(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】TYK2キナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 263/48 20060101AFI20231110BHJP
A61K 31/54 20060101ALI20231110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231110BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231110BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C07D263/48 CSP
A61K31/54
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P37/06
(21)【出願番号】P 2021543577
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2019077118
(87)【国際公開番号】W WO2020074461
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514197980
【氏名又は名称】サリウム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーダー、ジョン チャールズ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529264(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02634185(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/073438(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
を有するかまたはその塩もしくは互変異性体である化合物であって、R
1が水素またはフッ素である、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、R
1が水素であり、前記化合物が式(2):
【化2】
を有するかまたはその塩もしくは互変異性体である、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、R
1がフッ素であり、前記化合物が式(3):
【化3】
を有するかまたはその塩もしくは互変異性体である、化合物。
【請求項4】
非塩形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
医薬における使用のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項6】
TYK2阻害剤としての使用のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項7】
炎症性障害または免疫障害の処置のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項8】
自己免疫疾患の処置のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項9】
TYK2キナーゼに対する活性を有する化合物を用いた処置に感受性のあるであろう疾患または容態に罹患しているかまたは罹患している危険にあるものとしてスクリーニンおよび決定された患者における疾患状態または容態の処置または予防のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記化合物がさらなる治療薬と組み合わせて使用される、請求項5~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物と医薬として許容され得る賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
式(15):
【化4】
の化合物の
、酸性条件の下での加水分解を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物の調製のための方法であって、式中、R
1
が水素またはフッ素である、方法。
【請求項13】
R
1が水素である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式(15):
【化5】
の化合物であって、式中、R
1が水素またはフッ素である、化合物。
【請求項15】
R
1が水素である、請求項14に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤヌスキナーゼ阻害活性、特にTYK2キナーゼ阻害活性を有する化合物、該化合物を含有する医薬組成物、および自己免疫疾患などの種々の疾患の処置における該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、細胞内での広範な種々のシグナル伝達プロセスの制御の原因となる構造上関連する酵素の大きなファミリーを構成している(Hardie and Hanks(1995)The Protein Kinase Facts Book.I and II,Academic Press,San Diego,CA)。該キナーゼは、該キナーゼがリン酸化する基質(例えば、タンパク質-チロシン、タンパク質-セリン/トレオニン、脂質など)によってファミリーへと分類することができる。これらのキナーゼファミリーの各々に概して相応する配列モチーフが同定されている(例えば、Hanks and Hunter,FASEB J.,(1995)9.576-596、Knighton,et al.,Science,(1991)253,407-414、Hiles,et al.,Cell,(1992)70,419-429、Kunz,et al.,Cell,(1993)73,585-596、Garcia-Bustos,et al.,EMBO J.,(1994)13,2352-2361)。
【0003】
プロテインキナーゼは、該プロテインキナーゼの調節機序を特徴とすることができる。これらの機序には、例えば、自己リン酸化、他のキナーゼによるトランスリン酸化、タンパク質-タンパク質間相互作用、タンパク質-脂質間相互作用、およびタンパク質-ポリヌクレオチド間相互作用が含まれる。個々のプロテインキナーゼは、複数の機序によって調節されることができる。
【0004】
キナーゼは、リン酸基を標的タンパク質へ付加することによって、増殖、分化、アポトーシス、運動性、転写、翻訳、およびその他のシグナル伝達プロセスを含むがこれらに限定されない多くの異なる細胞プロセスを調節する。これらのリン酸化事象は、標的タンパク質の生物学的機能を調整または調節することができる分子のオン/オフスイッチとして作用する。標的タンパク質のリン酸化は、さまざまな細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、成長因子および分化因子など)、細胞周期事象、環境ストレスまたは栄養ストレスなどに応じて生じる。適切なプロテインキナーゼは、シグナル伝達経路において機能して、例えば、代謝酵素、調節タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャネルもしくはイオンポンプ、または転写因子を(直接的かまたは間接的のいずれかで)活性化または不活性化する。タンパク質リン酸化の制御の欠陥による制御されていないシグナル伝達は、例えば、炎症、癌、アレルギー/喘息、免疫系の疾患および容態、中枢神経系の疾患および容態、ならびに血管新生を含む多くの疾患に関係している。
【0005】
ヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーは、細胞内の非受容体型チロシンキナーゼのファミリーであり、大きさは120~140kDaの範囲であり、JAK-STAT経路を介してサイトカイン介在性シグナルを伝達する。該JAKファミリーは、免疫応答に関与する細胞の増殖および機能のサイトカイン依存性調節において役割を担っている。現在、4つの公知の哺乳動物JAKファミリーメンバーJAK1、JAK2、JAK3およびTYK2がある。JAK1、JAK2、およびTYK2は、汎存して発現するのに対し、JAK3は骨髄系列およびリンパ系列において発現する。該JAKファミリーのメンバーは、多くのヘマトポエチンサイトカイン、受容体型チロシンキナーゼ、およびGPCRと関係する非受容体型チロシンキナーゼである。
【0006】
各JAKキナーゼタンパク質は、キナーゼドメインと触媒として不活性である偽キナーゼドメインとを有する。該JAKタンパク質は、サイトカイン受容体のアミノ末端のFERM(Band-4.1、エズリン、ラジキシン、モエシン)ドメインを経て該サイトカイン受容体へ結合する。サイトカインがサイトカイン受容体に結合した後、JAKは活性化されて該受容体をリン酸化し、それによってシグナル伝達分子、特にシグナル伝達因子兼転写活性化因子(STAT)ファミリーのメンバーに対するドッキング部位を生成する(Yamaoka et al,2004.The Janus kinases(Jaks).Genome Biology 5(12):253)。
【0007】
哺乳動物では、JAK1、JAK2、およびTYK2が汎存して発現する。TYK2は、インターロイキン12、インターロイキン23、ならびにI型およびIII型インターフェロン受容体のシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)依存性遺伝子発現ならびに機能的応答を活性化する(Papp et al.,The New England Journal of Medicine,12 September 2018,DOI:10.1056/NEJMoa1806382およびそこに引用される参考文献)これらのサイトカイン経路は、乾癬を含む免疫介在性障害と関係する病理学的プロセスに関与しており、ヤヌスキナーゼ(JAK)1(JAK1)、JAK1およびJAK3の組み合わせ、JAK2、または他のシグナル伝達キナーゼによって駆動される応答とは異なると報告されている(Papp et al.,同上)。
【0008】
2つのサブユニットp19およびp40から構成されるインターロイキン23(IL-23)は、IL-17A、IL-17F、IL-6、およびTNFαなどの炎症誘発性サイトカインを産生するTh17細胞の生存および増殖に不可欠であると考えられている(国際公開第2014/07466号およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。これらのサイトカインは、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、狼瘡を含む、多くの自己免疫疾患の病理学的状態を介在する上で重要であると報告されている。
【0009】
IL-23は、IL-12Rβ1およびIL-23Rから構成されるヘテロ二量体受容体を経て作用する。
【0010】
IL-12は、IL-23と共通のp40サブユニットに加えて、p35サブユニットを含有し、IL-12R1βおよびIL-12Rβ2から構成されるヘテロ二量体受容体を経て作用する。IL-12は、Th1細胞の発達と、MHC発現を刺激すること、IgG下位クラスへのB細胞のクラスの切り替え、およびマクロファージの活性化によって免疫において重要な役割を担っているサイトカインであるIFNyの分泌とに不可欠である(Gracie,J.A.et al.,’’Interleukin-12 induces interferon-gamma-dependent switching of IgG alloantibody subclass’’,Eur.J.Immunol,26:1217-1221(1996)、Schroder,K.et al.,’’Interferon-gamma:an overview of signals,mechanisms and functions’’,J.Leukoc.Biol,75(2):163-189(2004))。
