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特許7382908作業機械を制御するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/85 20060101AFI20231110BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F9/20 Q
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020123405
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020114
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】門野 裕一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-236759(JP,A)
【文献】特開2016-172963(JP,A)
【文献】特開2018-021345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/85
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を含む作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械の現在位置を検出する位置センサと、
前記位置センサと通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得し、
掘削対象となる現況地形の傾斜角を取得し、
前記作業機械の後進時の最大登坂角を取得し、
前記傾斜角と前記最大登坂角とに基づいて、前記現況地形に対する掘削角を決定し、
前記掘削角に基づいて目標掘削軌跡を決定し、
前記目標掘削軌跡に従って前記作業機を制御する、
システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記傾斜角と前記掘削角との和が、前記最大登坂角以下になるように、前記掘削角を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記現況地形を示す現況地形データを取得し、
前記現況地形データから前記傾斜角を取得する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記作業機械の傾きを検出する傾きセンサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記作業機械の傾きを取得し、
前記作業機械の傾きに基づいて、前記現況地形の前記傾斜角を取得する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記作業機械の傾きを検出する傾きセンサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記現況地形の掘削中に、前記作業機械の傾きを監視し、
前記作業機械の傾きが前記最大登坂角を超える前に、前記作業機を上昇させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記作業機械の傾きを検出する傾きセンサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記現況地形の掘削中に、前記作業機械の傾きを監視し、
前記作業機械の傾きが前記最大登坂角を超えないように、前記目標掘削軌跡を修正する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
作業機を含む作業機械を制御するための方法であって、
前記作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得することと、
掘削対象となる現況地形の傾斜角を取得することと、
前記作業機械の後進時の最大登坂角を取得することと、
前記傾斜角と前記最大登坂角とに基づいて、前記現況地形に対する掘削角を決定することと、
前記掘削角に基づいて目標掘削軌跡を決定することと、
前記目標掘削軌跡に従って前記作業機を制御すること、
を備える方法。
【請求項8】
前記傾斜角と前記掘削角との和が、前記最大登坂角以下になるように、前記掘削角を決定することをさらに備える、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記現況地形を示す現況地形データを取得することと、
前記現況地形データから前記傾斜角を取得すること、
をさらに備える請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記作業機械の傾きを取得することと、
前記作業機械の傾きに基づいて、前記現況地形の前記傾斜角を取得すること、
をさらに備える請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記現況地形の掘削中に、前記作業機械の傾きを監視することと、
前記作業機械の傾きが前記最大登坂角を超える前に、前記作業機を上昇させること、
