(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】クレーンシステム、クレーン位置決め装置、及びクレーン位置決め方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/48 20060101AFI20231110BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20231110BHJP
B66C 13/22 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B66C13/48 B
B66C13/00 D
B66C13/22 Y
(21)【出願番号】P 2020553435
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2019041564
(87)【国際公開番号】W WO2020085394
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018200158
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】明渡 豊
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-035527(JP,A)
【文献】特開平06-281410(JP,A)
【文献】特開平08-094318(JP,A)
【文献】特開2001-278580(JP,A)
【文献】特開2001-335281(JP,A)
【文献】特開平07-041285(JP,A)
【文献】実開昭55-017058(JP,U)
【文献】中国実用新案第204675650(CN,U)
【文献】特開2014-066669(JP,A)
【文献】特開2006-010392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/42;13/00-15/06
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向における一方の端面が配置領域の一方側を向き、他方の端面が配置領域の他方側を向くように配置領域に配置され、中央位置に中心線に沿って延びる孔を有する円筒体を保持するクレーンと、
前記配置領域の一方側において、前記一方の端面と対向するように配置された少なくとも二台の第1の撮影部と、
前記クレーンを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
少なくとも二台の前記第1の撮影部
のそれぞれが前記配置領域の三次元座標中のどの位置に設置されたかを記憶しており、
少なくとも二台の前記第1の撮影部の撮影情報に基づいて、前記配置領域に配置された前記一方の端面における孔の位置を取得し、
前記孔の位置の情報に基づいて、前記クレーンに動作指令を送信する、クレーンシステム。
【請求項2】
軸方向における一方の端面が配置領域の一方側を向き、他方の端面が配置領域の他方側を向くように配置領域に配置され、中央位置に中心線に沿って延びる孔を有する円筒体を保持するクレーンと、
前記配置領域の一方側において、前記一方の端面と対向するように配置された少なくとも二台の第1の撮影部と、
前記クレーンを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
少なくとも二台の前記第1の撮影部の位置を把握しており、
少なくとも二台の前記第1の撮影部の撮影情報に基づいて、前記配置領域に配置された前記一方の端面における孔の位置を取得し、
前記孔の位置の情報に基づいて、前記クレーンに動作指令を送信し、
前記制御部は、前記一方の端面の中心点の位置を取得することにより、前記一方の端面の孔の位置を取得する、クレーンシステム。
【請求項3】
少なくとも二台の前記第1の撮影部は、前記配置領域の一方側の地上に配置される、請求項1
又は2に記載のクレーンシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記一方の端面における前記孔の位置情報、及び前記円筒体の長さ寸法情報に基づいて、他方の端面における前記孔の位置を取得する、請求項1
~3の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項5】
前記配置領域の他方側に配置された少なくとも二台の第2の撮影部を更に備え、
前記制御部は、
少なくとも二台の前記第2の撮影部の位置を把握しており、
少なくとも二台の前記第2の撮影部の撮影情報に基づいて、前記配置領域に配置された前記円筒体の他方の端面における前記孔の位置を取得する、請求項1
~3の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項6】
前記配置領域の他方側に配置された少なくとも一台の第2の撮影部を更に備え、
前記制御部は、
少なくとも一台の前記第2の撮影部の位置を把握しており、
少なくとも一台の前記第2の撮影部の撮影情報、及び前記円筒体の長さ寸法情報に基づいて、他方の端面における前記孔の位置を取得する、請求項1
~3の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項7】
前記配置領域の他方側に配置された少なくとも一台の第2の撮影部を更に備え、
前記制御部は、少なくとも二台の前記第1の撮影部の撮影情報、及び少なくとも一台の前記第2の撮影部の撮影情報に基づいて、前記円筒体の傾きを取得する、請求項1
~6の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項8】
前記制御部は、少なくとも前記一方の端面における孔の位置の情報に基づいて、前記円筒体の中心位置を取得する、請求項1
~7の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項9】
前記クレーンは、前記円筒体を保持する吊り具を備え、
少なくとも二台の前記第1の撮影部は、前記吊り具が前記配置領域に配置された前記円筒体を保持した時に、前記配置領域の一方側に配置されるように、前記クレーンに設けられる、請求項1
~8の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項10】
前記制御部は、前記吊り具が水平移動を停止し、前記円筒体に向けて降下している間に、前記孔の位置を取得する、請求項
9に記載のクレーンシステム。
【請求項11】
少なくとも二台の前記第1の撮影部は、水平方向に互いに離間する位置に配置される、請求項
2、9、10の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項12】
少なくとも二台の前記第1の撮影部は、撮影中心軸が互いに近づくように傾斜して配置される、請求項11に記載のクレーンシステム。
【請求項13】
