IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコムの特許一覧

特許7382863ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ
<>
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図1
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図2
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図3
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図4
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図5
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図6
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図7
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図8
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図9
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図10
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図11
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図12
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図13
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図14
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図15
  • 特許-ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20231110BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G06F3/044 126
G06F3/044 B
G06F3/041 590
G06F3/041 595
G06F3/041 430
G06F3/041 560
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020045393
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021149161
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳生
(72)【発明者】
【氏名】ティロ ナオキ ホルヌング
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225204(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/020598(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0234961(US,A1)
【文献】特開2015-88085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0313156(US,A1)
【文献】黒木 浩,第2章 タッチ・パネル技術,タッチ・パネル最前線 ,浅見 直樹
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ電極を含むタッチセンサに接続されたセンサコントローラによって実行され、前記タッチセンサを用いて、
信号を送信しないパッシブポインタの指示位置であるタッチ位置と、
先端部分に設けられたペン電極からダウンリンク信号を送信可能に構成されたアクティブペンの指示位置であるペン位置と、
を検出するポインタの位置検出方法であって、
前記タッチセンサにおけるキャパシタンスの変化を検出することによって、1以上の候補タッチ位置を検出する候補タッチ位置検出ステップと、
前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極それぞれにおけるレベルに基づき、1以上の候補ペン位置を検出する候補ペン位置検出ステップと、
前記1以上の候補ペン位置の中から前記ペン位置を決定するペン位置決定ステップと、を有し、
前記ペン位置決定ステップは、対応する前記候補タッチ位置が前記候補タッチ位置検出ステップにおいて検出されていない前記候補ペン位置を前記ペン位置として決定しない、
ポインタの位置検出方法。
【請求項2】
前記ペン位置決定ステップは、前記1以上の候補ペン位置のそれぞれについて、対応する前記候補タッチ位置が前記候補タッチ位置検出ステップにおいて検出されているか否かを判定する第1の判定ステップを含み、該第1の判定ステップにおいて検出されていないと判定した前記候補ペン位置を前記ペン位置として決定しない、
請求項1に記載のポインタの位置検出方法。
【請求項3】
前記ペン位置決定ステップは、前記第1の判定ステップにおいて検出されていると判定した前記候補ペン位置のうち、パームによるものでない前記候補タッチ位置に対応するものを前記ペン位置として決定する、
請求項2に記載のポインタの位置検出方法。
【請求項4】
前記ペン位置決定ステップは、前記候補タッチ位置検出ステップの検出結果が存在しない場合、前記第1の判定ステップを行わない、
請求項2又は3に記載のポインタの位置検出方法。
【請求項5】
前記ペン位置決定ステップにより決定された前記ペン位置をホストコントローラに出力する出力ステップをさらに有する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポインタの位置検出方法。
【請求項6】
表示装置のベゼル領域内において前記アクティブペンにより実行されたジェスチャーを検出するジェスチャー検出ステップをさらに有する、
請求項5に記載のポインタの位置検出方法。
【請求項7】
前記ジェスチャー検出ステップは、前記出力ステップにより前記ペン位置が出力されていない場合に、前記ジェスチャーの検出を行う、
請求項6に記載のポインタの位置検出方法。
【請求項8】
前記タッチセンサは、前記複数のセンサ電極のそれぞれを前記センサコントローラに接続するための複数のルーティング線を含み、
前記ジェスチャー検出ステップは、前記複数のルーティング線のそれぞれにおける前記ダウンリンク信号のレベルに基づき、前記ジェスチャーを検出する、
請求項6又は7に記載のポインタの位置検出方法。
【請求項9】
前記ベゼル領域は、前記複数のルーティング線の配置に基づいて配置される複数の検出可能領域を有し、
前記ジェスチャー検出ステップは、前記検出可能領域ごとの規則に従って前記レベルを評価することによって前記ベゼル領域内における前記アクティブペンの指示位置を検出し、検出した前記指示位置に基づいて前記ジェスチャーを検出する、
請求項8に記載のポインタの位置検出方法。

【請求項10】
前記ルーティング線は、他の部分よりも幅の広いパッド部分を有する、
請求項8又は9に記載のポインタの位置検出方法。
【請求項11】
複数のセンサ電極を含むタッチセンサに接続され、前記タッチセンサを用いて、
信号を送信しないパッシブポインタの指示位置であるタッチ位置と、
先端部分に設けられたペン電極からダウンリンク信号を送信可能に構成されたアクティブペンの指示位置であるペン位置と、
を検出するセンサコントローラであって、
前記タッチセンサにおけるキャパシタンスの変化を検出することによって、1以上の候補タッチ位置を検出する候補タッチ位置検出ステップと、
前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極それぞれにおけるレベルに基づき、1以上の候補ペン位置を検出する候補ペン位置検出ステップと、
前記1以上の候補ペン位置の中から前記ペン位置を決定するペン位置決定ステップと、を実行し、
前記ペン位置決定ステップは、対応する前記候補タッチ位置が前記候補タッチ位置検出ステップにおいて検出されていない前記候補ペン位置を前記ペン位置として決定しない、
センサコントローラ。
【請求項12】
表示装置のベゼル領域内において前記アクティブペンにより実行されたジェスチャーを検出するジェスチャー検出ステップをさらに実行する、
請求項11に記載のセンサコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポインタの位置検出方法及びセンサコントローラに関し、特に、アクティブ静電方式の電子ペン(以下、「アクティブペン」と称する)、及び、指などのパッシブポインタの位置検出を行うためのポインタの位置検出方法及びセンサコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブペンによる入力とパッシブポインタによる入力との両方に対応した入力システムが知られている。以下では、前者の入力を「ペン入力」と称し、後者の入力を「タッチ入力」と称する。タッチ入力におけるパッシブポインタの検出は、タッチセンサでのキャパシタンスの変化を利用する静電容量方式を用いて行われる。
【0003】
特許文献1には、この種の入力システムの一例が開示されている。特許文献1の入力システムにおいては、アクティブペンの接触位置とパッシブポインタの接触位置とを相互に誤認識してしまうという、この種の入力システムに特有の問題を解決するための処理が実行される。具体的には、検出された1以上のパッシブポインタの指示位置(以下、「タッチ位置」と称する)のうち、その直前に検出されたアクティブペンの指示位置(以下、「ペン位置」と称する)に略等しいタッチ位置を出力対象から除く処理、並びに、検出された1以上のペン位置のうち、その直前に検出された1以上のタッチ位置のうち所定サイズ以上の広さが検出されたものに略等しいペン位置を出力対象から除く処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-061725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記入力システムを構成するタッチセンサは、複数のセンサ電極がマトリクス状に配置されるタッチ領域の周囲に、各センサ電極をセンサコントローラに接続するための複数のルーティング線が配置される周辺領域を有して構成される。