【0011】
TYK2は、IL-12受容体およびIL-23受容体においてIL-12Rβ1サブユニットと会合している。
【0012】
自己免疫におけるp40含有サイトカインの重要性は、p40、p19、またはIL-23Rのいずれかが欠損しているマウスがとりわけ、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、狼瘡および乾癬のモデルにおける疾患から保護されるという発見によって実証されている(Kyttaris,V.C.et al,’’Cutting edge:IL-23 receptor deficiency prevents the development of lupus nephritis in C57BL/6-lpr/lpr mice’’,J.Immunol,184:4605-4609(2010)、Hong,K.et al,’’IL-12,independently of IFN-gamma,plays a crucial role in the pathogenesis of a murine psoriasis like skin disorder’’,J.Immunol,162:7480-7491(1999)、Hue,S.et al,’’Interleukin-23 drives innate and T cell-mediated intestinal inflammation’’,J.Exp.Med.,203:2473-2483(2006)、Cua,D.J.et al.,’’Interleukin-23 rather than interleukin-12 is the critical cytokine for autoimmune inflammation of the brain’’,Nature,421:744-748(2003)、Murphy,C.A.et al.,’’Divergent pro-and anti-inflammatory roles for IL-23 and IL-12 in joint autoimmune inflammation’’,J.Exp.Med,198:1951-1957(2003))。
【0013】
サイトカインに対する生物学的応答におけるTYK2の役割は、I型インターフェロン(IFN)の効果に耐性のある変異ヒト細胞株を使用し、TYK2の遺伝的相補性によってIFNα応答性が回復する可能性があることを実証することによって特徴付けられている(Velazquez et al,1992.Cell 70,313-322)。さらなるインビトロでの研究は、先天免疫と適応免疫の両方に関与する他の複数のサイトカインのシグナル伝達経路にTYK2を関与させてきた。しかしながら、TYK2-/-マウスの分析では、予想よりも重度ではない免疫学的欠陥が明らかとなった(Karaghiosoff et al,2000.Immunity 13,549-560、Shimoda et al,2000.Immunity 13,561-671)。驚いたことに、TYK2欠損マウスは、IFNα/βに対する応答性の単なる低減を示し、いずれもインビトロでTYK2を活性化するインターロイキン6(IL-6)およびインターロイキン10(IL-10)に対して正常にシグナル伝達する。対照的に、TYK2は、IL-12シグナル伝達に不可欠であり、TYK2が存在しないと、STAT4の活性化に欠陥が生じ、これらのマウスのT細胞がIFNy産生Th1細胞へと分化し損ねることが示された。I型IFNおよびIL-12の生物学的効果を介在することにTYK2が関与することと一致して、TYK2-/-マウスはウイルス感染および細菌感染に対してより感受性が高かった。
【0014】
常染色体劣性TYK2欠損症の最初の患者は、Minegishi et al.2006.Immunity 25,745-755によって説明された。患者のコードDNAにおける4つの塩基対のホモ接合性欠失(TYK2遺伝子のヌクレオチド550のGCTT)およびその結果としてのフレームシフト変異により、未成熟の終止コドンが導入され、結果としてアミノ酸90のTYK2タンパク質が切り詰められた。ヒト細胞におけるこの零式変異の表現型は、TYK2を欠くマウス細胞での研究によって予測されたよりもはるかに重篤であった。該患者は、再発性皮膚膿瘍、アトピー性皮膚炎、非常に高い血清IgEレベル、多発性日和見感染への感受性を含む、原発性免疫不全高IgE症候群(HIES)を彷彿とさせる臨床的特色を示した。
【0015】
TYK2-/-マウスでの報告とは対照的に、広範な種々のサイトカインによるシグナル伝達が損なわれていることが認められたので、I型IFN、IL-6、IL-10、IL-12、およびIL-23の機能におけるヒトTYK2の非冗長な役割が強調された。Tヘルパー細胞の分化の不均衡も観察され、患者のT細胞は、IL-4産生Th2細胞の発達およびTh1分化の障害へと極端な偏りを呈した。実際、これらのサイトカインシグナル伝達の欠陥は、説明されている臨床症状の多く、例えば、アトピー性皮膚炎および高IgEレベル(Th2の増強)、ウイルス感染の発生率の上昇(IFN欠陥)、細胞内細菌による感染(IL-12/Th1欠損)ならびに細胞外細菌(IL-6およびIL-23/Th17欠損)の原因である可能性がある。
【0016】
2015年8月24日に公表されたKreins et al.,pages 1-22,The Journal of Experimental Medicineは、5つの家族および4つの異なる民族群から7人のさらなるTYK2欠損患者を特定した。これらの患者は、5つの零式変異のうち1つについてホモ接合性であった。Minegishiらによって得られたデータを、7人のさらなるTYK2欠損患者について得られたデータと比較することによって、Kreinsらは、TYK2欠損症の中心的な臨床表現型は、IL-12およびIFN-α/βに対する応答障害によって引き起こされるマイコバクテリウム感染および/またはウイルス感染であるが、IL-6応答障害およびHIESは、ヒトにおけるTYK2欠損症の固有の特色であるとは思われないと結論付けた。
【0017】
ゲノムワイド関連解析から得られる証拠は、TYK2遺伝子の一塩基多型(SNP)が自己免疫疾患の感受性に有意に影響することを示唆している。
【0018】
効率の低いTYK2変異体は、全身性エリテマトーデス(SLE)(TYK2 rs2304256 and rsl2720270,Sigurdsson et al,2005.Am.J.Hum.Genet.76,528-537、Graham et al,2007.Rheumatology 46,927-930、Hellquist et al,2009.J.Rheumatol.36,1631-1638、Jarvinen et al,2010.Exp.Dermatol.19,123-131)および多発性硬化症(MS)(rs34536443,Ban et al,2009.Eur.J.Hum.Genet.17,1309-1313、Mero et al,2009.Eur.J.Hum.Genet.18,502-504)に対する保護と関係づけられているのに対し、予測される機能獲得型変異は、炎症性腸疾患(IBD)に対する感受性を高める(rs280519およびrs2304256,Sato et al,2009.J.Clin.Immunol.29,815-825)。
【0019】
ヒトでは、TYK2の不活性変異体を発現する個体が多発性硬化症およびおそらく他の自己免疫疾患から保護されており、ゲノムワイド関連解析により、TYK2の他の変異体がクローン病、乾癬、全身性エリテマトーデス、および関節リウマチなどの自己免疫疾患と関係していることが示されたことが報告されており(国際公開第2014074661号およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)、自己免疫におけるTYK2の重要性がさらに実証された。
【0020】
免疫病理学的疾患プロセスにおけるTYK2の関与を支持して、コード化されたTYK2タンパク質の欠如をもたらすTYK2の偽キナーゼドメインにおいてミスセンス変異を保有するB10.D1マウスは、自己免疫性関節炎(CIA)および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の両方に抵抗性があることが示されてきた(Shaw et al,2003.PNAS 100,11594-11599、Spach et al,2009.J.Immunol.182,7776-7783)。さらに、最近の研究では、TYK2-/-マウスはMOG誘発性EAEに対して完全に抵抗性があることが示された(Oyamada et al,2009.J.Immunol.183,7539-7546)。これらのマウスでは、抵抗性に付随していたのは、脊髄に浸潤するCD4 T細胞がないこと、IL-12RおよびIL-23Rを経たシグナル伝達をし損ねたこと、ならびにこのゆえにIFNyおよびIL-17の脳炎惹起性レベルを上方調節できないことであった。
【0021】
TYK2キナーゼの過剰発現は、いくつかの疾患状態の発症に関与してきた。例えば、進行性肺型サルコイド症に罹患している患者では、高レベルのTYK2が認められた(Schischmanoff et al.,Sarcoidosis Vasc.Diffuse.,2006,23(2),101-7)。
【0022】
したがって、入手可能な証拠によって、TYK2が先天免疫および適応免疫の両方において基本的な役割を担っていることが強く示されている。TYK2発現がないことは、複数の炎症誘発性サイトカインのシグナル伝達の減弱およびTヘルパー細胞分化の極度な不均衡に現れる。さらに、遺伝的関連解析からの証拠は、TYK2が共有の自己免疫疾患感受性遺伝子であることを支持している。まとめると、これらの理由は、TYK2を炎症性疾患および自己免疫疾患の処置についての標的として示唆している。
【0023】
医学分野において有用である可能性があるいくつかのJAKファミリー阻害剤が文献で報告されている(Ghoreschi et al,2009.Immunol Rev,228:273-287)。JAK2の阻害は貧血を引き起こす可能性があるので、JAK2よりも大きな効力でTYK2を阻害する選択的TYK2阻害剤は、有利な治療特性を有する可能性があることが提案されている(Ghoreschi et al,2009.Nature Immunol.4、356-360)。
【0024】
Pappら(The New England Journal of Medicine,12 September 2018,DOI:10.1056/NEJMoa1806382)は、乾癬を処置する上で経口選択的TYK2阻害剤BMS-986165の第II相臨床試験において得られた結果を開示し、該結果が治療上の利点を示したと結論付けた。
【0025】
国際公開第2014/074661号(Bristol-Myers Squibb)は、IL-12 IL-23および/またはIFNαの調節に有用であるTYK2阻害剤としてのピリダジンおよびトリアジンアミドのクラスを開示している。該化合物は、さまざまな炎症性疾患および自己免疫疾患の処置において有用となることが示唆されている。
【0026】
国際公開第2016/027195号(Pfizer)は、TYK2キナーゼに対する活性を含む、JAKキナーゼ阻害活性を有する一連のアミノピリミジニル化合物を開示している。
【0027】
国際公開第2012/000970号(Cellzome)は、TYK2キナーゼ阻害剤として一連のトリアゾロピリジンを開示している。国際公開第2011/113802号(Roche)は、TYK2キナーゼ阻害剤として一連のイミダゾピリジンを開示している。JAKキナーゼの特性および治療標的としてのJAKキナーゼの関連性はまた、すべてMerckの名称のもと、国際公開第2008/156726号、国際公開第2009/155156号、国際公開第2010/005841号および国際公開第2010/011375号においても開示されている。
