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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】単一指向性マイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/04 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
H04R19/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020105373
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197712
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】山縣 博
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 大道
(72)【発明者】
【氏名】馬場 剛
(72)【発明者】
【氏名】粟村 竜二
(72)【発明者】
【氏名】中西 賢介
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-039445(JP,A)
【文献】特開2011-082723(JP,A)
【文献】特開平11-187494(JP,A)
【文献】実開昭61-187189(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒形状であって、その底面に音孔を含むケースと、
前記ケース内の底面に固定されたリング形状の振動板と、
前記振動板に張られた振動膜と、
有底筒形状であって前記ケースの内側面との間に音の伝搬経路となる空隙が形成されるように前記ケース内に入れ子状に収容され、その側面に音の伝搬経路となる孔を含む背極板と、
前記振動板と前記背極板の間に位置して前記振動板と前記背極板を固定し、その一部に音の伝搬経路となる切り欠きを含むスペーサと、
前記ケースの上面開口部を蓋する基板であって音の伝搬経路となる穴を含む基板
を含む単一指向性マイクロホン。
【請求項2】
有底筒形状であって、その底面に音孔を含むケースと、
前記ケース内の底面に固定されたリング形状の振動板と、
前記振動板に張られた振動膜と、
有底筒形状であって前記ケースの内側面との間に音の伝搬経路となる空隙が形成されるように前記ケース内に入れ子状に収容され、その側面に音の伝搬経路となる孔を含み、その底面の裏面側に音の伝搬経路となる凹部を含む背極板と、
前記振動板と前記背極板の間に位置して前記振動板と前記背極板を固定するスペーサと、
前記ケースの上面開口部を蓋する基板であって音の伝搬経路となる穴を含む基板
を含む単一指向性マイクロホン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の単一指向性マイクロホンであって、
前記スペーサは、前記背極板底面の裏面に印刷することにより形成される
単一指向性マイクロホン。
【請求項4】
請求項1または2に記載の単一指向性マイクロホンであって、
前記スペーサは、前記振動膜の表面に印刷することにより形成される
単一指向性マイクロホン。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の単一指向性マイクロホンであって、
前記背極板の底面の裏面に前記背極板と前記振動膜との間の空間である背室の容積を増加させる凹みを含む
単一指向性マイクロホン。
【請求項6】
請求項1または2に記載の単一指向性マイクロホンであって、
前記背極板の底面を貫通する音孔を含み、
前記基板の穴から前記音孔までの音の伝搬経路であって、前記背極板の側面の孔を経由しない音の伝搬経路を遮断するゲート端子を含む
単一指向性マイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単一指向性マイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ型マイクロホンの従来技術として例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭57-102300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の単一指向性マイクロホンは、ゲート端子と背極板(第2背極板という)で音響抵抗を形成するが、微細な音響抵抗を実現するためにゲート端子を切削部品としており、コスト面で不利である。また、ゲート端子と第2背極板を安定して保持するために、背極板(第2背極板)、ホルダー、ゲートリングの分割構造を採らざるを得ないため、コスト面で不利となっている。
