(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ガス系消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 37/00 20060101AFI20231110BHJP
A62C 35/13 20060101ALI20231110BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A62C37/00
A62C35/13
G08B17/00 J
(21)【出願番号】P 2019231371
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】小島 美典
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036575(JP,A)
【文献】特開2001-061984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00-99/00
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び回線スイッチ部を備えた複数の回線ユニットと、
前記複数の回線ユニットの各々に対応した防護区画毎に設けられ、制御部、伝送部、操作箱側表示器及び起動スイッチを備えた操作箱と、
前記制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び制御盤側表示器を備えた制御盤表示ユニットと、
を有し、
前記複数の回線ユニットの伝送部にシリアル伝送路を介して各回線ユニットに対応した前記複数の操作箱の伝送部が接続されると共に、前記シリアル伝送路から分岐した分岐シリアル伝送路に前記回線スイッチ部を介して前記制御盤表示ユニットの伝送部が接続され、
所定の使用条件の成立に基づき前記制御盤側表示器の使用権を取得した前記回線ユニットは、前記回線スイッチ部をオンして前記シリアル伝送路に前記分岐シリアル伝送路を接続し、前記分岐シリアル伝送路を含む前記シリアル伝送路に所定の表示情報を送出して前記制御盤側表示器及び又は前記操作箱側表示器に、前記表示情報を表示させ、
前記回線ユニットの制御部は、
自己の防護区画に消火ガスを放出する起動装置を起動する権利を表す起動権を取得した場合に前記使用条件の成立と判断して前記使用権を取得し、前記回線スイッチ部をオンして前記シリアル伝送路に前記分岐シリアル伝送路を接続し、カウントダウンの時刻情報を含む下り信号を、前記分岐シリアル伝送路を含む前記シリアル伝送路に送出して前記制御盤側表示器及び前記操作箱側表示器に、カウントダウンの残り時間を共通表示させ、
前記カウントダウンの終了により前記防護区画に消火ガスを放出した場合、手動モードによる消火ガスの放出では前記制御盤側表示器に前記起動スイッチの操作を行った操作箱のアドレスを表示させ、自動モードによる消火ガスの放出では前記制御盤側表示器に火災発報した火災感知器の作動履歴情報を表示させることを特徴とするガス系消火設備。
【請求項2】
制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び回線スイッチ部を備えた複数の回線ユニットと、
前記複数の回線ユニットの各々に対応した防護区画毎に設けられ、制御部、伝送部及び操作箱側表示器を備えた操作箱と、
前記制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び制御盤側表示器を備えた制御盤表示ユニットと、
を有し、
前記複数の回線ユニットの伝送部にシリアル伝送路を介して各回線ユニットに対応した前記複数の操作箱の伝送部が接続されると共に、前記シリアル伝送路から分岐した分岐シリアル伝送路に前記回線スイッチ部を介して前記制御盤表示ユニットの伝送部が接続され、
所定の使用条件の成立に基づき前記制御盤側表示器の使用権を取得した前記回線ユニットは、前記回線スイッチ部をオンして前記シリアル伝送路に前記分岐シリアル伝送路を接続し、前記分岐シリアル伝送路を含む前記シリアル伝送路に所定の表示情報を送出して前記制御盤側表示器及び又は前記操作箱側表示器に、前記表示情報を表示させ、
前記回線ユニットの制御部は、
自己の防護区画に消火ガスを放出する起動装置を起動する権利を表す起動権を取得した場合に前記使用条件の成立と判断して前記使用権を取得し、前記回線スイッチ部をオンして前記シリアル伝送路に前記分岐シリアル伝送路を接続し、カウントダウンの時刻情報を含む下り信号を、前記分岐シリアル伝送路を含む前記シリアル伝送路に送出して前記制御盤側表示器及び前記操作箱側表示器に、カウントダウンの残り時間を共通表示させ、
前記カウントダウン中に前記操作箱に設けた非常停止スイッチの操作を検出した場合、前記カウントダウンを中止して前記制御盤側表示器に前記非常停止スイッチの受付けを示す所定の情報を表示させることを特徴とするガス系消火設備。
【請求項3】
制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び回線スイッチ部を備えた複数の回線ユニットと、
前記複数の回線ユニットの各々に対応した防護区画毎に設けられ、制御部、伝送部及び操作箱側表示器を備えた操作箱と、
前記制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び制御盤側表示器を備えた制御盤表示ユニットと、
を有し、
前記複数の回線ユニットの伝送部にシリアル伝送路を介して各回線ユニットに対応した前記複数の操作箱の伝送部が接続されると共に、前記シリアル伝送路から分岐した分岐シリアル伝送路に前記回線スイッチ部を介して前記制御盤表示ユニットの伝送部が接続され、
所定の使用条件の成立に基づき前記制御盤側表示器の使用権を取得した前記回線ユニットは、前記回線スイッチ部をオンして前記シリアル伝送路に前記分岐シリアル伝送路を接続し、前記分岐シリアル伝送路を含む前記シリアル伝送路に所定の表示情報を送出して前記制御盤側表示器及び又は前記操作箱側表示器に、前記表示情報を表示させ、
前記回線ユニットは、前記操作箱の表示試験を行った場合に、前記使用条件の成立と判断して使用権を取得し、前記回線スイッチ部をオンして前記シリアル伝送路に前記分岐シリアル伝送路を接続し、前記制御盤側表示器及び又は前記操作箱側表示器に前記表示試験を行った前記操作箱のアドレスを表示させることを特徴とするガス系消火設備。
【請求項4】
制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び回線スイッチ部を備えた複数の回線ユニットと、
前記複数の回線ユニットの各々に対応した防護区画毎に設けられ、制御部、伝送部及び操作箱側表示器を備えた操作箱と、
前記制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び制御盤側表示器を備えた制御盤表示ユニットと、
を有し、
前記複数の回線ユニットの伝送部にシリアル伝送路を介して各回線ユニットに対応した前記複数の操作箱の伝送部が接続されると共に、前記シリアル伝送路から分岐した分岐シリアル伝送路に前記回線スイッチ部を介して前記制御盤表示ユニットの伝送部が接続され、
所定の使用条件の成立に基づき前記制御盤側表示器の使用権を取得した前記回線ユニットは、前記回線スイッチ部をオンして前記シリアル伝送路に前記分岐シリアル伝送路を接続し、前記分岐シリアル伝送路を含む前記シリアル伝送路に所定の表示情報を送出して前記制御盤側表示器及び又は前記操作箱側表示器に、前記表示情報を表示させ、
前記回線ユニットは、前記使用条件が成立した場合、他の回線ユニットによる使用権の取得がないことを条件に使用権を仮取得して所定時間後に前記仮取得した使用権を開放し、続いてランダムに割り当てられる所定時間後に他の回線ユニットが使用権を取得していないことを条件に使用権を正式に取得して前記制御盤側表示器に所定の情報を表示させることを特徴とするガス系消火設備。
【請求項5】
制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び回線スイッチ部を備えた複数の回線ユニットと、
前記複数の回線ユニットの各々に対応した防護区画毎に設けられ、制御部、伝送部及び操作箱側表示器を備えた操作箱と、
前記制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び制御盤側表示器を備えた制御盤表示ユニットと、
を有し、
前記複数の回線ユニットの伝送部にシリアル伝送路を介して各回線ユニットに対応した前記複数の操作箱の伝送部が接続されると共に、前記シリアル伝送路から分岐した分岐シリアル伝送路に前記回線スイッチ部を介して前記制御盤表示ユニットの伝送部が接続され、
