(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】生体サンプルの電気パルスに基づく活性化のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/00 20060101AFI20231110BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20231110BHJP
A61N 1/36 20060101ALN20231110BHJP
【FI】
A61N1/00
A61M1/36 185
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2020543970
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 US2019018747
(87)【国際公開番号】W WO2019164928
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-27
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】カイアファ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ネクラエス,ヴァシーレ ボグダン
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363412(US,A1)
【文献】米国特許第06348176(US,B1)
【文献】特表2010-510864(JP,A)
【文献】特開平11-322619(JP,A)
【文献】特表2017-530349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0246572(US,A1)
【文献】特表2003-523236(JP,A)
【文献】特開2006-197872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00-1/44
A61M 1/36-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジレール(150、222)と、前記カートリッジレールに隣接したサンプルローダー電極の対(152、154、226、228)とを有し、前記カートリッジレールが、複数のキュベット(132、224)を含むキュベットカートリッジ(130)を収容するように構成され、前記キュベットカートリッジの各キュベットが、それぞれ電極対(136、138)を有する、サンプルローダー(104)と、
前記キュベットカートリッジに接触する機械的レバー(162)を使用して、前記カートリッジレールに沿って、前記キュベットカートリッジを動かすように構成されたモーター(163)と、
前記サンプルローダー電極の対の間に、電気パルスを生成するように構成されたパルス発生回路(102)と、
前記モーターおよび前記パルス発生回路に通信可能に結合されたコントローラ(106)とを備え、
前記コントローラが、
前記モーターにより、前記複数のキュベットの第1のキュベットの電極対がそれぞれ、前記サンプルローダーの対に電気的に結合する、第1位置に、前記キュベットカートリッジを動かし、
前記パルス発生回路により、前記サンプルローダーの電極の対間に電気パルスを生成して、前記第1のキュベット内にパルス電界を生成し、
前記モーターにより、前記複数のキュベットの第2のキュベットの電極対がそれぞれ、前記サンプルローダーの対に電気的に結合する第2位置に、前記キュベットカートリッジを前記第1位置から動かすように構成され、
前記コントローラが、多血小板血漿サンプル中の血小板の活性化に関連する第1の手順を含むメモリを有する、電気パルス発生システム(100)。
【請求項2】
前記機械的レバーがねじレバーを含む、請求項1に記載の電気パルス発生システム。
【請求項3】
前記カートリッジレールが、複数の機械的停止部を備え、各機械的停止部は、複数の位置のうちの1つの位置に関連付けられる、請求項1に記載の電気パルス発生システム。
【請求項4】
前記カートリッジレールが、線形カートリッジレールを含む、請求項1に記載の電気パルス発生システム。
【請求項5】
前記カートリッジレールが、円形カートリッジレールを含む、請求項1に記載の電気パルス発生システム。
【請求項6】
前記メモリが、血液サンプル中の血小板の活性化に関連する第2の手順を含む、請求項
1に記載の電気パルス発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、自動カートリッジデバイスまたはフローセルデバイスを使用する方法およびシステムによる、電気パルスに基づく生体サンプルの活性化に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、以下に説明および/または請求される、本開示の様々な態様に関連し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを意図している。この説明が、本開示の様々な態様を理解しやすくする背景情報を読者に提供するのに役立つと考えている。したがって、これらの説明は、上記の観点から読まれるべきであり、従来技術の承認として読まれるべきではないことが理解されたい。
【0003】
診療所やその他の医療施設で採用され得る、新たな治療方法として、活性化多血小板血漿(「活性化血小板」とも称される)の使用が挙げられる。例えば、活性化多血小板血漿を使用して、治療用途のための活性化血小板化合物を生成することができる。活性化血小板化合物の治療用途として、創傷治癒(手術後など)および止血の促進が挙げられる。特に、神経損傷、腱炎、変形性関節症、心筋損傷、ならびに骨の修復および再生などの多く多様な損傷および症状についての創傷治癒に、活性化血小板治療が供される。患者に使用される活性化血小板生成物は患者自身から由来し得る。即ち、活性化血小板化合物が患者自身の組織および/または体液から得られるのである。したがって、患者からの血液サンプルを使用して、患者を治療するために使用される活性化血小板化合物を得ることができる。
【0004】
