(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】モジュール管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20231110BHJP
B25J 9/08 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G06Q50/04
B25J9/08
(21)【出願番号】P 2021501258
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2019006799
(87)【国際公開番号】W WO2020170426
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-06-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 明洋
(72)【発明者】
【氏名】天野 雅史
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】緑川 隆
【審判官】後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-256687(JP,A)
【文献】特開2006-034856(JP,A)
【文献】特開2018-043343(JP,A)
【文献】特開2014-210646(JP,A)
【文献】特開2002-259553(JP,A)
【文献】特開2011-060330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
B25J1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業システムを構成する複数種のモジュールを管理するモジュール管理システムであって、
情報を記憶する記憶部と、
前記モジュールの種類および型式に基づいて定められた固有情報を設定し、該固有情報を前記モジュールの仕様に対応付けて前記記憶部に記憶させる管理部と、
を備え、
少なくとも前記固有情報に対応付けられた識別体が、外部から認識装置により認識可能に前記モジュールに設けられており、
前記モジュールとして、前記識別体が設けられた第1モジュールと、
該第1モジュールに交換可能に取り付けられることで該第1モジュールとの組合せで用いられ前記識別体が設けられていない1以上の第2モジュールとを有し、
前記管理部は、前記第2モジュールに前記識別体が設けられるのに代えて、前記第2モジュールの前記固有情報を前記第1モジュールの前記固有情報に対応付けて前記記憶部に記憶させ、前記
第1モジュールに取り付けられている前記第2モジュール
が交換された場合、前記第1モジュールの前記固有情報に対応付けて前記記憶部に記憶されている前記第2モジュールの前記固有情報を、
交換後の前記第2モジュールの前記固有情報に更新する
モジュール管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のモジュール管理システムであって、
前記識別体は、前記固有情報の他に、前記モジュールの個々のシリアル番号に対応付けられている
モジュール管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、モジュール管理システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンドエフェクタなどのハンドを含む前腕部を脱着可能なロボットにおいて、前腕部がロボットに取り付けられると、前腕部内の制御部とロボットの制御装置とが前腕部の制御に必要な情報をやり取りするものが提案されている。例えば、特許文献1では、前腕部内の制御部は、前腕部の種類を特定するための識別情報などを記憶しており、前腕部がロボットに取り付けられるとその識別情報をロボットの制御装置に伝送する。また、ロボットの制御装置は、識別情報を受信すると、予め記憶している各種前腕部の情報の中から識別情報に対応する前腕部の情報を読み出して各種設定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した前腕部などのようにロボットに通信可能に取り付けられるモジュールについては、その識別情報をロボットの制御装置が取得することが可能である。しかしながら、ロボットを含むシステムでは、ロボットと通信できないモジュールも存在するため、ロボットの制御装置が全てのモジュールの識別情報を取得することができない場合がある。その場合、例えば、導入前にシミュレーションしたシステムのモジュール構成と、実際に導入されたシステムのモジュール構成が一致しているかなどの確認が困難となり、誤ったモジュール構成のまま運用されることがある。
