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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】インク吐出補完方法、印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 207
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020054013
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021154500
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】福井 一希
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013513(JP,A)
【文献】特開2015-139985(JP,A)
【文献】特開2011-073285(JP,A)
【文献】特開2006-076086(JP,A)
【文献】米国特許第09365033(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第104029510(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ヘッドが有する複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完するインク吐出補完方法であって、
印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データを取得する階調データ取得工程と、
前記複数のノズルのうち、前記欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルおよび前記欠陥ノズル以外の通常ノズルに対応する前記画素の前記階調値に対する第1変換規則と、前記周辺ノズルに対応する前記画素の前記階調値に対する第2変換規則とを用いて、前記階調データの前記階調値を変換することで、前記階調データを欠陥補完階調データに変換する変換工程と、
前記複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するシェーディング補正を前記欠陥補完階調データに対して実行するシェーディング補正工程と、
前記シェーディング補正が実行された前記欠陥補完階調データに対してハーフトーン処理を実行して、吐出制御データを生成するハーフトーン工程と、
前記吐出制御データに基づき前記ノズルを駆動することで、前記ノズルから吐出されたインクによって前記印刷画像を印刷媒体に印刷する画像印刷工程と、
を備え、
前記第1変換規則は、前記通常ノズルに対応する前記画素の前記階調値を100%未満の第1割合で変換し、
前記第2変換規則は、前記周辺ノズルに対応する前記画素の前記階調値を、前記第1割合よりも高い第2割合で変換するインク吐出補完方法。
【請求項2】
前記複数のノズルを駆動して前記ノズルから吐出されたインクによって欠陥検出画像を印刷媒体に印刷して、前記欠陥検出画像を撮像部で読み取った結果に基づき、前記複数のノズルのうちから前記欠陥ノズルを検出する欠陥ノズル検出工程を、前記変換工程より前に備える請求項1に記載のインク吐出補完方法。
【請求項3】
互いに異なる階調値を有する複数の領域を含むテスト画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示すテスト階調データを準備するテスト階調データ準備工程と、
前記第1変換規則と前記第2変換規則とを用いて前記テスト階調データの前記階調値を変換することで、前記テスト階調データを欠陥補完テスト階調データに変換するテスト用変換工程と、
前記欠陥補完テスト階調データにハーフトーン処理を実行して、テスト吐出制御データを生成するテスト用ハーフトーン工程と、
前記テスト吐出制御データに基づき前記ノズルを駆動することで、前記ノズルから吐出されたインクによって前記テスト画像を印刷媒体に印刷するテスト画像印刷工程と、
前記印刷媒体に印刷された前記テスト画像の階調値を撮像部により読み取る階調値読取工程と、
前記階調値読取工程で読み取った前記階調値に基づき、前記複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するためのシェーディング補正規則を生成する補正規則生成工程と、
を前記シェーディング補正工程より前に備え、
前記シェーディング補正工程では、前記補正規則生成工程で生成された前記シェーディング補正規則を用いて前記シェーディング補正を実行する請求項1または2に記載のインク吐出補完方法。
【請求項4】
前記複数のノズルのうち、前記欠陥ノズルに隣接する1次隣接ノズルおよび前記1次隣接ノズルに隣接する2次隣接ノズルのそれぞれに対して前記第2変換規則が設けられており、
前記1次隣接ノズルに対する前記第2変換規則は、1次隣接割合を前記第2割合として有し、前記1次隣接ノズルに対応する画素の前記階調値を前記1次隣接割合で変換し、
前記2次隣接ノズルに対する前記第2変換規則は、前記1次隣接割合より低い2次隣接割合を有し、前記2次隣接ノズルに対応する画素の前記階調値を前記2次隣接割合で変換する請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインク吐出補完方法。
【請求項5】
吐出ヘッドが有する複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完するインク吐出補完方法であって、
印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データを取得する階調データ取得工程と、
前記複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するシェーディング補正を前記階調データに対して実行するシェーディング補正工程と、
前記複数のノズルのうち、前記欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルおよび前記欠陥ノズル以外の通常ノズルに対応する前記画素の前記階調値に対する第1変換規則と、前記周辺ノズルに対応する前記画素の前記階調値に対する第2変換規則とを用いて、前記シェーディング補正が実行された前記階調データの前記階調値を変換することで、前記階調データを欠陥補完階調データに変換する変換工程と、
前記欠陥補完階調データに対してハーフトーン処理を実行して、吐出制御データを生成するハーフトーン工程と、
前記吐出制御データに基づき前記ノズルを駆動することで、前記ノズルから吐出されたインクによって前記印刷画像を印刷媒体に印刷する画像印刷工程と、
を備え、
前記第1変換規則は、前記通常ノズルに対応する前記画素の前記階調値を100%未満の第1割合で変換し、
前記第2変換規則は、前記周辺ノズルに対応する前記画素の前記階調値を、前記第1割合よりも高い第2割合で変換するインク吐出補完方法。
【請求項6】
複数のノズルを有する吐出ヘッドを備え、前記複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完する印刷装置であって、
印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データを取得する階調データ取得部と、