【0005】
そこで本発明では、簡易な構造で、コスト面で有利な単一指向性マイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の単一指向性マイクロホンは、ケースと、振動板と、振動膜と、背極板と、スペーサと、基板を含む。
【0007】
ケースは、有底筒形状であって、その底面に音孔を含む。振動板は、ケース内の底面に固定され、リング形状である。振動膜は、振動板に張られる。背極板は、有底筒形状であってケースの内側面との間に音の伝搬経路となる空隙が形成されるようにケース内に入れ子状に収容され、その側面に音の伝搬経路となる孔を含む。スペーサは、振動板と背極板の間に位置して振動板と背極板を固定し、その一部に音の伝搬経路となる切り欠きを含む。基板は、ケースの上面開口部を蓋する基板であって音の伝搬経路となる穴を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の単一指向性マイクロホンは、簡易な構造で、コスト面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来の全指向性マイクロホンの構造を示す概略断面図。
図2】実施例1の単一指向性マイクロホンの構造を示す概略断面図。
図3図3(A)は従来の全指向性マイクロホンのスペーサを示す図、図3(B)は実施例1の単一指向性マイクロホンのスペーサを示す図。
図4図4(A)は従来の全指向性マイクロホンの背極板の概略平面図、図4(B)は実施例1の単一指向性マイクロホンの背極板の概略平面図。
図5図5(A)は変形例1のスペーサを示す図、図5(B)は変形例2のスペーサを示す図、図5(C)は変形例3の背極板の構造を示す図。
図6】実施例2の単一指向性マイクロホンの構造を示す概略断面図。
図7】実施例3の単一指向性マイクロホンの構造を示す概略断面図。
図8】実施例1の二つの試作品(No.1,No.2)の周波数特性を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0011】
<従来の全指向性マイクロホン1の構造>
以下、図1を参照して従来の全指向性マイクロホン1の構造を説明する。従来の全指向性マイクロホン1は、ケース11と、振動板12と、スペーサ13と、背極板14(FEPフィルム溶着)と、基板15と、FET16と、コンデンサ17と、振動膜18を含む。
【0012】
ケース11は、有底筒形状であって、その底面に音孔111を含む。振動板12は、ケース11内の底面に固定され、リング形状である。振動膜18は、振動板12に張られる。背極板14は、有底筒形状であってケース11内に入れ子状に収容され、その底面に音の伝搬経路となる孔141、その側面に内圧調整用となる孔142を含む。スペーサ13は、振動板12と背極板14の間に位置して振動板と背極板を固定する。基板15は、ケースの上面開口部を蓋する。
【0013】
<実施例1の単一指向性マイクロホン2>
実施例1の単一指向性マイクロホン2は、図1で説明した従来の全指向性マイクロホン1の構造を一部に変更を施すだけで、単一指向性を実現できるため、全指向性マイクロホン1と部品点数を同等とすることができるため、簡易な構造とすることができ、コスト面で有利である。
【0014】
以下、図2を参照して実施例1の単一指向性マイクロホン2の構造を説明する。実施例1の単一指向性マイクロホン2は、ケース11と、振動板12と、スペーサ23と、背極板24(FEPフィルム溶着)と、基板25と、FET16と、コンデンサ17と、振動膜18を含み、スペーサ23、背極板24、基板25以外については、従来の全指向性マイクロホン1と同様である。以下、従来の全指向性マイクロホン1と異なる構造であるスペーサ23、背極板24、基板25について説明する。
【0015】
<スペーサ23>
スペーサ23は、振動板12と背極板24の間に位置して振動板12と背極板24間に一定のギャップを形成し、その一部に音の伝搬経路となる切り欠き231を含む。図3に示すように従来のリング形状のスペーサ13(図3(A))の周の一部を切り欠いて切り欠き231を形成する(図3(B))。これにより、微細な空気の流通経路を確保する。
【0016】
<背極板24>
背極板24は、有底筒形状であってケース11の内側面との間に音の伝搬経路となる空隙が形成されるようにケース11内に入れ子状に収容され、その側面に音の伝搬経路となる孔142を含む。なお、図4(A)に示した従来の全指向性マイクロホン1の背極板14の底面に形成されていた孔141は、背極板24においては形成されない(図4(B))。孔141を削除することにより、音響抵抗側との空気の流通を遮断することができる。
【0017】
<基板25>