【0006】
アクティブペンのペン先が周辺領域内にある場合、センサコントローラは、本来であればペン位置を検出しないはずである。しかしながら、ルーティング線によりダウンリンク信号が受信されてしまう場合があり、その結果としてX座標とY座標の両方が取得できたとすると、センサコントローラは、アクティブペンのペン先が実際には周辺領域内にあるにもかかわらず、タッチ領域内のペン位置を検出してしまう。これは誤検出に他ならないので、改善が必要とされている。
【0007】
したがって、本発明の目的の一つは、アクティブペンのペン先が周辺領域内にあるにもかかわらずタッチ領域内のペン位置が検出されてしまうことを防止できるポインタの位置検出方法及びセンサコントローラを提供することにある。
【0008】
また、上記入力システムにおいては、タッチ領域内(又は、タッチ領域に対応する表示領域内)に、例えばスクロールバーのような各種のメニューが所狭しと配置される。しかしながら、これらのメニューは普通、マウスでの操作を想定して設けられており、ペン入力で操作するには小さすぎることが多い。その結果、上記入力システムではペン入力による誤操作が多く発生しており、改善が必要とされていた。
【0009】
したがって、本発明の目的の他の一つは、ペン入力による誤操作の発生を低減できるポインタの位置検出方法及びセンサコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面によるポインタの位置検出方法は、複数のセンサ電極を含むタッチセンサに接続されたセンサコントローラによって実行され、前記タッチセンサを用いて、信号を送信しないパッシブポインタの指示位置であるタッチ位置と、先端部分に設けられたペン電極からダウンリンク信号を送信可能に構成されたアクティブペンの指示位置であるペン位置と、を検出するポインタの位置検出方法であって、前記タッチセンサにおけるキャパシタンスの変化を検出することによって、1以上の候補タッチ位置を検出する候補タッチ位置検出ステップと、前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極それぞれにおけるレベルに基づき、1以上の候補ペン位置を検出する候補ペン位置検出ステップと、前記1以上の候補ペン位置の中から前記ペン位置を決定するペン位置決定ステップと、を有し、前記ペン位置決定ステップは、対応する前記候補タッチ位置が前記候補タッチ位置検出ステップにおいて検出されていない前記候補ペン位置を前記ペン位置として決定しない、ポインタの位置検出方法である。
【0011】
本発明の第2の側面によるポインタの位置検出方法は、上記第1の側面によるポインタの位置検出方法において、表示装置のベゼル領域内において前記アクティブペンにより実行されたジェスチャーを検出するジェスチャー検出ステップをさらに有する、ポインタの位置検出方法である。
【0012】
本発明の第1の側面によるセンサコントローラは、複数のセンサ電極を含むタッチセンサに接続され、前記タッチセンサを用いて、信号を送信しないパッシブポインタの指示位置であるタッチ位置と、先端部分に設けられたペン電極からダウンリンク信号を送信可能に構成されたアクティブペンの指示位置であるペン位置と、を検出するセンサコントローラであって、前記タッチセンサにおけるキャパシタンスの変化を検出することによって、1以上の候補タッチ位置を検出する候補タッチ位置検出ステップと、前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極それぞれにおけるレベルに基づき、1以上の候補ペン位置を検出する候補ペン位置検出ステップと、前記1以上の候補ペン位置の中から前記ペン位置を決定するペン位置決定ステップと、を実行し、前記ペン位置決定ステップは、対応する前記候補タッチ位置が前記候補タッチ位置検出ステップにおいて検出されていない前記候補ペン位置を前記ペン位置として決定しない、センサコントローラである。
【0013】
本発明の第2の側面によるセンサコントローラは、上記第1の側面によるセンサコントローラにおいて、表示装置のベゼル領域内において前記アクティブペンにより実行されたジェスチャーを検出するジェスチャー検出ステップをさらに実行する、センサコントローラである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の側面によれば、対応する候補タッチ位置が検出されていない候補ペン位置をペン位置として決定しないので、アクティブペンのペン先が周辺領域内にあるにもかかわらず、タッチ領域内のペン位置が検出されてしまうことを防止できる。
【0015】
本発明の第2の側面によれば、ベゼル領域内でのジェスチャーにより各種メニューを操作できるようになるので、ペン入力による誤操作の発生を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態による電子機器1の構成を示す図である。
図2図1に示したタッチセンサ5の拡大図である。
図3図1に示したセンサコントローラ4の内部構成を示す図である。
図4図3に示したMCU40が実行する指Fの位置検出処理の原理を示す図である。
図5図3に示したMCU40が実行するポインタの位置検出処理の概略を示すフロー図である。
図6】(a)は、候補ペン位置を格納するためのペン位置テーブルを示す図であり、(b)は、候補タッチ位置を格納するためのタッチ位置テーブルを示す図である。
図7】ペン位置決定処理及びタッチ位置決定処理の一例(アクティブペンPのペン先が周辺領域5d内にある場合)を示す図である。
図8】ペン位置決定処理及びタッチ位置決定処理の一例(アクティブペンPのペン先がタッチ領域5c内にある場合)を示す図である。
図9図5に示したフロー図の詳細を示す図である。
図10図5に示したフロー図の詳細を示す図である。
図11】本発明の第2の実施の形態に関し、周辺領域5d内で検出されるジェスチャーの例を示す図である。
図12】ジェスチャーの具体的な種類と、それぞれに割り当てるコマンドの例を示す図である。
図13図2に示したタッチセンサ5に設定されるジェスチャーの検出可能領域R1~R4を示す図である。
図14図13から検出可能領域R1の近傍のみを抜き出した図である。
図15】(a)~(c)はそれぞれ、図14に示した位置P~PにアクティブペンPが位置している場合におけるルーティング線ごとのレベルLVを示す模式図である。
図16】本発明の第2の実施の形態によるセンサコントローラ4が実行するジェスチャー検出処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態による電子機器1の構成を示す図である。同図には、ペン入力に用いるアクティブペンPと、タッチ入力に用いるパッシブポインタとしての指Fとについても図示している。以下では、アクティブペンP及び指Fを「ポインタ」と総称する場合がある。本実施の形態による電子機器1は例えばタブレット型のコンピュータであり、図1に示すように、ホストコントローラ2、表示装置3、センサコントローラ4、及びタッチセンサ5を有して構成される。
【0019】
初めに、アクティブペンPはアクティブ静電方式によって動作する電子ペンである。図示していないが、アクティブペンPの内部には制御部及び送受信部が設けられており、制御部は、送受信部を介して電子機器1と相互に信号を送受信可能に構成される。以下では、電子機器1からアクティブペンPに向けて送信される信号を「アップリンク信号US」と称し、アクティブペンPから電子機器1に向けて送信される信号を「ダウンリンク信号DS」と称する。
【0020】
アクティブペンPの先端部分にはペン電極が設けられており、アクティブペンPの送受信部は、このペン電極とタッチセンサ5を構成する各センサ電極6(後述)との間に形成されたキャパシタンスを介して、アップリンク信号USの受信及びダウンリンク信号DSの送信を行う。なお、アップリンク信号USを受信するためのペン電極とダウンリンク信号DSを送信するためのペン電極とは、異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0021】
アクティブペンPはまた、ペン先に印加された圧力(筆圧)を検出する筆圧検出部、側面に設けられたサイドスイッチのオンオフ状態を検出するサイドスイッチ状態検出部、予め割り当てられた固有IDを記憶する記憶部(メモリ)、及び、アクティブペンPの動作電力を供給する電源部(バッテリ)を有して構成される。アクティブペンPの制御部は、これらの各部を制御可能に構成される。
【0022】
ダウンリンク信号DSは、所定周波数のバースト信号である位置信号と、アクティブペンPから電子機器1に対して送信するデータを含むデータ信号とを含んで構成される。位置信号は、電子機器1において、アクティブペンPの位置を検出するために使用される。データ信号により送信するデータは、例えば、筆圧検出部によって検出された筆圧を示すデータ(筆圧データ)、サイドスイッチ状態検出部によって検出されたサイドスイッチのオンオフ状態を示すデータ(スイッチデータ)、記憶部内に記憶される固有IDなどであり、制御部によってデータ信号内に配置される。
【0023】
アップリンク信号USは、所定のスタートビットと、電子機器1からアクティブペンPへの命令を示すコマンドとを含んで構成される。アクティブペンPの制御部は、受信されたアップリンク信号USからコマンドを取り出して復号し、その内容に従うデータをデータ信号内に配置するよう構成される。これにより電子機器1は、所望のデータをアクティブペンPから取り出すことが可能になる。
【0024】
次に、ホストコントローラ2は、プロセッサ及びメモリ(ともに図示せず)を有するコンピュータである。ホストコントローラ2のプロセッサは、メモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、図示した表示装置3及びセンサコントローラ4を含む電子機器1の各部の制御、描画用のアプリを含む各種のアプリの実行などの各種処理を行う役割を果たす。ホストコントローラ2のメモリは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメインメモリと、フラッシュメモリなどの補助記憶装置とを含んで構成され、プロセッサがプログラムを実行するために必要となるデータや、プロセッサがプログラムを実行した結果として生成された各種のデータを記憶する役割を果たす。
【0025】