前記複数のノズルのうち、前記欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルおよび前記欠陥ノズル以外の通常ノズルに対応する前記画素の前記階調値に対する第1変換規則と、前記周辺ノズルに対応する前記画素の前記階調値に対する第2変換規則とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1変換規則と前記第2変換規則とを用いて、前記階調データの前記階調値を変換することで、前記階調データを欠陥補完階調データに変換するデータ変換部と、
前記複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するシェーディング補正を前記欠陥補完階調データに対して実行するシェーディング補正部と、
前記シェーディング補正が実行された前記欠陥補完階調データに対してハーフトーン処理を実行して、吐出制御データを生成するハーフトーン処理部と、
前記吐出制御データに基づき前記ノズルを駆動することで、前記ノズルから吐出されたインクによって前記印刷画像を印刷媒体に印刷する駆動制御部と、
を備え、
前記第1変換規則は、前記通常ノズルに対応する前記画素の前記階調値を100%未満の第1割合で変換し、
前記第2変換規則は、前記周辺ノズルに対応する前記画素の前記階調値を、前記第1割合よりも高い第2割合で変換する印刷装置。
【請求項7】
複数のノズルを有する吐出ヘッドを備え、前記複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完する印刷装置であって、
印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データを取得する階調データ取得部と、
前記複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するシェーディング補正を前記階調データに対して実行するシェーディング補正部と、
前記複数のノズルのうち、前記欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルおよび前記欠陥ノズル以外の通常ノズルに対応する前記画素の前記階調値に対する第1変換規則と、前記周辺ノズルに対応する前記画素の前記階調値に対する第2変換規則とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1変換規則と前記第2変換規則とを用いて、前記シェーディング補正が実行された前記階調データの前記階調値を変換することで、前記階調データを欠陥補完階調データに変換するデータ変換部と、
前記欠陥補完階調データに対してハーフトーン処理を実行して、吐出制御データを生成するハーフトーン処理部と、
前記吐出制御データに基づき前記ノズルを駆動することで、前記ノズルから吐出されたインクによって前記印刷画像を印刷媒体に印刷する駆動制御部と、
を備え、
前記第1変換規則は、前記通常ノズルに対応する前記画素の前記階調値を100%未満の第1割合で変換し、
前記第2変換規則は、前記周辺ノズルに対応する前記画素の前記階調値を、前記第1割合よりも高い第2割合で変換する印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吐出ヘッドが有する複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出ヘッドが有する複数のノズルから印刷媒体にインクを吐出することで、印刷媒体に画像を印刷する印刷技術が知られている。このような印刷技術では、固化したインクがノズルに詰まるといった目詰まり等によって、インクの吐出欠陥を有する欠陥ノズルが生じる場合がある。このような場合、欠陥ノズルに対応する位置にはインクが吐出されないため、画像に白筋が生じる。そこで、特許文献1では、欠陥ノズルの周囲に位置する周辺ノズルから吐出するインクの量を増加させることで、欠陥ノズルの発生に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-150751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、特許文献1の方法では、印刷する画像濃度に応じて隣接するノズルから吐出するインクの量を変化させるために、画像濃度ごとにテーブルを用意して、これらのテーブルを使い分けるといった煩雑な制御が実行される。そこで、欠陥ノズルに対して簡便な制御で対応できる技術が求められていた。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、簡便な制御によって欠陥ノズルに対応できる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るインク吐出補完方法は、吐出ヘッドが有する複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完するインク吐出補完方法であって、印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データを取得する階調データ取得工程と、複数のノズルのうち、欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルおよび欠陥ノズル以外の通常ノズルに対応する画素の階調値に対する第1変換規則と、周辺ノズルに対応する画素の階調値に対する第2変換規則とを用いて、階調データの階調値を変換することで、階調データを欠陥補完階調データに変換する変換工程と、複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するシェーディング補正を欠陥補完階調データに対して実行するシェーディング補正工程と、シェーディング補正が実行された欠陥補完階調データに対してハーフトーン処理を実行して、吐出制御データを生成するハーフトーン工程と、吐出制御データに基づきノズルを駆動することで、ノズルから吐出されたインクによって印刷画像を印刷媒体に印刷する画像印刷工程と、を備え、第1変換規則は、通常ノズルに対応する画素の階調値を100%未満の第1割合で変換し、第2変換規則は、周辺ノズルに対応する画素の階調値を、第1割合よりも高い第2割合で変換する。
【0007】
本発明の第1態様に係る印刷装置は、複数のノズルを有する吐出ヘッドを備え、複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完する印刷装置であって、印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データを取得する階調データ取得部と、 複数のノズルのうち、欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルおよび欠陥ノズル以外の通常ノズルに対応する画素の階調値に対する第1変換規則と、周辺ノズルに対応する画素の階調値に対する第2変換規則とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された第1変換規則と第2変換規則とを用いて、階調データの階調値を変換することで、階調データを欠陥補完階調データに変換するデータ変換部と、複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するシェーディング補正を欠陥補完階調データに対して実行するシェーディング補正部と、シェーディング補正が実行された欠陥補完階調データに対してハーフトーン処理を実行して、吐出制御データを生成するハーフトーン処理部と、吐出制御データに基づきノズルを駆動することで、ノズルから吐出されたインクによって印刷画像を印刷媒体に印刷する駆動制御部と、を備え、第1変換規則は、通常ノズルに対応する画素の階調値を100%未満の第1割合で変換し、第2変換規則は、周辺ノズルに対応する画素の階調値を、第1割合よりも高い第2割合で変換する。