【0005】
本開示は、簡易な構成でモジュールの管理をより適切に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のモジュール管理システムは、
作業システムを構成する複数種のモジュールを管理するモジュール管理システムであって、
情報を記憶する記憶部と、
前記モジュールの所定の分類毎の固有情報を設定し、該固有情報を前記モジュールの仕様に対応付けて前記記憶部に記憶させる管理部と、
を備え、
少なくとも前記固有情報に対応付けられた識別体が、外部から認識装置により認識可能に前記モジュールに設けられていることを要旨とする。
【0008】
本開示のモジュール管理システムでは、モジュールの所定の分類毎の固有情報を設定し、その固有情報をモジュールの仕様に対応付けて記憶部に記憶させる。また、少なくとも固有情報に対応付けられた識別体が、外部から認識装置により認識可能にモジュールに設けられている。これにより、モジュール間の通信によりモジュールの固有情報を取得できない場合でも、モジュールに設けられている識別体を認識することで、モジュールの固有情報や固有情報に対応付けられた仕様を取得することができる。このため、モジュールの分類や仕様の確認などを容易に行うことができるから、簡易な構成でモジュールの管理をより適切に行うことができる。なお、所定の分類は、モジュールの種類やベンダ、型式などにより分類されるものであればよい。また、識別体は、コード認識装置により認識可能な2Dコードなどの識別コードまたはタグ認識装置により認識可能なICタグなどの識別タグとして設けられるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】設備導入支援システム10の構成の概略を示す構成図。
【
図2】マーケットプレイスMPの概略を示す説明図。
【
図3】作業システム60の構成の概略を示す構成図。
【
図5】管理サーバ20とベンダ端末40とカスタマ端末50の処理の一例を示すシーケンス図。
【
図6】エンドエフェクタのモジュールデータ30Bの一例を示す説明図。
【
図7】2DコードCが設けられたエンドエフェクタ63の一例を示す説明図。
【
図10】モジュールの組合せを変更する様子の一例を示す説明図。
【
図11】モジュール組合せ情報36の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は本実施形態の設備導入支援システム10の構成の概略を示す構成図であり、
図2はマーケットプレイスMPの概略を示す説明図であり、
図3は作業システム60の構成の概略を示す構成図である。
図1,
図2に示すように、設備導入支援システム10は、ベンダにより提供される各種の設備や機器(以下、モジュール)をカスタマが購入するためのマーケットプレイスMPを管理する管理サーバ20を備える。この設備導入支援システム10では、管理サーバ20がネットワーク12を介してベンダ端末40やカスタマ端末50に接続されている。なお、
図1では、ベンダ端末40やカスタマ端末50をそれぞれ1つずつ示すが、実際には複数接続されている。
【0012】
管理サーバ20は、制御部21と、シミュレーション部22と、記憶部23と、通信部26とを備える。制御部21は、CPUやROM、RAMなどを有し、マーケットプレイスMPの管理などのサーバ全体の制御の他、カスタマに導入したモジュールの管理などを行う。シミュレーション部22は、マーケットプレイスMPで購入可能なモジュールを組み合わせた作業システム60(
図3参照)などのモデルMD(デジタルツイン,
図2参照)を仮想空間上に構築し、仮想空間上でモデルMDを用いたシミュレーションを実行する。記憶部23は、HDDなどで構成され、各種アプリケーションプログラムや各種データベース(DB)などを記憶する。通信部26は、ネットワーク12などに接続され、ベンダ端末40やカスタマ端末50などと通信を行う。管理サーバ20には、キーボードやマウスなどの入力部28から管理者による各種指示などが入力される。また、管理サーバ20は、ディスプレイなどの表示部29に各種情報を表示する。なお、管理サーバ20がシミュレーション部22や記憶部23(各種DB)を備えるものに限られず、シミュレーション部が管理サーバ20と通信可能な他の装置として構成されてもよいし、各種DBを記憶するデータサーバが管理サーバ20と通信可能な他の装置として構成されてもよい。
【0013】