表示装置3は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネル(図示せず)と、この表示パネルを駆動することにより任意の表示を行う駆動回路(図示せず)とを有する装置であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーなどによって構成される。表示パネルの表面には表示領域3a及びベゼル領域3bが設けられる。表示領域3aは上記複数の画素が配置される領域であり、ベゼル領域3bは、上述した駆動回路と、表示領域3a内の各画素を駆動回路に接続する配線とが配置される領域である。駆動回路は、ホストコントローラ2の制御を受けて、表示パネルの各画素を駆動するように構成される。
【0026】
センサコントローラ4及びタッチセンサ5は、ホストコントローラ2に対する入力装置である。タッチセンサ5は、それぞれセンサコントローラ4に接続された複数のセンサ電極6を含んで構成される。これら複数のセンサ電極6は、それぞれ図示したy方向に延在し、かつ、図示したx方向に等間隔で配置された複数の線状電極6xと、それぞれx方向に延在し、かつ、y方向に等間隔で配置された複数の線状電極6yとを含んで構成される。
【0027】
タッチセンサ5を構成する複数のセンサ電極6は、一例では、タッチセンサ5のタッチ面5aを構成するガラス板と、表示装置3の表示パネルとの間に配置される。ただし、各複数の線状電極6x,6yの一方を表示パネル内の共通電極(図示せず)と共用してもよく、そのように構成した電子機器1は「インセル型」と呼ばれる。なお、図1及び後掲の各図では、図面を分かりやすくするために各10本の線状電極6x,6yのみを図示しているが、実際にはより多数の線状電極6x,6yが配置される。
【0028】
タッチセンサ5は長方形の外周を有しており、その一辺である辺5bには、複数のFPC接続端子Tが並置される。複数のセンサ電極6はそれぞれ、いずれか1つ以上のFPC接続端子Tを介して、図示しないフレキシブルプリント回路(FPC)基板上に形成されるセンサコントローラ4に接続される。
【0029】
図2は、タッチセンサ5の拡大図である。図面の理解を容易にするため、図2には、実際のタッチセンサ5に設けられる構成の一部のみを図示している。以下、この図2を参照しながら、タッチセンサ5の構造について詳しく説明する。
【0030】
図2に示すように、タッチセンサ5は、各複数の線状電極6x,6yが延設されるタッチ領域5cと、タッチ領域5cを取り囲むように配置される周辺領域5dとを含んで構成される。タッチ領域5cは、センサコントローラ4がアクティブペンP及び指Fの位置を検出可能な領域であり、表示領域3aの端まで高精度にポインタの位置を検出できるようにするべく、図1に示した表示領域3aよりも広くなるように設定される。周辺領域5dには、各複数の線状電極6x,6yと複数のFPC接続端子Tとを相互に接続するための各複数のルーティング線L1,L2L,L2Rが延設される。
【0031】
複数のルーティング線L1は、複数の線状電極6x及び複数のFPC接続端子Tのそれぞれと一対一に設けられる配線であり、それぞれの一端で対応する線状電極6xの一端(図2では下側の端部)に、他端で対応するFPC接続端子Tにそれぞれ接続される。また、複数のルーティング線L2Lは、複数の線状電極6y及び複数のFPC接続端子Tのそれぞれと一対一に設けられる配線であり、それぞれの一端で対応する線状電極6yの一端(図2では左側の端部)に、他端で対応するFPC接続端子Tにそれぞれ接続される。さらに、複数のルーティング線L2Rは、複数の線状電極6y及び複数のFPC接続端子Tのそれぞれと一対一に設けられる配線であり、それぞれの一端で対応する線状電極6yの他端(図2では右側の端部)に、他端で対応するFPC接続端子Tにそれぞれ接続される。
【0032】
図2では、複数のFPC接続端子Tのうち、ルーティング線L1に接続されるものをFPC接続端子T1と記載し、ルーティング線L2Lに接続されるものをFPC接続端子T2Lと記載し、ルーティング線L2Rに接続されるものをFPC接続端子T2Rと記載している。複数のFPC接続端子T1は、図1に示した辺5bの中ほどに、等間隔でまとめて配置される。また、複数のFPC接続端子T2Lは、複数のFPC接続端子T1からx方向の一端側に離隔距離Dだけ離れた位置に等間隔でまとめて配置され、複数のFPC接続端子T2Rは、複数のFPC接続端子T1からx方向の他端側に離隔距離Dだけ離れた位置に等間隔でまとめて配置される。ここで、離隔距離Dは、タッチセンサ5上におけるダウンリンク信号DSの到達範囲の幅Rよりも大きい値に設定される。これは、FPC接続端子T1とFPC接続端子T2L又はFPC接続端子T2Rとの両方に、同時にダウンリンク信号DSが到達することを防止するための設定である。
【0033】
複数のFPC接続端子Tは、各複数のFPC接続端子T1,T2L,T2Rの他に、グランド配線LGに接続される複数のFPC接続端子TGを含んで構成される。グランド配線LGは、複数のルーティング線L1,L2L,L2Rそれぞれの両側に延設される配線である。各グランド配線LGには、FPC接続端子TGを介して、センサコントローラ4からグランド電位が供給される。これにより各グランド配線LGは、外部ノイズが複数のルーティング線L1,L2L,L2Rに到達することを防ぐ役割を果たす。
【0034】
図2に示すように、各複数のルーティング線L1,L2L,L2Rはそれぞれ、等間隔を保って並走するように延設される。タッチ領域5cの近傍では、対応するFPC接続端子Tの設置領域から離れるにつれて各ルーティング線がセンサ電極6に接続されていくため、並走するルーティング線の本数が少なくなるが、それでもタッチ領域5cに最も近いルーティング線L1とタッチ領域5cとの間の距離が一定を保つよう、図2に示すように、各複数のルーティング線L1,L2L,L2Rは階段状に延設される。ただし、この階段状の構成は必須ではなく、接続されるセンサ電極6の近傍まで直線状に各ルーティング線L1,L2L,L2Rを延設することとしてもよい。
【0035】
タッチセンサ5の立体的な構造について、説明する。タッチセンサ5は2層構造を有しており、各構成は上層又は下層のいずれかに形成される。具体的に説明すると、図2においてドッドパターンのハッチングを付した複数の線状電極6x及び複数のFPC接続端子T1は、上層に形成される。ハッチングを付していないが、これらに接続される複数のルーティング線L1も、同様に上層に形成される。図2において右上がりのラインパターンのハッチングを付した複数の線状電極6y、複数のFPC接続端子T2L、及び複数のFPC接続端子T2Rは、下層に形成される。ハッチングを付していないが、これらに接続される各複数のルーティング線L2L,L2Rも、同様に下層に形成される。図2においてクロスラインパターンのハッチングを付した複数のFPC接続端子TGは、上層と下層の両方に形成される。ハッチングを付していないが、これらに接続される各複数のグランド配線LGも、同様に上層と下層の両方に形成される。
【0036】
図1に戻る。センサコントローラ4は、プロセッサ及びメモリ(ともに図示せず)を有するマイコンである。センサコントローラ4のプロセッサは、メモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、タッチ面5a上におけるポインタの位置を検出するとともに、アクティブペンPが送信したデータ信号を受信する役割を果たす。センサコントローラ4のメモリは、プロセッサがプログラムを実行するために必要となるデータや、プロセッサがプログラムを実行した結果として生成された各種のデータを記憶する役割を果たす。センサコントローラ4によるアクティブペンPの位置の検出はアクティブ静電結合方式により実行され、指Fの位置の検出は静電容量方式により実行される。
【0037】
センサコントローラ4は、検出したポインタの位置を示す座標と、アクティブペンPから受信したデータ信号に含まれる各種データとを、ホストコントローラ2に対してレポートするよう構成される。また、センサコントローラ4は、アクティブペンPから受信される筆圧データに基づいて、アクティブペンPがタッチ面5aに接触したことを示すペンダウン情報と、アクティブペンPがタッチ面5aから離れたことを示すペンアップ情報との取得を行い、それぞれのタイミングでホストコントローラ2に対してレポートするよう構成される。
【0038】
図3は、センサコントローラ4の内部構成を示す図である。同図に示すように、センサコントローラ4は、MCU(Micro Control Unit)40、ロジック部41、送信部42,43、受信部44、及び選択部45を有して構成される。
【0039】
MCU40及びロジック部41は、送信部42,43、受信部44、及び選択部45を制御することにより、センサコントローラ4の送受信動作を制御する制御部である。具体的に説明すると、まずMCU40は、内部にメモリ(ROM及びRAM)を有しており、このメモリに格納されたプログラムを実行することによって動作するマイクロプロセッサである。MCU40の動作タイミングは、ホストコントローラ2から供給されるタイミング信号によって制御される。MCU40が行う動作には、ロジック部41の制御動作の他、指検出用信号FDSを出力するよう送信部42を制御する動作と、アクティブペンPに対する指示の内容を示すコマンドCOMを送信部43に供給する動作と、受信部44から供給されるデジタル信号に基づいてアクティブペンP及び指Fそれぞれの位置(具体的には、タッチ面5a内の位置を示すx座標及びy座標)を検出する動作と、受信部44から供給されるデジタル信号を復号することにより、アクティブペンPが送信したデータRes(例えば、上述した筆圧データ、スイッチデータ、又は固有IDなど)を取得する動作と、データRes内に含まれる筆圧データに基づいてアクティブペンPのタッチ面5aに対する接触状態を判定する動作とが含まれる。ロジック部41は、MCU40の制御に基づき、制御信号ctrl_t1~ctrl_t4,ctrl_rを出力する機能を有する。
【0040】
送信部42は、MCU40の制御に従って指検出用信号FDSを生成し、選択部45を通じて各線状電極6xに供給する回路である。ここで、指検出用信号FDSの具体的な内容及び各線状電極6xへの供給方法について、図4を参照しながら説明する。
【0041】
図4は、MCU40が実行する指Fの位置検出処理の原理を示す図である。簡単のため、同図には4本の線状電極6xのみを示しているが、実際にはより多くの線状電極6xが配置される。以下、線状電極6xの本数がK本であるとして説明を続ける。
【0042】
