(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】管理装置及び荷役車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20231110BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F9/06
(21)【出願番号】P 2021042249
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 達矢
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 夏美
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-33701(JP,A)
【文献】特開2018-167990(JP,A)
【文献】特開2017-137173(JP,A)
【文献】特開2015-9928(JP,A)
【文献】特開2012-153466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/39353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内を稼働する荷役車両を管理する管理装置であって、
前記管理装置は、
前記エリアに設置される設備の状態を監視する設備状態監視部から前記設備の状態の情報を含む設備状態信号を受信する設備状態信号受信部と、
前記設備状態信号から取り出した前記設備の状態の情報を解釈して、前記設備状態信号を設備状態安全信号に変換する安全信号変換部と、
前記エリアの状態を監視するエリア状態監視部から取得した前記エリアの状態の情報を含むエリア状態安全信号、及び前記設備状態安全信号のうち少なくとも一つと、前記荷役車両の位置情報とに基づいて、前記荷役車両が稼働する前記エリアの安全状態を判定するエリア安全状態判定部と、
前記エリアの安全状態の情報を含むエリア安全信号を、前記荷役車両に送信するエリア安全信号送信部と、を備える
管理装置。
【請求項2】
前記エリア安全信号には、前記エリアの安全状態の情報として、前記エリアの範囲、前記エリアの状態が含まれる
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記管理装置は、
前記エリアに設定されるモードに応じて適用可能な安全ポリシーと、前記エリアの安全状態とに対して、前記荷役車両の周辺の安全状態が定義される安全ポリシー定義を反映して、前記エリア安全状態判定部が判定した前記エリアの安全状態から出力値を求め、前記出力値を含む前記エリア安全信号を前記エリア安全信号送信部に出力する安全ポリシー反映部と、を備える
請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記設備状態監視部及び前記エリア状態監視部ごとに、監視レベルが規定され、
前記エリア安全状態判定部は、前記監視レベルが高い順に前記設備状態監視部又は前記エリア状態監視部から取得された前記安全信号により前記エリアの安全状態が安全以外であると判定した場合に、安全状態が安全以外である前記エリアの安全状態の情報を含む前記エリア安全信号を前記エリア安全信号送信部に出力する
請求項2に記載の管理装置。
【請求項5】
前記エリア安全状態判定部は、前記荷役車両の位置情報から求めた前記荷役車両の位置からの距離に応じて選択する、前記設備状態監視部が出力する前記設備の状態の情報、及び前記エリア状態監視部が出力する前記エリアの状態の情報の少なくとも一つにより、前記エリアの安全状態を判定する
請求項2に記載の管理装置。
【請求項6】
荷役車両の自己位置を管理する自己位置管理部と、
エリア内を稼働する前記荷役車両を管理する管理装置から前記エリアの安全状態の情報を含むエリア安全信号を受信するエリア安全信号受信部と、
前記エリア安全信号及び前記自己位置に基づいて、前記自己位置が存在する前記エリアにおける自己位置周辺の安全状態を判定し、前記自己位置周辺の安全状態に応じて、自己の動作を制御する周辺安全判定部と、を備える
荷役車両。
【請求項7】
前記周辺安全判定部は、前記自己位置周辺の安全状態が安全以外である場合に、自己の動作を安全側に移行させる
請求項6に記載の荷役車両。
【請求項8】
前記周辺安全判定部は、前記自己位置からの距離に応じて選択された、設備状態監視部が出力する、前記エリアに設置される設備の状態の情報、及びエリア状態監視部が出力する前記エリアの状態の情報の少なくとも一つにより前記管理装置が出力する前記エリアの安全状態の情報と、前記自己位置とに基づいて、前記自己位置周辺の安全状態を判定する
請求項7に記載の荷役車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置及び荷役車両に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫内では、荷役車両として、フォークリフト(以下、FL(Fork Lift)と略記)が用いられることが多い。近年では、人が乗車する有人FLの他、無人で稼働する無人FLが用いられるようになった。無人FLの走行時における安全性の確保は、FLに車載される安全センサから得られる安全信号を用いることが一般的である。以下の説明で、FLとは、無人FLとする。
【0003】
倉庫は、大量の荷物を収納できるようにするために、FL又は作業員が通行する通路の端近くまで棚(以下、「ラック」と呼ぶ)が設けられることがある。FLが移動可能な通路として隣接するラックの間が用いられると、ラックの切れ目が、複数の通路が交差する交差点となる。なお、通路の幅は狭いので、FLの専用車線を倉庫内に設置することは難しい。このため、交差点などの見通しの悪い場所では、死角から飛び出した作業員や他のFLと接触するおそれがある。
【0004】
人とFLの接触リスクの軽減策として、通路全体、又は危険性の高い通路(交差点等)を走行するFLを低速で運用することが提案されていた。しかし、FLを低速走行させると、生産性が大きく低下してしまい、現実的な運用方法ではない。ここで、生産性とは、例えば、FLを使用して荷物を搬送する業務の処理能力として表される指標である。この指標により、例えば1時間あたりにいくつの商品を搬送し、又はラックへの荷物格納が行えるかが示される。
【0005】
特許文献1には、FLを安全に運用するための技術が開示されている。この特許文献1には、「カラー判別センサから入力される色信号の配列に基づいて荷役装置の少なくとも進入エリア種別をルールテーブルを参照して識別し、進入エリア種別の走行ルールをルールテーブルから読み出して荷役装置の操作者に報知する荷役装置の走行エリア識別システム」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された走行エリア識別システムでは、走行ルールが異なる隣接エリアの境界の床面に異なる色の着色域を設けておく必要がある。このため、一旦、定められた走行ルールを変更することが困難であった。
【0008】
また、倉庫内の死角がなくなるように、倉庫等のインフラストラクチャー(以下、「インフラ」と略記)にインフラ安全センサを設けて大規模なセンサネットワークを構築する方法があった。しかし、この方法では、倉庫内に多数のインフラ安全センサを設置する必要があるため、インフラ安全センサの導入コストが増加してしまう。また、倉庫内を走行する無人のFLは、有人で操作されるFLに比べて、高速走行させる要望があるが、速度を上げるとFL同士の接触が発生しかねない。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、荷役車両の安全性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る管理装置は、エリア内を稼働する荷役車両を管理する。
管理装置は、エリアに設置される設備の状態を監視する設備状態監視部から設備の状態の情報を含む設備状態信号を受信する設備状態信号受信部と、設備状態信号から取り出した設備の状態の情報を解釈して、設備状態信号を設備状態安全信号に変換する安全信号変換部と、エリアの状態を監視するエリア状態監視部から取得したエリアの状態の情報を含むエリア状態安全信号、及び設備状態安全信号のうち少なくとも一つと、荷役車両の位置情報とに基づいて、荷役車両が稼働するエリアの安全状態を判定するエリア安全状態判定部と、エリアの安全状態の情報を含むエリア安全信号を、荷役車両に送信するエリア安全信号送信部と、を備える。
