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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20231110BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231110BHJP
   B23Q 41/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B23Q11/12 A
H05K7/20 N
B23Q41/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019224285
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091059
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕也
(72)【発明者】
【氏名】福永 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】林 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 涼太
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-051548(JP,U)
【文献】登録実用新案第3130502(JP,U)
【文献】特開2002-202821(JP,A)
【文献】特開2000-005955(JP,A)
【文献】特開2016-215343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/12、41/00
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持したワークに対して工具による所定の加工を加工室で実行するための各種駆動装置と、
前記駆動装置の駆動を制御する制御機器を収納した制御盤と、
ワーク洗浄やアクチュエータの駆動などに使用される作業用流体を流す流体回路と、
前記制御盤内の制御機器に冷却フィンが取り付けられ、前記制御盤から突き出すように設けられた前記冷却フィンを冷却ボックスで覆い、前記冷却ボックス内には冷却部配管が前記冷却フィンに近接して設けられ、前記冷却部配管には前記流体回路が接続され、前記流体回路を流れる前記作業用流体を前記冷却ボックス内に通すようにした冷却装置と、
有し、
前記冷却装置は、前記作業用流体の一つであるクーラントを流すクーラント用配管が前記冷却部配管に接続されたものであり、クーラントを流す前記流体回路には前記冷却ボックスの上流であって、前記加工室の下流にクーラント冷却器が設けられ、前記冷却ボックス内を流れるクーラントを冷却するようにした工作機械。
【請求項2】
ベースと、
前記ベースの上面に敷設されたレールに沿って機体前後方向の移動が可能な車輪を備えた可動ベッドと、
前記可動ベッドの上に組み付けられた、回転自在な主軸に対して設けられた主軸チャックが把持したワークを主軸モータによって回転させる主軸装置と、複数の工具を取り付けた工具台の旋回割出しによって加工室におけるワーク加工に対応した前記工具を選択して位置決めするタレット装置と、前記タレット装置を機体前後方向および機体上下方向に移動させる駆動装置と、前記可動ベッドの機体後方に搭載され、主軸装置および前記駆動装置の駆動を制御する制御機器を収納した制御盤と、で構成された加工モジュールと、
前記ベースと前記加工モジュールに形成され、ワーク洗浄やアクチュエータの駆動などに使用される作業用流体を流す流体回路と、
前記制御盤内の制御機器に冷却フィンが取り付けられ、前記制御盤から前記加工室側で前記主軸装置よりも上方に突き出すように設けられた前記冷却フィンを冷却ボックスで覆い、前記冷却ボックス内には冷却部配管が前記冷却フィンに近接して設けられ、前記冷却部配管には前記流体回路が接続され、前記流体回路を流れる前記作業用流体を前記冷却ボックス内に通すようにした冷却装置と、を有する複数の前記加工モジュールが接近した状態で前記ベースの上に搭載されている加工機械ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラントなどの作業用流体を使用して制御盤内の制御機器を冷却する冷却装置を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の作業機からなる加工機械ラインは、例えば下記特許文献1に示すように、工作機械などの作業機がモジュール化され、それが機体幅方向に並べられて、且つ前後方向に移動するように構成されたものがある。同文献の工作機械など(加工モジュール)は、搭載されたベース上のレールに従って移動する構成がとられ、車輪を備えた可動ベッドに旋盤やマシニングセンタなどの作業機本体が組み付けられている。特に、同文献の加工モジュールは、幅方向の寸法が小さく設計され、隣同士の配置が接近していることで加工機械ライン全体がコンパクトな構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2016/063421号公報