少なくとも二台の前記第1の撮影部は、撮影中心軸が下方に向かうように傾斜して配置される、請求項
2、9~12の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項14】
円筒体を保持するクレーンの位置決めを行うクレーン位置決め装置であって、
前記円筒体が配置される配置領域の一方側において、前記円筒体の一方の端面と対向するように配置された少なくとも二台の第1の撮影部と、
前記クレーンの位置決めを行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
少なくとも二台の前記第1の撮影部
のそれぞれが前記配置領域の三次元座標中のどの位置に設置されたかを記憶しており、
少なくとも二台の前記第1の撮影部の撮影情報に基づいて、前記配置領域に配置された前記円筒体の一方の端面における孔の位置を取得する、クレーン位置決め装置。
【請求項15】
円筒体を保持するクレーンの位置決めを行うクレーン位置決め方法であって、
前記円筒体が配置される配置領域の一方側において、前記円筒体の一方の端面と対向するように配置された少なくとも二台の第1の撮影部
のそれぞれが前記配置領域の三次元座標中のどの位置に設置されたかを記憶する工程と、
少なくとも二台の前記第1の撮影部の撮影情報に基づいて、前記配置領域に配置された前記円筒体の一方の端面における孔の位置を取得する工程と、を備える、クレーン位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンシステム、クレーン位置決め装置、及びクレーン位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーンシステムとして、特許文献1に記載されたものが知られている。クレーンは、天井側を移動しながら、床面に配置された円筒体を保持し、移送している。このクレーンシステムでは、円筒体を上方からカメラで撮影し、当該撮影情報に基づいてクレーンが円筒体を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のクレーンシステムのように、上方から撮影したカメラからの撮影情報のみでは、クレーンで円筒体を保持しにくい場合がある。従って、クレーンが円筒体を更に容易に保持できることが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、クレーンが円筒体を容易に保持できるクレーンシステム、クレーン位置決め装置、及びクレーン位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクレーンシステムは、円筒体を保持するクレーンと、円筒体が配置される配置領域の一方側に配置された少なくとも二台の第1の撮影部と、クレーンを制御する制御部と、を備え、制御部は、少なくとも二台の第1の撮影部の位置を把握しており、少なくとも二台の第1の撮影部の撮影情報に基づいて、配置領域に配置された円筒体の一方の端面における孔の位置を取得し、孔の位置の情報に基づいて、クレーンに動作指令を送信する。
【0007】
本発明に係るクレーンシステムは、円筒体が配置される配置領域の一方側に配置された少なくとも二台の第1の撮影部と、制御部と、を備えている。また、制御部は、少なくとも二台の第1の撮影部の位置を把握している。このように、同じ側に配置された二台の第1の撮影部の位置が把握されている場合、それぞれの撮影部による画像上で同じ場所を示すことができれば、画像中の対象物の三次元座標中の位置を導き出すことができる。従って、制御部は、少なくとも二台の第1の撮影部の撮影情報に基づいて、配置領域に配置された円筒体の一方の端面における孔の位置を取得する事ができる。制御部は、コイルの端面の孔の位置を把握することで、クレーンが孔を掴んでコイルを保持する際に、クレーンを適切に位置決めすることができる。以上により、クレーンが円筒体を容易に保持できる。
【0008】
クレーンシステムにおいて、制御部は、円筒体の他方の端面における孔の位置を取得してよい。制御部は、コイルの両側の端面における孔の位置を把握することで、更に適切にクレーンの位置決めを行うことができる。
【0009】
クレーンシステムにおいて、制御部は、一方の端面における孔の位置情報、及び円筒体の長さ寸法情報に基づいて、他方の端面における孔の位置を取得してよい。この場合、他方の端面側に撮影部を配置しなくとも、他方の端面における孔の位置を取得することが可能となる。
【0010】
クレーンシステムは、配置領域の他方側に配置された少なくとも二台の第2の撮影部を更に備え、制御部は、少なくとも二台の第2の撮影部の位置を把握しており、少なくとも二台の第2の撮影部の撮影情報に基づいて、配置領域に配置された円筒体の他方の端面における孔の位置を取得してよい。この場合、二台の第2の撮影部を用いることで、容易に他方の端面における孔の位置を取得することが可能となる。
【0011】
クレーンシステムは、配置領域の他方側に配置された少なくとも一台の第2の撮影部を更に備え、制御部は、少なくとも一台の第2の撮影部の位置を把握しており、少なくとも一台の第2の撮影部の撮影情報、及び円筒体の長さ寸法情報に基づいて、他方の端面における孔の位置を取得してよい。この場合、他方側に一台の第2の撮影部を配置するだけで、他方の端面における孔の位置を取得することが可能となる。
【0012】
クレーンシステムにおいて、配置領域の他方側に配置された少なくとも一台の第2の撮影部を更に備え、制御部は、少なくとも二台の第1の撮影部の撮影情報、及び少なくとも一台の第2の撮影部の撮影情報に基づいて、円筒体の傾きを取得してよい。
【0013】
クレーンシステムにおいて、制御部は、少なくとも一方の端面における孔の位置の情報に基づいて、円筒体の中心位置を取得してよい。
【0014】
クレーンシステムにおいて、クレーンは、円筒体を保持する吊り具を備え、少なくとも二台の第1の撮影部は、吊り具が配置領域に配置された円筒体を保持した時に、配置領域の一方側に配置されるように、クレーンに設けられてよい。この場合、第1の撮影部を地上に配置する必要がなくなるため、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0015】
クレーンシステムにおいて、制御部は、吊り具が水平移動を停止し、円筒体に向けて降下している間に、孔の位置を取得してよい。この場合、吊り具の水平方向における位置を決めた状態で、孔の位置を取得できるため演算を容易に行うことができる。
【0016】
クレーンシステムにおいて、吊り具は、孔に進入する爪部を備え、爪部には複数の通光センサが設けられ、孔に対して爪部を位置合わせした時において、何れかの通光センサにおいて通光が検知され、何れかの通光センサにおいて通光が検知されなかった場合、制御部は、通光が検知された通光センサ側へ吊り具が移動するように動作指令を送信し、全ての通光センサで通光が検知された場合、制御部は、吊り具が円筒体を保持する位置に到達したと判断してよい。この場合、吊り具は、爪部を孔に対して正確に位置決めした状態で、円筒体を保持できる。
