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特許7382922PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法のための投与レジメン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法のための投与レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231110BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231110BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020516764
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2018036161
(87)【国際公開番号】W WO2019059411
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2017180008
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】大友 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝欣
(72)【発明者】
【氏名】中村 己貴子
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特許第6430025(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/005771(WO,A1)
【文献】特表2017-507650(JP,A)
【文献】特表2012-511329(JP,A)
【文献】特表2016-533335(JP,A)
【文献】国際公開第2006/006693(WO,A1)
【文献】Cancer Chemother Pharmacol.,2017年02月,Vol. 79, No. 2,pp. 421-429
【文献】局所進行・転移性肝細胞癌患者を対象としたCODRITUZUMAB(抗 GLYPICAN-3モノクローナル抗体)とATEZOLIZUMAB併用の非盲検多 施設共同第I相用量漸増試験,2017年09月07日,https://www.clinicaltrials.jp/cti-user/trial/ShowDirect.jsp?japicId=JapicCTI-163325
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-1系結合アンタゴニストとの併用療法において使用するための、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させるための医薬組成物であって、有効成分としてGPC3標的化剤を含み、
併用療法が、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間を含み、
前記GPC3標的化剤が1,000mg/個体~2000mg/個体の用量で負荷期間内に2回投与され、
前記PD-1系結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、
前記GPC3標的化剤がコドリツズマブである、医薬組成物。
【請求項2】
負荷期間が、2週間以内または1週間以内である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
負荷期間内のGPC3標的化剤の最後の投与と、維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストまたはGPC3標的化剤の最初の投与とが時間的に2~4日間離れている、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
PD-1系結合アンタゴニストが、1,000mg/個体~1,400mg/個体の用量で維持期間内に1回以上投与され、GPC3標的化剤が、1,000mg/個体~2000mg/個体の用量で維持期間内に1回以上投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
維持期間において、PD-1系結合アンタゴニストが、1,000mg/個体~1,400mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、1,000mg/個体~2000mg/個体の用量で1週間に1回または3週間に1回投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
維持期間が、治療サイクルを含み、1つの治療サイクルが、
(1)1,000mg/個体~1,400mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)1,000mg/個体~2000mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回、3週間投与すること
を含み、治療サイクルが反復される、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
負荷期間および/または維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化抗体の投与が、静脈内注射または注入である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
負荷期間および/または維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化抗体の投与が、皮下注射である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
がんが、肝がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、結腸がん、腎臓がん、食道がんおよび前立腺がんからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法のための有効な投与レジメンに関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞がんは、報告によれば、世界中でがんによる死亡の5番目の主因であり、毎年およそ600,000人の死亡に相当する(Llovet JM、Burroughs A、Bruix J;Lancet(2003)、362、1907~17)。ほとんどの肝細胞がんの患者は、疾患を有すると診断された後1年以内に死亡する。残念ながら、肝細胞がんの症例は、治癒的療法に対して稀にしか応答しない後期で診断されることが頻繁にある。さらに、化学療法、化学塞栓療法、アブレーションおよび陽子線治療を含めた医学的処置は、このような患者には不十分にしか有効ではない。多数の患者が、血管進入および複数の肝内転移を伴う疾患の再発を示し、これは、進行期へと迅速に進行する。その5年生存率は、わずか7%である(Bosch FX、Ribes J、Cleries R;Gastroenterology (2004)、127、S5~16)。局所病巣の摘出に適している肝細胞がんの患者は、その5年生存率は依然として15%および39%のレベルのままであるものの、比較的良好な予後を有する(Takenaka K、Kawahara N、Yamamoto K、Kajiyama K、Maeda T、Itasaka H、Shirabe K、Nishizaki T、Yanaga K、Sugimachi K;Arch Surg (1996)、131、71~6)。したがって、当技術分野では、このような悪性疾患肝細胞がんの新規療法が求められてきた。
【0003】
肝細胞がんは、報告によれば、日本では、原発性肝がんの症例の90%超に相当する。このような肝細胞がんを治療するための医学的方法として、例えば、化学療法ベースの経カテーテル動脈塞栓(TAE)療法が挙げられ、これは、肝動脈(腫瘍への栄養供給経路として役立つ)へオイルベースの造影剤(リピオドール)、抗がん剤および閉塞物質(ゲルフォーム)の混合物を注入し、栄養動脈の閉塞をもたらすことによって、肝細胞がんの選択的壊死を誘導することを含む。さらに、経皮エタノール注入、経皮マイクロ波血液凝固療法および高周波アブレーションなどの侵襲的アプローチが使用される。また、治験が、フルオロウラシル(5-FU)、ウラシル-テガフール(UFT)、マイトマイシンC(MMC)、ミトキサントロン(DHAD)、アドリアマイシン(ADR)、エピルビシン(EPI)およびシスプラチン(CDDP)などの化学療法薬を、単独でまたはインターフェロン(IFN)と組み合わせて使用する全身化学療法で実施されている(Yeo W、Mok TS、Zee B、Leung TW、Lai PB、Lau WY、Koh J、Mo FK、Yu SC、Chan AT、Hui P、Ma B、Lam KC、Ho WM、Wong HT、Tang A、Johnson PJ;J Natl Cancer Inst (2005)、97、1532~8)。
【0004】
一方、ソラフェニブの経口活性形態(ネクサバール、BAY43-9006)が承認されており、より有利なことに、これは、Raf/MEK/ERKシグナル伝達においてRafキナーゼを阻害し、一方で、VEGFR-2、VEGFR-3およびPDGFR-βチロシンキナーゼを標的化することによって血管新生抑制効果を発揮することによってがん細胞の増殖を阻止し、上記の化学療法薬よりも有効である。ソラフェニブの有効性は、進行肝細胞がんを標的とする2種の第III相多施設プラセボコントロール試験(ソラフェニブHCC評価無作為化プロトコール(SHARP)治験およびアジア-太平洋(Asia-Pacific)治験)において研究されている。ソラフェニブは、生存期間を延長すると確認され、これらの治験の両方において0.68のHRを有する。SHARP治験では、ソラフェニブは、生存期間をプラセボを用いた場合の7.9カ月に対して10.7カ月に延長した。アジア治験では、この薬剤は、生存期間をプラセボを用いた場合の4.2カ月に対して6.5カ月に延長した。しかし、この薬剤は、低い客観的奏効率を有しており、画像で腫瘍悪化までの時間を延長したが(欧州および米国の治験における2.8カ月に対して5.5カ月およびアジアの治験における1.4カ月に対して2.8カ月)、臨床症状悪化までの時間の延長を示さなかった。アジアのコホートは、おそらくは、その治療が、アジア領域では、欧州および米国と比較して、疾患プロセスの間のわずかに遅いステージで開始したために、短期間の延命を示した(Llovet J、Ricci S、Mazzaferro V、Hilgard P、Gane Eら Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. New Eng. J. Med.(2008)359、378~90およびCheng AL、Chen Z、Tsao CJ、Qin S、Kim JSら Efficacy and safety of sorefanib in patients in the Asia-Pacific region with advanced hepatocellular carcinoma:a phase III randomized、double-blind、placebo-controlled trial. Lancet Oncol.(2009)10、25~34)。
【0005】
肝がんが進行するにつれ、一般に、拒食症、体重減少、全身倦怠、触知できる右季肋部塊、右季肋部疼痛、腹部膨満感、発熱および黄疸などの肝臓機能障害と関連しているその特定の症状が観察される。しかし、化学療法薬(例えば、ソラフェニブ)は、下痢または便秘、貧血、感染または敗血症(致死的重症度を有する)を引き起こす免疫系の抑制、出血、心臓毒性、肝臓毒性、腎毒性、拒食症および体重減少などのその固有の有害反応を含めた克服されるべき合併症を有する。
【0006】
肝がんでは、特に初期ステージの症状は最初に観察されないが、一般に、拒食症、体重減少、全身倦怠、触知できる右季肋部塊、右季肋部疼痛、腹部膨満感、発熱および黄疸などの肝臓機能障害と関連しているその特定の症状が、肝がんの進行につれて観察される。臨床観察結果によれば、このような症状は、化学療法薬の使用によって増強される。例えば、検出可能な肝がん細胞を有する患者における拒食症および拒食症と関連しているか、またはそれとは独立している体重減少などの症状は、患者への化学療法薬の投与によって、化学療法薬の使用を伴わない場合よりも増強され得る。いくつかの場合には、化学療法薬の使用は、このような症状を有する患者に対しては中止されなくてはならない。これらの増強される症状は、化学療法薬を用いる治療にとって障害である。したがって、例えば、治療効果の改善または治療されるべき患者のQOLの改善の観点から優れた療法の確立が求められてきた。
【0007】
グリピカン3(GPC3)は、肝がんにおいて高レベルで発現されることが頻繁にあり、そのようなものとして、肝がんにおけるその機能の同定において、または肝がんの治療もしくは診断標的として有用であると思われる。
【0008】
上記の状況下で、肝がんの治療標的としてGPC3を用いる薬物が開発中である。有効成分として抗GPC3抗体を含む肝がん薬が開発されており、抗体は、GPC3を発現する細胞に対して、抗体依存性細胞性細胞傷害(本明細書において以下、「ADCC」と呼ばれる)活性および/または補体依存性細胞傷害(本明細書において以下、「CDC」と呼ばれる)活性を有する(WO2003/000883)。また、有効成分としてADCC活性およびCDC活性を有するヒト化抗GPC3抗体を含むGPC3を標的とする薬物が開発されている(WO2006/006693)。さらなるGPC3を標的とする薬物が開発されており、これは、ADCC活性が増強されたヒト化抗GPC3抗体(WO2006/046751およびWO2007/047291)またはADCC活性およびCDC活性を有し、ならびに血漿動態が改善された抗GPC3抗体(WO2009/041062)を含む。ソラフェニブなどの化学療法薬との併用療法におけるこれらの抗GPC3抗体は、例えば、化学療法薬(例えば、ソラフェニブ)の単独療法によって引き起こされる有害反応を減弱するとわかっており、また、これらの薬剤をベースとする相互作用を示すとわかった(WO2009/122667)。したがって、肝がんを治療するための優れた方法は、例えば、治療効果の改善または治療されるべき患者のQOLの改善の観点から、中軸としてGPC3を標的とする薬物を使用して確立されている過程にある。
【0009】
他方で、T細胞への2つの異なるシグナルの提供は、抗原提示細胞(APC)による休止Tリンパ球のリンパ球活性化についての広く受容されたモデルである。Lafferty等、Aust.J.Exp.Biol.Med.Sci 53:27~42(1975)。このモデルは、非自己からの自己の識別および免疫寛容をさらに提供する。Bret
scher等、Science 169:1042~1049(1970);Bretscher、P.A.、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96:185~190(1999);Jenkins等、J.Exp.Med.165:302~319(1987)。一次シグナル、または抗原特異的シグナルは、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)に関連して提示された外来抗原ペプチドの認識後にT細胞受容体(TCR)を介して伝達される。第2のまたは共刺激シグナルは、抗原提示細胞(APC)上に発現された共刺激分子によってT細胞に送達され、T細胞を誘導して、クローン増殖、サイトカイン分泌およびエフェクター機能を促進させる。Lenschow等、Ann.Rev.Immunol.14:233(1996)。共刺激の非存在下では、T細胞は、抗原刺激に対して不応性になり得、有効な免疫応答を開始せず、消耗、または外来抗原に対する寛容をさらに生じ得る。
【0010】
この2シグナルモデルでは、T細胞は、陽性および陰性の両方の二次共刺激シグナルを受ける。かかる陽性および陰性シグナルの調節は、免疫寛容を維持し、自己免疫を防止しつつ、宿主の防御免疫応答を最大化するために重要である。陰性二次シグナルは、T細胞寛容の誘導に必要であると思われるが、陽性シグナルは、T細胞活性化を促進する。単純な2シグナルモデルは、ナイーブリンパ球についての妥当な説明をなおも提供するが、宿主の免疫応答は、ダイナミックなプロセスであり、共刺激シグナルは、抗原曝露されたT細胞にも提供され得る。共刺激の機構は、治療的に興味を持たれるが、それは、共刺激シグナルの操作が、細胞ベースの免疫応答を増強または終結させるための手段を提供することが示されているからである。近年、T細胞機能不全またはアネルギーが、阻害受容体、誘導された持続性のプログラム死1ポリペプチド(PD-1)の発現と同時発生的に生じることが発見されている。結果として、PD-1、ならびにプログラム死リガンド1(PD-Ll)およびプログラム死リガンド2(PD-L2)などの、PD-1との相互作用を介してシグナル伝達する他の分子の治療的標的化は、強く興味を持たれる領域である。
【0011】
PD-L1は、多くのがんにおいて過剰発現され、予後不良と関連する場合が多い(Okazaki T等、Intern.Immun.2007 19(7):813)(Thompson RH等、Cancer Res 2006、66(7):3381)。興味深いことに、腫瘍反応性T細胞上のPD-1の上方調節が、障害された抗腫瘍免疫応答に寄与し得ることを示す、正常組織中のTリンパ球および末梢血Tリンパ球とは対照的に、腫瘍浸潤性Tリンパ球の大部分は、PD-1を優勢に発現する(Blood 2009 114(8):1537)。これは、PD-1発現T細胞と相互作用するPD-L1発現腫瘍細胞により媒介されたPD-L1シグナル伝達の活用によるものである可能性があり、この結果T細胞の活性が弱まり、免疫監視は回避される(Sharpe等、Nat Rev 2002)(Keir ME等、2008 Annu.Rev.Immunol.26:677)。したがって、PD-L1/PD-1相互作用の阻害は、腫瘍のCD8+T細胞媒介性死滅化を増強し得る。
【0012】
PD-1、ならびにプログラム死リガンド1(PD-L1)およびプログラム死リガンド2(PD-L2)などの、PD-1との相互作用を介してシグナル伝達する他の分子の治療的標的化は、強く興味を持たれる領域である。PD-L1シグナル伝達の阻害は、がん(例えば、腫瘍免疫)ならびに急性および慢性(例えば、持続性)の両方の感染を含む感染の治療のためにT細胞免疫を増強するための手段として提唱されてきた。最適な治療的処置は、腫瘍増殖を直接阻害する薬剤によるPD-1受容体/リガンド相互作用の遮断を組み合わせ得る。種々のがんの発達を治療、安定化、予防および/または遅延させるための最適な療法が、なおも必要とされている。
【0013】
特許出願、特許公開およびUniProtKB/Swiss-Prot寄託番号を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献が出典明示により援用され
ると具体的かつ個々に示されるかのように、その全内容が本明細書に出典明示により援用される。
【発明の概要】
【0014】
本発明者らは、個体におけるがんの治療またはその進行の遅延においてPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する、かなりより有効な併用療法レジメンを予期せぬことに発見した。
【0015】
一態様では、個体におけるがんの治療またはその進行の遅延におけるGPC3標的化剤と併用したPD-1系結合アンタゴニストの適した投与レジメンが、本明細書で提供される。ある態様では、個体におけるがんの治療またはその進行の遅延におけるPD-1系結合アンタゴニストと併用したGPC3標的化剤の適した投与レジメンが、本明細書で提供される。一態様では、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させる方法であって、個体に有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよび有効量のGPC3標的化剤を投与することを含む方法が、本明細書で提供される。
【0016】
本発明は、以下を提供する:
[1]PD-1系結合アンタゴニストを用いる併用療法において使用するための、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させるための医薬組成物であって、有効成分としてGPC3標的化剤を含み、該併用療法が、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間を含む、医薬組成物。
[2]GPC3標的化剤が、およそ800mg/個体~およそ3,200mg/個体の用量で負荷期間内に1回以上投与される、上記の[1]に記載の医薬組成物。
[3]負荷期間が、2週間以内または1週間以内である、上記の[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[4]負荷期間内に投与されるGPC3標的化剤の総量が、およそ1,600mg/個体~およそ4,800mg/個体である、上記の[1]~[3]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[5]GPC3標的化剤が、およそ1,600mg/個体の用量で負荷期間内に1回または2回投与される、上記の[1]~[4]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[6]負荷期間内のGPC3標的化剤の最後の投与と、維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストまたはGPC3標的化剤の最初の投与とが、時間的に2~4日離れている、上記の[1]~[5]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[7]PD-1系結合アンタゴニストが、およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体の用量で維持期間内に1回以上投与され、GPC3標的化剤が、およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体の用量で維持期間内に1回以上投与される、上記の[1]~[6]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[8]PD-1系結合アンタゴニストが、およそ1,200mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、およそ1,600mg/個体の用量で週に1回または3週間に1回投与される、上記の[1]~[7]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[9]維持期間が、治療サイクルを含み、1つの治療サイクルが、
(1)およそ1,200mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)およそ1,600mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回、3週間投与すること
を含み、治療サイクルが反復される、上記の[1]~[7]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[10]負荷期間および/または維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化抗体の投与が、静脈内注射または注入である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[11]負荷期間および/または維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化抗体の投与が、皮下注射である、上記の[1]~[9]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[12]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、上記の[1]~[11]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[13]PD-1系結合アンタゴニストが、
(1)配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む抗PD-L1抗体、
(2)配列番号25もしくは26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗PD-L1抗体、または
(3)アテゾリズマブ
である、上記の[1]~[12]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[14]GPC3標的化剤が、
(1)配列番号34のHVR-H1配列、配列番号35のHVR-H2配列および配列番号36のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号37のHVR-L1配列、配列番号38のHVR-L2配列および配列番号39のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む抗GPC3抗体、
(2)配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗GPC3抗体、または
(3)コドリツズマブ
である、上記の[1]~[13]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[15]がんが、肝がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、結腸がん、腎臓がん、食道がんおよび前立腺がんからなる群から選択される、上記の[1]~[14]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0017】
[16]がんが、GPC3陽性がんである、[1]~[15]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[17]併用療法が、有効量の化学療法薬を投与することをさらに含む、上記の[1]~[16]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[18]GPC3標的化剤が、負荷期間内に個体において200μg/ml以上のGPC3標的化剤の血中トラフレベルを達成するように投与される、上記の[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[19]GPC3標的化剤が、維持期間内に個体において200μg/ml以上のGPC3標的化剤の血中トラフレベルを達成するように投与される、上記の[1]~[6]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[20]GPC3標的化剤を用いる併用療法において使用するための、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延するための医薬組成物であって、有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストを含み、
該併用療法が、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間とを含む、医薬組成物。
[21]有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含む個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延する方法であって、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間とを含む、方法。
[22]GPC3標的化剤が、およそ800mg/個体~およそ3,200mg/個体の用量で負荷期間内に1回以上投与される、上記の[21]に記載の方法。
[23]負荷期間が、2週間以内または1週間以内である、上記の[21]または[22]に記載の方法。
[24]負荷期間内に投与されるGPC3標的化剤の総量が、およそ1,600mg/個体~およそ4,800mg/個体である、上記の[21]~[23]のいずれか1つに記載の方法。
[25]GPC3標的化剤が、およそ1,600mg/個体の用量で負荷期間内に1回または2回投与される、上記の[21]~[24]のいずれか1つに記載の方法。
[26]負荷期間内のGPC3標的化剤の最後の投与と、維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストまたはGPC3標的化剤の最初の投与とが、時間的に2~4日離れている、上記の[21]~[25]のいずれか1つに記載の方法。
[27]PD-1系結合アンタゴニストが、およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体の用量で維持期間内に1回以上投与され、GPC3標的化剤が、およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体の用量で維持期間内に1回以上投与される、上記の[21]~[26]のいずれか1つに記載の方法。
[28]PD-1系結合アンタゴニストが、およそ1,200mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、およそ1,600mg/個体の用量で1週間に1回または3週間に1回投与される、上記の[21]~[27]のいずれか1つに記載の方法。
[29]維持期間が、治療サイクルを含み、1つの治療サイクルが、
(1)およそ1,200mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)およそ1,600mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回、3週間投与すること
を含み、治療サイクルが反復される、上記の[21]~[27]のいずれか1つに記載の方法。
[30]負荷期間および/または維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化抗体の投与が、静脈内注射または注入である、上記の[21]~[29]のいずれか1つに記載の方法。
[31]負荷期間および/または維持期間内のPD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化抗体の投与が、皮下注射である、上記の[21]~[29]のいずれか1つに記載の方法。
[32]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、上記の[21]~[31]のいずれか1つに記載の方法。
[33]PD-1系結合アンタゴニストが、アテゾリズマブである、上記の[21]~[32]のいずれか1つに記載の方法。
[34]GPC3標的化剤がコドリツズマブである、上記の[21]~[33]のいずれか1つに記載の方法。
[35]がんが、肝がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、結腸がん、腎臓がん、食道がんおよび前立腺がんからなる群から選択される、上記の[21]~[34]のいずれか1つに記載の方法。
[36]がんが、GPC3陽性がんである、上記の[21]~[35]のいずれか1つに記載の方法。
[37]有効量の化学療法薬を投与することをさらに含む、上記の[21]~[36]のいずれか1つに記載の方法。
[38]GPC3標的化剤が、負荷期間内に個体において200μg/ml以上のGPC3標的化剤の血中トラフレベルを達成するように投与される、上記の[21]または[22]に記載の方法。
[39]GPC3標的化剤が、維持期間内に個体において200μg/ml以上のGPC3標的化剤の血中トラフレベルを達成するように投与される、上記の[21]~[26]のいずれか1つに記載の方法。
[40](1)有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストを含む医薬組成物、