ベンダ端末40は、CPUやROM、RAMなどを有する制御部41と、各種アプリケーションプログラムや各種データなどを記憶するHDDなどの記憶部43と、ネットワーク12などに接続され管理サーバ20などと通信を行う通信部46とを備える。ベンダ端末40は、キーボードやマウスなどの入力部47からベンダによる各種指示などが入力される。また、ベンダ端末40は、ディスプレイなどの表示部48に、提供対象のモジュールのモジュールデータをマーケットプレイスMPに登録するための登録用画面などの各種情報を表示する。また、ベンダ端末40は、例えばインクジェットプリンタなどのプリンタ49に接続されている。プリンタ49は、ベンダ端末40などから印刷指令を入力すると、印刷指令に基づいて用紙に文字や画像、2Dコードなどの印刷を行う。
【0014】
カスタマ端末50は、ベンダ端末40と同様に、制御部51と、記憶部53と、通信部56とを備える。通信部56は、ネットワーク12などを介して、後述する作業システム60の制御装置68と通信を行う。カスタマ端末50は、キーボードやマウスなどの入力部57からカスタマによる各種指示などが入力される。また、カスタマ端末50は、ディスプレイなどの表示部58に、マーケットプレイスMPのトップ画面(購入用画面)やシミュレーションのモデルMD、シミュレーションの実行結果などの各種情報を表示する。
【0015】
ここで、マーケットプレイスMPで購入可能なモジュールを組み合わせた作業システム60の一例について説明する。例えば、作業システム60は、ロボット61により所定作業を行うシステムとして構成することができ、
図3の例では、ロボット61以外に、基板搬送装置66と、フィーダ67とを備える。所定作業の一例としては、例えば機械部品や電子部品などのワークをロボット61がピックアップして基板Sに実装する実装作業などが挙げられる。ロボット61は、垂直多関節型のロボットアーム62と、ロボットアーム62の作動を含むシステム全体を制御する制御装置68とを備える。また、ロボットアーム62の先端リンクには、作業ツールとしてのエンドエフェクタ63が着脱可能に取り付けられる他、画像を撮像するカメラ64と、カメラ64と同軸に配置されたリングライトなどの照明65とが取り付けられている。なお、エンドエフェクタ63としては、電磁チャックやメカニカルチャック、吸着ノズルなどが挙げられる。基板搬送装置66は、一対のベルトコンベアにより基板Sを搬送する。フィーダ67は、複数のワークが所定間隔で収容されたテープを送り出すテープフィーダとして構成されている。なお、フィーダ67は、テープフィーダに限られず、複数のワークが配置されたトレイを供給するトレイフィーダなどであってもよい。制御装置68は、CPUやROM、HDD、RAMなどで構成されており、ロボット61の動作プログラム以外に、作業システム60の全体を管理するシステムプログラムなどを記憶している。また、図示は省略するが、基板搬送装置66の動作プログラムは基板搬送装置66のPLC(Programmable Logic Controller)が記憶しており、フィーダ67の動作プログラムは、フィーダ67のPLCが記憶している。このような作業システム60を構成するロボット61(ロボットアーム62)やエンドエフェクタ63、カメラ64、照明65、基板搬送装置66、フィーダ67を、それぞれモジュールという。
【0016】
管理サーバ20の記憶部23には、
図4に示すモジュールDB(データベース)30と、導入実績DB35と、ベンダDB37と、カスタマDB39とが記憶されている。ベンダDB37は、図示は省略するが、認証登録がなされたベンダの名称や各ベンダに固有のベンダID、メールアドレスや住所などの連絡先、ベンダが提供するモジュールの種類の情報などが登録されている。また、カスタマDB39は、図示は省略するが、認証登録がなされたカスタマの名称や各カスタマに固有のカスタマID、メールアドレスや住所などの連絡先、カスタマの購入履歴などが登録されている。導入実績DB35には、カスタマに導入される各モジュールの情報がカスタマIDに対応付けて登録されている。なお、マーケットプレイスMPで購入されるモジュールが作業システムを構成する場合、通常はそれらのモジュールで構築されたモデルMDを用いたシミュレーションが実行され、カスタマはそのシミュレーションの結果を確認してから各モジュールの購入を行う。
【0017】
モジュールDB30は、ベンダがベンダ端末40から登録用画面を介して登録したモジュールデータなどを登録するものであり、モジュールの種類別に複数のモジュールデータ31が登録されている。複数のモジュールデータ31は、例えば、
