(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ハンドヘルド・ジャッキングツールのための降下機構
(51)【国際特許分類】
B66F 1/02 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
B66F1/02 J
(21)【出願番号】P 2021560037
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 NO2020050100
(87)【国際公開番号】W WO2020209731
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】520298846
【氏名又は名称】バイキング エーアールエム エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ、オイビンド
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第2820608(US,A)
【文献】実公昭37-550(JP,Y1)
【文献】実開平2-105993(JP,U)
【文献】特開2009-270398(JP,A)
【文献】実開昭56-55451(JP,U)
【文献】米国特許第5622355(US,A)
【文献】特開平7-23172(JP,A)
【文献】特開昭61-50397(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第2002246(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 1/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドヘルド・ジャッキングツールのための降下機構(12)であって、前記ハンドヘルド・ジャッキングツールが、ジャッキング・フレーム(11)と、ジャッキング・シャフト(3)と、コーキングガン型ジャッキング機構とを有し、前記コーキングガン型ジャッキング機構が、開状態の方に付勢された少なくとも1つのジャッキング・プレート(1)と、前記ジャッキング・プレート(1)の上方の、握持状態の方に付勢された少なくとも1つの保持プレート(2)とを有し
、
前記保持プレート(2)の上にあり、非作動時に前記保持プレート(2)と平行である降下プレート(4)と、
前記降下プレート(4)を前記保持プレートの方に付勢するばね(9)と
を有する降下機構(12)において、
親指で動作可能なプッシュ・レバー(5)と、
前記保持プレートの延長部分である解放レバーと、
操作ハンドル(7)の方の後方端部のところで、前記プッシュ・レバー(5)を前記降下プレート(4)に接続するヒンジ取付具(6)と、
前記ヒンジ取付具(6)から後方の所定の距離のところで前記プッシュ・レバー(5)又は保持プレート(2)に接続される枢動構造部(8)と
、
前記降下プレート(4)は、前記プッシュ・レバー(5)が下方に押されて前記枢動構造部(8)を中心として枢動したとき、上方に持ち上げられて前記ジャッキング・シャフト(3)を握持し、次いで前記保持プレート(2)を下方に押し、それにより前記保持プレート(2)を前記ジャッキング・シャフト(3)から緩め、そして前記降下プレートが前記ジャッキング・シャフトを握持したまま、前記保持プレート(2)が前記ジャッキング・シャフトに対して前記保持プレート(2)を停止させる角度に到達するまで所定の距離だけ、前記ジャッキング・シャフトに沿って前記フレームを下方に移動させること
と
を特徴とする降下機構(12)。
【請求項2】
前記プッシュ・レバー(5)と、前
記解放レバー(10)との前記後方端部が、操作者の親指により容易に動作するように互いの隣に配置される、請求項1に記載の降下機構。
【請求項3】
前記枢動構造部(8)が、前記フレームの下方の移動の距離を調節するために、後方-前方の方向及び/又は上下方向において移動可能である、請求項1に記載の降下機構。
【請求項4】
前記ばね(9)がM形のばねプレートであり、前記M形のばねプレートが、前記ジャッキング・シャフトのための孔と、前記保持プレートに前記ばねを保持するための、前記ジャッキング・シャフトの各側においてM形のそれぞれの脚部にある保持構造部(13)とを有する、請求項1に記載の降下機構。
【請求項5】
前記ばね(9)が、半体Mとして成形されたばねプレートであり、前記ばねプレートが、前記保持プレートに前記ばねを保持するための、半体Mの脚部にある保持構造部(13)を有する、請求項1に記載の降下機構。
【請求項6】
前記保持構造部(13)が孔であり、前記保持プレート(2)が、前記孔を貫通して嵌め込まれる、請求項4又は5に記載の降下機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンドヘルド・ジャッキング機構に関し、より詳細には、コーキングガン型ジャッキング機構を用いて物体をジャッキング及びレベリングするためのハンドヘルド・ツール用の降下機構に関する。
【背景技術】
【0002】
コーキングガンは工具産業でよく知られており、数十年にわたって市場に出ている。コーキングガンは例えば米国特許第4009804号で説明される圧送又はジャッキング機構を含む。この機構は安価であり、生産するのが容易であり、動作下で最小の摩擦を有する。
【0003】