【0011】
また、本発明に係る荷役車両は、荷役車両の自己位置を管理する自己位置管理部と、エリアを稼働する荷役車両を管理する管理装置からエリアの安全状態の情報を含むエリア安全信号を受信するエリア安全信号受信部と、エリア安全信号及び自己位置に基づいて、自己位置が存在するエリアにおける自己位置周辺の安全状態を判定し、自己位置周辺の安全状態に応じて、自己の動作を制御する周辺安全判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、荷役車両の安全性を確保することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る荷役車両管理システムの全体構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る倉庫内を上面視した図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る計算機のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係るセンサ基本情報及びエリア基本情報の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係るエリア安全信号のフレーム構成例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係るFL走行状態通知データのフレーム構成例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係るエリア安全状態判定部がエリア安全状態を判定する処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係るFL周辺安全判定部がFL周辺安全の判定処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係るFL周辺安全の決定表と、FL最終動作の決定表である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係る荷役車両管理システムの全体構成例を示すブロック図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に係るエリア運用ルール及び安全ポリシーの定義表と、FL周辺安全の決定表である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態に係るISO規格に対応して設定されるエリア運用ルール及び安全ポリシーの定義表である。
【
図13】本発明の第3の実施の形態に係るインフラ安全センサの基本情報と、安全判定出力の決定表である。
【
図14】本発明の第3の実施の形態に係るエリア安全状態判定部がエリア安全状態を判定する処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る荷役車両管理システム1の全体構成例を示すブロック図である。
荷役車両管理システム1は、インフラセンサ統合管理装置2、FL3、移動ラック11及びインフラ安全センサ12を備える。
【0016】
FL3は、荷役車両の一例として用いられる。FL3として、リーチ型のフォークリフト、カウンター型のフォークリフトがある。リーチ型のフォークリフトは、小回りが利くので、狭い場所を移動しやすい。また、カウンター型のフォークリフトは、重量物を運搬可能である。いずれのフォークリフトも高所に荷物を上げることが可能である。
【0017】
FL3が走行するエリア内には、移動ラック11及びインフラ安全センサ12が設けられる。エリアは、FL3が走行したり、FL3が荷役を行ったりする区域である。エリアは、移動ラック11の位置に応じて可変である。例えば、隣接する2つの移動ラック11の間隔が広がってFL3が走行可能な通路ができると、この通路がエリアとなる。また、複数の通路が交差する交差点もエリアである。さらに、倉庫外に設けられ、FL3が走行可能な屋外の通路についてもエリアとしてよい。
【0018】
移動ラック11は、倉庫内(例えば、エリア)に設置される設備の一例として用いられる。なお、倉庫内であれば、エリア外に設置される移動ラック11であっても、本実施の形態に係る設備として用いられる。移動ラック11には多くの荷物が格納されており、不図示のレール上を列ごとに移動することが可能である。例えば、FL3が荷物を移動ラック11に格納する際には、FL3が通れるように移動ラック11が移動し、FL3が荷物を移動ラック11に格納した後は、移動ラック11が元の位置に戻るような動作が可能である。
【0019】
移動ラック11は、設備状態監視部11aを備える。設備状態監視部11aは、移動ラック11の設備の状態(「設備状態」と呼ぶ)を監視する。例えば、移動ラック11のラック位置を変化させる際、移動ラック11の移動先に人などの物体が存在する場合には危険なため、移動要求を受け付けない機能が備わっている。この機能を実現するための手段として、移動ラック11自体に障害物センサが備わっており、障害物センサから出力されるセンサ信号を基に、移動要求を受け付けない機能が動作する。このような障害物センサの状態を「設備状態」と呼ぶ。障害物センサとして、例えば、赤外線センサ、監視カメラ等が用いられる。
【0020】
設備状態監視部11aは、隣接する移動ラック11の間の通路にFL3を含む何らかの物体が存在していることを検知すると、物体の存在を示す情報(例えば、監視範囲毎に設けた物体存在フラグに「1」を立てる)を設備状態信号に含める。そして、設備状態監視部11aは、移動ラック11の設備状態を示す設備状態信号を、インフラセンサ統合管理装置2に送信する。なお、
図1では、倉庫内に設置された設備の例として移動ラック11を挙げたが、固定ラック等の他の設備が、本実施の形態に係る設備であってもよい。
【0021】
インフラ安全センサ12は、FL3が稼働するエリア内の安全性を監視するセンサであり、例えば、カメラが用いられる。本明細書では、倉庫をインフラとも呼ぶ。インフラ安全センサ12は、本実施の形態に係る荷役車両管理システム1の導入時に、人やFL3が接触しやすい交差点に設置されたり、FL3と人の共用通路に設置されたりする。インフラ安全センサ12が監視可能な範囲は、一つのエリアだけでなく、複数のエリアにまたがる場合がある。また、インフラ安全センサ12及び設備状態監視部11aが同じエリアを監視することもある。
【0022】
インフラ安全センサ12は、インフラ(エリア)を監視するインフラ安全監視部12aを備える。インフラ安全監視部12aは、エリアを監視するエリア状態監視部の一例として用いられ、インフラ安全センサ12が監視するエリアの安全性を判定する。例えば、インフラ安全監視部12aは、監視範囲のエリア内にFL3を含む何らかの物体が存在していることを検知すると、物体の存在を示す情報(例えば、監視範囲毎に設けた物体存在フラグに「1」を立てる)をインフラ安全信号に含める。そして、インフラ安全監視部12aは、エリアの安全性を示すインフラ安全信号をインフラセンサ統合管理装置2に送信する。
【0023】
<インフラセンサ統合管理装置の構成例>
インフラセンサ統合管理装置2は、エリア内を稼働するFL3、及びエリア内に設けられたセンサを管理する管理装置の一例として用いられる。このインフラセンサ統合管理装置2は、設備状態信号及びインフラ安全信号の少なくとも一つと、FL3の現在位置とに基づいて、エリア内を稼働するFL3の安全性を管理することができる。このインフラセンサ統合管理装置2は、設備状態信号受信部21、安全信号変換部22、インフラ安全信号受信部23、基本情報DB24、エリア安全状態判定部25、エリア安全信号送信部26、FL現在位置受信部27及びFL現在位置管理部28を備える。
【0024】
設備状態信号受信部21は、移動ラック11等の設備に設置された設備状態監視部11aから設備の状態の情報を含む設備状態信号を受信する。
【0025】
安全信号変換部22は、設備状態信号受信部21が受信した設備状態信号から取り出した設備の状態の情報を解釈して、設備状態信号を設備状態安全信号に変換する。このため、設備状態信号をエリア安全状態判定部25が取込可能となる。インフラセンサ統合管理装置2は、倉庫内をいくつかのエリアに分けて管理するものであり、エリア毎の安全状態を「エリア安全状態」と呼ぶ。
【0026】