をさらに備える請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記現況地形の掘削中に、前記作業機械の傾きを監視することと、
前記作業機械の傾きが前記最大登坂角を超えないように、前記目標掘削軌跡を修正すること、
をさらに備える請求項7に記載の方法。
【請求項13】
作業機と、
作業機械の現在位置を検出する位置センサと、
前記位置センサと通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得し、
掘削対象となる現況地形の傾斜角を取得し、
前記作業機械の後進時の最大登坂角を取得し、
前記傾斜角と前記最大登坂角とに基づいて、前記現況地形に対する掘削角を決定し、
前記掘削角に基づいて目標掘削軌跡を決定し、
前記目標掘削軌跡に従って前記作業機を制御する、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機を含む作業機械を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザ、或いはグレーダ等の作業機械において、作業機の位置を自動的に制御する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、作業機械のコントローラは、現況地形の傾斜角を取得する。コントローラは、現況地形の傾斜角よりも小さい傾斜角で傾斜した仮想設計面を決定する。コントローラは、傾斜した仮想設計面に沿って作業機が移動するように作業機を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-21345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械は、前進しながら現況地形を掘削し、その後、後進して、掘削後の地形を通って戻ることがある。このような作業において、仮想設計面が、作業機械の現在位置から下方に傾斜している場合、掘削後の地形は、下り勾配の坂道となる。その場合、坂道の傾斜角が急すぎると、作業機械が後進して坂道を登ることが不可能になり、現況地形の掘削後に、作業機械の移動が困難になってしまう。本開示の目的は、現況地形の掘削後の作業機械の移動を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様に係るシステムは、作業機を含む作業機械を制御するためのシステムであって、センサとコントローラとを備える。センサは、作業機械の現在位置を検出する。コントローラは、センサと通信する。コントローラは、以下の処理を実行するように構成されている。コントローラは、作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得する。コントローラは、掘削対象となる現況地形の傾斜角を取得する。コントローラは、作業機械の後進時の最大登坂角を取得する。コントローラは、傾斜角と最大登坂角とに基づいて、現況地形に対する掘削角を決定する。コントローラは、掘削角に基づいて目標掘削軌跡を決定する。コントローラは、目標掘削軌跡に従って作業機を制御する。
【0006】
本開示の第2の態様に係る方法は、作業機を含む作業機械を制御するための方法であって、以下の処理を備える。第1の処理は、作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得することである。第2の処理は、掘削対象となる現況地形の傾斜角を取得することである。第3の処理は、作業機械の最大登坂角を取得することである。第4の処理は、傾斜角と最大登坂角とに基づいて、現況地形に対する掘削角を決定することである。第5の処理は、掘削角に基づいて目標掘削軌跡を決定することである。第6の処理は、目標掘削軌跡に従って作業機を制御することである。
【0007】
本開示の第3の態様に係る作業機械は、作業機と、位置センサと、コントローラとを備える。位置センサは、作業機械の現在位置を検出する。コントローラは、位置センサと通信する。コントローラは、以下の処理を実行するように構成されている。コントローラは、作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得する。コントローラは、掘削対象となる現況地形の傾斜角を取得する。コントローラは、作業機械の後進時の最大登坂角を取得する。コントローラは、傾斜角と最大登坂角とに基づいて、現況地形に対する掘削角を決定する。コントローラは、掘削角に基づいて目標掘削軌跡を決定する。コントローラは、目標掘削軌跡に従って作業機を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業機械の最大登坂角と現況地形の傾斜角とに基づいて、目標掘削軌跡の掘削角が決定される。そのため、作業機械が、掘削後に現況地形の坂道を登れなくなることが防止される。それにより、現況地形の掘削後の作業機械の移動が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る作業機械の側面図である。
図2】作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】ワークサイトの現況地形の側面図である。
