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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】基板搬送ロボット及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20231110BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20231110BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J15/00 C
B25J9/06 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020529057
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2019026783
(87)【国際公開番号】W WO2020009214
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018129223
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 潤一
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-071753(JP,A)
【文献】特開平07-078858(JP,A)
【文献】特開2006-086294(JP,A)
【文献】特開2013-152998(JP,A)
【文献】特開2003-289095(JP,A)
【文献】国際公開第2008/140728(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/00
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載せる第1基板載せ部を含み、前進及び後退動作が可能な第1ハンドと、基板を載せる第2基板載せ部を含み、前進及び後退動作が可能な第2ハンドと、を備えるロボット本体と、前記第1ハンド及び前記第2ハンドの動作を制御するロボット制御器と、を備え、
前記ロボット制御器は、前記第1ハンドが、前記第1基板載せ部に前記基板を載せていない状態で前進して、基板載置体に載置された基板を前記第1基板載せ部に載せ、その後、後退するよう前記第1ハンドを動作させ、前記第2ハンドが、前記第2基板載せ部に前記基板を載せた状態で前進して、前記第2ハンドの前記第2基板載せ部に載せた基板を前記基板載置体に載置し、その後、後退するように前記第2ハンドを動作させる基板入替動作を行い、
前記第1ハンドの後退動作と前記第2ハンドの後退動作の少なくとも一部が同時に行われる、基板搬送ロボット。
【請求項2】
基板を載せる第1基板載せ部と前記第1基板載せ部に載せた基板を保持及び解放する第1基板保持機構とを含み、前記基板の搬送方向における位置である後退位置と前進位置との間で前進及び後退動作が可能な第1ハンドを備えるロボット本体と、前記第1ハンド及び前記第1基板保持機構の動作を制御するロボット制御器と、を備え、
前記ロボット制御器は、前記第1基板保持機構が基板を解放し、且つ、前記第1ハンドが、前記第1基板載せ部に前記基板を載せていない状態で前記後退位置から前記前進位置に前進し、当該前進位置において、基板載置体に載置された基板を前記第1基板載せ部に載せ、その後、前記後退位置に後退するよう前記第1基板保持機構及び前記第1ハンドを動作させ、
前記第1ハンドが後退する期間において、前記第1基板載せ部に載せた基板を前記第1基板保持機構に保持させ、且つ
前記第1ハンドが後退し始めてから前記第1基板保持機構によって前記基板が保持された時点までの第1期間における第1最大速度の絶対値又は第1最大加速度の絶対値が、前記基板が保持された時点から前記第1ハンドが後退を終了するまでの第2期間における第2最大速度の絶対値又は第2最大加速度の絶対値より低速又は低加速度であるように前記第1ハンドの速度を制御する、基板搬送ロボット。
【請求項3】
前記第1期間は、前記第1ハンドが前記前進位置から所定距離後退する時間である、請求項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項4】
前記ロボット本体は、基板を載せる第2基板載せ部と前記第2基板載せ部に載せた基板を保持及び解放する第2基板保持機構とを含み、且つ、前記第1ハンドの下方又は上方において、前記後退位置と前記前進位置との間で前進及び後退動作が可能な第2ハンドをさらに備え、且つ、前記第1ハンドと前記第2ハンドとが一緒に上昇及び下降することが可能なように構成されており、
前記ロボット制御器は、さらに前記第2ハンド及び前記第2基板保持機構の動作を制御するものであり、
前記ロボッット制御器は、前記第1ハンドが前進して前記前進位置に位置するまで、前記第2ハンドを、前記第2基板載せ部に載せた基板を前記第2基板保持機構に保持させた状態で前記後退位置に待機させ、
前記第1ハンドが前記前進位置に位置すると、前記第1ハンド及び前記第2ハンドを所定上昇高さだけ上昇させて、前記基板載置体に載置された基板を前記第1ハンドの前記第1基板載せ部に載せ、
その後、前記第2ハンドを前進させて前記前進位置に位置させるとともに前記第2基板保持機構に前記基板を開放させ、且つ、前記第1ハンドを前記第1期間だけ前記前進位置から後退させるとともに前記第1基板載せ部に載せた基板を前記第1期間において前記第1基板保持機構に保持させ、
その後、前記第1ハンド及び前記第2ハンドを所定下降高さだけ下降させて、前記第2ハンドの前記第2基板載せ部に載せた基板を前記基板載置体に載置し、
その後、前記第1ハンド及び前記第2ハンドを前記後退位置に後退させる、請求項又はに記載の基板搬送ロボット。
【請求項5】
基板を載せる第1基板載せ部と前記第1基板載せ部に載せた基板を保持及び解放する第1基板保持機構とを含み、前記基板の搬送方向における位置である後退位置と前進位置との間で前進及び後退動作が可能な第1ハンドを備えるロボット本体と、前記第1ハンド及び前記第1基板保持機構の動作を制御するロボット制御器と、を備える基板搬送ロボットの制御方法であって、
