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特許7382919トランスフェリン受容体(TfR)に対するRNAアプタマー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】トランスフェリン受容体(TfR)に対するRNAアプタマー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20231110BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20231110BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20231110BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231110BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231110BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20231110BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
C12Q1/68
A61K31/7105
A61K45/00
A61K48/00
A61P35/00
C07K14/705
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2020507679
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018046343
(87)【国際公開番号】W WO2019033051
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】62/544,220
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/671,604
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598004424
【氏名又は名称】シティ・オブ・ホープ
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
(73)【特許権者】
【識別番号】517132739
【氏名又は名称】アプターナ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,ジョン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン,ソラー
(72)【発明者】
【氏名】ハビブ,ナギー
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/061386(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/127216(WO,A1)
【文献】Nucleic Acid Therapeutics,2016年,vol.26, no.6, p.348-354
【文献】Molecular Therapy-Nucleic Acids,2012年,vol.1, e21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなるリボ核酸化合物であって、前記リボ核酸化合物が、全長29ヌクレオチド以下のRNA配列を有し、かつ該RNA配列が、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができるリボ核酸化合物。
【請求項2】
請求項1に記載のリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、22ヌクレオチド以下の長さを有するリボ核酸化合物。
【請求項3】
請求項1に記載のリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、22ヌクレオチド長であるリボ核酸化合物。
【請求項4】
請求項1に記載のリボ核酸化合物であって、該RNA配列が、SEQ ID NO:1に対して100%の配列同一性を有するリボ核酸化合物。
【請求項5】
SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなるリボ核酸化合物であって、前記リボ核酸化合物が、全長29ヌクレオチド以下のRNA配列を有し、かつ該RNA配列が、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができるリボ核酸化合物。
【請求項6】
請求項5に記載のリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、16ヌクレオチド長であるリボ核酸化合物。
【請求項7】
請求項5に記載のリボ核酸化合物であって、該RNA配列が、SEQ ID NO:5に対して100%の配列同一性を有するリボ核酸化合物。
【請求項8】
請求項1に記載のリボ核酸化合物であって、該RNA配列が、細胞表面上のTfRに結合することができるリボ核酸化合物。
【請求項9】
請求項1に記載のリボ核酸化合物であって、細胞中に内部移行させられることができるリボ核酸化合物。
【請求項10】
請求項1に記載のリボ核酸化合物であって、血液脳関門を横切ることができるリボ核酸化合物。
【請求項11】
請求項1に記載のリボ核酸化合物であって、さらに前記のRNA配列に結合した化合物部分を含むリボ核酸化合物。
【請求項12】
請求項11に記載のリボ核酸化合物であって、該化合物部分が、療法的部分またはイメージング部分であるリボ核酸化合物。
【請求項13】
請求項11に記載のリボ核酸化合物であって、前記の化合物部分が、前記のRNA/DNA配列に共有結合しているリボ核酸化合物。
【請求項14】
請求項12に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、核酸部分、ペプチド部分または小分子薬物部分であるリボ核酸化合物。
【請求項15】
請求項12に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、活性化核酸部分またはアンチセンス核酸部分であるリボ核酸化合物。
【請求項16】
請求項12に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、miRNA、mRNA、saRNAまたはsiRNA部分であるリボ核酸化合物。
【請求項17】
請求項12に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、抗癌療法的部分であるリボ核酸化合物。
【請求項18】
請求項12に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、C/EBPアルファsaRNA部分、SIRT1 saRNA部分またはHNF saRNA部分であるリボ核酸化合物。
【請求項19】
請求項12に記載のリボ核酸化合物であって、該イメージング部分が、生物発光分子、光活性分子、金属またはナノ粒子であるリボ核酸化合物。
【請求項20】
請求項1に記載のリボ核酸化合物を含む医薬組成物であって、場合により薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の医薬組成物であって、さらに療法剤、場合により抗癌剤を含む医薬組成物。
【請求項22】
化合物部分を細胞中に送達するインビトロの方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を請求項11~19のいずれか1項に記載のリボ核酸化合物または請求項20もしくは21に記載の組成物と接触させ;そして
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ、それにより前記の化合物部分を前記の細胞中に送達する;
を含む方法。
【請求項23】
化合物を細胞中に送達するインビトロの方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を化合物および請求項1に記載のリボ核酸化合物と接触させ;そして
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ、それにより前記の化合物を前記の細胞中に送達する;
を含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記の化合物が、療法剤またはイメージング剤である方法。
【請求項25】
疾患または障害の医学的処置または予防の方法における使用のための請求項20もしくは請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
疾患または障害を処置または予防するための医薬品の製造における請求項1~19のいずれか1項に記載のリボ核酸化合物または請求項20もしくは請求項21に記載の組成物の使用。
【請求項27】
請求項25に記載の使用のための、請求項20もしくは請求項21に記載の組成物であって、該疾患または障害が癌である、前記組成物。
【請求項28】
請求項26に記載のリボ核酸化合物の使用であって、該疾患または障害が癌である、前記使用。
【請求項29】
請求項27に記載の使用のための、請求項20もしくは請求項21に記載の組成物であって、該処置が、さらに抗癌剤を投与することを含む、前記組成物。
【請求項30】
請求項28に記載のリボ核酸化合物の使用であって、該処置が、さらに抗癌剤を投与することを含む、前記使用。
【請求項31】
請求項25に記載の使用のための、請求項20もしくは請求項21に記載の組成物であって、該疾患または障害が、代謝障害または神経学的障害である、前記組成物。
【請求項32】
請求項26に記載のリボ核酸化合物の使用であって、該疾患または障害が、代謝障害または神経学的障害である、前記使用。
【請求項33】
細胞を検出するインビトロの方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を請求項1~13もしくは請求項19のいずれか1項に記載のリボ核酸化合物または請求項20に記載の組成物と接触させ、ここで、該リボ核酸化合物は、イメージング部分を含み;
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ;そして
(iii)前記のイメージング部分を検出し、それにより前記の細胞を検出する;
を含む方法。
【請求項34】
細胞を検出するインビトロの方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞をイメージング剤および請求項1に記載のリボ核酸化合物と接触させ;
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記のイメージング剤を前記の細胞中へと通過させ;そして
(iii)前記のイメージング剤を検出し、それにより前記の細胞を検出する;
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年8月11日に出願された米国仮出願第62/544,220号および2018年5月15日に出願された米国仮出願第62/671,604号に対する優先権を主張し、それは、全ての目的に関して参照によりそのまま本明細書に援用される。
【0002】
ASCIIファイルとして提出された“配列表”、表またはコンピュータープログラムリスト付属物への参照
2018年8月9日に作成されたファイル“EFSLIVE-17561747-v1-RICLP350028_ST25.txt”(8,935バイト、機械形式IBM-PC、MS-Windowsオペレーティングシステム)中に記載されている配列表が、参照により本明細書に援用される。
【0003】
発明の分野
本発明は、トランスフェリン受容体に結合することができる核酸化合物、特にリボ核酸化合物および組成物ならびに同じものを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
トランスフェリン受容体(TfR)は、細胞表面上で発現される膜糖タンパク質であり、それは、鉄の血漿糖タンパク質であるトランスフェリンからの細胞取込みを媒介している。トランスフェリンは、鉄に結合してトランスフェリン-鉄錯体を作り出す(Crichton & Charloteaux-Wauters, Eur J Biochem 1987; 164(3):485-506)。これらの錯体は、TfRに結合し、結合したトランスフェリンは、受容体に媒介されるエンドサイトーシスにより細胞中に内部移行させられる(Qian ZM et al., Pharmacol Rev. 2002, 54(4):561-587)。トランスフェリンおよび鉄は、続いてエンドソーム中で放出される。
【0005】
TfRは、典型的にはある範囲の正常細胞上で低レベルで発現され、活性化された免疫細胞(Bayer AL et al., J Leukoc Biol 1998 64: 19-24; Holland JP et al., Nat Med 2012 18: 1586-1591)および癌細胞(Daniels TR et al., Clin Immunol 2006 121: 144-158; Daniels TR et al., Clin Immunol 2006 121: 159-176)を含む高い増殖速度を有する細胞上で高度に発現されている。従って、TfRを発現している細胞の表面上のTfRに結合して細胞中に内部移行することができる化合物は、そのような化合物の標的化された送達に有用であろう。
【0006】
アプタマー(時々化学的抗体とも記載される)は、形状認識によりそれらの標的に結合する小さい一本鎖RNAまたはDNAである(Stottenburg R et al., Biomol Eng. 2007 Oct;24(4):381-403)。アプタマーは、それらの同族の標的の特異的分子認識が可能である独特の三次元構造を含み、それらは、それらの大きさ、製造プロセス、増大した安定性および免疫原性の欠如を含む抗体を超えるいくつかの利点を示す。TfRに結合することができるアプタマーは、参照により本明細書にそのまま援用される国際公開第2016/061386号において記載されている。
【0007】
TfRに結合するアプタマーは、体全体にわたる細胞への療法的ペイロードの標的化された送達の提供における用途があり得る。しかし、脳障害の処置は、血液脳関門(BBB)の存在により大いに妨げられ、それは、小分子の大部分が脳に入るのを制限する。Macdonaldら(ACS Chem. Neurosci. 2017, 8, 777-784)は、TfRに結合してBBBを越える能力を有する二機能性アプタマーを記載している。
【0008】
標的化された療法的送達に関するさらなる機序が、必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2016/061386号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Crichton & Charloteaux-Wauters, Eur J Biochem 1987; 164(3):485-506
【文献】Qian ZM et al., Pharmacol Rev. 2002, 54(4):561-587
【文献】Bayer AL et al., J Leukoc Biol 1998 64: 19-24
【文献】Holland JP et al., Nat Med 2012 18: 1586-1591
【文献】Daniels TR et al., Clin Immunol 2006 121: 144-158
【文献】Daniels TR et al., Clin Immunol 2006 121: 159-176
【文献】Stottenburg R et al., Biomol Eng. 2007 Oct;24(4):381-403
【文献】ACS Chem. Neurosci. 2017, 8, 777-784
【発明の概要】
【0011】
本発明は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができるRNA/DNA配列を含む核酸化合物、好ましくはリボ核酸化合物またはデオキシリボ核酸化合物を提供する。その核酸化合物は、29ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0012】
本発明の一側面において、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなるリボ核酸化合物が、提供され、ここで、前記のRNA配列は、29ヌクレオチド以下の長さを有する。そのRNA配列は、好ましくはトランスフェリン受容体(TfR)に結合することができ得る。
【0013】
ある態様において、そのRNA配列は、22ヌクレオチド以下の長さを有する。ある態様において、そのRNA配列は、22ヌクレオチド長である。ある態様において、そのRNA配列は、SEQ ID NO:1に対して100%の配列同一性を有する。
【0014】
別の側面において、本発明は、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなるリボ核酸化合物を提供し、ここで、前記のRNA配列は、29ヌクレオチド以下の長さを有し、かつここで、そのRNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。
【0015】
ある態様において、そのRNA配列は、16ヌクレオチド長である。ある態様において、そのRNA配列は、SEQ ID NO:5に対して100%の配列同一性を有する。
別の側面において、その化合物は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5を含むDNA配列を含むかまたはそれからなるデオキシリボ核酸化合物であり、ここで、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5中のリボヌクレオチドの1個またはいくつかまたは全部が、それらの均等なデオキシリボヌクレオチド残基dAMP、dGMP、dTMPまたはdCMPに置き換わっており、ここで、前記のDNA配列は、29ヌクレオチド以下の長さを有し、かつ場合によりここで、そのDNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。
【0016】
ある態様において、そのリボ核酸化合物またはデオキシリボ核酸化合物は、細胞表面上のTfRに結合することができる。ある態様において、そのリボ核酸化合物またはデオキシリボ核酸化合物は、細胞中に内部移行させられることができる。ある態様において、リボ核酸化合物またはデオキシリボ核酸化合物は、血液脳関門を横切ることができる。
【0017】
ある態様において、本明細書で提供される核酸化合物は、さらにそのRNA/DNA配列に結合した化合物部分を含む。ある態様において、その化合物部分は、療法的部分またはイメージング部分である。ある態様において、その化合物部分は、そのRNA/DNA配列に共有結合している。
【0018】
ある態様において、療法的部分は、核酸部分、ペプチド部分または小分子薬物部分である。ある態様において、療法的部分は、活性化核酸部分またはアンチセンス核酸部分である。ある態様において、療法的部分は、miRNA、mRNA、saRNAまたはsiRNA部分である。ある態様において、療法的部分は、抗癌療法的部分である。ある態様において、療法的部分は、C/EBPアルファsaRNA部分、SIRT1 saRNA部分またはHNF saRNA部分である。
【0019】
ある態様において、イメージング部分は、生物発光分子、光活性分子、金属またはナノ粒子である。
本発明に従う核酸化合物を含む医薬組成物も、提供される。その組成物は、場合により薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。ある態様において、その組成物は、さらに療法剤、場合により抗癌剤を含む。
【0020】
本発明は、化合物部分を細胞中に送達する方法も提供し、その方法は、以下の工程を含む:(i)細胞を本発明に従う核酸化合物と接触させ;そして(ii)前記の核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ、それにより前記の化合物部分を前記の細胞中に送達する。
【0021】
化合物を細胞中に送達する方法も、提供され、その方法は、以下の工程を含む:(i)細胞を化合物および本発明に従う核酸化合物と接触させ;そして(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ、それにより前記の化合物を前記の細胞中に送達する。ある態様において、その化合物は、療法剤またはイメージング剤である。
【0022】
別の側面において、本発明は、医学的処置または予防の方法における使用のための本発明に従う核酸化合物を提供する。
疾患または障害を処置または予防するための医薬品の製造における本発明に従う核酸化合物の使用も、提供される。
【0023】
疾患または障害を処置または予防する方法も、提供され、その方法は、それを必要とする対象に有効量の本発明に従う核酸化合物を投与することを含む。
ある態様において、疾患または障害は、癌である。ある態様において、その方法は、抗癌剤を投与することを含む。ある態様において、その疾患または障害は、代謝障害または神経学的障害である。
【0024】
細胞を検出する方法も、提供され、その方法は、以下の工程を含む:(i)細胞を本発明に従う核酸化合物と接触させ、ここで、その核酸化合物は、イメージング部分を含み;(ii)その核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ;そして(iii)前記のイメージング部分を検出し、それにより前記の細胞を検出する。
【0025】
細胞を検出する方法も、提供され、その方法は、以下の工程を含む:(i)細胞をイメージング剤および本発明に従う核酸化合物と接触させ;(ii)その核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記のイメージング剤を細胞中へと通過させ;そして(iii)前記のイメージング剤を検出し、それにより前記の細胞を検出する。
【0026】
本発明は、記載された側面および好ましい特徴の組み合わせを、そのような組み合わせが明確に許容不能である、または明示的に回避されている場合を除いて含む。
本発明の原理を説明する態様および実験が、ここで添付の図面を参照して論じられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1.アプタマーTR14 S1-3(TfR;SEQ ID NO:1)の予想されるMfold構造。
図2図2.アプタマーTR14 S1-3のトランスフェリン受容体への結合の速度論。
図3図3.アプタマーTR14 S1-3のヒト肝臓癌細胞(HepG2)、ヒト膵臓癌細胞(PANIC-1)およびマウス膵臓癌細胞(LTPA)中への内部移行。
図4図4Aおよび4B。TR14 S1-3(TfR)の血液脳関門を越える能力を示すラットの脳からのニューロン組織の免疫組織化学染色。SIRT1発現が、SIRT1モノクローナル抗体を用いて検出された。(図4A)対照のラットからのニューロン組織は、青い陰性の染色を示す。(図4B)TfR-SIRT1 saRNAを注射されたラットからのニューロン組織は、SIRT1に対する褐色の核染色を示す。
図5図5Aおよび5B。オスのWistarラットにおけるジエチルニトロソアミン(DEN)で誘導された肝細胞癌(HCC)におけるPBSおよびTfR単独と比較したTfR-CEBPAおよびTfR-HNF処置の作用を示すグラフ。TfR-CEBPAおよびTfR-HNF saRNA処置は、腫瘍体積を低減し(図5A)、血液中のビリルビンのレベルを低減した(図5B)。
図6図6.TfR-CEBPA saRNAの静脈内(IV)または皮下(SC)投与後のオスのF344ラットにおける肝細胞癌モデルにおける腫瘍サイズ変化の百分率を示すグラフ。
図7-1】図7Aおよび7B。アプタマー対照と比較したマウスにおける転移性膵臓癌モデルにおけるTfR-CEBPAおよびP19-CEBPA処置の作用を示すグラフ。(図7A)TfR-CEBPAまたはP19-CEBPAで処置されたマウスは、低減した腫瘍成長(低減した光子増大により決定された)を示している。(図7B)TfR-CEBPAまたはP19-CEBPAで処置されたマウスは、低減した腫瘍成長を示している。
図7-2】図7Aおよび7B。アプタマー対照と比較したマウスにおける転移性膵臓癌モデルにおけるTfR-CEBPAおよびP19-CEBPA処置の作用を示すグラフ。(図7A)TfR-CEBPAまたはP19-CEBPAで処置されたマウスは、低減した腫瘍成長(低減した光子増大により決定された)を示している。(図7B)TfR-CEBPAまたはP19-CEBPAで処置されたマウスは、低減した腫瘍成長を示している。
図8-1】図8A~8F。TfR-SIRT処置の、高脂肪飼料を与えられたF344ラットにおける代謝疾患と関係する症状を改善する能力を示すグラフ。(図8A)TfR-SIRTで処置されたラットは、重量が増加しなかった。(図8B)TfR-SIRTで処置されたラットは、白色脂肪組織が低減していた。(図8C)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した総コレステロールを示した。(図8D)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルを示した。(図8E)TfR-SIRTで処置されたラットは、増大した高密度リポタンパク質(HDL)/LDL比を示した。(図8F)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した空腹時血中グルコースレベルを示した。
図8-2】図8A~8F。TfR-SIRT処置の、高脂肪飼料を与えられたF344ラットにおける代謝疾患と関係する症状を改善する能力を示すグラフ。(図8A)TfR-SIRTで処置されたラットは、重量が増加しなかった。(図8B)TfR-SIRTで処置されたラットは、白色脂肪組織が低減していた。(図8C)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した総コレステロールを示した。(図8D)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルを示した。(図8E)TfR-SIRTで処置されたラットは、増大した高密度リポタンパク質(HDL)/LDL比を示した。(図8F)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した空腹時血中グルコースレベルを示した。