所定の使用条件の成立に基づき前記制御盤側表示器の使用権を取得した前記回線ユニットは、前記回線スイッチ部をオンして前記シリアル伝送路に前記分岐シリアル伝送路を接続し、前記分岐シリアル伝送路を含む前記シリアル伝送路に所定の表示情報を送出して前記制御盤側表示器及び又は前記操作箱側表示器に、前記表示情報を表示させ、
前記複数の回線ユニットの間が使用権取得信号線により相互接続され、
前記使用権を取得した回線ユニットは、前記使用権取得信号線に使用権取得信号を出力して他の回線ユニットに使用権の取得を通知することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項6】
請求項
1又は2記載のガス系消火設備に於いて、
前記使用権を取得した回線ユニットは、他の回線ユニットが前記起動権を取得した場合、前記使用権を前記起動権を取得した回線ユニットに移すことを特徴とするガス系消火設備。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のガス系消火設備に於いて、
前記複数の回線ユニットは、前記制御盤側表示器の使用権取得の有無にかかわらず、前記複数の操作箱のアドレス及び前記制御盤表示ユニットのアドレスを順次指定した表示情報を含む下り信号を所定の上り信号割当て時間を空けて前記シリアル伝送路に順次送信し、
前記複数の操作箱は、前記シリアル伝送路から受信した自己アドレスを指定した前記下り信号に含まれる前記表示情報を前記操作箱側表示器に表示すると共に、自己アドレス及びスイッチのオンオフ状態を示すデータを含む上り信号を生成して前記シリアル伝送路に送信し、
前記制御盤表示ユニットは、前記分岐シリアル伝送路から受信した自己アドレスを指定した前記下り信号に含まれる前記表示情報を前記制御盤側表示器に表示すると共に自己アドレス及び所定の状態を示すデータを含む上り信号を生成して送信することを特徴とするガス系消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の防護区画に二酸化炭素等の消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災発生時に二酸化炭素やハロンガス等の消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備は、水損や汚損を嫌う機器を設置している室内において、消火による機器損失を最小限に抑えつつ迅速な消火を行うことを可能とする。
【0003】
このようなガス系消火設備は、制御盤に自動モードを設定していた場合には、防護区画に設置した2系統に接続された各火災感知器からの火災発報(2系統のAND発報)があった場合に、ガス放出する起動条件が成立したと判断して所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了すると、制御盤から起動装置に起動信号を出力して動作し、起動装置から二酸化炭素等の開放ガスを防護区画に対応したガス供給配管に設けた選択弁に供給して開くと共に消火ガス貯蔵容器の栓を開け、噴射ヘッドから消火ガスを放出する。
【0004】
また制御盤に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器の発報によって火災を発見し、防護区画に設置した操作箱の扉を開いて起動スイッチを押した場合にガス放出する起動条件が成立したと判断して制御盤がカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了すると同様にして消火ガスを放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-036575号公報
【文献】特開2016-120035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような従来のガス系消火設備にあっては、制御盤に複数の回線ユニットを設け、各回線ユニットに複数の防護区画を対応させ、防護区画毎に火災感知器、操作箱、起動装置、噴出ヘッド及びスピーカ等の設備機器を設置し、回線ユニット毎に自動モード又は手動モードによる消火ガスの放出制御を行うようにしており、回線ユニットは起動条件が成立してカウントダウンを開始すると、操作箱に設けた7セグメント表示器及び制御盤に設けた7セグメント表示器に、カウントダウンの残り時間を表示し、関係者に消火ガス放出までの時間経過が分かるようにしている。
【0007】
この場合、制御盤に設けた7セグメント表示器は複数の回線ユニットで共用しており、起動条件が成立した回線ユニットに制御盤の7セグメント表示器の使用を占有させてカウントダウンの残り時間を表示させる排他制御が必要となる。
【0008】
このような複数の回線ユニットの何れかに制御盤の7セグメント表示器の使用を占有させる排他制御は、複数の回線ユニットから使用要求を受け付け、競合する場合に特定の回線ユニットに使用権を割り当てる制御と、使用権を割り当てた回線ユニットを制御盤の7セグメント表示器に選択的に接続してカウントダウン残り時間を表示させる制御とを行う専用の排他制御ユニットを、複数の回線ユニットと表示制御ユニットの間に設けることが必要となり、制御盤の構成及び制御が複雑化し、コストアップになる問題がある。
【0009】
この問題を解決するためには、制御盤に7セグメント表示器を設けず、操作箱にのみ7セグメント表示器を設けてカウントダウンの残り時間を表示すれば良く、制御盤でカウントダウン残り時間を表示していなくとも、操作箱で表示していれば、運用上問題はない。
【0010】
しかしながら、制御盤に7セグメント表示器を設けた場合には、カウントダウンの残り時間の表示以外に、例えば手動モードで消火ガスを放出した場合の操作箱のアドレス表示、自動モードで消火ガスを放出した場合の作動した火災感知器の表示といった履歴表示等に利用することが望まれるが、制御盤の7セグメント表示器を廃止するとこのような表示機能が実現できなくなる。
【0011】
本発明は、専用の排他制御ユニット等を必要とすることなく、複数の回線ユニットで共用する制御盤に設けた表示器の使用権を取得してカウントダウン表示、消火ガス放出後の履歴表示等を、簡単な構成及び制御により実現可能とするガス系消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(使用権の取得とシリアル伝送路の接続)
本発明のガス系消火設備は、
制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び回線スイッチ部を備えた複数の回線ユニットと、
複数の回線ユニットの各々に対応した防護区画毎に設けられ、制御部、伝送部及び操作箱側表示器を備えた操作箱と、
制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び制御盤側表示器を備えた制御盤表示ユニットと、
を有し、
複数の回線ユニットの伝送部から引き出されたシリアル伝送路に、各回線ユニットに対応した複数の操作箱の伝送部を接続すると共に、複数の回線ユニットの伝送部から引き出されたシリアル伝送路から分岐した分岐シリアル伝送路を、回線スイッチ部を介して制御盤表示ユニットの伝送部に接続し、
所定の使用条件の成立に基づき制御盤側表示器の使用権を取得した回線ユニットは、回線スイッチ部をオンしてシリアル伝送路に分岐シリアル伝送路を接続し、分岐シリアル伝送路を含むシリアル伝送路に所定の表示情報を送出して制御盤側表示器及び又は操作箱側表示器に、表示情報を表示させることを特徴とする。
【0013】
(伝送信号形式と伝送手順)
複数の回線ユニットは、制御盤側表示器の使用権取得の有無にかかわらず、複数の操作箱のアドレス及び制御盤表示ユニットのアドレスを順次指定した表示情報を含む下り信号を所定の上り信号割当て時間を空けてシリアル伝送路に順次送信し、
複数の操作箱は、シリアル伝送路から受信した自己アドレスを指定した下り信号に含まれる表示情報を操作箱側表示器に表示すると共に、自己アドレス及びスイッチのオンオフ状態を示すデータを含む上り信号を生成してシリアル伝送路に送信し、
制御盤表示ユニットは、分岐シリアル伝送路から受信した自己アドレスを指定した下り信号に含まれる表示情報を制御盤側表示器に表示すると共に自己アドレス及び所定の状態を示すデータを含む上り信号を生成して送信する。
【0014】
(カウントダウン表示)
