(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】遊星ギヤ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/36 20060101AFI20231110BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
F16H1/36
F16H1/46
(21)【出願番号】P 2020110863
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2022-06-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】土田 友也
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】田中 智之
(72)【発明者】
【氏名】松尾 高広
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-079154(JP,A)
【文献】特開2018-017392(JP,A)
【文献】特開2001-343064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/36
F16H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽ギヤと、前記太陽ギヤと噛合う遊星ギヤと、前記遊星ギヤと噛合う内歯ギヤと、前記遊星ギヤを回転可能に支持し、かつ、前記太陽ギヤの周りを公転する前記遊星ギヤと共に前記太陽ギヤの軸芯を回転中心にして回転するキャリヤと、が備えられ、
前記キャリヤに、前記遊星ギヤを支持する遊星支軸と、前記遊星支軸のうちの前記遊星ギヤよりも遊星支軸一端側の第1端部を支持する第1キャリヤ部と、前記遊星支軸のうちの前記遊星ギヤよりも遊星支軸他端側の第2端部を支持する第2キャリヤ部と、が備えられ、
前記第1キャリヤ部に、前記遊星ギヤを収容するギヤ収容空間と、前記ギヤ収容空間を前記第2キャリヤ部に向けて開放し、かつ、前記ギヤ収容空間に対する前記遊星ギヤの組み込みを許容する開口と、前記第1キャリヤ部と前記第2キャリヤ部とを連結させる補強部と、前記ギヤ収容空間に対して前記開口が位置する側と反対側において前記ギヤ収容空間に向かって開口する状態で設けられ、前記第1端部を支持する第1支持穴と、が備えられ、
前記第2キャリヤ部に、前記開口を塞ぐ蓋部と、前記蓋部において前記ギヤ収容空間に向かって開口する状態で設けられ、前記第2端部を支持する第2支持穴と、前記第2キャリヤ部を前記第1キャリヤ部に対して連結する連結部と、が備えられ、
前記連結部は、前記第2キャリヤ部を前記第1キャリヤ部に対して脱着可能に連結するように、かつ、前記第1キャリヤ部に備えられた前記補強部に対して前記太陽ギヤの軸芯方向に沿う方向の締め付けによって連結されるように構成され、
前記補強部は、前記遊星ギヤの前記開口から前記ギヤ収容空間への差し入れを許容するように前記キャリヤの周方向において前記ギヤ収容空間と隣り合って位置する状態で設けられ
、前記太陽ギヤの軸芯に沿う方向視において前記補強部の前記遊星ギヤに対向する面が前記遊星ギヤの外周部に沿う円弧面であり、
前記太陽ギヤの軸芯に沿う方向視において、前記遊星支軸が前記太陽ギヤの軸芯を中心とする円周上に位置し、前記補強部は、前記円周の径方向における内側の端部が前記円周の近傍に位置する第1補強部と、前記円周の径方向における内側の端部が前記第1補強部の内側の端部よりも外側に位置する第2補強部を有し、
前記第1補強部と前記第2補強部とが前記円周の方向において交互に設けられている遊星ギヤ装置。
【請求項2】
前記遊星ギヤは、前記太陽ギヤの周りの複数箇所に設けられており、
前記第1キャリヤ部は、鋳造製であり、
前記第1キャリヤ部の外周部が旋削加工されている請求項1に記載の遊星ギヤ装置。
【請求項3】
前記太陽ギヤの軸芯上に軸芯が位置する第2太陽ギヤと、前記第2太陽ギヤと噛み合う第2遊星ギヤと、前記第2遊星ギヤと噛み合う第2内歯ギヤと、前記遊星ギヤに噛み合わされ、前記遊星ギヤの回転を前記第2遊星ギヤに伝達する伝動ギヤと、が備えられ、
前記キャリヤに、前記第2遊星ギヤを支持する第2遊星支軸が備えられ、
前記第1キャリヤ部に、前記第2遊星ギヤを収容する第2ギヤ収容空間と、前記第2ギヤ収容空間を前記第2キャリヤ部に向けて開放し、かつ、前記第2ギヤ収容空間に対する前記第2遊星ギヤの組み込みを許容する第2開口と、前記第2ギヤ収容空間に対して前記第2開口が位置する側と反対側において前記第2ギヤ収容空間に向かって開口する状態で設けられ、前記第2遊星支軸のうちの前記第2遊星ギヤよりも第2遊星支軸一端側の第2支軸第1端部を支持する第2支軸第1支持穴と、が備えられ、
前記第2キャリヤ部に、前記第2開口を塞ぐ第2蓋部と、前記第2蓋部において前記第2ギヤ収容空間に向かって開口する状態で設けられ、前記第2遊星支軸のうちの前記第2遊星ギヤよりも第2遊星支軸他端側の第2支軸第2端部を支持する第2支軸第2支持穴と、が備えられている請求項1に記載の遊星ギヤ装置。
【請求項4】
前記伝動ギヤは、前記第2遊星支軸に支持された状態で前記第2ギヤ収容空間に収容されるように構成され、
前記第2支軸第2端部は、前記第2遊星支軸のうち、前記伝動ギヤよりも第2遊星支軸他端側に位置している請求項3に記載の遊星ギヤ装置。
【請求項5】
前記遊星ギヤは、前記太陽ギヤの周りの複数箇所に設けられており、
前記第2遊星ギヤは、前記遊星ギヤの数と同数設けられており、
前記第1キャリヤ部は、鋳造製であり、
前記第1キャリヤ部の外周部が旋削加工されている請求項3または4に記載の遊星ギヤ装置。
【請求項6】
前記太陽ギヤの軸芯方向に沿う方向の軸芯を有し、前記連結部および前記第1キャリヤ部に装着されて締め付け操作されることによって前記連結部を前記第1キャリヤ部に締め付け連結する連結ボルトが備えられている請求項1から5のいずれか一項に記載の遊星ギヤ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星ギヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星ギヤ装置においては、太陽ギヤと、太陽ギヤと噛合う遊星ギヤと、遊星ギヤと噛合う内歯ギヤと、遊星ギヤを回転可能に支持し、かつ、太陽ギヤの周りを公転する遊星ギヤと共に太陽ギヤの軸芯を回転中心にして回転するキャリヤと、が備えられる。この種の遊星ギヤ装置において、キャリヤに、遊星ギヤを支持する遊星支軸と、遊星支軸のうちの遊星ギヤよりも遊星支軸一端側の第1端部を支持する第1キャリヤ部と、遊星支軸のうちの遊星ギヤよりも遊星支軸他端側の第2端部を支持する第2キャリヤ部と、が備えられたものがある。
この種の遊星ギヤ装置として、特許文献1において、