【0017】
クレーンシステムにおいて、少なくとも二台の第1の撮影部は、水平方向に互いに離間する位置に配置されてよい。この場合、各第1の撮影部が円筒体に近づいた状態でも、各第1の撮影部が異なる位置から円筒体を撮影することができる。
【0018】
クレーンシステムにおいて、少なくとも二台の第1の撮影部は、撮影中心軸が互いに近づくように傾斜して配置されてよい。この場合、互いに離間する第1の撮影部は、円筒体に向いた状態で当該円筒体を撮影できる。
【0019】
クレーンシステムにおいて、少なくとも二台の第1の撮影部は、撮影中心軸が下方に向かうように傾斜して配置されてよい。第1の撮影部が下降しながら円筒体に近づく場合に、円筒体に向いた状態で当該円筒体を撮影できる。
【0020】
本発明に係るクレーン位置決め装置は、円筒体を保持するクレーンの位置決めを行うクレーン位置決め装置であって、円筒体が配置される配置領域の一方側に配置された少なくとも二台の第1の撮影部と、クレーンの位置決めを行う制御部と、を備え、制御部は、少なくとも二台の第1の撮影部の位置を把握しており、少なくとも二台の第1の撮影部の撮影情報に基づいて、配置領域に配置された円筒体の一方の端面における孔の位置を取得する。
【0021】
本発明に係るクレーン位置決め方法は、円筒体を保持するクレーンの位置決めを行うクレーン位置決め方法であって、円筒体が配置される配置領域の一方側に配置された少なくとも二台の第1の撮影部の位置を把握する工程と、少なくとも二台の第1の撮影部の撮影情報に基づいて、配置領域に配置された円筒体の一方の端面における孔の位置を取得する工程と、を備える。
【0022】
本発明に係るクレーン位置決め装置及びクレーン位置決め方法によれば、上述のクレーンシステムと同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、クレーンが円筒体を容易に保持できるクレーンシステム、クレーン位置決め装置、及びクレーン位置決め方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーンシステム及びクレーン位置決め装置を示す概略図である。
【
図2】
図1に示すクレーン及び多数のコイルの斜視図である。
【
図3】(a)は、カメラでコイルを撮影することで取得された画像であり、(b)は、カメラ及びコイルを上方から見た時の概念図である。
【
図4】制御部による制御処理の内容を示すフローチャートである。
【
図5】正面中心位置検出工程の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】変形例に係るクレーンシステムにおけるカメラの配置を示す図で概念図である。
【
図7】
図6(a)に示すクレーンシステムでの制御処理の内容を示すフローチャートである。
【
図8】
図6(b)に示すクレーンシステムでの制御処理の内容を示すフローチャートである。
【
図9】変形例に係るクレーンシステムのクレーンを示す斜視図である。
【
図10】(a)は、クレーンに設けられたカメラを上方から見た図であり、(b)は、クレーンに設けられたカメラを側方から見た図である。
【
図11】(a)は、爪部に設けられた通光センサを示す概略図であり、(b)(c)は、コイル孔と通光との位置関係を示す概略図である。
【
図12】変形例に係るクレーンシステムの制御部による制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明によるクレーンシステム、クレーン位置決め装置、及びクレーン位置決め方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るクレーンシステム及びクレーン位置決め装置を示す概略図である。
図2は、
図1に示すクレーン及び多数のコイルの斜視図である。
【0026】
本実施形態に係るクレーンシステム100は、入庫エリアE(配置領域)に配置されたコイル40(円筒体)をクレーン50で保管庫(不図示)へ移すためのシステムである。クレーンシステム100は、クレーン50と、カメラ60A,60B(第1の撮影部)と、カメラ60C,60D(第2の撮影部)と、制御部110と、を備える。このうち、カメラ60A,60B,60C,60D及び制御部110によってクレーン位置決め装置200が構成される。
【0027】
クレーン50は、入庫エリアEに車両Bに積載された状態で配置されたコイル40を保持して吊り上げ、搬送移動する。入庫エリアEにおいて、複数のコイル40は、互いの中心線が平行になるように並べられた状態で配置される。複数のコイル40は、軸方向における一方の端面40aが入庫エリアEの一方側(
図1における紙面上側)を向き、他方の端面40bが入庫エリアEの他方側(
図2における紙面下側)を向くように配置される。
図2に示すように、コイル40は、中心線に沿って延びる円筒状の部材であり、中央位置に中心線に沿って延びるコイル孔41を有する。コイル孔41は円形の孔であり、端面40a,40bにおいて正円を描くように開口している。なお、
図2においては、実際には多数のコイル40が並設・積載されているが、図が煩雑になるのを避けるために一部のコイル40のみが描かれている。
【0028】
図2に示すように、クレーン50は、ガーダー1、荷役部2等を主体として備える。荷役部2は、詳しくは後述するが、トロリー3を主体として備え、ワイヤーロープ4、吊り具5、回転ドラム9等を含む。
【0029】
ガーダー1は、荷役部2及び荷となるコイル40の荷重を支持するものであり、
図2の所定方向としての左右方向に延在し建屋内の天井付近の左右両壁に亘って略水平に横架される。ガーダー1は、所定方向に直交する直交方向としての前後方向(
図2の紙面垂直方向)に離間する直線状の剛体部同士の左右両端部を連結し一体化したものである。ガーダー1の左右両端部に対しては、前後方向に延び走行レーンとなるランウェイ7がそれぞれ設けられ、ガーダー1は、ランウェイ7上を前後方向に沿って走行する。ガーダー1には、例えばモータ等の走行駆動部が設けられ、その走行が制御される。
【0030】
ガーダー1の平面視長方形枠状の左右端部を除く部分は開口8となっており、ガーダー1上に当該開口8を跨ぐようにトロリー3が配置される。トロリー3は、ガーダー1上を左右方向(ガーダー1の延在方向)に沿って横行する。トロリー3には、例えばモータ等の横行駆動部が設けられ、その横行が制御される。
【0031】
トロリー3上には、ワイヤーロープ4を介して吊り具5を吊り上げ/吊り下げるための回転ドラム9が設けられる。回転ドラム9は、開口8に対向するように配置され、開口8を通してワイヤーロープ4が通されている。吊り具5は、回転ドラム9からのワイヤーロープ4が掛け回されたシーブ10を介して吊り下げられる。そして、回転ドラム9には、例えばモータ等の巻き上げ下げ駆動部13(
図8参照)が設けられ、その回転が制御されることで、吊り具5の上下方向の吊り上げ/吊り下げ位置(高さ位置)が制御される。