基板25は、ケース11の上面開口部を蓋する基板であって音の伝搬経路となる穴251を含む。図2に破線矢印で音の伝搬経路を示す。破線矢印で示すように、(1)背極板24とケース11の間の微細な流通経路と、(2)スペーサ23の切り欠き231を併せて、音響抵抗を形成することができる。
【0018】
≪実施例1の単一指向性マイクロホン2の効果≫
通常の単一指向性マイクロホンでは指向性制御を行なうための音響抵抗を形成するために、音響端子やゲート端子が必要となる。本実施例の単一指向性マイクロホン2は、スペーサの一部を切り欠く切り欠き231や背極板24とケース11の隙間で音響抵抗を持たせるため、音響端子やゲート端子が不要になり、構造の単純化、コストの低減が可能となる。
【0019】
また背極板24の底面に音孔を設けない(孔141を削除した)ため、射出成形によって部品を作成することが可能となり、コストの低減が可能となる。
【0020】
[変形例1]
例えば、図5(A)に示すように背極板24の底面(裏面)にスペーサ13aを印刷して形成してもよい。スペーサ13aの周の一部は印刷されずに途切れており、この部分が音の伝搬経路として機能する。スペーサ13aを背極板24と一体形成することで組み立ての簡略化やコストの低減が可能となる。
【0021】
[変形例2]
例えば、図5(B)に示すように振動膜18の表面にスペーサ13bを印刷して形成してもよい。スペーサ13bの周の一部は印刷されずに途切れており、この部分が音の伝搬経路として機能する。スペーサ13bを振動膜18と一体形成することで組み立ての簡略化やコストの低減が可能となる。
【0022】
[変形例3]
例えば、図5(C)に示すように背極板24を背極板24aに変更してもよい。背極板24aは、その底面の裏面側に音の伝搬経路となる凹部243を含む。変形例3の構成とすれば、スペーサ13に切り欠きなどの音の伝搬経路を設ける必要がなくなる。
【実施例2】
【0023】
以下、図6を参照して実施例2の単一指向性マイクロホン3の構造を説明する。実施例2の単一指向性マイクロホン3は、ケース11と、振動板12と、スペーサ23と、背極板34と、基板25と、FET16と、コンデンサ17と、振動膜18を含み、背極板34以外については、実施例1の単一指向性マイクロホン2と同様である。以下、実施例1の単一指向性マイクロホン2と異なる構造である背極板34について説明する。
【0024】
<背極板34>
背極板34は、背極板34の底面の裏面に背極板34と振動膜18との間の空間である背室の容積を増加させる凹み341を含む。
【0025】
≪実施例2の単一指向性マイクロホン3の効果≫
振動膜18より上部の空間(背室)の容積が増加し、振動膜18の抵抗が減少するため感度が増加する。
【実施例3】
【0026】
以下、図7を参照して実施例3の単一指向性マイクロホン4の構造を説明する。実施例3の単一指向性マイクロホン4は、ケース11と、振動板12と、スペーサ23と、背極板14と、基板25と、FET16と、コンデンサ17と、振動膜18と、ゲート端子49を含む。背極板を従来の全指向性マイクロホン1の背極板と同様の背極板14とした点が実施例1の単一指向性マイクロホン2とは異なる。また、ゲート端子49を追加した点において、実施例1の単一指向性マイクロホン2とは異なる。他については、実施例1の単一指向性マイクロホン2と同様である。以下、実施例1の単一指向性マイクロホン2と異なる構造であるゲート端子49について説明する。
【0027】
<ゲート端子49>
上述したように、本実施例の単一指向性マイクロホン4における背極板は、従来の全指向性マイクロホン1の背極板と同様の背極板14とした。背極板14は、その底面を貫通する音孔141を含む。
ゲート端子49は、その側面に切り欠き491を含む。これにより、音の伝搬経路は、穴251を通り、ゲート端子49の切り欠き491を通り、背極板14との隙間を通り、孔142を経由して切り欠き231を通り、振動膜18に到達する経路となる。すなわち、ゲート端子49は、基板25の穴251から音孔141までの音の伝搬経路であって、背極板14の側面の孔142を経由しない音の伝搬経路を遮断する。
また、ゲート端子49は、その底面の裏側に凹部492を含む。凹部492は、振動膜18の動きをよくする(抵抗を少なくする)ための背室として機能する。
【0028】
≪実施例3の単一指向性マイクロホン4の効果≫
背室の容積が増加し、振動膜18の抵抗が減少するため感度が増加する。
【0029】
<試作品の周波数特性>
図8に、二つの試作品(No.1,No.2)の周波数特性を表す。同図に示すように、二つの試作品(No.1,No.2)のいずれにおいても0°/180°の感度において、10dB以上の指向性を確保しており、単一指向性マイクロホンとして十分な性能を確保していることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8