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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/60 20210101AFI20231110BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20231110BHJP
   B22F 5/10 20060101ALI20231110BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231110BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B22F10/60
B22F3/105
B22F5/10
B33Y10/00
B22F3/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020061730
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161460
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】妻鹿 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】谷川 秀次
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 剛久
(72)【発明者】
【氏名】月元 晃司
(72)【発明者】
【氏名】小室 裕貴
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110142408(CN,A)
【文献】特開2019-137907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0360292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
C22C 1/04- 1/059
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末を積層して、中空の内部空間に連通している開口部を有する造形物を形成するステップと、
前記開口部にプラグを装着するステップと、
前記開口部に装着した前記プラグを前記造形物に溶接するステップと、
を備え
前記造形物を形成するステップは、前記内部空間に面した前記造形物の内表面から前記造形物の外表面に向かって離れて位置する底面を有する凹部と、前記底面よりも寸法が小さく前記底面に設けられた前記開口部であって前記造形物を前記底面から前記内表面まで貫通する前記開口部と、を有するように前記造形物を形成する
造形物の製造方法。
【請求項2】
前記プラグを前記造形物に溶接するステップの後で、前記凹部を充填物で埋めるステップ
をさらに備える
請求項に記載の造形物の製造方法。
【請求項3】
前記造形物を形成するステップの後で、前記内部空間に残留する前記金属粉末を前記開口部から前記造形物の外部に排出するステップ
をさらに備える
請求項1又は2に記載の造形物の製造方法。
【請求項4】
前記金属粉末を積層して、前記プラグを形成するステップ
をさらに備える
請求項1乃至3の何れか一項に記載の造形物の製造方法。
【請求項5】
前記プラグを形成するステップは、前記造形物の造形条件と同条件で前記プラグを形成する
請求項に記載の造形物の製造方法。
【請求項6】
前記プラグを形成するステップは、前記造形物の形成と同時に前記プラグを形成する
請求項又はに記載の造形物の製造方法。
【請求項7】
前記造形物を形成するステップは、前記造形物の厚さ方向に沿って内側に向かうにつれて大きさが漸減するように前記開口部を形成する
請求項1乃至の何れか一項に記載の造形物の製造方法。
【請求項8】
前記造形物を形成するステップは、前記プラグの最大寸法の105%以上110%以下の最大寸法を有する前記開口部を形成する
請求項1乃至の何れか一項に記載の造形物の製造方法。
【請求項9】
前記プラグを前記造形物に溶接するステップは、前記内部空間に面した前記造形物の表面のうち前記プラグの前記造形物への溶接により熱の影響を受けた領域の平面度が0.3mm以下となるように前記プラグを前記造形物に溶接する
請求項1乃至の何れか一項に記載の造形物の製造方法。
【請求項10】
前記造形物を形成するステップは、前記造形物の内部を通過して流路入口から流路出口まで延びる流路の途中に前記開口部を備えるように前記造形物を形成する
請求項1乃至の何れか一項に記載の造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属を積層造形して三次元形状物を得る積層造形法が種々の金属製品の製造方法として利用されている。例えば、パウダーベッド法による積層造形法では、層状に敷設された金属粉末に光ビームや電子ビーム等のエネルギービームを照射することによって、溶融固化を繰り返し積層することにより三次元形状物を形成する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6405028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、パウダーベッド法による積層造形法では、造形物の形成後に、造形物の中空の内部空間に残留する金属粉末を内部空間に連通している開口部から造形物の外部に排出する。該開口部が残ったままでは造形物の使用時に不都合となるのであれば、金属粉末の排出後に該開口部を塞ぐ必要がある。
しかし、例えばTIG溶接で開口部を塞ぐ場合、閉塞部分が内部空間に面する表面の平面度を確保することは困難である。また、TIG溶接で開口部を塞ぐ場合、造形物への入熱が比較的大きくなりがちであり、熱による造形物の変形を招くおそれがある。
