(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】高ブロウソネチン含有ステビア植物
(51)【国際特許分類】
C12P 17/04 20060101AFI20231110BHJP
C12P 7/02 20060101ALI20231110BHJP
C12P 7/26 20060101ALI20231110BHJP
C12P 17/10 20060101ALI20231110BHJP
C12P 17/16 20060101ALI20231110BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231110BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20231110BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20231110BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20231110BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20231110BHJP
C12N 5/04 20060101ALN20231110BHJP
A01H 5/02 20180101ALN20231110BHJP
A01H 5/10 20180101ALN20231110BHJP
A01H 5/12 20180101ALN20231110BHJP
A01H 6/14 20180101ALN20231110BHJP
A01H 1/06 20060101ALN20231110BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20231110BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20231110BHJP
【FI】
C12P17/04
C12P7/02
C12P7/26
C12P17/10
C12P17/16
A23L33/105
A61K31/40
A61K36/28
G01N33/48 N
G01N33/50 U
C12N5/04
A01H5/02
A01H5/10
A01H5/12
A01H6/14
A01H1/06
A61P3/10
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020562458
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051301
(87)【国際公開番号】W WO2020138366
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2018248697
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【氏名又は名称】三橋 規樹
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】平井 正良
(72)【発明者】
【氏名】岩城 一考
(72)【発明者】
【氏名】宮川 克郎
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515814(JP,A)
【文献】国際公開第2016/049531(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 5/00
C12P 7/00
C12P 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステビア植物体、その種子、組織、組織培養物又は細胞から
ブロウソネチン含有抽出物を得る工程を含む、ブロウソネチン含有抽出物の製造方法。
【請求項2】
ブロウソネチン含有抽出物がステビオール配糖体をさらに含有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の方法で得たブロウソネチン含有抽出物からブロウソネチンを精製する工程を含む、ブロウソネチンの製造方法。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の方法を用いてブロウソネチン含有抽出物を提供する工程
、及び
前記抽出
物を、飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の原料に添加する工程
を含む、ブロウソネチンを含む飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法を用いてブロウソネチンを提供する工程、及び
前記ブロウソネチンを、飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の原料に添加する工程
を含む、ブロウソネチンを含む飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の製造方法。
【請求項6】
被験ステビア植物体におけるブロウソネチンの含量を決定する工程を含む、
ブロウソネチン含量に基づいて高レバウジオシドD含有ステビア植物体及び/又は高レバウジオシドM含有ステビア植物体をスクリーニングする方法。
【請求項7】
ブロウソネチンの含量を決定する工程が、クロマトグラフィー又は質量分析を用いて行われる、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
被験ステビア植物組織のレバウジオシドD及び/又はレバウジオシドMの含有量を測定する工程をさらに含む、請求項
6又は
