(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材及びプラグ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231110BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2021016385
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰穂
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057786(JP,A)
【文献】特開平10-050813(JP,A)
【文献】特表2019-519927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面側に設けられ、緻密質の本体部と、屈曲しながら前記本体部を厚み方向に貫通するガス流路部と、を有するプラグと、
前記セラミックプレートを厚み方向に貫通し、前記ガス流路部の上方に連通するガス放出孔と、
前記セラミックプレートの下面に接合され、前記ガス流路部の下方からガスを供給するガス供給通路を有する金属製の冷却プレートと、
を備え、
前記ガス流路部の全長のうちの少なくとも一部の区間が絶縁性かつ通気性の多孔質である、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記ガス流路部の全長のうちの少なくとも一部の区間は、気孔率が10%以上50%以下の前記多孔質である、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記ガス流路部の全長のうちの30%以上の区間は、前記多孔質である、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記ガス流路部は、螺旋状に形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記プラグは、上面に向かって徐々に径が狭まるテーパ部を有し、
前記電極は、前記セラミックプレートの内部のうち前記テーパ部と交差する面に設けられ、前記プラグを貫通させるための貫通穴を有している、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記プラグは、下側の径が狭まる段差を側面に有している、
請求項1~5のいずれか1
項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項7】
緻密質の本体部と、屈曲しながら前記本体部を厚み方向に貫通するガス流路部と、を有するプラグであって、
前記ガス流路部の全長のうちの少なくとも一部の区間が絶縁性かつ通気性の多孔質である、
プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材及びプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材としては、上面にウエハ載置面を有する静電チャックを備えたものが知られている。例えば、特許文献1の半導体製造装置用部材は、静電チャックの下面に中間プレートを介して冷却プレートが配置されたものである。冷却プレートは、ガス供給孔を有している。静電チャックは、下面からウエハ載置面まで貫通するガス放出孔を有している。中間プレートは、冷却プレートとともに、ガス供給孔及びガス放出孔と連通する空所を形成していて、この空所に緻密質プラグが配置されている。緻密質プラグは、上面側と下面側とを屈曲しながら貫通するガス流路を有している。この半導体製造装置用部材はチャンバー内でウエハ載置面にウエハを載置し、チャンバー内に原料ガスを導入すると共に冷却プレートにプラズマを立てるためのRF電圧を印加することにより、プラズマを発生させてウエハの処理を行う。このとき、ガス供給孔には、ヘリウム等のバックサイドガスが導入される。バックサイドガスは、ガス供給孔から緻密質プラグのガス流路を経てガス放出孔を通ってウエハの裏面に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0243726号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緻密質プラグのガス流路を介してウエハと冷却プレートとの間で放電(絶縁破壊)が生じることがある。特許文献1では、緻密質プラグの上面側と下面側とを貫通するガス流路が屈曲していてその流路長が比較的長いため、ガス流路を介した絶縁破壊が生じにくいが、まだ十分ではなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、従来に比べて絶縁破壊しにくくすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面側に設けられ、緻密質の本体部と、屈曲しながら前記本体部を厚み方向に貫通するガス流路部と、を有するプラグと、
