(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】炭化水素製造装置、および、炭化水素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20231110BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20231110BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231110BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019235762
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】佐山 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】森本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】堀部 伸光
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136538(JP,A)
【文献】特開2019-142808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0029095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/12
C07C 9/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素製造装置であって、
触媒を収容する収容部と、前記収容部の内側に原料ガスを供給するためのガス入口と、前記収容部の内側で生成された炭化水素化合物を含む生成ガスを取り出すためのガス出口とを備える反応器と、
前記反応器に接続され、前記触媒との熱交換に用いられる熱媒体を前記反応器に供給する熱媒体供給部と、
前記触媒の温度を検出する触媒温度検出部と、
前記触媒温度検出部によって検出された前記触媒の温度を用いて、前記熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、
前記触媒において、
前記ガス入口側の端面から前記ガス出口側の端面までの長さを長さLcとし、
前記ガス入口側の端面から前記触媒温度検出部
が配置されている前記触媒の温度の検出位置までの距離を距離Zmとすると、
長さLcに対する距離Zmの割合は、0.06以上0.65より小さい、
炭化水素製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素製造装置であって、
長さLcに対する距離Zmの割合は、0.32以下である、
炭化水素製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の炭化水素製造装置は、さらに、
前記制御部と電気的に接続され、前記反応器に供給される前記原料ガスの流量を検出するガス流量検出部を備え、
前記制御部は、
前記ガス流量検出部が検出する前記原料ガスの流量と、前記原料ガスの流量に対応する制御用変数が示されたマップを用いて前記触媒の目標温度を算出し、
前記触媒温度検出部によって検出された前記触媒の温度と前記目標温度との差分を用いて、前記熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する、
炭化水素製造装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の炭化水素製造装置は、さらに、
前記制御部と電気的に接続され、前記反応器に供給される前の前記原料ガスの温度を検出するガス温度検出部を備え、
前記制御部は、
前記ガス温度検出部が検出する前記原料ガスの温度と、前記原料ガスの温度に対応する制御用変数が示されたマップを用いて前記触媒の目標温度を算出し、
前記触媒温度検出部によって検出された前記触媒の温度と前記目標温度との差分を用いて、前記熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する、
炭化水素製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の炭化水素製造装置は、さらに、
前記制御部と電気的に接続され、前記反応器の内部圧力を検出する圧力検出部を備え、
前記制御部は、
前記圧力検出部が検出する前記反応器の内部圧力と、前記反応器の内部圧力に対応する制御用変数が示されたマップを用いて前記触媒の目標温度を算出し、
前記触媒温度検出部によって検出された前記触媒の温度と前記目標温度との差分を用いて、前記熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する、
炭化水素製造装置。
【請求項6】
炭化水素化合物を生成する炭化水素化合物の製造方法であって、
反応器において、供給源から供給される原料ガスを用いて炭化水素化合物を生成する炭化水素製造工程と、
触媒温度検出部によって前記反応器の収容部に収容されている触媒の温度を検出する触媒温度検出工程と、
前記触媒温度検出工程において検出される前記触媒の温度を用いて、前記触媒との熱交換に用いられる熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する制御工程と、備え、
前記触媒において、
前記収容部の内側に前記原料ガスを供給するためのガス入口側の端面から、前記収容部の内側で生成された前記炭化水素化合物を含む生成ガスを取り出すためのガス出口側の端面までの長さを長さLcとし、
前記ガス入口側の端面から前記触媒温度検出部
が配置されている前記触媒の温度の検出位置までの距離を距離Zmとすると、
前記触媒温度検出工程において、前記触媒温度検出部は、前記触媒のうちの長さLcに対する距離Zmの割合が0.06以上0.65より小さい範囲内の温度を検出する、
炭化水素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素製造装置、および、炭化水素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、触媒を用いて、二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を製造する炭化水素製造装置が知られている。例えば、特許文献1には、触媒を収容する反応器に触媒の温度を制御可能な熱媒体を供給する熱媒体供給部を備えており、熱媒体の供給によって、触媒の温度を、炭化水素化合物を製造するのに適した温度にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触媒を用いて炭化水素化合物を生成する反応は、発熱反応であるため、この反応で発生する熱エネルギは、外部で利用することができる。しかしながら、触媒から過度に熱を奪うと、炭化水素化合物を生成する反応が進行しなくなるため、二酸化炭素の炭化水素化合物への転化率を高めるためには、触媒の温度制御を精密に行う必要がある。特許文献1に記載の技術では、複数の熱電対を用いて取得した触媒の温度分布を用いて、熱媒体の流量を調節することで、触媒の温度を制御する。しかしながら、反応器に複数の熱電対を配置する必要があるため、反応器の製造コストが増大する。また、反応器に複数の熱電対を配置すると反応器の表面積が増大するため、反応器からの放熱による熱損失が増大し、熱エネルギの回収率が低下する。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、炭化水素製造装置において、製造コストを低減しつつ、原料ガスの炭化水素化合物への転化率を向上するとともに熱エネルギの回収率を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、炭化水素製造装置が提供される。この炭化水素製造装置は、触媒を収容する収容部と、前記収容部の内側に原料ガスを供給するためのガス入口と、前記収容部の内側で生成された炭化水素化合物を含む生成ガスを取り出すためのガス出口とを備える反応器と、前記反応器に接続され、前記触媒との熱交換に用いられる熱媒体を前記反応器に供給する熱媒体供給部と、前記触媒の温度を検出する触媒温度検出部と、前記触媒温度検出部によって検出された前記触媒の温度を用いて、前記熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、前記触媒において、前記ガス入口側の端面から前記ガス出口側の端面までの長さを長さLcとし、前記触媒の前記ガス入口側の端面から前記触媒温度検出部までの距離を距離Zmとすると、長さLcに対する距離Zmの割合は、0.06以上0.65より小さい。
