD11に燃料補充制御信号を出力して汲上ポンプP11、P12を選択的に作動させることで、試験用燃料調合装置10による試験用燃料の1回の調合に使用する複数種の標準燃料RF1、RF2の採取量を汲上げ量の単位として、所定回数の調合ごとにその回数分の採取量に相当する複数種の標準燃料RF1、RF2を上部タンクT21、T22に汲み上げるポンプ作動制御を実行するようになっている。
【0115】
また、フラットパネル表示器14およびコントローラ16の表示制御部64は、特定の一種の標準燃料RF1を調合容器11内に収容するための標準燃料RF1の目標採取重量q1(第1の正味重量の目標値)が予め設定された状態下で、調合容器11内に特定の一種の標準燃料RF1が注入される第1の採取期間中に、標準燃料RF1の目標採取重量q1を表示出力する第1の採取重量目標値出力手段を構成するとともに、複数のうち他の一種の標準燃料RF2を調合容器11内に収容するための標準燃料RF2の目標採取重量q2(第2の正味重量の目標値)が予め設定された状態下で、調合容器11内に他の一種の標準燃料RF2が注入される第2の採取期間中に、目標採取重量q2を表示出力する第2の採取重量目標値出力手段を構成している。
【0116】
さらに、注入手段12およびコントローラ16の採取量制御部62は、前述の第1の採取期間中に、特定の一種の標準燃料RF1の正味重量が目標採取重量q1に到達するまで、特定の一種の標準燃料RF1を調合容器11内に注入させる一方、特定の一種の標準燃料RF1の正味重量が目標採取重量q1に到達するとき、調合容器11内への特定の一種の標準燃料RF1の注入を停止させる第1の注入量調節手段を構成するとともに、前述の第2の採取期間中に、他の一種の標準燃料RF2の正味重量が目標採取重量q2に到達するまで、他の一種の標準燃料RF2を調合容器11内に注入させる一方、他の一種の標準燃料RF2の正味重量が目標採取重量q2に到達するとき、調合容器11内への他の一種の標準燃料RF2の注入を停止させる第2の注入量調節手段を構成している。
【0117】
このように構成された本実施形態の試験用燃料調合装置10は、調合容器11内に収容される複数種の標準燃料RF1、RF2の正味重量を種別ごとに電子はかり13により計測してその計測値(秤量値)を出力することができる。
【0118】
そして、種別毎正味重量計測手段である電子はかり13が、調合容器11内に収容される複数種の標準燃料RF1、RF2の正味重量を種別ごとに計測して表示出力し、第1、第2の採取重量目標値出力手段であるフラットパネル表示器14およびコントローラ16の表示制御部64が、第1の採取期間中に標準燃料RF1の目標採取重量q1(第1の正味重量の目標値)を表示出力するとともに、第2の採取期間中に標準燃料RF2の目標採取重量q2(第2の正味重量の目標値)を表示出力する。
【0119】
次に、本実施形態の試験用燃料調合装置10を用いる試験用燃料調合方法の他の実施形態について説明する。
【0120】
他の実施形態の試験用燃料調合方法においても、
図2に示した一実施形態と略同様の手順で実施可能である。
【0121】
すなわち、
図2に示すように、まず、調合量Q[ml]と、調合後のオクタン価(RON)を設定入力する(ステップS11)。
【0122】
このとき、パラメータ設定部61により、設定器15からの調合量Q[ml]およびRONの設定値入力に対応して、試料ごとの採取量に相当する正味重量の目標値(目標採取重量)を、採取重量q1、q2として例えば前述の式(1)、(2)で算出させ、自動設定させる(ステップS12)。
【0123】
また、設定器15からコントローラ16に運転開始要求が入力されたか、調合容器11を電子はかり13上に設置した時点かで、予め電子はかり13の秤量信号をチェックして調合容器11の重量分の計測値をゼロにリセットする風袋消去処理を実行し、最初の風袋消去状態としておく。
【0124】
次いで、イソオクタンの標準燃料RF1の採取量に対応する正味重量を、目標採取重量q1[g]として、フラットパネル表示器14に表示させる(ステップS13)。
【0125】
次いで、風袋を消去した電子はかり13の秤量信号(重量計測値)の変化に応じ、イソオクタンの標準燃料RF1側の注入バルブV41を徐々に開弁させて標準燃料RF1を調合容器11に採取していく。また、この採取期間中、標準燃料RF1の目標採取重量q1をフラットパネル表示器14に表示させおく(ステップS14)。
【0126】
そして、電子はかり13の重量計測値が最終的な目標採取重量q1より小さい予備の目標採取重量q1´に達するまでは所定採取流量とし(ステップS15でNOの場合)、その重量計測値が予備の目標採取重量q1´に達すると(ステップS15でYESの場合)、重量計測値が最終的な目標採取重量q1に達するまで、注入バルブV41の開度を徐々に小さくする採取量制限制御を実行する(ステップS16、S17でNOの場合)。