図8-3】図8A~8F。TfR-SIRT処置の、高脂肪飼料を与えられたF344ラットにおける代謝疾患と関係する症状を改善する能力を示すグラフ。(図8A)TfR-SIRTで処置されたラットは、重量が増加しなかった。(図8B)TfR-SIRTで処置されたラットは、白色脂肪組織が低減していた。(図8C)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した総コレステロールを示した。(図8D)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルを示した。(図8E)TfR-SIRTで処置されたラットは、増大した高密度リポタンパク質(HDL)/LDL比を示した。(図8F)TfR-SIRTで処置されたラットは、低減した空腹時血中グルコースレベルを示した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本発明の様々な態様および側面が、本明細書において示され、記載されているが、当業者には、そのような態様および側面は、例としてのみ提供されていることは、明らかであろう。数多くのバリエーション、変更、および置換が、ここで、本発明から逸脱することなく当業者に思い浮かぶであろう。本明細書で記載される本発明の態様に対する様々な代替案が、本発明の実施において用いられることができることは、理解されるべきである。
【0029】
本明細書で用いられる節の見出しは、組織化目的のためだけのものであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。限定ではなく特許、特許出願、記事、書籍、説明書、および論文を含むがそれらに限定されない本出願において引用される全ての文書または文書の一部は、あらゆる目的に関して参照により本明細書に明確にそのまま援用される。
【0030】
本明細書で用いられる略語は、化学および生物学の技術分野内でのそれらの従来の意味を有する。本明細書で述べられている化学構造および式は、化学の技術分野において知られている化学的結合価の標準的な規則に従って解釈される。
【0031】
別途定義されない限り、本明細書で用いられている技術用語および科学用語は、当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 第2版, J. Wiley & Sons (ニューヨーク州ニューヨーク 1994); Sambrook et al, MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, Cold Springs Harbor Press (ニューヨーク州コールドスプリングハーバー 1989)を参照。本明細書で記載される方法、デバイスおよび材料と類似の、またはそれに均等なあらゆる方法、デバイスおよび材料が、本発明の実施において用いられることができる。以下の定義は、本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を促進するために提供されており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0032】
“核酸”は、一本鎖、二本鎖または多鎖形態のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドおよびそのポリマーまたはその相補物を指す。用語“ポリヌクレオチド”は、ヌクレオチドの線状配列を指す。用語“ヌクレオチド”は、典型的にはポリヌクレオチドの一単位、すなわちモノマーを指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはそれらの改変版であることができる。本明細書で意図されているポリヌクレオチドの例は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖RNA(siRNAを含む)、ならびに一本鎖および二本鎖DNAおよびRNAの混合物を有するハイブリッド分子を含む。核酸は、線状または分枝状であることができる。例えば、核酸は、ヌクレオチドの線状鎖であることができ、または核酸は、例えば核酸が1個または2個のヌクレオチドの腕または枝を含むように、分枝していることができる。場合により、分枝した核酸は、繰り返し分枝してより高次の構造、例えばデンドリマー等を形成している。
【0033】
核酸は、ホスホロチオエート(phosphothioate)骨格を有する核酸を含め、1以上の反応性部分を含むことができる。本明細書で用いられる際、反応性部分という用語は、別の分子、例えば核酸またはポリペプチドと共有結合性、非共有結合性または他の相互作用を通して反応することができるあらゆる基を含む。例として、核酸は、タンパク質またはポリペプチド上のアミノ酸と共有結合性、非共有結合性または他の相互作用を通して反応するアミノ酸反応性部分を含むことができる。
【0034】
その用語は、合成、天然存在、および非天然存在であり、参照核酸と類似した結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似した様式で代謝される既知のヌクレオチド類似体または改変された骨格の残基もしくは連結を含有する核酸も包含する。そのような類似体の例は、限定ではなく、例えばホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート(ホスホチオエートとしても知られている)、ホスホロジチオエート、ホスホノカルボン酸類、ホスホノカルボキシレート類、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、メチルホスホネート、ホウ素ホスホネートまたはO-メチルホスホロアミダイト(O-methylphosphoroamidite)結合を含むホスホジエステル誘導体(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Pressを参照);ならびにペプチド核酸骨格および結合を含む。他の類似体核酸は、陽性骨格、非イオン性骨格、改変された糖類、および非リボース骨格(例えばホスホロジアミデートモルホリノオリゴ類またはロックド核酸(LNA))を有する類似体核酸を含み、それは米国特許第5,235,033号および第5,034,506号ならびにASC Symposium Series 580, Carbohydrate Modifications in Antisense Research, 編者Sanghui & Cookの第6および第7章において記載されている類似体核酸を含む。1個以上の炭素環式糖類を含有する核酸も、核酸の一定義内に含まれる。リボース-ホスフェート骨格の改変は、様々な理由のために、例えば生理的環境における、またはバイオチップ上のプローブとしてのそのような分子の安定性および半減期を増大させるために行なわれることができる。天然存在核酸および類似体の混合物が、作られることができ;あるいは、異なる核酸類似体の混合物、ならびに天然存在核酸および類似体の混合物が、作られることができる。複数の態様において、DNA中のヌクレオチド間連結は、ホスホジエステル、ホスホジエステル誘導体または両方の組み合わせである。
【0035】
語“相補的”または“相補性”は、ポリヌクレオチド中の核酸の第2のポリヌクレオチド中の別の核酸と塩基対を形成する能力を指す。例えば、配列A-G-Tは、配列T-C-Aに相補的である。相補性は、部分的であることができ、ここで、核酸の一部のみが塩基対合に従ってマッチし、または完全であることもでき、ここで、全ての核酸が塩基対合に従ってマッチする。
【0036】
用語“プローブ”または“プライマー”は、本明細書で用いられる際、試料に対するその特異的なハイブリダイゼーションが検出されることができる1以上の核酸断片であるように定義されている。プローブまたはプライマーは、それが用いられるであろう特定の技法に応じてあらゆる長さのものであることができる。例えば、PCRプライマーは、一般に10~40ヌクレオチド長であり、一方で、例えばサザンブロットのための核酸プローブは、100ヌクレオチド長より長いことができる。プローブは、未標識であることができ、または下記のように標的もしくは試料に対するその結合が検出されることができるように標識されていることができる。プローブは、染色体の1以上の特定の(予め選択された)部分、例えば1以上のクローン、単離された染色体全体もしくは染色体断片、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物の集合体由来の核酸の源から生成されることができる。標的要素上に固定された核酸の長さおよび複雑さは、本発明に重要ではない。当業者は、これらの要因を、所与のハイブリダイゼーション手順に関する最適なハイブリダイゼーションおよび信号生成を提供するように、そして異なる遺伝子またはゲノム位置間の必要とされる分解能を提供するように調節することができる。
【0037】
プローブは、アレイにおけるように、固体表面(例えばニトロセルロース、ガラス、石英、溶融シリカスライド)上で固定された単離された核酸であることもできる。ある態様において、プローブは、例えば国際公開第96/17958号において記載されているような核酸のアレイの一員であることができる。高密度アレイを製造することができる技法も、この目的のために用いられることができる(例えば、Fodor (1991) Science 767-773; Johnston (1998) Curr. Biol. 8: R171-R174; Schummer (1997) Biotechniques 23: 1087-1092; Kern (1997) Biotechniques 23: 120-124;米国特許第5,143,854号を参照)。
【0038】
用語“遺伝子”は、タンパク質の生成に関わるDNAの区分を意味し;それは、コード領域の前および後の領域(リーダーおよびトレーラー)ならびに個々のコード区分(エキソン)間の介在する配列(イントロン)を含む。リーダー、トレーラーならびにイントロンは、遺伝子の転写および翻訳の間に必要である調節エレメントを含む。さらに、“タンパク質遺伝子産物”は、個々の遺伝子から発現されたタンパク質である。
【0039】
語“発現”または“発現された”は、本明細書で遺伝子を参照して用いられる際、その遺伝子の転写および/または翻訳産物を意味する。細胞中のDNA分子の発現のレベルは、細胞内に存在する対応するmRNAの量または細胞により産生されるそのDNAによりコードされるタンパク質の量のどちらに基づいて決定されることもできる。非コード核酸分子(例えばsiRNA)の発現のレベルは、当該技術で周知の標準的なPCRまたはノザンブロット法により検出されることができる。例えば、Sambrook et al., 1989 Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 18.1-18.88を参照。
【0040】
本明細書で提供される用語“アプタマー”は、タンパク質、ペプチド、および小分子に(例えば高い親和性および特異性で)結合するオリゴヌクレオチド(例えば短いオリゴヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)を指す。アプタマーは、典型的には相補的塩基対を形成するそれらの傾向のために定められた二次または三次構造を有し、従ってしばしば多様で複雑な分子構造へと折り畳まれ得る。三次元構造は、アプタマーの結合親和性および特異性に必須であり、特異的な三次元相互作用は、アプタマー-標的複合体の形成を駆動する。アプタマーは、インビトロで、ランダム化された配列の非常に大きなライブラリーから、試験管内人工進化法(SELEX、Ellington AD, Szostak JW (1990) In vitro selection of RNA molecules that bind specific ligands. Nature 346:818-822; Tuerk C, Gold L (1990) Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase. Science 249:505-510において記載されている)のプロセスにより、またはSOMAmer(乖離速度が遅い修飾アプタマー)(Gold L et al. (2010) Aptamer-based multiplexed proteomic technology for biomarker discovery. PLoS ONE 5(12):el5004)を開発することにより、選択されることができる。SELEXおよびSOMAmer技術の適用は、例えばアプタマーの化学的多様性を拡張するためのアミノ酸側鎖を模倣する官能基の追加を含む。結果として、ほとんどあらゆるタンパク質標的に関する高親和性アプタマーが、富化および同定される。アプタマーは、標的化された薬物送達のための多くの望ましい特性、例えば選択および合成の容易さ、高い結合親和性および特異性、柔軟な構造、低い免疫原性、および多目的な合成利便性(accessibility)を示す。今日までに、様々な抗癌剤(例えば化学療法薬、毒素、およびsiRNA)が、インビトロでアプタマーを用いて癌細胞にうまく送達されてきた。
【0041】
“アンチセンス核酸”は、本明細書で言及される際、特定の標的核酸(例えばタンパク質へと翻訳可能なmRNA)の少なくとも一部に相補的であり、標的核酸の転写(例えばDNAからのmRNA)を低減する、または標的核酸(例えばmRNA)の翻訳を低減する、または転写産物のスプライシングを変化させる(例えば一本鎖モルホリノオリゴ)ことができる核酸(例えばDNAまたはRNA分子)である。例えば、Weintraub, Scientific American, 262:40 (1990)を参照。典型的には、合成アンチセンス核酸(例えばオリゴヌクレオチド)は、一般に15~25塩基長である。従って、アンチセンス核酸は、標的核酸(例えば標的mRNA)にハイブリダイズする(例えば選択的にハイブリダイズする)ことができる。複数の態様において、アンチセンス核酸は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的核酸配列(例えばmRNA)にハイブリダイズする。複数の態様において、アンチセンス核酸は、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的核酸(例えばmRNA)にハイブリダイズする。アンチセンス核酸は、天然存在ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチド、例えばホスホロチオエート、メチルホスホネート、および-アノマー糖-ホスフェート、骨格を改変されたヌクレオチドを含むことができる。
【0042】
細胞中で、アンチセンス核酸は、対応するmRNAにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する。細胞は二本鎖であるmRNAを翻訳しないと考えられるため、アンチセンス核酸は、mRNAの翻訳を阻害する。遺伝子のインビトロ翻訳を阻害するためのアンチセンス法の使用は、当該技術で周知である(Marcus-Sakura, Anal. Biochem., 172:289, (1988))。さらに、DNAに直接結合するアンチセンス分子が、用いられることができる。アンチセンス核酸は、一本鎖または二本鎖核酸であることができる。アンチセンス核酸の限定的でない例は、siRNA(それらの誘導体または前駆体、例えばヌクレオチド類似体を含む)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、saRNA(低分子活性化RNA)および核小体低分子RNA(snoRNA)またはそれらの誘導体もしくは前駆体のあるものを含む。
【0043】
本明細書で提供される“siRNA”、“低分子干渉RNA”、“低分子RNA”または“RNAi”は、二本鎖RNAを形成し、その二本鎖RNAが遺伝子または標的遺伝子と同じ細胞中で発現された際に遺伝子または標的遺伝子の発現を低減もしくは阻害する能力を有する核酸を指す。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成する核酸の相補的部分は、典型的には実質的または完全な同一性を有する。一態様において、siRNAまたはRNAiは、標的遺伝子に対する実質的または完全な同一性を有しており二本鎖siRNAを形成する核酸である。複数の態様において、siRNAは、相補的な細胞性mRNAと相互作用してそれによりその相補的なmRNAの発現に干渉することにより、遺伝子発現を阻害する。典型的には、核酸は、少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、二本鎖siRNAのそれぞれの相補配列は、15~50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは、長さ約15~50塩基対である)。他の態様において、長さは、20~30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20~25または約24~30ヌクレオチド長、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長である。
【0044】
本明細書で提供される“saRNA”または“低分子活性化RNA”は、二本鎖RNAを形成し、その二本鎖RNAが遺伝子または標的遺伝子と同じ細胞中で発現された際に遺伝子または標的遺伝子の発現を増大させる、または活性化する能力を有する核酸を指す。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成する核酸の相補的部分は、典型的には実質的または完全な同一性を有する。一態様において、saRNAは、標的遺伝子に対する実質的または完全な同一性を有しており二本鎖saRNAを形成する核酸である。典型的には、核酸は、少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、二本鎖saRNAのそれぞれの相補配列は、15~50ヌクレオチド長であり、二本鎖saRNAは、長さ約15~50塩基対である)。他の態様において、長さは、20~30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20~25または約24~29ヌクレオチド長、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長である。
【0045】
用語“単離された”は、核酸またはタンパク質に適用される際、その核酸またはタンパク質が、それが天然状態で関係している他の細胞性構成要素を本質的に含まないことを意味する。それは、例えば、均質な状態であることができ、乾燥または水溶液のどちらであることもできる。純度および均質性は、典型的には分析化学の技法、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを用いて決定される。調製物中に存在する主な種であるタンパク質は、実質的に精製されている。
【0046】
用語“精製された”は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドをもたらすことを意味する。ある態様において、核酸またはタンパク質は、少なくとも50%純粋、場合により少なくとも65%純粋、場合により少なくとも75%純粋、場合により少なくとも85%純粋、場合により少なくとも95%純粋、そして場合により少なくとも99%純粋である。
【0047】
用語“単離された”は、細胞または試料細胞も指すことができる。単離された細胞または試料細胞は、通常その細胞にそれらがそれらの天然の状態にある際またはそれらがそれらの天然の状態から最初に取り出された際に付随している構成要素の多くを実質的に含まない単一の細胞型である。特定の態様において、単離された細胞試料は、細胞を所望の状態で維持するために必要とされるその天然の状態からのそれらの構成要素を保持している。ある態様において、単離された(例えば精製された、分離された)細胞(単数または複数)は、試料における実質的に唯一の細胞型である細胞である。精製された細胞試料は、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1タイプの細胞を含有することができる。単離された細胞試料は、細胞マーカーまたは両方が純粋でない細胞試料中で1つの細胞型に独特である細胞マーカーの組み合わせの使用により得られることができる。ある態様において、細胞は、細胞選別機の使用により単離される。ある態様において、細胞タンパク質に対する抗体が、細胞を単離するために用いられる。
【0048】
本明細書で用いられる際、用語“コンジュゲート”は、原子または分子間の繋がり(association)に関する。繋がりは、直接的であることも間接的であることもできる。例えば、本明細書で提供されるような核酸(例えばリボ核酸)および化合物部分の間のコンジュゲートは、例えば共有結合により直接的であることができ、または例えば非共有結合により間接的であることもできる。場合により、コンジュゲートは、求核置換(例えばアミン類およびアルコール類のハロゲン化アシル、活性エステルとの反応)、求電子置換(例えばエナミン反応)ならびに炭素-炭素および炭素-複素原子多重結合への付加(例えばマイケル反応、ディールス・アルダー付加)を含むがそれらに限定されないコンジュゲート化学を用いて形成される。これらおよび他の有用な反応は、例えばMarch, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY, 第3版, John Wiley & Sons, ニューヨーク, 1985; Hermanson, BIOCONJUGATE TECHNIQUES, Academic Press, サンディエゴ, 1996; およびFeeney et al., MODIFICATION OF PROTEINS; Advances in Chemistry Series, Vol. 198, American Chemical Society, ワシントンD.C., 1982において論じられている。従って、核酸(単数または複数)は、その骨格を通して化合物部分に取り付けられることができる。場合により、リボ核酸は、リボ核酸の化合物部分との相互作用を促進する1以上の反応性部分、例えばアミノ酸反応性部分を含む。
【0049】
本明細書におけるコンジュゲート化学に関して用いられる有用な反応性部分または官能基は、例えば以下のものを含む:
(a)カルボキシル基ならびにN-ヒドロキシスクシンイミドエステル類、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル類、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール類、チオエステル類、p-ニトロフェニルエステル類、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステル類を含むがそれらに限定されないその様々な誘導体;
(b)エステル類、エーテル類、アルデヒド類等に変換されることができるヒドロキシル基;
(c)ハロアルキル基であって、そのハライドが後で求核基、例えばアミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルボアニオンまたはアルコキシドイオンにより置換されることができ、それにより結果としてハロゲン原子の位置において新しい基の共有結合をもたらすハロアルキル基;
(d)ディールス・アルダー反応に参加することができる求ジエン基、例えばマレイミド基;
(e)例えばイミン類、ヒドラゾン類、セミカルバゾン類またはオキシム類のようなカルボニル誘導体の形成による、またはグリニャール付加もしくはアルキルリチウム付加のような機序によるその後の誘導体化が可能であるようなアルデヒドまたはケトン基;
(f)例えばスルホンアミド類を形成するようなその後のアミン類との反応のためのハロゲン化スルホニル基;
(g)ジスルフィド類へと変換される、ハロゲン化アシル類と反応する、または金属、例えば金に結合することができるチオール基;
(h)例えばアシル化、アルキル化または酸化されることができるアミンまたはスルフヒドリル基;
(i)例えば環化付加、アシル化、マイケル付加等を受けることができるアルケン類;
(j)例えばアミン類およびヒドロキシル化合物と反応することができるエポキシド類;
(k)ホスホラミダイト類および核酸合成において有用な他の標準的な官能基;
(l)金属シリコン酸化物結合;
(m)例えばリン酸ジエステル結合を形成するための反応性リン基(例えばホスフィン類)への金属結合;ならびに
(n)スルホン類、例えばビニルスルホン。
【0050】
反応性官能基は、それらが本明細書で記載されるタンパク質の化学的安定性に関与も干渉もしないように選択されることができる。例として、核酸は、ビニルスルホンまたは他の反応性部分を含むことができる。場合により、核酸は、式S-S-Rを有する反応性部分を含むことができる。Rは、例えば、保護基であることができる。場合により、Rは、ヘキサノールである。本明細書で用いられる際、ヘキサノールという用語は、式C13OHを有する化合物を含み、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、および2-エチル-l-ブタノールを含む。場合により、Rは、1-ヘキサノールである。
【0051】
本明細書で用いられる際、用語“約”は、当業者が明記された値に合理的に類似していると考えるであろう明記された値を含むある範囲の値を意味する。複数の態様において、用語“約”は、当該技術において一般的に許容可能な測定を用いる標準偏差の範囲内を意味する。複数の態様において、約は、明記された値の+/-10%までに及ぶ範囲を意味する。ある態様において、約は、明記された値を意味する。
【0052】
用語“タンパク質”、“ペプチド”、および“ポリペプチド”は、アミノ酸ポリマーまたは2以上の相互作用しているかもしくは結合したアミノ酸ポリマーのセットを意味するように互換的に用いられている。その用語は、1以上のアミノ酸残基が対応する天然存在アミノ酸の人工の化学的模倣物であるアミノ酸ポリマーに、ならびに天然存在アミノ酸ポリマーおよび非天然存在アミノ酸ポリマーに適用される。
【0053】