前記ロボット制御器は、前記第1基板保持機構が基板を解放し、且つ、前記第1ハンドが、前記第1基板載せ部に前記基板を載せていない状態で前記後退位置から前記前進位置に前進し、当該前進位置において、基板載置体に載置された基板を前記第1基板載せ部に載せ、その後、前記後退位置に後退するよう前記第1基板保持機構及び前記第1ハンドを動作させることと、
前記第1ハンドが後退する期間において、前記第1基板載せ部に載せた基板を前記第1基板保持機構に保持させることと、
前記第1ハンドが後退し始めてから前記第1基板保持機構によって前記基板が保持された時点までの第1期間における第1最大速度の絶対値又は第1最大加速度の絶対値が、前記基板が保持された時点から前記第1ハンドが後退を終了するまでの第2期間における第2最大速度の絶対値又は第2最大加速度の絶対値より低速又は低加速度であるように前記第1ハンドの速度を制御することと、を行う、基板搬送ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送ロボット及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から基板を搬送するロボットが用いられている。そのようなロボットの一例として、特許文献1に記載された基板搬送装置が知られている。この基板搬送装置では、インデクサロボットとセンターロボットとの基板授受動作において、空手の状態のインデクサ側上ハンドと未処理基板を載せたインデクサ側下ハンドとがインデクサ側上ハンドが先行するようにして前進を開始し、先に受け渡し位置に到達したインデクサ側上ハンドが処理済み基板板を受け取るとともに、遅れてインデクサ側下ハンドが受け渡し位置に到達する。そして、インデクサ側上ハンドが後退を開始した後、インデクサ側下ハンドが未処理基板を渡し、その後、インデクサ側下ハンドが後退を開始する。インデクサ側下ハンドがインデクサ側上ハンドに追いつくように高速で後退して、両者が初期位置に戻る。これにより、インデクサ側上ハンド及びインデクサ側下ハンドが交互に処理済基板及び未処理基板の授受を行うものと比べて、基板搬送時間を短縮することができる。しかも、インデクサ側上ハンドを先行して基板受け渡し位置に到達させる際は、インデクサ側上ハンドは空手の状態なので、速い進出速度で基板受け渡し位置に到達させても、基板が落下するなどの事態が生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-086294号公報(要約参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1は、基板搬送装置(ロボット)がハンドに基板を保持する機構を備えるか否か言及していない。基板搬送ロボットが、ハンドに基板を保持する機構(以下、基板保持機構という)を備える場合、ハンドに基板が存在していてもハンドに基板が存在していない場合と同様の速度でハンドを進退させることができる。しかし、基板保持機構によって基板を保持するには、基板を保持するための時間を要する。この時間の分、基板搬送時間が長くなるのを回避するために、単純に、ハンドの進退中に基板保持機構によって基板を保持すると、ハンドの速度又は加速度に依っては、基板保持機構が基板を保持し損なう可能性がある。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ハンドに基板保持機構を備えており、基板搬送時間が長くなるのを抑制すること及びハンドを進退させる際に基板保持機構が基板を保持し損なう可能性を低減することが可能な基板搬送ロボット及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある形態(aspect)に係る基板搬送ロボットは、基板を載せる第1基板載せ部と前記第1基板載せ部に載せた基板を保持及び解放する第1基板保持機構とを含み、前記基板の搬送方向における位置である後退位置と前進位置との間で前進及び後退動作が可能な第1ハンドを備えるロボット本体と、前記第1ハンド及び前記第1基板保持機構の動作を制御するロボット制御器と、を備え、前記ロボット制御器は、前記第1基板保持機構が基板を解放し、且つ、前記第1ハンドが、前記第1基板載せ部に前記基板を載せていない状態で前記後退位置から前記前進位置に前進し、当該前進位置において、基板載置体に載置された基板を前記第1基板載せ部に載せ、その後、前記後退位置に後退するよう前記第1基板保持機構及び前記第1ハンドを動作させ、前記第1ハンドが後退する期間において、前記第1基板載せ部に載せた基板を前記第1基板保持機構に保持させ、且つ、前記第1ハンドが後退し始めてから前記第1基板保持機構によって前記基板が保持された時点までの第1期間における第1最大速度の絶対値又は第1最大加速度の絶対値が、前記基板が保持された時点から前記第1ハンドが後退を終了するまでの第2期間における第2最大速度の絶対値又は第2最大加速度の絶対値より低速又は低加速度であるように前記第1ハンドの速度を制御する。ここで、「基板」には、ウェハ、液晶ディスプレイのガラス基板等を含む。
【0007】
この構成によれば、前記第1ハンドが後退する期間において、前記第1基板載せ部に載せた基板を前記第1基板保持機構に保持させるので、第1ハンドが前進位置に止まった状態で第1基板保持機構が第1基板載せ部に載せた基板を保持する場合に比べて、第1ハンドの後退時間を短くすることができ、ひいては、基板搬送時間が長くなるのを抑制することができる。また、ロボット制御器が、第1ハンドが後退する期間において、第1基板載せ部に載せた基板を第1基板保持機構に保持させ、且つ、第1ハンドが後退し始めてから第1基板保持機構によって基板が保持された時点までの第1期間における第1最大速度の絶対値又は第1最大加速度の絶対値が、前記基板が保持された時点から前記第1ハンドが後退を終了するまでの第2期間における第2最大速度の絶対値又は第2最大加速度の絶対値より低速又は低加速度であるように第1ハンドの速度を制御するので、第1期間において、第1最大速度の絶対値又は第1加速度の絶対値を十分低速又は低加速度にすることにより、第1基板載せ部に載せた基板を第1基板保持機構が保持し損なう可能性を低減することができる。この「第1基板載せ部に載せた基板を第1基板保持機構が保持し損なう可能性を低減できる第1最大速度の絶対値又は第1加速度の絶対値」は、実験、シミュレーション、計算等によって設定される。
