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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】無線駆動スマートコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20231110BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G02C7/04
A61F9/007 170
A61F9/007 180
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020554994
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2017015243
(87)【国際公開番号】W WO2019124591
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 平成29年7月27日に、Internet news_https://newsis.com/common/?id=NISX20170727_0000052708&method=print&tにて公開 (2) 平成29年7月27日に、Internet news_http://www.asiae.co.kr/news/print.htm?idxno=2017072710544858247&udt=1にて公開 (3) 平成29年7月27日に、Internet news_http://www.nspna.com/popup/print_news.php?newsid=233922にて公開 (4) 平成29年7月27日に、Internet news_http://dongascience.donga.com/print.php?idx=19143にて公開 (5) 平成29年7月27日に、Internet news_http://kr.acrofan.com/detail.php?number=55886&type=&lang=&UAにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (6) 平成29年7月28日に、Internet news_https://www.kyongbuk.co.kr/news/articleView.html?idxno=1000006にて公開 (7) 平成29年7月27日に、Internet news_http://www.dt.co.kr/etc/article_print.html?article_no=2017072702109976788003にて公開 (8) 平成29年7月27日に、Internet news_http://www.yonhapnews.co.kr/dev/9601000000.htmlにて公開 (9) 平成29年7月27日に、Internet news_http://news.kmib.co.kr/article/print.asp?arcid=0011643243にて公開 (10) 平成29年7月27日に、Internet news_http://www.veritas-a.com/news/articlePrint.html?idxno=90718にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (11) 平成29年7月27日に、Internet news_https://www.etnews.com/20170727000462にて公開 (12) 平成29年7月27日に、Internet news_https://www.nocutnews.co.kr/common/popprint.aspx?index=4822401にて公開 (13) 平成29年7月28日に、Internet news_http://www.segye.com/newsView/20170727003651にて公開 (14) 平成29年7月27日に、Internet news_http://www.kukinews.com/news/article_print.html?no=472332にて公開 (15) 平成29年7月27日に、Internet news_http://www.newdaily.co.kr/news/article_print.html?no=352198にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (16) 平成29年7月27日に、Internet news_http://www.posco.co.kr/homepage/docs/kor5/jsp/news/posco/s91fnews003v.jsp?menuCatId=0911&idx=320257&onPage=1&catidmiddle=0911&for%E2%80%A6にて公開 (17) 平成29年8月1日に、Internet news_http://www.imaeil.com/sub_news/news_print.php?news_id=34533&yy=2017にて公開 (18) 平成29年9月20日に、Internet news_https://biz.chosun.com/site/data/html_dir/2017/09/20/2017092002948.htmlにて公開 (19) 平成29年9月21日、Internet news_https://biz.chosun.com/svc/news/printContent1.html?typeにて公開 (20) 平成29年9月26日に、Internet news_http://news.mk.co.kr/newsReadPrint_2013.php?year=2017&no=644600にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (21) 平成29年10月16日、Internet news_http://e-healthnews.com/news/article_view.php?art_id=148554にて公開 (22) 平成29年12月11日に、Internet news_http://blog.naver.com/PostPrint.nhn?blogId=eyesaver_opt&logNo=221160665836にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】520226344