【0008】
このように構成された本発明の第1態様では、印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データに対して、第1変換規則と第2変換規則とを用いて階調値の変換が実行される。ここで、第1変換規則は、吐出欠陥を有さない通常ノズルに対応する画素の階調値を100%未満の第1割合で変換するものであり、第2変換規則は、欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルに対応する画素の階調値を、第1割合よりも高い第2割合で変換するものである。そして、こうして階調値を変換して得られた欠陥補完階調データに対してシェーディング補正が実行される。これによって、通常ノズルに対応する画素の階調値に対して、周辺ノズルに対応する画素の階調値を実質的に上乗せして、欠陥ノズルの吐出欠陥を補完できる。こうして、簡便な制御によって欠陥ノズルに対応することが可能となっている。
【0009】
さらに、ハーフトーン処理を実行する前の階調値を操作することで、欠陥ノズルに対応していることから、次の利点がある。つまり、ハーフトーン処理は、周辺ノズルに対応する画素よりも広いエリア全体の階調値に基づき、当該画素へのインクの吐出を調整する。したがって、周辺ノズルに対応する画素の階調値を実質的に上乗せしたとしても、周辺ノズルから吐出されるインクの量がそのまま増えるわけではなく、周辺ノズルに対応する画素を含むエリア全体での階調値に応じて周辺ノズルからのインクの吐出が調整される。したがって、より自然な画像を印刷することが可能となっている。
【0010】
また、複数のノズルを駆動してノズルから吐出されたインクによって欠陥検出画像を印刷媒体に印刷して、欠陥検出画像を撮像部で読み取った結果に基づき、複数のノズルのうちから欠陥ノズルを検出する欠陥ノズル検出工程を、変換工程より前に備えるように、インク吐出補完方法を構成してもよい。これによって、欠陥ノズルの発生を的確に把握して、これに対応することができる。
【0011】
また、互いに異なる階調値を有する複数の領域を含むテスト画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示すテスト階調データを準備するテスト階調データ準備工程と、第1変換規則と第2変換規則とを用いてテスト階調データの階調値を変換することで、テスト階調データを欠陥補完テスト階調データに変換するテスト用変換工程と、欠陥補完テスト階調データにハーフトーン処理を実行して、テスト吐出制御データを生成するテスト用ハーフトーン工程と、テスト吐出制御データに基づきノズルを駆動することで、ノズルから吐出されたインクによってテスト画像を印刷媒体に印刷するテスト画像印刷工程と、印刷媒体に印刷されたテスト画像の階調値を撮像部により読み取る階調値読取工程と、階調値読取工程で読み取った階調値に基づき、複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するためのシェーディング補正規則を生成する補正規則生成工程と、をシェーディング補正工程より前に備え、シェーディング補正工程では、補正規則生成工程で生成されたシェーディング補正規則を用いてシェーディング補正を実行するように、インク吐出補完方法を構成してもよい。
【0012】
かかる構成では、シェーディング補正に用いるシェーディング補正規則が、互いに異なる階調値を有する複数の領域を含むテスト画像を実際に印刷して、このテスト画像の階調値を読み取った結果に基づき生成される。この際、テスト画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示すテスト階調データに対して、第1変換規則および第2変換規則を用いた変換を実行してから、テスト画像が印刷される。したがって、欠陥ノズルの吐出欠陥を補完したテスト画像を用いてシェーディング補正を実行できる。その結果、適切なシェーディング補正規則を生成することが可能となっている。
【0013】
また、複数のノズルのうち、欠陥ノズルに隣接する1次隣接ノズルおよび1次隣接ノズルに隣接する2次隣接ノズルのそれぞれに対して第2変換規則が設けられており、1次隣接ノズルに対する第2変換規則は、1次隣接割合を第2割合として有し、1次隣接ノズルに対応する画素の階調値を1次隣接割合で変換し、2次隣接ノズルに対する第2変換規則は、1次隣接割合より低い2次隣接割合を有し、2次隣接ノズルに対応する画素の階調値を2次隣接割合で変換するように、インク吐出補完方法を構成してもよい。かかる構成では、欠陥ノズルの1次隣接ノズルおよび2次隣接ノズルに対応する画素の階調値を実質的に上乗せして、欠陥ノズルの吐出欠陥を補完できる。しかも、階調値を上乗せする割合が、1次隣接ノズルに対応する画素よりも、2次隣接ノズルに対応する画素の方が低く、欠陥ノズルに対応する画素から離れるに連れて減少する。したがって、欠陥ノズルの吐出欠陥をより自然に補完できる。
【0014】
本発明の第2態様に係るインク吐出補完方法は、吐出ヘッドが有する複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完するインク吐出補完方法であって、印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データを取得する階調データ取得工程と、複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するシェーディング補正を階調データに対して実行するシェーディング補正工程と、複数のノズルのうち、欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルおよび欠陥ノズル以外の通常ノズルに対応する画素の階調値に対する第1変換規則と、周辺ノズルに対応する画素の階調値に対する第2変換規則とを用いて、シェーディング補正が実行された階調データの階調値を変換することで、階調データを欠陥補完階調データに変換する変換工程と、欠陥補完階調データに対してハーフトーン処理を実行して、吐出制御データを生成するハーフトーン工程と、吐出制御データに基づきノズルを駆動することで、ノズルから吐出されたインクによって印刷画像を印刷媒体に印刷する画像印刷工程と、を備え、第1変換規則は、通常ノズルに対応する画素の階調値を100%未満の第1割合で変換し、第2変換規則は、周辺ノズルに対応する画素の階調値を、第1割合よりも高い第2割合で変換する。
【0015】
本発明の第2態様に係る印刷装置は、複数のノズルを有する吐出ヘッドを備え、複数のノズルのうちの欠陥ノズルのインクの吐出欠陥を補完する印刷装置であって、印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データを取得する階調データ取得部と、複数のノズルのそれぞれが吐出するインクの量のばらつきを補正するシェーディング補正を階調データに対して実行するシェーディング補正部と、複数のノズルのうち、欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルおよび欠陥ノズル以外の通常ノズルに対応する画素の階調値に対する第1変換規則と、周辺ノズルに対応する画素の階調値に対する第2変換規則とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された第1変換規則と第2変換規則とを用いて、シェーディング補正が実行された階調データの階調値を変換することで、階調データを欠陥補完階調データに変換するデータ変換部と、欠陥補完階調データに対してハーフトーン処理を実行して、吐出制御データを生成するハーフトーン処理部と、吐出制御データに基づきノズルを駆動することで、ノズルから吐出されたインクによって印刷画像を印刷媒体に印刷する駆動制御部と、を備え、第1変換規則は、通常ノズルに対応する画素の階調値を100%未満の第1割合で変換し、第2変換規則は、周辺ノズルに対応する画素の階調値を、第1割合よりも高い第2割合で変換する。
