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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231110BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019223844
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021093861
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519048584
【氏名又は名称】株式会社セイブ・ザ・プラネット
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓文
(72)【発明者】
【氏名】六車 圭孝
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-087160(JP,A)
【文献】特開2019-176634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の直流電圧線から入力される直流電力を交流電力に変換して単相3線式の第1及び第2の交流電圧線と自立運転用の中性線とに出力するインバータ回路と、
前記第1の直流電圧線及び前記中性線に接続された第1のコンデンサと、
前記第2の直流電圧線及び前記中性線に接続された第2のコンデンサと、
前記第1の直流電圧線及び前記中性線の間の第1の直流電圧と、前記第2の直流電圧線及び前記中性線の間の第2の直流電圧とを検出する直流電圧検出部と、
前記第1及び第2の直流電圧線の間に第1の直流電圧線側から順に直列に接続された第1及び第2のスイッチング素子を有し、前記第1及び第2のコンデンサの蓄電量を調整する中性線電圧調整回路と
記第1及び第2のコンデンサの蓄電量を前記中性線電圧調整回路に調整させる制御部とを備え、
前記制御部は、自立運転時に、前記直流電圧検出部によって検出された第1及び第2の直流電圧に基づいて、前記第1及び第2のスイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第1及び第2のスイッチング素子のうちの他方のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を下げる制御により、当該第1及び第2の直流電圧の差を低減させる電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において
記制御部は、自立運転時に、前記第1の直流電圧が前記第2の直流電圧よりも大きい場合には、前記第1のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第2のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を下げる一方、前記第2の直流電圧が前記第1の直流電圧よりも大きい場合には、前記第2のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第1のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を下げることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、
前記制御部は、自立運転時に、前記直流電圧検出部によって検出された第1及び第2の直流電圧に基づいて、当該第1及び第2の直流電圧が等しくなるように、前記第1及び第2のコンデンサの蓄電量を前記中性線電圧調整回路に調整させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記中性線電圧調整回路は、前記第1及び第2のコンデンサの中点、及び前記第1及び第2のスイッチング素子の中点の間に接続されたリアクトルをさらに備えていることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換して単相3線式の交流電圧線及び中性線に出力する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1及び第2の直流電圧線から入力される直流電力を交流電力に変換して単相3線式の第1及び第2の交流電圧線と中性線とに出力するインバータ回路と、前記中性線の電圧を検出する電圧センサと、前記第1及び第2の直流電圧線にそれぞれ接続された第1及び第2のスイッチング素子と、電圧センサにより検出された電圧に基づいて、前記第1及び第2のスイッチング素子のオン時間を制御することにより、第1及び第2の直流電圧線に流れる電流を調整する制御部とを備えたコージェネレーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4778457号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第1及び第2の直流電圧線から入力される直流電力を交流電力に変換して単相3線式の第1及び第2の交流電圧線と中性線とに出力するインバータ回路を備えた電力変換装置では、第1の交流電圧線と中性線との間、及び第2の交流電圧線と中性線との間にそれぞれ接続される機器(負荷)の消費電力や突入電力のばらつきにより、第1の交流電圧線と中性線との間に流れる電流、及び第2の交流電圧線と中性線との間に流れる電流にアンバランスが生じ、第1の交流電圧線と中性線との間の電圧、及び第2の交流電圧線と中性線との間の電圧にもアンバランスが生じやすい。