用語“アミノ酸”は、天然存在および合成アミノ酸、ならびに天然存在アミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然存在アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸ならびに後で修飾されたそれらのアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然存在アミノ酸と同じ基本的な化学構造(すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合している炭素)を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、改変されたR基(例えばノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然存在アミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然存在アミノ酸と類似の様式で機能する化学化合物を指す。用語“非天然存在アミノ酸”および“非天然アミノ酸”は、天然に存在しないアミノ酸類似体、合成アミノ酸、およびアミノ酸模倣物を指す。
【0054】
アミノ酸は、本明細書において、それらの一般的に知られている3文字略号によるかまたはIUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨されている1文字略号によるかのどちらで言及されることもできる。同様に、ヌクレオチドは、それらの一般的に許容されている1文字コードにより言及されることができる。
【0055】
“保存的に改変されたバリアント”は、アミノ酸および核酸配列両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変されたバリアントは、同一の、もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合は本質的に同一の配列を指す。遺伝子コードの縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が、あらゆる所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンにより指定される全ての位置において、そのコドンは、コードされるポリペプチドを変化させることなく記載された対応するコドンの全てに変更されることができる。そのような核酸のバリエーションは、“サイレントバリエーション”であり、それは、保存的に改変されたバリエーションの一種である。ポリペプチドをコードする本明細書における全ての核酸配列は、その核酸の全ての可能なサイレントバリエーションも記載している。当業者は、核酸中のそれぞれのコドン(通常はメチオニンに関する唯一のコドンであるAUGおよび通常はトリプトファンに関する唯一のコドンであるTGGを除く)は、機能的に同一の分子をもたらすように改変されることができることを、認識しているであろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレントバリエーションは、発現産物に関してはそれぞれの記載された配列に潜在しているが、実際のプローブ配列に関しては潜在していない。
【0056】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列において単一のアミノ酸または小さい割合のアミノ酸を変化させる、追加する、または削除する核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加は、その変更が結果としてアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換をもたらす“保存的に改変されたバリアント”であることを、認識しているであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該技術において周知である。そのような保存的に改変されたバリアントは、本発明の多型バリアント、種間相同体、および対立遺伝子に加えられ、それらを除外しない。
【0057】
以下の8個の群は、それぞれ互いに関する保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えばCreighton, Proteins (1984)を参照)。
【0058】
本明細書で記載されている特定のタンパク質(例えばTfR)に関して、その名前を挙げられたタンパク質は、タンパク質の転写因子活性を(例えば天然のタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)維持するそのタンパク質の天然存在形態、バリアントまたは相同体の全てを含む。ある態様において、バリアントまたは相同体は、天然存在形態と比較して配列全体または配列の一部(例えば50、100、150または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。他の態様において、タンパク質は、そのNCBI配列参照により同定される通りのタンパク質である。他の態様において、タンパク質は、そのNCBI配列参照により同定される通りのタンパク質、その相同体または機能性断片である。
【0059】
用語“TfR”は、本明細書において提供される際、トランスフェリン受容体(TfR)タンパク質の天然存在形態、TfRの活性を(例えば天然のタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)維持している相同体またはバリアントの全てを含む。ある態様において、バリアントまたは相同体は、天然存在形態と比較して配列全体または配列の一部(例えば50、100、150または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。複数の態様において、TfRタンパク質は、NCBI配列参照GI:189458817(NCBI参照配列:NP_003225.2;SEQ ID NO:6)により同定される通りのタンパク質である。複数の態様において、TfRタンパク質は、NCBI配列参照GI:189458816(NCBI参照配列:NM_003234.3)により同定されるヌクレオチド配列によりコードされる通りのタンパク質である。複数の態様において、TfRタンパク質は、NCBI配列参照GI:189458818(NCBI参照配列:NM_001128148.2)により同定されるヌクレオチド配列によりコードされる通りのタンパク質である。複数の態様において、TfRタンパク質は、NCBI配列参照GI:189458817(NCBI参照配列:NP_003225.2;SEQ ID NO:6)により同定される通りのタンパク質、その相同体または機能性断片である。複数の態様において、TfRタンパク質は、NCBI配列参照GI:189458816(NCBI参照配列:NM_003234.3)により同定されるヌクレオチド配列によりコードされる通りのタンパク質、その相同体または機能性断片である。複数の態様において、TfRタンパク質は、NCBI配列参照GI:189458818(NCBI参照配列:NM_001128148.2)により同定されるヌクレオチド配列によりコードされる通りのタンパク質、その相同体または機能性断片である。複数の態様において、TfRタンパク質は、NCBI遺伝子ID:7037に対応する核酸配列によりコードされている。
【0060】
用語“C/EBPa”または“C/EBPアルファ”は、本明細書において提供される際、CCAAT(シトシン-シトシン-アデノシン-アデノシン-チミジン)/エンハンサー結合タンパク質アルファ(C/EBPa)の天然存在形態、C/EBPアルファの転写因子活性を(例えば天然のタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)維持している相同体またはバリアントの全てを含む。ある態様において、バリアントまたは相同体は、天然存在形態と比較して配列全体または配列の一部(例えば50、100、150または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。複数の態様において、C/EBPアルファタンパク質は、NCBI配列参照GI:28872794(NP_004355.2)、GI:551894998(NP_001272758.1)、Gl:566559992(NP_001274353.1)またはGI:566559994(NP_001274364.1)により同定される通りのタンパク質またはその相同体もしくは機能性断片である。複数の態様において、C/EBPアルファタンパク質は、遺伝子ID:1050に対応する核酸配列によりコードされている。
【0061】
用語“サーチュイン”は、モノ-ADP-リボシルトランスフェラーゼまたはデアセチラーゼ活性(デアセチラーゼ、デスクシニラーゼ(desuccinylase)、デマロニラーゼ(demalonylase)、デミリストイラーゼ(demyristoylase)およびデパルミトイラーゼ(depalmitoylase)活性を含む)の両方を有するサーチュインクラスのタンパク質の1種類以上を指す。それらは、ニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD)に依存し、老化機序の制御、ストレスへの応答ならびに障害、例えば癌および糖尿病に関与していることが示されている(例えばNorth and Verdin, Genome Biol. 2004, 5(5): 224; Preyat and Leo, J. Leukoc. Biol. 2013, 93(5): 669-680;およびSatoh A et al., J Neurosci. 2010, 30(30): 10220-10232を参照、それらは全て参照により本明細書にそのまま援用される)。ヒトゲノムは、7つのサーチュイン遺伝子:SIRT1~SIRT7をコードしている。“SIRT1”、“SIRT2”、“SIRT3”、“SIRT4”、“SIRT5”、“SIRT6”および“SIRT7”は、それぞれSirt1~Sirt7タンパク質をコードするヒトサーチュイン遺伝子を指し、それは、Sirt1~Sirt7の1以上のデアセチラーゼ活性(例えば天然のタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%以内の活性)を維持しているタンパク質産物を生成するその相同体およびバリアントを含む。用語“Sirt1”、“Sirt2”、“Sirt3”、“Sirt4”、“Sirt5”、“Sirt6”および“Sirt7”は、本明細書で提供される際、前記のサーチュインタンパク質のデアセチラーゼ活性(例えば天然のタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%以内の活性)を維持しているあらゆる天然存在形態、相同体またはバリアントを含む。ある態様において、バリアントまたは相同体は、天然存在形態と比較して配列全体または配列の一部(例えば50、100、150または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。ある態様において、ヒトSirt1タンパク質は、NCBI参照配列:NP_036370.2により同定される通りのタンパク質である。ある態様において、Sirt1タンパク質は、遺伝子ID:23411に対応する核酸配列によりコードされている。ヒトSirt2は、GenBank参照AAK51133.1により同定される通りのタンパク質であることができ、遺伝子ID:22933に対応する核酸配列によりコードされていることができる。ヒトSirt3は、GenBank参照AAD40851.1により同定される通りのタンパク質であることができ、遺伝子ID:23410に対応する核酸配列によりコードされていることができる。ヒトSirt4は、NCBI参照NP_036372.1により同定される通りのタンパク質であることができ、遺伝子ID:23409に対応する核酸配列によりコードされていることができる。ヒトSirt5は、GenBank参照AAD40853.1により同定される通りのタンパク質であることができ、遺伝子ID:23408に対応する核酸配列によりコードされていることができる。ヒトSirt6は、GenBank参照CAG33481.1により同定される通りのタンパク質であることができ、遺伝子ID:51548に対応する核酸配列によりコードされていることができる。ヒトSirt7は、NCBI参照NP_057622.1により同定される通りのタンパク質であることができ、遺伝子ID:51547に対応する核酸配列によりコードされていることができる。
【0062】
用語“HNF”は、1種類以上の肝細胞核因子を指す。肝細胞核因子は、主に肝臓において発現されている転写因子の群であり、それは、遺伝子発現を制御している。HNFは、大部分が肝臓、腸、腎臓および膵ベータ細胞において発現されている核内受容体タンパク質である肝細胞核因子4(HNF4)を指すことができる。ヒトHNF4の2種類のイソ型:HNF4αおよびHNF4γが存在し、それぞれ遺伝子HNF4AおよびHNF4Gにより発現されている。ヒトHNF4αおよび/またはHNF4Aは、Uniprot P41235により同定される通りのタンパク質/遺伝子であることができ、それは、代替プロモーターの使用およびオルタナティブスプライシングにより生成されるHNF4αの少なくとも7つのイソ型も記載している。ヒトHNF4γおよび/またはHNF4Gは、Uniprot Q14541により同定される通りのタンパク質/遺伝子であることができ、それは、オルタナティブスプライシングにより生成されるHNF4γの2つのイソ型も記載している。HNF4A遺伝子中の変異またはHNF4A遺伝子のバリエーションは、若年発症成人型糖尿病1(MODY1;例えばBulman MP et al., Diabetologia. 1997, 40(7): 859-62を参照)、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM;例えばHani EH et al., J Clin Invest. 1998, 101 (3):521-6を参照)および若年発症成人型糖尿病を伴なうファンコーニ腎尿細管症候群4(FRTS4;例えばHamilton AJ et al., J Med Genet. 2014, 51(3): 165-9を参照)を含む代謝障害に結び付けられてきた。用語“HNF4α”および“HNF4γ”は、HNF4αまたはHNF4γの活性(例えば天然のタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%以内の活性)を維持しているあらゆる天然存在形態、相同体またはバリアントを含む。ある態様において、バリアントまたは相同体は、天然存在形態と比較して配列全体または配列の一部(例えば50、100、150または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。用語“HNF4A”および“HNF4G”は、HNF4αおよび/またはHNF4γの1以上の活性(例えば天然のタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%以内の活性)を維持しているタンパク質産物を生成する遺伝子ならびにその相同体およびバリアントを含む。
【0063】
“細胞”は、本明細書で用いられる際、そのゲノムDNAを保存または複製するために十分な代謝機能または他の機能を実施する細胞を指す。細胞は、例えば完全な膜の存在、特定の色素による染色、後代を生成する能力、または配偶子の場合には第2の配偶子と結合して一体となり生存可能な子孫を生成する能力を含む当該技術における周知の方法により同定されることができる。細胞は、原核細胞および真核細胞を含むことができる。原核細胞は、細菌を含むが、それらに限定されない。真核細胞は、酵母細胞ならびに植物および動物由来の細胞、例えば哺乳類、昆虫(例えばスポドプテラ属(spodoptera))およびヒト細胞を含むが、それらに限定されない。
【0064】
用語“血液脳関門”は、循環する血液を中枢神経系中の脳および細胞外流体から隔てている高度に選択的な半透膜障壁を指す。障壁は、血液および脳の間のイオン、分子および細胞の動きの厳密な制御を提供する(例えばDaneman and Prat, Cold Spring Harb Perspect Biol. 2015;7(1):a020412を参照)。多くの療法分子は、一般に脳の毛細血管内皮壁を越えるそれらの無視できるほどの透過性により血液から脳への輸送から排除される。
【0065】
“抗癌剤”は、その明白な通常の意味に従って用いられ、抗新生物特性または細胞の成長もしくは増殖を阻害する能力を有する組成物(例えば化合物、薬物、拮抗薬、阻害剤、変調剤)を指す。複数の態様において、抗癌剤は、化学療法薬である。複数の態様において、抗癌剤は、癌を処置する方法において有用性を有する本明細書で同定された薬剤である。複数の態様において、抗癌剤は、FDAまたは米国以外の国の類似の規制当局により癌の処置に関して認可された薬剤である。抗癌剤の例は、以下の抗癌剤を含むが、それらに限定されない:MEK(例えばMEKl、MEK2またはMEKlおよびMEK2)阻害剤(例えばXL518、CI-1040、PD035901、セルメチニブ/AZD6244、GSK1120212/トラメチニブ、GDC-0973、ARRY-162、ARRY-300、AZD8330、PD0325901、U0126、PD98059、TAK-733、PD318088、AS703026、BAY 869766)、アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソ尿素、ナイトロジェンマスタード(例えばメクロレタミン(mechloroethamine)、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン(meiphalan))、エチレンイミンおよびメチルメラミン類(例えばヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル類(例えばブスルファン)、ニトロソ尿素類(例えばカルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン)、トリアゼン類(ダカルバジン(decarbazine)))、代謝拮抗薬(例えば5-アザチオプリン、ロイコボリン、カペシタビン、フルダラビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、葉酸類似体(例えばメトトレキセート)またはピリミジン類似体(例えばフルオロウラシル、フロクスウリジン(floxouridine)、シタラビン)、プリン類似体(例えばメルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)等)、植物性アルカロイド類(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル、ドセタキセル等)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、リン酸エトポシド、テニポシド等)、抗腫瘍抗生物質(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン等)、白金ベースの化合物(例えばシスプラチン、オキサリプラチン(oxaloplatin)、カルボプラチン)、アントラセンジオン(例えばミトキサントロン)、置換尿素(例えばヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えばプロカルバジン)または副腎皮質抑制剤(例えばミトタン、アミノグルテチミド)、エピポドフィロトキシン類(例えばエトポシド)。
【0066】
抗癌剤のさらなる例は、以下の抗癌剤を含むが、それらに限定されない:抗生物質(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン)、酵素(例えばL-アスパラギナーゼ)、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼシグナル伝達の阻害剤(例えばU0126、PD98059、PD184352、PD0325901、ARRY-142886、SB239063、SP600125、BAY 43-9006、ウォルトマンニンまたはLY294002)、mTOR阻害剤、抗体(例えばリツキサン)、5-アザ-2’-デオキシシチジン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、ゲルダナマイシン、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、ボルテゾミブ、トラスツズマブ、アナストロゾール;血管新生阻害剤;抗アンドロゲン薬、抗エストロゲン薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アポトーシス遺伝子変調剤;アポトーシス調節剤;アルギニンデアミナーゼ;BCR/ABL拮抗薬;ベータラクタム誘導体;bFGF阻害剤;ビカルタミド;カンプトテシン誘導体;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);クロミフェン類似体;シタラビン、ダクリキシマブ(dacliximab);デキサメタゾン;エストロゲン作動薬;エストロゲン拮抗薬;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;フィナステリド;フルダラビン;フルオロダウノルニシン塩酸塩;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;免疫増強ペプチド;インスリン様成長因子-1受容体阻害剤;インターフェロン作動薬;インターフェロン類;インターロイキン類;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミスマッチ二本鎖RNA;モノクローナル抗体;マイコバクテリア細胞壁抽出物;一酸化窒素変調剤;オキサリプラチン;パノミフェン;ペントロゾール(pentrozole);ホスファターゼ阻害剤;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;プレドニゾン;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベースの免疫変調剤;プロテインキナーゼC阻害剤(単数);プロテインキナーゼC阻害剤(複数)、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;rasタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;リボザイム;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達変調剤;単鎖抗原結合タンパク質;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;ストロメリシン阻害剤;合成グリコサミノグリカン類;タモキシフェンメチオジド;テロメラーゼ阻害剤;甲状腺刺激ホルモン;翻訳阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;ウロキナーゼ受容体拮抗薬;ステロイド類(例えばデキサメタゾン)、フィナステリド、アロマターゼ阻害剤、ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬(GnRH)、例えばゴセレリンまたはロイプロリド、副腎皮質ステロイド類(例えばプレドニゾン)、プロゲスチン類(例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン)、エストロゲン類(例えばジエチルスチルベストロール(diethlystilbestrol)、エチニルエストラジオール)、抗エストロゲン薬(例えばタモキシフェン)、アンドロゲン類(例えばプロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン)、抗アンドロゲン薬(例えばフルタミド)、免疫刺激薬(例えばカルメット-ゲラン桿菌(BCG)、レバミゾール、インターロイキン-2、アルファインターフェロン等)、モノクローナル抗体(例えば抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗HLA-DR、および抗VEGFモノクローナル抗体)、イムノトキシン類(例えば抗CD33モノクローナル抗体-カリケアマイシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体-シュードモナス外毒素コンジュゲート等)、放射線免疫療法(例えば111In、90Yまたは131I等にコンジュゲートした抗CD20モノクローナル抗体)、トリプトリド、ホモハリントニン(homoharringtonine)、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、トポテカン、イトラコナゾール、ビンデシン、セリバスタチン、ビンクリスチン、デオキシアデノシン、セルトラリン、ピタバスタチン、イリノテカン、クロファジミン、5-ノニルオキシトリプタミン、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、EGFR阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とした療法または療法薬(例えばゲフィチニブ(Iressa(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、セツキシマブ(Erbitux(商標))、ラパチニブ(Tykerb(商標))、パニツムマブ(Vectibix(商標))、バンデタニブ(Caprelsa(商標))、アファチニブ/BIBW2992、CI-1033/カネルチニブ、ネラチニブ/HKI-272、CP-724714、TAK-285、AST-1306、ARRY334543、ARRY-380、AG-1478、ダコミチニブ/PF299804、OSI-420/デスメチルエルロチニブ、AZD8931、AEE788、ペリチニブ/EKB-569、CUDC-101、WZ8040、WZ4002、WZ3146、AG-490、XL647、PD153035、BMS-599626)、ソラフェニブ、イマチニブ、スニチニブ、ダサチニブ等。
【0067】
“化学療法薬”または“化学療法剤”は、その明白な通常の意味に従って用いられており、抗新生物特性または細胞の成長もしくは増殖を阻害する能力を有する化学組成物または化合物を指す。
【0068】
加えて、本明細書で記載されるリボ核酸化合物は、免疫刺激薬(例えばカルメット-ゲラン桿菌(BCG)、レバミゾール、インターロイキン-2、アルファ-インターフェロン等)、モノクローナル抗体(例えば抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗HLA-DR、抗PD-1および抗VEGFモノクローナル抗体)、イムノトキシン類(例えば抗CD33モノクローナル抗体-カリケアマイシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体-シュードモナス外毒素コンジュゲート等)、および放射線免疫療法(例えば111In、90Yまたは131I等にコンジュゲートした抗CD20モノクローナル抗体)を含むがそれらに限定されない従来の免疫療法剤と同時に投与されることができ、またはそれに共有結合していることもできる。