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロウソネチンの含有量が高いステビア植物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロウソネチンは、コウゾ(Broussonetia kazinoki Sieb.)の樹皮などに含まれるピロリジンアルカロイドであり(非特許文献1~3)、グリコシダーゼ阻害活性を有することから、腫瘍、糖尿病、ウイルス疾患などへの効果が期待されている。しかしながら、他の植物がブロウソネチンを含むことは報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Shibano et al., Chem Pharm Bull. 1997;45(4):700-5
【文献】Shibano et al., Chem Pharm Bull. 1998;46(6):1048-50
【文献】Tsukamoto et al., Chem Pharm Bull. 2001;49(4):492-6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の健康志向の高まりを受け、機能性の高い食品へのニーズが高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高含有量でブロウソネチンを含む高ブロウソネチン含有型ステビア植物体並びに当該植物体の作出方法及びスクリーニング方法を提供する。
【0006】
一態様において、本発明は以下を提供する。
[1]
野生型よりブロウソネチン含量が高い、変異型ステビア植物体。
[2]
乾燥葉の単位質量当たり1%以上のレバウジオシドDを含むこと、及び/又は
乾燥葉の単位質量当たり0.6%超のレバウジオシドMを含むことを特徴とする、[1]に記載のステビア植物体。
[3]
ブロウソネチンが、ブロウソネチンF、ブロウソネチンH、ブロウソネチンR、ブロウソネチンT又はこれらの組合せを含む、[1]又は[2]に記載の植物体。
[4]
非遺伝子組換植物体である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の植物体。
[5]
突然変異誘発処理を行ったステビア植物体及びその子孫植物体を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の植物体。
【0007】
[6]
[1]~[5]のいずれか一項に記載の植物体の種子、組織、組織培養物又は細胞。
[7]
胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、花弁、プロトプラスト、葉の切片及びカルスから選択される、[6]に記載の組織、組織培養物又は細胞。
[8]
[1]~[5]のいずれか一項に記載の植物体と第2のステビア植物体とを交雑させる工程を含む、野生型よりブロウソネチン含量が高いステビア植物体を作出する方法。
[9]
第2の植物体が[1]~[5]のいずれか一項に記載の植物体である、[7]に記載の方法。
[10]
[1]~[5]のいずれか一項に記載の植物体、[6]又は[7]に記載の種子、組織、組織培養物又は細胞の抽出物。
【0008】
[11]
ステビア植物体、その種子、組織、組織培養物又は細胞から抽出物を得る工程を含む、ブロウソネチン含有抽出物の製造方法。
[12]
ステビア植物体が[1]~[5]のいずれか一項に記載の植物体である、[11]に記載の方法。
[13]
ブロウソネチン含有抽出物がステビオール配糖体をさらに含有する、[11]又は[12]に記載の方法。
[14]
[11]~[13]のいずれか一項に記載の方法で得たブロウソネチン含有抽出物からブロウソネチンを精製する工程を含む、ブロウソネチンの製造方法。
[15]
[11]~[13]のいずれか一項に記載の方法を用いてブロウソネチン含有抽出物を提供する工程、
任意選択で前記ブロウソネチン含有抽出物を精製してブロウソネチンを提供する工程、及び
前記抽出物又はブロウソネチンを、飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の原料に添加する工程
を含む、ブロウソネチンを含む飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の製造方法。
【0009】
[16]
被験ステビア植物体におけるブロウソネチンの含量を決定する工程を含む、高レバウジオシドD含有ステビア植物体及び/又は高レバウジオシドM含有ステビア植物体をスクリーニングする方法。
[17]
ブロウソネチンの含量を決定する工程が、クロマトグラフィー又は質量分析を用いて行われる、[16]に記載の方法。
[18] 被験ステビア植物組織のレバウジオシドD及び/又はレバウジオシドMの含有量を測定する工程をさらに含む、[16]又は[17]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、ステビア植物体にブロウソネチンが含まれていることが明らかとなったことにより、ブロウソネチンの供給源の多様化が可能となる。また、ブロウソネチン含量の高いステビア植物体はレバウジオシドD及びMの含量も高い傾向にあることから、本発明によりこのような有益な成分の含量の高いステビア植物体の取得、スクリーニングなどが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をそのような実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、2018年12月28日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2018-248697号)の明細書及び図面に記載の内容を包含する。
【0012】
1.高ブロウソネチン含有ステビア植物体
一態様において、本発明は、野生型よりブロウソネチン含量が高い、変異型ステビア植物体(以下、「本発明の植物体」又は「本発明のステビア植物体」と称する場合がある)を提供する。
ブロウソネチンとしては、ブロウソネチンA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q、R、S、T、U、V等が挙げられる。好ましいブロウソネチンは、ブロウソネチンF、H、R及びTである。より好ましいブロウソネチンは、ブロウソネチンF、H及びTである。