このような電圧のアンバランスが生じると、家庭内の機器に、当該機器の推奨電圧範囲から逸脱する電圧が供給され、当該機器の動作に悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
また、特許文献1では、第1及び第2の直流電圧線に流れる電流を調整するので、第1及び第2の直流電圧線に流れる電流が微少なときに、中性線電圧を精度良く制御できず、その結果、第1の交流電圧線と中性線との間の電圧、及び第2の交流電圧線と中性線との間の電圧のアンバランスを確実に抑制できないという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1の交流電圧線と中性線との間の電圧、及び第2の交流電圧線と中性線との間の電圧のアンバランスをより確実に抑制することにある。
【0007】
また、もう1つの目的とするところは、電圧のアンバランス等の電力変換装置内の不具合が家庭内の機器の動作に悪影響を及ぼすのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、第1の直流電圧線及び中性線の間と、第2の直流電圧線及び中性線の間とにコンデンサを接続し、両コンデンサの蓄電量を、第1の直流電圧線及び中性線の間の電圧と、第2の直流電圧線及び中性線の間の電圧とに基づいて調整するようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、本発明の第1の態様は、電力変換装置が、第1及び第2の直流電圧線から入力される直流電力を交流電力に変換して単相3線式の第1及び第2の交流電圧線と自立運転用の中性線とに出力するインバータ回路と、前記第1の直流電圧線及び前記中性線に接続された第1のコンデンサと、前記第2の直流電圧線及び前記中性線に接続された第2のコンデンサと、前記第1の直流電圧線及び前記中性線の間の第1の直流電圧と、前記第2の直流電圧線及び前記中性線の間の第2の直流電圧とを検出する直流電圧検出部と、前記第1及び第2のコンデンサの蓄電量を調整する中性線電圧調整回路と、自立運転時に、前記直流電圧検出部によって検出された第1及び第2の直流電圧に基づいて、当該第1及び第2の直流電圧の差を低減するように、前記第1及び第2のコンデンサの蓄電量を前記中性線電圧調整回路に調整させる制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
これにより、自立運転時に、第1の直流電圧線及び前記中性線の間の第1の直流電圧と、前記第2の直流電圧線及び前記中性線の間の第2の直流電圧との差を低減できるので、第1の交流電圧線と中性線との間の電圧、及び第2の交流電圧線と中性線との間の電圧のアンバランスを抑制できる。
【0011】
また、第1及び第2の直流電圧の差を低減するように、第1及び第2のコンデンサの蓄電量を調整するので、特許文献1のように第1及び第2の直流電圧線を流れる電流を調整する場合に比べて、第1及び第2の直流電圧線を流れる電流が微少な場合に第1及び第2の直流電圧を精度良く制御できる。したがって、第1の交流電圧線と中性線との間の電圧、及び第2の交流電圧線と中性線との間の電圧のアンバランスをより確実に抑制できる。
【0012】
また、前記態様において、前記制御部は、自立運転時に、前記直流電圧検出部によって検出された第1及び第2の直流電圧に基づいて、当該第1及び第2の直流電圧が等しくなるように、前記第1及び第2のコンデンサの蓄電量を前記中性線電圧調整回路に調整させるようにしてもよい。
【0013】
これにより、第1及び第2の直流電圧を等しくできるので、第1の交流電圧線と中性線との間の電圧、及び第2の交流電圧線と中性線との間の電圧のアンバランスをより効果的に抑制できる。
【0014】
また、前記態様において、前記中性線電圧調整回路は、前記第1及び第2の直流電圧線の間に第1の直流電圧線側から順に直列に接続された第1及び第2のスイッチング素子と、前記第1及び第2のコンデンサの中点、及び前記第1及び第2のスイッチング素子の中点の間に接続されたリアクトルとを備え、前記制御部は、自立運転時に、前記第1の直流電圧が第2の直流電圧よりも大きい場合には、前記第1のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第2のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を下げる一方、前記第2の直流電圧が前記第1の直流電圧よりも大きい場合には、前記第2のