(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
E02F9/20 K
(21)【出願番号】P 2020055258
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】小野 哲司
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-308136(JP,A)
【文献】特開2000-027243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベルの操縦を行う操作レバーを用いてモニタ表示画面に対する画面入力操作を行うことが可能なショベル
であって、
前記操作レバーからショベルの操縦を行うことが可能な操縦状態と前記操作レバーから前記モニタ表示画面に対する画面入力操作を行うことが可能な画面入力状態との切り替えが、前記操縦状態と前記画面入力状態の切り替え以外の用途のために操作が行われる被操作体と連動して行われるショベル。
【請求項2】
前記操作レバーからショベルの操縦を行うことが可能な操縦状態と前記操作レバーから前記モニタ表示画面に対する画面入力操作を行うことが可能な画面入力状態とを切り替える切り替えスイッチを備える請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記操作レバーは、前記画面入力状態にある場合に、ショベルの操縦が無効となる
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記操作レバーが前記操縦状態と前記画面入力状態のいずれの状態にあるかを操作者に示す報知部を備える
請求項1から3のいずれか一項に記載のショベル。
【請求項5】
前記操作レバーの操作を前記モニタ表示画面に対する画面入力操作に割り付ける設定部を備える
請求項1から4のいずれか一項に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ショベルは、制御の高度化、ICT(Information and Communication Technology)技術の導入化等が進められ、これに伴い、運転席内で画面操作や設定入力等の作業を行う必要性が増加しつつある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ショベルの運転席の限られたスペースの中では、上記画面操作や設定入力に必要となる入力装置は、搭載位置の制約を受けて、通常の運転姿勢からはアクセスしにくい場所に設置される場合があった。
また、作業用手袋をしていると入力作業が困難となる場合があった。さらに、ショベルの運転席は、粉じんなども多く、入力装置としてタッチパネルを利用すると、表面に傷が生じたり、故障や誤入力を起こす場合があった。
また、上記画面入力が円滑に行われないと、作業効率の低下を引き起こすという問題もあった。
【0005】
本発明は、各種の画面入力作業を円滑に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
ショベルの操縦を行う操作レバーを用いてモニタ表示画面に対する画面入力操作を行うショベルであって、
前記操作レバーからショベルの操縦を行うことが可能な操縦状態と前記操作レバーから前記モニタ表示画面に対する画面入力操作を行うことが可能な画面入力状態との切り替えが、前記操縦状態と前記画面入力状態の切り替え以外の用途のために操作が行われる被操作体と連動して行われるという構成を採っている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各種の画面入力作業を円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るショベルの一例を示す側面図である。
【
図2】ショベルの制御信号及び油圧の系統図である。
【
図4】ショベルのキャビン内から前方を見たときの図である。
【
図5】マシンガイダンス制御部における表示画面を示す図である。
【
図6】操作レバーに対する画面入力内容の割り付けを行うための設定画面を示す図である。
【
図7】モード切り替えを行うための入力手段である切り替えスイッチが設けられたアーム操作レバー又はブーム操作レバーの斜視図である。
【
図8】マシンガイダンス時における表示画面に対して画面入力モードで画面入力操作が行われる場合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明の実施の形態について説明する。
図1は発明の実施形態に係るショベル100を例示する側面図、
図2はショベルの制御信号及び油圧の系統図、
図3は制御系のブロック図である。
【0010】
図1に示されるように、ショベル100の下部走行体1には、旋回機構2を介して上下軸回りに旋回自在に上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられている。アーム5の先端には、アームトップピンP1及びバケットリンクピンP2によりエンドアタッチメント(作業部位)としてバケット6が取り付けられている。エンドアタッチメントとしては、法面用バケット、浚渫用バケット、ブレーカ等が取り付けられてもよい。