回線ユニットの制御部は、自己の防護区画に消火ガスを放出する起動装置を起動する起動権を取得した場合に使用条件の成立と判断して使用権を取得し、回線スイッチ部をオンしてシリアル伝送路に分岐シリアル伝送路を接続し、カウントダウンの時刻情報を含む下り信号を、分岐シリアル伝送路を含むシリアル伝送路に送出して制御盤側表示器及び操作箱側表示器に、カウントダウンの残り時間を共通表示させる。
【0015】
(ガス放出後の表示)
回線ユニットは、カウントダウンの終了により防護区画に消火ガスを放出した場合、手動モードによる消火ガスの放出では制御盤側表示器に起動スイッチの操作を行った操作箱のアドレスを表示させ、自動モードによる消火ガスの放出では制御盤側表示器に火災発報した火災感知器の作動履歴情報を表示させる。
【0016】
(カウントダウン中の非常停止操作)
回線ユニットは、カウントダウン中に操作箱に設けた非常停止スイッチの操作を検出した場合、カウントダウンを中止して制御盤側表示器に非常停止スイッチの受付けを示す所定の情報を表示させる。
【0017】
(操作箱表示試験のアドレス表示)
回線ユニットは、操作箱の表示試験を行った場合に、使用条件の成立と判断して使用権を取得し、回線スイッチ部をオンしてシリアル伝送路に分岐シリアル伝送路を接続し、制御盤側表示器及び又は操作箱側表示器に表示試験を行った操作箱のアドレスを表示させる。
【0018】
(使用権取得の排他制御)
回線ユニットで使用条件が成立した場合、他の回線ユニットによる使用権の取得がないことを条件に使用権を仮取得して所定時間後に仮取得した使用権を開放し、続いてランダムに割り当てられる所定時間後に他の回線ユニットが使用権を取得していないことを条件に使用権を正式に取得して制御盤側表示器に所定の情報を表示させる。
【0019】
(7セグメント表示器)
制御盤側表示器及び操作箱側表示器は、所定桁数の7セグメント表示器である。
【0020】
(起動権取得の相互通知)
複数の回線ユニットの間を使用権取得信号線により相互接続し、使用権を取得した回線ユニットは使用権取得信号線に使用権取得信号を出力して他の回線ユニットに使用権の取得を通知する。
【0021】
(使用権の移動)
複数の回線ユニットの何れかで使用権を取得し、他の回線ユニットが起動権を取得した場合、使用権は起動権を取得した回線ユニットに移す。
【発明の効果】
【0022】
(使用権の取得とシリアル伝送路の接続による効果)
本発明のガス系消火設備は、制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び回線スイッチ部を備えた複数の回線ユニットと、複数の回線ユニットの各々に対応した防護区画毎に設けられ、制御部、伝送部及び操作箱側表示器を備えた操作箱と、制御盤に設けられ、制御部、伝送部及び制御盤側表示器を備えた制御盤表示ユニットとを有し、複数の回線ユニットの伝送部から引き出されたシリアル伝送路に、各回線ユニットに対応した複数の操作箱の伝送部を接続すると共に、記複数の回線ユニットの伝送部から引き出されたシリアル伝送路から分岐した分岐シリアル伝送路を、回線スイッチ部を介して制御盤表示ユニットの伝送部に接続し、所定の使用条件の成立に基づき制御盤側表示器の使用権を取得した回線ユニットは、回線スイッチ部をオンしてシリアル伝送路に分岐シリアル伝送路を接続し、分岐シリアル伝送路を含むシリアル伝送路に所定の表示情報を送出して制御盤側表示器及び又は操作箱側表示器に、表示情報を表示させるようにしたため、制御盤表示ユニットは操作箱と同じシリアル伝送機能を備えたユニットであり、何れかの回線ユニットで制御盤側表示器の使用権を取得した場合に、回線スイッチ部をオンして操作箱のシリアル伝送路に制御盤表示ユニットの分岐シリアル伝送路を接続して、回線ユニットから所定の表示情報をシリアル伝送することで、制御盤側表示器に操作箱側表示器し同じ情報又は固有の情報を表示することができ、シリアル伝送路に対する分岐シリアル伝送路の選択的な接続という簡単な構成及び制御で使用権を取得した回線ユニットに制御盤側表示器を占有させて必要な情報を表示可能とする。
【0023】
(伝送信号形式と伝送手順による効果)
また、複数の回線ユニットは、制御盤側表示器の使用権取得の有無にかかわらず、複数の操作箱のアドレス及び制御盤表示ユニットのアドレスを順次指定した表示情報を含む下り信号を所定の上り信号割当て時間を空けてシリアル伝送路に順次送信し、複数の操作箱は、シリアル伝送路から受信した自己アドレスを指定した下り信号に含まれる表示情報を操作箱側表示器に表示すると共に、自己アドレス及びスイッチのオンオフ状態を示すデータを含む上り信号を生成してシリアル伝送路に送信し、制御盤表示ユニットは、分岐シリアル伝送路から受信した自己アドレスを指定した下り信号に含まれる表示情報を制御盤側表示器に表示すると共に自己アドレス及び所定の状態を示すデータを含む上り信号を生成して送信するようにしたため、回線ユニットと操作箱との間で伝送する下り信号と上り信号に、制御盤側表示器の使用権取得の有無にかかわらず常に操作盤表示ユニットの割当領域を持つ信号形式とすることで、回線ユニットが使用権を取得した場合、下り信号の操作盤表示ユニットの割当領域に表示情報をセットするだけで、制御盤表示ユニットに表示情報を送って制御盤表示器に簡単且つ確実に表示することを可能とする。
【0024】
(カウントダウン表示)
また、回線ユニットは、自己の防護区画に消火ガスを放出する起動装置を起動する権利を表す起動権を取得した場合に使用条件の成立と判断して使用権を取得し、回線スイッチ部をオンしてシリアル伝送路に分岐シリアル伝送路を接続し、カウントダウンの時刻情報を含む下り信号を、分岐シリアル伝送路を含むシリアル伝送路に送出して制御盤側表示器及び操作箱側表示器に、カウントダウンの残り時間を共通表示させるようにしたため、分岐シリアル伝送路をシリアル伝送路に接続するという簡単な制御で、操作箱側表示器と同じカウントダウン残り時間を制御盤側表示器に表示して、制御盤においてもカウントダウンの時間経過を確認可能とする。
【0025】
(ガス放出後の表示)
また、回線ユニットは、カウントダウンの終了により防護区画に消火ガスを放出した場合、手動モードによる消火ガスの放出では制御盤側表示器に起動スイッチの操作を行った操作箱のアドレスを表示させ、自動モードによる消火ガスの放出では制御盤側表示器に火災発報した火災感知器の作動履歴情報を表示させるようにしたため、消火ガス放出後に制御盤側表示器を見ることで、消火ガス放出の起動がどのようにして行われたかを簡単且つ容易に把握可能とする。
【0026】
(カウントダウン中の非常停止操作)
また、回線ユニットは、カウントダウン中に操作箱に設けた非常停止スイッチの操作を検出した場合、カウントダウンを中止して制御盤側表示器に非常停止スイッチの受付けを示す所定の情報を表示させるようにしたため、カウントダウン中に操作箱で非常停止操作を行ってカウントダウンを中止した場合、消火ガス放出後に制御盤側表示器を見ることで、操作箱で行った非常停止操作が有効に受け付けられたことが、簡単且つ容易に確認可能とする。
【0027】
(操作箱表示試験のアドレス表示による効果)
また、回線ユニットは、操作箱の表示試験を行った場合に、使用条件の成立と判断して使用権を取得し、回線スイッチ部をオンしてシリアル伝送路に分岐シリアル伝送路を接続し、制御盤側表示器及び又は操作箱側表示器に表示試験を行った操作箱のアドレスを表示させるようにしたため、例えば設備施工の際に、操作箱に設けた例えばランプテストスイッチ等を操作して操作箱の試験を行うと、制御盤側表示器に試験を行った操作箱のアドレスが表示され、操作箱のアドレスを正しく設定しているか否かを簡単且つ確実に調べることを可能とする。
【0028】
(使用権取得の排他制御による効果)
また、回線ユニットで使用条件が成立した場合、他の回線ユニットによる使用権の取得がないことを条件に使用権を仮取得して所定時間後に仮取得した使用権を開放し、続いてランダムに割り当てられる所定時間後に他の回線ユニットが使用権を取得していないことを条件に使用権を正式に取得して制御盤側表示器に所定の情報を表示させるようにしたため、使用権の取得に必要な所定の処理時間の間に複数の回線ユニットで制御盤側表示器の使用条件が成立した場合、それぞれに使用権取得タイミングを決める異なる所定の使用権開放時間を割り当てることで、何れか1つの回線ユニットに使用権を取得させ、使用条件の成立順に拘束されることなく複数の回線ユニットに使用権取得の機会を均等に与える排他制御を可能とする。
【0029】
(7セグメント表示器による効果)
また、制御盤側表示器及び操作箱側表示器は、所定桁数の7セグメント表示器としたため、カウントダウンの残り時間を示す数値表示に加え、起動操作した操作箱アドレス、作動した火災感知器履歴、非常停止受付けといった情報を簡単なアルファベットによる記号表示で示すことを可能とする。