図4に示すようにロボットデータ30Aとエンドエフェクタデータ30Bとフィーダデータ30Cとコンベアデータ30Dとカメラデータ30Eと照明データ30Fとに区分けして登録されている。ロボットデータ30Aには、ロボットアーム62(ロボットA)のモジュールデータや他の各種ロボットB~Dなどのモジュールデータが登録されている。各種ロボットは、垂直多関節型以外の水平多関節型やパラレルリンク型などとしてもよい。これらのモジュールデータには、それぞれロボットA~Dの3次元CADデータなどの形状データや動作プログラム、モジュールID、仕様などが含まれている。同様に、エンドエフェクタデータ30Bには、ロボットAに着脱可能なエンドエフェクタ63(エンドエフェクタA)やロボットA~Dに着脱可能な他の種類のエンドエフェクタB~Dの形状データ、モジュールID、仕様などを含むモジュールデータが登録されている。また、フィーダデータ30Cには、フィーダ67(フィーダA)や他の種類のフィーダB~Dの形状データや動作プログラム、モジュールID、仕様などを含むモジュールデータが登録されている。コンベアデータ30Dには、基板搬送装置66としてのコンベアAや他の種類のコンベアの形状データや動作プログラム、モジュールID、仕様などを含むモジュールデータが登録されている。カメラデータ30Eには、カメラ64(カメラA)や他の種類のカメラB~Dの形状データやモジュールID、仕様などを含むモジュールデータが登録されている。照明データ30Fには、照明65(照明A)や他の種類の照明B~Dの形状データやモジュールID、仕様などを含むモジュールデータが登録されている。また、図示は省略するが、モジュールDB30には、作業対象の代表的なワークの形状データや物性データなどを含むモジュールデータなども登録されている。ワークのモジュールデータは、ベンダが登録してもよいし、カスタマから依頼を受けた管理者が登録してもよく、モデルMDを用いたシミュレーションで用いられる。
【0018】
カスタマ端末50などに表示されるマーケットプレイスMPのトップ画面では、これらのモジュールの購入要求や閲覧、各種ツールの購入要求や閲覧、カスタマのマイページへのログインなどが可能となっている。
図2に示すように、トップ画面では、例えばロボットやエンドエフェクタ、フィーダ、コンベア、カメラ(ここでは照明を含む)などのモジュールの種類別のアイコンやツールのアイコン、購入ボタン、マイページへのログインボタンなどが表示されている。カスタマが入力部57を用いた操作入力により購入ボタンを操作(クリック)してから所望のモジュールのアイコンを選択すると、該当する種類のモジュールデータを選択可能に一覧表示する図示しないモジュール選択画面が表示される。例えば、カスタマがロボットのアイコンを選択すると、ロボットA~Dの各モジュールデータ31が一覧表示され、カスタマはその中から必要なモジュールを選択して購入することができる。なお、一覧表示されるモジュールデータは、モジュールDB30に登録されているものである。また、カスタマが購入ボタンを操作してからツールのアイコンを選択すると、各種ツールを選択可能に一覧表示する図示しないツール選択画面が表示される。カスタマはその中から必要なツールを選択して購入することができる。なお、各種ツールとしては、各モジュールの作業状況や異常発生の頻度などの情報を収集して分析する分析ツール、分析結果からモジュールの変更などの改善案を提案する提案ツール、モジュールの効率的なレイアウトを行うレイアウトツールなどが挙げられる。なお、カスタマは購入ボタンをクリックすることなくモジュールのアイコンやツールのアイコンを選択して、一覧表示されたモジュールやツールの内容を閲覧することが可能である。また、カスタマがマイページにログインすると、モジュールの購入履歴や導入予定のモジュールの内容および変更履歴、管理サーバ20やベンダからの連絡事項などを確認することができる。
【0019】
次に、こうして構成された設備導入支援システム10の処理、特にマーケットプレイスMPにベンダがモジュールを登録する際の処理やベンダが製造したモジュールがカスタマに納入される際の処理を説明する。
図5は管理サーバ20とベンダ端末40とカスタマ端末50の処理の一例を示すシーケンス図である。まず、ベンダは、ベンダ端末40でモジュールの設計を行い(S100)、モジュールの種類や型式などの仕様、モジュールの画像などと共にモジュールの認証をベンダ端末40から管理サーバ20に依頼する(S110)。例えば、ベンダがモジュールとしてエンドエフェクタを設計した場合、モジュールの種類がエンドエフェクタである旨の情報、各ベンダで適宜定められた型番の情報を含む仕様などがベンダ端末40から管理サーバ20に伝えられる。
【0020】
管理サーバ20の制御部21は、ベンダから認証が依頼されると、モジュールの所定の分類毎の固有情報であるモジュールIDを設定してベンダ端末40に通知する(S200)。所定の分類は、モジュールの種類やベンダ、型式などに基づいて定められるものなどとすればよい。例えば、所定の分類は、モジュールの種類が、ロボットとエンドエフェクタとフィーダとコンベアとカメラと照明のいずれであるか、また、エンドエフェクタであれば電磁チャックとメカニカルチャックと吸着ノズルのいずれであるかに基づいて定められればよい。さらに、所定の分類は、どのベンダであるかや、ベンダのどの型式であるかに基づいて定められればよい。次に、制御部21は、設定したモジュールIDとそのモジュールの仕様とを対応付けてモジュールDB30のモジュールデータ31に登録する(S210)。ここでは、モジュールデータ31として、エンドエフェクタデータ30Bを用いて説明する。
