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特許7383084グルコシノレート含有飲食品、グルコシノレート含有飲食品の製造方法、グルコシノレート含有飲食品の経時変化によるグルコシノレート量の減少を抑制する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】グルコシノレート含有飲食品、グルコシノレート含有飲食品の製造方法、グルコシノレート含有飲食品の経時変化によるグルコシノレート量の減少を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20231110BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20231110BHJP
   A23L 2/02 20060101ALN20231110BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/02 F
A23L2/02 E
A23L2/52 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022100925
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2018207924の分割
【原出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2022118206
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪野 美紗
(72)【発明者】
【氏名】彈塚 康平
(72)【発明者】
【氏名】牛田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】東浦 拓磨
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178805(JP,A)
【文献】特開2017-217006(JP,A)
【文献】国際公開第2012/149941(WO,A1)
【文献】アスコルビン酸存在下における野菜ジュース中スルフォラファングルコシノレートの安定性について,日本食品科学工学会第58回大会講演集,2011年,p.52, 2Ba10
【文献】香川芳子,七訂食品成分表2016,初版第1刷,2016年,pp.68-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A61K,A61P
Google Scholar
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコシノレート含有飲料(ただし、鉄イオンモル濃度が、0.2mg/100g以下であるものを除く。)であって、当該飲料の還元剤モル濃度[A]は、325μM以下であり、当該飲料の鉄イオンモル濃度[C]は、200μM以下であり、当該飲料のグルコシノレートモル濃度[B]は、457μM以上であり、前記鉄イオンモル濃度とは、II価、又はIII価にイオン化された鉄イオン合計のモル濃度である。
【請求項2】
請求項1の飲料であって、当該飲料の製造時におけるグルコシノレートモル濃度に対する、製造後29日経過後におけるグルコシノレートモル濃度の残存率が、80%以上である。
【請求項3】
請求項1又は2の飲料であって、当該飲料の製造時におけるグルコシノレートモル濃度に対する、製造後42日経過後におけるグルコシノレートモル濃度の残存率が、80%以上である。
【請求項4】
グルコシノレート含有飲料(ただし、鉄イオンモル濃度が、0.2mg/100g以下であるものを除く。)の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である。: 調合:ここで調合されるのは、少なくともグルコシノレート含有組成物であり、これによって得られる調合液の還元剤モル濃度[A’]は、445μM以下であり、当該調合液の鉄イオンモル濃度[C’]は、200μM以下であり、当該調合液のグルコシノレートモル濃度[B’]は、572μM以上であり、前記鉄イオンモル濃度とは、II価、又はIII価にイオン化された鉄イオン合計のモル濃度である。
【請求項5】
グルコシノレート含有飲料(ただし、鉄イオンモル濃度が、0.2mg/100g以下であるものを除く。)の経時変化によるグルコシノレートモル濃度減少を抑制する方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である。: 調合:ここで調合されるのは、少なくともグルコシノレート含有組成物であり、これによって得られる調合液の還元剤モル濃度[A’]は、445μM以下であり、当該調合液の鉄イオンモル濃度[C’]は、200μM以下であり、当該調合液のグルコシノレートモル濃度[B’]は、572μM以上であり、前記鉄イオンモル濃度とは、II価、又はIII価にイオン化された鉄イオン合計のモル濃度である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、グルコシノレート含有飲食品、グルコシノレート含有飲食品の製造方法、グルコシノレート含有飲食品の経時変化によるグルコシノレート量の減少を抑制する方法である。