前記セラミックプレートを厚み方向に貫通し、前記ガス流路部の上方に連通するガス放出孔と、
前記セラミックプレートの下面に接合され、前記ガス流路部の下方からガスを供給するガス供給通路を有する金属製の冷却プレートと、
を備え、
前記ガス流路部の全長のうちの少なくとも一部の区間が絶縁性かつ通気性の多孔質である、
ものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、プラグは、屈曲しながら緻密質の本体部を厚み方向に貫通するガス流路部を有している。また、ガス流路部の全長のうちの少なくとも一部の区間が絶縁性かつ通気性の多孔質である。多孔質の区間では、多孔質内に存在する三次元的(例えば三次元網状)に連続した気孔がガス流路となる。そのため、ガス流路部全体が空洞の場合よりも、ガス流路部内における実質的な流路長が長い。したがって、この半導体製造装置用部材では、ウエハと冷却プレートとの間でガス流路を介した放電(絶縁破壊)が生じにくい。
【0008】
本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、半導体製造装置用部材の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0009】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記ガス流路部の全長のうちの少なくとも一部の区間は、気孔率が10%以上50%以下の前記多孔質であるものとしてもよい。気孔率が50%以下では実質的な流路長が十分長くなるため、好ましい。気孔率が低いほど絶縁破壊しにくいが、ガスの流通を円滑にする観点から、気孔率は10%以上が好ましい。
【0010】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記ガス流路部の全長のうちの30%以上の区間は、前記多孔質であるものとしてもよい。ガス流路部の全長のうちの30%以上が多孔質であれば、実質的な流路長が十分長くなるため好ましい。
【0011】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記ガス流路部は、螺旋状に形成されていてもよい。こうすれば、ガスの流通を円滑にできる。
【0012】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記プラグは、上面に向かって徐々に径が狭まるテーパ部を有し、前記電極は、前記セラミックプレートの内部のうち前記テーパ部と交差する面に設けられ、前記プラグを貫通させるための貫通穴を有していてもよい。こうすれば、プラグはテーパ部を有しているため、テーパ部を有さない場合に比べて、プラグを貫通させるために電極に設けられた貫通穴の直径を小さくすることができる。
【0013】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記プラグは、下側の径が狭まる段差を側面に有していてもよい。その場合、半導体製造装置用部材において、前記セラミックプレートには下面にプラグ挿入穴が設けられ、前記プラグは前記プラグ挿入穴に挿入され、前記段差よりも深い領域で前記プラグ挿入穴と前記プラグとは当接し、前記段差よりも浅い領域では、前記プラグ挿入穴と前記プラグとの間に隙間が形成され、前記隙間には接着材料製のプラグ支持部材が形成されていてもよい。こうした半導体製造装置用部材を製造する際に、プラグとプラグ挿入穴との隙間に接着剤を注入したとしても、接着剤は段差よりも奥に流れ込むことが抑制され、ひいては接着剤がガス放出孔に入り込むことが抑制される。したがって、プラグを支持する接着材料すなわちプラグ支持部材によってガス放出孔が塞がれることがない。
【0014】
本発明のプラグは、
緻密質の本体部と、屈曲しながら前記本体部を厚み方向に貫通するガス流路部と、を有するプラグであって、
前記ガス流路部の全長のうちの少なくとも一部の区間が絶縁性かつ通気性の多孔質である、
ものである。
【0015】
このプラグは、屈曲しながら緻密質の本体部を厚み方向に貫通するガス流路部を有している。また、ガス流路部の全長のうちの少なくとも一部の区間が絶縁性かつ通気性の多孔質である。多孔質の区間では、多孔質内に存在する三次元的(例えば三次元網状)に連続した気孔がガス流路となる。そのため、ガス流路部全体が空洞の場合よりも、ガス流路部内における実質的な流路長が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図7】半導体製造装置用部材110の縦断面の部分拡大図。
【
図8】半導体製造装置用部材210の縦断面の部分拡大図。
【
図9】半導体製造装置用部材310の縦断面図の部分拡大図。
【
図10】半導体製造装置用部材410の縦断面図の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、
図2はセラミックプレート20の平面図、