一例として、医師が患者から採決し、血液サンプル中の血小板を活性化し得る。活性化されると、血液内の血小板は成長因子とタンパク質を放出し、これらが創傷治癒カスケードの向上を図る。したがって、臨床ワークフローとしては、患者からの採決、血小板を分離するための血液遠心分離、および体外血小板活性化を含み得る。血小板の活性化は、生体サンプルをパルス電界に曝露することを含み得る。次いで、活性化血小板または血小板ゲルは、創傷部または他の治療部位に投与され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体サンプルに電界を印加できる既存の装置の空間的および幾何学的制約により、パルス電界を使用して活性化できるサンプルの容量は、キュベットの容量(通常10μlから1mlである)に限定され得る。結果として、臨床医は、サンプルの量がキュベットの容量を大幅に上回る、血小板活性化ベースの治療に電気パルスを採用することに大きな困難を感じ得る。大量の活性化血小板化合物を生成するためプロセスを手動で繰り返すと、多くの場合、サンプル間で一貫性が損なわれ、治療効果が弱まる。さらに、生体サンプルへの電界の印加に使用される既存のデバイスが、臨床用設定での使用には適切でない可能性もある。既存のパルス発生システムは、血液または多血小板血漿サンプルの受容に適した設定ではない可能性があり、血小板活性化のために事前に構成された手順が欠如している可能性がある。これらのシステムはまた、生成物の無菌性を維持するための保護手段を欠いている場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
最初に請求された発明の範囲に該当する、特定の実施形態を以下にまとめる。これらの実施形態は、特許請求される発明の範囲を限定することを意図しておらず、むしろこれらの実施形態は、本発明の可能な形態の簡潔な要約を提供することのみを意図している。実際、本発明は、以下に述べる実施形態と同様または異なり得る様々な形態を包含することができる。
【0007】
一実施形態では、電気パルス発生システムが説明される。電気パルス発生システムは、カートリッジレールに隣接するサンプルローダー電極の対を有するサンプルホルダーを含む。カートリッジレールは、複数のキュベットを有するキュベットカートリッジを保持することができ、各キュベットは、それぞれ電極対を有する。システムはまた、キュベットカートリッジをカートリッジレールに沿って動かすことができる機械的モーターと、カートリッジレールに隣接するサンプルローダー電極の対に電気的に接続されたパルス発生回路と、パルス発生回路および機械的モーターを制御するコントローラとを備える。コントローラは特に、機械的モーターを操作して、カートリッジ内の対象キュベットの電極対がそれぞれサンプルローダー電極の対と位置合わせされるようにキュベットカートリッジを配置し、パルス発生回路を操作して、対象キュベット内にパルス電界を発生させる。
【0008】
別の実施形態では、別の電気パルス発生システムが説明される。この電気パルス発生システムは、チャネルによって接続された第1および第2のリザーバを有するサンプルローダーと、チャネルを介した第1から第2のリザーバへの流れを生成することができるポンプとを備える。チャネルは、電極対を有する。システムはさらに、電極対に結合されたパルス発生回路を含む。システムはまた、処理回路を有するコントローラと、ポンプを作動させて第1の流量の流れを生成し、かつパルス発生回路に、電極対間に電気パルスシーケンスを発生させる命令を含むメモリとを備える。生成された電気パルスシーケンスは、流量に基づく、電界強度またはパルス周波数などの少なくとも1つの特徴を有し得る。
【0009】
別の実施形態では、活性化血小板治療システムが説明される。このシステムは、内部チャネルと、内部チャネルに結合された電極対と、チャネルを通る流れを生成することができるポンプとを有する血小板活性化回路とを備える。システムはさらに、内部チャネルに結合された収集管および投与管を備える。収集管は、血液サンプル(例えば、生の血液、血漿、多血小板血漿)が注入され得、投与管は、活性化血小板生成物が注入され得る。システムはさらに、ポンプを作動させて、収集管から投与管への内部チャネルを介した流れ生成し、かつ血液サンプル中の血小板を活性化する電極対の間にパルス電界を生成するコントローラを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、よりよく理解されるであろう。図面全体を通して、同様の文字は同様の部分を表す。
【
図1】実施形態に係る、大量の血小板の活性化に使用することができるパルス発生システムの概略図である。
【
図2】実施形態に係る、生体サンプルの大量血小板活性化のために使用され得る線形キュベットカートリッジの概略図である。
【
図3】実施形態に係る、
図2の線形キュベットカートリッジと共に使用することができるサンプルローダーの概略図である。
【
図4A】実施形態に係る、
図3のサンプルローダーの動作を示す一連の概略図の第1の概略図である。
【
図4B】実施形態に係る、
図3のサンプルローダーの動作を示す一連の概略図の第2の概略図である。
【
図4C】実施形態に係る、
図3のサンプルローダーの動作を示す一連の概略図の第3の概略図である。
【
図4D】実施形態に係る、
図3のサンプルローダーの動作を示す一連の概略図の第4の概略図である。
【
図4E】実施形態に係る、
図3のサンプルローダーの動作を示す一連の概略図の第5の概略図である。
【
図5】一実施形態に係る、血小板活性化のためのカートリッジベースのキュベット取り付けシステムを操作する方法のフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る、生体サンプルの大量活性化のために使用され得る円形サンプルローダーと、円形キュベットカートリッジの概略図である。
【
図7】実施形態に係る、生体サンプルの大量活性化のために使用され得るフローベースのサンプルローダーの概略図である。
【
図8A】実施形態に係る、
図7のサンプルローダーの動作を示す一連の概略図の第1の概略図である。
【
図8B】実施形態に係る、
図7のサンプルローダーの動作を示す一連の概略図の第2の概略図である。
【
図9】実施形態による、オンデマンドのサンプル収集および活性化のために使用され得る、フローベースのオンデマンド血小板活性化システムの概略図である。
【
図10】実施形態による、オンデマンドのサンプル前処理および活性化のために使用され得る、フローベースのオンデマンド血小板活性化システムの概略図である。
【