図6はエンドエフェクタデータ30Bの一例を示す説明図である。図示するように、エンドエフェクタA,B,・・・の各エンドエフェクタデータ30Bには、それぞれモジュールIDがエンドエフェクタの仕様に対応付けて登録されている。仕様は、モジュールの型番の他、エンドエフェクタのサイズや重量、材質、チャック力(吸着力)、チャック可能な最大サイズ、動作部などの情報を含む。また、図示は省略するが、エンドエフェクタ以外のモジュールデータについても、同様に、モジュールIDとその仕様が対応付けて登録されている。こうして登録されたモジュールは、マーケットプレイスMPでカスタマによる選択や購入が可能となる。なお、カスタマがマーケットプレイスMPでモジュールを選択すると、シミュレーション部22はそれらのモジュールデータを用いてモデルMDを構築して(
図2参照)、シミュレーションを行う。
図2に示すように、モデルMDは各モジュールのモジュールIDを含む。シミュレーション部22は、シミュレーションを行うと、その結果と共に、モデルMDを構築する各モジュールのモジュールIDをカスタマIDに対応付けて導入実績DB35に記憶させる。
【0021】
一方、ベンダ端末40は、設計したモジュールの製造が開始されるのを待つ(S120)。なお、ベンダは、カスタマがマーケットプレイスMPのモジュール選択画面を介して購入要求を行った場合にモジュールの製造を開始してもよいし、購入要求の有無に拘わらず所定の生産計画に基づいてモジュールの製造を開始してもよい。ベンダ端末40は、モジュールの製造が開始されると、そのモジュールの製造番号情報などのシリアルNo.を設定して管理サーバ20に送信する(S130)。シリアルNo.は、製造開始前に予め製造順などに従って設定されればよい。また、ベンダ端末40は、モジュールの製造時の製造実績をシリアルNo.に対応付けて記憶部43に記憶する(S140)。なお、ベンダ端末40は、シリアルNo.と製造実績とを管理サーバ20に送信し、管理サーバ20がそれらを記憶部23に記憶させてもよい。ベンダ端末40は、モジュールの製造が完了すると、そのモジュールのモジュールIDとシリアルNo.を示すバーコードやQRコード(登録商標)などの2DコードCをプリンタ49に発行させる(S150)。プリンタ49は、2DコードCをシール用紙に印刷して発行し、ベンダは、そのシール用紙をモジュールの外面に貼り付ける。続いて、ベンダ端末40は、2DコードCが貼り付けられたモジュールをカスタマに出荷するように指示する(S160)。
図7は、2DコードCが設けられたエンドエフェクタ63の一例を示す説明図である。
図7のエンドエフェクタ63は、本体63aと、開閉可能な一対のチャック爪63bとを備え、本体63aの側面に2DコードCが貼り付けられている。このように、モジュールIDとシリアルNo.を示す2DコードCが外面に貼り付けられた状態で、モジュールがカスタマに出荷される。
【0022】
カスタマ端末50は、ベンダから出荷されたモジュールが到着すると、そのモジュールの2DコードCを撮像して(S300)、モジュールIDとシリアルNo.とを取得する(S310)。カスタマ端末50は、S300,S310では、例えば作業システム60のカメラ64により2DコードCを撮像させ、制御装置68により画像から読み取られたモジュールIDとシリアルNo.を通信により取得すればよい。あるいは、カスタマ端末50は、手持ち式などのコード読取器などを用いてカスタマに2DコードCを読み取らせて、モジュールIDとシリアルNo.を取得してもよい。次に、カスタマ端末50は、取得したモジュールIDとシリアルNo.を管理サーバ20に通知する(S320)。
【0023】
管理サーバ20の制御部21は、カスタマ端末50からモジュールIDとシリアルNo.の通知を受け取ると、シミュレーションを実行した際のモデルMDのモジュールと一致することを確認する(S230)。ここで、
図8は導入実績DB35の一例を示す説明図である。上述したように、モデルMDを構築する各モジュールの情報は、カスタマIDに対応付けて導入実績DB35に記憶される。例えば、カスタマがモデルMDを用いたシミュレーションの結果に問題ないことを確認したタイミングで、
図8に示すように、ロボットのIDやエンドエフェクタのID、フィーダのID、コンベアのIDなどの各モジュールIDがカスタマIDに対応付けて記憶される。なお、各モジュールIDを登録するタイミングでは、モジュールの納入前でありシリアルNo.は決まっていないため、シリアルNo.は空欄とされる。