図4】作業機械の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図5】目標設計面と目標掘削軌跡の一例を示す図である。
図6】掘削後の地形の一例を示す図である。
図7】他の実施形態に係る作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図8】変形例に係る目標設計面と目標掘削軌跡の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る作業機械1の制御システムおよび制御方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0011】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。
【0012】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。リフトフレーム17は、上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。
【0013】
ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に動作する。リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、上下に動作する。
【0014】
図2は、作業機械1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0015】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、油圧アクチュエータ25に供給される。油圧アクチュエータ25は、上述したリフトシリンダ19を含む。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0016】
油圧アクチュエータ25と油圧ポンプ23との間には、制御弁26が配置されている。制御弁26は、比例制御弁であり、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。なお、制御弁26は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁26は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0017】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。或いは、動力伝達装置24は、HST(Hydro Static Transmission)などの他の方式の動力伝達装置であってもよい。
【0018】
制御システム3は、コントローラ31と、位置センサ32と、通信装置33と、ストレージ34と、入力装置35と、傾きセンサ36とを備える。コントローラ31は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ31は、メモリ38とプロセッサ39とを含む。メモリ38は、例えばRAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)とを含む。ストレージ34は、例えば、半導体メモリ、或いはハードディスクなどを含む。メモリ38とストレージ34とは、作業機械1を制御するためのコンピュータ指令およびデータを記録している。
【0019】
プロセッサ39は、例えばCPUであるが、他の種類のプロセッサであってもよい。プロセッサ39は、メモリ38或いはストレージ34に記憶されたコンピュータ指令およびデータに基づいて、作業機械1を制御するための処理を実行する。通信装置33は、例えば無線通信用のモジュールであり、作業機械1の外部の機器と通信を行う。通信装置33は、モバイル通信ネットワークを利用するものであってもよい。或いは、通信装置33は、LAN(Local Area Network)、或いはインターネットなどの他のネットワークを利用するものであってもよい。
【0020】
位置センサ32は、作業機械1の位置を検出する。位置センサ32は、例えば、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバを含む。位置センサ32は、車体11に搭載されている。或いは、位置センサ32は、作業機13などの他の位置に搭載されてもよい。コントローラ31は、作業機械1の現在位置を示す現在位置データを位置センサ32から取得する。
【0021】
傾きセンサ36は、作業機械1の傾きを検出する。傾きセンサ36は、例えばIMU(Inertial Measurement Unit)である。作業機械1の傾きは、車体11の傾きを示す。作業機械1の傾きは、車体11のロール角とピッチ角とを含む。ロール角は、水平方向に対する車体11の左右方向の角度である。ピッチ角は、水平方向に対する車体11の前後方向の角度である。傾きセンサ36は、作業機械1の傾きを示す機械傾きデータを出力する。コントローラ31は、傾きセンサ36から機械傾きデータを取得する。
【0022】