図4に示すように、指検出用信号FDSは例えば、それぞれK個の「1」又は「-1」で表されるパルスからなるK個の信号s~sによって構成される。信号s~sそれぞれのn番目(n=1~K)のパルスはパルス群pを構成し、1つのパルス群pを構成する各パルスは、図3に示した送信部42から選択部45を通じて、各線状電極6xにパラレルに入力される。
【0043】
図3に戻る。送信部43は、MCU40及びロジック部41の制御に従ってアップリンク信号USを生成し、選択部45に供給する回路であり、同図に示すように、パターン供給部50、スイッチ51、符号列保持部52、拡散処理部53、及び送信ガード部54を含んで構成される。なお、このうち特にパターン供給部50に関して、本実施の形態では送信部43内に含まれるものとして説明するが、MCU40内に含まれることとしてもよい。
【0044】
パターン供給部50は、アップリンク信号USの先頭に配置されるスタートビットSBを保持しており、ロジック部41から供給される制御信号ctrl_t1の指示に従って、保持しているスタートビットSBを出力するよう構成される。
【0045】
スイッチ51は、ロジック部41から供給される制御信号ctrl_t2に基づいてパターン供給部50及びMCU40のいずれか一方を選択し、選択した一方の出力を拡散処理部53に供給する機能を有する。スイッチ51がパターン供給部50を選択した場合、拡散処理部53にはスタートビットSBが供給される。一方、スイッチ51がMCU40を選択した場合、拡散処理部53にはコマンドCOMが供給される。
【0046】
符号列保持部52は、ロジック部41から供給される制御信号ctrl_t3に基づき、自己相関特性を有する所定チップ長の拡散符号を生成して保持する機能を有する。符号列保持部52が保持している拡散符号は、拡散処理部53に供給される。
【0047】
拡散処理部53は、スイッチ51を介して供給される値(スタートビットSB又はコマンドCOM)に基づいて符号列保持部52によって保持される拡散符号を変調することにより、所定チップ長の送信チップ列を取得する機能を有する。拡散処理部53は、取得した送信チップ列を、送信ガード部54を介して選択部45に供給する。
【0048】
送信ガード部54は、ロジック部41から供給される制御信号ctrl_t4に基づき、アップリンク信号USの送信期間とダウンリンク信号DSの受信期間との間に、送信動作と受信動作を切り替えるために必要となるガード期間(送信と受信の両方を行わない期間)を挿入する機能を有する。
【0049】
選択部45は、スイッチ58x,58yと、導体選択回路59x,59yとを含んで構成される。
【0050】
スイッチ58yは、共通端子とT端子及びR端子のいずれか一方とが接続されるように構成されたスイッチ素子である。スイッチ58yの共通端子は導体選択回路59yに接続され、T端子は送信部43の出力端に接続され、R端子は受信部44の入力端に接続される。また、スイッチ58xは、共通端子とT1端子、T2端子、及びR端子のいずれか1つとが接続されるように構成されたスイッチ素子である。このうちT2端子は、実際には線状電極6xの数分の端子の集合である。スイッチ58xの共通端子は導体選択回路59xに接続され、T1端子は送信部43の出力端に接続され、T2端子は送信部42の出力端に接続され、R端子は受信部44の入力端に接続される。
【0051】
導体選択回路59xは、複数の線状電極6xを選択的にスイッチ58xの共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路59xは、複数の線状電極6xの一部又は全部を同時にスイッチ58xの共通端子に接続することも可能に構成される。また、スイッチ58x内においてT2端子と共通端子とが接続されている場合、導体選択回路59xは、T2端子を構成する複数の端子と複数の線状電極6xとを一対一に接続する。
【0052】
導体選択回路59yは、複数の線状電極6yを選択的にスイッチ58yの共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路59yも、複数の線状電極6yの一部又は全部を同時にスイッチ58yの共通端子に接続することも可能に構成される。
【0053】
選択部45には、ロジック部41から4つの制御信号sTRx,sTRy,selX,selYが供給される。具体的には、制御信号sTRxはスイッチ58xに、制御信号sTRyはスイッチ58yに、制御信号selXは導体選択回路59xに、制御信号selYは導体選択回路59yにそれぞれ供給される。ロジック部41は、これら制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部45を制御することにより、アップリンク信号US又は指検出用信号FDSの送信と、ダウンリンク信号DS又は指検出用信号FDSの受信とを実現する。
【0054】
具体的に説明すると、まずアップリンク信号USを送信するタイミングでは、ロジック部41は、複数の線状電極6yのすべてが同時に送信部43に接続されることとなるよう、選択部45を制御する。これにより、複数の線状電極6yのすべてから同時にアップリンク信号USが送信されることになるので、アクティブペンPは、タッチ面5a上のどこにいても、アップリンク信号USを受信可能となる。
【0055】
次に、ダウンリンク信号DSのうち上述した位置信号を受信するタイミングでは、ロジック部41は、MCU40がアクティブペンPを未だ検出していない場合には、グローバルスキャンを行うための制御を行い、MCU40がアクティブペンPを検出済みである場合には、ローカルスキャンを行うための制御を行う。
【0056】
グローバルスキャンは、タッチ面5aの全体でペン位置の検出を行う処理である。グローバルスキャン実行時のロジック部41は、すべてのセンサ電極6を1つずつ順に選択し、選択したセンサ電極6が受信部44に接続されるよう、選択部45を制御する。これにより、センサ電極6の数に等しい数の位置信号が受信部44に順次供給されることになる。
【0057】
ローカルスキャンは、前回のペン位置の近傍のみでペン位置の検出を行う処理である。ローカルスキャン実行時には、まずMCU40により、前回検出されたペン位置の近傍領域にある各所定本数(例えば4本又は8本)の線状電極6x,6yが選択される。ロジック部41は、こうして選択された各所定数本の線状電極6x,6yを、選択された線状電極6x,6yの本数に応じた時間間隔で1つずつ順に選択し、選択した線状電極6x,6yが受信部44に接続されるよう、選択部45を制御する。これにより、選択された線状電極6x,6yの総数に等しい数の位置信号が受信部44に順次供給されることになる。
【0058】
MCU40は、こうして受信部44に供給される位置信号のレベルに基づき、ペン位置を検出するよう構成される。具体的には、受信部44から供給されるデジタル信号(後述)に基づき、線状電極6x,6yの各交点における位置信号のレベルを決定する。そして、決定した各レベルに基づいてペン位置を検出する。具体的には、位置信号のレベルが所定値以上であるタッチ面5a内の領域を決定し、例えばその中心位置をペン位置として検出すればよい。
【0059】
ここで、MCU40は、複数の線状電極6xのすべてで位置信号のレベルが所定値以下であった場合、又は、複数の線状電極6yのすべてで位置信号のレベルが所定値以下であった場合には、ペン位置を検出しないよう構成される。こうすることで、アクティブペンPのペン先が周辺領域5d内にあるにもかかわらずタッチ領域5c内のペン位置が検出されてしまうことをある程度防止できるが、例えば、線状電極6xに接続されるルーティング線L1と、線状電極6yに接続されるルーティング線L2L又はルーティング線L2Rとの両方で同時に位置信号が受信されてしまった場合には、やはりペン位置が検出されてしまうことになる。本発明によれば、このようなペン位置の誤検出を、より確実に防止することが可能になる。詳しくは後述する。
【0060】
次に、ダウンリンク信号DSのうち上述したデータ信号を受信するタイミングでは、まずMCU40により、複数のセンサ電極6のうち、直前の位置信号に基づいて検出されたペン位置に最も近い1本が選択される。ロジック部41は、こうして選択されたセンサ電極6が受信部44に接続されるよう、選択部45を制御する。これにより、アクティブペンPにより送信されたデータ信号が受信部44に供給される。
【0061】
次に指検出用信号FDSを送信するタイミングでは、ロジック部41は、MCU40とともに、1つの線状電極6yを選択し、上述したパルス群p~pを送信部42に順次各線状電極6xに入力させる、という動作を各線状電極6yについて繰り返す。具体的に説明すると、ロジック部41はまず、スイッチ58xのT2端子を構成する複数の端子と複数の線状電極6xとが一対一に接続されることとなるよう、選択部45を制御する。そして、その状態を維持しながら、複数の線状電極6yを1本ずつ順に選択し、選択した線状電極6yが受信部44に接続されるよう選択部45を制御する。
【0062】
MCU40はさらに、1本の線状電極6yを選択している間に、パルス群p~pをメモリから1パルス群ずつ順次読み出し、該読み出しの都度、読み出したパルス群を構成するK個のパルスを送信部42に供給する。送信部42は、こうして供給されたK個のパルスを、K本の線状電極6xにパラレルに入力する。このような制御の結果として受信部44から供給されるデジタル信号のレベルは、選択中の線状電極6yと、各線状電極6xとの交点に形成されるキャパシタンスの変化を反映したものとなる。そこでMCU40は、受信部44から供給されるデジタル信号のレベルに基づいて、指Fの位置を検出するよう構成される。
【0063】
ここで、再度図4を参照しながら、MCU40が実行する指Fの位置検出処理について、より詳しく説明する。以下では、線状電極6xの本数が4本(すなわち、K=4)であるとして説明を行うが、線状電極6xの本数が3本以下又は5本以上である場合についても同様である。
【0064】
線状電極6xの本数が4本である場合、信号s~sはそれぞれ4個の「1」又は「-1」で表されるパルスによって構成されることになる。具体的には、図4に示すように、信号sが「1,1,1,1」、信号sが「1,1,-1,-1」、信号sが「1,-1,-1,1」、信号sが「1-1,1,-1」によりそれぞれ構成される。
【0065】
