(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20231110BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20231110BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20231110BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
E04H1/02
B64F1/12
B64F1/36
B64C39/02
(21)【出願番号】P 2020156942
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】能浦 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳
(72)【発明者】
【氏名】山下 登教
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107085780(CN,A)
【文献】特開2001-227247(JP,A)
【文献】特開2006-328918(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0050572(KR,A)
【文献】特開2007-301344(JP,A)
【文献】特開2018-148992(JP,A)
【文献】特開2018-193061(JP,A)
【文献】特開2020-051176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
B64F 1/12,1/36
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁の一方側に第一空間が設けられ、他方側に第二空間が設けられた建物において、
前記第二空間は、無人航空機が離着陸する屋外ポート空間とされており、
前記外壁に貫通形成されて前記第一空間と前記第二空間とを連通する第三空間と、
前記第二空間と前記第三空間との間を移動可能に構成され、前記無人航空機が前記第二空間に荷物を輸送してきた場合に当該荷物を受け取る受取部と、を備え、
前記第二空間は、前記外壁の他方側に設けられた床によって床面が構成され、
前記第三空間は、
前記荷物を受け取った状態の前記受取部を収容可能な奥行きと高さを有する空間であって、かつ、前記第二空間の前記床と同一の床レベルで連続する床によって床面が構成されており、
前記受取部は、
自律的に走行移動する移動体であり、前記第二空間における前記床の床面と、前記第三空間における前記床の床面との間を走行移動可能となって
おり、
前記外壁は、前記第三空間における前記第一空間側の第一開口部を開閉する第一開閉扉を有し、前記第一開閉扉は、前記受取部に前記荷物がある場合に前記第一開口部の開放が可能となっていることを特徴とする建物。
【請求項2】
請求項1に記載の建物において、
前記外壁は、前記第三空間における前記第
二空間側の第
二開口部を開閉する第
二開閉扉を有しており、
前記第
二開閉扉は、前記受取部
が、前記第二空間と前記第三空間との間を移動する場合に前記第
二開口部の開放が可能となっていることを特徴とする建物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建物において、
少なくとも前記外壁及び前記第一空間の上方には屋根が設けられ、
前記第二空間の上方には、前記屋根によって遮られず、かつ、前記無人航空機が通過する領域があることを特徴とする建物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の建物において、
前記外壁は、前記第三空間内に設けられて、前記受取部に搭載されたバッテリに電力を供給するための給電部を有することを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機が離着陸する屋外ポート空間を備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無人航空機による荷物の配送が行われており、これに伴い、荷物の受け取りを行う側の建物にも、荷物を受け取るための設備が設けられることとなる。
例えば特許文献1の設備は、バルコニーの手摺りに設置された箱状の本体部内に、荷物を受ける荷台が格納されており、無人飛行機が接近すると荷台を本体部から出して荷物を受け取り、荷物を受け取ると、その荷物ごと荷台を本体部に格納する構成となっている。
特許文献2の設備は、例えば戸建て住宅よりも規模の大きい建物における外壁に設けられた開口部を利用した設備であり、当該開口部を通って建物内に進入した無人航空機から荷物を受け取る構成となっている。また、開口部から外部にステージを出して荷物のみを収容することも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-051279号公報
【文献】特開2019-023020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1における設備の場合、バルコニーの手摺りに設置するため、安全に留意した設置状態の確保が求められていた。
また、特許文献2における設備の場合、無人航空機が滞りなく飛行、離着陸したり、荷物の収容を行ったりするためには、建物内に十分な広さのスペースを確保しなければならず、設備の導入に制約があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、例えば戸建て住宅等のような規模の小さい建物であっても無人航空機の離着陸のための場所を確保でき、無人航空機の離着陸を安全かつ確実に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1~