図11】実施形態に係る、オンデマンド血小板活性化システムのために使用され得るフローベースのサンプルローダーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本主題の1つまたは複数の具体的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の説明を簡潔にするため、実際の実装における所定の特徴は、明細書では省略されない場合がある。このような実際の実施の開発では、あらゆるエンジニアリングプロジェクトや設計プロジェクトと同様に、実施毎に異なり得るシステム関連およびビジネス関連の制約の遵守など、開発者固有の目標を達成するために、実施固有の多数の決定を行う必要があることが理解されたい。そのような開発努力は複雑で時間がかかる可能性があるが、それでも、本開示の利益を享受する当業者にとっては、設計、組み立て、および製造の日常業務の範囲内であることを理解されたい。
【0012】
本発明の様々な実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」、および「前記(said)」は、1つまたは複数の要素があることを意味するものとする。「備える」、「含む」、および「有する」という用語は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。
【0013】
本明細書に示される例または図の表現は決して、それらで仕様される用語を制限、限定、または定義するものと見なされるべきではない。むしろ、これらの例または図の表現は、様々な特定の実施形態に関して記載されていると見なされるべきであり、あくまでも例示と見なされるべきである。当業者には、これらの例または図の表現と共に使用される任意の1または複数の用語が、一部の実施形態や明細書のその他箇所で使用されなかったとしてもそれら実施形態にも適用され、それら実施形態のすべてが、当該1または複数の用語の範囲に含まれることが理解されよう。そのような非限定的な例および図の表現を指定する言語には、「例えば」、「例えば」、「など」、「例えば」、「含む」、および「一(ある)実施形態における」が含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
血小板の活性化および/または凝集により、体内および/または体外創傷治療を実現できる。体内血小板活性化では、不活性多血小板血漿(PRP)が損傷部位に投与または注入され、結合組織に存在するコラーゲンなどの体内に自然に存在する化合物によって活性化される。一方、体外プロセスでは、前処理された血液サンプル(PRPなど)の血小板が、損傷部位に注入される前に活性化される。活性化は、血液、血漿、またはPRPサンプルをトロンビンなどの血小板活性化化合物に曝露することで行われ、成長因子(例えば、血小板由来成長因子(PDGF))の放出を誘起する。活性化は、血液、血漿、またはPRPサンプルをパルス電界に曝露することによっても実現され得る。例えば、体外血小板活性化の場合、医師は患者から採血し、血液サンプルを遠心分離してPRPサンプルを生成し得る。塩化カルシウム(CaCl2)およびトロンビンなどの血小板活性化化合物をPRPサンプルに添加して、血小板の活性化をトリガーしてもよい。これらの添加剤は、溶液、懸濁液として、またはそのまま添加され得る。PRPサンプルは、特定のパルスシーケンス手順を使用することによる血小板のカスタム活性化および/または成長因子の放出に使用され得る電界パルスに曝露されてもよい。より具体的には、印加され得る1つ以上のカスタマイズ可能または調整可能な電界パルスに応じて、様々なレベルまたは量の成長因子の放出が実現され得る。電界のカスタマイズは特に、ターゲット電界、ピーク電圧、パルス幅、パルス数、パルス周期、および/またはパルス形状の調整によって行われ得る。
【0015】
成長因子の放出に加えて、単独で、または活性化化合物と組み合わせて印加されるパルス電界を使用して、活性化手順における他の因子の放出を制御してもよい。例えば、活性化血小板(または曝露されたサンプル内の他の細胞)は、適切な電界パルスに応じて、内因性抗酸化物質、活性酸素種、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP-2)およびその他の因子を、制御または調整可能に放出し得る。したがって、調整可能またはカスタマイズ可能な活性化は、成長因子のカスタマイズされた放出だけでなく、創傷治癒プロセスに関連する可能性がある他の因子(上に挙げたものなど)の放出も伴い得る。電気パルスを使用した、カスタマイズされた活性化血小板組成物の生成については、米国特許9,752,120号として発行され、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2015年3月31日に出願された「成長因子レベル調整可能な活性化血小板組成物」と題する米国特許出願第14/674,971号に記載されている。
【0016】
本明細書に記載の体外血小板活性化は、血液、血漿、PRP、または血小板を含む任意の懸濁液などの血液サンプルを電気パルスに曝露して(例えば、パルス電界への曝露)、血小板活性化を実現するものであるが、他の種類のエネルギーへの曝露も考えられ、包含される。体外成長因子放出のための方法は、電気パルス刺激の前に血液サンプルに添加される化学添加物および/または血小板活性化化合物を伴っても、伴わなくてもよい。本明細書に記載のように、活性化は、活性化曝露のパラメータに応じて、サンプル内の細胞(例えば、赤血球)の破壊(例えば、溶解)を伴っても、伴わなくてもよい。特定の実施形態では、互いに異なる成長因子レベル、および/または成長因子の異なる割り合いとなる、異なるパラメータまたは、パラメータの組み合わせによる、異なる電気パラメータ(例えば、振幅、電圧、電界、エネルギー密度、電流、パルス幅、パルス数など)を使用して、電気刺激または活性化が適用され得る。このような異なる複数の配合の活性化組成物により、異なる複数の生物学的または医学的効果が実現され得る(例えば、創傷治癒の向上)。したがって、所望の効果から、所与の細胞組織の活性化に利用される電気パルスパラメータが決定され得る。
【0017】