図3は
図1の部分拡大図、
図4はプラグ40の斜視図である。
【0018】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、プラグ40と、ガス放出孔28と、冷却プレート60とを備えている。
【0019】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置面20aとなっている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面20aには、
図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面20aに吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面20aへの吸着固定が解除される。この電極22は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置面20aの上方には上部電極(図示せず)が配置され、その上部電極とセラミックプレート20に内蔵された電極22とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。電極22にはプラグ40を挿通するための貫通穴22a(
図3参照)が設けられており、電極22の貫通穴22aとプラグ40との間は、所定の絶縁距離が確保されている。
【0020】
セラミックプレート20には、プラグ挿入穴30が設けられている。プラグ挿入穴30は、セラミックプレート20の下面20bの複数箇所(例えば周方向に沿って等間隔に設けられた12箇所とか24箇所)に設けられた有底筒状の穴である。プラグ挿入穴30は、略円筒形(例えば開口径8mm、全長4mm)であるが、
図3に示すように、底面31と側面32との境界は傾斜面33となっている。
【0021】
ガス放出孔28は、セラミックプレート20を厚み方向(上下方向)に貫通するように設けられた小径(例えば直径0.1mm)の穴である。本実施形態では、ガス放出孔28は、セラミックプレート20のうちプラグ挿入穴30の底壁に相当する部分を厚み方向に貫通している。ガス放出孔28は、一つのプラグ40に対して複数設けられている。ガス放出孔28は、プラグ40の後述するガス流路部46の上方に連通する。
【0022】
プラグ40は、セラミックプレート20の下面20b側に設けられている。本実施形態では、プラグ40は、セラミックプレート20の下面20bに設けられたプラグ挿入穴30に挿入されている。プラグ40は、略円柱形の本体部45(例えば最大外径8mm、高さ4mm)と、屈曲しながら本体部45を厚み方向(上下方向)に貫通するガス流路部46とを備えている。
【0023】
本体部45は、プラグ40のうちの緻密質の部分であり、プラグ40のうちのガス流路部46以外の部分である。本明細書において、「緻密質」とは、バックサイドガスが流通できない程度の緻密さを有することをいう。本体部45は、例えば、気孔率が1%未満であるものとしてもよく、気孔率が0.1%未満であることが好ましい。本明細書において、「気孔率」は、水中重量法(アルキメデス法)で測定した開気孔率をいう。水中重量法での測定が困難な場合(例えばガス流路部46の一部の区間が空洞の場合)には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて50倍の倍率で代表的な断面を観察したときに、観察画像中に確認される気孔の面積率としてもよい。本体部45は、セラミックプレート20と同種のセラミック(例えばアルミナや窒化アルミニウム)で形成されていることが好ましい。本体部45の側面43には、本体部45の周方向に沿って段差44が設けられている。段差44は、本体部45の下側の径が狭まるように設けられている。プラグ挿入穴30のうち、本体部45の段差44よりも深くガス放出孔28と対向する位置に設けられた円形凹部48に至る手前までの領域で、プラグ挿入穴30と本体部45とは当接している。プラグ挿入穴30のうち、段差44よりも浅い領域では、プラグ挿入穴30と本体部45との間にリング状の隙間Gが形成されている。この隙間Gには接着材料製のプラグ支持部材50が隙間Gと同じリング状に形成されている。接着材料としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの絶縁樹脂が挙げられるが、シリコーン樹脂が好ましい。このプラグ支持部材50によって、本体部45はセラミックプレート20に接着されている。本体部45は、下面40bに向かって徐々に径が狭まる第1テーパ部41を有している。そのため、第1テーパ部41とプラグ挿入穴30との隙間Gは、プラグ挿入穴30の開口部30aに向かって徐々に広くなっている。プラグ支持部材50は、本体部45の第1テーパ部41を下から受ける形状になっている。本体部45は、上面40aに向かって徐々に径が狭まる第2テーパ部42を有している。第2テーパ部42はプラグ挿入穴30の傾斜面33と当接している。本体部45の上面40aには、円形凹部48が設けられている。円形凹部48は、ガス流路部46内の空間(ガス流路)と複数のガス放出孔28とを連通する役割を果たす。