【0016】
このように構成された本発明の第2態様では、印刷画像を構成する複数の画素それぞれの階調値を示す階調データに対して、シェーディング補正が実行される。そして、こうしてシェーディング補正が実行された階調データに対して、第1変換規則と第2変換規則とを用いて階調値の変換が実行される。ここで、第1変換規則は、吐出欠陥を有さない通常ノズルに対応する画素の階調値を100%未満の第1割合で変換するものであり、第2変換規則は、欠陥ノズルの周辺に位置する周辺ノズルに対応する画素の階調値を、第1割合よりも高い第2割合で変換するものである。これによって、通常ノズルに対応する画素の階調値に対して、周辺ノズルに対応する画素の階調値を実質的に上乗せして、欠陥ノズルの吐出欠陥を補完できる。こうして、簡便な制御によって欠陥ノズルに対応することが可能となっている。
【0017】
さらに、ハーフトーン処理を実行する前の階調値を操作することで、欠陥ノズルに対応していることから、次の利点がある。つまり、ハーフトーン処理は、周辺ノズルに対応する画素よりも広いエリア全体の階調値に基づき、当該画素へのインクの吐出を調整する。したがって、周辺ノズルに対応する画素の階調値を実質的に上乗せしたとしても、周辺ノズルから吐出されるインクの量がそのまま増えるわけではなく、周辺ノズルに対応する画素を含むエリア全体での階調値に応じて周辺ノズルからのインクの吐出が調整される。したがって、より自然な画像を印刷することが可能となっている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、簡便な制御によって欠陥ノズルに対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図。
図2】撮像部の構成を模式的に示す平面図。
図3】吐出ヘッドに生じるインクの吐出欠陥を模式的に示す図。
図4】シェーディング補正テーブルの生成方法の一例を示すフローチャート。
図5図4のフローチャートで印刷されるテスト画像の一例を示す図。
図6】欠陥ノズル補正においてノズルを区別する態様を模式的に示す図。
図7】欠陥ノズル補正で用いる変換テーブルの一例を示す図。
図8】シェーディング補正テーブルの一例を模式的に示す図。
図9A】欠陥ノズル補正およびシェーディング補正によって変換される網パーセントの数値例を通常ノズルについて示す図。
図9B】欠陥ノズル補正およびシェーディング補正によって変換される網パーセントの数値例を欠陥ノズルについて示す図。
図10】制御部の電気的構成を示すブロック図。
図11】欠陥ノズル補正においてノズルを区別する態様の変形例を模式的に示す図。
図12図11の変形例に応じた変換テーブルの一例を示す図。
図13】制御部の電気的構成の変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図である。図1では、水平方向Xおよび鉛直方向Zを適宜示す。図1に示すように、印刷装置1は、印刷機2、乾燥機3、印刷機4および乾燥機5をこの順で水平方向X(配列方向)に配列した構成を具備する。この印刷装置1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送しつつ、印刷機2で印刷した印刷媒体Mを乾燥機3で乾燥させ、さらに印刷機4で印刷した印刷媒体Mを乾燥機5で乾燥させる。なお、印刷媒体Mとしては、紙あるいはフィルム等の種々の素材を利用できる。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面と、表面の反対側の面を裏面と適宜称する。
【0021】
印刷機2は、印刷媒体Mを搬送する搬送部21を備える。搬送部21は、印刷機2に搬入されてきた印刷媒体Mを支持するローラ211と、乾燥機3に向けて印刷媒体Mを搬出するローラ212と、ローラ211とローラ212との間に配列された複数の複数のローラ213とを有する。これらローラ211、212、213は、下方を向く印刷媒体Mの裏面を巻き掛けることで、印刷媒体Mを支持する。さらに、印刷機2は、複数のローラ213に支持された印刷媒体Mの表面に上方から対向する複数の吐出ヘッドHを備え、複数の吐出ヘッドHは互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式で印刷媒体Mの表面に吐出することで、印刷媒体Mにカラー画像を印刷する。
【0022】
乾燥機3は、印刷機2から搬出されてきた印刷媒体Mを搬送する搬送部31を備える。この搬送部31は、乾燥機3に搬入された印刷媒体Mを支持するローラ311と、ローラ311の下方で水平方向Xに並ぶ一対のエアターンバー312、313とを有する。エアターンバー312は、ローラ311から下降してきた印刷媒体Mを水平方向Xの一方側(図1の左側)に向けて折り曲げ、エアターンバー313は、エアターンバー312から水平方向Xに進んできた印刷媒体Mを上方に向けて折り曲げる。また、搬送部31は、一対のエアターンバー312、313の上方で水平方向Xに並ぶ一対のローラ314、315を有する。ローラ314は、エアターンバー313から上昇してきた印刷媒体Mを水平方向Xの一方側に向けて折り曲げ、ローラ315は、ローラ314から水平方向Xに進んできた印刷媒体Mを下方に向けて折り曲げる。さらに、搬送部31は、ローラ315の下方に配置されたエアターンバー316を有する。このエアターンバー316は、ローラ315から下降してきた印刷媒体Mを水平方向Xの一方側に向けて折り曲げて、印刷機4に向けて印刷媒体Mを搬出する。ローラ311、314、315は印刷媒体Mの裏面を巻き掛けることで印刷媒体Mを支持し、エアターンバー312、313、316は、印刷媒体Mの表面にエアを噴射することで印刷媒体Mを支持する。
【0023】
さらに、乾燥機3は、ローラ311とエアターンバー312との間の印刷媒体Mの表面に対向するヒータ32と、エアターンバー313とローラ314との間の印刷媒体Mの表面に対向するヒータ33と、ローラ315とエアターンバー316との間の印刷媒体Mの表面に対向するヒータ34とを備える。これらヒータ32、33、34は、印刷媒体Mの表面を加熱することで、印刷媒体Mに付着したインクを乾燥させる。
【0024】
印刷機4は、乾燥機3から搬出されてきた印刷媒体Mを搬送する搬送部41を備える。この搬送部41は、印刷機4に搬入された印刷媒体Mを上方へ折り返すエアターンバー411と、エアターンバー411の上方で並ぶローラ412、413、414、415を有する。これらローラ412~415は、エアターンバー411から上昇してきた印刷媒体Mを水平方向Xの一方側に向けて搬送する。これによって、印刷媒体Mは、ローラ415から乾燥機5に向けて水平方向Xに搬出される。エアターンバー411は、印刷媒体Mの表面にエアを噴射することで印刷媒体Mを支持し、ローラ412~415は、下方を向く印刷媒体Mの裏面を巻き掛けることで、印刷媒体Mを支持する。さらに、印刷機4は、複数のローラ413、414に支持された印刷媒体Mの表面に上方から対向する吐出ヘッドHを備え、吐出ヘッドHは白インクをインクジェット方式で印刷媒体Mの表面に吐出することで、印刷媒体Mに白画像を印刷する。
【0025】