【0008】
前記第1期間は、前記第1ハンドが前記前進位置から所定距離後退する時間であってもよい。
【0009】
この構成によれば、第1基板保持機構が第1基板載せ部に載せた基板を保持するまでに第1ハンド所定距離後退するので、第1基板保持機構が第1基板載せ部に載せた基板を保持するまで第1ハンドが前進位置に止まる場合に比べて、第1ハンドの後退時間を短くすることができる。
【0010】
前記ロボット本体は、基板を載せる第2基板載せ部と前記第2基板載せ部に載せた基板を保持及び解放する第2基板保持機構とを含み、且つ、前記第1ハンドの下方又は上方において、前記後退位置と前記前進位置との間で前進及び後退動作が可能な第2ハンドをさらに備え、且つ、前記第1ハンドと前記第2ハンドとが一緒に上昇及び下降することが可能なように構成されており、前記ロボット制御器は、さらに前記第2ハンド及び前記第2基板保持機構の動作を制御するものであり、前記ロボッット制御器は、前記第1ハンドが前進して前記前進位置に位置するまで、前記第2ハンドを、前記第2基板載せ部に載せた基板を前記第2基板保持機構に保持させた状態で前記後退位置に待機させ、前記第1ハンドが前記前進位置に位置すると、前記第1ハンド及び前記第2ハンドを所定上昇高さだけ上昇させて、前記基板載置体に載置された基板を前記第1ハンドの前記第1基板載せ部に載せ、その後、前記第2ハンドを前進させて前記前進位置に位置させるとともに前記第2基板保持機構に前記基板を開放させ、且つ、前記第1ハンドを前記第1期間だけ前記前進位置から後退させるとともに前記第1基板載せ部に載せた基板を前記第1期間において前記第1基板保持機構に保持させ、その後、前記第1ハンド及び第2ハンドを所定下降高さだけ下降させて、前記第2ハンドの前記第2基板載せ部に載せた基板を前記基板載置体に載置し、その後、前記第1ハンド及び前記第2ハンドを前記後退位置に後退させてもよい。
【0011】
この構成によれば、基板搬送ロボットが1回動作するだけで、第1ハンドによって基板載置体に載置された基板を引き取るとともに第2ハンドによって基板載置体に新たな基板を載置することができる。
【0012】
しかも、第2ハンドの第2基板載せ部に載せた基板を基板載置体に載置した後、第1ハンド及び第2ハンドを後退位置に後退させるので、第1ハンドは、第2ハンドが後退位置に後退するまでに後退位置に後退すればよい。従って、第1ハンドが後退する期間において、第1期間における第1最大速度の絶対値又は第1加速度の絶対値が、第2期間における第2最大速度の絶対値又は第2最大加速度の絶対値より低速又は低加速度であっても、第1ハンドがそれ以上の速度又は加速度で後退する場合と基板搬送時間は変わらない。
【0013】
また、本発明の他の形態(aspect)に係る基板搬送ロボットの制御方法は、基板を載せる第1基板載せ部と前記第1基板載せ部に載せた基板を保持及び解放する第1基板保持機構とを含み、前記基板の搬送方向における位置である後退位置と前進位置との間で前進及び後退動作が可能な第1ハンドを備えるロボット本体と、前記第1ハンド及び前記第1基板保持機構の動作を制御するロボット制御器と、を備える基板搬送ロボットの制御方法であって、前記ロボット制御器は、前記第1基板保持機構が基板を解放し、且つ、前記第1ハンドが、前記第1基板載せ部に前記基板を載せていない状態で前記後退位置から前記前進位置に前進し、当該前進位置において、基板載置体に載置された基板を前記第1基板載せ部に載せ、その後、前記後退位置に後退するよう前記第1基板保持機構及び前記第1ハンドを動作させることと、前記第1ハンドが後退する期間において、前記第1基板載せ部に載せた基板を前記第1基板保持機構に保持させることと、前記第1ハンドが後退し始めてから前記第1基板保持機構によって前記基板が保持された時点までの第1期間における第1最大速度の絶対値又は第1最大加速度の絶対値が、前記基板が保持された時点から前記第1ハンドが後退を終了するまでの第2期間における第2最大速度の絶対値又は第2最大加速度の絶対値より低速又は低加速度であるように前記第1ハンドの速度を制御することと、を行う。
【0014】
この構成によれば、基板搬送時間が長くなるのを抑制することができる。また、第1期間において、第1最大速度又は第1最大加速度を十分低速又は低加速度にすることにより、第1基板載せ部に載せた基板を第1基板保持機構が保持し損なう可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ハンドに基板保持機構を備えており、基板搬送時間が長くなるのを抑制すること及びハンドを進退させる際に基板保持機構が基板を保持し損なう可能性を低減することが可能な基板搬送ロボット及びその制御方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の実施形態に係る基板搬送ロボットのハードウェアの構成の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2図2は、図1の基板搬送ロボットの使用環境の一例を模式的に示す平面図である。
図3図3は、図1の基板搬送ロボットの制御系統の構成を示す機能ブロック図である。
図4図4(a)~(f)は、比較例の基板搬送ロボットの基板入替動作の一例を示す模式図である。
図5図5(a)~(f)は、図1の基板搬送ロボットの基板入替動作の一例を示す模式図である。
図6図6は、比較例の基板搬送ロボットの基板入替動作におけるハンドの速度変化を示すグラフである。
図7図7は、図1の基板搬送ロボットの基板入替動作におけるハンドの速度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本発明を説明するための図であるので、本発明に無関係な要素が省略される場合、誇張等のため複数の図が互いに一致しない場合、寸法が不正確な場合等がある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0018】