【0013】
ブロウソネチンは、既知の種々の手法、例えば、非特許文献1~3に記載された手法や、下記実施例に記載の手法などにより抽出、定量することができる。
ブロウソネチンは、限定されずに、以下の手法により抽出、定量することができる(以下、「測定方法A」と称する場合がある)。まずステビア植物体の新鮮葉をフリーズドライにより乾燥し、破砕物乾物を終濃度75%のメタノール中に投入する。ビーズ式ホモジナイザーでホモジナイズし、15,000rpmで10分間遠心後、上清を回収する。上清をコンディショニング済みのMonoSpin(R)C18カラム(GL Sciences)に適用し、5000gで2分間遠心後、溶出液を回収し、0.2μmフィルターでろ過したものをLC-MS分析に供する。LC-MS分析は以下の条件で行う。
【0014】
【0015】
本発明の植物体に含まれるブロウソネチンの含量は野生型より高ければ特に限定されないが、例えば、上記測定方法Aで測定した場合のピーク強度として、ブロウソネチンFについては50000以上、60000以上、300000以上、1500000以上など、ブロウソネチンHについては7000以上、8000以上、40000以上、400000以上など、ブロウソネチンTについては40000以上、50000以上、300000以上、1500000以上などであってよい。ブロウソネチンの含量の上限は特に限定されないが、例えば、上記測定方法Aで測定した場合のピーク強度として、ブロウソネチンFについては200000000など、ブロウソネチンHについては30000000など、ブロウソネチンTについては30000000などであってよい。
【0016】
また、例えば、上記測定方法Aで測定した場合のピーク強度比として、ブロウソネチンFについては0.01%以上、0.02%以上、0.03%以上、0.05%以上、0.08%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上など、ブロウソネチンHについては0.001%以上、0.002%以上、0.01%以上、0.04%以上、0.05%以上、0.06%以上、0.07%以上、0.08%以上、0.09%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上など、ブロウソネチンTについては0.005%以上、0.01%以上、0.02%以上、0.03%以上、0.04%以上、0.05%以上、0.06%以上、0.07%以上、0.08%以上、0.09%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上などであってよい。ブロウソネチンの含量の上限は特に限定されないが、例えば、上記測定方法Aで測定した場合のピーク強度比として、ブロウソネチンFについては50%など、ブロウソネチンHについては7%など、ブロウソネチンTについては8%などであってよい。
ブロウソネチンの測定値として、複数回、例えば、2回、3回、4回、5回又はそれ以上の測定値の平均値を用いることが好ましい。
【0017】
本発明の植物体は、以下の(a)、(b)の特徴の少なくとも1つをさらに有してもよい。
(a)乾燥葉の単位質量当たり1%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上のレバウジオシド(Rebaudioside、以下「Reb」ともいう)Dを含む。
(b)乾燥葉の単位質量当たり0.6%超、好ましくは0.7%超、より好ましくは0.8%超のRebMを含む。
【0018】
特定の態様において、本発明の植物体は、以下の(1)~(4)の特徴の少なくとも1つをさらに有してもよい。
(1)乾燥葉の単位質量当たり3.3%以上のRebDを含む(以下、「本発明の植物体A」又は「本発明のステビア植物体A」と称する場合がある)。
(2)乾燥葉の単位質量当たり2.6%以上のRebDと0.4%以上のRebMとを含む(以下、「本発明の植物体B」又は「本発明のステビア植物体B」と称する場合がある)。
(3)乾燥葉の単位質量当たりRebDとRebMを合計で3.7%以上含む(以下、「本発明の植物体C」又は「本発明のステビア植物体C」と称する場合がある)。
(4)総ステビオール配糖体に対するRebDとRebMの質量比が合計で37.8%以上(以下、「本発明の植物体D」又は「本発明のステビア植物体D」と称する場合がある)。
【0019】
総ステビオール配糖体(Total Steviol Glycoside:TSG)とは、測定可能なステビオール配糖体の総称であり、未知のステビオール配糖体や、検出限界未満の量で存在するステビオール配糖体を含まない。好ましくは、総ステビオール配糖体とは、RebA、RebB、RebD、RebE、RebF、RebI、RebJ、RebK、RebM、RebN、RebO、RebQ、RebR、ズルコシドA、ルブソシド、ステビオール、ステビオールモノシド、ステビオールビオシド及びステビオシドからなる群より選択される2つ以上の任意の組み合わせである。例えば、ある実施形態では、総ステビオール配糖体は、RebA、RebB、RebM、RebD、RebF、RebM及びステビオールからなり、別の実施形態では総ステビオール配糖体は、RebA、RebB、RebM、RebD、RebF、RebM、RebN、RebO及びステビオールからなるものであってもよい。
【0020】
本発明の植物体Aにおいて、乾燥葉の単位質量当たり3.3%以上のRebDを含むとは、例えば、所定の質量の乾燥葉(例えば、50mg)に、3.3質量%以上の割合のRebD(例えば、1.65mg以上)が含まれることを意味する。この態様における乾燥葉の単位質量当たりのRebDの割合は、限定されずに、例えば、3.3%以上、3.4%以上、3.5%以上、3.6%以上、3.7%以上、3.8%以上、3.9%以上、4.0%以上、4.1%以上、4.2%以上、4.3%以上、4.4%以上、4.5%以上、4.6%以上、4.7%以上、4.8%以上、4.9%以上、5.0%以上、5.1%以上、5.2%以上、5.3%以上、5.4%以上、5.5%以上、5.6%以上、5.7%以上、5.8%以上、5.9%以上、6.0%以上等であってよく、3.6%以上が好ましい。乾燥葉の単位質量当たりのRebDの割合の上限は特に限定されないが、例えば、20%、15%、10%などであってよい。