乾燥機5は、印刷機4から搬出されてきた印刷媒体Mを搬送する搬送部51を備える。搬送部51は、乾燥機5に搬入されてきた印刷媒体Mを支持するローラ511と、ローラ511の水平方向Xの一方側で鉛直方向Zに並ぶ一対のローラ512、513とを有する。ローラ512は、ローラ511から水平方向Xの一方側に搬送されてきた印刷媒体Mを下方に向けて折り曲げ、ローラ513は、ローラ512から下降してきた印刷媒体Mを水平方向Xの他方側(図1の右側)に向けて折り曲げる。また、搬送部51は、ローラ513の水平方向Xの他方側であってローラ511の下方で鉛直方向Zに並ぶ一対のエアターンバー514、515を有する。エアターンバー514は、ローラ513から水平方向Xの他方側に搬送されてきた印刷媒体Mを下方に向けて折り曲げ、エアターンバー515は、エアターンバー514から下降してきた印刷媒体Mを水平方向Xの一方側に向けて折り曲げる。さらに、搬送部51は、エアターンバー515の水平方向Xの一方側に配置されたローラ516を有し、ローラ516は、エアターンバー515から水平方向の一方側に搬送されてきた印刷媒体Mを、さらに一方側に向けて搬送する。これによって、印刷媒体Mは、ローラ516から巻取ロール12へ向けて搬出される。ローラ511、512、513、516は、印刷媒体Mの裏面を巻き掛けることで印刷媒体Mを支持し、エアターンバー514、515は印刷媒体Mの表面にエアを噴射することで、印刷媒体Mを支持する。
【0026】
さらに、乾燥機5はローラ511とローラ512との間の印刷媒体Mの表面に対向するヒータ52と、ローラ513とエアターンバー514との間の印刷媒体Mの表面に対向するヒータ53と、エアターンバー515とローラ516との間の印刷媒体Mの表面に対向するヒータ54とを備える。これらヒータ52、53、54は、印刷媒体Mの表面を加熱することで、印刷媒体Mに付着したインクを乾燥させる。
【0027】
また、印刷装置1は、乾燥機5から搬出されて巻取ロール12に巻き取られる前の印刷媒体Mに印刷された画像を読み取る撮像部6を備える。図2は撮像部の構成を模式的に示す平面図である。撮像部6は、例えばラインセンサによって対象物を読み取るスキャナ61と、印刷媒体Mの幅方向に相当する走査方向Asにスキャナ61を駆動する走査駆動部62とを有する。走査駆動部62は、例えばボールネジなどの直動機構である。かかる撮像部6は、印刷媒体Mに印刷された画像Iをスキャナ61によって1ラインずつ読み取りながら、走査駆動部62によってスキャナ61を走査方向Asに駆動することで、画像Iの全体を読み取る。撮像部6の読取対象となる画像は、欠陥ノズルを検出するためのベタ画像(欠陥検出画像)や、吐出ヘッドHの各ノズルのインク吐出量のばらつき(シェーディング)を測定するためのテスト画像が挙げられる。
【0028】
さらに、印刷装置1は、撮像部6で読み取った画像に基づき、吐出ヘッドHからのインクの吐出を制御する制御部9を備える。制御部9は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)あるいはプロセッサ等で構成される。特に制御部9は、吐出ヘッドHに発生するインクの吐出欠陥を補完する制御を実行する。続いては、この点について説明する。
【0029】
図3は吐出ヘッドに生じるインクの吐出欠陥を模式的に示す図であり、具体的には、印刷媒体Mを搬送方向Amに搬送しつつ、吐出ヘッドHの複数のノズルNの全てを同時に駆動することで印刷されるいわゆるベタ画像Isを示す。ノズルNから吐出されたインクにより印刷される画像は二次元的に配列された複数の画素Pxで構成されており、各ノズルNに対してはインク吐出を担当する画素Pxが対応付けられている。具体的には、1個のノズルNに対して、搬送方向Amに並ぶ1列分の画素Pxへのインク吐出を担当する。そして、ノズルNは、搬送方向Amへの印刷媒体Mの搬送に応じて、担当する画素にインクを順次吐出する。したがって、複数のノズルNのうちに欠陥ノズルNdが生じると、欠陥ノズルNdがインク吐出を担当する各画素Pxにインクが着弾せず、搬送方向Amに伸びる白筋がベタ画像Isに表れる。そこで、制御部9は、吐出欠陥を補完するために、次のようにしてシェーディング補正テーブル(ルック・アップ・テーブル)を生成する。
【0030】
図4はシェーディング補正テーブルの生成方法の一例を示すフローチャートであり、図5図4のフローチャートで印刷されるテスト画像の一例を示す図である。ステップS101では、テスト画像Itを示すデータであるテスト階調データが生成される(テスト階調データ準備工程)。このテスト階調データは、二次元的に配列された複数の画素それぞれの網パーセントを示すことで、テスト画像Itを表現するデータである。ここで、網パーセントとは、画素が有する階調値を百分率で示した値であり、例えば256段階で階調値を表す場合、網パーセントが100%であるとは階調値が256であることを示し、網パーセントが50%であるとは階調値が128であることを示す。図5に示すように、テスト画像Itは、印刷媒体Mの搬送方向Amに並ぶ複数の領域It1~It5で構成される。領域It1~It5のそれぞれは、一様な網パーセントを有する一方、領域It1から領域It5の順により高い網パーセントを有する。なお、領域It1~It5の個数はここの例に限られない。
【0031】
ステップS102では、このテスト画像Itを表すテスト階調値データに対して欠陥ノズル補正が実行される。図6は欠陥ノズル補正においてノズルを区別する態様を模式的に示す図であり、図7は欠陥ノズル補正で用いる変換テーブルの一例を示す図である。図6に示すように、欠陥ノズル補正では、吐出ヘッドHが有する複数のノズルNを、欠陥ノズルNdと、周辺ノズルNaと、通常ノズルNnとに区別する。ここで、欠陥ノズルNdは、インクの吐出欠陥を有するノズルNである。周辺ノズルNaは、欠陥ノズルNdの周囲のノズルNである。特にここの例では、欠陥ノズルNdの両側で当該欠陥ノズルNdに隣接する2個のノズルNのそれぞれが周辺ノズルNaである。なお、対象ノズルN(ここでは、欠陥ノズルNd)に隣接するノズルNとは、対象ノズルNがインク吐出を担当する画素Pxに隣接する画素Pxへのインク吐出を担当するノズルNである。また、通常ノズルNnは、欠陥ノズルNdおよび周辺ノズルNa以外のノズルNである。周辺ノズルNaおよび通常ノズルNnはインクの吐出欠陥を有さず、制御部9からの駆動に応じてインクを吐出する。
【0032】
ちなみに、欠陥ノズルNdは、図4のフローチャートの開始前に予め検出されている。この欠陥ノズルNdの検出では、ベタ画像Isが印刷媒体Mに印刷され、撮像部6がベタ画像Isを読み取る。そして、制御部9は、撮像部6の読み取ったベタ画像Isに含まれる白筋の位置から欠陥ノズルNdを検出し、欠陥ノズルNdの検出結果を保持する(欠陥ノズル検出工程)。なお、欠陥ノズルNdとは、当該ノズルNdからインクが全く吐出されない場合だけを指すものではない。即ち、欠陥ノズルNdとは、例えば、当該ノズルから吐出されるインクの吐出量が明らかに少なくなる場合や、当該ノズルから吐出される方向が変わり本来吐出すべき位置に吐出されない場合等、インクの吐出状態が不適正な状態が検出されるような場合も含ものである。
【0033】
そして、通常ノズルNnがインク吐出を担当する各画素Pxの網パーセントが、第1変換テーブルTd1によって変換される。この第1変換テーブルTd1は、テスト階調データが示す網パーセント(入力)に100%未満の第1割合Rd1(ここでは、70%)を乗じた値を出力することで、入力を出力に変換する。したがって、テスト階調データに含まれる複数の画素Pxのうち、通常ノズルNnがインク吐出を担当する画素Pxの網パーセントは、第1割合Rd1である70%を当該網パーセントに乗じた値に変換される。
【0034】