【0008】
この構成によれば、触媒温度検出部は、触媒のうちの長さLcに対する距離Zmの割合が0.06以上0.65より小さい範囲内の触媒の温度を検出する。制御部は、触媒温度検出部によって検出される触媒の温度を用いて、熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する。これにより、熱媒体による触媒の温度制御を高精度に行うことができるため、原料ガスの炭化水素化合物への転化率を向上することができる。また、触媒温度検出部が上述した範囲内の温度を検出することで、触媒の温度分布に関する情報を取得するために触媒温度検出部を触媒全体に配置する場合に比べ、反応器に配置される触媒温度検出部の数を少なくすることができる。これにより、反応器の製造コストを低減することができる。また、反応器に配置される触媒温度検出部の数を少なくすることができるため、触媒全体に触媒温度検出部を配置する場合に比べ、反応器の表面積が小さくなり、放熱による熱エネルギの損失が小さくなる。これにより、熱エネルギの回収率を向上することができる。このように、上述した構成によれば、製造コストを低減しつつ、原料ガスの炭化水素化合物への転化率を向上するとともに熱エネルギの回収率を向上することができる。
【0009】
(2)上記形態の炭化水素製造装置において、長さLcに対する距離Zmの割合は、0.32以下であってもよい。この構成によれば、触媒温度検出部は、触媒のうちの長さLcに対する距離Zmの割合が0.06以上0.32以下の範囲内の触媒の温度を検出する。触媒におけるこの範囲内の温度は、熱媒体の流量または温度の変化に対して単調に変化するため、この範囲内での触媒の温度を検出することで、熱媒体による触媒の温度制御をさらに高精度に行うことができる。これにより、原料ガスの炭化水素化合物への転化率をさらに向上するとともに熱エネルギの回収率をさらに向上することができる。
【0010】
(3)上記形態の炭化水素製造装置は、さらに、前記制御部と電気的に接続され、前記反応器に供給される前記原料ガスの流量を検出するガス流量検出部を備え、前記制御部は、前記ガス流量検出部が検出する前記原料ガスの流量と、前記原料ガスの流量に対応する制御用変数が示されたマップを用いて前記触媒の目標温度を算出し、前記触媒温度検出部によって検出された前記触媒の温度と前記目標温度との差分を用いて、前記熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御してもよい。この構成によれば、制御部は、熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御するときに触媒の温度との差分を算出するための触媒の目標温度を、ガス流量検出部が検出する原料ガスの流量と、原料ガスの流量に対応する制御用変数が示されたマップを用いて算出する。これにより、原料ガスの流量が変化することで、触媒温度検出部が検出する温度が変化した場合でも、この変化に対応して目標温度を算出することができる。したがって、原料ガスの炭化水素化合物への転化率をさらに向上することができる。
【0011】
(4)上記形態の炭化水素製造装置は、さらに、前記制御部と電気的に接続され、前記反応器に供給される前の前記原料ガスの温度を検出するガス温度検出部を備え、前記制御部は、前記ガス温度検出部が検出する前記原料ガスの温度と、前記原料ガスの温度に対応する制御用変数が示されたマップを用いて前記触媒の目標温度を算出し、前記触媒温度検出部によって検出された前記触媒の温度と前記目標温度との差分を用いて、前記熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御してもよい。この構成によれば、制御部は、熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御するときに触媒の温度との差分を算出するための触媒の目標温度を、ガス温度検出部が検出する原料ガスの温度と、原料ガスの温度に対応する制御用変数が示されたマップを用いて算出する。これにより、原料ガスの温度が変化することで、触媒温度検出部が検出する温度が変化した場合でも、この変化に対応して目標温度を算出することができる。したがって、原料ガスの炭化水素化合物への転化率をさらに向上することができる。
【0012】
(5)上記形態の炭化水素製造装置は、さらに、前記制御部と電気的に接続され、前記反応器の内部圧力を検出する圧力検出部を備え、前記制御部は、前記圧力検出部が検出する前記反応器の内部圧力と、前記反応器の内部圧力に対応する制御用変数が示されたマップを用いて前記触媒の目標温度を算出し、前記触媒温度検出部によって検出された前記触媒の温度と前記目標温度との差分を用いて、前記熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御してもよい。この構成によれば、制御部は、熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御するときに触媒の温度との差分を算出するための触媒の目標温度を、圧力検出部が検出する反応器の内部圧力と、反応器の内部圧力に対応する制御用変数が示されたマップを用いて算出する。これにより、反応器の内部圧力が変化することで、触媒温度検出部が検出する温度が変化した場合でも、この変化に対応して目標温度を算出することができる。したがって、原料ガスの炭化水素化合物への転化率をさらに向上することができる。
【0013】
(6)本発明の別の形態によれば、炭化水素化合物を生成する炭化水素化合物の製造方法が提供される。この炭化水素化合物の製造方法は、反応器において、供給源から供給される原料ガスを用いて炭化水素化合物を生成する炭化水素製造工程と、触媒温度検出部によって前記反応器の収容部に収容されている触媒の温度を検出する触媒温度検出工程と、前記触媒温度検出工程において検出される前記触媒の温度を用いて前記触媒との熱交換に用いられる熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する制御工程と、備え、前記触媒において、前記収容部の内側に前記原料ガスを供給するためのガス入口側の端面から、前記収容部の内側で生成された前記炭化水素化合物を含む生成ガスを取り出すためのガス出口側の端面までの長さを長さLcとし、前記触媒の前記ガス入口側の端面から前記触媒温度検出部までの距離を距離Zmとすると、前記触媒温度検出工程において、前記触媒温度検出部は、前記触媒のうちの長さLcに対する距離Zmの割合が0.06以上0.65より小さい範囲内の温度を検出する。この構成によれば、触媒温度検出部は、触媒において、触媒の入口側端面から、触媒のうちの長さLcに対する距離Zmの割合が0.06以上0.65より小さい範囲内の温度を検出する。制御工程では、触媒温度検出部によって検出される触媒の温度を用いて、熱媒体の流量または温度の少なくとも一方を制御する。これにより、熱媒体による触媒の温度の制御を高精度に行うことができるため、原料ガスの炭化水素化合物への転化率を向上することができる。