図11,12,13に示される遊星歯車機構がある。特許文献1に示される遊星歯車機構では、遊星支軸としてのキャリヤピンの第1端部を支持する第1支持孔がキャリヤ本体の第2端壁に設けられ、キャリヤピンの第2端部を支持する第2支持孔がキャリヤ本体の第2端壁に設けられ、キャリヤ本体の第2端壁によって第1キャリヤ部が構成され、キャリヤ本体の第1端壁によって第2キャリヤ部が構成される。特許文献1の遊星歯車機構では、第1端壁と第2端壁とが連結部によって連結され、連結部に、遊星ギヤがキャリヤ本体の内部に挿通可能なアクセス開口を設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術を採用した場合、遊星ギヤをアクセス開口から第1端壁と第2端壁の間に入り込ませ、遊星ギヤに備えてあるキャリヤピン挿通穴が第1支持孔および第2支持孔に対して符合する状態に遊星ギヤを保持しつつ、キャリヤピンをキャリヤ本体の横外側方から第2支持孔、ピン穴および第1ピン孔に挿入するという組付け方法によって遊星ギヤをキャリヤに組付けることになるので、組付けに手間が掛かる。
【0005】
本発明は、遊星支軸を遊星ギヤの両横側でキャリヤに支持できながら、遊星ギヤをキャリヤに組付け易い遊星ギヤ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による遊星ギヤ装置は、
太陽ギヤと、前記太陽ギヤと噛合う遊星ギヤと、前記遊星ギヤと噛合う内歯ギヤと、前記遊星ギヤを回転可能に支持し、かつ、前記太陽ギヤの周りを公転する前記遊星ギヤと共に前記太陽ギヤの軸芯を回転中心にして回転するキャリヤと、が備えられ、前記キャリヤに、前記遊星ギヤを支持する遊星支軸と、前記遊星支軸のうちの前記遊星ギヤよりも遊星支軸一端側の第1端部を支持する第1キャリヤ部と、前記遊星支軸のうちの前記遊星ギヤよりも遊星支軸他端側の第2端部を支持する第2キャリヤ部と、が備えられ、前記第1キャリヤ部に、前記遊星ギヤを収容するギヤ収容空間と、前記ギヤ収容空間を前記第2キャリヤ部に向けて開放し、かつ、前記ギヤ収容空間に対する前記遊星ギヤの組み込みを許容する開口と、前記第1キャリヤ部と前記第2キャリヤ部とを連結させる補強部と、前記ギヤ収容空間に対して前記開口が位置する側と反対側において前記ギヤ収容空間に向かって開口する状態で設けられ、前記第1端部を支持する第1支持穴と、が備えられ、前記第2キャリヤ部に、前記開口を塞ぐ蓋部と、前記蓋部において前記ギヤ収容空間に向かって開口する状態で設けられ、前記第2端部を支持する第2支持穴と、前記第2キャリヤ部を前記第1キャリヤ部に対して連結する連結部と、が備えられ、前記連結部は、前記第2キャリヤ部を前記第1キャリヤ部に対して脱着可能に連結するように、かつ、前記第1キャリヤ部に備えられた前記補強部に対して前記太陽ギヤの軸芯方向に沿う方向の締め付けによって連結されるように構成され、前記補強部は、前記遊星ギヤの前記開口から前記ギヤ収容空間への差し入れを許容するように前記キャリヤの周方向において前記ギヤ収容空間と隣り合って位置する状態で設けられ、前記太陽ギヤの軸芯に沿う方向視において前記補強部の前記遊星ギヤに対向する面が前記遊星ギヤの外周部に沿う円弧面であり、前記太陽ギヤの軸芯に沿う方向視において、前記遊星支軸が前記太陽ギヤの軸芯を中心とする円周上に位置し、前記補強部は、前記円周の径方向における内側の端部が前記円周の近傍に位置する第1補強部と、前記円周の径方向における内側の端部が前記第1補強部の内側の端部よりも外側に位置する第2補強部を有し、前記第1補強部と前記第2補強部とが前記円周の方向において交互に設けられている。
【0007】
本構成によると、遊星ギヤおよび遊星支軸をギヤ収容空間に別々に差し入れなくとも、遊星ギヤを遊星支軸に取り付けた状態でギヤ収容空間に開口から差し入れることができるので、遊星ギヤおよび遊星支軸をギヤ収容空間に一挙に差し入れることができる。遊星ギヤおよび遊星支軸をギヤ収容空間に一挙に差し入れても、遊星支軸の第1端部が第1支持穴に入り込んで遊星支軸の第1端部が第1キャリヤ部に支持され、かつ、遊星ギヤがギヤ収容空間に位置した状態で遊星支軸によって支持される。この状態において、連結部を第1キャリヤ部に締め付けると、締め付けに伴って遊星支軸の第2端部が第2支持穴に入り込んで遊星支軸の第2端部が第2キャリヤ部に支持され、かつ、ギヤ収容空間の開口が蓋部によって閉じられ、さらに、第2キャリヤ部が第1キャリヤ部に連結され、遊星支軸の第1端部および第2端部がキャリヤに支持される状態になるので、遊星支軸を遊星ギヤの両横側でキャリヤに支持させることができる。遊星ギヤおよび遊星支軸をギヤ収容空間に一挙に差し入れることができ、かつ、第2キャリヤ部を第1キャリヤ部に対する締め付け連結によって第2端部が第2支持穴に入り込んでいくので、遊星支軸が遊星ギヤの両横側でキャリヤに支持されて遊星ギヤがキャリヤにしっかり支持される状態を得ることができるのみならず、遊星ギヤをキャリヤに容易に組み付けることができる。
【0008】
本発明においては、
前記遊星ギヤは、前記太陽ギヤの周りの複数箇所に設けられており、前記第1キャリヤ部は、鋳造製であり、前記第1キャリヤ部の外周部が旋削加工されていると好適である。
【0009】
第1キャリヤ部の外周部の旋削加工によって太陽ギヤ軸芯のまわりの第1キャリヤ部の質量を均一にできるので、第1キャリヤ部を鋳造によって第1キャリヤ部に剛性を備えさせて第1キャリヤ部に複数の遊星ギヤをしっかり支持させながら、キャリヤが回転振動を伴わないでスムーズに回転するようにできる。
【0010】
本発明においては、
前記太陽ギヤの軸芯上に軸芯が位置する第2太陽ギヤと、前記第2太陽ギヤと噛み合う第2遊星ギヤと、前記第2遊星ギヤと噛み合う第2内歯ギヤと、前記遊星ギヤに噛み合わされ、前記遊星ギヤの回転を前記第2遊星ギヤに伝達する伝動ギヤと、が備えられ、前記キャリヤに、前記第2遊星ギヤを支持する第2遊星支軸が備えられ、前記第1キャリヤ部に、前記第2遊星ギヤを収容する第2ギヤ収容空間と、前記第2ギヤ収容空間を前記第2キャリヤ部に向けて開放し、かつ、前記第2ギヤ収容空間に対する前記第2遊星ギヤの組み込みを許容する第2開口と、前記第2ギヤ収容空間に対して前記第2開口が位置する側と反対側において前記第2ギヤ収容空間に向かって開口する状態で設けられ、前記第2遊星支軸のうちの前記第2遊星ギヤよりも第2遊星支軸一端側の第2支軸第1端部を支持する第2支軸第1支持穴と、が備えられ、前記第2キャリヤ部に、前記第2開口を塞ぐ第2蓋部と、前記第2蓋部において前記第2ギヤ収容空間に向かって開口する状態で設けられ、前記第2遊星支軸のうちの前記第2遊星ギヤよりも第2遊星支軸他端側の第2支軸第2端部を支持する第2支軸第2支持穴と、が備えられていると好適である。
【0011】