図1中、矢印X1方向はショベル100における前、矢印X2方向は後、矢印Z1方向は上、矢印Z2方向は下を示す。また、前方を向いた状態で左手側を左、右手側を右とする。なお、特に断りがない場合には、上部旋回体3が前方を向いた状態(基本姿勢)であること、及びショベル100が水平面上に配置されていることを前提としてショベル100の各部の配置及び向きを説明する。
【0011】
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。ブーム4、アーム5、及びバケット6には、それぞれブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3が取り付けられている。
【0012】
ブーム角度センサS1は、上部旋回体3に対するブーム4の水平軸回りの回動角度を検出する加速度センサである。
アーム角度センサS2は、ブーム4に対するアーム5の水平軸回りの回動角度を検出する加速度センサである。
バケット角度センサS3は、アーム5に対するバケット6の水平軸回りの回動角度を検出する加速度センサである。
また、ショベル100には、下部走行体1に対する上部旋回体3の旋回角度を検出する車体傾斜センサS4が搭載されている。車体傾斜センサS4は、加速度センサからなる。
なお、各センサS1~S4は、ポテンショメータ、エンコーダ、油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ等、各回動角度を検出可能なあらゆる他のセンサを利用可能である。
【0013】
エンジン11は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15に接続され、エンジンコントローラ(ECU)74により制御される。ECU74からは、エンジン11の状態を示す各種のデータ(例えば、図示しない水温センサで検出される冷却水温等)がコントローラ30に常時送信される。
また、エンジン11は、ショベル100のキャビン10内に設けられたエンジン回転数調整ダイヤル75によって、回転数の調整が行われる。
【0014】
メインポンプ14は、高圧油圧ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給するための油圧ポンプである。メインポンプ14は、例えば斜板式可変容量型油圧ポンプである。
メインポンプ14のレギュレータ14aは、斜板角度を変更してポンプの出流量を調節する。また、吐出圧力センサ14bは、メインポンプ14の吐出圧力を検出する。また、作動油のタンクとメインポンプ14との間には、作動油の温度を検出する油温センサ14cが設けられている。
【0015】
パイロットポンプ15は、パイロットライン22を介して各種の油圧制御機器に作動油を供給するための油圧ポンプである。パイロットポンプ15は、例えば固定容量型油圧ポンプである。
【0016】
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、例えばブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ、及び旋回用油圧モータ等の油圧アクチュエータごとに制御弁を備え、メインポンプ14が吐出する作動油を選択的に供給する。各制御弁は、メインポンプ14から各油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、各油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。
【0017】
パイロットポンプ15とコントロールバルブ17との間には、比例弁18が設けられている。
比例弁18は、パイロットポンプ15からコントロールバルブ17の制御弁のパイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁18は、制御弁を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
なお、比例弁18は、
図2において一つのみを図示しているが、実際には、コントロールバルブ17のブームシリンダ7の制御弁とアームシリンダ8の制御弁のパイロットポートの個数に対応して四つ設けられている。
また、他の制御弁のパイロットポートに対応して比例弁18をより多く設けてもよい。
【0018】
操作装置26は、アーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bとを有する。アーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bは、操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量を操作データ(電気信号)としてコントローラ30に対して出力する、いわゆる電気式の操作レバーである。
【0019】
ブーム操作レバー26Bは、前後左右に傾倒操作することができ、左右の傾倒操作により、ブーム4の上げ下げを入力し、前後の傾倒操作によりバケット6の開閉動作を入力する。