【背景技術】
【0002】
アブラナ科植物に特有の成分として含まれるグルコシノレート類は、植物体やヒトの腸内菌叢が持つミロシナーゼによってイソチオシアネートに変換された後、体内に吸収されて多彩な生理作用を示す。特に、ブロッコリースプラウトには、スルフォファラングルコシノレート(以下、「SGS」という)が多く含まれる。SGSから変換されるスルフォラファンの生理作用として、解毒作用、肝機能改善効果、抗酸化作用等が報告されている。
【0003】
特許文献1が開示するのは、アブラナ科植物由来の搾汁組成物であり、その目的は、グルコシノレート量の増大した搾汁液の製造である。その方法は、特定の加熱条件でケールを加熱し、搾汁することである。
【0004】
特許文献2が開示するのは、十字花科植物を含む食品の製造方法であり、その目的は、相当量の第二相誘発ポテンシャルを含有し、インドールグルコシノレートとその分解産物および甲状腺腫誘発性のヒドロキシブテニルグルコシノレートを無毒性の濃度で含む食品を提供することである。その方法は、種子の選別、種子の発芽、発芽開始から装用段階までの間に前記新芽を収穫して食品を作成することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許5726535号公報
【文献】特開2000-502245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イソチオシアネートの生理作用に着目し、グルコシノレート、特にSGSを種々の飲食品用途に使用可能とすることで、多くの消費者の健康に貢献できることが見込まれる。
【0007】
グルコシノレート含有飲食品における課題は、経時変化によるグルコシノレート量の減少を抑制することである。
【0008】
グルコシノレートから変換されたイソチオシアネートは、機能性の面から有用な成分である反面、揮発性のため不安定であり、経時的に消失する。そのため、摂取する場合は、摂取する直前、又は体内においてイソチオシアネートに変換されることが好ましい。そのため、飲食品中では安定性の高いグルコシノレートの状態であることが好ましいと考えた。
【0009】
【化1】
【0010】
一方、グルコシノレート、特にSGSは、複雑系である飲食品に用いた場合、経時変化により、その含有量が大きく減少してしまうことがあった。一般的に、ミロシナーゼ等の酵素によってグルコシノレートが分解してグルコースとアグリコンになることは知られているが、ミロシナーゼが存在しない、又はミロシナーゼ活性が実質的にない状況下において、このようなグルコシノレートの減少が起こるメカニズムは不明であった。
【0011】
機能性成分であるグルコシノレートを飲食品に用いる場合、その濃度や量を担保する必要があるため、経時変化による不測の減少は好ましくなく、グルコシノレート量を安定的に担保する必要があった。
【0012】
つまり、グルコシノレート含有飲食品の製造における課題は、経時変化によるグルコシノレート量の減少を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
当該課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討し発見したのは、飲食品における還元剤モル濃度[A]と、当該飲食品におけるグルコシノレートモル濃度[B]との関係[A]/[B]を、一定値以下とすることである。また、飲食品に含まれる還元剤モル濃度[A]を、一定濃度以下とすることである。さらには、飲食品に含まれる鉄イオンモル濃度[C]を、一定濃度以下とすることである。
【0014】
より具体的に言えば、飲食品における還元剤モル濃度[A]と、当該飲食品におけるグルコシノレートモル濃度[B]との関係を、[A]/[B]≦0.35とすることである。
【0015】
また、グルコシノレート含有飲食品の還元剤モル濃度[A]を325μM以下とすることである。好ましくは、当該飲食品のグルコシノレートモル濃度[B]を457μM以上とすることである。より好ましくは、当該飲食品の鉄イオン濃度は[C]を200μM以下とすることである。
【0016】
また、当該課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討発見したのは、飲食品製造時の調合液に含まれる還元剤モル濃度[A’]と、当該調合液に含まれるグルコシノレートの濃度[B’]との比を特定の値とすることである。
【0017】