図8に示すように、外壁7(第二厚型壁体7)
の一方側第一空間2a(第一バルコニー2a)が設けられ、他方側に第二空間DP(ドローンポートDP)が設けられた建物1において、
前記第二空間DPは、無人航空機Drが離着陸する屋外ポート空間とされており、
前記外壁7に貫通形成されて前記第一空間2aと前記第二空間DPとを連通する第三空間70と、
前記第二空間DPと前記第三空間70との間を移動可能に構成され、前記無人航空機Drが前記第二空間DPに荷物Aを輸送してきた場合に当該荷物Aを受け取る受取部50と、を備え、
前記第二空間DPは、前記外壁7の他方側に設けられた床60(ポート床60)によって床面が構成され、
前記第三空間70は、
前記荷物Aを受け取った状態の前記受取部50を収容可能な奥行きと高さを有する空間であって、かつ、前記第二空間DPの前記床60と同一の床レベルで連続する床によって床面が構成されており、
前記受取部50は、
自律的に走行移動する移動体であり、前記第二空間DPにおける前記床60の床面と、前記第三空間における前記床の床面との間を走行移動可能となって
おり、
前記外壁7は、前記第三空間70における前記第一空間2a側の第一開口部71を開閉する第一開閉扉71aを有し、前記第一開閉扉71aは、前記受取部50に前記荷物Aがある場合に前記第一開口部71の開放が可能となっていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、受取部50が、無人航空機Drが第二空間DPに輸送してきた荷物Aを受け取るので、受取部50は、荷物Aの受け取り後に第三空間70まで荷物Aを運搬することができる。人は、受取部50によって第三空間70まで運搬された荷物Aを、第一空間2aから受け取ることができるので、無人航空機Drが離着陸する第二空間DPに人が立ち入る必要がなくなる。すなわち、無人航空機Drの離着陸を行うことができ、かつ、受取部50が荷物Aを受け取ることができる場所を、建物1の屋外部分に確保すればよいので、建物1の屋内空間に、無人航空機Drが離着陸する専用の場所を確保する必要がなくなる。そのため、例えば戸建て住宅等のような規模の小さい建物(建物1)であっても無人航空機Drの離着陸のための場所を確保することができる。
さらに、人が頻繁に立ち入るような場所に、無人航空機Drが離着陸する設備を設置する必要がなくなるので、無人航空機Drの離着陸も、荷物Aの受け取りも安全かつ確実に行うことができる。
【0009】
また、第一開閉扉71aは、受取部50に荷物Aがある場合に第一開口部71の開放が可能となっているので、受取部50に荷物Aがあれば、第一開口部71が開放されて第三空間70から荷物Aを取り出すことができる。一方、受取部50に荷物Aがなければ第一開口部71を閉塞し、第三空間70側への人の立ち入りを制限することができるので、安全性に優れる。
【0010】
請求項
2に記載の発明は、例えば
図1~
図8に示すように、請求項
1に記載の建物1において、
前記外壁7は、前記第三空間70における前記第二空間DP側の第二開口部72を開閉する第二開閉扉72aを有しており、
前記第二開閉扉72aは、前記受取部50が、前記第二空間DPと前記第三空間70との間を移動する場合に前記第二開口部72の開放が可能となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、第二開閉扉72aは、受取部50が、第二空間DPと第三空間70との間を移動する場合に第二開口部72の開放が可能となっているので、受取部50が第二空間DPにいる場合と、受取部50が第三空間70に収容されている場合には、第二開口部72は閉塞されることとなる。そのため、第二空間DP側への人の立ち入りを制限することができるので、安全性に優れる。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、例えば
図1~
図8に示すように、請求項1
又は2に記載の建物1において、
少なくとも前記外壁7及び前記第一空間2aの上方には屋根が設けられ、
前記第二空間DPの上方には、前記屋根によって遮られず、かつ、前記無人航空機Drが通過する領域があることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、第二空間DPの上方には、屋根によって遮られず、かつ、無人航空機Drが通過する領域があるので、無人航空機Drの離着陸が屋根によって妨げられることを防ぎ、無人航空機Drの離着陸を安全かつ確実に行うことができる。
さらに、屋根は、少なくとも外壁7及び第一空間2aの上方に設けられているので、外壁7に貫通形成された第三空間70は、雨に濡れにくく、荷物Aを保管しておくのに最適な場所となる。また、第一空間2aも雨に濡れにくい空間であるため、荷物Aを取りに行きやすい。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、例えば
図1~
図8に示すように、請求項1から
3のいずれか一項に記載の建物1において、
前記外壁7は、前記第三空間70内に設けられて、前記受取部50に搭載されたバッテリに電力を供給するための給電部73,74を有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、外壁7は、第三空間70内に設けられて、受取部50に搭載されたバッテリに電力を供給するための給電部73,74を有するので、受取部50は、荷物Aの受け取りを行わないときには、第三空間70内で給電を受けながら待機することができる。そのため、受取部50が風雨にさらされるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば戸建て住宅等のような規模の小さい建物であっても無人航空機の離着陸のための場所を確保でき、無人航空機の離着陸を安全かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方角は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0019】