ブーム操作レバー26Bは、操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量を操作データ(電気信号)としてコントローラ30に対して出力する。
ブーム上げ方向にブーム操作レバー26Bが操作された場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Bの操作量に応じて、コントロールバルブ17のブームシリンダ7用の制御弁のブーム上げ方向のパイロットポートに接続された比例弁18の開度を制御する。
これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、ブーム操作レバー26Bの操作量に応じたパイロット圧を制御弁のブーム上げ方向のパイロットポートに作用させる。
また、ブーム下げ方向にブーム操作レバー26Bが操作された場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Bの操作量に応じて、コントロールバルブ17のブームシリンダ7用の制御弁のブーム下げ方向のパイロットポートに接続された比例弁18の開度を制御する。
これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、ブーム操作レバー26Bの操作量に応じたパイロット圧を制御弁のブーム上げ方向のパイロットポートに作用させる。
【0020】
アーム操作レバー26Aは、前後左右に傾倒操作することができ、左右の傾倒操作により、アーム5の開閉を入力し、前後の傾倒操作により上部旋回体3の左右の旋回動作を入力する。
アーム操作レバー26Aは、操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量を操作データ(電気信号)としてコントローラ30に対して出力する。
アーム開き方向にアーム操作レバー26Aが操作された場合、コントローラ30は、アーム操作レバー26Aの操作量に応じて、コントロールバルブ17のアームシリンダ8用の制御弁のアーム開き方向のパイロットポートに接続された比例弁18の開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、アーム操作レバー26Aの操作量に応じたパイロット圧を制御弁のアーム開き方向のパイロットポートに作用させる。
また、アーム閉じ方向にアーム操作レバー26Aが操作された場合、コントローラ30は、アーム操作レバー26Aの操作量に応じて、コントロールバルブ17のアームシリンダ8用の制御弁のアーム閉じ方向のパイロットポートに接続された比例弁の開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、アーム操作レバー26Aの操作量に応じたパイロット圧を制御弁のアーム閉じ方向のパイロットポートに作用させる。
【0021】
なお、コントローラ30は、原則として、操作者によるアーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bに対する操作に応じて、アーム5とブーム4の動作を制御するが、例えば、自動動作制御やアシスト動作制御が導入された場合には、アーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bに対する操作以外の動作が行われるように、アーム5とブーム4の動作を制御することができる。
【0022】
ショベル100は、GPS装置(GNSS受信機)G1を備える。GPS装置G1は、ショベル100の位置をGPS機能により検出し、世界座標系の位置データを取得する。また、上部旋回体3に設けられた運転室としてのキャビン10内には、コントローラ30、表示装置40、音声出力装置43、入力装置45、記憶装置47、及びゲートロックレバー49が設けられている。
【0023】
コントローラ30は、コントロールバルブ17、比例弁18、音声出力装置43、表示装置40、エンジンコントローラ74を制御して、ショベル100の統括的な制御を行う主制御部として機能する。コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成されている。コントローラ30の各種の機能は、CPUが内部メモリに格納されているプログラムを実行することで実現される。
【0024】
表示装置40は、コントローラ30からの指令に応じて各種の作業情報を含む画像を表示する車載液晶ディスプレイである。
音声出力装置43は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種の音声情報を出力する車載スピーカである。
入力装置45は、ショベル100の操作者がコントローラ30に各種の情報を入力するための装置である。入力装置45は、例えば、表示装置40に併設された各種のスイッチである。
【0025】
記憶装置47は、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体であり、各種のデータを記憶する。
【0026】
