(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】集合住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20231110BHJP
E04H 1/04 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04H1/04 B
E04H9/02 321A
(21)【出願番号】P 2020030271
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 耕次
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正人
(72)【発明者】
【氏名】山谷 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 絵里
(72)【発明者】
【氏名】小田 稔
(72)【発明者】
【氏名】松崎 真豊
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-009248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/36
E04B 2/00 - 2/70
E04H 9/00- 9/16
E04H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1フロアに共用ゾーンと複数の住戸とを有する集合住宅であって、
前記フロアに設けられている中央柱と、
前記中央柱を中心として一方向に延びる第1の構造部材群および前記一方向に直交する方向に延びる第2の構造部材群からなる、十字形の内部架構と、を有し、
前記第1の構造部材群および前記第2の構造部材群は、複数の梁または複数の耐震壁からな
り、
前記第1の構造部材群のうち、前記中央柱から1つの外壁部に至るまでの範囲に位置する前記梁または前記耐震壁は、前記共用ゾーン内に位置しており、
前記第2の構造部材群を構成する前記梁または前記耐震壁は、隣り合う前記住戸同士の境界部分に位置していることを特徴とする集合住宅。
【請求項2】
前記中央柱は前記フロアの前記共用ゾーン内に設けられている、請求項1に記載の集合住宅。
【請求項3】
前記第1の構造部材群のうち、前記中央柱から前記1つの外壁部と反対側に位置する外壁部に至るまでの範囲に位置する前記梁または前記耐震壁は、隣り合う前記住戸同士の境界部分に位置している、請求項
1または2に記載の集合住宅。
【請求項4】
前記第1の構造部材群および前記第2の構造部材群はそれぞれ、連続
的に並ぶ複数の梁または連続
的に並ぶ複数の耐震壁によって構成されており、隣り合う前記梁または前記耐震壁は、前記フロアに設けられた柱の位置で繋がっている、請求項1から
3のいずれか1項に記載の集合住宅。
【請求項5】
前記中央柱は、前記梁または前記耐震壁を繋ぐ前記柱よりも太い、請求項
4に記載の集合住宅。
【請求項6】
前記第1の構造部材群および前記第2の構造部材群は前記梁を含み、
外壁部に沿って外周梁群が設けられており、前記第1の構造部材群および第2の構造部材群を構成している前記梁は、前記外周梁群を構成している梁よりも太い、請求項1から
5のいずれか1項に記載の集合住宅。
【請求項7】
平面形状が、1辺の長さが15m以上30m以下の矩形である、請求項1から
6のいずれか1項に記載の集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅は、各フロアに共用部分と複数の住戸とを有している。高層の集合住宅では、特許文献1,2に開示されているような、いわゆる井桁フレームが採用されることが多い。また、特許文献3,4には、ラーメン構造であって、縦横に延びる多数の梁からなる梁構造を有する集合住宅が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-76293号公報
【文献】特開2002-180679号公報
【文献】特開2004-238930号公報