MCU40は機能的に、シフトレジスタ40a及び相関器40bを含んで構成される。シフトレジスタ40aはFIFO形式の記憶部であり、線状電極6xの本数と同数(すなわち、K個)のデータを格納可能に構成される。シフトレジスタ40aに新たにデータを格納する際には、K回前に格納されたデータが消去される。MCU40及びロジック部41は、上述したように、1つの線状電極6yを選択し、送信部42にパルス群p~pを順次各線状電極6xに入力させる、という動作を各線状電極6yについて繰り返す。これにより、選択中の線状電極6yには、それぞれパルス群p~pに対応する4つのレベルL~Lが順次現れることになる。MCU40は、こうして線状電極6yに現れるレベルL~Lを受信部44を介して順次取得し、その都度、シフトレジスタ40aに格納する。
【0066】
レベルL~Lの具体的な内容について、図4に示した線状電極6yが選択されている場合を例に取って詳しく説明する。以下の説明では、線状電極6yと4本の線状電極6x~6xのそれぞれとの間に形成されるキャパシタンスを、それぞれC11~C41とする。
【0067】
まずパルス群pに対応してシフトレジスタ40aに格納されるレベルLは、キャパシタンスのベクトル(C11,C21,C31,C41)と、パルス群pを示すベクトル(1,1,1,1)との内積となる。この内積は、図4にも示すように、C11+C21+C31+C41と計算される。同様に、パルス群pに対応してシフトレジスタ40aに格納されるレベルLは、キャパシタンスのベクトル(C11,C21,C31,C41)と、パルス群pを示すベクトル(1,1,-1,-1)との内積となってC11+C21-C31-C41と計算され、パルス群pに対応してシフトレジスタ40aに格納されるレベルLは、キャパシタンスのベクトル(C11,C21,C31,C41)と、パルス群pを示すベクトル(1,-1,-1,1)との内積となってC11-C21-C31+C41と計算され、パルス群pに対応してシフトレジスタ40aに格納されるレベルLは、キャパシタンスのベクトル(C11,C21,C31,C41)と、パルス群pを示すベクトル(1,-1,1,-1)との内積となってC11-C21+C31-C41と計算される。
【0068】
MCU40は、相関器40bを用い、4個のパルス群p~pのそれぞれについて、シフトレジスタ40aに蓄積したレベルL~Lとの相関値T~Tを順次算出する。こうして算出される相関値T~Tの具体的な内容は、図4にも示すように、それぞれ4C11,4C21,4C31,4C41となる。すなわち、相関値T~Tには、それぞれ線状電極6x~6xと、線状電極6yとの交点に形成されるキャパシタンスの変化が反映されることになる。したがってMCU40は、各線状電極6yについて算出される相関値T~Tを参照することにより、指Fの位置を検出することが可能になる。具体的には、キャパシタンスの変化が所定値以上であるタッチ面5a内の領域を決定し、例えばその中心位置を指Fの位置として検出すればよい。
【0069】
以上、MCU40が実行する指Fの位置検出処理について、詳細に説明した。次に図3に戻り、受信部44は、ロジック部41の制御信号ctrl_rに基づいて、アクティブペンPが送信したダウンリンク信号DS又は送信部42が送信した指検出用信号FDSを受信する回路である。具体的には、増幅回路55、検波回路56、及びアナログデジタル(AD)変換器57を含んで構成される。
【0070】
増幅回路55は、選択部45から供給されるダウンリンク信号DS又は指検出用信号FDSを増幅して出力する。検波回路56は、増幅回路55の出力信号のレベルに対応した電圧を生成する回路である。AD変換器57は、検波回路56から出力される電圧を所定時間間隔でサンプリングすることによって、デジタル信号を生成する回路である。AD変換器57が出力するデジタル信号は、MCU40に供給される。
【0071】
MCU40は、こうして供給されたデジタル信号に基づき、指F及びアクティブペンPの位置(座標x,y)の検出と、アクティブペンPが送信したデータResの取得とを行う。具体的に説明すると、まずタッチ位置に関して、MCU40は、供給されたデジタル信号に基づいて、線状電極6yごとに、それぞれパルス群p~pに対応するレベルL~Lを取得する。レベルL~Lからタッチ位置を検出する方法については、図4を参照して上述したとおりである。次にペン位置に関して、MCU40は、上述したように、供給されたデジタル信号に基づいて複数のセンサ電極6の各交点における位置信号のレベルを決定し、決定した各レベルに基づいてペン位置を検出する。最後にデータResに関して、MCU40は、受信部44から供給されるデジタル信号を復号することによって、データResを取得する。MCU40は、こうして検出した位置(x座標及びy座標)及びデータResを、ホストコントローラ2に出力するよう構成される。
【0072】
また、MCU40は、取得したデータRes内に含まれる筆圧データに基づいてアクティブペンPのタッチ面5aに対する接触状態を判定し、アクティブペンPが新たにタッチ面5aに接触したと判定した場合(すなわち、筆圧が0からプラスの値に変化した場合)には、ペンダウン情報IN-PROXYをホストコントローラ2に出力し、アクティブペンPがタッチ面5aから離れたと判定した場合(すなわち、筆圧がプラスの値から0に変化した場合)には、ペンアップ情報OUT-PROXYをホストコントローラ2に出力するよう構成される。こうして出力されたペンダウン情報IN-PROXY及びペンアップ情報OUT-PROXYは、ホストコントローラ2によって、ストロークの始まりと終わりを認識するために使用される。
【0073】
図1に戻る。ホストコントローラ2は、センサコントローラ4から座標が入力されたことを受けて、カーソルの表示及びインクデータの生成の少なくとも一方を行う。このうちカーソルの表示は、表示装置3の表示領域3a上の入力された座標と対応する位置に、所定のカーソル画像を表示することによって行う。
【0074】
インクデータは、センサコントローラ4から順次供給される複数の座標のそれぞれによって構成される制御点と、各制御点の間を所定の補間曲線によって補間してなる曲線データとを含むデータである。ホストコントローラ2は、指Fについては、座標の入力が開始されたことを契機としてインクデータの生成を開始し、座標の入力が終了したことを契機としてインクデータの生成を終了する。一方、アクティブペンPについては、ペンダウン情報が入力されたことを契機としてインクデータの生成を開始し、ペンアップ情報が入力されたことを契機としてインクデータの生成を終了する。なお、アクティブペンPについてインクデータを生成する際には、ホストコントローラ2は、アクティブペンPから受信される筆圧データなどに基づき、インクデータを構成する曲線データの幅及び/又は透明度の制御も行う。ホストコントローラ2は、生成したインクデータのレンダリングを行って表示装置3に表示させるとともに、生成したインクデータを自身のメモリに記憶させる。
【0075】
以下、センサコントローラ4のMCU40が実行する処理のうち、本発明の特徴に関連する部分について、詳しく説明する。
【0076】
図5は、MCU40が実行するポインタの位置検出処理の概略を示すフロー図である。同図に示すように、MCU40は、ステップS2~S9の処理を繰り返し実行するよう構成される(ステップS1)。このうちステップS2~S4は、アクティブペンPの位置(ペン位置)を検出するためのペン検出ステップであり、ステップS5~S9は、指Fの位置(タッチ位置)を検出するためのタッチ検出ステップである。
【0077】
ステップS2~S9の処理について具体的に説明すると、センサコントローラ4は、まず初めにアクティブペンPの位置検出処理を実行することにより、1以上のペン位置の候補(以下、「候補ペン位置」と称する)を検出する(ステップS2。候補ペン位置検出ステップ)。この位置検出処理の詳細は、図3を参照して説明したとおりである。
【0078】
続いてセンサコントローラ4は、検出した1以上の候補ペン位置の中からペン位置を決定する処理を行い(ステップS3。ペン位置決定ステップ)、決定したペン位置(以下、「確定ペン位置」と称する)のみをホストコントローラ2に出力する(ステップS4。出力ステップ)。以下では、ステップS3で実行される処理を「ペン位置決定処理」と称する。
【0079】
ペン位置決定処理の詳細については後述するが、図5に括弧書きで示したように、ペン位置決定処理の中では、対応する候補タッチ位置(後述)がタッチ検出ステップにおいて検出されていない候補ペン位置が出力対象から除外される。この除外の結果として、本実施の形態によるポインタの位置検出方法によれば、アクティブペンPのペン先が周辺領域5d内にあるにもかかわらずタッチ領域5c内のペン位置が検出されてしまうことが防止される。また、ペン位置決定処理の中では、アクティブペンPを持つユーザの手(以下、「パーム」と称する)の接触位置と考えられる候補ペン位置も出力対象から除外される。
【0080】
次にセンサコントローラ4は、指Fの位置検出処理の1/Nの処理を行う(ステップS5)。指Fの位置検出処理の詳細は、図4を参照して説明したとおりである。1/Nの処理は、アクティブペンPの検出レートを確保するために指Fの位置検出処理をN回に分けて行う場合の1回分の処理であり、例えば、線状電極6xの総数の1/Nだけを対象として指Fの位置検出処理を行う処理である。センサコントローラ4は、1/Nの処理で得た部分的な検出結果を示すデータ(以下、「部分検出データ」と称する)を自身のメモリに記録する(ステップS6)。そして、1/Nの処理を実行する都度、今回記録した部分検出データと過去に記録したN-1回分の部分検出データとを合成することによって指Fの位置を示すデータ(以下、「全体検出データ」と称する)を生成し、生成した全体検出データに基づいて1以上のタッチ位置の候補(以下、「候補タッチ位置」と称する。)を検出する(ステップS7。候補タッチ位置検出ステップ)。
【0081】
続いてセンサコントローラ4は、ステップS7で検出した1以上の候補タッチ位置の中からタッチ位置を決定する処理を行い(ステップS8)、決定したタッチ位置(以下、「確定タッチ位置」と称する)のみをホストコントローラ2に出力する(ステップS9)。以下では、ステップS8で実行される処理を「タッチ位置決定処理」と称する。
【0082】
タッチ位置決定処理の詳細についても後述するが、タッチ位置決定処理の中では、アクティブペンP又はパームの接触位置と考えられる候補タッチ位置が出力対象から除外される。
【0083】
ここで、本実施の形態ではタッチ面5a上に存在するアクティブペンPが1本だけであることを前提として説明を続けるが、本発明は、タッチ面5a上に存在するアクティブペンPが複数本である場合にも適用可能である。この場合のセンサコントローラ4は、時分割、周波数分割、符号分割などの多重化を利用して各アクティブペンPからのダウンリンク信号DSを区別して受信し、アクティブペンPごとにステップS3,S4を行えばよい。