【氏名又は名称】ファイ・バイオメッド・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セ・クワン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンフイ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ユン・シム
(72)【発明者】
【氏名】ジャヒュン・クー
(72)【発明者】
【氏名】ドヒ・クム
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】井口 猶二
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219847(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0127322(KR,A)
【文献】特開2014-180565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)または有機発光ダイオード(OLED)と、フォトディテクターと、を含むか、または発光ダイオード(LED)または有機発光ダイオード(OLED)と、フォトディテクターと、センサーと、を含む、疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズであって、
前記疾患は、糖尿病、緑内障、黄斑変性、網膜色素変性症、白内障、上昇された眼圧、糖尿病網膜症、眼球乾燥症、またはマイボーム腺機能不全であり、
前記LEDまたはOLEDは、疾患マーカーに光を照射し、前記フォトディテクターは、反射する光をディテクティングし、これを分析して、前記疾患を診断するかまたは前記疾患の治療可否を判断するか、または、
前記センサーは、疾患マーカーを感知し、前記LEDまたはOLEDは、前記疾患マーカーの有無または前記疾患マーカーの濃度を光で表現し、かつ前記フォトディテクターは、前記LEDまたはOLEDの光をディテクティングし、これを分析し、
記疾患マーカーは、糖または糖化ヘモグロビンであるか、あるいは酸素または酸素ヘモグロビンである、疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記フォトディテクターは、波長による光度の差異を測定して、糖濃度、酸素分圧および酸素飽和度を分析する、請求項に記載の疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記LEDは、青色光LEDまたはNIR LEDである、請求項に記載の疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記フォトディテクターでの前記疾患の診断時に、薬物貯蔵所がオープンされる、請求項2に記載の疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【請求項5】
厚さが300μm以下であり、柔軟性を有する薄膜型バッテリーをさらに含む、請求項1に記載の疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【請求項6】
薄膜型バッテリーは、リチウムイオン薄膜型バッテリーである、請求項に記載の疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記LEDまたはOLEDは、基板に集積され、
前記基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET,poly(ethylene terephthalate)、ポリプロペン(PP,poly(propene))、ポリアミド(PI,polyamide)、ポリエチレンナフタレート(PEN,poly(ethylene naphthalate))、ポリエーテルスルホン(PES,poly(ether sulfones))またはポリカーボネート(PC,polycarbonate)である、請求項1に記載の疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【請求項8】
無線でデータを送信および受信する無線電気システムをさらに含む、請求項1に記載の疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【請求項9】
能動素子をさらに含む、請求項1に記載の疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患診断および治療のための無線駆動スマートコンタクトレンズの開発に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートデバイスを小さくて軽く製造して、身体に装着し、便利性を向上させたスマートウェアラブルデバイス(Smart wearable device)に関する研究が非常に活発である。このようなスマートウェアラブルデバイスを本格的に研究して革新的な製品を発売しようとする代表的な会社としては、サムスン電子、アップル、グーグル、ナイキまたはアディダスなどの多様な企業がある。
【0003】
グーグルでは、グーグルガラス2.0(Google Glass 2.0)に引き続いて最近スマートコンタクトレンズを開発して新しい注目を浴びている。このように世界の数多くの研究企業は、e-healthシステムの発展と歩調をそろえて、ヒトの疾病を診断し治療するために多様な電子機器を開発している。また、より便利に疾病を治療し、注射と規則的な薬物服用を最小化するために、手軽にスマートフォンを用いて薬物伝達システムを調節できる診断システムを開発した。
【0004】