また、周辺ノズルNaがインク吐出を担当する各画素Pxの網パーセントが、第2変換テーブルTd2によって変換される。この第2変換テーブルTd2は、テスト階調データが示す網パーセント(入力)に、100%未満であって第1割合Rd1より高い第2割合Rd2(ここでは、98%)を乗じた値を出力することで、入力を出力に変換する。したがって、テスト階調データに含まれる複数の画素Pxのうち、周辺ノズルNaがインクの吐出を担当する画素Pxの網パーセントは、第2割合Rd2である98%を当該網パーセントに乗じた値に変換される。
【0035】
このように欠陥ノズル補正では、通常ノズルNnがインク吐出を担当する各画素Pxの網パーセントに第1割合Rd1を乗じるとともに、周辺ノズルNaがインク吐出を担当する各画素Pxの網パーセントに第1割合Rd1より高い第2割合Rd2を乗じることで、テスト階調データを欠陥補完テスト階調データに変換する(テスト用変換工程)。ちなみに、欠陥ノズルNdがインク吐出を担当する画素Pxの網パーセントは、この変換においてゼロに設定される。
【0036】
ステップS103では、欠陥補完テスト階調データに対してハーフトーン処理が実行される。これによって、各画素の網パーセントを示す欠陥補完テスト階調データが、各画素へのインク吐出の有無を示すテスト吐出制御データに変換される(テスト用ハーフトーン工程)。そして、ステップS104では、制御部9は、テスト吐出制御データに基づき吐出ヘッドHのノズルNを駆動することで、ノズルNから吐出されたインクによってテスト画像Itを印刷媒体Mに印刷する(テスト画像印刷工程)。
【0037】
ステップS105では、制御部9は、印刷媒体Mに印刷されたテスト画像Itの濃度(換言すれば、階調値)を撮像部6により読み取る。具体的には、ノズルNが吐出を担当する1ライン分の画素Pxに沿った濃度の変化が、各ノズルについて読み取られる(階調値読取工程)。そして、各ノズルNのうち、出力できる最大濃度が最も低いノズルNの当該最大濃度が、ダイナミクスレンジの上限に設定される。ここで、ダイナミクスレンジとは、階調表現のために濃度を変化させる幅に相当する。そして、このダイナミクスレンジにおいて、入力網パーセントに対する濃度の変化を示すシェーディング補正テーブルが、ステップS105での読取結果に基づき各ノズルNについて算出される(補正規則生成工程)。
【0038】
図8はシェーディング補正テーブルの一例を模式的に示す図である。図8の「通常ノズルNn」の欄では、一の通常ノズルNnについて求められたシェーディング補正テーブルTsnが示されている。破線の曲線は、網パーセントと濃度との対応関係を測定した結果であり、実線の直線は、網パーセントと濃度とのリニアな対応関係を示す基準線である。例えば、基準線によれば70%の網パーセントに対して1.8の濃度が得られるべきところ、実際に測定されたのは1.8よりも低く、1.8の濃度を得るためには74%の網パーセントを与える必要がある。また、基準線によれば、21%の網パーセントに対して0.5の濃度が得られるべきところ、実際に測定されたのは0.5よりも高く、0.5の濃度を得るためには12%の網パーセントを与える必要がある。こうして、シェーディング補正テーブルTsnは、70%を74%に変換し、21%を12%に変換するといった網パーセントの補正を、入力された網パーセントに対して実行する(シェーディング補正)。
【0039】
また、図8の「周辺ノズルNa」の欄では、一の周辺ノズルNaについて求められたシェーディング補正テーブルTsaが示されている。破線の曲線は、網パーセントと濃度との対応関係を測定した結果であり、実線の直線は、網パーセントと濃度とのリニアな対応関係を示す基準線である。例えば、基準線によれば98%の網パーセントに対して1.8の濃度が得られるべきところ、実際の測定結果に基づけば、1.8の濃度を得るためには92%の網パーセントを与える必要がある。また、基準線によれば、29%の網パーセントに対して0.5の濃度が得られるべきところ、実際の測定結果に基づけば、0.5の濃度を得るためには26%の網パーセントを与える必要がある。こうして、シェーディング補正テーブルTsaは、98%を92%に変換し、29%を26%に変換するといった網パーセントの補正を、入力された網パーセントに対して実行する(シェーディング補正)。
【0040】
ちなみに、シェーディング補正テーブルTsnとシェーディング補正テーブルTsaとの比較から判るように、同じ濃度を得るためには、通常ノズルNnよりも周辺ノズルNaに対して大きな網パーセントを入力する必要がある。これは、周辺ノズルNaに隣接する欠陥ノズルNdの吐出欠陥を周辺ノズルNaにより補完しているためである。
【0041】
図9Aは欠陥ノズル補正およびシェーディング補正によって変換される網パーセントの数値例を通常ノズルについて示す図であり、図9Bは欠陥ノズル補正およびシェーディング補正によって変換される網パーセントの数値例を欠陥ノズルについて示す図である。図9Aに示すように、0~100%の入力網パーセントで各画素の階調値を示すデータが、0~70%の網パーセントで各画素の階調値を示すデータに第1変換テーブルTd1により変換され、さらに0~74%の網パーセントで各画素の階調値を示すデータにシェーディング補正テーブルTsnにより変換される。また、図9Bに示すように、0~100%の入力網パーセントで各画素の階調値を示すデータが、0~98%の網パーセントで各画素の階調値を示すデータに第2変換テーブルTd2により変換され、さらに0~92%の網パーセントで各画素の階調値を示すデータにシェーディング補正テーブルTsaにより変換される。
【0042】
なお、シェーディング補正テーブルTsnは、各通常ノズルNnについて個別に算出され、シェーディング補正テーブルTsaは、各周辺ノズルNaについて個別に算出される。つまり、欠陥ノズルNd以外のノズルNのそれぞれについてシェーディング補正テーブルが求められる。こうして、欠陥ノズル補正(ステップS102)を実行しつつ求められた各シェーディング補正テーブルTsn、Tsaを用いて、以後の画像印刷が実行される。続いては、この点について説明する。
【0043】
図10は制御部の電気的構成を示すブロック図である。制御部9は、データを記憶する記憶部91を有しており、欠陥ノズル情報Fd、第1変換テーブルTd1、第2変換テーブルTd2およびシェーディング補正テーブルTsn、Tsaを記憶する。欠陥ノズル情報Fdは、吐出ヘッドHが有するノズルNのうちの欠陥ノズルNdを示す情報であり、上述のようにベタ画像Isを読み取った結果に基づき取得される。また、第1変換テーブルTd1および第2変換テーブルTd2は、上記の欠陥ノズル補正(ステップS102)で使用されたものである。さらに、シェーディング補正テーブルTsn、Tsaは、上記のシェーディング補正テーブルの算出(ステップS106)で求められたものである。
【0044】
また、制御部9は、レイアウト処理部92、ドットゲイン補正部93およびノズル決定部94を有する。レイアウト処理部92は、印刷媒体Mにおける印刷画像の配置を決定し、この印刷画像を構成する複数の画素Pxそれぞれの網パーセントを示す階調データDhを生成する(階調データ取得工程)。ドットゲイン補正部は、階調データDhに対してドットゲインの補正を実行する。ノズル決定部94は、階調データDhを構成する各画素Pxへのインク吐出を担当するノズルNを決定する。
【0045】