入力装置35は、オペレータによって操作可能である。入力装置35は、例えばタッチスクリーンを含んでもよい。入力装置35は、オペレータによる操作を受け付け、オペレータの操作を示す信号をコントローラ31に出力する。
【0023】
コントローラ31は、エンジン22、油圧ポンプ23、動力伝達装置24、及び制御弁26に指令信号を出力することで、これらの装置を制御する。例えば、コントローラ31は、油圧ポンプ23の容量、及び、制御弁26の開度を制御することで、油圧アクチュエータ25を動作させる。これにより、作業機13を動作させることができる。
【0024】
コントローラ31は、エンジン22の回転速度、及び、動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を走行させる。例えば、動力伝達装置24がHSTの場合、コントローラ31は、HSTの油圧ポンプの容量と油圧モータの容量とを制御する。動力伝達装置24が複数の変速ギアを有するトランスミッションの場合、コントローラ31は、ギアシフト用のアクチュエータを制御する。また、コントローラ31は、左右の履帯16に速度差が生じるように、動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を旋回させる。
【0025】
次に、コントローラ31によって実行される、作業機械1の自動制御について説明する。コントローラ31は、エンジン22及び動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を自動的に走行させる。また、コントローラ31は、エンジン22、油圧ポンプ23、及び制御弁26を制御することで、作業機13を自動的に制御する。
【0026】
以下、ワークサイトにおいて作業機械1によって行われる掘削作業の自動制御について説明する。図3は、ワークサイトの現況地形40の側面図である。本実施形態では、作業機械は、自動制御によってスロットドージングを行う。スロットドージングは、作業機械1が、同一のスロット上で前進と後進とを繰り返して掘削を行う作業がある。図3は、あるスロットにおける現況地形40の側面図を示している。図3に示すように、作業機械1は、現況地形40が目標設計面50に沿った形状となるように、現況地形40を掘削する。
【0027】
作業機械1は、目標掘削軌跡51-53を決定する。目標掘削軌跡51-53は、それぞれ掘削の開始位置P1-P3から目標設計面50に向かう作業機13の目標軌跡である。図3に示す例では、目標掘削軌跡51-53は、第1~第3目標掘削軌跡51-53を含む。開始位置P1-P3は、第1~第3開始位置P1-P3を含む。第1~第3開始位置P1-P3は、現況地形40上において間隔をおいて並んでいる。第1~第3開始位置P1-P3は、スロットが延びる方向に沿って配置されている。第1目標掘削軌跡51は、第1開始位置P1から下方に傾斜している。第2目標掘削軌跡52は、第2開始位置P2から下方に傾斜している。第3目標掘削軌跡53は、第3開始位置P3から下方に傾斜している。
【0028】
例えば、コントローラ31は、現況地形40上に所定間隔で並ぶ地点を開始位置P1-P3として決定してもよい。コントローラ31は、掘削される予想土量、或いは作業機械1の機械能力などのパラメータに応じて、開始位置P1-P3を決定してもよい。コントローラ31は、外部のコンピュータから、予め設定された開始位置P1-P3を取得してもよい。なお、図3に示す例では、開始位置の数は3つである。しかし、開始位置の数は3つに限らない。開始位置の数は、3つより少なくてもよく、或いは3つより多くてもよい。
【0029】
コントローラ31は、作業機械1を制御して第1開始位置P1から切換位置P0まで前進させながら、第1目標掘削軌跡51と目標設計面50とに従って作業機13を移動させる。それにより、現況地形40が、第1目標掘削軌跡51と目標設計面50とに従って掘削され、掘削された土砂が切換位置P0まで運ばれる。作業機械1が切換位置P0に到達すると、コントローラ31は、作業機械1を制御して次の開始位置(第2開始位置P2)まで後進させる。
【0030】
次に、コントローラ31は、作業機械1を制御して第2開始位置P2から切換位置P0まで前進させながら、第2目標掘削軌跡52と目標設計面50とに従って作業機13を移動させる。それにより、現況地形40が、第2目標掘削軌跡52と目標設計面50とに従って掘削され、掘削された土砂が切換位置P0まで運ばれる。作業機械1が切換位置P0に到達すると、コントローラ31は、作業機械1を制御して次の開始位置(第3開始位置P3)まで後進させる。そして、作業機械1が上記の動作を繰り返すことで、現況地形40が、目標設計面50に沿った形状となるように掘削される。
【0031】
図4は、作業機械1の自動制御の処理を示すフローチャートである。図4に示すように、ステップS101では、コントローラ31は、現在位置データを取得する。コントローラ31は、位置センサ32から現在位置データを取得する。ステップS102では、コントローラ31は、現況地形データを取得する。現況地形データは、現況地形40を示すデータである。例えば、現況地形データは、現況地形40の表面の平面座標と高さとを含む。
【0032】