ゲートロックレバー49は、キャビン10のドアと運転席との間に設けられ、ゲートロックレバー49を引き上げると操作者のキャビン10からの退出を阻止する配置となると共にレバー引き上げ信号をコントローラ30に入力する。また、ゲートロックレバー49を押し下げると操作者のキャビン10からの退出が可能な配置となると共にレバー押し下げ信号をコントローラ30に入力する。
コントローラ30は、レバー引き上げ信号を受信すると、操作装置26からの操作指令を受け付け可能な状態となり、レバー押し下げ信号を受信すると、操作装置26からの操作指令を受け付け不能な状態となる(後述する表示装置40のモニタ表示画面に対する画面入力を除く)。即ち、ゲートロックレバー49は、運転席から操作者が降車した場合のショベル100の誤作動を防止するための機構である。
【0027】
次に、キャビン10内の構成について
図4に基づいて説明する。
図4は、
図1のショベルのキャビン10内から前方を見たときの図である。
図4矢印Y1方向は前述したショベル100における左、矢印Y2方向は右を示す。
【0028】
図4に示すように、キャビン10内の運転席102の前方において、フロントガラスFGの下部左側に表示装置40が取り付けられている。
運転席102の近傍には、操作者による運転操作を受け付ける操作装置26が設置されている。操作装置26は、アーム操作レバー26A、ブーム操作レバー26B、左走行レバー26C、右走行レバー26D、操作ペダル26E,26F等を含む。アーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bは、運転席102の左右両脇にそれぞれ設けられており、アタッチメント(ブーム4、アーム5、バケット6)の駆動、及び上部旋回体3の旋回を操作するものである。
左走行レバー26Cと右走行レバー26Dは、運転席102の前方に、左右一対として設けられており、下部走行体1による走行を操作するものである。操作ペダル26E,26Fは、運転席102の前方の床上に、それぞれ左走行レバー26Cと右走行レバー26Dとに個別に直結して設けられており、左走行レバー26C及び右走行レバー26Dと同様、下部走行体1による走行を操作するものである。
【0029】
表示装置40は、作業情報等を含む複数種類の画像を切り替えて表示することができる。表示装置40は、コントローラ30による表示制御が行われる。
ここで、表示装置40の画像表示部41に表示される画像の一例について説明する。
図5は、表示装置40の画像表示部41に表示される画像の一例として、後述するマシンガイダンス制御部31における表示画面を示す図である。
マシンガイダンス時における表示画面は、作業情報の一例である爪先ガイダンス情報として、位置表示画像431、第1目標施工面表示画像432、第2目標施工面表示画像433、バケット左端情報画像434、バケット右端情報画像435、側面視数値情報画像436、正面視数値情報画像437、アタッチメント画像438、距離形式画像439、目標設定画像440及びモード表示画像441等を表示する。
【0030】
位置表示画像431は、目標施工面に対するバケット6の作業部位(先端)の位置をゲージで表示する。
第1目標施工面表示画像432には、側面から見たときのバケット6と目標施工面との位置関係や距離を感覚的に示したアイコンが表示される。
第2目標施工面表示画像433には、キャビン10側からの視点によるバケット6と目標施工面と作業部位とがアイコン表示される。
バケット左端情報画像434は、バケット6の先端左端と目標施工面との間の距離を表示する。
バケット右端情報画像435は、バケット6の先端右端と目標施工面との間の距離を表示する。
側面視数値情報画像436は、側面から見たときの目標施工面に対するバケット6の角度(縦バケット角度)を表示する。
正面視数値情報画像437は、キャビン10側からの視点による目標施工面に対するバケット6の角度(横バケット角度)を表示する。
アタッチメント画像438は、装着されているアタッチメント種別をアイコン表示する。アタッチメントは、バケット6、削岩機、グラップル、リフティングマグネット等の種類がある。
距離形式画像439は、バケット左端情報画像434に表示される左端距離と右端距離とが鉛直距離表示形式か法線距離表示形式かを示す。
目標設定画像440は、目標値や目標施工面を設定済みか否か、を表す画像である。
モード表示画像441は、後述するコントローラ30の操作レバー用途切り替え処理部32において、現在選択されているモードを表示する。
【0031】
入力装置45は、表示装置40に併設されている。入力装置45は、例えば、バケット6の寸法等を設定する寸法設定画面へ切り替えるための寸法設定画面切り替えスイッチ、ブザー音の周波数(高低)、音量等を設定するブザー設定画面へ切り替えるためのブザー設定画面切り替えスイッチ、その他の画面切替スイッチ等を含む。なお、入力装置45は、表示装置40に設けられたタッチパネルで構成しても良いし、スイッチとタッチパネル両方を備える構成としても良い。
【0032】