【0030】
(起動権取得の相互通知による効果)
また、複数の回線ユニットの間を使用権取得信号線により相互接続し、使用権を取得した回線ユニットは使用権取得信号線に使用権取得信号を出力して他の回線ユニットに使用権の取得を通知するようにしたため、各回線ユニットは使用権取得信号線の信号状態(信号レベル)を検知することで、他の回線ユニットで使用権を取得しているか、使用権が開放されているかを簡単且つ確実に認識して使用権を取得する制御を可能とする。
【0031】
(使用権の移動による効果)
また、複数の回線ユニットの何れかで使用権を取得し、他の回線ユニットが起動権を取得た場合、使用権は起動権を取得した回線ユニットに移すようにしたため、起動権を取得した回線ユニットは必ず使用権を取得して消火ガス放出に先立つカウントダウン表示を制御盤で確実に行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図4】ガス系消火設備に設けた制御盤の機能構成を、操作箱を含む設備機器と共に示した説明図
【
図5】回線ユニット及び操作箱の機能構成を示したブロック図
【
図6】制御盤表示ユニット及び操作箱の機能構成を示したブロック図
【
図7】回線ユニットと操作箱及び制御盤表示ユニットの間のシリアル伝送系を取り出してブロック図
【
図8】回線ユニットにおける起動権取得処理を示したフローチャート
【
図9】回線ユニットにおける使用権取得処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0033】
[ガス系消火設備の概要]
(設備構成)
図1はガス系消火設備の全体構成図を示した説明図である。なお、
図1の設備構成は一例であり、必要に応じて適宜の構成をとることができる。
【0034】
図1に示すように、ガス系消火設備にはガス系の消火設備を一括制御する制御盤10を設け、また防護区画A,Bとなる各部屋の外に操作箱12を設置している。操作箱12は起動スイッチと起動スイッチを保護する扉を備え、手動モードを設定している場合、人が火災を発見したときには、扉を開けて起動スイッチを操作することにより制御盤10に起動信号を送信し、消火剤としての消火ガスを放出させる。放出表示灯15は監視区域内に消火ガスが放出されていることを表示し、室内に入らないことを知らせる。
【0035】
噴射ヘッド14は消火ガスを室内に放出する。スピーカ13は消火ガスが放出されることを示す注意警報と退避警報を放送し、人が警戒区域内に存在する場合は直ちに避難することを促す。消火ガス貯蔵容器16は消火ガスを貯蔵する。
【0036】
本実施形態にあっては、複数の防護区画A,Bについて火災想定を1箇所としており、このため消火ガス貯蔵容器16は複数の防護区画A,Bに対する共通設備として設けており、1防護区画の消火に必要な量の消火ガスを充填している。
【0037】
起動装置18は防護区画A,Bに対応して設け、制御盤10から消火ガス放出用の起動信号を受けて内蔵したソレノイドの通電により開弁して二酸化炭素などの開放ガスを放出し、開放ガスにより選択弁17を開放させると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開ける。選択弁17は起動装置18の起動による開放ガスを受けて開き、火災の生じた防護区画A又はBの噴射ヘッド14に消火ガスを供給して噴射させる。
【0038】
火災感知器11は2系統の感知器回線で各防護区画A,Bの火災を監視している。圧力スイッチ21は消火ガス貯蔵容器16から消火ガスが放出されたことを検出し、制御盤10に検出信号を送り、火災の発生した監視区域に対応した放出表示灯15を点滅させる。ピストンレリーザ19は消火ガスが部屋に放出されたとき消火ガスを室外に漏れないようにダンパーで排煙口を閉じる。閉止弁23は消火ガス貯蔵容器16からの消火ガスの供給を手動で閉止する。
【0039】
このようなガス系消火設備において、制御盤10に自動モードを設定していた場合には、2系統に接続された各火災感知器11からの火災発報(2系統のAND発報)があった場合にガス放出の起動条件が成立したと判断して起動権を獲得し、所定時間のカウントダウンを開始すると共にスピーカ13は消火ガスが放出されることを示す注意警報と退避警報を放送する。
【0040】
制御盤10及び操作箱12には2桁表示の7セグメント表示器を設けており、通常はカウントダウン初期値として所定の秒数を表示しており、カウントダウンを開始すると、残り時間の秒数を順次表示し、カウントダウン終了で零秒を表示する。
【0041】
制御盤10のカウントダウンが終了すると、制御盤10から起動装置18にガス放出信号を出力して動作し、起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを選択弁17に供給して開くと共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、ガス供給配管を介して噴射ヘッド14から火災検知した防護区画の室内に消火ガスを放出させる。
【0042】
自動モードにより消火ガスを放出させると、制御盤10の7セグメント表示器には、作動した火災感知器11の作動履歴として感知器番号「FF」を表示する。ここで、感知器番号FはF=1~8の値をもち、4つの防護区画に設置した8台の火災感知器11に固有の感知器番号を予め割り当てている。
【0043】
また制御盤10に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器11の発報によって例えば防護区画Aの火災を発見し、防護区画Aの外側に設置している操作箱12の扉を開いて起動スイッチを押すことで起動信号を制御盤10に送信し、制御盤10は起動信号の受信によりガス放出の起動条件が成立したと判断して起動権及びスピーカの鳴動権を獲得し、カウントダウンを開始すると共にスピーカ13は消火ガスが放出されること示す注意警報と退避警報を放送し、カウントダウンが終了すると、自動モードの場合と同様にして防護区画の噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0044】
手動モードにより消火ガスを放出させると、制御盤10の7セグメント表示器には、起動スイッチを操作した操作箱12のアドレスを操作履歴として表示する。
【0045】
(操作箱の構成)
図2は防護区画に設けた操作箱の外観を示した説明図、
図3は操作箱の扉を開いた内部を示した説明図である。
【0046】
図2に示すように、操作箱12は、その扉24の前面側に、消火ガス放出前のカウントダウン時間等を表示する操作箱側表示器として機能する操作箱側7セグメント表示器26、消火ガスの放出を非常停止するための非常停止スイッチ28、運転モード又は手動モードのモード選択を行うためのキースイッチ30、非常電話機を接続する電話ジャック32、火災発生を示す火災灯34、ガス放出動作が起動されたことを示す放出起動灯36、操作箱12の電源状態を示す電源灯38、消火ガスを放出させないための閉止弁が閉じているときに点滅する閉止弁閉表示灯40、手動モード運転時に点灯する手動モード表示灯42、自動モード運転時に点灯する自動モード表示灯44を設けている。
【0047】
また操作箱12は、
図3に示すように、扉24を開いた際に露出する内部に、消火ガスの放出を手動で指示するための起動スイッチ46、扉24が開かれたことを検知する扉開検知スイッチ48、及び
図2に示す操作箱12を設けている各種の表示灯の表示試験を行うランプテストスイッチ45を設けている。
【0048】
ここで、ランプテストスイッチ45を操作して操作箱12の表示試験を行うと、この試験表示が制御盤10に通知され、制御盤10に設けた7セグメント表示器に、表示試験を行った操作箱12のアドレスが表示される。
【0049】
[制御盤の構成]
図4はガス系消火設備に設けた制御盤の機能構成を、操作箱を含む設備機器と共に示した説明図である。
【0050】
図4に示すように、制御盤10は例えば4つの防護施設に対応して回線ユニット100-1~100-4を備えており、各回線ユニット100-1~100-4に対しては最大4つの防護区画に対応して2系統の火災感知器11、操作箱12、スピーカ13及び起動装置18を信号線接続している。ここで、操作箱12は回線ユニット100-1~100-4から引き出されたシリアル伝送路125に接続している。なお、以下の説明で回線ユニット100-1~100-4を区別する必要がない場合は、回線ユニット100とする。
【0051】
ここで、
図1に示した防護区画A,Bは例えば回線ユニット100-1に対応した2つの防護区画における設備構成を示したものである。