また、触媒温度検出部が上述した範囲内の温度を検出することで、触媒の温度分布に関する情報を取得するために触媒温度検出部を触媒全体に配置する場合に比べ、反応器に配置される触媒温度検出部の数を少なくすることができる。これにより、反応器の製造コストを低減することができる。また、反応器に配置される触媒温度検出部の数を少なくすることができるため、触媒全体に触媒温度検出部を配置する場合に比べ、反応器の表面積が小さくなり、放熱による熱エネルギの損失が小さくなる。これにより、熱エネルギの回収率を向上することができる。このように、上述した構成によれば、製造コストを低減しつつ、原料ガスの炭化水素化合物への転化率を向上するとともに熱エネルギの回収率を向上することができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、炭化水素製造装置を備えるシステム、炭化水素化合物の製造方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、炭化水素製造装置の製造方法、炭化水素化触媒システム、炭化水素化合物を燃料とする燃料製造装置などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の炭化水素製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図2】熱電対による触媒の温度を検出する触媒の軸方向位置を説明する図である。
【
図3】第1反応器における熱媒体流量の制御処理を示すフローチャートである。
【
図4】第2反応器における熱媒体流量の制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】転化率における熱媒体の流量と熱媒体の温度との関係を示す図である。
【
図6】Zm/Lcが0.06での触媒温度を示す図である。
【
図7】Zm/Lcが0.19での触媒温度を示す図である。
【
図8】Zm/Lcが0.32での触媒温度を示す図である。
【
図9】Zm/Lcが0.65での触媒温度を示す図である。
【
図10】Zm/Lcが0.97での触媒温度を示す図である。
【
図11】第2実施形態の炭化水素製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図12】触媒の軸方向位置と触媒温度との関係を示す第1の図である。
【
図13】触媒の軸方向位置と触媒温度との関係を示す第2の図である。
【
図14】触媒の軸方向位置と触媒温度との関係を示す第3の図である。
【
図15】第1反応器における熱媒体流量の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のメタン製造装置1の概略構成を示した説明図である。
図2は、熱電対による触媒の温度を検出する触媒の軸方向位置を説明する図である。メタン製造装置1は、二酸化炭素(CO
2)と水素(H
2)とからメタン(CH
4)を製造すると同時に、メタン化反応によって発生する熱を熱活用先に供給する装置である。メタン製造装置1は、第1反応器10と、第2反応器20と、CO
2供給源30と、H
2供給源40と、原料混合ガス流路50と、第1生成ガス流路60と、第2生成ガス流路70と、熱媒体流路80と、制御部90と、を備えている。第1実施形態では、「炭化水素製造装置」としてのメタン製造装置1は、「炭化水素化合物」としてのCH
4を製造するとしているが、CH
4以外の炭化水素化合物を製造する炭化水素製造装置にも適用可能である。例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される炭化水素化合物やメタノールなどの主に炭素と水素とから構成される炭化水素化合物を製造する炭化水素製造装置にも適用可能である。
【0017】
第1反応器10は、内部においてメタン化反応によりCH4を生成するための略筒形状の容器であり、二重管によって構成されている。第1反応器10は、第1触媒11を収容する収容部10Aと、ガス入口12と、ガス出口13とを備える。収容部10Aでは、CO2とH2とを含む原料混合ガスからCH4を生成する。第1触媒11は、メタン化触媒性能を有する金属を含んでいる。メタン化触媒性能を有する金属としては、例えば、RuやNiを例示することができる。第1触媒11には、第1触媒11の温度を検出可能な熱電対14が1個配置されている。ガス入口12は、原料混合ガス流路50が接続されており、収容部10Aの内側に原料混合ガスを供給する。ガス出口13は、第1生成ガス流路60が接続されており、収容部10Aの内側で生成されたCH4や未反応のCO2などを含む第1生成ガスを取り出す。第1反応器10において、原料混合ガスは、特許請求の範囲の「原料ガス」に相当し、第1生成ガスは、特許請求の範囲の「生成ガス」に相当する。
【0018】
ここで、
図2(a)を用いて、第1反応器10の熱電対14による第1触媒11の温度の検出位置を説明する。第1触媒11において、第1反応器10のガス入口12側の端面である入口側端面11aから、第1反応器10のガス出口13側の端面である出口側端面11bまでの長さを長さLc1とする。また、第1触媒11の入口側端面11aから、熱電対14が第1触媒11の温度を検出する温度検出部P1までの距離を距離Zm1とする。この場合、熱電対14の温度検出部P1は、式(1)を満たす、第1触媒11の軸方向位置に配置される。
0.06≦Zm1/Lc1≦0.32 ・・・(1)
本実施形態では、熱電対14の温度検出部P1は、(Zm1/Lc1)が0.25となる軸方向位置の第1触媒11の温度を検出するように配置されている。本実施形態において熱電対14を式(1)の条件を満たす軸方向位置に配置する理由については、後述する。熱電対14の温度検出部P1は、特許請求の範囲の「触媒温度検出部」に相当する。
【0019】
第1反応器10の外側の管と内側の管との間には、オイルなどの流体の熱媒体(熱流体)が流通する内部流路15が形成されている。内部流路15は、熱媒体流路80の一部であって、熱媒体入口16から内部流路15に流入した熱媒体は、第1反応器10内のメタン化反応によって加熱された後、熱媒体出口17から排出される。熱媒体入口16は、第1反応器10での原料混合ガスの流通方向において相対的に下流側に設けられており、熱媒体出口17は、第1反応器10での原料混合ガスの流通方向において相対的に上流側に設けられている。これにより、熱媒体は、第1触媒11の下流側から上流側に向かって流通するため、より高温となる第1触媒11の上流側の熱を第2反応器20に供給することができる。
【0020】
第2反応器20は、第1反応器10と同形状、同容量の容器であり、第2触媒21を収容する収容部20Aと、ガス入口22と、ガス出口23とを備える。収容部20Aでは、第1生成ガスに含まれる未反応のCO2などからCH4を生成する。第2触媒21は、メタン化触媒性能を有する金属を含んでいる。メタン化触媒性能を有する金属としては、例えば、RuやNiを例示することができる。第2触媒21には、第2触媒21の温度を検出可能な熱電対24が1個配置されている。ガス入口22は、第1生成ガス流路60が接続されており、収容部20Aの内側に第1生成ガスを供給する。ガス出口23は、第2生成ガス流路70が接続されている。第2反応器20で生成された生成物(CH4とH2O)を含む第2生成ガスは、第2生成ガス流路70を経由して、外部の図示しないメタン利用施設、例えば、CH4を貯蔵するタンクや、メタンガス燃焼炉などに供給される。第2反応器20において、第1生成ガスは、特許請求の範囲の「原料ガス」に相当し、第2生成ガスは、特許請求の範囲の「生成ガス」に相当する。熱電対24は、特許請求の範囲の「触媒温度検出部」に相当する。
【0021】
ここで、