安全信号変換部22が設備状態信号を設備状態安全信号に変換するのは、設備状態監視部11aが既存の装置であることが想定されるためである。既存の装置が出力する設備状態信号のフォーマットは、エリア安全状態判定部25がサポートしておらず、そのままではエリア安全状態判定部25が設備状態信号を取り込めない。そこで、安全信号変換部22は、エリア安全状態判定部25が設備状態信号を取り込めるフォーマットに変換する。この際、安全信号変換部22は、設備状態信号から取り出した設備の状態の情報を取り出し、設備状態監視部11aの監視範囲における安全状態をエリア安全状態判定部25が判定可能な情報を抽出した上で、設備状態信号を設備状態安全信号に変換する。そして、安全信号変換部22は、変換した設備状態安全信号をエリア安全状態判定部25に出力する。
【0027】
インフラ安全信号受信部23は、インフラ安全監視部12aから送信されるインフラ安全信号を受信する。インフラ安全監視部12aは、荷役車両管理システム1の導入にあたって、倉庫内に新たに設けられる装置である。インフラ安全監視部12aが出力するインフラ安全信号のフォーマットは、エリア安全状態判定部25がサポートしているので、エリア安全状態判定部25は、インフラ安全信号をそのまま取り込める。このため、インフラ安全信号受信部23は、受信したインフラ安全信号をエリア安全状態判定部25に出力する。以下の説明では、設備状態信号が変換された設備状態安全信号、インフラ安全信号を区別せずに「安全信号」と呼ぶことがある。
【0028】
基本情報DB24は、センサ基本情報24a及びエリア基本情報24bを格納する。センサ基本情報24a及びエリア基本情報24bは、共に荷役車両管理システム1で管理される地図上の座標を使用して、センサの監視範囲、及びエリアの範囲を定めている。センサ基本情報24a及びエリア基本情報24bは、エリア安全状態判定部25により適宜読み出される。
【0029】
FL現在位置受信部27は、一定周期でFL3の現在位置(「FL現在位置」と呼ぶ)をFL3から受信する。インフラセンサ統合管理装置2が管理する複数のFL3の現在位置を「FL現在位置」と呼ぶ。
【0030】
FL現在位置管理部28は、エリア内を稼働するFL3のFL現在位置を管理する。FL現在位置管理部28がFL現在位置を取得できないFL3は、エリア内に存在する人や有人FLと同等の障害物扱いとする。FL現在位置管理部28が管理するFL現在位置は、エリア安全状態判定部25に出力される。
【0031】
エリア安全状態判定部25は、インフラ安全監視部12aから取得したエリアの状態の情報を含むエリア状態安全信号、及び設備状態安全信号のうち少なくとも一つと、FL3の位置情報とに基づいて、FL3が稼働するエリアの安全状態を判定する。この際、エリア安全状態判定部25は、設備状態監視部11a及びインフラ安全監視部12aの監視範囲が定義されるセンサ基本情報24a(監視範囲情報の一例)と、エリアの範囲が定義されるエリア基本情報24b(エリア情報の一例)とを用いて、エリアの安全状態を判定する。このため、エリア安全状態判定部25は、安全信号、FL現在位置、センサ基本情報24a、及びエリア基本情報24bを用いて、エリアの安全状態を判定する。そして、エリア安全状態判定部25は、安全状態を判定する対象のエリア(「判定対象エリア」と呼ぶ)におけるFL現在位置をFL現在位置管理部28から取得する。
【0032】
なお、エリア安全状態判定部25は、エリアに侵入するFL3の侵入判定を行い、侵入判定の結果と、安全信号が示す安全状態との組合せに応じて、FL3が稼働するエリアのエリア安全状態を判定することが可能である。本明細書では、FL3がどのエリア内に存在するかを判定する処理を「侵入判定」と呼ぶ。そして、エリア安全状態判定部25は、判定したエリアの安全状態を含むエリア安全信号をエリア安全信号送信部26に出力する。
【0033】
エリア安全信号送信部26は、エリア安全状態判定部25から入力した、エリア安全状態の情報を含むエリア安全信号をFL3に送信する。
【0034】
<FLの構成例>
FL3には、移動ラック11に格納される荷物等が積載されている。FL3は、インフラセンサ統合管理装置2により指示された移動ラック11に荷物を搬送したり、移動ラック11から荷物を搬出入したりすることができる。このFL3は、エリア安全信号受信部31、FL周辺安全判定部32、走行指示部33、荷役指示部34、FL自己位置取得部35、自己位置管理部36及び自己位置配信部37を備える。なお、FL3が管理するFL3の現在位置を「FL自己位置」と呼ぶ。
【0035】
エリア安全信号受信部31は、エリアを稼働するFL3を管理するインフラセンサ統合管理装置2のエリア安全信号送信部26から送信された、エリアの安全状態の情報を含むエリア安全信号を受信する。そして、エリア安全信号受信部31は、受信したエリア安全信号を、FL周辺安全判定部32に出力する。
【0036】
FL周辺安全判定部32は、エリア安全信号受信部31から入力したエリア安全信号、及び自己位置管理部36から入力したFL3の自己位置(FL自己位置)に基づいて、自己位置が存在するエリアにおける自己位置周辺の安全状態を判定し、自己位置周辺の安全状態に応じて、自己の動作を制御する。自己位置周辺とは、自己位置を中心とした4~5mの範囲としてよいが、FL3の速度に応じて可変してもよい。例えば、FL3の速度が遅い時(時速3km)では、FL3が直ちに停止できるので自己位置を中心とした2~3mの範囲としてよいが、FL3の速度が速い時(時速10km)では、制動距離が長くなるので、自己位置を中心とした7~8mの範囲としてよい。
【0037】
そして、FL周辺安全判定部32は、自己位置管理部36から取得するFL3の位置情報から求めたFL自己位置と、エリア安全信号受信部31から取得するエリア安全信号から取り出したエリア安全状態と、を使用してFL3の周辺の安全性を判定する。そして、FL自己位置取得部35は、自己位置管理部36にFL自己位置を出力する。
【0038】
そして、FL周辺安全判定部32は、自己位置管理部36から取得したFL自己位置と、エリア安全信号受信部31から入力したエリア安全信号とに基づいて、FL3周辺の安全性を判定する。判定結果として、「安全」、「注意」、「危険」のいずれかがある。FL周辺安全判定部32は、判定結果として得た自己位置周辺の安全状態が安全以外である場合に、自己(FL3)の動作を安全側に移行させる。安全側に移行させるとは、例えば、FL3が高速走行していれば速度を落としたり、FL3を停止したりする制御である。このため、FL周辺安全判定部32は、走行指示部33及び荷役指示部34にFL3周辺の安全性の判定結果を出力する。
【0039】
走行指示部33には、FL周辺安全判定部32から判定結果が入力され、判定結果に応じた指示を、不図示の車輪制御部(モータコントローラ等)に出力する。判定結果が「安全」の場合、走行指示部33は、低速走行を解除して高速走行を許可することを指示する。判定結果が「注意」の場合、走行指示部33は、低速走行を維持することを指示する。判定結果が「危険」の場合、走行指示部33は、FL3の走行を中断することを指示する。このようにFL周辺安全判定部32は、インフラセンサ統合管理装置2により危険と判定されたエリアの安全状態の情報を含むエリア安全信号をエリア安全信号受信部31が受信した場合に、自FLの動作を停止させることができる。
【0040】
荷役指示部34にもFL周辺安全判定部32から判定結果が入力され、判定結果に応じた指示を不図示の昇降制御部(フォークコントローラ等)に出力し、荷役を指示する。例えば、判定結果が安全の場合、荷役を継続することが指示され、通常速度でフォークが昇降する。判定結果が注意の場合、荷役を継続することが指示され、通常速度より遅くしてフォークが昇降する。判定結果が危険の場合、荷役を中断することが指示され、フォークの昇降が停止する。
【0041】
なお、エリア安全状態判定部25が安全状態を判定する時点で、判定対象エリアにFL3が存在しない場合であっても、数秒後に、判定対象エリアに隣接するエリア内に存在するFL3が判定対象エリアに入る場合がある。この場合、エリア安全状態判定部25は、FL3が入ろうとする判定対象エリアにおけるFL周辺の安全状態を判定する必要がある。この際、エリア安全状態判定部25は、FL3の位置情報と走行ルートに基づき、現在、FL3が存在するエリアと、これからFL3が移動するエリアを把握する。そして、FL周辺安全判定部32は、エリア安全信号受信部31から入力したエリア安全信号に基づいて、FL3が存在するエリア、及びFL3が入ろうとする判定対象エリアの安全状態を判定してよい。
【0042】
FL自己位置取得部35は、FL3に設置された自己位置推定用のコントローラー(例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping))を用いてFL自己位置(FL3の現在位置)を取得する。