【文献】特開2004-238928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロア面積が小さいコンパクトな集合住宅では、スペースが小さいため、特許文献1~4に示されているように多数の梁を設けることは難しい。また、スペースが小さいため、ラーメン構造の梁のうち住戸内に位置する部分が大きく、居住性の改善が難しい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、住戸内において延びる梁を無くすか、または少なくして、良好な居住空間を実現する集合住宅を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1フロアに共用ゾーンと複数の住戸とを有する集合住宅であって、フロアに設けられている中央柱と、中央柱を中心として一方向に延びる第1の構造部材群および前記一方向に直交する方向に延びる第2の構造部材群からなる、十字形の内部架構と、を有し、第1の構造部材群および第2の構造部材群は、複数の梁または複数の耐震壁からなり、前記第1の構造部材群のうち、前記中央柱から1つの外壁部に至るまでの範囲に位置する前記梁または前記耐震壁は、前記共用ゾーン内に位置しており、前記第2の構造部材群を構成する前記梁または前記耐震壁は、隣り合う前記住戸同士の境界部分に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、住戸内において延びる梁を無くすか、または少なくして、良好な居住空間を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態の集合住宅の1フロアの平面図である。
【
図2】参考例の集合住宅の1フロアの平面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態の集合住宅の1フロアの平面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態の集合住宅の1フロアの平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の変形例の集合住宅の1フロアの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1には本発明の第1の実施形態の集合住宅1の1フロアの平面図を示している。この集合住宅1は、1辺の長さが15m以上30m以下の矩形の平面形状を有する、フロア面積が小さいコンパクトな集合住宅である。
【0011】
図1に示す集合住宅1は、1フロアに1つの共用ゾーン2と4つの住戸3a~3dとを有している。4つの住戸3a~3dは、フロアの平面形状である矩形の4つの角部にそれぞれ位置しており、1つの住戸3aと、それに隣接する住戸3dとの間に、共用ゾーン(コア部)2が設けられている。共用ゾーン2は、エレベータ4を含むエレベータホールや階段5や廊下6やその他の共用設備を含むスペースである。この共用ゾーン2内に、中央柱7が設けられている。そして、この中央柱7を中心として一方向(
図1の上下方向)に延びる第1の構造部材群8と、この方向(前述した一方向)に直交する方向(
図1の左右方向)に延びる第2の構造部材群9とのみからなる十字形の内部架構が設けられている。本実施形態の内部架構はラーメン構造であり、第1の構造部材群8は梁8a,8bからなり、第2の構造部材群9は梁9a,9bからなる。また、集合住宅1の外壁部10a~10dに沿って外周梁群11が設けられている。
【0012】
第1の構造部材群8のうち、中央柱7から1つの外壁部(
図1の上方の外壁部)10aに至るまでの範囲に位置する梁8aは、共用ゾーン2内に位置している。一方、第1の構造部材群8のうち、中央柱7から外壁部10aと反対側に位置する外壁部(
図1の下方の外壁部)10cに至るまでの範囲に位置する梁8bは、隣り合う住戸3bと住戸3cとの境界部分に位置している。また、第2の構造部材群9のうち、中央柱7から外壁部(
図1の右方の外壁部)10bに至るまでの範囲に位置する梁9aは、隣り合う住戸3aと住戸3bとの境界部分に位置している。同様に、第2の構造部材群9のうち、中央柱7から外壁部10bと反対側に位置する外壁部(
図1の左方の外壁部)10dに至るまでの範囲に位置する梁9bは、隣り合う住戸3cと住戸3dとの境界部分に位置している。
【0013】
また、集合住宅1の外壁部10a~10dに沿って外周梁群11が設けられている。便宜上、図面中では外周梁群11を構成する梁の一部にのみ符号11を付与している。第1の構造部材群8の両端の梁8a,8bと外周梁群11の梁とは柱12において接続されており、第2の構造部材群9の両端の梁9a,9bと外周梁群11の梁とも柱12において接続されている。なお、第1の構造部材群8、第2の構造部材群9,外周梁群11のいずれにおいても、適切な間隔で柱12が設けられており、それらの柱12の位置で個々の梁が繋がって各構造部材群8,9および外周梁群11を構成している。便宜上、図面中では一部の柱にのみ符号12を付与している。