パルス電界を使用する生体外血小板活性化は、キュベットの導電性電極の間にサンプルを配置し、2つの導電性電極の間に電気パルス電位を生成することにより行われる。導電性電極間のサンプルの領域は、パルス電界に曝露され得る。したがって、同領域内の血小板の活性化が実現される。本明細書では電極ギャップまたはキュベットギャップとも称される2つの電極間の間隔は、現実的な考慮事項により、通常1~2cm未満に制限される。電極間に印加される所与の電圧について、サンプルローダーの電極対間の間隔が大きいほど、印加電圧とキュベットギャップ距離の比として定義されるパルス電界が弱くなり得る。例えば、1cm幅のキュベットを使用して1kV/cmの電界強度を得るために、1kVパルスが使用され得る。一方、10cmのキュベットギャップを持つ仮想のキュベットを使用して同じ電界強度を実現するには、10kVのパルスを使用する必要がある。これには非現実的なほど複雑なパルス発生システムが必要となり得る。結果として、生成され得る活性化サンプルの量は、数ミリリットルに制限される(例えば、1~2ml未満)。数ミリリットル(10~20ml、またはそれ以上)の活性化血小板生成物が効果を示す治療では、電界パルスの使用は煩雑になり得る。
【0018】
本明細書に記載の実施形態は、生体外でより大量の活性化血小板化合物を生成するために使用することができる電界活性化装置に関する。本明細書で詳述するように、いくつかの実施形態は、カートリッジ式機構に配置された複数のキュベットを活性化するための自動化された方法を利用する。一部の実施形態は、「フローセル」、すなわち、活性化された電極間で、制御された流れ内の血液サンプルをパルス電界に曝露するための、電極表面を有し得るフローチャネルを利用する。システムの操作方法についても説明する。本明細書の方法およびシステムは、血液サンプルにおける血小板活性化について説明されるが、本明細書で説明される方法およびシステムは、生体物質がパルス電界に曝露され得る他の用途(例えば、細胞へのヌクレオチド挿入のためのエレクトロポレーションシステムや、免疫療法のための免疫細胞の活性化)にも適用され得る。
【0019】
上記を念頭に、
図1は、大量の体外血小板活性化および、カスタマイズ可能または調整可能な成長因子放出のためのパルス発生システム100を概略的に示す。システム100は、パルス発生回路102およびサンプルローダー104を含む。図示の実施形態では、サンプルローダー104は、電気接続105によってパルス発生回路102に電気的に結合されている。以下に詳述するように、サンプルローダー104の実施形態は、少なくとも、電気接続105に電気的に結合された一対の電極と、一対の電極間に配置されたボリューム領域を含むサンプル用の容器とを含む。本明細書で論じられる電気接続105は、抵抗性、容量性、および/または誘電性であり得ることを理解されたい。
【0020】
特定の実施形態では、システムは、制御および入力回路を含み得、専用の筐体に実装され得るか、またはコンピュータまたは他のプロセッサベースの制御システムに結合され得る。例えば、システム100は、パルス発生回路102を制御するプロセッサ106を含み得る。そのために、プロセッサ106は、パルス発生回路102に、サンプルローダー104に配置された血液、血液成分または血小板懸濁液を電気的に刺激または活性化させてもよい。電界強度、電極分離距離、および生成された電気パルスに関連する他のパラメータは、本明細書に記のとおり、活性化手順中に互いに対する成長因子レベル間で変化させるための、変化または調整できる要素である。これら要素に基づいて、プロセッサは、パルス発生回路102が電気接続105に生成する電気信号を決定することができる。
【0021】
プロセッサ106はまた、詳細に後述するように、制御信号109を使用してサンプルローダー104の動作のための機構を制御することもできる。例えば、フロー中に生体サンプルがパルス電界に曝露されるフローセルでは、流量とフローチャネルの直径は調整可能な要素であり、活性化血小板化合物の成長因子レベルを変化させるために使用され得る。したがって、プロセッサは、電気接続105で提供されるパルスを、制御信号109を介して提供される制御信号に合わせ得る。
【0022】
システム100は追加の構成要素として、プロセッサ106によって実行される命令を格納するメモリ108を含み得る。この命令は、パルス発生回路102を使用して電気パルスを生成するための手順および/またはパラメータ、ならびに制御信号109を使用してサンプルローダー104を動作させるための命令を含み得る。プロセッサ106は、例えば、汎用シングルまたはマルチチップマイクロプロセッサを含み得る。さらに、プロセッサ106は、特定用途向けプロセッサまたは回路などの、従来の任意の専用プロセッサであってもよい。メモリ108は、ランダムアクセスメモリ、大容量記憶装置、固体メモリ装置、または取り外し可能なメモリなどの任意の適切な非一時的なコンピュータ可読媒体であり得る。
【0023】
さらに、ディスプレイ110は、システム100の操作に関連する指示を操作者に提供することができる。システム100はまた、パルス発生回路102およびサンプルローダー104を操作するため、さらにシステム100動作のための適切な電気パルスパラメータ、サンプルの数、サンプルの体積、フローセルの直径、電極ギャップ寸法、フロー圧力、および他のそのようなパラメータの選択または指定のためのユーザ入力装置112(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、トラックボール、PDAまたはスマートフォンなどのハンドヘルドデバイス、あるいはそれらの任意の組み合わせ)を備え得る。さらに、ユーザは、ユーザ入力装置112を使用して、メモリに格納され得る、多数の事前設定パルス特性(それぞれ異なる創傷治癒の段階に対応する特性)から、当該特性を選択し得る。ユーザ入力装置112は、「オンデマンド」相互作用を可能にする専用制御システムであってもよい。そのようなシステムの例は、
図9~
図11に示される「オンデマンド」実施形態に関して説明される。
【0024】