図1~
図5において符号1は建物を示す。この建物1は、2階建てであり、1階の一部、1.5階及び2階が住人用スペース(第一エリア)として、1階の一部が事務所や店舗として貸し出すことが可能なテナントスペース(第二エリア)として、1階の更に他の一部が、テナントスペースの従業者と住人が使用する共用スペースとして用いられている。
【0020】
建物1は、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場でパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てて構築するパネル工法で構築されるが、これに限られるものではなく、従来の軸組工法、壁式工法、ツーバイフォー工法等で構築されるものとしてもよい。
【0021】
また、パネルとは、建築用パネルであり、図示はしないが、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に、面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。その内部中空部(面材の裏側)には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。
【0022】
建物1の上には屋根が設けられ、屋根の直下であって建物1正面の2階にはバルコニー2が設けられている。バルコニー2には、
図3に示すように、建物1正面から東側にかけて手摺壁3が設けられている。
手摺壁3における西側端部の西側には、横長のルーバー材が上下に連なる格子壁部4が設けられている。また、手摺壁3の下端部には、手摺壁3よりも前方及び側方に張り出す庇5が設けられている。
【0023】
建物1正面の東側コーナーには、窓が設けられた他の外周壁よりも厚みのある状態に形成された第一厚型壁体6が、1階から屋根の高さまで設けられている。第一厚型壁体6の正面には、手摺壁3及び庇5の端部が接続されている。
第一厚型壁体6は、上記の建築用パネル(建築用壁パネル)を四角筒状に組んで構築したものであり、この第一厚型壁体6自体には開口部が形成されていない。
【0024】
手摺壁3における格子壁部4の西側には、第一厚型壁体6よりも厚みのある状態に形成された第二厚型壁体7(すなわち、外壁7)が、1階から屋根の高さまで設けられている。この第二厚型壁体7の上端部は、北側部分が屋根に達する高さとなっており、南側部分は、北側部分よりも高さが低く、屋根との間に隙間が形成された状態となっている。
第二厚型壁体7は、上記の建築用パネル(建築用壁パネル)を四角筒状に組んで構築したものである。そして、第二厚型壁体7には、複数の開口部7a,70(71,72),7cが形成されており、これら複数の開口部7a,70(71,72),7cから第二厚型壁体7の内部中空部HPを利用できるようになっている。当該内部中空部HPには、例えば給電部73(後述する)が設けられている。
【0025】
建物1正面の西側コーナーには、第一厚型壁体6と同等の厚み寸法に設定された第三厚型壁体8が、1階から2階床よりも上方に突出する程度の高さまで設けられている。
第三厚型壁体8は、上記の建築用パネル(建築用壁パネル)を四角筒状に組んで構築したものであり、この第三厚型壁体8自体には開口部が形成されていない。
【0026】
なお、第一厚型壁体6、第二厚型壁体7、第三厚型壁体8は、側面を構成する複数の側壁部SWと、複数の側壁部SWによって囲まれた位置に形成された上記の内部中空部HPと、をそれぞれ備えている。
側壁部SWは、上記の建築用パネル(建築用壁パネル)によって構成されている。そのため、建物1の各壁との一体性を確保しやすくなっている。
【0027】
バルコニー2の中央には、2階からバルコニー2側に突出した位置に配置されたインナーテラス部9の外壁9aが設けられている。
なお、手摺壁3における西側端部は、インナーテラス部9の外壁9aの正面に接続されている。そのため、バルコニー2は、インナーテラス部9を境界に、西側と東側に分割されている。なお、西側のバルコニー2を、以下、第一バルコニー2aと称し、東側のバルコニー2を、以下、第二バルコニー2bと称する。
【0028】
また、建物1の1階において、第二厚型壁体7の両側にはポーチ10,11がそれぞれ設けられており、本実施形態においては、西側のポーチが第一ポーチ10とされ、東側のポーチが第二ポーチ11とされている。
すなわち、第二厚型壁体7を境にして東側と西側に位置する領域は、この第二厚型壁体7によって概略的に分けられることになる。例えば東側と西側の領域のうち、一方をプライベート性の強い領域とし、他方をパブリック性の強い領域とすれば、第二厚型壁体7による領域分けの特性が際立ち、建物1における外観性を向上できるので好ましい。
【0029】
第一ポーチ10は、駐車スペースであり、テナントスペースの従業者と住人が使用する共用スペースとされている。また、第一ポーチ10は、建物1の正面から奥(北側)に伸びて設けられている。第二厚型壁体7と第三厚型壁体8との間に形成された開口部を通じて車両の出し入れを行うことができ、屋外に向かって開放されていることが常態とされている。
第一ポーチ10の奥(北側)には、建物1の玄関が設けられている。
【0030】
第一ポーチ10の上方には、建物1の外周壁と一体的に形成されたポーチ屋根12が設けられている。また、第一ポーチ10の西側には、第三厚型壁体8と南北方向に連続して配置されて共にポーチ屋根12を支持するポーチ壁13が設けられている。
【0031】