図1に示す例では、外壁部10a~10dおよび外周梁群11の外側にバルコニー13が設けられている。
【0014】
本実施形態によると、集合住宅1の内部架構が、中央柱7を中心として一方向に延びる第1の構造部材群8を構成する梁8a,8bと、前述した一方向に直交する方向に延びる第2の構造部材群9を構成する梁9a,9bとのみからなる十字形であるため、梁の数が少ない。特に、
図1に示す例では、第1の構造部材群8を構成する梁8a,8bが、共用ゾーン2内と、隣り合う住戸3bと住戸3cとの境界部分とを延びており、第2の構造部材群9を構成する梁9a,9bが、隣り合う住戸3aと住戸3bとの境界部分と、隣り合う住戸3cと住戸3dとの境界部分とを延びている。従って、フロア面積が小さいコンパクトな集合住宅1において、各住戸3a~3d内において延びる梁を無くすことができ、良好な居住空間を実現できる。ただし、このような構成に限定されるわけではない。図示しないが、第1の構造部材群8を構成する梁8a,8bが、共用ゾーン2内と、住戸3bまたは住戸3cの内部を延びる構成や、第2の構造部材群9を構成する梁9a,9bが、住戸3a、住戸3b、住戸3cまたは住戸3dの内部を延びる構成であってもよい。そのような構成であっても、各住戸3a~3d内において延びる梁が少なくなり、従来よりも良好な居住空間が実現できる。本実施形態は、フロア面積が小さいコンパクトな高層の集合住宅1において特に効果的である。
【0015】
参考例として、
図2に、井桁形の内部架構(ラーメン構造)を有する集合住宅の平面図を示している。
図1と同様の構成については同様の符号を付与して説明を省略する。この参考例では、一方向(
図2の上下方向)に延びる2列の梁群18と、前述した一方向に直交する方向(
図2の左右方向)に延びる2列の梁群19とが設けられている。便宜上、図面中では梁群18を構成する梁の一部にのみ符号18を付与し、梁群19を構成する梁の一部にのみ符号19を付与している。この構成では、隣り合う梁同士の間の間隔が狭いため、全ての梁を、4つの住戸3a~3dの内部を通らないように配置することは、実質的に不可能である。
図2に示す例では、各梁群18,19を実質的に均等な間隔で配置した結果、住戸3aと住戸3dの内部を、一方向に直交する方向に延びる梁群19の梁が通っている。そして、住戸3bと住戸3cの内部を、一方向に延びる梁群18の梁と、前述した一方向に直交する方向に延びる梁群19の梁が通っている。特に、住戸3a,3dは、その中央付近を梁群19の梁が通っている。住戸3b,3cは、内部において、梁群18の梁と、梁群19の梁とが直交して延びている。このように住戸3a~3dのいずれにおいても、内部を通る梁が居住空間の居住性を大幅に制限する。この構成において、梁群18,19の位置を大きく変えると構造上のバランスが崩れる。従って、梁群18,19の位置の変更には限度があるため、住戸3a~3d内を梁があまり通らないようにして居住性を大きく改善させることは困難である。
【0016】
これに対し、本実施形態のように、第1の構造部材群8と第2の構造部材群9とのみからなる十字形状の内部架構(ラーメン構造)を採用すると、各住戸3a~3dの内部を通る梁が無くなるか、または少なくなるため、居住性や設計の自由度が向上する。本実施形態の内部架構は、中央柱7を中心として直交する2つの方向に延びる構造部材群8,9からなる十字形であるため、構造上のバランスが良い。
【0017】
また、本実施形態では、第1の構造部材群8および第2の構造部材群9を構成する梁8a,8b,9a,9bは、外周梁群11を構成する梁よりも太い。一例としては、第1の構造部材群8および第2の構造部材群9を構成する梁8a,8b,9a,9bは、長手方向に直交する断面が高さ1000mm×幅900mmの長方形であるのに対し、外周梁群11を構成する梁は、長手方向に直交する断面が高さ850mm×幅700mmの長方形である。これは、ラーメン構造において内部架構が負担する荷重を大きくして外周梁群11が負担する荷重を小さくすることによって、外周梁群11を構成する梁を小型化できた結果である。外周梁群11は、少なくとも一部がバルコニー13に面した位置にあるので、外周梁群11を小型化することによって、図示しないがバルコニー13に繋がる窓を大きくすることができる。一般的に、下層フロアよりも上層フロアの方が負担すべき荷重が小さく、梁をより扁平化(薄型化)できるので、上層フロアではさらなる窓の大型化が可能である。