図2(b)を用いて、第2反応器20の熱電対24による第2触媒21の温度の検出位置を説明する。第2触媒21において、第2反応器20のガス入口22側の端面である入口側端面21aから、第2反応器20のガス出口23側の端面である出口側端面21bまでの長さを長さLc2とする。また、第2触媒21の入口側端面21aから、熱電対24が第2触媒21の温度を検出する温度検出部P2までの距離を距離Zm2とする。この場合、熱電対24の温度検出部P2は、式(2)を満たす第2触媒21の軸方向位置に配置される。
0.06≦Zm2/Lc2≦0.32 ・・・(2)
本実施形態では、熱電対24の温度検出部P2は、(Zm2/Lc2)が0.25となる軸方向位置の第2触媒21の温度を検出するように配置されている。本実施形態において熱電対24を式(2)の条件を満たす軸方向位置に配置する理由については、後述する。熱電対24の温度検出部P2は、特許請求の範囲の「触媒温度検出部」に相当する。
【0022】
第2反応器20の外側の管と内側の管との間には、熱媒体が流通する内部流路25が形成されている。内部流路25は、熱媒体流路80の一部であって、熱媒体入口26から内部流路25に流入した熱媒体は、第2反応器20に供給される第1生成ガスや第2触媒21を加熱した後、熱媒体出口27から排出される。本実施形態では、熱媒体入口26は、第2反応器20での第1生成ガスの流通方向において相対的に下流側に設けられており、熱媒体出口27は、第2反応器20での第1生成ガスの流通方向において相対的に上流側に設けられている。これにより、熱媒体は、第2触媒21の下流側から上流側に向かって流通するため、メタン化反応が生じにくく相対的に温度が低い第2触媒21の下流側をより昇温させることができる。
【0023】
CO2供給源30は、CO2を含むガスを供給可能な供給源であり、例えば、燃焼炉と、CO2分離器とを含んで構成される。CO2分離器は、燃焼炉の排ガスからCO2を分離して回収するための装置であり、内部にCO2吸蔵(吸着)性能を有する吸着材が収容されている。CO2供給源30から供給される原料混合ガスは、原料混合ガス流路50を経由して第1反応器10に供給される。
【0024】
H2供給源40は、例えば、水電解装置や水素タンクによって構成される。H2供給源40から供給されるH2は、水素供給流路41から原料混合ガス流路50を経由して第1反応器10に供給される。水素供給流路41には、マスフローコントローラ(MFC)42が設けられており、原料混合ガス流路50から第1反応器10に供給されるH2の量が調整される。MFC42は、制御部90によって制御される。
【0025】
原料混合ガス流路50は、CO2供給源30から供給されたCO2と、MFC42を介してH2供給源40から供給されたH2と、を含む原料混合ガスを第1反応器10に供給するためのガス流路であり、複数のガス配管を含んで構成されている。原料混合ガス流路50には、CO2供給源30から供給されるCO2を含むガスの流量を測定するマスフローコントローラ(MFC)51が設けられている。MFC51の下流側には、水素供給流路41が接続されており、MFC42からH2が供給される。MFC51を通過したCO2を含むガスは、MFC42からのH2が付加された後、原料混合ガスとして第1反応器10に供給される。
【0026】
第1生成ガス流路60は、第1反応器10から送り出された第1生成ガスを第2反応器20に供給するためのガス流路であり、複数のガス配管によって構成されている。第1生成ガス流路60には、冷却部61が設けられている。冷却部61は、第1反応器10で生成された生成物(CH4とH2O)を含む第1生成ガスからH2Oを分離する脱水装置である。冷却部61は、第1反応器10から送り出された第1生成ガス(100℃~200℃)を常温(例えば、20℃±15℃)まで低下させてH2Oを分離する。H2Oが分離された常温の第1生成ガスは、第2反応器20に供給される。
【0027】
第2生成ガス流路70は、第2反応器20から送り出された第2生成ガスを外部のメタン利用装置に供給するためのガス流路であり、複数のガス配管によって構成されている。第2生成ガス流路70には、冷却部71が設けられている。冷却部71は、第2反応器20で生成された生成物(CH4とH2O)を含む第2生成ガスからH2Oを分離する脱水装置である。冷却部71は、第2反応器20から送り出された第2生成ガスを常温(例えば、20℃±15℃)まで低下させてH2Oを分離する。H2Oが分離された常温の第2生成ガスは、第2生成ガスを外部のメタン利用装置に供給される。
【0028】
熱媒体流路80は、熱媒体としてのオイルなどの流体が流通する流路であり、第1反応器10と第2反応器20とに接続している。熱媒体流路80は、流入流路80aと、中間流路80bと、流出流路80cと、分流流路80dと、を含み、熱媒体を流通可能に形成されている。熱媒体流路80と、後述するポンプ81および絞り弁82は、特許請求の範囲の「熱媒体供給部」に相当する。
【0029】
流入流路80aは、熱媒体を圧送可能なポンプ81と、第1反応器10の熱媒体入口16と、に接続し、ポンプ81が圧送する熱媒体を第1反応器10の内部流路15に供給する。第1反応器10の内部流路15を流れる熱媒体は、第1反応器10の第1触媒11との熱交換に用いられる。ポンプ81は、図示しないインバータを内蔵しており、制御部90からの指令を受けてポンプ81の外部から供給される電力の周波数を変更することによって、ポンプ81の回転数を変更することが可能である。これにより、ポンプ81は、内部流路15を流れる熱媒体の流量を変更することができる。
【0030】
中間流路80bは、第1反応器10の熱媒体出口17と、第2反応器20の熱媒体入口26とに接続し、第1反応器10から排出される熱媒体を第2反応器20の内部流路25に供給する。第2反応器20の内部流路25に供給される熱媒体は、第2反応器20の第2触媒21との熱交換に用いられる。
【0031】
流出流路80cは、第2反応器20の熱媒体出口27と、分流流路80dとに接続する。流出流路80cは、第2反応器20の内部流路25を流れた熱媒体を分流流路80dに送る。流出流路80cには、絞り弁82が配置されている。絞り弁82は、制御部90と電気的に接続しており、制御部90からの指令を受けて絞りの開度が調節される。これにより、絞り弁82は、第2反応器20の内部流路25を流れる熱媒体の流量を変更することできる。
【0032】
分流流路80dは、中間流路80bに接続し、中間流路80bを流れる熱媒体の一部を熱活用先に供給する。分流流路80dを流れる熱媒体の流量は、流出流路80cに配置されている絞り弁82の開度によって決定される。具体的には、分流流路80dを流れる熱媒体の流量は、第1反応器10の内部流路15を流れた熱媒体の流量から、絞り弁82の開度によって調節される内部流路25を流れた熱媒体の流量を差し引いた流量となる。分流流路80dを流れる熱媒体は、流出流路80cを流れる熱媒体と合流し、メタン製造装置1の外部の図示しない熱活用先に供給される。
【0033】
制御部90は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータであり、メタン製造装置1の全体の制御をおこなう。制御部90は、MFC42、51、ポンプ81、絞り弁82のほか、図示しないセンサ(温度センサ、流量センサ、濃度センサなど)、温度調整部などと電気的に接続され、これらの制御をおこなう。
【0034】
次に、本実施形態における熱媒体流量の制御処理について説明する。本実施形態のメタン製造装置1では、第1反応器10と第2反応器20とのそれぞれにおいて独立して熱媒体流量の制御を行う。
【0035】
図3は、第1反応器10における熱媒体流量の制御処理を示すフローチャートである。第1反応器10に供給される熱媒体の流量制御では、最初に、ポンプ81の周波数の初期値を設定する(ステップS11)。制御部90は、ポンプ81の駆動開始にあたって、ポンプ81の周波数の初期値f
oil_
0を設定する。ポンプ81は、制御部90によって設定された周波数の初期値f
oil_
0が入力されると、周波数f
oil_
0に応じた回転数で回転し、第1反応器10の内部流路15に熱媒体を供給する。
【0036】