より具体的に言えば、飲食品製造時の調合液に含まれる還元剤モル濃度[A’]と、当該調合液に含まれるグルコシノレートモル濃度[B’]との関係を、[A’]/[B’]≦0.475とすることである。好ましくは、前記調合液の還元剤モル濃度[A’]が、445μM以下である。より好ましくは、前記調合液に含まれるグルコシノレートモル濃度[B’]を、572μM以下とすることである。さらに好ましくは、前記調合液に含まれる鉄イオン濃度[C’]を、200μM以下とすることである。
【0018】
当該作用は、以下のとおりである。本発明者は、鉄イオンが存在する場合において、還元剤の存在が、経時変化におけるグルコシノレート、特にSGSの分解を決定する主要因であることを突き止めた。
【0019】
鉄イオンの還元反応に関与し、グルコシノレートの分解が促進される。当該反応により鉄イオン自体は酸化される。しかし、前記還元剤の存在によって、当該III価の鉄イオンは、II価の鉄イオンに再還元されることとなる。このように、前記還元剤は、一旦酸化された鉄イオンを再還元することで、経時的なグルコシノレートの分解に関与することが推察される。
【発明の効果】
【0020】
本発明が可能にするのは、グルコシノレート含有飲食品の経時変化によるグルコシノレートモル濃度減少を抑制することである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(比較例1)
図2】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(比較例2)
図3】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(比較例3)
図4】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(実施例1)
図5】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(実施例2)
図6】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(実施例3)
図7】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(実施例4)
図8】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(実施例5)
図9】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(実施例6)
図10】SGS残存率、及びアスコルビン酸濃度の経時変化(実施例7)
【発明を実施するための形態】
【0022】
<グルコシノレート含有組成物>
本発明の実施に係る飲食品(以下、「本飲食品」という。)の製造において、グルコシノレート含有組成物とは、グルコシノレートを含有することを特徴とする組成物であり、例示すると、アブラナ科野菜搾汁、アブラナ科野菜濃縮汁、アブラナ科野菜抽出物、アブラナ科野菜由来粉末、グルコシノレート精製品等である。
【0023】
<グルコシノレート>
グルコシノレート類とは、化2の構造式で示される、グルコースおよびアミノ酸の誘導体であり、硫黄と窒素を含む有機化合物の一群である。本発明におけるグルコシノレートは、特に限定されないが、例示すると、スルフォラファングルコシノレート(グルコラファニンとも呼ばれる)、シニグリン、グルコエルシン、グルコブラシシン、グルコラフェニン、グルコラファサティン、フェネチルグルコシノレート等であり、本発明においては、特にスルフォラファングルコシノレートであることが好ましい。これらのグルコシノレートのうち1種、又は複数種用いてもよい。
【0024】
【化2】
【0025】
<アブラナ科野菜>
本発明におけるアブラナ科野菜とは、野菜であって、アブラナ科に分類されるものをいう。例示すると、キャベツ、ブロッコリー、ケール、クレソン、コマツナ、チンゲンサイ、カイワレダイコン、カリフラワー、ハクサイ、ナバナ、タカナ、コールラビ、等が含まれる。これらの野菜のうち1種、又は複数種用いてもよい。また、これら野菜の部位(花、葉や茎)の全部、又は一部を用いてもよく、スプラウトやシードを用いても良い。本発明において特に好ましい態様は、ブロッコリースプラウトである。
【0026】
アブラナ科野菜搾汁とは、アブラナ科野菜を破砕して搾汁し或いは裏ごしして得られるアブラナ科野菜搾汁、これを濃縮したアブラナ科野菜濃縮汁、及び、アブラナ科野菜濃縮汁を希釈還元したものを意味する。これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。
【0027】
また、本明細書において、アブラナ科野菜搾汁、及びアブラナ科野菜濃縮汁とは、除パルプアブラナ科野菜搾汁を含む概念であり、除パルプアブラナ科野菜搾汁とは、アブラナ科野菜搾汁に含まれる水不溶性固形分の一部又は全部を除去したもの、及びこれを濃縮したもの、並びに、アブラナ科野菜濃縮汁に含まれる水不溶性固形分の一部又は全部を除去したもの、及びこれらを濃縮又は希釈還元したものである。
【0028】