本発明者は、コーキングガン型ジャッキング機構を用いて物体をジャッキング及びレベリングするためのハンドヘルド・ツールを考案した。コーキングガン型ジャッキング機構は、一方向のジャッキング機構である。このジャッキング機構によって、フレームをジャッキング・シャフトに沿って上方にジャッキングすることが可能である。フレームは、解放されると、ジャッキング・シャフトに沿って制御不能に落下する。本発明は、コーキングガン型ジャッキング機構でのジャッキング・シャフトに沿ったフレームの下方移動を、調整可能な段階的手法で制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ジャッキング・フレームと、ジャッキング・シャフトと、開状態の方に付勢される少なくとも1つのジャッキング・プレート及びジャッキング・プレートの上方で握持状態の方に付勢される少なくとも1つの保持プレートを有するコーキングガン型ジャッキング機構と、を有するハンドヘルド・ジャッキングツールのための降下機構を説明する。降下機構が、非作動時に保持プレートと平行となる、保持プレートの上にある降下プレートを有する。降下機構が、プッシュ・レバーと、操作ハンドルの方の後方端部のところでプッシュ・レバーを降下プレートに接続するヒンジ取付具と、ヒンジ取付具から後方の一定の距離のところでプッシュ・レバー又は保持プレートに接続される枢動構造部と、をさらに有する。降下機構が、降下プレートを保持プレートの方に付勢するばねをさらに有する。プッシュ・レバーが下方に押されて枢動構造部を中心として枢動するとき、降下プレートが上方に持ち上げられてジャッキング・シャフトを握持し、次いで、保持プレートを下方に押して保持プレートをジャッキング・シャフトから緩め、次いで、降下プレートによりジャッキング・シャフトを継続して握持させた状態でジャッキング・シャフトに接触させて保持プレートを停止させる角度に保持プレートを到達させるまでの距離でジャッキング・シャフトに沿わせてフレームを下方に移動させる。
【0006】
本出願の理解を向上させるために以下の図面が提供される。多様な図面の同様の参照符号が同じ特徴を表す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ハンドヘルド・ツールの全体を示す図である。
【
図2】降下機構を有するツールのフレームを示す図である。
【
図3】保持プレートの上にある降下機構の実施例を示す斜視図である。
【
図4】保持プレートの上にある降下機構の実施例を示す斜視図である。
【
図5】M形のばねを有する降下機構の実施例を示す側断面図である。
【
図6】半体M(half M)のような形状のばねを有する降下機構の実施例を示す側断面図である。
【
図8】M形のばねを有する降下機構を示す図である。
【
図9a】3つの保持プレートを示す斜視図及び側面図である。
【
図9b】3つの保持プレートを示す斜視図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上下方向が
図1で見られるような方向であり、後方が使用者の方を向く方向である形で、本発明を説明する。後方は
図1で見ることができるように操作ハンドル7の側であり、前方が反対側であり、つまり脚部が向いている方向である。
【0009】
本発明は、ジャッキング・フレーム11と、ジャッキング・シャフト3と、コーキングガン型ジャッキング機構と、を有するハンドヘルド・ジャッキングツール20のための降下機構12を説明する。ジャッキング機構が、通常、
図1及び2で見ることができるように、開状態の方に付勢されるジャッキング・プレート1及びジャッキング・プレート1の上方でロック状態の方に付勢される保持プレート2を有する。プレートがジャッキング・シャフト3に沿って移動可能であり、ジャッキング・シャフト3を握持することができる。例えば
図9a及びbで見ることができるように2つ又は3つの平行なプレートである、2つ以上のプレートを有することが有利である可能性がある。これによりジャッキング・シャフト及びプレートの摩耗が低減され、機能の寿命が延び、それによりさらに、複数の接触領域で接触することを理由としてより良好な握持が実現される。この効果を得るために孔が等しいサイズを有さなければならない。
【0010】
コーキングガン型ジャッキング機構内でジャッキング・シャフトに沿って移動するプレート1、2が、ジャッキング・シャフトの断面よりわずかに大きい孔を有する。プレートがジャッキング・シャフトに対して直角である場合、プレートがジャッキング・シャフトに沿って自由に移動することができる。プレートがジャッキング・シャフトに対して異なる角度である場合、プレートがジャッキング・シャフトを握持してジャッキング・シャフトにロックされる。これがコーキングガン型ジャッキング機構の主要な原理である。本記述ではこの2つの状態を開状態(直角)及び握持状態(非直角)と呼ぶ。本記述で異なるプレート1、2、4を説明するとき、
図9aに示されるように、ジャッキング・シャフトを嵌め込むのに適する孔が提供されていることを自動で想定することになる。
【0011】
本発明による降下機構が、非作動時の保持プレートと同じ握持状態である、保持プレート2の上にある降下プレート4を有する。これは、降下プレートが保持プレートと平行である状態に対応する。この場合、降下機構が
図7aで見ることができる位置にくる。
【0012】