【0043】
自己位置管理部36は、FL自己位置(FL3の自己位置)を管理し、FL周辺安全判定部32にFL自己位置を出力する。自己位置管理部36が管理するFL自己位置は、FL3の現在位置が主であるが、FL3の走行ルートに応じたエリア内の位置が含まれてもよい。そして、自己位置管理部36は、FL自己位置を自己位置配信部37に出力する。
【0044】
自己位置配信部37は、FL現在位置受信部27からの取得要求に従って、FL自己位置を配信する。インフラセンサ統合管理装置2では、FL3から送信されるFL自己位置が、FL3ごとのFL現在位置として用いられる。
【0045】
図2は、倉庫内を上面視した図である。
倉庫内には、エリア15が設けられる。エリア15は、FL3が走行可能な通路に合わせて設定されてよい。また、2本以上の通路(細長いエリア15)が交差する箇所は交差点と呼ばれる。エリア15の延伸方向に合わせてノード16が設けられる。ノード16は、エリア15を走行するFL3の位置を特定するための情報である。ノード16、エリア15は、共に物理的に倉庫内に設置されるものでなく、システム上の論理的な情報である。
【0046】
インフラ安全センサ12は、例えば、交差点、移動ラック11の入口等に設けられる。インフラ安全センサ12は、荷役車両管理システム1の構築にあたり、倉庫内に新設されたセンサである。インフラ安全センサ12の監視範囲12bは、インフラ安全センサ12を基点とする扇形状に示される。インフラ安全センサ12は、監視範囲12b内にいる人、FL3の有無を検知できる。
【0047】
移動ラック11には、設備状態監視部11aが設けられる。設備状態監視部11aは、移動ラック11内のエリア15を検知可能な位置に設置された監視カメラ等である。設備状態監視部11aは、例えば、監視カメラが撮影した画像から輪郭を強調し、監視範囲におけるFL3の存在、隣接する移動ラック11の現在位置等を含む設備状態を検知する。また、移動ラック11には、移動ラック制御部11bが設けられる。移動ラック制御部11bは、移動ラック11の設置と合わせて、移動ラック11に設置される。移動ラック制御部11bは、移動ラック11を所定位置まで移動させる。
【0048】
そして、移動ラック制御部11bは、移動後の移動ラック11の位置と、設備状態監視部11aが検知した設備状態とを含む設備状態信号をインフラセンサ統合管理装置2に送信する。なお、本明細書では、設備状態監視部11a、インフラ安全センサ12を区別しない場合に、「センサ」と総称することがある。
【0049】
なお、
図2では倉庫内を想定した図としたが、倉庫外を想定してもよい。例えば、2つの倉庫を行き来する道路をエリア15として設定し、このエリア15にノード16を設定してもよい。
【0050】
<計算機のハードウェア構成例>
次に、荷役車両管理システム1の各装置を構成する計算機40のハードウェア構成例を説明する。
図3は、計算機40のハードウェア構成例を示すブロック図である。計算機40は、本実施の形態に係るインフラセンサ統合管理装置2として動作可能なコンピューターとして用いられるハードウェアの一例である。本実施の形態に係る荷役車両管理システム1は、計算機40(コンピューター)がプログラムを実行することにより、
図1に示した各機能ブロックが連携して行うエリア監視及びFL運用方法を実現する。
【0051】
計算機40は、バス44にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)41、ROM(Read Only Memory)42、及びRAM(Random Access Memory)43を備える。さらに、計算機40は、表示装置45、入力装置46、不揮発性ストレージ47及びネットワークインターフェイス48を備える。
【0052】
CPU41は、本実施の形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM42から読み出してRAM43にロードし、実行する。RAM43には、CPU41の演算処理の途中で発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメーター等がCPU41によって適宜読み出される。ただし、CPU41に代えてMPU(Micro Processing Unit)を用いてもよい。CPU41、ROM42、RAM43により、
図1に示したインフラセンサ統合管理装置2の安全信号変換部22、エリア安全状態判定部25の機能が実現される。
【0053】
表示装置45は、例えば、液晶ディスプレイモニターであり、計算機40で行われる処理の結果等を、倉庫内でFL3の挙動を監視する作業員に表示する。入力装置46には、例えば、キーボード、マウス等が用いられ、作業員が所定の操作入力、指示を行うことが可能である。
【0054】
不揮発性ストレージ47としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ又は不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージ47には、OS(Operating System)、各種のパラメーターの他に、計算機40を機能させるためのプログラムが記録されている。ROM42及び不揮発性ストレージ47は、CPU41が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録しており、計算機40によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記憶媒体の一例として用いられる。不揮発性ストレージ47には、基本情報DB24、FL現在位置管理部28の機能が実現される。
【0055】
ネットワークインターフェイス48には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、NICの端子に接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを装置間で送受信することが可能である。ネットワークインターフェイス48により、設備状態信号受信部21、インフラ安全信号受信部23、エリア安全信号送信部26、FL現在位置受信部27の機能が実現される。
【0056】
なお、計算機40は、FL3の動作を制御する制御装置として構成してもよい。この場合、表示装置45、入力装置46は、FL3に取り付けられなくてもよい。FL3のエリア安全信号受信部31、自己位置配信部37の機能は、ネットワークインターフェイス48により実現される。また、FL3のFL周辺安全判定部32、走行指示部33、荷役指示部34、FL自己位置取得部35、自己位置管理部36の機能は、CPU41、ROM42、RAM43及び不揮発性ストレージ47により実現される。
【0057】
図4は、センサ基本情報24a及びエリア基本情報24bの構成例を示す図である。
図4の表(1)には、センサ基本情報24aの構成例が示される。
【0058】
センサ基本情報24aは、センサ、監視範囲の項目で構成される。管理対象であるエリアには、一又は複数のセンサが設けられる。センサは、設備状態監視部11a又はインフラ安全センサ12(インフラ安全監視部12a)であり、例えば、センサA,Bとして識別可能である。センサAの監視範囲は、(x1,y1,w1,h1)であり、センサBの監視範囲は、(x2,y2,w2,h2)である。表(1)の右側に示すように、例えば、左上の頂点を(x1,y1)とした時に、水平方向にw1の距離、垂直方向にh1の距離で囲われた矩形枠が監視範囲として規定される。センサA,Bの監視範囲は、それぞれ異なるが、一部が重なっていてもよい。また、監視範囲は矩形枠に限る必要がなく、例えば、
図2に示した扇形、円形、壁に沿って変形した形をとってもよい。
【0059】
図4の表(2)には、エリア基本情報24bの構成例が示される。
エリア基本情報24bは、エリア、範囲の項目で構成される。エリアは、管理対象である倉庫内に設けられる所定範囲の箇所であるが、倉庫外に設けられてもよい。エリアは、例えば、エリアA,Bとして識別可能である。また、エリアAの範囲は、(x11,y11,w11,h11)であり、エリアBの監視範囲は、(x12,y12,w12,h12)である。エリアA,Bの監視範囲についても、表(1)の右側に示す矩形枠と同様に規定される。エリアA,Bの監視範囲は、それぞれ異なるが、一部が重なっていてもよい。
【0060】
次に、エリア安全信号とFL走行状態通知データのフレーム構成例について、