眼球の疾患を治療するために目に薬を投与する方法としては、目薬、眼内注射、そして手術を通した薬物挿入がある。しかしながら、目薬の場合、涙により洗い流される現象によって実際眼球内に入ることができる薬の量に限界があり、効率が非常に低い。眼内注射の場合、効率が良いが、苦痛が伴う。手術を通じて薬物を挿入する場合は、多様な副作用ができる。したがって、副作用を最小化するための薬物伝達システムが必要である。
【0005】
一方、LED(Light emitting diode)の開発とLED構造の発展に伴い、多様な波長帯で高い効率を有するLEDの開発が可能になった。また、透明電極を活用したLEDだけでなく、フレキシブル(flexible)素材に転写して作ったフレキシブルLEDなどLEDの活用方法が多様になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、マイクロLEDまたはOLEDを用いて疾患を診断および治療する無線駆動スマートコンタクトレンズを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マイクロLEDまたはOLEDを含む疾患診断および治療用無線駆動スマートコンタクトレンズを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、コンタクトレンズ内のマイクロLEDまたはOLEDを用いて疾患の診断および治療が可能である。
【0009】
また、フォトディテクターを介して光の波長による信号でコンタクトレンズ内薬物貯蔵所から薬物放出を調節して、多様な疾患の治療が可能である。眼球内に挿入可能な小型薬物貯蔵所は、電気的に調節が可能である。したがって、所望の時に薬物放出が可能なので、多様な疾患治療のために適用され得る。また、フォトディテクターは、治療されたターゲット細胞から反射する光を介してリアルタイムで治療効果を感知することができるので、患者の疾病進行状態を容易かつ迅速に確認することができる。
【0010】
また、コンタクトレンズに短波長のLEDまたはOLEDを集積して持続的に照射する治療法を通じて、睡眠中や携帯しながらも容易に治療が可能であり、従来治療機器のLED光源により周辺細胞に容易に損傷を加えることができる短所を解決することができる。
【0011】
従来、コンタクトレンズは、外部からパワーを無線で供給されて、コンタクトレンズを駆動したが、本発明では、バッテリーを使用して外部から電力を供給されずに動作可能なスマートコンタクトレンズを提供することができる。
【0012】
また、本発明では、無線データ伝送をせずに、レンズ内のセンサーで感知したデータを分析して薬物放出を調節することによって、電力消耗を顕著に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一例によるスマートコンタクトレンズの全体模式図である。
図2】マイクロLEDを含む例示的なスマートコンタクトレンズの模式図であり、マイクロLED光源を用いて視覚系疾患を診断するためのスマートコンタクトレンズの模式図である。
図3】マイクロLEDを含む例示的なスマートコンタクトレンズの模式図であり、マイクロLED光源を用いて網膜色素変性症を治療するためのスマートコンタクトレンズの模式図である。
図4】マイクロLEDを含む例示的なスマートコンタクトレンズの模式図であり、マイクロLED光源および薬物伝達システムを用いて黄斑変性を治療するためのスマートコンタクトレンズの模式図である。
図5】スマートコンタクトレンズ内薬物放出システムの模式図である。
図6】治療用細胞を眼房水に注入してスマートレンズを通して細胞をリアルタイム モニタリングするシステムの模式図である。
図7a】糖濃度による細胞生存能(cell viability)を示すグラフである。
図7b】糖濃度による細胞生存能(cell viability)を示すグラフである。
図8】レンズ作動直後の結果を示す熱画像プロファイルである。
図9】1.6Vで10分間マイクロLEDを連続作動させた後の結果を示す熱画像プロファイルである。
図10】1050nm波長での糖濃度によるフォトディテクターの電流強さを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、マイクロLEDまたはOLEDを含む疾患診断および治療用スマート無線駆動コンタクトレンズに関する。
【0015】
以下、本発明の無線駆動コンタクトレンズを具体的に説明する。
【0016】
本発明において疾患の種類は、特に制限されず、全身疾患または眼疾患(眼科疾患)でありうる。前記全身疾患は、糖尿病またはうつ病であり得、眼疾患は、上昇された眼圧、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、黄斑変性、糖尿病網膜症、各種形態の黄斑浮腫、手術後の炎症、アレルギー性結膜炎のような眼瞼および眼球結膜、角膜および前方眼球の炎症性疾患、眼球注射、乾性眼、眼瞼炎、網膜剥離、うつ病、眼球乾燥症、網膜色素変性症、マイボーム腺機能不全、点状表層角膜炎、帯状疱疹性角膜炎、虹彩炎、毛様体炎、選択的な伝染性結膜炎、化学、放射線または熱画像からの角膜の傷、異物の侵入またはアレルギー疾患でありうる。
【0017】
本発明による無線駆動スマートコンタクトレンズは、マイクロLEDまたはOLEDを含む。
【0018】
前記マイクロLEDまたはOLEDは、当業界において使用される製品を使用することができ、直接製作して使用することができる。一般的に、マイクロLEDまたはOLEDは、基板の上にエピタキシャル(epitaxial)層を有することができる。前記基板は、炭化ケイ素(SiC)、ガリウムヒ素(GaAs)またはシリコンウェハー(Si wafer)などでありうる。
【0019】
前記マイクロLEDまたはOLEDは、スマートコンタクトレンズ内で多様な役割を行うことができ、具体的に、診断または治療の役割を行うことができる。
【0020】
本発明によるマイクロLEDまたはOLEDは、診断用に使用され得、前記マイクロLEDまたはOLEDは、疾病マーカーに光を照射して疾病を診断し、または疾病の治療可否を判断することができる。
【0021】