【0084】
図6(a)は、候補ペン位置を格納するためのペン位置テーブルを示す図であり、図6(b)は、候補タッチ位置を格納するためのタッチ位置テーブルを示す図である。MCU40は、これらのテーブルを使用して、上述したペン位置決定処理及びタッチ位置決定処理を行う。
【0085】
ペン位置テーブルは、図6(a)に示すように、候補ペン位置cP[i]と、確定ペン位置fP[i]と、有効フラグとを対応付けて記憶するテーブルである。一方、タッチ位置テーブルは、図6(b)に示すように、候補タッチ位置cT[j]と、確定タッチ位置fT[j]と、有効フラグと、領域種別とを対応付けて記憶するテーブルである。ただし、i,jはそれぞれ、0以上の整数である。
【0086】
図7及び図8はそれぞれ、ペン位置決定処理及びタッチ位置決定処理の一例を示す図である。図7は、アクティブペンPのペン先が周辺領域5d内にある場合を示し、図8は、アクティブペンPのペン先がタッチ領域5c内にある場合を示している。以下、図7及び図8に示す具体例を参照しながら、ペン位置決定処理及びタッチ位置決定処理について、具体的に説明する。
【0087】
図7の例では、まず初めに、1回目のアクティブペンPの位置検出処理を行ったMCU40により、2つの候補ペン位置cP[0],cP[1]がペン位置テーブルに格納される。そしてMCU40は、対応する確定ペン位置fP[0],fP[1]のそれぞれに候補ペン位置cP[0],cP[1]を設定し、それぞれの有効フラグを「有効」に設定する。MCU40は、こうして「有効」を設定した確定ペン位置fP[0],fP[1]のそれぞれを、ペン位置としてホストコントローラ2に供給する。ただし、まだ指Fの位置検出処理を行っていないこの段階では、ホストコントローラ2へのペン位置の供給を行わないこととしてもよい。
【0088】
次にMCU40は、1回目の指Fの位置検出処理を行い、その結果として、2つの候補タッチ位置cT[0],cT[1]をタッチ位置テーブルに格納する。続いてMCU40は、各候補タッチ位置cT[0],cT[1]それぞれの広さ(キャパシタンスの変化量が所定量以上である領域の広さ)を検出する。ここでは、候補タッチ位置cT[0]について所定サイズ以上の広さが検出され、候補タッチ位置cT[1]については所定サイズ未満の広さが検出されたとすると、MCU40はまず、確定タッチ位置fT[0]に候補タッチ位置cT[0]を設定しつつ、対応する有効フラグを「無効」とし、さらに、対応する領域種別に「パーム」を設定する。
【0089】
次いでMCU40は、所定サイズ未満の広さが検出された候補タッチ位置cT[1]について、ペン位置候補テーブルに格納されている確定ペン位置fP[0],fP[1]のそれぞれと略等しいか否かを判定する。ここでいう「略等しい」とは、一方の位置と他方の位置の間の距離がタッチ面5aの広さに比べて十分小さい所定値以下であることをいう。この所定値の具体的な値は、例えば数画素分の長さとすることが好ましい。
【0090】
図7の例では、MCU40は、候補タッチ位置cT[1]は確定ペン位置fP[0],fP[1]のいずれとも等しくない、と判定することになる。この場合のMCU40は、確定タッチ位置fT[1]に候補タッチ位置cT[1]を設定するとともに、対応する有効フラグを「有効」とし、さらに、対応する領域種別に「指」を設定する。一方、図7の例とは異なるが、もし候補タッチ位置cT[1]が例えば確定ペン位置fP[0],fP[1]のいずれかに等しいと判定したとすると、MCU40は、確定タッチ位置fT[1]には何も設定せず(初期値であるNULLのままとし)、対応する有効フラグを「無効」とする。これにより、アクティブペンPのペン電極とセンサ電極6との間の容量結合によって検出されてしまった候補タッチ位置を、出力対象から除外することが可能になる。
【0091】
MCU40は、以上のようにしてタッチ位置テーブルを設定した後、対応する有効フラグが「有効」となっている確定タッチ位置fT[1]のみを、タッチ位置としてホストコントローラ2に供給する。
【0092】
次にMCU40は、ペン位置テーブルを一度リセットした後、2回目のアクティブペンPの位置検出処理を行う。ここでは、アクティブペンP及びパームのいずれもタッチ面5a上で移動していないとすると、位置検出の結果として、1回目と同じ2つの候補ペン位置cP[0],cP[1]がペン位置テーブルに格納されることになる。
【0093】
続いてMCU40は、取得した候補ペン位置cP[0],cP[1]のそれぞれについて、タッチ位置テーブルに格納されている候補タッチ位置cT[0],cT[1]の中に略等しいものがあるか否かを判定する。図7の例では、この判定において、候補ペン位置cP[1]については略等しいもの(具体的には、候補タッチ位置cT[0])があると判定されるが、候補ペン位置cP[0]については略等しいものがないと判定される。この場合、MCU40は、確定ペン位置fP[0]に何も設定せず(初期値であるNULLのままとし)、対応する有効フラグを「無効」とする。ここで、アクティブペンPのペン先がもしタッチ領域5c内にあれば、アクティブペンPのペン先電極とセンサ電極6との間に容量結合が発生し、候補タッチ位置が検出されるはずであるから、対応する候補タッチ位置が存在しない候補ペン位置cP[0]は、アクティブペンPのペン先がタッチ領域5c内にない(すなわち、周辺領域5d内にある)にもかかわらず検出されてしまった候補ペン位置であると言える。したがって、この処理によれば、アクティブペンPのペン先が周辺領域5d内にあるにもかかわらずタッチ領域5c内のペン位置を検出してしまうことが防止されると言える。
【0094】
MCU40はさらに、タッチ位置テーブルに格納されている候補タッチ位置cT[0],cT[1]の中に略等しいものがあると判定した候補ペン位置cP[1]について、今度は、タッチ位置テーブルに格納されている確定タッチ位置fT[0],fT[1]の中に略等しいものがあるか否かを判定する。図7の例では、この判定において、略等しいもの(具体的には、確定タッチ位置cT[0])があると判定される。この場合、MCU40は、確定タッチ位置cT[0]の領域種別が「指」及び「パーム」のいずれであるかをさらに判定する処理を行う。図7の例では、この判定の結果は「パーム」となり、この場合のMCU40は、確定ペン位置fP[1]に何も設定せず(初期値であるNULLのままとし)、対応する有効フラグを「無効」とする。結果として、図7の例では、ホストコントローラ2にペン位置が供給されないことになる。これにより、アクティブペンPを持つユーザの手からダウンリンク信号DSが送信されたことによって検出されてしまった候補ペン位置が出力対象から除外される。
【0095】
一方、図7の例とは異なるが、もし上記各判定において、タッチ位置テーブルに格納されている確定タッチ位置fT[0],fT[1]の中に略等しいものがないと判定したか、又は、略等しいと判定した確定タッチ位置cT[0]の領域種別は「指」であると判定した場合には、MCU40は、対応する確定ペン位置fP[1]に候補ペン位置cP[1]を、有効フラグに「有効」をそれぞれ設定する。この場合には、ホストコントローラ2に確定ペン位置fP[1]が供給されることになる。
【0096】
図8の例は、1回目の指Fの位置検出処理において候補ペン位置cP[0]と略等しい位置に候補タッチ位置cT[2]が検出されている点で、図7の例と相違する。候補タッチ位置cT[2]は、ペン先がタッチ領域5c内にあるアクティブペンPのペン電極がセンサ電極6と容量結合することによって検出されたもので、その広さは上述した所定サイズ未満となる。したがってMCU40が候補タッチ位置cT[2]の領域種別に「パーム」を設定することはなく、MCU40は、その後に行う確定ペン位置fP[0],fP[1]のそれぞれと略等しいか否かの判定において、確定ペン位置fP[0]に等しいと判定し、確定タッチ位置fT[2]にNULLを設定するとともに、対応する有効フラグを「無効」とすることになる。
【0097】
こうしてタッチ位置テーブルに候補タッチ位置cT[2]の情報が設定されたことにより、MCU40は、2回目のアクティブペンPの位置検出処理後の判定処理において、候補ペン位置cP[1]に関して、タッチ位置テーブルに略等しい候補タッチ位置(具体的には、候補タッチ位置cT[2])があると判定する一方、略等しい確定タッチ位置はないと判定する。したがってMCU40は、確定ペン位置fP[1]に候補ペン位置cP[1]を、対応する有効フラグに「有効」をそれぞれ設定し、結果として、ホストコントローラ2に確定ペン位置fP[1]が供給されることになる。
【0098】
以上説明したように、本実施の形態によるポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ4によれば、対応する候補タッチ位置が検出されていない候補ペン位置をペン位置として決定しないので、アクティブペンPのペン先が周辺領域5d内にあるにもかかわらず、タッチ領域5c内のペン位置が検出されてしまうことを防止できる。加えて、本実施の形態によるポインタの位置検出方法によれば、ペン位置決定処理の中でパームの接触位置を出力対象から除外すること、及び、タッチ位置決定処理の中でアクティブペンP及びパームの接触位置を出力対象から除外することも可能になる。
【0099】
次に、MCU40の処理フローを参照しながら、MCU40が実行するペン位置決定処理及びタッチ位置決定処理について、再度別の観点からより詳しく説明する。
【0100】
図9及び図10は、図5に示したフロー図の詳細を示す図である。初めに図9を参照すると、MCU40はまずアクティブペンPの検出を実行し(ステップS21)、その結果としてアクティブペンPが検出されたか否かを判定する(ステップS22)ことによって、図5に示したステップS2の処理を実行する。ステップS22で検出されなかったと判定した場合には、図10のステップS51に移って指Fの位置検出処理を開始する。
【0101】
一方、ステップS22で検出されたと判定した場合、MCU40は、図5のステップS3に示したペン位置決定処理を実行する。具体的には、まずペン位置テーブルをリセットする(ステップS31)。リセット後のペン位置テーブルは、候補ペン位置cP[i]が1つも設定されていない状態となる。続いてMCU40は、ステップS21において検出されたI個(Iは1以上の整数)の候補ペン位置cP[i](i=0~I-1)を取得し、ペン位置テーブルに設定する(ステップS32)。そして、すべてのiについて、順次、ステップS34~S36の処理を行う(ステップS33)。
【0102】