【0052】
回線ユニット100-1~100-4に対しては共通部として、操作部102、表示部104、移報部106、スピーカ駆動部108及びカウントダウン表示等に使用する制御盤側表示器として機能する制御盤側7セグメント表示器112を備えた制御盤表示ユニット110を設け、相互に信号線接続している。
【0053】
ここで、制御盤表示ユニット110は回線ユニット100-1~100-4から引き出したシリアル伝送路125に回線スイッチ部を介して分岐シリアル伝送路125aを選択的に接続可能としており、制御盤側7セグメント表示器112の使用権を取得した回線ユニット100-1~100-4の何れかによりシリアル伝送された情報を制御盤側7セグメント表示器112に表示する。
【0054】
操作部102には、全ての防護区画での動作モードを一括して自動モード又は手動モードに切替えるキースイッチ、カウントダウン中にガス放出を停止させる非常停止スイッチ、警報を停止させる警報停止スイッチ、移報を停止させる移報停止スイッチ等を設け、各スイッチからの操作信号を回線ユニット100-1~100-4に並列出力するように信号線接続している。
【0055】
表示部104には、電源状態を示す電源灯、火災発生を示す火災灯、手動モードの設定を示す手動モード表示灯、自動モードの設定を示す自動モード表示灯、ガス放出動作の起動を示す放出起動灯、ガス放出されたことを示す放出灯等を設けており、回線ユニット100-1~100-4から各表示信号をOR入力して表示駆動するように信号線接続している。
【0056】
移報部106には、自動モード、手動モード、火災、起動、ガス放出等の移報信号を出力する無電圧接点回路を設けおり、回線ユニット100-1~100-4から各移報信号をOR入力して移報出力するように信号線接続している。
【0057】
スピーカ駆動部108には、消火ガスの放出を行う警報放送の音源とパワーアンプを設けており、回線ユニット100-1~100-4に対し放送信号を並列的に入力するように信号線接続している。
【0058】
(起動権の取得)
回線ユニット100-1~100-4は、所定の起動条件が成立した場合に、起動条件が成立した防護区画に消火ガスを放出する起動装置18を起動する権利を表す起動権を取得すると共に、他の回線ユニットに起動権の取得を通知して起動権の取得を抑止させ、所定時間のカウントダウン後に起動装置18を動作して消火ガスを放出させる。
【0059】
ここで、回線ユニット100で検出する起動条件の成立とは、自動モードの場合は、防護区画に設けた火災感知器11の2系統発報(AND発報)を検出した場合であり、また、手動モードの場合は、防護区画に対応して設置した操作箱12に設けた起動スイッチの起動操作を検出した場合である。
【0060】
回線ユニット100-1~100-4の間で起動権の取得を排他制御するため、回線ユニット100-1~100-4の間を起動権取得信号線114により相互接続している。回線ユニット100-1~100-4の何れも起動権を取得していない場合、起動権取得信号線114の信号レベルは例えばLレベルとなっている。また、回線ユニット100-1~100-4の何れかが起動権を取得すると、起動権取得信号線114に起動権取得信号を出力して例えばHレベルとする。
【0061】
このため回線ユニット100で起動条件の成立を検出した場合、そのときの起動権取得信号線114の信号レベルを読み込むことで、起動権が他の回線ユニットにより取得されているか、開放されているかを判断できる。
【0062】
(使用権の取得)
また、回線ユニット100-1~100-4は、制御盤側7セグメント表示器112の使用条件が成立した場合に、制御盤側7セグメント表示器112を使用する権利を表す使用権を取得すると共に、他の回線ユニットに使用権の取得を通知して使用権の取得を抑止させる。
【0063】
ここで、回線ユニット100で検出する使用条件の成立とは、起動権を取得した場合や、操作箱の表示試験を行った場合であり、これ以外にも、制御盤側7セグメント表示器112に表示をしたい適宜の条件が成立した場合を含む。
【0064】
起動権の取得に基づく使用権に取得については、回線ユニット100-1~100-4の間での使用権取得を排他制御する必要はないが、操作箱12の表示試験を複数の回線ユニットで検出した場合等には、使用権を取得するための排他制御が必要となる。
【0065】
使用権の排他制御を行うため、回線ユニット100-1~100-4の間を使用権取得信号線115により相互接続している。回線ユニット100-1~100-4の何れも使用権を取得していない場合、使用権取得信号線115の信号レベルは例えばLレベルとなっている。また、回線ユニット100-1~100-4の何れかが使用権を取得すると使用権取得信号線115に使用権取得信号を出力して例えばHレベルとする。
【0066】
このため回線ユニット100で制御盤側7セグメント表示器112の使用条件の成立を検出した場合、そのときの使用権取得信号線115の信号レベルを読み込むことで、使用権が他の回線ユニットにより取得されているか、開放されているかを判断できる。
【0067】
更に、回線ユニット100-1~00-4の何れかで使用権を取得し、他の回線ユニットが起動権を取得した場合、使用権は起動権を取得した回線ユニットに移す。このため起動権を取得した回線ユニット100は必ず制御盤側7セグメント表示器112の使用権を取得することができる。
【0068】
(鳴動権の取得)
また、回線ユニット100-1~100-4は、所定の鳴動条件が成立した場合に、鳴動条件が成立した防護区画に設置したスピーカ13を鳴動する権利を表す鳴動権を取得すると共に、他の回線ユニットに鳴動権の取得を通知して鳴動権の取得を抑止させる。
【0069】
ここで、回線ユニット100で検出する鳴動条件の成立とは、自動モードの場合は、防護区画に設けた火災感知器11の1回線発報を検出した場合であり、また、手動モードの場合は、防護区画に対応して設置した操作箱12に設けた起動スイッチの操作に先立つ操作箱扉の開放を検出した場合である。
【0070】
回線ユニット100-1~100-4の間で鳴動権の取得を排他制御するため、回線ユニット100-1~100-4の間を鳴動権取得信号線116により相互接続している。回線ユニット100-1~100-4の何れも鳴動権を取得していない場合、鳴動権取得信号線116の信号レベルは例えばLレベルとなっている。また、回線ユニット100-1~100-4の何れかが鳴動権を取得すると鳴動権取得信号線116に鳴動権取得信号を出力して例えばHレベルとする。
【0071】
このため回線ユニット100で鳴動条件の成立を検出した場合、そのときの鳴動権取得信号線116の信号レベルを読み込むことで、鳴動権が他の回線ユニットにより取得されているか、開放されているかを判断できる。
【0072】
更に、回線ユニット100-1~100-4の何れかで鳴動権を取得し、他の回線ユニットが起動権を取得した場合、鳴動権は起動権を取得した回線ユニットに移す。このため起動権を取得した回線ユニット100は必ず鳴動権を取得することができる。
【0073】
なお、以下の説明では、回線ユニット100が起動権を取得した場合は鳴動権を同時に取得するものとして説明する。
【0074】
[回線ユニット、操作箱及び表示制御ユニットの機能構成]
(回線ユニットの機能構成)
図5は回線ユニット及び操作箱の機能構成を示したブロック図であり、1つの回線ユニットとこれに接続した操作箱を含む設備機器を取り出して示している。
【0075】
図5に示すように、回線ユニット100は、制御部120を備え、制御部120に対し防護区画側の機器を信号線接続するため、伝送部122、2系統分の火災受信部124、駆動部126、スピーカ選択部128を設けている。
【0076】
スピーカ選択部128には
図4に示したスピーカ駆動部108からの信号線を入力接続し、鳴動権を取得した場合にスピーカ選択部128のスイッチ手段をオンして放送信号をスピーカ13に供給可能とする。なお、スピーカ選択部128は4つの防護区画に対応した数を設けている。
【0077】
また、制御部120に対し
図1に示した制御盤10の共通部となる
図4の操作部102、表示部104及び移報部106と接続するため、操作入力部134、表示出力部136及び移報出力部138を設けている。
【0078】
また、制御部120に対しては起動権入出力部130を設け、他の回線ユニットと相互接続している起動権取得信号線114に対する起動権取得信号の出力または起動権取得信号線114の信号レベルの入力を行う。
【0079】
また、制御部120に対しては使用権入出力部132を設け、他の回線ユニットと相互接続している使用権取得信号線115に対する使用権取得信号の出力または使用権取得信号線115の信号レベルの入力を行う。