本構成によると、第2遊星ギヤおよび第2遊星支軸を第2ギヤ収容空間に別々に差し入れなくとも、第2遊星ギヤを第2遊星支軸に取り付けた状態で第2ギヤ収容空間に第2開口から差し入れることができるので、第2遊星ギヤおよび第2遊星支軸を第2ギヤ収容空間に一挙に差し入れることができる。第2遊星ギヤおよび第2遊星支軸を第2ギヤ収容空間に一挙に差し入れても、第2遊星支軸の第2支軸第1端部が第2支軸第1支持穴に入り込んで第2遊星支軸の第2支軸第1端部が第1キャリヤ部に支持され、かつ、第2遊星ギヤが第2ギヤ収容空間に位置した状態で第2遊星支軸に支持される。この状態において、連結部を第1キャリヤ部に締め付けると、締め付けに伴って第2遊星支軸の第2支軸第2端部が第2支軸第2支持穴に入り込んで第2遊星支軸の第2支軸第2端部が第2キャリヤ部に支持され、かつ、第2ギヤ収容空間の開口が第2蓋部によって閉じられ、さらに、第2キャリヤ部が第1キャリヤ部に連結され、第2遊星支軸が第2支軸第1端部および第2支軸第2端部においてキャリヤに支持される状態になり、第2遊星支軸を両端側でキャリヤに支持させることができる。第2遊星ギヤおよび第2遊星支軸を一挙に第2ギヤ収容空間に差し入れることができ、かつ、第2キャリヤ部を第1キャリヤ部に締め付けることによって第2支軸第2端部が第2支軸第2支持穴に入り込んでいくので、複合型の遊星歯車装置でありながら、第2遊星支軸も第2遊星ギヤの両横側でキャリヤに支持されて第2遊星ギヤもがキャリヤにしっかり支持される状態を得ることができるのみならず、第2遊星ギヤをキャリヤに容易に組み付けることができる。
【0012】
本発明においては、
前記伝動ギヤは、前記第2遊星支軸に支持された状態で前記第2ギヤ収容空間に収容されるように構成され、前記第2支軸第2端部は、前記第2遊星支軸のうち、前記伝動ギヤよりも第2遊星支軸他端側に位置していると好適である。
【0013】
本構成によると、第2遊星ギヤを第2遊星支軸に取り付けた状態で第2ギヤ収容空間に差し入れるとき、伝動ギヤを第2遊星支軸に取り付けておいて伝動ギヤも第2ギヤ収容空間に差し入れることができるので、第2遊星ギヤ、第2遊星支軸および伝動ギヤを第2ギヤ収容空間に一挙に差し入れることができる。
【0014】
本発明においては、
前記遊星ギヤは、前記太陽ギヤの周りの複数箇所に設けられており、前記第2遊星ギヤは、前記遊星ギヤの数と同数設けられており、前記第1キャリヤ部は、鋳造製であり、前記第1キャリヤ部の外周部が旋削加工されていると好適である。
【0015】
本構成によると、第1キャリヤ部の外周部の旋削加工によって太陽ギヤ軸芯のまわりの第1キャリヤ部の質量を均一にできるので、第1キャリヤ部を鋳造によって第1キャリヤ部に剛性を備えさせて第1キャリヤ部に複数の遊星ギヤおよび複数の第2遊星ギヤをしっかり支持させながら、キャリヤが回転振動を伴わないでスムーズに回転するようにできる。
【0016】
本発明においては、
前記太陽ギヤの軸芯方向に沿う方向の軸芯を有し、前記連結部および前記第1キャリヤ部に装着されて締め付け操作されることによって前記連結部を前記第1キャリヤ部に締め付け連結する連結ボルトが備えられていると好適である。
【0017】
本構成によると、連結ボルトを締め付け操作することによって第2キャリヤ部が第1キャリヤ部に締め付けられ、この締め付けに伴って遊星支軸の第2端部が第2支持穴に入り込んで行くので、遊星支軸が遊星ギヤの両横側でキャリヤに支持される状態を操作簡単に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】第1太陽ギヤ、第1遊星ギヤ、第1内歯ギヤおよび伝動ギヤを示す正面図である。
【
図5】第2太陽ギヤ、第2遊星ギヤおよび第2内歯ギヤを示す後面図である。
【
図6】分解状態の第1遊星ギヤ、第2遊星ギヤ、伝動ギヤおよびキャリヤを示す斜視図である。
【
図8】第1遊星ギヤ、伝動ギヤおよび第2遊星ギヤが取り付けられた状態の第1キャリヤ部を示す前面図である。
【
図11】第2キャリヤ部の一部を示す斜視図である。
【
図12】無段変速装置の変速状態と、速度レンジと、段階分け伝動部の出力軸の回転速度との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、トラクタの走行車体に関し、
図1に示される矢印Fの方向を「車体前方」、矢印Bの方向を「車体後方」、矢印Uの方向を「車体上方」、矢印Dの方向を「車体下方」、紙面表側の方向を「車体左方」、紙面裏側の方向を「車体右方」とする。
【0020】
〔トラクタの全体〕
トラクタの走行車体は、エンジン1、エンジン1の後部に備えられたクラッチハウジング2、クラッチハウジング2に連結されたミッションケース3、および前部フレーム4などによって構成された車体フレーム5、車体フレーム5の前部に操向可能かつ駆動可能に備えられた左右一対の前車輪6、車体フレーム5の後部に駆動可能に備えられた左右一対の後車輪7を有している。走行車体の前部に、エンジン1を有する原動部8が形成されている。走行車体の後部に運転部9が形成されている。運転部9に、運転座席10、前車輪6を操向操作するステアリングホィール11、搭乗空間を覆うキャビン12が備えられている。車体フレーム5の後部に、ロータリ耕耘装置(図示せず)などの各種の作業装置を昇降操作可能に連結するリンク機構13、エンジン1からの動力を取り出し、取り出した動力を連結された作業装置に伝達する動力取出軸14が備えられている。
【0021】
〔走行伝動装置〕
エンジン1からの動力が
図2に示される走行伝動装置15によって前車輪6および後車輪7に伝達されるように構成されている。
【0022】
図2に示されるように、走行伝動装置15においては、エンジン1の出力軸1aの動力が主クラッチ16を介してミッションケース3の入力軸17に伝達される。入力軸17の動力が遊星ギヤ装置18Aなどを備える主変速部18に入力され、主変速部18の出力が段階分け伝動部19に入力され、段階分け伝動部19の出力が前後進切換装置20に入力される。前後進切換装置20の出力が後輪ギヤ連動機構21を介して後輪差動機構22の入力軸22aに伝達される。後輪差動機構22の出力を後車輪7に伝達する動力伝達系に、操向ブレーキ23および減速機構24が設けられている。減速機構24は、遊星歯車機構によって構成されている。後輪差動機構22の入力軸22aの動力が前輪ギヤ連動機構25を介して前輪伝動装置26に入力され、前輪伝動装置26から回転軸27を介して前輪差動機構28に伝達される。前輪ギヤ連動機構25に、駐車ブレーキ29が設けられている。
【0023】
図2に示される30は、作業変速装置である。作業変速装置30においては、入力軸17の動力が回転軸31および後回転軸32を介して入力され、入力された動力が変速されて動力取出軸14に伝達される。
【0024】
〔主変速部〕
主変速部18は、