(2)有効成分としてGPC3標的化剤を含む医薬組成物、
(3)容器および
(4)GPC3標的化剤およびPD-1系結合アンタゴニストを使用する併用療法のための指示を含む添付文書またはラベルであって、該併用療法が、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間とを含む、添付文書またはラベル
を含むキット。
[41]PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を含む、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させるための組合せであって、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間とを含む、組合せ。
[42]個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させる医薬の製造におけるPD-1系結合アンタゴニストの使用であって、ここで、該医薬が、PD-1系結合アンタゴニストを含み、医薬上許容される担体を含んでいてもよく、該治療が、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間とを含む、使用。
[43]個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させる医薬の製造におけるGPC3標的化剤の使用であって、ここで、該医薬が、GPC3標的化剤を含み、医薬上許容される担体を含んでいてもよく、該治療が、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間とを含む、使用。
[44]PD-1系結合アンタゴニストを用いる併用療法において使用するための、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させるための医薬組成物であって、有効成分としてGPC3標的化剤を含み、該併用療法が、
(1)およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回または3週間に1回投与すること
を含む、医薬組成物。
[45]GPC3標的化剤を用いる併用療法において使用するための、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させるための医薬組成物であって、有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストを含み、該併用療法が、
(1)およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回または3週間に1回投与すること
を含む、医薬組成物。
[46] 個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させる方法であって、有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含み、
(1)およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回または3週間に1回投与すること
を含む、方法。
[47](1)有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストを含む医薬組成物、
(2)有効成分としてGPC3標的化剤を含む医薬組成物、
(3)容器および
(4)GPC3標的化剤およびPD-1系結合アンタゴニストを使用する併用療法のための指示を含む添付文書またはラベルであって、該併用療法が、
(a)およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(b)およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回または3週間に1回投与すること
を含む、添付文書またはラベル
を含むキット。
[48]個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させる組合せであって、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を含み、
(1)およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回または3週間に1回投与すること
を含む、組合せ。
[49]個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させる医薬の製造におけるPD-1系結合アンタゴニストの使用であって、ここで、該医薬が、PD-1系結合アンタゴニストを含み、医薬上許容される担体を含んでいてもよく、該治療が、
(1)およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回または3週間に1回投与すること
を含む、使用。
[50]個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させる医薬の製造におけるGPC3標的化剤の使用であって、ここで、該医薬が、GPC3標的化剤を含み、医薬上許容される担体を含んでいてもよく、該治療が、
(1)およそ1,000mg/個体~およそ1,400mg/個体のPD-1系結合アンタゴニストを3週間に1回投与すること、および
(2)およそ800mg/個体~およそ2,000mg/個体のGPC3標的化剤を1週間に1回または3週間に1回投与すること
を含む、使用。
【0018】
ある態様では、有効量の、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含む、がんを有する個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する方法が、本明細書で提供される。例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の、腫瘍組織への浸潤が挙げられる。別の例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍が浸潤したリンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。
【0019】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、抗体である。一部の実施形態では、この抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である。一部の実施形態では、この抗体は、抗原結合断片である。一部の実施形態では、この抗原結合断片は、Fab、
Fab’、F(ab’)2、scFvおよびFvからなる群から選択される。
【0020】
一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、そのリガンド結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、PD-L1へのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、PD-L2へのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、PD-L1およびPD-L2の両方へのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、抗体である。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ(Nivolumab))、MK-3475(ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、ラムブロリズマブ(Lambrolizumab))、CT-011(ピディリズマブ(Pidilizumab))、PDR001、REGN2810、BGBA317、SHR-1210、AMP-514(MEDI0680)およびAMP-224からなる群から選択される。
【0021】
一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、PD-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、B7-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、PD-1およびB7-1の両方へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブ(Avelumab)およびMEDI4736(デュルバルマブ(Durvalumab))からなる群から選択される。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖;ならびに/または配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、配列番号25もしくは26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、本明細書に引用により援用されるWO2010/077634および米国特許第8,217,149号に記載される抗体YW243.55.S70の3つの重鎖HVR配列および/または抗体YW243.55.S70の3つの軽鎖HVR配列を含む。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、抗体YW243.55.S70の重鎖可変領域配列および/または抗体YW243.55.S70の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。
【0022】
いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0023】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットのいくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvおよびFvからなる群から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、GC33またはコドリツズマブである。
一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、配列番号42のHVR-H1配列、配列番号43のHVR-H2配列および配列番号44のHVR-H3配列を含む重鎖;ならびに/または配列番号45のHVR-L1配列、配列番号46のHVR-L2配列および配列番号47のHVR-L3配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖および/または配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。任意の他の実施形態と組み合わされ得る一部の実施形態では、抗GPC3抗体は、GC33でもコドリツズマブでもない。
【0025】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体(例えば、PD-1系結合アンタゴニスト抗体または抗GPC3抗体)は、非グリコシル化部位変異を含む。一部の実施形態では、この非グリコシル化部位変異は、置換変異である。一部の実施形態では、この置換変異は、アミノ酸残基N297、L234、L235および/またはD265(EU番号付け)にある。一部の実施形態では、この置換変異は、N297G、N297A、L234A、L235AおよびD265Aからなる群から選択される。一部の実施形態では、この置換変異は、D265A変異およびN297G変異である。一部の実施形態では、この非グリコシル化部位変異は、この抗体のエフェクター機能を低減させる。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体)は、EU番号付けに従って297位においてAsnからAlaへの置換を有するヒトIgG1である。
【0026】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、このがんはGPC3陽性がんである。一部の実施形態では、このがんは、肝がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、結腸がん、腎臓がん、食道がん、前立腺がん、または本明細書に記載される他のがんである。一部の実施形態では、この個体は、がんを有する、またはがんと診断されている。一部の実施形態では、この個体中のがん細胞は、PD-L1を発現する。
【0027】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、この治療、またはヒトPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体の投与は、治療の休止後に、個体において持続性の応答をもたらす。一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、PD-1系結合アンタゴニストの前に、PD-1系結合アンタゴニストと同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの後に投与される。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体は、同じ組成物中にある。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体は、別々の組成物中にある。
【0028】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストおよび/または抗GPC3抗体は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内または鼻腔内投与される。上記および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、治療は、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延させるための化学療法剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、個体は、PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体との併用治療の前に、化学療法剤で治療されている。一部の実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよび/または抗GPC3抗体の組合せによって治療された個体は、化学療法剤治療に対して難治性である。本出願を通じて記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態は、がんを治療するまたはその進行を遅延させるための化学療法剤を投与することをさらに含む。
【0029】
上記および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、個体中のCD8 T細胞は、この組合せの投与の前と比較して増強されたプライミング、活性化、増殖および/または細胞溶解活性を有する。一部の実施形態では、CD8 T細胞の数は、この組合せの投与の前と比較して上昇する。一部の実施形態では、このCD8 T細胞は、抗原特異的CD8 T細胞である。
【0030】
本明細書に記載される種々の実施形態の特性のうち1つ、一部または全てが組み合わされて、本発明の他の実施形態を形成し得ることを、理解すべきである。本発明のこれらおよび他の態様は、当業者に明らかとなる。本発明のこれらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明によってさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】溶媒対照、1mg/kgまたは5mg/kgのmGC33のいずれかで週3回処置された各マウスにおける、ヒトGPC3を発現するHepa1-6腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、注射の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。
図2A】溶媒対照または5mg/kgのmGC33のいずれかで処置されたマウスから摘出された組織のヘマトキシリンおよびエオシン染色(HE)またはF4/80免疫組織化学的染色(IHC)の画像を示す図である。
図2B】溶媒対照または5mg/kgのmGC33のいずれかで処置されたマウスから摘出された組織のヘマトキシリンおよびエオシン染色(HE)またはPD-L1免疫組織化学的染色(IHC)の画像を示す図である。矢印は、浸潤免疫細胞の細胞膜において観察されたPD-L1免疫反応性を示す。
図3A】単独療法(mGC33または10F.9G2(抗PD-L1))または組合せ(mGC33+10F.9G2)のいずれかで処置された各マウスにおける、ヒトGPC3を発現するCT26腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、注射の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。各群における腫瘍体積の平均およびSDバーをプロットした。
図3B】単独療法(mGC33または10F.9G2(抗PD-L1))または組合せ(mGC33+10F.9G2)のいずれかで処置された、CT26/hGPC3担がんマウスにおける無増悪生存率を示す図である。増悪は、腫瘍の大きさが100mm3超に達した場合に定義された。
図4A】単独療法または組合せのいずれかで処置された各マウスにおけるヒトGPC3を発現するCT26腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、投与の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。各群における腫瘍体積の平均およびSDバーをプロットした。5mg/kgまたは25mg/kgのmGC33、10F.9G2、5mg/kgまたは25mg/kgのmGC33+10F.9G2の腫瘍増殖阻害値は、それぞれ、52%、58%、68%、75%および85%であった。
図4B】29日目の個体別の腫瘍体積を示す図である。各群における腫瘍体積の平均(*)もプロットした。
図5A】溶媒対照、1mg/kg、5mg/kgまたは25mg/kgのmGC33、10F.9G2または5mg/kgもしくは25mg/kgのGC33および10F.9G2の組合せのいずれかで処置された各マウスにおける、ヒトGPC3を発現するHepa1-6腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、注射の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。
図5B】34日目の各処置群における個体別の腫瘍面積または腫瘍面積の平均+SDを示す図である。腫瘍面積(mm2)は、各マウスから摘出された腫瘍組織のHE染色後に(腫瘍組織の長径の長さ(mm))x(腫瘍組織の短径の長さ(mm))によって算出した。各腫瘍組織の病理学的評価の結果をグラフの下に加えた。疾患の病理学的な進行(pPD)は、「腫瘍の退縮が見られなかった」と定義した。病理学的な部分退縮(pPR)は、「免疫細胞浸潤を伴う腫瘍細胞の変性および/または壊死が見られた」と定義した。病理学的な完全退縮(pCR)は、「腫瘍移植部位に腫瘍細胞が見られなかった」と定義した。
図6図6は、臨床治験の設計を示す模式図である。コホート1では、3または6人の患者が登録されている。臨床治験の用量漸増部分では、患者において用量制限毒性が観察されない場合または用量制限毒性が6人の患者中1人以下の患者において観察される場合には、その他の6人の患者はコホート2に登録される。用量制限毒性が3人の患者中2人以上において観察される場合または用量制限毒性が6人の患者において観察される場合には、その他の6人の患者は、コホート3に登録される。用量漸増部分後、患者が用量漸増部分において許容できると確認されているより高い用量で治療される拡大コホートに、少なくとも9人のその他の患者が登録される。
図7A図7Aは、コホート1に登録された患者のすべてにおけるGC33のトラフ濃度の変化を示す図である。図7A中の水平線は、GC33濃度における望ましいトラフ濃度として230μg/mLを示す。
図7B図7Bは、コホート1における4日目での負荷用量を有する患者のすべてにおけるGC33のトラフ濃度の変化を示す図である。図7B中の水平線は、GC33濃度における望ましいトラフ濃度として230μg/mLを示す。
図8A図8Aは、コホート2に登録された患者のすべてにおけるGC33のトラフ濃度の変化を示す図である。図8A中の水平線は、GC33濃度における望ましいトラフ濃度として230μg/mLを示す。
図8B図8Bは、コホート1における4日目での負荷用量を有する患者のすべてにおけるGC33のトラフ濃度の変化を示す図である。図8B中の水平線は、GC33濃度における望ましいトラフ濃度として230μg/mLを示す。
図9図9は、GC33の平均トラフ濃度を示す図である。実線は、コホート1に登録された3人の患者におけるGC33の平均トラフ濃度を示す。点線は、コホート2および拡大コホートに登録された17人の患者における平均トラフ濃度を示す。
図10A図10Aは、GC33の最初の投薬から8日目でのベースラインAFP値からのAFPの変化パーセントを示す図である。アスタリスクマーク(*)は、ベースラインAFP値が100ng/mLを超える患者を示す。
図10B図10Bは、治療の間の最良のAFP応答を示す図である。最良のAFP応答は、AFP値が、処置によってベースラインから減少される場合にAFPの最大変化パーセントとして、または治療によってAFP値が減少されない場合にAFPの最小変化パーセントのいずれかとして算出される。アスタリスクマーク(*)は、ベースラインAFP値が100ng/mLを超える患者を示す。
図11A図11Aは、有効性評価の集団における無増悪生存(PFS)のカプラン-マイヤープロットを示す図である。点線は、800mgのGC33によって治療された集団のPFSを示し、実線は、1600mgのGC33によって治療された集団のPFSを示す。
図11B図11Bは、有効性評価のための集団における全生存(OS)のカプラン-マイヤープロットを示す図である。点線は、800mgのGC33によって治療された集団のOSを示し、実線は、1600mgのGC33によって治療された集団のOSを示す。
図11C図11Cは、1600mgのGC33投薬を有するもののみの有効性評価のための集団におけるPFSのカプラン-マイヤープロットを示す図である。実線は、4日目でのGC33の負荷用量を有する集団のPFSを示し、点線は、4日目でのGC33の負荷用量を有さない集団のPFSを示す。
図11D図11Dは、1600mgのGC33投薬を有するもののみの有効性評価のための集団におけるOSのカプラン-マイヤープロットを示す図である。実線は、4日目でのGC33の負荷用量を有する集団のOSを示し、点線は、4日目でのGC33の負荷用量を有さない集団のOSを示す。
図11E図11Eは、ベースラインAFP値が100ng/mLを超えるもののみの有効性評価のための集団におけるPFSのカプラン-マイヤープロットを示す図である。点線は、800mgのGC33によって処置された集団のPFSを示し、実線は、1600mgのGC33によって処置された集団のPFSを示す。
図11F図11Fは、ベースラインAFP値が100ng/mLを超えるもののみの有効性評価のための集団におけるOSのカプラン-マイヤープロットを示す図である。点線は、800mgのGC33によって治療された集団のOSを示し、実線は、1600mgのGC33によって治療された集団のOSを示す。
図11G図11Gは、1600mgのGC33投薬を有し、ベースラインAFP値が100ng/mLを超えるもののみの有効性評価のための集団におけるPFSのカプラン-マイヤープロットを示す図である。実線は、4日目のGC33の負荷用量を有する集団のPFSを示し、点線は、4日目のGC33の負荷用量を有さない集団のPFSを示す。
図11H図11Hは、1600mgのGC33投薬を有し、ベースラインAFP値が100ng/mLを超えるもののみの有効性評価のための集団におけるOSのカプラン-マイヤープロットを示す図である。実線は、4日目のGC33の負荷用量を有する集団のOSを示し、点線は、4日目のGC33の負荷用量を有さない集団のOSを示す。
【発明の詳細な説明】
【0032】
本願におけるデータは、GPC3標的化剤の抗PD-L1免疫療法との組合せのための投与レジメンが、腫瘍増殖の阻害の増強、奏効率の増大および持続性応答をもたらしたことを示す。本発明者らは、本明細書において提供された併用療法の投与レジメンの利益を実証した:本明細書において提供された投与レジメンに従ってGPC3標的化剤およびPD-1系結合アンタゴニストを投与することが、治療効果の増大(例えば、腫瘍応答の増強、抗腫瘍活性の増強、アルファフェトプロテイン(AFP)の大きな減少など)および/または持続性の長期間反応をもたらす。
【0033】
[I.定義]
本発明を詳細に記載する前に、本発明が、特定の組成物または生物学的系に限定されず、当然変動し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定を意図しないこともまた、理解すべきである。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの分子(a molecule)」に対する言及は、2つ以上のかかる分子の組合せなどを含んでいてもよい。
【0035】
用語「約」とは、本明細書で使用する場合、本技術分野の当業者に即座に知られるそれぞれの値についての、通常の誤差範囲を指す。本明細書の「約」値またはパラメータに対する言及は、その値またはパラメータ自体に関する実施形態を含む(および記述する)。
【0036】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、その態様および実施形態を「含む」、それら「からなる」およびそれら「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0037】
用語「PD-1系結合アンタゴニスト」とは、PD-1シグナル伝達系に対するシグナル伝達から生じるT細胞機能不全を除去するように、PD-1系結合パートナーとその結合パートナーのうちいずれか1以上との相互作用を阻害する分子を指し、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)を回復または増強させる結果となる。本明細書で使用する場合、PD-1系結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。
【0038】
用語「PD-1結合アンタゴニスト」とは、PD-1とPD-L1、PD-L2などのその結合パートナーのうち1以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、その結合パートナーのうち1以上へのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、このPD-1結合アンタゴニストは、PD-L1および/またはPD-L2へのPD-1の結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストには、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびに他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を通したシグナル伝達を媒介するT細胞上に発現される細胞表面タンパク質により媒介されるか、又はそのようなタンパク質を通したネガティブな共刺激シグナルを低減させて、機能不全T細胞の非機能不全性を低下させる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMDX-1106(ニボルマブ)である。ある具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMK-3475(ラムブロリズマブ)である。ある具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるCT-011(ピディリズマブ)である。ある具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるAMP-224またはAMP-514(MEDI0680)である。ある特定の態様では、PD-1アンタゴニストは、本明細書に記載されるPDR001、REGN2810、BGB A317およびSHR-1210からなる群から選択される。
【0039】
用語「PD-L1結合アンタゴニスト」とは、PD-L1とPD-1、B7-1などのその結合パートナーのうちいずれか1以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。一部の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、このPD-L1結合アンタゴニストは、PD-1および/またはB7-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストには、PD-L1とPD-1、B7-1などのその結合パートナーのうち1以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびに他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を通したシグナル伝達を媒介するT細胞上に発現される細胞表面タンパク質により媒介されるか、又はそのようなタンパク質を通したネガティブな共刺激シグナルを低減させて、機能不全T細胞の非機能不全性を低下させる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。一部の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な一態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるYW243.55.S70またはアテゾリズマブである。ある具体的な一態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMDX-1105である。ある特定の態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるアベルマブである。さらなるある具体的な一態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMPDL3280Aである。さらなるある具体的な一態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMEDI4736(デュルバルマブ)である。
【0040】
用語「PD-L2結合アンタゴニスト」とは、PD-L2とPD-1などのその結合パートナーのうちいずれか1以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。一部の実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、その結合パートナーのうち1以上へのPD-L2の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、このPD-L2結合アンタゴニストは、PD-1へのPD-L2の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L2アンタゴニストには、PD-L2とPD-1などのその結合パートナーのうちいずれか1以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびに他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、機能不全性T細胞をあまり機能不全でなくする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、PD-L2を介したシグナル伝達を媒介するT細胞上で発現される細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介されるネガティブな共刺激シグナルを低減させる。一部の実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0041】