図8の例では、カスタマIDが「CU**B」のエンドエフェクタのシリアルNo.が空欄とされているが。それ以外のシリアルNo.は次のS240で登録済みとなっている。
【0024】
S230では、制御部21は、導入実績DB35の各モジュールのモジュールIDを参照することにより、モジュールが一致することを確認することができる。制御部21は、モジュールが一致することを確認すると、導入実績DB35の各モジュールIDにシリアルNo.を対応付けて登録する(S240)。このため、例えば、カスタマIDが「CU**B」のカスタマにエンドエフェクタが納入された場合、制御部21はモジュールIDが一致することを確認すると、
図8中の空欄の箇所にエンドエフェクタのシリアルNo.を登録することになる。なお、制御部21は、S230で一致することを確認できない場合には、異なるモジュールがカスタマに納入された旨をカスタマ端末50に通知する。このように、制御部21は、シミュレーションが実行されたモデルMDと同じモジュールがカスタマに納入されたことを確認することができる。
【0025】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の作業システム60が作業システムに相当し、設備導入支援システム10がモジュール管理システムに相当し、管理サーバ20の記憶部23が記憶部に相当し、S200,S210を実行する管理サーバ20の制御部21が管理部に相当し、2DコードCが識別体に相当する。また、カメラ64と制御装置68との組合せや手持ち式のコード読取器が認識装置に相当する。
【0026】
以上説明した設備導入支援システム10は、モジュールの種類毎のモジュールID(固有情報)を設定し、そのモジュールIDをモジュールの仕様に対応付けて記憶部23のモジュールDB30に記憶させる。また、モジュールIDに対応付けられた2DコードC(識別体)が、外部から認識可能にモジュールに設けられている。これにより、モジュール間の通信によりモジュールIDを取得できない場合でも、モジュールIDやそれに対応付けられた仕様を取得することができる。このため、モジュールの種類や仕様の確認などを容易に行うことができる。さらに、シミュレーションを実行した際のモジュールとは異なるモジュールをカスタマが誤って導入するのを防止することができる。また、マーケットプレイスMPが、カスタマに導入されたモジュールの数や種類、使用時間などに応じてモジュールの使用料を課金する形態を採用している場合、カスタマからモジュールの申告を適切に行わせて適切に課金することができる。また、管理サーバ20は、カスタマのモジュール構成を適切に把握することができるから、モジュールの使用状況などのデータを収集したり収集したデータを分析したりすることが可能となる。
【0027】
また、2DコードCは、モジュールIDの他に、モジュールのシリアルNo.に対応付けられている。このため、2DコードCから、モジュールのシリアルNo.を取得してモジュールの製造実績の確認などを行うこともできる。即ち、ベンダ端末40がモジュールの製造実績をシリアルNo.に対応付けて記憶部43に記憶しているから、モジュールに何らかの異常などが生じた場合に、ベンダはモジュールIDとシリアルNo.から製造実績を確認して異常との関連を調査することができる。また、例えば分析ツールなどの各種ツールは、カスタマから通知されたシリアルNo.の登録を条件として分析可能となるものなどとしてもよい。こうすれば、カスタマによるシリアルNo.の読み取りや通知を促すことができる。
【0028】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
例えば、上述した実施形態では、2DコードCにモジュールIDとシリアルNo.とが対応付けられるものとしたが、これに限られず、少なくともモジュールIDが対応付けられていればよい。また、シリアルNo.以外に仕様の全部または一部が対応付けられていてもよい。また、モジュールの製造年月日や納入年月日、カスタマの使用開始の年月日、カスタマの使用期間などの月日に関する情報が対応付けられていてもよい。その他、モジュールに関する情報として、モジュールの動作プログラムや設定パラメータなどに関する情報、メンテナンスの方法や消耗部品、交換部品の情報などが2DコードCに対応付けられていてもよい。そして、カスタマは、タブレットやスマートフォンなどを用いて2DコードCを読み取って、これらの情報を認識してもよい。このようにすれば、モジュールが故障したりモジュールの部品を交換したりする際に、カスタマが必要な情報を容易に取得して速やかに対応することができる。
【0030】