【0028】
国際公開第2010/055304号および欧州特許第2634185号(両方ともSareumの名称のもとにある)は、自己免疫疾患、特に多発性硬化症の予防または処置において使用するための置換オキサゾールカルボキサミドのファミリーを開示している。国際公開第2010/055304号において開示されている化合物は、FLT3キナーゼ阻害剤であるとして説明されている。オキサゾールカルボキサミドのキナーゼ阻害効果は、国際特許出願2008/139161(Sareum)においても開示されている。
【0029】
国際公開第2015/032423号(Sareum)は、TYK2キナーゼ阻害剤としてのオキサゾールカルボキサミド化合物の部分セットの使用を開示している。該化合物は、自己免疫疾患などの炎症性障害および免疫学的障害の処置において有用であるとして説明されている。
【0030】
国際公開第2018/073438号(Sareum)は、癌細胞の生存のためにヤヌスキナーゼTYK2に依存するT細胞リンパ芽球性白血病および癌(造血系の癌など)を処置する上での使用のためのTYK2キナーゼ阻害活性を有するオキサゾールカルボキサミド化合物の部分セットの使用を開示している。
【0031】
国際公開第2015/032423号および国際公開第2018/073438号に開示されている詳細な化合物には、2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-5-[4-(モルホリン-4-カルボニル)-フェニルアミノ]-オキサゾール-4-カルボン酸アミド(化合物A)および2-(2,6-ジクロロ-フェニル)-5-[4-(モルホリン-4-カルボニル)-フェニルアミノ]-オキサゾール-4-カルボン酸アミド(化合物B)が含まれる。
【発明の概要】
【0032】
本発明は、国際公開第2015/032423号ならびに国際公開第2018/073438号に開示された化合物、特に上述の化合物Aならびに化合物Bと比較して、TYK2キナーゼに対する改善された活性および選択性ならびに改善された薬物動態特性を有するオキサゾールカルボキサミドの小群に関する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
そのため、第1の実施形態(実施形態1.1)において、本発明は、式(1)
【化1】
を有する化合物またはその塩もしくは互変異性体であって、式中、R
1が水素またはフッ素である、化合物またはその塩もしくは互変異性体を提供する。
【0034】
本発明の詳細な化合物は、以下の実施形態1.2~1.9に提示されている。
【0035】
1.2 R
1が水素である、実施形態1.1による化合物であって、式(2):
【化2】
を有するまたはその塩もしくは互変異性体である化合物。
【0036】
1.3 R
1がフッ素である、実施形態1.1による化合物であって、式(3):
【化3】
を有するまたはその塩もしくは互変異性体である化合物。
【0037】
式(1)、(2)および(3)の化合物は、オキサゾールおよびアニリンサブユニットを含有しており、これらのいずれもが弱塩基性のみである。それゆえ、該化合物は通常、塩としてよりもむしろ、非塩の形態で提供される。そのため、さらなる実施形態(実施形態1.4)では、本発明は、化合物が非塩形態である、実施形態1.1~1.3のいずれか1つによる該化合物を提供する。
【0038】
ある特定の状況では、酸性塩は、塩酸、硫酸およびリン酸などの強酸を用いて形成されることがあるが、このような塩は通常不安定であるとみなされる。塩を形成することができる場合、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,P.Heinrich Stahl(Editor),Camille G.Wermuth(Editor),ISBN:3-90639-026-8,Hardcover,388pages,August 2002において説明されている方法など、従来の化学的方法によって親化合物から合成することができる。概して、このような塩は、化合物の遊離塩基形態を、水中もしくは有機溶媒中、またはこれら2つの混合物中で酸と反応させることによって調製することができ、概して、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が使用される。
【0039】
塩を形成することができる場合、該塩は、医薬として許容され得る塩であり得、医薬として許容され得る塩の例は、Berge et al.,1977,’’Pharmaceutically Acceptable Salts,’’J.Pharm.Sci.,Vol.66,pp.1-19において論議されている。しかしながら、医薬として許容され得ない塩はまた、中間形態として調製されることができ、該中間形態は次に、医薬として許容され得る塩に変換することができる。例えば、本発明の化合物の精製または分離において有用である可能性があるこのような医薬として許容され得ない塩形態もまた、本発明の一部を形成する。
【0040】
同位体
実施形態1.1~1.4のいずれか1つにおいて定義される本発明による使用のための化合物は、1つ以上の同位体置換を含有してもよく、特定の元素に対する言及は、該言及の範囲内に該元素のすべての同位体を含む。例えば、水素に対する言及は、該言及の範囲内に1H、2H(D)、および3H(T)を含む。同様に、炭素および酸素に対する言及は、該言及の範囲内にそれぞれ12C、13Cおよび14Cならびに16Oおよび18Oを含む。
【0041】
同様の様式で、特定の官能基に対する言及はまた、文脈が特に示さない限り、該言及の範囲内に同位体の変化の程度も含む。
【0042】
同位体は、放射性または非放射性であってよい。本発明の一実施形態(実施形態1.5)では、実施形態1.1~1.4のいずれか1つによる化合物は、放射性同位体を含有していない。このような化合物は、治療用途に好ましい。しかしながら、別の実施形態(実施形態1.6)では、実施形態1.1~1.4のいずれか1つの化合物は、1つ以上の放射性同位体を含有することができる。このような放射性同位体を含有する化合物は、診断の脈絡において有用である可能性がある。
【0043】
溶媒和物
実施形態1.1~1.6のいずれか1つにおいて定義される使用のための化合物は、溶媒和物を形成することがある。
【0044】
好ましい溶媒和物は、非毒性の医薬として許容され得る溶媒(以下、溶媒和溶媒と称する)が分子の本発明の化合物の固相構造(例えば、結晶構造)へと組み込まれることによって形成される溶媒和物である。このような溶媒の例としては、水、アルコール(エタノール、イソプロパノールおよびブタノールなど)、およびジメチルスルホキシドが挙げられる。溶媒和物は、本発明の化合物を溶媒または溶媒和溶媒を含有する溶媒の混合物で再結晶化することによって調製することができる。いずれかの所与の場合において溶媒和物が形成されたかどうかは、化合物の結晶を、熱重量分析(TGE)、示差走査熱量測定法(DSC)、X線結晶学的技術などの周知の標準的な技術を使用して分析へ供することによって判断することができる。
【0045】
溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的な溶媒和物であってもよい。
【0046】
特に好ましい溶媒和物は水和物であり、水和物の例としては、半水和物、一水和物および二水和物が挙げられる。
【0047】
そのため、さらなる実施形態1.7および1.8では、本発明は、以下を提供する。
1.7 実施形態1.1~1.6のいずれか1つによる化合物であって、溶媒和物の形態である、化合物。
1.8 溶媒和物が水和物である、実施形態1.7による化合物。
【0048】
溶媒和物および該溶媒和物を調製および特徴付けるために使用される方法のより詳細な論議については、SSCI,Inc of West Lafayette,IN,USAにより公表されたBryn et al.,Solid-State Chemistry of Drugs,Second Edition,1999,ISBN 0-967-06710-3を参照されたい。
【0049】
あるいは、水和物として存在するよりもむしろ、本発明の化合物は無水物であってもよい。それゆえ、別の実施形態(実施形態1.9)では、実施形態1.1~1.6のいずれか1つにおいて定義される化合物は、無水形態である。
【0050】
生物活性
実施形態1.1~1.9において定義される式(1)、(2)および(3)の化合物は、TYK2キナーゼの強力かつ選択的な阻害剤である。該化合物のTYK2キナーゼ阻害活性は、後の例において説明されているアッセイを使用して決定することができる。
【0051】
化合物(2)および(3)について得られた実験データは、本発明の化合物が、国際公開第2015/032423号において構造的に最も類似した化合物(化合物B)よりも有意な利点を有することを実証している。したがって、化合物(2)および(3)はいずれも、TYK2キナーゼ阻害アッセイにおいて最も近い公知の化合物(化合物B)よりも活性が高く、いずれも、化合物BよりもJAK1、JAK2およびJAK3キナーゼに対してTYK2についての高い選択性を有する。その上、化合物(2)および(3)は、先行技術の比較化合物Bと比較して、hERGリスクが低減している。さらに、肝細胞安定性アッセイでは、化合物(2)および(3)は、クリアランス速度が低減すること、およびその結果、比較化合物Bよりも長い半減期を示した。
【0052】
まとめると、本データは、化合物(2)および(3)が、比較化合物Bよりも強力かつ選択的なTYK2キナーゼ阻害剤であるだけでなく、その上、化合物(2)および(3)が化合物Bよりも良好な薬物動態特性を有することを示している。
【0053】
該化合物のTYK2キナーゼ阻害活性は、疾患を処置する種々の方法で使用することができ、該疾患において、TYK2は該疾患の発症または進行において一部担っている。該化合物の種々の使用は通常、該化合物をTYK2キナーゼと接触させることを包含する。TYK2キナーゼの阻害は、インビトロまたはインビボのいずれかで生じることができる。
【0054】
そのため、さらなる実施形態では、本発明は以下を提供する。
2.1 TYK2キナーゼを阻害する方法であって、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される有効なTYK2キナーゼ阻害量の化合物をTYK2キナーゼと接触させることを含む、方法。
2.2 実施形態2.1による方法であって、該TYK2キナーゼの阻害がインビトロで生じる、方法。
2.3 実施形態2.1による方法であって、該TYK2キナーゼの阻害がインビボで生じる、方法。
2.4 TYK2キナーゼの阻害剤としての使用のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される化合物。
2.5 医学における使用のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される、化合物。
【0055】
TYK2キナーゼの阻害は、好ましくは、TYK2キナーゼが関与している疾患または容態の治療的処置の一部としてインビボで生じる。
【0056】
本発明の化合物は、選択的TYK2阻害剤であり、JAK2およびJAK3キナーゼよりもTYK2に対してかなり活性が高い。該化合物は、他の広範囲のキナーゼ、特に、抗癌療法のための標的として概して認識されているキナーゼに対して比較的に低い活性を有する。したがって、例えば、該化合物は、細胞周期の進行に関与するChk1キナーゼ、オーロラキナーゼ、PKB(Akt)キナーゼ、およびサイクリン依存性キナーゼ(CDKキナーゼ)に対して比較的に活性がない。通常、抗癌標的であるとみなされるキナーゼに対する活性の欠如は、例えば、炎症性疾患および自己免疫疾患の長期的な処置において使用することができる化合物において有益である。
【0057】