【0018】
本実施形態の中央柱7は、内部架構の十字形の中心であるため「中央柱」と称しているが、この集合住宅1の平面図における幾何学的な中心位置と一致する必要は無い。中央柱7は、第1の構造部材群8と第2の構造部材群9の構造上のバランスが乱れない範囲で、共用ゾーン2内の任意の位置に設ければよい。ただし、中央柱7を共用ゾーン2以外の部分、例えば住戸3a~3d同士の間の境界部分、または住戸3a~3dの内部に設けることも可能である。
【0019】
なお、以上の説明は、集合住宅1がラーメン構造であることを前提としているが、後述するように少なくとも一部が耐震壁を含む耐震壁付ラーメン構造において十字形のラーメン構造を採用することも、本発明の範囲に含まれる。
【0020】
[第2の実施形態]
次に、
図3に示す本発明の第2の実施形態の集合住宅1について説明する。主に、本実施形態の第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0021】
本実施形態の集合住宅1は、第1の実施形態と同様に、共用ゾーン2内に設けられている中央柱7を中心として一方向(
図3の上下方向)に延びる第1の構造部材群14と、前述した一方向に直交する方向(
図3の左右方向)に延びる第2の構造部材群15とのみからなる十字形の内部架構を有している。本実施形態では、第1の構造部材群14は、耐震壁14a1,14b1と梁14a2,14b2とから構成され、第2の構造部材群15は、耐震壁15a1,15b1と梁15a2,15b2とから構成されている。すなわち、本実施形態の内部架構は、一部が耐震壁を含む耐震壁付ラーメン構造である。中央柱7と各外壁部10a~10dとの間の概ね中間の位置に柱12a~12dがそれぞれ配置されている。そして、中央柱7と柱12aとを結ぶ位置にある耐震壁14a1と、柱12aと外壁部10aとを結ぶ位置にある梁14a2とが繋がっている。同様に、中央柱7と柱12bとを結ぶ位置にある耐震壁15a1と、柱12bと外壁部10bとを結ぶ位置にある梁15a2とが繋がっている。中央柱7と柱12cとを結ぶ位置にある耐震壁14b1と、柱12cと外壁部10cとを結ぶ位置にある梁14b2とが繋がっている。中央柱7と柱12dとを結ぶ位置にある耐震壁15b1と、柱12dと外壁部10dとを結ぶ位置にある梁15b2とが繋がっている。このように、本実施形態では、中央柱7と柱12a~12dとを結ぶ位置に、梁ではなく耐震壁14a1,15a1,14b1,15b1がそれぞれ設けられている。すなわち、十字形の内部架構のうち、中心側には耐震壁14a1,15a1,14b1,15b1がそれぞれ設けられて、耐震壁付ラーメン構造が構成されている。各耐震壁14a1,15a1,14b1,15b1の厚さは、例えば300mm以上500mm程度である。十字形の内部架構のうち、外側に位置する梁14a2,15a2,14b2,15b2は扁平梁であり、これらの扁平梁の梁せいは、例えば500mm以上700mm以下程度である。
【0022】
本実施形態の構成では、中心側に位置する耐震壁14a1,15a1,14b1,15b1が十字形に配置されており、各耐震壁14a1,15a1,14b1,15b1の構造負担が大きい。それにより、外側に位置する梁14a2,15a2,14b2,15b2の構造負担を小さくすることができるため、梁14a2,15a2,14b2,15b2を扁平梁にすることができる。従って、少なくとも十字形の内部架構のうちの外側の部分において、梁型による下がり天井の寸法が小さくなる。その結果、通常の順梁に比べて梁型下部から床までの距離が大きくなり、住戸空間の快適度が向上する。
【0023】
[第3の実施形態]
次に、
図4に示す本発明の第3の実施形態の集合住宅1について説明する。主に、本実施形態の第1~2の実施形態との相違点について説明し、第1~2の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0024】
本実施形態の集合住宅1は、第1~2の実施形態と同様に共用ゾーン2内に設けられている中央柱7を中心として、一方向(
図4の上下方向)に延びる第1の構造部材群16と、前述した一方向に直交する方向(