次に、第1触媒11の温度を検出する(ステップS12)。熱電対14は、温度検出部P1(
図2(a)参照)での第1触媒11の温度を検出する。熱電対14は、時刻tにおいて検出した温度(以下、「検出温度」という)T
1(t)を制御部90に出力する。
【0037】
次に、第1触媒11の目標温度と検出温度との差分を算出する(ステップS13)。制御部90は、事前に入力されている第1触媒11の目標温度T1_targetと、ステップS12において熱電対14から入力される検出温度T1(t)との差分を算出する。なお、第1触媒11の目標温度T1_targetとは、第1反応器10において、CO2のCH4への転化率が比較的高く、かつ、熱エネルギの回収率が比較的高いときの第1触媒11のうちの温度検出部P1が位置する箇所の温度である。
【0038】
次に、第1触媒11の目標温度と検出温度との差分を用いて、ポンプ81の新たな周波数を算出する(ステップS14)。制御部90は、ステップS13で算出した、目標温度T
1_
targetと検出温度T
1(t)との差分を用いて、式(3)によって、ポンプ81の周波数f
oil(t)を算出する。
f
oil(t)=A×{T
1_
target-T
1(t)}+f
oil(t-δt)・・・(3)
式(3)において、Aは、制御部90に事前に入力されている制御定数であって、f
oil(t-δt)は、時刻(t-δt)のときのポンプ81の周波数である。
図3に示す制御処理を開始した後の最初のステップS14のときには、f
oil(t-δt)は、周波数の初期値f
oil_
0となる。制御部90は、算出したポンプ81の新たな周波数f
oil(t)をポンプ81に出力する。ポンプ81が入力される新たな周波数f
oil(t)で回転することで、内部流路15を流れる熱媒体の流量が変更される。
【0039】
ステップS14の後、時刻tから時間δtが経過したのち、ステップS12に戻り、ステップS12からステップS14を繰り返す。メタン製造装置1では、熱電対14によって検出された第1触媒11の温度を用いて、内部流路15を流れる熱媒体の流量を調節する。
【0040】
図4は、第2反応器20における熱媒体流量の制御処理を示すフローチャートである。第2反応器20に供給される熱媒体の流量制御では、最初に、絞り弁82の開度の初期値を設定する(ステップS21)。制御部90は、ポンプ81の駆動が開始され、熱媒体流路80に熱媒体が流れ始めると、絞り弁82の開度の初期値N
oil_
0を設定する。絞り弁82の開度が制御部90によって設定された開度の初期値N
oil_
0に設定されると、開度N
oil_
0に応じた流量の熱媒体が、第2反応器20の内部流路25を流れる。
【0041】
次に、第2触媒21の温度を検出する(ステップS22)。熱電対24は、温度検出部P2(
図2(b)参照)での第2触媒21の温度を検出する。熱電対24は、時刻tにおける検出温度T
2(t)を制御部90に出力する。
【0042】
次に、第2触媒21の目標温度と検出温度との差分を算出する(ステップS23)。制御部90は、事前に入力されている第2触媒21の目標温度T2_targetと、ステップS22において熱電対24から入力される検出温度T2(t)との差分を算出する。なお、第2触媒21の目標温度T2_targetとは、第2反応器20において、CO2のCH4への転化率が比較的高く、かつ、熱エネルギの回収率が比較的高いときの第2触媒21のうちの温度検出部P2が位置する箇所の温度である。
【0043】
次に、第2触媒21の目標温度と検出温度との差分を用いて、絞り弁82の新たな開度を算出する(ステップS24)。制御部90は、ステップS23で算出した、目標温度T
2_
targetと検出温度T
2(t)との差分を用いて、式(4)によって、絞り弁82の開度N
oil(t)を算出する。
N
oil(t)=B×{T
2_
target-T
2(t)}+N
oil(t-δt)・・・(4)
式(4)において、Bは、制御部90に事前に入力されている制御定数である。N
oil(t-δt)は、時刻(t-δt)のときの絞り弁82の開度である。
図4に示す制御処理を開始した後の最初のステップS24のときには、N
oil(t-δt)は、開度の初期値N
oil_
0となる。制御部90は、算出した絞り弁82の新たな開度N
oil(t)を絞り弁82に出力する。絞り弁82が入力される新たな開度N
oil(t)となることで、内部流路25を流れる熱媒体の流量が変更される。
【0044】
ステップS24の後、時刻tから時間δtが経過したのち、ステップS22に戻り、ステップS22からステップS24を繰り返す。メタン製造装置1では、熱電対24によって検出された第2触媒21の温度を用いて、内部流路25を流れる熱媒体の流量を調節する。
【0045】
次に、本実施形態において、熱電対14が式(1)を満たす軸方向位置に配置される理由、および、熱電対24が式(2)を満たす軸方向位置に配置される理由について説明する。本実施形態では、
図2で説明したように、上述した式(1)、(2)のそれぞれを満たすように配置されている熱電対14、24が検出する触媒の温度を用いて、第1反応器10と第2反応器20とのそれぞれの反応器に供給される熱媒体の流量を決定している。
【0046】
図5は、CO
2のCH
4への転化率における熱媒体の流量と温度との関係を示す図である。
図5では、横軸に、反応器に供給される熱媒体の流量Q
oil(cc/min)を示し、縦軸に、反応器に供給される熱媒体の温度T
oil_
in(℃)を示す。
図5では、反応器に供給される熱媒体の流量Q
oilと熱媒体の温度T
oil_
inに対して、実験で得られたCO
2のCH
4への転化率を等高線で示している。例えば、熱媒体の流量Q
oilが250cc/minであって、熱媒体の温度T
oil_
inが70℃である場合、転化率は、82.5~83%であることを示している(
図5のポイントP5)。
図5の点線矢印A5で示すように、CO
2のCH
4への転化率は、熱媒体の流量または温度を変化させると、その変化に対して比較的単調に変化することが確認された。なお、
図5に示す「□」は、転化率が計測された計測点を示し、「×」は、転化率を計測できなかった失活点を示す。
【0047】
図6は、Zm/Lcが0.06での触媒温度を示す図である。
図7は、Zm/Lcが0.19での触媒温度を示す図である。
図8は、Zm/Lcが0.32での触媒温度を示す図である。
図9は、Zm/Lcが0.65での触媒温度を示す図である。
図10は、Zm/Lcが0.97での触媒温度を示す図である。
図6から
図10のそれぞれは、熱媒体の流量Qと熱媒体の温度Tに対して、実験で得られたCO
2のCH
4への転化率を示している。なお、
図6から
図10の等温線に示す数字のそれぞれは、触媒の温度を示している。
【0048】
Zm/Lcが0.06の
図6と、Zm/Lcが0.19の
図7と、Zm/Lcが0.32での
図8では、いずれも、熱媒体の流量Q
oilまたは熱媒体の温度T
oil_
inの変化と、触媒の温度の変化との間に単調な相関関係があることが確認された(
図6の実線矢印A6、
図7の実線矢印A7、
図8の実線矢印A8)。ここで、単調な相関関係とは、
図6から
図8に示すように、熱媒体の流量Q
oilを増加または温度T
oil_
inを上昇させると触媒の温度は上昇し、熱媒体の流量Q
oilを減少または温度T
oil_
inを低下させると触媒の温度も低下することを指す。具体的には、例えば、
図6に示すように、熱媒体の流量Q
oilを増加させると触媒の温度は一様に低下し増加することはない(
図6の点線矢印6a)。また、
図6に示すように、熱媒体の温度T
oil_
inを増加させると触媒の温度も一様に上昇し、低下することはない(
図6の点線矢印6b)。
【0049】
一方、Zm/Lcが0.65の
図9と、Zm/Lcが0.97の
図10では、熱媒体の流量Q
oilまたは熱媒体の温度T
oil_
inの変化と、触媒の温度の変化との間には、
図6から