【0032】
吊り具5は、コイル40を係止し吊り上げるためのものである。吊り具5は、基部20と、基部20の前後両端部からそれぞれ反対方向へ突出する一対のアーム21a,21bと、コイル40を保持するための爪部22a,22bを備える。
【0033】
基部20の上部には、上記シーブ10が回転可能に連結されている。アーム21a,21bは、それぞれ逆さ状のL字状を呈し、基部20の前後両端部からL字がそれぞれ下方へ向くように突出している。爪部22a,22bは、アーム21a,21bの下端から、それぞれ内側に突出することで形成されている。爪部22a,22bは、コイル孔41に進入しコイル40を保持するための部材である。
【0034】
アーム21a,21bは、それぞれ基部20側の部分が、前後方向に沿って(
図2の左右方向)に沿ってスライド移動可能である。アーム21a,21bは、アーム21a,21b同士が大きく離間したアーム開位置と、アーム21a,21b同士が近付いたアーム閉位置とを切り替え可能である。アーム開位置とは、アーム21a,21bが外側へスライド移動し、爪部22a,22bがコイル40の端面40a,40bから離間して対向している位置である。アーム閉位置とは、アーム21a,21bが内側へスライド移動し、爪部22a,22bが、コイル孔41に進入し、その後、吊り具5の吊り上げ時に、爪部22a,22bがコイル孔41の上部内周面に係止し得る位置である。爪部22aは、端面40aにおけるコイル孔41の円形の開口に入り込み、爪部22bは、端面40bにおけるコイル孔41の円形の開口に入り込む。アーム21a,21bには、例えばモータ等のアーム開閉駆動部が設けられ、その駆動が制御されることで、アーム21a,21bの開閉が制御される。
【0035】
なお、アーム21a,21bは、スライド移動するものに限定されるものではなく、基部20側に近い上部側の回動中心軸線(不図示)を中心として各々アームが回動して吊り具爪同士を開閉できるものであっても、吊り具爪の一方のみがスライド移動するもの等であってもよい。
【0036】
図1に戻り、カメラ60A,60Bは、入庫エリアEの一方側に配置され、当該一方側からコイル40を撮影する機器である。入庫エリアEは、コイル40の端面40aが配置される側の端部Eaと、コイル40の端面40bが配置される側の端部Ebと、を有する。カメラ60A,60Bは、上側から見て、入庫エリアEの端部Eaよりも外側の位置であって、当該端部Eaと対向するように配置されている。カメラ60A,60Bは、端部Eaが延びる方向に沿って、互いに離間するように配置されている。カメラ60A,60Bは、端部Eaに沿って延びる設置部台61に設けられている。カメラ60A,60Bのレンズ部は、当該位置から、入庫エリアE側を向くように配置されている。なお、レンズ部の端部Eaに対する角度は特に限定されない。また、入庫エリアEの一方側には、カメラ60A,60Bに加えて、更に他のカメラが横方向及び上下方向に追加で設けられてもよい。
【0037】
カメラ60C,60Dは、入庫エリアEの他方側に配置され、当該他方側からコイル40を撮影する機器である。カメラ60C,60Dは、上側から見て、入庫エリアEの端部Ebよりも外側の位置であって、当該端部Ebと対向するように配置されている。カメラ60C,60Dは、端部Ebが延びる方向に沿って、互いに離間するように配置されている。カメラ60C,60Dは、端部Ebに沿って延びる設置部台61に設けられている。カメラ60C,60Dのレンズ部は、当該位置から、入庫エリア側を向くように配置されている。なお、レンズ部の端部Ebに対する角度は特に限定されない。また、入庫エリアEの他方側には、カメラ60C,60Dに加えて、更に他のカメラが横方向及び上下方向に追加で設けられてもよい。
【0038】
制御部110は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。ユーザインターフェースは、液晶やスピーカなどの出力器、及び、キーボードやタッチパネルやマイクなどの入力器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。制御部110では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部110は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0039】
制御部110は、クレーン50を制御する装置である。制御部110は、演算部111と、クレーン制御部112と、情報取得部113と、記憶部114と、を備える。演算部111は、クレーン位置決め制御、及びクレーン制御のための各種演算を行う部分である。クレーン制御部112は、クレーン50に動作指令を送信する部分である。情報取得部113は、カメラ60A,60B,60C,60D及びその他のセンサ等から情報を取得する部分である。記憶部114は、各種情報を記憶する部分である。
【0040】
制御部110は、カメラ60A,60B,60C,60Dの位置を把握している。例えば、作業者は、カメラ60A,60B,60C,60Dの設置をする時に、各カメラ60A,60B,60C,60Dが入庫エリアE周辺の三次元座標中のどの位置に設置されたかを、制御部110の記憶部114に入力する。
【0041】
制御部110は、少なくとも二台のカメラ60A,60Bの撮影情報に基づいて、入庫エリアEに配置されたコイル40一方の端面40aにおけるコイル孔41の位置を取得する。本実施形態では、制御部110は、端面40aの中心点FP(
図3参照)の三次元座標中における位置を取得することにより、端面40aのコイル孔41の位置を取得する。
【0042】
制御部110は、コイル40の他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置を取得する。制御部110は、少なくとも二台のカメラ60C,60Dの撮影情報に基づいて、入庫エリアEに配置されたコイル40の他方の端面40aにおけるコイル孔41の位置を取得する。本実施形態では、制御部110は、端面40bの中心点BP(
図3(b)参照)の三次元座標中における位置を取得することにより、端面40bのコイル孔41の位置を取得する。
【0043】
制御部110は、少なくとも二台のカメラ60A,60Bの撮影情報、及びカメラ60C,60Dの撮影情報に基づいて、コイル40の傾きを取得する。なお、制御部110は、少なくとも一台の端部Eb側のカメラでコイル40の傾きを取得可能であるが(一台の例については後述)、本実施形態では、二台のカメラ60A,60Bでコイル40の傾きを取得する。
【0044】
制御部110は、少なくとも一方の端面40aにおけるコイル孔41の位置の情報に基づいて、コイル40の中心位置を取得する。本実施形態では、制御部110は、一方の端面40aにおけるコイル孔41の位置の情報と、他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置の情報と、に基づいてコイル40の中心位置を取得する。制御部110は、コイル40の中心位置として、中心線CL上の中心点CP(