図2に示されるように、遊星ギヤ装置18Aおよび無段変速装置18Bを備えている。遊星ギヤ装置18Aは、ミッションケース3の前後方向に並ぶ二つの遊星ギヤ装置部50,60を備えている。二つの遊星ギヤ装置部50,60のうちの前の遊星ギヤ装置部50と入力軸17とが第1ギヤ連動機構34を介して連結されている。無段変速装置18Bは、静油圧式の無段変速装置によって構成され、可変容量型の油圧ポンプP、および油圧モータMを備えている。無段変速装置18Bのポンプ軸と入力軸17とが第2ギヤ連動機構35および回転軸31を介して連動連結されている。無段変速装置18Bのモータ軸と二つの遊星ギヤ装置部50,60のうちの前の遊星ギヤ装置部50とが第3ギヤ連動機構36を介して連結されている。
【0025】
主変速部18においては、エンジン1からの動力が無段変速装置18Bによって変速され、変速された動力と、エンジン1から第3ギヤ連動機構36を介して伝達される動力とが遊星ギヤ装置18Aに入力されて二つの遊星ギヤ装置部50,60によって合成され、合成動力が三重軸に構成されている第1出力軸37a、第2出力軸37b、第3出力軸37cから出力される。
【0026】
〔段階分け伝動部〕
段階分け伝動部19は、
図2に示されるように、遊星ギヤ装置18Aの出力が入力される四つの段階分けクラッチCL1ないしCL4、四つの段階分けクラッチCL1ないしCL4が設けられた出力軸38を備えている。
【0027】
段階分け伝動部19においては、
図3に示されるように、無段変速装置18Bおよび四つの段階分けクラッチCL1ないしCL4が適切に操作されることにより、遊星ギヤ装置18Aからの合成動力が4段階の速度レンジに段階分けされて出力軸38から出力される。
【0028】
図12は、無段変速装置18Bの変速状態と、速度レンジと、段階分け伝動部19の出力軸38の回転速度Vとの関係を示す説明図である。
図12の縦軸は、出力軸38の回転速度Vを示す。
図12の横軸は、無段変速装置18Bの変速状態を示し、「N」は、中立状態を示し、「-MAX」は、逆回転方向における最高速の変速状態を示す。「+MAX」は、正回転方向における最高速の変速状態を示す。
【0029】
四つの段階分けクラッチCL1ないしCL4のうち、第1クラッチCL1が入り状態にされ、無段変速装置18Bが変速操作されると、第1出力軸37aの動力が1速ギヤ連動機構39aおよび第1クラッチCL1によって変速されて出力軸38から出力される。
図12に示されるように、出力軸38の回転速度が1速レンジの回転速度になり、無段変速装置18Bが「-MAX」から「+MAX」に向けて変速されるに伴い、出力軸38の回転速度Vが零速度[0]から1速レンジの最高速[V1]まで無段階に増速する。
【0030】
四つの段階分けクラッチCL1ないしCL4のうち、第2クラッチCL2が入り状態にされ、無段変速装置18Bが変速操作されると、第3出力軸37cの動力が2速ギヤ連動機構39bおよび第2クラッチCL2によって変速されて出力軸38から出力される。
図12に示されるように、出力軸38の回転速度が1速レンジより高速の2速レンジの回転速度になり、無段変速装置18Bが「+MAX」から「-MAX」に向けて変速されるに伴い、出力軸38の回転速度Vが2速レンジの最低速[V1]から2速レンジの最高速[V2]まで無段階に増速する。
【0031】
四つの段階分けクラッチCL1ないしCL4のうち、第3クラッチCL3が入り状態にされ、無段変速装置18Bが変速操作されると、第2出力軸37bの動力が3速ギヤ連動機構39cおよび第3クラッチCL3によって変速されて出力軸38から出力される。
図12に示されるように、出力軸38の回転速度が2速レンジより高速側の3速レンジの回転速度になり、無段変速装置18Bが[-MAX」から「+MAX」に向けて変速されるに伴い、出力軸38の回転速度Vが3速レンジの最低速[V2]から3速レンジの最高速[V3]まで無段階に増速する。
【0032】
四つの段階分けクラッチCL1ないしCL4のうち、第4クラッチCL4が入り状態にされ、無段変速装置18Bが変速操作されると、第3出力軸37cの動力が4速ギヤ連動機構39dおよび第4クラッチCL4によって変速されて出力軸38から出力される。
図12に示されるように、出力軸38の回転速度が3速レンジより高速側の4速レンジの回転速度になり、無段変速装置18Bが「+MAX」から「-MAX」に向けて変速されるに伴い、出力軸38の回転速度Vが4速レンジの最低速[V3]から4速レンジの最高速[V4]まで無段階に増速する。
【0033】
〔前後進切換装置〕
前後進切換装置20は、
図2に示されるように、段階分け伝動部19の出力軸38に連動連結された入力軸40、入力軸40に設けられた前進クラッチCLFおよび後進クラッチCLR、前進クラッチCLFに前進ギヤ機構41fを介して連結され、後進クラッチCLRに後進ギヤ機構41rを介して連結された出力軸42を備えている。
【0034】
前後進切換装置20においては、前進クラッチCLFが入り状態にされると、段階分け伝動部19から入力軸40に伝達された動力が前進クラッチCLFおよび前進ギヤ機構41fによって前進動力に変換して出力軸42から出力される。後進クラッチCLRが入り状態にされると、段階分け伝動部19から入力軸40に伝達された動力が後進クラッチCLRおよび後進ギヤ機構41rによって後進動力に変換して出力軸42から出力される。
出力軸42から出力される前進動力および後進動力が後輪ギヤ連動機構21に伝達され、後輪ギヤ連動機構21によって後輪差動機構22の入力軸22aに伝達される。
【0035】
〔前輪伝動装置〕
前輪伝動装置26は、
図2に示されるように、後輪差動機構22の入力軸22aに前輪ギヤ連動機構25を介して連結された入力軸43、入力軸43に設けられた等速クラッチCLTおよび増速クラッチCLH、等速クラッチCLTに等速ギヤ機構44aを介して連結され、増速クラッチCLHに増速ギヤ機構44bを介して連結された出力軸45を備えている。
【0036】
前輪伝動装置26においては、等速クラッチCLTが入り状態にされると、後輪差動機構22の入力軸22aから入力軸43に伝達される動力が等速クラッチCLTおよび等速ギヤ機構44aを介して出力軸45に伝達されて出力軸45から前輪差動機構28に伝達される。この場合、左右一対の前車輪6の平均周速度と左右一対の後車輪7の平均周速度がほぼ等しい状態で左右一対の前車輪6および左右一対の後車輪7が駆動される状態、いわゆる前後輪等速度の四輪駆動状態が現出される。増速クラッチCLHが入り状態にされると、後輪差動機構22の入力軸22aから入力軸43に伝達される動力が増速クラッチCLHおよび増速ギヤ機構44bを介して出力軸45に伝達されて出力軸45から前輪差動機構28に伝達される。この場合、左右一対の前車輪6の平均周速度が左右一対の後車輪7の平均周速度よりも速い状態で左右一対の前車輪6および左右一対の後車輪7が駆動される状態、いわゆる、前輪増速の四輪駆動状態が現出される。
【0037】
〔遊星ギヤ装置〕
遊星ギヤ装置18Aは、