【0024】
ガス流路部46は、屈曲しながら本体部45を厚み方向に貫通し、プラグ40の厚み方向のガスの流通を許容する。本実施形態では、ガス流路部46は、本体部45を厚み方向に貫通する螺旋状に形成されており、全長は約55mm、直径は約0.8mmである。ガス流路部46は、その内部を完全に空洞としたときに上端の開口から下端の開口が見通せない形状であることが好ましい。ガス流路部46は、その全体が多孔質47である(
図4参照)。
図4では、多孔質47を網掛けで示した。本明細書において、「多孔質」とは、少なくともバックサイドガスが通過できる程度に気孔を有し、かつ、完全な空洞ではないことをいう。本実施形態では、多孔質47の気孔率は約40%である。多孔質47は、本体部45と同種のセラミックとしてもよい。なお、多孔質47と本体部45との境界が明確でない場合には、観察した断面において多孔質47の気孔の全てを含み周囲長が最も短くなる領域を多孔質47とする。
【0025】
プラグ40は、例えば、以下のように製造したものとしてもよい。まず、最終的に本体部45になる部分の成形体又はそれを焼成した焼成体を準備する。成形体は、3Dプリンターを用いて成形してもよいし、モールドキャスト成形で成形してもよい。モールドキャスト成形の詳細は、例えば特許第5458050号公報などに開示されている。モールドキャスト成形では、成形型の成形空間に、セラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを注入し、ゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させることにより、成形型内に成形体を形成する。モールドキャスト成形では、ワックスなどの融点の低い材料で形成された外型及び中子(ガス流路部46と同形状の型)を成形型として用いて成形型内に成形体を形成し、その後、成形型の融点以上の温度に加熱して成形型を溶融除去又は燃焼により消失させて、成形体を製造してもよい。得られた成形体又は焼成体のうちガス流路部46に対応する空洞に多孔質47の原料を配置する。具体的には、例えば、セラミック粉体などの骨材に樹脂やワックスなどの造孔材を加えた原料を、必要に応じて溶剤を加えてスラリー状やペースト状にして成形体又は焼成体のガス流路部46に対応する空洞に充填し、最後に全体を焼成する。この焼成により、多孔質47の原料中の造孔材が消失して多孔質47が形成され、本体部45と多孔質47とが一体化されたプラグ40が得られる。
【0026】
冷却プレート60は、金属アルミニウムやアルミニウム合金などの金属製の円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート60の内部には、冷媒が循環する冷媒流路62が形成されている。冷却プレート60は、ガス流路部46の下方からバックサイドガスをプラグ40へ供給するガス供給通路64を有している。ガス供給通路64は、平面視で冷却プレート60と同心円の環状のガス集合部64aと、冷却プレート60の下面60bからガス集合部64aへガスを導入するガス導入部64bと、ガス集合部64aから各プラグ40へガスを分配するガス分配部64cとを備える。ガス分配部64cは、冷却プレート60の上面60aに開口している。冷却プレート60は、セラミックプレート20の下面20bに接合されている。本実施形態では、冷却プレート60は、樹脂製のボンディングシート70を介してセラミックプレート20の下面20bに接着されている。ボンディングシート70には、プラグ挿入穴30と対向する位置に、プラグ挿入穴30の開口径と同じかやや大きい径の穴72が設けられている。なお、冷却プレート60は、ボンディングシート70ではなくろう材を介してセラミックプレート20の下面20bに接合されていてもよい。
【0027】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面20aに載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面20aに吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10の電極22との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。なお、上部電極と電極22との間に高周波電圧を印加する代わりに、上部電極と冷却プレート60との間に高周波電圧を印加してもよい。ウエハWの表面は、発生したプラズマによってエッチングされる。もしプラグ40の螺旋状のガス流路部46全体が空洞であったならば、発生したプラズマは、その空洞を介してウエハWと冷却プレート60との間で放電を起こすことがある。しかし、本実施形態では、プラグ40の螺旋状のガス流路部46の全体が絶縁性の多孔質47であるため、ガス流路部46内における実質的な流路長が長く、そのような放電が起きるのを防止することができる。