【文献】特開2001-269838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記加工機械ラインは、隣同士の加工モジュールが接近しているため、加工モジュールに対する部品交換やメンテナンスなどを行う場合には、作業が可能な位置まで加工モジュールがレール上を移動し、前方または後方へと引き出される。しかし、こうした加工モジュールの移動は作業者にとって面倒なものである。特に、外気を取り入れて制御盤の制御機器を冷却する空冷装置を備えた工作機械が存在するが、そこに設けられたフィルタの交換をするためだけに加工モジュールを移動させることは手間であった。フィルタの汚れがワーク加工に対して直接且つ直ちに影響することがないからであり、その結果、作業者にとってフィルタ交換作業は疎かにしてしまう傾向にあった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、作業用流体を用いた冷却装置を備えた工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械は、把持したワークに対して工具による所定の加工を加工室で実行するための各種駆動装置と、前記駆動装置の駆動を制御する制御機器を収納した制御盤と、ワーク洗浄やアクチュエータの駆動などに使用される作業用流体を流す流体回路と、前記制御盤内の制御機器に冷却フィンが取り付けられ、前記制御盤から突き出すように設けられた前記冷却フィンを冷却ボックスで覆い、前記冷却ボックス内には冷却部配管が前記冷却フィンに近接して設けられ、前記冷却部配管には前記流体回路が接続され、前記流体回路を流れる前記作業用流体を前記冷却ボックス内に通すようにした冷却装置と、を有し、前記冷却装置は、前記作業用流体の一つであるクーラントを流すクーラント用配管が前記冷却部配管に接続されたものであり、クーラントを流す前記流体回路には前記冷却ボックスの上流であって、前記加工室の下流にクーラント冷却器が設けられ、前記冷却ボックス内を流れるクーラントを冷却するようにしたものである
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、工作機械の制御盤に冷却装置を設け、制御機器に取り付けた冷却フィンを覆った冷却ボックス内に作業用流体を通すことにより、その作業用流体が熱媒体となって制御盤内の制御機器から熱を奪うため、制御機器の温度上昇が抑えられて故障などの不具合を回避できる。そして、冷却ボックス内には外気取り入れるようなことはなく、クーラントなどの作業用流体を例えば冷却ボックスを貫通したクーラント用配管を通すため、フィルタ交換を行う必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の一実施形態について内部構造を示した側面図である。
図2】冷却装置の第1実施形態のイメージ図である。
図3】冷却装置の第2実施形態のイメージ図である。
図4】工作機械を含んだ加工機械ラインを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図4は、本実施形態の工作機械を含んだ加工機械ラインを示す正面図である。この加工機械ライン1は、前記従来例と同様に、旋盤やマシニングセンタ或いは検測機などが並べられたものであり、モジュール化された各種作業機(以下、「加工モジュール」という)2によって構成されている。加工機械ライン1は、全ての加工モジュール2が同じ形状の外装カバー201によって覆われ、隣り合う加工モジュール2同士が接近した状態でベース3の上に搭載されている。
【0010】
図1は、そうした加工モジュール2の一つである工作機械10の内部構造を示した側面図である。工作機械10は、車輪を備えた可動ベッド11の上に組み付けられ、ベース3の上面に敷設されたレール301に沿って前後方向(Z軸方向)の移動が可能な構成となっている。そして、可動ベッド11には主軸装置12などの各種駆動装置が搭載され、機体後方に搭載された制御盤13によって前記各種駆動装置の駆動制御が行われるよう構成されている。
【0011】