図2、3に示されるように、ミッションケース3の前後方向に並ぶ二つの遊星ギヤ装置部50,60を備えている。遊星ギヤ装置18Aは、複合遊星ギヤ装置に構成されている。以下において、二つの遊星ギヤ装置部50,60のうちの前の遊星ギヤ装置部50を第1遊星ギヤ装置部50と称し、二つの遊星ギヤ装置部50,60のうちの後の遊星ギヤ装置部60を第2遊星ギヤ装置部60と称して説明する。
【0038】
〔第1遊星ギヤ装置部〕
第1遊星ギヤ装置部50は、
図2,3に示されるように、第1太陽ギヤ51と、第1太陽ギヤ51と噛合う第1遊星ギヤ52と、第1遊星ギヤ52と噛合う第1内歯ギヤ53と、第1遊星ギヤ52を回転可能に支持し、かつ、第1太陽ギヤ51の周りを公転する第1遊星ギヤ52と共に第1太陽ギヤ51の軸芯X(
図4参照)を回転中心にして回転するキャリヤ70と、を備えている。
【0039】
第1太陽ギヤ51は、
図3に示されるように、回転軸31によって構成される太陽支軸に回転可能に支持されている。以下、回転軸31を太陽支軸31と称する。第1太陽ギヤ51は、
図2に示されるように、第3ギヤ連動機構36に連動連結されている。具体的には、
図3に示されるように、第1太陽ギヤ51に備えられたボス部51aがキャリヤ70よりも前側まで延ばされ、ボス部51aの延伸部に、第3ギヤ連動機構36の伝動ギヤ36aが連動連結されている。ボス部51aと伝動ギヤ36aとの連動連結は、スプライン係合によって行われている。
【0040】
第1遊星ギヤ52は、
図4に示されるように、第1太陽ギヤ51の周りの三箇所に設けられている。各第1遊星ギヤ52は、
図3に示されるように、第1遊星支軸54に回転可能に支持されている。第1遊星ギヤ52と第1遊星支軸54との間にブシュ55が設けられている。
【0041】
第1内歯ギヤ53は、
図3に示されるように、第1太陽ギヤ51のボス部51aに回転可能に支持されている。具体的には、第1内歯ギヤ53に備えらえたボス部53aが、ボス部53aと第1太陽ギヤ51のボス部51aの間に位置する筒部材56を介してボス部51aに外嵌されている。第1内歯ギヤ53は、
図2に示されるように、第1ギヤ連動機構34に連動連結されている。具体的には、
図3に示されるように、第1内歯ギヤ53のボス部53aと筒部材56とがスプライン係合によって連動連結され、筒部材56と、第1ギヤ連動機構34の伝動ギヤ34aとがスプライン係合によって連動連結されている。
【0042】
〔第2遊星ギヤ装置部〕
第2遊星ギヤ装置部60は、
図2、5に示されるように、第2太陽ギヤ61と、第2太陽ギヤ61と噛合う第2遊星ギヤ62と、第2遊星ギヤ62と噛合う第2内歯ギヤ63と、第1遊星ギヤ52に噛合わされ、第1遊星ギヤ52の回転を第2遊星ギヤ62に伝達する伝動ギヤ64(
図4参照)と、第2遊星ギヤ62を回転可能に支持し、かつ、第2太陽ギヤ61の周りを公転する第2太陽ギヤ61と共に第2太陽ギヤ61の軸芯Z(
図5参照)を回転中心にして回転するキャリヤ70と、を備えている。
【0043】
第2太陽ギヤ61は、
図3に示されるように、第3出力軸37cのうち、キャリヤ70の内部に入り込んでいる部位に支持されている。第2太陽ギヤ61の軸芯Zは、第1太陽ギヤ51の軸芯上に位置している。第2太陽ギヤ61の軸芯Zと第1太陽ギヤ51の軸芯Xとは、同一の軸芯である。第2太陽ギヤ61は、
図2に示されるように、第3出力軸37cに連動連結されている。第2太陽ギヤ61と第3出力軸37cは、
図3に示されるように、スプライン係合によって連動連結されている。
【0044】
第2遊星ギヤ62は、
図5に示されるように、第2太陽ギヤ61の周りの三箇所に設けられている。第2遊星ギヤ62の数と、第1遊星ギヤ52の数と同じである。各第2遊星ギヤ62は、
図3に示されるように、第2遊星支軸65に回転可能に支持されている。
【0045】
伝動ギヤ64は、
図4に示されるように、三箇所の第1遊星ギヤ52および三箇所の第2遊星ギヤ62に対応させて設けられている。伝動ギヤ64の数は、第1遊星ギヤ52の数、および第2遊星ギヤ62の数と同じである。伝動ギヤ64は、
図3に示されるように、第2遊星支軸65のうち、第2遊星ギヤ62よりも前側に位置する部位に支持されている。伝動ギヤ64は、第2遊星ギヤ62に対して連動連結され、第1遊星ギヤ52との噛合いによって入力した第1遊星ギヤ52の回転を第2遊星ギヤ62に伝達する。第2遊星ギヤ62と第2遊星支軸65の間、伝動ギヤ64と第2遊星支軸65の間の各間に、ブシュ66が設けられている。本実施形態では、伝動ギヤ64と第2遊星ギヤ62の連動連結は、伝動ギヤ64と第2遊星ギヤ62との一体形成によって連動連結されている。伝動ギヤ64と第2遊星ギヤ62とを第2遊星支軸65によって連動連結するものであってもよい。
【0046】
第2内歯ギヤ63は、
図2,3に示されるように、第1出力軸37aの前部に支持され、かつ、第1出力軸37aに連動連結されている。具体的には、第2内歯ギヤ63と第1出力軸37aとの連動連結は、第2内歯ギヤ63に備えられているボス部63aと第1出力軸37aとのスプライン係合によって行われている。
【0047】
〔キャリヤの構成〕
第1遊星ギヤ装置部50のキャリヤ70と、第2遊星ギヤ装置部60のキャリヤ70とは、同一のキャリヤ70によって構成されている。キャリヤ70は、次の如く構成されている。
【0048】
キャリヤ70は、
図3に示されるように、第1内歯ギヤ53のボス部53a、および、第2内歯ギヤ63のボス部63aに支持されている。キャリヤ70とボス部53aの間にボールベアリング71が設けられ、キャリヤ70とボス部63aの間にボールベアリング72が設けられている。キャリヤ70は、ボス部53aおよびボス部63aに回転可能に支持され、第1太陽ギヤ51の周りを公転する第1遊星ギヤ52と共に第1太陽ギヤ51の軸芯Xを回転中心にして回転し(
図4参照)、かつ、第2太陽ギヤ61の周りを公転する第2遊星ギヤ62と共に第2太陽ギヤ61の軸芯Zを回転中心して回転する(
図5参照)。
【0049】
キャリヤ70は、
図3に示されるように、第1遊星支軸54と、第2遊星支軸65と、第1太陽ギヤ51、第2太陽ギヤ61、第1遊星ギヤ52、第2遊星ギヤ62および伝動ギヤ64を収容する第1キャリヤ部70Aと、第1キャリヤ部70Aに対する蓋体を構成する第2キャリヤ部70Bと、を備えている。
【0050】
第1キャリヤ部70Aと第2キャリヤ部70Bは、
図6に示されるように、第1太陽ギヤ51の軸芯方向および第2太陽ギヤ61の軸芯方向に分離可能に構成されている。
【0051】
図6に示されるように、第1キャリヤ部70Aの中心部に、太陽支軸31が挿通し、かつ、第2出力軸37bの前部が入り込み、さらに第3出力軸37cの前部が入り込む第1貫通穴73が設けられている。第1貫通穴73は、第2出力軸37bのスプライン軸部37s(