ポーチ壁13には、建物1の西側に位置し、かつ第一ポーチ10と屋外とを連通する西側開口部13aが形成されている。そして、この西側開口部13aには、横長の冷却ルーバー材が上下に連なる冷却ルーバー装置14が設置されている。
冷却ルーバー装置14は、保水した複数の冷却ルーバー材間を空気が流通したときの気化熱によって周囲の温度を下げるための装置であり、屋外から第一ポーチ10内に空気を取り込むのに合わせて第一ポーチ10内を冷却できるようになっている。
【0032】
第二ポーチ11は、建物1の南側面から東側面にかけて設けられたポーチであり、テナントスペースの従業者と住人が使用する共用スペースとされている。また、第二ポーチ11は、建物1の1階における部屋の南側及び東側に位置する外周壁に面している。
第二ポーチ11の床面は、床タイルによって仕上げられており、第一ポーチ10の床面よりも高さ位置が高く設定されている。
また、第二ポーチ11の南側縁部には、第二ポーチ11と地面とを繋ぐポーチ階段15と、箱型に形成されて上面が開口した花壇部16と、が設けられている。なお、ポーチ階段15も、第二ポーチ11と同様の床タイルによって仕上げられている。
【0033】
花壇部16は、階段15の東側端部から第二ポーチ11の東側端部にかけて長尺に形成されている。すなわち、花壇部16は、ポーチ階段15と共に、第二ポーチ11の南側縁部に沿って並んで設けられている。また、この花壇部16は、その上面の高さ位置が、第二ポーチ11の床面の高さ位置よりも上方に位置している。
【0034】
さらに、花壇部16は、第二ポーチ11の南側縁部に沿って設けられた花壇部16における本体部の東側端部から、建物1の東側面に回り込んで設けられた第二ポーチ11の縁部に沿って配置された延長壁部16aを有する。なお、この延長壁部16aの上面の高さ位置は、花壇部16の本体部の上面の高さ位置と等しく、第二ポーチ11の床面の高さ位置よりも上方に位置している。
【0035】
第二ポーチ11のうち、ポーチ階段15の北側に位置する部分であって、かつ第二厚型壁体7の東側に位置する部分は、平面視において東西方向よりも南北方向に長く伸びている。そして、このような第二ポーチ11のうちの南北方向に長い部分の北側には、第二ポーチ11と床面が連続する半屋外空間としてのラウンジ17が設けられている。なお、ラウンジ17の床面も、第二ポーチ11と同様の床タイルによって仕上げられている。
第二ポーチ11とラウンジ17との間の開口部(出入口)には、扉が設けられている。本実施形態において扉は、自動ドアとされている。
【0036】
ラウンジ17は、テナントスペースの従業者と住人が使用する共用スペースとされており、待合室として用いられるだけでなく、住人用スペース又はテナントスペースの前室としても用いられる。
ラウンジ17の奥(北側)には、建物1の玄関が設けられている。
【0037】
ラウンジ17の西側には、駐車スペースである第一ポーチ10が設けられ、東側には、テナントスペースである大空間室(図示省略)が設けられている。
さらに、ラウンジ17は、2階の天井まで吹き抜けた吹抜部17Vを有している。
【0038】
そして、建物1における1階部分のうち、第一ポーチ10、ラウンジ17、大空間室よりも北側に位置する領域は、住人用スペースとされている。
建物1における1階部分のうち住人用スペースとされた領域には、上記の玄関が設けられている。玄関の先には、1.5階及び2階に上がるためのエレベーター25と、1.5階及び2階に上がるための階段26と、が設けられている。
エレベーター25及び階段26を半階上がった位置には、図示はしないが、トイレ・洗面脱衣所・浴室からなる水廻り室が設けられている。この水廻り室の下方には、大空間室から利用する天井高の低い収納室が設けられている。
【0039】
階段26を更に上がって2階に到達するとホール29があり、ホール29の東側には、二段分の階段を上った位置に主寝室30が設けられている。主寝室30の東側には、ウォークインクローゼット30aが設けられている。
【0040】
ホール29及び主寝室30の南側には、リビングとダイニングとキッチンの機能を一室に併存させた部屋(以下、居室)31が設けられている。居室31は、ホール29との間に設けられた出入口と、主寝室30との間に設けられた出入口と、を有する。
居室31の南側には、上記のバルコニー2及びインナーテラス部9が設けられている。インナーテラス部9は、居室31からバルコニー2側に突出した位置に配置されており、居室31と連続する屋内空間として用いられている。
【0041】
インナーテラス部9の西側に形成された出入口の屋外側には、バルコニー2における第一バルコニー2a(第一空間)が設けられている。インナーテラス部9の東側に形成された出入口の屋外側には、バルコニー2における第二バルコニー2bが設けられている。
第一バルコニー2aは、上記の格子壁部4の内側に位置しており、屋外からの空気を取り込みやすくなっている。なお、格子壁部4に替えて、冷却ルーバー装置を設置してもよいものとする。
また、第一バルコニー2aの西側には、上記の第二厚型壁体7が設けられており、更にその西側には、無人航空機Dr(以下、ドローンDr)の離着陸場となる屋外空間としてのドローンポートDP(第二空間)が設けられている。
なお、ドローンポートDP周囲の建物1の構造や機能については後述する。
【0042】
また、ホール29の西側には、部屋32が設けられている。この部屋32は、例えば住人用スペースにおける仕事部屋として用いられている。なお、通信設備等を導入することによってテレワークを行うことも可能となっている。
部屋32とホール29との間に位置する中間領域32aには、トイレ及び洗面台が設けられている。
【0043】
そして、上記のラウンジ17上方における吹抜部17Vは、ポーチ屋根12よりも上方に位置しており、かつ、第一バルコニー2aと居室31と部屋32に囲まれた位置に設けられた状態となっている。