次に、ショベル100のコントローラ30が備えるマシンガイダンス制御部31、操作レバー用途切り替え処理部32、報知部33及び設定部34について説明する。なお、これらマシンガイダンス制御部31、操作レバー用途切り替え処理部32、報知部33及び設定部34は、コントローラ30がプログラムを実行することで実現する機能モジュールである。但し、マシンガイダンス制御部31、操作レバー用途切り替え処理部32、報知部33及び設定部34は、機能モジュールに限定されず、これらの一部又は全部について、個々にハードウェア回路で実現させても良い。
【0033】
まず、マシンガイダンス制御部31によって行われるマシンガイダンスについて説明する。マシンガイダンスの実行時において、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、車体傾斜センサS4、GPS装置G1、入力装置45等から、コントローラ30に各種の信号及びデータが供給される。
【0034】
前述した記憶装置47には、原則として、作業が行われる目標施工面のデータが予め用意されている。この目標施工面のデータは、世界座標系で位置が目標施工面の位置及び向きが記録されており、操作者が入力装置45により設定しても良いし、外部で作成された目標施工面のデータを記憶装置47に入力しても良い。
【0035】
コントローラ30は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3及び車体傾斜センサS4の検出信号からバケット6の先端位置及び向きを算出する。このとき、コントローラ30は、GPS装置G1によりショベル100の世界座標系の位置を取得し、これに基づいてバケット6の先端位置も世界座標系に基づく位置を算出する。
そして、算出されたバケット6の先端位置及び向きをと、目標施工面のデータと比較して、バケット6の高さや目標施工面の傾斜角度等を、作業情報として表示装置40に表示させる。
【0036】
次に、操作レバー用途切り替え処理部32について説明する。
操作装置26のアーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bは、前述したように、それぞれアーム5の開閉及び上部旋回体3の旋回と、ブーム4の上げ下及びバケット6の開閉の操作を入力することができる。
操作レバー用途切り替え処理部32は、これらアーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bに対する入力操作を、上記ショベル100のエンドアタッチメントに対する操縦を行うための操縦モードと、表示装置40のモニタ表示画面に対する画面入力操作を行う画面入力モードとに切り替える処理を行う。
【0037】
つまり、操縦モードの際には、コントローラ30は、アーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bに対して操作が行われると、各レバー26A,26Bの操作方向に応じて、対応するショベル100の各部の動作を行うように動作制御を実行する。
また、画面入力モードの際には、コントローラ30は、アーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bに対して操作が行われると、各レバー26A,26Bの操作方向に応じて、各レバー26A,26Bの操作方向に個々に定められたモニタ表示画面に対する画面入力操作を行うように処理を実行する。
【0038】
なお、各レバー26A,26Bの操縦モードと画面入力モードの切り替えは、択一的に行われる。つまり、操縦モードが選択されている場合には、各レバー26A,26Bからはショベル100の操縦の入力のみが可能となり、モニタ表示画面に対する画面入力操作は無効とされる。また、画面入力モードが選択されている場合には、各レバー26A,26Bからはモニタ表示画面に対する画面入力操作のみが可能となり、ショベル100の操縦の入力は無効とされる。
【0039】
また、各レバー26A,26Bの操縦モードと画面入力モードの切り替えが行われると、報知部33によって、表示装置40のモニタ表示画面中に、各レバー26A,26Bが操縦状態(操縦モード)と画面入力状態(画面入力モード)のいずれの状態にあるかを操作者に示す表示制御が行われる。即ち、前述した
図5の表示装置40の画像表示部41に表示される画像中のモード表示画像441がこれに該当する。
【0040】
操縦モードにおけるアーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bによる入力の内容は既に説明済みなので、画面入力モードにおけるアーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bによる画面入力の内容の一例について説明する。
画面入力モードにおけるアーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bによる画面入力内容は、各レバー26A,26Bの操作方向ごとに個別に割り付けることが可能である。
【0041】
図6は、設定部34によって実行される割り付け処理において、表示装置40が表示する、画面入力モードにおけるアーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bの各操作方向に対する画面入力内容の割り付けを行うための設定画面の表示例である。