アブラナ科野菜抽出物とは、アブラナ科野菜から溶媒を用いてアブラナ科野菜に含まれる成分を抽出したもの、及びこれを濃縮したものである。溶媒の種類は、既知の物であれば特に限定されず、親水性、親油性と問わないが、飲食品用途に用いられることから、飲食に適した溶媒であることが好ましい。
【0029】
アブラナ科野菜由来粉末とは、アブラナ科野菜そのもの、前記アブラナ科野菜搾汁、アブラナ科野菜濃縮汁、及びアブラナ科野菜抽出物を乾燥させて、粉砕粉末化した物である。乾燥方法は公知の方法であれば特に限定されず、加熱乾燥、凍結乾燥、スプレードライ等の方法が挙げられる。
【0030】
<還元剤>
本飲食品の製造において、還元剤とは、酸化還元反応における還元反応を生じさせる成分であり、例示すると、還元型アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、等である。これらの成分は、当該成分自体が酸化されることで、対象となる成分に還元作用を生じさせる。当該還元剤は、好ましくは、III価の鉄イオンに対して還元作用を有するものである。
【0031】
還元型アスコルビン酸とは、化学式Cで表される成分であり、ビタミンCとも呼ばれる。当該成分は、野菜や果汁に豊富に含まれる成分である。この還元型アスコルビン酸は、当該成分自体は酸化作用により酸化型アスコルビン酸(化学式C)となり、対象となる成分に還元作用を生じさせることが知られている。
【0032】
<野菜又は果物の加工品>
野菜加工品とは、加工された野菜である。その原料を例示すると、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ等である。これらのうち一種または二種以上は、組み合わせて調合される。同様に、果物の加工品とは、加工された果物である。その原料を例示すると、リンゴ、オレンジ、バナナ、ブドウ等である。これらのうち一種または二種以上は、組み合わせて調合される。
【0033】
<食品添加物>
本発明が排除しないのは、食品添加物の使用である。当該食品添加物を例示すると、甘味料、酸味料、核酸類、香辛料抽出物、着色料、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤、栄養強化剤、増粘剤等である。
【0034】
<本飲食品の製造方法>
本飲食品の製造方法(以下、「本製法」という。)を主に構成するのは、調合工程、殺菌工程、充填工程、密封工程、冷却工程である。
【0035】
<調合>
調合は、複数の原材料を適切な量となるように調合することで、本飲食品の基となる混合物質を製造する工程である。本工程において、本飲食品の呈味、性状、色調、栄養成分濃度、機能性成分濃度等を目標のものとなるよう調整される。本飲食品製造における調合工程では、少なくとも、グルコシノレート含有組成物が配合される。グルコシノレート含有組成物を配合する目的は、本飲食品における、グルコシノレート含有量の担保である。上記に加え、必要に応じて調合されるのは、野菜の加工品、果物の加工品、食品添加物等である。
【0036】
<殺菌、充填、冷却>
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、殺菌、充填及び冷却である。殺菌方法は、公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌、チューブラー式殺菌方法等がある。冷却方法は、公知の方法で良い。充填方法は、公知の方法でよい。本飲食品が充填される(詰められる)容器は、公知の物で良く、例示すると、缶、瓶、紙容器、ポリエチレン製容器等である。
【0037】
<調合液のグルコシノレートモル濃度>
本発明における調合液のグルコシノレートモル濃度[B’]は、調合液に含まれるグルコシノレートのモル濃度を意味する。当該グルコシノレートモル濃度は、特に限定されないが、最終商品を飲食した際に生理活性を有する量担保することを考慮し、設定すればよい。当該観点から、572μM以上であることが好ましい。より好ましくは、823μM以上7.45mM以下、さらに好ましくは1.10mM以上2.53mM以下である。
【0038】
<調合液の鉄イオン濃度>
本発明における調合液の鉄イオン濃度[C’]は、調合液に含まれる鉄イオンのモル濃度を意味する。本発明における鉄イオンモル濃度とは、II価、又はIII価にイオン化された鉄イオン合計のモル濃度のことをいう。当該鉄イオン濃度は、特に限定されないが、好ましくは200μM以下である。より好ましくは、0μM以上28.7μM以下である。
【0039】
<調合液の還元剤モル濃度>
本発明における調合液の還元剤モル濃度[A’]は、調合液に含まれる還元剤のモル濃度を意味する。還元剤濃度の測定方法は、既知の方法であれば良い。本発明における還元剤モル濃度[A’]では、鉄イオンに由来する還元剤モル濃度は除かれる。当該還元剤モル濃度[A’]は、445μM以下である。好ましくは、405.6μM以下、より好ましくは、229.8μM以下である。また好ましくは192.3μM以下、さらに好ましくは、0μM以上45.6μM以下である。