【0044】
吹抜部17Vの西側に位置し、かつポーチ屋根12の上方空間に面して設けられた壁33には、開閉可能なガラス窓を含む複数のガラス窓が設けられた排気用の開口部33aが形成されている。そして、排気用の開口部33aからは吹抜部17V内の空気を屋外に排出することができるようになっている。
すなわち、ポーチ屋根12の上方である屋外空間と吹抜部17Vとの間に設けられた壁33は、排気用壁33とされている。
【0045】
第一バルコニー2aの北側は、上記の吹抜部17Vとなっている。この吹抜部17Vとの間に設けられた壁34には開口部が形成されており、この開口部には、嵌め殺しの窓が設けられている。すなわち、第一バルコニー2aと吹抜部17Vとの間に設けられた壁34は、ガラス壁34となっている。そのため、第一バルコニー2aからは、ガラス壁34を通じてラウンジ17を見下ろすことができる。
【0046】
居室31の西側は、上記の吹抜部17Vとなっている。この吹抜部17Vとの間に設けられた壁35には開口部が形成されており、この開口部には、嵌め殺しの窓が設けられている。すなわち、居室31と吹抜部17Vとの間に設けられた壁35は、ガラス壁35となっている。そのため、居室31からは、ガラス壁35を通じてラウンジ17を見下ろすことができる。
【0047】
なお、ガラス壁35に採用されたガラスには、透明モードと不透明モードの切り替えを行うことが可能な調光ガラスが採用されている。透明モードにおいては、吹抜部17V及びラウンジ17の様子を視認できるだけでなく、平行する排気用壁33の開口部33aから屋外の様子も視認できる。不透明モードにおいては、ラウンジ17からの視線を遮断したり、居室31で使用されるプロジェクターからの画像を投影したりすることができる。
【0048】
部屋32の南側は、上記の吹抜部17Vとなっている。この吹抜部17Vとの間に設けられた壁36には開口部が形成されており、この開口部には、嵌め殺しの窓が設けられている。部屋32からは、壁36の窓を通じてラウンジ17を見下ろすことができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、壁36の開口部には嵌め殺しの窓が設けられるものとしたが、開閉可能な窓が設けられてもよい。これにより、部屋32とラウンジ17との間で人が声を交わしたり、ラウンジの様子を確認しやすくなったりする。また、開閉可能な窓の外(ラウンジ17側)に、例えば螺旋階段や梯子等の昇降手段を設けてもよい。
【0050】
以上の実施形態において、住宅等の建物における厚みの厚い上記の厚型壁体(第一厚型壁体6、第二厚型壁体7、第三厚型壁体8)とは、例えば浸水時における漂流物、強風時における飛来物から建物を保護する機能を発揮する。
このような厚型壁体は、外周壁の一部として、開口を有する外壁(例えば排気用壁33など)よりも外方に位置して設けられている。
また、厚型壁体は、建物から敷地外に向かって突出し、上記の開口を有する外壁よりも開口が少なく、かつ厚さが厚く形成されている。さらに、平面視においては建物の間口方向と直交する方向に長く形成されている。
【0051】
〔ドローンポートDP周囲の建物1の構造や機能について〕
本実施形態における建物1は、第二厚型壁体7を隔てて第一空間である第一バルコニー2aと、ドローンDrが離着陸する第二空間であるドローンポートDPとが設けられたものであり、第一空間2a及び第二空間DPの他に、第三空間70と、受取部50と、を備えている。
【0052】
まず、ドローンDrは、荷物Aの輸送用に用いられる小型の無人航空機である。機体の管理は、本実施形態においては宅配業者によって行われるものとするが、これに限られるものではなく、荷物Aの発送元である会社や個人等が管理してもよいし、荷物Aの発送先である会社や個人等が管理してもよい。
このようなドローンDrは、荷物Aを把持する把持部を有し、荷物Aを把持した状態で飛行が可能となっている。また、ドローンDrは、位置情報に基づいて出発地と目的地との間の往復飛行が可能となっている。
また、本実施形態におけるドローンDrは、荷物Aの輸送を目的としているが、これに限られるものではなく、単に飛行させることを目的としてもよい。
【0053】
第一空間である第一バルコニー2aは、屋根の下方に位置し、上方が屋根によって塞がれた状態となっており、東にはインナーテラス部9、西には第二厚型壁体7、北には吹抜部17Vに面するガラス壁34が設けられているため、インナーバルコニーのような状態となっている。ところが、本実施形態においては、特に、屋内空間であるインナーテラス部9とドローンポートDPとの間における行き来の場所として使用されるため、住人には、屋外空間として認識されつつも、屋内空間の延長として使用されることになる。そのため、本実施形態における第一バルコニー2aは、建物1における半屋外空間として位置づけられている。
ただし、これに限られるものではなく、インナーテラス部9を第二厚型壁体7まで延長してもよい。すなわち、本実施形態における第一空間は、半屋外空間(第一バルコニー2a)であるが、完全に屋内空間であってもよい。
一方で、第一空間は、荷物Aの開封を行う場合もあるため、屋根も掛かっていないような屋外空間とされることは好ましくない。換言すれば、屋外空間と認識される場所を第一空間として用いる場合は、少なくとも上方に屋根が設けられるものとする。
【0054】
第二空間DPは、ドローンDrが離着陸する屋外ポート空間、すなわち、ドローンポートDPとされており、メンテナンスや掃除等の特別な事情がある場合を除いて人の立ち入りが制限されている。
このドローンポートDPは、第二厚型壁体7の西側に設けられたポート床60によって床面が構成された空間である。そして、当該空間は、四方が、第二厚型壁体7と、当該第二厚型壁体7と平行に配置された第三厚型壁体8(ポーチ壁13)上端部のパラペット壁8aと、第二厚型壁体7及び第三厚型壁体8のパラペット壁8aと直交し、ポート床60における北側と南側の縁部に設けられたパラペット壁61,62と、によって囲まれている。