図5と
図6を参照して説明する。
【0061】
図5は、エリア安全信号のフレーム構成例を示す図である。
インフラセンサ統合管理装置2かFL3に送信されるエリア安全信号は、エリア安全信号フレーム100で構成される。エリア安全信号フレーム100は、プロトコルヘッダ101、エリア安全情報102、安全信号103のフィールドで構成される。
【0062】
プロトコルヘッダ101には、エリア安全信号の送受信に用いられる通信プロトコルを特定するための情報が格納される。
エリア安全情報102には、エリア安全状態判定部25により判定されたエリア毎の安全状態の情報が格納される。エリア毎の安全状態の情報には、例えば、エリアの範囲(座標情報)、エリアの状態(安全、無人搬送車あり、人侵入のため危険)といった情報が含まれる。エリア安全情報102は、エリアA安全状態111、エリアB安全状態112、エリアC安全状態113のフィールドで構成される。ここで、エリアA安全状態111は、エリア座標131、エリア状態132のフィールドで構成される。
【0063】
エリア座標131は、エリアを特定する座標を格納する。エリアA安全状態111に格納されるエリア座標131は、エリアAを特定する座標を格納する。
エリア状態132は、FL3が稼働するエリアの状態を格納する。エリアA安全状態111に格納されるエリア状態132は、エリアAの状態を格納する。
なお、エリアB安全状態112、エリアC安全状態113のフィールド構成は、エリアA安全状態111のフィールド構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0064】
安全信号103には、エリア安全状態判定部25により判定されたセンサごとの安全状態の情報が格納される。例えば、安全信号103は、センサA安全状態121、センサB安全状態122、センサC安全状態123のフィールドで構成される。ここで、センサA安全状態121は、センサ設置座標141、センサ監視範囲142、安全判定143のフィールドで構成される。
【0065】
センサ設置座標141は、センサが設置された座標を格納する。センサA安全状態121に格納されるセンサ設置座標141は、センサAの設置座標を格納する。
センサ監視範囲142は、センサの監視範囲を格納する。センサA安全状態121に格納されるセンサ監視範囲142は、センサAの監視範囲を格納する。
安全判定143は、センサの安全判定結果を格納する。センサA安全状態121に格納される安全判定143は、センサAの安全判定結果を格納する。
【0066】
図6は、FL走行状態通知データのフレーム構成例を示す図である。
FL走行状態通知データは、FL走行状態通知フレーム200で構成される。FL走行状態通知フレーム200は、プロトコルヘッダ201、FL現在位置202、走行予定ルート情報203のフィールドで構成される。
【0067】
プロトコルヘッダ201には、FL走行状態通知データの送受信に用いられる通信プロトコルを特定するための情報が格納される。
FL現在位置202には、FL走行状態通知データを送信するFL3の現在位置を示す情報が格納される。
走行予定ルート情報203には、FL走行状態通知データを送信するFL3が設定した走行予定ルートの情報が格納される。エリア安全状態判定部25は、走行予定ルートの情報を使用することで、FL3の将来的な衝突危険の予測を行い、エリアの安全状態に変換することができる。また、エリア安全状態判定部25は、走行予定ルートの情報を使用することで、エリアの安全状態を「危険」から「安全」に戻す際の参考情報とすることができる。ただし、FL走行状態通知フレーム200に走行予定ルート情報203が含まれていなくても、荷役車両管理システム1の処理に支障はない。
【0068】
走行予定ルート情報203は、ノードA情報211、ノードB情報212、ノードC情報213のフィールドで構成される。ここで、走行予定ルート上に存在するノードごとにノード情報を格納するフィールドが走行予定ルート情報203に設けられる。ここでは、例えば、走行予定ルートにノードA,B,Cが存在するとしている。ノードA,B,Cは、エリアと共に予め規定される情報である。
ノードA情報211には、ノードAの情報が格納される。ノードAの情報として、ノードAを識別するための識別子の情報がある。ただし、ノードAの情報として、ノードAの座標が用いられてもよい。
なお、ノードB情報212、ノードC情報213のフィールド構成は、ノードA情報211のフィールド構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0069】
図7は、エリア安全状態判定部25がエリア安全状態を判定する処理の例を示すフローチャートである。そして、1つのエリア内を監視対象とする複数のセンサが設置されていれば、本処理がセンサの数だけ実行される。
【0070】
始めに、エリア安全状態判定部25は、エリア安全状態を「安全」で初期化する(S1)。次に、エリア安全状態判定部25は、監視対象のエリア内にあるインフラ安全センサ12から受信した安全信号、及び設備状態監視部11aが監視した設備状態を安全信号変換部22が変換した安全信号を一つずつチェックする(S2)。
【0071】
次に、エリア安全状態判定部25は、チェック対象であるインフラ安全センサ12及び設備状態監視部11aから取得した安全信号が「安全」を示すか否かを判定する(S3)。以下の説明では、チェック対象であるインフラ安全センサ12及び設備状態監視部11aを「センサ」と総称する。安全信号が「安全」を示す場合(S3のYES)、エリア安全状態判定部25は、ステップS2に戻り、次のインフラ安全センサ12の状態チェックへ移る。
【0072】
一方、安全信号が「安全」を示さない場合(S3のNO)、エリア安全状態判定部25は、チェック対象であるセンサの監視範囲内に無人FL(FL3)が存在するか否かを判定する(S4)。監視範囲内に無人FLが存在しない場合(S4のNO)、エリア安全状態判定部25は、エリア安全状態として「危険」を出力し(S5)、本処理を終了する。
【0073】
ステップS5の処理について説明する。ステップS5でエリア安全状態として「危険」が出力された場合、例えば、荷役車両管理システム1で管理するFL3以外の物体がエリア内に存在している。このため、エリア内にいるFL3の走行が中断される。ここで、エリア内に存在するFL3以外の物体が何であるかは特定できないので、フェールセーフとして「危険」が出力される。また、エリア内に存在する人は、FL3以外の物体であるので、人が侵入した場合にも同様に、「危険」が出力される。その後、作業員等により、エリア内に何が存在していたかがチェックされる。
【0074】
ステップS4、監視範囲内に無人FLが存在する場合(S4のYES)、エリア安全状態判定部25は、エリア安全状態に「無人FL有り」を設定する(S6)。そして、エリア安全状態判定部25は、ステップS2に戻って再びエリア安全信号をチェックするループ処理を続ける。
【0075】
エリア安全状態判定部25は、全てのセンサのエリア安全信号のチェックが終了すると(S7)、ループ処理を抜ける。そして、エリア安全信号送信部26は、エリア安全状態に設定された値をエリア安全状態保存値として、FL3のエリア安全信号受信部31に出力し(S8)、本処理が終了する。
【0076】
図8は、FL周辺安全判定部32がFL周辺安全の判定処理の例を示すフローチャートである。
【0077】
始めに、FL周辺安全判定部32は、エリア安全信号受信部31がエリア安全信号送信部26からエリア安全信号を受信しているか否かを判定する(S11)。ここで、FL3は走行するので、FL3のエリア安全信号受信部31は、エリア安全信号送信部26から無線でエリア安全信号を受信する。このため、無線通信の状態や、何らかの理由によりインフラセンサ統合管理装置2が動作不全に陥った場合には、エリア安全信号を受信できない期間が発生することがある。
【0078】
そこで、エリア安全信号受信部31がエリア安全信号を受信していなければ(S11のNO)、エリア安全信号受信部31からFL周辺安全判定部32にエリア安全信号が出力されない。このため、FL周辺安全判定部32は、「危険」を出力する(S13)。この時、FL3は緊急停止される。その後、本処理を終了する。
【0079】
一方、エリア安全信号受信部31がエリア安全信号を受信していれば(S11のYES)、エリア安全信号受信部31からFL周辺安全判定部32にエリア安全信号が出力される。そこで、FL周辺安全判定部32は、自己位置管理部36から取得した自己位置情報を使用して、自FLが存在するエリアを特定する(S12)。ここで、