ここで乾燥葉とは、本発明のステビア植物体の新鮮葉を乾燥させることにより含水量を3~4重量%にまで減らしたものをいう。
【0021】
本発明の植物体Bにおいて、乾燥葉の単位質量当たり2.6%以上のRebDと0.4%以上のRebMとを含むとは、例えば、所定の質量の乾燥葉(例えば、50mg)に、2.6質量%以上の割合のRebD(例えば、乾燥葉50mg当たり1.3mg以上)と、0.4質量%以上のRebM(例えば、乾燥葉50mg当たり0.2mg以上)とが含まれることを意味する。この態様における乾燥葉の単位質量当たりのRebDとRebMの割合は、(RebDの割合:RebMの割合)とした場合、限定されずに、例えば、(2.6%以上:0.4%以上)、(2.8%以上:0.4%以上)、(3%以上:0.4%以上)、(3.2%以上:0.4%以上)、(3.4%以上:0.4%以上)、(3.6%以上:0.4%以上)、(3.8%以上:0.4%以上)、(4%以上:0.4%以上)、(4.2%以上:0.4%以上)、(4.4%以上:0.4%以上)、(4.6%以上:0.4%以上)、(4.8%以上:0.4%以上)、(5%以上:0.4%以上)、(2.6%以上:0.5%以上)、(2.8%以上:0.5%以上)、(3%以上:0.5%以上)、(3.2%以上:0.5%以上)、(3.4%以上:0.5%以上)、(3.6%以上:0.5%以上)、(3.8%以上:0.5%以上)、(4%以上:0.5%以上)、(4.2%以上:0.5%以上)、(4.4%以上:0.5%以上)、(4.6%以上:0.5%以上)、(4.8%以上:0.5%以上)、(5%以上:0.5%以上)、(2.6%以上:0.6%以上)、(2.8%以上:0.6%以上)、(3%以上:0.6%以上)、(3.2%以上:0.6%以上)、(3.4%以上:0.6%以上)、(3.6%以上:0.6%以上)、(3.8%以上:0.6%以上)、(4%以上:0.6%以上)、(4.2%以上:0.6%以上)、(4.4%以上:0.6%以上)、(4.6%以上:0.6%以上)、(4.8%以上:0.6%以上)、(5%以上:0.6%以上)、(2.6%以上:0.7%以上)、(2.8%以上:0.7%以上)、(3%以上:0.7%以上)、(3.2%以上:0.7%以上)、(3.4%以上:0.7%以上)、(3.6%以上:0.7%以上)、(3.8%以上:0.7%以上)、(4%以上:0.7%以上)、(4.2%以上:0.7%以上)、(4.4%以上:0.7%以上)、(4.6%以上:0.7%以上)、(4.8%以上:0.7%以上)、(5%以上:0.7%以上)、(2.6%以上:0.8%以上)、(2.8%以上:0.8%以上)、(3%以上:0.8%以上)、(3.2%以上:0.8%以上)、(3.4%以上:0.8%以上)、(3.6%以上:0.8%以上)、(3.8%以上:0.8%以上)、(4%以上:0.8%以上)、(4.2%以上:0.8%以上)、(4.4%以上:0.8%以上)、(4.6%以上:0.8%以上)、(4.8%以上:0.8%以上)、(5%以上:0.8%以上)等であってよく、(3.6%以上:0.4%以上)が好ましい。乾燥葉の単位質量当たりのRebDの割合の上限は特に限定されないが、例えば、20%、15%、10%等であってよく、RebMの割合の上限も特に限定されないが、10%、5%、3%等であってよい。
【0022】
本発明の植物体Cにおいて、乾燥葉の単位質量当たりRebDとRebMを合計で3.7%以上含むとは、例えば、所定の質量の乾燥葉(例えば、50mg)に含まれるRebDとRebMとの合計質量が、3.7質量%以上(例えば、1.85mg以上)であることを意味する。この態様における乾燥葉の単位質量当たりのRebDとRebMの合計の割合は、限定されずに、例えば、3.7%以上、3.8%以上、3.9%以上、4.0%以上、4.1%以上、4.2%以上、4.3%以上、4.4%以上、4.5%以上、4.6%以上、4.7%以上、4.8%以上、4.9%以上、5.0%以上、5.1%以上、5.2%以上、5.3%以上、5.4%以上、5.5%以上、5.6%以上、5.7%以上、5.8%以上、5.9%以上、6.0%以上、6.1%以上、6.2%以上、6.3%以上、6.4%以上、6.5%以上、6.6%以上、6.7%以上、6.8%以上、6.9%以上、7.0%以上等であってよく、4.9%以上が好ましい。乾燥葉の単位質量当たりのRebDとRebMとの合計の割合の上限は特に限定されないが、例えば、25%、20%、15%などであってよい。
【0023】
本発明の植物体Dにおいて、総ステビオール配糖体に対するRebDとRebMの質量比が合計で37.8%以上であるとは、例えば葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)に含まれるRebDとRebMの合計質量を、葉から得られたステビオール配糖体の総質量に対する比率としてRebD+RebM/TSG%で表した場合、RebD+RebM/TSGの値が37.8%以上であることを意味する。この態様におけるRebD+RebM/TSGの値は、限定されずに、例えば、37.8%以上、37.9%以上、38.0%以上、38.1%以上、38.2%以上、38.3%以上、38.4%以上、38.5%以上、38.6%以上、38.7%以上、38.8%以上、38.9%以上、39.0%以上、39.2%以上、39.4%以上、39.6%以上、39.8%以上、40.0%以上、40.2%以上、40.4%以上、40.6%以上、40.8%以上、41.0%以上、41.2%以上、41.4%以上、41.6%以上、41.8%以上、42.0%以上、42.4%以上、42.8%以上、43.2%以上、43.6%以上、44.0%以上、44.4%以上、44.8%以上、45.2%以上、45.6%以上、46.0%以上等であってよく、38.1%以上が好ましい。総ステビオール配糖体に対するRebD+RebMの質量比の上限は特に限定されないが、例えば、85%、75%、65%、55%などであってよい。