具体的に説明すると、MCU40はまず、ステップS8のタッチ位置検出処理が実行済みであるか否かを判定する(ステップS34)。この判定を行うのは、後述するステップS35においてすべての候補ペン位置cP[i]が対応する候補タッチ位置cT[j]なしとされ、無効となってしまうことを避けるためである。
【0103】
ステップS34で実行済みと判定した場合、MCU40は、候補ペン位置cP[i]と略等しい候補タッチ位置cT[j]があるか否かを判定する(ステップS35。第1の判定ステップ)。その結果、「ない」と判定した場合には、後述するステップS38の処理を行わずに次のiに処理を移す。結果として、対応する確定ペン位置fP[i]にはNULL、対応する有効フラグには「無効」がそれぞれ設定される。このステップS35を実行することにより、アクティブペンPのペン先が周辺領域5d内にあるにもかかわらず、タッチ領域5c内のペン位置が検出されてしまうことが防止される。
【0104】
ステップS34で未実行と判定した場合、又は、ステップS35で「ある」と判定した場合、MCU40は、候補ペン位置cP[i]と略等しい確定タッチ位置fT[j]があるか否かを判定する(ステップS36。第2の判定ステップ)。その結果、「ある」と判定した場合、MCU40はさらに、候補ペン位置cP[i]と略等しい確定タッチ位置fT[j]の領域種別が「指」及び「パーム」のいずれであるかを判定する(ステップS37)。
【0105】
ステップS36で「ない」と判定した場合、及び、ステップS37で「指」と判定した場合、MCU40は、対応する確定ペン位置fP[i]に候補ペン位置cP[i]を、対応する有効フラグには「有効」をそれぞれ設定する(ステップS38)。ステップS38を実行したMCU40は、次のiに処理を移す。
【0106】
一方、ステップS37で「パーム」と判定した場合、MCU40は、ステップS38の処理を行わずに次のiに処理を移す。結果として、対応する確定ペン位置fP[i]にはNULL、対応する有効フラグには「無効」がそれぞれ設定される。
【0107】
すべてのiについてステップS34~S38の処理が終了した場合、MCU40は、対応する有効フラグが「有効」となっている確定ペン位置fP[i]のみをペン位置としてホストコントローラ2に出力し(ステップS4)、その後、指Fの位置検出処理を開始する。
【0108】
具体的には、図10に示すように、指Fの検出を実行し(ステップS51)、その結果として指Fが検出されたか否かを判定する(ステップS52)ことによって、図5に示したステップS5~S7の処理を実行する。ステップS52で検出されなかったと判定した場合には、図9のステップS21に移ってアクティブペンPの位置検出処理を開始する。
【0109】
一方、ステップS52で検出されたと判定した場合、MCU40は、図5のステップS8に示したタッチ位置決定処理を実行する。具体的には、まずタッチ位置テーブルをリセットする(ステップS81)。リセット後のタッチ位置テーブルは、候補タッチ位置cT[j]が1つも設定されていない状態となる。続いて、MCU40は、ステップS51において検出されたJ個(Jは1以上の整数)の候補タッチ位置cT[j](j=0~J-1)を取得し、タッチ位置テーブルに設定する(ステップS82)。そして、すべてのjについて、順次、ステップS84~S87の処理を行う(ステップS83)。
【0110】
具体的に説明すると、MCU40はまず、候補タッチ位置cT[j]の面積を算出する。ここで算出される面積は、候補タッチ位置cT[j]を含み、かつ、キャパシタンスの変化量が所定量以上であった領域の面積である。そして、算出した面積が所定サイズ以上であるか否かを判定する(ステップS84)。
【0111】
ステップS84で所定サイズ以上であると判定した場合(すなわち、面積=大であると判定した場合)、MCU40は、確定タッチ位置fT[j]に候補タッチ位置cT[j]を設定するとともに、対応する有効フラグに「無効」、対応する領域種別に「パーム」をそれぞれ設定する(ステップS85)。
【0112】
一方、ステップS84で所定サイズ以上でないと判定した場合(すなわち、面積=小であると判定した場合)、MCU40は、続いて候補タッチ位置cT[j]と略等しい確定ペン位置fP[i]がペン位置テーブルに格納されているか否かを判定する(ステップS86)。その結果、格納されていないと判定した場合、MCU40は、確定タッチ位置fT[j]に候補タッチ位置cT[j]を設定するとともに、対応する有効フラグに「有効」、対応する領域種別に「指」をそれぞれ設定する(ステップS87)。一方、ステップS86で格納されていると判定した場合、MCU40はステップS87の処理を行わず、結果として、対応する確定タッチ位置fT[j]にはNULL、対応する有効フラグには「無効」がそれぞれ設定される。
【0113】
すべてのjについてステップS84~S87の処理が終了した場合、MCU40は、対応する有効フラグが「有効」となっている確定タッチ位置fT[j]のみをタッチ位置としてホストコントローラ2に出力し(ステップS9)、その後、ステップS2に戻ってアクティブペンPの位置検出処理を開始する。
【0114】
以上、MCU40が実行するペン位置決定処理及びタッチ位置決定処理について、MCU40の処理フローを参照しながら、再度より詳しく説明した。
【0115】
次に、本発明の第2の実施の形態による電子機器1について、説明する。本実施の形態による電子機器1は、図1に示したベゼル領域3b内においてアクティブペンPによるジェスチャーを検出する点で、第1の実施の形態による電子機器1と異なる。そのための電子機器1の基本的な構成は第1の実施の形態と同様であるが、図5に示したステップS4とステップS5の間に、ベゼル領域3b内で実行されたジェスチャーを検出するための処理を行う点で、第1の実施の形態による電子機器1と相違する。以下、相違点に着目して詳しく説明する。
【0116】
初めに、図11は、周辺領域5d内で検出されるジェスチャーの例を示す図である。本実施の形態による電子機器1のセンサコントローラ4は、アクティブペンPのペン先が周辺領域5d内において同図の太線矢印に示すような動きをすると、その動きを検出する。そして、検出した動きに基づいて所定のジェスチャーが実行されたか否かを判定し、実行されたと判定した場合に、ホストコントローラ2にジェスチャーが検出されたことを通知する。ホストコントローラ2は、ジェスチャーの種類と、ジャスチェーに割り当てるコマンドの内容とを対応付けて予め記憶しており、センサコントローラ4から通知されたジェスチャーに対応するコマンドを実行するよう構成される。
【0117】
図12は、ジェスチャーの具体的な種類と、それぞれに割り当てるコマンドの例を示す図である。同図に示すように、ジェスチャーの種類としては、例えば、x方向(電子機器1のユーザから見て横方向)のみの動き、又は、y方向(電子機器1のユーザから見て縦方向)のみの動きに対応するリニアジェスチャーと、x方向の動きとy方向の動きの両方によって構成される複方向ジェスチャーとが挙げられる。複方向ジェスチャーには、円形ストロークにより示されるジェスチャー、交差する2つのストロークにより示されるジェスチャー、平行な2つのストロークにより示されるジェスチャーなどが含まれる。なお、当然のことであるが、人間がアクティブペンPを動かす以上、厳密にx方向のみ又はy方向のみにアクティブペンPを動かしたり、円形のストロークや平行な2つのストロークを入力したりすることは不可能なので、ある程度の誤差を許容するようにセンサコントローラ4を構成することが好ましい。
【0118】
各ジェスチャーに割り当てるコマンドとしては、リニアジェスチャーには一次元の量を変更するためのコマンドを割り当てることが好適であり、複方向ジェスチャーには単発の動作を実行するためのコマンドを割り当てることが好適である。前者のコマンドの例としては、図12のリニアジェスチャー欄に示すように、ブラシサイズ(アクティブペンPにより描画される線の太さ)を変更するコマンド、表示領域3aのコントラストを変更するコマンド、表示領域3a内の表示を左右(R/L)方向へスクロールするためのコマンド、表示領域3a内の表示を上下(U/D)方向へスクロールするためのコマンド、ブラシシャープネス(アクティブペンPにより描画される線のシャープさ)を変更するコマンド、カンバス(描画領域)の回転量を変更するコマンドなどが挙げられる。後者のコマンドの例としては、図12の複方向ジェスチャー欄に示すように、ファイル保存コマンド、各種ツールの切替コマンド、画面拡大率を100%にセットするコマンド、選択中の画像を反転するコマンドなどが挙げられる。
【0119】
図13は、図2に示したタッチセンサ5に設定されるジェスチャーの検出可能領域R1~R4を示す図である。詳しくは以下で説明するが、本実施の形態におけるジャスチャーの検出は、ルーティング線ごとのダウンリンク信号DSのレベル(受信強度)を所定の規則に従って評価することによって行われる。この所定の規則は、周辺領域5dの全体で通用するものではなく、一部の領域においてのみ通用するものであるため、ジェスチャーを検出できる領域も周辺領域5dの一部に限定される。図13に示した検出可能領域R1~R4はそれぞれ、そのような限定された領域に相当する。以下、検出可能領域R1を例に取り、ジェスチャーの具体的な検出方法について、詳しく説明する。
【0120】
図14及び図15は、検出可能領域R1におけるジェスチャー検出の原理を示す図である。図14は、図13から検出可能領域R1の近傍のみを抜き出した図である。ただし、図14においては、図面を見やすくするためにx方向の縮尺を拡大するとともに、各ルーティング線L2Rのx座標、及び、各線状電極6yのy座標を図示している。また、図15(a)~(c)はそれぞれ、図14に示した位置P~PにアクティブペンPが位置している場合におけるルーティング線ごとのダウンリンク信号DSのレベルLVを示す模式図である。なお、図15においては、図14に示した10本のルーティング線L2Rに対して、図14で最も下側にある線状電極6yに対応するものから順に下付き文字で1~10の通番を付している。
【0121】
初めに図15(a)を参照すると、アクティブペンPが位置Pに存在している場合、同図に示すように、ルーティング線L2RにおいてレベルLVのピークが検出され、かつ、9つのルーティング線L2R~L2R10において、検出されるレベルLVの値が所定値TH以上となる。ルーティング線L2RにおいてレベルLVのピークが検出されるのはルーティング線L2Rが位置Pに最も近いからであり、ルーティング線L2Rにおいて検出されるレベルLVの値が所定値TH未満になるのは、ルーティング線L2Rが位置Pのy座標位置まで延設されていないためである。