第三厚型壁体8におけるパラペット壁8aの上端部の高さ位置は、上記のように2階床よりも上方に突出する程度とされている。
ポート床60における北側と南側の縁部に設けられたパラペット壁61,62の上端部の高さ位置は、第三厚型壁体8におけるパラペット壁8aの上端部の高さ位置よりも低く設定されている。
また、ドローンポートDPの上方には、屋根によって遮られず、かつ、ドローンDrが通過することが可能な領域がある状態となっている。換言すれば、建物1の屋根における軒の出が、例えば平面視において、ドローンポートDPのポート床60を完全に覆い隠さない程度の寸法に設定されている。本実施形態においては、ポート床60における中央から西側半分以上が屋根によって遮蔽されていない状態となっている。
【0055】
第三空間70は、第二厚型壁体7に貫通形成されて第一バルコニー2aとドローンポートDPとを連通している。換言すれば、第三空間70は、第二厚型壁体7における内部中空部HPを利用した空間となっている。
このような第三空間70は、第二厚型壁体7を貫通して第一バルコニー2aに開口(第一開口部71)するとともに、ドローンポートDPにも開口(第二開口部72)する開口部の一つであって、かつ貫通孔でもある。
すなわち、第一空間である第一バルコニー2aと、第二空間であるドローンポートDPは、これらの中間領域である第三空間70によって一体に接続されている。
【0056】
受取部50は、ドローンDrがドローンポートDPの上空に荷物Aを輸送してきた場合に荷物Aを受け取る装置であり、第二空間であるドローンポートDPと第三空間70との間を移動可能に構成されている。
より詳細に説明すると、受取部50は、荷物Aが載置される載置部51と、載置部51の下面に設けられた複数の車輪52と、車輪52を回転させて受取部50を走行移動させるための駆動部53と、を備える。
【0057】
載置部51は、本実施形態においては板状に形成されており、上面に荷物Aが載置される。また、この載置部51の上面には太陽電池モジュール51aが設けられており、発電した電力を駆動部53で使用できるようになっている。
【0058】
複数の車輪52は、荷物Aが載置部51に載置されるとバランスが変化するため、少なくとも三輪以上のバランスが取れる数であることが好ましい。
【0059】
駆動部53は、車輪52の回転だけでなく、受取部50の進行方向もコントロールするコントローラとして機能する。つまり、受取部50を正常に稼働させるために必要な制御部や、各種プログラムや各種データが記憶された記憶部を備える。
また、この駆動部53は、通信部を備えており、ドローンDrにおける通信部との間で信号の送受信が可能となっている。そのため、ドローンDrの着陸位置に応じて複数の車輪52をコントロールし、荷物Aを確実に受け取ることができる。
なお、通信部に代えて、レーザー光線によるドローン誘導手段を採用してもよい。すなわち、受取部50がレーザーポインタを有し、ドローンDrが受光器を有する。そして、受取部50のレーザーポインタから照射されたレーザー光線を、ドローンDrの受光器が感知することにより、ドローンDrは、レーザー光線の光源側に向かって移動する仕組みとなっている。
【0060】
なお、以上のような受取部50は、第三空間70内が、ドローンDrが飛んでこない間の待機場所となっている。そのため、第二厚型壁体7は、第三空間70内に設けられて、受取部50に搭載されたバッテリに電力を供給するための給電部73を有する。
本実施形態における給電部73は、第三空間70内の壁面に設置されており、自身の近傍まで戻り、かつ、静止した状態の受取部50に対して電力を無線供給できるようになっている。受取部50は、荷物Aの受け取り完了時やバッテリの残存電力が少ない時に、給電部73(すなわち、第三空間70内)に戻るようプログラミングされている。
【0061】
第二厚型壁体7は、第三空間70における第一バルコニー2a側の第一開口部71を開閉する第一開閉扉71aを有するとともに、ドローンポートDP側の第二開口部72を開閉する第二開閉扉72aを有する。
【0062】
第一開閉扉71a及び第二開閉扉72aは、手動でも開閉させることは可能であるが、条件に応じて自動で開閉する構成となっている。すなわち、第一開閉扉71a及び第二開閉扉72aは、これらを開閉動作させるための開閉駆動部を介して第二厚型壁体7に設けられており、条件を満たすことで自動開閉される。
また、第一開閉扉71a及び第二開閉扉72aは、ロック機構を備えており、必要に応じた施錠・解錠が可能となっている。すなわち、第一開口部71及び第二開口部72を開放する場合はロック機構が解錠状態となり、第一開口部71及び第二開口部72を閉塞する場合はロック機構が施錠状態となる。
【0063】
第一開閉扉71aは、建物1の住人が、受取部50によって受け取った荷物Aを取りに行く場合か、もしくは、上記のようにメンテナンスや掃除等の特別な事情がある場合に開閉される扉である。メンテナンスや掃除等の特別な事情がある場合、第一開閉扉71aは手動によって開閉される。
したがって、第一開閉扉71aは、受取部50に荷物Aがある場合に第一開口部71の開放が可能となっている。ただし、受取部50に荷物Aが載置されていても、受取部50がドローンポートDP内にいる場合は、第一開口部71は開放されない。
受取部50に荷物Aがあるか否かの判別は、載置部51に重量センサーを設けてそのセンシング結果に基づいて行われてもよいし、第三空間70内の床に重量センサーを設けてそのセンシング結果に基づいて行われてもよい。また、受取部50を撮影できるカメラによって判別してもよいし、その他のセンサーを用いて判別してもよい。
【0064】