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第1のスイッチング素子のオン期間のデューティ比を下げることにより、前記第1及び第2のコンデンサの蓄電量を前記中性線電圧調整回路に調整させるようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の第2の態様は、電力変換装置が、第1及び第2の直流電圧線から入力される直流電力を交流電力に変換して単相3線式の第1及び第2の交流電圧線と自立運転用の中性線とに出力するインバータ回路と、自立運転時に、複数のパラメータに基づいて、所定の停止条件が満たされているか否かを判定し、前記停止条件が満たされたときに前記インバータ回路の出力を停止させる停止制御を実行する制御部とを備え、前記複数のパラメータは、それぞれ電圧又は電流に関するパラメータであることを特徴とする。
【0016】
これにより、停止条件が満たされた状態が継続するのを防止できる。したがって、停止条件を、電力変換装置内の不具合発生時の条件に設定することにより、電力変換装置内の不具合が家庭内の機器の動作に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【0017】
また、前記態様において、前記第1の直流電圧線及び前記中性線に接続された第1のコンデンサと、前記第2の直流電圧線及び前記中性線に接続された第2のコンデンサとをさらに備え、前記複数のパラメータには、前記第1の交流電圧線と前記中性線との間の電圧、前記第2の交流電圧線と前記中性線との間の電圧、前記第1及び第2のコンデンサの中点電圧、前記第1の交流電圧線を流れる電流、及び前記第2の交流電圧線を流れる電流のうちの少なくとも2つのパラメータが含まれることを特徴とする。
【0018】
また、前記態様において、前記停止条件は、前記第1及び第2の交流電圧線の間の電圧の絶対値が、所定の電圧線電圧閾値以上である場合に満たされるようにしてもよい。
【0019】
これにより、第1及び第2の交流電圧線の間の電圧の絶対値が所定の電圧線電圧閾値以上となった状態が継続するのを防止できる。
【0020】
また、前記態様において、前記停止条件は、前記第1及び第2のコンデンサの中点電圧の絶対値が、所定の中点電圧閾値以上である場合に満たされるようにしてもよい。
【0021】
これにより、第1及び第2のコンデンサの中点電圧の絶対値が、所定の中点電圧閾値以上となった状態が継続するのを防止できる。
【0022】
また、前記態様において、前記停止条件は、前記第1の交流電圧線を流れる電流及び前記第2の交流電圧線を流れる電流の少なくとも一方が、所定の電流閾値以上である場合に満たされるようにしてもよい。
【0023】
これにより、第1の交流電圧線を流れる電流及び第2の交流電圧線を流れる電流の少なくとも一方が、所定の電流閾値以上となった状態が継続するのを防止できる。
【0024】
また、前記態様において、前記停止条件は、前記第1の交流電圧線を流れる電流及び前記第2の交流電圧線を流れる電流の差が、所定の電流差閾値以上である場合に満たされるようにしてもよい。
【0025】
これにより、第1の交流電圧線を流れる電流及び第2の交流電圧線を流れる電流の差が、所定の電流差閾値以上となった状態が継続するのを防止できる。
【0026】
また、前記態様において、ユーザによる所定の手動入力を受け付ける入力部をさらに設け、前記制御部は、前記停止制御の実行後に前記インバータ回路に出力を再開させる復帰制御を、前記停止制御の過去の実行回数が所定の基準回数以下の場合には、前記停止制御の実行から所定時間が経過した時に実行する一方、前記停止制御の過去の実行回数が前記基準回数を超える場合には、前記入力部が前記所定の手動入力を受け付けたときに実行するようにしてもよい。
【0027】
これにより、インバータ回路が、出力の停止動作及び再開動作を自動的に多く繰り返すのを防止できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、第1の交流電圧線と中性線との間の電圧、及び第2の交流電圧線と中性線との間の電圧のアンバランスを抑制できる。
【0029】
また、電力変換装置内の不具合が家庭内の機器の動作に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】非停電時における本発明の実施形態に係る電力変換装置を備えた系統連系システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図3】CPUの動作を示すフローチャートである。
図4】停電時における図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0032】
図1は、系統連系システム1を示す。この系統連系システム1は、パワーコンディショナ10と、第1及び第2の連系ブレーカー30a,30b、及び中性線用ブレーカー30cと、切替回路40と、切替制御部50とを備えている。
【0033】
