(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】貫通孔基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
B01D39/20 Z
(21)【出願番号】P 2020048187
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 和宏
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-209632(JP,A)
【文献】特開2012-076027(JP,A)
【文献】特表2015-521103(JP,A)
【文献】特開平04-063108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
B01D 53/22,61/00-71/82
C02F 1/44
H01L 21/302,21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の貫通孔形成領域を備えた貫通孔基板の製造方法であって、
シリコンからなる第一基板と、シリコンからなる第二基板と、該第一基板と該第二基板とに挟まれる
金属膜とからなる張り合わせ基板を準備する工程と、
前記第一基板に複数の微小径の開口を備える第一レジストマスクを形成する工程と、
前記第一レジストマスクを用いて前記第一基板を前記
金属膜まで異方性ドライエッチングする工程と、
前記第二基板に複数の前記微小径より大きな開口を備える第二レジストマスクを形成する工程と、
前記第二レジストマスクを用いて前記第二基板を前記
金属膜まで異方性ドライエッチングする工程と、
前記貫通孔形成領域の前記
金属膜を除去する工程と、
を備えることを特徴とする貫通孔基板の製造方法。
【請求項2】
前記
金属膜を除去する工程は、酸
系エッチング液
により前記金属膜を除去することを特徴とする請求項1記載の貫通孔基板の製造方法。
【請求項3】
前記第一レジストマスクを用いて前記第一基板を前記金属膜まで異方性ドライエッチングする工程は、前記第一基板に前記金属膜を底面とした第一凹部を形成する工程であり、
前記第二レジストマスクを用いて前記第二基板を前記金属膜まで異方性ドライエッチングする工程は、前記第二基板に前記金属膜を底面とした第二凹部を形成する工程であって、
前記貫通孔形成領域の前記金属膜を除去する工程は、前記第二凹部に露出した前記金属膜と、隣り合う前記第二凹部の間に位置し前記第二基板に覆われた前記金属膜とを除去する工程である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の貫通孔基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィルタ基板、空気浮上基板等を形成するための貫通孔製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通孔基板は、孔内に液体や粒子を通過させることで所定の大きさの材料を選別するためのフィルタ基板や、微小な部品等を浮かせるための空気浮上基板等に用いられる。微小な材料を選別するフィルタリング用途や微小な部品を均一に浮かせる浮上用途においては、微細かつ繊細な孔構造を基板に付与する必要がある。
【0003】
このような貫通孔基板は、金属基板やガラス基板、半導体基板等に、例えばドリル加工やエッチング加工、レーザー加工、放電加工等により貫通孔を形成することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば金属基材を酸系エッチング液で加工するウェットエッチングは、基材の溶解が等方性(エッチングが底面方向だけでなく側面方向にも一様に進む)のため、形成される孔のアスペクト比(加工深さ/加工径)は1程度であり、厚い基板に微小な貫通孔を形成することが困難である。ドリル等を用いた機械加工は、シリコン基板などの脆性材料に対してはチッピングやバリを発生し易く、形状精度を得にくい。レーザー加工も同様にチッピングやバリ、溶融飛散物(デブリ)が発生し易く、形状精度を得にくく、また高アスペクト加工も困難である。放電加工は、絶縁性の基板への加工が困難であり、また高アスペクトの加工も困難である。3次元配線用途やフィルタ用途には、配線を施す都合や耐食性の都合から、基材にシリコン等の半導体基板がよく用いられる。シリコン基板の加工で主に用いられるのは、エッチングガスをプラズマ中でイオン化して基板を加工する反応性イオンエッチング(ドライエッチング)であり、ウェットエッチングに比べてアスペクト比が20程度と高く、且つ異方性(エッチング底面方向にのみ垂直に加工が進む)であるため、前記用途には好適であるが、適正な強度を確保できる基板厚に微細な孔を精度良く形成するには、エッチング性能に基づくアスペクト比では足りない場合があり、厚い基板に対して微小な貫通孔の形成は困難である。
【0006】
本発明は、上述の要求に応えるべく、厚い基板であっても微小な貫通孔を形成可能な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
所定の貫通孔形成領域を備えた貫通孔基板の製造方法であって、シリコンからなる第一基板と、シリコンからなる第二基板と、第一基板と該第二基板とに挟まれる中間層とからなる張り合わせ基板を準備する工程と、第一基板に複数の微小径の開口を備える第一レジストマスクを形成する工程と、第一レジストマスクを用いて第一基板を中間層まで異方性ドライエッチングする工程と、第二基板に複数の微小径より大きな開口を備える第二レジストマスクを形成する工程と、第二レジストマスクを用いて第二基板を中間層まで異方性ドライエッチングする工程と、貫通孔形成領域の中間層を除去する工程と、 を備える貫通孔基板の製造方法とする。
【0008】
貫通孔形成領域の中間層が除去されるため、第一基板に形成される微小径の開口部と第二基板に形成される開口部とはそれぞれ連通した流路となり、適度な強度を備える厚い基板に対して微小な貫通孔を形成することが可能となる。
【0009】
張り合わせ基板の中間層は、シリコン酸化膜であり、中間層を除去する工程は、フッ酸などによりシリコン酸化膜層を除去する貫通孔基板の製造方法とする。
【0010】