冷却プレート60の冷媒流路62には、冷媒が循環される。ガス供給通路64には、図示しないガスボンベからヘリウム等のバックサイドガスが導入される。バックサイドガスは、ガス供給通路64、ガス流路部46及びガス放出孔28を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置面20aのうちシールバンド21aや円形突起21bが設けられていない部分との間の空間に放出され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0028】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、プラグ40は、屈曲しながら緻密質の本体部45を厚み方向に貫通するガス流路部46を有している。また、ガス流路部46の全体が絶縁性かつ通気性の多孔質47である。そのため、ガス流路部46の一部の区間又は全体が空洞の場合よりも、ガス流路部46内における実質的な流路長が長い。したがって、この半導体製造装置用部材10では、ガス流路を介した絶縁破壊を抑制できる。
【0029】
また、ガス流路部46の全長のうちの少なくとも一部(ここでは全部)の区間は、気孔率が10%以上50%以下(具体的には約40%)の多孔質47である。そのため、ガス流路を介した絶縁破壊を抑制できるとともに、ガスの流通を円滑にできる。なお、ガス流路部46の全長のうちの少なくとも一部の区間は、気孔率が20%以上50%以下の多孔質47であることが好ましく、気孔率が30%以上50%以下の多孔質47であることがより好ましい。
【0030】
更に、ガス流路部46は、螺旋状に形成されているため、ガスの流通を円滑にできる。
【0031】
更にまた、プラグ40は、第2テーパ部42を有し、電極22は、セラミックプレート20の内部のうち第2テーパ部42と交差する面に設けられ、プラグ40を貫通させるための貫通穴22aを有している。このように、プラグ40は第2テーパ部42を有しているため、第2テーパ部42を有さない場合(後述する
図7参照)に比べて、プラグ40を貫通させるために電極22に設けられた貫通穴22aの直径D1(
図3参照)を小さくすることができる。また、プラグ40を貫通穴22aに合わせて全長にわたり細くする場合に比べてプラグ40の内部に設けられた螺旋状のガス流路部46を長くすることができる。
【0032】
そしてまた、プラグ40は、リング状に形成された絶縁樹脂製のプラグ支持部材50でセラミックプレート20に接合され、ガス流路部46の上端はプラグ40の表面のうちプラグ支持部材50で隔てられた一方(セラミックプレート20側の表面)に配置され、ガス流路部46の下端はプラグ40の表面のうちプラグ支持部材50で隔てられた他方(冷却プレート60側の表面)に配置されている。これにより、プラグ40とセラミックプレート20との間に隙間があったとしてもその隙間が冷却プレート60に至る手前でプラグ支持部材50によって分断されるため、ウエハWと冷却プレート60との間でプラグ40とセラミックプレート20との間の隙間を介した放電(絶縁破壊)も生じにくい。
【0033】
そして更に、プラグ40は、段差44を側面43に有していて、段差44よりも深い領域でプラグ挿入穴30とプラグ40とは当接し、段差44よりも浅い領域では、プラグ挿入穴30とプラグ40との間に隙間Gが形成され、その隙間Gには接着材料製のプラグ支持部材50が形成されている。そのため、半導体製造装置用部材10を製造する際に、プラグ挿入穴30とプラグ40との隙間Gに接着剤を注入したとしても、接着剤は段差44よりも奥に流れ込むことが抑制され、ひいては接着剤がガス放出孔28に入り込むことが抑制される。したがって、プラグ40を支持する接着材料すなわちプラグ支持部材50によってガス放出孔28が塞がれることがない。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、ガス流路部46の全体を多孔質47としたが、ガス流路部46の全長のうちの一部の区間を多孔質47としてもよい。なお、多孔質47の区間が長いほどガス流路を介した絶縁破壊をより抑制できるため、ガス流路部46の全長のうちの30%以上の区間が多孔質47であることが好ましく、50%以上の区間が多孔質47であることがより好ましく、90%以上の区間が多孔質47であることがさらに好ましい。ガス流路部46の全長のうちの一部の区間が多孔質47である場合、残りの区間は空洞としてもよく、例えば、ガス流路部46の全長のうち上端部及び下端部のうちの少なくとも一方の区間を空洞とし、その他の区間を多孔質47としてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、ガス流路部46の全長は約55mmとしたが、例えば、20mm以上60mm以下としてもよく、40mm以上55mm以下としてもよい。また、ガス流路部46の全長は、例えば本体部45の厚みの5倍以上15倍以下としてもよい。ガス流路部46の全長が20mm以上又は本体部45の厚みの5倍以上であれば実質的な経路長が十分長くなるため好ましい。ガス流路部46の全長が長いほど絶縁破壊しにくいが、ガス流路部46の断面積を確保してガスの流通を円滑にする観点から、ガス流路部46の全長は60mm以下又は本体部45の厚みの15倍以下が好ましい。