また、例えばLMD(Laser Metal Deposition)方式による造形方法によって、入熱量を抑制して、溶融した金属粉末を開口部を形成する壁面に吹き付ける等によって開口部を塞ぐことも考えられる。この場合、TIG溶接と比べて熱による変形の抑制が期待できるが、LMD方式による積層造形方法では、無底の開口部の閉止が難しい。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、中空の内部空間に連通している開口部の閉止を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る造形物の製造方法は、
金属粉末を積層して、中空の内部空間に連通している開口部を有する造形物を形成するステップと、
前記開口部にプラグを装着するステップと、
前記開口部に装着した前記プラグを前記造形物に溶接するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、中空の内部空間に連通している開口部を容易に閉止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の少なくとも一実施形態に係る造形物の製造方法を適用可能な装置である、三次元積層造形装置の全体構成を示す模式図である。
図2】本開示の幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法における処理手順を示すフローチャートである。
図3A】造形物を形成するステップを実施することで得られた造形物の一例についての模式的な断面図である。
図3B】残留粉末を排出するステップにおいて、内部空間内の残留粉末を粉抜き開口部から造形物の外部に排出する様子を示す図である。
図3C】プラグを装着するステップにおいて、粉抜き開口部にプラグを装着する様子を示す図である。
図3D】プラグを造形物に溶接するステップを実施した後の造形物の模式的な断面図である。
図4A】粉抜き開口部近傍を示す図である。
図4B】粉抜き開口部近傍を示す図である。
図4C】粉抜き開口部近傍を示す図である。
図4D】粉抜き開口部が存在していた領域の近傍を示す図である。
図4E】造形物を形成するステップにおける他の実施形態に関し、粉抜き開口部近傍を示す図である。
図5A】造形物を形成するステップにおけるさらに他の実施形態に関し、粉抜き開口部近傍を示す図である。
図5B】造形物を形成するステップにおけるさらに他の実施形態に関し、粉抜き開口部近傍を示す図である。
図5C】造形物を形成するステップにおけるさらに他の実施形態に関し、粉抜き開口部近傍を示す図である。
図5D】造形物を形成するステップにおけるさらに他の実施形態に関し、粉抜き開口部近傍を示す図である。
図5E】造形物を形成するステップにおけるさらに他の実施形態に関し、粉抜き開口部近傍を示す図である。
図6】造形物の一例としての、ガスタービン燃焼器の燃料ノズルの断面を模式的に示した図である。
図7】造形物の他の一例としての、産業用ガスタービンの高温部品についての模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
(三次元積層造形装置1について)
図1は、本開示の少なくとも一実施形態に係る造形物の製造方法を適用可能な装置である、三次元積層造形装置1の全体構成を示す模式図である。
三次元積層造形装置1は、層状に敷設された原料粉末である金属粉末にエネルギービームを照射して積層造形を行うことにより三次元形状の造形物15を製造するための装置であり、パウダーベッド法による積層造形を行うことができる。
図1に示す三次元積層造形装置1は、例えば、ガスタービンや蒸気タービン等のタービンの動翼や静翼、あるいは燃焼器の内筒や尾筒やノズル等の部品を形成することができる。
【0011】
図1に示す三次元積層造形装置1は、金属粉末30の貯蔵部31を備える。図1に示す三次元積層造形装置1は、貯蔵部31から供給された金属粉末30による粉末ベッド8が形成されるベースプレート2、を有する粉末ベッド形成部5を備える。図1に示す三次元積層造形装置1は、粉末ベッド8に対して光ビーム9aを照射可能な光ビーム照射ユニット9を備える。
【0012】
ベースプレート2は、造形物15が造形される土台となる。ベースプレート2は、鉛直方向に沿った中心軸を有する略筒形状のシリンダ4の内側に、駆動シリンダ2aによって昇降可能に配置されている。ベースプレート2上に形成される粉末ベッド8は、造形作業の間、各サイクルにてベースプレート2が図1の矢印aで示すように下降する毎に、上層側に粉末が敷設されることにより新たに形成される。
【0013】
尚、図1に示す三次元積層造形装置1ではエネルギービームとして光ビームを照射する場合を示すが、電子ビーム等の他の形態のエネルギービームを使用してもよい。
【0014】
図1に示す三次元積層造形装置1は、ベースプレート2上に金属粉末30を敷設して粉末ベッド8を形成するための粉末敷設ユニット10を備える。粉末敷設ユニット10は、貯蔵部31からベースプレート2の上面側に金属粉末30を供給し、その表面を平坦化することによって、ベースプレート2の上面全体に亘って略均一な厚さを有する層状の粉末ベッド8を形成する。各サイクルで形成された粉末ベッド8には、光ビーム照射ユニット9から光ビーム9aが照射されることによって選択的に固化され、次サイクルにて、粉末敷設ユニット10によって再び上層側に金属粉末30が敷設されることで、新たな粉末ベッド8が形成されることによって、層状に積み重ねられていく。
【0015】
パウダーベッド法による積層造形では、造形物15の内部に中空の内部空間17が存在する場合、造形物15の形成後に、内部空間17に金属粉末30が残留するため、残留した金属粉末(残留粉末33)を造形物15の外部に排出することが望ましい。