本発明の化合物のTYK2阻害活性に基づいて、本発明の化合物は、炎症性疾患または炎症性容態、免疫学的疾患または免疫学的容態、自己免疫疾患、アレルギー性疾患またはアレルギー性障害、移植片拒絶反応(同種移植片移植拒絶反応)、移植片対宿主病を含む、後で論議される疾患および障害の少なくともいくつかを処置する上で、敗血症および敗血症性ショックを処置する上で有用であろうことが想定される。
【0058】
本発明の文脈において、自己免疫疾患は、それ自体の構成要素、例えばタンパク質、脂質またはDNAに対する身体の免疫反応によって少なくとも部分的に引き起こされる疾患である。臓器特異的自己免疫障害の例は、膵臓に影響を与えるインスリン依存性糖尿病(I型)、甲状腺に影響を与える橋本甲状腺炎およびグレーブス病、胃に影響を与える悪性貧血、副腎に影響を与えるクッシング病およびアジソン病、肝臓に影響を与える慢性活動性肝炎;多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、セリアック病、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、ループス腎炎(腎臓の炎症)ならびに強直性脊椎炎である。非臓器特異的自己免疫障害の例は、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、および重症筋無力症である。I型糖尿病は、ランゲルハンス島のインスリン分泌性ベータ細胞に対する自己反応性T細胞の選択的攻撃の結果として発症する。本発明の化合物を用いた処置から利益を得る可能性のある他の炎症性または免疫性の疾患および障害は、放射線曝露による皮膚の炎症;喘息;アレルギー性炎症;慢性炎症;炎症性眼疾患;眼乾燥症候群(DES、乾性角結膜炎または機能不全性涙症候群としても公知);ぶどう膜炎(例えば、慢性進行性または再発形態の非感染性ぶどう膜炎);円形脱毛症;原発性胆汁性肝硬変;および全身性硬化症を含み、関節リウマチ(RA)は、世界の人口のおおよそ1%に影響を与える慢性進行性の衰弱性炎症性疾患である。RAは、対称性の多関節関節炎であり、主に手および足の小さな関節に影響を及ぼす。滑膜、関節表層における炎症に加えて、パンヌスと呼ばれる組織の攻撃的な最前線が局所的な関節構造に侵入および破壊する(Firestein 2003,Nature 423:356-361)。
【0059】
炎症性腸疾患(IBD)は、慢性的な再発性腸炎を特徴とする。IBDは、クローン病および潰瘍性大腸炎の表現型へと細分される。クローン病は、最も頻繁に末端の回腸および結腸を包含し、経壁性かつ不連続である。対照的に、潰瘍性大腸炎では、炎症は継続的であり、直腸および結腸の粘膜層に限定される。直腸および結腸に限局している症例のおおよそ10%では、クローン病または潰瘍性大腸炎の明確な分類を行うことができず、「不確定性大腸炎」と呼ばれている。いずれの疾患も、皮膚、眼、または関節の腸管外炎症を含む。好中球誘発性損傷は、好中球遊走阻害剤の使用によって予防することができる(Asakura et al.,2007,World J.Gastroenterol.13(15):2145-9)。
【0060】
乾癬は、人口のおおよそ2%に影響を与える慢性炎症性皮膚疾患である。乾癬は普通、頭皮、肘、および膝に認められる赤色のうろこ状の皮膚斑を特徴とし、重度の関節炎と関係している可能性がある。この病変は、異常なケラチノサイト増殖および炎症細胞の真皮および表皮への浸潤によって引き起こされる(Schon et al,2005,New Engl.J.Med.352:1899-1912)。
【0061】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、T細胞介在性B細胞活性化によって生じる慢性炎症性疾患であり、結果として糸球体腎炎および腎不全をもたらす。ヒトSLEは、初期段階では、持続性のある自己反応性CD4+記憶細胞の増殖を特徴とする(D’Cruz et al,2007,Lancet 369(9561):587-596)。
【0062】
移植片拒絶反応(同種移植片移植拒絶反応)には、例えば腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚および角膜の移植後の急性および慢性の同種移植片拒絶反応が含まれるが、これらに限定されない。T細胞は、同種移植片拒絶反応の特定の免疫応答において中心的な役割を担っていることが公知である。超急性、急性および慢性の臓器移植拒絶反応を処置することができる。超急性拒絶反応は、移植後数分以内に生じる。急性拒絶反応は概して、移植後6~12か月以内に生じる。超急性および急性の拒絶反応は通常、免疫抑制剤を用いて処置した場合、可逆的である。臓器機能の段階的な喪失を特徴とする慢性拒絶反応は、移植後いつでも発生する可能性があるので、移植レシピエントにとって継続的な懸念事項である。
【0063】
移植片対宿主病(GVDH)は、同種骨髄移植(BMT)における主要な合併症である。GVDHは、組織適合性複合体系におけるレシピエントの違いを認識および反応するドナーT細胞によって引き起こされ、結果として、かなり大きな罹病率および死亡率をもたらす。
【0064】
肺サルコイドーシスは、原因不明の比較的まれな炎症性障害であるが、TYK2のレベルの上昇と関係していることが示されており、通常20~50歳の成人において発症する。肺サルコイドーシスは、肺における小さな集塊または肉芽腫を特徴とし、これらは概して自然に治癒および消失する。しかしながら、治癒しない肉芽腫の場合、組織は炎症を生じたままである可能性があり、瘢痕化または線維化する可能性がある。肺サルコイドーシスは肺線維症へと発達する可能性があり、これは肺の構造を歪めるので、呼吸を妨げる可能性がある。
【0065】
そのため、さらなる実施形態では、本発明は以下を提供する。
2.6 疾患または容態を処置する必要のある対象において該疾患または容態を処置する方法であって、該疾患または容態が、自己免疫疾患、炎症性疾患もしくは炎症性容態、免疫学的疾患もしくは免疫学的容態、アレルギー性疾患もしくはアレルギー性障害、移植片拒絶反応および移植片対宿主病、または敗血症および敗血症性ショックから選択される疾患もしくは容態から選択され、該疾患または容態がTYK2阻害を受けやすく、該方法が該対象に、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される有効なTYK2阻害量の化合物を投与することを含む、方法。
2.7 自己免疫疾患、炎症性疾患もしくは炎症性容態、免疫学的疾患もしくは免疫学的容態、アレルギー性疾患もしくはアレルギー性障害、移植片拒絶反応および移植片対宿主病から選択される疾患もしくは容態の処置における使用のための、または敗血症もしくは敗血症性ショックの処置における使用のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される化合物であって、該疾患または容態がTYK2阻害を受けやすい、化合物。
2.8 自己免疫疾患、炎症性疾患もしくは炎症性容態、免疫学的疾患もしくは免疫学的容態、アレルギー性疾患もしくはアレルギー性障害、移植片拒絶反応および移植片対宿主病から選択される疾患もしくは容態の処置のための、または敗血症もしくは敗血症性ショックの処置における使用のための薬剤の製造のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される化合物の、使用であって、該疾患または容態がTYK2疎外に感受性がある、使用。
2.9 自己免疫疾患を処置することを必要とする対象において、自己免疫疾患を処置する方法であって、該対象においてTYK2キナーゼを阻害し、それにより該自己免疫疾患と関係する炎症プロセスの程度を遮断または低減させるために、該対象に、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される有効なTYK2阻害量の化合物を投与することを含む、方法。
2.10 自己免疫疾患を処置することを必要とする対象において自己免疫疾患を処置する方法における使用のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される化合物であって、該方法が、該対象においてTYK2キナーゼを阻害し、それにより該自己免疫疾患と関係する炎症プロセスの程度を遮断または低減させるために、該対象に、有効なTYK2阻害量の該化合物を投与することを含む、化合物。
2.11 自己免疫疾患を処置することを必要とする対象において自己免疫疾患を処置するための薬剤の製造のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される化合物の使用であって、該対象においてTYK2キナーゼを阻害し、それにより該自己免疫疾患と関係する炎症プロセスの程度を遮断または低減させるために、該対象に有効なTYK2阻害量の該化合物を投与することによる、使用。
2.12 疾患または容態を処置することを必要とする対象において該疾患または容態を処置する方法であって、該疾患または容態が、TYK2キナーゼの過剰発現(発現上昇)を特徴とするかまたはTYK2キナーゼの過剰発現(発現上昇)によって(少なくとも一部)生じるかまたはTYK2キナーゼの過剰発現(発現上昇)と関係しているものである方法であって、該対象に実施形態1.1から1.9のいずれか1つの有効なTYK2阻害量の化合物を投与することを含む、方法。
2.13 疾患または容態を処置することを必要とする対象における疾患または容態を処置する上での使用のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つにおいて定義される化合物であって、該疾患が、TYK2キナーゼの過剰発現(発現上昇)を特徴とするかまたはTYK2キナーゼの過剰発現(発現上昇)によって(少なくとも一部)生じるかまたはTYK2キナーゼの過剰発現(発現上昇)と関係しているものである、化合物。
2.14 該疾患または容態が自己免疫疾患である、実施形態2.6~2.13のいずれか1つによる方法、使用のための化合物、または使用。
2.15 該疾患または容態が多発性硬化症以外の自己免疫疾患である、実施形態2.6~2.13のいずれか1つによる方法、使用のための化合物、または使用。
2.16 該疾患または容態が乾癬である、実施形態2.6~2.13のいずれか1つによる方法、使用のための化合物、または使用。
2.17 該疾患または容態が乾癬性関節炎である、実施形態2.6~2.13のいずれか1つによる方法、使用のための化合物、または使用。
2.18 該疾患または容態が多発性硬化症である、実施形態2.6による方法。
【0066】
TYK2阻害剤としての本発明の化合物の活性は、後の例において明らかにされるアッセイを使用して測定することができ、所与の化合物によって呈される活性のレベルは、IC50値に関して定義することができる。本発明の化合物は、TYK2キナーゼに対して5ナノモル濃度未満のIC50値を有する。したがって、R1が水素である化合物(化合物(2))は、TYK2に対して1.9ナノモル濃度のIC50を有するのに対し、R1がフッ素である化合物(化合物(3))は、TYK2に対して4.7ナノモル濃度のIC50を有する。
【0067】
本発明の化合物の利点は、該化合物が、JAKファミリーの他のキナーゼと比較して、TYK2キナーゼに対する選択性を呈することである。
【0068】
例えば、生化学的アッセイにおいて、R1が水素である化合物(化合物(2))は、JAK2と比較してTYK2に対しておおよそ25倍の選択性、およびJAK3と比較してTYK2に対して110倍の選択性を有する。
【0069】
R1がフッ素である化合物(化合物(3))は、JAK2と比較してTYK2に対しておおよそ32倍の選択性、およびJAK3と比較してTYK2に対して164倍の選択性を有する。
【0070】