図3参照)に係合するスプライン穴に構成されている。第1貫通穴73よりも第2キャリヤ部側(前側)の箇所に、第1太陽ギヤ51及び第2太陽ギヤ61を収容する太陽ギヤ収容空間74が第1貫通穴73に連通する状態で設けられている。太陽ギヤ収容空間74は、第2キャリヤ部側に向けて開放され、太陽ギヤ収容空間74に対して第2キャリヤ部側(前側)から第1太陽ギヤ51および第2太陽ギヤ61の組み込むことを可能に構成されている。
【0052】
太陽ギヤ収容空間74の周りの箇所に、三つの第1遊星ギヤ52を各別に収容する三つの第1ギヤ収容空間75、および、三つの第2遊星ギヤ62を各別に収容する三つの第2ギヤ収容空間76が設けられている。三つの第1ギヤ収容空間75および三つの第2ギヤ収容空間76は、第1ギヤ収容空間75同士の間に一つの第2ギヤ収容空間76が位置する状態でキャリヤ周方向に並んでいる。
【0053】
第2ギヤ収容空間76は、伝動ギヤ64の収容が可能に構成されている。第2ギヤ収容空間76の第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向の奥行深さは、第1ギヤ収容空間75の第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向の奥行深さよりも深くされている。第1ギヤ収容空間75と第2ギヤ収容空間76とは、
図8に示されるように、第1遊星ギヤ52と伝動ギヤ64との噛合いが可能なようにキャリヤ周方向において連通している。
【0054】
図7,8に示されるように、第1ギヤ収容空間75は、第1遊星ギヤ52のうちの第1内歯ギヤ53に噛合う部位が第1ギヤ収容空間75からキャリヤ外周側に突出するように構成されている。第2ギヤ収容空間76は、第2太陽ギヤ61のうちの第2内歯ギヤ63に噛合う部位が第2ギヤ収容空間76からキャリヤ外周側に突出するように構成されている。
【0055】
図6に示されるように、第1ギヤ収容空間75の第2キャリヤ部側端部(前端部)に、第1ギヤ収容空間75を第2キャリヤ部70Bに向けて開放し、かつ、第1ギヤ収容空間75に対する第1遊星ギヤ52の組み込みを可能にする第1開口77が設けられている。
第1キャリヤ部70Aのうち、第1ギヤ収容空間75に対して第1開口77が位置する側と反対側の部位に、第1遊星支軸54のうち、第1遊星ギヤ52よりも第1遊星支軸一端側に位置する第1支軸第1端部54a(
図3,6参照)を支持する第1支軸第1支持穴78が設けられている。第1支軸第1支持穴78は、第1ギヤ収容空間75に連通する状態で設けられている。
【0056】
図6に示されるように、第2ギヤ収容空間76の第2キャリヤ部側端部(前端部)に、第2ギヤ収容空間76を第2キャリヤ部70Bに向けて開放し、かつ、第2ギヤ収容空間76に対する第2遊星ギヤ62および伝動ギヤ64の組み込みを可能にする第2開口79が設けられている。第1キャリヤ部70Aのうち、第2ギヤ収容空間76に対して第2開口79が位置する側と反対側の部位に、第2遊星支軸65のうち、伝動ギヤ64よりも第2遊星支軸一端側に位置し、かつ第2遊星ギヤ62よりも第2遊星支軸一端側に位置する第2支軸第1端部65a(
図3,6参照)を支持する第2支軸第1支持穴80が設けられている。第2支軸第1支持穴80は、第2ギヤ収容空間76に連通する状態で設けられている。
【0057】
図6に示されるように、第1キャリヤ部70Aのうち、第1ギヤ収容空間75におけるキャリヤ径方向外側の部位と、第2ギヤ収容空間76におけるキャリヤ直径方向外側の部位との間に、補強部81が設けられている。補強部81は、六箇所に設けられている。各補強部81は、第1キャリヤ部70Aに一体成形されている。補強部81は、
図8に示されるように、第1遊星ギヤ52の外周側部と、伝動ギヤ64の外周側部との間に位置する。
【0058】
図3に示されるように、第1キャリヤ部70Aの後部において、太陽ギヤ収容空間74よりも後側に位置する部位に、第1出力軸37aの前部、第2内歯ギヤ63のボス部63a、およびボールベアリング72が入り込む凹入部82が設けられている。
【0059】
第1キャリヤ部70Aは、鋳造によって作製され、鋳造後に第1キャリヤ部70Aの外周部84(
図6参照)が旋削されている。第1太陽ギヤ51の軸芯Xおよび第2太陽ギヤ61の軸芯Zまわりの第1キャリヤ部70Aの質量が均一になり、キャリヤ70の回転振動を防止できる。
【0060】
第2キャリヤ部70Bは、
図6,10,11に示されるように、外壁部85および内壁部86を備えている。外壁部85と内壁部86は、第2キャリヤ部70Bの外周部で繋がっている。
図3,6,10に示されるように、内壁部86の中心部に、第1太陽ギヤ51のボス部51aが挿通する第2貫通穴87が設けられている。外壁部85の中心部に、第1太陽ギヤ51のボス部51aが挿通し、かつ、筒部材56の後部、第1内歯ギヤ53のボス部53a、およびボールベアリング71が入り込む第3貫通穴88が設けられている。第2キャリヤ部70Bにおける第2貫通穴87の周りに、第1ギヤ収容空間75の第1開口77を塞ぐ第1蓋部89、および、第2ギヤ収容空間76の第2開口79を塞ぐ第2蓋部90が設けられている。
【0061】
図10,11に示されるように、第1蓋部89に、第1遊星支軸54のうち、第1遊星ギヤ52よりも第1遊星支軸他端側に位置する第1支軸第2端部54b(
図3,6参照)を支持する第1支軸第2支持穴91が設けられている。第1支軸第2支持穴91は、第1ギヤ収容空間75に向けて開口されており、第2キャリヤ部70Bが第1キャリヤ部70Aに連結されることによって第1ギヤ収容空間75に連通する。第2蓋部90に、第2遊星支軸65のうち、第2遊星ギヤ62よりも第2遊星支軸他端側に位置し、かつ、伝動ギヤ64よりも第2遊星支軸他端側に位置する第2支軸第2端部65b(
図3,6参照)を支持する第2支軸第2支持穴92が設けられている。第2支軸第2支持穴92は、第2ギヤ収容空間76に向けて開口されており、第2キャリヤ部70Bが第1キャリヤ部70Aに連結されることによって第2ギヤ収容空間76に連通する。
【0062】
図6,11に示されるように、第2キャリヤ部70Bのうちの第3貫通穴88の周りの部位に、第2キャリヤ部70Bを第1キャリヤ部70Aに連結する連結部93が設けられている。連結部93は、六つの補強部81に対応させて設けられ、六箇所に位置している。各連結部93は、
図7に示されるように、連結部93に備えられたボルト穴94(
図6参照)と、補強部81に備えられたネジ穴95(
図6参照)とにねじ部材としての連結ボルト96(
図6参照)が装着され、連結ボルト96によって補強部81に締め付けられる。連結ボルト96は、第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向の軸芯を有している。補強部81は、第1キャリヤ部70Aに対して第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向に締め付け連結されて第2キャリヤ部70Bを第1キャリヤ部70Aに連結する。