【0037】
上述した実施形態では、ガス流路部46の直径は約0.8mmとしたが、例えば0.4mm以上1.0mm以下としてもよい。また、ガス流路部46の直径は、例えば本体部45の厚みの1/10以上1/4以下としてもよい。
【0038】
上述した実施形態において、ガス流路部46内の実質的な流路長(最短経路長)は、例えばガス流路部46の全長の1.2倍以上3.0倍以下としてもよく、1.5倍以上2.5倍以下としてもよい。
【0039】
上述した実施形態において、セラミックプレート20の内部に抵抗発熱体を埋設してもよい。こうすれば、ウエハWの温度をより精度よく制御することができる。
【0040】
上述した実施形態では、プラグ40の内部のガス流路部46を螺旋状としたが、特にこれに限定されない。例えば、ガス流路部46は、
図5,6に示すような折り返し部の多い形状(ジグザグ形状など)としてもよい。
図5,6では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
図5では、ガス流路部46は、ジグザグが直角の角を有している。この角は鋭角でも鈍角でもよい。
図6では、ガス流路部46は、角がアールである、つまり角がない。こうしたジグザグは、平面的であってもよいし、立体的であってもよい。また、ガス流路部46は、上方から見たときに外周が多角形となるような、角を有する螺旋状でもよい。螺旋の巻き数やジグザグの折り返し数などは特に限定されない。このようにしても、ガス流路を介して放電が起きるのを効果的に防止することができる。
【0041】
上述した実施形態では、プラグ40は、絶縁樹脂製のプラグ支持部材50でセラミックプレート20に接着されているものとしたが、こうしたものに限定されない。例えば、プラグ40は、セラミックプレート20にセラミック接合されていてもよい。つまり、プラグ40とセラミックプレート20との接合部分(絶縁性接合部とも称する)がセラミックであるものとしてもよい。なお、本明細書において、「セラミック接合」とは、セラミック同士がセラミックで接合されていることをいう。セラミック接合では、両者を絶縁樹脂製のプラグ支持部材50を用いて接着する場合よりも、接合部分の劣化が生じにくい。セラミック接合は、例えば、焼結接合や拡散接合などの固相接合としてもよい。焼結接合は、セラミック粉体を接合界面に挿入して、加圧力を加えながら加熱し、焼結させて接合する方法である。拡散接合は、セラミック同士を直接接触させたまま加圧下で加熱し、構成元素を拡散させて接合する方法である。また、プラグ40は、セラミックス性接着剤でセラミックプレート20に接着(セラミック接合)されていてもよい。また、例えば、プラグ40は、セラミックプレート20に螺合されていてもよい。具体的には、プラグ挿入穴30の側面32及び/又は傾斜面33に雌ねじを切り、プラグ40の側面43及び/又は第2テーパ部42に雄ねじを切り、プラグ挿入穴30とプラグ40とを螺合させてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、プラグ40に第2テーパ部42を設け、プラグ挿入穴30に傾斜面33を設けたが、
図7に示した半導体製造装置用部材110のように、第2テーパ部42や傾斜面33を設けなくてもよい。
図7では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。この場合、電極22の貫通穴22aとプラグ40とは所定の絶縁距離だけ離す必要があるため、電極22の貫通穴22aの直径D2は上述した実施形態の直径D1よりも大きくなる。
【0043】
上述した実施形態では、プラグ40の側面43に段差44を設けたが、
図8に示した半導体製造装置用部材210のように、プラグ40の側面43に段差44を設ける代わりに、プラグ挿入穴30の側面32に上側(底側)の径が狭まる段差34を設けてもよい。
図8では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。半導体製造装置用部材210では、プラグ挿入穴30のうち段差34よりも深くガス放出孔28に至る手前までの領域でプラグ挿入穴30とプラグ40とは当接している。また、プラグ挿入穴30のうち段差34よりも浅い領域では、プラグ挿入穴30とプラグ40との間に隙間Gが形成され、その隙間Gにはプラグ支持部材50が形成されている。この半導体製造装置用部材210を製造する際に、プラグ挿入穴30とプラグ40との隙間Gに接着剤を注入したとしても、接着剤は段差34よりも奥に流れ込むことが抑制され、ひいては接着剤がガス放出孔28に入り込むことが抑制される。したがって、プラグ40を支持する接着材料すなわちプラグ支持部材50によってガス放出孔28が塞がれることがない。