例えば内部空間17に連通する開口部20であって造形物15の使用時に必要とされる、後述する必要開口部21が造形物15に設けられている場合、必要開口部21から残留粉末33を排出できる。
【0016】
造形物15に必要開口部21が設けられていない場合や、必要開口部21が設けられていても必要開口部21からでは残留粉末33の排出が不十分な場合には、内部空間17に連通する開口部20であって残留粉末33を排出させるための粉抜き開口部23が必要となる。粉抜き開口部23の大きさは、例えば直径として2mm程度以上の大きさであれば残留粉末を排出できる。
しかし、粉抜き開口部23が残ったままでは造形物15の使用時に不都合となるのであれば、残留粉末33の排出後に粉抜き開口部23を塞ぐ必要がある。例えば粉抜き開口部23が連通する内部空間17が、後述するように造形物15内に形成された流体の流路であって、該流路の流路入口及び流路出口以外で該流路からの流体の漏れが許容されない場合、粉抜き開口部23は閉止しなければならない。なお、流路入口及び流路出口は、必要開口部21に該当する。
【0017】
例えば、該流路を流通する流体の圧損抑制の観点から、粉抜き開口部23を閉塞した部分(閉塞部分)において、圧損に無視できない程度の影響を与えるような凹凸が該流路に面して生じないようにすることが望ましい。すなわち、閉塞部分の内部空間17側の表面が平滑であることが望ましい場合がある。しかし、閉塞部分の内部空間17側の表面を後から加工することは困難である場合が多く、閉塞部分の内部空間17側の表面を観察することが困難である場合もある。
しかし、例えばTIG(Tungsten Inert Gas)溶接で粉抜き開口部23を塞ぐ場合、閉塞部分の内部空間17側の表面の平面度を確保することは困難である。また、TIG溶接で粉抜き開口部23を塞ぐ場合、造形物15への入熱が比較的大きくなりがちであり、熱による造形物15の変形を招くおそれがある。
【0018】
また、例えば造形物15が高温環境下で用いられる部品であれば、耐熱性の観点から粉抜き開口部23の閉塞に用いられる材料は、造形物15と同じ材料であることが望ましい。すなわち、粉抜き開口部23の閉塞に用いられる材料が造形物15と同じ材料であることが望ましい場合がある。
しかし、例えばTIG溶接で粉抜き開口部23を塞ぐ場合、閉塞に用いられるワイヤ等の溶加材の材料に限りがあるため、造形物15と同じ材料で開口部を塞ぐことができない場合がある。
【0019】
また、例えばLMD(Laser Metal Deposition)方式による造形方法によって、入熱量を抑制して、溶融した金属粉末を粉抜き開口部23を形成する壁面に吹き付ける等によって粉抜き開口部23を塞ぐことも考えられる。この場合、TIG溶接と比べて熱による変形の抑制が期待できるが、LMD方式による積層造形方法では、無底の開口部の閉止が難しい。
【0020】
そこで、本開示の幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法では、以下のようにして造形物を製造することで、上述したような不都合を解消するようにしている。以下、本開示の幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法について説明する。
【0021】
(フローチャート)
図2は、本開示の幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法における処理手順を示すフローチャートである。
幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法は、造形物を形成するステップS1と、プラグを形成するステップS3と、残留粉末を排出するステップS5と、プラグを装着するステップS7と、プラグを造形物に溶接するステップS9と、を備える。なお、幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法は、凹部を充填物で埋めるステップS11をさらに備えていてもよい。
以下、各ステップの概要について説明する。
【0022】
(造形物を形成するステップS1)
造形物を形成するステップS1は、例えば上述した三次元積層造形装置1を用いて、金属粉末30を積層して、中空の内部空間17に連通している開口部20(粉抜き開口部23)を有する造形物15を形成するステップである。
図3Aは、造形物を形成するステップS1を実施することで得られた造形物15の一例についての模式的な断面図である。図3Aでは、造形物15の造形方向(積層方向)に沿って造形物15を切断した断面を模式的に表している。なお、造形方向は、図1における図示上側に向かう方向である。
【0023】
造形物を形成するステップS1では、例えば図3Aに示すように、内部空間17と、内部空間17に連通している粉抜き開口部23とを有する造形物15を形成する。造形物を形成するステップS1を実施することで得られた造形物15の内部空間17には、残留粉末33が残留している。
【0024】
粉抜き開口部23を造形物15の外側から内側に向かって見たときの粉抜き開口部23の形状は、例えば円形であってもよく、楕円形であってもよく、矩形であってもよい。すなわち、粉抜き開口部23を造形物15の外側から内側に向かって見たときの粉抜き開口部23の形状は、特に問わない。
粉抜き開口部23を造形物15の外側から内側に向かって見たときの粉抜き開口部23の最小寸法は、残留粉末33の排出の観点から、例えば1.5mm以上であることが望ましい。
なお、本明細書において、粉抜き開口部23を造形物15の外側から内側に向かって見たときの方向、すなわち、粉抜き開口部23が内部空間17に開口する内側開口端23aと造形物15の外部に開口する外側開口端23bとが離間している方向を粉抜き開口部23に関する造形物15の厚さ方向、又は、単に造形物15の厚さ方向とも称する。
【0025】
(プラグを形成するステップS3)