【0024】
RebD及びRebMは、本発明の植物体の新鮮葉又は乾燥葉に適切な溶媒(水等の水性溶媒又はアルコール、エーテル及びアセトン等の有機溶媒)を反応させることにより抽出液の状態で抽出することができる。抽出条件等はOhta et al.,J. Appl. Glycosci., Vol. 57, No. 3 (2010)又はWO2010/038911に記載の方法や、後述の実施例に記載の方法を参照することができる。
さらに、このようにして得られた抽出液に対し、酢酸エチルその他の有機溶媒:水の勾配、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)、ガスクロマトグラフィー、飛行時間型質量分析(Time-of-Flight mass spectrometry:TOF-MS)、超高性能液体クロマトグラフィー(Ultra (High) Performance Liquid chromatography:UPLC)等の公知の方法を用いることによりRebD及びRebMを精製することができる。
【0025】
RebD及びRebMの含量は、Ohta et al.,J. Appl. Glycosci., Vol. 57, No. 3 (2010)又はWO2010/038911に記載の方法や、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。具体的には本発明のステビア植物体から新鮮葉をサンプリングし、LC/MS-MSを行うことにより測定することができる。
【0026】
本発明の植物体には植物体全体のみならず、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子など)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織など)あるいは種々の形態の植物細胞(例えば、懸濁培養細胞)、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれ得る。また、葉は先に述べた乾燥葉であってもよい。
【0027】
また、本発明の植物体には、組織培養物又は植物培養細胞も含まれ得る。このような組織培養物又は植物培養細胞を培養することにより、植物体を再生することができるからである。本発明の植物体の組織培養物又は植物培養細胞の例としては、胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、花弁、プロトプラスト、葉の切片及びカルス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
2.本発明の植物体の作出方法
本発明は、別の実施態様において、本発明のステビア植物体と第2のステビア植物体とを交雑させる工程を含む、野生型よりブロウソネチン含量が高い、高ブロウソネチン含有ステビア植物体を作出する方法(以下、「本発明の作出方法」と称する場合がある)を提供する。
当該方法により作出される植物体は、本発明の植物体と同じ表現型を有する。
【0029】
本発明の作出方法において、「交雑させる」とは、本発明の植物体(第一代(S1))と、第2の植物体(S1)とを交配させることにより、その子植物体(本発明の作出方法により作出される植物体(第二代(S2)))を得ることを意味する。交雑方法としては、戻し交雑が好ましい。「戻し交雑」とは、本発明の植物体と第2の植物体との間に生まれた子植物体(S2)を、さらに本発明の植物体(つまり、本発明の遺伝的特徴を有する植物体)(S1)と交雑させて、本発明の遺伝子的特徴を有する植物体を作出する手法である。本発明の作出方法に用いられる第2の植物体(S1)が、本発明の植物体と同じ表現型と遺伝的性質を有する場合には、実質的に戻し交雑となる。本発明の遺伝子多型はメンデルの法則に従って遺伝し、これに伴って当該遺伝子多型と相関する表現型、つまり高ブロウソネチン含有という表現型も、メンデルの法則に従って遺伝する。
【0030】
あるいは、本発明の植物体は自殖により作出することもできる。自殖は、本発明の植物体のおしべの花粉を本発明の植物体のめしべに自家受粉させることにより行うことができる。
【0031】
本発明の作出方法により作出される植物体は、表現型が本発明の植物体と同じであるため、本発明の作出方法により作出される植物体をさらに第3のステビア植物体とを交雑させることにより、野生型よりブロウソネチン含量が高い高ブロウソネチン含有ステビア植物体を作出することも可能である。また、本発明の作出方法により作出される植物体は、本発明の植物体と同じ遺伝的特徴を有してもよい。
【0032】
別の態様として、本発明の植物体は、先に述べた組織培養物又は植物培養細胞を培養することにより植物体を再生することで作出することも可能である。培養条件については、野生型ステビア植物の組織培養物又は植物培養細胞を培養する条件と同じであり、公知である(Protocols for In Vitro cultures and secondary metabolite analysis of aromatic and medicinal plants, Method in molecular biology, vo. 1391, pp113-123.)。
【0033】