前記のような診断用への使用時に、スマートコンタクトレンズは、マイクロLEDまたはOLEDとともにフォトディテクター(photodetector)を含むことができる。例えば、マイクロLEDは、疾病マーカーに光を照射し、フォトディテクターは、反射する光をディテクティングし、これを分析して、疾病、すなわち疾患を診断し、または疾患の治療可否を判断することができる。
【0022】
マイクロLEDは、NIR(near infrared Spectroscopy)LEDでありうる。本発明においてNIR LEDを使用する場合、フォトディテクターとしてIRディテクターを使用することができる。前記IRディテクターは、フォトディテクターの一種類であって、波長が長いIR光のディテクティングに容易である。
【0023】
眼球内部の酸素飽和度の測定は、網膜低酸素症(Retinal hypoxia)、 緑内障(glaucoma)、灌流(Perfusion)などの疾病を早期検診することができ、これは、ヘモグロビンの酸素飽和による吸光度の差異を用いて区分することができる。特に660nm、940nm帯の波長帯で差異を示すので、二つの波長帯の酸素飽和度を測定して、眼球疾病を早期診断することができる。
【0024】
例えば、NIR LEDを用いて糖化数値の測定を通じて糖尿を診断し、または酸素測定(oximetry)基盤の酸素飽和度の測定を通じて視覚疾患を診断することができる。
【0025】
また、本発明では、目をとじたときに接触するまぶたの毛細血管内に存在するヘモグロビンの糖飽和度を測定して、体液でなく、血液中にある糖の濃度をリアルタイムで分析することができる。LED光源を網膜またはまぶたにある血管に照射すると、血管内にある疾病マーカーの濃度によってLED光量の吸収程度に差異を有することになる。フォトディテクターは、反射して戻る光の量を測定して疾病マーカーの量を分析し、これにより、疾病の有無を判別することができる。すなわち、マイクロLEDを介して660および940nm波長帯の光を照射し、フォトディテクターは、まぶたの毛細血管内ヘモグロビンの酸素飽和度による吸光度の差異を検出して、酸素飽和度を測定することができる。
【0026】
他の例として、フォトディテクターは、糖または血中糖化ヘモグロビン、および酸素または酸素ヘモグロビンの波長による光度の差異を測定し、血中糖濃度、酸素分圧および酸素飽和度を分析して、疾病の有無を判断することができる。前記血管内糖濃度を分析して糖尿病を診断することができ、眼球酸素濃度に直接的な関連がある黄斑変性、緑内障および白内障などを診断することができる。また、本発明では、無線でローデータ(row data)を送信し、診断結果をすぐに確認できる無線送信システムを用いてフォトディテクターの分析結果を外部に送信することができる。
【0027】
本発明のマイクロLEDおよびフォトディテクターは、各層のエピタキシ成長時に犠牲層を追加して転写工程で柔軟基板に集積することができる。また、フリップチップポンディング(flip chip bonding)工程を用いて酸素測定(oximetry)基盤の酸素飽和度の測定診断システムを構成することができる。マイクロLEDまたはOLEDおよびフォトディテクターは、成長工程時に成分比の調節および材料の選択によって波長帯を調節することができ、究極的に660nmおよび940nm波長帯の照射および検出を通じて酸素飽和度およびそれによる視覚疾患の診断を可能にすることができる。
【0028】
また、本発明によるマイクロLEDまたはOLEDは、センサーを介して感知された疾病マーカーの存在有無または濃度を表現するための用途に使用することができる。前記のような場合、スマートコンタクトレンズは、マイクロLEDまたはOLEDとともにセンサーおよびフォトディテクター(photodetector)を含むことができる。これに伴い、センサーは、疾病マーカーを感知し、マイクロLEDまたはOLEDは、前記疾病マーカーの有無または疾病マーカーの濃度を光で表現し、フォトディテクターは、前記LEDまたはOLEDの光をディテクティングし、これを分析して、疾病を診断し、または疾病の治療可否を判断することができる。
【0029】
従来技術では、センサーの診断内容を無線コミュニケーションを用いて外部に送信したが、前記方法は、多くのエネルギーを消耗した。本発明では、LEDまたはOLEDの光を用いてフォトディテクターがこれを分析するようにし、または疾病マーカーの数値によって色を変えて診断結果をコンタクトレンズの外部に送って疾病の有無を外部で判断するようにすることができる。すなわち、センサーアラームの機能を行うことができる。
【0030】
前記センサーは、眼内の疾病マーカーを感知できるセンサーであれば、特に制限されず、糖センサー、圧力センサーなどを使用することができる。また、疾病マーカーは、一酸化窒素、血管表皮成長因子(VEGF)、表皮生長因子(EGF)、ブドウ糖を含む一糖類、ラクトースを含む二糖類、水分含有量、FAD(flavin adenine dinucle)、BSA(Bandeiraea simplicifolia agglutinin)、過酸化水素、酸素、アスコルビン酸塩(ascorbate)、リゾチーム(lysozyme)、鉄分、ラクトフェリン(lactoferrin)、リン脂質(phospholipid)、浸透圧および眼圧などよりなるグループから選ばれた一つ以上でありうる。
【0031】
一具体例において、糖センサーを使用する場合、前記糖センサーは、糖濃度を診断し、その内容をICチップで判断し、マイクロLEDでは、糖濃度を色で表現することができる。フォトディテクターは、LEDの色の波長を分析して、疾病を診断し、または疾病の治療可否を判断することができる。
【0032】
マイクロLEDは、青色光LEDまたはNIR LEDでありうる。
【0033】
また、一具体例において、フォトディテクターは、マイクロLEDを介して疾患部位に光を照射し、治療をした後、反射する光をディテクティングして治療効果をリアルタイムで確認することができる。
【0034】
本発明によるスマートコンタクトレンズは、薬物貯蔵所をさらに含むことができる。前記薬物貯蔵所は、フォトディテクターと連結されて、フォトディテクターで疾病の診断時に薬物貯蔵所がオープンされ得る。具体的に、フォトディテクターを介して外部の光波長による様々な信号を用いてレンズ内装着された薬物伝達所から薬物放出を調節することができる。