図8とは異なる関係があることが確認された。具体的には、等温線が
図9に示す領域A9のような形状になると、熱媒体の流量Q
oilを増加させると触媒の温度が低下せずに上昇する場合がある(
図9の点線矢印9a)。また、等温線が
図10に示す領域A10のような形状になると、熱媒体の流量Q
oilを増加させると触媒の温度が低下せずに上昇する場合がある(
図10の点線矢印10a)。また、熱媒体の温度T
oil_
inを増加させると触媒の温度が上昇せずに低下したりする場合がある(
図10の点線矢印10b)。
【0050】
このように、熱媒体の流量Q
oilおよび温度T
oil_
inと転化率との関係を示す図である
図5と、
図6から
図10に示す熱媒体の流量Q
oilと温度T
oil_
inと触媒の温度との関係とを組み合わせると、Zm/Lcが0.06以上0.65より小さい場合、1つの熱電対によって検出される触媒の温度を用いて、転化率を制御することができる。なお、Zm/Lcが0.06以上0.32以下の場合では、さらに高精度に転化率を制御することができる。本実施形態では、これらの実験結果を踏まえて、熱電対14の温度検出部P1を式(1)の関係を満たす第1触媒11の軸方向位置に配置し、熱電対24の温度検出部P2を式(2)の関係を満たす第2触媒21の軸方向位置に配置している。
【0051】
以上説明した、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、熱電対14は、第1触媒11のうちの長さLc1に対する距離Zm1の割合が0.06以上0.65より小さい範囲内の第1触媒11の温度を検出する。制御部90は、熱電対14によって検出される第1触媒11の温度を用いて、第1反応器10に供給される熱媒体の流量を制御する。また、熱電対24は、第2触媒21のうちの長さLc2に対する距離Zm2の割合が0.06以上0.65より小さい範囲内の第2触媒21の温度を検出する。制御部90は、熱電対24によって検出される第2触媒21の温度を用いて、第2反応器20に供給される熱媒体の流量を制御する。これにより、熱媒体による第1触媒11および第2触媒21の温度の制御を高精度に行うことができるため、CO2のCH4への転化率を向上することができる。また、熱電対14、24が上述した範囲内の温度を検出することで、触媒の温度分布に関する情報を取得するために触媒温度検出部を触媒全体に配置する場合に比べ、反応器10、20に配置される熱電対の数を少なくすることができる。これにより、メタン製造装置1の製造コストを低減することができる。また、反応器10、20に配置される熱電対の数を少なくすることができるため、触媒全体に触媒温度検出部を配置する場合に比べ、反応器10、20の表面積が小さくなり、放熱による熱エネルギの損失が小さくなる。これにより、熱エネルギの回収率を向上することができる。このように、上述した構成によれば、メタン製造装置1の製造コストを低減しつつ、CO2のCH4への転化率を向上するとともに熱エネルギの回収率を向上することができる。
【0052】
また、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、熱電対14は、温度検出部P1が第1触媒11のうちの長さLc1に対する距離Zm1の割合が0.06以上0.32以下の範囲内に配置されており、この位置での第1触媒11の温度を検出する。また、熱電対24は、温度検出部P2が第2触媒21のうちの長さLc2に対する距離Zm2の割合が0.06以上0.32以下の範囲内に配置されており、この位置での第2触媒21の温度を検出する。第1触媒11および第2触媒21におけるこの範囲内での温度は、熱媒体の流量の変化に対して単調に変化するため、この範囲内での第1触媒11および第2触媒21の温度を検出することで、熱媒体による第1触媒11および第2触媒21の温度制御をさらに高精度に行うことができる。これにより、CO2のCH4への転化率をさらに向上するとともに熱エネルギの回収率をさらに向上することができる。
【0053】
また、第1実施形態のメタン製造方法によれば、例えば、第1反応器10では、熱電対14は、第1触媒11において、長さLc1に対する距離Zm1の割合が0.06以上0.65より小さい範囲内の温度を検出する。制御部90は、熱電対14によって検出される第1触媒11の温度を用いて、熱媒体の流量を制御する。これにより、熱媒体による触媒の温度の制御を高精度に行うことができるため、CO2のCH4への転化率を向上することができる。また、熱電対14、24が上述した範囲内の温度を検出することで、触媒の温度分布に関する情報を取得するために触媒温度検出部を触媒全体に配置する場合に比べ、第1反応器10や第2反応器20に配置される熱電対の数を少なくすることができる。これにより、第1反応器10や第2反応器20の製造コストを低減することができる。また、第1反応器10や第2反応器20に配置される熱電対の数を少なくすることができるため、触媒全体に触媒温度検出部を配置する場合に比べ、第1反応器10や第2反応器20の表面積が小さくなり、放熱による熱エネルギの損失が小さくなる。これにより、熱エネルギの回収率を向上することができる。このように、上述した構成によれば、製造コストを低減しつつ、CO2のCH4への転化率を向上するとともに熱エネルギの回収率を向上することができる。
【0054】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態におけるメタン製造装置2の概略構成を示した説明図である。第2実施形態のメタン製造装置2は、第1実施形態のメタン製造装置1(
図1)と比較すると、ガス流量検出部と、ガス温度検出部と、圧力検出部を備える点が異なる。
【0055】
本実施形態のメタン製造装置2は、第1実施形態のメタン製造装置1が備える第1反応器10や第2反応器20などに加えて、原料混合ガス流量検出部52と、原料混合ガス温度検出部53と、第1生成ガス流量検出部62と、第1生成ガス温度検出部63と、第1圧力検出部18と、第2圧力検出部28とを備える。
【0056】
原料混合ガス流量検出部52と原料混合ガス温度検出部53は、原料混合ガス流路50において、原料混合ガス流路50と水素供給流路41とが接続される個所(
図11の符号C50)と第1反応器10との間に設けられている。原料混合ガス流量検出部52は、原料混合ガス流路50を流れるCO
2とH
2を含む原料混合ガスの流量を検出し、検出した流量を制御部90に出力する。原料混合ガス温度検出部53は、原料混合ガス流路50を流れるCO
2とH
2を含む原料混合ガスの温度を検出し、検出した温度を制御部90に出力する。
【0057】
第1生成ガス流量検出部62と第1生成ガス温度検出部63は、第1生成ガス流路60において、冷却部61と第2反応器20との間に設けられている。第1生成ガス流量検出部62は、冷却部61を通過した後、第1生成ガス流路60を流れる第1生成ガスの流量を検出し、検出した流量を制御部90に出力する。第1生成ガス温度検出部63は、第1生成ガス流路60を流れる第1生成ガスの温度を検出し、検出した温度を制御部90に出力する。
【0058】
第1圧力検出部18は、第1反応器10に設けられている。第1圧力検出部18は、第1反応器10の内部圧力を検出し、検出した内部圧力を制御部90に出力する。
【0059】
第2圧力検出部28は、第2反応器20に設けられている。第2圧力検出部28は、第2反応器20の内部圧力を検出し、検出した内部圧力を制御部90に出力する。
【0060】
本実施形態における熱媒体流量の制御処理では、触媒の目標温度を、反応器に流入するガスの流量、温度、および、反応器の内部圧力の少なくとも1つの数値に応じて変更する。ここでは、反応器に流入するガスの流量、温度、および、反応器の内部圧力と、触媒の温度との関係について説明する。
【0061】
図12は、触媒の軸方向位置と触媒温度との関係を示す第1の図である。
図12には、反応器に流入するガスの流量が変化するときの触媒の軸方向位置と触媒温度との関係の変化を示している。