用語「機能不全」とは、免疫機能不全の文脈において、抗原性刺激に対する免疫応答性が低減した状態を指す。この用語は、消耗、および/または、抗原認識が生じ得るが、次の免疫応答が、感染または腫瘍増殖を制御するには効果がないアネルギーの、両方の共通要素を含む。
【0042】
用語「機能不全性」は、本明細書で使用する場合、抗原認識に対する耐性または不応答性、具体的には、抗原認識を下流のT細胞エフェクター機能、例えば、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)および/または標的細胞死滅へと転換する能力の障害もまた含む。
【0043】
用語「アネルギー」(anergy)とは、T細胞受容体を介して伝達される不完全または不十分なシグナル(例えば、ras活性化の非存在下での細胞内Ca+2増加)から生じる、抗原刺激に対する不応答性の状態を指す。T細胞アネルギーは、共刺激の非存在下での抗原による刺激の際にも生じ得、これによって、共刺激の情況であっても、抗原による引き続く活性化に対して耐性になる細胞を生じる。無応答性状態は、インターロイキン-2の存在によって無効化され得ることが多い。アネルギー性T細胞は、クローン増殖を受けず、および/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0044】
用語「消耗」とは、多くの慢性感染およびがんの間に生じる持続性のTCRシグナル伝達から生じるT細胞機能不全の状態としての、T細胞消耗を指す。これは、不完全なまたは欠損したシグナル伝達を介してではなく、持続性のシグナル伝達から生じるという点で、アネルギーから区別される。これは、乏しいエフェクター機能、阻害受容体の持続性の発現、および機能的エフェクターまたはメモリーT細胞のものとは異なる転写状態によって規定される。消耗は、感染および腫瘍の最適な制御を防止する。消耗は、外的陰性調節経路(例えば、免疫調節性サイトカイン)ならびに細胞固有の陰性調節(共刺激)経路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方から生じ得る。
【0045】
「T細胞機能を増強する」とは、持続性のもしくは増幅された生物学的機能を有するように、または消耗したもしくは不活性なT細胞を再生もしくは再活性化するようにT細胞を誘導する、そのようにさせるまたはそのように刺激することを意味する。T細胞機能を増強することの例には、以下が含まれる:介入前のそのレベルと比較した、CD8+T細胞からのγ-インターフェロンの増加した分泌、増加した増殖、増加した抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体または腫瘍のクリアランス)。一実施形態では、増強のレベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この増強を測定する方法は、当業者に公知である。
【0046】
「T細胞機能不全性障害」は、抗原性刺激に対する応答性の減少によって特徴付けられる、T細胞の障害または状態である。特定の一実施形態では、T細胞機能不全性障害は、PD-1を介した不適切な増加したシグナル伝達と特異的に関連する障害である。ある一実施形態では、T細胞機能不全性障害は、T細胞が、アネルギー性であるか、またはサイトカインを分泌する能力、増殖する能力もしくは細胞溶解活性を実行する能力が減少している、障害である。具体的な一態様では、この減少した応答性は、免疫原を発現する病原体または腫瘍の、制御を不効率にする。T細胞機能不全によって特徴付けられるT細胞機能不全性障害の例としては、未解決の急性感染、慢性感染および腫瘍免疫が挙げられる。
【0047】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識およびクリアランスを逃れるプロセスを指す。したがって、治療概念として、腫瘍免疫は、かかる回避が減弱され、腫瘍が免疫系によって認識および攻撃される場合に、「治療される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮および腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0048】
「免疫原性」とは、免疫応答を誘発する個々の物質の能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性を増強することは、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスに役立つ。腫瘍免疫原性を増強することの例として、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を用いる治療が挙げられる。
【0049】
「持続性の応答」とは、治療の休止後に腫瘍増殖を低減させることに対する持続性の効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して、同じまたはより小さいままであり得る。一部の実施形態では、この持続性の応答は、治療持続期間と少なくとも同じ持続期間を有し、治療持続期間の少なくとも1.5×、2.0×、2.5×または3.0×の長さの持続期間を有する。
【0050】
用語「医薬組成物」または「医薬製剤」とは、有効成分の生物活性が、有効であることを可能にするような形態であり、組成物または製剤が投与される対象にとって容認しがたく毒性であるさらなる構成成分を含有しない組成物または調製物を指す。このような組成物または製剤は無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、使用される活性成分の有効用量を提供するために、対象哺乳動物に合理的に投与され得る賦形剤である。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「治療」とは、臨床病理学の過程の間に、治療される個体または細胞の天然の過程を改変するように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、疾患進行の速度を減少させること、病状を改善または緩和すること、および寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、がんに関連付けられる1以上の症状が緩和又は除去される場合、個体は成功裏に「治療」されたことになる。このような症状の緩和又は除去には、がん細胞の増殖の低減(又はがん細胞の破壊)、腫瘍増大の低減、疾患に起因する症状の低減、疾患罹患者の生活の質の上昇、疾患を治療するために必要な他の薬剤の用量の減少、および/または個体生存の延長が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用する場合、「疾患の進行を遅延させる」とは、疾患(例えば、がん)の発達を延期する、邪魔する、減速する、遅らせる、安定化する、および/または先延ばしにすることを意味する。この遅延は、治療されている疾患および/または個体の履歴に依存して、変動する長さの時間であり得る。当業者に明らかなように、十分なまたは顕著な遅延は、個体が疾患を発達させないという点において、事実上、予防を包含し得る。例えば、後期がん、例えば、転移の発達が、遅延され得る。
【0053】
「有効量」は、特定の障害の測定可能な改善または予防をもたらすために必要とされる、少なくとも最小量である。本明細書では、有効量は、患者の病状、年齢、性別および体重、ならびに抗体が個体において所望の応答を惹起する能力などの因子に従って変動し得る。有効量は、治療的に有益な効果が治療の任意の毒性または有害な効果を上回る量でもある。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、リスクを排除もしくは低減させること、重症度を低下させること、または疾患、その合併症、および疾患の発達の間に示される中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的および/もしくは行動学的症候を含む疾患の発病を遅延させることなどの結果が含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、疾患から生じる1以上の症候を減少させること、疾患に罹患している者の生活の質を増加させること、疾患を治療するために必要とされる他の薬物療法の用量を減少させること、標的化などを介した別の療法の効果を増強すること、疾患の進行を遅延させること、および/または生存を延長させることなどの臨床結果が含まれる。がんまたは腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞の数を低減させること;腫瘍サイズを低減させること;末梢臓器中へのがん細胞浸潤を阻害すること(即ち、ある程度まで減速させること、または望ましくは停止させること);腫瘍転移を阻害すること(即ち、ある程度まで減速させること、または望ましくは停止させること);腫瘍増殖をある程度まで阻害すること;および/または障害と関連する症候のうち1以上をある程度まで軽減することにおいて、効果を有し得る。有効量は、1以上の投与で投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、直接的または間接的のいずれかで予防的または治療的処置を達成するために十分な量である。臨床的状況において理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1以上の治療剤を投与する観点から考慮されてよく、1以上の他の薬剤と併せて所望の結果が達成され得るまたは達成される場合、単一の薬剤が有効量で与えられたとみなされ得る。
【0054】
本明細書において、「とともに」および「と併用して」とは、ある治療様式の、別の治療様式に加えた投与を指す。そのようなものとして、「とともに」および「と併用して」とは、個体への、ある治療様式の、もう一方の治療様式の投与の前の、その間のまたはその後の投与を指す。
【0055】
「障害」は、哺乳動物を問題の障害に罹りやすくする病理学的状態を含む慢性および急性の障害または疾患が含まれるがこれらに限定されない、治療から利益を得る任意の状態である。
【0056】
用語「細胞増殖性疾患」および「増殖性疾患」とは、ある程度の異常な細胞増殖と関連する障害を指す。一実施形態では、この細胞増殖性疾患は、がんである。一実施形態では、この細胞増殖性疾患は、腫瘍である。
【0057】
「腫瘍」とは、本明細書で使用する場合、悪性であるか良性であるかに関わらない、全ての新生物性の細胞増殖(growth)および増殖(proliferation)、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を指す。用語「がん」、「がん性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」および「腫瘍」は、本明細書では、相互に排他的に言及されるわけではない。
【0058】
用語「がん」および「がん性」とは、典型的には調節されない細胞増殖によって特徴付けられる哺乳動物における生理的状態を指す、またはかかる状態を記述する。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられるがこれらに限定されない。かかるがんのより特定の例としては、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平細胞がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がんおよび肺扁平上皮がん腫などの肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がんおよび消化管間質がんを含む胃(gastric)または胃(stomach)がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、尿路のがん、肝がん、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺がん、腎臓または腎がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞がん、肛門がん、陰茎がん、メラノーマ、表在性拡大型メラノーマ、悪性黒子型メラノーマ、末端部黒子メラノーマ、結節性メラノーマ、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症と関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するもの)、メイグス症候群、脳、および頭頸部がん、ならびに関連する転移が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の抗体による治療に適したがんには、乳がん、結腸直腸がん、直腸がん、非小細胞肺がん、膠芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞がん、前立腺がん、肝がん、膵臓がん、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイドがん腫、頭頸部がん、卵巣がん、中皮腫および多発性骨髄腫が含まれる。一部の実施形態では、がんは、小細胞肺がん、神経膠芽腫、神経芽腫、メラノーマ、乳がん、胃がん、結腸直腸がん(CRC)および肝細胞がんから選択される。さらに、一部の実施形態では、がんは、これらのがんの転移型を含む、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、神経膠芽腫、乳がんおよび肝細胞がんから選択される。
【0059】
用語「細胞傷害性剤」とは、本明細書で使用する場合、細胞にとって有害な(例えば、細胞死を引き起こす、増殖を阻害する、または細胞機能を他の方法で妨害する)、任意の薬剤を指す。細胞傷害性剤としては、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤;増殖阻害性剤;酵素およびその断片、例えば核酸分解酵素;および毒素、例えば、低分子毒素、または、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素(それらの断片および/もしくはバリアントを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な細胞傷害性剤としては、抗微小管剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤、LDH-Aの阻害剤、脂肪酸生合成の阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、およびがん代謝の阻害剤から選択され得る。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、タキサンである。一実施形態では、このタキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルである。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、白金剤である。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、EGFRのアンタゴニストである。一実施形態では、このEGFRのアンタゴニストは、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ)である。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、RAF阻害剤である。一実施形態では、このRAF阻害剤は、BRAFおよび/またはCRAF阻害剤である。一実施形態では、このRAF阻害剤は、ベムラフェニブである。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、PI3K阻害剤である。
【0060】
「化学療法薬」としては、ナイトロジェンマスタード類似体、アルキルスルホネート、エチレンイミン、ニトロソウレア、エポキシド、その他のアルキル化剤、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、その他の代謝拮抗剤、ビンカアルカロイドまたは類似体、ポドフィロトキシン誘導体、カンプトテカン類似体、コルヒチン誘導体、タキサン、その他の植物アルカロイドまたは天然物、アクチノマイシン、アントラサイクリンまたは関連物質、その他の細胞傷害性抗生物質、白金化合物、メチルヒドラジン、キナーゼ阻害剤、酵素、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、レチノイド、免疫チェックポイント阻害剤、抗体およびその他の分子標的薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
「化学療法剤」としてはまた、がんの治療において有用な化合物が挙げられる。化学療法剤の例としては、エルロチニブ(タルセバ(商標)、ジェネンテック/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(ベルケード(商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、エピガロカテキンガレート、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH-A)、フルベストラント(フェソロデックス(商標)、アストラゼネカ)、スニチニブ(スーテント(商標)、ファイザー/Sugen)、レトロゾール(フェマーラ(商標)、ノバルティス)、イマチニブメシル酸塩(グリベック(商標)、ノバルティス)、フィナスネート(finasunate)(バタラニブ(商標)、ノバルティス)、オキサリプラチン(エロキサチン(商標)、サノフィ)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(商標)、ワイス)、ラパチニブ(タイケルブ(商標)、GSK572016、グラクソスミスクライン)、ロナファルニブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(ネクサバール(商標)、バイエルラボ)、ゲフィチニブ(イレッサ(商標)、アストラゼネカ)、AG1478、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシトキサン(商標)シクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)およびウレドパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロメラミン(trimethylomelamine)などのエチレンイミンおよびメチルメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(トポテカンおよびイリノテカンなど);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビセレシン合成アナログなど);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾンおよびプレドニゾロンなど);シプロテロンアセテート;5α-レダクターゼ(フィナステリドおよびデュタステリドなど);ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタット ドラスタチン;アルデスロイキン、タルク デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1など);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロマファジン(chlomaphazine)、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア類、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンγ1Iおよびカリケアマイシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.1994 33:183~186);ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン(calusterone)、ドロモスタノロンプロピアナート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン(bisantrene);エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォミチン(elfomithine);エリプチニウムアセタート(elliptinium acetate);エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン(ansamitocin);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダムノール(mopidamnol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンAおよびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、タキソール(パクリタキセル;ブリストルマイヤーズスクイブ オンコロジー、Princeton、N.J.)、アブラキサン(商標)(クレモルホールフリー)、パクリタキセルのアルブミン改変型ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Ill.)およびタキソテール(商標)(ドセタキセル、ドキセタキセル(doxetaxel);サノフィアベンティス);クロラムブシル;ジェムザール(商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビン(商標)(ビノレルビン);ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(ゼローダ(商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸および誘導体が挙げられる。
【0062】
化学療法剤としては、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(アバスチン(商標)、ジェネンテック);セツキシマブ(アービタックス(商標)、Imclone);パニツムマブ(ベクチビックス(商標)、アムジェン)、リツキシマブ(リツキサン(商標)、ジェネンテック/バイオジェン Idec)、ペルツズマブ(オムニターグ(商標)、2C4、ジェネンテック)、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標)、ジェネンテック)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)および抗体薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガミシン(マイロターグ(商標)、ワイス)などの抗体が挙げられる。本発明の化合物との併用薬剤としての治療可能性を有するさらなるヒト化モノクローナル抗体には、以下が含まれる:アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピニューズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガミシン、イノツズマブオゾガミシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ(toralizumab)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、およびインターロイキン-12 p40タンパク質を認識するように遺伝的に改変された組換えの排他的にヒト配列の全長IgG1λ抗体である抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、ワイスリサーチおよびアボットラボラトリーズ)。
【0063】
「増殖阻害性剤」とは、本明細書で使用する場合、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の増殖を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態では、増殖阻害性剤は、その抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止または低減させる増殖阻害性抗体である。ある一実施形態では、この増殖阻害性剤は、S期の細胞の百分率を有意に低減させる薬剤であり得る。増殖阻害性剤の例としては、細胞周期進行を(S期以外の場所で)ブロックする薬剤、例えば、G1停止およびM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。古典的なM期ブロッカーとしては、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、ならびにトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシドおよびブレオマイシンが含まれる。G1停止させる薬剤、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシルおよびara-Cは、S期停止にも波及する。さらなる情報は、MendelsohnおよびIsrael編、The Molecular Basis of Cancer、Chapter 1、Murakami等による表題「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」(W.B.Saunders、Philadelphia、1995)の、例えばp.13中に見出され得る。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、イチイの木から共に誘導される抗がん薬物である。ヨーロッパイチイから誘導されたドセタキセル(タキソテール(商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセルの半合成アナログ(タキソール(商標)、ブリストルマイヤーズスクイブ)である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリンダイマーからの微小管のアセンブリを促進し、脱重合を防止することによって微小管を安定化して、細胞における有糸分裂の阻害を生じる。
【0064】
「放射線療法」とは、正常に機能するその能力または細胞を完全に破壊するその能力を制限するような細胞への十分な損傷を誘導するための定方向のガンマ線またはベータ線の使用を意味する。投薬量および治療の持続期間を決定するための当該技術分野で公知の多くの方法が存在することが理解される。典型的な治療は、1回限りの投与として与えられ、典型的な投薬量は、1日当たり10から200単位(グレイ)までの範囲である。
【0065】
治療を目的とした「対象」または「個体」とは、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園動物、競技用動物または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましくは、この哺乳動物はヒトである。
【0066】
本明細書で、用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、それらが所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を具体的にカバーする。
【0067】
「単離された」抗体は、同定されており、かつその天然の環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その天然の環境の夾雑物成分は、抗体についての研究、診断的または治療的使用に干渉する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。一部の実施形態では、抗体は、(1)例えばLowry法によって決定されるように、95重量%超の抗体まで、一部の実施形態では99重量%超まで;(2)例えばスピニングカップシークエネーターの使用によって、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を取得するのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーもしくは銀染色を使用して、還元もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって均質になるまで、精製される。抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、単離された抗体には、組換え細胞内のin situの抗体が含まれる。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1回の精製工程によって調製される。
【0068】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ4量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合によって重鎖に連結されるが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖および軽鎖は、一定の間隔を空けた鎖内ジスルフィド架橋もまた有する。各重鎖は、一方の末端において1つの可変ドメイン(VH)を有し、その後にいくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末端において1つの可変ドメイン(VL)を有し、その他方の末端において1つの定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の接触面を形成すると考えられる。
【0069】
用語「定常ドメイン」とは、免疫グロブリンの他の部分、抗原結合部位を含む可変ドメインと比較してより保存されたアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含む。
【0070】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と呼ばれ得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と呼ばれ得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の部分であり、抗原結合部位を含む。
【0071】
用語「可変」とは、可変ドメインの特定の部分が、抗体間で配列において広範に異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメインの全体に均等に分布するわけではない。可変性は、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメイン中の、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高く保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、ベータ-シート構造を接続し、一部の場合にはベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続された、ベータ-シート立体配置を主として取る4つのFR領域を含む。各鎖中のHVRは、FR領域によって、他方の鎖由来のHVRとごく接近して一緒に維持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Inte