図8に示す本処理を行うFL3を「自FL」とも呼ぶ。
【0080】
次に、FL周辺安全判定部32は、自FLが存在するエリアのエリア安全情報を取得する(S14)。FL周辺安全判定部32は、エリア安全信号受信部31が受信したエリア安全信号に基づいて、エリア安全情報を取得可能である。
【0081】
次に、FL周辺安全判定部32は、FL周辺安全状態として自FLの周辺の安全情報を走行指示部33及び荷役指示部34に出力し(S15)、本処理を終了する。FL周辺安全判定部32は、エリア安全情報と、自FLの周辺に配置されたセンサから取得した危険情報とに基づいて、自FLの周辺の安全情報を得ることができる。FL周辺安全状態は、FL3の状態に応じて出力先が異なる。FL3が走行中であれば走行指示部33にFL周辺安全状態が伝達され、FL3が荷役中であれば荷役指示部34にFL周辺安全状態が伝達される。
【0082】
図9は、FL周辺安全の決定表と、FL最終動作の決定表である。
FL周辺安全判定部32は、
図9に示す決定表を持っており、エリア安全情報と、FL周辺センサから入力される自FLの周辺の安全情報とに基づいて、自FLの周辺の安全情報を得る。
【0083】
図9の決定表(1)は、FL周辺安全の決定表である。この決定表は、縦にエリア安全情報が配置され、横に自FLの周辺センサから入力された安全情報が配置されている。エリア安全情報と、自FLの周辺センサから入力された安全情報とが交差する位置にあるセルに格納された情報が、自FLの周辺の安全情報として得られる。
【0084】
例えば、エリア安全情報が「安全」であり、自FLの周辺センサから入力された安全情報が「安全」であれば、FL周辺安全判定部32は、自FLの周辺の安全情報を「安全」として得る。
また、エリア安全情報が「無人FL有り」であり、自FLの周辺センサから入力された安全情報が「安全」であれば、FL3が存在するエリア内に他のFL3が存在している。このため、FL周辺安全判定部32は、自FLの周辺の安全情報を「注意」として得る。
【0085】
なお、エリア安全情報が「無人FL有り」であり、自FLの周辺センサから入力された安全情報が「危険」である場合、自FLの周辺の安全情報を「危険」ではなく「注意」として得る。複数のFL3が近くに存在すると、両方のFL3が決定表(1)に従って自FLの周辺の安全を判定する。ここで、両方のFL3が危険を出力した場合、走行時であれば停止し、荷役時であれば荷役中断等の対応することになって、両方のFL3が止まってしまう。このような事態を避けるため、「注意」とし、各FL3は、FL3に搭載されたセンサ情報を基に、自律的に回避走行する動作を行う。
【0086】
また、エリア安全情報が「危険」であれば、自FLの周辺センサから入力された安全情報が「安全」であっても、FL3の走行には危険が伴う。このため、FL周辺安全判定部32は、自FLの周辺の安全情報を「注意」として得る。
【0087】
図9の決定表(2)は、FL最終動作の決定表である。この決定表は、
図9の決定表(1)で決定された自FLの周辺の安全情報が縦に配置され、FL動作情報が横に配置されている。FL動作情報は、FL3が走行時又は荷役時のいずれの動作状態であるかが示される。自FLの周辺の安全情報と、FL動作情報とが交差する位置にあるセルに格納された情報が、自FLの動作指示情報として得られる。
【0088】
自FLの周辺の安全情報が「安全」であれば、走行指示部33は、FL3の走行を「通常走行」とする動作指示情報をFL3の走行制御部に出力する。この場合、FL3は、規定された通常速度でエリア内を走行する。また、荷役指示部34は、FL3の荷役を「荷役継続」とする動作指示情報をFL3の荷役制御部に出力する。この場合、FL3は、フォーク部分を動かして荷役を継続する。
【0089】
自FLの周辺の安全情報が「注意」であれば、走行指示部33は、FL3の走行を「減速走行」とする動作指示情報をFL3の走行制御部に出力する。この場合、FL3は、規定された通常速度を減速した速度でエリア内を走行する。また、荷役指示部34は、FL3の荷役を「荷役待機」とする動作指示情報をFL3の荷役制御部に出力する。この場合、FL3は、フォーク部分の動作を停止して荷役を待機する。
【0090】
自FLの周辺の安全情報が「危険」であれば、走行指示部33は、FL3の走行を「停止」とする動作指示情報をFL3の走行制御部に出力する。この場合、FL3は、停止する。また、荷役指示部34は、FL3の荷役を「停止」とする動作指示情報をFL3の荷役制御部に出力する。この場合、FL3は、フォーク部分の動作を停止して荷役を停止する。
【0091】
以上説明した第1の実施の形態に係る荷役車両管理システム1では、最小限の数でインフラ安全センサ12を設置した上で、既存の設備(移動ラック11等)が備える設備状態の情報と、インフラ安全センサ12から得られる安全情報とに基づいて、FL3の安全性が判定される。そして、安全性の判定結果に応じて、FL3の走行が低速走行されたり、停止されたりする。このため、倉庫内を走行するFL3の安全性が確保される。
【0092】
また、インフラセンサ統合管理装置2によって、エリアの安全状態が判定されると共に、FL3によって、自FL周辺の安全状態も判定される。このため、エリア内に他のFL3が存在していれば、自FL及び他のFL3が共に低速走行するといった柔軟な運用が可能となる。また、自FL及び他のFL3の衝突危険性がなければ、自FL及び他のFL3が共に走行速度を上げてもよく、生産性を向上することができる。
【0093】
また、インフラセンサ統合管理装置2は、エリア内を稼働するFL3だけでなく、エリア内にいる作業員、想定外の物体等も検知してエリア内の安全状態を判断することができる。このため、FL3が安全にエリア内を走行し、荷役することができる。
【0094】
また、FL3を走行させるために設置するようなインフラ安全センサ12の導入コストが低減する。このため、倉庫内の荷役車両管理システム1を安価に構築することが可能である。
【0095】
また、無人FLが、作業員又は有人FLとの共用エリアを走行する際でも、無人FLの安全性を確保することができる。なお、FL3は、無人で走行する無人FLの一例として挙げたが、有人FLであってもよい。
【0096】
[第1の実施の形態の変形例]
なお、自FLが存在するエリア以外(走行経路上次に侵入するエリアなど)の情報を参照し、危険状態であればエリアに侵入しないように制御することも可能である。例えば、現在、FL3が走行中の走行経路が第1エリアであり、次に第2エリアに切り替わる場合、第1エリアが「安全」であっても、第2エリアが「危険」であれば、インフラセンサ統合管理装置2は、FL3が第1エリアに存在する時点で、第2エリアにFL3が侵入しないよう制御することもできる。このため、FL3が第1エリアで安全に待機することができる。
【0097】
また、1つのエリアには、複数のセンサが設けられることがある。この場合、あるエリアに存在するFL3は、複数のセンサに基づくエリア安全信号をインフラセンサ統合管理装置2から受信することが可能である。しかし、FL3が、一度に複数のエリア安全信号を受信すると、FL周辺安全の判定処理に際して、FL3の処理負荷が高まってしまう。そこで、インフラセンサ統合管理装置2は、FL3を中心とし、FL3から離れた距離に応じて、エリア安全信号の受信対象とするセンサを選択する。そして、エリア安全状態判定部25は、FL3の位置情報から求めたFL3の位置からの距離に応じて選択する、設備状態監視部11aが出力する設備の状態の情報、及びインフラ安全監視部12aが出力するエリアの状態の情報の少なくとも一つにより、エリアの安全状態を判定する。
【0098】
一方、FL周辺安全判定部32は、自己位置からの距離に応じて選択された、設備状態監視部11aが出力する設備の状態の情報、及びインフラ安全監視部12aが出力するエリアの状態の情報の少なくとも一つによりインフラセンサ統合管理装置2が出力するエリアの安全状態の情報と、自己位置とに基づいて、自己位置周辺の安全状態を判定する。このため、FL3は、FL3の周囲を監視範囲とするセンサに基づくエリア安全信号を受信するだけとする。この結果、FL3は、自FLから近い位置を監視範囲とするセンサに基づいて生成されたエリア安全信号と、FL周辺センサからの入力との組み合わせに応じて、FL周辺安全を判定することができる。また、FL3は、自FLから近い位置を監視範囲とするセンサに基づいて生成されたエリア安全信号だけをインフラセンサ統合管理装置2から受信できるので、FL3がFL周辺安全を判定するための処理負荷を下げることができる。