【0080】
また、制御部120に対しては鳴動権入出力部133を設け、他の回線ユニットと相互接続している鳴動権取得信号線116に対する鳴動権取得信号の出力または鳴動権取得信号線116の信号レベルの入力を行う。
【0081】
制御部120は、プログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路を使用する。
【0082】
伝送部122は操作箱12との間でシリアル伝送路125を介して各種の信号をシリアル伝送により送受信する。
【0083】
また伝送部122からのシリアル伝送路125には、回線スイッチ部140を介して分岐シリアル伝送路125aが接続され、分岐シリアル伝送路125aには
図3に示した制御盤表示ユニット110を接続している。回線スイッチ部140は通常はオフしており、制御部120が使用権を取得した場合にオンされ、シリアル伝送により表示に必要な情報を含むシリアル伝送信号を制御盤表示ユニット110に送信可能としている。この回線ユニット100と操作箱12及び制御盤表示ユニット110との間のシリアル伝送の詳細は後述する。
【0084】
制御部120は、前述した所定起動条件の成立を検出した場合、起動権入出力部130を介して起動権取得信号線114の信号レベルを読み込み、信号レベルがLレベルの場合に他の回線ユニットによる起動権の取得がないことを検出して起動権を仮取得し、続いて所定時間を経過した場合に仮取得した起動権を開放し、続いてランダムに決定された所定の起動権開放時間後に起動権取得信号線114がLレベルとなっていることで他の回線ユニットが起動権を取得していないことを検出した場合に起動権を正式に取得し、所定時間のカウントダウン後に起動装置18を動作して消火ガスを放出させる起動権取得の排他制御を行う。
【0085】
ここで、ランダムに異なる起動権開放時間を割り当てる理由は、同じプログラムを各回線処理ユニット100-1~100-4に書き込むため、全く同一のタイミングで権利取得手続きが行われることで、複数の回線管理ユニットに起動権が付与される可能性を減らすことを意図とした処理とするためである。この点は、使用権及び鳴動権を取得する場合も同様である。
【0086】
この制御部120の排他制御により、起動権の取得に必要な所定の処理時間の間に複数の回線処理ユニットで起動条件が成立した場合、それぞれに起動権取得タイミングを決めるランダムに異なる所定の起動権開放時間を割り当てることで、何れか1つの回線ユニットに起動権を取得させ、起動条件の成立順に拘束されることなく、複数の回線ユニットに起動権取得の機会を均等に与える排他制御を可能とする。
【0087】
また、制御部120は、起動権の取得に必要な所定の処理時間を超えて複数の回線ユニットの起動条件が順番に成立した場合には、最初に起動条件が成立した回線ユニットが起動権を取得することを可能とする。
【0088】
また、制御部120は、前述した制御盤側7セグメント表示器112に関する使用条件の成立を検出した場合、使用権入出力部132を介して使用権取得信号線115の信号レベルを読み込み、信号レベルがLレベルの場合に他の回線ユニットによる使用権の取得がないことを検出して使用権を仮取得し、続いて所定時間を経過した場合に仮取得した使用権を開放し、続いてランダムに決定された所定の使用権開放時間後に使用権取得信号線115がLレベルとなっていることで他の回線ユニットが使用権を取得していないことを検出した場合に使用権を正式に取得し、制御盤側7セグメント表示器112に表示する使用権取得の排他制御を行う。
【0089】
また、制御部120は、使用権を取得した状態で、他の回線ユニットによる起動権の取得を検出した場合、起動権を取得した回線ユニットに使用権を移す制御を行う。この制御部120による使用権移行制御は、制御部120で使用権を取得した後に起動権取得通知線114の信号レベルを監視し、信号レベルがHレベルとなった場合に他の回線ユニットによる起動権の取得を認識し、現在取得している使用権を開放(放棄)して使用権取得信号線115に対する使用権取得信号の出力を停止してLレベルとし、起動権を取得した他の回線ユニットに使用権の開放を通知して使用権を取得させる制御を行う。
【0090】
また、制御部120は、前述したスピーカ13に関する鳴動条件の成立を検出した場合、鳴動権入出力部133を介して鳴動権取得信号線116の信号レベルを読み込み、信号レベルがLレベルの場合に他の回線ユニットによる鳴動権の取得がないことを検出して鳴動権を仮取得し、続いて所定時間を経過した場合に仮取得した鳴動権を開放し、続いてランダムに決定された所定の鳴動権開放時間後に鳴動権取得信号線116がLレベルとなっていることで他の回線ユニットが鳴動権を取得していないことを検出した場合に鳴動権を正式に取得し、スピーカ13から消火ガスの放出を知らせる注意警報と退避警報の放送を行わせ鳴動権の排他制御を行う。
【0091】
また、制御部120は、鳴動権を取得した状態で、他の回線ユニットによる起動権の取得を検出した場合、起動権を取得した回線ユニットに鳴動権を移す制御を行う。この制御部120による鳴動権移行制御は、制御部120で鳴動権を取得した後に起動権取得通知線114の信号レベルを監視し、信号レベルがHレベルとなった場合に他の回線ユニットによる起動権の取得を認識し、現在取得している鳴動権を開放(放棄)して鳴動権取得信号線116に対する鳴動権取得信号の出力を停止してLレベルとし、起動権を取得した他の回線ユニットに鳴動権の開放を通知して鳴動権を取得させる制御を行う。
【0092】
(操作箱の機能構成)
図5に示すように、操作箱12は、制御部142を備え、制御部142に対し伝送部144、操作部146、検出部148、表示部150及び操作箱側7セグメント表示器26を設けている。
【0093】
制御部142は、プログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路を使用する。
【0094】
伝送部144は回線ユニット100の伝送部122との間でシリアル伝送路125を介して各種の情報をシリアル伝送により送受信する。
【0095】
操作部146には
図2及び
図3に示した非常停止スイッチ28、キースイッチ30、ランプテストスイッチ45、起動スイッチ46を設けている。また、検出部148には
図2及び
図3に示した扉開検知スイッチ48を設けている。更に、表示部150には
図2及び
図3に示した火災灯34、放出起動灯36、電源灯38、閉止弁閉表示灯40、手動モード表示灯42、自動モード表示灯44を設けている。
【0096】
制御部142は、伝送部144を介して回線ユニット100から操作箱アドレス(ad1~ad4のいずれか)を指定した一斉制御兼ポーリング(呼出し)コマンド及び各種の表示情報を含む下り信号(一斉制御兼呼出し下り信号)となるシリアル伝送信号を受信した場合、表示部150に対応する表示灯を点灯するか、操作箱側7セグメント表示器26を表示駆動する制御を行う。
【0097】
また、制御部142は、下り信号を受信した場合に、その応答信号となる上り信号としてのシリアル伝送信号を生成して回線ユニット100に送信する制御を行う。この上り信号には、操作部146又は検出部148のスイッチ操作情報(オンオフ情報)等のデータを含む。
【0098】
なお、回線ユニット100から操作箱12に対しては電源線による電源供給を行っており、また電話回線により通話接続を可能としているが、図示を省略している。
【0099】
(制御盤表示制御ユニットの機能構成)
図6は制御盤10に設けた制御盤表示制御ユニットの機能構成を示したブロック図である。
【0100】
図6に示すように、制御盤表示ユニット110は、制御部160を備え、制御部160に対し伝送部162及び制御盤側7セグメント表示器112を設けており、伝送部162には回線ユニット100-1~100-4から操作箱12に引き出したシリアル伝送路125に選択的に接続される分岐シリアル伝送路125aを接続している。
【0101】
この制御盤表示ユニット110の制御部160、伝送部162及び制御盤側7セグメント表示器112の構成は、
図5の操作箱に設けた制御部142、伝送部144及び操作箱側セグメント表示器26と同じ構成としている。
【0102】
制御部160は、伝送部162を介して分岐シリアル伝送路125aを接続した回線ユニット100から制御盤表示ユニット110のアドレスad5を指定した表示情報を含む下り信号を受信した場合、制御盤側7セグメント表示器112を表示駆動する制御を行う。
【0103】