【0069】
さらなる態様において、本明細書で記載されるリボ核酸化合物は、場合により腫瘍抗原に対して方向付けられた抗体にコンジュゲートした放射性核種、例えば47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、および212Biを含むがそれらに限定されない従来の放射線療法剤と同時投与されることができる。
【0070】
用語“試料”は、組織学的目的のために採取された生検および検死試料のような組織の切片ならびに凍結切片を含む。そのような試料は、血液および血液画分または生成物(例えば骨髄、血清、血漿、血小板、赤血球等)、痰、組織、培養細胞(例えば一次培養物、外植片、および形質転換細胞)、便、尿、他の生物学的流体(例えば前立腺液、胃液、腸液、腎液、肺液、脳脊髄液等)等を含む。試料は、典型的には“対象”、例えば真核生物、最も好ましくは哺乳類、例えば霊長類、例えばチンパンジーもしくはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;齧歯類、例えばモルモット、ラット、マウス;ウサギ;または鳥類;爬虫類;または魚類から得られる。ある態様において、試料は、ヒトから得られる。
【0071】
“対照”試料または値は、試験試料に対する比較のための参照、通常は既知の参照の役目を果たす試料を指す。例えば、試験試料は、試験条件から、例えば試験化合物の存在下で採取されて、既知の条件からの、例えば試験化合物の非存在下での試料(陰性対照)または既知の化合物の存在下での試料(陽性対照)に対して比較されることができる。対照は、いくつかの試験または結果から集められた平均値を表すこともできる。当業者は、対照はあらゆる数のパラメーターの評価のために設計されることができることを、認識しているであろう。例えば、対照は、薬理学的データ(例えば半減期)または療法的手段(例えば副作用の比較)に基づいて療法的利益を比較するように考案されることができる。当業者は、どの対照が所与の状況において価値があるかを理解しており、対照値に対する比較に基づいてデータを分析することができるであろう。対照は、データの有意性を決定するためにも価値がある。例えば、所与のパラメーターに関する値が対照において広く異なっている場合、試験試料における変動は、有意とは考えられないであろう。
【0072】
“疾患(disease)”または“病気(condition)”は、本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法により処置されることができる患者または対象の体の状態または健康状態を指す。複数の態様において、疾患は、癌(例えば肝臓癌、膵臓癌、膵肝転移、脳癌、前立腺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、性腺摘除抵抗性前立腺癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、膠芽腫、卵巣癌、肺癌、扁平上皮癌(例えば頭、首または食道)、結腸直腸癌、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫)、感染症(例えばHN感染)、炎症性疾患(例えばリウマチ様関節炎)または代謝性疾患(例えば糖尿病)である。複数の態様において、疾患は、TfRの異常な活性、TfRのリン酸化、またはTfR経路の活性、またはTfRにより活性化される経路に関連する(例えばそれらにより引き起こされる)疾患である。ある態様において、疾患は、癌(例えば前立腺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、性腺摘除抵抗性前立腺癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、膠芽腫、卵巣癌、肺癌、扁平上皮癌(例えば頭、首または食道)、結腸直腸癌、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫)である。
【0073】
本明細書で用いられる際、用語“癌(cancer)”は、白血病、リンパ腫、癌腫および肉腫を含む哺乳類に存在する全てのタイプの癌、新生物または悪性腫瘍を指す。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法により処置されることができる典型的な癌は、膵臓癌、肝臓癌(例えば肝細胞癌)、膵肝転移、リンパ腫、肉腫、膀胱癌、骨癌、脳癌(例えば脳腫瘍、髄芽腫、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫)、子宮頸癌、結腸癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、腎臓癌、骨髄腫、甲状腺癌、白血病、前立腺癌、乳癌(例えばトリプルネガティブ、ER陽性、ER陰性、化学療法抵抗性、ハーセプチン抵抗性、HER2陽性、ドキソルビシン抵抗性、タモキシフェン抵抗性、腺管癌、小葉癌、原発性、転移性)、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、カルチノイド、肉腫)、神経膠腫、神経芽細胞腫、黒色腫、性腺摘除抵抗性前立腺癌、扁平上皮癌(例えば頭、首または食道)、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、横紋筋肉腫、中皮腫、子宮内膜癌、血小板増加症、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(WM)、インスリノーマ(insulanoma)、悪性カルチノイド、前悪性皮膚病変、精巣癌、悪性高カルシウム血症、副腎皮質癌、内分泌もしくは外分泌膵臓の新生物、甲状腺髄様癌、甲状腺髄様癌腫、乳頭様甲状腺癌、乳頭ページェット病、葉状腫瘍、小葉癌、腺管癌、膵星細胞の癌または肝臓星細胞の癌を含む。追加の例は、内分泌系の癌、脳の癌、乳房の癌、骨の癌、子宮頸部の癌、結腸の癌、頭頸部の癌、食道の癌、肝臓の癌、腎臓の癌、肺の癌、非小細胞肺癌、卵巣の癌、胃の癌、口の癌、皮膚の癌、子宮の癌、子宮内膜の癌、膵臓の癌、甲状腺の癌、膀胱の癌、前立腺の癌、精巣の癌または尿生殖器管の癌を含む。
【0074】
用語“白血病”は、造血器官の進行性の悪性疾患を広く指し、一般に白血球およびそれらの前駆細胞の血液および骨髄中での歪んだ増殖および発達により特性付けられる。白血病は、一般に、(1)疾患の持続期間および特徴-急性または慢性;(2)関わる細胞のタイプ;骨髄様(骨髄性)、リンパ球様(リンパ行性)または単球性;ならびに(3)血中の異常な細胞の数における増大の有無-白血病性または無白血病性(亜白血病性)に基づいて臨床的に分類される。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法により処置されることができる典型的な白血病は、例えば、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、無白血病性白血病、白血球血症性白血病(leukocythemic leukemia)、好塩基球性白血病(basophylic leukemia)、芽球細胞性白血病、ウシ白血病、慢性骨髄球性白血病、皮膚白血病、胎生細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、有毛細胞白血病、血芽球性白血病、血球母細胞性白血病、組織球白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ行性白血病、リンパ球様白血病、リンパ肉腫細胞白血病、マスト細胞白血病、巨核球白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄球性白血病、骨髄様顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病または未分化細胞白血病を含む。
【0075】
用語“肉腫”は、一般に、胚性結合組織のような物質で構成され、一般に細線維性または均質な物質中に埋め込まれた密に充填された細胞からなる腫瘍を指す。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法により処置されることができる肉腫は、軟骨肉腫、繊維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アベメシー肉腫、脂肪肉腫(adipose sarcoma)、脂肪肉腫(liposarcoma)、胞巣状軟部肉腫、エナメル芽細胞肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫(chloroma sarcoma)、絨毛癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨性骨肉腫、網状赤血球肉腫、ラウス肉腫、漿液瘤嚢胞性肉腫、滑膜肉腫または毛細管拡張性肉腫(telangiectaltic sarcoma)を含む。
【0076】
用語“黒色腫”は、皮膚および他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味するように受け取られる。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法により処置されることができる黒色腫は、例えば肢端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング・パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫または表在拡大型黒色腫を含む。
【0077】
用語“癌腫(carcinoma)”は、周囲の組織に浸潤して転移を引き起こす傾向がある上皮細胞からなる悪性の新規の増殖を指す。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法により処置されることができる典型的な癌腫は、例えば、甲状腺髄様癌、家族性甲状腺髄様癌、腺房腺癌、膠様腺癌、腺嚢癌腫、腺様嚢胞癌、腺腫様癌、副腎皮質の癌腫、肺胞癌、肺胞上皮細胞癌、基底細胞癌、基底細胞癌腫、類基底細胞癌、基底扁平上皮細胞癌、細気管支肺胞癌、細気管支癌、気管支原性癌、脳状癌(cerebriform carcinoma)、胆管細胞癌、絨毛癌、膠質癌、コメド癌、子宮体癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円筒形癌(cylindrical carcinoma)、円筒細胞癌、腺管癌、導管性癌、硬膜癌(carcinoma durum)、胎生期癌、脳様癌、類表皮癌、上皮アデノイド癌(carcinoma epitheliale adenoides)、外向発育癌、潰瘍癌、線維性癌、ゼラチン状癌腫、膠様癌、巨細胞癌(giant cell carcinoma)、巨細胞癌(carcinoma gigantocellulare)、腺癌、顆粒膜細胞腫、毛母癌、血液様癌、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、肺硝子癌(hyaline carcinoma)、腎明細胞癌、幼児型胎児性癌、上皮内癌(carcinoma in situ)、表皮内癌、上皮内癌(intraepithelial carcinoma)、クロンペッカー癌(Krompecher’s carcinoma)、クルチツキー細胞癌(Kulchitzky-cell carcinoma)、大細胞癌、レンズ状癌(lenticular carcinoma)、レンズ状癌(carcinoma lenticulare)、脂肪肉腫、小葉癌、リンパ上皮癌、髄様癌(carcinoma medullare)、髄様癌(medullary carcinoma)、黒色癌、軟癌腫、粘液性癌、粘液性癌腫、粘液細胞癌、粘表皮癌、粘膜癌、粘液癌、粘液腫様癌、鼻咽頭癌、燕麦細胞癌、骨化性癌(carcinoma ossificans)、骨化性癌(osteoid carcinoma)、乳頭状癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、棘細胞癌、髄質様癌、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫様癌腫、シュナイダー癌腫、硬性癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌(solanoid carcinoma)、スフェロイド細胞癌(spheroidal cell carcinoma)、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、ストリング癌(string carcinoma)、血管拡張性癌(carcinoma telangiectaticum)、毛細管拡張様癌(carcinoma telangiectodes)、移行上皮癌、結節癌、管状癌、結節状癌、疣贅性癌または絨毛癌を含む。
【0078】
本明細書で用いられる際、用語“転移”、“転移性”および“転移癌”は、互換的に用いられることができ、増殖性疾患または障害、例えば癌の、ある器官または別の隣接していない器官もしくは体の部分からの広がりを指す。癌は、原発部位(originating site)、例えば乳房において生じ、その部位は、原発腫瘍、例えば原発性乳癌と呼ばれる。原発腫瘍または原発部位における一部の癌細胞は、局所領域において周囲の正常組織に浸透および浸潤する能力ならびに/またはリンパ系もしくは脈管系の壁を透過してその系を通って体内の他の部位および組織へと循環する能力を獲得する。原発腫瘍の癌細胞から形成される二次的な臨床的に検出可能な腫瘍は、転移腫瘍または二次腫瘍と呼ばれる。癌細胞が転移する際、転移腫瘍およびその細胞は、元の腫瘍の腫瘍および細胞に類似していると推定される。従って、肺癌が乳房に転移する場合、その乳房の部位における二次腫瘍は、異常な肺細胞で構成され、異常な乳房細胞では構成されない。乳房中の二次腫瘍は、転移性肺癌と呼ばれる。従って、転移癌という句は、対象が原発腫瘍を有しているか有していたことがあり、1以上の二次腫瘍を有する疾患を指す。非転移性癌または転移性ではない癌を有する対象という句は、対象が原発腫瘍を有するが1以上の二次腫瘍を有しない疾患を指す。例えば、転移性肺癌は、原発性肺腫瘍を有するかまたはその病歴を有し、かつ例えば乳房における第2の部位または多数の部位において1以上の二次腫瘍を有する疾患を指す。
【0079】
疾患(例えば糖尿病、癌(例えば前立腺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、性腺摘除抵抗性前立腺癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、膠芽腫、卵巣癌、肺癌、扁平上皮癌(例えば頭、首または食道)、結腸直腸癌、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫))と関係する物質または物質の活性もしくは機能の文脈における用語“関係する”または“と関係する”は、その疾患(例えば糖尿病、癌(例えば前立腺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、性腺摘除抵抗性前立腺癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、膠芽腫、卵巣癌、肺癌、扁平上皮癌(例えば頭、首または食道)、結腸直腸癌、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫)またはウイルス性疾患(例えばHIV感染と関係する疾患))が(全部または部分的に)その物質もしくは物質の活性もしくは機能により引き起こされている、またはその疾患の症状が(全部または部分的に)その物質もしくは物質の活性もしくは機能により引き起こされていることを意味する。
【0080】
用語“異常な”は、本明細書で用いられる際、正常とは異なることを指す。酵素活性を記載するために用いられる際、「異常な」は、正常な対照または正常な疾患ではない対照試料の平均よりも大きいかまたは小さい活性を指す。異常な活性は、結果として疾患をもたらす活性の程度を指す可能性があり、ここで、異常な活性を正常または疾患と関係しない程度まで(例えば本明細書において記載される方法を用いることにより)戻すことは、結果として疾患または1以上の疾患の症状の低減をもたらす。
【0081】
“接触している”は、その明白な通常の意味に従って用いられており、少なくとも2つの異なる種(例えば生体分子を含む化学化合物または細胞)を反応する、相互作用する、または物理的に接触するために十分に近くするプロセスを指す。しかし、結果として生じる反応産物は、直接、添加された試薬の間の反応から、または反応混合物中で生成され得る添加された試薬の1以上からの中間体から生成されることができる。接触は、2つの種を反応、相互作用、または物理的に触れさせることを含むことができ、ここで、その2つの種は、本明細書で記載される核酸化合物および細胞(例えば癌細胞)であることができる。
【0082】
リボ核酸化合物
本発明は、特にトランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる核酸化合物を提供する。好ましい態様において、TfRは、細胞上にあり、ある場合には、核酸化合物は、細胞中に内部移行させられる。
【0083】
TfRは、正常細胞上で低レベルで発現されている。高い増殖速度を有する細胞、例えば活性化された免疫細胞および癌は、TfRの上方制御された発現を示す。従って、本発明の核酸化合物は、TfR結合により多種多様な細胞を標的とする機序を提供する。
【0084】
様々な態様において、本明細書で提供される核酸化合物は、ペイロード、例えば療法的分子または診断的分子を含み、従ってそのペイロードのTfR発現細胞への標的化された送達を促進する。核酸化合物およびペイロードは、TfR発現細胞中に内部移行させられることができ、従って標的化された細胞内送達に関する効率的な機序を提供することができる。
【0085】
国際公開第2016/061386号は、TfRに結合することができるリボ核酸化合物を記載している。国際公開第2016/061386号におけるリボ核酸化合物は、少なくとも30ヌクレオチドを有するRNA配列を含み、87または43ヌクレオチド長であるRNA配列を含む化合物により例示される。
【0086】
核酸化合物、例えばアプタマーの三次元構造は、結合親和性および特異性を決定するために必須である。従って、核酸化合物を、それが同じ標的に結合する能力を保持するであろうと無条件に期待して切り詰めることはできない。機能性の切り詰められたアプタマー配列を予測することは、些細な課題ではない。それでもなお、本発明者らは、本明細書で提供されるような29ヌクレオチド以下の特定のより短い核酸配列は、意外にもTfRに結合する能力を保持し、ペイロードと共にTfR発現細胞中に内部移行させられることができるままであることを見出している。
【0087】
加えて、それらの低減した大きさのため、本明細書で記載される核酸化合物は、血液脳関門(BBB)を越えて療法的または診断的ペイロードを脳中のTfR発現細胞標的に送達することができる。
【0088】
従って、本発明の核酸化合物は、本明細書で示されるように、ペイロードの多数の動物種におけるある範囲の細胞型への標的化された送達のための高度に特異的かつ効率的な手段を提供する。本発明は、ほとんど不透過性で高度に選択的かつ十分に調和したBBBを克服し、療法剤およびイメージング剤の脳への送達を達成するための貴重な機序も提供する。
【0089】
ある側面において、本発明は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも80%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなる核酸化合物を提供し、ここで、そのRNA配列は、29ヌクレオチド以下の長さを有する。本明細書で提供されるあらゆる態様において、核酸化合物は、リボ核酸化合物である。
【0090】
ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:1に対して80%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:1に対して100%の配列同一性を有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:1からなる。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合する。ある態様において、TfRは、細胞表面上にある。ある態様において、核酸化合物は、細胞中に内部移行させられることができる。ある場合には、細胞は、TfR発現細胞である。
【0091】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1にハイブリダイズする核酸に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1にハイブリダイズする核酸に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0092】
ある側面において、本発明は、SEQ ID NO:5に対して少なくとも80%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなる核酸化合物、例えばリボ核酸化合物を提供し、かつここで、そのRNA配列は、29ヌクレオチド以下の長さを有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:5に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:5に対して80%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:5に対して100%の配列同一性を有する。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:5からなる。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合する。ある態様において、TfRは、細胞表面上にある。ある態様において、核酸化合物は、細胞中に内部移行させられることができる。ある場合には、細胞は、TfR発現細胞である。
【0093】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:5にハイブリダイズする核酸に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:5にハイブリダイズする核酸に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0094】
ある態様において、本明細書で提供されるRNA配列は、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。ある場合には、RNA配列は、22ヌクレオチド以下の長さを有する。ある態様において、RNA配列は、16~29ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、16~22ヌクレオチド長である。
【0095】
ある態様において、RNA配列は、16ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、17ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、18ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、19ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、20ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、21ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、22ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、23ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、24ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、25ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、26ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、27ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、28ヌクレオチド長である。ある態様において、RNA配列は、29ヌクレオチド長である。
【0096】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0097】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0098】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも87%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0099】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0100】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも91%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0101】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも92%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0102】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも93%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0103】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも94%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0104】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0105】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも96%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0106】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも97%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0107】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも98%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0108】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも99%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0109】