【0040】
<調合液の還元剤モル濃度[A’]、グルコシノレートモル濃度[B’]との関係>
本発明における調合液の還元剤モル濃度[A’]とグルコシノレートモル濃度[B’]との関係は、[A’]/[B’]≦0.475である。好ましくは、[A’]/[B’]≦0.435、より好ましくは、[A’]/[B’]≦0.259である。また好ましくは、[A’]/[B’]≦0.203、さらに好ましくは、0≦[A’]/[B’]≦0.05である。当該範囲を逸脱すると、経時変化によるグルコシノレート量の減少が大きくなる。
【0041】
<調合液のpH>
本発明における調合液のpHは、特に限定されないが、一般的な野菜又は果実含有飲食品を想定した場合、3.8~4.4程度であることが好ましい。測定手段を例示すると、pH計(pH METER F-52 HORIBA社製)である。
【0042】
<本飲食品>
本発明におけるグルコシノレート含有飲食品とは、グルコシノレートを含有する飲料又は食品のことを示す。飲料は、清涼飲料、スムージー等、一般に飲料と認識されるものであれば、特に限定されない。本飲食品は、スープ等、一部固形分が含まれるものも含む。
【0043】
前記製造方法によって製造された本飲食品は、以下に示す還元剤モル濃度[A]、グルコシノレートモル濃度[B]、[A]/[B]値、又は鉄イオン濃度[C]等を有す。本飲食品は、野菜又は果実含有飲食品であることが好ましい。野菜又は果実の合計の含有割合は、特に限定されないが、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0044】
野菜又は果実にはビタミンCが豊富に含まれている。また、鉄分を含む物も多い。その観点から、本発明の範囲となるように鉄分やビタミンC(アスコルビン酸)を含むような野菜又は果実を選定、及び調合量を調整することが好ましい。鉄分やビタミンC量の調整には、特に限定されないが、食品添加物を用いてもよい。
【0045】
<本飲食品の還元剤モル濃度[A]と、グルコシノレートモル濃度[B]との関係>
本飲食品の還元剤モル濃度[A]とグルコシノレートモル濃度[B]との関係は、[A]/[B]≦0.35である。好ましくは、[A]/[B]≦0.335、より好ましくは、[A]/[B]≦0.69である。さらに好ましくは、0≦[A]/[B]≦0.0002である。当該範囲を逸脱すると、経時変化によるグルコシノレート量の減少が大きくなる。
【0046】
<本飲食品の還元剤モル濃度>
本飲食品の還元剤モル濃度[A]とは、本飲食品に含まれる還元剤のモル濃度を意味する。還元剤濃度の測定方法は、既知の方法であれば良い。本飲食品の還元剤モル濃度[A]では、鉄イオンに由来する還元剤モル濃度は除かれる。当該還元剤モル濃度[A]は、325μM以下である。好ましくは、307.6μM以下、より好ましくは、64.1μM以下、さらに好ましくは、0μM以上36.1μM以下である。本飲食品の還元剤モル濃度の測定方法は、既知の方法で良い。具体的には、例えば還元剤がアスコルビン酸である場合は、HPLC法等を用いることができる。
【0047】
<本飲食品のグルコシノレートモル濃度>
本発明における飲食品のグルコシノレート濃度は、特に限定されないが、最終商品を飲食する際に生理活性を有する量担保するという観点から、1日に摂取する量として、SGSでいうと20mg以上を担保できる程度含有することが好ましい。より好ましくは、1日に摂取する量として、SGSでいうと30mg以上を担保できる程度含有することが好ましい。より具体的に言えば、例えば1日に100ml摂取することを推奨する商品であれば、グルコシノレート濃度として、457μM以上8.74mM以下であることが好ましい。より好ましくは、686μM以上5.96mM以下、さらに好ましくは、860μM以上2.02mM以下である。
【0048】
<本飲食品の鉄イオン濃度>
本飲食品の鉄イオン濃度[C]は、本飲食品が含有する鉄イオンのモル濃度を意味する。本発明における鉄イオンモル濃度とは、II価、又はIII価にイオン化された鉄イオン合計のモル濃度のことをいう。当該鉄イオン濃度は、特に限定されないが、好ましくは200μM以下である。より好ましくは、0μM以上28.7μM以下である。また、還元型アスコルビン酸の濃度が307.6μM以下の時は、28.7μM以下であることが好ましい。一方、還元型アスコルビン酸の濃度が36.1μM以下の時は、200μM以下であっても良い。
【0049】
本飲食品における鉄の濃度の測定は、既知の方法を用いることができる。本飲食品における鉄イオン濃度測定法の例として、イオンクロマトグラフィーを用いた方法、トリアジン法等が挙げられる。また、本飲食品が含有する、鉄濃度を測定する方法として、ICP-MS(誘導結合プラズマ分析)、ICP発光分析法等が挙げられる。鉄イオン濃度は、飲食品の不溶性固形部等を除去する等して、測定することができる。
【0050】
<本飲食品のpH>