例として、一実施形態では、システム10によって生成されるパルスは、用途に応じて、約1ナノ秒から約100マイクロ秒の持続時間、および約0.1kV/cmから約350kV/cmの電界強度を有し得る。活性化手順ではまた、パルスシーケンス(すなわち、一連の電気パルス)を利用することができ、パルスシーケンス内の各パルスは、異なる強度および/または持続時間の電界を発生することができる。システム100によって生成されるパルスは、通常、0.1kV/cm以上の電界強度を有するが、通常、パルスが細胞を含む懸濁液の破壊電界を超えることはない。さらに、いくつかの実施形態では、パルス発生システム100は、感知機能を有し得る。そのために、パルス発生回路102は、サンプルローダー104内のサンプルを感知信号に曝露してもよい。感知信号(例えば、電圧)は、細胞活性化に使用される電界よりも小さい電界強度を生じさせる電気パルスであり得、感知信号(例えば、電圧に対応する電流)に対する応答は、パルス発生回路102で測定され得る。本明細書に記載の実施形態では、電極は、金属電極(例えば、ステンレス鋼、タングステン、プラチナ、イリジウム、プラチナ-イリジウム合金、酸化イリジウム、窒化チタンなどを含む)、塩橋電極、カーボンナノチューブ電極、導電性ポリマー(例えば、導電性ポリマーフィルム)であり得る。
【0025】
図2は、活性化生成物の体積を増加させるために使用され得るキュベットカートリッジ130を図示する。キュベットカートリッジ130は、線形キュベットカートリッジであってよい。図示のキュベットカートリッジ130は、5つのサンプル容器132A、132B、132C、132D、および132Eを含む。各サンプル容器は、サンプルを入れるためのそれぞれの内部空間134A、134B、134C、134D、および134Eを有する。各内部空間は、2つの電極の間に配置され得る。この例では、内部空間134Aは電極136Aおよび138Aの間に配置され、内部空間134Bが電極136Bおよび138Bの間に配置され、内部空間134Cが電極136Cおよび138Cの間に配置され、内部空間134Dが電極136Dおよび138Dの間に配置され、内部空間134Eが電極136Eおよび138Eの間に配置される。図示の実施形態では、キュベットカートリッジ130は一体的に構築されている。キュベットカートリッジ130はまた、内部にキュベットを配置することができるフレームを有することによって、モジュール式の実施形態で構築することができる。例えば、容器132A、132B、132C、132D、および132Eは、個々のキュベットを収容するように構成された構造的支持体(例えば、キュベット容器、キュベット収容可能フレーム)であり得る。個々のキュベットは、それぞれ、内部空間134A、134B、134C、134D、および134Eの内の対応するものと、電極対136Aおよび138A、136Bおよび138B、136Cおよび138C、136Dおよび138D、136Eおよび138Eの内の対応するものを有し得る。本明細書で説明する例は5キュベットカートリッジに関するが、本説明は5キュベットを有する線形キュベットカートリッジの実施形態に限定されず、キュベットの数は、線形キュベットカートリッジ設計の調整により増減し得る。
【0026】
図2のカートリッジ130は、
図3に示されるサンプルローダー104と組み合わせて使用され得る。図示のサンプルローダー104は、線形カートリッジサンプルローダーである。サンプルローダー104は、キュベットカートリッジ130を収容するように構成されたカートリッジレール150を有し得る。概して、カートリッジレール150は、キュベットカートリッジ130の少なくとも2倍の長さであり得る。サンプルローダー104はまた、
図1に示すように、電気接続105に結合され得る電極152および154(例えば、サンプルローダー電極)を有し得る。さらに、カートリッジレール150は、機械的レバー162を有し得る。機械的レバー162は、機械的レバー162を動かすことができる制御可能モーター163に結合し得る。機械的レバー162は、
図4A、
図4B、
図4C、
図4D、および
図4Eに詳細に示すように、プロセス中にキュベットカートリッジ130を動かすために使用され得る。即ち、機械的レバー162を使用して、キュベットカートリッジ130をカートリッジレール150に沿って移動させ、キュベットカートリッジ130の電極(例えば、電極136A~Eおよび電極138A~E)を電極152および154に位置合わせすることができる。
【0027】
図3に示すように、機械的レバー162は、機械的停止部164を備えた「ばね」システムを使用して実現され得る。そのようなシステムでは、キュベットカートリッジ130を定位置に保持する機械的停止部164は、キュベットカートリッジの移動を妨げないように取り外されてもよい。協調動作として、機械的レバー162は、モーター163から動力を受け取り、キュベットカートリッジを次の機械的停止部164に移動させることができる。機械的レバー162は、「ねじ」システムを使用して実現することもできる。このようなシステムでは、モーター163は、ねじ結合を介して機械的レバー162に結合され、機械的レバー162の動きは、モーター163の回転数によって制御され得る。機械的レバー162およびキュベットカートリッジ130の制御された動きを生成可能な他の方法も採用され得る。
【0028】
図4A、
図4B、
図4C、
図4D、および
図4Eの概略図は、
図2および
図3に示された線形カートリッジシステムの動作を示す。
図4Aの第1の概略
図180Aは、動作開始時の線形カートリッジシステムを示している。キュベットカートリッジ130は、カートリッジレール150の端部に配置され得る。この初期段階では、キュベットは電極152および154に電気的に結合されていない。初期化の後、
図4Bの第2の概略
図180Bに示すように、電界曝露用に第1のキュベットを準備するために、キュベットカートリッジ130が移動されてもよい。機械的レバー162は、第1のキュベットの電極が電極152および154に位置合わせされるように、キュベットカートリッジ130を動かしている。この位置で、パルス発生回路(例えば、
図1のパルス発生回路102)は、第1のキュベットにパルス電界を生成して、そこに配置された血液サンプルまたはPRPサンプルを活性化し得る。
【0029】
最初の活性化後、機械的レバー162は、キュベットカートリッジ130を
図4Cの第3の概略
図180Cに示す位置に移動させてもよい。
図4Cに示す位置では、一連のキュベットのうちの第2のキュベットの電極を電極152および154と位置合わせしてもよい。このとき、パルス発生回路は、第2のキュベットにパルス電界を生成して、そこに配置された血液サンプルまたはPRPサンプルを活性化し得る。キュベットカートリッジ130の移動および電極152および154を介した電気パルス印加を含むプロセスは、キュベットカートリッジ130の最後のキュベットがパルス電界に曝露されるまで繰り返されてもよい。この最終状態を、
図4Dの第4の概略