(実施形態)
[構成]
図1は本発明の実施形態に係る基板搬送ロボットのハードウェアの構成の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図1(b)は、図1(a)の基板搬送ロボット100を、図1(a)の基板搬送方向200に見た図である。また、図1(a)、図1(b)、及び図2では、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bを判別し易くするために、これらの要部にハッチングが付されている。
【0019】
図1を参照すると、本実施形態の基板搬送ロボット100は、基板(図1(a)及び(b)に不図示)を載せる第1基板載せ部(43A又は43B)と第1基板載せ部(43A又は43B)に載せた基板を保持及び解放する第1基板保持機構(40A又は40B)とを含み、基板搬送方向200における位置である後退位置201と前進位置202との間で前進及び後退動作が可能な第1ハンド(4A又は4B)を備えるロボット本体10と、第1ハンド(4A又は4B)及び第1基板保持機構(40A又は40B)の動作を制御するロボット制御器20と、を備える。また、ロボット本体10は、基板を載せる第2基板載せ部(43B又は43A)と第2基板載せ部(43B又は43A)に載せた基板を保持及び解放する第2基板保持機構(40B又は40A)とを含み、且つ、第1ハンド(4A又は4B)の下方において、後退位置201と前進位置202との間で前進及び後退動作が可能な第2ハンド(4B又は4A)をさらに備え、且つ、第1ハンド(4A又は4B)と第2ハンド(4B又は4A)とが一緒に上昇及び下降することが可能なように構成されており、ロボット制御器20は、さらに第2ハンド(4B又は4A)及び第2基板保持機構(40B又は40A)の動作を制御するものである。
【0020】
換言すると、第1ハンドは基板を引き取るハンドであり、第2ハンドは基板を置くハンドである。基板搬送ロボット100は双腕ロボットであるので、いずれのハンドも第1ハンド又は第2ハンドとして機能し得る。従って、以下では、まず、2つのハンドを構造上の相違によって特定し、そのように特定された2つのハンドが、第1及び第2ハンドのいずれとして機能するか説明する。
【0021】
本実施形態では、基板が円形のウェハである場合を説明する。
【0022】
以下、本実施形態の基板搬送ロボット100の具体的な構成の一例を詳しく説明する。
【0023】
基板搬送ロボット100は、水平多関節型の一対のアーム3A、3Bを備える双腕ロボットで構成される。基板搬送ロボット100は、基台1を備える。基台1には昇降体2が設けられている。昇降体2は、基台1に昇降可能に設けられた円筒状の昇降軸2aと、昇降軸2aの中心軸に一致する第1回転軸線の周りに旋回可能に設けられた旋回体2bとを備える。旋回体2bには、上側アーム3Aと下側アーム3Bとが設けられる。
【0024】
上側アーム3Aは、一方の端部が、旋回体2bの適所に第1回転軸線に平行な第2回転軸線の周りに回動可能に設けられた上側第1リンク31Aと、一方の端部が、上側第1リンク31Aの他方の端部に第2回転軸線に平行な第3回転軸線の周りに回動可能に設けられた上側第2リンク32Aと、一方の端部が、上側第2リンク32Aの他方の端部に第3回転軸線に平行な第4回転軸線の周りに回動可能に設けられた上側第3リンク33Aと、一方の端部が、上側第3リンク32Aの他方の端部に第4回転軸線に平行な第5回転軸線の周りに回動可能に設けられた上側第4リンク34Aと、上側第4リンク34Aに固定された上側ハンド4Aとを備える。上側第1リンク31A~上側第4リンク34Aが上側アーム部35Aを構成する。
【0025】
下側アーム3Bは、一方の端部が、旋回体2bに第1回転軸線に平行な第6回転軸線の周りに回動可能に設けられた下側第1リンク31Bを備える。下側第1リンク31Bは、第6回転軸線が、旋回体2bの中心軸に対し、上側アーム3Aの第1リンク31Aの第2回転軸線と点対称になるように設けられる。下側アーム3Bは、さらに、一方の端部が、下側第1リンク31Bの他方の端部に第6回転軸線に平行な第7回転軸線の周りに回動可能に設けられた下側第2リンク32Bと、一方の端部が、下側第2リンク32Bの他方の端部に第7回転軸線に平行な第8回転軸線の周りに回動可能に設けられた下側第3リンク33Bと、下側第3リンク33Bに固定された下側ハンド4Bとを備える。下側第1リンク31B~下側第3リンク33Bが下側アーム部35Bを構成する。
【0026】
上側アーム部35Aを構成するリンク31A~34A及び下側アーム部35Bを構成するリンク31B~33Bは、水平な平板状の部材で構成されている。
【0027】
上側ハンド4A及び下側ハンド4Bは、平板状の部材で構成され、平面視において、概ねY字状に形成されている。上側ハンド4A及び下側ハンド4Bには、それぞれ、上側基板保持機構40A及び下側基板保持機構40Bが設けられる。上側基板保持機構40A及び下側基板保持機構40Bは、例えば、基板を把持する把持機構で構成される。なお、上側基板保持機構40A及び下側基板保持機構40Bが、例えば、基板を吸着及び解放する吸着機構で構成されてもよい。
【0028】
上側ハンド4Aの一対の先端部には、上側ハンド4Aの基端から先端に向かう方向における基板の位置を位置決めする一対の位置決め部41Aが設けられる。上側ハンド4Aの略中央部には、上側ハンド4Aの基端から先端に向かう方向及びその反対方向に前進及び後退することによって、基板を押圧及び脱圧する押圧部42Aが設けられる。押圧部42Aは、例えば、エアシリンダ、モータ等の動力源によって、進退させられる。この一対の位置決め部41A及び押圧部42Aが上側基板保持機構40Aを構成する。また、上側ハンド4Aの上面における押圧部42Aと一対の位置決め部との間の部分が上側基板載せ部43Aを構成する。押圧部42Aが前進し、上側基板載せ部43Aに載せられた基板を押圧すると、当該基板が押圧部42Aによって一対の位置決め部41Aに押し付けられ、当該基板が押圧部42A及び一対の位置決め部41Aに把持される。また、押圧部42Aが後退すると、把持された基板が解放される。