【0099】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る荷役車両管理システムの構成例及び動作例について説明する。第2の実施の形態に係る荷役車両管理システムでは、エリア毎の運用ルール及び安全ポリシーに基づいて、エリア安全信号を取得するものである。
図10は、第2の実施の形態に係る荷役車両管理システム1Aの全体構成例を示すブロック図である。
【0100】
荷役車両管理システム1Aは、
図1に示した荷役車両管理システム1Aの各機能部に加えて、ルールDB51、安全ポリシー設定部52、安全ポリシー記憶部53及び安全ポリシー反映部54を備える。
【0101】
ルールDB51は、エリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bを格納する。エリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bは、安全ポリシー設定部52により適宜読み出される。
【0102】
エリア運用ルール51aは、エリアごとの運用モードと安全ポリシーの対応を定義する。エリア毎の運用モードに応じて安全ポリシーが適用される。
安全ポリシー51bは、エリア運用ルール51aに基づいて適用される安全ポリシーと、エリアの安全状態とに対応する出力値を定義する。
【0103】
安全ポリシー設定部52は、運用モードに応じて安全ポリシーを安全ポリシー記憶部53に登録する。安全ポリシー設定部52は、例えば、夜の設定時刻になると、ルールDB51からエリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bを読み込み、安全ポリシー記憶部53に安全ポリシーを設定する。
【0104】
安全ポリシー記憶部53は、ルールDB51から読み込まれたエリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bを記憶する。安全ポリシー反映部54は、安全ポリシー記憶部53に記憶されたエリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bだけを参照して処理を行う。
【0105】
安全ポリシー反映部54は、エリア安全状態判定部25とエリア安全信号送信部26の間に設けられる。この安全ポリシー反映部54は、エリアに設定されるモードに応じて適用可能な安全ポリシーと、エリアの安全状態とに対して、FL3の周辺の安全状態が定義される安全ポリシー51bの定義表(安全ポリシー定義の一例)を反映して、エリア安全状態判定部25が判定したエリアの安全状態から出力値を求める。そして、安全ポリシー反映部54は、出力値を含むエリア安全信号をエリア安全信号送信部26に出力する。例えば、安全ポリシー反映部54は、安全ポリシー記憶部53を参照して得たエリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bに基づき、エリア安全状態判定部25から取得したエリア安全状態に安全ポリシー定義を反映した出力値を得て、この出力値に基づくエリア安全信号を生成する。そして、安全ポリシー反映部54は、生成したエリア安全信号をエリア安全信号送信部26に出力する。このエリア安全信号は、エリア安全信号送信部26によって、FL3に送信される。
【0106】
図11は、エリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bの定義表と、FL周辺安全の決定表である。エリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bの定義表は、ルールDB51が持っており、FL周辺安全の決定表は、FL周辺安全判定部32が持っている。
【0107】
図11の定義表(1)は、エリア運用ルール51aを表す。
この定義表は、横にエリア、運用モード、安全ポリシーの項目が配置されている。エリアAでは、運用モードとして、9時から17時まで適用されるモード1と、17時から翌9時まで適用されるモード2が設定される。そして、モード1では、安全ポリシーとして、人とFL3とがエリア1を共用することを示すポリシーA-1が適用され、モード2では、FL3だけがエリア1を使用することを示すポリシーA-2が適用される。
【0108】
図11の定義表(2)は、安全ポリシー51bを表す。
この定義表は、横に安全ポリシー、エリア安全状態に応じた出力値の項目が配置されている。また、エリア安全状態に応じた出力値の項目には、安全、無人FL有り、危険の項目が配置されている。安全ポリシーとして、ポリシーA-1が適用された場合に、エリア安全状態が「安全」、「無人FL有り」であれば、そのまま「安全」、「無人FL有り」の出力値が得られる。しかし、エリア安全状態が「危険」であれば、「注意」の出力値が得られる。
【0109】
図11の決定表(3)は、FL周辺安全を表す。
この決定表は、縦にエリア安全情報が配置され、横にFL周辺センサから入力された自FLの周辺の安全情報が配置される。エリア安全情報の項目には、「安全」、「無人FL有り」、「注意」、「危険」の項目が配置される。また、自FLの周辺の安全情報には、「安全」、「危険」の項目が配置される。
【0110】
図12は、ISO(International Organization for Standardization)規格に対応して設定されるエリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bの定義表である。ISO規格に則った安全設計の結果がエリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bに反映される。
【0111】
ISO規格に対応して設定されるエリア運用ルール51a及び安全ポリシー51bの定義表の各項目は、
図11に示した各定義表の項目と同様である。ただし、項目の内容は異なる。例えば、エリア運用ルール51aの定義表におけるエリアの項目には、1F移動ラックエリア、1F共用エリアのように具体的なエリア名が格納され、モードについても昼モード、夜モードのようなモード名が格納される。モードは、処理時のスループットを挙げるために用意される項目である。
【0112】
また、安全ポリシーの項目には、「Restricted zone(制限区域)」、「Operating hazard zone(操作上の危険区域)」のようにゾーン名が格納される。そして、安全ポリシー51bの定義表における安全ポリシーの項目に対して、それぞれエリア安全状態に応じた出力値が規定されている。各安全ポリシーに対して、エリア安全状態に応じた出力値に応じて、「安全」、「無人FL有り」、「危険」、「注意」のいずれかの値が得られる。
【0113】
以上説明した第2の実施の形態に係る荷役車両管理システム1Aでは、インフラセンサ統合管理装置2のエリア安全状態判定部25が判定したエリア安全状態に対して、安全ポリシーを反映した出力値を得る。安全ポリシーは、エリア毎に規定される運用モードに対応してエリア運用ルール51aに定義されており、安全ポリシーと、エリア安全状態とに応じて、安全ポリシー記憶部53に設定された安全ポリシー51bの定義表により出力値が定義される。このため、エリアで設定される運用モードに合わせて出力値を変え、この出力値を含むエリア安全信号がFL3に送信される。
【0114】
FL3が持つFL周辺安全の決定表には、出力値と、FL周辺センサからの入力とに対応してFL周辺安全が決定される。このため、FL3は、インフラセンサ統合管理装置2で設定される運用モード及び安全ポリシーに応じたFL周辺安全を判定し、走行指示部33又は荷役指示部34を通じてFL3を制御することができる。
【0115】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る荷役車両管理システムの動作例について説明する。第3の実施の形態に係る荷役車両管理システム1では、第1の実施の形態に係る荷役車両管理システム1で構成したエリア安全状態判定部25を高度化している。第3の実施の形態に係るエリア安全状態判定部25は、センサを階層的に管理しており、単独でセンサレベル(監視レベルの一例)の高低を判断した上で、高レベルセンサが危険を示す情報をFL3に伝達可能である。
【0116】
第3の実施の形態に係る荷役車両管理システム1では、倉庫内の各センサを同列に扱うのではなく、特定のセンサが反応した場合にはエリア内のFL3を強制停止するといった運用を実現するために、センサごとに設定されるセンサレベルを階層に分けている。そこで、設備状態監視部11a及びインフラ安全監視部12aごとに、センサレベルが規定される。例えば、センサレベル(1:高)では、エリアの出入りを制限する安全防護柵(安全扉)が設けられる場合に、誰かが扉を開けるとエリア内を走行しているFL3は強制停止するような運用が実現される。