プラグを形成するステップS3は、例えば上述した三次元積層造形装置1を用いて、金属粉末30を積層して、プラグ40を形成するステップである。なお、プラグ40は、後述するように粉抜き開口部23を閉止するためのプラグである。
プラグを形成するステップS3では、造形物15の造形条件と同条件でプラグ40を形成してもよい。なお、造形条件としては、例えば光ビーム9aの出力、光ビーム9aの走査速度、光ビーム9aのビーム径、金属粉末30を粉末ベッド8上に均一に敷設する際の金属粉末30の積層厚さ(ベースプレート2の下降量)等が挙げられる。
また、プラグを形成するステップS3では、造形物15の形成と同時にプラグ40を形成してもよい。すなわち、プラグを形成するステップS3では、例えば図1に示すように、造形物15が形成される粉末ベッド8と同一の粉末ベッド8内でプラグ40を形成することで、造形物15の形成と同時にプラグ40を形成してもよい。
【0026】
(残留粉末を排出するステップS5)
残留粉末を排出するステップS5は、造形物を形成するステップS1の後で、内部空間17に残留する金属粉末(残留粉末33)を開口部20(粉抜き開口部23)から造形物15の外部に排出するステップである。
図3Bは、残留粉末を排出するステップS5において、内部空間17内の残留粉末33を粉抜き開口部23から造形物15の外部に排出する様子を示す図である。図3Bに示すように、残留粉末を排出するステップS5では、内部空間17内の残留粉末33を粉抜き開口部23から造形物15の外部に排出する。
【0027】
(プラグを装着するステップS7)
プラグを装着するステップS7は、開口部20(粉抜き開口部23)にプラグ40を装着するステップである。
図3Cは、プラグを装着するステップS7において、粉抜き開口部23にプラグ40を装着する様子を示す図である。
図4Aは、粉抜き開口部23近傍を示す図であり、粉抜き開口部23にプラグ40を装着する様子を示す。
図4Bは、粉抜き開口部23近傍を示す図であり、粉抜き開口部23にプラグ40を装着した様子を示す。
プラグを装着するステップS7では、例えばプラグを形成するステップS3で形成したプラグ40を粉抜き開口部23に装着する。なお、プラグを装着するステップS7では、上述したプラグを形成するステップS3で形成したプラグ40ではなく、例えば鋳造等によって形成したプラグ40を粉抜き開口部23に装着してもよい。
【0028】
(プラグを造形物に溶接するステップS9)
プラグを造形物に溶接するステップS9は、開口部20(粉抜き開口部23)に装着したプラグ40を造形物15に溶接するステップである。
図4Cは、粉抜き開口部23近傍を示す図であり、光ビーム90等のエネルギービームによって、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接する様子を示す。
図3Dは、プラグを造形物に溶接するステップS9を実施した後の造形物15の模式的な断面図である。
図4Dは、粉抜き開口部23が存在していた領域の近傍を示す図であり、ステップS9を実施した後の造形物15の断面を模式的に示している。
【0029】
プラグを造形物に溶接するステップS9では、光ビーム90等のエネルギービームによって、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接することで、プラグ40と造形物15とを一体化する。このようにして粉抜き開口部23を閉塞した部分を閉塞部分19と称する。なお、図3D及び図4Dでは、粉抜き開口部23の内周壁に相当する位置を2点鎖線で示している。
【0030】
上述したように、幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法によれば、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接することで、中空の内部空間17に連通している粉抜き開口部23を容易に閉止できる。
すなわち、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接することで、例えばTIG溶接によって粉抜き開口部23を塞いだ場合と比べて、閉塞部分19の内部空間17側の表面(内表面)19aを平滑にすることができる。
また、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接することで、例えばTIG溶接によって粉抜き開口部23を塞いだ場合と比べて、造形物15への入熱を抑制でき、熱による造形物15の変形を抑制できる。
プラグ40の材料を造形物15と同じ材質とし、例えば光ビーム等のエネルギービームによって粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接すれば、造形物15と同じ材料で粉抜き開口部23を閉塞できる。
【0031】
上述したように、幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法によれば、残留粉末を排出するステップS5を備えるので、内部空間17に残留する残留粉末33を粉抜き開口部23から造形物15の外部に排出できる。
【0032】
上述したように、幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法によれば、プラグを形成するステップS3を備えるので、造形物15の形成に用いる金属粉末30でプラグ40を形成できる。これにより、プラグ40の材料と造形物15の材質とを同じにできる。したがって、造形物15が例えば高温環境下で用いられる部品である場合のように、粉抜き開口部23の閉塞に用いられる材料が造形物15と同じ材料であることが望ましい場合に、上述した幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法は適している。