乾癬を処置する上での使用のための化合物の適合性は、マウスにおけるイミキモド誘発性乾癬様皮膚炎症に及ぼす該化合物の効果を検査することによって決定することができる。例えば、Mori et al.,Kobe J.Med.Sci.,Vol.62,No.4,pp.E79-E88,2016、van der Fits et al.,The Journal of Immunology,2009;182:5836-5845、およびLin et al.,PLOS ONE|DOI:10.1371/journal.pone.0137890 September 10,2015を参照されたい。したがって、イミキモドをマウスに(例えば、マウスの耳に)局所的に適用して、乾癬様炎症およびスケーリングを誘発させ、本発明の化合物またはイミキモドを含有していない対照を用いても処置したマウス(またはマウスの身体の複数の領域)における炎症およびスケーリングのレベル間で比較することができる。
【0071】
式(1)の化合物の調製のための方法
本発明の化合物は、次の段落および後の例において説明される方法によって調製することができる。
【0072】
式(1)の化合物は、スキーム1に示される一連の反応によって調製することができる。
【化4】
【0073】
反応の流れの第1の工程では、2,6-ジクロロベンゾイルクロリド(10)をN-メチルピロリドン(NMP)などの極性非プロトン性溶媒中でアミノマロノニトリル(11)(例えば、そのp-トルエンスルホン酸塩)と反応させて、アミノオキサゾールニトリル(12)を得る。該反応は通常、高温で、例えば、90℃~115℃の範囲で実施される。
【0074】
アミノオキサゾールニトリル(12)を、ジブロモメタン中のブロモ-(トリメチル)シランなどのハロゲン供与性化合物の存在下でジアゾ化剤として第三級亜硝酸ブチルを使用する金属非含有Sandmeyer法によって、相応のブロモ化合物(13)へと変換する。該反応は通常、約0℃の温度で保護(例えば、窒素)雰囲気下で実施される。
【0075】
ブロモ化合物(13)を、Buchwald-Hartwigパラジウム触媒アミノ化法で置換アニリン(14)と反応させ、シアノ中間体(15)を得る。該反応によって、1,1’-フェロセンジイル-ビス(ジフェニル-ホスフィン)(dppf)または(5-ジフェニル-ホスファニル-9,9-ジメチル-キサンテン-4-イル)-ジフェニル-ホスファンなどの適切なホスフィンリガンド、および炭酸カリウムまたは炭酸セシウムなどの塩基の存在下で、ジオキサンなどの極性非プロトン性溶媒中のビス(ジベンジリデンアセトン)-パラジウム(0)(Pd(dba)2)などのパラジウム(0)触媒が使用される。該反応は通常、マイクロ波加熱を使用して、例えば、密閉したチューブ内で、高温(例えば、95~125℃)で実施される。
【0076】
該シアノ中間体(15)を弱酸性条件(例えば、約0℃の温度で硫酸を使用すること)の下で加水分解して、式(1)の化合物を得る。
【0077】
式(1)の化合物および鍵となる合成中間体、ならびに新規の合成中間体自体を生成するための方法は、本発明の別の態様を形成する。そのため、さらなる実施形態(実施形態3.1~3.5)では、本発明は以下を提供する。
3.1.式(15):
【化5】
の化合物の
、酸性条件(例えば、硫酸を使用すること)の下での加水分解を含む本明細書で定義される式(1)の化合物の調製のための方法であって、式中、R
1が
、本明細書で定義される通りである、方法。
3.2 パラジウム(0)触媒(Pd(dba)2など、ホスフィンリガンド(DPPFなど)、および塩基(炭酸カリウムなどの存在下での、式(13)の化合物と式(14):
【化6】
の化合物との反応を含む、本明細書で定義される式(15)の化合物の調製のための方法。
3.3 本明細書の式(15)の新規の合成中間体化合物。
3.4 R
1が水素である、実施形態3.3による新規の合成中間体。
3.5 R
1がフッ素である、実施形態3.3による新規の合成中間体。
【0078】
医薬製剤
活性化合物を単独で投与することは可能であるが、本発明の少なくとも1つの活性化合物を、担体、アジュバント、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定剤、防腐剤、潤滑剤、または当業者に周知の他の材料などの1つ以上の医薬として許容され得る賦形剤と、および場合により他の治療薬または予防薬と一緒に含む医薬組成物(例えば、製剤)として提示することが好ましい。
【0079】
本明細書で使用される「医薬として許容され得る」という用語は、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、またはその他の問題もしくは合併症なく、合理的な利益/リスク比にふさわしい、正常な医学的判断の範囲内である、対象(例えば、ヒト)の組織と接触させて使用するのに適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。各賦形剤はまた、該製剤の他の成分とも和合性があるという意味で「許容され得」なければならない。
【0080】
該医薬組成物は、経口、非経口、局所、鼻腔内、眼、耳、直腸、膣内、または経皮投与に適したいずれかの形態であってよい。該組成物が非経口投与が意図される場合、該組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下投与のために、または注射、注入または他の送達手段による標的器官または組織への直接的な送達のために製剤することができる。
【0081】
経口投与に適した医薬剤形には、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、ロゼンジ剤、シロップ剤、溶剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠剤、オブラート剤、またはパッチ剤および頬側パッチ剤が含まれる。
【0082】
式(1)、(2)および(3)の化合物、またはそれらの医薬として許容され得る塩を含有する医薬組成物は、公知の技術に従って製剤することができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA,USAを参照されたい。
【0083】
したがって、錠剤組成物は、糖または糖アルコールなどの不活性希釈剤または担体、例えば、乳糖、ショ糖、ソルビトールもしくはマンニトール、および/または炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの非糖由来希釈剤、またはセルロースもしくはメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのその誘導体、およびコーンスターチなどのデンプンと一緒に単位薬用量の活性化合物を含むことができる。錠剤はまた、ポリビニルピロリドンなどの結合剤および造粒剤、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性架橋ポリマー)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸塩)、防腐剤(例えば、パラベン)、酸化防止剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝剤またはクエン酸緩衝剤)、およびクエン酸塩/重炭酸塩混合物などの発泡剤などの標準的な成分を含有することもできる。このような賦形剤は周知であり、本明細書で詳細に論議する必要はない。
【0084】
カプセル製剤は、硬質ゼラチンまたは軟質ゼラチンの種類であってよく、固体、半固体、または液体の形態で有効構成要素を含有することができる。ゼラチンカプセル剤は、動物性ゼラチンまたはその合成のもしくは植物由来の同等物から形成することができる。
【0085】
固体剤形(例えば、錠剤、カプセル剤など)は、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよいが、通常、コーティング、例えば、保護フィルムコーティング(例えば、蝋またはワニス)または放出制御コーティングを有する。該コーティング(例えば、Eudragit(商標)タイプのポリマー)は、消化管内の所望の位置で有効構成要素を放出するように設計することができる。したがって、該コーティングは、消化管内である特定のpH条件下で分解するように選択することができ、それにより、胃の中でまたは回腸もしくは十二指腸の中で該化合物を選択的に放出することができる。
【0086】
コーティングの代わりに、またはコーティングに加えて、薬物は、消化管内のさまざまな酸性またはアルカリ性の条件下で該化合物を選択的に放出するように適合することができる放出制御剤、例えば、放出遅延剤を含む固体マトリックスにおいて提示することができる。あるいは、該マトリックス材料または放出遅延コーティングは、剤形が消化管を通過するにつれ実質的に継続的に侵食される侵食性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態をとることができる。さらなる代替として、活性化合物は、該化合物の放出の浸透圧制御を提供する送達システムで製剤することができる。浸透圧放出および他の遅延放出製剤または持続放出製剤は、当業者に周知の方法に従って調製することができる。
【0087】
局所使用のための組成物には、軟膏、クリーム剤、スプレー剤、パッチ剤、ゲル剤、液滴剤および挿入物(例えば、眼内挿入物)が含まれる。このような組成物は、公知の方法に従って製剤することができる。
【0088】
非経口投与用の組成物は通常、無菌の水性もしくは油性の溶液もしくは細かい懸濁液として提示されるか、または注射用の無菌水で即座に調製するために細かく分割された無菌粉末形態で提供することができる。
【0089】
非経口投与用の組成物は、分離した薬用量単位として投与向けに製剤することができるか、または注入による投与向けに製剤することができる。
【0090】
直腸投与または膣内投与向けの製剤の例としては、例えば、該活性化合物を含有する成形された成形可能物または蝋状材料から形成することができるペッサリーおよび坐剤が挙げられる。
【0091】
吸入による投与向けの組成物は、吸入可能な粉末組成物または液体もしく粉末のスプレーの形態をとることができ、粉末吸入器装置またはエアロゾル分配装置を使用して標準的な形態で投与することができる。このような装置は周知である。吸入による投与のために、粉状製剤は通常、ラクトースなどの不活性固体粉状希釈剤と一緒に活性化合物を含む。
【0092】
本発明の化合物は概して、単位剤形で提示され、このようなものとして通常、所望のレベルの生物学的活性を提供するのに十分な化合物を含有するであろう。例えば、経口投与を意図した製剤は、0.1ミリグラム~2グラム、より通常は10ミリグラム~1グラム、例えば、50ミリグラム~500ミリグラムの有効成分を含有することができる。
【0093】
活性化合物は、それを必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物の患者)に、所望の治療効果を達成するのに十分な量で投与されるであろう。
【0094】
処置の方法
実施形態1.1~1.9のいずれか1つで定義される式(1)、(2)および(3)の化合物は、炎症性疾患または炎症性容態、免疫学的疾患または免疫学的容態、アレルギー性疾患またはアレルギー性障害、移植片拒絶反応、および移植片対宿主病において有用であろうことが想定される。このような疾患状態および容態の例は、先に述べられている。
【0095】
該化合物は通常、治療上または予防上有用でありかつ概して無毒である量で投与されるであろう。しかしながら、ある特定の状況(例えば、生命を脅かす疾患の場合)では、式(1)、(2)、または(3)の化合物を投与する利点は、何らかの毒性効果または副作用の欠点を上回ることがあり、この場合、ある程度の毒性と関係する量で化合物を投与することが望ましいとみなされることがある。
【0096】
該化合物は、有益な治療効果を維持するために長期間にわたって投与されることができるか、または短期間でのみ投与されることができる。あるいは、該化合物は、拍動性のまたは持続的な様式で投与することができる。
【0097】
式(1)、(2)または(3)の化合物は概して、このような投与を必要とする対象、例えば、ヒトの患者に投与されるであろう。
【0098】