主軸装置12は、回転自在な主軸に対して主軸チャック21が設けられ、把持したワークWを主軸モータによって回転させるものである。工作機械10には複数の工具からワーク加工に対応したものを選択するタレット装置14が設けられている。タレット装置14は、複数の工具を取り付けた工具台141の旋回割出しによって、加工を行う工具を選択して位置決めするものである。そして、その工具を加工位置に移動させる駆動装置は、該当工具を機体前後方向であるZ軸方向に移動させるZ軸駆動装置15および、機体上下方向であるX軸方向に移動させるX軸駆動装置16である。
【0012】
加工機械ライン1は、不図示のワーク自動搬送機によってワークWが搬送される。工作機械10は、そのワーク自動搬送機との受け渡しによって主軸チャック21にワークWが把持され、主軸装置12の駆動によって回転が与えられる。また、タレット装置14では旋回割出しによって当該ワークWの加工に用いられる工具が選択される。そして、Z軸駆動装置15やX軸駆動装置16の駆動によりタレット装置14ごと工具が加工軸方向に移動し、ワークWに対する所定の加工が行われる。ワークWの加工後には、主軸チャック21に対して加工済みワークWが新たなワークWに取り換えられ、繰り返しワークの自動加工が行われる。
【0013】
工作機械10は、加工を行う加工室20の下側に貯留槽23への投入口が形成され、ワークWの加工によって発生した切屑などが落下して貯留槽23内に溜められるようになっている。その貯留槽23にはスクリューコンベアが組み込まれているため、切屑はスクリューの回転によって機体後方へと押し流され、外部の回収ボックスへと排出される。また、工作機械10は、潤滑や切屑の洗い流しのためのクーラントおよび、清掃やアクチュエータを作動させるための圧縮エアといった作業用流体が使用される。特にクーラントは、加工室20内への噴射によって切屑などを洗い流すため、その切屑などとともに貯留槽23へと流れ落ちて溜められる。
【0014】
工作機械10は、クーラントを繰り返し使用できるようにしたクーラント回路が構成されている。貯留槽23内に溜まったクーラントには切粉なども含まれているためそのままでは使用できない。そこで、クーラントタンク25へと送られる間にフィルタなどによって異物が除去され、再生したクーラントがポンプ26によって再び送り出される。また、加工箇所に噴きかけられるクーラントは、加工熱によって温度が上がってしまうため、そのままではワークWに対する熱変位を引き起こして加工精度を低下させてしまう。そこで、工作機械10は、クーラントを冷却するクーラント冷却器27が用いられる。
【0015】
次に、本実施形態の工作機械10は、これまで作業用流体として使用されてきたクーラントを用いた冷却装置17が設けられている。工作機械10の制御機器は制御盤13内に収められているため、稼働時間が長くなると制御機器の温度が上昇して故障の原因になる。そこで、工作機械10には制御盤13の前面に冷却装置17が一体に設けられている。冷却装置17は、制御盤13内の制御機器に取り付けられた冷却フィン31が制御盤13から突き出し、その冷却フィン31が図2に示すように冷却ボックス32に覆われている。図2は、冷却装置17のイメージ図である。
【0016】
冷却装置17は、図1から分かるように制御盤13の前面、つまり機内奥に位置している。そしてこれまではファンを使用した空冷装置であったため、課題でも述べたように、外気を取り込む窓のフィルタ交換が非常に手間のかかる作業であった。そこで、フィルタ交換を必要としない他の冷却方法を使用した装置が求められていた。例えば、上記特許文献2には、工作機械の制御盤内を冷却するため、圧縮ポンプによって圧縮した冷却空気を冷却空気貯留タンクに貯留し、そこからエアチューブを介して制御ボックス内に冷却空気を供給する冷却空気供給装置が開示されている。
【0017】
しかし、こうした冷却装置は、貯留タンク内の冷却空気を制御ボックス内に直接送り込むものであるためフィルタ交換は必要なくなるものの、装置が複雑で大型化するため、工作機械10のようなコンパクトな構成のものには適していない。また、貯留タンク内の冷却空気を垂れ流しすることになるため効率も良くない。そこで、本実施形態の工作機械10では、作業用流体として使用されているクーラントを、そのまま熱媒体としても用いる冷却装置17が構成されている。
【0018】
工作機械10のクーラント回路では、図1に示すように、ポンプ26から送り出されたクーラントは機内に通されたクーラント用配管28を流れて加工室20などへと送られる。冷却装置17では、そのクーラント用配管28の一部を構成する冷却部配管33が冷却ボックス32内を貫通している。具体的には、冷却ボックス32の中を入力側から出力側へと冷却部配管33が通り、そこにクーラント用配管28が連結されている。図2に示すように、冷却ボックス32内には、2本の冷却部配管33が冷却フィン31に近接して設けられている。冷却部配管33は、クーラント用配管28そのものであってもよく、冷却効果を高めるように表面積を増やした別のパイプなどであってもよい。
【0019】