【0044】
上述した実施形態では、プラグ40の側面43に段差44を設けたが、プラグ40の側面43に段差44を設けず、プラグ挿入穴30の側面32にも段差34を設けなくてもよい。その場合、プラグ挿入穴30の底面31以外の領域において、プラグ挿入穴30とプラグ40との間に隙間Gが形成され、その隙間Gにプラグ支持部材50が形成されていてもよい。こうした半導体製造装置用部材を製造する際には、プラグ挿入穴30とプラグ40との隙間Gに接着剤を注入すると、接着剤がガス放出孔28に入り込んでガス放出孔28を塞ぐことがある。したがって、この半導体製造装置用部材では、プラグ40を支持する接着材料すなわちプラグ支持部材50によってガス放出孔28が塞がれることがある。これに対して、実施形態の半導体製造装置用部材10では、プラグ挿入穴30のうちプラグ40の段差44が設けられている位置よりも深くガス放出孔28に至る手前までの領域で、プラグ挿入穴30とプラグ40とは当接している。したがって、実施形態の半導体製造装置用部材10を製造する際に、プラグ挿入穴30とプラグ40との隙間Gに接着剤を注入したとしても、接着剤が段差44よりも奥に流れ込むことがない。そのため、実施形態の半導体製造装置用部材10では、接着剤がガス放出孔28に入り込むことがなく、プラグ支持部材50によってガス放出孔28が塞がれることがない。
【0045】
上述した実施形態では、プラグ40に第1テーパ部41を設けたが、第1テーパ部41を設けなくてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、プラグ40は、セラミックプレート20の下面20bに設けられたプラグ挿入穴30に挿入されているものとしたが、こうしたものに限定されない。例えば、
図9の半導体製造装置用部材310のように、冷却プレート60は上面60aに開口した筒状のプラグ挿入穴65が設けられたものとし、プラグ40の一部はこのプラグ挿入穴65にも挿入されていてもよい。あるいは、
図10の半導体製造装置用部材410のように、セラミックプレート20はプラグ挿入穴30が設けられていないものとし、冷却プレート60は上面60aに開口した筒状のプラグ挿入穴65が設けられたものとし、プラグ40の一部又は全部はこのプラグ挿入穴65に挿入されていてもよい。これらの構造では、ガス放出孔28の長さも長くなり、絶縁破壊の防止に寄与する。
図9及び
図10では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。なお、
図10では、プラグ挿入穴30とプラグ40との間のリング状の隙間Gにプラグ支持部材50を形成してプラグ40をセラミックプレート20に接着する代わりに、セラミックプレート20の下面20bとプラグ40の上面40aとの間に、プラグ40の上面40aと略同形状のリング状のプラグ支持部材50を形成して、プラグ40をセラミックプレート20に接着した。この場合も、プラグ40とセラミックプレート20との間に隙間があったとしてもその隙間が冷却プレート60に至る手前でプラグ支持部材50によって分断されるため、ウエハWと冷却プレート60との間でプラグ40とセラミックプレート20との間の隙間を介した放電が生じにくい。プラグ挿入穴65は、貫通穴でもよいし、有底穴でもよい。プラグ挿入穴65が貫通穴の場合には、プラグ挿入穴65のうちのプラグ40よりも下の部分が、ガス流路部46の下方からバックサイドガスをプラグ40へ供給する役割を果たす。プラグ挿入穴65が有底穴の場合には、冷却プレート60の上面60aではなくプラグ挿入穴65の底面にガス分配部64cが配置されるようにする以外は、実施形態の半導体製造装置用部材10のガス供給通路64と同様のガス供給通路を形成すればよい。
【0047】
上述した実施形態では、ガス放出孔28は、一つのプラグ40に対して複数設けられているものとしたが、一つのプラグ40に対して一つ設けられているものとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10,110,210,310,410 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、20a ウエハ載置面、20b 下面、21a シールバンド、21b 円形突起、22 電極、22a 貫通穴、28 ガス放出孔、30 プラグ挿入穴、30a 開口部、31 底面、32 側面、33 傾斜面、34 段差、40 プラグ、40a 上面、40b 下面、41 第1テーパ部、42 第2テーパ部、43 側面、44 段差、45 本体部、46 ガス流路部、46a 上端部、46b 下端部、47 多孔質、48 円形凹部、50 プラグ支持部材、60 冷却プレート、60a 上面、60b 下面、62 冷媒流路、64 ガス供給通路、64a ガス集合部、64b ガス導入部、64c ガス分配部、65 プラグ挿入穴、70 ボンディングシート、72 穴、G 隙間、W ウエハ。