さらに、制御部9は、欠陥ノズル補正部95およびシェーディング補正部96を有する。欠陥ノズル補正部95は、ドットゲイン補正が実行された階調データDhに対して、欠陥ノズル補正を実行する。この欠陥ノズル補正で行う演算は、ステップS102での欠陥ノズル補正と同じである。つまり、欠陥ノズル情報Fd、第1変換テーブルTd1および第2変換テーブルTd2が記憶部91から欠陥ノズル補正部95に読み出される。そして、欠陥ノズル情報Fdに基づき、欠陥ノズルNdが特定され、欠陥ノズルNdに隣接する2個の周辺ノズルNaと、これら以外の通常ノズルNnとが区別される。そして、通常ノズルNnがインク吐出を担当する画素Pxの網パーセントに、第1変換テーブルTd1の第1割合Rd1を乗じて当該網パーセントを変換するとともに、周辺ノズルNaがインク吐出を担当する画素Pxの網パーセントに、第2変換テーブルTd2の第2割合Rd2を乗じて当該網パーセントを変換することで、階調データDhが欠陥補完階調データDcに変換される(変換工程)。
【0046】
シェーディング補正部96は、欠陥ノズル補正部95から出力された欠陥補完階調データDcに対してシェーディング補正を実行する。つまり、シェーディング補正テーブルTsn、Tsaが記憶部91からシェーディング補正部96に読み出される。そして、通常ノズルNnがインク吐出を担当する画素Pxの網パーセントをシェーディング補正テーブルTsnによって変換するとともに、周辺ノズルNaがインク吐出を担当する画素Pxの網パーセントをシェーディング補正テーブルTsaによって変換することで、欠陥補完階調データDcにシェーディング補正が実行される(シェーディング補正工程)。これによって、欠陥ノズルNd以外の各ノズルNが吐出するインク量のばらつきが補正される。
【0047】
また、制御部9は、ハーフトーン処理部97および駆動制御部98を有する。ハーフトーン処理部97は、シェーディング補正が実行された欠陥補完階調データDcに対してハーフトーン処理を実行する(ハーフトーン工程)。このハーフトーン処理によって、各画素Pxの網パーセントを示す欠陥補完階調データDcが、各画素Pxへのインク吐出の有無を示す吐出制御データDdに変換される。そして、駆動制御部98は、吐出制御データDdに基づき吐出ヘッドHのノズルNを駆動することで、印刷媒体Mに画像を印刷する(画像印刷工程)。
【0048】
以上に説明する実施形態では、印刷画像を構成する複数の画素Pxそれぞれの網パーセント(階調値)を示す階調データDhに対して、第1変換テーブルTd1(第1変換規則)と第2変換テーブルTd2(第2変換規則)とを用いた網パーセントの変換が欠陥ノズル補正部95により実行される。ここで、第1変換テーブルTd1は、吐出欠陥を有さない通常ノズルNnに対応する画素Pxの網パーセントを100%未満の第1割合Rd1で変換するものであり、第2変換テーブルTd2は、欠陥ノズルNdの周辺に位置する周辺ノズルNaに対応する画素Pxの網パーセントを、第1割合Rd1よりも高い第2割合Rd2で変換するものである。そして、こうして網パーセントを変換して得られた欠陥補完階調データDcに対してシェーディング補正がシェーディング補正部96により実行される。これによって、通常ノズルNnに対応する画素Pxの網パーセントに対して、周辺ノズルNaに対応する画素Pxの網パーセントを実質的に上乗せして、欠陥ノズルNdの吐出欠陥を補完できる。こうして、簡便な制御によって欠陥ノズルNdに対応することが可能となっている。
【0049】
さらに、ハーフトーン処理部97によるハーフトーン処理を実行する前の網パーセントを操作することで、欠陥ノズルNdに対応していることから、次の利点がある。つまり、ハーフトーン処理は、周辺ノズルNaに対応する画素Pxよりも広いエリア全体の網パーセントに基づき、当該画素Pxへのインクの吐出を調整する。したがって、周辺ノズルNaに対応する画素Pxの網パーセントを実質的に上乗せしたとしても、周辺ノズルNaから吐出されるインクの量がそのまま増えるわけではなく、周辺ノズルNaに対応する画素Pxを含むエリア全体での網パーセントに応じて周辺ノズルNaからのインクの吐出が調整される。したがって、より自然な画像を印刷することが可能となっている。
【0050】
また、欠陥ノズル補正部95による欠陥ノズル補正より前に、欠陥ノズルNdを示す欠陥ノズル情報Fdが予め取得されている。具体的には、吐出ヘッドHの複数のノズルNを駆動してノズルNから吐出されたインクによってベタ画像Is(欠陥検出画像)が印刷媒体Mに印刷される。そして、ベタ画像Isを撮像部6で読み取った結果に基づき、複数のノズルNのうちから欠陥ノズルNdが検出される(欠陥ノズル検出工程)。かかる欠陥ノズルNdの検出を欠陥ノズル補正より前に実行しておくことで、欠陥ノズルNdの発生を的確に把握して、これに対応することができる。
【0051】
また、図10に示すブロック図によって印刷媒体Mに画像を印刷する前に、図4のシェーディング補正テーブル作成が実行されている。つまり、シェーディング補正に用いるシェーディング補正テーブルTsn、Tsa(シェーディング補正規則)が、互いに異なる網パーセントを有する複数の領域It1~It5を含むテスト画像Itを実際に印刷して、このテスト画像Itの網パーセントを読み取った結果に基づき生成される。この際、テスト画像Itを構成する複数の画素Pxそれぞれの網パーセントを示すテスト階調データに対して、第1変換テーブルTd1および第2変換テーブルTd2を用いた変換を実行してから、テスト画像Itが印刷される。したがって、欠陥ノズルNdの吐出欠陥を補完したテスト画像Itを用いてシェーディング補正を実行できる。その結果、適切なシェーディング補正テーブルTsn、Tsaを生成することが可能となっている。
【0052】
ところで、上記の実施形態では、欠陥ノズルNdに隣接するノズルNが、周辺ノズルNaとして区別されていた。しかしながら、周辺ノズルNaの例はこれに限られない。図11は欠陥ノズル補正においてノズルを区別する態様の変形例を模式的に示す図であり、図12図11の変形例に応じた変換テーブルの一例を示す図である。
【0053】
図11に示す例では、吐出ヘッドHが有する複数のノズルNを、欠陥ノズルNdと、1次隣接ノズルNa1と、2次隣接ノズルNa2と、通常ノズルNnとに区別する。ここで、1次隣接ノズルNa1および2次隣接ノズルNa2は周辺ノズルNaの一種であり、特に1次隣接ノズルNa1は欠陥ノズルNdに隣接するノズルNであり、2次隣接ノズルNa2は欠陥ノズルNdの逆側で1次隣接ノズルNa1に隣接するノズルである。そして、図12に示すように、通常ノズルNn、1次隣接ノズルNa1および2次隣接ノズルNa2のそれぞれに対して設けられた変換テーブルTd1、Td2_1、Td2_2によって欠陥ノズル補正が実行される(ステップS102、欠陥ノズル補正部95)。
【0054】
つまり、通常ノズルNnがインク吐出を担当する各画素Pxの網パーセントが、第1変換テーブルTd1によって変換される。この第1変換テーブルTd1は、階調データ(階調データDhあるいはテスト階調データ)が示す網パーセント(入力)に100%未満の第1割合Rd1(ここでは、70%)を乗じた値を出力することで、入力を出力に変換する。したがって、階調データに含まれる複数の画素Pxのうち、通常ノズルNnがインク吐出を担当する画素Pxの網パーセントは、第1割合Rd1である70%を当該網パーセントに乗じた値に変換される。
【0055】
また、1次隣接ノズルNa1がインク吐出を担当する各画素Pxの網パーセントが、第2変換テーブルTd2_1によって変換される。この第2変換テーブルTd2_1は、階調データ(階調データDhあるいはテスト階調データ)が示す網パーセント(入力)に、100%未満であって第1割合Rd1より高い第2割合Rd2_1(ここでは、90%)を乗じた値を出力することで、入力を出力に変換する。したがって、階調データに含まれる複数の画素Pxのうち、1次隣接ノズルNa1がインクの吐出を担当する画素Pxの網パーセントは、第2割合Rd2_1である90%を当該網パーセントに乗じた値に変換される。
【0056】