図12には、触媒の入口側端面と出口側端面の位置とともに、熱電対の温度検出部が配置される軸方向位置(
図12に示す符号TC1、TC2)が示されている。触媒の軸方向位置と触媒温度との関係が
図12に示す実線G11である状態から反応器に流入するガスの流量を増加させると、反応熱によって触媒が昇温される領域はガスの下流側にずれるため、触媒の軸方向位置と触媒温度との関係は、点線G12に変化する。このとき、軸方向位置TC1において検出される触媒の温度は、温度Ta11から温度Ta12に低下する(
図12に示す点線矢印a12)。この場合、反応器に流入するガスの流量が増加するとき、触媒の温度は低下することがわかる。また、軸方向位置TC2において検出される触媒の温度は、温度Tb11から温度Tb12に上昇する(
図12に示す点線矢印b12)。この場合、反応器に流入するガスの流量が増加するとき、触媒の温度は上昇することがわかる。このように、反応器に流入するガスの流量の変化によって、熱電対で検出される温度は変化する。
【0062】
図13は、触媒の軸方向位置と触媒温度との関係を示す第2の図である。
図13には、反応器に流入するガスの温度が変化するときの触媒の軸方向位置と触媒温度との関係の変化を示している。
図13には、触媒の入口側端面と出口側端面の位置とともに、熱電対の温度検出部が配置される軸方向位置(
図13に示す符号TC1、TC2)が示されている。触媒の軸方向位置と触媒温度との関係が
図13に示す実線G13である状態から反応器に流入するガスの温度を上昇させると、反応熱によって触媒が昇温される領域はガスの上流側にずれるため、触媒の軸方向位置と触媒温度との関係は、点線G14に変化する。このとき、軸方向位置TC1において検出される触媒の温度は、温度Ta13から温度Ta14に上昇する(
図13に示す点線矢印a13)。この場合、反応器に流入するガスの温度が上昇するとき、触媒の温度は上昇することがわかる。また、軸方向位置TC2において検出される触媒の温度は、温度Tb13から温度Tb14に低下する(
図13に示す点線矢印b13)。この場合、反応器に流入するガスの温度が上昇するとき、触媒の温度は低下することがわかる。このように、反応器に流入するガスの温度の変化によって、熱電対で検出される温度は変化する。
【0063】
図14は、触媒の軸方向位置と触媒温度との関係を示す第3の図である。
図14には、反応器の内部圧力が変化するときの触媒の軸方向位置と触媒温度との関係の変化を示している。
図14には、
図12および
図13と同様に、触媒の入口側端面と出口側端面の位置とともに、熱電対の温度検出部が配置される軸方向位置(
図14に示す符号TC1、TC2)が示されている。触媒の軸方向位置と触媒温度との関係が
図14に示す実線G15である状態から反応器の内部圧力が上昇すると、反応熱によって触媒が昇温される領域はガスの上流側にずれるため、触媒の軸方向位置と触媒温度との関係は、点線G16に変化する。このとき、軸方向位置TC1において検出される触媒の温度は、温度Ta15から温度Ta16に上昇する(
図14に示す点線矢印a14)。この場合、反応器の内部圧力が上昇するとき、触媒の温度は上昇することがわかる。また、軸方向位置TC2において検出される触媒の温度は、温度Tb15から温度Tb16に低下する(
図14に示す点線矢印b14)。この場合、反応器の内部圧力が上昇するとき、触媒の温度は低下することがわかる。このように、反応器の内部圧力の変化によって、熱電対で検出される温度は変化する。
【0064】
図15は、本実施形態の第1反応器10における熱媒体流量の制御処理を示すフローチャートである。本実施形態における熱媒体流量の制御処理では、上述した
図12から
図14を用いて説明した、反応器に流入するガスの流量、温度、および、反応器の内部圧力の影響を考慮して、触媒の目標温度を設定する。ここでは、
図15を用いて、第1反応器10における熱媒体流量の制御処理を説明する。
【0065】
最初に、第1実施形態の第1反応器10での制熱媒体流量の御処理の場合と同様に、ポンプ81の周波数の初期値を設定し(ステップS31)、第1触媒11の温度を検出する(ステップS32)。熱電対14は、時刻tの検出温度T1(t)を制御部90に出力する。
【0066】
次に、第1反応器10に流入する原料混合ガスの流量、温度、および、第1反応器10の内部圧力を検出する(ステップS33)。具体的には、原料混合ガス流量検出部52によって第1反応器10に流入する原料混合ガスの流量を検出する。また、原料混合ガス温度検出部53によって原料混合ガスの温度を検出する。さらに、第1圧力検出部18によって第1反応器10の内部圧力を検出する。これらの検出された数値は、制御部90に出力される。
【0067】
次に、第1触媒11の目標温度を算出する(ステップS34)。制御部90は、ステップS33において入力された第1反応器10に流入する原料混合ガスの流量、温度、および、第1反応器10の内部圧力を用いて、第1触媒11の目標温度を算出する。第1触媒11の目標温度は、具体的には、式(5)を用いて算出される。
T1_target_cal(t)=C(t)×Qgas(t)+D(t)×Tgas_inl(t)+E(t)×Pmet(t)+F(t)・・・(5)
【0068】
式(5)において、Qgas(t)は、第1反応器10に流入する原料混合ガスの流量であって、MFC42によって流量が調節されたH2の流量と、MFC51によって流量が調節されたCO2の流量との合計の流量である。Tgas_inl(t)は、第1反応器10に供給される原料混合ガスの温度である。Pmet(t)は、第1反応器10の内部圧力である。また、C(t)、D(t)、E(t)、F(t)は、制御部90に事前に入力されている複数のマップから取得される制御用変数である。これら複数のマップのそれぞれには、原料混合ガスの流量、温度、および、第1反応器10の内部圧力のそれぞれの変化に対応する制御用変数が示されており、制御部90は、原料混合ガスの流量、温度、および、第1反応器10の内部圧力の変化に応じて、これらのマップから対応する制御用変数を取得する。ステップS34では、制御部90は、上述した複数のマップと、式(5)を用いて、第1触媒11の目標温度を算出する。
【0069】
次に、第1実施形態と同様に、第1触媒11の目標温度と検出温度との差分を算出し(ステップS35)、第1触媒11の目標温度と検出温度との差分を用いて、ポンプ81の新たな周波数を算出する(ステップS36)。本実施形態では、このようにして、第1触媒11の目標温度を、原料混合ガスの流量、温度、および、第1反応器10の内部圧力を用いて算出し、算出した目標温度T1_target_cal(t)を用いて、ポンプ81の周波数を算出する。
【0070】
ここでは、本実施形態の第2反応器20における熱媒体流量の制御処理の説明を省略したが、第2反応器20についても同様の制御処理を行う。具体的には、第2反応器20に流入する第1生成ガスの流量、温度、および、第2反応器20の内部圧力を用いて、第2触媒21の目標温度を算出する。このとき、第1生成ガス流量検出部62によって第2反応器20に流入する第1生成ガスの流量を検出する。また、第1生成ガス温度検出部63によって第1生成ガスの温度を検出する。さらに、第2圧力検出部28によって第2反応器20の内部圧力を検出する。これらの検出された数値を用いて、制御部90において、第2触媒21の目標温度T2_target_calを算出し、絞り弁82の開度を算出する。
【0071】
以上説明した、第2施形態のメタン製造装置2によれば、熱電対14、24では、Zm/Lcが0.06以上0.32以下の範囲内に温度検出部P1、P2が配置されている。これにより、熱電対14、24のそれぞれが検出した触媒の温度を用いて熱媒体による第1触媒11および第2触媒21の温度の制御を高精度に行うことができるため、CO2のCH4への転化率を向上することができる。また、反応器10、20に配置される熱電対の数を少なくすることができるため、メタン製造装置1の製造コストを低減することができるとともに、放熱による熱エネルギの損失が小さくなるため、熱エネルギの回収率を向上することができる。