上述したように、プラグを形成するステップS3において、造形物15の造形条件と同条件でプラグ40を形成してもよい。これにより、例えば表面粗さや寸法公差等の品質を造形物15とプラグ40とで同等に保つことができる。
【0033】
仮に、造形物を形成するステップS1において造形物15に粉抜き開口部23を形成しない場合、造形物15の形成後に造形物15に粉抜き開口部23を形成する必要がある。その場合に、造形物15が耐熱合金等の高強度部材である場合には、一般的な切削加工では造形物15に粉抜き開口部23を形成することが困難である。そのため、造形物15が耐熱合金等の高強度部材である場合には、例えば放電加工によって造形物15に粉抜き開口部23を形成することとなる。
しかし、放電加工では、加工用の電極が摩耗するため、加工時における電極の位置を適宜修正する必要がある。そのため、放電加工によって造形物15に粉抜き開口部23を形成する場合、放電加工の実施時期によって粉抜き開口部23の寸法が僅かに異なることが考えられる。したがって、粉抜き開口部23にプラグ40が装着できないことや、粉抜き開口部23とプラグ40との隙間が大きすぎて粉抜き開口部23にプラグ40を保持し難くなってプラグ40が脱落し易くなるなどの不都合が生じるおそれがある。
【0034】
なお、積層造形によって造形物15とプラグ40とを形成する場合であっても、例えば光ビームの焦点が時間の経過とともにずれるおそれがあり、造形物15とプラグ40との形成タイミングが、例えば週単位や月単位で異なると、粉抜き開口部23の寸法精度とプラグ40の寸法精度とが同等に保たれないおそれもある。
【0035】
幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法によれば、プラグを形成するステップS3において、造形物15の形成と同時にプラグ40を形成することで、すなわち、造形物15が形成される粉末ベッド8と同一の粉末ベッド8内でプラグ40を形成することで、例えば表面粗さや寸法公差等の品質を造形物15とプラグ40とで同等に保つことができる。したがって、粉抜き開口部23の寸法精度とプラグ40の寸法精度とを同等にできる。これにより、粉抜き開口部23やプラグ40を形成後に寸法の調整のための加工等を行わなくても、粉抜き開口部23の寸法精度とプラグ40の寸法精度とが同等でないことに起因して粉抜き開口部23にプラグ40が装着できないことや、粉抜き開口部23とプラグ40との隙間が大きすぎて粉抜き開口部23にプラグ40を保持し難くなってプラグ40が脱落し易くなるなどの不都合が生じ難くなる。
なお、粉抜き開口部23の寸法及び公差と、プラグ40の寸法及び公差は、設計要求値や材料、嵌合方法(後述するテーパの有無等)、三次元積層造形装置1の加工精度等を勘案して事業者が適宜決定する必要があるが、一旦適切な値に設定できれば、その後、各値を設定し直す必要性は比較的低い。
【0036】
(造形物を形成するステップS1における他の実施形態について)
図4Eは、造形物を形成するステップS1における他の実施形態に関し、粉抜き開口部23近傍を示す図である。図4Eは、図4Aに相当する図である。
造形物を形成するステップS1では、図4Eに示すように、造形物15の厚さ方向に沿って内側に向かうにつれて大きさが漸減するように開口部20(粉抜き開口部23)を形成するようにしてもよい。すなわち、粉抜き開口部23は、造形物15の厚さ方向に沿った断面形状がいわゆるテーパ形状であってもよい。
造形物15の厚さ方向に沿った粉抜き開口部23の断面形状がテーパ形状となる場合、プラグ40も同様に断面形状がテーパ形状であるとよい。
【0037】
これにより、造形物15の厚さ方向の位置に関わらず粉抜き開口部23の大きさが変わらない場合と比べて、粉抜き開口部23やプラグ40の寸法精度が低下しても、粉抜き開口部23にプラグ40を装着する際の支障が生じ難くなる。
【0038】
(造形物を形成するステップS1におけるさらに他の実施形態について)
図5A乃至図5Eは、造形物を形成するステップS1におけるさらに他の実施形態に関し、粉抜き開口部23近傍を示す図である。
造形物を形成するステップS1では、凹部25と、凹部25の底面25aよりも寸法が小さく底面25aに設けられた開口部20(粉抜き開口部23)と、を有するように造形物15を形成してもよい。
【0039】
発明者らが鋭意検討した結果、粉抜き開口部23近傍の造形物15の肉厚が比較的厚い場合に、凹部25を設けずに粉抜き開口部23を設けた場合、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接しようとすると、造形物15のうちプラグ40を取り囲む周囲の部分の熱容量がプラグ40の熱容量に対して大きくなり過ぎる。そのため、溶接時にプラグ40を取り囲む周囲の部分が溶融する前にプラグの温度が上がり過ぎてプラグが溶け落ちてしまうおそれがあることが判明した。
上述したように、造形物15に凹部25を設け、この凹部25の底面25aに粉抜き開口部23を形成することで、凹部25を設けていない場合と比べて、造形物15のうちプラグ40を取り囲む周囲の部分の熱容量を小さくすることができる。これにより、粉抜き開口部23近傍の造形物15の肉厚が比較的厚い場合であっても、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接できる。
【0040】
上述したように凹部25を形成した場合における、造形物の製造方法の各ステップについて説明する。
【0041】
造形物を形成するステップS1では、例えば図5Aに示すように、凹部25と、底面25aに設けられた粉抜き開口部23と、を有するように造形物15を形成する。なお、造形物を形成するステップS1では、凹部25を造形物15の外側から内側に向かって見たときの粉抜き開口部23の寸法が底面25aの寸法よりも小さくなるように粉抜き開口部23を形成する。
【0042】