【0029】
下側ハンド4Bの一対の先端部には、下側ハンド4Bの基端から先端に向かう方向における基板の位置を位置決めする一対の位置決め部41Bが設けられる。下側ハンド4Bの略中央部には、下側ハンド4Bの基端から先端に向かう方向及びその反対方向に前進及び後退することによって、基板を押圧及び脱圧する押圧部42Bが設けられる。押圧部42Bは、例えば、エアシリンダ、モータ等の動力源によって、進退させられる。この一対の位置決め部41B及び押圧部42Bが下側基板保持機構40Bを構成する。また、下側ハンド4Bの上面における押圧部42Bと一対の位置決め部41Bとの間の部分が下側基板載せ部43Bを構成する。押圧部42Bが前進し、下側基板載せ部43Bに載せられた基板を押圧すると、当該基板が押圧部42Bによって一対の位置決め部41Bに押し付けられ、当該基板が押圧部42B及び一対の位置決め部41Bに把持される。また、押圧部42Bが後退すると、把持された基板が解放される。
【0030】
図1には、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが、それぞれ、後退位置201及び前進位置に位置する状態の基板搬送ロボット100が示されている。ロボット制御器20は、後退位置201及び前進位置202において、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが、両者の中心線が一致し、この中心線が旋回体2bの第1回動軸線を通り、且つ、所定の基板搬送方向200を向くように、上側アーム3A及び下側アーム3Bの動作を制御する。
【0031】
後退位置201及び前進位置202は、基板搬送ロボット100の使用態様に応じて、適宜設定される。これら後退位置201及び前進位置202は、平面視において、旋回体2bの第1回動軸線を通る直線上に設定される。
【0032】
基板搬送ロボット100については、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bのいずれが上述の第1ハンド又は第2ハンドであってもよい。
【0033】
ロボット制御器20は、例えば、ロボット本体10の基台1の内部に配置される。もちろん、ロボット制御器20はロボット本体10から離れた場所に配置されてもよい。
【0034】
[使用環境]
図2は、図1の基板搬送ロボットの使用環境の一例を模式的に示す平面図である。図2を参照すると、基板搬送ロボット100の使用環境は、例えば、以下の通りである。
【0035】
真空室51に基板搬送ロボット100のロボット本体10が配置される。ロボット本体10の周囲に複数の基板処理槽52と、1つの基板受け渡し槽53とが配置される。複数の基板処理槽52においては、それぞれ、各種の基板処理が行われる。複数の基板処理槽52及び基板受け渡し槽53には、基板載置体55が設けられる。基板載置体55は、例えば、各槽52、53の床に立設された円柱体で構成される。この場合、基板載置体55の上面が基板(図2に不図示)の中央部を支持する。なお、基板載置体55が、各槽52、53の側壁から水平に突出するように設けられた平板で構成されてもよい。この場合、基板載置体の上面は、基板の外周部を支持する。なお、複数の基板処理槽52及び基板受け渡し槽53の前面(ロボット本体10に対向する面)には、当該前面を開閉する開閉機構(不図示)が設けられる。
【0036】
平面視において、ロボット本体の旋回体2b(図1参照)の中心(第1回動軸線)から各槽52、53の基板載置体の中心に向かう方向が基板搬送方向200(図1(a)参照)であり、例えば、各槽52、53の基板載置体の中心が前進位置202(図1(a)参照)に設定される。この前進位置202は、各槽52、53毎に異なっていてもよい。
【0037】
ロボット本体10は、基板搬送方向200が、ある基板処理槽52に向くように上側ハンド4A及び下側ハンド4Bを旋回させ、上側ハンド4Aによって基板載置体55に載置された処理済みの基板を引き取り、下側ハンド4Bに保持した未処理の基板を基板載置体55に載置するようにして、基板入替動作を行う。その後、基板搬送方向200が基板受け渡し槽53に向くように上側ハンド4A及び下側ハンド4Bを旋回させ、下側ハンド4Bによって基板載置体55に載置された未処理の基板を引き取り、上側ハンド4Aに保持した処理済の基板を基板載置体55に載置するようにして、基板入替動作を行う。
【0038】
つまり、図2に示す使用環境では、ロボット本体10では、基板処理槽52との基板入替動作では、上側ハンド4Aが第1ハンドとして機能する(動作する)とともに下側ハンド4Bが第2ハンドとして機能する(動作する)。一方、基板受け渡し槽53との基板入替動作では、下側ハンド4Bが第1ハンドとして機能する(動作する)とともに上側ハンド4Aが第2ハンドとして機能する(動作する)。
【0039】
[制御系統の構成]
図3は、図1の基板搬送ロボット100の制御系統の構成を示す機能ブロック図である。図3を参照すると、ロボット制御器20は、ロボット本体10の動作をフィードバック制御する。また、ロボット制御器20は、上側基板保持機構40A及び下側基板保持機構40Bの動作を制御する。
【0040】
ロボット制御器20は、例えば、プロセッサとメモリとを備える。ロボット制御器20は、メモリに格納された所定の動作プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、ロボット本体10、上側基板保持機構40A、及び下側基板保持機構40Bの動作を制御する。ロボット制御器20は、具体的には、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等で構成される。
【0041】
[動作]
次に、以上のように構成された基板搬送ロボット100の動作(基板搬送ロボット100の制御方法)を比較例の基板搬送ロボットと対比して説明する。
【0042】
<基板処理槽52に対する基板入替動作>
まず、基板処理槽52に対する基板入替動作を説明する。
【0043】