パワーコンディショナ10は、DC/DCコンバータ11と、本発明の実施形態に係る電力変換装置20と、第1及び第2のスイッチ12a,12bと、単相3線の第1及び第2の連系端子13a,13b、及び中性線連系端子13cと、単相3線の第1及び第2の自立端子14a,14b、及び中性線自立端子14cとを備えている。
【0034】
DC/DCコンバータ11は、発電ユニット60の出力電圧を所定の電圧に変換し、直流電力を第1及び第2の直流電圧線DCL1,DCL2に出力する。発電ユニット60は、太陽電池パネル、風力等の太陽光以外の再生可能エネルギーを利用する発電機、蓄電池等で構成される。
【0035】
電力変換装置20は、図2に示すように、平滑コンデンサCと、インバータ回路21と、第1及び第2のコンデンサ22a,22bと、直流電圧検出部23と、中性線電圧調整回路24と、フィルタ回路25と、交流電圧検出部26と、交流電流検出部27と、入力部28と、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)29とを備えている。
【0036】
平滑コンデンサCは、第1及び第2の直流電圧線DCL1,DCL2に接続され、DC/DCコンバータ11の出力を平滑化する。
【0037】
インバータ回路21は、第1及び第2の直流電圧線DCL1,DCL2から入力される直流電力を交流電力に変換して単相3線式の第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2と自立運転用の中性線NLとに出力する。インバータ回路21の定格電圧は、例えば、100V及び200Vである。
【0038】
詳しくは、インバータ回路21は、第1及び第2の直流電圧線DCL1,DCL2間に互いに直列に接続されたスイッチング素子S1,S2と、第1及び第2の直流電圧線DCL1,DCL2間に互いに直列に接続されたスイッチング素子S3,S4とを備えている。スイッチング素子S1,S2の中間ノードと、スイッチング素子S3,S4の中間ノードとの間には、互いにコレクタが接続されたスイッチング素子S5,S6が直列に接続されている。これらスイッチング素子S5,S6の中央ノードには、ダイオードD1のアノードが接続され、当該ダイオードD1のカソードは、第1の直流電圧線DCL1に接続されている。
【0039】
第1のコンデンサ22aは、第1の直流電圧線DCL1及び中性線NLに接続されている。
【0040】
第2のコンデンサ22bは、第2の直流電圧線DCL2及び中性線NLに接続されている。第1及び第2のコンデンサ22a,22bの静電容量値は互いに等しく設定されている。
【0041】
直流電圧検出部23は、第1の直流電圧線DCL1及び中性線NLの間の第1の直流電圧を検出する第1の電圧センサ23aと、第2の直流電圧線DCL2及び中性線NLの間の第2の直流電圧を検出する第2の電圧センサ23bとを備えている。
【0042】
中性線電圧調整回路24は、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの蓄電量を調整する。具体的には、中性線電圧調整回路24は、第1及び第2の直流電圧線DCL1,DCL2の間に第1の直流電圧線DCL1側から順に直列に接続された第1及び第2の調整用スイッチング素子S7,S8と、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点、及び前記第1及び第2の調整用スイッチング素子S7,S8の中点の間に接続された第1のリアクトルR1とを備えている。
【0043】
フィルタ回路25は、第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2にそれぞれ設けられた第2及び第3のリアクトルR2,R3と、第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2間に互いに直列に接続された第3及び第4のコンデンサ25a,25bとを備えている。第3及び第4のコンデンサ25a,25bの中点は、中性線NLに接続されている。
【0044】
交流電圧検出部26は、第1の交流電圧線ACL1及び中性線NLの間の第1の交流電圧を検出する第3の電圧センサ26aと、第2の交流電圧線ACL2及び中性線NLの間の第2の交流電圧を検出する第4の電圧センサ26bとを備えている。
【0045】
交流電流検出部27は、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流を検出する第1の電流センサ27a、第2の交流電圧線ACL2を流れる電流を検出する第2の電流センサ27b、及び中性線NLを流れる電流を検出する中性線電流センサ27cを備えている。
【0046】
入力部28は、ユーザによる所定の手動入力を受け付ける。
【0047】