【0127】
そして、電子はかり13の重量計測値が目標採取重量q1に達すると(ステップS17でYESの場合)、第1ニードル弁である注入バルブV41を全閉させる(ステップS18)。
【0128】
次いで、オクタン正標準燃料を採取した調合容器11を風袋として電子はかり13をゼロリセットにより風袋消去した後(ステップS19)、n-ヘプタンの標準燃料RF2の採取量に対応する正味重量を目標採取重量q2[g]として、フラットパネル表示器14に表示させる(ステップS20)。
【0129】
次いで、風袋消去後の電子はかり13の重量計測値の変化に応じ、n-ヘプタンの標準燃料RF2側の注入バルブV42を徐々に開弁させて標準燃料RF2を調合容器11に採取していく。また、この採取期間中、標準燃料RF2の目標採取重量q2をフラットパネル表示器14に表示させおく(ステップS21)。
【0130】
そして、電子はかり13の重量計測値が最終的な目標採取重量q2より小さい予備の目標採取重量q2´に達するまでは所定採取流量とし(ステップS22でNOの場合)、その重量計測値が予備の目標採取重量q2´に達すると(ステップS22でYESの場合)、重量計測値が最終的な目標採取重量q2に達するまで、注入バルブV42の開度を徐々に小さくする採取量制限制御を実行する(ステップS23、S24でNOの場合)。
【0131】
そして、電子はかり13の重量計測値が目標採取重量q2に達すると(ステップS24でYESの場合)、第2ニードル弁である注入バルブV42を全閉させる(ステップS25)。
【0132】
本実施形態では、このように、一実施形態と同様な採取作業を自動的に実行し、目標採取重量q1の標準燃料RF1を正確に採取するとともに、目標採取重量q2の標準燃料RF2を正確に採取する。
【0133】
そして、両標準燃料RF1、RF2を採取した後の調合容器11を電子はかり13から取り出し、撹拌混合する。
【0134】
このように、本実施形態においても、一実施形態と略同様に、前述の種別毎正味重量計測ステップ、第1の注入量調節ステップおよび第2の注入量調節ステップを含んだ試験用燃料調合方法を実行させることができる。
【0135】
よって、本実施形態においても、試験用燃料の調合操作を容易にし、かつ、目標とする試験用燃料のオクタン価(性状値)および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることができ、調合精度も向上させることができ、一実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0136】
以上説明したように、本発明に係る試験用燃料調合装置は、複数の流量計を使用せずに済み、目標とする試験用燃料の性状および混合容量と十分な調合処理速度とを両立させることのできるものであり、性状の異なる複数種の液体の標準燃料を目標とする性状に対応する比率で混合して試験用燃料を調製する試験用燃料調合方法および装置全般に有効である。
【符号の説明】
【0137】
10 試験用燃料調合装置
10M 本体ケース
11 調合容器
12 注入手段(第1の注入量調節手段、第2の注入量調節手段)
13 電子はかり(種別毎正味重量計測手段)
13a 風袋消去要求スイッチ
13b デジタル表示パネル
14 フラットパネル表示器(第1、第2の採取重量目標値出力手段)
14A フラットパネル(第1の採取重量目標値出力手段)
14B フラットパネル(第2の採取重量目標値出力手段)
15 設定器
15a 操作入力デバイス
15b 演算処理部
16 コントローラ
31、32 開閉扉
33、34 透明扉
61 パラメータ設定部
62 採取量制御部
63 秤量制御部
64 表示制御部
65 燃料補充制御部
D1、D2 補充警報レベル検出器
G1、G2 レベルゲージ
Kv1、Kv2 バルブ操作ノブ
L11、L12 汲み上げ配管
L21、L22 注入配管
M11、M12 バルブ駆動用アクチュエータ
Nv1、Nv2 ニードル弁体
P11、P12 汲上ポンプ
PD11 ポンプ駆動回路
Q 調合量
q1 目標採取重量(第1の正味重量の目標値)
q1´、q2´ 予備の目標採取重量
q2 目標採取重量(第2の正味重量の目標値)
RF1 標準燃料(特定の一種の標準燃料)
RF2 標準燃料(他の一種の標準燃料)
T11、T12 下部タンク
T21、T22 上部タンク
V21 注入バルブ(手動操作式の流量調整弁、第1の注入量調節手段)
V22 注入バルブ(手動操作式の流量調整弁、第2の注入量調節手段)
V41 注入バルブ(電気的駆動弁、第1の注入量調節手段)
V42 注入バルブ(電気的駆動弁、第2の注入量調節手段)
Va1、Va2 息抜きバルブ(エアベントバルブ)
VD21 バルブ駆動回路
ρ 密度