該化合物の通常の日用量は、1日あたり最大1000mgであってよく、例えば、体重1キログラムあたり0.01ミリグラム~10ミリグラム、より通常は、体重1キログラムあたり0.025ミリグラム~5ミリグラム、例えば、体重1キログラムあたり最大3ミリグラム、より通常は体重1キログラムあたり0.15ミリグラム~5ミリグラムの範囲であってよいが、必要な場合、より高用量またはより低用量を投与することができる。
【0099】
例として、12.5mgの初回開始用量を1日2~3回投与することができる。薬用量は、医師が決定するように個体にとって最大耐量および有効量に到達するまで、3~5日ごとに1日12.5mgずつ増加させることができる。最終的に、投与される化合物の量は、処置される疾患または生理学的容態の性質、および治療上の利点、および所与の薬用量投与計画によって生じる副作用の有無にふさわしいだろうし、医師の裁量によるであろう。
【0100】
式(1)、(2)および(3)の化合物は、唯一の治療薬として投与することができるか、または該化合物は、ステロイド、インターフェロン、アプレミラスト(乾癬用)もしくはメトトレキサート(関節リウマチ用)などの1つ以上の他の化合物との併用療法で投与することができる。
【0101】
診断方法
本発明の化合物の投与に先立って、患者をスクリーニングして、患者が罹患しているかまたは罹患している可能性のある疾患または容態が、TYK2に対して活性を有する化合物を用いた処置に対して感受性であるであろうものであるかどうかを決定することができる。
【0102】
そのため、さらなる実施形態(4.1~4.3)では、本発明は以下を提供する。
4.1 TYK2キナーゼに対する活性を有する化合物を用いた処置に感受性のあるであろう疾患または容態に罹患しているかまたは罹患している危険にあるものとしてスクリーニングおよび決定された患者における疾患状態または容態の処置または予防における使用のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つの化合物。
4.2 TYK2キナーゼに対する活性を有する化合物を用いた処置に感受性のあるであろう疾患または容態に罹患しているかまたは罹患している危険にあるものとしてスクリーニングおよび決定された患者における疾患状態または容態の処置または予防のための薬剤の製造のための、実施形態1.1~1.9のいずれか1つの化合物の、使用。
4.3 TYK2キナーゼによって介在される疾患状態または容態の診断および処置のための方法であって、(i)患者をスクリーニングして、該患者が罹患しているまたは罹患している可能性のある疾患または容態が、該キナーゼに対する活性を有する化合物を用いた処置に感受性があるであろうものかどうかを決定すること、および(ii)該患者がこのように感受性である疾患または容態が示された場合、その後、該患者に、有効TYK2阻害量の実施形態1.1~1.9のいずれか1つの化合物を投与することを含む、方法。
【0103】
対象(例えば、患者)は、TYK2が関係している疾患もしくは容態の存在を示すマーカー、または該疾患もしくは容態に対する感受性を示すマーカーを検出するための診断検査へ供することができる。例えば、対象は、自己免疫疾患または炎症性疾患を発症する感受性を示す遺伝子マーカーについてスクリーニングされることができる。
【0104】
遺伝子マーカーは、多発性硬化症などの自己免疫疾患(例えば、Ban et al.,European Journal of Human Genetics(2009),17,1309-1313を参照されたい)、またはクローン病などの炎症性腸疾患(Sato et al.,J.Clin.Immunol.(2009),29:815-825を参照されたい)に対する感受性を示す、TYK2遺伝子の特定の対立遺伝子または一塩基多型を含むことができる。遺伝子マーカーは、例えば、TYK2遺伝子における一塩基多型であってよいか、またはTYK2遺伝子における一塩基多型と別の遺伝子における一塩基多型とを含むハプロタイプであってよい。
【0105】
診断検査は通常、血液試料、生検試料、便生検、痰、染色体分析、胸水、腹水、または尿から選択された生物学的試料に対して実施される。
【0106】
一塩基多型などの遺伝子マーカーを特定する方法は周知である。このようなマーカーを特定するのに適した方法の例は、先のBan et al,およびSato et al.において説明されている。
【実施例】
【0107】
例
本発明は次に、以下の例において説明される具体的な実施形態に対する参照によって説明されるが、限定されない。
【0108】
略語
以下の例では、次の略語が使用される。
【表1】
【0109】
分析条件
NMRスペクトルを、Bruker 400MHz機で記録した。
【0110】
HPLC分離は、Phenomenex LUNA-C18(2)5μ粒径,2×50mmカラムを使用して実施した。
【0111】
例1
2-(2,6-ジクロロフェニル)-5-[4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)アニリノ]-オキサゾール-4-カルボキサミド
【化7】
【0112】
1A.5-アミノ-2-(2,6-ジクロロフェニル)-オキサゾール-4-カルボニトリルの調製
【化8】
2,6-ジクロロベンゾイルクロリド(10g、47.74mmol)を、NMP(50mL)中のアミノマロノニトリルp-トルエンスルホナート(13.3g、52.51mmol)の溶液に緩徐に添加した。この反応混合物を110℃で14時間加熱した後、水(100mL)でクエンチし、得られた固形物を濾過により回収した。この粗生成物を酢酸エチル(100mL)中に溶解し、水(40mL×2)を用いて洗浄し、有機層をNa
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を除去して、表題化合物(19g、粗製)を白色の固形物として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ:7.37-7.35(m,2H),7.29-7.26(m,1H),6.19(s,2H).
【0113】
1B.5-ブロモ-2-(2,6-ジクロロフェニル)-オキサゾール-4-カルボニトリルの調製
【化9】
CH
2Br
2(50mL)中の5-アミノ-4-シアノ-2-(2,6-ジクロロフェニル)-オキサゾール(9.0g、35.42mmol)の溶液に、ブロモ(トリメチル)シラン(13.56g、88.55mmol)を添加した。次に、tert-BuONO(36.53g、354.20mmol)を、保護N
2雰囲気下、0℃で非常に緩徐に添加し、この混合物を0℃で2.5時間撹拌した。次に、この反応混合物を減圧下で濃縮して、CH
2Br
2、水(H
2O 100mL)を添加し、得られた混合物をDCM(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残分を得、これをカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=50/1~10:1)によって精製した。表題化合物(8g、71.03%収率)を白色の固形物として得た。
【0114】
1C.4-(4-ニトロベンゾイル)-1,1-ジオキソ-1,4-チアジナンの調製
【化10】
DMF(50mL)中の4-ニトロ安息香酸(5g、29.92mmol)および1,4-チアジナン1,1-ジオキシドヒドロクロリド(5.1g、29.92mmol)の混合物に、HOBt(6.1g、44.88mmol)、EDCI(8.6g、44.88mmol)、Et
3N(6.1g、59.84mmol)を15℃、N
2下で一度に添加した。この混合物を15℃で14時間撹拌した。この反応混合物を飽和Na
2CO
3(300mL)で希釈し、EtOAc(150mL×3)で抽出した。合わせた有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物(6.5g、粗製)を白色の固形物として得た。
1H NMR(400 MHz,CDCl
3):δ:8.27(d,J=8.8 Hz,2H),7.55(d,J=8.8 Hz,2H),4.33-3.75(m,4H),3.22-2.75(m,4H).
【0115】
1D.4-(4-アミノベンゾイル)-1,1-ジオキソ-1,4-チアジナンの調製
【化11】
MeOH(100mL)中の4-(4-ニトロベンゾイル)-1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン(5.5g、19.35mmol)の溶液に、N
2下でPd/C(1.0g、19.35mmol)を添加した。この懸濁液を真空下で脱気し、H
2で数回パージした後、H
2(15psi)下、15℃で14時間撹拌した。この反応混合物を濾過し、この濾液を濃縮して、表題化合物(4.5g、91.45%収率)を白色の固形物として得た。
1H NMR(400MHz,(CDCl3):δ:7.36-7.26(m,2H),6.80-6.61(m,2H),4.26-4.08(m,4H),4.06-3.88(m,2H),3.21-2.95(m,4H)
【0116】
1E.2-(2,6-ジクロロフェニル)-5-[4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)アニリノ]オキサゾール-4-カルボニトリルの調製
【化12】
1,4-ジオキサン(13mL)を、反応チューブ内の5-ブロモ-4-シアノ-2-(2,6-ジクロロフェニル)-オキサゾール(500mg、1.57mmol)、4-(4-アミノベンゾイル)-1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン(399.25mg、1.57mmol)およびPd(dba)
2(90.28mg、157μmol)、DPPF(130.56mg、235.5μmol)、K
2CO
3(976.45mg、7.07mmol)の混合物に添加し、この反応チューブを密封し、マイクロ波加熱に120℃で4時間供した。得られた反応混合物を濾過し、真空下で濃縮し、水(30mL)を添加した後、DCM(50mL×3)で抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残分を得、これをカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=10/1~2/3)によって精製した。表題化合物(110mg、14.26%収率)を褐色の固形物として得た。
【0117】
1F.(2,6-ジクロロフェニル)-5-[4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)アニリノ]オキサゾール-4-カルボキサミドの調製
【化13】
0℃のH
2SO
4(1mL)中の2-(2,6-ジクロロフェニル)-5-[4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)アニリノ]オキサゾール-4-カルボニトリル(100mg、203.52umol)の混合物を、N
2雰囲気下で15℃で2時間撹拌した。この後のLCMS分析は、反応が完了したことを示したので、この反応混合物を0℃の氷でクエンチした後、濾過した。この濾液をEtOAc(30mL:10mL×3)で抽出し、合わせた有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して残分を得、これを分取HPLC(TFA条件)によって精製した。表題化合物、すなわち(2,6-ジクロロフェニル)-5-[4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)-アニリノ]オキサゾール-4-カルボキサミド(25mg、24%収率、99.61%純度)を黄色の固形物として得た。
1H NMR(400MHz,(CDCl
3):δ:9.05(s,1H),7.50-7.48(m,2H),7.46-7.44(m,3H),7.41-7.38(m,2H),6.50(s,1H),5.38(s,1H),4.12(s,4H),3.07(s,4H).