ステップS103では、コントローラ31は、目標設計面50を取得する。目標設計面50の少なくとも一部は、現況地形40の下方に位置している。例えば、コントローラ31は、現況地形40を所定距離だけ下方に変位させることで、目標設計面50を決定してもよい。コントローラ31は、掘削される予想土量、或いは作業機械1の機械能力などのパラメータに応じて、目標設計面50を決定してもよい。オペレータが入力装置35によって手動で目標設計面50を設定してもよい。コントローラ31は、外部のコンピュータから、予め設定された目標設計面50を取得してもよい。
【0033】
ステップS104では、コントローラ31は、現況地形40の傾斜角A1を取得する。コントローラ31は、現況地形データから傾斜角A1を算出する。コントローラ31は、掘削作業の開始位置P1における現況地形40の傾斜角A1を算出する。図5に示すように、現況地形40の傾斜角A1は、開始位置P1における現況地形40の接線方向の水平方向に対する角度である。
【0034】
ステップS105では、コントローラ31は、作業機械1の後進時の最大登坂角を取得する。例えば、作業機械1の後進時の最大登坂角は、メモリ38或いはストレージ34に保存されている。或いは、コントローラ31は、外部のコンピュータから作業機械1の後進時の最大登坂角を取得してもよい。
【0035】
ステップS106では、コントローラ31は、掘削角A2を決定する。図5に示すように、掘削角A2は、現況地形40の傾斜方向に対する目標掘削軌跡51の角度である。コントローラ31は、傾斜角A1と掘削角A2との和が、最大登坂角以下になるように、掘削角A2を決定する。例えば、コントローラ31は、傾斜角A1と掘削角A2との和が最大登坂角と等しくなるように、掘削角A2を決定する。或いは、コントローラ31は、傾斜角A1と掘削角A2との和が、1より小さい所定の比率を最大登坂角に乗じた値と等しくなるように、掘削角A2を決定してもよい。或いは、コントローラ31は、傾斜角A1と掘削角A2との和が、最大登坂角よりも所定角度だけ小さくなるように、掘削角A2を決定してもよい。
【0036】
ステップS107では、コントローラ31は、目標掘削軌跡51を決定する。コントローラ31は、掘削角A2に基づいて目標掘削軌跡51を決定する。コントローラ31は、開始位置P1から現況地形40に対して掘削角A2で延びる軌跡を、目標掘削軌跡51として決定する。
【0037】
ステップS108では、コントローラ31は、目標掘削軌跡51と目標設計面50とに従って作業機13を制御する。コントローラ31は、作業機械1を前進させながら、作業機13の刃先を目標掘削軌跡51に従って移動させる。また、コントローラ31は、作業機械1を前進させながら、作業機13の刃先を目標設計面50に従って移動させる。
【0038】
ステップS109では、コントローラ31は、作業機械1が切換位置P0に到達したかを判定する。コントローラ31は、現況地形データから切換位置P0を決定してもよい。オペレータが入力装置35によって手動で切換位置P0を設定してもよい。コントローラ31は、外部のコンピュータから、予め設定された切換位置P0を取得してもよい。コントローラ31は、作業機械1が切換位置P0に到達するまで、ステップS108の処理を続ける。ただし、作業機械1への負荷が過剰に大きくなったときなど特定の条件が満たされたときには、コントローラ31は、作業機13を上昇させてもよい。
【0039】
作業機械1が切換位置P0に到達したときには、処理は、ステップS110に進む。ステップS110では、コントローラ31は、次の開始位置P2まで作業機械1を後進させる。このとき、図6に示すように、作業機械1は、掘削によって形成された現況地形40の坂道41を後進で登る。
【0040】
ステップS111では、コントローラ31は、現況地形データを更新する。例えば、コントローラ31は、現在位置データから、作業機13の刃先の最新の軌跡を取得する。コントローラ31は、作業機13の刃先の最新の軌跡を最新の現況地形40として、現況地形データを更新する。或いは、コントローラ31は、履帯16の底面の軌跡を最新の現況地形40として、現況地形データを更新してもよい。或いは、コントローラ31は、作業機械1の外部の測量装置によって計測された測量データによって、現況地形データを更新してもよい。現況地形データの更新は、随時、行われてもよい。或いは、現況地形データの更新は、所定のタイミングで行われてもよい。
【0041】
他の目標掘削軌跡52,53についても上記の処理と同様に決定される。そして、上記の処理が繰り返されることにより、現況地形40が目標設計面50に近づくように、現況地形40が掘削される。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1の制御システム3および制御方法では、作業機械1の最大登坂角と現況地形40の傾斜角A1とに基づいて、目標掘削軌跡51-53の掘削角A2が決定される。従って、図6に示すように、掘削後に形成される現況地形40の坂道41の水平方向に対する傾斜角度A3は、作業機械1の後進時の最大登坂角以下になる。それにより、作業機械1が、掘削後に現況地形40の坂道41を登れなくなることが防止される。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ等の他の機械であってもよい。走行装置12は、履帯に限らず、タイヤを含んでもよい。コントローラ31は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。上述した処理は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。