あるいは、本発明の植物体は、野生型のステビア植物体のゲノムを非遺伝子組換え的手法により変異させることによって作出することもできる。「非遺伝子組換え的手法」の例としては、外来遺伝子の導入を行わずに宿主細胞(又は宿主植物体)の遺伝子に変異を誘発する方法が挙げられる。そのような方法としては植物細胞の変異誘発剤を作用させる方法が挙げられる。そのような変異誘発剤としては、エチルメタンスルホン酸(EMS)及びアジ化ナトリウム等が挙げられる。例えば、エチルメタンスルホン酸(EMS)は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%などの濃度で植物細胞を処理することができる。処理時間は1~48時間、2~36時間、3~30時間、4~28時間、5~26時間、6~24時間である。処理の手順自体は公知であるが、吸水過程を経た吸水種子を上記濃度で変異誘発剤を含む処理液に、上記処理時間浸漬することで行うことができる。
【0034】
あるいは、非遺伝子組換え的手法の例としてX線、γ線、紫外線などの放射線や光線を植物細胞に照射する方法もできる。この場合、適当な紫外線の照射量(紫外線ランプ強さ、距離、時間)を用いて照射した細胞を、選択培地などで培養させた後、目的の形質を有する細胞、カルス、植物体を選択できる。その際の照射強度は0.01~100Gr、0.03~75Gr、0.05~50Gr、0.07~25Gr、0.09~20Gr、0.1~15Gr、0.1~10Gr、0.5~10Gr、1~10Grであり、照射距離は1cm~200m、5cm~100m、7cm~75m、9cm~50m、10cm~30m、10cm~20m、10cm~10mであり、照射時間は1分~2年、2分~1年、3分~0.5年、4分~1か月、5分~2週間、10分~1週間である。照射の強度、距離及び時間は、放射線の線種や照射対象となる状態(細胞、カルス、植物体)により異なるが、当業者であれば適宜調整することができる。
【0035】
また、細胞融合、葯培養(半数体育成)、遠縁交雑(半数体育成)などの手法も公知である。
一般に、植物細胞は、培養の間に変異を伴うことがあるため、より安定した形質維持のために植物個体に戻すことが好ましい。
本発明の植物体を宿主として事後的に遺伝子組み換え(例えばゲノム編集等により)を行って得られた植物体(例えば、本発明の植物体を宿主として遺伝子組み換えを行って、さらに別の形質を付加した植物体)も、本発明の範囲から除外されるものではない。
【0036】
3.高ブロウソネチン含有ステビア植物体、又は、高RebD含有及び/又は高RebM含有ステビア植物体のスクリーニング方法
ステビア植物体のブロウソネチン含量はRebD及びRebM含量と相関性を有することから、高ブロウソネチン含有ステビア植物体を、RebD又はRebM含量に基づいてスクリーニングすることや、高RebD含有及び/又は高RebM含有ステビア植物体を、ブロウソネチン含量に基づいてスクリーニングすることができる。ここで、「スクリーニング」とは、本発明の植物体とそれ以外の植物体とを識別し、本発明の植物体を選択することを意味する。
したがって、本発明の別の側面は、
(A)被験ステビア植物体におけるブロウソネチンの含量を決定する工程を含む、高RebD含有ステビア植物体及び/又は高RebM含有ステビア植物体をスクリーニングする方法(以下、本発明のスクリーニング方法Aと称する場合がある)、及び
(B)被験ステビア植物体におけるRebD及び/又はRebMの含量を決定する工程を含む、高ブロウソネチン含有ステビア植物体をスクリーニングする方法(以下、本発明のスクリーニング方法Bと称する場合がある)
に関する。
【0037】
本発明のスクリーニング方法Aにおいては、ブロウソネチン含量が基準値以上の場合に、被験ステビア植物体が高RebD含有型及び/又は高RebM含有型であると判定し、基準値未満の場合に被験ステビア植物体が低RebD含有型及び/又は低RebM含有型であると判定することができる。
基準値は、高RebD含有型及び/又は高RebM含有型ステビア植物体と、低RebD含有型及び/又は低RebM含有型ステビア植物体を識別できるものであれば特に限定されないが、例えば、上記測定方法Aで測定した場合のピーク強度として、ブロウソネチンFについては500000、700000、1000000、1500000など、ブロウソネチンHについては90000、120000、130000、400000など、ブロウソネチンTについては400000、500000、1000000、1500000などであってよい。
【0038】
また、基準値は、例えば、上記測定方法Aで測定した場合のピーク強度比として、ブロウソネチンFについては0.15%、0.3%、0.5%、0.7%など、ブロウソネチンHについては0.02%、0.025%、0.03%、0.04%など、ブロウソネチンTについては0.1%、0.2%、0.3%、0.4%などであってよい。
ブロウソネチンの測定値として、複数回、例えば、2回、3回、4回、5回又はそれ以上の測定値の平均値を用いることが好ましい。
【0039】
本発明のスクリーニング方法Bにおいては、RebD及び/又はRebM含量が基準値以上の場合に、被験ステビア植物体が高ブロウソネチン含有型であると判定し、基準値未満の場合に被験ステビア植物体が低ブロウソネチン含有型であると判定することができる。
基準値は、高ブロウソネチン含有型ステビア植物体と、低ブロウソネチン含有型ステビア植物体を識別できるものであれば特に限定されないが、例えば、乾燥葉中の含量として、RebDについては1質量%、2質量%、3質量%、3.3質量%、3.6質量%など、RebMについては0.4質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%などであってよい。
【0040】
本発明のスクリーニング方法Aは、基準値以上のブロウソネチンが検出された被験ステビア植物の組織(例えば葉)のRebD及び/又はRebMの含有量を測定する工程をさらに含んでもよい。RebD及びRebMの含有量の測定は、本発明の植物体の項に記載したとおりである。また、この態様において、基準値以上のブロウソネチンが検出された被験ステビア植物体のうち、RebD及び/又はRebMの含有量が高い個体を選択して、これを他のステビア植物体と交配し、得られた子植物体について、本発明のスクリーニング方法を適用してもよい。したがって、本発明のスクリーニング方法は、以下の1以上の工程を含み得る。