図180Dに示す。3番目と4番目のキュベットでのサンプルの活性化(明確さのため、この例では不図示)後にこの位置に到達し得る。第4の概略
図180Dに示される位置では、活性化パルスは、電極152および154を介して提供され得る。最後のサンプルの活性化後、機械的レバーは、キュベットカートリッジ130を、
図4Eの第5の概略
図180Eに示す最終位置に移動させることができる。この時点で、活性化血小板化合物は、収集および治療での使用が可能であり得る。
【0030】
キュベットカートリッジ130およびカートリッジレール150は、パルス発生回路102と連携して、より複雑な活性化手順を実現するために使用され得る。例えば、機械的レバー162は、
図4A~
図4Dに示されるものとは反対の方向へのキュベットカートリッジ130の移動を可能にし得る。
図4A~
図4Dに示すものとは反対方向へのキュベットカートリッジ130の移動は、カートリッジレール150に動作可能に結合された第2の機械的レバーによっても実現され得る。そのようなシステムでの血小板活性化手順は、「休止期間」によって間隔を空けた、パルス電界パルスの複数回の印加を含み得る。例えば、システム100のメモリに格納された手順は、キュベットカートリッジ130の各キュベットが上述の方法で第1のパルスシーケンスを受信する第1のパルス命令と、キュベットカートリッジを自動的に開始点に戻すカートリッジ戻し命令(つまり、キュベットカートリッジ130が
図4Eに示す位置から
図4Aに示す位置に戻る)と、キュベットカートリッジ130の各キュベットが第2のパルスシーケンスを受けるようにする第2のパルス命令とを含み得る。この種の手順は、時間を大幅に延長することなく、大量の血液サンプルの活性化手順に「休止期間」を含めるように利用でき得る。実際、2つのパルスシーケンスの間に1分の休止期間を含む手順では、カートリッジ戻し命令により1分強が追加され得る。ただ一方で、単純な手順(例えば、第1および第2のパルスシーケンスをキュベットカートリッジレールの2番目のキュベットに印加する前に第1および第2のパルスシーケンスをキュベットカートリッジレールの最初のキュベットに印加する)でも、キュベットカートリッジ内のキュベット毎に少なくとも1分が追加され得る。
【0031】
大容量処理のためのキュベットカートリッジの使用を、
図5のフローチャートによって示される方法200を参照にさらに説明する。ボックス202では、ユーザは全血液またはPRPサンプルをキュベットカートリッジの複数のキュベットに挿入し得る。キュベットは手動で、または自動システムを使用して取り付け可能である。ボックス204では、モジュール式の実施形態(例えば、キュベットカートリッジが上述のようにキュベットを収容するための構造的支持体であるシステム)において、キュベットをキュベットカートリッジに挿入してもよい。一体的に構築されたキュベットカートリッジでは、ボックス202および204によって説明されるプロセス同士が、ある程度重複し得ることに留意されたい。ボックス206では、ユーザは、キュベットカートリッジを、カートリッジレールの初期位置に配置することができる。初期位置の非限定的な例は、上述の
図4Aに示されている。キュベットカートリッジを初期位置に配置した後、ユーザは、メモリに格納され得る手順を実行することによってシステム100のプロセスを開始してもよい。
【0032】
各キュベット内のサンプルを活性化するために、方法200は、ボックス208および210によって示されるプロセスを複数回繰り返してもよい。ボックス208では、サンプルローダー104の電極と位置合わせされたキュベットカートリッジのキュベットが、電界パルスに曝露されてもよい。ボックス210では、サンプルローダー104は、キュベットカートリッジを動かして、別のキュベットをサンプルローダー104の電極と位置合わせさせてもよい。上記繰り返しの例については、
図4A~
図Eを参照に説明した。さらに、上述のように、ボックス210によって示されるプロセスとして、カートリッジを移動させて、キュベットが複数のパルスシーケンスを受けるようにして、例えば「休止」期間を含む手順を実現するようにもできることにも留意されたい。プロセスの最後に、ボックス212で、キュベットカートリッジ内のキュベットは、手順によってカスタマイズされた、活性化血小板生成物を含み得る。ユーザは、キュベットから生成物を収集し、治療目的で使用し得る。
【0033】
上述の方法200は、非線形形状などの他の形状を有するサンプルローダー104でも利用可能である。概略
図220は、円形レール222を有するサンプルローダー104を示す。図示の円形レール222は、13個のキュベット224A、224B、224C、224D、224E、224F、224G、224H、224I、224J、224K、224L、および224Mを有する。図示のように、各キュベットは、サンプルローダー104の電極226および228と位置合わせされると、パルス発生回路102に電気的に結合する一対の電極を有する。円形レール222を有するシステムでは、
図5のボックス210に関連する動きは、円形レール222の円形回転(例えば、角回転)であり得る。本明細書で説明する例は13キュベットカートリッジに関するが、本説明は13キュベットを有する円形キュベットカートリッジの実施形態に限定されず、キュベットの数は、円形レール222の調整により増減し得る。
【0034】
上記のように、自動システム100における複数のキュベットの電気パルスへの曝露が、大容量処理のために利用され得る。
図7の
図240に示すような、電極を備えたフローセル241を使用することによって、大容量曝露も可能である。フローセル241は、2つのサンプルリザーバ242および244を含み得る。サンプルは、接続チャネル245を通ってサンプルリザーバ242と244の間を流れ得る。リザーバ242および244は、非導電性(例えば、非導電性)および/または生体適合性であり得るポリプロピレンおよび/またはポリエチレンバッグなどの可撓性プラスチックバッグとして実現され得る。可撓性プラスチックバッグを使用する実施形態では、リザーバ242と244との間の流れは、サンプルローダー104の圧縮システム(例えば、圧力ポンプ)によって生成し得る。圧縮システムを使用して流れを生成するためのメカニズムを、以下の
図8Aおよび
図8Bに参照してさらに詳細に説明する。接続チャネル245を介したリザーバ242と244との間の流れは、システム間の無菌フローのための他の機構、例えば、チャネル245に結合された蠕動ポンプを使用して発生し得る。