本飲食品のpHは、特に限定されないが、一般的な野菜又は果実含有飲食品を想定した場合、3.8~4.4程度であることが好ましい。測定手段を例示すると、pH計(pH METER F-52 HORIBA社製)である。
【0051】
<本飲食品の形態>
また、本飲食品は、容器詰であることが好ましい。これによって、市場への流通が容易となる。また、容器に詰めることで、空気中の酸素との接触が抑えられ、グルコシノレートの分解をより抑制することができる。さらに、グルコシノレートによる生理活性担保の観点から、本飲食品におけるグルコシノレート濃度は、457μM(20mg/100ml)以上であることが好ましい。より好ましくは、686μM(30mg/100ml)以上であることが好ましい。
【0052】
<流通温度>
本飲食品は、市場に行おいて流通される際、低温で流通されることが好ましい。具体的には、10℃以下であることが好ましい。これにより、グルコシノレートの経時による分解が抑制される。
【0053】
<生理活性>
本飲食品は、グルコシノレートの有する機能性が強化されている。当該観点から、本飲食品は、肝機能改善効果、血糖値改善効果、糖尿病予防効果、ピロリ菌除菌効果、肺活量・呼吸機能改善効果、LDLコレステロール低下効果、大気汚染物質の排泄促進効果、便通改善効果、記憶力や注意力改善効果、統合失調症緩和効果、肥満予防・改善効果、脂肪肝予防・改善効果、認知症予防効果、認知機能改善効果、腸内菌叢改善効果、うつ病予防効果、前立腺予防効果、からなる群より選択される少なくとも1つの機能性を有するものであっても良い。
【0054】
<グルコシノレート残存率>
本発明におけるグルコシノレート残存率とは、製造時のグルコシノレート濃度に対する、製造から対象となる日時経過後のグルコシノレート濃度の割合を百分率(%)で表したものを意味する。チルド流通のExtended Shelf Life製品は、賞味期限が製造後29日以内であることが多い。当該観点から、製造後29日以内において、グルコシノレート残存率が80%以上であることが好ましい。また、期間に安全性を見て、製造後42日以内において、グルコシノレート残存率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは、前記期間において、それぞれグルコシノレート残存率が90%以上である。なお、一般に商品に栄養成分を表示する際は、食品表示法の規定に従い行う。栄養成分値の表示は、実際の商品の分析値とで許容差を定められているものもあり、例えば、たんぱく質、脂質、炭水化物等については、プラスマイナス20%である。
【実施例
【0055】
本飲食品を具現化したのは、実施例1乃至7である。ただし、これらの実施例によって、本発明に係る特許請求の範囲が限定されるものではない。
【0056】
<グルコシノレート含有組成物>
本実施例では、グルコシノレート含有組成物として、ブロッコリースプラウト由来の水抽出物(以下、「BSエキス」という)を使用した。BSエキスは、ブロッコリーの種子(Caudill Seed Co., Inc.)を発芽させ、発芽後1日間栽培してブロッコリースプラウトを得た。これを95℃の熱水で30分間抽出を行った後、ブロッコリースプラウトの残渣を除去して、抽出液を得た。当該抽出液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。当該グルコシノレート含有組成物のBrixは、15.0、SGS濃度は、30±3mg/100gであった。
【0057】
<SGS濃度の測定>
本測定で採用したSGSの測定方法は、HPLC法である。試料は適宜希釈し、フィルター濾過したものを検体とした。詳細な測定条件は、以下のとおりである。
【0058】
<HPLC測定条件>
装置:ACQUITY UPLC H-Classシステム(Waters社製)
カラム:ACQUITYCSH C18(Φ2.1×100mm, 1.7μm)(Waters社製)
カラム温度:30℃
サンプル注入量:10μL
移動相A:超純水:トリフルオロ酢酸=99.95:0.05(v:v)
移動相B:メタノール:トリフルオロ酢酸=99.95:0.05(v:v)
グラジエント:5分間 移動相B割合0%を維持
10分間で移動相B割合0→10%のリニアグラジエント
5分間で移動相B割合10→100%のリニアグラジエント
5分間 移動相B割合100%を維持
2分間で移動相B割合100→0%のリニアグラジエント
5分間 移動相B割合0%を維持
流速:0.1mL/min
検出波長:235nm
<糖度(Brix)の測定>
本測定で採用した糖度(Brix)の測定器は、デジタル屈折計RX5000i(ATAGO社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
【0059】
<野菜原料中の鉄濃度の測定>
本実施例において、BSエキス中の鉄イオン濃度の測定方法は、ICP-MS法である。測定機は、Agilent 7500cs(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、当該機器の測定手順に従い分析を行った。