第二開閉扉72aは、ドローンDrが荷物Aを輸送してきた場合か、もしくは、上記のようにメンテナンスや掃除等の特別な事情がある場合に開閉される扉である。メンテナンスや掃除等の特別な事情がある場合、第二開閉扉72aは手動によって開閉される。
したがって、第二開閉扉72aは、受取部50が、第二空間DPと第三空間70との間を移動する場合に第二開口部72の開放が可能となっている。すなわち、ドローンDrが荷物Aを輸送してきた場合に第二開口部72が開放されて、受取部50が、第三空間70からドローンポートDPに移動する。そして、受取部50が荷物Aを受け取ってドローンポートDPから第三空間70に移動するときに第二開口部72が開放される。
なお、受取部50が、第三空間70からドローンポートDPに移動した後に、第二開口部72は第二開閉扉72aによって一旦閉塞されてもよいし、開放されたままの状態を維持してもよい。
【0065】
第一開閉扉71aと第二開閉扉72aの開閉動作は連動していてもよい。すなわち、第一開閉扉71aと第二開閉扉72aのうち、いずれか一方の開閉扉によって一方の開口部が開放されているときは、他方の開閉扉によって他方の開口部が閉塞される。この場合、上記のロック機構も連動しているものとする。
なお、第三空間70内への動物や人間の侵入を防ぐために、第三空間70内の床に重量センサーを設けることが望ましい。例えば重量センサーが検知した重量が荷物Aの重量よりも重いなどのような異常がある場合には、直前に開放されていた方の開口部を再度開放して、第三空間70内にいる動物や人間からの退出を促すようにする。
【0066】
本実施形態における第一開閉扉71aと第二開閉扉72aは、両開き式の扉とされているが、開閉方式は特に限定されるものではない。また、このような扉に代えて電動シャッターを採用してもよい。
【0067】
以上のような構成のドローンポートDP周囲の建物1の構造を踏まえた荷物A受け取りの流れについて説明する。
まず、ドローンDrが荷物Aを把持して建物1の上空まで飛行してくる。
ドローンDrの接近に伴い、第二開閉扉72aが開いて第二開口部72が開放され、待機中だった受取部50が、第三空間70からドローンポートDPに移動する。
受取部50は、ドローンDrとの間で通信を行い(レーザー誘導でもよい)、受け取り位置の微調整を行う。
ドローンDrは、荷物Aを把持したまま、受取部50の載置部51に着陸する。載置部51に荷物Aが確実に載置されたら、ドローンDrは、荷物Aの把持を解除して離陸し、帰投する。
受取部50は、ドローンDrが離陸した後、荷物Aを載置したまま第三空間70内に移動する。このとき、第二開閉扉72aによって第二開口部72が閉塞される。
その後、第一開閉扉71aが開いて第一開口部71が開放される。第一バルコニー2aにいる住人は、開放された第一開口部71から荷物Aを回収し、第一開閉扉71aを閉めて第一開口部71を閉塞する。
以上のような流れで、住人は荷物Aを受け取ることができる。
また、住人が留守中であっても、荷物Aを載置したままの受取部50を、第三空間70内に収容しておけば、荷物Aが雨に濡れたり、風に飛ばされたりすることを防ぐことができる。
【0068】
本実施形態によれば、受取部50が、ドローンDrがドローンポートDPに輸送してきた荷物Aを受け取るので、受取部50は、荷物Aの受け取り後に第三空間70まで荷物Aを運搬することができる。人は、受取部50によって第三空間70まで運搬された荷物Aを、第一バルコニー2aから受け取ることができるので、ドローンDrが離着陸するドローンポートDPに人が立ち入る必要がなくなる。すなわち、ドローンDrの離着陸を行うことができ、かつ、受取部50が荷物Aを受け取ることができる場所を、建物1の屋外部分に確保すればよいので、建物1の屋内空間に、ドローンDrが離着陸する専用の場所を確保する必要がなくなる。そのため、例えば戸建て住宅等のような規模の小さい建物1であってもドローンDrの離着陸のための場所を確保することができる。
さらに、人が頻繁に立ち入るような場所に、ドローンDrが離着陸する設備を設置する必要がなくなるので、ドローンDrの離着陸も、荷物Aの受け取りも安全かつ確実に行うことができる。
【0069】
また、第一開閉扉71aは、受取部50に荷物Aがある場合に第一開口部71の開閉が可能となっているので、受取部50に荷物Aがあれば、第一開口部71が開放されて第三空間70から荷物Aを取り出すことができる。一方、受取部50に荷物Aがなければ第一開口部71を閉塞し、第三空間70側への人の立ち入りを制限することができるので、安全性に優れる。
【0070】
また、第二開閉扉72aは、受取部50が、ドローンポートDPと第三空間70との間を移動する場合に第二開口部72の開放が可能となっているので、受取部50がドローンポートDPにいる場合と、受取部50が第三空間70に収容されている場合には、第二開口部72は閉塞されることとなる。そのため、ドローンポートDP側への人の立ち入りを制限することができるので、安全性に優れる。
【0071】
また、ドローンポートDPの上方には、屋根によって遮られず、かつ、ドローンDrが通過する領域があるので、ドローンDrの離着陸が屋根によって妨げられることを防ぎ、ドローンDrの離着陸を安全かつ確実に行うことができる。
さらに、屋根は、少なくとも外壁7及び第一バルコニー2aの上方に設けられているので、外壁7に貫通形成された第三空間70は、雨に濡れにくく、荷物Aを保管しておくのに最適な場所となる。また、第一バルコニー2aも雨に濡れにくい空間であるため、荷物Aを取りに行きやすい。
【0072】
また、外壁7は、第三空間70に設けられて、受取部50に搭載されたバッテリに電力を供給するための給電部73を有するので、受取部50は、荷物Aの受け取りを行わないときには、第三空間70内で給電を受けながら待機することができる。そのため、受取部50が風雨にさらされるのを防ぐことができる。