MS(ESI):C21 H18 Cl 2N4O5Sについて計算された質量508.0408.04、m/z実測値,509.0[M+H]+。
【0118】
例2
2-(2,6-ジクロロフェニル)-5-[2-フルオロ-4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)アニリノ]-オキサゾール-4-カルボキサミド
【化14】
【0119】
2A.4-(2-フルオロ-4-ニトロベンゾイル)-1,1-ジオキソ-1,4-チアジナンの調製
【化15】
DMF(50mL)中の2-フルオロ-4-ニトロ安息香酸(5g、27mmol)および1,4-チアジナン1,1-ジオキシド(5.1g、29.7mmol、HCl)の混合物に、HOBt(5.47g、40.5mmol)、EDCI(7.77g、40.5mmol)、およびEt
3N(5.47g、54mmol)を15℃、N
2下で一度に添加した。得られた混合物を15℃で14時間撹拌した後、TLC(石油エーテル:酢酸エチル=1:1、R
f=0.1)は、カルボン酸出発材料が完全に消費され、1つの新たなスポットが形成されたことを示し、これにより所望の生成物への完全な変換が生じたことを示した。次に、反応混合物を飽和Na
2CO
3(300mL)で希釈し、EtOAc(150mL×3)で抽出した。合わせた有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物(7g、粗製)を黄色の固形物として得た。
1H NMR:400 MHz CDCl
3:δ 8.17(d,J=8.0 Hz,1H),8.06(d,J=8.4 Hz,1H),7.67-7.63(m,1H),4.32(s,2H),3.82(s,2H),3.21(s,2H),3.11(s,2H).
【0120】
2B.4-(2-フルオロ-4-アミノベンゾイル)-1,1-ジオキソ-1,4-チアジナンの調製
【化16】
MeOH(100mL)中の4-(2-フルオロ-4-ニトロベンゾイル)-1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン(7g、23.2mmol)の溶液に、Pd/C(3g、10%純度)を添加した。この懸濁液を真空下で脱気し、H
2で数回パージした。次に、この混合物をH
2(15psi)下、15℃で12時間撹拌し、その後、TLC(石油エーテル/酢酸エチル=1/1、R
f=0.3)は、ニトロフェニル出発化合物が完全に消費され、1つの新たな生成物スポットが形成されたことを示した。この反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物(5g、粗製)を黄色の固形物として得た。
1H NMR:400 MHz CDCl
3:δ 7.16-7.12(m,1H),6.43-6.41(m,1H),6.31-6.27(m,1H),4.35(s,2H),4.11-3.86(m,4H),3.10(s,4H)
【0121】
2C.2-(2,6-ジクロロフェニル)-5-[2-フルオロ-4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)アニリノ]オキサゾール-4-カルボニトリルの調製
【化17】
1,4-ジオキサン(40mL)中の5-ブロモ-2-(2,6-ジクロロフェニル)-オキサゾール-4-カルボニトリル(2g、6.29mmol)(例1A)の溶液に、4-(2-フルオロ-4-アミノベンゾイル)-1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン(1.88g、6.92mmol)、Cs
2CO
3(4.10g、12.6mmol)、および(5-ジフェニル-ホスファニル-9,9-ジメチル-キサンテン-4-イル)-ジフェニル-ホスファン(364mg、629μmol)を添加した。この懸濁液を真空下で脱気し、N
2で数回パージした。次に、(1E,4E)-1,5-ジフェニルペンタ-1,4-ジエン-3-オン:パラジウム(288mg、315μmol)を添加し、N
2で数回パージした。この反応混合物を100℃まで加熱し、12時間撹拌した後、TLC(石油エーテル/酢酸エチル=1/1、R
f=0.9)は、ブロモ-シアノ-オキサゾールが完全に消費され、1つの新たな生成物が形成されたことを示し、それにより、該反応が所望の生成物への完全な変換をもたらしたことを示した。この反応混合物を濾過し、過ケークをEtOAc(300mL)で洗浄した。次に、この濾液を濃縮して粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=20/1~0:1)によって精製して、表題化合物(1.1g、2.16mmol、34.3%収率)を黄色の固形物として得た。
【0122】
2D.(2,6-ジクロロフェニル)-5-[2-フルオロ-4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)アニリノ]オキサゾール-4-カルボキサミドの調製
【化18】
H
2SO
4(2mL)中の2-(2,6-ジクロロフェニル)-5-[2-フルオロ-4-(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-カルボニル)アニリノ]オキサゾール-4-カルボニトリルの混合物(0.2g、393μmol)を脱気し、N
2で3回パージし、次いで、この混合物をN
2雰囲気下で20℃で1時間撹拌した後、HPLCおよびLCMS分析は出発材料が完全に消費されたことを示した。この残分を氷H
2O 50mLへと注ぎ、EtOAc 60mL(20mL×3)で抽出した。合わせた有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して残分を得、これを分取HPLC(カラム:Phenomenex luna C
18 250×50mm 10μm:移動相:[水(0.1%TFA-ACN]、B%:20%~50%、20分)によって精製して、粗生成物を得た。この粗生成物をNaHCO
3(水溶液)で処理し、DCM(20mL)で抽出し、乾燥させおよび濃縮し、次いでMeCN/水中に溶解して凍結乾燥させて、表題化合物(60.3mg、113umol、28.8%収率、98.9%純度)を黄色の固形物として得た。
1H NMR:400 MHz CDCl
3:δ 9.11(s,1H),7.51-7.42(m,4H),7.18-7.14(m,1H),7.14-7.12(m,1H),6.54(s,1H),5.45(s,1H),4.27(s,2H),3.87(s,2H),3.17-3.06(m,4H).
【0123】
例3
生物活性
(i)TYK2およびJAKキナーゼ阻害アッセイ
本発明の化合物を、TYK2キナーゼおよび他のJAKキナーゼを阻害する能力についてアッセイした。該化合物の活性を、化合物A(2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-5-[4-(モルホリン-4-カルボニル)-フェニルアミノ]-オキサゾール-4-カルボン酸および化合物B(2-(2,6-ジクロロ-フェニル)-5-[4-(モルホリン-4-カルボニル)-フェニルアミノ]-オキサゾール-4-カルボン酸アミド)の活性と比較した。
【化19】
これらは、国際公開第2015/032423号および国際公開第2018/073438号の各々においてそれぞれ例25および例29の化合物である。
【0124】
該アッセイにおいて使用される基質およびキナーゼは、後の表2において同定されている。
【0125】
キナーゼアッセイを、米国ペンシルベニア州モルバーン地区のReaction Biology Corp.で、以下に示す一般的な手順を使用して実施した。本アッセイでは、ATP濃度は100μMで、最高の化合物濃度は10μMとした。
【0126】
国際公開第2015/032423号の61ページにある表7におけるTYK2およびJAKキナーゼのデータは、ATP濃度が10μMであるアッセイを使用して生じたのに対し、先に示したように、以下のプロトコルにおいて説明されているアッセイは、100μMのATP濃度を使用した。
【0127】
アッセイ:
1)新たに調製した塩基反応緩衝液(20mM Hepes pH7.5、10mM MgCl
2、1mM EGTA、0.02% Brij35、0.02mg/ml BSA、0.1mM Na
3VO
4、2mM DTT、1%DMSO)中で、指定の基質を調製する。
2)補因子(1.5mM CaCl
2、16ug/mLカルモジュリン、2mM MnCl
2)を先の基質溶液に供給する
3)指定のキナーゼをこの基質溶液へと供給し、穏やかに混合する
4)DMSO中のさまざまな濃度の検査化合物をこのキナーゼ反応混合物へと供給する
5)
33P-ATP(比放射能0.01μCi/μL最終)をこの反応混合物へと供給して、反応を開始する
6)キナーゼ反応物を室温で120分間インキュベートする
7)反応物をP81イオン交換濾紙(Whatman #3698-915)上へと斑点状にする。
8)未結合のリン酸塩を、0.75%リン酸中で濾紙を入念に洗浄することによって除去する。
9)
33Pシグナルを、Typhoon phosphorimagers(GE Healthcare)を用いて測定した。不活性酵素を含有する対照反応物に由来する背景を減算した後、Prism(Graphpad software)の非線形回帰関数を使用してIC
50値を求めた。
【表2】
【0128】
基質:
AXLチド=[KKSRGDYMTMQIG]
JAK3チド=[Ac-GEEEEYFELVKKKK-NH2]
pEY=ポリGlu-Tyr[Glu:Tyr(4:1)、分子量=5,000~20,000]
【0129】
結果を以下の表3に示す。
【表3】
検査したすべての化合物が良好なTYK2阻害活性を有することが示されたが、本データは、本発明の化合物(化合物(2)および化合物(3))がTYK2に関して先行技術の化合物Aおよび化合物Bよりも(特にJAK2およびJAK3よりもTYK2に対して)より強力でありかつより選択的であることを示している。
【0130】
(ii)シトクロムP450阻害アッセイ
潜在的な薬物間相互作用に対する化合物(2)および化合物(3)の感受性を、さまざまなシトクロムP450アイソフォームを阻害する能力をアッセイすることによって検査した。先行技術の化合物B(先の例3を参照されたい)もまた、比較例として検査した。
【0131】
DMSO中で調製および段階希釈した検査化合物を、各アイソフォームのためのプローブ基質の存在下で、プールしたヒト肝ミクロソームとともに6つの濃度(1%DMSO最終)でインキュベートし、プローブ基質の代謝に及ぼす影響を測定した。インキュベーション(96ウェルプレート内)を、37℃で0.1Mトリス緩衝液(pH7.4)中で行い、補因子NADPH(1mM終濃度)の添加によって反応を開始した。
【0132】