図3(b)参照)の三次元座標中における位置を取得する。
【0045】
制御部110は、コイル孔41の位置の情報に基づいて、クレーン50に動作指令を送信する。本実施形態では、制御部110は、端面40aの中心点FPの三次元座標中における位置、端面40bの中心点BPの三次元座標中における位置、及びコイル40の中心点CPの三次元座標中における位置に基づいて、クレーン50に動作指令を送信する(
図3(b)参照)。制御部110は、これらの情報に基づくことで、端面40aでのコイル孔41の開口位置、端面40bでのコイル孔41の開口位置、及びコイル40の傾きを把握できるため、爪部22aが端面40aでのコイル孔41の開口に適切に挿入され、爪部22bが端面40bでのコイル孔41の開口に適切に挿入されるように、クレーン50を制御する。
【0046】
次に、
図3、
図4及び
図5を参照して、クレーンシステム100及びクレーン位置決め装置200によるクレーン位置決め方法について説明する。
図3(a)は、カメラ60A,60Bの何れかでコイル40を撮影することで取得された画像である。
図3(b)は、カメラ60A,60B,60C,60D及びコイル40を上方から見た時の概念図である。
図3(b)では、コイル40は断面が示されている。
図4は、制御部110による制御処理の内容を示すフローチャートである。
図5は、正面中心位置検出工程の詳細を示すフローチャートである。なお、以降の説明においては、コイル40の端面40a側を「正面」と称し、コイル40の端面40b側を「背面」と称する場合がある。
【0047】
図4に示すように、制御部110は、三次元座標中における正面の中心位置を検出する正面中心位置検出工程を実行する(ステップS10)。正面中心位置検出工程S10では、制御部110は、カメラ60A,60Bで撮影された撮影情報に基づいて、端面40aの中心点FPの三次元座標中における位置を検出する。
【0048】
図5を参照して、正面中心位置検出工程S10の処理内容について説明する。
図5に示すように、制御部110の情報取得部113は、カメラ60A,60Bの三次元座標中における位置情報を記憶部114から取得する(ステップS11)。次に、制御部110の情報取得部113は、カメラ60A,60Bが取得した撮影情報を取得する(ステップS12)。制御部110の演算部111は、ステップS11,S12で取得した情報に基づいて、正面の中心点FPの計側を行う(ステップS13)。以上により、正面中心位置検出工程S10が終了する。
【0049】
ステップS13では、制御部110の演算部111は、カメラ60Aの撮影情報による中心点FPの計測結果と、カメラ60Bの撮影情報による中心点FPの計測結果とを、公知の三角測量による視線交差の方法を用いて三次元座標中における中心点FPの位置を計測する。なお、制御部110の演算部111は、各カメラ60A,60Bの撮影情報による中心点FPの計測では、画像で示される二次元座標中での中心点FPの位置を計測する。制御部110の演算部111は、カメラ60A,60Bで取得された画像をそれぞれの端面を正面から見た画像に補正し、補正された画像中でコイル40が移されている領域を検索する。そして、制御部110の演算部111は、コイル40のエッジ(端面40aの外周縁部、及びコイル孔41の内周縁部)を検出する。
図3(a)に示すように、画像中では、端面40a及びコイル孔41の開口は楕円として示される。よって、制御部110の演算部111は、検出されたエッジを楕円に近似し、当該楕円における中心点を、端面40a及びコイル孔41の開口の中心点FPとして取得する。
【0050】
図4に戻り、制御部110は、三次元座標中における背面の中心位置を検出する背面中心位置検出工程を実行する(ステップS20)。背面中心位置検出工程S20では、制御部110は、カメラ60C,60Dで撮影された撮影情報に基づいて、端面40bの中心点BPの三次元座標中における位置を検出する。背面中心位置検出工程S20では、正面中心位置検出工程S10と同趣旨の処理がなされるため、説明を省略する。
【0051】
次に、制御部110は、三次元座標中におけるコイル40の中心位置を検出する(ステップS30)。制御部110の演算部111は、中心点FP,BPの三次元座標中における位置に基づいて、それらの中点を演算することで、三次元座標中におけるコイル40の中心点CPの位置を取得する。
【0052】
また、ステップS30では、制御部110の演算部111は、コイル40の傾きも取得することができる。例えば、コイル40が真っ直ぐに並べられた場合に中心線CLが平行となる基準線SLを設定する。このとき、演算部111は、中心点FP,BP,CPの位置に基づいて、計測対象のコイル40の中心線CLが基準線SLに対して、どの程度傾いているかを演算することができる。演算部111は、上方から見たときの中心線CLの傾き(
図3(b)に示す横方向への傾き)と、横方向から見た時の中心線CLの傾き(上下方向への傾き)と、を演算することができる。
【0053】
ステップS30が終了したら、制御部110のクレーン制御部112は、クレーン50がコイル40を保持するために、吊り具5をどのように移動させ、爪部22a,22bをどのようにコイル孔41へ挿入させればよいかを演算することができる。すなわち、制御部110のクレーン制御部112は、コイル40を保持するためのクレーン50の位置決めを行うことができる。制御部110のクレーン制御部112は、当該位置決めの演算結果に基づいて、クレーン50に動作指令を送信する。
【0054】
次に、本実施形態に係るクレーンシステム100、クレーン位置決め装置200、及びクレーン位置決め方法の作用・効果について説明する。
【0055】
従来のクレーンシステムのように、上方から撮影した画像情報のみでは、クレーンの爪が入る位置が正確に分からない。また、コイルは、コイル孔の変形、テレスコ(押出し)(登録商標)、巻崩れ外側、巻崩れ内側などのばらつきを有する。このようなばらつきに関する情報も、上方から撮影した画像情報のみから正確に取得することはできない。そのため、上方から撮影した画像情報に基づいてクレーンの位置決めを自動で行うことは容易ではなかった。
【0056】
本実施形態に係るクレーンシステム100は、コイル40が配置される入庫エリアEの一方側に配置された二台のカメラ60A,60Bと、制御部110と、を備えている。また、制御部110は、二台のカメラ60A,60Bの位置を把握している。このように、同じ側に配置された二台のカメラ60A,60Bの位置が把握されている場合、それぞれのカメラ60A,60Bによる画像上で同じ場所を示すことができれば、画像中の対象物の三次元座標中の位置を導き出すことができる。従って、制御部110は、二台のカメラ60A,60Bの撮影情報に基づいて、入庫エリアEに配置されたコイル40の一方の端面40aにおけるコイル孔41の位置を取得する事ができる。本実施形態では、中心点FPの位置が、コイル孔41の位置を示す情報となっている。制御部110は、コイル40の端面40aのコイル孔41の位置を把握することで、クレーン50がコイル孔41を掴んでコイル40を保持する際に、クレーン50を適切に位置決めすることができる。以上により、クレーン50がコイル40を容易に保持できる。