(i)被験ステビア植物におけるブロウソネチン含量を測定する工程、
(ii)基準値以上のブロウソネチンが検出された被験ステビア植物組織のRebD及び/又はRebMの含有量を測定する工程、
(iii)基準値以上のブロウソネチンが検出された被験ステビア植物体のうち、RebD及び/又はRebMの含有量が高い個体を選択する工程、
(iv)選択したRebD及び/又はRebMの含有量が高い個体を他のステビア植物体と交配する工程、
(v)交配により得られた子植物体におけるブロウソネチン含量を測定する工程、
(vi)基準値以上のブロウソネチンが検出された子植物組織のRebD及び/又はRebMの含有量を測定する工程、
(vii)基準値以上のブロウソネチンが検出された子植物体のうち、RebD及び/又はRebMの含有量が高い個体を選択する工程。
【0041】
選択するRebD及び/又はRebMの含有量が高い個体は、例えば、基準値以上のブロウソネチンが検出された被験ステビア植物体のうち、RebD及び/又はRebMの含有量の高さに関し上位50%まで、上位40%まで、上位30%まで、上位20%まで、上位10%まで、上位5%まで、上位4%まで、上位3%まで、上位2%まで又は上位1%までの個体などであってよい。また、交配する他のステビア植物体は、基準値以上のブロウソネチンを含んでいても含んでいなくてもよい。上記態様において、工程(iv)~(vii)は、複数回繰り返すことができる。このようにして、RebD及び/又はRebMの含有量がより高いステビア植物体をスクリーニングすることができる。
【0042】
本発明のスクリーニング方法Bは、基準値以上のRebD及び/又はRebMが検出された被験ステビア植物の組織(例えば葉)のブロウソネチン含有量を測定する工程をさらに含んでもよい。ブロウソネチンの含有量の測定は、本発明の植物体の項に記載したとおりである。また、この態様において、基準値以上のRebD及び/又はRebMが検出された被験ステビア植物体のうち、ブロウソネチンの含有量が高い個体を選択して、これを他のステビア植物体と交配し、得られた子植物体について、本発明のスクリーニング方法を適用してもよい。したがって、本発明のスクリーニング方法は、以下の1以上の工程を含み得る。
(i)被験ステビア植物におけるRebD及び/又はRebM含量を測定する工程、
(ii)基準値以上のRebD及び/又はRebMが検出された被験ステビア植物組織のブロウソネチンの含有量を測定する工程、
(iii)基準値以上のRebD及び/又はRebMが検出された被験ステビア植物体のうち、ブロウソネチンの含有量が高い個体を選択する工程、
(iv)選択したブロウソネチンの含有量が高い個体を他のステビア植物体と交配する工程、
(v)交配により得られた子植物体におけるRebD及び/又はRebM含量を測定する工程、
(vi)基準値以上のRebD及び/又はRebMが検出された子植物組織のブロウソネチンの含有量を測定する工程、
(vii)基準値以上のRebD及び/又はRebMが検出された子植物体のうち、ブロウソネチンの含有量が高い個体を選択する工程。
【0043】
選択するブロウソネチンの含有量が高い個体は、例えば、基準値以上のRebD及び/又はRebMが検出された被験ステビア植物体のうち、ブロウソネチンの含有量の高さに関し上位50%まで、上位40%まで、上位30%まで、上位20%まで、上位10%まで、上位5%まで、上位4%まで、上位3%まで、上位2%まで又は上位1%までの個体などであってよい。また、交配する他のステビア植物体は、基準値以上のRebD及び/又はRebMを含んでいても含んでいなくてもよい。上記態様において、工程(iv)~(vii)は、複数回繰り返すことができる。このようにして、ブロウソネチンの含有量がより高いステビア植物体をスクリーニングすることができる。
【0044】
本発明のスクリーニング方法において、被験ステビア植物体は、天然植物体であっても、非遺伝子組換植物体であってもよい。非遺伝子組換植物体については、本発明の植物体の項に記載したとおりである。
本発明のスクリーニング方法において、被験ステビア植物体は、突然変異誘発処理を行ったステビア植物及びその子孫植物を含んでもよい。突然変異誘発処理については、本発明の植物体の項に記載したとおりであり、変異誘発剤による処理や、放射線又は光線の照射による処理等を含む。
【0045】
4.植物体由来抽出物の製造方法及び当該抽出物を用いた製品
本発明のさらなる態様において、本発明の植物体、又は当該植物体の種子若しくは葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)から抽出物を得る工程を含む、ブロウソネチン含有抽出物の製造方法(以下、「本発明の抽出物の製造方法」と称する場合がある)が提供される。さらに、本発明の抽出物の製造方法により得られた抽出物からブロウソネチンを精製する工程を含む、ブロウソネチンの製造方法(以下、「本発明のブロウソネチンの製造方法」と称する場合がある)が提供される。
具体的には、本発明の高ブロウソネチン含有型ステビア植物体、本発明のスクリーニング方法により選別された高ブロウソネチン含有型ステビア植物体又は本発明の方法により製造された高ブロウソネチン含有型ステビア植物体からブロウソネチンを含む抽出物を得る工程を含む、ブロウソネチンの製造方法が提供される。
ブロウソネチンを含む抽出物は、本発明の植物体の新鮮葉又は乾燥葉に適切な溶媒(水等の水性溶媒又はアルコール、エーテル及びアセトン等の有機溶媒)を反応させることにより得ることができる。抽出条件等は非特許文献1~3に記載の方法や、後述の実施例に記載の方法を参照することができる。
また、ブロウソネチンを含む抽出物を酢酸エチルその他の有機溶媒:水の勾配、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)、ガスクロマトグラフィー、飛行時間型質量分析(Time-of-Flight mass spectrometry:TOF-MS)、超高性能液体クロマトグラフィー(Ultra (High) Performance Liquid chromatography:UPLC)等の公知の方法を用いることによりブロウソネチンを精製することができる。