【0035】
本発明において薬物貯蔵所は、薬物ウェルに形成され得るが、前記薬物ウェルは、眼球に接触するスマートコンタクトレンズの内側面に外側に向かって引入された形態を有し、前記薬物ウェルは、電極パターンにより密封され得る。
【0036】
前記薬物貯蔵所は、薬物;または薬物を放出できる薬物伝達体および薬物放出制御物質を含むことができる。
【0037】
本発明において薬物貯蔵所は、韓国特許公開第10-2016-0127322号に記載された薬物貯蔵所を使用することができる。
【0038】
また、薬物貯蔵所は、下記製造方法により製造したものを使用することができる。前記方法を通じて製造方法を簡素化し、製造費用を節減することができる。
(a)薬物貯蔵モールドを製造する段階;
(b)薬物をモールドにローディングする段階;
(c)親水性高分子フィルム上に電極が蒸着されたフィルムをモールド上に付着する段階;および
(d)パッシベーション(passivation)段階。
【0039】
前記段階(a)で、モールドは、ポリジメチルシロキサン(PDMS,polydimethylsiloxane)モールドであり得、金型型枠を用いて製造することができる。前記モールドのサイズは、貯蔵される薬物の含量およびレンズのサイズなどによって適宜調節することができ、複数個の薬物貯蔵ウェルを有することができる。
【0040】
段階(c)では、親水性高分子フィルム上に電極を蒸着させた後、モールド上に付着する。この際、親水性高分子の種類は、水に溶解する限り、特に制限されず、例えばポリビニルアルコール(PVA)を使用することができる。電極、すなわち正極および負極は、TiおよびAuでパターニングして製造することができる。
【0041】
段階(d)では、絶縁および防水のためにモールドをパッシベーションする。前記パッシベーションとしては、SiOパッシベーションを用いて、当業界の方法によって行うことができる。
【0042】
また、本発明によるマイクロLEDまたはOLEDは、前述した疾患の診断の他に疾患の治療に使用され得る。
【0043】
前記マイクロLEDまたはOLEDは、疾患部位に光を照射して疾患を治療することができる。
【0044】
本発明では、スマートコンタクトレンズに疾患治療のための光治療システムを導入し、多波長体内光伝達を媒介するLEDまたはOLED製造用生体適合性ナノ素材を開発することによって、手術を通した侵襲的な方法を脱離し、所望の部位の神経細胞を精密に調節して、従来の治療技術が有する副作用を克服することができる。具体的に、多波長体内光伝達媒介素材を利用した非侵襲的光治療は、単一細胞単位の処理が可能なので、既存の疾患の治療のために行われている薬物治療が有する無作為的副作用発現の危険性を補完することができる。
【0045】
また、本発明の技術は、薬物治療の代替技術として多様に打診されてきた侵襲的なプローブ(probe)を移植するDBS治療法あるいは体内に可視光線を伝達するために光繊維をターゲット神経疾患部位に手術的に移植する現在の光治療システムと比較して、臨床適用および多様な活用可能性が高く、出血および感染確率を顕著に低減することができ、光を用いて効果的かつ選択的に疾患治療に適用することができる。これにより、次世代神経疾患治療システムの源泉技術を確保することができる。
【0046】
本発明では、スマートコンタクトレンズ内のマイクロLEDまたはOLEDから網膜に光を照射して疾患を治療することができ、このような疾患は、全身疾患または眼疾患でありうる。前記全身疾患は、糖尿病またはうつ病であり得、眼疾患は、上昇された眼圧、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、黄斑変性、糖尿病網膜症、各種形態の黄斑浮腫、手術後の炎症、アレルギー性結膜炎のような眼瞼および眼球結膜、角膜および前方眼球の炎症性疾患、眼球注射、乾性眼、眼瞼炎、網膜剥離、うつ病、眼球乾燥症、網膜色素変性症、マイボーム腺機能不全、点状表層角膜炎、帯状疱疹性角膜炎、虹彩炎、毛様体炎、選択的な伝染性結膜炎、化学、放射線または熱画像からの角膜の傷、異物の侵入またはアレルギーでありうる。
【0047】
スマートコンタクトレンズは、それぞれの疾患治療のための特定波長の光を放出するLEDまたはOLEDを含むことができ、前記LEDは、青色光LEDまたはNIR LEDでありうる。
【0048】
一具体例において、マイクロLEDまたはOLEDは、加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration,AMD)の治療用に使用することができる。前記AMDを発生させる要因の一つとして、A2E Lipofuscin Fluorophoreがある。Retinal pigmented epithelium cellに積もったA2E Lipofuscin Fluorophoreは、agingと網膜障害(retinal disorder)の要因になる。このようなA2E Lipofuscin Fluorophoreは、青色光(420nm)により損傷を受けることになる。したがって、スマートコンタクトレンズにブルーLED(light emitting diode)を装着する場合、AMD治療に効果があるものと予想される。
【0049】
このために、本発明では、黄斑に適用可能な420nmから600nm波長帯の青色光を発するMerck blue(Poly(9,9-di-n- octylfluorenyl-2,7-diyl)、PFO)材料を用いてAMD治療用OLEDを製作することができる。または、NIR LEDを使用することができる。
【0050】
一具体例において、スマートコンタクトレンズに青色光LEDを集積させて、視覚系疾患光治療システムを提供することができる。現在、青色光を利用した季節性うつ病、生体リズムを克服するための研究が多く進行されているが、スマートコンタクトレンズを用いて青色光を照射する場合、目を通した光伝達効率が高く、患者が目をとじた状態でも青色光を伝達できるので、患者の便宜性を改善すると共に、治療効率を画期的に向上させることができる。
【0051】