ある場合には、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも100%の配列同一性を有し、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0110】
ある態様において、本明細書で提供されるRNA配列は、SEQ ID NO:1を含むかまたはそれからなり、さらにSEQ ID NO:1に対する1、2、3、4個またはより多くのヌクレオチド改変を含む。そのような改変は、ヌクレオチドの付加、置換および/または欠失であることができる。
【0111】
ある場合には、本明細書で提供されるRNA配列は、SEQ ID NO:1と比較して1、2、3または4ヌクレオチド異なっている。
ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:1を含み、ここで位置1、2、3、20、21の1以上は、代替核酸残基、例えばAMP、GMP、UMP、CMP、dAMP、dGMP、dTMPおよび/またはdCMPに置き換わっている。すなわち、ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:5ならびに5’末端および3’末端のそれぞれにおける3個の追加のヌクレオチドを含む。
【0112】
ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:5を含むかまたはそれからなり、さらにSEQ ID NO:5に対する1、2、3、4個またはより多くのヌクレオチド改変を含む。そのような改変は、ヌクレオチドの付加、置換および/または欠失であることができる。
【0113】
ある場合には、本明細書で提供されるRNA配列は、SEQ ID NO:5と比較して1、2、3または4ヌクレオチド異なっている。
SEQ ID NO:1のヌクレオチド位置4~8は、ヌクレオチド位置15~19と塩基対合を形成することが予想される。SEQ ID NO:5のヌクレオチド位置1~5は、ヌクレオチド位置12~16と塩基対合を形成することが予想される。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:1を含み、ここで、位置4~8および/または15~19のいずれか、すなわち1以上におけるヌクレオチドは、結果として非正規型塩基対合をもたらすヌクレオチド残基で置換されている。ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:5を含み、ここで、位置1~5および/または12~16のいずれか、すなわち1以上におけるヌクレオチドは、結果として非正規型塩基対合をもたらすヌクレオチド残基で置換されている。例えば、AまたはU/Tは、CまたはGで置き換えられていることができ、逆もまた同様である。ある場合には、U-A対合は、U-Gで置き換えられていることができる。
【0114】
本明細書で記載されるあらゆるRNA配列は、さらに追加のヌクレオチドを含むことができる。追加のヌクレオチドは、RNA配列の5’末端、3’末端、または5’末端および3’末端両方に付加されることができる。ある態様において、本明細書で記載されるSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5を含むRNA配列は、合計1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13個またはより多くの追加のヌクレオチドを含む。RNA配列がSEQ ID NO:1を含む場合、そのRNA配列は、合計7個以下の追加のヌクレオチドを含むことができる。RNA配列がSEQ ID NO:5を含む場合、そのRNA配列は、合計13個以下の追加のヌクレオチドを含むことができる。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合する。ある態様において、TfRは、細胞表面上にある。ある態様において、核酸化合物は、細胞中に内部移行させられることができる。ある場合には、細胞は、TfR発現細胞である。
【0115】
ある態様において、RNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5を含むかまたはそれからなり、さらに本明細書で記載される通りのヌクレオチド修飾および/または追加のヌクレオチドを含み、かつ29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合する。ある態様において、TfRは、細胞表面上にある。ある態様において、核酸化合物は、細胞中に内部移行させられることができる。ある場合には、細胞は、TfR発現細胞である。
【0116】
本明細書で提供される核酸化合物は、SEQ ID NO:4を含むことができる。ある態様において、本明細書で提供されるRNA配列は、SEQ ID NO:4を含む。
ある側面において、本発明は、RNA配列を含む核酸化合物を提供し、そのRNA配列は、SEQ ID NO:4を含み、かつここで、そのRNA配列は、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド以下、26ヌクレオチド以下、25ヌクレオチド以下、24ヌクレオチド以下、23ヌクレオチド以下、22ヌクレオチド以下、21ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、19ヌクレオチド以下、18ヌクレオチド以下、17ヌクレオチド以下または16ヌクレオチド以下の長さを有する。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。ある態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合する。ある態様において、TfRは、細胞表面上にある。ある態様において、核酸化合物は、細胞中に内部移行させられることができる。ある場合には、細胞は、TfR発現細胞である。
【0117】
ある場合には、本明細書で提供される核酸は、SEQ ID NO:4を含むRNA配列を含む。ある場合には、前記のRNA配列は、10~29ヌクレオチド長である。ある態様において、核酸は、RNA配列を含み、前記のRNA配列は、SEQ ID NO:4を含み、かつ10~29ヌクレオチドの長さを有し、かつここで、前記の核酸は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合する。好ましくは、RNA配列は、本明細書において上で記載されたように、16~29ヌクレオチドの長さを有する。
【0118】
ある場合には、RNA配列は、ループ構造を含む。ある場合には、RNA配列は、ステムループ構造を含む。ある場合には、RNA配列は、分子内塩基対合を含む。ある態様において、ループは、SEQ ID NO:4を含む。ある場合には、ループは、SEQ ID NO:4からなる。
【0119】
本明細書で記載されるあらゆる態様において、RNA配列は、アプタマーであることができる。本明細書で記載されるあらゆる態様において、核酸は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。本明細書で記載されるあらゆる態様において、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。従って、本明細書で提供されるRNA配列は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも80%(少なくとも85%等、本明細書において上で記載された通り)の配列同一性および16~29ヌクレオチド(本明細書において上で記載された通り)の長さを有することができ、かつここで、RNA配列は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができる。あらゆる態様において、核酸化合物は、TfRに結合する。あらゆる態様において、RNA配列は、TfRに結合する。あらゆる態様において、TfRは、細胞表面上にある。あらゆる態様において、核酸化合物は、細胞中に内部移行させられることができる。あらゆる態様において、細胞は、TfR発現細胞である。
【0120】
用語“細胞表面上”は、本明細書で用いられる際、分子、例えばトランスフェリン受容体タンパク質の細胞の表面上における位置を指す。分子は、何らかの方法で細胞膜と会合していることができる。例えば、分子は、膜内在性タンパク質または膜貫通タンパク質であることができ、それは、細胞膜にかかり(spans)、細胞質ドメインおよび細胞外ドメインを含み、その分子は、脂質で係留されていることができ、すなわち、細胞膜中の単一または多数の脂質分子に共有結合していることができ、またはその分子は、膜内在性タンパク質に結合していることができる。
【0121】
用語“細胞中に内部移行させられることができる”は、本明細書で用いられる際、本発明の核酸分子が細胞の外側から細胞中へと輸送される能力を指す。これは、エンドサイトーシスまたは食作用のような細胞機序により実施されることができる。ある場合には、核酸は、それらがTfRに結合した後に、例えばTfR-核酸複合体のクラスリンに媒介されるエンドサイトーシスにより内部移行させられる(例えばQian ZM et al., Pharmacol Rev. 2002, 54(4):561-587参照)。
【0122】
“TfR発現細胞”は、TfRを産生し、TfRを細胞表面上に、例えば膜タンパク質として提示する細胞である。
本明細書で提供されるあらゆる態様において、RNA配列は、リボヌクレオチド残基を含む。ある態様において、RNA配列は、1個以上のデオキシリボヌクレオチド残基を含むことができる。すなわち、ある場合には、RNA配列は、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、チミジン一リン酸/デオキシチミジン一リン酸(TMP/dTMP)およびデオキシシチジン一リン酸(dCMP)から選択される1個以上の残基を含む。ある場合には、RNA配列中の1個以上のウリジン一リン酸(UMP)残基は、デオキシチミジン一リン酸(TMP/dTMP)残基に置き換わっている。ある態様において、SEQ ID NO:1に対して少なくとも80%の配列同一性を有するRNA配列は、SEQ ID NO:1の位置1、2、3、5、6、11、12、13、14、15、19および/または20の1以上または全部においてTMP/dTMP残基を含む。ある態様において、SEQ ID NO:5に対して少なくとも80%の配列同一性を有するRNA配列は、SEQ ID NO:5の位置2、3、8、9、10、11、12および/または16の1以上または全部においてdTMP残基を含む。本明細書で記載されるRNA配列がSEQ ID NO:4を含む場合、前記の配列は、SEQ ID NO:4の位置4、5、6、7および/または8の1以上または全部においてdTMP残基を含むことができる。本明細書で記載されるあらゆるRNA配列において、AMP、GMPまたはCMP残基の1個以上が、均等なデオキシリボヌクレオチド残基(すなわちdAMP、dGMPまたはdCMP)に置き換わっていることができる。ある態様において、RNA配列中の全てのリボヌクレオチド残基は、均等なデオキシリボヌクレオチド残基で置換されている。
【0123】
RNA配列の一部、ほとんどまたは全部がデオキシリボヌクレオチド残基からなる場合、その配列は、DNA配列と記載されることができる。従って、本明細書において、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも80%の配列同一性を有するDNA配列を含む核酸化合物が、提供され、ここで、SEQ ID NO:1/SEQ ID NO:5中のUMP残基は、TMP/dTMP残基で置き換えられており、かつここで、そのDNA配列は、29ヌクレオチド以下の長さを有する。ある態様において、DNA配列は、TfRに結合することができ、かつ/または細胞、好ましくはTfR発現細胞中に内部移行させられることができる。ある態様において、DNA配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有し、ここで、SEQ ID NO:1中のUMP残基は、dTMP残基で置き換えられている。ある態様において、SEQ ID NO:1/SEQ ID NO:5中の全てのリボヌクレオチド残基は、均等なデオキシリボヌクレオチド残基で置換されている。
【0124】
本明細書で記載される全ての態様は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも80%の配列同一性を有するDNA配列を含む核酸化合物に適用可能であり、ここで、SEQ ID NO:1/SEQ ID NO:5中のUMP残基は、dTMP残基で置き換えられており、またはここで、SEQ ID NO:1/SEQ ID NO:5中の全てのリボヌクレオチド残基は、均等なデオキシリボヌクレオチド残基で置換されている。そのような場合、化合物は、デオキシリボ核酸化合物と記載されることができる。
【0125】
ある態様において、本明細書で提供される核酸化合物は、1個以上のデオキシリボヌクレオチド残基を含むことができる。すなわち、核酸化合物は、本明細書において上で記載された通りのRNA/DNA配列および追加で1個以上のデオキシリボヌクレオチド残基を含むことができる。そのような場合、その化合物は、デオキシリボ核酸化合物と記載されることができる。
【0126】
本明細書で開示されるあらゆる核酸/リボ核酸/デオキシリボ核酸化合物は、単離されている、および/または実質的に精製されていることができる。
配列同一性
2以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における用語“同一の”またはパーセント“同一性”は、例えばBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを下記のデフォルトパラメーターで用いて測定した際に、または手作業のアラインメントおよび目視検査により、同じである、または明記された百分率の同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチド(すなわち、比較ウインドウまたは指定された領域にわたって最大一致に関して比較およびアラインメントされた際に、明記された領域にわたって約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはより高い割合の同一性)を有する2以上の配列または部分配列を指す(例えば、NCBIのウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/等を参照)。従って、そのような配列は、“実質的に同一である”と言われる。この定義は、試験配列の相補配列(compliment)も指し、またはそれに適用されることができる。その定義は、欠失および/または付加を有する配列ならびに置換を有する配列も含む。下記のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップ等を説明することができる。
【0127】
配列比較に関して、典型的には1つの配列が参照配列の役目を果たし、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列が、コンピューターに入力され、必要であれば部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。好ましくは、デフォルトのプログラムパラメーターが、用いられることができ、または代わりのパラメーターが、指定されることができる。次いで、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメーターに基づいて参照配列と比較した試験配列に関するパーセント配列同一性を計算する。
【0128】
“比較ウインドウ”は、本明細書で用いられる際、10~600、通常は約50~約200、より通常は約100~約150からなる群から選択される隣接する位置の数のいずれか1つの区間への参照を含み、ここで、配列は、2つの配列が最適にアラインメントされた後に同じ数の隣接する位置の参照配列に対して比較されることができる。
【0129】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当該技術で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、当業者に既知の様々な方法で、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group(ウィスコンシン州マディソン、サイエンスドライブ575)中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびFASTA)により、または手作業でのアラインメントおよび目視検査により実施されることができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., 編者 1995 補遺)を参照)。公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えばClustalOmega(Soding, J. 2005, Bioinformatics 21, 951-960)、T-coffee(Notredame et al. 2000, J. Mol. Biol. (2000) 302, 205-217)、Kalign(Lassmann and Sonnhammer 2005, BMC Bioinformatics, 6(298))およびMAFFT(Katoh and Standley 2013, Molecular Biology and Evolution, 30(4) 772-780)ソフトウェアが、用いられることができる。そのようなソフトウェアを用いる場合、好ましくは初期設定のパラメーターが、例えばギャップペナルティーおよび伸長ペナルティーに関して用いられる。
【0130】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適しているアルゴリズムの好ましい例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それは、それぞれAltschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)において記載されている。
【0131】
配列
【0132】
【表1】
【0133】
化合物部分および化合物
本明細書で提供される核酸化合物、例えばリボ/デオキシリボ核酸化合物は、療法的または診断的分子を含むことができる。
【0134】
療法的または診断的分子は、本明細書で提供される核酸化合物の一部を形成することができ、従って“化合物部分”、例えば療法的部分またはイメージング部分と呼ばれる。あるいは、療法的または診断的分子は、本明細書で提供される核酸化合物(その態様を含む)の一部を形成しないことができるが、TfR発現細胞により、本明細書で提供される核酸化合物の前記の細胞上のTfRへの結合の際に独立して内部移行させられることができる。この状況では、療法的または診断的分子は、“化合物”と呼ばれる。
【0135】
従って、本明細書で提供される核酸化合物(その態様を含む)は、化合物部分を含むことができる。核酸化合物が化合物部分を含む場合、その化合物部分は、核酸化合物またはRNA/DNA配列に共有結合的に(例えば直接または共有結合した仲介物(intermediary)を通して)結合していることができる(例えば、上記で述べられたコンジュゲート化学に関して用いられる有用な反応性部分または官能基を参照)。従って、ある態様において、核酸化合物は、さらに核酸化合物またはRNA/DNA配列に共有結合した化合物部分を含む。複数の態様において、化合物部分および核酸化合物またはRNA/DNA配列は、コンジュゲートを形成している。ある態様において、化合物部分は、核酸化合物またはRNA/DNA配列に、非共有結合的に、例えばイオン結合(単数または複数)、ファンデルワールス結合(単数または複数)/相互作用、水素結合(単数または複数)、極性結合(単数または複数)、“スティッキーブリッジ(sticky bridges)”(例えばZhou J et al. Nucleic Acids Res. 2009; 37(9): 3094-3109参照)またはそれらの組み合わせもしくは混合を介して結合している。化合物部分は、核酸化合物またはRNA/DNA配列に、中間分子、例えばモジュール式ストレプトアビジンコネクターを介して結合していることができる(例えばChu TC et al., Nucleic Acids Res 2006, 34:e73参照)。化合物部分が、本明細書において下で記載されるように、例えばナノ粒子またはリポソーム中に封入されている場合、その封入部分は、それ自体が核酸化合物またはRNA/DNA配列に共有結合的に、または非共有結合的に結合していることができる。
【0136】
ある態様において、化合物部分は、核酸化合物またはRNA/DNA配列に共有結合した療法的部分またはイメージング部分である。
用語“療法的部分”は、本明細書で提供される際、その明白な通常の意味に従って用いられ、それを必要とする対象に与えられた際に療法的利益(処置されている基礎となる障害の予防、根絶、改善)を有する一価化合物を指す。療法的部分は、本明細書で提供される際、限定ではなく、ペプチド、タンパク質、核酸、核酸類似体、小分子、抗体、酵素、プロドラッグ、ナノ構造物、ウイルスカプシド、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリンを含むがそれらに限定されない細胞毒性薬剤(例えば毒素)、およびグルココルチコイドを含むことができる。複数の態様において、療法的部分は、本明細書で記載される抗癌剤または化学療法剤である。複数の態様において、療法的部分は、核酸部分、ペプチド部分または小分子薬物部分である。複数の態様において、療法的部分は、核酸部分である。複数の態様において、療法的部分は、ペプチド部分である。複数の態様において、療法的部分は、小分子薬物部分である。複数の態様において、療法的部分は、ヌクレアーゼである。複数の態様において、療法的部分は、免疫賦活剤である。複数の態様において、療法的部分は、毒素である。複数の態様において、療法的部分は、ヌクレアーゼである。複数の態様において、療法的部分は、ジンクフィンガーヌクレアーゼである。複数の態様において、療法的部分は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼである。複数の態様において、療法的部分は、Cas9である。療法的部分は、ナノ粒子またはリポソーム中に封入されていることができ、ここで、そのナノ粒子またはリポソームは、核酸化合物またはRNA/DNA配列に結合している。
【0137】
ある態様において、療法的部分は、活性化核酸部分(活性化核酸を含む一価化合物)またはアンチセンス核酸部分(アンチセンス核酸を含む一価化合物)である。活性化核酸は、所与の遺伝子またはタンパク質の発現または活性を検出可能なほどに増大させることができる核酸を指す。活性化核酸は、発現または活性を、活性化核酸の非存在下での対照と比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはより大きく増大させることができる。特定の場合において、発現または活性は、活性化核酸の非存在下での発現または活性の1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、またはより高い。アンチセンス核酸は、特定の標的核酸の少なくとも一部に相補的であり、その標的核酸の転写を低減する、またはその標的核酸の翻訳を低減する、または転写産物のスプライシングを変化させることができる核酸を指す。アンチセンス核酸は、所与の遺伝子またはタンパク質の発現または活性を検出可能なほどに低下させることができる可能性がある。アンチセンス核酸は、発現または活性を、そのアンチセンス核酸の非存在下での対照と比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはより大きく低下させることができる。
【0138】
ある態様において、療法的部分は、miRNA部分(miRNAを含む一価化合物)、mRNA部分(mRNAを含む一価化合物)、siRNA部分(siRNAを含む一価化合物)またはsaRNA部分(saRNAを含む一価化合物)である。ある態様において、療法的部分は、miRNA部分である。用語“miRNA”は、その明白な通常の意味に従って用いられ、遺伝子発現を転写後制御することができる小さい非コードRNA分子を指す。一態様において、miRNAは、標的遺伝子に対する実質的または完全な同一性を有する核酸である。ある態様において、miRNAは、相補的な細胞性mRNAと相互作用し、それによりその相補的なmRNAの発現に干渉することにより遺伝子発現を阻害する。典型的には、miRNAは、少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、miRNAのそれぞれの相補配列は、15~50ヌクレオチド長であり、miRNAは、長さ約15~50塩基対である)。他の態様において、長さは、20~30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20~25または約24~29ヌクレオチド長、例えば20、21、22、23、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長である。ある態様において、療法的部分は、本明細書で記載されるsiRNA部分である。ある態様において、療法的部分は、本明細書で記載されるsaRNA部分である。複数の態様において、療法的部分は、抗癌剤部分である。ある態様において、療法的部分は、mRNA部分である。複数の態様において、療法的部分は、cDNA部分である。