rest、Fifth Edition、National Institute of Health、Bethesda、Md.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害における抗体の関与を示す。
【0072】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる、2つの明らかに異なる型のうちの1つに割り当てられ得る。
【0073】
用語IgG「アイソタイプ」または「サブクラス」は、本明細書で使用する場合、それらの定常領域の化学的および抗原性特性によって規定される免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
【0074】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2へとさらに分けられ得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γおよびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体配置は、周知であり、例えば、Abbas等 Cellular and Mol.Immunology、4th ed.(W.B.Saunders,Co.、2000)に、一般に記載されている。抗体は、抗体と1以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的または非共有結合的会合によって形成される、より大きい融合分子の一部であり得る。
【0075】
用語「全長抗体」、「インタクトな抗体」および「全抗体」は、本明細書で相互交換可能に使用されて、その実質的にインタクトな形態での抗体を指し、以下に定義される抗体断片ではない。これらの用語は、特に、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0076】
本明細書の目的のために、「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0077】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部分を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvおよびFv断片;ディアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0078】
抗体のパパイン消化は、各々が単一抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、およびその名称が容易に結晶化するその能力を反映している1つの残留「Fc」断片を生じる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、なおも抗原を架橋することが可能である、1つのF(ab’)2断片を生じる。
【0079】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施形態では、二鎖Fv種は、緊密に非共有結合的に会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が、二鎖Fv種中のものと類似の「ダイマー」構造で会合し得るように、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合的に連結され得る。「Fv」は、各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VLダイマーの表面上の抗原結合部を規定する、この立体配置で存在する。集合的に、6つのHVRが、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりもより低い親和性ではあるが、抗原を認識および結合する能力を有する。
【0080】
Fab断片は、重鎖および軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)もまた含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数残基の追加の分、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有する、Fab’についての本明細書での命名である。F(ab’)2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学カップリングも公知である。
【0081】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、scFvが抗原結合にとって所望の構造を形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの総説については、Pluckthuen、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol.113、RosenburgおよびMoore編、(Springer-Verlag、New York、1994)、pp.269~315を参照のこと。
【0082】
用語「ディアボディ(diabody)」とは、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインとペアリングするようにさせられ、2つの抗原結合部位を創出する。ディアボディは、二価または二重特異性であり得る。ディアボディは、例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson等、Nat.Med.9:129~134(2003);およびHollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448(1993)中に、より完全に記載されている。トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)もまた、Hudson等、Nat.Med.9:129~134(2003)中に記載されている。
【0083】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用する場合、実質的に均一な抗体の集団から取得された抗体を指し、例えば、この集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除き、同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物ではない抗体の特性を示す。特定の実施形態では、かかるモノクローナル抗体には、典型的には、標的を結合するポリペプチド配列を含む抗体が含まれ、ここで、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって取得されたものである。例えば、この選択プロセスは、複数のクローン、例えば、ハイブリドーマクローン、ファージクローンまたは組換えDNAクローンのプールからの独自のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列は、例えば、標的に対する親和性を改善するため、標的結合配列をヒト化するため、細胞培養物中でのその産生を改善するため、そのインビボでの免疫原性を低減させるため、多重特異性抗体を創出するためなどに、さらに変更され得、変更された標的結合配列を含む抗体もまた、本発明のモノクローナル抗体であることを、理解すべきである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンが夾雑していないという点で、有利である。
【0084】
修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から取得されるという抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするとは解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば以下を含む種々の技術によって作製され得る:ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495~97(1975);Hongo等、Hybridoma、14(3):253~260(1995)、Harlow等、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2nd ed.1988);Hammerling等、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563~681(Elsevier、N.Y.、1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)、ファージディスプレイテクノロジー(例えば、Clackson等、Nature、352:624~628(1991);Marks等、J.Mol.Biol.222:581~597(1992);Sidhu等、J.Mol.Biol.338(2):299~310(2004);Lee等、J.Mol.Biol.340(5):1073~1093(2004);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467~12472(2004);およびLee等、J.Immunol.Methods 284(1-2):119~132(2004)を参照のこと)、ならびにヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生するためのテクノロジー(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits等、Nature 362:255~258(1993);Bruggemann等、Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;米国特許第5,545,806号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;および米国特許第5,661,016号;Marks等、Bio/Technology 10:779~783(1992);Lonberg等、Nature 368:856~859(1994);Morrison、Nature 368:812~813(1994);Fishwild等、Nature Biotechnol.14:845~851(1996);Neuberger、Nature Biotechnol.14:826(1996);ならびにLonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.13:65~93(1995)を参照のこと)。
【0085】
本明細書のモノクローナル抗体には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残部が、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそれらが所望の生物活性を示す限りにおいてかかる抗体の断片が、具体的に含まれる(例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851~6855(1984)を参照のこと)。キメラ抗体には、抗体の抗原結合領域が、例えば目的の抗原を用いてマカクザルを免疫化することによって産生される抗体から誘導される、PRIMATTZED(商標)抗体が含まれる。
【0086】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有する、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練するために行われ得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものと対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。このヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンの一部を含んでいてもよい。さらなる詳細については、例えば、Jones等、Nature 321:522~525(1986);Riechmann等、Nature 332:323~329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596(1992)を参照のこと。例えば、VaswaniおよびHamilton、Ann.Allergy、Asthma & Immunol.1:105~115(1998);Harris、Biochem.Soc.Transactions 23:1035~1038(1995);HurleおよびGross、Curr.Op.Biotech.5:428~433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号および米国特許第7,087,409号もまた参照のこと。
【0087】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生され、および/または本明細書に開示されるようなヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体のものと対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に排除する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野で公知の種々の技術を使用して産生され得る。HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks等、J.Mol.Biol.、222:581(1991)。ヒトモノクローナル抗体の調製のために、Cole等、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77(1985);Boerner等、J.Immunol.、147(1):86~95(1991)に記載される方法もまた、利用可能である。van Dijkおよびvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.、5:368~74(2001)もまた参照のこと。ヒト抗体は、抗原性曝露に応答してかかる抗体を産生するように改変されているが、その内因性の遺伝子座が無効化にされている、トランスジェニック動物、例えば、免疫ゼノマウスに抗原を投与することによって調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)テクノロジーに関しては、米国特許第6,075,181号および米国特許第6,150,584号を参照のこと)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマテクノロジーを介して生成されるヒト抗体に関しては、Li等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557~3562(2006)もまた参照のこと。
【0088】
「種依存的抗体」は、第2の哺乳動物種由来の抗原のホモログに対して有する結合親和性よりも、第1の哺乳動物種由来の抗原に対してより強い結合親和性を有する抗体である。通常、この種依存的抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原のホモログに対して、ヒト抗原に対するその結合親和性よりも、少なくとも約50分の1または少なくとも約500分の1または少なくとも約1000分の1弱い、結合親和性を有する。この種依存的抗体は、上に定義したような種々の型の抗体のいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化またはヒト抗体である。
【0089】
用語「超可変領域」、「HVR」または「HV」とは、本明細書で使用する場合、配列が超可変であるおよび/または構造的に規定されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含む;3つはVH中(H1、H2、H3)、3つはVL中(L1、L2、L3)。天然抗体では、H3およびL3は、6つのHVRのうち最大の多様性を示し、特に、H3は、抗体に優れた特異性を付与することにおいて独自の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu等、Immunity 13:37~45(2000);JohnsonおよびWu、Methods in Molecular Biology 248:1~25(Lo編、Human Press、Totowa、N.J.、2003)を参照のこと。実際、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科の抗体は、軽鎖の非存在下で、機能的かつ安定である。例えば、Hamers-Casterman等、Nature 363:446~448(1993);Sheriff等、Nature Struct.Biol.3:733~736(1996)を参照のこと。
【0090】
いくつかのHVR表現が使用されており、本明細書において包含される。カバット相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されるものである(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。Chothiaは、代わりに、構造的ループの位置に言及している(ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM HVRは、カバットのHVRとChothiaの構造的ループとの間の妥協を示しており、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウェアによって使用されている。「contact」HVRは、入手可能な複雑な結晶構造の解析に基づく。これらのHVRの各々由来の残基は、以下に示される。
【0091】
【表1】
【0092】
HVRは、以下のような「拡大HVR」を含み得る:VL中の24-36または24-34(L1)、46-56または50-56(L2)および89-97または89-96(L3)ならびにVH中の26-35(H1)、50-65または49-65(H2)および93-102、94-102または95-102(H3)。これらの可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat等、上記に従って番号付けされる。
【0093】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるようなHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0094】
用語「カバットの可変ドメイン残基番号付け」または「カバットのアミノ酸位置番号付
け」およびそれらのバリエーションは、Kabat等における、上記中の抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのために使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮またはそれら中への挿入に対応する、より少ないまたはさらなるアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後の単一アミノ酸挿入(カバットに従う残基52a)および重鎖FRの残基82の後の挿入された残基(例えば、カバットに従う残基82a、82bおよび82cなど)を含み得る。残基のカバット番号付けは、抗体の配列と「標準的な」カバット番号付けされた配列との相同性の領域におけるアラインメントによって、所与の抗体について決定され得る。
【0095】
このカバット番号付けシステムは、可変ドメイン中の残基(軽鎖のおよそ残基1-107および重鎖の残基1-113)に言及する場合に、一般に使用される(例えば、Kabat等、Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EUインデックス」は、免疫グロブリン重鎖定常領域中の残基に言及する場合に、一般に使用される(例えば、上記Kabat等において報告されたEUインデックス)。「カバットのEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0096】
表現「直鎖状抗体」とは、Zapata等(1995 Protein Eng、8(10):1057~1062)に記載される抗体を指す。簡潔に述べると、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0097】
本明細書で使用する場合、用語「結合する」、「~に特異的に結合する」または「~に対して特異的である」とは、測定可能かつ再現性のある相互作用、例えば、標的と抗体との間の結合を指し、生体分子を含む分子の不均一な集団の存在下での標的の存在を決定する。例えば、標的(これはエピトープであり得る)に結合するまたは特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも、より大きい親和性、結合活性で、より容易に、および/またはより長い持続期間で、この標的を結合する抗体である。一実施形態では、無関係な標的への抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、標的への抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されたタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。ある一実施形態では、特異的結合は、排他的な結合を含み得るが、それを必要としない。
【0098】
用語「負荷期間」とは、本明細書において、個体に単数または複数の治療薬の1以上の用量が投与される期間を指し、維持期間または維持投薬期間が続く。併用療法の負荷期間内に、GPC3標的化剤のみが投与されてもよく、GPC3標的化剤およびPD-1系結合アンタゴニストの両方が投与されてもよい。負荷期間内に投与される治療薬(複数可)の各用量の量は、維持期間内に達せられ得るものよりも早く、治療薬の所望の定常状態濃度に達するように、維持期間内に投与される治療薬(複数可)の各用量を超えるか、もしくはそれと同様である、および/または負荷期間内の用量(複数可)は、維持期間内の用量(複数可)よりも頻繁に投与される。
【0099】
本明細書において用語「維持期間」または「維持投薬期間」とは、個体に治療薬(単数または複数)の1以上の用量が投与される期間を指す。普通、維持期間内では、治療薬(単数または複数)の1以上の用量は、本明細書において記載されるような間隔をあけた投与間隔で投与される。維持期間は、適当である限り延長されてもよく、例えば、維持期間は、治療薬(単数または複数)の用量(複数可)が、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回以上、15回以上、20回以上、30回以上、40回以上、50回以上または100回以上投与され得るように長い。
【0100】
本明細書において用語「投与間隔」(個々の投与の間の間隔)とは、n番目の用量の投与(nは、1またはそれより大きい整数である)と(n+1)番目の用量の投与の間の間隔を指す。本明細書において「n番目の用量」とは、負荷期間内に投与される任意の用量または維持期間内に投与される任意の用量であり得る。一実施形態では、本開示のPD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化剤の投与間隔は、1日以上の最短期間であり、3カ月以内の最大期間であり、具体的には、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、1カ月、2カ月または3カ月であり得る。投与間隔はまた、それらとは異なって表されてもよく、例えば、毎日1回、毎週1回または3週に1回のように特定されてもよく、例えば、毎日、毎週、または3週間ごとのように特定されてもよい。投与間隔はまた、異なって表されてもよく、例えば、7日サイクルのうち1日目に、または21日サイクルのうち1日目にのように特定されてもよい。
【0101】
[II.PD-1系結合アンタゴニスト]
個体に有効量の、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含む、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延する方法が、本明細書で提供される。また、個体に有効量の、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含む、がんを有する個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する方法も本明細書で提供される。例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の、腫瘍組織への浸潤が挙げられる。ある例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。例えば、PD-1系結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストが挙げられる。PD-1(programmed death 1)は、当該技術分野で、「programmed cell death 1」、PDCD1、CD279およびSLEB2とも呼ばれる。PD-L1(プログラム死リガンド1)は、当該技術分野で、「programmed death 1 ligand 1」、PDCD1LG1、CD274、B7-HおよびPD-L1とも呼ばれる。PD-L2(programmed death ligand 2)は、当該技術分野で、「programmed death 1 ligand 2」、PDCD1LG2、CD273、B7-DC、BtdcおよびPDL2とも呼ばれる。一部の実施形態では、PD-1、PD-L1およびPD-L2は、ヒトのPD-1、PD-L1およびPD-L2である。
【0102】
一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、そのリガンド結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、このPD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1および/またはPD-L2である。ある実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。ある一実施形態では、このPD-L2結合アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L2の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L2結合パートナーは、PD-1である。このアンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質またはオリゴペプチドであり得る。
【0103】
一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体)である。一部の実施形態では、この抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ラムブロリズマブ)およびCT-011(ピディリズマブ)からなる群から選択される。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224またはAMP-514(MEDI0680)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001、REGN2810、BGB A317、SHR-1210、BI754091、JNJ-63723283、MGA012、PF-06801591、JS-001およびTSR-042からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、アテゾリズマブ、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブ、MEDI4736(デュルバルマブ)、KN035、CX-072、LY33000054およびFAZ053からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634に記載された抗PD-L1である。MDX-1105は、BMS-936559としても知られ、WO2007/005874に記載された抗PD-L1抗体である。アベルマブは、WO2013079174に記載された抗PDL1抗体である。MEDI4736(デュルバルマブ)は、WO2011/066389およびUS2013/034559に記載された抗PD-L1モノクローナル抗体である。ニボルマブは、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558およびオプジーボ(商標)としても知られ、WO2006/121168に記載された抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブは、MK-3475、Merck 3475、ラムブロリズマブ、キイトルーダ(商標)およびSCH-900475としても知られ、WO2009/114335に記載された抗PD-1抗体である。CT-011は、hBAT、hBAT-1またはピディリズマブとしても知られ、WO2009/101611に記載された抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られ、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されたPD-L2-Fc融合可溶型受容体である。
【0104】
一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間および/
またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することが可能である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFvおよび(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。
【0105】
本発明の方法のために有用な抗PD-L1抗体およびそれを作製するための方法の例は、本明細書に引用することにより援用される、PCT特許出願WO2010/077634、WO2007/005874、WO2011/066389および米国特許出願公開第US2013/034559号に記載されている。本発明において有用な抗PD-L1抗体は、かかる抗体を含む組成物を含め、がんを治療するためにGPC3標的化剤と組み合わせて使用され得る。
【0106】
[抗PD-1抗体]
一部の実施形態では、この抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」の代替的名称としては、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558またはニボルマブが挙げられる。一部の実施形態では、この抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。なおさらなる一実施形態では、配列番号1由来の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域および/または配列番号2由来の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離された抗PD-1抗体が提供される。なおさらなる一実施形態では、重鎖および/または軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号1に記載の重鎖配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、