CPU29は、自立運転時に、直流電圧検出部23によって検出された第1及び第2の直流電圧に基づいて、当該第1及び第2の直流電圧を等しくするように、前記第1及び第2のコンデンサ22a,22bの蓄電量を前記中性線電圧調整回路24に調整させる。具体的には、CPU29は、自立運転時に、第1の直流電圧が第2の直流電圧よりも大きい場合には、前記第1の調整用スイッチング素子S7のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第2の調整用スイッチング素子S8のオン期間のデューティ比を下げる。一方、前記第2の直流電圧が第1の直流電圧よりも大きい場合には、前記第2の調整用スイッチング素子S8のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第1の調整用スイッチング素子S7のオン期間のデューティ比を下げる。また、第1の直流電圧と第2の直流電圧とが互いに等しい場合には、前記第1の調整用スイッチング素子S7のオン期間のデューティ比、及び前記第2の調整用スイッチング素子S8のオン期間のデューティ比を50%とする。なお、CPU29は、自立運転時、第1の直流電圧と第2の直流電圧の合計が一定となるように第1及び第2の調整用スイッチング素子S7,S8を制御する。
【0048】
また、CPU29は、自立運転時に、交流電圧検出部26及び交流電流検出部27により得られた検出値を参照し、第1の交流電圧線ACL1と中性線NLとの間の電圧、第2の交流電圧線ACL2と中性線NLとの間の電圧、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流、及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流に基づいて所定の停止条件が満たされている否かを判定し、停止条件が満たされたときにインバータ回路21の出力を停止させる停止制御を実行する。第1及び第2のコンデンサ22a,22bの静電容量値が互いに等しいので、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧は、第1の交流電圧線ACL1と中性線NLとの間の電圧、及び第2の交流電圧線ACL2と中性線NLとの間の電圧の和の1/2である。停止条件は、第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2の間の電圧の絶対値が、所定の電圧線電圧閾値ΔV以上であるという第1の条件と、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧の絶対値が、所定の中点電圧閾値ΔV以上であるという第2の条件と、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の少なくとも一方が、所定の電流閾値IMax以上であるという第3の条件と、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の差が、所定の電流差閾値IDmax以上であるという第4の条件のうちの少なくとも1つが満たされることである。したがって、CPU29は、第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2の間の電圧の絶対値が、所定の電圧線電圧閾値ΔV以上である場合と、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧の絶対値が、所定の中点電圧閾値ΔV以上である場合と、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の少なくとも一方が、所定の電流閾値IMax以上である場合と、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の差が、所定の電流差閾値IDmax以上である場合とに、前記停止制御を実行する。また、CPU29は、前記停止制御の実行後にインバータ回路21の出力を再開させる復帰制御を、前記停止制御の過去の実行回数が所定の基準回数N以下の場合には、前記停止制御の実行から所定時間の経過時に実行する一方、前記停止制御の過去の実行回数が前記基準回数Nを超える場合には、前記入力部28がユーザによる所定の手動入力を受け付けたときに実行する。
【0049】
次に、CPU29が自立運転時に停止制御及び復帰制御を実行するときの詳細な動作について、図3にフローチャートを参照して説明する。
【0050】
まず、S101において、CPU29が、第1の交流電圧線ACL1と中性線NLとの間の電圧、第2の交流電圧線ACL2と中性線NLとの間の電圧、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流、及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流に基づいて、前記停止条件が満たされているか否かを判定する。具体的には、第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2の間の電圧の絶対値が、所定の電圧線電圧閾値ΔV以上であるという第1の条件、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧の絶対値が、所定の中点電圧閾値ΔV以上であるという第2の条件、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の少なくとも一方が、所定の電流閾値IMax以上であるという第3の条件、及び第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の差が、所定の電流差閾値IDmax以上であるという第4の条件のうちの少なくとも1つが満たされているか否かを判定する。そして、第1~第4の条件のうちの少なくとも1つが満たされている場合には、停止条件が満たされていると判定し、S102に進む一方、第1~第4の条件のいずれも満たされていない場合には、停止条件が満たされていないと判定し、S101を繰り返し実行する。