上記設定画面において、「左レバー」はアーム操作レバー26Aに対する割り付けであり、「右レバー」はブーム操作レバー26Bに対する割り付けである。
各レバー26A,26Bの前後左右のそれぞれの方向への傾倒操作について、個別に画面入力内容を割り付けることが可能である。設定画面に対する割り付けの設定作業は、表示装置40を見ながら入力装置45の各スイッチを使用して行っても良いし、表示装置40がタッチパネルを備える構成の場合には、画面に対するタッチ操作で行っても良い。また、既に、各レバー26A,26Bの割り付けが完了している場合には、各レバー26A,26Bを使用して、新たな割り付けを行っても良い。
【0042】
上記設定画面では、各レバーの前後左右のそれぞれの方向について、設定内容を入力する入力枠Wが表示されているので、任意の入力枠Wを選択すると、例えば、割り付け可能な画面入力内容の複数の選択候補がポップアップ画面で表示され、複数の選択候補の中から割り付けたい画面入力内容を選択すると、入力枠W内に選択された画面入力内容が表示される。
図6では、アーム操作レバー26Aの前後左右の操作方向に対して、「カーソル上移動」、「カーソル下移動」、「カーソル左移動」、「カーソル右移動」の各画面入力内容が割り付けられ、ブーム操作レバー26Bの前後左右の操作方向に対して、「入力の決定」、「入力のやり直し」、「ページ上移動(又は、直前の画面への切り替え)」、「ページ下移動(又は、次の画面への切り替え)」の各画面入力内容が割り付けられた例を示している。なお、画面入力内容は、一例であって、これらに限定されない。
また、設定画面内には、「Enter」ボタンが表示されており、これを選択すると、画面入力モードにおける各レバーの前後左右の操作方向に対する画面入力内容が決定され、画面入力モード時に決定された割り付けが反映される。
また、コントローラ30は、「Enter」ボタンにより、画面入力モードにおける各レバーの前後左右の操作方向に対する画面入力内容の割り付けが確定すると、その内容を記憶装置47に記録する。
【0043】
また、各レバー26A,26Bの各操作方向に対する画面入力内容の割り付けの際には、各操作方向における操作量を考慮した設定を行っても良い。例えば、「カーソル上移動」、「カーソル下移動」、「カーソル左移動」、「カーソル右移動」、「ページ上移動」、「ページ下移動」等のように移動を伴う画面入力内容については、操作量に応じてカーソル等の移動速度を変更する設定の要否を選択設定可能としても良い。
また、「入力の決定」、「入力のやり直し」等のように、決定に関する画面入力内容の場合には、誤った決定が行われないように、ダブルクリック等のように意図的に行う操作を必要とする設定の要否を選択設定可能としても良い。
【0044】
操作レバー用途切り替え処理部32によるモード切替は、例えば、切り替え入力手段を通じて操作者から要求があった場合に実行される。操作レバー用途切り替え処理部32による操縦モードと画面入力モードとの切り替えを行う切り替え入力手段は、キャビン10の運転席にいる操作者の手の届く範囲に設けることが好ましい。
図7は、モード切り替えを行うための切り替え入力手段として切り替えスイッチ261をブラケット262を介してアーム操作レバー26A又はブーム操作レバー26Bに設けた例を示す斜視図である。
アーム操作レバー26A又はブーム操作レバー26Bに対する切り替えスイッチ261の取り付け位置は、
図6のように、アーム操作レバー26A又はブーム操作レバー26Bによる操縦又は画面入力の操作を行う場合に、誤って触れてしまわない位置とすることが好ましい。例えば、アーム操作レバー26A又はブーム操作レバー26Bは、操作を行う場合には、上端部が握られるので、握り位置を避けて、上端部よりも幾分下方に切り替えスイッチ261を設けるとよい。
【0045】
なお、上記切り替えスイッチ261は、押下されると、操縦モードから画面入力モード又は画面入力モードから操縦モードへと、現在のモードから他のモードへの切り替え画行われるが、操縦モードから画面入力モードへの切り替えを行うための切り替えスイッチと、画面入力モードから操縦モードへの切り替えを行うための切り替えスイッチとを個別に用意しても良い。
また、モード切り替えを行うための切り替え入力手段は、切り替えスイッチ以外の形態(例えば、フットスイッチ等)でもよい。また、設置場所も操作者がアクセス可能な範囲で変更可能である。
【0046】
また、操作レバー用途切り替え処理部32は、モード切り替えを、モード切り替え以外の用途のために操作が行われる被操作体と連動して実行する場合もある。
被操作体は、例えば、ショベル100の操縦中と被操縦中途で状態が変化するものが好ましい。例えば、操作レバー用途切り替え処理部32は、前述したゲートロックレバー49と連動してモード切り替えを実行する。
即ち、コントローラ30は、ゲートロックレバー49の引き上げによりレバー引き上げ信号を受信すると、各レバー26A,26Bを操縦モードに切り替え、ゲートロックレバー49の押し下げによりレバー押し下げ信号を受信すると、各レバー26A,26Bを画面入力モードに切り替える。