また、一具体例において、青色光LEDで網膜視神経を一定の時間間隔で繰り返し激して視神経を復元させて、網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)を治療することができる。
【0052】
また、本発明のマイクロLEDまたはOLEDは、薬物貯蔵所と連係して疾患を治療することができる。
【0053】
一具体例において、マイクロLEDまたはOLEDと薬物貯蔵所を連係して黄斑変性症を治療することができる。この場合、光に反応して活性酸素を作り出す光感応剤を利用できるが、フォトディテクターにおける指示によって薬物伝達システムで光感応剤が放出されて網膜血管に伝達されると、マイクロLEDまたはOLEDの光を用いて活性酸素を作り出して、これを黄斑変性症の治療に使用することができる。前記光感応剤により活性酸素の生成効率が増加し、黄斑に生じる新生血管生成疾患の治療に使用することができる。このような光感応剤としては、臨床で使用されるビスダインや2次元の新材料として知られた黒リン(black phosphorus)を使用することができる。特に、本発明では、スマートコンタクトレンズを着用した状態で周辺正常血管に損傷が起こらないほどの少量の活性酸素が発生するように、on-offシステムで製造することができる。
【0054】
前記マイクロLEDまたはOLEDおよび薬物貯蔵所の連係治療は、黄斑変性症だけでなく、糖尿病網膜症または脈絡膜新生血管疾患などの多様な疾患に応用され得る。
【0055】
本発明によるスマートコンタクトレンズは、厚さが300μm以下、または50μm以下であり、柔軟性を有する薄膜型バッテリーをさらに含むことができる。前記薄膜型バッテリーの厚さの下限は、1μmでありうる。
【0056】
前記薄膜型バッテリーを使用してスマートコンタクトレンズの無線駆動を可能にすることができる。従来のスマートコンタクトレンズは、コイルを介して無線電力(パワー)伝送でエネルギーを供給されて、システムを動作させる。しかしながら、無線電力伝送の低い伝送効率に起因して外部からコイルを用いて強い強さでエネルギーを伝送しなければならないという問題点を有する。これに伴い、スマートコンタクトレンズの活用度に大きく制約をもたらすと共に、使用に不便さを招くことができる。また、コンタクトレンズを通した眼圧モニタリングの場合、従来技術は、SensimedのTriggerfishだけであり、この技術は、レンズに不透明な金属形態のアンテナとストレインセンサーを使用して着用者にとって視野に制限を与えることができると共に、拒否感を与えることができる。電力供給のための外部アンテナを常に付着していなければならないし、また、揺れることなく固定されていなければならないので、日常生活に相当な支障を与えて、多くの人々にとって使用するようにするのに制限される。
【0057】
したがって、本発明では、スマートコンタクトレンズの内部に薄膜型バッテリーを装着して、前記の問題を解決することができる。すなわち、本発明では、超小型薄膜バッテリーを使用することによって、スマートコンタクトレンズシステムを駆動させるために、外部からパワーを供給せずに動作可能なシステムを具現することができる。
【0058】
前記バッテリーは、光エネルギー、圧電エネルギーおよび/または熱エネルギーなどの様々なエネルギー源からバッテリー内に電力を貯蔵することによって、スマートコンタクトレンズをより簡素化することができる。前記バッテリーは、コンタクトレンズを構成している素子に電力を供給することができる。また、反復的な曲げまたは変形にもバッテリーの破損がなく、レンズに適用したときに密封され、眼球内安定性を確保することができる。
【0059】
本発明のバッテリーは、300μm以下、または50μm以下の厚さを有し、柔軟性を有することができる。前記バッテリーは、レンズの内部に装着されるので、サイズに制約を有し、使用便宜上、厚さが300μm以下のバッテリーを使用した方が良い。
【0060】
具体的に、本発明のバッテリーは、厚さが300μm以下の薄膜型延伸可能リチウムイオンバッテリーでありうる。前記リチウムイオン薄膜型バッテリーは、電力供給のための外部アンテナを必要とせず、ユーザにとって着用時の煩わしさと生活での不便さをなくすことができ、レンズ内部のアンテナをなくして、視野の制限と拒否感を解消することができる。
【0061】
一具体例において、バッテリーは、コイルを介して充電することができる。具体的に、レンズに透明なコイルを挿入して、レンズを使用していないとき、無線充電が可能にすることができる。
【0062】
本発明の薄膜型バッテリーは、当業界において使用される製品を使用することができ、直接製作して使用することができる。
【0063】
一具体例において、バッテリーは、高分子/銀ナノ粒子複合材料とブロック共重合体ファイバー/活物質の複合材料から構成され得る。
【0064】
本発明では、マイクロLEDまたはOLEDにパワーを提供するために、前記マイクロLEDを前述したバッテリーと連結することができ、眼球内安定性のためにマイクロLEDとバッテリーをポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane,PDMS)ポリマーでパッシベーション処理することができる。
【0065】
また、本発明では、無線でデータを送信および受信する無線電気システムをさらに含むことができる。
【0066】
本発明によるスマート無線駆動コンタクトレンズにおいて、マイクロLEDまたはOLED,ASICチップ、バッテリーおよび薬物貯蔵所などの構成成分は、基板上に集積された後、コンタクトレンズに含まれ得る。この際、基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET,poly(ethylene terephthalate)、ポリプロペン(PP,poly(propene))、ポリアミド(PI,polyamide)、ポリエチレンナフタレート(PEN,poly(ethylene naphthalate))、ポリエテールスルホン(PES,poly(ether sulfones))またはポリカーボネート(PC,polycarbonate)でありうる。
【0067】