また、制御部160は、下り信号を受信した場合に、その応答信号となる上り信号を生成して回線ユニット100に送信する制御を行う。この上り信号には、制御盤表示ユニット110における適宜の状態を示すデータを入れることができるが、空きデータであっても良い。
【0104】
[回線ユニットと操作箱及び表示制御の間のシリアル伝送]
(シリアル伝送系統)
図7は、回線ユニットと操作箱及び制御盤表示ユニットの間のシリアル伝送系を取り出して示したブロック図である。
【0105】
図7に示すように、制御盤10に設けた回線ユニット100-1~100-4は制御部120、伝送部122及び回線スイッチ部140を備え、また操作箱12は制御部142、伝送部144及び操作箱側7セグメント表示器26を備え、更に、制御盤表示ユニット110は制御部160、伝送部162及び制御盤側7セグメント表示器112を備える。
【0106】
回線ユニット100-1~100-4の伝送部122から引き出したシリアル伝送路125に対しては操作箱12の伝送部144を順次接続している。また、回線ユニット100-1~100-4の伝送部122から引き出したシリアル伝送路125から回線スイッチ部140を介して分岐シリアル伝送路125aを引き出し、制御盤表示ユニット110の伝送部162に接続している。
【0107】
ここで、回線ユニット100-1~100-4に対しシリアル伝送路125を介して接続した4台ずつの操作箱12には、アドレスad1~ad4を設定し、また、制御盤表示ユニット110にはアドレスad5を設定している。ここで、アドレスad1~ad5は3ビットアドレスであり、制御盤表示ユニット110については操作箱12との区別を明確にするためオールビット1となるアドレスad15を設定しても良い。
【0108】
(信号形式と伝送手順)
回線ユニット100の制御部120は、所定形式の下り信号を生成し、伝送部122に指示してシリアル伝送する制御を行う。この下り信号は、一斉制御兼ポーリングコマンド、操作箱表示灯データ、操作箱側7セグメント表示データ、制御盤表示灯データ、制御盤側7セグメント表示データ及びチェックサムで構成する。
【0109】
操作箱12の制御部142は、伝送部144を介して回線ユニット100から送信した下り信号に含まれる一斉制御兼ポーリングコマンド内のアドレスが自己アドレスに一致した場合、下り信号に含まれる操作箱表示灯データにより対応する表示灯をオン又はオフし、また操作箱側7セグメント表示データにより操作箱側7セグメント表示器26にデータを表示する制御を行う。
【0110】
また、操作箱12の制御部142は、下り信号に含まれる一斉制御兼ポーリングコマンドに基づく応答信号として、所定形式の上り信号を生成し、伝送部144に指示してシリアル伝送する制御を行う。この上り信号は、送信元アドレス、データ及びチェックサムで構成し、データには、操作部146及び検出部148に設けた各種スイッチのオンオフデータを含む。
【0111】
回線ユニット100の制御部120は、伝送部122を介して操作箱12が送信した上り信号を受信した場合、上り信号にデータとして含まれる操作箱
12に設けたスイッチのオンオフデータに基づき
図4の表示部104に設けた表示灯の代表表示を制御する。
【0112】
制御盤表示ユニット110の制御部160は、伝送部162を介して使用権を取得した回線ユニット100から受信した下り信号に含まれる一斉制御兼ポーリングコマンド内のアドレスが自己アドレスに一致した場合、下り信号に含まれる制御盤側7セグメント表示データにより制御盤側7セグメント表示器112にデータを表示する制御を行う。
【0113】
また制御盤表示ユニット110の制御部160は、下り信号に含まれる一括制御兼ポーリングコマンドに基づく応答信号として、必要があれば、制御盤表示ユニット110の状態を示すデータを含む上り信号を生成し、伝送部162に指示してシリアル伝送する制御を行う。この上り信号は、操作箱12の場合と同様に、送信元アドレス、データ及びチェックサムで構成する。
【0114】
(伝送手順)
図7に示した回線ユニット100-1~100-4のぞれぞれと対応する操作箱12及び制御盤表示ユニット110との間の下り信号及び上り信号の送信手順は、
「一斉制御兼ad1呼出し下り信号、空き、ad1上り信号、空き、一斉制御兼ad2呼出し下り信号、空き、ad2上り信号、空き、一斉制御兼ad3呼出し下り信号、空き、ad3上り信号、空き、一斉制御兼ad4呼出し下り信号、空き、ad4上り信号、空き、一斉制御兼ad5呼出し下り信号、空き、ad5上り信号、空き」
を1セットとし、これを繰り返す。
【0115】
また1セットのデータ長は例えば55バイトとなり、スイッチ操作から表示までの遅れ時間を最長で200ミリ秒とすると、伝送速度は4800bps程度で良い。
【0116】
[7セグメント表示器の表示制御]
(カウントダウン表示)
図7において、例えば回線ユニット100-1の制御部120で、自己の防護区画に消火ガスを放出する起動装置を起動する権利を表す起動権を取得した場合、使用条件の成立と判断して使用権を取得し、回線スイッチ部140をオンして伝送部122に分岐シリアル伝送路125aを接続し、カウントダウンの残り時間を示す時間データを含む下り信号を生成し、分岐シリアル伝送路125aを含むシリアル伝送路125に送信し、制御盤表示ユニット110に設けている制御盤側7セグメント表示器112及び4台の操作箱12に設けている操作箱側7セグメント表示器26に、カウントダウンの残り時間を共通に表示させる。このシリアル伝送の動作状態となるブロックを
図7は斜線部で示している。
【0117】
このように制御盤側7セグメント表示器112の使用権を取得した回線ユニット100-1は、回線スイッチ部140をオンして分岐シリアル伝送路をシリアル伝送路に接続するという簡単な制御で、操作箱側7セグメント表示器26と同じカウントダウン残り時間を制御盤側7セグメント表示器112に表示して、制御盤10においてもカウントダウンの時間経過を確認可能とする。
【0118】
(ガス放出後の表示)
また、回線ユニット100-1の制御部120は、カウントダウンの終了により防護区画に消火ガスを放出した場合、手動モードによる消火ガスの放出では制御盤側7セグメント表示器112及び操作箱側7セグメント表示器26に起動スイッチの操作を行った操作箱のアドレス「ad1」~「ad4」の何れかを共通表示させ、また、自動モードによる消火ガスの放出では制御盤側7セグメント表示器112に火災発報した火災感知器の作動履歴情報として「FF」を表示させる制御を行う。例えば、防護区画に設けた1番と2番の火災感知器の2系統発報で消火ガスを放出した場合、制御盤側7セグメント表示器112に「12」を表示させる。
【0119】
このため、消火ガス放出後に制御盤側7セグメント表示器112を見ることで、消火ガス放出の起動がどのようにして行われたかを簡単且つ容易に把握可能とする。なお、操作箱側7セグメント表示器26はカウントダウン終了による「00」の表示を維持する。
【0120】
(カウントダウン中の非常停止操作)
また、回線ユニット100-1の制御部120は、カウントダウン中に操作箱12に設けた非常停止スイッチの操作を検出した場合、カウントダウンを中止して制御盤側7セグメント表示器112に非常停止スイッチの受付けを示す所定の情報として例えば「EP」を共通表示させる制御を行う。
【0121】
このため、カウントダウン中に操作箱12で非常停止操作を行ってカウントダウンを中止した場合、消火ガス放出後に制御盤側7セグメント表示器112を見ることで、操作箱12で行った非常停止操作が有効に受け付けられたことを、簡単且つ容易に確認可能とする。
【0122】
(操作箱表示試験のアドレス表示)
また、回線ユニット100-1の制御部120は、例えばアドレスad1の操作箱12でランプテストスイッチの操作による表示試験を行った場合に、使用条件の成立と判断して使用権を取得し、回線スイッチ部140をオンして伝送部122に分岐シリアル伝送路125aを接続し、制御盤側7セグメント表示器112及び操作箱側7セグメント表示器26に、表示試験を行った操作箱のアドレスを表示させる制御を行う。
【0123】
このため、例えば設備施工や定期点検の際に、操作箱12に設けた例えばランプテストスイッチ等を操作して操作箱の試験を行うと、制御盤側7セグメント表示器112及び操作箱側7セグメント表示器26に試験を行った操作箱12のアドレスが表示され、操作箱12のアドレスを正しく設定しているか否かを簡単且つ確実に調べることを可能とする。
【0124】
[起動権取得処理]
図8は回線ユニットにおける起動権取得処理を示したフローチャートであり、
図5を参照して説明すると次のようになる。
【0125】