【0122】
次に図15(b)を参照すると、アクティブペンPが位置P図1に示した辺5bから離れる方向に向かって位置Pからy方向に移動した位置)に存在している場合、同図に示すように、ルーティング線L2RにおいてレベルLVのピークが検出され、かつ、6つのルーティング線L2R~L2R10において、検出されるレベルLVの値が所定値TH以上となる。ルーティング線L2RにおいてレベルLVのピークが検出されるのはルーティング線L2Rが位置Pに最も近いからであり、ルーティング線L2R~L2Rにおいて検出されるレベルLVの値が所定値TH未満になるのは、ルーティング線L2R~L2Rが位置Pのy座標位置まで延設されていないためである。
【0123】
最後に図15(c)を参照すると、アクティブペンPが位置P(タッチセンサ5の外側に向かって位置Pからx方向に移動した位置)に存在している場合、同図に示すように、ルーティング線L2R10においてレベルLVのピークが検出され、かつ、9つのルーティング線L2R~L2R10において、検出されるレベルLVの値が所定値TH以上となる。ルーティング線L2R10においてレベルLVのピークが検出されるのはルーティング線L2R10が位置Pに最も近いからであり、ルーティング線L2Rにおいて検出されるレベルLVの値が所定値TH未満になるのは、ルーティング線L2Rが位置Pのy座標位置まで延設されていないためである。
【0124】
図15(a)及び図15(b)から理解されるように、ダウンリンク信号DSのレベルLVが所定値TH未満であるルーティング線L2Rの本数は、アクティブペンPがy方向に沿って辺5bから離れるほど多くなる。したがってセンサコントローラ4は、レベルLVが所定値TH未満であるルーティング線L2Rの本数とアクティブペンPの位置のy座標とを対応付ける第1のテーブルを予め記憶しておき、実際に検出された本数に基づいて第1のテーブルからアクティブペンPの位置のy座標を読み出すことにより、アクティブペンPの位置のy座標を検出することができる。
【0125】
以下に示す表1は、第1のテーブルの具体的な例を示す図である。表1には、ルーティング線L2Rの総数がNである場合を示している。表1に示すY,βは、図14に示した変数である。Yは最も辺5bに近い線状電極6y(図14では最も下側の線状電極6y)のy座標を表し、βは線状電極6yの配置ピッチを表している。センサコントローラ4は、レベルLVが所定値TH未満であるルーティング線L2Rの本数の検出結果に対応するレコードを表1内において特定し、特定したレコードに含まれるy座標を取得することにより、アクティブペンPの位置のy座標を検出する。
【0126】
【表1】
【0127】
また、図15(a)及び図15(c)から理解されるように、ダウンリンク信号DSのレベルLVのピークが現れるルーティング線L2Rは、アクティブペンPのx方向の位置に応じて変化する。ただし、図14にも示すようにルーティング線L2Rは階段状に延設されているので、アクティブペンPの位置のx座標を知るためには、アクティブペンPの位置のy座標が必要になる。したがってセンサコントローラ4は、アクティブペンPの位置のy座標ごとに、レベルLVのピークが現れるルーティング線L2RとアクティブペンPの位置のx座標とを対応付ける第2のテーブルを予め記憶しておき、実際にピークが観測されたルーティング線L2Rに基づいて第2のテーブルからアクティブペンPの位置のx座標を読み出すことにより、アクティブペンPの位置のx座標を検出することができる。
【0128】
以下に示す表2は、第2のテーブルの具体的な例を示す図である。表2にも、ルーティング線L2Rの総数がNである場合を示している。表1に示すX,αは、図14に示した変数である。Xは、y方向に沿ってN本のルーティング線L2Rが並置される領域において最もタッチ領域5cの近くに延設されるルーティング線L2Rのx座標を表し、αはルーティング線L2Rの配置ピッチを表している。センサコントローラ4は、初めに第1のテーブルに従ってアクティブペンPの位置のy座標を検出した後、表2のうちそのy座標に対応する部分を参照する。そして参照している部分の中で、レベルLVのピークが現れたルーティング線L2Rに対応するレコードを特定し、特定したレコードに含まれるx座標を取得することにより、アクティブペンPの位置のx座標を検出する。
【0129】
【表2】
【0130】
以上のように、センサコントローラ4は、ルーティング線ごとのダウンリンク信号DSのレベルLVを所定の規則(第1及び第2のテーブル)に従って評価することにより、大まかではあるが、検出可能領域R1内におけるアクティブペンPの位置を検出することができる。したがって、複数回にわたってこの検出を行い、その結果から位置の移動を検出することにより、アクティブペンPによるジェスチャーを検出することが可能になる。他の検出可能領域R2~R4についても、同様の処理によって、アクティブペンPによるジェスチャーを検出することができる。
【0131】
図16は、本実施の形態によるセンサコントローラ4が実行するジェスチャー検出処理(ジェスチャー検出ステップ)を示すフロー図である。同図の記載から理解されるように、この処理は、図5に示したステップS4とステップS5の間に実行される。
【0132】
図16に示すように、センサコントローラ4はまず、図5のステップS2で受信したダウンリンク信号DSのレベルをルーティング線ごとに記憶する(ステップS100)。ルーティング線ごとであるので、例えば、同じ線状電極6yに対応する2本のルーティング線L2L,L2Rそれぞれのレベルは、区別して記憶される。
【0133】
次にセンサコントローラ4は、図5のステップS4においてペン位置が出力されたか否かを判定する(ステップS101)。そして、ペン位置が出力されたと判定した場合、センサコントローラ4はジェスチャー検出処理を終了し、図5のステップS5に処理を移す。一方、ペン位置が出力されていないと判定した場合には、次のステップS102に処理を移す。このステップS101を行うことにより、アクティブペンPによるペン入力が行われていない場合にのみ、ベゼル領域3bにおいてジェスチャー検出を行うことが可能になる。
【0134】
ステップS101では、センサコントローラ4は、予め設定されている検出可能領域R1~R4のいずれか1つに対応するルーティング線のみでダウンリンク信号DSが検出されているか否かを判定する。この判定をするにあたり、センサコントローラ4は、同じ線状電極6yに接続されているルーティング線L2L,L2Rの両方でダウンリンク信号DSが検出されている場合には、レベルの弱い方ではダウンリンク信号DSが検出されていないとみなすことが好ましい。
【0135】
ステップS101の判定の結果、検出されていないと判定した場合、センサコントローラ4はジェスチャー検出処理を終了し、図5のステップS5に処理を移す。一方、検出されていたと判定した場合には、ダウンリンク信号DSが検出されていた検出可能領域に応じた規則(上述した第1及び第2のテーブル)に従ってアクティブペンPの位置を検出し、自身のメモリに記憶する(ステップS102)。
【0136】
続いてセンサコントローラ4は、これまでのステップS102で記憶した複数回分の位置に基づいてジェスチャーの検出を試み、その結果としてアクティブペンPによるジェスチャーを検出したか否かを判定する(ステップS103)。そして、アクティブペンPによるジェスチャーを検出した場合には、検出したジェスチャーを示す情報をホストコントローラ2に出力する(ステップS104)。ステップS104が終了した場合、又は、ステップS103において検出していないと判定した場合、センサコントローラ4はジェスチャー検出処理を終了し、図5のステップS5に処理を移す。
【0137】
以上説明したように、本実施の形態によるポインタの位置検出方法及びセンサコントローラ4によれば、ベゼル領域3b内で行われたアクティブペンPのジェスチャーを検出することが可能になる。したがって、ベゼル領域3b内でのジェスチャーにより各種メニューを操作できるようになるので、ペン入力による誤操作の発生を低減することが可能になる。
【0138】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0139】
例えば、上記第2の実施の形態では、周辺領域5d内のルーティング線で受信されるダウンリンク信号DSのレベルに基づいてベゼル領域3b内のジェスチャーを検出したが、タッチ領域5cとベゼル領域3bの重なりが十分に大きい場合には、タッチ領域5cの縁部に配置されるセンサ電極6で受信されるダウンリンク信号DSのレベルに基づいてベゼル領域3b内のジェスチャーを検出することとしてもよい。
【0140】
また、他の部分よりも幅の広いパッド部分を各ルーティング線に設けることとしてもよい。こうすることで、各ルーティング線におけるダウンリンク信号DSのレベルLVを高めることができるので、より好適にベゼル領域3b内のジェスチャーを検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0141】
1 電子機器
2 ホストコントローラ
3 表示装置
3a 表示領域
3b ベゼル領域
4 センサコントローラ
5 タッチセンサ
5a タッチ面
5b タッチセンサ5の外周の一辺
5c タッチ領域
5d 周辺領域
6 センサ電極
6x,6y 線状電極
40 MCU
40a シフトレジスタ
40b 相関器
41 ロジック部
42,43 送信部
44 受信部
45 選択部
50 パターン供給部
51 スイッチ
52 符号列保持部
53 拡散処理部
54 送信ガード部
55 増幅回路
56 検波回路
57 アナログデジタル(AD)変換器
58x,58y スイッチ
59x,59y 導体選択回路
COM コマンド
cP[ ] 候補ペン位置
cT[ ] 候補タッチ位置
ctrl_t1~ctrl_t4,ctrl_r 制御信号
D 離隔距離
DS ダウンリンク信号
F 指
FDS 指検出用信号
fP[ ] 確定ペン位置
fT[ ] 確定タッチ位置
IN-PROXY ペンダウン情報
L1,L2L,L2R ルーティング線
LG グランド配線
LV レベル
OUT-PROXY ペンアップ情報
P アクティブペン
R ダウンリンク信号DSの到達範囲の幅
R1~R4 検出可能領域
Res アクティブペンPが送信したデータ
SB スタートビット
sTRx,sTRy,selX,selY 制御信号
T,T1,T2L,T2R,TG FPC接続端子
US アップリンク信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16