指定された時間に、分析内部標準を含有するアセトニトリルで反応を終止させ、試料を遠心分離し、質量分析(LC-MS/MS)によって上清画分をプローブ基質代謝産物について分析した。機器の応答を内部標準に対して正規化し、適切な溶媒対照と比較して、これらの「阻害されていない」対照と比較してプローブ基質から形成された代謝産物の量を決定した。
【0133】
結果を阻害率として報告し、IC50値(プローブ代謝産物形成の50%低減をもたらす濃度)を、非線形シグモイド用量応答方程式(BioBook)を使用して計算した。
%阻害=最低値+(最高値-最低値)/(1+10^((LogIC50-X)×HillSlope))
式中、X=対数濃度。
【0134】
試験したCYP450アイソフォームおよび該アイソフォームのそれぞれのプローブ基質を表4に示す。
【表4】
【0135】
アッセイ結果を表5に示す。
【表5】
検査したすべての化合物は良好なCYP阻害特性を示すが、本データは、本発明の化合物(化合物(2)および化合物(3))が、比較化合物Bよりも、特にCYP2C8およびCYP2D6に関して良好なCYP阻害特性を有する(すなわち、検査したCYPアイソフォームをより低い程度まで阻害する)ことを示している。
【0136】
(iii)hERGチャネル阻害アッセイ
化合物がhERGカリウムチャネルを阻害する能力は、Sophion Qube自動電気生理学プラットフォームで、hERG-HEKを安定してトランスフェクトした細胞株を使用して決定した。本アッセイを室温で実施し、個々の細胞からのhERGテール電流の記録を単一ホールQChipを使用して行った。
【0137】
hERGチャネルを阻害する検査化合物の効力(IC50)を、濃度ごとに最大4つの複製物を用いて8つの検査化合物濃度から生成された濃度応答曲線から決定した。
【0138】
外部緩衝液を検査化合物と完全に交換することを確保するために、化合物濃縮物を検査ウェルに2回添加した。合計で、化合物を該ウェルに7分超適用した。
【0139】
結果を以下の表6に示す。
【表6】
検査した3つの化合物はすべて、比較的低いhERG活性を示すが、この結果は、本発明の化合物(化合物(2)および化合物(3))が先行技術の比較化合物Bと比較してさらに低いhERGリスクを有することを実証している。
【0140】
(iv)肝細胞安定性アッセイ
本発明の化合物(2)および化合物(3)ならびに先行技術の比較化合物Bを、マウス(雄CD-1)、ラット(雄Sprague-Dawley)、イヌ(雄Beagle)およびヒト(性別混合)からプールされた肝細胞を使用して実施した肝細胞安定性アッセイにおいて検査した。検査化合物および対照化合物を37℃で肝細胞とともにインキュベートした。1時間にわたって6つの時点で一定分量を取り出した。試料を遠心分離し、上清画分を親化合物について質量分析(LC-MS/MS)によって分析した。
【0141】
残存している化合物の量(%として表される)を、T=0の試料におけるMS応答と比較した各試料のMS応答から決定し、化合物の半減期および固有クリアランスを決定するために使用した。
【0142】
結果を以下の表7に示す。
【表7】
比較化合物Bは、ヒトにおいて良好な半減期(2時間超)を呈するが、表7のデータは、本発明の化合物(2)および化合物(3)が、先行技術の比較化合物Bと比較した4つの肝細胞安定性アッセイすべてにおいて有意に低減したクリアランス速度を有すること、およびその結果、本発明の化合物の半減期(T
1/2)が、4つのアッセイすべてにおいて比較化合物Bの半減期よりもさらに長いことを示している。
【0143】
(v)pSTAT3阻害
本発明の化合物(2)および化合物(3)ならびに先行技術の比較化合物Aおよび比較化合物Bを、血清飢餓状態にしたHT29細胞におけるIL-22刺激に応答したpSTAT3阻害について検査した。
【0144】
HT29細胞を一晩血清飢餓状態にした後、4つの検査化合物を希釈して、最高濃度が10μMである9点片対数用量希釈液およびビヒクル対照を生成した。HT29細胞を検査化合物とともに37℃で20分間インキュベートした。HT29細胞を10ng/mlのヒトIL-22とともにさらに15分間インキュベートした後、細胞を4%PFAで10分間、および90%メタノールで30分間固定した後、ホスホ-STAT3Y705抗体(CST#9145)で標識した。細胞を0.5%BSA/PBS溶液を用いて3回すすいだ後、Alexa-488抗ウサギ二次抗体とともにインキュベートした。
【0145】
単一細胞におけるホスホ-STAT3の平均蛍光強度を、Intellicyt iQue機およびFlowJoソフトウェアを使用したフローサイトメトリーによって分析した。IC50を、背景シグナルの除去およびDMSO対照への正規化の後で4パラメータ解析を使用して決定した。
【0146】
結果を以下の表8に示す。
【表8】
比較化合物Bおよび化合物(2)のいずれもが、pSTAT3阻害に対する100nM未満のIC
50値を有することが示されたが、化合物(2)についてのIC
50値は、比較化合物Bよりも有意に低かった。
【0147】
(vi)ヒト初代CD4CD45RO+細胞アッセイ
化合物(2)および化合物(3)ならびに比較化合物BによるIL-17F産生およびSTAT3リン酸化の阻害を、ヒト末梢血CD4CD45RO+細胞に由来するTh17細胞において測定した。
【0148】
新鮮なヒト末梢血CD4CD45RO+細胞を商業的に購入し(Generon,UK)、実験的複製物のために3人の異なるボランティアから3つの別個のバイアルとした。細胞を、10ng/mlの組換えヒトIL-1B(R&D Systems)、IL-23(R&D Systems)、TGF-B1(R&D Systems)、および50ng/mlのIL-6(R&D Systems)を抗CD3/CD28磁気Dynabead(Thermo Fisher)と一緒に含有するT細胞培地(Thermo Fisher)中で成長させた。これらを11日間成長させて、Th17細胞の増殖を誘導した。アッセイ向けに播種するのに先立って、細胞をヒト血清(1%)を一晩補充したT細胞培地中で一晩成長させた。アッセイの4時間前に、培地を除去し、補充されていないRPMIと置き換えた。
【0149】
IL-17Fレベルを測定するために、200,000個の細胞を96ウェルプレート内へと播種し、化合物とともに30分間プレインキュベートした後、6.25ng/mlの組換えIL-23および0.1ng/mlの組換えヒトIL-1Bを用いて48時間刺激した。上清を除去し、市販のELISAキット(Thermo Fisher、BMS2037-2)を使用してIL-17Fレベルを測定した。
【0150】
pSTAT3レベルを測定するために、200,000個の細胞を96ウェルプレート内へと播種し、化合物とともに30分間プレインキュベートした後、12.5ng/mlの組換えIL-23を用いて15分間刺激した後、細胞溶解緩衝液を用いて溶解した。溶解物中のpSTAT3レベルを、市販のELISAキット(Thermo Fisher、85-86102-11)を用いて測定した。
【0151】
ELISAを、製造元の説明書により実施し、マイクロプレートリーダー(Thermo Fisher、Varioskan)を使用して吸光度を読み取った。データを、式:
対照の%=((刺激した試料の濃度-未刺激の試料の濃度)×100)/(刺激した対照の濃度-未刺激の対照の濃度)
を用いて未処理の試料における応答に対して正規化した。
【0152】
Graphpad Prism 8.1.0を使用して、非線形4パラメータロジスティック回帰モデル(4PL)を使用してIC50値を計算した。
【0153】
結果を以下の表9Aおよび表9Bに示す。
【表9A】
【表9B】
検査した化合物はすべて、IL17-F産生およびSTAT3リン酸化の阻害を示したが、いずれのアッセイにおいても、化合物(2)は比較化合物Bおよび化合物(3)よりも活性が高いことが示された。
【0154】
比較データ-結論
先のアッセイ(i)~(vi)から得られたデータは、本発明の化合物が、国際公開第2015/032423号において構造上最も類似した化合物(化合物B)よりも有意な利点を有することを示している。
【0155】
したがって、化合物(2)および化合物(3)はいずれも、TYK2キナーゼ阻害アッセイにおいて化合物Bよりも活性が高く、いずれも、化合物BよりもJAK1、JAK2およびJAK3キナーゼよりもTYK2に対して高い選択性を有する。
【0156】
化合物(2)および化合物(3)は、シトクロムP450アッセイ、特にCYP2C8アッセイおよびCYP2C9アッセイにおいて、先行技術の比較化合物Bと比較してわずかに有利な特性を有する。
【0157】
化合物(2)および化合物(3)は、先行技術の比較化合物Bと比較して、hERGリスクが低減されている。
【0158】
肝細胞安定性アッセイにおいて、化合物(2)および化合物(3)は、クリアランス速度の低減、およびその結果として、比較化合物Bよりも長い半減期を示した。
【0159】
加えて、化合物(2)は、比較化合物Bと比較して、IL-22で刺激されたHT29細胞およびTh17細胞におけるSTAT3のリン酸化を阻害する上でより強力である。
【0160】
最後に、化合物(2)は、比較化合物Bと比較して、Th17細胞におけるIL-17F産生のより大きな阻害を示している。
【0161】
まとめると、本データは、化合物(2)および化合物(3)が非常に強力かつ選択的なTYK2キナーゼ阻害剤であり、優れた薬物動態特性を有することを示している。
【0162】
例4
医薬製剤
(i)錠剤製剤
式(2)もしくは式(3)の化合物またはその医薬として許容され得る塩を含有する錠剤組成物は、公知の様式で錠剤を形成するために、50mgの化合物を、希釈剤としての197mgのラクトース(BP)および潤滑剤としての3mgのステアリン酸マグネシウムと混合し、圧縮することによって調製される。
【0163】
(ii)カプセル製剤
カプセル製剤は、100mgの式(2)もしくは式(3)の化合物またはその医薬として許容され得る塩を100mgのラクトースと混合し、得られた混合物を標準的な不透明硬質ゼラチンカプセル内へと充填することによって調製される。
【0164】
(iii)皮下注射製剤
皮下投与向けの組成物は、式(2)または式(3)の化合物を医薬等級のトウモロコシ油と混合して5mg/mLの濃度にすることによって調製される。該組成物は滅菌され、適切な容器内へと充填される。
【0165】
同等物
上述の例は、本発明を説明する目的のために提示されており、本発明の範囲にいかなる制限も課すものとして解釈されないものとする。本発明の根底にある原理から逸脱することなく、先に説明されおよび例に示されている本発明の具体的な実施形態に対して多数の修正および変更を行うことができることは容易に明らかであろう。このような修正および変更はすべて、本出願によって包含されることが意図されている。