ゲートロックレバー49の引き上げ状態は、ショベル100の操縦中又は操縦予定である可能性が高いので、各レバー26A,26Bを操縦モードに切り替えることが適切である。また、ゲートロックレバー49の押し下げ状態は、ショベル100の非操縦中又は操縦終了後である可能性が高いので、各レバー26A,26Bを画面入力モードに切り替えることが適切である。
【0047】
なお、被操作体は、ゲートロックレバー49に限らず、キャビン10のドアや開閉可能な窓、シートベルト等を被操作体としても良い。
キャビン10のドアや窓を利用する場合、これらの開閉状態を検出するセンサを設け、検出結果をコントローラ30に通知する。同様に、シートベルトを利用する場合には、シートベルトの装着と解除を検出するセンサを設け、検出結果をコントローラ30に通知する。
ドアや窓の閉状態やシートベルトの装着状態が検出された場合には、ショベル100の操縦中又は操縦予定である可能性が高いので、各レバー26A,26Bを操縦モードに切り替えることが適切である。
ドアや窓の開状態やシートベルトの解除状態が検出された場合には、ショベル100の非操縦中又は操縦終了後である可能性が高いので、各レバー26A,26Bを入力モードに切り替えることが適切である。
【0048】
アーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bの画面入力モードの操作を
図8に基づいて説明する。
図8は、前述したマシンガイダンス時における表示画面に対して画面入力モードで画面入力操作が行われる場合を示す説明図である。ここでは、アーム操作レバー26Aとブーム操作レバー26Bは、前述した
図6の設定画面が示す割り付けが行われていることを前提とする。
【0049】
前述したマシンガイダンス制御部31における表示画面は、位置表示画像431、第1目標施工面表示画像432、第2目標施工面表示画像433、バケット左端情報画像434、バケット右端情報画像435、側面視数値情報画像436、正面視数値情報画像437、アタッチメント画像438、距離形式画像439、目標設定画像440及びモード表示画像441等を表示するが、これらの各画像431~441の一部又は全部は、個々に詳細設定を行うことが可能である。
【0050】
画面入力モードが選択されると、表示画面のモード表示画像441は、操縦モードを示す表示(
図5参照)から画面入力モードを示す表示に切り替えが行われる。
そして、各画像431~441のいずれかが選択されている状態であることを示すカーソルCが表示される。例えば、カーソルCが、選択されているいずれかの画像431~441(
図8では第1目標施工面表示画像432が選択されている場合を例示)の外枠が太線表示となる場合を例示するが、他の表示でも良い。例えば、選択されている画面の枠内の色彩を他の画面と異なる色彩に変更しても良い。
【0051】
図8の状態において、例えば、アーム操作レバー26Aの右への傾倒操作が検出されると、操作レバー用途切り替え処理部32は、矢印に示すように、第1目標施工面表示画像432の選択状態から右隣の第2目標施工面表示画像433の選択状態へ切り替えを行い、カーソルCを第2目標施工面表示画像433に移動させる表示制御を実行する。また、アーム操作レバー26Aの他の方向への傾倒動作が検出された場合には、対応する方向にある他の画像の選択状態への切り替え及びカーソルCの移動を行う。
また、ブーム操作レバー26Bにおける左右いずれかの傾倒操作が検出されると、操作レバー用途切り替え処理部32は、マシンガイダンス時における表示画面から他の表示画面に変更する表示制御を実行する。
また、ブーム操作レバー26Bにおける前後いずれかの傾倒操作が検出されると、現在選択されているいずれかの画像431~441の選択が決定状態又は決定の解除状態となる。そして、選択が決定された場合には、当該選択されたいずれかの画像431~441の詳細設定を行う画面への切り替えを行う表示制御が行われる。
【0052】
このようにして、操作レバー用途切り替え処理部32により画面入力モードへの切り替えの際には、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bを用いて表示装置40のモニタ表示画面に対する画面入力操作を行うことが可能である。
【0053】
以上のように、ショベル100は、操作レバー用途切り替え処理部32によって、アーム操作レバー26A又はブーム操作レバー26Bを用いてモニタ表示画面に対する画面入力操作を行うことができるので、キャビン10内の運転席102にいる操作者から、容易にモニタ表示画面に対する画面入力操作を行うことが可能となる。
これにより、例えば、操縦から画面入力作業への移行や画面入力作業から操縦の移行を速やかに行うことができる。
【0054】
また、操作入力や画面入力を円滑に行うことができるので、作業効率の向上を図ることが可能となる。
この場合、モニタ表示画面に対する画面入力操作をアーム操作レバー26A又はブーム操作レバー26Bによって行うことができるので、画面入力操作を行うための専用のタッチパネルや入力手段を省略することも可能となる。
【0055】
また、表示装置40がタッチパネルを備える構成である場合であっても、タッチ操作を不要とし、傷や汚れの発生を低減することが可能となる。