【0057】
クレーンシステム100において、制御部110は、コイル40の他方の端面40aにおけるコイル孔41の位置を取得する。制御部110は、コイル40の両側の端面40a,40bにおけるコイル孔41の位置を把握することで、更に適切にクレーン50の位置決めを行うことができる。
【0058】
クレーンシステム100において、入庫エリアEの他方側に配置された少なくとも二台のカメラ60C,60Dを更に備え、制御部110は、少なくとも二台のカメラ60C,60Dの位置を把握しており、少なくとも二台のカメラ60C,60Dの撮影情報に基づいて、入庫エリアEに配置されたコイル40の他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置を取得する。この場合、二台のカメラ60C,60Dを用いることで、容易に他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置を取得することが可能となる。
【0059】
クレーンシステム100において、制御部110は、少なくとも一方の端面40aにおけるコイル孔41の位置の情報に基づいて、コイル40の中心位置を取得してよい。
【0060】
本実施形態に係るクレーン位置決め装置200は、コイル40を保持するクレーン50の位置決めを行うクレーン位置決め装置200であって、コイル40が配置される入庫エリアEの一方側に配置された少なくとも二台のカメラ60A,60Bと、クレーン50の位置決めを行う制御部110と、を備え、制御部110は、少なくとも二台のカメラ60A,60Bの位置を把握しており、少なくとも二台のカメラ60A,60Bの撮影情報に基づいて、入庫エリアEに配置されたコイル40の一方の端面40aにおけるコイル孔41の位置を取得する。
【0061】
本実施形態に係るクレーン位置決め方法は、コイル40を保持するクレーン50の位置決めを行うクレーン位置決め方法であって、コイル40が配置される入庫エリアEの一方側に配置された少なくとも二台のカメラ60A,60Bの位置を把握する工程と、少なくとも二台のカメラ60A,60Bの撮影情報に基づいて、入庫エリアEに配置されたコイル40の一方の端面40aにおけるコイル孔41の位置を取得する工程と、を備える。
【0062】
本実施形態に係るクレーン位置決め装置200及びクレーン位置決め方法によれば、上述のクレーンシステム100と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0063】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0064】
例えば、上述の実施形態ではコイル40の端面40b側(背面側)のカメラは二台設けられていた。これに代えて、
図6(a)に示すように、端面40b側(背面側)のカメラを一台としてもよい。当該変形例に係るクレーンシステムにおいても、制御部110は、コイル40の他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置を取得することができる。また、制御部110は、二台のカメラ60A,60Bの撮影情報、及び一台のカメラ60Cの撮影情報に基づいて、コイル40の傾きを取得することができる。また、制御部110は、一台のカメラ60Cの撮影情報、及びコイル40の長さ寸法情報に基づいて、端面40b(背面)におけるコイル孔41の三次元座標中の位置を取得することができる。
【0065】
図6(a)の変形例に係るクレーンシステムの制御部110の制御内容について、
図7を参照して説明する。
図7に示すように、制御部110は、
図4と同趣旨の正面中心位置検出工程S10を行う。次に、制御部110は、背面中心位置検出を行う(ステップS40)。ステップS40では、制御部110は、カメラ60Cからの撮影情報に基づいて、二次元座標中における端面40bの中心点BPの位置を検出する。次に、制御部110の情報取得部113は、コイル40の形状情報を取得する(ステップS50)。制御部110の情報取得部113は、形状情報として、コイル40の軸方向の長さ寸法rを示す長さ寸法情報を取得する。なお、制御部110の情報取得部113は、コイル40が入庫エリアEに入庫される際に、作業者による入力や、データ通信などによってコイル40の形状情報を取得してよい。
【0066】
制御部110の演算部111は、三次元座標中における端面40b(背面)の中心位置を検出する(ステップS60)。ステップS60では、制御部110の演算部111は、カメラ60Cから端面40bの中心点BPを通過するベクトルv(=[x
v,y
v,z
v])を取得する。制御部110の演算部111は、カメラ60Cの三次元座標中の位置c(=[x
c,y
c,z
c])を把握しており、中心点BPの二次元座標中の位置を把握している。従って、演算部111は、中心点BPの奥行き(カメラ60Cから中心点BPまでの距離)は把握できないものの、ベクトルvは把握することができる。また、制御部110の演算部111は、三次元座標中の中心点FPの位置p1(=[x
p1,y
p1,z
p1])、及びコイル40の長さ寸法rを把握している。よって、制御部110の演算部111は、三次元座標中の中心点BPの位置p2(=[x
p2,y
p2,z
p2])を以下の式(1)の連立方程式を解くことによって取得する。なお、式(1)の中心点BPの位置p2の解は二つ存在するが、中心点FPの位置p1よりも背面側に存在する位置は一つだけであるため、解は一意に定まる。
【数1】
【0067】
次に、制御部110の演算部111は、三次元座標中におけるコイル40の中心位置を検出する(ステップS70)。ステップS70では、制御部110の演算部111は、ステップS10で取得した中心点FPの三次元座標中における位置と、ステップS60で取得した中心点BPの三次元座標中における位置と、に基づいてそれらの中点を演算することで、中心点CPの三次元座標中における位置を取得する。なお、制御部110の演算部111は、ステップS70にて、コイル40の傾きを演算によって取得できる。
【0068】
図6(a)に示すクレーンシステムは、入庫エリアEの他方側に配置された一台のカメラ60Cを備え、制御部110は、一台のカメラ60Cの位置を把握しており、一台のカメラ60Cの撮影情報、及びコイル40の長さ寸法情報に基づいて、他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置を取得する。この場合、他方側に一台のカメラ60Cを配置するだけで、他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置を取得することが可能となる。
【0069】