【0051】
S102では、CPU29が、インバータ回路21の出力を停止させる停止制御を実行し、予め記憶している過去の停止回数に1を加算し、S103に進む。
【0052】
S103では、CPU29が、記憶している過去の停止回数がN回以下であるか否かを判定し、過去の停止回数がN回以下であるときにはS104に進む一方、過去の停止回数がN回を超える場合にはS106に進む。
【0053】
S104では、CPU29が、タイマーによる時間のカウントを行い、カウントした時間が所定時間に達した時、すなわち停止制御の実行から所定時間が経過した時にS105に進む。
【0054】
S105では、CPU29が、インバータ回路21に出力を再開させる復帰制御を実行する。
【0055】
S106では、CPU29が、入力部28が所定の手動入力を受け付けたか否かを判定する。入力部28が前記所定の手動入力を受け付けたと判定したときには、S105に進む一方、入力部28が前記所定の手動入力を受け付けていないと判定したときには、S106を繰り返し実行する。
【0056】
また、CPU29は、非停電時に第1及び第2のスイッチ12a,12bをオンする一方、停電時に第1及び第2のスイッチ12a,12bをオフする。
【0057】
第1のスイッチ12aは、第1の交流電圧線ACL1と第1の連系端子13aとの接続をオンオフする。
【0058】
第2のスイッチ12bは、第2の交流電圧線ACL2と第2の連系端子13bとの接続をオンオフする。
【0059】
第1の連系端子13aは、第1のスイッチ12aを介して第1の交流電圧線ACL1に接続されている。また、第1の連系端子13aは、第1の配線LN1を介して電力系統70に接続されている。第1の連系端子13aと引込口80との間には第1連系ブレーカー30aが設けられている。
【0060】
第2の連系端子13bは、第2のスイッチ12bを介して第2の交流電圧線ACL2に接続されている。また、第2の連系端子13bは、第2の配線LN2を介して電力系統70に接続されている。第2の連系端子13bと引込口80との間には、第2連系ブレーカー30bが設けられている。
【0061】
中性線連系端子13cは、第3の配線LN3を介して電力系統70に接続されている。中性線連系端子13cと引込口80との間には中性線用ブレーカー30cが設けられている。
【0062】
第1の自立端子14aは、第1の交流電圧線ACL1に接続されている。
【0063】
第2の自立端子14bは、第2の交流電圧線ACL2に接続されている。
【0064】
中性線自立端子14cは、中性線NLに接続されている。
【0065】
切替回路40は、第1~第3の発電ユニット側スイッチ41a~41cと、第1~第3の系統側スイッチ42a~42cとを備えている。
【0066】
第1の発電ユニット側スイッチ41aは、第1の自立端子14aと家庭内負荷90との接続をオンオフする。
【0067】
第2の発電ユニット側スイッチ41bは、第2の自立端子14bと家庭内負荷90との接続をオンオフする。
【0068】
第3の発電ユニット側スイッチ41cは、中性線自立端子14cと家庭内負荷90との接続をオンオフする。
【0069】
第1の系統側スイッチ42aは、第1の配線LN1と家庭内負荷90との接続をオンオフする。
【0070】
第2の系統側スイッチ42bは、第2の配線LN2と家庭内負荷90との接続をオンオフする。
【0071】
第3の系統側スイッチ42cは、第3の配線LN3と家庭内負荷90との接続をオンオフする。
【0072】
切替制御部50は、第1~第3の発電ユニット側スイッチ41a~41c、及び第1~第3の系統側スイッチ42a~42cのオンオフを制御する。切替制御部50は、電力系統70の非停電時において、第1~第3の発電ユニット側スイッチ41a~41cをオフするとともに第1~第3の系統側スイッチ42a~42cをオンする一方、電力系統70の停電時において、第1~第3の発電ユニット側スイッチ41a~41cをオンするとともに第1~第3の系統側スイッチ42a~42cをオフする。
【0073】
なお、家庭内負荷90と切替回路40との間には、分電盤91が介在している。
【0074】