また、表示装置40がタッチパネルを備える構成であるか否かに拘わらず、操作者が作業用手袋をしている場合に、容易にモニタ表示画面に対する画面入力操作を行うことが可能となる。
【0056】
また、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bは、油圧信号によって操作を入力するレバーではなく、コントローラ30に対して電気信号により操作信号を入力する電気式レバーによって構成されている。このため、操作レバー用途切り替え処理部32による画面入力モードへの切り替えを、ハードウェアの追加等を必要とせず、ソフトウェアの処理によって容易に実現することが可能である。
【0057】
また、ショベル100は、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bの操縦モードと画面入力モードの切り替えを行う切り替えスイッチ261を備えているので、当該切り替えスイッチ261の入力操作により、極めて容易にモード切り替えを行うことが可能である。
【0058】
また、ショベル100が、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bのモード切り替えを、操縦状態と画面入力状態の切り替え以外の用途のために操作が行われる被操作体と連動して行う構成とした場合には、モード切り替えを意識的に行うことなく自動的に行うことができるので、さらに容易にモード切り替えを行うことが可能となる。
【0059】
また、操作レバー用途切り替え処理部32は、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bを画面入力モードとした場合に、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bからの画面入力に対して、ショベル100の操縦が無効となるように制御している。
このため、モニタ表示画面に対する画面入力操作を行っている際には、ショベル100の意図しない動作が規制されて動作の適正化を図ると共に、操作者は、画面入力操作による作業に専念することが可能となる。
【0060】
また、報知部33が、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bが操縦モードと画面入力モードのいずれの状態にあるかを操作者に示す表示を表示装置40により行うので、操作者は、現在、選択されているモードが操縦モードと画面入力モードのいずれであるかを容易に認識することができ、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bによる誤操作を低減し、適正な操作を行うことが可能となる。
【0061】
また、設定部34により、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bの個々の操作をモニタ表示画面に対する個々の画面入力操作に割り付けることができるので、操作者が快適に画面入力操作を行うことが可能な割り付けを実現することが可能である。
【0062】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態及び変形例に限られない。
例えば、上記実施形態では、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bによってモニタ表示画面に対する画面入力操作を行う場合を例示したが、これら以外の操作レバー(例えば、左走行レバー26C、右走行レバー26D等)によってモニタ表示画面に対する画面入力操作を行う構成としても良い。
【0063】
また、設定部34によるアーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bの画面入力内容の割り付け画面を表示装置40の表示画面で行う場合を例示したが、これに限定されない。
例えば、スマートホンやタブレット端末のような携帯通信端末にアプリケーションなどによって設定部34としての機能を持たせてもよい。その場合、ショベル100に情報通信可能な無線通信装置を設け、携帯通信端末によって設定されたアーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bの画面入力内容の割り付けデータを無線通信で受信する。このような構成の場合も、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bの画面入力内容の割り付けを適正に実現することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
10 キャビン
26 操作装置
26A アーム操作レバー
26B ブーム操作レバー
26C 左走行レバー
26D 右走行レバー
26E,26F 操作ペダル
30 コントローラ
31 マシンガイダンス制御部
32 操作レバー用途切り替え処理部
33 報知部
34 設定部
40 表示装置
49 ゲートロックレバー(被操作体)
100 ショベル
102 運転席
261 切り替えスイッチ
C カーソル