【0072】
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、制御部90は、熱媒体の流量を制御するときに第1触媒11の温度との差分を算出するための第1触媒11の目標温度を、原料混合ガス流量検出部52が検出する原料混合ガスの流量を用いて算出する。また、制御部90は、熱媒体の流量を制御するときに第2触媒21の温度との差分を算出するための第2触媒21の目標温度を、第1生成ガス流量検出部62が検出する第1生成ガスの流量を用いて算出する。これにより、反応器10、20に流入するガスの流量が変化することで、熱電対14、24が検出する温度がCH4の生成に適した温度から変化した場合でも、この変化に対応して目標温度T1_target_cal、T2_target_calを算出することができる。したがって、CO2のCH4への転化率をさらに向上することができる。
【0073】
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、制御部90は、熱媒体の流量を制御するときに用いられる第1触媒11の目標温度を、原料混合ガス温度検出部53が検出する第1反応器10に供給される前の原料混合ガスの温度を用いて算出する。また、制御部90は、第2触媒21の目標温度を、第1生成ガス温度検出部63が検出する第1生成ガスの流量を用いて算出する。これにより、反応器10、20に流入するガスの温度が変化することで、熱電対14、24が検出する温度がCH4の生成に適した温度から変化した場合でも、この変化に対応して目標温度T1_target_cal、T2_target_calを算出することができる。したがって、CO2のCH4への転化率をさらに向上することができる。
【0074】
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、制御部90は、熱媒体の流量を制御するときに用いられる第1触媒11の目標温度を、第1圧力検出部18が検出する第1反応器10の内部圧力を用いて算出する。また、制御部90は、熱媒体の流量を制御するときに用いられる第2触媒21の目標温度を、第2圧力検出部28が検出する、第2反応器20の内部圧力を用いて算出する。これにより、反応器10、20の内部圧力が変化することで、熱電対14、24が検出する温度がCH4の生成に適した温度から変化した場合でも、この変化に対応して目標温度T1_target_cal、T2_target_calを算出することができる。したがって、CO2のCH4への転化率をさらに向上することができる。
【0075】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0076】
[変形例1]
上述の実施形態では、「炭化水素製造装置」としてのメタン製造装置は、「炭化水素化合物」としてのCH4を製造するとした。しかしながら、炭化水素製造装置が製造する炭化水素化合物は、CH4だけでなく、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や、メタノールなどの主に炭素と水素とから構成される化合物を含んでもよい。
【0077】
[変形例2]
上述の実施形態では、
図2に示すように、ガス入口とガス出口とが対向する反応器に収容されている触媒において、互いに略平行にかつ平面状に形成されている入口側端面から出口側端面までの長さを、触媒の長さLcとした。ガス入口とガス出口とが対向していない場合や入口側端面と出口側端面とが略平行に形成されていない場合では、例えば、ガス入口の中心とガス出口の中心とを結ぶ方向に沿った触媒の長さを長さLcとしてもよい。また、入口側端面と出口側端面とが凹凸が大きく平面状に形成されていない場合、例えば、その凹凸をならした入口側の平均面から出口側の平均面までの長さを長さLcとしてもよい。
【0078】
[変形例3]
上述の実施形態では、熱電対14、24の温度検出部P1、P2は、0.06≦Zm/Lc≦0.32を満たす触媒の軸方向位置に配置されるとした。しかしながら、温度検出部P1、P2が配置される位置は、これに限定されない。0.06≦Zm/Lc<0.65であってもよい。
【0079】
[変形例4]
上述の実施形態のメタン製造装置は、二つの反応器10、20を備えているものとした。しかしながら、メタン製造装置は、反応器を1つだけ備えていてもよい。
【0080】
[変形例5]
上述の実施形態では、反応器を流れる熱媒体の流量を制御することで、触媒の温度を調節し、CO2のCH4への転化率を向上するとともに熱エネルギの回収率を向上するとした。しかしながら、触媒の温度を調節する方法はこれに限定されない。熱媒体の温度を調節することで、CO2のCH4への転化率の向上と、熱エネルギの回収率の向上を両立してもよい。
【0081】
[変形例6]
上述の実施形態では、1つの反応器に設置される熱電対は、1つであるとした。しかしながら、熱電対は、複数あってもよく、Zm/Lcが0.06以上0.65より小さくなる軸方向位置に配置されていればよい。なお、熱電対を複数設置すると反応器の表面積が増大するため、反応器からの放熱による熱損失が増大し、熱エネルギの回収率が低下するおそれがある。このことから、上述の実施形態で説明したように、熱電対の数は、1つの反応器に1つであることが望ましい。
【0082】
[変形例7]
上述の実施形態では、触媒の温度は、熱電対によって検出されるとした。しかしながら、触媒の温度を検出する方法は、これに限定されない。測温抵抗体や、ダイオード温度センサなどであってもよい。
【0083】
[変形例8]
上述の実施形態では、第1反応器10に供給される熱媒体の流量をポンプ81の周波数で制御し、第2反応器20に供給される熱媒体の流量を絞り弁82の開度で制御するとした。しかしながら、反応器に供給される熱媒体の流量の制御方法は、これに限定されない。
【0084】
[変形例9]
第2実施形態では、原料混合ガス流量検出部52と、原料混合ガス温度検出部53と、第1生成ガス流量検出部62と、第1生成ガス温度検出部63と、第1圧力検出部18と、第2圧力検出部28とを備えるとした。しかしながら、これらは全てなくてもよい。例えば、第1反応器10については、原料混合ガス流量検出部52、原料混合ガス温度検出部53、および、第1圧力検出部18の少なくとも1つが備えられていてもよい。少なくとも1つが備えられていれば、触媒の状況変化に対応して目標温度を変化させることができるため、CO2のCH4への転化率をさらに向上することができる。
【0085】
[変形例10]
第2実施形態では、触媒の目標温度を算出するときに用いられるC(t)、D(t)、E(t)、F(t)は、制御部90に事前に入力されている複数のマップから取得される制御用変数であるとした。しかしながら、C、D、E、Fは、事前に制御部90に入力されている定数であってもよい。
【0086】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0087】
1,2…メタン製造装置
10…第1反応器
10A…収容部
11…第1触媒
12,22…ガス入口
13,23…ガス出口
14,24…熱電対
15,25…内部流路
16,26…熱媒体入口
17,27…熱媒体出口
18…第1圧力検出部
20…第2反応器
20A…収容部
21…第2触媒
28…第2圧力検出部
30…CO2供給源
40…H2供給源
41…水素供給流路
42…マスフローコントローラ
50…原料混合ガス流路
51…流量計
52…原料混合ガス流量検出部
53…原料混合ガス温度検出部
60…第1生成ガス流路
61,71…冷却部
62…第1生成ガス流量検出部
63…第1生成ガス温度検出部
70…第2生成ガス流路
80…熱媒体流路
80a…流入流路
80b…中間流路
80c…流出流路
80d…分流流路
81…ポンプ
82…絞り弁
90…制御部