【0117】
図13は、インフラ安全センサ12の基本情報と、安全判定出力の決定表である。
図13の表(1)には、インフラ安全センサ12の基本情報の構成例が示される。
インフラ安全センサ12の基本情報は、センサ、監視範囲、センサレベルの項目で構成される。センサは、例えば、センサA,B,Cとして識別可能である。このように設備状態監視部11a及びインフラ安全監視部12aの一例であるセンサごとに、センサレベルが規定される。センサAの監視範囲は、(x1,y1,w1,h1)であり、センサBの監視範囲は、(x2,y2,w2,h2)であり、センサCの監視範囲は、(x3,y3,w3,h3)である。また、センサレベルは、センサAが「1(高)」、センサBが「2(中)」、センサCが「3(低)」である。
【0118】
なお、運用モードに合わせて、センサレベルを書き換えてよい。例えば、センサA~Cのセンサレベルを全て「1(高)」又は「3(低)」のようにしてもよい。
【0119】
図13の表(2)には、センサレベルと、安全判定出力の決定表の構成例が示される。
この決定表は、センサレベルと、センサ安全信号のステータスの項目で構成される。また、センサ安全信号のステータスの項目は、安全、危険の項目で構成される。センサ安全信号のステータスの項目が安全であれば、センサレベルに関わらず、「安全」が得られる。一方、センサ安全信号のステータスの項目が危険であれば、センサレベルに応じて、「危険レベル1」~「危険レベル3」が得られる。
【0120】
そして、エリア安全状態判定部25は、監視レベルが高い順に設備状態監視部11a又はインフラ安全監視部12aから取得された安全信号によりエリアの安全状態が安全以外であると判定した場合に、安全状態が安全以外であるエリアの安全状態の情報を含むエリア安全信号をエリア安全信号送信部26に出力する。例えば、安全防護柵が危険を出力した場合には、以下のような対応が行われる。なお、安全防護柵からインフラセンサ統合管理装置2に出力される信号は、設備状態信号である。安全防護柵の開閉は電気信号として検知されると、安全信号への変換が行われる。
図13の表(2)に従って、安全判定は「危険レベル1」を出力する。エッジ側では、「危険レベル1」が含まれるエリア安全信号を受信した場合には、FL3が緊急停止される。その後、倉庫内を人が点検した後、手動で再開される。
【0121】
図14は、第3の実施の形態に係るエリア安全状態判定部25がエリア安全状態を判定する処理の例を示すフローチャートである。
【0122】
始めに、エリア安全状態判定部25は、チェック対象のセンサレベルに「1」を設定し、エリア安全状態に「安全」を設定する初期化処理を行う(S21)。
【0123】
次に、エリア安全状態判定部25は、監視対象のエリア内にある全てのセンサの状態をチェックしたか否かを判定する(S22)。全てのセンサの状態をチェックした場合(S22のYES)、エリア安全状態判定部25は、保存されている「エリア安全状態」を出力し(S23)、本処理を終了する。ステップS23で出力される「エリア安全状態」として、「安全」又は「無人FL有り」がある。
【0124】
一方、全てのセンサの状態をチェックしていない場合(S22のNO)、エリア安全状態判定部25は、監視対象のエリア内にあり、かつ「チェック対象のセンサレベル」を持つセンサの状態を一つずつチェックする(S24)。エリア安全状態判定部25は、例えば、「チェック対象のセンサレベル」が「1(高)」であるセンサについて、ループ処理を行う。
【0125】
次に、エリア安全状態判定部25は、チェック対象として選択したセンサの安全信号が「安全」を示すか否かを判定する(S25)。安全信号が「安全」を示す場合(S25のYES)、エリア安全状態判定部25は、次のセンサの状態チェックを行う。つまり、エリア安全状態判定部25は、次のセンサを選択し(S24)、センサの状態チェックを行って、ステップS25の処理を行う。
【0126】
安全信号が「安全」を示さない場合(S25のNO)、エリア安全状態判定部25は、チェック対象として選択したセンサの監視範囲内にFL3(無人FL)が存在するか否かを判定する(S26)。センサの監視範囲内にFL3が存在する場合(S26のYES)、エリア安全状態判定部25は、監視対象のエリアのエリア安全状態に「無人FL有り」を設定し(S27)、次のセンサの状態チェックを行う。この場合も、エリア安全状態判定部25は、次のセンサを選択し(S24)、センサの状態チェックを行って、ステップS25の処理を行う。
【0127】
一方、センサの監視範囲内にFL3が存在しない場合(S26のNO)、エリア安全状態判定部25は、監視対象のセンサのセンサレベルと、センサから受信するセンサ安全信号のステータス情報とに基づいて、安全判定出力値を決定する(S28)。ステップS28では、上述した
図13のインフラセンサ基本情報及び決定表に基づいて、安全判定値が決定される。
【0128】
次に、エリア安全状態判定部25は、ステップS28で決定した安全判定出力値が「安全」であるか否かを判定する(S29)。安全判定出力値が「安全」でなければ(S29のNO)、エリア安全状態判定部25は、安全判定出力値を出力し(S30)、本処理を終了する。一方、安全判定出力値が「安全」であれば(S29のYES)、エリア安全状態判定部25は、次のセンサを選択して(S24)、ステップS25以降の処理を続ける。
【0129】
エリア安全状態判定部25は、全てのセンサについてチェックし、ステップS24~S31のループ処理を終えると(S31)、「チェック対象のセンサレベル」を上げる(S32)。例えば、「チェック対象のセンサレベル」を「1(高)」から「2(中)」に上げる。その後、エリア安全状態判定部25は、ステップS22に戻って、以降の処理を続ける。この処理は、「チェック対象のセンサレベル」が「3(低)」になるまで続けられる。
【0130】
なお、
図14に示すフローチャートでは、センサレベル(高)のセンサAが「安全でない」と判断した場合(危険レベル1)には、安全判定出力値を出力して処理を抜けることが示される。このため、センサAより低いセンサレベル(危険レベル2,3)のセンサについてループ処理は行われない。高レベルの「安全でない」と判定した安全判定出力値の信号を優先して伝達することになる。
【0131】
以上説明した第3の実施の形態に係る荷役車両管理システム1では、エリア安全状態判定部25によりセンサレベルが高い順にエリア内の安全判定が行われる。そして、インフラセンサ統合管理装置2は、高いセンサレベルのセンサからの安全信号から求めた安全判定出力値が「安全」でなければ、この安全判定出力値を含むエリア安全信号をFL3に送信する。FL3は、この安全判定出力値を含むエリア安全信号を受信してFL周辺安全の判定を行うことができる。このため、高いセンサレベルでエリア内が「安全でない」と判定されると、その安全判定出力値の信号が速やかにFL3に出力されて、FL3の動作が安全側に移行し、FL3の安全性を高めることができる。
【0132】
[変形例]
なお、FL3とは別に、小型の無人搬送装置(例えば、AGV(Automatic Guided Vehicle))をエリア内に走行させ、無人搬送装置がエリア内の安全性を判定した後に、FL3がエリア内を走行してもよい。FL3より先行して走行する無人搬送装置は、重量が少ないので、たとえ無人搬送装置がエリア内の荷物や他の無人搬送装置と衝突しても、損傷しにくい。このため、インフラセンサ統合管理装置2は、エリア内の安全性を正確に判定できるようになる。
【0133】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した各実施の形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1…荷役車両管理システム、2…インフラセンサ統合管理装置、11…移動ラック、11a…設備状態監視部、11b…移動ラック制御部、12…インフラ安全センサ、15…エリア、21…設備状態信号受信部、22…安全信号変換部、23…インフラ安全信号受信部、24…基本情報DB、24a…センサ基本情報、24b…エリア基本情報、25…エリア安全状態判定部、26…エリア安全信号送信部、27…FL現在位置受信部、32…FL周辺安全判定部、33…走行指示部、34…荷役指示部、35…FL自己位置取得部、36…自己位置管理部