(b)この軽鎖配列は、配列番号2に記載の軽鎖配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。
【0107】
[抗PD-L1抗体]
一部の実施形態では、製剤中の抗体は、重鎖および/または軽鎖配列中に、少なくとも1つのトリプトファン(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つ)を含む。一部の実施形態では、アミノ酸トリプトファンは、抗体のCDR領域、フレームワーク領域および/または定常領域中にある。一部の実施形態では、この抗体は、CDR領域中に2つまたは3つのトリプトファン残基を含む。一部の実施形態では、製剤中の抗体は、抗PD-L1抗体である。PD-L1(programmed death ligand 1)は、PD-L1、B7-H1、B7-4、CD274およびB7-Hとしても知られ、膜貫通タンパク質であり、PD-1とのその相互作用は、T細胞活性化およびサイトカイン産生を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に結合する。本明細書に記載される方法において使用され得る抗PD-L1抗体の例は、本明細書に引用することにより援用される、PCT特許出願WO2010/077634A1および米国特許第8,217,149号に記載されるアテゾリズマブまたは抗PD-L1抗体である。
【0108】
一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間および/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することが可能である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、この
抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFvおよび(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。
【0109】
WO2010/077634A1および米国特許第8,217,149号に記載される抗PD-L1抗体は、本明細書に記載される方法において使用され得る。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、配列番号3の重鎖可変領域配列および/または配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。なおさらなる一実施形態では、重鎖および/または軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号3に記載の重鎖配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、
(b)この軽鎖配列は、配列番号4に記載の軽鎖配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。
【0110】
一実施形態では、この抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列を含む重鎖可変領域ポリペプチドを含み、ここで、
(a)このHVR-H1配列は、GFTFSX1SWIH(配列番号5)であり;
(b)このHVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKG(配列番号6)であり;
(c)このHVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり;
ここでさらに、X1は、DまたはGであり;X2は、SまたはLであり;X3は、TまたはSである。具体的な一態様では、X1はDであり;X2はSであり、X3はTである。
【0111】
ある態様では、このポリペプチドは、式:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)に従う、HVR間に並べられた可変領域重鎖フレームワーク配列をさらに含む。さらなるある態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。さらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列のうち少なくとも1つは、以下である:
HC-FR1は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号8)であり
HC-FR2は、WVRQAPGKGLEWV(配列番号9)であり
HC-FR3は、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)であり
HC-FR4は、WGQGTLVTVSA(配列番号11)である。
【0112】
なおさらなる一態様では、この重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含む可変領域軽鎖とさらに組み合わされ、ここで、
(a)このHVR-L1配列は、RASQX456TX78A(配列番号12)であり;
(b)このHVR-L2配列は、SASX9LX10S(配列番号13)であり;
(c)このHVR-L3配列は、QQX11121314PX15T(配列番号14)であり;
ここで、X4は、DまたはVであり;X5は、VまたはIであり;X6は、SまたはNで
あり;X7は、AまたはFであり;X8は、VまたはLであり;X9は、FまたはTであり;X10は、YまたはAであり;X11は、Y、G、FまたはSであり;X12は、L、Y、FまたはWであり;X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり;X14は、H、V、P、TまたはIであり;X15は、A、W、R、PまたはTである。なおさらなる一態様では、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。
【0113】
なおさらなる一態様では、この軽鎖は、式:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)に従ってHVR間に並べられた可変領域軽鎖フレームワーク配列をさらに含む。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列のうち少なくとも1つは、以下である:
LC-FR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)であり
LC-FR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)であり
LC-FR3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)であり
LC-FR4は、FGQGTKVEIKR(配列番号18)である。
【0114】
ある一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体または抗原結合断片が提供され、ここで、
(a)この重鎖は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3を含み、ここでさらに、
(i)このHVR-H1配列は、GFTFSX1SWIHであり;(配列番号5)
(ii)このHVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKG(配列番号6)であり
(iii)このHVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり、
(b)この軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含み、ここでさらに、
(i)このHVR-L1配列は、RASQX456TX78A(配列番号12)であり
(ii)このHVR-L2配列は、SASX9LX10Sであり;(配列番号13)かつ
(iii)このHVR-L3配列は、QQX11121314PX15Tであり;(配列番号14)
ここで、X1は、DまたはGであり;X2は、SまたはLであり;X3は、TまたはSであり;X4は、DまたはVであり;X5は、VまたはIであり;X6は、SまたはNであり;X7は、AまたはFであり;X8は、VまたはLであり;X9は、FまたはTであり;X10は、YまたはAであり;X11は、Y、G、FまたはSであり;X12は、L、Y、FまたはWであり;X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり;X14は、H、V、P、TまたはIであり;X15は、A、W、R、PまたはTである。具体的な一態様では、X1はDであり;X2はSであり、X3はTである。ある一態様では、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。さらなるある一態様では、X1はDであり;X2はSであり、X3はTであり、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり、X15はAである。
【0115】
さらなる一態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含む。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1以上は、配列番号8、9、10および11として記載される。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1以上は、配列番号15、16、17および18として記載される。
【0116】
なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0117】
さらなるある一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)およびRHWPGGFDY(配列番号21)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列をさらに含む、または
(b)この軽鎖は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)およびQQYLYHPAT(配列番号24)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列をさらに含む。具体的な一態様では、この配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。
【0118】
ある態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含む。ある態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1以上は、配列番号8、9、10および11として記載される。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1以上は、配列番号15、16、17および18として記載される。
【0119】
なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0120】
さらなる一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PDL1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号25に記載の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、および/または
(b)この軽鎖配列は、配列番号4に記載の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
具体的な一態様では、この配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。ある態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含む。更なる態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。さらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1以上は、配列番号8、9、10およびWGQGTLVTVSS(配列番号27)として記載される。
なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1以上は、配列番号15、16、17および18として記載される。
【0121】
なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、原核細胞における産生から生じる。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0122】
さらなる一態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含む。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1以上は、以下である:
HC-FR1は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号29)であり、
HC-FR2は、WVRQAPGKGLEWVA(配列番号30)であり、
HC-FR3は、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)であり、
HC-FR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号27)である。
【0123】
なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1以上は、以下である:
LC-FR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)であり、
LC-FR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)であり、
LC-FR3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)であり、
LC-FR4は、FGQGTKVEIK(配列番号28)である。
【0124】
なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0125】
さらなる実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(c)この重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)およびRHWPGGFDY(配列番号21)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列をさらに含み、
および/または
(d)この軽鎖は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)およびQQYLYHPAT(配列番号24)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列をさらに含む。
具体的な一態様では、この配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。
【0126】
ある態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1以上のフレームワーク配列を含む。さらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1以上は、配列番号8、9、10およびWGQGTLVTVSSASTK(配列番号31)として記載される。
【0127】
なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1以上は、配列番号15、16、17および18として記載される。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0128】
なおさらなる一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号26に記載の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、または
(b)この軽鎖配列は、配列番号4に記載の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0129】
一部の実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、かつ、この重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖のN末端における1、2、3、4または5つのアミノ酸残基は、欠失、置換または改変され得る。
【0130】
なおさらなる一実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号32に記載の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、および/または
(b)この軽鎖配列は、配列番号33に記載の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
なおさらなる一実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号55に記載の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、および/または
(b)この軽鎖配列は、配列番号33に記載の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0131】
一部の実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この重鎖配列は、配列番号32または55のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ、この重鎖配列は、配列番号32または55のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0132】
一部の実施形態では、この単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化されている。抗体のグリコシル化は、典型的には、N-結合型またはO-結合型のいずれかである。N-結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への糖(炭水化物)部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖(炭水化物)部分の酵素的付加のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル化部位を創出する。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち1つの付加を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンもまた使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上記トリペプチド配列(N結合グリコシル化部位について)のうち1つが除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって、簡便には達成される。この変更は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリンまたはスレオニン残基の、別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニンまたは保存的置換)による置換によって行われ得る。
【0133】
本明細書の実施形態のいずれかでは、この単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot寄託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1、またはそのバリアントに結合し得る。
【0134】
なおさらなる一実施形態では、本明細書に記載される抗体のいずれかをコードする単離された核酸が提供される。一部の実施形態では、この核酸は、以前に記載した抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に適切なベクターをさらに含む。なおさらなる具体的な一態様では、このベクターは、核酸の発現に適切な宿主細胞中にある。なおさらなる具体的な一態様では、この宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。なおさらなる具体的な一態様では、この真核細胞は、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0135】
抗体またはその抗原結合断片は、当該技術分野で公知の方法を使用して、例えば、以前に記載した抗PD-L1抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を発現に適切な形態で含む宿主細胞を、かかる抗体または断片を産生するのに適切な条件下で培養すること、およびこの抗体または断片を回収することを含むプロセスによって、作製され得る。
【0136】
[III. GPC3標的化剤]
個体に有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含む、個体においてがんを治療するまたはその進行を遅延する方法が、本明細書で提供される。また、個体に有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含む、がんを有する個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する方法もまた、本明細書で提供される。例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の、腫瘍組織への浸潤が挙げられる。ある例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。
【0137】
いくつかの実施形態では、GPC3標的化剤は、抗GPC3抗体である。ヒトグリピカン3(GPC3)と結合する抗体が、本明細書において提供される。「GPC3」の別名として、SGB、DGSX、MXR7、SDYS、SGBS、OCI-5、SGBS1およびGTR2-2が挙げられる。用語「GPC3」とは、本明細書において、任意のヒト供給源由来の任意の天然GPC3を指す。この用語は、「全長」およびプロセシングされていないGPC3ならびに限定されるものではないが、GPC3のC末端ペプチドを含む、細胞におけるプロセシングに起因するGPC3の任意の形態(例えば、成熟タンパク質)を包含する。この用語はまた、GPC3の天然に存在するバリアントおよびアイソフォーム、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントを包含する。例えば、GPC3の説明および配列は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号P51654.1で提供されている。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、GPC3と結合し、がん細胞の細胞増殖(cell proliferation)または増殖(growth)を阻害する。いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、コドリツズマブ(codrituzumab)である。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体としては、細胞傷害性物質とコンジュゲートしている1G12抗体(WO2003/100429)(BioMosaics Inc.によってカタログ番号B0134Rの下で販売される)を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(WO2007/137170)を挙げることができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、WO2006/006693またはWO2007/047291に記載されるヒト化抗GPC3抗体である。
【0141】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、WO2006/006693またはWO2009/041062に記載されたヒト化抗GPC3抗体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含むヒト化抗GPC3抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3を含み、さらに
(i)HVR-H1配列は、DYSMH(配列番号34)であり、
(ii)HVR-H2配列は、WINTETGEPTYADDFKG(配列番号35)であり、
(iii)HVR-H3配列は、LY(配列番号36)であり、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含み、さらに
(i)HVR-L1配列は、KSSQSLLHSDGKTFLN(配列番号37)であり、
(ii)HVR-L2配列は、LVSRLDS(配列番号38)であり、
(iii)HVR-L3配列は、CQGTHFPRT(配列番号39)である。
特定の態様では、抗GPC3抗体は、ヒト化されている。ヒト化抗GPC3抗体は、ヒト化の鋳型として、配列番号40によって表される重鎖フレームワーク配列または配列番号41によって表される軽鎖フレームワーク配列に対して高い配列同一性を有する適切に選択されたヒトフレームワーク配列を使用して調製され得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗GPC3キメラ抗体またはヒト化抗GPC3抗体が本明細書において提供され、ここで、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3を含み、さらに
(i)HVR-H1配列は、DYEMH(配列番号42)であり、
(ii)HVR-H2配列は、ALDPKTGDTAYSQKFKG(配列番号43)であり、
(iii)HVR-H3配列は、FYSYTY(配列番号44)であり、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含み、さらに、
(i)HVR-L1配列は、RSSQSLVHSNRNTYLH(配列番号45)であり、
(ii)HVR-L2配列は、KVSNRFS(配列番号46)であり、
(iii)HVR-L3配列は、SQNTHVPPT(配列番号47)である。
ヒト化抗GPC3抗体は、ヒト化の鋳型として、配列番号48によって表される重鎖フレームワーク配列または配列番号49によって表される軽鎖フレームワーク配列に対して高い配列同一性を有する適切に選択されたヒトフレームワーク配列を使用して調製され得る。
【0143】
さらなる実施形態では、第2の抗体が結合し得るエピトープと結合可能であり、前記の第2の抗体が、
重鎖および軽鎖可変領域配列を含み、ここで、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3を含み、さらに
(i)HVR-H1配列は、DYEMH(配列番号42)であり、
(ii)HVR-H2配列は、ALDPKTGDTAYSQKFKG(配列番号43)であり、
(iii)HVR-H3配列は、FYSYTY(配列番号44)であり、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含み、さらに、
(i)HVR-L1配列は、RSSQSLVHSNRNTYLH(配列番号45)であり、
(ii)HVR-L2配列は、KVSNRFS(配列番号46)であり、
(iii)HVR-L3配列は、SQNTHVPPT(配列番号47)である、
ヒト化抗GPC3抗体が、本明細書において提供される。
【0144】
さらなる実施形態では、配列番号50によって表される重鎖可変領域の群から選択される重鎖可変領域および配列番号51によって表される軽鎖可変領域を含むヒト化抗GPC3抗体が提供される。さらなる代替非制限態様では、配列番号50によって表される重鎖可変領域の群から選択される重鎖可変領域および配列番号52によって表される軽鎖可変領域の群から選択される軽鎖可変領域を含むヒト化抗GPC3抗体が提供される。
【0145】
さらなる実施形態では、配列番号53によって表される重鎖可変領域および配列番号54によって表される軽鎖可変領域を含むヒト化抗GPC3抗体が提供される。
【0146】
本発明の抗GPC3抗体の代替の例として、細胞傷害性活性を有する抗GPC3抗体が挙げられる。本発明では、細胞傷害性活性の限定されない例として、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性または抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)活性、補体依存性細胞傷害性(CDC)活性およびT細胞をベースとする細胞傷害性活性が挙げられる。本発明では、CDC活性は、補体系によって引き起こされる細胞傷害性活性を意味する。他方、ADCC活性は、標的細胞の細胞膜上に発現された膜分子と結合可能な抗原結合ドメインを含む抗原結合分子のFc領域との、免疫細胞上に発現されたFcγ受容体を介した免疫細胞の結合によって、例えば、免疫細胞によって標的細胞を損傷する活性を意味する。対象の抗原結合分子が、ADCC活性を有するか、またはCDC活性を有するか否かは、当技術分野で公知の方法によって決定され得る(例えば、Current protocols in Immunology,Chapter 7.Immunologic s
tudies in humans、Coligan等.,ed.(1993))。
【0147】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GPC3抗体の代替の例として、細胞傷害性物質とコンジュゲートしている抗GPC3抗体が挙げられる。このような抗GPC3抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、例えば、WO2007/137170において具体的に開示されているが、本発明のコンジュゲートは、そこに記載されるものに限定されない。具体的には、細胞傷害性物質は、以下に列挙された化学療法薬のいずれかであり得るか、またはAlley等(Curr.Opin.Chem.Biol.(2010) 14、529-537)もしくはWO2009/140242において開示される化合物であり得る。抗原-結合分子は、適切なリンカーなどを介してこれらの化合物とコンジュゲートしている。
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GPC3抗体の代替の例として、Fcγ受容体に対する天然ヒトIgGのFc領域の結合活性よりも高い、Fcγ受容体に対する結合活性を有するFcγR結合が改変されたFc領域を含む抗GPC3抗体が挙げられる。改変は、得られたFc領域が、Fcγ受容体に対する天然ヒトIgG Fc領域の結合活性よりも高い、Fcγ受容体に対する結合活性を有する限り、任意の位置でのアミノ酸修飾を含み得る。抗原結合分子が、ヒトFc領域としてヒトIgG1 Fc領域を含有する場合には、改変は、好ましくは、Fc領域が、位置297(EU番号付け)と結合している糖鎖として、フコース含有糖鎖を含有することを可能にし、Fcγ受容体に対する天然ヒトIgG Fc領域の結合活性よりも高い、Fcγ受容体に対する結合活性をもたらすために有効である。このようなアミノ酸改変は、例えば、国際公開公報番号WO2007/024249、WO2007/021841、WO2006/031370、WO2000/042072、WO2004/029207、WO2004/099249、WO2006/105338、WO2007/041635、WO2008/092117、WO2005/070963、WO2006/020114、WO2006/116260、WO2006/023403およびWO2014/097648において報告されている。