更に、
図6(b)に示すように、端面40b側(背面側)のカメラを0台としてもよい。当該変形例に係るクレーンシステムにおいても、制御部110は、コイル40の他方の端面40b(背面)におけるコイル孔41の位置を取得することができる。制御部110は、一方の端面40a(正面)におけるコイル孔41の位置情報、及びコイル40の長さ寸法情報に基づいて、他方の端面40bにおけるコイル孔41の三次元座標中の位置を取得する。
【0070】
図6(b)の変形例に係るクレーンシステムの制御部110の制御内容について、
図8を参照して説明する。
図8に示すように、制御部110は、
図4と同趣旨の正面中心位置検出工程S10を行う。次に、制御部110の情報取得部113は、コイル40の形状情報を取得する(ステップS80)。制御部110の情報取得部113は、形状情報として、コイル40の軸方向の長さ寸法rを示す長さ寸法情報を取得する。
【0071】
制御部110の演算部111は、三次元座標中における端面40aの中心点FPを端面40b側(背面側)へ長さ寸法r分だけ並進処理する(ステップS90)。これにより、制御部110の演算部111は、端面40b(背面)の中心点BPの三次元座標中における位置を推定することができる。なお、当該方法では、中心点BPの三次元座標中の正確な位置までは取得できないが、おおよその位置を推定することができる。
【0072】
次に、制御部110の演算部111は、三次元座標中におけるコイル40の中心位置を検出する(ステップS100)。ステップS100では、制御部110の演算部111は、ステップS10で取得した中心点FPの三次元座標中における位置と、ステップS90で推定した中心点BPの三次元座標中における位置と、に基づいてそれらの中点を演算することで、中心点CPの三次元座標中における位置を取得する。
【0073】
図6(b)に示すクレーンシステムにおいて、制御部110は、一方の端面40aにおけるコイル孔31の位置情報、及びコイル40の長さ寸法情報に基づいて、他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置を取得する。この場合、他方の端面40b側にカメラを配置しなくとも、他方の端面40bにおけるコイル孔41の位置を取得することが可能となる。
【0074】
また、上記実施形態においては、端面40a,40bのコイル孔41の位置を示す情報として、中心点FP,BPの位置が取得されたが、コイル孔41の位置を示す情報であれば特に限定されず、端面40a,40bのコイル孔41の開口の上端点、下端点、横側の点や、コイル孔41付近の他の点の位置を取得してもよい。
【0075】
また、上記実施形態においては、円筒体としてコイル40を例示しているが、製紙ロール等他の円筒体であっても良い。また、屋内に限定されず、屋外のクレーンに対しても適用できる。
【0076】
なお、上記実施形態、変形例では、各形態における特徴的な制御処理を行うために必要な最低限の台数のカメラを備えていたが、それらよりも多い台数のカメラを備えた上で、各形態における制御処理を行ってもよい。例えば、他方側のカメラを二台設けた状態で、
図6(a),(b)の変形例と同様の処理を行ってもよい。
【0077】
上述の実施形態では、カメラ60A,60B,60C,60Dは、地上に設けられていた。これに代えて、変形例に係るクレーンシステムでは、カメラ60A,60B,60C,60Dがクレーン50に設けられてよい。
【0078】
図9に示すように、カメラ60A,60B,60C,60Dは、吊り具5に設けられる。具体的には、カメラ60A,60Bは、支持部材70を介して一方のアーム21aに設けられる。カメラ60C,60Dは、支持部材70を介して他方のアーム21bに設けられる。各支持部材70は、アーム21a,21bのうち、基部20から離間するように水平方向に延びる箇所に設けられる。また、支持部材70は、ガーダー1が延びる方向と平行に延びる。アーム21aの支持部材70の両端部には、カメラ60A,60Bが設けられる。これにより、カメラ60A,60Bは、水平方向に互いに離間する位置に配置される。アーム21bの支持部材70の両端部には、カメラ60C,60Dが設けられる。これにより、カメラ60C,60Dは、水平方向に互いに離間する位置に配置される。
【0079】
上述のような配置により、カメラ60A,60Bは、吊り具5が入庫エリアEに配置されたコイル40を保持した時に、入庫エリアEの一方側に配置されるように、クレーン50に設けられる。これにより、カメラ60A,60Bは、コイル40の一方の端面40aを撮影することができる。なお、
図1に示す実施形態では、カメラ60A,60Bは、入庫エリアEの外側において、入庫エリアEの一方側に配置されていた。変形例においては、吊り具5がコイル40を保持した時、カメラ60A,60Bは、入庫エリアEの外側に配置されていても内側に配置されてもよい。入庫エリアEの内側に配置される場合、カメラ60A,60Bは、入庫エリアEのうち、中央よりも端部Ea寄りの位置に配置される。以上のように、請求項における「配置領域の一方側に配置された」状態とは、配置領域の内側及び外側に関わらず、中央位置よりも一方側に配置された状態を意味する。
【0080】
また、カメラ60C,60Dは、吊り具5が入庫エリアEに配置されたコイル40を保持した時に、入庫エリアEの他方側に配置されるように、クレーン50に設けられる。これにより、カメラ60C,60Dは、コイル40の他方の端面40bを撮影することができる。なお、
図1に示す実施形態では、カメラ60C,60Dは、入庫エリアEの外側において、入庫エリアEの他方側に配置されていた。変形例においては、吊り具5がコイル40を保持した時、カメラ60C,60Dは、入庫エリアEの外側に配置されていても内側に配置されてもよい。入庫エリアEの内側に配置される場合、カメラ60C,60Dは、入庫エリアEのうち、中央よりも端部Eb寄りの位置に配置される。以上のように、請求項における「配置領域の他方側に配置された」状態とは、配置領域の内側及び外側に関わらず、中央位置よりも他方側に配置された状態を意味する。
【0081】
図10を参照して、カメラ60A,60B,60C,60Dの配置について更に詳細に説明する。なお、図中の「LA」で示される一点鎖線は、各カメラの撮影中心軸を示す。
図10(a)に示すように、カメラ60A,60Bは、撮影中心軸LAが互いに近づくように傾斜して配置される。カメラ60A,60Bは、撮影中心軸LAがアーム21a側に徐々に近づくように配置される。すなわち、吊り具5がコイル40を保持した時に、カメラ60A,60Bは、端面40aのコイル孔41側を向くように配置される。カメラ60C,60Dは、撮影中心軸LAが互いに近づくように傾斜して配置される。カメラ60C,60Dは、撮影中心軸LAがアーム21b側に徐々に近づくように配置される。すなわち、吊り具5がコイル40を保持した時に、カメラ60C,60Dは、端面40bのコイル孔41側を向くように配置される。
【0082】