プラグを形成するステップS3では、上述した実施形態と同様に、造形物15の造形条件と同条件でプラグ40を形成してもよい。また、プラグを形成するステップS3では、上述した実施形態と同様に、造形物15が形成される粉末ベッド8と同一の粉末ベッド8内でプラグ40を形成することで、造形物15の形成と同時にプラグ40を形成してもよい。
【0043】
残留粉末を排出するステップS5では、上述した実施形態と同様に、内部空間17内の残留粉末33を粉抜き開口部23から造形物15の外部に排出する。
【0044】
プラグを装着するステップS7では、図5Bに示すように、例えばプラグ40を形成するステップS3で形成したプラグ40を粉抜き開口部23に装着する。なお、プラグを装着するステップS7では、上述したプラグを形成するステップS3で形成したプラグ40ではなく、例えば鋳造等によって形成したプラグ40を粉抜き開口部23に装着してもよい。
【0045】
プラグを造形物に溶接するステップS9では、図5Cに示すように、光ビーム90等のエネルギービームによって、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接することで、図5Dに示すように、プラグ40と造形物15とを一体化する。なお、図5Dでは、粉抜き開口部23の内周壁に相当する位置を2点鎖線で示している。
【0046】
凹部25を形成した場合、プラグを造形物に溶接するステップS9の実施後には、図5Dに示すように造形物15には凹部25が残った状態となる。
そこで、凹部25を形成した場合、幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法は、プラグを造形物に溶接するステップS9の後で、凹部を充填物で埋めるステップS11をさらに備えるとよい。
【0047】
凹部を充填物で埋めるステップS11では、例えば図5Eに示すように、凹部25を充填物45で充填する。凹部を充填物で埋めるステップS11では、プラグを造形物に溶接するステップS9において既に粉抜き開口部23が閉止されているので、底面25aに開口部20が存在しない状態となっている。したがって、凹部を充填物で埋めるステップS11では、例えばTIG溶接によって凹部25を充填物45で充填してもよく、例えばLMD方式による造形方法によって凹部25を充填物45で充填してもよい。
これにより、凹部25を充填物45で埋めて造形物15の表面(外表面)15bを平滑にすることができる。
なお、充填物45の材料は、造形物15と同じ材料であるとよいが、造形物15とは異なる材料であってもよい。
【0048】
(粉抜き開口部23の寸法とプラグ40の寸法との関係について)
幾つかの実施形態において、粉抜き開口部23の最大寸法は、プラグ40の最大寸法の105%以上110%以下であるとよい。より具体的には、粉抜き開口部23に関する造形物15の厚さ方向から見たときの粉抜き開口部23の最大寸法は、該厚さ方向から見たときのプラグ40の最大寸法の105%以上110%以下であるとよい。
例えば、粉抜き開口部23に関する造形物15の厚さ方向から見たときの粉抜き開口部23の形状が円形であれば、粉抜き開口部23の直径は、プラグ40の直径の105%以上110%以下であるとよい。
例えば、粉抜き開口部23に関する造形物15の厚さ方向から見たときの粉抜き開口部23の形状が楕円形であれば、粉抜き開口部23の長軸の長さは、プラグ40の長軸の長さの105%以上110%以下であるとよい。
例えば、粉抜き開口部23に関する造形物15の厚さ方向から見たときの粉抜き開口部23の形状が矩形であれば、粉抜き開口部23の対角線の長さは、プラグ40の対角線の長さの105%以上110%以下であるとよい。
【0049】
すなわち、幾つかの実施形態において、造形物を形成するステップS1では、プラグ40の最大寸法の105%以上110%以下の最大寸法を有する開口部20(粉抜き開口部23)を形成してもよい。
これにより、粉抜き開口部23とプラグ40との隙間が大きくなり過ぎないようにしつつ、粉抜き開口部23にプラグ40を容易に挿入し易くすることができる。
【0050】
幾つかの実施形態において、粉抜き開口部23に関する造形物15の厚さ方向に沿った粉抜き開口部23の寸法は、該厚さ方向に沿ったプラグ40の寸法と実質的に同じであるとよい。これにより、内側開口端23a及び外側開口端23bにおけるプラグ40との寸法の差を実質的になくすことができる。なお、プラグを造形物に溶接するステップS9の実施後に造形物15の外表面15bにおいて、閉塞部分19が閉塞部分19の周囲の部分よりも凹んでいる場合には、閉塞部分19の外側の表面(外表面)19bに肉を盛って、閉塞部分19の周囲の部分の高さと合わせるようにしてもよい。
【0051】
幾つかの実施形態において、プラグを造形物に溶接するステップS9では、内部空間17に面した造形物15の表面である造形物15の内表面15a及び閉塞部分19の内表面19aのうちプラグ40の造形物15への溶接により熱の影響を受けた領域(熱影響領域)18(図4D及び図5E参照)の平面度が0.3mm以下となるようにプラグ40を造形物15に溶接するとよい。
これにより、熱影響領域18を平滑にすることができる。
特に、内部空間17が造形物15内に形成された流体の流路であれば、熱影響領域18を平滑にすることで、流路を流通する流体の圧損を抑制できる。
なお、上記の平面度は、例えばJIS B 0621で規定する平面度である。
【0052】
(造形物15の例について)
図6は、造形物15の一例としての、ガスタービン燃焼器の燃料ノズル70の断面を模式的に示した図である。燃料ノズル70は、円筒形状を有するノズル本体71を有する。ノズル本体71の先端側(図示上側)には、燃料を噴射するための噴射孔72が少なくとも1つ設けられている。