【0063】
キャリヤ70は、次の如き組み立て方法に基づいて得ることが可能である。
図6に示される如く第1遊星ギヤ52を第1遊星支軸54に取り付けた状態で第1ギヤ収容空間75に第1開口77から差し入れて第1遊星支軸54の第1支軸第1端部54aを第1支軸第1支持穴78に挿入する。すると、第1支軸第1端部54aが第1支軸第1支持穴78に支持される。第1支軸第1端部54aが第1キャリヤ部70Aに支持される。
【0064】
図6に示される如く第2遊星ギヤ62および伝動ギヤ64を第2遊星支軸65に取り付けた状態で第2ギヤ収容空間76に第2開口79から差し入れて第2遊星支軸65の第2支軸第1端部65aを第2支軸第1支持穴80に挿入する。すると、第2支軸第1端部65aが第2支軸第1支持穴80に支持される。すなわち、第2支軸第1端部65aが第1キャリヤ部70Aに支持される。
【0065】
このようにして、三つの第1遊星ギヤ52を第1ギヤ収容空間75に差し入れ、三つの第1遊星支軸54の第1支軸第1端部54aを第1支軸第1支持穴78に支持させ、三つの第2遊星ギヤ62および三つの伝動ギヤ64を第2ギヤ収容空間76に差し入れ、三つの第2遊星支軸65の第2支軸第1端部65aを第2支軸第1支持穴80に支持させる。
【0066】
次に、第1支軸第2支持穴91が第1遊星支軸54の第1支軸第2端部54bに対向し、かつ、第2支軸第2支持穴92が第2遊星支軸65の第2支軸第2端部65bに対向するように第2キャリヤ部70Bを第1遊星支軸54および第2遊星支軸65に対して位置合わせし、連結部93において、ボルト穴94とネジ穴95に装着した連結ボルト96を締め付け操作する。連結部93が補強部81(第1キャリヤ部70A)に締め付けられて行くのに伴い、各第1遊星支軸54の第1支軸第2端部54bが第1支軸第2支持穴91に入り込んで行き、各第2遊星支軸65の第2支軸第2端部65bが第2支軸第2支持穴92に入り込んで行く。
【0067】
連結ボルト96の締め付けが完了すると、連結部93が補強部81に締め付け連結されて、第1遊星ギヤ52が第1ギヤ収容空間75に収容されると共に第2遊星ギヤ62および伝動ギヤ64が第2ギヤ収容空間76に収容されて第1開口77および第2開口79が第2キャリヤ部70Bによって塞がれ、第1キャリヤ部70Aと第2キャリヤ部70Bとが連動して第1太陽ギヤ51の軸芯Xを回転中心して、第2太陽ギヤ61の軸芯Zを回転中心にして回転する状態にキャリヤ70がなる。かつ、第1キャリヤ部70Aと第2キャリヤ部70Bとが補強部81によって連結されて補強部81によって補強された状態にキャリヤ70がなる。
【0068】
〔潤滑油供給の構成〕
図3,9に示されるように、第1太陽ギヤ51を支持する太陽支軸31の外周部に、太陽支軸31と第1太陽ギヤ51との間に潤滑油を供給する太陽給油路100が設けられている。太陽給油路100は、太陽支軸31の周方向での2箇所に設けられている。太陽給油路100は、太陽支軸31の軸芯に沿って第3出力軸37cと太陽支軸31との間にまで直線状に延びる状態で設けられ、第3出力軸37cと太陽支軸31との間に対する給油も可能に構成されている。
図3に示されるように、太陽給油路100は、太陽支軸31の前端部に外嵌された筒部17aに穿設された給油路101から給油される。筒部17aは、入力軸17の後部に備えられている。
【0069】
図3,9に示されるように、第1遊星支軸54に、第1遊星支軸54と第1遊星ギヤ52との間に潤滑油を供給する第1遊星給油路102が設けられている。第1遊星給油路102は、三つの第1遊星支軸54に設けられている。具体的には、
図9示されるように、第1遊星給油路102は、第1遊星支軸54の軸芯方向に沿う状態で第1遊星支軸54に穿設された上流油路部102aと、第1遊星支軸54の軸芯に対して直交する状態で第1遊星支軸54に穿設され、上流油路部102aを第1遊星支軸54の外周囲の2箇所に接続している下流油路部102bと、を備えている。
【0070】
第1遊星給油路102においては、潤滑油が上流油路部102aに供給されて上流油路部102aから下流油路部102bに流入し、下流油路部102bから第1遊星支軸54と第1遊星ギヤ52の間に位置するブシュ55に供給されることによって第1遊星支軸54と第1遊星ギヤ52との間に供給される。
【0071】
図3,9に示されるように、第1遊星給油路102は、キャリヤ70の内部に設けられた第1供給油路103によって太陽給油路100に接続されている。第1供給油路103は、キャリヤ70の半径方向に沿って延びると共にキャリヤ70(第2キャリヤ部70B)に沿う状態で設けられ、キャリヤ70の回転によって太陽給油路100から潤滑油を取り入れ、取り入れた潤滑油を第1遊星給油路102に供給する。すなわち、第1供給油路103に位置する潤滑油がキャリヤ70の回転によって遠心力が付与されて第1遊星給油路102に向かって流動し、この流動によって、太陽給油路100の潤滑油が第1供給油路103に取り入れられ、第1供給油路103から第1遊星給油路102に供給される。
【0072】
第1供給油路103は、太陽給油路100に開口している第1上流側油路部103a、第1遊星給油路102に開口している第1下流側油路部103b、第1上流側油路部103aと第1下流側油路部103bを接続する第1接続油路部103cを備えている。第1上流側油路部103aは、第1太陽ギヤ51の前端部と筒部材56の後端部とによって形成され、第1太陽ギヤ51のボス部51aに設けられた貫通穴51bを介して太陽給油路100に開口している。第1下流側油路部103bは、第2キャリヤ部70Bの第1支軸第2支持穴91、内壁部86、およびボールベアリング71によって形成されている。第1下流側油路部103bの第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向の幅が第1上流側油路部103aの第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向の幅よりも狭くされている。第1接続油路部103cは、内壁部86のうちの第2貫通穴87に近い部分に備えられた傾斜部104と、第1内歯ギヤ53のボス部53aとによって形成されている。第1接続油路部103cの第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向での幅は、傾斜部104の作用により、第1下流側油路部側ほど狭くなっている。第1上流側油路部103aから第1下流側油路部103bに向けて流れる潤滑油に対して第1接続油路部103cが絞り作用し、第1下流側油路部103bが第1上流側油路部103aよりも幅狭まであり、第1上流側油路部103aにおける油量に変化があっても、第1下流側油路部103bにおける油量が安定化する。