また、2次隣接ノズルNa2がインク吐出を担当する各画素Pxの網パーセントが、第2変換テーブルTd2_2によって変換される。この第2変換テーブルTd2_2は、階調データ(階調データDhあるいはテスト階調データ)が示す網パーセント(入力)に、第1割合Rd1より高くて第2割合Rd2_1より低い第2割合Rd2_2(ここでは、80%)を乗じた値を出力することで、入力を出力に変換する。したがって、階調データに含まれる複数の画素Pxのうち、2次隣接ノズルNa2がインクの吐出を担当する画素Pxの網パーセントは、第2割合Rd2_2である80%を当該網パーセントに乗じた値に変換される。
【0057】
つまり、この変形例では、欠陥ノズルNdの1次隣接ノズルNa1および2次隣接ノズルNa2のそれぞれに対して第2変換テーブルTd2_1、Td2_2(第2変換規則)が設けられている。そして、第2変換テーブルTd2_1は、1次隣接ノズルNa1に対応する画素Pxの網パーセントを第2割合Rd2_1(1次隣接割合)で変換し、第2変換テーブルTd2_2は、2次隣接ノズルNa2に対応する画素Pxの網パーセントを、第2割合Rd2_1より低い第2割合Rd2_2(2次隣接割合)で変換する。かかる構成では、欠陥ノズルNdの1次隣接ノズルNa1および2次隣接ノズルNa2に対応する画素Pxの網パーセントを実質的に上乗せして、欠陥ノズルNdの吐出欠陥を補完できる。しかも、網パーセントを上乗せする割合が、1次隣接ノズルNa1に対応する画素Pxよりも、2次隣接ノズルNa2に対応する画素Pxの方が低く、欠陥ノズルNdに対応する画素Pxから離れるに連れて減少する。したがって、欠陥ノズルNdの吐出欠陥をより自然に補完できる。
【0058】
以上に説明した実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、記憶部91が本発明の「記憶部」の一例に相当し、レイアウト処理部92が本発明の「階調データ取得部」の一例に相当し、欠陥ノズル補正部95が本発明の「データ変換部」の一例に相当し、シェーディング補正部96が本発明の「シェーディング補正部」の一例に相当し、ハーフトーン処理部97が本発明の「ハーフトーン処理部」の一例に相当し、駆動制御部98が本発明の「駆動制御部」の一例に相当し、欠陥補完階調データDcが本発明の「欠陥補完階調データ」の一例に相当し、吐出制御データDdが本発明の「吐出制御データ」の一例に相当し、階調データDhが本発明の「階調データ」の一例に相当し、吐出ヘッドHが本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、ノズルNが本発明の「ノズル」の一例に相当し、周辺ノズルNa、1次隣接ノズルNa1および2次隣接ノズルNa2が本発明の「周辺ノズル」の一例に相当し、欠陥ノズルNdが本発明の「欠陥ノズル」の一例に相当し、通常ノズルNnが本発明の「通常ノズル」の一例に相当し、画素Pxが本発明の「画素」の一例に相当し、第1割合Rd1が本発明の「第1割合」の一例に相当し、第2割合Rd2、第2割合Rd2_1および第2割合Rd2_2が本発明の「第2割合」の一例に相当し、第2割合Rd2_1が本発明の「1次隣接割合」の一例に相当し、第2割合Rd2_2が本発明の「2次隣接割合」の一例に相当し、第1変換テーブルTd1が本発明の「第1変換規則」の一例に相当し、第2変換テーブルTd2、第2変換テーブルTd2_1および第2変換テーブルTd2_2が本発明の「第2変換規則」の一例に相当する。
【0059】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記の実施形態では、欠陥ノズル補正部95が階調データDhに欠陥ノズル補正を行った欠陥補完階調データDcに対してシェーディング補正部96がシェーディング補正を行っている。しかしながら、これらの実行順序を逆にしてもよい。
【0060】
図13は制御部の電気的構成の変形例を示すブロック図である。図10の例との差異は、欠陥ノズル補正部95とシェーディング補正部96の順序だけであるので、ここでは当該差異を中心に説明することとし、共通部分は相当符号を付して説明を省略する。
【0061】
この変形例では、シェーディング補正部96がシェーディング補正テーブルTsに基づき階調データDhに対してシェーディング補正を実行する(シェーディング補正工程)。このシェーディング補正テーブルTsは、欠陥ノズルNdが発生する前の状況で、図4と同様のシェーディング補正テーブル作成によって予め算出され、記憶部91に記憶されている。ただし、欠陥ノズルNdは未発生であるため、ステップS102の欠陥ノズル補正は実行されない。
【0062】
なお、シェーディング補正テーブルの作成時には欠陥ノズルNdが未発生である一方、図13の構成により画像を印刷する際には、欠陥ノズルNdが発生しているとする。こうして発生した欠陥ノズルNdに対応するために、シェーディング補正部96に続いて欠陥ノズル補正部95が実行される。つまり、シェーディング補正部96によってシェーディング補正が実行された階調データDhに対して、欠陥ノズル補正部95が欠陥ノズル補正を、第1変換テーブルTd1および第2変換テーブルTd2を用いて上記と同様に実行して、階調データDhを欠陥補完階調データDcに変換する(変換工程)。
【0063】
かかる変形例では、印刷画像を構成する複数の画素Pxそれぞれの網パーセントを示す階調データDhに対して、シェーディング補正が実行される。そして、こうしてシェーディング補正が実行された階調データDhに対して、第1変換テーブルTd1と第2変換テーブルTd2とを用いて網パーセントの変換が実行される。これによって、通常ノズルNnに対応する画素Pxの網パーセントに対して、周辺ノズルNaに対応する画素Pxの網パーセントを実質的に上乗せして、欠陥ノズルNdの吐出欠陥を補完できる。こうして、簡便な制御によって欠陥ノズルNdに対応することが可能となっている。
【0064】
さらに、ハーフトーン処理部97によるハーフトーン処理を実行する前の網パーセントを操作することで、欠陥ノズルNdに対応していることから、上述と同様に、より自然な画像を印刷することが可能となっている。
【0065】
また、これら以外の変形を行うこともできる。例えば、欠陥ノズルNdを示す欠陥ノズル情報Fdは、印刷装置1において取得する必要はない。例えば、工場出荷時の検査によって欠陥ノズルNdが発見された場合には、その段階で欠陥ノズル情報Fdを記憶部91に書き込んでおいてもよい。
【0066】
また、階調データDhの取得は、種々の態様で実行でき、例えば入稿データを記憶部91に読み込んで階調データDhを取得してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、吐出ヘッドのノズルからインクを吐出して画像を印刷する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…印刷装置
91…記憶部
92…レイアウト処理部(階調データ取得部)
95…欠陥ノズル補正部(データ変換部)
96…シェーディング補正部
97…ハーフトーン処理部
98…駆動制御部
Dc…欠陥補完階調データ
Dd…吐出制御データ
Dh…階調データ
H…吐出ヘッド
N…ノズル
Na…周辺ノズルNa
Na…1次隣接ノズル
Na2…2次隣接ノズル
Nd…欠陥ノズル
Nn…通常ノズル
Px…画素
Rd1…第1割合
Rd2…第2割合
Rd2_1…1次隣接割合
Rd2_2…2次隣接割合
Td1…第1変換テーブル(第1変換規則)
Td2…第2変換テーブル(第2変換規則)
Td2_1…第2変換テーブル(第2変換規則)
Td2_2…第2変換テーブル(第2変換規則)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13