図6に示す例では、ノズル本体71は、中空構造を有し、内部空間71aが閉じられた空間とされる。そのため、図6に示す燃料ノズル70を図1に示すような三次元積層造形装置1を用いて形成すると、内部空間71aに残留粉末33が残留してしまう。
そこで、図6に示す例では、ノズル本体71の例えば基端側(図示下側)に粉抜き開口部23を設ける。これにより、粉抜き開口部23から内部空間71a内の残留粉末33を外部に排出することができる。
なお、上述した幾つかの実施形態と同様に、残留粉末33の排出後、粉抜き開口部23にプラグ40を装着して、プラグ40をノズル本体71に溶接すればよい。
【0053】
図7は、造形物15の他の一例としての、産業用ガスタービンの動翼や静翼、あるいは燃焼器の内筒や尾筒、分割環などの高温部品80についての模式的な断面図である。
図7に示す例では、高温部品80は、高温部品80の冷却のために内部に冷却媒体CAを流通させるための冷却流路81が形成されている。すなわち、図7に示す例では、冷却流路81は、上述した造形物15の内部空間17に該当する。
図7に示す例では、冷却流路81は、外部からの冷却媒体CAを冷却流路81に流入させるための流路入口81aと、冷却流路81を流通した冷却媒体CAを外部に排出するための流路出口81bとを有する。
【0054】
例えば図7に示す高温部品80では、冷却流路81は、蛇行流路として形成されている。例えば図7に示す高温部品80では、冷却流路81のうち、冷却流路81の中間部分81dは、流路入口81a及び流路出口81bの双方から遠く、流路入口81a及び流路出口81bとの間に冷却流路81の屈曲部81cが存在する。そのため、中間部分81dにおける残留粉末33が流路入口81aや流路出口81bから排出させることが難しい。
そこで、図7に示す例では、中間部分81dの近傍であって高温部品80の外表面80bに比較的近い位置に粉抜き開口部23を設ける。
すなわち、例えば図7に示す高温部品80を製造する場合、造形物を形成するステップS1では、造形物である高温部品80の内部を通過して流路入口81aから流路出口81bまで延びる流路である冷却流路81の途中に開口部20(粉抜き開口部23)を備えるように高温部品80を形成するとよい。
これにより、粉抜き開口部23から冷却流路81内の残留粉末33を外部に排出することができる。
なお、上述した幾つかの実施形態と同様に、残留粉末33の排出後、粉抜き開口部23にプラグ40を装着して、プラグ40を高温部品80に溶接すればよい。
これにより、流路入口81a及び流路出口81b以外で冷却流路81からの冷却媒体CAの漏れが許容されない場合であっても、粉抜き開口部23を閉止できるので、流路入口81a及び流路出口81b以外で冷却流路81からの冷却媒体CAの漏れを防止できる。
【0055】
(実施例1)
上述した幾つかの実施形態に係る造形物の製造方法による実施例について説明する。
実施例1は、図4Eに示すような、粉抜き開口部23及びプラグ40がテーパ形状を有する場合の実施例である。実施例1において粉抜き開口部23を形成した試験片は、図4Eに示すような板形状を有する試験片である。
実施例1における試験片の材質は、コバルト基合金である。
試験片の厚さtAは1.0mmとした。
プラグ40の厚さtBは1.0mmとした。
粉抜き開口部23の内側開口端23aにおける内径WA1は2.2mmΦであり、外側開口端23bにおける内径WA2は2.4mmΦである。
プラグ40の小径側の直径WB1は2.2mmΦであり、大径側の直径WB2は2.4mmΦである。
実施例1では、プラグを造形物に溶接するステップS9において、光ビームとしてのレーザービームの出力を400Wとし、レーザービームの走査速度を75mm/minとし、レーザービームのビーム径を1.0mmとした。
上記条件によりプラグ40を試験片に溶接することで、熱影響領域18の平面度を0.3mm以下とすることができた。
【0056】
(実施例2)
実施例2において粉抜き開口部23を形成した試験片は、図5Aに示すような凹部25を有する試験片である。
実施例2における試験片の材質は、コバルト基合金である。
実施例2における試験片の厚さtAは5.0mmとした。
実施例2における試験片の底面25aが形成された部位の厚さtC、すなわち粉抜き開口部23の厚さ方向の寸法は1.0mmとした。
なお、実施例2における粉抜き開口部23及びプラグ40は、図4Eに示すようなテーパ形状を有する。
実施例2における粉抜き開口部23の各部の寸法、及び、プラグ40の各部の寸法は、実施例1と同じである。
実施例2における底面25aの外縁(底面25aと凹部25のテーパ内周面25bとの交差部)と粉抜き開口部23の外側開口端23bまでの距離LAを2.0mmとした。
実施例2におけるテーパ内周面25bの傾斜角度θAは75度とした。なお、底面25aとテーパ内周面25bとのなす角度θA’は105度である。
実施例2では、プラグを造形物に溶接するステップS9において、光ビームとしてのレーザービームの出力を650Wとし、レーザービームの走査速度を50mm/minとし、レーザービームのビーム径を1.0mmとした。
上記条件によりプラグ40を試験片に溶接することで、熱影響領域18の平面度を0.3mm以下とすることができた。
【0057】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0058】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る造形物の製造方法は、金属粉末30を積層して、中空の内部空間17に連通している開口部20(粉抜き開口部23)を有する造形物15を形成するステップS1と、開口部20(粉抜き開口部23)にプラグ40を装着するステップS7と、開口部20(粉抜き開口部23)に装着したプラグ40を造形物15に溶接するステップS9と、を備える。
【0059】
上記(1)の方法によれば、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接することで、中空の内部空間17に連通している粉抜き開口部23を容易に閉止できる。