図8に示すように、回線ユニット100の制御部120は、ステップS1(以下「ステップ」は省略)でガス放出における起動条件が成立したか否か判別しており、制御対象としている例えば4つの防護区画の何れかで火災感知器11による2系統発報又は操作箱12の扉を開いて行う起動スイッチの操作を検出した場合、起動条件成立を判別してS2に進み、起動権開放中か否か判別する。
【0126】
即ち、制御部120は、他の回線ユニットに接続している起動権取得信号線114の信号レベルを読み込み、Lレベルであれば起動権開放中と判別し、Hレベルであれば他の回線ユニットが起動権取得中と判断する。
【0127】
S2で起動権開放中を判別した場合はS3に進み、起動権を仮取得する。起動権の仮取得とは、他の回線ユニットで起動条件が成立して起動権の取得が競合することを想定し、起動権を一時的に取得することを意味する。
【0128】
一方、S2で他の回線ユニットが起動権を既に取得しているために起動権開放中でなかった場合はS4に進み、所定時間T1、例えばT1=200ミリ秒の経過を待ってS2に戻り、起動権開放中か否かを判別する処理を繰り返す。
【0129】
S3で仮の起動権を取得した場合は、S5に進んで所定時間T2、例えばT2=50ミリ秒の経過を待ってS6に進み、仮取得した起動権を開放する。
【0130】
続いてS7に進み、乱数で決まる所定の起動権開放時間T3の経過を待ってS8に進み、起動権開放中か否か判別し、起動権開放中であればS9に進み、起動権を正式に取得する。
【0131】
ここで、S7の起動権開放時間T3は、乱数N=1~9を発生させて例えば
T3=20ミリ秒+N×10ミリ秒
とし、30,40,50、・・・・・110ミリ秒の何れかの時間をランダムに発生させる。
【0132】
このためランダムに決まる起動権開放時間T3の間に他の回線ユニットで起動条件が成立すると、同様にS3で起動権の仮取得が行われ、S5で50ミリ秒後に仮取得した起動権を開放してS7でランダムに決まる起動権開放時間T3を経過した後にS8、S9で起動権を正式取得する試みが行われ、2つの回線ユニットで起動条件が成立した場合に、両者に起動権取得の機会を均等に与え、最終的に何れか一方に起動権を正式に取得させる排他制御を行うことになる。
【0133】
S9で起動権を正式に取得するとS10に進み、制御盤側7セグメント表示器112の使用権開放か否か判別する。使用権の開放の有無は、制御部120が他の回線ユニットと接続している使用権取得信号線115の信号状態を読み込み、Lレベルであれば使用権開放を判別し、Hレベルであれば他の回線ユニットで使用権を取得していることを判別する。
【0134】
S10で使用権開放を判別するとS11に進み使用権を取得する。ここで、他の回線ユニットが使用権を取得している場合、制御部120がS9で起動権を正式に取得すると、起動権取得信号線114に起動権取得信号を出力して信号レベルをHレベルとしており、使用権を取得している他の回線ユニットは起動権取得信号線114の信号レベルがHレベルに変化したことで他の回線ユニットによる起動権の取得を判別し、既に取得している使用権を開放する。
【0135】
このため、S9で起動権を正式に取得した場合、S10,S11により制御部120は必ず制御盤側7セグメント表示器112の使用権を取得することができる。即ち、回線ユニットで起動権を取得した場合、他の回線ユニットで取得していた制御盤側7セグメント表示器112の使用権を移す制御が行われる。
【0136】
続いて、S12で起動権開放条件の成立を判別するとS13に進んで起動権を開放し、S1に戻る。S12,S13の起動権の開放は、例えば他の回線ユニットで優先度の高い起動権を取得した場合等である。
【0137】
[使用権取得処理]
図9は回線ユニットにおける使用権取得処理を示したフローチャートであり、
図5を参照して説明すると次のようになる。
【0138】
図9に示すように、回線ユニット100の制御部120は、S21で制御盤側7セグメント表示器112の使用条件が成立したか否か判別しており、使用条件成立を判別するとS22に進み、使用権開放中か否か判別する。
【0139】
即ち、制御部120は他の回線ユニットに接続している使用権取得信号線115の信号レベルを読み込み、Lレベルであれば使用権開放中と判別し、Hレベルであれば他の回線ユニットが使用権取得中と判断する。
【0140】
S22で使用権開放中を判別した場合はS23に進み、使用権を仮取得する。使用権の仮取得とは、他の回線ユニットで制御盤側7セグメント表示器112の使用条件、例えば表示試験の検出により使用条件が成立して使用権の取得が競合することを想定し、使用権を一時的に取得することを意味する。
【0141】
一方、S22で他の回線ユニットが使用権を既に取得しているために使用権開放中でなかった場合はS24に進み、所定時間T1、例えばT1=200ミリ秒の経過を待ってS22に戻り、使用権開放中か否かを判別する処理を繰り返す。
【0142】
S23で使用権を仮取得した場合は、S25に進んで所定時間T2、例えばT2=50ミリ秒の経過を待ってS26に進み、仮取得した使用権を開放する。
【0143】
続いてS27に進み、乱数で決まる所定の使用権開放時間T3の経過を待ってS28に進み、使用権開放中か否か判別し、使用権開放中であればS29に進み、使用権を正式に取得する。S27の使用権開放時間T3は、
図8のS7と同様であり、乱数N=1~9を発生させて例えば、
T3=20ミリ秒+N×10ミリ秒
とする時間をランダムに発生させる。
【0144】
このため、ランダムに決まる使用権開放時間T3の間に他の回線ユニットで使用条件が成立すると、同様にS23で使用権の仮取得が行われ、S25で50ミリ秒後に仮取得した使用権を開放してS27でランダムに決まる使用権開放時間T3を経過した後にS28、S29で使用権を正式取得する試みが行われ、2つの回線ユニットで制御盤側7セグメント表示器112の使用条件が成立した場合に、両者に使用権取得の機会を均等に与え、最終的に何れか一方に使用権を正式に取得させる排他制御を行うことになる。
【0145】
S29で使用権を正式に取得するとS30に進み、他の回線ユニットで起動権取得か否か判別する。起動権の取得の有無は、制御部120が他の回線ユニットと接続している起動権取得信号線114の信号状態を読み込み、Hレベルであれば他の回線ユニットで起動権を取得していることを判別し、Lレベルであれば起動権開放を判別する。
【0146】
S30で他の回線ユニットによる起動権の取得を判別した場合はS32に進み、使用権を開放する。このため
図8のS10,S11に示したように、起動権を取得した回線ユニットは必ず制御盤側7セグメント表示器112の使用権を取得することができ、起動権を取得した回線ユニットに使用権が移ることになる。
【0147】
また、S30で他の回線ユニットによる起動権取得を判別していない場合はS31に進み、使用権の開放条件成立を判別するとS32に進み使用権を開放する。S31,S32の使用権の開放は、例えば他の回線ユニットで優先度の高い使用権を取得した場合等である。
【0148】
なお、鳴動権の排他制御は、
図9に示した使用権の排他制御と基本的に同じであり、S21~S32の使用権を鳴動権と読み替えれば良い。
【0149】
[本発明の変形例]
(回線ユニット)
上記の実施形態は、制御盤に4つの回線ユニットを設け、回線ユニットの各々で4つの防護区画のガス消火を行う場合を例にとっているが、回線ユニットの数及び回線ユニット当たりの防護区画の数は必要に応じて適宜に定めることができる。
【0150】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0151】
10:制御盤
11:火災感知器
12:操作箱
13:スピーカ
14:噴射ヘッド
15:放出表示灯
16:消火ガス貯蔵容器
17:選択弁
18:起動装置
21:圧力スイッチ
23:閉止弁
26:操作箱側7セグメント表示器
28:非常停止スイッチ
30:キースイッチ
32:電話ジャック
34:火災灯
36:放出起動灯
38:電源灯
40:閉止弁閉表示灯
42:手動モード表示灯
44:自動モード表示灯
45:ランプテストスイッチ
46:起動スイッチ
48:扉開検知スイッチ
100-1~100-4:回線ユニット
108:スピーカ駆動部
110:制御盤表示ユニット
112:制御盤側7セグメント表示器
114:起動権取得信号線
116:鳴動権取得信号線
120,142:制御部
122,144:伝送部
124:火災受信部
125:シリアル伝送路
125a:分岐シリアル伝送路
126:駆動部
128:スピーカ選択部
130:起動権入出力部
132:使用権入出力部
133:鳴動権入出力部
140:回線スイッチ部