【0046】
本発明の抽出物の製造方法により得られた抽出物(以下、「本発明の抽出物」という)は、野生型ステビア種と比べブロウソネチンをより高い含量で含む。
本発明の抽出物は、野生型ステビア種から得られた抽出物と比べブロウソネチンを150%以上、200%以上、300%以上、400%以上、500%以上、600%以上、700%以上、800%以上、900%以上、1100%以上、1200%以上、1300%以上、1400%以上、1500%以上、1600%以上、1700%以上、1800%以上、1900%以上、2000%以上、2100%以上、2200%以上、2300%以上、2400%以上、2500%以上、2600%以上、2700%以上、2800%以上、2900%以上、3000%以上、3100%以上、3200%以上、3300%以上、3400%以上、3500%以上、3600%以上、3700%以上、3800%以上、3900%以上、4000%以上、4100%以上、4200%以上、4300%以上、4400%以上、4500%以上、4600%以上、4700%以上、4800%以上、4900%以上、5000%以上高い含量で含んでいてもよい。ここで、本発明の抽出物と、野生型ステビア種から得られた抽出物は、同じ方法で得られたものであってよい。
【0047】
また、本発明の抽出物はステビオール配糖体をさらに含んでいてもよい。ステビオール配糖体はステビオール骨格に糖が付加した化合物であり、その非限定例としては、例えば、RebA、RebB、RebD、RebE、RebF、RebI、RebJ、RebK、RebM、RebN、RebO、RebQ、RebR、ズルコシドA、ルブソシド、ステビオール、ステビオールモノシド、ステビオールビオシド、ステビオシドなどが挙げられる。本発明の抽出物に含まれる好ましいステビオール配糖体としては、例えば、RebD及びRebMが挙げられる。
【0048】
このようにして得られた本発明の抽出物及び/又は本発明のブロウソネチンの製造方法により得られるブロウソネチンと他の成分とを混合することにより、ブロウソネチンの含量を高めた新規な医薬品、香料、飲食品等を製造することができる。そこで、本発明は、別の実施態様として、本発明の抽出物及び/又は本発明のブロウソネチンの製造方法により得られるブロウソネチンと他の成分とを混合する工程を含む、医薬品、香料又は飲食品の製造方法を提供する。さらに、本発明は、前記製造方法により得られた、ブロウソネチンの含量を高めた新規な医薬品、香料又は飲食品を提供する。ここで飲食品とは、飲料及び食品を意味する。したがって、ある実施態様では、本発明は新規な医薬品、香料、飲料又は食品を提供し、また、当該医薬品、香料、飲料又は食品の製造方法を提供する。一態様において、ブロウソネチンを含む本発明の医薬品、香料、飲料又は食品はグリコシダーゼ阻害活性を有し、腫瘍、糖尿病、ウイルス疾患などの処置に有用である。
【実施例】
【0049】
以下に本発明に関する実験例、実施例等を記載するが、本発明はこれらの具体的な態様に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]ブロウソネチン含量の測定
種々の系統のステビア植物体の乾燥葉に含まれるブロウソネチン含量を測定した。具体的には、各個体より適量の新鮮葉をサンプリングし、0.25gの新鮮葉をフリーズドライにより乾燥し、破砕物乾物0.05gを終濃度75%のメタノール中に投入した。ビーズ式ホモジナイザーでホモジナイズし、15,000rpmで10分間遠心後、上清を回収した。上清をコンディショニング済みのMonoSpin(R)C18カラム(GL Sciences)に適用し、5000gで2分間遠心後、溶出液を回収し、0.2μmフィルターでろ過した。これをLC-MS分析用試料とした。LC-MS分析には、Ultimate 3000 RSLC(Thermo Fisher Scientific)を接続したQ Exactive(Thermo Fisher Scientific)を用いた。分析条件及び分析結果を以下に示す。なお、分析結果は、5回の反復実験で得たマスクロマトグラムにおけるピーク強度の平均値及び総ピーク強度に対する各ブロウソネチンのピーク強度比(%)を示す。また、使用したステビア植物体は、いずれもエチルメタンスルホン酸(EMS)での変異誘発処理により遺伝子が改変された個体の子孫である。
【0051】
【0052】
【0053】
【表8】
上記結果が示すとおり、ステビア植物体に各種ブロウソネチンが含まれることが明らかとなった。
【0054】
[実施例2]ステビオール配糖体含量の測定
実施例1と同じ個体より適量の新鮮葉をサンプリングし、0.25gの新鮮葉をフリーズドライにより乾燥し、破砕物乾物0.05gを純水中に投入した。超音波処理20分にて抽出し、遠心・濾過した後に0.33mLの抽出液を得た。この抽出液をLCMS-8050(島津)にてLC/MS/MS分析を行い、RebA、RebB、RebC、RebD、RebF、RebM、RebN及びRebOの濃度を定量し、その合計を総ステビオール配糖体(TSG)濃度とした。結果を下表に示す。なお、各数値は乾燥葉中の質量%又はTSGに対する比率(%)を示す。
【0055】
【0056】
[実施例3]ブロウソネチン含量とステビオール配糖体含量との相関性の検討
実施例1~2で得られた結果を基に、ブロウソネチン含量とステビオール配糖体含量との間に相関性があるか検討した。各ブロウソネチンの含量と、各ステビオール配糖体又はTSGの含量との間の相関係数を下表に示す。
【表10】
【表11】
上記結果が示すとおり、ブロウソネチン含量とRebD含量及びRebM含量との間に正の相関性が存在することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によってブロウソネチンの供給源が多様化され、ブロウソネチンを含む機能性の高い医薬品、香料又は飲食品などの提供が容易となる。