上述した実施形態では、モジュールIDとシリアルNo.とが対応付けられた2DコードCがモジュールに貼り付けられるものとしたが、これに限られず、2DコードCなどの識別体がモジュールに設けられるものであればよい。例えば、モジュールに直接印字したり、刻印したりすることにより、識別体が設けられるものであってもよい。
【0031】
上述した実施形態では、各モジュールにそれぞれ2DコードCを設けたが、これに限られるものではない。例えば、複数のモジュールのいずれかに1の2DコードCを設け、その2DコードCを用いて複数のモジュールを一括管理してもよい。その場合、複数のモジュールとして、組合せで用いられる組合せモジュールを一括管理するものなどとすればよい。
図9は組合せモジュールの一例を示す説明図である。
図9では、組合せモジュールとして、エンドエフェクタの本体63aと、本体63aにそれぞれ交換可能に取り付けられる一対のチャック爪63b(1),(2),(3)とを例示する。各チャック爪63b(1),(2),(3)は、サイズが小型であったり、シール用紙の貼り付けに適さない表面性状などの理由で、2DコードCを設けることが困難となっている。このため、チャック爪63b(1),(2),(3)は、それぞれの収容袋Pや収容箱などに2DコードCが設けられている。カスタマは、作業システム60のカメラ64や手持ち式のコード読取器などに収容袋Pの2DコードCを読み取らせ、カスタマ端末50にモジュールIDとシリアルNo.を取得させることができる。
【0032】
図10はモジュールの組合せを変更する様子の一例を示す説明図であり、
図11はモジュール組合せ情報36の一例を示す説明図である。
図10Aは本体63aとチャック爪63b(1)とを組合せた場合を示し、
図10Bは本体63aとチャック爪63b(2)とを組合せた場合を示す。この変形例では、モジュールの組合せが変更される度に、カスタマは収容袋Pの2DコードCをカメラ64やコード読取器などに読み取らせる。また、カスタマ端末50は、取得したモジュールIDとシリアルNo.を管理サーバ20に送信する。管理サーバ20の制御部21は、受信したモジュールIDとシリアルNo.とに基づいて導入実績DB35内のモジュール組合せ情報36を更新する。
図10Aの場合、組合せ情報36には、エンドエフェクタの本体63aのモジュールIDに、チャック爪63b(1)のモジュールIDやシリアルNO.が対応付けて記憶されている(
図11A参照)。また、
図10Bの場合、組合せ情報36には、エンドエフェクタの本体63aのモジュールIDに、チャック爪63b(2)のモジュールIDやシリアルNO.が対応付けて記憶されている(
図11B参照)。このため、カスタマは、本体63aに設けられた2DコードCを読み取って、本体63aのモジュールIDに基づいて管理サーバ20に問い合わせることで、管理サーバ20から本体63aだけでなくチャック爪63bのモジュールIDやシリアルNo.を取得することなどが可能となる。
【0033】
このように、変形例の管理サーバ20は、エンドエフェクタの本体63a(第1モジュール)とチャック爪63b(第2モジュール)との2つのモジュールのモジュールIDを、本体63aのモジュールIDにより一括管理することができる。このため、ベンダなどがチャック爪63bにモジュールIDを設けなくても、モジュールの管理を適切に行うことができる。また、管理サーバ20の制御部21は、異なるチャック爪63bに変更された場合、本体63aのモジュールIDに対応付けて記憶されているチャック爪63bのモジュールIDを、変更後のチャック爪63bのモジュールIDに更新する。このため、本体63aに設けられた2DコードCをカスタマが貼り直すことなく、記憶部23の情報を更新することで、チャック爪63bの情報を容易に修正することができる。
【0034】
この変形例では、2DコードCが設けられた1のモジュールと2DコードCが設けられない1のモジュールとの組合せを一括管理するものとしたが、これに限られず、2DコードCが設けられた1のモジュールと2DコードCが設けられない2以上のモジュールとの組合せにおけるモジュールIDやシリアルNo.を一括管理するものなどとしてもよい。例えば、エンドエフェクタの本体に2セットのチャック爪がそれぞれ取り付けられて計3つのモジュールの組合せとなる場合に、モジュールIDやシリアルNo.を一括管理してもよい。あるいは、2つ以上の組合せで用いられる部品種をそれぞれ供給する2つ以上のフィーダの管理に適用するものなどとしてもよい。また、この変形例は、ベンダが2つ以上のモジュール同士の組合せの誤差や精度などを予め確認し、所定精度を確保しているモジュールの組合せを一括管理するものに適用してもよい。
【0035】