図10(b)に示すように、カメラ60Aは、撮影中心軸LAが下方に向かうように傾斜して配置される。カメラ60Bの配置も同趣旨である。カメラ60Cは、撮影中心軸LAが下方に向かうように傾斜して配置される。カメラ60Dの配置も同趣旨である。
【0083】
図11(a)に示すように、一方の爪部22aには複数の通光センサ82が設けられてよい。通光センサ82は、他方の爪部22bに設けられた発光部81からの光Lを受信して通光検知するセンサである。通光センサ82及び発光部81は、爪部22a,22bの先端の各角部に四つ設けられてよい。コイル孔41に対して爪部22a,22bを位置合わせした時において、何れかの通光センサ82において通光が検知され、何れかの通光センサ82において通光が検知されなかった場合、制御部110は、通光が検知された通光センサ82側へ吊り具が移動するように動作指令を送信する。例えば、
図11(b)に示すように、四つの発光部81から発光された光Lのうち、一部の光L(図中右側の光L)はコイル孔41を通過し、他の一部の光L(図中左側の光L)はコイル40に遮られる。この場合、制御部110は、通光が検知された通光センサ82側(ここでは右側)へ爪部22a,22bが移動するように、制御を行う。そして、全ての通光センサ82で通光が検知された場合、制御部110は、吊り具5がコイル40を保持する位置に到達したと判断する。例えば
図11(c)では、四つの全ての光Lがコイル孔41を通過するため、全ての通光センサ82が通光を検知する。
【0084】
次に、
図12を参照して、制御部110の制御内容について説明する。まず、制御部110は、吊り具5を移動させる(ステップS200)。制御部110は、対象のコイル40に対して吊り具5の水平方向の位置決めを完了した後で、吊り具5をコイル40へ向けて降下させる。なお、制御部110は、対象のコイル40の概略位置、コイル形状等の情報を予め取得している。そのため、制御部110が吊り具5をコイル40の概略位置まで移動させる制御方法は、公知の方法を用いればよい。次に、制御部110は、カメラ60A,60B,60C,60Dによる画像にコイル孔41が映っているか否かを判定する(ステップS210)。ステップS210においてコイル孔41が映っていないと判定された場合、引き続きステップS200による吊り具5の移動を継続する。
【0085】
一方、ステップS210においてコイル孔41が映っていると判定された場合、制御部110は、コイル中心位置検出処理を実行する(ステップS220)。なお、S210において、複数のコイル孔41が映っている場合、コイル孔41が吊り具5から最も近い位置にあるコイル40が入庫対象コイルであると判定してもよい。ステップS220の処理は、前述の実施形態において、
図4~
図8を用いて説明した方法と同趣旨の処理である。次に、制御部110は、吊り具5を制御して、当該吊り具5でコイル40を保持する(ステップS230)。なお、ステップS220の処理において、制御部110は、絶対座標系ではなく、カメラ60A,60B,60C,60Dからの相対座標系に基づいて位置の演算を行ってよい。なお、制御部110は、吊り具5の位置情報に基づいて、カメラ60A,60B,60C,60Dの位置を把握できる。
【0086】
上述の処理において、吊り具5を移動させているタイミングと、ステップS210~S220の処理を行うタイミングは、特に限定されない。例えば、制御部110は、吊り具5が水平移動を停止し、コイルに向けて降下している間に、コイル孔41の位置を取得してよい。この場合、制御部110は、吊り具5が降下を開始したタイミングでS210の処理を開始してもよい。このとき、制御部110は、所定の高さまで吊り具5を降ろしたときに、一旦吊り具5を停止させた状態でステップS210の処理を行ってよい。あるいは、制御部110は、吊り具5を動かしながらステップS210の処理を行ってよい。例えば、制御部110は、吊り具5を停止させる前の、減速を始めた段階でステップS210の処理を行ってよい。このとき、予め吊り具5の目標位置が設定されていた場合は、制御部110は、ステップS210,S220の処理を行いながら、最新のコイル40の位置情報に基づいて、目標位置を更新してもよい。なお、条件として、画像でコイル孔41が見えていること、及び吊り具5の揺れなどでカメラ自身の位置が不確定でないことが挙げられる。
【0087】
以上より、クレーンシステム100において、クレーン50は、コイル40を保持する吊り具5を備え、少なくとも二台のカメラ60A,60Bは、吊り具5が入庫エリアEに配置されたコイル40を保持した時に、入庫エリアEの一方側に配置されるように、クレーン50に設けられてよい。この場合、カメラ60A,60Bを地上に配置する必要がなくなるため、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0088】
クレーンシステム100において、制御部110は、吊り具5が水平移動を停止し、コイル40に向けて降下している間に、コイル孔41の位置を取得してよい。この場合、吊り具5の水平方向における位置を決めた状態で、コイル孔41の位置を取得できるため演算を容易に行うことができる。
【0089】
クレーンシステム100において、吊り具5は、コイル孔41に進入する爪部22aを備え、爪部22aには複数の通光センサ82が設けられ、コイル孔41に対して爪部22aを位置合わせした時において、何れかの通光センサ82において通光が検知され、何れかの通光センサ82において通光が検知されなかった場合、制御部110は、通光が検知された通光センサ82側へ吊り具5が移動するように動作指令を送信し、全ての通光センサ82で通光が検知された場合、制御部110は、吊り具5がコイル40を保持する位置に到達したと判断してよい。この場合、吊り具5は、爪部22aをコイル孔41に対して正確に位置決めした状態で、コイル40を保持できる。
【0090】
クレーンシステム100において、少なくとも二台のカメラ60A,60Bは、水平方向に互いに離間する位置に配置されてよい。この場合、各カメラ60A,60Bがコイル40に近づいた状態でも、各カメラ60A,60Bが異なる位置からコイル40を撮影することができる。
【0091】
クレーンシステム100において、少なくとも二台のカメラ60A,60Bは、撮影中心軸LAが互いに近づくように傾斜して配置されてよい。この場合、互いに離間するカメラ60A,60Bは、コイル40に向いた状態で当該コイル40を撮影できる。
【0092】
クレーンシステム100において、少なくとも二台のカメラ60A,60Bは、撮影中心軸LAが下方に向かうように傾斜して配置されてよい。カメラ60A,60Bが下降しながらコイル40に近づく場合に、コイル40に向いた状態で当該コイル40を撮影できる。
【符号の説明】
【0093】
5…吊り具、40…コイル、40a…一方の端面、40b…他方の端面、50…クレーン、60A,60B…カメラ(第1の撮影部)、60C,60D…カメラ(第2の撮影部)、100…クレーンシステム、110…制御部、200…クレーン位置決め装置。