【0060】
また、本実施例において、ニンジンジュース、及びトマトジュース中の鉄イオン濃度は、日本食品分析センターに委託分析を行った。前記ニンジンジュース、及びトマトジュースの分析用サンプルは、遠心分離処理によりパルプ部分を除いた後、0.20μmポアサイズのフィルター濾過を行ったものを用いた。分析方法はICP発光分析法であった。
【0061】
<アスコルビン酸の測定>
本測定で採用した酸化型アスコルビン酸、及び総アスコルビン酸の測定方法は、HPLC法である。還元型アスコルビン酸の濃度は、総アスコルビン酸濃度から、酸化型アスコルビン酸の濃度を減じたものとした。5%メタリン酸溶液にて抽出しNo. 5A濾紙で濾過したものを、総アスコルビン酸測定用検体とした。2%チオ尿酸-5%メタリン酸溶液にて抽出し、No. 5A濾紙で濾過したものを酸化型アスコルビン酸測定用検体とした。詳細な測定条件は、以下のとおりである。
【0062】
<HPLC装置構成>
高速液体クロマトグラフchromaster(HITACHI)
オートサンプラー :5280(HITACHI)
ポンプ :5110(HITACHI)
カラムオーブン :5310(HITACHI)
検出器 :5420(HITACHI)
<測定条件>
カラム :SSC Silica-2150-N(100) 6mm×150mm)
移動相 :酢酸エチル:ヘキサン:酢酸
(50:40:10(v/v))
流速 :1.5mL/min
検出波長 :495nm
カラム温度 :35℃
試料注入量 :10μL
分析時間 :15min
<pHの測定>
本測定採用したpHの測定器は、pH計(pH METER F-52 HORIBA社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
【0063】
<SGS残存率>
本実施例においてSGS残存率は、製造から対象となる日時経過後のグルコシノレートモル濃度(μM)を、製造時のSGS濃度(μM)で除し、100を乗じることで算出した。試験区分の経時変化観察の際の保管温度は、全て10℃であった。
【0064】
<比較例1>
比較例1では、トマトピューレ(Brix20.5)をBrix5.0となるよう水で希釈調整したトマトジュース、前記BSエキス、を用いてpH4.40未満の野菜含有飲料調合液を作製した。当該調合液の鉄イオン濃度、酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表1に記載のとおりであった。当該調合液を95℃達温で、ホットパックによる加熱殺菌を行った。加熱殺菌後の試料の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表1に記載のとおりであった。
【0065】
<比較例2、及び3>
比較例2、及び3では、トマトピューレ(Brix20.5)をBrix5.0となるよう水で希釈調整したトマトジュース、前記BSエキス、市販のアスコルビン酸(L(+)-Ascorbic Acid、和光純薬工業株式会社製)を用いてpH4.40未満の野菜含有飲料調合液を作製した。当該調合液の鉄イオン濃度、酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表1に記載のとおりであった。当該調合液を95℃達温で、ホットパックによる加熱殺菌を行った。加熱殺菌後の試料の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表1に記載のとおりであった。
【0066】
<実施例1>
実施例1では、市販の濃縮ニンジン果汁(Brix50)をBrix8.8±0.2となるよう水で希釈調整したニンジンジュース、前記BSエキス、市販のレモン混濁果汁、を用いてpH4.3~4.4の野菜含有飲料調合液を作製した。当該調合液の鉄イオン濃度、酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表2に記載のとおりであった。当該調合液を95℃達温で、ホットパックによる加熱殺菌を行った。加熱殺菌後の試料の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表2に記載のとおりであった。
【0067】
<実施例2、及び3>
実施例2、及び3では、市販のニンジンペースト(Brix50)をBrix8.8±0.2となるよう水で希釈調整したニンジンジュース、前記BSエキス、市販のレモン混濁果汁、市販のアスコルビン酸を用いてpH4.3~4.4の野菜含有飲料調合液を作製した。当該調合液の鉄イオン濃度、酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表2に記載のとおりであった。当該調合液を95℃達温で、ホットパックによる加熱殺菌を行った。加熱殺菌後の試料の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表2に記載のとおりであった。