図4(a)~(f)は、比較例の基板搬送ロボットの基板入替動作の一例を示す模式図である。図5(a)~(f)は、図1の基板搬送ロボットの基板入替動作の一例を示す模式図である。図6は、比較例の基板搬送ロボットの基板入替動作におけるハンドの速度変化を示すグラフである。図7は、図1の基板搬送ロボットの基板入替動作におけるハンドの速度変化を示すグラフである。なお、図4(a)~(f)及び図5(a)~(f)は、図を見易くするために、後退位置と前進位置とが、図2の場合に比べて近いように描かれている。また、図6及び図7において、正の速度は上側ハンド4A及び下側ハンド4Bの前進の速度を表し、負の速度は上側ハンド4A及び下側ハンド4Bの後退の速度を表す。
【0044】
まず、比較例の基板搬送ロボットの基板入替動作を説明する。比較例の基板搬送ロボットは、構成は本実施形態の基板搬送ロボット100と同じであり、基板入替動作のみが本実施形態の基板搬送ロボット100と異なる。従って、以下では、比較例の基板搬送ロボットの入替動作を、便宜上、図4(a)~(f)に加えて、図1及び図2をも参照して説明する。比較例のロボット制御器20は、ロボット本体10、上側基板保持機構40A、及び下側基板保持機構40Bを以下のように動作させる。
【0045】
まず、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが、後退位置201に位置させられる。この状態では、上側ハンド4Aでは、基板載せ部43Aに基板が載せられておらず、上側基板保持機構40Aは、押圧部42Aが後退していて解放状態になっている。一方、下側ハンド4Bでは、基板載せ部43Bに基板61が載せられていて、下側基板保持機構40Bは、押圧部42Bが前進してこの基板61を一対の位置決め部41Bに押し付けている。これにより、下側基板保持機構40Bは、基板61を保持している(図4(a)参照)。また基板載置体55の上面に処理済みの基板61が載置されている。
【0046】
次に、上側ハンド4Aが前進位置202に前進させられる(図4(b)参照)。
【0047】
次に、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが所定上昇高さだけ上昇される。この上昇動作は、昇降体2を上昇させることによって行われる。所定上昇高さは、下側ハンド4Bが基板載置体55の上面より高く位置するように設定される。これにより、基板載置体55に載置された処理済みの基板61が上側ハンド4Aの基板載せ部43Aに載せられる(図4(c)参照)。
【0048】
次に、上側ハンド4Aが後退位置201に後退させられるとともに下側ハンド4Bが前進位置202に前進させられる。この際、上側ハンド4Aの上側基板保持機構40Aが基板61を保持する。また、下側ハンド4Bの下側基板保持機構40Bが基板61を解放する(図4(d)参照)。
【0049】
次に、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが所定下降高さだけ下降される。この下降動作は、昇降体2を下降させることによって行われる。所定下降高さは、下側ハンド4Bが基板載置体55の上面より低く位置するように設定される。これにより、下側ハンド4bの基板載せ部43Bに載せられた未処理の基板61が基板載置体55の上面に載置される(図4(e)参照)。
【0050】
次に、下側ハンド4Bが後退位置に後退させられる(図4(f)参照)。
【0051】
図6を参照すると、この基板入替動作は、動作区間A~Eを含む。動作区間Aでは、上側ハンド4Aが前進する。動作区間Bでは、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが停止するとともに上昇する。動作区間Cでは、上側ハンド4Aが後退するとともに下側ハンド4Bが前進する。動作区間Dでは、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが停止するとともに下降する。動作区間Eでは、下側ハンド4Bが後退する。
【0052】
上側ハンド4A及び下側ハンド4Bの各動作区間(A、C、E)における速度は、定速区間の前後に加速区間と減速区間とを含むように変化する。従って、各動作区間における定速区間の速度の絶対値が、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bの各動作区間における最大速度の絶対値である。そして、上側ハンド4Aの前進及び後退の最大速度の絶対値(定速区間の速度の絶対値)と下側ハンド4Bの前進及び後退の最大速度の絶対値(定速区間の速度の絶対値)とが同じである。
【0053】
このような比較例の基板入替動作では、動作区間Bにおいて、上側ハンド4Aに処理済みの基板61を載せると、すぐ後退を開始し、短時間で最大速度に到達する。従って、この最大速度の絶対値が、上側基板保持機構40Aが安定して基板61を保持することが可能な速度の絶対値を超える場合には、上側基板保持機構40Aが基板61を保持し損なう可能性がある。
【0054】
次に、図1図2、及び図5(a)~(f)を参照しながら、本実施形態の基板搬送ロボット100の基板入替動作を説明する。本実施形態の基板搬送ロボット100のロボット制御器20は、ロボット本体10、上側基板保持機構40A、及び下側基板保持機構40Bを以下のように動作させる。
【0055】
図5(a)~図5(c)までの動作は、比較例の図4(a)~図4(c)までの動作と同じであるので、その説明を省略する。
【0056】
図5(c)に示すように、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが上述の所定上昇高さだけ上昇され、基板載置体55に載置された処理済みの基板61が上側ハンド4Aの基板載せ部43Aに載せられると、次いで、上側ハンド4Aが所定位置まで後退させられるとともに下側ハンド4Bが前進位置202に前進させられる。この際、上側ハンド4Aの上側基板保持機構40Aが基板61を保持する。また、下側ハンド4Bの下側基板保持機構40Bが基板61を解放する(図5(d)参照)。上記所定位置は、上側ハンド4Aの後退動作における後退時間、速度等を考慮して、適宜、設定される。
【0057】