【0035】
チャネル245は、一対の電極246および248を含むように構成され得る。一対の電極246および248とチャネル245との間の配置は、電極246と248との間に電位が生じると、一対の電極間の領域に配置されたサンプル体積がパルス電界に曝露されるようになっている。チャネルを流れるサンプルが電極246および248と接触して、パルス電界の生成を可能にする電気回路を閉じることができるように電極246および248は、チャネル245の内部に表面を有する。
【0036】
フローセル241によると、電極ギャップ、すなわち一対の電極246と248間の距離と、リザーバ242および244の容量に対応する、処理対象サンプル体積とを非相関にでき得る。例えば、1mm~1cmの電極ギャップを有するフローセルは、例えば、500μl~100mlの範囲の体積を処理することができ、適切な設計であればこれを数リットルまで増大できる。サンプル体積と電極ギャップとが相関しないことで、パルス発生回路102によって提供される全体的な電圧が低減可能となり得る。実際、生成される活性化生成物のサンプル体積を減らすことなく、電極ギャップを減らすことができ得る。例えば、10mmの電極ギャップを有するフローセル241を使用して1kV/cmの電界を生成するために、パルス発生回路102は、電極246と248との間で100Vの電気パルスを使用し得る。一方、従来の1cmキュベットを使用して同じ1kV/cmの電界を生成するために、パルス発生回路102は、1kVを出力するように設計され得るが、これにはより複雑な発電回路が必要となる。
【0037】
図8Aおよび
図8Bは、フローセル241の動作を示す。
図8Aの第1の概略
図260は、フローセル241がサンプルを第1のリザーバ242から第2のリザーバ244に移送または移動させている状況を示している。この例では、第1のリザーバ242に結合された圧力ポンプは、リザーバ242の可撓性壁に圧力262を生成する。この圧力により、チャネル245を通じてサンプルを動かす流れ264が生じる。サンプルがチャネル245を通って流れる間、パルス発生回路102は、サンプルがチャネル245に沿って流れるとき、電極246と248との間に位置するサンプル体積内にパルス電界を発生させる。
図8Bの概略
図280に示すように、このプロセスは、すべてのサンプルがリザーバ242からリザーバ244に移動するまで継続し得る。このとき、第2のリザーバ244に結合された第2の圧力ポンプ(図示せず)は、リザーバ242の壁に圧力282を生成し、これによりチャネル245を介してリザーバ242に戻るサンプルの流れ284を生じる。流れ284が生じている間、パルス発生回路102は、サンプルがチャネルに沿って流れるとき、電極246と248との間に位置するサンプル体積内にパルス電界を発生させる。
【0038】
電極246および248を使用するパルス電界の印加は、連続的に印加されてもよい。そのようなシステムでは、パルス発生回路102は、高周波数交流(AC)パルス信号(正および負を繰り返す)を生成することができる。生成されるAC信号の周波数は、フロー264および284の流量、ならびにサンプルが接続チャネル245の内面に沿って流れるときにサンプルと接触する電極246および248の長さに基づいて決定される。例えば、いくつかの実施形態では、流速が速いほど、周波数が高くなり得る。別の例として、サンプルと接触する電極の長さが長いほど、低い周波数が利用され得る。流れ264の流量は、システム内の圧力から、またはチャネル245内の速度の直接測定に基づいて計算され得る。一例として、チャネル245に沿って測定された長さが1cmの電極246および248を備え、圧力262および282がチャネル245に沿って1cm/sの流量となるように構成されているフローセル241では、AC信号は約1Hzとなり得る。より一般的には、AC信号の周波数は、サンプル体積の一部または全体がパルス電界に曝されることを可能にするように調整され得る。チャネル245に沿って単一の対の電極246および248を有するシステムが説明されている、本明細書に記載の実施形態に対して多少の調整で、より多くの電極対が使用され得る。
【0039】
電極246および248を使用したパルス電界の印加は、流れ264および284を生成するポンプと協調するなどして、断続的に実施することもできる。そのために、流れと電気信号が「ストップアンドゴー」手順を使用して調整され得る。そのような手順において、短い圧力パルス(例えば、短時間の圧力パルス)が、チャネル245に沿ったサンプルの短い変位を生じるために印加され得る。短い圧力パルスに続いて、パルス電界をパルス発生回路102から発生させてもよい。短い圧力パルスとパルス電界を含むこのプロセスは、サンプル全体がリザーバ242と244の間を移動するまで繰り返され得る。
【0040】
フローセルは、オンデマンドの活性化システムにも使用され得る。同システムでは、血液サンプルは、使用時に活性化電界パルスに曝露される。
図9に示される活性化血小板システム300は、活性化生成物を生成するためのオンデマンドシステムの例を示す。この図では、活性化血小板システム300を使用して施術者304が患者302を治療中である。活性化血小板化合物は、血小板活性化装置306を使用して生成され得る。図示の例では、血小板活性化装置306は、収集管308を介して患者302から採血する。収集管308は、患者302の静脈に配置されるシリンジに結合されてもよい。血小板活性化装置306は、
図11を参照にさらに詳述されるように、患者302から収集された血液を、血液サンプルを活性化することができる一組の電気パルスに曝露させ得る。そして活性化されたサンプルは、投与管310を介して患者302に投与され得る。
【0041】