【0073】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0074】
〔変形例1〕
上記の実施形態においては、受取部50は、移動機構として複数の車輪52及び駆動部53を備えるものとしたが、本変形例における受取部50Aは、
図7に示すように、移動機構として固定レール55と、移動フレーム56と、を備える。
【0075】
固定レール55は、第三空間70からドローンポートDPにかけてポート床60に敷設されたレール材であり、南北方向よりも東西方向に長尺に形成されている。固定レール55の長さが、受取部50Aの東西方向の移動距離となるため、この固定レール55は、第三空間70における第一開口部71付近から、第三厚型壁体8の近傍までの長さに設定されている。
【0076】
移動フレーム56は、受取部50Aにおける載置部51を支持する支持部(図示省略)を有するとともに、下端部にスライド手段が設けられて固定レール55上をスライド走行するフレームであり、図示しない駆動部を有する。
さらに、移動フレーム56は、平面視において固定レール55と直交する方向(南北方向)に伸縮可能に構成されており、支持部によって支持された載置部51を、平面視において固定レール55と直交する方向に移動させることができる。
駆動部は、上記の実施形態における受取部50の駆動部53と同様に、受取部50Aの進行方向もコントロールするコントローラとして機能するとともに、ドローンポートDPとの間で通信を行うことができる。
また、この受取部50Aは、建物1の分電盤から有線で電力供給を受けて稼働する。
【0077】
なお、ポート床60に固定レール55が敷設されているため、第三空間70における第二開口部72を開閉する第二開閉扉72aの下端部は、その高さ位置が、固定レール55の上端部よりも上方に位置している。すなわち、第二開閉扉72aの下端部とポート床60との間には、固定レール55の高さ分の隙間が形成されている。
【0078】
本変形例によれば、移動フレーム56が固定レール55の長さ方向に沿って移動し、載置部51が移動フレーム56の伸縮機能によって、固定レール55と直交する方向に移動するので、受取部50Aは、ドローンポートDP内を縦・横・斜めに広く移動できることとなる。これにより、ドローンDrの離着陸を安全かつ確実に行うことができる。
また、受取部50Aは、建物1の分電盤から有線で電力供給を受けて稼働するので、ドローンDrからの荷物Aの受け取りをいつでも行うことができる。
なお、受取部50の移動機構は、例えば伸縮動作及び回転動作が可能なアーム式を採用してもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0079】
〔変形例2〕
上記の実施形態においては、第一空間である第一バルコニー2aにおける床面の高さ位置と、第二空間であるドローンポートDPにおけるポート床60上面の高さ位置と、が同等に設定されていたが、本変形例においては、
図8に示すように、第一バルコニー2aにおける床面の高さ位置が、ドローンポートDPにおけるポート床60上面の高さ位置よりも低く設定されている。
さらに、第三空間70内に収容された受取部50の載置部51上面に載置された荷物Aの高さは、ポート床60上面の高さ位置よりも高い。
これにより、第一バルコニー2aから第三空間70内に収容された荷物Aの高さは、荷物Aを取りに来た住人の目線の高さに近い状態となるので、荷物Aの状態を視認しやすく、かつ持ち上げやすい。
【0080】
また、本変形例における給電部74は、第三空間70内の床に設置されており、自身の近傍まで戻り、かつ静止した状態の受取部50に対して電力を無線供給できるようになっている。
【0081】
〔参考例〕
以下、参考例について説明する。以下に挙げる参考例は、例えば部分的に構成を抽出するなどして可能な限り上述の実施形態と組み合わせてもよい。また、以下の参考例において、上述の実施形態と共通する要素については、説明を省略又は簡略する。
【0082】
図9は、本参考例の建物200における1.5階を示す平断面図である。
建物200は、1.5階建てのオフィス兼住宅であり、住人用スペースと、テナントスペースと、共用スペースと、からなる。テナントスペースは地階にあり、スキップフロアである1階に、住人用スペースの一部と、共用スペースと、が設けられており、テナントスペースの直上に位置する1.5階に、住人用スペースの他の一部が設けられている。
【0083】
1階の居室の北側には、1.5階に上がるための階段212が設けられている。
階段212を上がった先には廊下213があり、廊下213の西側には寝室214が設けられている。また、廊下213の東側端部には水廻り室215が設けられている。
さらに、廊下213及び水廻り室215の東側には、上方が屋外に開放されたドローンポートDPが設けられている。
【0084】
屋内空間である廊下213は、ドローンポートDPとの間の外壁に形成された出入口213aを通じて行き来ができるようになっている。
本参考例によれば、ドローンポートDPが、屋内空間である廊下213と行き来ができるようになっているので、ドローンポートDPでドローンDrから受け取った荷物を、すぐに屋内空間に持ち込むことができる。
【符号の説明】
【0085】
1 建物
2 バルコニー
2a 第一バルコニー
7 第二厚型壁体
8 第三厚型壁体
10 第一ポーチ:駐車スペース
11 第二ポーチ
50 受取部
51 載置部
51a 太陽電池モジュール
52 車輪
53 駆動部
50A 受取部
55 固定レール
56 移動フレーム
60 ポート床
61 パラペット壁
62 パラペット壁
70 第三空間
71 第一開口部
71a 第一開閉扉
72 第二開口部
72a 第二開閉扉
73 給電部
74 給電部
DP ドローンポート
Dr 無人航空機(ドローン)
A 荷物