【0068】
<比較例4~6>
比較例4~6では、0.05Mクエン酸緩衝液(pH4.0)、塩化鉄(II)、市販のアスコルビン酸を用いて、鉄イオン濃度200μMのモデル液を作製した。当該モデル液の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表3に記載のとおりであった。当該モデル液を95℃達温で、ホットパックによる加熱殺菌を行った。加熱殺菌後の試料の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表3に記載のとおりであった。
【0069】
<実施例4~6>
実施例4~6では、0.05Mクエン酸緩衝液(pH4.0)、塩化鉄(II)、前記BSエキス、市販のアスコルビン酸を用いて、鉄イオン濃度200μMのモデル液を作製した。当該モデル液の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表3に記載のとおりであった。当該モデル液を95℃達温で、ホットパックによる加熱殺菌を行った。加熱殺菌後の試料の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表3に記載のとおりであった。
【0070】
<実施例7>
実施例7では、0.05Mクエン酸緩衝液(pH4.0)、塩化鉄(II)、前記BSエキスを用いて、鉄イオン濃度200μMのモデル液を作製した。当該モデル液の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表3に記載のとおりであった。当該モデル液を95℃達温で、ホットパックによる加熱殺菌を行った。加熱殺菌後の試料の酸化型アスコルビン酸、還元型アスコルビン酸、及びSGS濃度は、表3に記載のとおりであった。
【0071】
比較例1~3について、調合液、殺菌直後、殺菌後2,6,12,21,29、及び42日経過後のSGS濃度を測定することで、SGS濃度の経時変化を確認した。
【0072】
また、実施例1~3について、調合液、殺菌直後、殺菌後2,6,12,29,及び42日経過後のSGS濃度を測定することで、SGS濃度の経時変化を確認した。
【0073】
比較例4~6、並びに実施例4~6について、調合液、殺菌直後、殺菌後3,6,10,29,及び42日経過後のSGS濃度を測定することで、SGS濃度の経時変化を確認した。
【0074】
<SGS残存率評価>
本試験におけるSGS残存率の評価に関して、殺菌後29日経過後のSGS残存率が90%以上のものを「◎」SGS残存率が80%以上のものを「○」、それより低いものを「×」とした。また、殺菌後42日経過後のSGS残存率が90%以上のものを「◎」SGS残存率が80%以上のものを「○」、それより低いものを「×」とした。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
<まとめ>
以上の試験結果から、経時変化によるSGS分解に、飲食品のアスコルビン酸量が関与していることがわかった。いずれの試験区分においても、経時変化により還元型アスコルビン酸濃度が低下し、酸化型アスコルビン酸濃度が上昇した。また、実施例4~7、及び比較例4~6を比較することにより、SGS含有区分と、非含有区分における還元型アスコルビン酸消費量の差分が、SGS分解反応に用いられたと考えられる。また、還元型アスコルビン酸が消費されたのちは、SGS量の減少速度が極めて鈍化していることからも、SGSの分解に還元型アスコルビン酸が関与していることが明らかとなった。
【0079】
また、鉄イオンの濃度は高い方が、SGSの経時変化による分解には影響が多いと言えるが、還元型アスコルビン酸濃度が低ければ、鉄イオン濃度が高くてもSGSの分解は生じにくいことがわかった(実施例4、実施例5)。
【0080】
上記試験結果より、SGSの経時変化による分解の主要因は、還元型アスコルビン酸であり、鉄イオンはその分解に間接的に関与していることがわかった。
【0081】
以上のことから、経時変化によるグルコシノレートの分解を抑制することが可能な条件は、飲食品製造時の調合液に含まれる還元剤モル濃度[A’]と、当該調合液に含まれるSGSの濃度[B’]との関係が、[A’]/[B’]≦0.475とすることである。好ましくは、前記調合液の鉄イオン濃度[C’]が、200μM以下である。また、飲食品に含まれる還元剤モル濃度[A]と、当該飲食品に含まれるSGSの濃度[B]、との関係が、[A]/[B]≦0.35である。好ましくは、前記飲食品の鉄イオン濃度[C]が200μM以下である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明が有用な分野は、グルコシノレート含有飲食品、グルコシノレート含有飲食品の製造方法、グルコシノレート含有飲食品の経時変化によるグルコシノレート量の減少を抑制する方法である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10