【0073】
図3,9に示されるように、第2遊星支軸65に、第2遊星支軸65と伝動ギヤ64の間に、かつ第2遊星支軸65と第2遊星ギヤ62との間に潤滑油を供給する第2遊星給油路105が設けられている。第2遊星給油路105は、三つの第2遊星支軸65に設けられている。具体的には、
図9示されるように、第2遊星給油路105は、第2遊星支軸65の軸芯方向に沿う状態で第2遊星支軸65に穿設された上流油路部105a、第2遊星支軸65の軸芯に対して直交する状態で第2遊星支軸65に穿設され、上流油路部105aを第2遊星支軸65の外周囲のうちの伝動ギヤ64に対応する部位と第2遊星支軸65の外周囲のうちの第2遊星ギヤ62に対応する部位とに各別に接続している二つの下流油路部105bを備えている。下流油路部105bは、第2遊星支軸65の外周囲の2箇所に開口している。
【0074】
第2遊星給油路105においては、潤滑油が上流油路部105aに供給されて上流油路部105aから二つの下流油路部105bに流入し、一方の下流油路部105bから第2遊星支軸65と伝動ギヤ64の間に位置するブシュ66に供給されることによって第2遊星支軸65と伝動ギヤ64の間に供給され、他方の下流油路部105bから第2遊星支軸65と第2遊星ギヤ62の間に位置するブシュ55に供給されることによって第2遊星支軸65と第2遊星ギヤ62との間に供給される。
【0075】
図3,9に示されるように、第2遊星給油路105は、キャリヤ70の内部に設けられた第2供給油路106によって太陽給油路100に接続されている。第2供給油路106は、キャリヤ70の半径方向に沿って延びると共にキャリヤ70(第2キャリヤ部70B)に沿う状態で設けられ、キャリヤ70の回転によって太陽給油路100から潤滑油を取り入れ、取り入れた潤滑油を第2遊星給油路105に供給する。すなわち、第2供給油路106に位置する潤滑油がキャリヤ70の回転によって遠心力が付与されて第2遊星給油路105に向かって流動し、この流動によって、太陽給油路100の潤滑油が第2供給油路106に取り入れられ、第2供給油路106から第2遊星給油路105に供給される。
【0076】
第2供給油路106は、太陽給油路100に開口している第2上流側油路部106a、第2遊星給油路105に開口している第2下流側油路部106b、第2上流側油路部106aと第2下流側油路部106bを接続する第2接続油路部106cを備えている。第2上流側油路部106aは、第1太陽ギヤ51の前端部と筒部材56の後端部とによって形成され、第1太陽ギヤ51のボス部51aに設けられた貫通穴51bを介して太陽給油路100に開口している。第2下流側油路部106bは、第2キャリヤ部70Bの第2支軸第2支持穴92、内壁部86、およびボールベアリング71によって形成されている。第2下流側油路部106bの第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向の幅が第2上流側油路部106aの第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向の幅よりも狭くされている。第2接続油路部106cは、内壁部86のうちの第2貫通穴87に近い部分に備えられた傾斜部104と、第1内歯ギヤ53のボス部53aとによって形成されている。第2接続油路部106cの第1太陽ギヤ51の軸芯方向に沿う方向での幅は、傾斜部104の作用により、第2下流側油路部側ほど狭くなっている。第2上流側油路部106aから第2下流側油路部106bに向けて流れる潤滑油に対して第2接続油路部106cが絞り作用し、第2下流側油路部106bが第2上流側油路部106aよりも幅狭まであり、第2上流側油路部106aにおける油量に変化があっても、第2下流側油路部106bにおける油量が安定化する。
【0077】
本実施形態では、三つの第1遊星給油路102に給油する第1供給油路103、および、三つの第2遊星給油路105に給油する第2供給油路106は、キャリヤ70の周方向に連通する状態で設けられている。
【0078】
給油路101から太陽給油路100に供給された潤滑油が太陽給油路100から太陽支軸31と第1太陽ギヤ51との間に供給される。また、太陽給油路100から太陽支軸31と第3出力軸37cとの間に供給される。キャリヤ70が回転することにより、太陽給油路100に位置する潤滑油が第1供給油路103に取り入れられて第1供給油路103から第1遊星給油路102に供給され、第1遊星給油路102から第1遊星支軸54と第1遊星ギヤ52の間に供給される。また、キャリヤ70が回転することにより、太陽給油路100に位置する潤滑油が第2供給油路106に取り入れられて第2供給油路106から第2遊星給油路105に供給され、第2遊星給油路105から第2遊星支軸65と伝動ギヤ64との間に、かつ第2遊星支軸65と第2遊星ギヤ62との間に供給される。
【0079】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、三つの遊星ギヤ52を備えているが、二つあるいは四つ以上の遊星ギヤを備えるものであってもよい。
【0080】
(2)上記した実施形態では、第2太陽ギヤ61、第2遊星ギヤ62、第2内歯ギヤ63及び伝動ギヤ64を備えているが、第1太陽ギヤ51、第1遊星ギヤ52、第1内歯ギヤ53のみを備えるものであってもよい。
【0081】
(3)上記した実施形態では、第1キャリヤ部70Aが鋳造製であり、第1キャリヤ部70Aの外周部が旋削加工されている例を示したが、これに限らない。たとえば、鋳造製であって、旋削加工されていないもの、あるいは、鋳造以外の製作方法によって作製されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、トラクタの他、コンバイン、多目的車両など、各種の車両に備えられる遊星ギヤ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0083】
51 太陽ギヤ(第1太陽ギヤ)
52 遊星ギヤ(第1遊星ギヤ)
53 内歯ギヤ(第1内歯ギヤ)
54 遊星支軸(第1遊星支軸)
54a 第1端部(第1支軸第1端部)
54b 第2端部(第1支軸第2端部)
61 第2太陽ギヤ
62 第2遊星ギヤ
63 第2内歯ギヤ
64 伝動ギヤ
65 第2遊星支軸
65a 第2支軸第1端部
65b 第2支軸第2端部
70 キャリヤ
70A 第1キャリヤ部
70B 第2キャリヤ部
75 ギヤ収容空間(第1ギヤ収容空間)
76 第2ギヤ収容空間
77 開口(第1開口)
78 第1支持穴(第1軸第1支持穴)
79 第2開口
80 第2支軸第1支持穴
81 補強部
89 蓋部(第1蓋部)
90 第2蓋部
91 第2支持穴(第1支軸第2支持穴)
92 第2支軸第2支持穴
93 連結部
96 連結部
X 軸芯(第1太陽ギヤの軸芯)
Z 軸芯(第2太陽ギヤの軸芯)