【0149】
いくつかの実施態様では、本発明によって提供される抗GPC3抗体中に含有されるFc領域としてはまた、高い割合のフコース欠損糖鎖がFc領域と結合するか、または高い割合の二分N-アセチルグルコサミンがFc領域と結合する糖鎖の組成においてFc領域に加えられるように改変されたFc領域を含み得る。WO2006/046751およびWO2009/041062は、高い割合のフコース欠損糖鎖がFc領域と結合するか、または高い割合の二分N-アセチルグルコサミンが、Fc領域と結合する糖鎖の組成においてFc領域に加えられるように改変されたFc領域を含む抗GPC3抗体の特定の実施例を開示する。
【0150】
いくつかの実施態様では、本発明において使用され得る抗GPC3抗体として、アミノ酸残基がその等電点(pI)を変更するように改変された抗GPC3抗体が挙げられる。抗GPC3抗体における「アミノ酸残基の電荷の変更」の好ましい実施例は、WO2009/041062に記載されている。
【0151】
いくつかの実施態様では、抗GPC3抗体は、抗GPC3抗体の一次構造を構成するポリペプチドの翻訳後修飾を受けている抗体の修飾された形態を含む。ポリペプチドの翻訳後修飾とは、ポリペプチド生合成の際に翻訳されたポリペプチドに与えられる化学修飾を指す。例えば、N末端グルタミンのピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を受けている抗GPC3抗体もまた、当然のことながら、本発明の抗GPC3抗体中に含まれる。また、例えば、2個の硫黄原子間で形成される共有結合を意味する「ジスルフィド結合」によって連結している重鎖および軽鎖または重鎖を含む翻訳後修飾された抗GPC3抗体も、本発明の抗GPC3抗体中に含まれる。アミノ酸システイン中に含有されるチオール基は、ジスルフィド結合を形成し得るまたは第2のチオール基と架橋し得る。一般に、IgG分子において、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合によって連結され、重鎖を構成する2つのポリペプチドは、EU番号付けに基づいて位置226および229のシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結される。ジスルフィド結合によるこのような連結を有する翻訳後修飾された抗GPC3抗体もまた、本発明の抗GPC3抗体中に含まれる。
【0152】
なおさらなる実施態様では、本明細書に記載される抗体のいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施態様では、核酸は、これまでに記載された抗GPC3抗体のいずれかをコードする核酸の発現に適したベクターをさらに含む。なおさらなる特定の態様では、ベクターは、核酸の発現に適した宿主細胞中にある。なおさらなる特定の態様では、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。なおさらなる特定の態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0153】
抗体またはその抗原結合断片は、例えば、発現に適した形態のこれまでに記載された抗GPC3抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を含有する宿主細胞を、このような抗体または断片を製造するのに適した条件下で培養することおよび抗体または断片を回収することを含むプロセスによって、当技術分野で公知の方法を使用して製造され得る。
【0154】
[IV.抗体調製]
本明細書に記載される抗体は、抗体を生成するために当該技術分野で利用可能な技術を使用して調製され、その例示的な方法は、以下のセクションに、より詳細に記載されている。
【0155】
この抗体は、目的の抗原(即ち、PD-L1(例えばヒトPD-L1)またはGPC3(例えばヒトグリピカン3))に対するものである。好ましくは、この抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物へのこの抗体の投与は、その哺乳動物において治療的利益を生じ得る。
【0156】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8Mから10-13M、例えば、10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0157】
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイによって記載されるように、Fabバージョンの目的の抗体およびその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、標識されていない抗原の滴定系列の存在下で、最小濃度の(125I)標識された抗原によってFabを平衡化し、次いで、抗Fab抗体でコートされたプレートを用いて結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen等、J.Mol.Biol.293:865~881(1999)を参照のこと)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)が、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コートされ、引き続いて、室温(およそ23℃)で2から5時間にわたってPBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンでブロッキングされる。非吸着剤プレート(Nunc#269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]-抗原が、目的のFabの希釈系列と混合される。次いで、目的のFabは、一晩インキュベートされる;しかし、このインキュベーションは、平衡化が達成されることを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)にわたって継続し得る。その後、この混合物は、室温でのインキュベーション(例えば1時間にわたる)のために、捕捉プレートに移される。次いで、溶液が除去され、プレートが、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))で8回洗浄される。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MICROSCINT-20(商標);Packard)が添加され、プレートは、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で10分間計数される。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度は、競合的結合アッセイにおける使用のために選択される。
【0158】
ある実施形態によれば、Kdは、約10反応単位(RU)で、固定化されている抗原CM5チップと共に25℃でBIACORE(商標)-2000またはBIACORE(商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給業者の指示書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位(RU)のカップリングされたタンパク質を達成するために、5μl/分の流速での注入前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/ml(約0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、1Mエタノールアミンが、未反応の基をブロッキングするために注入される。反応速度論的な測定のため、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を有するPBS(PBST)中2倍希釈系列のFab(0.78nMから500nM)が、およそ25μl/分の流速で25℃で注入される。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、会合および解離センサーグラムを同時にフィットさせることによって、単純な一対一Langmuir結合モデル(BIACORE(商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して計算される。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算される。例えば、Chen等、J.Mol.Biol.293:865~881(1999)を参照のこと。会合速度(on-rate)が、上記表面プラズモン共鳴アッセイによって106-1-1を超える場合、この会合速度(on-rate)は、ストップフロー搭載分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定した場合、漸増濃度の抗原の存在下で、PBS、pH7.2中の20nM抗抗原抗体(Fab形態)の、25℃における蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、16nm帯域通過)における増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用することによって、決定され得る。
【0159】
(i)抗体断片
抗体断片は、伝統的手段、例えば酵素的消化によって、または組換え技術によって、生成され得る。ある特定の状況では、抗体全体ではなく抗体断片を使用することに利点がある。より小さいサイズの断片は、迅速なクリアランスを可能にし、固形腫瘍への改善されたアクセスをもたらし得る。特定の抗体断片の概説については、Hudson等(2003)Nat.Med.9:129~134を参照のこと。
【0160】
種々の技術が、抗体断片の産生のために開発されてきた。伝統的には、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化を介して誘導された(例えば、Morimoto等、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107~117(1992);およびBrennan等、Science、229:81(1985)を参照のこと)。しかし、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞によって直接産生され得る。Fab、FvおよびScFv抗体断片は全て、E.coli中で発現され得、E.coliから分泌され得、したがって、大量のこれらの断片の容易な産生を可能にする。抗体断片は、上で議論した抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され得、F(ab’)2断片を形成するために化学カップリングされ得る(Carter等、Bio/Technology 10:163~167(1992))。ある手法によれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、増加したインビボ半減期を有するFabおよびF(ab’)2断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技術は、熟練の施術者に明らかである。特定の実施形態では、抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;および米国特許第5,587,458号を参照のこと。FvおよびscFvは、定常領域を欠く、インタクトな結合部位を有する唯一の種である;したがって、これらは、インビボでの使用の間の低減された非特異的結合に適切であり得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにおいて、エフェクタータンパク質の融合を生じるように、構築され得る。Antibody Engineering、編Borrebaeck、上記を参照のこと。この抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号などに記載される、「直鎖状抗体」でもあり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0161】
(ii)単一ドメイン抗体
一部の実施形態では、本発明の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む単一ポリペプチド鎖である。特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.;例えば、米国特許第6,248,516号を参照のこと)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部分からなる。
【0162】
(iii)抗体バリアント
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列改変(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物特性を改善することが望まれ得る。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって、調製され得る。かかる改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、および/またはかかるアミノ酸配列中への残基の挿入、および/またはかかるアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。欠失、挿入および置換の任意の組合せが、最終コンストラクトが所望の特性を有することを条件として、最終コンストラクトに到達するために行われ得る。アミノ酸の変更は、配列が作製された時点で、対象抗体アミノ酸配列中に導入され得る。
【0163】
(iv)置換、挿入および欠失バリアント
特定の実施形態では、1以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異導入のための目的の部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換は、表1中に、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表1中に、「例示的置換」の見出しの下に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、産物が、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングされ得る。
【0164】
【表2】
【0165】
アミノ酸は、共通する側鎖特性に従ってグループ分けされ得る:
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0166】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0167】
1つの型の置換バリアントには、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1以上の超可変領域残基を置換することが関与する。一般に、さらなる研究のために選択される得られたバリアント(複数可)は、親抗体と比較して、特定の生物特性(例えば、増加した親和性、低減された免疫原性)における改変(例えば、改善)を有し、および/または親抗体の特定の生物特性を実質的に保持している。例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して簡便に生成され得る、親和性成熟抗体である。簡潔に述べると、1以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0168】
変更(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVR中に行われ得る。かかる変更は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.207:179~196(2008)を参照のこと)、および/またはSDR(a-CDR)において作製され得、得られたバリアントのVHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築しそこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom等、Methods in Molecular Biology 178:1~37(O’Brien等編、Human Press、Totowa、NJ、(2001))中に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態では、多様性が、種々の方法のいずれか(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリングまたはオリゴヌクレオチド特異的変異導入法)によって、成熟のために選択された可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリーが創出される。次いで、このライブラリーは、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法には、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4-6残基)がランダム化される、HVRに向けた手法を含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入またはモデル化を使用して、具体的に同定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3が標的化される場合が多い。
【0169】
特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、かかる変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1以上のHVR内で生じさせ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVR中に作製され得る。かかる変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側であり得る。上に提供されるバリアントVHおよびVL配列の特定の実施形態では、各HVRのいずれかは未変更であるか、または1、2もしくは3以下のアミノ酸置換を含む。
【0170】
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域の同定のための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989)Science、244:1081~1085に記載されるように、「アラニンスキャニング変異導入法」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響されるかどうかを決定するために、標的残基(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lysおよびglu)の残基または基が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置において導入され得る。あるいは、またはさらに、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基および隣接残基は、置換のための候補として、標的化または排除され得る。バリアントは、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するために、スクリーニングされ得る。
【0171】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPTについて)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの、抗体のN末端またはC末端への融合が挙げられる。
【0172】
(v)グリコシル化バリアント
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1以上のグリコシル化部位が創出または除去されるように、アミノ酸配列を変更することによって、簡便に達成され得る。
【0173】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が変更され得る。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-結合によって一般に結合された、分枝状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright等 TIBTECH 15:26~32(1997)を参照のこと。このオリゴ糖には、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトースおよびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。一部の実施形態では、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを創出するために、行われ得る。
【0174】
一実施形態では、Fc領域を含む抗体バリアントが提供され、ここで、Fc領域に結合した炭水化物構造は、ADCC機能を改善し得るフコースが低減されている、またはフコースを欠く。具体的には、野生型CHO細胞において産生された同じ抗体上のフコースの量と比較して低減されたフコースを有する抗体が、本明細書で企図される。即ち、これらは、別のやり方で、天然CHO細胞(例えば、天然グリコシル化パターンを生じるCHO細胞、例えば、天然FUT8遺伝子を含むCHO細胞)によって産生される場合に有するフコースよりも低い量のフコースを有することによって特徴付けられる。特定の実施形態では、この抗体は、その上のN-結合グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%または5%未満がフコースを含む抗体である。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%から80%まで、1%から65%まで、5%から65%まで、または20%から40%までであり得る。特定の実施形態では、この抗体は、その上のN-結合グリカンのいずれもがフコースを含まない抗体であり、即ち、ここで、この抗体は、完全にフコースがない、またはフコースを有さない、またはアフコシル化されている。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析によって測定される場合、Asn297に結合した全ての糖構造体(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)の合計に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって、決定される。Asn297とは、Fc領域中の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指す;しかし、Asn297は、抗体における軽微な配列差異に起因して、297位の約±3アミノ酸上流または下流、即ち、294位と300位との間にも位置し得る。かかるフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関する刊行物の例には、以下が含まれる:US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki等 J.Mol.Biol.336:1239~1249(2004);Yamane-Ohnuki等 Biotech.Bioeng.87:614(2004)。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例としては、以下が挙げられる:タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka等 Arch.Biochem.Biophys.249:533~545(1986);米国特許公開第2003/0157108号、Presta,L;およびWO2004/056312、Adams等、特に、実施例11)、およびノックアウト細胞株、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki等 Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.等、Biotechnol.Bioeng.、94(4):680~688(2006);およびWO2003/085107を参照のこと)。
【0175】
抗体バリアントには、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分された、二分枝されたオリゴ糖が、さらに提供される。かかる抗体バリアントは、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet等);米国特許第6,602,684号(Umana等);米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana等)、およびFerrara等、Biotechnology and Bioengineering、93(5):851~861(2006)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントもまた、提供される。かかる抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087(Patel等);WO1998/58964(Raju,S.);およびWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0176】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるFc領域を含む抗体バリアントは、FcγRIIIに結合することが可能である。特定の実施形態では、本明細書に記載されるFc領域を含む抗体バリアントは、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCC活性を有する、またはヒト野生型IgG1 Fc領域を含む他の点では同じ抗体と比較して、ヒトエフェクター細胞の存在下で増加したADCC活性を有する。
【0177】
(vi)Fc領域バリアント
特定の実施形態では、1以上のアミノ酸改変が、本明細書で提供される抗体のFc領域中に導入され得、それによって、Fc領域バリアントを生成する。このFc領域バリアントは、1以上のアミノ酸位置においてアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域)を含み得る。
【0178】
特定の実施形態では、本発明は、いくつかの、しかし全てではないエフェクター機能を有する抗体バリアントを企図し、これにより、かかる抗体バリアントは、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば、補体およびADCC)が不要または有害である応用のための、望ましい候補になる。インビトロおよび/またはインビボの細胞傷害性アッセイが、CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認するために実施され得る。例えば、抗体が、FcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能を保持することを確実にするために、Fc受容体(FcR)結合アッセイが実施され得る。ADCCを媒介するための初代細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol.9:457~492(1991)のp464の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.等 Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059~7063(1986)を参照のこと)およびHellstrom,I等、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499~1502(1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.等、J.Exp.Med.166:1351~1361(1987)を参照のこと)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法が使用され得る(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性の細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、CA;およびCytoTox 96(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照のこと)。かかるアッセイのために有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等 Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652~656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて、インビボで評価され得る。C1q結合アッセイもまた、抗体がC1qを結合することができず、したがってCDC活性を欠くことを確認するために、実施され得る。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro等、J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.等、Blood 101:1045~1052(2003);ならびにCragg,M.S.およびM.J.Glennie、Blood 103:2738~2743(2004)を参照のこと)。FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期の決定もまた、当該技術分野で公知の方法を使用して実施され得る(例えば、Petkova,S.B.等、Int’l.Immunol.18(12):1759~1769(2006)を参照のこと)。
【0179】
低減されたエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327および329のうち1以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFcバリアントには、残基265および297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fcバリアントを含む、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうち2つ以上において置換を有するFcバリアントが含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0180】
FcRへの改善または減退された結合を有する特定の抗体バリアントが記載されている(例えば、米国特許6,737,056号;WO2004/056312およびShields等、J.Biol.Chem.9(2):6591~6604(2001)を参照のこと)。
【0181】