冷却装置17は冷却部配管33が2本用いられているため、入力側にはクーラント用配管28が二股に分かれて接続され、出力側ではクーラント用配管28が1本にまとめられている。また、冷却装置17の冷却部配管は、このような構成に限定されず、例えば1本の冷却部配管が冷却フィン31の周りを通るように折り曲げられたものであってもよい。図2に示す冷却部配管33も直線的な構成であるが、冷却効果を高めるため冷却フィン31の周りで折り返すなど配管構造は自由である。
【0020】
ワーク加工が行われる工作機械10は、前述したようにポンプ26の駆動によってクーラント用配管28を通してクーラントが送られ、加工室20内での噴射によってワークの冷却などが行われる。そうしたクーラントは貯留槽23へと流れ落ちて溜められ、切粉などが除去された状態でクーラントタンク25へと戻ってクーラント冷却器27へと送られる。そして、クーラント冷却器27において冷却されたクーラントは、ポンプ26によって再びクーラント用配管28へと送り出される。
【0021】
工作機械10の稼働中は、こうして冷却されたクーラントが冷却装置17内の冷却部配管33を流れている。そのため、制御盤13内の制御機器が発する熱は冷却装置17内の冷却フィン31へと伝わり、冷却部配管33を流れるクーラントが熱媒体として冷却フィン31から熱を奪っていく。なお、クーラントはワークの熱を取るために使用されるものであるため、それ自体が熱を持ってしまっては冷却機能を発揮できない。従って、こうした点を考慮してクーラント冷却器27によるクーラントの冷却温度や、冷却装置17内における冷却部配管33と冷却フィン31との距離などが設定される。
【0022】
よって、本実施形態の工作機械10では、稼働時間が長くなったとしても冷却装置17によって制御機器の温度上昇が抑えられるため、制御盤13は故障などの不具合を回避できる。冷却装置17は、工作機械10に作業用流体として使用されているクーラントを利用するので、新たな装置を追加する必要がなく、コストをかけずに前記効果を達成することができる。また、クーラント回路を構成するクーラント用配管28の途中に冷却部配管33を設けた構成であるため、空冷装置のようにフィルタ交換などのメンテナンスが必要なくなり手間がかからない。
【0023】
次に、工作機械10に使用される作業用流体には前記クーラントの他に、アクチュエータを作動させたり主軸チャック21の切粉を清掃するために使用する圧縮エアがある。図3は、その圧縮エアを使用した工作機械10における冷却装置の第2実施形態を示したイメージ図である。本実施形態の冷却装置18は、前記冷却装置17と同様に、制御盤13内の制御機器に取り付けられた冷却フィン31が冷却ボックス35内に突き出している。そして、冷却装置18は、その冷却フィン31に対して圧縮エアを当てるように構成されている。
【0024】
工作機械10にはアクチュエータなどへ圧縮エアを送り込むためエア回路が構成され、冷却装置18には、そのエアコンプレッサからエアチューブを介して冷却ボックス35内に圧縮エアが送り込まれるよう構成されている。閉じられた空間の冷却ボックス35には底面にエア注入口36が形成され、そこから供給された圧縮エアが冷却フィン31に当たり、側面に形成されたエア排出口37から排出されるようになっている。そこで、工作機械10の稼働中は、冷却装置18内に送り込まれた圧縮エアが熱媒体となり冷却フィン31から熱を奪って排出される。
【0025】
よって、冷却装置18によれば、工作機械10の稼働時間が長くなったとしても制御機器の温度上昇が抑えられるため、制御盤13は故障などの不具合を回避できる。また、冷却装置18は、工作機械10に作業用流体として使用されている圧縮エアを利用して冷却するので、新たな装置を追加する必要がなく、コストをかけずに前記効果を達成することができる。更に、冷却装置18は、従来のような外気を取り入れる空冷装置とは異なり、フィルタ交換といった作業を省くことができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記第1実施形態の冷却装置17は熱媒体としてクーラントを使用したが、冷却ボックス32に対してエア回路の一部を圧縮エア用配管として貫通し、熱媒体として圧縮エアを流すようにしてもよい。
また、前記実施形態では、モジュール化された加工機械ラインの工作機械を例に挙げて説明したが、冷却装置は特にこうした工作機械に限るものではない。
【符号の説明】
【0027】
1…加工機械ライン 2…加工モジュール 10…工作機械 12…主軸装置 13…制御盤 14…タレット装置 15…Z軸駆動装置 16…X軸駆動装置 17…冷却装置 25…クーラントタンク 26…ポンプ 27…クーラント冷却器 28…クーラント用配管 31…冷却フィン 32…冷却ボックス 33…冷却部配管

図1
図2
図3
図4