【0139】
ある場合には、本明細書で提供される核酸化合物またはRNA/DNA配列は、ヌクレオチド化合物部分、例えばmRNA、miRNA、siRNAまたはsaRNAのセンス鎖に結合している。ある場合には、核酸化合物またはRNA/DNA配列は、ヌクレオチド化合物部分のアンチセンス鎖に結合している。ある場合には、核酸化合物またはRNA/DNA配列は、ヌクレオチド化合物部分のガイド鎖に結合している。ある場合には、核酸化合物またはRNA/DNA配列は、ヌクレオチド化合物部分のパッセンジャー鎖に結合している。
【0140】
ある態様において、療法的部分は、C/EBPアルファsaRNA部分である。“C/EBPアルファsaRNA”は、本明細書で提供される際、C/EBPアルファ遺伝子および/またはC/EBPアルファタンパク質の発現を活性化する、および/または増大させることができるsaRNAである。ある場合には、saRNA配列は、SEQ ID NO:9および/またはSEQ ID NO:10を含む。
【0141】
ある態様において、療法的部分は、サーチュインsaRNA部分である。“サーチュインsaRNA”は、本明細書で提供される際、サーチュイン遺伝子、例えばSIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6またはSIRT7の発現を活性化する、および/または増大させることができるsaRNAである。ある態様において、療法的部分は、SIRT1 saRNA部分である。“SIRT1 saRNA”は、本明細書で提供される際、SIRT1遺伝子および/またはSirt1タンパク質の発現を活性化する、および/または増大させることができるsaRNAである。ある場合には、例えば、そのsaRNA配列は、SEQ ID NO:7および/またはSEQ ID NO:8を含む。
【0142】
ある態様において、療法的部分は、HNF saRNA部分である。“HNF saRNA”は、本明細書で提供される際、HNF遺伝子および/またはタンパク質、例えばHNF4(そのイソ型およびバリアントを含む)の発現を活性化する、および/または増大させることができるsaRNAである。HNF saRNAは、HNF4 saRNAであることができる。すなわち、HNF saRNAは、HNF4遺伝子および/またはタンパク質の発現を調節する、例えば発現を活性化させる、および/または増大させるsaRNAであることができる。
【0143】
ある場合には、療法的部分は、NFκB(活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー)mRNA、miRNA、siRNAまたはsaRNAであることができる。
ある場合には、療法的部分は、補酵素、例えばNAD/NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)であることができる(例えばYing W, Front Biosci. 2007 Jan 1; 12: 1863-88を参照)。
【0144】
本明細書で提供される化合物部分は、イメージング部分であることができる。“イメージング部分”は、本明細書で提供される際、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段により検出可能な一価化合物である。ある態様において、イメージング部分は、核酸化合物またはRNA/DNA配列に共有結合している。典型的なイメージング部分は、限定ではなく、32P、放射性核種、陽電子放出同位体、蛍光色素、蛍光体、抗体、生物発光分子、化学発光分子、光活性分子、金属、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAにおいて一般的に用いられるような酵素)、磁気コントラスト剤、量子ドット、ナノ粒子、例えば金ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン類およびタンパク質または他の実体であり、それは、例えば放射性標識をペプチドもしくは標的ペプチドと特異的に反応する抗体中に組み込むことにより検出可能にされることができる。抗体をその部分にコンジュゲートするための当該技術で既知のあらゆる方法が、用いられることができ、例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques 1996, Academic Press, Inc.(サンディエゴ)において記載されている方法を用いる。典型的な蛍光体は、フルオレセイン、ローダミン、GFP、クマリン、FITC、AlExa fluor(登録商標)、Cy3、Cy5、BODIPYおよびシアニン色素を含む。典型的な放射性核種は、フッ素-18、ガリウム-68および銅-64を含む。典型的な磁気コントラスト剤は、ガドリニウム、酸化鉄および鉄白金(iron platinum)ならびにマンガンを含む。ある態様において、イメージング部分は、生物発光分子である。ある態様において、イメージング部分は、光活性分子である。ある態様において、イメージング部分は、金属である。ある態様において、イメージング部分は、ナノ粒子である。
【0145】
用語“イメージング剤”は、本明細書で用いられる際、それらが本明細書で記載される核酸化合物に結合していない場合の上記のイメージング部分を記載している。
ある場合には、本明細書で記載される核酸化合物は、(i)本明細書で記載されるRNA/DNA配列および(ii)追加のアプタマー分子を含む。前記のRNA/DNA配列がアプタマーである場合、そのような分子は、二重特異性アプタマーと記載されることができる。好ましくは、追加のアプタマー分子は、TfRを標的にしない、かつ/またはTfRに結合しない。ある場合には、本明細書で記載される核酸化合物は、多価である。ある場合には、本明細書で記載される核酸の末端は、それぞれの部分に結合した相補的ヌクレオチドリンカー配列を用いて追加のアプタマー分子の末端にアニーリングしていることができる(例えば、McNamara, J.O. et al. J. Clin. Invest. 2008 118:376-386, which is hereby incorporated by reference in its entiretyを参照、それは、参照によりそのまま本明細書に援用される)。
【0146】
本明細書で記載される化合物部分または化合物は、本発明の核酸化合物に、本明細書で記載される、または当該技術で既知のあらゆる適切な方法によりコンジュゲートされることができる(例えば、参照によりそのまま本明細書に援用されるZhu G et al., Bioconjug Chem. 2015 26(11): 2186-2197を参照)。化学物質ベースのリンカーは、活性化試薬、例えばm-マレイミドベンゾイル N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、2-イミノチオラン(トラウト試薬)、N-スクシンイミジル-3-2-ピリジルジチオプロピオネート(SPDP)を用いることができ、またはPEG化もしくはアビジン/ビオチン技法を用いることができる(例えば、Pardridge WM, Adv Drug Delivery Rev. 1999, 36:299-321; Qian ZM et al.(上記)を参照、それは、参照によりそのまま本明細書に援用される)。
【0147】
修飾
本明細書で記載される核酸化合物は、それらの機能的特徴、例えばヌクレアーゼ耐性または結合親和性を増進するために、例えば本明細書で定められたような化学修飾を含有することができる。修飾は、核酸化合物、RNA/DNA配列中および/またはヌクレオチドベースの化合物部分もしくは化合物、例えばsaRNA、siRNA、miRNA、mRNA中に存在することができる。
【0148】
ある場合には、修飾は、1以上のヌクレオチドの塩基、糖環またはホスフェート基に対してなされることができる。
ある場合には、本明細書で記載される核酸化合物は、1以上の修飾核酸塩基を含む。例えば、核酸化合物は、フルオロ(F)、アミノ(NH)またはO-メチル(OCH)基で修飾された1以上のリボ/デオキシリボ核酸塩基を含むことができる。ある場合には、核酸塩基は、2’位、3’位、5’位または6’位において修飾されている。ある場合には、核酸化合物は、1以上の2’-アミノピリミジン類、2’-フルオロピリミジン類、2’-O-メチルヌクレオチド類および/または‘ロックド(locked)’ヌクレオチド(LNA)を含むことができる(例えば、Lin, Y et al., Nucleic Acids Res. 1994 22, 5229-5234 (1994); Ruckman, J. et al.. J. Biol. Chem. 1998 273, 20556-20567; Burmeister, PE et al., Chem. Biol. 2005 12, 25-33; Kuwahara, M. & Obika, S. Artif. DNA PNA XNA 2013 4, 39-18; Veedu, R. N. & Wengel, J. Mol. Biosyst. 2009 5,787-792を参照)。ある場合には、核酸化合物は、1以上のL型核酸を含む(例えば、Maasch, C et al., Nucleic Acids Symp. Ser. (Oxf.) 2008 52, 61-62を参照)。他の適切な核酸修飾が、当業者には明らかであろう(例えば、本明細書に参照によりそのまま援用されるNi S et al., Int. J. Mol. Sci 2017 18, 1683を参照)。
【0149】
ある場合には、ヌクレオチド化合物部分、例えばmRNA、miRNA、siRNAまたはsaRNAのセンスおよび/またはアンチセンス鎖は、ヌクレオチドオーバーハングを含むことができる。例えば、前記のオーバーハングは、2-ヌクレオチド(UU)オーバーハングであることができる。前記のオーバーハングは、一方または両方の鎖の3’末端上にあることができる。オーバーハングは、ヌクレオチド化合物部分のDicer認識を有利にし得る。
【0150】
ある場合には、本明細書で記載される核酸化合物は、3’末端上に逆向きチミジンキャップを含むかまたは3’-ビオチンを含む。ある場合には、核酸化合物中のホスホジエステル結合は、メチルホスホネートもしくはホスホロチオエート類似体またはトリアゾール結合で置き換えられている(Ni S et al.(上記)を参照)。
【0151】
ある場合には、本明細書で記載される核酸化合物は、1コピー以上のC3スペーサーホスホロアミダイト(phosphoramite)を含む。スペーサーは、内部に、例えばRNA/DNA配列および化合物部分の間に、またはヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端に、例えばイメージング部分を取り付けるために組み込まれることができる。
【0152】
ある場合には、本明細書で記載される核酸化合物は、半減期を増大させる、および/または腎クリアランスに抵抗するための修飾を含む。例えば、化合物は、コレステロール、ジアルキル脂質、タンパク質、リポソーム、有機性または無機性ナノ材料、ナノ粒子、不活性抗体またはポリエチレングリコール(PEG)、例えば20kDa PEG、40kDa PEGを含むように修飾されていることができる。そのような修飾は、化合物の5’末端にあることができる。ある場合には、修飾は、腎糸球体に関するカットオフ閾値(約30~50kDa)より上の質量を有する分子を含む。ある場合には、核酸化合物(nucleic compounds)は、プルロニック(登録商標)ゲルを用いて配合されることができる。適切な修飾および配合物の例に関して、例えばNi et al(上記)およびZhou and Rossi, Nat Rev Drug Disc 2017, 16 181-202を参照;両方とも参照により本明細書にそのまま援用される。
【0153】
本明細書で記載される核酸化合物は、タグ、例えばアルブミンタグを含むことができる。他のタグは、以下のタグを含むことができる:ポリ(His)タグ、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、Strep-タグおよびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)。化合物は、例えば本明細書に参照によりそのまま援用されるSrisawat C and Engelke DR, Methods. 2002 26(2): 156-161およびWalker et al., Methods Mol Biol. 2008; 488: 23-40において記載されているようなRNA/DNA親和性タグを含むことができる。他の適切なタグは、当業者には容易に明らかであろう。
【0154】
本明細書で記載される核酸化合物は、核酸部分ならびに化合物部分および/またはタグの間にスペーサーまたはリンカー配列を含むことができる。適切なスペーサーまたはリンカー配列は、当業者には容易に明らかであろう。
【0155】
機能的特徴
本明細書で記載される核酸化合物は、特定の機能的特性への参照により特性付けられることができる。
【0156】
ある態様において、本明細書で記載される核酸/リボ核酸/デオキシリボ核酸化合物は、以下の特性の1以上を有することができる:
トランスフェリン受容体(TfR)に結合する;
TfRに結合することができる;
TfRに特異的に結合する;
TfRに特異的に結合することができる;
細胞の表面上のTfRに結合する;
細胞の表面上のTfRに結合することができる;
細胞により内部移行させられることができる;
ペイロード、例えば化合物部分または化合物を細胞中に送達することができる;
血液脳関門を越えることができる;
脳中に輸送されることができる;
ペイロード、例えば化合物部分または化合物を脳中に送達することができる。
【0157】
核酸化合物のトランスフェリン受容体への結合は、例えば、本明細書で説明されておりDrescher et al., Methods Mol Biol. 2009; 493: 323-343において記載されているような表面プラズモン共鳴技術により決定されることができる。
【0158】
核酸化合物の細胞により内部移行させられる能力またはBBBを越える能力は、核酸化合物にコンジュゲートされたイメージング部分、例えば蛍光色素を用いて前記のイメージング部分を適切な手段により検出することで決定されることができる。適切な画像化法は、本明細書で記載されており、または当該技術で周知である。他の方法は、療法的部分を脳組織中で例えば抗体を用いて検出することを含む。
【0159】
核酸化合物のペイロードを細胞中に送達する能力は、ペイロード自体を例えばイメージング部分の検出もしくは当該技術で既知であろうような他の方法により検出することにより、または例えば本明細書で記載されるような前記のペイロードの送達の成功の作用を検出することにより、決定されることができる。
【0160】
用語“内部移行した”、“内部移行させること”または“内部移行”は、本明細書で提供される際、組成物(例えば化合物、核酸化合物、療法剤、イメージング剤)が(例えば細胞膜により飲み込まれた後に)細胞の細胞質中に引き込まれることを指す。
【0161】
医薬配合物
本発明は、本明細書で記載される核酸化合物を含む医薬組成物を提供する。
本明細書で記載される核酸化合物は、臨床使用のための医薬組成物または医薬品として配合されることができ、薬学的に許容可能なキャリヤー、希釈剤、賦形剤または補助剤を含むことができる。組成物は、局所、非経口、全身、体腔内、静脈内、動脈内、筋内、髄腔内、眼内、結膜内、腫瘍内、皮下、皮内、髄腔内、経口または経皮投与経路のために配合されることができ、それは、注射または注入を含むことができる。適切な配合物は、無菌または等張媒体中の抗原結合分子を含むことができる。医薬品および医薬組成物は、ゲルを含む流体形態中に配合されることができる。流体配合物は、ヒトまたは動物の体の選択された領域への注射または注入による(例えばカテーテルを介した)投与のために配合されることができる。
【0162】
ある場合には、本発明に従う核酸化合物は、例えば血管または腫瘍中への注射または注入のために配合される。
本明細書で提供される核酸化合物の医薬組成物は、療法的または予防的に有効な量で、すなわちその意図された目的を達成するために有効な量で含有される療法的部分を有する組成物を含むことができる。本明細書で提供される核酸化合物の医薬組成物は、有効量で、すなわちその意図された目的を達成するために有効な量で含有されるイメージング部分を有する組成物を含むことができる。特定の適用に関して有効な実際の量は、特に処置、試験、検出または診断されている病気に依存するであろう。疾患を処置するための方法において投与される際、そのような組成物は、所望の結果、例えば標的分子の活性の調節および/または疾患症状の低減、排除もしくはその進行の減速を達成するために有効な量の有効成分を含有するであろう。本明細書で提供される療法的部分の療法的または予防的に有効な量の決定は、特に本明細書における詳述された開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。疾患を診断または検出するための方法において投与される場合、そのような組成物は、所望の結果、例えば対象中の標的分子、細胞または腫瘍の非存在または存在の検出を達成するために有効な量の本明細書で記載されるイメージング部分を含有するであろう。本明細書で提供されるイメージング部分の検出可能な量の決定は、特に本明細書における詳述される開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0163】
哺乳類に投与される投与量および頻度(1回量または多数回用量)は、様々な要因、例えばその哺乳類が別の疾患を患っているかどうか;投与経路;受容者の大きさ、年齢、性別、健康、体重、肥満指数、および食事;処置されている疾患の症状の性質および程度、同時に行われる処置の種類、処置されている疾患からの合併症または他の健康に関連する問題に応じて異なり得る。他の療法計画または療法剤が、本明細書で記載される方法および組成物(その態様を含む)と合わせて用いられることができる。確立された投与量(例えば頻度および持続期間)の調節および操作は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0164】
本明細書で記載されるあらゆる組成物(例えば提供される核酸化合物ならびに抗癌剤および提供される核酸化合物の組み合わせ)に関して、療法上有効量は、細胞培養アッセイから最初に決定されることができる。標的濃度は、本明細書で記載される方法または当該技術で既知の方法を用いて測定される、本明細書で記載される方法を達成することができる有効化合物(単数または複数)の濃度であろう。当該技術で周知であるように、ヒトにおける使用に関する有効量は、動物モデルから決定されることもできる。例えば、ヒトに関する用量は、動物において有効であることが分かっている濃度を達成するように配合されることができる。ヒトにおける投与量は、上記のように、有効性をモニターし、投与量を上向きまたは下向きに調節することにより、調節されることができる。上記の方法および他の方法に基づいてヒトにおける最大限の有効性を達成するように用量を調節することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0165】
一側面において、本明細書で提供される核酸化合物(その態様を含む)および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬配合物が、本明細書において提供される。ある態様において、核酸は、核酸化合物またはRNA/DNA配列に共有結合した化合物部分を含む。上記のように、化合物部分は、核酸化合物またはRNA/DNA配列に共有結合した療法的部分またはイメージング部分であることができる。
【0166】
ある側面において、医薬組成物は、本明細書で提供される核酸化合物(その態様を含む)および療法剤を含む。ある態様において、核酸化合物は、化合物部分を含む。ある態様において、核酸化合物および療法剤は、共有結合していない。本明細書で提供される療法剤は、療法的作用を有する組成物(例えば化合物、薬物、拮抗薬、阻害剤、変調剤)を指す。ある態様において、療法剤は、抗癌剤である。ある態様において、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
【0167】
ある側面において、本明細書で提供される核酸化合物(その態様を含む)および本明細書で記載される化合物を含む医薬組成物が、提供される。すなわち、組成物は、核酸化合物およびその核酸化合物自体の一部を形成しない化合物、例えば療法的または診断的分子を含む。ある場合には、核酸化合物は、化合物部分を含む。ある場合には、医薬組成物は、さらに療法剤を含む。
【0168】
“薬学的に許容可能な賦形剤”および“薬学的に許容可能なキャリヤー”は、有効薬剤の対象への投与および対象による吸収を助ける物質を指し、患者への有意な有害な毒物学的作用を引き起こすことなく本発明の組成物中に含まれることができる。薬学的に許容可能な賦形剤の限定的でない例は、水、NaCl、通常の生理食塩水溶液、乳酸加リンガー、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、増量剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香味料、塩類溶液(例えばリンガー溶液)、アルコール類、油類、ゼラチン類、炭水化物、例えばラクトース、アミロースまたはデンプン、脂肪酸エステル類、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、および着色料等を含む。そのような製剤は、滅菌されることができ、所望であれば、本発明の化合物と有害に反応しない補助剤、例えば潤滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩類、緩衝剤、着色料、および/または芳香性物質等と混合されることができる。当業者は、他の医薬用賦形剤が、本発明において有用であることを、認識しているであろう。
【0169】
用語“薬学的に許容可能な塩類”は、当該技術で周知の様々な有機および無機対イオン由来の塩類を指し、それは、単に例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等を含み;分子が塩基性官能性(functionality)を含有する場合、有機酸または無機酸の塩類、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等を含む。
【0170】
用語“組成物”は、カプセルを提供するキャリヤーとしての封入物質(encapsulating material)を有する有効化合物の配合物を含むことが意図されており、ここで、他のキャリヤーを有するかまたは有しない有効構成要素が、キャリヤーにより取り囲まれており、そうしてそれは、それと会合している。同様に、カシェ剤およびロゼンジが、含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤、およびロゼンジは、経口投与に適した固体剤形として用いられることができる。
【0171】
医薬組成物は、場合により単位剤形である。そのような形態において、製剤は、適切な量の有効構成要素を含有する単位用量に細分されている。単位剤形は、包装された組成物であることができ、その包装は、個別の量の組成物、例えば包装された錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプル中の粉末を含有する。また、単位剤形は、それ自体がカプセル、錠剤、カシェ剤もしくはロゼンジであることができ、またはそれは、適切な数の包装された形態のこれらのいずれであることもできる。単位剤形は、凍結された分散物であることができる。
【0172】
送達の方法
上記のように、本明細書で提供される核酸化合物、例えばリボ/デオキシリボ核酸化合物(その態様を含む)は、化合物部分または化合物(例えば療法剤またはイメージング剤)を細胞中に送達するために用いられることができる。化合物部分(例えば療法的部分またはイメージング部分)が細胞中に送達される場合、化合物部分は、本明細書で提供される核酸化合物(その態様を含む)に共有結合していることができる。核酸化合物の細胞上のTfRへの結合の際、化合物部分は、核酸化合物に共有結合したまま細胞により内部移行させられる。従って、一側面において、化合物部分を細胞中に送達する方法が、提供される。その方法は、以下の工程を含む:(i)細胞を本明細書で提供される核酸化合物または組成物(その態様を含む)と接触させ、そして(ii)核酸化合物を細胞上のTfRに結合させ、細胞中に通過させ、それにより化合物部分を細胞中に送達する。
【0173】
あるいは、化合物が細胞中に送達される場合、化合物(例えば療法剤またはイメージング剤)は、核酸化合物に共有結合していない可能性がある。本明細書で提供される核酸化合物(その態様を含む)の細胞上のTfRへの結合の際、核酸化合物および提供される化合物は、互いに共有結合することなく細胞により内部移行させられることができる。従って、別の側面において、化合物を細胞中に送達する方法が、提供される。その方法は、以下の工程を含む:(i)細胞を化合物および本明細書で提供される核酸化合物または組成物(その態様を含む)と接触させ、そして(ii)核酸化合物を細胞上のTfRに結合させ、化合物を細胞中に通過させ、それにより化合物を細胞中に送達する。複数の態様において、化合物は、療法剤またはイメージング剤である。複数の態様において、化合物は、核酸化合物に非共有結合的に結合している。
【0174】
その方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボで実施されることができる。ある場合には、その方法は、化合物部分または化合物を血液脳関門を越えて脳中に送達することを含む。
【0175】
療法的および予防的適用
本明細書で提供される核酸化合物、例えばリボ/デオキシリボ核酸化合物および組成物は、療法的および予防的方法において用途がある。
【0176】
本発明は、医学的処置または予防の方法における使用のための本明細書で記載される核酸化合物および組成物を提供する。本発明は、疾患または障害を処置または予防するための医薬品の製造における本明細書で記載される核酸化合物および組成物の使用も提供する。本明細書で記載される発明は、疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に療法的または予防的に有効な量の本明細書で記載される核酸化合物または組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0177】