本発明によるスマート無線駆動コンタクトレンズは、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ(乳酸-グリコール酸)(PLGA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセテート(PVA)またはシリコンハイドロゲル(Silicon hydrogel)の高分子を基盤とすることができる。
【0068】
また、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(Polyhydroxyethylmethacrylate,PHEMA)基盤の高分子材料内にPET基盤のブルーLEDをモールディングして、ラジカル重合方式を通じて100um以下の超薄型(super thin)コンタクトレンズ形態で製作することができる。
【0069】
本発明によるスマートコンタクトレンズは、前記レンズ内で光の波面を制御できる能動素子をさらに含むことができる。
【0070】
本発明では、前記能動素子に適切な位相遅延パターンを適用して多様な自由度の映像獲得を具現することができる。例えば、ユーザの行動を認識して(例えば、頭を下げて本を見るとき)コンタクトレンズの焦点距離を変化させて近いところを気楽に見るようにすることができる。また、コンタクトレンズの能動型素子の区画別多様な位相遅延値を制御して、網膜まで向上した光伝達/制御を具現することができる。すなわち、適応光学技法を適用して、網膜の多様な位置でサブマイクロメータ(sub-micrometer)水準の非常に小さい光焦点を形成することができる。
【0071】
本発明では、スマートコンタクトレンズに短波長のLEDを集積し、焦点距離の光学的設計および調節が可能な能動素子を集積して、治癒が必要な部分に持続的に照射が可能になり得る。これにより、従来制限された視空間である暗室で定められた時間にのみ可能であった方法を、睡眠中や携帯しながらも容易に治療が可能であり、レーザーが周辺細胞に容易に損傷を加えることができるという短所をも解決することができる。このような能動素子は、液晶(liquid crystal)と屈折率の調節が可能な素材を使用することができる。
【0072】
また、本発明では、光センサーまたはイメージセンサーをさらに含むことができる。
【0073】
細胞は、状態によって色が変わり、特に、疾患がある場合、細胞に血管が生じると、次第に赤い血管が多くなって、赤い光を帯びることになる。本発明では、このような光をディテクティングする光センサーをさらに使用して、疾病診断効率を向上させることができる。また、イメージセンサーを使用して細胞の色を判断し、モニタリングすることができる。また、本発明では、治療用細胞を眼房水に注入し、これをスマートコンタクトレンズを介して細胞をリアルタイムでモニタリングすることができる(図6)。
【0074】
本発明では、スマートコンタクトレンズを制御するために、光信号を利用した通信方式を使用して低電力でスマートコンタクトレンズを制御することができる。
【0075】
具体的に、スマートコンタクトレンズの制御のために外部から光信号を用いてスマートコンタクトレンズにデータを伝送して、システムの動作を制御することができる。
【0076】
また、本発明では、配線、パッド、コイル部分を全部透明な素材で製作して、患者にとって視野に制限がないようにし、外部から見たときにも、レンズに全く不自然に感じられないようにする。
【0077】
また、本発明では、システム駆動に必要なエネルギーを補充するために、太陽光発電素子で光エネルギーから電気エネルギーを収穫して、エネルギー源として使用するエネルギー収穫システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0078】
実施例
製造例1.スマートコンタクトレンズ用μLEDの製作
基板の上にエピタキシャル層を成したp-GaN/多重量子井戸(InGaN/GaN)/N-GaN/buffer layer/GaN(青色μLED)と(Al0.45Ga0.55As:C)/(In0.5Al0.5P:Zn)/多重量子井戸(Al0.25Ga0.25In0.5P/In0.56Ga0.44P/Al0.25Ga0.25In0.5P)/(In0.5Al0.5P:Si)/(Al0.45Ga0.55As:Si)/n-GaAs:Si(近赤外線μLED)を製造した。
【0079】
前記製作した基板にフォトリソグラフィ過程によりμLEDの形態をパターニングした。パターンされたμLEDにプラズマエッチングと金属配線技術を適用して電極を連結した。完成された素子にパラジウムを蒸着させた後、パラジウムとインジウムがコーティングされたシリコン基板にパラジウム-インジウムを連結した。サファイア基板をレーザリフトオフ(laser lift off、LLO)技法を用いて除去した後、アンダーカット(under cut)エッチングにより基板とμLEDの結合を弱くさせた後、転写印刷を通じてコンタクトレンズ内回路と電気的に連結した。
【0080】
製造例2.薬物貯蔵所の製造
薬物貯蔵所は、図5の方法で製造した。
【0081】
まず、金型型枠を用いてpdmsモールドを製作した後、薬物をリザーバー内にローディングした。
【0082】
PVA(polyvinylalcohol)フィルム上に電極(Ti、Auからなる負極と正極)を蒸着した後、薬物があるpdmsモールドに電極が蒸着されたPVAフィルムを付着した。その後、絶縁および防水のために、SiOパッシベーションを行って、薬物貯蔵所を製造した。
【0083】
製造例3.高分子基板上に素子集積工程
ASICチップ、フォトディテクター、製造例1で製造されたμLEDおよびバッテリーなどを集積するために、30μm以下のPET基板上に熱蒸着法を用いて100nmの金を形成し、または後工程のためにチタニウム(Ti:10nm)/アルミニウム(Al:500nm)/チタニウム(10nm)/金(Au:50nm)の構造で金属膜を形成した。
【0084】
その後、フォトリソグラフィ工程を経て必要な形状の形態にパターニングした。前記パターニング工程は、金属膜の構造によってNEGATIVEあるいはPOSITIVE感光液を使用して、リフトオフ(Lift off)法、湿式エッチングまたは乾式エッチング工程でパターニングを行った。