次に、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが停止するとともに上述の所定下降高さだけ下降される。これにより、下側ハンド4bの基板載せ部43Bに載せられた未処理の基板61が基板載置体55の上面に載置される(図5(e)参照)。
【0058】
次に、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが後退位置201に後退させられる(図5(f)参照)。
【0059】
図7を参照すると、この基板入替動作は、上述の比較例と同様に、動作区間A~Eを含む。動作区間A及び動作区間Bは、上述の比較例と同じであるので、その説明を省略する。動作区間Cでは、上側ハンド4Aが所定位置まで後退するとともに下側ハンド4Bが前進する。動作区間Dでは、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが停止するとともに下降する。動作区間Eでは、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが後退する。
【0060】
そして、比較例の基板入替動作と同様に、上側ハンド4Aの前進及び後退の速度及び下側ハンド4Bの前進及び後退の速度は、定速区間の前後に加速区間と減速区間とを含むように変化する。従って、各動作区間では、定速区間の速度の絶対値が、各動作区間における上側ハンド4A及び下側ハンド4Bの最大速度の絶対値である。
【0061】
そして、上側ハンド4Aの前進の最大速度の絶対値と下側ハンド4Bの前進及び後退の最大速度の絶対値とが同じである。しかし、上側ハンド4Aの後退においては、動作区間Cにおける最大速度の絶対値が、動作区間Eにおける最大速度の絶対値より低速である。また、動作区間Cにおける上側ハンド4Aの最大速度の絶対値は、上側ハンド4Aの前進の最大速度の絶対値と下側ハンド4Bの前進及び後退の最大速度の絶対値より低速である。
【0062】
この基板入替動作では、動作区間Cの途中で上側ハンド4Aの上側基板保持機構40Aが基板61を把持(保持)する。上側基板保持機構40Aの基板61の把持(保持)動作は、基板61が上側ハンド4Aの後退による加速度によって一対の位置決め部41Aに押し付けられている状態で行う方が好ましい。それ故、上側基板保持機構40Aの基板61の把持(保持)動作は、例えば、動作区間Cにおいて、上側ハンド4Aが加速された後定速状態になった状態において行われる。上側ハンド4Aが後退を開始してから上側基板保持機構40Aの基板61の把持(保持)動作が終了するまでの期間が第1期間である。また、第1期間が終了してから上側ハンド4Aが後退位置201に位置するまでの期間が第2期間である。
【0063】
第1期間における上側ハンド4Aの最大速度の絶対値(動作区間Cにおける定速区間の速度(第1最大速度)の絶対値)は、第2期間における上側ハンド4Aの最大速度の絶対値(動作区間Eにおける定速区間の速度(第2最大速度)の絶対値)より十分低速に設定される。
【0064】
なお、後退動作における上側ハンド4Aの速度の絶対値は、第1期間における最大速度の絶対値が、第2期間における最大速度の絶対値より低速であればよく、種々の態様に速度を設定することができる。例えば、動作区間Dにいて、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが停止せずに低速で後退及び前進しつつ下降してもよい。また、上側ハンド4Aは、後退の開始から終了間際まで徐々に速度が増大するようしてもよい。また、動作区間Dにおいて、上側基板保持機構40Aが基板61を保持するようにしてもよい。
【0065】
この構成によれば、上側ハンド4Aが後退する期間において、上側基板載せ部43Aに載せた基板61を上側基板保持機構40Aに保持させるので、上側ハンド4Aが前進位置202に止まった状態で上側基板保持機構40Aが上側基板載せ部43Aに載せた基板61を保持する場合に比べて、上側ハンド4Aの後退時間を短くすることができ、ひいては、基板搬送時間が長くなるのを抑制することができる。
【0066】
また、ロボット制御器20が、上側ハンド4Aが後退する期間において、上側基板載せ部43Aに載せた基板61を上側基板保持機構40Aに保持させ、且つ、上側ハンド4Aが後退し始めてか上側基板保持機構40Aによって基板61が保持された時点までの第1期間における上側ハンド4Aの最大速度の絶対値が、基板61が保持された時点から上側ハンド4Aが後退を終了するまでの第2期間における上側ハンド4Aの最大速度の絶対値より低速であるように上側ハンド4Aの速度を制御するので、第1期間における最大速度の絶対値を上述のように十分低速にすることにより、上側基板載せ部43Aに載せた基板61を上側基板保持機構40Aが保持し損なう可能性を低減することができる。この「上側基板載せ部43Aに載せた基板61を上側基板保持機構40Aが保持し損なう可能性を低減できる最大速度の絶対値」は、実験、シミュレーション、計算等によって設定される。
【0067】
<基板受け渡し槽53に対する基板入替動作>
次に、基板受け渡し槽53に対する基板入替動作を説明する。
【0068】
この基板入替動作では、下側ハンド4Bが第1ハンドとして機能し、上側ハンド4Aが第2ハンドとして機能する。換言すると、この基板入替動作は、上述の基板処理槽52に対する基板入替動作において、上側ハンド4A及び上側基板保持機構40Aを、それぞれ、下側ハンド4B及び下側基板保持機構40Bと読み替え、且つ、下側ハンド4B及び下側基板保持機構40Bを、それぞれ、上側ハンド4A及び上側基板保持機構40Aと読み替えた動作と基本的に同じである。但し、「所定下降高さ」は、上側ハンド4Aが基板載置体55の上面より低く位置するように設定される。
【0069】
この基板入替動作が終了すると、図5(f)に示すように空の状態であった下側ハンド4Bの下側基板載せ部43Bに、図5(a)に示すように未処理の基板61が載せられてこれが下側基板保持機構40Bに把持され、且つ、図5(f)に示すように上側ハンド4Aの上側基板保持機構40Aが保持していた処理済みの基板61が引き渡されて、図5(a)に示すように上側基板保持機構40Aが解放された状態になるとともに上側基板載せ部43Aが空の状態になる。