降下プレートが、操作ハンドル7の方の後方端部のところでヒンジ取付具6により降下プレートに接続されるプッシュ・レバー5によって作動され、ここでは、プッシュ・レバーが、ヒンジ取付具から後方の一定の距離のところでプッシュ・レバー又は保持プレートに接続される枢動構造部8を中心として枢動し、それにより、レバーが下方に押される場合には降下プレート4がジャッキング・シャフト3を握持することになる。降下プレートがジャッキング・シャフトを握持するとき、操作者によりレバー5がさらに押されることで、保持プレートが下方に押されて
図7bで見ることができるように保持プレートがジャッキング・シャフトから緩められる。これにより、降下プレートによりジャッキング・シャフトを継続して握持させた状態でジャッキング・シャフト3に接触させて保持プレートを停止させる角度に保持プレートを到達させるまでの距離でジャッキング・シャフトに沿わせてフレームを下方に移動させることが可能となる。これにより降下プレートと保持プレートの間に一定の距離が残される。ジャッキング・シャフトのための降下プレート及び保持プレートの中の孔が等しいサイズを有する場合、これらの2つのプレートが
図7cで見ることができるようにやはり概して平行になる。フレームがレバーの枢動動作によって決定される距離でジャッキング・シャフトに沿って下方に移動すると、降下プレート4がフレームをさらに下方に移動させるのを停止する。フレームの移動距離は、
図7cで見ることができる平行な降下プレートと保持プレートとの間の距離とほぼ同等である。これは、プッシュ・レバー5により降下プレートがジャッキング・シャフトを握持することになる位置からのヒンジ取付具6と枢動構造部8との間のアームの角運動の垂直成分に一致する。プッシュ・レバー5が解放されると、ばね9が降下プレートを保持プレートの方に下方に押し込み、降下機構が
図7aに見られる位置に戻る。
【0013】
レバー5の枢動動作が、
図5で見ることができる降下プレートの前方端部のところの第1の枢動点P1と、ヒンジ取付具6、H1と、枢動構造部8に付随の第2の枢動点P2と、最後に、レバーに加えられる力及びレバー・アームの長さと、によって決定される。これが
図5に示される、P1、P2、H1、及びF1の位置的分布は計算することが困難であり、試験及び試行することが必要である。距離H1-P2が距離P1-H1及びP2-F1を基準として「大きい」場合、従来のバージョンと同様に機構が単純にフレームを解放する。距離H1-P2が距離P1-H1及びP2-F1を基準として過度に「小さい」場合、機構12が作動されない。しかし、アームの長さ及び枢動点の位置は、降下プレート4によりジャッキング・シャフト3を握持するためにプッシュ・レバー5に使用される作動力を、保持プレート2を解放するのに必要となる力より小さくするような、長さ及び位置でなければならない。また、この作動力は、降下プレートを押し下げるばね9の力に対抗しなければならない。したがって、枢動点8の後方のプッシュ・レバーの長さが枢動点8とヒンジ取付具6との間の距離より大きくなければならず、好適にはこの距離の2倍より大きい。
【0014】
降下プレートが、降下プレートの少なくとも前方側を保持プレートの方に付勢するばね9により、定位置で保持される。ばねの2つの実施例が
図5及び6に示される。一方がM形のばねプレートであり、もう一方が半体Mとして成形されるばねプレートである。有利には、ばねが
図8に示されるように保持構造部13により定位置で保持され、
図3及び4に、また特には
図8に示されるように、保持プレートが保持構造部13を貫通する形で嵌め込まれ、それにより保持プレートに対してばねが保持される。一実施例では、ばねが、ジャッキング・シャフトの各側においてM形のそれぞれの脚部にある、ジャッキング・シャフトのための孔及び保持プレートのための孔を有するM形のばねプレート9である。
【0015】
降下機構がばね9の強さ及び位置の影響をあまり受けない。ばね9の主要な目的は、降下プレートを保持プレートの方に下方へ押し戻すことである。しかし、力の中心をヒンジ取付具6に過度に近づけるのを回避することが非常に有益であることが分かっている。好適には、図で見ることができるように、力の中心が降下プレートの中心の前方に配置される。
【0016】
降下機構が、ジャッキング・シャフトの前方側及び後方側と、保持プレート2及び降下プレート4の中の孔との間の隙間の影響を受ける。この距離は1ミリメートル未満であるべきである。好適には、この距離は0.02mmと0.3mmとの間である。より大きいシャフトがより大きい隙間を可能にする。隙間が過度に大きい場合、保持プレートの握持力が弱くなり、隙間が過度に小さい場合、動かなくなりやすくなる。
【0017】
一実施例では、プッシュ・レバーの後方端部、及び保持プレート2の延長部分である解放レバー10が、
図3、4で見ることができるように、操作者の親指により容易に動作するように互いの隣に配置される。
【0018】
一実施例では、枢動構造部8が、下方の移動の距離を調節するために、並びに/或はジャッキング・シャフト及び/又は保持プレートの摩損を補償するために、後方-前方の方向及び/又は上下方向において移動可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 ジャッキング・プレート
2 保持プレート
3 ジャッキング・シャフト
4 降下プレート
5 プッシュ・レバー
6 ヒンジ取付具
7 操作ハンドル
8 枢動構造部
9 ばね
10 解放レバー
11 ジャッキング・フレーム
12 降下機構
13 保持構造部
20 ハンドヘルド・ジャッキングツール