特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位および/または334位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。例示的な一実施形態では、そのFc領域中に以下のアミノ酸置換を含む抗体:S298A、E333AおよびK334A。
【0182】
一部の実施形態では、変更された(即ち、改善された、または減退された、のいずれかの)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を生じる変更が、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642およびIdusogie等 J.Immunol.164:4178~4184(2000)に記載されるように、Fc領域中になされる。
【0183】
増加した半減期、および胎児への母体IgGの移行を担う新生児Fc受容体(FcRn)(Guyer等、J.Immunol.117:587(1976)およびKim等、J.Immunol.24:249(1994))に対する改善された結合を有する抗体は、US2005/0014934号(Hinton等)に記載されている。これらの抗体は、その中にFcRnへのFc領域の結合を改善する1以上の置換を有するFc領域を含む。かかるFcバリアントには、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうち1以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7,371,826号)。Fc領域バリアントの他の例については、DuncanおよびWinter、Nature 322:738~40(1988);米国特許5,648,260号;米国特許5,624,821号;ならびにWO94/29351もまた参照のこと。
【0184】
(vii)抗体誘導体
本発明の抗体は、当該技術分野で公知であり、容易に入手可能なさらなる非タンパク質性部分を含むように、さらに改変され得る。特定の実施形態では、抗体の誘導体化に適切な部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダム共重合体のいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコール(propropylene glycol)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造における利点を有し得る。このポリマーは、任意の分子量のものであり得、分枝状または非分枝状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は、変動し得、1つよりも多いポリマーが結合している場合、それらは、同じまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または型は、特に限定されないが、改善すべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定された条件下で療法に使用されるかどうかなどを含む検討に基づいて、決定され得る。
【0185】
(viii)ベクター、宿主細胞および組換え方法
抗体は、組換え方法を使用しても産生され得る。抗抗原抗体の組換え産生のために、抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定され得る。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分としては、一般に、特に限定されないが、シグナル配列、複製開始点、1以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列のうち1以上が挙げられる。
【0186】
(ix)生物学的に活性な抗体を選択する
上記のように産生された抗体は、治療展望から有益な特性を有する抗体を選択するため、または抗体の生物活性を保持する製剤もしくは条件を選択するために、1以上の「生物活性」アッセイに供され得る。抗体は、その抗体が惹起された抗原に結合するその能力について試験され得る。例えば、当該技術分野で公知の方法(例えば、ELISA、ウェスタンブロットなど)が使用され得る。
【0187】
例えば、抗PD-L1抗体について、抗体の抗原結合特性は、PD-L1に結合する能力を検出するアッセイにおいて評価され得る。一部の実施形態では、抗体の結合は、例えば、飽和結合;ELISA;および/または競合アッセイ(例えば、RIA)によって決定され得る。また、抗体は、例えば、治療剤としてのその効率を評価するために、他の生物活性アッセイに供され得る。かかるアッセイは、当該技術分野で公知であり、標的抗原および抗体についての目的の使用に依存する。例えば、抗体によるPD-L1遮断の生物学的効果は、例えば、米国特許第8,217,149号に記載されるように、CD8+T細胞、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)マウスモデルおよび/または同系腫瘍モデルにおいて評価され得る。
【0188】
目的の抗原上の特定のエピトープに結合する抗体(例えば、PD-L1への例の抗PD-L1抗体の結合をブロックするもの)についてスクリーニングするために、常套的クロスブロッキングアッセイ、例えば、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されるものが、実施され得る。あるいは、例えば、Champe等、J.Biol.Chem.270:1388~1394(1995)に記載されるようなエピトープマッピングが、目的のエピトープに抗体が結合するかどうかを決定するために実施され得る。
【0189】
[V.医薬組成物および製剤]
併用療法のための医薬組成物および製剤
また、有効成分としてPD-1系結合アンタゴニスト(抗PD-L1抗体など)および/またはGPC3標的化療法(抗GPC3抗体など)ならびに医薬上許容される担体を含む医薬組成物および製剤も本明細書で提供される。
【0190】
本明細書に記載される「組合せ」とは、併用のための有効成分の組合せを指し、投与の際に組合せ中に別個の物質が使用されるか、またはそれらが混合物(配合剤)として提供される両方の様式を含む。
【0191】
本明細書において記載されるような「併用療法」とは、個体に1種より多い有効成分を一緒に投与することを指し、投与の際に別個の物質が組み合わせ中で使用される、またはそれらが混合物(組合せ調製物)として提供される両様式を含む。特定の実施形態では、併用療法は、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法である。ある実施形態では、併用療法は、1種またはそれより多い二次有効成分、例えば、本明細書において記載されるような化学療法薬を含んでもよい。併用療法は、特定の投与レジメン、例えば、以下に記載されるようなものに従って実施され得る。
【0192】
本明細書に記載されるような医薬組成物および製剤は、所望の程度の純度を有する活性成分(例えば、抗PD-L1抗体および/または抗GPC3抗体)を、1以上の添加されてもよい薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol,A.編(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製され得る。薬学的に許容される担体は、一般に、使用される投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、特に限定されないが、バッファー、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンザルコニウムクロライド;ベンゼトニウムクロライド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;グルコース、マンノースまたはデキストリンなどの、単糖類、二糖類および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体としては、間質性薬物分散剤、例えば、可溶型中性-活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶型PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(商標)、Baxter International,Inc.)がさらに挙げられる。rHuPH20を含む、特定の例示的sHASEGPおよび使用の方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および米国特許出願公開第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、1以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと組み合わされる。
【0193】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、ヒスチジンアセテートバッファーを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、約60mg/mLの濃度の抗体、約20mMの濃度のヒスチジンアセテート、約120mMの濃度のショ糖、および0.04%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤中にあり、この製剤は、約5.8のpHを有する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、約125mg/mLの濃度の抗体、約20mMの濃度のヒスチジンアセテート、約240mMの濃度のショ糖、および0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤中にあり、この製剤は、約5.5のpHを有する。
【0194】
本明細書の組成物および製剤は、治療されている特定の適応症にとって必要な場合には1つよりも多い活性成分、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的活性を有するもの、もまた含み得る。かかる活性成分は、意図した目的のために有効な量で組合せ中に適切に存在する。
【0195】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に、封入され得る。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol,A.編(1980)に開示されている。
【0196】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は、一般に滅菌である。無菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を介した濾過によって、容易に達成され得る。
【0197】
併用療法の投与レジメン
本開示では、投薬量(用量)は、固定用量(mg/個体)によって表すだけではなく、患者個体あたりの算出された用量に対応する体重に関して算出された用量(mg/kg)で表されることもある。
【0198】
ある特定の実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストの投薬量は、1回以上の投与によるか否かに関わらず、約0.01~約50mg/患者の体重1kgの範囲となる。一部の実施形態では、使用される抗体は、例えば、毎日投与される約0.01から約45mg/kg、約0.01から約40mg/kg、約0.01から約35mg/kg、約0.01から約30mg/kg、約0.01から約25mg/kg、約0.01から約20mg/kg、約0.01から約15mg/kg、約0.01から約10mg/kg、約0.01から約5mg/kgまたは約0.01から約1mg/kgである。一部の実施形態では、この抗体は、15mg/kgで投与される。しかし、他の投薬レジメンが有用であり得る。一実施形態では、本明細書において記載される抗PD-L1抗体は、21日サイクルのうち1日目に約100mg~約1400mgまたは約1000mg~約1400mg、例えば、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mgまたは約1400mgの用量でヒトに投与される。この用量は、点滴など、単一用量または複数用量(例えば、2または3用量)として投与され得る。併用治療で投与される抗体の用量は、単一治療と比較して低減され得る。この療法の進行は、従来の技術によって容易にモニタリングされる。
【0199】
ある特定の実施形態では、本発明のGPC3標的化剤の投薬量は、患者において所定のレベルと等しい血中トラフレベルかそれより高い血中トラフレベルを達するように決定され得る。血中トラフレベルの好ましい例として、150mg/mL以上、160mg/mL以上、170mg/mL以上、180mg/mL以上、190mg/mL以上、200mg/mL以上、210mg/mL以上、220mg/mL以上、230mg/mL以上、240mg/mL以上、250mg/mL以上、260mg/mL以上、270mg/mL以上、280mg/mL以上、290mg/mL以上、300mg/mL以上および400mg/mL以上を挙げることができる。そのより好ましい例として、200mg/mL以上を挙げることができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法の投与レジメンは、負荷期間および維持期間を含み得る。いくつかの実施形態では、負荷期間内にGPC3標的化剤のみまたはPD-1系結合剤およびGPC3標的化剤の両方が投与される。いくつかの実施形態では、負荷期間内にPD-1系結合剤およびGPC3標的化剤の両方が投与される。
【0201】
いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法の投与レジメンは、(i)GPC3標的化剤が投与される負荷期間と、それに続く(ii)PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が投与される維持期間を含み得る。ある実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法の投与レジメンは、維持期間のみを含み得る。適当な投与レジメンは、有効性および/または安全性などの複数の因子を考慮することによって決定され得る。また、投与レジメンは、併用療法の有効性および安全性を損なわない限り、患者の便宜を考慮することによって決定され得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、GPC3標的化剤を含む医薬組成物または製剤は、負荷期間内に100mg~2,500mg/個体、好ましくは、500mg~2,000mg/個体、1,000mg~2,000mg/個体、1,300mg~1,900mg/個体、1,400mg~1,800mg/個体、1,500mg~1,700 mg/個体の用量でがんを有する個体に静脈内または皮下投与される。最も好ましい実施形態では、GPC3標的化剤を含む医薬組成物または製剤は、負荷期間内で1,600mg/個体の用量で1回以上、静脈内または皮下投与される。疑義を避けるために、例えば、記述「100mg~2,500mg/個体」は、100mgおよび2,500mg/個体内に含まれるすべての投薬量が、0.1mg/個体、例えば、100mg/個体、100.1mg/個体、100.2mg/個体、100.3mg/個体、...2499.8mg/個体、2499.9mg/個体および2,500mg/個体のバリエーションで本明細書において具体的に、個々に列挙されることを意味するように意図されることを明記する。
【0203】
いくつかの実施形態では、負荷期間内の最後の用量の投与は、維持期間内最初の用量の投与から、時間的に、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、1週間以上または2週間以上離れている。好ましくは、負荷期間内の最後の用量の投与は、維持期間内最初の用量の投与から、時間的に、2日、3日または4日、好ましくは、3日離れている。いくつかの実施形態では、GPC3標的化剤抗体は、負荷期間とそれに続く維持期間内で1回、2回、3回以上投与される。ある実施形態では、負荷期間は、3週間以内、好ましくは、2週間以内、より好ましくは、1週間以内である。最も好ましい実施形態では、負荷期間は、1週間であり、GPC3標的化剤は、負荷期間とそれに続く維持期間内で2回投与される。負荷期間内の投与間隔は、必要に応じて例えば、1日、2日、3日、4日、5日または6日と決定され得る。好ましくは、負荷期間内の投与間隔は、3日または4日、より好ましくは、3日である(すなわち、GPC3標的化剤は、負荷期間内の1日目、4日目、8日目、...に投与される)。
【0204】
いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストを含む医薬組成物または製剤はGPC3標的化剤と併用してがんを有する個体に投与され、維持期間内に100mg~2,000mg/個体、好ましくは、900mg~1,500mg/個体、1,000mg~1,400mg/個体、1,100mg~1,300mg/個体の用量で静脈内または皮下投与される。最も好ましい実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストを含む医薬組成物または製剤はGPC3標的化剤と併用して投与され、維持期間内に1,200mg/個体の用量で静脈内または皮下に投与される。疑義を避けるために、例えば、記述「100mg~2,000mg/個体」は、100mgおよび2,000mg/個体内に含まれるすべての投薬量が、0.1mg/個体、例えば、100mg/個体、100.1mg/個体、100.2mg/個体、100.3mg/個体、...1999.8mg/個体、1999.9mg/個体および2,000mg/個体のバリエーションで本明細書において具体的に、個々に列挙され、有することを意味するように意図されることを明記する。
【0205】
いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストを含む医薬組成物または製剤はGPC3標的化剤と併用してがんを有する個体に投与され、維持期間内に3~42日の投与間隔(投与の間の間隔)で静脈内または皮下投与される。静脈内または皮下注射の適当な投与間隔は、個体の状態に従って範囲内で決定され得る。静脈内または皮下注射の具体的な投与間隔は、3日、4日、5日、6日、7日(1週間)、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日(2週間)、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日(3週間)、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日(4週間)、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日(5週間)、36日、37日、38日、39日、40日、41日または42日(6週間)である。好ましい実施形態では、投与間隔は、4日~35日(5週間)である。さらなる好ましい実施形態では、投与間隔は、5日~31日または1カ月である。最も好ましい実施形態では、投与間隔は、21日(3週間)である。
【0206】
いくつかの実施形態では、GPC3標的化剤を含む医薬組成物または製剤は、PD-1系結合アンタゴニストと併用してがんを有する個体に投与され、維持期間内に100mg~2,500mg/個体、好ましくは、500mg~2,000mg/個体、1,000mg~2,000mg/個体、1,300mg~1,900mg/個体、1,400mg~1,800mg/個体、1,500mg~1,700mg/個体の用量で静脈内または皮下投与される。最も好ましい実施形態では、GPC3標的化剤を含む医薬組成物または製剤は、PD-1系結合アンタゴニストと併用して投与され、維持期間内に1,600mg/個体の用量で静脈内または皮下投与される。疑義を避けるために、例えば、記述「100mg~2,500mg/個体」は、100mgおよび2,500mg/個体内に含まれるすべての投薬量が、0.1mg/個体、例えば、100mg/個体、100.1mg/個体、100.2mg/個体、100.3mg/個体、...2499.8mg/個体、2499.9mg/個体および2,500mg/個体のバリエーションで本明細書において具体的に、個々に列挙されることを意味するように意図されることを明記する。
【0207】
いくつかの実施形態では、GPC3標的化剤を含む医薬組成物または製剤は、PD-1系結合アンタゴニストと併用してがんを有する個体に投与され、維持期間内に3~42日の投与間隔(投与の間の間隔)で静脈内または皮下投与される。静脈内または皮下注射の適当な投与間隔は、個体の状態に従って範囲内で決定され得る。静脈内または皮下注射の具体的な投与間隔は、3日、4日、5日、6日、7日(1週間)、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日(2週間)、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日(3週間)、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日(4週間)、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日(5週間)、36日、37日、38日、39日、40日、41日または42日(6週間)である。好ましい実施形態では、投与間隔は、4日~35日(5週間)である。さらなる好ましい実施形態では、投与間隔は、5日~31日または1カ月である。最も好ましい実施形態では、投与間隔は、7日(1週間)または21日(3週間)である。
【0208】
一実施形態では、
(i)負荷期間は、1週間または2週間であり、負荷期間内に投与されるGPC3標的化剤の総量は、およそ1,600mg/個体~およそ4,800mg/個体であり、
(ii)PD-1系結合アンタゴニストが、1,200mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、1,600mg/個体の用量で1週間に1回または3週間に1回投与される維持期間が続く。
【0209】
一実施形態では、
(i)負荷期間は2週間であり、GPC3標的化剤は、1,600mg/個体の用量で負荷期間内に投与され、
(ii)PD-1系結合アンタゴニストが、1,200mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、1回1,600mg/個体の用量で1週間に1回または3週間に投与される維持期間が続く。
【0210】
一実施形態では、
(i)負荷期間は1週間であり、GPC3標的化剤が1,600mg/個体の用量で負荷期間内に2回投与され、
(ii)PD-1系結合アンタゴニストが、1,200mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、1,600mg/個体の用量で1週間に1回または3週間に1回投与される維持期間が続く。
【0211】
一実施形態では、
(i)負荷期間は1週間であり、GPC3標的化剤が1,600mg/個体の用量で負荷期間内に3回投与され、
(ii)PD-1系結合アンタゴニストが、1,200mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、1,600mg/個体の用量で1週間に1回または3週間に1回投与される維持期間が続く。
【0212】
一実施形態では、
(i)負荷期間は2週間であり、GPC3標的化剤が1,600mg/個体の用量で負荷期間内に3回投与され、
(ii)PD-1系結合アンタゴニストが、1,200mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、1,600mg/個体の用量で1週間に1回または3週間に1回投与される維持期間が続く。
【0213】
ある実施形態では、維持期間は、治療サイクルを含み得る。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、PD-1系結合アンタゴニストが3週間に1回(すなわち、1治療サイクル中、1回)投与され、GPC3標的化剤が1週間に1回(すなわち、1治療サイクル中、3回)投与される3週間サイクルである。3週間治療サイクルは、例えば、部分もしくは完全腫瘍奏効、腫瘍の縮小または腫瘍の消失を達成するために必要なだけ反復されてもよい。
【0214】
最も好ましい実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤は、表3または表4に記載されるように投与される。
【0215】
【表3】
【0216】
【表4】
【0217】
一実施形態では、維持期間のみがある。維持期間の間に、PD-1系結合アンタゴニストが、1,200mg/個体の用量で3週間に1回投与され、GPC3標的化剤が、1,600mg/個体の用量で1週間に1回または3週間に1回投与される。
【0218】
ある実施形態では、維持期間のみがある。維持期間の間に、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が、3週間治療サイクルに従って投与され、その中では、PD-1系結合アンタゴニストが3週間に1回(すなわち、1治療サイクル中、1回)投与され、GPC3標的化剤が1週間に1回(すなわち、1治療サイクル中、3回)投与される。3週間治療サイクルは、例えば、部分もしくは完全腫瘍奏効、腫瘍の縮小または腫瘍の消失を達成するために必要なだけ反復されてもよい。
【0219】
いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤は、同一日に、異なる日に、逐次(異なる回で)または同時に(同じ回で)投与されてもよい。PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が同一日であるが異なる回に投与される場合、PD-1系結合アンタゴニストは、GPC3標的化剤の前に投与されてもよく、またはGPC3標的化剤は、PD-1系結合アンタゴニストの前に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストは、GPC3標的化剤とは別個の組成物中にある。いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストは、PC3標的化剤と同一組成物中にある。
【0220】
2種以上の異なるPD-1系結合アンタゴニストが利用可能であるいくつかの実施形態では、個体に投与される1種のPD-1系結合アンタゴニストは、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法の間の任意回で、別のPD-1系結合アンタゴニストに変更されてもよい。
【0221】
2種以上の異なるGPC3標的化剤が利用可能であるいくつかの実施形態では、個体に投与される1種のGPC3標的化剤は、負荷期間の間であろうと、維持期間の間であろうと、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を使用する併用療法の間の任意回で、別のGPC3標的化剤に変更されてもよい。また、それぞれ負荷期間および維持期間において異なるGPC3標的化剤が使用されてもよい。
【0222】
いくつかの実施形態では、個体は、GPC3標的化剤および/またはPD-1系結合アンタゴニストの投与の前に任意の適切な前投薬を受け取ることもある。
【0223】
[VI.治療方法]
個体においてがんを治療する、予防するまたはその進行を遅延させる方法であって、個体に有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含む方法が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書において提供される投与レジメンに従って、個体にPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与することを含む。
【0224】
一部の実施形態では、この個体はヒトである。一部の実施形態では、この個体は、GPC3陽性がんを有する。一部の実施形態では、GPC3陽性がんは、肝がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、腎臓がん、食道がんまたは前立腺がんである。いくつかの実施態様では、この肝がんは、肝細胞がん腫である。一部の実施形態では、この乳がんは、乳房がんまたは乳腺がんである。一部の実施形態では、この乳房がんは、浸潤腺管がんである。一部の実施形態では、この肺がんは、肺腺がんである。一部の実施形態では、この大腸がんは、結腸直腸腺がんである。一部の実施形態では、個体中のがん細胞は、PD-L1を発現する。一部の実施形態では、個体中のがん細胞は、検出可能な(例えば、当該技術分野で公知の方法を使用して検出可能な)レベルでGPC3タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、本発明において治療されるべき個体は、GPC3タンパク質を検出可能であるレベルで発現すると決定されているものであり得る。
【0225】
PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤は、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストは、静脈内で、筋肉内で、皮下で、局所で、経口で、経皮で、腹腔内で、眼窩内で、移植により、吸入により、髄腔内で、脳室内でまたは鼻腔内で投与される。いくつかの実施形態では、GPC3標的化剤は、静脈内で、筋肉内で、皮下で、局所で、経口で、経皮で、腹腔内で、眼窩内で、移植により、吸入により、髄腔内で、脳室内でまたは鼻腔内で投与される。有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤が、疾患の予防または治療のために投与され得る。PD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化剤の適切な投薬量は、治療される疾患の型、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤の型、疾患の重症度および過程、個体の臨床状態、個体の臨床歴および治療に対する応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定され得る。
【0226】
一部の実施形態では、これらの方法は、さらなる療法をさらに含み得る。このさらなる療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘍摘出手術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または上述の組合せであり得る。このさらなる療法は、アジュバントまたはネオアジュバント療法の形態であり得る。一部の実施形態では、このさらなる療法は、低分子酵素阻害剤または抗転移剤の投与である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生および/または重症度を低下させるための目的の薬剤、例えば、抗悪心剤など)の投与である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、放射線療法である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、手術である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、放射線療法および手術の組合せである。一部の実施形態では、このさらなる療法は、ガンマ照射である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的化する療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤および/または化学防御剤である。このさらなる療法は、本明細書に記載される化学療法剤のうち1以上であり得る。