【0070】
そして、以上の基板入替動作が、順次、各基板処理槽52に対して行われる。
【0071】
{変形例}
本変形例では、上述の実施形態において、ロボット制御器20が、上側ハンド4A又は下側ハンド4Bを第1ハンドとして機能させる場合、上側ハンド4A又は下側ハンド4Bの後退動作において、第1期間における上側ハンド4A又は下側ハンド4Bの最大加速度の絶対値が、第2期間における上側ハンド4A又は下側ハンド4Bの最大加速度の絶対値より低加速度であるように上側ハンド4A又は下側ハンド4Bの動作を制御してもよい。
【0072】
この構成によっても、基板搬送時間が長くなるのを抑制することができ、且つ、上側基板載せ部43A又は下側基板載せ部43Bに載せた基板61を上側基板保持機構40A又は下側基板保持機構40Bが保持し損なう可能性を低減することができる。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態によれば、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bが前進位置202に止まった状態で上側基板保持機構40A又は下側基板保持機構40Bが上側基板載せ部43A又は下側基板載せ部43Bに載せた基板を保持する場合に比べて、上側ハンド4A又は下側ハンド4Bの後退時間を短くすることができ、ひいては、基板搬送時間が長くなるのを抑制することができる。また、上側ハンド4A及び下側ハンド4Bを進退させる際に基板保持機構40A、40Bが基板61を保持し損なう可能性を低減することができる。
【0074】
(その他の実施形態)
基板搬送ロボットは、単腕のロボットでもよい。
【0075】
また、上記実施形態において、基板搬送ロボット100の一対のアームが垂直多関節型であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態において、基板搬送ロボット100では、一対のハンドが、アームを有せず、直接、旋回体2bに設けられていてもよい。この場合、一対のハンドは、上下に重ねて、基板搬送方向に進退可能に構成される。
【0077】
基板搬送ロボット100は、上記実施形態の使用環境以外の使用環境で用いられてもよい。例えば、特開2006-086294号公報に記載されたような2台のロボットによる基板授受動作に用いることができる。
【0078】
また、基板が円形のウェハ以外のものであってもよい。例えば、基板が液晶ディスプレイのガラス基板であってもよい。
【0079】
上述の実施形態において、上側ハンド4Aの後退動作と下側ハンド4Bの後退動作の少なくとも一部が同時に行われることを説明した(図7の動作区間E)。こうすることによって基板入替動作中の上側ハンド4Aの後退動作時間を増やすことができる。その結果、基板入替動作の時間を長くすることなく、後退動作における上側ハンド4Aの速度の絶対値を低くする、又は、後退動作における上側ハンド4Aの加速度の絶対値を低くすることができる。上側ハンド4Aの速度や加速度の絶対値を低くすることで、上側ハンド4Aに保持された基板が上側ハンド4Aに対してズレることを防止できる。この場合の上側ハンド4Aは、把持機構や吸着機構を有さなくてもよい。例えば上側ハンド4Aは、ハンドに載せられた基板の自重に起因して基板とハンドとの間に発生する摩擦力のみによって基板を保持する載置式ハンドであってもよく、ハンドに載せられる基板の側面の一部または全部を囲うように設けられ、垂直方向に延在する壁を有し、その壁に囲われた領域に基板を収容するハンドであって把持機構や吸着機構を有さない、落とし込み式ハンドであってもよく、公知のベルヌーイ式ハンドであってもよい。
【0080】
また、図7の動作区間Aの一部または全部において下側ハンド4Bの前進動作が行われることで、上側ハンド4Aの前進動作と下側ハンド4Bの前進動作の少なくとも一部が同時に行われるようにしてもよい。こうすることによって基板入替動作中の下側ハンド4Bの前進動作時間を増やすことができる。その結果、基板入替動作の時間を長くすることなく、前進動作における下側ハンド4Bの速度の絶対値を低くする、又は、前進動作における下側ハンド4Bの加速度の絶対値を低くすることができる。下側ハンド4Bの速度や加速度の絶対値を低くすることで、下側ハンド4Bに保持された基板が下側ハンド4Bに対してズレることを防止できる。この場合の下側ハンド4Bは、把持機構や吸着機構を有さなくてもよい。例えば下側ハンド4Bは、載置式ハンドや落とし込み式ハンド、または公知のベルヌーイ式ハンドであってもよい。
【0081】
基板入替動作の少なくとも一部の期間において上側ハンド4Aの動作方向と下側ハンド4Bの動作方向が一致するようにしてもよい。
【0082】
図7の動作区間Dにおいて上側ハンド4Aが後退動作を行ってもよく、図7の動作区間Bにおいて下側ハンド4Bが前進動作を行ってもよい。
【0083】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の基板搬送ロボット及びその制御方法は、ハンドに基板保持機構を備えており、ハンドに基板保持機構を備えており、基板搬送時間が長くなるのを抑制すること及びハンドを進退させる際に基板保持機構が基板を保持し損なう可能性を低減することが可能な基板搬送ロボット及びその制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 基台
2 昇降体
2a 昇降軸
2b 旋回体
3A 上側アーム
3B 下側アーム
4A 上側ハンド
4B 下側ハンド
10 ロボット本体
20 ロボット制御器
40A 上側基板保持機構
40B 下側基板保持機構
41A、41B 位置決め部
42A、42B 押圧部
43A 上側基板載せ部
43B 下側基板載せ部
51 真空室
52 基板処理槽
53 基板受け渡し槽
55 基板載置体
100 基板搬送ロボット
200 基板搬送方向
201 後退位置
202 前進位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7