本明細書で用いられる際、“処置”または“処置すること”または“緩和すること”または“改善すること”は、本明細書において互換的に用いられている。これらの用語は、療法的利益および/または予防的利益を含むがそれらに限定されない有益な結果または所望の結果を得るためのアプローチを指す。療法的利益により、処置されている基礎となる障害の根絶または改善が意味される。また、療法的利益は、患者がなお基礎となる障害で苦しんでいる可能性があるにもかかわらず向上が患者において観察されるような、基礎となる障害と関係する生理学的症状の1以上の根絶または改善により達成される。予防的利益に関して、組成物は、特定の疾患を発現するリスクのある患者に、または疾患の生理学的症状の1以上を報告している患者に、たとえこの疾患の診断がなされたことがない可能性があっても、投与されることができる。処置は、疾患を予防すること、すなわち、疾患の誘導前の保護的組成物の投与により疾患の臨床症状が発現しないようにすること;疾患を抑制すること、すなわち、誘導事象後であるが疾患の臨床的出現または再発の前の保護組成物の投与により疾患の臨床症状が発現しないようにすること;疾患を阻害すること、すなわち、臨床症状の発現を、それらの最初の出現後の保護的組成物の投与により止めること;疾患の再発を予防すること、および/または疾患を軽減すること、すなわち、臨床症状の後退を、それらの最初の出現後の保護的組成物の投与により引き起こすことを含む。
【0178】
本明細書で記載される核酸化合物は、前記の化合物および/または会合した療法的もしくはイメージング部分のTfRを発現している細胞への送達から利益を得るであろうあらゆる疾患/障害の処置または予防において用途がある。核酸化合物は、前記の化合物および/または会合した部分の脳への送達から利益を得るであろうあらゆる疾患/障害の処置または予防においても用途がある。
【0179】
本発明の療法的および予防的有用性が、化合物部分または化合物のTfRを発現している細胞中または脳中への送達から利益を得るであろうあらゆる対象の処置に及ぶことは、理解されるであろう。
【0180】
ある態様において、疾患/障害は、サーチュイン遺伝子/タンパク質、例えばSIRT1の活性化、C/EBPアルファ遺伝子/タンパク質の活性化、および/またはHNF遺伝子/タンパク質の活性化から利益を得るであろう疾患/障害である。ある態様において、本明細書で記載される核酸および化合物は、癌、代謝障害または神経学的障害を処置または予防するための用途がある。
【0181】
例えば、ある態様において、本明細書で記載される特定の方法は、癌(例えば肝臓癌(例えば肝細胞癌)、膵臓癌、膵肝転移、前立腺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、性腺摘除抵抗性前立腺癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、膠芽腫、卵巣癌、肺癌、扁平上皮癌(例えば頭、首または食道)、結腸直腸癌、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫)を処置する。例えば、本明細書における特定の方法は、癌を、癌の発生、成長、転移、もしくは進行を低下させる、もしくは低減する、もしくは予防することにより処置するか;または癌を、癌の症状を減少させることにより処置する。癌(例えば肝臓癌(例えば肝細胞癌)、膵臓癌、膵肝転移、前立腺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、性腺摘除抵抗性前立腺癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、膠芽腫、卵巣癌、肺癌、扁平上皮癌(例えば頭、首または食道)、結腸直腸癌、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫)の症状は、既知であると考えられ、または当業者により決定され得る。
【0182】
ある態様において、癌は、本明細書で記載されたような癌である。ある態様において、癌は、肝臓癌、例えば肝細胞癌、膵臓癌、膵肝転移、転移癌または脳癌である。
ある場合には、癌は、サーチュイン遺伝子/タンパク質、例えばSIRT1の活性化、C/EBPアルファ遺伝子/タンパク質の活性化、および/またはHNF遺伝子/タンパク質の活性化が療法的または予防的作用を有する癌である。
【0183】
ある態様において、本明細書で記載される処置の方法は、それを必要とする対象に療法的または予防的に有効な量の本明細書で記載される核酸化合物または組成物を投与することを含み、ここで、核酸化合物は、抗癌療法的部分を含む。ある態様において、処置の方法は、さらにそれを必要とする対象に有効量の抗癌剤を投与することを含む。
【0184】
ある場合には、本明細書で記載される処置の方法は、例えばBeclin1の活性化または阻害によりオートファジーを誘導または阻害することを含む。例えば、Jin and White, Autophagy 2007; 3(1):28-31; Rosenfeldt and Ryan, Expert Rev Mol Med. 2009; 11:e36;およびMah and Ryan, Cold Spring Harb Perspect Biol. 2012; 4(1): a008821を参照、全て参照により本明細書にそのまま援用される。ある場合には、本明細書で記載される処置の方法は、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NF-κB)の活性を誘導または阻害することを含む。
【0185】
ある態様において、疾患/障害は、代謝障害である。例えば、代謝障害は、メタボリックシンドローム、I型糖尿病、2型糖尿病、脂質異常症、空腹時血糖異常、耐糖能障害、肥満、心血管疾患、インスリン抵抗性、高トリグリセリド血症、乾癬、乾癬性関節炎、冠動脈血管病、例えば冠動脈心疾患、冠動脈疾患、卒中および末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、脂肪性肝炎および/またはリポジストロフィー性障害であることができる。
【0186】
ある場合には、代謝障害は、サーチュイン遺伝子/タンパク質の活性化、C/EBPアルファ遺伝子/タンパク質の活性化、および/またはHNF遺伝子/タンパク質の活性化が療法的または予防的作用を有する代謝障害である。
【0187】
ある場合には、本発明の核酸および組成物は、体重の低減、体重増加の低減、血清グルコースの低減、グルコース恒常性の制御、インスリン抵抗性の低下、白色脂肪組織の低減、コレステロールの低減、低密度リポタンパク質(LDL)の低減、高密度リポタンパク質(HDL)の増大、高密度リポタンパク質/低密度リポタンパク質(HDL/LDL)比の増大、血清トリグリセリド類の低減において用途がある。
【0188】
ある場合には、本発明の核酸および組成物は、膵臓、脳、心臓、白色および褐色脂肪組織、筋肉および/または肝臓中のTfR発現細胞の標的化において用途がある。
ある態様において、疾患/障害は、神経学的障害である。例えば、神経学的障害は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)であることができる。
【0189】
ある場合には、神経学的障害は、サーチュイン遺伝子/タンパク質の活性化、C/EBPアルファ遺伝子/タンパク質の活性化、および/またはHNF遺伝子/タンパク質の活性化が療法的または予防的作用を有する神経学的障害である。
【0190】
ある場合には、本発明の核酸および組成物は、神経変性の処置または予防、すなわちその低減またはそれに対する保護における用途がある。
併用処置が意図される場合、本明細書で記載される薬剤(すなわち核酸化合物)がその組み合わせの特定の性質により限定されることは、意図されていない。例えば、本明細書で記載される薬剤は、単純な混合物ならびに化学的ハイブリッドとして組み合わせで投与されることができる。後者の例は、薬剤が標的化キャリヤーに、または有効医薬に共有結合している場合である。共有結合は、多くの方法で、例えば商業的に入手可能な架橋剤の使用により(それに限定されないが)成し遂げられることができる。
【0191】
“有効量”は、明記された目的を成し遂げる(例えば、それが投与される目的である作用を達成する、疾患を処置する、酵素活性を低減する、疾患または病気の1以上の症状を低減する、細胞中のウイルスの複製を低減する)ために十分な量である。“有効量”の例は、疾患の症状(単数または複数)の処置、予防または低減に寄与するために十分な量であり、それは、“療法上有効量”とも呼ばれ得る。症状(単数または複数)の“低減”(およびこの句の文法的均等物)は、症状(単数または複数)の重症度もしくは頻度の低下または症状(単数または複数)の排除を意味する。薬物の“予防的有効量”は、対象に投与された際に、意図される予防的作用、例えば損傷、疾患、病理もしくは病気の開始(または再発)の予防もしくは遅延、または損傷、疾患、病理もしくは病気、もしくはそれらの症状の開始(または再発)の可能性の低減を有するであろう。完全な予防的作用は、1用量の投与によっては必ずしも起こらず、一連の用量の投与後にのみ起こる可能性がある。従って、予防的有効量は、1回以上の投与において投与されることができる。“活性を低下させる量”は、本明細書で用いられる際、酵素またはタンパク質の活性を拮抗薬の非存在下と比較して低下させるために必要な拮抗薬の量を指す。“機能を混乱させる量”は、本明細書で用いられる際、酵素またはタンパク質の機能を拮抗薬の非存在下と比較して混乱させるために必要な拮抗薬の量を指す。所与のクラスの医薬製品に関する適切な投与量に関して、手引きが文献において見付けられることができる。例えば、所与のパラメーターに関して、有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%の増大または減少を示すであろう。有効性は、“-倍”の増大または減少として表されることもできる。例えば、療法上有効量は、対照と比較して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、またはより多くの作用を有することができる。正確な量は、処置の目的に依存すると考えられ、当業者により既知の技法を用いて確かめられることができるであろう(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999);およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2003, Gennaro, 編者, Lippincott, Williams & Wilkinsを参照)。
【0192】
“患者”、“対象”または“それを必要とする対象”は、本明細書で提供される方法を用いることにより処置されることができる疾患または病気を患っている、またはそれにかかりやすい生物を指す。その用語は、対象が特定の疾患を有すると診断されていることを必ずしも示さず、典型的には、医学的監督下にある個人を指す。限定的でない例は、ヒト、他の哺乳類、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、雌牛、シカ、および他の非哺乳類動物を含む。ある態様において、患者は、ヒトである。
【0193】
本明細書で用いられる際、用語“投与すること”は、対象への経口投与、坐剤としての投与、局所的接触、静脈内、腹腔内、筋内、病巣内、髄腔内、鼻内もしくは皮下投与、または徐放デバイス、例えば小型浸透圧ポンプの埋め込みを意味する。投与は、非経口および経粘膜(例えばバッカル、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、経腟、直腸、または経皮)を含むあらゆる経路による。非経口投与は、例えば、静脈内、筋内、小動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内を含む。他の送達の方式は、リポソーム配合物、静脈内注入、経皮パッチ等の使用を含むが、それらに限定されない。“同時投与する”により、本明細書で記載される組成物が、1以上の追加の療法、例えば癌療法、例えば化学療法、ホルモン療法、放射線療法、または免疫療法の投与と同時に、その直前に、またはその直後に投与されることが、意味される。本発明の化合物は、単独で投与されることができ、または患者に同時投与されることもできる。同時投与は、化合物の個々の、または組み合わせ(1種類より多くの化合物)での同時または連続投与を含むことが意味されている。従って、製剤は、所望であれば、(例えば代謝分解を低減するために)他の有効物質と組み合わせられることもできる。本発明の組成物は、経皮により、局所経路により送達されることができ、塗布器用の棒、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、塗料、粉末、およびエアロゾルとして配合されることができる。
【0194】
本明細書で提供される教示を利用して、実質的な毒性を引き起こさず、なお特定の患者により示される臨床症状を処置するために有効である有効な予防または療法処置計画が、計画されることができる。この計画は、化合物の効力、相対的生物学的利用能、患者の体重、有害な副作用の存在および重篤さ、好ましい投与方式ならびに選択された薬剤の毒性プロフィールのような考慮要因による有効化合物の注意深い選択を含むべきである。
【0195】
細胞を検出する方法
本明細書で提供される核酸組成物、例えばリボ/デオキシリボ核酸化合物は、化合物および化合物部分のTfRを発現する細胞への送達のために用いられることもできる。上記のように、送達される化合物および化合物部分は、細胞の検出のために有用なイメージング剤であることができる。従って、一側面において、細胞を検出する方法が、提供される。その方法は、以下の工程を含む:(i)細胞を本明細書で提供される核酸化合物または組成物(その態様を含む)と接触させ、ここで、その核酸化合物は、さらにイメージング部分を含み、(ii)核酸化合物または組成物を細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、そして細胞中に通過させ、(iii)イメージング部分が検出され、それにより細胞を検出する。
【0196】
別の側面において、細胞を検出する方法が、提供される。その方法は、以下の工程を含む:(i)細胞をイメージング剤および本明細書で提供される核酸化合物または組成物(その態様を含む)と接触させ、(ii)核酸化合物または組成物を細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、そしてイメージング剤を細胞中に通過させ、(iii)イメージング剤が検出され、それにより細胞を検出する。
【0197】
ある場合には、細胞は、悪性細胞である。ある場合には、細胞は、乳癌細胞である。ある場合には、細胞は、前立腺癌細胞である。ある場合には、細胞は、肝臓癌細胞である。ある場合には、細胞は、膵臓癌細胞である。ある場合には、細胞は、脳癌細胞である。ある場合には、細胞は、非悪性細胞である。ある場合には、細胞は、脳細胞である。ある場合には、細胞は、生物の一部を形成している。ある場合には、生物は、哺乳類である。ある場合には、細胞は、細胞培養物の一部を形成している。
【0198】
その方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボで実施されることができる。ある場合には、その方法は、化合物部分または化合物を血液脳関門を越えて脳中に送達することを含む。
【0199】
それらの特定の形態で、または開示された機能を実施するための手段、もしくは開示された結果を得るための方法もしくはプロセスに関して表現されている前記の記載において、または以下の特許請求の範囲において、または添付の図面において開示される特徴は、別々に、またはそのような特徴のあらゆる組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用されることができる。
【0200】
本発明は、上記の典型的な態様と合わせて記載されてきたが、多くの均等な改変およびバリエーションが、この開示を与えられた際に当業者には明らかであろう。従って、上記で述べられた本発明の典型的な態様は、説明的であり限定的ではないと考えられる。記載された態様に対する様々な変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされることができる。
【0201】
疑義を避けるために明記すれば、本明細書で提供されたあらゆる理論的説明は、読者の理解を向上させるために提供されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにより束縛されることも一切望んでいない。
【0202】
本明細書全体(以下の特許請求の範囲を含む)を通して、文脈が別途要求しない限り、“含む(comprise)”および“含む(include)”ならびにバリエーション、例えば“含む(comprises)”、“含むこと(comprising)”および“含むこと(including)”という語は、記載された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の包含を暗に示すがあらゆる他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の排除は暗に示さないように理解されるであろう。
【0203】
本明細書および添付された特許請求の範囲において用いられる際、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の参照対象を含む。範囲は、本明細書において“約”1つの特定の値から、および/または“約”別の特定の値までとして表されることができる。そのような範囲が表わされる場合、別の態様は、1つの特定の値から、および/または別の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞“約”の使用により近似値として表されている場合、特定の値が別の態様を形成することは、理解されるであろう。数値に関する用語“約”は、任意であり、例えば+/-10%を意味する。
【0204】
本発明の側面および態様は、ここで、添付の図面を参照して論じられるであろう。さらなる側面および態様が、当業者には明らかであろう。
態様
態様は、以下の態様P1~P32を含むが、それらに限定されない:
態様P1.SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなるリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、29ヌクレオチド以下の長さを有し、かつRNA配列が、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができるリボ核酸化合物。
【0205】
態様P2.態様P1に従うリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、22ヌクレオチド以下の長さを有するリボ核酸化合物。
態様P3.態様P1または態様P2に従うリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、22ヌクレオチド長であるリボ核酸化合物。
【0206】
態様P4.態様P1~P3のいずれか1項に従うリボ核酸化合物であって、RNA配列が、SEQ ID NO:1に対して100%の配列同一性を有するリボ核酸化合物。
態様P5.SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなるリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、29ヌクレオチド以下の長さを有し、かつRNA配列が、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができるリボ核酸化合物。
【0207】
態様P6.態様P5に従うリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、16ヌクレオチド長であるリボ核酸化合物。
態様P7.態様P5または態様P6に従うリボ核酸化合物であって、RNA配列が、SEQ ID NO:5に対して100%の配列同一性を有するリボ核酸化合物。
【0208】
態様P8.態様P1~P7のいずれか1項に従うリボ核酸化合物であって、RNA配列が、細胞表面上のTfRに結合することができるリボ核酸化合物。
態様P9.態様P1~P8のいずれか1項に従うリボ核酸化合物であって、細胞中に内部移行させられることができるリボ核酸化合物。
【0209】
態様P10.態様P1~P9のいずれか1項に従うリボ核酸化合物であって、血液脳関門を超えることができるリボ核酸化合物。
態様P11.態様P1~P10のいずれか1項に従うリボ核酸化合物であって、さらに前記のRNA配列に結合した化合物部分を含むリボ核酸化合物。
【0210】
態様P12.態様P11に従うリボ核酸化合物であって、化合物部分が、療法的部分またはイメージング部分であるリボ核酸化合物。
態様P13.態様P11または態様P12に従うリボ核酸化合物であって、前記の化合物部分が、前記のRNA配列に共有結合しているリボ核酸化合物。
【0211】
態様P14.態様P12または態様P13に従うリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、核酸部分、ペプチド部分または小分子薬物部分であるリボ核酸化合物。
態様P15.態様P14に従うリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、活性化核酸部分またはアンチセンス核酸部分であるリボ核酸化合物。
【0212】
態様P16.態様P14または態様P15に従うリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、miRNA、mRNA、saRNAまたはsiRNA部分であるリボ核酸化合物。
【0213】
態様P17.態様P12~P16のいずれか1項に従うリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、抗癌療法的部分であるリボ核酸化合物。
態様P18.態様P12~P17のいずれか1項に従うリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、C/EBPalpha saRNA部分、SIRT1 saRNA部分またはHNF saRNA部分であるリボ核酸化合物。
【0214】
態様P19.態様P11~P13のいずれか1項に従うリボ核酸化合物であって、イメージング部分が、生物発光分子、光活性分子、金属またはナノ粒子であるリボ核酸化合物。
【0215】
態様P20.態様P1~P19のいずれか1項に従うリボ核酸化合物を含む医薬組成物であって、場合により薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
態様P21.態様P20に従う医薬組成物であって、さらに療法剤、場合により抗癌剤を含む医薬組成物。
【0216】
態様P22.化合物部分を細胞中に送達する方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を態様P11~P19のいずれか1項に従うリボ核酸化合物または態様P20もしくは態様P21に従う組成物と接触させ;そして
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ、それにより前記の化合物部分を前記の細胞中に送達する;
を含む方法。
【0217】
態様P23.化合物を細胞中に送達する方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を化合物および態様P1~P10のいずれか1項に従うリボ核酸化合物と接触させ;そして
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ、それにより前記の化合物を前記の細胞中に送達する;
を含む方法。
【0218】
態様P24.態様P23に従う方法であって、前記の化合物が、療法剤またはイメージング剤である方法。
態様P25.医学的処置または予防の方法における使用のための態様P1~P19のいずれか1項に従うリボ核酸化合物または態様P20もしくは態様P21に従う組成物。
【0219】
態様P26.疾患または障害を処置または予防するための医薬品の製造における態様P1~P19のいずれか1項に従うリボ核酸化合物または態様P20もしくは態様P21に従う組成物の使用。
【0220】
態様P27.疾患または障害を処置または予防する方法であって、該方法が、それを必要とする対象に有効量の態様P1~P19のいずれか1項に従うリボ核酸化合物または態様P20もしくは態様P21に従う組成物を投与することを含む方法。
【0221】
態様P28.態様P25に従う使用のためのリボ核酸化合物もしくは組成物、態様P26に従うリボ核酸化合物もしくは組成物の使用、または態様P27に従う方法であって、該疾患または障害が癌である、前記リボ核酸化合物もしくは組成物、使用または方法。
【0222】
態様P29.態様P28に従う使用のためのリボ核酸化合物もしくは組成物、該リボ核酸化合物もしくは組成物の使用、または方法であって、該方法が、さらに抗癌剤を投与することを含むリボ核酸化合物もしくは組成物、使用または方法。
【0223】
態様P30.態様P25に従う使用のためのリボ核酸化合物もしくは組成物、態様P26に従うリボ核酸化合物もしくは組成物の使用、または態様P27に従う方法であって、該疾患または障害が、代謝障害または神経学的障害である、前記リボ核酸化合物もしくは組成物、使用または方法。
【0224】
態様P31.細胞を検出する方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を態様P1~P13もしくは態様P19のいずれか1項に従うリボ核酸化合物または態様P20に従う組成物と接触させ、ここで、該リボ核酸化合物は、イメージング部分を含み;
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ;そして
(iii)前記のイメージング部分を検出し、それにより前記の細胞を検出する;
を含む方法。
【0225】
態様P32.細胞を検出する方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞をイメージング剤および態様P1~P10のいずれか1項に従うリボ核酸化合物と接触させ;
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記のイメージング剤を前記の細胞中へと通過させ;そして