図4の左右方向)に延びる第2の構造部材群17とのみからなる十字形の内部架構(ラーメン構造)を有している。本実施形態では、第1の構造部材群16は、梁16a1,16a2,16b1,16b2から構成され、第2の構造部材群17は、梁17a1,17a2,17b1,17b2から構成されている。
【0025】
本実施形態では、中央柱7と柱12a~12dとを結ぶ位置にある梁16a1,17a1,16b1,17b1、すなわち、十字形の内部架構のうち、中心側に位置する梁16a1,17a1,16b1,17b1を囲む位置の少なくとも一部において、スラブの厚さが厚くなっている。
図4では、スラブの厚い部分Sをドット模様で模式的に示している。図示しないがスラブは各梁16a1,16a2,16b1,16b2,17a1,17a2,17b1,17b2の全体を取り囲む位置に全体的に設けられており、そのスラブのうち、中心側の部分Sのみが、それ以外の部分よりも厚くなっている。一例としては、スラブの厚い部分Sの厚さが400mm以上500mm以下程度であり、それ以外の部分のスラブの厚さは約300mm程度である。そして、十字形の内部架構のうち、外側に位置する梁16a2,17a2,16b2,17b2は、中心側の梁16a1,17a1,16b1,17b1よりも厚さが薄い扁平梁であり、その梁せいは、例えば500mm以上700mm以下程度である。
【0026】
本実施形態の構成では、スラブの厚い部分Sにおける構造負担が大きいため、十字形の内部架構のうち外側に位置する梁16a2,17a2,16b2,17b2の構造負担を小さくすることができ、扁平梁にすることができる。それにより、少なくとも十字形の内部架構のうちの外側の部分において、梁型による下がり天井の寸法が小さくなる。その結果、通常の順梁に比べて梁型下部から床までの距離が大きくなり、住戸空間の快適度が向上する。
【0027】
なお、本実施形態において、共用ゾーン2内のみにスラブの厚い部分Sを設けると、この部分Sのスラブの厚さが住戸空間に影響を与えないため好ましい。ただし、そのような構成に限られず、スラブの厚い部分Sが住戸3a~3dの一部にかかっていても構わない。
【0028】
なお、本発明において、十字形の内部架構に補強用梁を追加して設けることもできる。
図5には、
図1に示す第1の実施形態と同様な第1の構造部材群8と第2の構造部材群9とからなる十字形の内部架構に加えて、補強用梁20,21が設けられた構成が示されている。
図5に示す補強用梁20は、第2の構造部材群9の途中に位置する柱12と、外周梁群11内に位置する柱12との間を延びている。
図5に示す例では、第2の構造部材群9と外周梁群11との間に位置する柱22を挟んで、2本の補強用梁20が繋がっている。さらに、柱22と、2本の梁8aの間に位置する柱12との間に、第2の構造部材群9と実質的に平行に延びる補強用梁21が設けられている。また、図示しないが、第1の構造部材群8の途中に位置する柱12と、外周梁群11内に位置する柱12との間を延びている他の補強用梁をさらに設けることも可能である。このように、本発明は、梁または耐震壁からなる十字形の内部架構を有するものであり、その十字形の内部架構に繋がる補強用梁20,21がさらに設けられていても構わない。
図5に示す第1の実施形態の変形例に限られず、
図3~4に示す第2,3の実施形態においても同様な補強用梁を設けることができる。
【0029】
以上説明した各実施形態の集合住宅1は、1フロアに1つの共用ゾーン2と4つの住戸3a~3dとを有しているがこのような構成に限定されない。共用ゾーンの数や住戸の数は任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 集合住宅
2 共用ゾーン
3a~3d 住戸
4 エレベータ
5 階段
6 廊下
7 中央柱
8 第1の構造部材群
8a,8b 第1の構造部材群を構成する梁
9 第2の構造部材群
9a,9b 第2の構造部材群を構成する梁
10a~10d 外壁部
11 外周梁群
12,12a~12d,22 柱
13 バルコニー
14 第1の構造部材群
14a1,14b1 第1の構造部材群を構成する耐震壁
14a2,14b2 第1の構造部材群を構成する梁
15 第2の構造部材群
15a1,15b1 第2の構造部材群を構成する耐震壁
15a2,15b2 第2の構造部材群を構成する梁
16 第1の構造部材群
16a1,16a2,16b1,16b2 第1の構造部材群を構成する梁
17 第2の構造部材群
17a1,17a2,17b1,17b2 第2の構造部材群を構成する梁
18,19 梁群
20,21 補強用梁
S スラブの厚い部分