【0060】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、造形物を形成するステップS1の後で、内部空間17に残留する金属粉末(残留粉末33)を粉抜き開口部23から造形物15の外部に排出するステップS5をさらに備える。
【0061】
上記(2)の方法によれば、内部空間17に残留する残留粉末33を粉抜き開口部23から造形物15の外部に排出できる。
【0062】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、金属粉末30を積層して、プラグ40を形成するステップS3をさらに備えるとよい。
【0063】
上記(3)の方法によれば、造形物15の形成に用いる金属粉末30でプラグ40を形成できるので、プラグ40の材料と造形物15の材質とを同じにできる。
【0064】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の方法において、プラグを形成するステップS3では、造形物15の造形条件と同条件でプラグ40を形成してもよい。
【0065】
上記(4)の方法によれば、造形物15の造形条件と同条件でプラグ40を形成することで、例えば表面粗さや寸法公差等の品質を造形物15とプラグ40とで同等に保つことができる。
【0066】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の方法において、プラグを形成するステップS3では、造形物15の形成と同時にプラグ40を形成してもよい。
【0067】
上記(5)の方法によれば、造形物15の形成と同時にプラグ40を形成することで、例えば表面粗さや寸法公差等の品質を造形物15とプラグ40とで同等に保つことができる。
【0068】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの方法において、造形物を形成するステップS1は、凹部25と、凹部25の底面25aよりも寸法が小さく底面25aに設けられた開口部20(粉抜き開口部23)と、を有するように造形物15を形成する。
【0069】
上記(6)の方法によれば、造形物15に凹部25を設け、この凹部25の底面25aに開口部20(粉抜き開口部23)を形成することで、凹部25を設けていない場合と比べて、造形物15のうちプラグ40を取り囲む周囲の部分の熱容量を小さくすることができる。これにより、粉抜き開口部23近傍の造形物15の肉厚が比較的厚い場合であっても、粉抜き開口部23に装着したプラグ40を造形物15に溶接できる。
【0070】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の方法において、プラグを造形物に溶接するステップS9の後で、凹部を充填物で埋めるステップS11をさらに備える。
【0071】
上記(7)の方法によれば、凹部25を充填物45で埋めて造形物15の表面(外表面)15bを平滑にすることができる。
【0072】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの方法において、造形物を形成するステップS1は、造形物15の厚さ方向に沿って内側に向かうにつれて大きさが漸減するように開口部20(粉抜き開口部23)を形成する。
【0073】
上記(8)の方法によれば、粉抜き開口部23がいわゆるテーパ形状を有することになるので、造形物15の厚さ方向の位置に関わらず粉抜き開口部23の大きさが変わらない場合と比べて、粉抜き開口部23やプラグ40の寸法精度が低下しても、粉抜き開口部23にプラグ40を装着する際の支障が生じ難くなる。
【0074】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの方法において、造形物を形成するステップS1は、プラグ40の最大寸法の105%以上110%以下の最大寸法を有する開口部20(粉抜き開口部23)を形成する。
【0075】
上記(9)の方法によれば、粉抜き開口部23とプラグ40との隙間が大きくなり過ぎないようにしつつ、粉抜き開口部23にプラグ40を容易に挿入し易くすることができる。
【0076】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの方法において、プラグを造形物に溶接するステップS9は、内部空間17に面した造形物15の表面である造形物15の内表面15a及び閉塞部分19の内表面19aのうちプラグ40の造形物15への溶接により熱の影響を受けた領域(熱影響領域)18の平面度が0.3mm以下となるようにプラグ40を造形物15に溶接する。
【0077】
上記(10)の方法によれば、熱影響領域18を平滑にすることができる。
【0078】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの方法において、造形物を形成するステップS1は、造形物15の内部を通過して流路入口81aから流路出口81bまで延びる流路である冷却流路81の途中に開口部20(粉抜き開口部23)を備えるように造形物15を形成する。
【0079】
上記(11)の方法によれば、流路入口81a及び流路出口81b以外で冷却流路81からの冷却媒体CAの漏れが許容されない場合であっても、粉抜き開口部23を閉止できるので、流路入口81a及び流路出口81b以外で冷却流路81からの冷却媒体CAの漏れを防止できる。
【符号の説明】
【0080】
1 三次元積層造形装置
15 造形物
17 内部空間
20 開口部
23粉抜き開口部
25 凹部
25a 底面
30 金属粉末
33 残留粉末
40 プラグ
45 充填物
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7