【0085】
パターニングされた高分子基板上に金属膜と各素子のボンディングのために、金バンプを形成した。この際、バンプは、15~50μmの直径、10~20μmの高さを有する。
【0086】
フリップチップボンディング技術を用いて金バンプが形成された基板とASICチップ、フォトディテクター、μLEDおよび薬物貯蔵所などを貼合した。
【0087】
製造例4.コンタクトレンズの製造
シリコンを含む材料を用いてコンタクトレンズを製造した。
【0088】
まず、メチルアクリルオキシプロピル-トリス(トリメチルシロキシ)シラン1mLをN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)0.62mL、メタクリルオキシプロピル(MC)-PDMSマクロマー(macromere)1mL、メチルアクリル酸(MAA)0.3mL、エタノール0.1mL、およびN-ビニルピロリドン(NVP)0.2mLとともに窒素環境で15分間混ぜた。そして、紫外線(UV) 開始剤であるTPO 12μgを入れ、5分間混ぜて、「溶液1」を製造した。
【0089】
前記製造された溶液1 0.2mLを特殊製作されたポリプロピレン(polypropylene,PP)モールド中でラジカル重合を行った後、オゾンプラズマを用いてポリマーの表面を親水性に作り、PBS溶液に保管した
【0090】
その後、製造例3で製造されたASICチップ、フォトディテクター、マイクロLED、およびバッテリー(Cymbat社の超小型バッテリー)などが集積された基板を入れた後、ポリプロピレン(PP)モールド中でラジカル重合させて、レンズを製造した。
【0091】
マイクロLEDの用途に応じてスマートコンタクトレンズ内に含まれる構成が変わり得る。図2図4のように、その用途に応じてコンタクトレンズの構成を異ならしめることができ、図1のように、すべての構成を含むコンタクトレンズを製造することができる。
【0092】
実験例1.細胞におけるNIR光(light)の治療効果の確認
ARPE-19細胞を用いて細胞におけるNIR光の治療効果を確認した。
【0093】
37℃および5%CO条件で、ARPE-19細胞を一般的な糖濃度の環境(糖濃度5mM)と高濃度糖濃度の環境(糖濃度30mM)で培養した。
【0094】
培養する5日間、一日に2回ずつNIR-LEDを用いて光を照射した。
【0095】
本発明において図7は、糖濃度による細胞生存率(cell viability)を示すグラフである。
【0096】
図7に示されたように、高濃度の糖濃度の環境では、一般的な環境に比べて細胞生存率が劣ることを確認することができる(右グラフ)。しかしながら、NIR-LEDに1.8Vの電圧を印加して光を照射した場合、高濃度の糖濃度の環境は、一般的な環境と細胞生存率が類似していることを確認することができる(左グラフ)。
【0097】
一方、LEDに印加した電圧が高まるほど細胞生存率が増加する傾向を示すことを確認することができる。
【0098】
実験例2.動物におけるNIR光(light)の治療効果の確認
ラット(Rat)を用いて動物実験を進めた。
【0099】
ラットの眼球の曲率に合うようにレンズを製作した後、NIR-LEDをレンズに付着して、治療効果を確認した。
【0100】
治療は、5日間進行され、グループを分けてLEDの光量を変化させながら実験を進めた。
【0101】
実験例3.LEDコンタクトレンズの発熱の確認
ラット(Rat)を用いて発熱実験を進めた。
【0102】
ラットの眼球の曲率に合うようにコンタクトレンズを製作した後、NIR領域のLEDをレンズに付着し、熱画像カメラを用いてLEDで生成される熱を確認した。
【0103】
本発明において、図8は、レンズ作動直後、図9は、1.6Vで10分間LEDを連続作動させた後の結果を示す熱画像プロファイルである。また、図8および図9で、左目は、コンタクトレンズを着用せず、右目にコンタクトレンズを着用した。
【0104】
前記図に示されたように、ラットの両眼温度差は、1℃以下であることが確認された。
【0105】
実験例4.NIR光(light)を利用した糖濃度の診断
それぞれ異なる糖濃度(0.6、1.1、1.6または2.1mg/ml)を有する血液セムプルを準備した。
【0106】
血液サンプルをキューベットに入れ、一方には、NIR領域のLED(NIR-LED)(730、850、950、1050、1450または1550nm)を設置し、他方には、フォトディテクター(photodetector)を設置した。
【0107】
血液サンプルを交替しつつ、糖濃度によるフォトディテクターの電流強さを測定した。
【0108】
本発明において、図10は、1050nm波長での糖濃度(mg/ml)によるフォトディテクターの電流強さ(nA)を示すグラフである。
【0109】
図10に示されたように、1050nm波長のLEDを用いた結果、濃度が増加するにつれてフォトディテクターに流れる電流の値が減少することを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明では、コンタクトレンズ内のマイクロLEDまたはOLEDを用いて疾患の診断および治療が可能である。
【0111】
また、フォトディテクターを介して光波長による信号でコンタクトレンズ内薬物貯蔵所から薬物放出を調節して、多様な疾患の治療が可能である。眼球内に挿入可能な小型薬物貯蔵所は、電気的に調節が可能である。したがって、所望の時に薬物放出が可能なので、多様な疾患治療のために適用され得る。また、フォトディテクターは、治療されたターゲット細胞から反射する光を介してリアルタイムで治療効果を感知することができるので、患者の疾病進行状態を容易かつ迅速に確認することができる。
【0112】
また、コンタクトレンズに短波長のLEDまたはOLEDを集積して持続的に照射する治療法を通じて、睡眠中や携帯しながらも容易に治療が可能であり、従来治療機器のLED光源に起因して周辺細胞に容易に損傷を加えることができる短所を解決することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10