オンデマンド機能を実現するために、血小板活性化装置306は、圧力および電気信号を調整して、投与管310内の生成物の流れと、パルス電界を使用する血小板の活性化との間の調整をしやすくするように構成され得る。投与プロセス中に、施術者は入力方法を使用して、投与管310の端に配置された入力装置312(例えば、投与管310の端のノズル、活性血小板システムのペダル、またはその他任意の入力装置)またはその他の入力装置での、活性化血小板化合物流内の調整(例:増加、減少、停止、一時停止、再開、急速な増加、緩やかな増加、迅速な停止、緩やかな停止等)を要求し得る。入力装置312は、活性化血小板生成物を患者302に投与するために使用されてもよい。一実施形態では、入力装置312は、施術者304が血小板活性化装置306からの、治療用活性化生成物の流れの調整を要求するために使用することができるトリガーまたは他の何らかの入力機構を有し得る。別の実施形態では、血小板活性化装置306は、施術者304が入力装置312での、活性化生成物の流れの調整を要求するために使用することができるペダルに動作可能に結合され得る。そのために、トリガーまたはペダルは、上述のように圧力およびパルス電界などのパラメータを制御して流れを調整するプロセッサに通信可能に結合され得る。血小板活性化装置306が入力装置312で流れを調整する要求を受け取ると、血小板活性化装置306は、より多くの活性化生成物をオンデマンドで生成し、投与管310を介した活性化生成物の流れを調整し得る。この機能については、
図11を参照に詳述する。
【0042】
特定の治療において、サンプルは、パルス電界の活性化の前に前処理されてもよい。
図10に示される活性化血小板治療システム320は、前処理装置324に結合され得る血小板活性化装置322を含む。前処理システムの例には、例えば、生の血液生成物からPRPs生成物を生成するために使用され得る自動遠心分離システムが含まれる。前処理装置324は、前処理された生成物を入れることができる内部容器325を有し得る。収集管326により、内部容器325を血小板活性化装置322に結合してもよい。血小板活性化装置322は、
図11でさらに詳述するように、前処理装置324からの前処理生成物を、前処理生成物中の血小板を活性化する1つ以上の電気パルスシーケンスに曝露し得る。次に、活性化血小板生成物は、投与管310を介して患者302に投与され得る。活性化血小板生成物は、上述のように、投与管310に結合された入力装置312によって投与され得る。
【0043】
図10の血小板活性化装置322は、オンデマンド機能を有し得る。血小板活性化装置322は、施術者304が操作可能なペダル、入力装置312のトリガー、または他の何らかの入力装置に通信可能に結合され得る。入力装置は、施術者が入力装置312での流れの調整を要求するために使用することができる。血小板活性化装置322が入力装置312で流れを調整する要求を受け取ると、血小板活性化装置322は生成を調整することができる。例えば、血小板活性化装置322が流れを増加させる要求を受け取った場合、血小板活性化装置322は、オンデマンドでより多くの活性化生成物を生成し、上記のように、投与管310を通る流れを増加させる。
【0044】
図11は、オンデマンドフローセル342の概略
図340を示す。オンデマンドフローセル342は、
図9の血小板活性化装置306および
図10の322などの血小板活性化装置で使用されてもよい。オンデマンドフローセル342は、収集管、例えば、
図9の収集管308または
図10の収集管326からサンプルを受け取る内部チャネル346を有し得る。内部チャネル346は、パルス発生回路に電気的に結合され得る一対の電極348および350を有し得る。電極348および350の一部は、内部チャネル346の内面の一部を形成し得る。オンデマンドフローセル342は、流体ポンプ352をさらに備え得る。流体ポンプ352は、内部チャネルに沿った流れを生成し、内部チャネル346から投与管310内に液体を押し出すことができる蠕動ポンプおよび/または圧力ポンプであり得る。
図9および10に示すように、投与管310は、活性化血小板生成物を患者302に投与するために使用され得る入力装置312に結合され得る。血小板活性化装置(例えば、血小板活性化装置306、血小板活性化装置322)はまた、コントローラ362に結合され得、コントローラ362は、コントローラ362に動作可能に結合された入力装置364から命令を受信し得る。入力装置の例には、上述のように、入力装置312のペダルまたはトリガー、またはノズル/アプリケータ/ディストリビュータへの流れを調整または遮断する任意の制御機構が含まれる。
【0045】
図340に示されているシステムは、上述のように、オンデマンド方式で動作し得る。そのために、施術者は、入力装置364との相互作用を通じて、入力装置312での活性化血小板生成物の流れを要求することができる。コントローラ362は、入力装置364からのコマンドに応じて、電極348および350に結合されたパルス発生回路(図示せず)を動作させて、内部チャネル346に沿って流れるサンプルを活性化させることができる。さらに、入力装置364からのコマンドに応じて、コントローラ362はまた、圧力ポンプ352を操作して、流体を収集管(例えば、収集管308、収集管326)から投与管310に押し込むことができる。圧力ポンプ352およびパルス発生回路の動作は、
図7に示されるフローセル241に関して説明されたものと同様の方法で調整されてもよい。圧力ポンプ352は、入力装置312での処理を妨害する可能性がある気泡または同様のガスの蓄積の形成を低減するための弁を含み得ることに留意されたい。そのために、圧力ポンプ352は、内部チャネル346に蓄積された空気の放出を可能にすることができる弁を備え得る。
【0046】
本発明の技術的効果には、血液およびPRPサンプル中の大量の(例えば、1mlを超える)血小板の自動活性化を可能にする方法およびシステムが含まれる。本明細書に記載の実施形態を使用して、血小板活性化化合物の使用の有無にかかわらず、無菌の自動方式で活性化血小板生成物のより速い生成を実現できる。カートリッジベースのシステムの使用により、血小板活性化化合物の大量生産を確実に容易にし得る。フローベースのシステムの使用により、使用させる電極ギャップが低減され得、それにより電源の複雑さが低減され得る。さらに、本明細書で論じられるフローベースのシステムは、血小板生成物の「オンデマンド」活性化を可能にするように適合され得る。したがって、活性化生成物の生成と治療への利用との間のタイムラグを低減することによって治療の効力を増大し得る。
【0047】
本稿記載の説明は、例を使用して、最良の形態を含む本発明を開示し、また、当業者に任意のデバイスまたはシステムの作製および使用、および組み込まれた方法の実行を含む、本発明を実施できるようにする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含み得る。そのような他の例は、クレームの文言に反しない構造要素がある限り、またはクレームの文言から大きく異なることはない、同等の構造要素を含む場合、クレームの範囲内にあるものとする。