(iii)前記のイメージング剤を検出し、それにより前記の細胞を検出する
を含む方法。
【実施例
【0226】
実施例1
TfRアプタマーの選択および特性付け
TfRの細胞外ドメインに結合することができるアプタマーは、基本的にTuerkおよびGold(Tuerk, C, Methods Mol Biol., 67, 219-230 (1997))により記載されたような、そして国際公開第2006/061386号の実施例において記載されたようなタンパク質SELEX(試験管内人工進化法)により同定された。
【0227】
2’F RNAのライブラリーが、ヌクレアーゼ耐性を増大させ、アプタマーの折り畳みを増進するために用いられた。無傷な細胞に結合する2’F RNAアプタマーを単離するため、定められた配列により隣接された40nt長のランダム配列を含有するおおよそ440種類の異なる2’F RNA分子のライブラリーが、SELEXによりスクリーニングされた。12サイクルの選択後、高度に富化されたアプタマーのプールが、クローニングされた。
【0228】
87ヌクレオチドのTfR RNAアプタマー(TR14;SEQ ID NO:2)
および43ヌクレオチドのTfR RNAアプタマー(TR14 S2;SEQ ID NO:3)が、国際公開第2006/061386号において記載されたように同定および特性付けされた。TR14およびTR14 S2アプタマー両方のTfRに関する結合親和性が、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて測定された。結果が、表1において複製されている。TR14およびTR14 S2は、ヒト肝臓癌細胞(HepG2;ATCC(登録商標)HB-8065(商標))中に内部移行させられることができることが分かった。
【0229】
【表2】
【0230】
実施例2
22ヌクレオチドのTfRアプタマー
TR14アプタマーのより小さい切り詰められたバージョンが、合成された(SEQ ID NO:1)。この22ヌクレオチドのTfRアプタマーは、“TR14 S1~3”と名付けられた。TR14 S1~3の構造が、Mfoldソフトウェア(Zuker M, Nucleic Acids Res. 2003 Jul 1;31(13):3406-15)を用いて予測され、それはhttp://unafold.rna.albany.edu/?q=mfoldにおいて入手可能である。TR14 S1~3に関するMfoldで予測された構造が、図1において示されている。
【0231】
TR14 S1~3の速度論が、表面プラズモン共鳴(SPR)技術により分析された。Biacore T100(GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン)が、アプタマー-トランスフェリン受容体相互作用をラベル無しでリアルタイムでモニターするために用いられた。ビオチン化アプタマーが、ストレプトアビジンでコートされたBiocoreチップ(SensorChip SA,BR-1003-98,General Electric Company)に、結合緩衝液中で25μg/mLの濃度(30mM Tris-HCl,pH7.5,150mM NaCl,5mM MgCl2)において10uL/分での注入によりカップリングされた。RNAは、固定の前に65℃への加熱、続いて37℃への冷却により再度折り畳まれた。結合速度論を測定するため、5種類の濃度の精製されたトランスフェリン受容体タンパク質が、毎分10uLの流速で注入された。結合後、表面は、50mM NaOHを毎分15μlの流速で20分間注射することにより再生された。対照表面からのデータが、減算された。BIAevaluationソフトウェア(GE Healthcare)が、分析のために用いられた。結合データは、速度論パラメーターを計算するために物質移動モデルを用いて1:1結合に当てはめられた。
【0232】
結果が、図2において示されている。22ヌクレオチドのTR14 S1~3アプタマーは、TR14に類似した範囲のKa、KdおよびKでトランスフェリン受容体タンパク質に結合する。
【0233】
実施例3
TR14 S1~3のTfRへの結合および細胞中への内部移行
22ヌクレオチドのアプタマーTR14 S1~3は、トランスフェリン受容体に結合して細胞中に内部移行させられるその能力に関して評価された。
【0234】
3種類の癌細胞株が、試験された:
ヒト肝臓癌細胞(HepG2,ATCC(登録商標)HB-8065(商標))
ヒト膵臓癌細胞(PANC-1,ATCC(登録商標)CRL-1469)
マウス膵臓癌細胞(LTPA,ATCC(登録商標)CRL-2389)。
【0235】
1×10個の細胞が、35mmのガラス底ディッシュ(MatTek、マサチューセッツ州アッシュランド)中にまかれ、適切な培地中で24時間増殖させられた。アプタマーRNAは、Cy3 Silencer siRNA標識キット(Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)を用いてCy3蛍光色素で標識された。結合緩衝液(30mM Tris-HCl,pH7.5,150mM NaCl,5mM MgCl)中のCy3標識されたアプタマーが、細胞に200nMで添加され、2時間インキュベートされた。画像化前に、細胞は、DPBSで2回洗浄された。生細胞共焦点画像化が、Zeiss LSM 510 Meta倒立型2光子共焦点顕微鏡システムを用いて、C-Apo 40×/1.2NA水浸対物レンズおよびAIM 4.2ソフトウェア(Carl Zeiss、イェーナ、ドイツ)を用いて実施された。
【0236】
結果が、図3において示されている。全ての3種類の癌細胞株(ヒトHepG2、ヒトPANC-1およびマウスLTPA)は、TfRに結合したTR14 S1~3アプタマーを内部移行させ、これは、TR14 S1~3が種の間で交差反応性であることを示している。
【0237】
TR14 S1~3アプタマーは血液脳関門を越えることができる
22ヌクレオチドのアプタマーTR14 S1~3は、血液脳関門を超えるその能力に関してインビボで評価された。
【0238】
TR14 S1~3(TfR;SEQ ID NO:1)、5個のC3(ホスホロアミダイト)のスペーサーおよびSIRT1 saRNAを含むリボ核酸が、合成された。SIRT1 saRNAのセンスおよびアンチセンス鎖が、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8においてそれぞれ示されている。センスおよびアンチセンス配列は、それぞれ2ヌクレオチド(UU)オーバーハングを3’末端に含む。
【0239】
ラットが、尾への注射を介してTfR-SIRT1 saRNAまたは対照により処置された。両方の群からのニューロン組織が、分離され、循環するTfRがSIRT1 saRNAカーゴを脳に送達することができるかどうかを検出するためにSIRT1モノクローナル抗体と接触させられた。
【0240】
結果が、図4Aおよび4Bにおいて示されている。対照のラットからのニューロン組織(4A)は、青いネガティブ染色を示し、一方でTfR-SIRT1 saRNAリボ核酸化合物を注射されたラットからのニューロン組織(4B)は、SIRT1に対する褐色の核染色を示している。
【0241】
これは、アプタマーが血液脳関門を越えてニューロン組織において核に入ったことを示唆している。これは、TR14 S1~3が療法的およびイメージングペイロードを脳中に送達するための機序を提供することができたことを実証している。
【0242】
実施例4
TR14 S1~3アプタマーは、ペイロードをインビボで癌細胞に送達する
TR14 S1~3アプタマーの療法的ペイロードをインビボで送達する能力が、評価された。
【0243】
TR14 S1~3(TfR;SEQ ID NO:1)、5個のC3(ホスホロアミダイト)のスペーサーおよびCEBPAまたはHNF saRNAを含むリボ核酸が、合成された。CEBPA saRNAのセンスおよびアンチセンス配列が、SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10においてそれぞれ示されている。センスおよびアンチセンス鎖は、それぞれ3’末端において2ヌクレオチド(UU)オーバーハングを含む。
【0244】
ラットにおけるジエチルニトロソアミン(DEN)誘導肝細胞癌(HCC)モデル
7週齢のオスのWistarラット(約200g)が、BioLASCO Taiwan Co.,Ltd.から得られた。ラットは、標準的な条件で収容され、全ての実験は、国立台湾大学の動物実験委員会により用意された“実験動物のケアおよび使用に関する手引き”に従って実施された。全てのラットは、100ppm(体積/体積)のDEN溶液(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を唯一の飲料水の源として9週間毎日与えられ、続いて通常の水を3週間与えられた。動物の平均体重が、5匹のラットの群ごとに週1回測定され、それらの飲料水中のDENの濃度は、第1週の体重と比較して毎週体重に比例して調整された。例えば、1および5週目における平均体重の値がそれぞれ200および300g(1.5倍)であれば、飲料水中のDENの濃度は、それぞれ100および150ppmに設定された。
【0245】
インビボ療法に関して、DEN溶液に9週間曝露されていた動物が、用いられた。ラットは、ランダムに4つの群:PBS群、TfR群、TfR-CEBPA群およびTfR-HNF群(それぞれの群においてn>5)に分けられた。PBS、TfR、TfR-CEBPAおよびTfR-HNFは、尾静脈を介して3週間の間毎週3回注射された。ラットは、最後の注射の2日後にCOにより屠殺され、肝臓が、取り出され、次いでその後の分析のために保管された。血液試料が、心臓から収集され、室温で3000rpmにおいて15分間遠心分離され、血清が、アッセイされるまで-80℃で保存された。
【0246】
屠殺後、全ての肝葉が、即座に取り出され、肝臓表面上および5mmに薄切された切片中の巨視的に目に見える小結節の全ての直径が、測定された。腫瘍負荷が、3mmより大きい直径を有する腫瘍小結節の全ての合計体積の点で決定された。
【0247】
全血球計算値(CBC)試験が、血液学分析器Sysmex HST-N402XE(Sysmex、日本)により実施された。ビリルビンの血清中レベル(より高いレベルは、肝臓の機能不全を示す)が、VITROS 5,1 FS化学システム(Ortho Clinical Diagnostics、米国)を用いて測定された。
【0248】
結果が、図5Aおよび5Bにおいて示されている。TfR-CEBPAまたはTfR-HNFによる処置を受けたラットは、PBSまたはTfRのみを与えられたラットと比較して有意に低減した腫瘍負荷(腫瘍体積)を示した(図5A)。TfR-CEBPAまたはTfR-HNFで処置されたラットは、血液中のビリルビンの有意により低いレベルも示し、これは、対照処置と比較して向上した肝機能を説明している(図5B)。
【0249】
ラットにおける肝臓上皮細胞腫瘍モデル
オスのF344ラット(約200g)が、BioLASCO Taiwan Co.,Ltd.から得られた。ラットは、標準的な条件で収容され、全ての実験は、国立台湾大学の動物実験委員会により用意された“実験動物のケアおよび使用に関する手引き”に従って実施された。
【0250】
F344ラットは、2%イソフルランを混合された酸素で麻酔された。0.05mlのPBS中の約1×10個のGP7TBラット肝臓上皮腫瘍細胞が、肝臓の中間葉中の領域中に注射され、0.05mlのPBS中の約2×10個のGP7TB細胞が、ラットの背部の皮膚の下に注射された。腫瘍は、接種後4週間成長させられ、次いでラットは、ランダムに群に分けられた。ラットの異なる群は、PBS対照、TfR対照(3nmol)またはTfR-CEBPA(3nmol)を尾静脈または皮下経路を介して3週間の間毎週3回注射された。背部上の腫瘍サイズが、注射処置の間毎週記録された。ラットは、最後の注射の2日後にCOにより屠殺された。背部上および肝臓中の腫瘍が、ラットから取り出された。腫瘍は、重量を測定され、腫瘍の大きさが、定規により測定され、次いで-80℃でその後の分析のために保管された。血液試料が、心臓から収集され、室温で3000rpmにおいて15分間遠心分離され、血清が、アッセイされるまで-80℃で保存された。
【0251】
結果が、図6において示されている。CEBPA saRNAを担持するTfRは、TfRが静脈内または皮下のどちらで投与されても、対照処置と比較して腫瘍成長を低減することができた。
【0252】
マウスにおける転移性膵臓癌モデル
ホタルルシフェラーゼ断片が、細菌中での選択のためのアンピシリン耐性および哺乳類細胞中での選択のためのネオマイシン遺伝子をコードするpcDNA-3.1(+)骨格中に装入された。安定細胞株のための組み換えコンストラクトが、プラスミドmidiキット(QIAGEN、米国)を用いて精製された。Panc-1(ヒト膵臓癌)細胞が、組み換えコンストラクトで24時間トランスフェクションされた。次の日に、培養培地が、安定クローンの選択のために1.2mg/mLのG418(Merck、ドイツ)を含有する標準培地で置き換えられた。選択の2週間後、単一の安定細胞株が、選び取られ、1.2mg/mlのG418を含有する培地中で維持された。ルシフェラーゼの発現が、ルシフェラーゼアッセイシステムを用いて評価された。
【0253】
追跡可能な腫瘍動物モデルを確立するため、皮下移植が、ルシフェラーゼ発現を有する1×10個のPanc-1(Panc-1-Luc)細胞を含有する30μlのPBS中単一細胞懸濁液を6週齢のメスのNOD/SCI Dマウス(BioLasco Co.、台湾)の肝臓の中間葉中の領域中に注射することにより実施された。腫瘍は、接種後1週間成長させられ、次いでマウスは、ランダムに5つの群に分けられ、PBS、TfR-CEBPA(1nmol)、対照TfR-CEBPA(1nmol)、P19-CEBPA(1nmol)または対照P19-CEBPA(1nmol)を尾静脈を介して3週間の間毎週3回注射された。P19アプタマーは、国際公開第2013/154735号において記載されている。マウスは、最後の注射の2日後にCOにより屠殺された。腫瘍が、マウスから取り出され、腫瘍の大きさが、定規により測定された。腫瘍増殖は、最初の注射の前および最後の注射の1日後のIVIS200のスペクトルを用いて生物発光を評価することによりモニターされた。
【0254】
インビボ画像化の前に、マウスは、イソフルランを用いて麻酔された。次いで、150μg/kg D-ルシフェリン(Biosynth、米国)の溶液が、腹腔内経路により注射された。マウスは、IVIS200のスペクトルにおいて画像化され、生物発光信号が、Living Image Software(Caliper Life Sciences、カリフォルニア州アラメダ)を用いて分析された。
【0255】
結果が、図7Aおよび7Bにおいて示されている。TfR-CEBPAで処置されたマウスは、対照群と比較して有意に低減した腫瘍成長(7A;低減した光子増大により決定された)および有意に低減した腫瘍体積(7B)を示した。
【0256】
実施例5
TR14 S1~3アプタマーは、インビボで代謝性疾患に関連する細胞にペイロードを送達する
TR14 S1~3アプタマーおよびSIRT1 saRNAの代謝障害を改善する能力が、評価された。
【0257】
TR14 S1~3(TfR;SEQ ID NO:1)、5個のC3(ホスホロアミダイト)のスペーサーおよびSIRT1 saRNAを含むリボ核酸が、合成された。CEBPA saRNAのセンスおよびアンチセンス配列が、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8においてそれぞれ示されている。センスおよびアンチセンス鎖は、それぞれ3’末端において2ヌクレオチド(UU)オーバーハングを含む。
【0258】
20匹の10週齢のオスのF344ラットが、BioLASCO Taiwan Co.,Ltd.から得られた。ラットは、標準的な条件で収容され、全ての実験は、国立台湾大学の動物実験委員会により用意された“実験動物のケアおよび使用に関する手引き”に従って実施された。
【0259】
1週間の順化の後、ラットは、高脂肪飼料:88%標準実験室飼料、10%ラード油(Merck KGaA、ダルムシュタット、ドイツ)および2%コレステロール(Merck KGaA、ダルムシュタット、ドイツ)を26週間与えられた。14週間高脂肪飼料を与えた後、ラットは、群(それぞれの群中に5匹のラット)に分けられた。4つの群中のラットは、それぞれPBS、FLUCおよびTfR-SIRT1を尾静脈を介して12週間毎週1回注射された。実験の終了時に、動物は、一夜絶食させられ、次いでCOにより屠殺された。肝臓、脳、褐色脂肪および白色脂肪が、ラットから回収され、重量を測定され、次いで-80℃で保管された。遠心分離チューブ中に収集された血液試料は、3000rpmにおいて15分間遠心分離された。血清が、生物化学アッセイに用いられるまで-80℃で保管された。
【0260】
体重が、注射処置の間毎週記録された。全血球計算値(CBC)試験が、血液学分析器Sysmex HST-N402XE(Sysmex、日本)により実施された。グルコース、総コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールおよび低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールの血清レベルが、VITROS 5,1 FS化学システム(Ortho Clinical Diagnostics、米国)を用いて測定された。
【0261】
ラットが屠殺された後、肝臓および脳が、すぐに取り出され、次いで4%(w/v)パラホルムアルデヒド中で固定された。次いで、肝臓および脳は、パラフィン中に包理され、(4μm厚の)切片が、薄切され、次いでH&Eで染色された。
【0262】
コレステロールを測定するため、10mgの肝臓組織が、微量ホモジナイザー中で200μlのクロロホルム:イソプロパノール:NP-40(7:11:0.1)で抽出された。抽出物は、15,000gで5~10分間遠心分離された。液体(有機相)が、新しいチューブに移され、クロロホルムを除去するために50℃で空気乾燥された。試料は、微量の有機溶媒を除去するために真空下に30分間置かれた。肝臓から抽出されたコレステロールは、コレステロール/コレステリルエステル定量化キット(K603-100;Biovision)を製造業者の説明書に従って用いて酵素的に定量化された。
【0263】
結果が、図8A~8Fにおいて示されている。高脂肪飼料を与えられTfR-SIRT1で処置されたラットは、体重が増加しなかった(8A)。同じラットは、白色脂肪組織(8B)、総コレステロール(8C)、LDL(8D)および空腹時血中グルコース(8F)の低下したレベルを示した。加えて、ラットは、増大したHDL/LDL比を示し(8E)、従って、LDL(“悪玉”コレステロール)と比較してより高いHDL(“善玉”コレステロール)のレベルを示した。全ての結果は、TfR-SIRT1による処置が代謝障害を改善することができることおよび静脈内投与されたTfRがペイロードをそれが必要とされる組織に送達することができることを示している。
非限定的に、本発明は以下を含む。
[1] SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなるリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、29ヌクレオチド以下の長さを有し、かつ該RNA配列が、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができるリボ核酸化合物。
[2] [1]に記載のリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、22ヌクレオチド以下の長さを有するリボ核酸化合物。
[3] [1]に記載のリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、22ヌクレオチド長であるリボ核酸化合物。
[4] [1]に記載のリボ核酸化合物であって、該RNA配列が、SEQ ID NO:1に対して100%の配列同一性を有するリボ核酸化合物。
[5] SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%の配列同一性を有するRNA配列を含むかまたはそれからなるリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、29ヌクレオチド以下の長さを有し、かつ該RNA配列が、トランスフェリン受容体(TfR)に結合することができるリボ核酸化合物。
[6] [5]に記載のリボ核酸化合物であって、前記のRNA配列が、16ヌクレオチド長であるリボ核酸化合物。
[7] [5]に記載のリボ核酸化合物であって、該RNA配列が、SEQ ID NO:5に対して100%の配列同一性を有するリボ核酸化合物。
[8] [1]に記載のリボ核酸化合物であって、該RNA配列が、細胞表面上のTfRに結合することができるリボ核酸化合物。
[9] [1]に記載のリボ核酸化合物であって、細胞中に内部移行させられることができるリボ核酸化合物。
[10] [1]に記載のリボ核酸化合物であって、血液脳関門を横切ることができるリボ核酸化合物。
[11] [1]に記載のリボ核酸化合物であって、さらに前記のRNA配列に結合した化合物部分を含むリボ核酸化合物。
[12] [11]に記載のリボ核酸化合物であって、該化合物部分が、療法的部分またはイメージング部分であるリボ核酸化合物。
[13] [11]に記載のリボ核酸化合物であって、前記の化合物部分が、前記のRNA/DNA配列に共有結合しているリボ核酸化合物。
[14] [12]に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、核酸部分、ペプチド部分または小分子薬物部分であるリボ核酸化合物。
[15] [12]に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、活性化核酸部分またはアンチセンス核酸部分であるリボ核酸化合物。
[16] [12]に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、miRNA、mRNA、saRNAまたはsiRNA部分であるリボ核酸化合物。
[17] [12]に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、抗癌療法的部分であるリボ核酸化合物。
[18] [12]に記載のリボ核酸化合物であって、前記の療法的部分が、C/EBPアルファsaRNA部分、SIRT1 saRNA部分またはHNF saRNA部分であるリボ核酸化合物。
[19] [12]に記載のリボ核酸化合物であって、該イメージング部分が、生物発光分子、光活性分子、金属またはナノ粒子であるリボ核酸化合物。
[20] [1]に記載のリボ核酸化合物を含む医薬組成物であって、場合により薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
[21] [20]に記載の医薬組成物であって、さらに療法剤、場合により抗癌剤を含む医薬組成物。
[22] 化合物部分を細胞中に送達する方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を[11]~[19]のいずれか1項に記載のリボ核酸化合物または[20]もしくは[21]に記載の組成物と接触させ;そして
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ、それにより前記の化合物部分を前記の細胞中に送達する;
を含む方法。
[23] 化合物を細胞中に送達する方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を化合物および[1]に記載のリボ核酸化合物と接触させ;そして
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ、それにより前記の化合物を前記の細胞中に送達する;
を含む方法。
[24] [23]に記載の方法であって、前記の化合物が、療法剤またはイメージング剤である方法。
[25] 医学的処置または予防の方法における使用のための[1]~[19]のいずれか1項に記載のリボ核酸化合物または[20]もしくは[21]に記載の組成物。
[26] 疾患または障害を処置または予防するための医薬品の製造における[1]~[19]のいずれか1項に記載のリボ核酸化合物または[20]もしくは[21]に記載の組成物の使用。
[27] 疾患または障害を処置または予防する方法であって、該方法が、それを必要とする対象に有効量の[1]~[19]のいずれか1項に記載のリボ核酸化合物または[20]もしくは[21]に記載の組成物を投与することを含む方法。
[28] [25]に記載の使用のためのリボ核酸化合物もしくは組成物、[26]に記載のリボ核酸化合物もしくは組成物の使用、または[27]に記載の方法であって、該疾患または障害が癌である、前記リボ核酸化合物もしくは組成物、使用または方法。
[29] [28]に記載の使用のためのリボ核酸化合物もしくは組成物、該リボ核酸化合物もしくは組成物の使用、または方法であって、該方法が、さらに抗癌剤を投与することを含むリボ核酸化合物もしくは組成物、使用または方法。
[30] [25]に記載の使用のためのリボ核酸化合物もしくは組成物、[26]に記載のリボ核酸化合物もしくは組成物の使用、または[27]に記載の方法であって、該疾患または障害が、代謝障害または神経学的障害である、前記リボ核酸化合物もしくは組成物、使用または方法。
[31] 細胞を検出する方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞を[1]~[13]もしくは[19]のいずれか1項に記載のリボ核酸化合物または[20]に記載の組成物と接触させ、ここで、該リボ核酸化合物は、イメージング部分を含み;
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記の細胞中へと通過させ;そして
(iii)前記のイメージング部分を検出し、それにより前記の細胞を検出する;
を含む方法。
[32] 細胞を検出する方法であって、該方法が、以下の工程:
(i)細胞をイメージング剤および[1]に記載のリボ核酸化合物と接触させ;
(ii)前記のリボ核酸化合物を前記の細胞上のトランスフェリン受容体に結合させ、前記のイメージング剤を前記の細胞中へと通過させ;そして
(iii)前記のイメージング剤を検出し、それにより前記の細胞を検出する;
を含む方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
【配列表】
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