以下、上述のように構成された系統連系システム1の動作について説明する。まず、電力系統70の非停電状態においては、図1に示すように、切替制御部50が、第1~第3の発電ユニット側スイッチ41a~41cをオフするとともに第1~第3の系統側スイッチ42a~42cをオンする。これにより、パワーコンディショナ10の第1及び第2の自立端子14a,14b、及び中性線自立端子14cと、家庭内負荷90との接続が遮断されるとともに、第1~第3の配線LN1,LN2、LN3が、家庭内負荷90に接続される。また、パワーコンディショナ10のCPU29が、第1及び第2のスイッチ12a,12bをオンする。これにより、パワーコンディショナ10の第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2が、第1及び第2の配線LN1,LN2に接続される。したがって、パワーコンディショナ10から出力される電力が、家庭内負荷90の消費電力を上回っている場合には、パワーコンディショナ10の余剰電力が、電力系統70に送られる。一方、パワーコンディショナ10から出力される電力が、家庭内負荷90の消費電力以下である場合には、パワーコンディショナ10から出力される電力と、電力系統70から送られる電力とが、家庭内負荷90に供給される。
【0075】
一方、電力系統70の停電状態においては、図4に示すように、切替制御部50が、第1~第3の発電ユニット側スイッチ41a~41cをオンするとともに第1~第3の系統側スイッチ42a~42cをオフする。これにより、パワーコンディショナ10の第1及び第2の自立端子14a,14b、及び中性線自立端子14cが、家庭内負荷90に接続されるとともに、第1~第3の配線LN1,LN2,LN3と、家庭内負荷90との接続が遮断される。また、パワーコンディショナ10のCPU29が、第1及び第2のスイッチ12a,12bをオフする。これにより、パワーコンディショナ10の第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2と、第1及び第2の配線LN1,LN2との接続が遮断される。したがって、パワーコンディショナ10の第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2、及び中性線NLが、家庭内負荷90に接続され、パワーコンディショナ10から出力される電力が、家庭内負荷90に供給される。このとき、パワーコンディショナ10は、自立運転を行う。また、CPU29が、第1の直流電圧が第2の直流電圧よりも大きい場合には、前記第1の調整用スイッチング素子S7のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第2の調整用スイッチング素子S8のオン期間のデューティ比を下げる。一方、前記第2の直流電圧が第1の直流電圧よりも大きい場合には、前記第2の調整用スイッチング素子S8のオン期間のデューティ比を上げるとともに、前記第1の調整用スイッチング素子S7のオン期間のデューティ比を下げる。このような制御により、自立運転時に、第1の直流電圧線DCL1及び前記中性線NLの間の第1の直流電圧と、前記第2の直流電圧線DCL2及び前記中性線NLの間の第2の直流電圧とが等しくなるので、家庭内負荷90の消費電力や突入電力にばらつきがあっても、第1の交流電圧線ACL1と中性線NLとの間の電圧、及び第2の交流電圧線ACL2と中性線NLとの間の電圧のアンバランスを抑制できる。
【0076】
また、第1及び第2の直流電圧の差を低減するように、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの蓄電量を調整するので、特許文献1のように第1及び第2の直流電圧線DCL1,DCL2を流れる電流を調整する場合に比べて、第1及び第2の直流電圧線DCL1,DCL2を流れる電流が微少な場合に第1及び第2の直流電圧を精度良く制御できる。したがって、第1の交流電圧線ACL1と中性線NLとの間の電圧、及び第2の交流電圧線ACL2と中性線NLとの間の電圧のアンバランスをより確実に抑制できる。
【0077】
また、電力系統50の停電状態において、第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2の間の電圧の絶対値が、所定の電圧線電圧閾値ΔV以上になった場合、CPU29が、インバータ回路21の出力を停止させる停止制御を実行する。これにより、第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2の間の電圧の絶対値が前記電圧線電圧閾値ΔV以上となった状態が継続するのが防止される。したがって、第1及び第2の交流電圧線ACL1,ACL2の間の電圧の絶対値が、所定の電圧線電圧閾値ΔV以上になるという不具合が、家庭内の機器の動作に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【0078】
また、電力系統50の停電状態において、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧の絶対値が、所定の中点電圧閾値ΔV以上になった場合にも、CPU29が、インバータ回路21の出力を停止させる停止制御を実行する。これにより、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧の絶対値が、前記中点電圧閾値ΔV以上となった状態が継続するのが防止される。したがって、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧の絶対値が、中点電圧閾値ΔV以上となるという不具合が、家庭内の機器の動作に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【0079】