張り合わせ基板の中間層は、金属膜であり、中間層を除去する工程は、酸系エッチング液などにより金属膜を除去する貫通孔基板の製造方法とする。
【0011】
中間層は、数μmの厚さであり、第一基板に形成される複数の開口部と、第二基板に形成される複数の開口部とは、それぞれ連通する貫通孔基板の製造方法とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、厚い基板に対しても微細かつ繊細な貫通孔を付与できる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】貫通孔基板を示す図で、(a)は上面図、(b)はA-A断面図、(c)は下面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
本発明の第一実施形態の貫通孔基板製造方法について、流路基板を例に、図を参照して詳細に説明する。
図1は、貫通孔基板を示す図である。
図2は、第一基板と第二基板とを張り合わせた張り合わせ基板の断面図である。
図3は、第一基板のエッチング工程を説明する図である。
図4は、第二基板のエッチング工程を説明する断面図である。
図5は、中間層を除去する工程を説明する断面図である。
【0015】
先ず、
図2に示すような張り合わせ基板1を準備する。張り合わせ基板1は、例えば、サイズがφ4インチのシリコン貼り合わせ基板で貫通孔基板を作製するための母基板となるものであるが、図においては、その側面の一部のみを断面図として示している。
【0016】
シリコン貼り合わせ基板は、2枚のシリコン基板のどちらか一方、もしくは両方に酸化膜を形成し、2枚を貼り合わせて熱処理することで結合させ、その後、所定の厚さまで研削や研磨を行う。第一基板10と第二基板20それぞれの基板厚は、例えば第一基板10を100μm、第二基板20を500μmとし、中間層30となる酸化膜厚は例えば1μmとする。
【0017】
続いて、第一基板10をエッチングする工程を、
図3を参照して説明する。まず、
図3(a)に示すように、第一基板10の表面に第一レジストマスク11を形成する。第一レジストマスク11は、複数の微小径の開口部12を有しており、第一基板10に成膜したレジスト膜をフォトリソエッチングにより、適宜形成される。
【0018】
図3(b)に示すように、第一レジストマスク11を形成した後、第一レジストマスク11をエッチングマスクとして用い、第一基板10に用いたシリコン基板をエッチングすることで第一凹部13を形成する。中間層30であるシリコン酸化膜層はエッチングストップ層として機能する。本実施形態においては、例えば、SF6ガス及びC4F8による異方性エッチングを採用している。
【0019】
続いて、第一基板10の表面に残る第一レジストマスク11をすべて除去し、
図3 (c)に示すように第一凹部13が形成された状態にする。尚、図示していないが、ここで形成される第一凹部13は、平面的には、
図1において示す微小径の開口51に対応する形状で基板面に配設されるものである。
【0020】
第二基板20をエッチングする工程を、
図4を参照して説明する。まず、
図4(a)に示すように、第二基板20の表面に第二レジストマスク21を形成する。第二レジストマスク21は、複数の開口部22を有しており、その開口径は、第一レジストマスク11に形成した開口部12より大きく、第二基板20に成膜したレジスト膜をフォトリソエッチングにより、適宜形成される。
【0021】
図4(b)に示すように、第二レジストマスク21を形成した後、第二レジストマスク21をエッチングマスクとして用い、第二基板20に用いたシリコン基板をエッチングすることで第二凹部23を形成する。中間層30であるシリコン酸化膜層はエッチングストップ層として機能する。
【0022】
続いて、第二基板20の表面に残る第二レジストマスク21をすべて除去し、
図4(c)に示すように第二凹部23が形成された状態にする。尚、図示していないが、ここで形成される第二凹部23は、平面的には、
図1(c)に示す開口部52に対応する形状で基板面に配設されるものである。
【0023】
続いて、
図5に示すように、第一凹部13や第二凹部23を形成した貫通孔形成領域53に位置する中間層30のシリコン酸化膜をフッ化水素酸などの薬液により溶解除去する。この時、第一基板10及び第二基板20の非エッチング領域下面のシリコン酸化膜は薬液のサイドエッチングにより除去される。
【0024】
貫通孔形成領域53の中間層30を除去することで、第一基板10に形成した複数の第一凹部13と第二基板30に形成した複数の第二凹部23とが、連通し、適正な強度を備える厚い基板の表裏面を貫通する流路54を備えた貫通孔基板50が形成されることとなる。
【実施例2】
【0025】
本発明の第二実施形態の貫通孔基板の製造方法について、説明する。なお、第一実施形態と同等の工程は、省略する。
【0026】
シリコン貼り合わせ基板は、2枚のシリコン基板の両方に例えば金属膜を形成し、2枚を貼り合わせて加熱、加圧することで結合させ、その後、所定の厚さまで研削や研磨を行う。第一基板10と第二基板20それぞれの基板厚は、例えば第一基板を100μm、第二基板を500μmとし、中間層30の金属膜厚は例えば1μmとする。
【0027】
第一基板10、および第二基板20をエッチングする工程は、上述した第一実施形態と同様であるので、省略する。
【0028】
第一凹部13や第二凹部23を形成した貫通孔形成領域53に位置する中間層30の金属膜を酸系エッチング液等より溶解除去する。この時、第二基板の非エッチング領域下面の金属膜もエッチング液のサイドエッチングにより除去される
【0029】
貫通孔形成領域53の中間層30を除去することで、第一実施形態と同様に、適正な強度を備える厚い基板の表裏面を貫通する流路54を備えた貫通孔基板50が形成されることとなる。
【0030】
本発明による貫通孔基板50は、適正な強度を確保できる基板厚に微細な孔を精度良く形成され、フィルタ用途や空気浮上用途などの流路基板として用いられる。
【符号の説明】
【0031】
1 張り合わせ基板
10 第一基板
11 第一レジストマスク
12 微小径の開口
13 第一凹部
20 第二基板
21 第二レジストマスク
22 開口部
23 第二凹部
30 中間層(酸化膜層、接合金属層)
50 貫通孔基板(流路基板)
51 微小径の開口部
52 開口部
53 貫通孔形成領域
54 貫通孔(流路)