【0044】
作業機械1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、作業機械1から運転室が省略されてもよい。制御システム3の一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。図7に示すように、コントローラ31は、作業機械1の外部に配置されるリモートコントローラ311と、作業機械1に搭載される車載コントローラ312とを含んでもよい。リモートコントローラ311と車載コントローラ312とは通信装置33,36を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ31の機能の一部がリモートコントローラ311によって実行され、残りの機能が車載コントローラ312によって実行されてもよい。例えば、目標掘削軌跡51-53を決定する処理がリモートコントローラ311によって実行され、作業機械1を動作させる処理が車載コントローラ312によって実行されてもよい。
【0045】
作業機械1の自動制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。例えば、図7に示すように、作業機械1の外部に配置された操作装置37をオペレータが操作することによって作業機械1が遠隔操作されてもよい。或いは、操作装置37は、作業機械1に搭載されてもよい。
【0046】
作業機械1の自動制御の処理は、上述した処理に限らず、変更されてもよい。例えば、上記の処理の一部が、変更、或いは省略されてもよい。自動制御の処理に、上記の処理と異なる処理が追加されてもよい。
【0047】
例えば、コントローラ31は、傾きセンサ36が検出した機械傾きデータに基づいて、現況地形40の傾斜角A1を取得してもよい。コントローラ31は、作業機械1のピッチ角から、現況地形40の傾斜角A1を算出してもよい。
【0048】
コントローラ31は、現況地形40の掘削中に、作業機械1の傾きを監視してもよい。コントローラ31は、作業機械1の傾きが最大登坂角を超える前に、作業機13を目標掘削軌跡51よりも上方に上昇させてもよい。或いは、コントローラ31は、作業機械1の傾きが最大登坂角を超えないように、目標掘削軌跡51を修正してもよい。例えば、図8に示すように、コントローラ31は、開始位置P1から当初の目標掘削軌跡51に従って、作業機13を移動させる。コントローラ31は、掘削中に、作業機械1の傾きを監視し、作業機械1の傾きが所定の上限値に到達したかを判定する。
【0049】
所定の上限値は、最大登坂角以下である。コントローラ31は、作業機械1の傾きが所定の上限値に到達したときに、当初の目標掘削軌跡51よりも作業機13を上昇させる。或いは、コントローラ31は、作業機械1の傾きが所定の上限値に到達したときに、掘削角A2が小さくなるように目標掘削軌跡51を修正する。図8において、軌跡51’は、掘削中に作業機13を上昇させたときの作業機13の刃先の軌跡、或いは、目標掘削軌跡51の修正後の軌跡を示している。
【0050】
なお、コントローラ31は、作業機械1の傾きが増大して最大登坂角に到達したときに、作業機13を上昇、或いは目標掘削軌跡51を修正してもよい。或いは、コントローラ31は、作業機械1の傾きが、最大登坂角に1より小さい所定の比率を乗じた値と等しくなったときに、作業機13を上昇、或いは目標掘削軌跡51を修正してもよい。或いは、コントローラ31は、作業機械1の傾きが、最大登坂角よりも所定角度だけ小さい値と等しくなったときに、作業機13を上昇、或いは目標掘削軌跡51を修正してもよい。
【0051】
コントローラ31は、上述した掘削角を上限として、目標掘削軌跡51を決定してもよい。例えば、コントローラ31は、掘削される土量、或いは作業機械1の機械能力などのパラメータに基づいて、現況地形40に対する目標掘削軌跡51の目標角度の初期値を決定する。コントローラ31は、目標角度の初期値が掘削角以下であるときには、コントローラ31は、初期値を目標角度として決定する。コントローラ31は、開始位置から目標角度で延びる軌跡を目標掘削軌跡51として決定する。コントローラ31は、目標角度の初期値が掘削角より大きいときには、掘削角を目標角度として決定する。この場合、上記の実施形態と同様に、コントローラ31は、開始位置から掘削角で延びる軌跡を目標掘削軌跡51として決定する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示によれば、現況地形の掘削後の作業機械の移動を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 作業機械
31 コントローラ
32 位置センサ
36 傾きセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8