この変形例では、管理サーバ20の記憶部23に記憶されているモジュール組合せ情報36を更新することにより、一括管理するモジュールの管理を行うものとしたが、これに限られるものではない。例えば、チャック爪63bが交換される度に、2DコードCをカスタマがプリンタにより発行して、エンドエフェクタの本体63aに貼り直すものなどとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態や変形例では、バーコードやQRコード(登録商標)などの2DコードCがモジュールに設けられるものとしたが、これに限られず、各種の情報が読み書き可能なRFID(Radio Frequency Identification)タグのようなICタグがモジュールに設けられ、タグ認識装置によりタグ内の情報が認識されるものとしてもよい。即ち、識別体は、識別情報を保持する保持部として、コードまたはICタグで設けられるものであればよい。なお、ICタグは、外部から情報を読み書き可能であれば、表面に露出していなくてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、ベンダが2DコードCをモジュールに貼り付けてモジュールをカスタマに発送するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、ベンダは、2DコードCを貼り付けずにモジュールをカスタマに発送すると共に2DコードCの情報をカスタマに通知し、カスタマはプリンタにより2DコードCを発行してモジュールに貼り付けるものとしてもよい。また、ベンダが2DコードCをモジュールと別に発送するものとしてもよい。あるいは、ベンダからではなく管理サーバ20から2DコードCの情報がカスタマに通知されるものとしてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、ロボット61を含む複数のモジュールで構成された作業システム60を例示したが、これに限られず、作業システムは、複数のモジュールで構成されたシステムであればよくロボット61を含まないものとしてもよい。
【0039】
ここで、本開示のモジュール管理システムは、以下のように構成してもよい。例えば、本開示のモジュール管理システムにおいて、前記識別体は、前記固有情報の他に、前記モジュールの個々のシリアル番号に対応付けられているものとしてもよい。こうすれば、モジュールに設けられた識別体を認識することで、モジュールのシリアル番号を取得してモジュールの製造実績の確認などを行うこともできるから、モジュールの管理をさらに適切に行うことができる。
【0040】
本開示のモジュール管理システムにおいて、前記モジュールとして、前記識別体が設けられた第1モジュールと、該第1モジュールとの組合せで用いられ前記識別体が設けられていない1以上の第2モジュールとを有し、前記管理部は、前記第2モジュールに前記識別体が設けられるのに代えて、前記第2モジュールの前記固有情報を前記第1モジュールの前記固有情報に対応付けて前記記憶部に記憶させるものとしてもよい。こうすれば、第1モジュールおよび第2モジュールの各々の固有情報を、第1モジュールの識別体により一括管理することができる。このため、例えば第2モジュールが識別体を設けにくいサイズや形状などであっても、モジュールの管理を適切に行うことができる。
【0041】
本開示のモジュール管理システムにおいて、前記管理部は、前記組合せにおいて異なる前記第2モジュールに変更された場合、前記第1モジュールの前記固有情報に対応付けて前記記憶部に記憶されている前記第2モジュールの前記固有情報を、変更後の前記第2モジュールの前記固有情報に更新するものとしてもよい。こうすれば、第1モジュールに設けられた識別体を変更することなく、記憶部の情報を更新することで、第2モジュールの情報を容易に修正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示は、モジュール管理システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 設備導入支援システム、12 ネットワーク、20 管理サーバ、21,41,51 制御部、22 シミュレーション部、23,43,53 記憶部、26,46,56 通信部、28,47,57 入力部、29,48,58 表示部、30 モジュールDB、30A ロボットデータ、30B エンドエフェクタデータ、30C フィーダデータ、30D コンベアデータ、30E カメラデータ、30F 照明データ、31 モジュールデータ、35 導入実績DB、36 モジュール組合せ情報、37 ベンダDB、39 カスタマDB、40 ベンダ端末、49 プリンタ、50 カスタマ端末、60 作業システム、61 ロボット、62 ロボットアーム、63 エンドエフェクタ、63a 本体、63b,63b(1)~(3) チャック爪、64 カメラ、65 照明、66 基板搬送装置、67 フィーダ、68 制御装置、C 2Dコード、MD モデル、MP マーケットプレイス、P 収容袋、S 基板。