さらに、電力系統50の停電状態において、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流が所定の電流閾値IMax以上になった場合、及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流が所定の電流閾値IMax以上になった場合にも、CPU29が、インバータ回路21の出力を停止させる停止制御を実行する。これにより、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の少なくとも一方が、所定の電流閾値IMax以上となった状態が継続するのが防止される。したがって、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の少なくとも一方が、所定の電流閾値IMax以上となるという不具合が、家庭内の機器の動作に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【0080】
また、電力系統50の停電状態において、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の差が、所定の電流差閾値IDmax以上になった場合にも、CPU29が、インバータ回路21の出力を停止させる停止制御を実行する。これにより、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の差が、所定の電流差閾値IDmax以上となった状態が継続するのが防止される。したがって、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流の差が、所定の電流差閾値IDmax以上となるという不具合が、家庭内の機器の動作に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【0081】
また、停止制御が実行されたとき、停止制御の過去の実行回数が所定の基準回数N以下の場合には、前記停止制御の実行から所定時間の経過時に、インバータ回路21の出力を自動的に再開させる。また、停止制御の過去の実行回数が前記基準回数Nを超える場合には、入力部28がユーザによる所定の手動入力を受け付けたときにインバータ回路21の出力を再開させる。これにより、インバータ回路21が、出力の停止動作及び再開動作を自動的に多く繰り返すのが防止される。
【0082】
なお、上記実施形態では、第1~第4の条件のうちの少なくとも1つが満たされることを停止条件としたが、第1の交流電圧線ACL1と中性線NLとの間の電圧、第2の交流電圧線ACL2と中性線NLとの間の電圧、第1及び第2のコンデンサ22a,22bの中点電圧、第1の交流電圧線ACL1を流れる電流、及び第2の交流電圧線ACL2を流れる電流のうちの少なくとも2つのパラメータに基づいて満たされているか否かを判定できる他の条件を停止条件としてもよい。
【0083】
また、停止条件が満たされているかを判定するために参照する複数のパラメータを、それぞれのパラメータが電圧又は電流に関するパラメータであれば、他のパラメータとしてもよい。
【0084】
なお、上記実施形態では、CPU29が中性線電圧調整回路24に対し、第1及び第2の直流電圧に基づいて第1及び第2の直流電圧を等しくする制御を行ったが、第1及び第2の直流電圧に基づいて第1及び第2の直流電圧の差を低減させる制御であれば、上記実施形態以外の制御を行ってもよい。上記実施形態では、CPU29による中性線電圧調整回路24の制御により、第1及び第2の直流電圧を等しくできるので、第1及び第2の直流電圧を等しくしない場合に比べ、第1の交流電圧線ACL1と中性線NLとの間の電圧、及び第2の交流電圧線ACL2と中性線NLとの間の電圧のアンバランスをより効果的に抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、直流電力を交流電力に変換して単相3線式の交流電圧線及び中性線に出力する電力変換装置として有用である。
【符号の説明】
【0086】
20 電力変換装置
21 インバータ回路
22a 第1のコンデンサ
22b 第2のコンデンサ
23 直流電圧検出部
24 中性線電圧調整回路
28 入力部
29 CPU(制御部)
DCL1 第1の直流電圧線
DCL2 第2の直流電圧線
ACL1 第1の交流電圧線
ACL2 第2の交流電圧線
S7 第1の調整用スイッチング素子
S8 第2の調整用スイッチング素子
R1 第1のリアクトル
ΔV 電圧線電圧閾値
ΔV 中点電圧閾値
IMax 電流閾値
IDmax 電流差閾値
N 基準回数
図1
図2
図3
図4