【0227】
[VII.製造品またはキット]
本発明のある実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよび/またはGPC3標的化剤を含む製造品またはキットが提供される。いくつかの実施形態では、製造品またはキットは、個体においてがんを治療するもしくはその進行を遅延させるため、またはがんを有する個体の腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するために、GPC3標的化剤と組み合わせてPD-1系結合アンタゴニストを投与するための指示を含む添付文書をさらに含む。いくつかの実施形態では、添付文書は、本明細書において提供される投与レジメンに従ってPD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤を投与するための指示を含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよびGPC3標的化剤は、同じ容器中または別々の容器中にある。適切な容器としては、例えば、ビン、バイアル、バッグおよびシリンジが挙げられる。この容器は、種々の材料、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニルまたはポリオレフィン)または金属合金(例えば、ステンレス鋼またはハステロイ)から形成され得る。一部の実施形態では、この容器は、製剤を保持し、この容器上のまたはこの容器に関連したラベルが、使用のための指示を示し得る。この製造品またはキットは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジおよび使用のための指示を伴う添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料を、さらに含み得る。一部の実施形態では、この製造品は、別の薬剤(例えば、化学療法剤および抗腫瘍剤)のうち1以上をさらに含む。1以上の薬剤に適切な容器には、例えば、ビン、バイアル、バッグおよびシリンジが含まれる。
【0229】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であるとみなされる。本明細書に示され記載されたものに加えた、本発明の種々の改変は、上述の説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲の範囲内である。本明細書で引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的のために、その全内容が本明細書に出典明示により援用される。
【実施例1】
【0230】
ヒトグリピカン-3(GPC3)を発現するマウス細胞株
マウスがん細胞株、Hepa1-6(ATCC受託番号CRL-1830)およびCT26(ATCC受託番号CRL-2638)に、FuGENE6(Roche Diagnostics Corp)を用いヒトGPC3発現ベクター、pCXND2/hGPC3(FL)[Ishiguro T.等,Cancer Res.2008;68:9832-9838]をトランスフェクトし、1mg/mLのG418(Invitrogen)を用いて選択した。G418の存在下でも増殖した細胞を集め、限界希釈によってコロニーを単離した。抗ヒトGPC3抗体、GC33[Ishiguro T.等,Cancer Res.2008;68:9832-9838]を用いたFACSによってヒトGPC3の発現を確認した。代表的なコロニーを選択し、実験に使用した。
【実施例2】
【0231】
ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおける抗GPC3抗体の抗腫瘍活性
Hepa1-6/hGPC3細胞を、インキュベーター(37℃および5% CO2に設定した)中で細胞培養フラスコを使用して培養した。細胞を、トリプシンを用いてフラスコから剥離し、10%(v/v)FBS、0.6mg/mLのG418を含有するD-MEMを用いて洗浄した。次いで、細胞をD-MEM(2×108個細胞/mL)に再懸濁し、等容量のMatrigelを添加した。移植のための細胞濃度は、1×108個細胞/mLとした。細胞を、各C57BL/6Jマウス(Charles River Laboratories Japan)の右側腹部に皮下接種した(1×107個細胞/マウス)。ひとたび、触知できる腫瘍が確立されると、動物を、各群が試験開始時に同様の平均腫瘍体積を有するように試験群にランダム化した。PBSに希釈した、1または5mg/kgのマウスGC33抗ヒトGPC3モノクローナル抗体[WO2006/006693]のいずれかまたは溶媒対照としてのPBSを、腫瘍接種後14、21および28日目に静脈内に注射した。マウスGC33は、溶媒対照と比較して、用量依存的に腫瘍増殖の阻害を示した(図1)。
【実施例3】
【0232】
ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおいて抗GPC3抗体によって誘導された病理学的変化
マウスGC33治療によるHepa1-6腫瘍組織における変化を評価するために、マウスGC33抗体または溶媒対照いずれかの単回注射から3または7日後のいずれかで単離された腫瘍組織を、病理学的検査に使用した。腫瘍組織を4%パラホルムアルデヒド(PFA)によって固定し、AMeX法[Suzuki等,J Toxicol Sci.2002;27:165-172、Watanabe等,J Toxicol Pathol.2015;28:43-49]によってパラフィン中に包埋した。3マイクロメートルパラフィン切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(HE)を用いて、または免疫組織化学的(IHC)に染色した。IHC染色は、標識ストレプトアビジン-ビオチン(LSAB)法(RTUセイヨウワサビペルオキシダーゼストレプトアビジン)に従って実施した。F4/80に対する抗体(マウスマクロファージのマーカー抗原;A3-1、BioLegend)、PD-L1に対する抗体(マウスB7-H1/PD-L1のマーカー抗原;AF1019、R&D systems)を、一次抗体として使用した。ペルオキシダーゼ-ジアミノベンジジン反応によって陽性シグナルを可視化し、切片はヘマトキシリンを用いて対比染色した。
マウスGC33注射によって、腫瘍組織の末端領域における免疫細胞浸潤および腫瘍細胞死を観察した。また、マウスGC33によって治療された腫瘍組織では、腫瘍細胞死が観察された領域におけるF4/80陽性マクロファージ細胞の浸潤の増大も観察されたが、溶媒対照を用いた場合にはF4/80陽性細胞は、主に、腫瘍組織における間質領域において観察された(図2A)。その後、溶媒対照と比較して、特に、浸潤した免疫細胞で、マウスGC33によってPD-L1発現が増大され、これは、マウスGC33によってPD-L1が誘導され、抗腫瘍活性を抑制し得ることを示唆した(図2B)。
【実施例4】
【0233】
ヒトGPC3を発現するCT26細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおける、抗GPC3抗体(GC33)および抗PD-L1抗体(10F.9G2)の併用における抗腫瘍活性
マウスCT26/hGPC3モデルにおける抗GPC3または抗PD-L1単独療法または併用の抗腫瘍活性を評価するために、1×106個のCT26/hGPC3細胞の皮下接種後、3日目(早期治療モデル)または15日目(確立されたモデル)のいずれかに、マウスGC33抗体および/または500μgの抗マウスPD-L1ラット抗体、10F.9G2(BioXCellから購入した)のいずれかを注射した。早期治療モデルでは、5または25mg/kgのマウスGC33のいずれかを、3、6、10および13日目に静脈内に注射し、500μgの抗PD-L1抗体、10F.9G2を、単独または組合せとして同一スケジュールで注射した。確立モデルでは、5または25mg/kgのマウスGC33のいずれかを、15および18日目に静脈内に注射し、500μgの抗PD-L1抗体、10F.9G2を、単独または併用として同一スケジュールで注射した。
【0234】
両モデルにおいて、25mg/kgのGC33および10F.9G2の併用が、各単独療法によるものと比較して最も強力な抗腫瘍活性を示した(図3および4)。
【実施例5】
【0235】
ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおける、抗GPC3抗体(GC33)および抗PD-L1抗体(10F.9G2)の併用における抗腫瘍活性
1、5もしくは25mg/kgのマウスGC33抗体のいずれかを週に1回で3週間、または200μgの抗マウスPD-L1ラット抗体、10F.9G2と、それに続き100μgを週に1回で2週間、単独または併用として、上記と同様のHepa1-6を有するマウスに静脈内に注射した。上記の従来法を用いて調製したHE染色切片を用いて病理学的検査を実施した。IHCについては、各マーカーについて表2に列挙された一次抗体を使用し、上記のLSAB法またはENV+法のいずれかによって可視化した。各群から3匹の代表的な動物についてIHCを実施した。
【0236】
【表5】
【0237】
マウスGC33または10F.9G2は、溶媒対照と比較して、腫瘍増殖の阻害を示したが、マウスGC33および10F.9G2の併用は、最も強い抗腫瘍活性を示した(図5A)。3回目の注射の5日後、全てのマウスを剖検し、腫瘍組織を病理学的に評価した。調べた腫瘍組織では、PD-L1抗体と併用した25mg/kgのマウスGC33で処置された全てのマウスにおいて、およびPD-L1抗体と併用した5mg/kgのマウスGC33で治療された5匹のマウスのうち4匹において、生存した腫瘍細胞は観察されなかった(図5B)。
【0238】
治療された腫瘍組織各々の病理学的検査によって、溶媒対照と比較して各治療により、F4/80-陽性細胞数、腫瘍組織に浸潤した多核巨細胞(MNGC)およびCD3陽性細胞でのPD-L1発現の増大ならびにCD206、CD163およびCD11b陽性細胞数の減少および単核細胞(MNC)でのPD-L1発現が示された。併用によって、CD3陽性T細胞の浸潤は、各単独療法よりも増加し、これは、抗腫瘍活性と関連している傾向がある(表6)。
【0239】
【表6】
【実施例6】
【0240】
GC33(またはコドリツズマブ)は、ヒトGPC3と高親和性で結合可能である組換えヒト化IgG1モノクローナル抗体である(WO2006/006693)。MPDL3280A(またはアテゾリズマブ)は、programmed death-ligand 1(PD-L1)と結合可能であり、programmed death-1(PD-1)分子とのPD-L1結合を阻害可能である組換えヒト化IgG1モノクローナル抗体である。MPDL3280Aは、Fcγ受容体との最小結合を有する非グリコシル化抗体をもたらす、各重鎖のCH2ドメイン中の298位のアミノ酸置換(アスパラギンからアラニンへ)を組み込む(WO2010/077634)。GC-207JG研究は、第Ib相多施設臨床治験(本明細書において以下、「研究」または「臨床治験」)として計画され、局所進行性または転移性肝細胞がん腫(HCC)を有する患者におけるMPDL3280Aとの併用におけるGC33の安全性、認容性、抗腫瘍活性および薬物動態(PK)を評価して、この併用の投与レジメンを決定するために実施された。局所進行性または転移性HCCを有する患者における安全性および/または認容性、GC33およびMPDL3280Aの薬物動態プロフィールおよび抗腫瘍効果の評価ならびにバイオマーカーの検索を目的としたこの試験では、最大3コホートからなるGC33の用量漸増部分および拡大部分を実施した(図6)。用量漸増部分は、3+3設計によって試験した。GC33の静脈内(IV)投与は、1週目の1日目および4日目に示された用量で開始し、2週目からおよびその後毎週続けた(表7)。3週間ごとの1,200mgでのMPDL3280Aのi.v.投与を8日目から開始した。拡大部分を、用量漸増部分において許容されると確認された高用量で開始されるように計画した。
【0241】
【表7】
【0242】
投与に付されたHCC患者は、根治的治療(外科的切除、肝臓移植など)に適さない組織学的に確認された進行性または転移性HCC(線維層板型を除く)を有していた、または根治的治療後に増悪した、および少なくとも1種の薬剤を用いる全身療法に基づく過去の治療歴を有していた。適格な患者は、GPC3免疫組織化学によって測定され、0(表10を参照のこと)または1の米国東海岸がん臨床試験グループ活動状態およびチャイルド・ピュースコア5~7(表11および12を参照のこと)を示した腫瘍サンプルにおいてGPC3高発現(2+または3+)を有する少なくとも18歳であった。患者はまた、ベースラインで測定可能であった少なくとも1つの腫瘍病変を有していた。ベースラインでの腫瘍病変の測定可能性は、固形腫瘍における奏効評価基準(RECIST v1.1.例えば、Eisenhauerら.、Eur J Cancer. 45(2):228-47(2009)を参照のこと)に従って決定した。その他の基準として、適当な造血機能(絶対好中球数≧1,500/μL、血小板≧75,000/μL、ヘモグロビン≧9.0g/dL)、肝機能(総ビリルビン≦2.0mg/dL、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ≦正常レベルの上限の5倍)および腎機能(算出されたクレアチニンクリアランス≧50mL/分)を評価した。HBV感染を有する患者について、HBV DNAは、HBVの治療に関わらず登録前3カ月内で500IU/mL未満である。登録可能な女性対象は、臨床治験治療の間および研究薬の投与の完了後少なくとも5カ月間2種類の適当な避妊法を使用することに同意した、臨床治験登録前の14日以内に実施した血清妊娠試験について陰性であると確認された閉経前女性患者、外科的避妊の結果として、または閉経の後1年以上の経過後の妊娠の可能性のない女性および閉経後の女性以外(月経の12カ月以上の欠如)の女性患者または外科的避妊された女性(卵巣および/または子宮の切除)とした。登録可能な男性対象は、臨床治験治療の間および研究薬の投与の完了後少なくとも90日間バリア法に基づく避妊を使用することに同意した患者とした。
【0243】
HCC腫瘍組織におけるGPC3タンパク質の発現を、GPC3免疫組織化学的染色(GPC3-IHC)によって評価した。スコアは、表8に示されるような「免疫組織化学的染色スコア」(例えば、WO2015/170480における複合スコア2)に従って、または表9に示されるような単純化GPC3アルゴリズムに従って決定した。
【0244】
【表8】
【0245】
【表9】
【0246】
【表10】
【0247】
【表11】
【0248】
【表12】
【0249】
他方、登録対象から、GC33の最初の投与前4週間以内に大きな外科手術を受けた患者、脳または軟膜髄膜転移を有すると確認された患者、過去5年以内に悪性腫瘍の病歴を有する患者、B型肝炎またはC型肝炎を除く治療を必要とする活動的感染を有する患者、臨床治験登録前3カ月以内に臨床的に重要な静脈瘤出血の何らかの病歴を有する患者または出血についてハイリスクの静脈瘤のエビデンスを有する患者、肝臓移植を含む臓器移植の既往歴を有する患者、本試験において投与される予定の薬剤以外の抗がん剤の投与を受ける予定であった、または受けていた患者、GC33の最初の投与前4週間以内に大手術、HCCのための局所療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法または別の治験薬を受けた患者、肝細胞がんの先行する局所領域的または全身療法と関連する有害反応を完全に乗り越えなかった患者、GC33の最初の投与前4週間以内にインターフェロン療法を受けた患者、抗PD-1または抗PD-L1治療用抗体または経路標的化剤を用いる先行治療を有する患者、GC33の最初の投与前6週間以内に抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)抗体を有しており、抗CTLA-4抗体に由来する重度免疫関連有害効果が観察された患者、GC33の最初の投与前2週間以内に治療目的で抗凝固剤または血小板溶解剤の投与を受けた患者(カテーテル中の詰まりの除去する目的の、または予防目的の低用量の薬剤の投与を除く)、妊娠中または授乳中の患者、HIV陽性患者またはAIDS関連疾患を有する患者、同様の薬剤(モノクローナル抗体、タンパク質含有調製物およびチャイニーズハムスター卵巣由来調製物)に対して過敏症の既往歴を有する患者および治験責任医師または副治験責任医師によって研究薬によって増悪される可能性があると判断される重篤併存疾患を有する患者が排除された。
【0250】
GC-207JG研究のプロトコールは、優良臨床試験基準(GCP)のガイドラインに従って実施し、各々参加している臨床治験に関する倫理委員会によって承認された。すべての患者は、登録前に書面によるインフォームドコンセントに名前に署名した。患者は、疾患が進行しない限り、または許容できない毒性が現れない限り、GC33およびMPDL3280Aの連続投与を受けた。
【実施例7】
【0251】
RECIST v1.1.に従って、腫瘍奏効(または腫瘍病変の大きさ)をベースラインに基づいて評価し、投与の開始から7週間後に評価し、次いで、疾患が進行するまで6週間毎に反復的に評価する(例えばEisenhauerら、Eur J Cancer. 45(2):228-47(2009)を参照のこと)。治験責任医師によって、RECIST v1.1.によって定義される疾患の状態(例えば、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、進行性疾患(PD)または安定疾患(SD)(例えばEisenhauerら、前掲を参照のこと)を評価する。
【0252】
HCC腫瘍組織におけるGPC3タンパク質の発現をGPC3免疫組織化学的染色(GPC3-IHC)によって評価する。GPC3-IHCの測定は、Ventana Medical Systems、Inc.(米国)によって行われる。各病院におけるニードル生検による切除後にホルマリン固定され、パラフィン包埋された腫瘍ブロックまたは保存記録摘除された試料から調製されたHCC腫瘍組織の未染色スライドを、免疫組織化学的染色に付す。使用された抗体は、マウスGC33抗体(Ventana Medical Systems Inc.カタログ番号:790-4564)である。用量漸増部分および拡大部分では、HCC組織が、GPC3-IHCによって測定されたGPC3陽性である患者が登録された。
【実施例8】
【0253】
GC-207JG研究では、これらの組合せによる有効性を以下のように測定する:
1)RECIST v1.1(例えば、Eisenhauerら、Eur J Cancer. 45(2):228-47(2009)を参照のこと)によって評価される3カ月超の間の完全奏効(CR)、部分奏効(PR)および安定奏効(SR)の頻度、
2)RECIST v1.1(例えば、Eisenhauerら、前掲を参照のこと)によって評価されるような奏効の持続期間、
3)RECIST v1.1(例えば、Eisenhauerら、前掲を参照のこと)によって評価される全体的な奏効率(CRまたはPRとして定義される)および疾患コントロール率(3カ月超のCR、PRまたはSDとして定義される)、
4)RECIST v1.1(例えば、Eisenhauerら、前掲を参照のこと)によって評価される無憎悪期間(TTP)および無増悪生存(PFS)、および
5)全生存。
【0254】
さらに、ベースラインレベルからの研究薬の投与後のアルファフェトプロテイン(AFP)または血清GPC3の変化もまた、抗腫瘍活性として評価する。
【実施例9】
【0255】
GC-207JG研究では、この併用による用量制限毒性(DLT)を評価するために3人の対象がコホート1に登録され、7人の対象がコホート2に登録された。コホート1でも、コホート2でもDLTは観察されず、次いで、拡大コホートの用量レベルを、1日目および4日目の負荷用量および1200mg q3wのMPDL3280Aを伴う1600mg qwのGC33であるコホート2と同一であるように決定した。少なくとも9人の対象が拡大コホートに登録された。
【0256】
2017年4月21日現在入手可能であるGC33(およびMPDL3280A)の血清濃度を測定した。コホート1では、GC33のトラフ濃度は、1人の対象において2週間から230μg/mLを上回っていたが、その他の2人の対象ではそうではなかった(図7)。他方、コホート2では、7人の対象すべてのGC33トラフ濃度は、予想されたように最初の注入後2週間から230μg/mLを上回った(図8A)。さらに、4日目でのGC33の負荷用量によって、GC33のトラフ濃度が、4日目でのGC33の負荷用量を有さない対象におけるトラフ濃度と比較して230μg/mLを超えて迅速に増大することが可能となった(図8B)。これら10人の対象の平均体重は67.96kgであり、標準偏差は17.03kg(45.2~103.8kg)であった。
【0257】
コホート1および2に登録された対象の中で、1人の対象が同意を撤回し、別の1人の対象のベースラインGPC3-IHCスコアが、適格性について、保存記録腫瘍組織はGPC3陽性であったが陰性と示されたので、抗腫瘍活性の評価について2人の対象が排除された。他方、コホート1に登録された1人の対象(19週目の腫瘍評価で-31.8%)、コホート2に登録された1人の対象(13週目の腫瘍評価で-28.6%)は、RECIST v1.1(例えば、Eisenhauerら、Eur J Cancer. 45(2):228-47(2009)を参照のこと)によって2017年7月12日のものとして評価された腫瘍縮小を示した。(一方で、GC33単剤療法の第II相におけるGC33アームにおいて(NP27884研究(合計でN=125およびGPC3-IHC 2+または3+を有するものN=67)、1人の対象のみが、RECIST v1.1によって部分奏効(PR)を示した)(Abou-Alfa GAら、J Hepatol. 2016;65(2):289-295))、これは、GC33の800mgまたは1600mg qwいずれかの投与レジメンおよびMPDL3280Aの1200mg q3w投与レジメンの併用は、各単剤療法よりも良好な有効性を示し得ることを示唆した。
【0258】
GC33単剤療法の抗腫瘍活性を評価するために、ベースライン値からの8日目のAFP変化を比較した。この評価に、上記の8人の対象(コホート1中の3人の対象およびコホート2中の7人の対象で、評価について排除されている2人の対象を排除する)に加え、拡大コホートに登録された3人の対象が加えられたが、これは、彼らが、ベースラインおよび2017年7月12日のものとして8日目(2週間の許容を有する)の両方のAFPデータを有していたからである。1日目に1600mgのGC33の注入を有する対象(コホート2および拡大コホート)は、1日目に800mgのGC33の注入を有する対象(コホート1)よりもかなり大きいAFP減少を示す傾向があった(t検定によりp=0.035、表13)。コホート2および拡大コホートからの合計3人の対象は、幾分かの有害事象のために4日目のGC33の負荷用量をスキップした。第1週においてGC33の2回の負荷用量を有する対象と、GC33の1回のみの負荷用量を有するその他のものの間のAFP変化を比較すると、第1週中4日目にGC33の負荷用量を有する場合も、有さない場合も統計上有意差は観察されなかった(t検定によりp=0.587、表14)。
【0259】
【表13】
【0260】
【表14】
【実施例10】
【0261】
拡大コホートでは、10人の対象が登録され、投薬されたので、GC-207JG研究に登録された対象の総数は、20人の対象であった。GC-207JG研究用量漸増コホートまたは拡大コホートのいずれかに登録された合計20人の対象のうち、すべての対象が、GC33およびMPDL3280Aを用いる治療を受け、この治療の安全性プロフィールに関して評価された。この研究におけるすべての対象は、少なくとも1つの有害事象を報告した:GC33 800mgおよびMPDL3280A 1200mgを受けた3人の対象では30の有害事象が報告され、GC33 1600mgおよびMPDL3280A 1200mgを受けた17人の対象では153の有害事象が報告された。すべての患者中≧10%の罹患率を有する有害事象は、発熱(80.0%)、疲労(50.0%)、食欲不振(30.0%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、リンパ球数減少および咳(各25.0%)、便秘および上咽頭炎(各15.0%)、胸痛、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加、血中ビリルビンの増加、C反応性タンパク質の増加、腹水、口内炎、喀血、中咽頭痛、低カリウム血症、筋肉痛、四肢の疼痛、上気道感染、めまい、湿疹、そう痒、発疹および高血圧症(各10.0%)であった。≧等級3で報告された有害事象は、全体で14人の対象で報告された;2人の対象は、GC33 800mgおよびMPDL3280A 1200mg受け、12人の対象は、GC33 1600mgおよびMPDL3280A 1200mgを受けた。すべての対象において≧10%の罹患率を有する≧等級3で報告された有害事象は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加およびリンパ球数の減少(各20.0%)および腹水(10.0%)であった。表15に示されるように、安全性プロフィールは、コホート間で同等であった。
【0262】
【表15】
【実施例11】
【0263】
800mgのGC33または1600mgのGC33のいずれかを有する対象のGC33の平均トラフ濃度が、図9に示されている。1600mg qw用量のGC33を用いた場合の患者のトラフ濃度は、230μg/mL超に迅速に到達し、230μg/mLを上回るトラフ濃度を維持した。
【0264】
登録され、投薬された20人の対象の中で、CTスキャンまたはMRIによる奏効の評価を全く有さなかった2人の対象を、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存(PFS)および全生存(OS)などの有効性の評価から除外した。これらの2人の対象に加えて、1人の対象のベースラインGPC3-IHCスコアが陰性と示されたので2人の他の対象をAFP変化に基づく抗腫瘍活性の評価から排除し、8日目(2週間の許容を有する)AFPデータを有していなかった2人の他の対象は、最良のAFP応答、治療期間の間のベースラインからの最大AFP減少についての評価には、これらの対象を含めた。
【0265】
GC33単剤療法およびMPDL3280Aとの併用の抗腫瘍活性を評価するために、ベースライン値からの8日目でのAFP変化および最良AFP応答。表16に示されるように、1600mgのGC33の注入を有する対象は、800mgのGC33の注入を有する対象よりも、8日目に、より大きいAFP減少の傾向を示した(t検定によりp=0.071)。第1週中の1600mgのGC33の2回の負荷用量を有する対象と、1600mgのGC33の1回のみの負荷用量を有する他のものの間のAFP変化を比較すると、第1週中4日目にGC33の負荷用量を有する場合も、有さない場合も統計的有意差は観察されなかった(t検定によりp=0.555、表17)。GC33用量レベルによる最良AFP応答を比較すると、GC33用量レベルに関わらず、1600mgのGC33の注入を有する対象が、4日目のGC33の負荷用量を受けたか否かに関わらず、統計的有意差は観察されなかった(それぞれ、t検定によりp=0.458または0.914、表18)。ベースラインAFP値が100ng/mLを上回った対象を、AFP最良応答による評価に適用した場合には、1600mgのGC33および1200mgのMPDL3280Aを有する対象のほとんどが、AFP減少を示したが、800mgのGC33および1200mgのMPDL3280Aを有する1人の対象は、AFP減少を示さず(図10)、これは、高い用量レベルのGC33およびMPDL3280Aの併用が、AFPの高い値を有するHCC患者に対して強力なAFP応答を示し得ることを示唆した。
【0266】
【表16】
【0267】
【表17】
【0268】
【表18】
【0269】
【表19】
【0270】
800mgのGC33および1200mgのMPDL3280Aを受けた対象(コホート1)のORRおよびDCRは、それぞれ0%および66.7%(2人のSD)であった。1600mgのGC33および1200mgのMPDL3280Aを受けた対象(用量漸増部分のコホート2および拡大部分)の中で、研究治療開始後に腫瘍評価を有していた17人の対象のうち15人を有効性評価のための集団に含めた。これら15人の対象のORRおよびDCRは、それぞれ6.7%(1人のPR)および53.3%(1人のPRおよび7人のSD)。RECIST v1.1に従う腫瘍応答は、1600mgのGC33を有するコホートにおいてのみ見られた。
【0271】
腫瘍応答に加えて、GC33の最初の注入から6または9カ月いずれかのDCRも評価した。DCRは、6または9カ月で疾患の増悪を伴わない対象のパーセンテージとした。6カ月でのDCRは、800mgのGC33と1600mgのGC33の間で同等であったが、1600mgのGC33を有するコホートでは、コホート1におけるものよりも(表20)、および4日目の負荷用量を有する1600mgのGC33を有する対象において、4日目の負荷用量を有さないものよりも高いDCRが観察された(表21)。ベースラインAFPレベルが100ng/mLを上回った対象の中で、4日目の負荷用量を有する1600mgのGC33を有する対象グループにおいてのみ、6カ月および9カ月の両方で病勢コントロールを有する対象が観察された(表22および23)。
【0272】
【表20】
【0273】
【表21】
【0274】
【表22】
【0275】
【表23】
【0276】
カプラン-マイヤー法によって無増悪生存(PFS)および全生存(OS)の中央値を推定した。コホート1、2および拡大コホートの両方を含む有効性評価のための集団において、中央値PFSは4.4カ月であり、中央値OSは13.5カ月であったが、GC33単剤療法、NP27884研究の第II相中のGC33アームでは、中央値PFSおよびOSは、2.6カ月および8.7カ月であり、これは、GC33およびMPDL3280Aの併用は、GC33単剤療法と比較してより良好な臨床有効性を示し得るということを示唆した。
【0277】
コホート1またはコホート2および拡大のいずれかにおける中央値PFSおよびOSを、表24に示し、4日目の負荷用量を有する、有さないいずれかの1600mgのGC33を有する対象の中央値PFSおよびOSを、表25に示した。ベースラインAFPレベルが100ng/mLを上回った対象の中央値PFSおよびOSを、表26および27に示した。1600mgのGC33を有する対象の中央値OSは、800mgのGC33を有する対象のものよりも長い傾向があるが、4日目の負荷用量を有するおよび有さない対象グループ間に差はなかった。さらに、ベースライン値としてAFPが100ng/mLを上回る集団において、中央値PFSおよびOSは、800mgのGC33投薬を有するものと比較して1600mgのGC33を有する対象においてかなり長かった。カプラン-マイヤー曲線を図11に示した。
【0278】
【表24】
【0279】
【表25】
【0280】
【表26】
【0281】
【表27】
【0282】
上記から、MPDL3280Aとの併用におけるGC33は、局所進行性または転移性HCCを有する対象において十分に許容されると考えられた。GC33の併用、特に、GC33の1600mgの毎週の注入およびMPDL3280Aは、局所進行性または転移性HCCに対して特定の有効性を有すると予測された。
【0283】
本明細書において引用されているすべての刊行物、特許および特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0284】
本発明は、GPC3標的化剤および/またはPD-1系結合アンタゴニストを使用する併用療法の有効性の改善、治療されるべき患者のQOLの改善に寄与し、肝臓がんを含むがんの治療において有用である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
【配列表】
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